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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/4545
A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503927
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2022029430
(87)【国際公開番号】W WO2023008585
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,692
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508065961
【氏名又は名称】ラクオリア創薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】青山 英幸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 康弘
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC21
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA69
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩(HCl塩)の新規結晶形、その医薬組成物、そのような結晶形および組成物の調製または単離方法、モチリン受容体活性によって媒介される種々の疾患または障害の治療においてそのような結晶形および組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-シータにおけるピークが14.7、および17.5(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A。
【請求項2】
2-シータにおけるピークが4.0、7.9、14.7、17.5、および22.3(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A。
【請求項3】
254℃(ここで、この温度は+/- 1℃の誤差範囲を有する)で吸熱性事象を示す示差走査熱量測定(DSC)によりさらに特性化される、請求項1または請求項2に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A。
【請求項4】
3327、2926、1707、1668、1616、および700 cm-1(ここで、各ピークは+/-2 cm-1の誤差範囲を有する)で吸光度帯域を示す赤外線(IR)スペクトル(KBr)によりさらに特性化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A。
【請求項5】
2-シータにおけるピークが19.8および21.6(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B。
【請求項6】
2-シータにおけるピークが4.0、7.9、15.7、17.9、19.8、および21.6(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B。
【請求項7】
258℃(ここで、この温度は+/- 1℃の誤差範囲を有する)で吸熱性事象を示す示差走査熱量測定(DSC)によりさらに特性化される、請求項5または請求項6に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項9】
経口投与、非経口投与、局所投与、直腸投与、膣内投与、眼投与または耳投与のための剤形である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
剤形が、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、トローチ剤(lozenges)、フィルム剤、オブルス(ovules)剤、スプレー剤、パッチ剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、放出調節製剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ドロップ剤、フォーム剤、ウエハース剤、インプラント剤、マイクロエマルジョン剤、注射剤、乾燥粉末剤、および坐剤からなる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに使用する工程を含む医薬組成物。
【請求項12】
薬剤として用いるための請求項1~7のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形。
【請求項13】
モチリン受容体活性によって媒介される病態の、治癒的、緩和的または予防的治療のための薬剤の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形、または請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
モチリン受容体活性によって媒介される病態の治療方法であって、そのような治療を必要とするヒトを含む動物に有効量の、請求項1~7のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形、または請求項8~11のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む治療方法。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、第1の有機溶媒中の塩酸を、第2の有機溶媒中の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの溶液に添加する工程を含む調製方法。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、10%未満の体積の水を含有するテトラヒドロフラン中で加熱しながら曝露する工程を含む調製方法。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、0.01~5%(v/v)含水テトラヒドロフランに50~80℃で加え、50~80℃で酢酸エチルを添加する工程を含む調製方法。
【請求項18】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、酢酸エチル中で50~80℃の範囲で加熱し、室温まで冷却する工程を含む調製方法。
【請求項19】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bを、有機溶媒中で撹拌して、室温~100℃で前記塩酸塩結晶形Aに変換する工程を含む調製方法。
【請求項20】
請求項19に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bを撹拌する工程を含み、有機溶媒が酢酸エチルまたは体積1%未満の水を含有するTHF/酢酸エチルである調製方法。
【請求項21】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の種結晶を添加して塩酸塩結晶形Aを得る工程を含む調製方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、溶媒から結晶形を結晶化する工程を含む調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩(HCl塩)の新規結晶形、その医薬組成物、そのような結晶形および組成物の調製または単離方法、モチリン受容体活性によって媒介される種々の疾患または障害の治療においてそのような結晶形および組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドは、モチリン受容体作動薬としてWO2010/098145(特許文献1)に開示されており、これはモチリン受容体活性;特にモチリン受容体作動活性によって媒介される疾患状態、例えば、胃食道逆流症;機能性胃腸症;過敏性腸症候群;便秘症;偽性腸閉塞;術後または他の処置後の麻痺性イレウス;嘔吐;糖尿病などの種々の疾患および/または薬物の投与、または経腸栄養療法を受けている患者において引き起こされる胃内容うっ滞もしくは胃運動低下;クローン病;結腸炎;がんなどの進行性疾患および/またはその治療に伴う悪液質;ならびに失禁のような他の障害の治療に有用である(特許文献1および非特許文献1~4参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドを調製する従来公知の方法では、単に白色の固体が製造されているのみである。本出願の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの薬学的に許容される塩の一般的な記載は開示されており、特許文献1には、本発明の化合物の遊離塩基が開示され、請求項に記載されてはいる。ただし、本化合物のいずれの結晶形も、またいずれの塩も、従来技術においてこれまで何ら実際に記載されておらず、合成されてもいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/098145
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Perdikis Gら, Am J Surg, 1994, 167, 186-192
【非特許文献2】Sanger GJら, Nat Rev Gastroenterol Hepatol, 2016, 13, 38-48
【非特許文献3】Sharma SSら, Dig Dis Sci, 1995, 40, 2446-2449
【非特許文献4】Logo WEら, Dis Colon Rectum, 1993, 36, 696-708
【非特許文献5】Byrn SRら, Solid-State Chemistry of Drugs 2nd ed., pp 3-43 および461-503, 1999, Indiana, SSCI, Inc.
【非特許文献6】Lieberman HAら, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1, 2nd ed., pp 1-73, 1989, New York, Marcel Dekker, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業者に周知のように、医薬品の製剤および調製を含む様々な観点から医薬品開発において結晶、結晶形、または塩形を見出す、または製造することは、望ましい目標となっている(非特許文献5および非特許文献6を参照)。結晶形および塩形には関連する多くの利点があるにもかかわらず、安定した結晶形および/または塩の開発が常に実現可能であるとは限らない。
【0007】
この線に沿って、ラクオリア創薬株式会社が2010年(WO2010/098145)に開示した(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの結晶または結晶形を見出したり、調製したりするため、これまで多大な努力がなされてきた。例えば、酢酸エチル(EtOAc)などのエステル類、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトニトリル(MeCN)などのニトリル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル(MTBE)、およびシクロペンチルメチルエーテル(CPME)などのエーテル類、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)やテトラヒドロピランなどの環状エーテル類、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)などのケトン類、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類を再結晶溶媒として使用したが、それらはいずれも失敗に終わっている。
【0008】
さらに、結晶化受託サービスを専門とする受託研究委託においても、集中的に試験されたが結晶形を得ることはできなかった。例えば、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、CPME、トルエン、酢酸エチル/ヘプタン、酢酸エチル/MTBE、トルエン/ヘプタン、および酢酸エチル/CPMEなどの混合溶液を再結晶溶媒として使用したが、それらはいずれも失敗に終わっている。
【0009】
このような多大な努力にもかかわらず、前記遊離塩基化合物の薬学的に適切な結晶形はこれまで同定されていない。遊離塩基化合物は、これまで非晶質状態(以下、「遊離塩基非晶質」という)でのみ入手可能である。
【0010】
ラクオリア創薬株式会社による薬学的に適切な結晶形を得る方法として、塩酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、リン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸、乳酸、ナフタレン-2-スルホン酸、パモ酸、硫酸などの酸性対イオンを塩スクリーニングとしてさまざまな溶媒系に添加する方法が最初の試みとして試されたが、前記化合物の薬学的に適切な結晶塩形は得られなかった。
【0011】
本発明の発明者らは、徹底的かつ注意深い研究を重ねて、ついに、待望の塩酸塩としての前記化合物の薬学的に適切な結晶形、すなわち、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(以下、「塩酸塩結晶形A」という)を提供できる結晶の調製条件を見出すことに成功した。
【0012】
また、創薬、開発、製造の一連のソリューションを提供する科学的専門知識と技術を有する受託研究委託では、予備的な多形スクリーニングにおいて、塩酸塩結晶形A以外の多形体を同定することはできなかった。また、塩のスクリーニングでは、塩酸塩結晶形Aよりも薬学的に適切な別の結晶塩形を得ることができなかった。例えば、対イオンの選択や塩形成条件が実行されたが、対イオンの大部分は本発明の参考例に開示されているような、ろ過可能な固体を得ることはできなかった。
【0013】
さらに、本発明者らは、得られた塩酸塩結晶の物性を評価したところ、別の新規な塩酸塩結晶形、すなわち、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B(以下、「塩酸塩結晶形B」という)を見出した。
【0014】
得られた結晶形において、塩酸塩結晶形Aおよび塩酸塩結晶形Bは、該化合物の遊離塩基非晶質に比較して、温度や湿度の影響による純度の低下(分解)が抑制されており、したがって、塩酸塩結晶形Aおよび塩酸塩結晶形Bは、温度や湿度に対して非常に高い保存安定性を有することがわかった。光に対する保存安定性に関しては、塩酸塩結晶形Aは遊離塩基非晶質より安定であった。
【0015】
さらに、本発明の実施例に開示されるように、本発明は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(HCl塩結晶形A)を調製する方法を提供する。この方法には、酢酸エチル中の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド遊離塩基と塩酸とを混合して、塩酸塩固体を得ることが含まれる。この塩酸塩固体を、加熱しながら10%未満の体積の水を含有するテトラヒドロフランに溶解し、これに酢酸エチルを加え、場合により種結晶を加えて混合物を加熱しながら撹拌し、塩酸塩結晶形Aを得る。より好ましくは、塩酸塩固体を60~70℃で0.1~2.5%の体積の水を含有するテトラヒドロフランに溶解し、これに酢酸エチルを加え、場合により種結晶を加えて混合物を60~70℃で撹拌し、塩酸塩結晶形Aを成長させる。沈殿物をろ過し、乾燥して、塩酸塩結晶形Aを得る。当業者は、これまでこのような結晶化条件を考えつくことはなかった。
【0016】
本発明は、簡単に、経済的かつ再現可能なように調製され、例えば、ろ過性、取扱いの容易性、容易な純度コントロール、安定性や非吸湿性などにおいて予想できないほど優れ、安定した性能特性を有する、医薬製剤に使用するための(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の薬学的に適切な結晶形を提供することを目的とする。また、そのような結晶形の調製方法、そのような結晶形を含有する組成物および用途を提供することも本発明の目的である。
【0017】
すなわち、本発明は以下のものを提供する:
[1] 2-シータにおけるピークが14.7および17.5(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0018】
[1-1] 2-シータにおけるピークが14.7、17.5、および22.3(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0019】
[2] 2-シータにおけるピークが4.0、7.9、14.7、17.5、および22.3(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0020】
[2-1] 2-シータにおけるピークが4.0、7.9、13.6、14.7、15.7、16.7、17.5、22.3、25.5、27.1、および31.7(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0021】
[3] 254℃(ここで、この温度は+/- 1℃の誤差範囲を有する)で吸熱性事象を示す示差走査熱量測定(DSC)によりさらに特性化される、[1]、[1-1]、[2]、および[2-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0022】
[4] 3327、2926、1707、1668、1616、および700 cm-1(ここで、各ピークは+/- 2 cm-1の誤差範囲を有する)で吸光度帯域を示す赤外線(IR)スペクトル(KBr)によりさらに特性化される、[1]、[1-1]、[2]、[2-1]、および[3]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0023】
[4-1] 4047、3971、3327、2926、2758、2712、2621、2523、2490、2401、2120、1952、1898、1707、1668、1616、1460、1385、1358、1306、1250、1223、1119、1061、1051、990、953、912、745、700、631、561、および494 cm-1(ここで、各ピークは+/- 2 cm-1の誤差範囲を有する)で吸光度帯域を示す赤外線(IR)スペクトル(KBr)によりさらに特性化される、[1]、[1-1]、[2]、[2-1]、および[3]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A;
【0024】
[5] 2-シータにおけるピークが19.8および21.6(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B;
【0025】
[5-1] 2-シータにおけるピークが17.9、19.8、および21.6(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B;
【0026】
[6] 2-シータにおけるピークが4.0、7.9、15.7、17.9、19.8、および21.6(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B;
【0027】
[6-1] 2-シータにおけるピークが4.0、7.9、15.7、17.9、19.8、21.6、25.5、および31.7(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kアルファ(Cu-Kα)放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B;
【0028】
[7] 258℃(ここで、この温度は+/- 1℃の誤差範囲を有する)で吸熱性事象を示す示差走査熱量測定(DSC)によりさらに特性化される、[5]、[5-1]、[6]、および[6-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B;
【0029】
[8] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6]、[6-1]、および[7]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに含む医薬組成物;
【0030】
[9] 経口投与、非経口投与、局所投与、直腸投与、膣内投与、眼投与または耳投与のための剤形である、[8]に記載の医薬組成物;
【0031】
[10] 剤形が、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、トローチ剤(lozenges)、フィルム剤、オブルス(ovules)剤、スプレー剤、パッチ剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、放出調節製剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ドロップ剤、フォーム剤、ウエハース剤、インプラント剤、マイクロエマルジョン剤、注射剤、乾燥粉末剤、および坐剤からなる群から選択される、[9]に記載の医薬組成物;
【0032】
[11] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6]、[6-1]、および[7]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに使用する工程を含む医薬組成物;
【0033】
[12] 薬剤として用いるための[1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6]、[6-1]、および[7]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形;
【0034】
[13] モチリン受容体活性によって媒介される病態の、治癒的、緩和的または予防的治療のための薬剤の調製における、[1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6]、[6-1]、および[7]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形、または[8]~[11]のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用;
【0035】
[14] モチリン受容体活性によって媒介される病態の治療方法であって、そのような治療を必要とするヒトを含む動物に有効量の、[1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、[4-1]、[5]、[5-1]、[6]、[6-1]、および[7]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形、または[8]~[11]のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む治療方法;
【0036】
[15] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、第1の有機溶媒中の塩酸を、第2の有機溶媒中の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの溶液に添加する工程を含む調製方法;
好ましくは、第1の有機溶媒は、水、酢酸エチル、水/EtOH、ジオキサン、DMF、エーテル、アセトン、エタノール、メタノール、またはTHFであり;
好ましくは、第2の有機溶媒は、水、酢酸エチル、水/EtOH、ジオキサン、エタノール、メタノール、エーテル、アセトン、DMF、THF、またはt-ブチルメチルエーテルであり;
より好ましくは、第1の有機溶媒は、水、酢酸エチル、水/EtOH、ジオキサン、エタノール、またはTHFであり;
より好ましくは、第2の有機溶媒は、酢酸エチル、THF、またはt-ブチルメチルエーテルである;
【0037】
[16] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、10%未満の体積の水を含有するテトラヒドロフラン中で加熱しながら曝露する工程を含む調製方法;
【0038】
[17] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、0.01~5%(v/v)含水テトラヒドロフランに50~80℃で加え、50~80℃で酢酸エチルを添加する工程を含む調製方法;
【0039】
[18] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、酢酸エチル中で50~80℃の範囲で加熱し、室温まで冷却する工程を含む調製方法;
【0040】
[18-1] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩固体を、酢酸エチル中で50~80℃の範囲で加熱し、室温まで冷却する工程を含む調製方法;好ましくは前記範囲が60~80℃である;
【0041】
[19] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bを、有機溶媒中で撹拌して、室温~100℃で前記塩酸塩結晶形Aに変換する工程を含む調製方法;
【0042】
[20] [19]に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bを撹拌する工程を含み、有機溶媒が酢酸エチルまたは体積1%未満の水を含有するTHF/酢酸エチルである調製方法;
【0043】
[21] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の種結晶を添加して塩酸塩結晶形Aを得る工程を含む調製方法;
【0044】
[22] [1]、[1-1]、[2]、[2-1]、[3]、[4]、および[4-1]のいずれか一項に記載の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの調製方法であって、溶媒から結晶形を結晶化する工程を含む調製方法;好ましくは、前記溶媒が、水、酢酸エチル、水/EtOH、ジオキサン、DMF、エーテル、アセトン、エタノール、メタノール、またはTHFであり;より好ましくは、前記溶媒が酢酸エチルである。
【発明の効果】
【0045】
上述のように、薬剤の製剤および製造を含む様々な視点から薬物の開発において、予想できないほど優れた物理化学的特性を有する結晶または結晶形を見出し、または調製することを目的とする。驚くべきことに、この目的が、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aを提供する本発明によって達成されたことが明らかとなった。
本発明以前には、当業者の多大な努力にもかかわらず、前記化合物の薬学的に適切な結晶形はこれまで同定されていなかった。
【0046】
本発明の結晶形は、従来技術のWO2010/098145に開示されている白色固体に対して、優れた予想外の利点を有する。塩酸塩結晶形Aは、従来技術WO2010/098145に開示されている固体よりも安定したものであることが見出されている。
【0047】
さらに、本発明の塩酸塩結晶形Aは大規模合成に適用できることが見出されている。これらは、固体剤形の開発のために許容される固体状態の特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの粉末X線回折(XRPD)パターンを示す。
図2図2は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図3図3は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの赤外線(IR)スペクトルを示す。
図4図4は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bの粉末X線回折(XRPD)パターンを示す。
図5図5は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bの示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図6図6は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Bの赤外線(IR)スペクトルを示す。
図7図7は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の非晶質固体(以下、「塩酸塩非晶質」という)の光安定性を示す。分解生成物のデータ(%面積)は、塩酸塩非晶質の初期試料の初期値に対するパーセンテージとして表す。
図8図8は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド遊離塩基の非晶質固体(遊離塩基非晶質)の光安定性を示す。分解生成物のデータ(%面積)は、遊離塩基非晶質の初期試料の初期値に対するパーセンテージとして表す。
図9図9は、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの光安定性を示す。分解生成物のデータ(%面積)は、塩酸塩結晶形Aの初期試料の初期値に対するパーセンテージとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
したがって、本発明は、2-シータにおけるピークが4.0、7.9、14.7、17.5、および22.3(o);さらに詳細には、2-シータにおけるピークが4.0、7.9、13.6、14.7、15.7、16.7、17.5、22.3、25.5、27.1、および31.7(o)(ここで、各ピークは+/- 0.2(o)の誤差範囲を有する)を含む、Cu-Kα放射線を用いた照射により得られる粉末X線回析パターン(PXRD)により特性化される結晶の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aを提供する。
【0050】
したがって、本発明は、上記のような結晶の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aを提供し、これは、254℃(ここで、この温度は+/- 1℃の誤差範囲を有する)で吸熱性事象を示す示差走査熱量測定(DSC)によりさらに特性化される。
【0051】
上記記載の塩酸塩結晶形A、これは、3327、2926、1707、1668、1616、および700 cm-1;さらに詳しくは、4047、3971、3327、2926、2758、2712、2621、2523、2490、2401、2120、1952、1898、1707、1668、1616、1460、1385、1358、1306、1250、1223、1119、1061、1051、990、953、912、745、700、631、561、および494 cm-1(ここで、各ピークは+/- 2 cm-1の誤差範囲を有する)で吸光度帯域を示す赤外線(IR)スペクトル(KBr)によりさらに特性化される。
【0052】
本発明のさらなる一面として、本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aを薬剤として使用することを提供する。
【0053】
本発明のさらなる一面として、モチリン受容体活性によって媒介される任意の疾患、特に1)胃腸障害、2)モチリン受容体発現領域を特徴とする疾患、および3)モチリン分泌の欠如が関与する疾患に対して、治癒的、予防的、または緩和的治療のための薬剤の製造における、本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの使用を提供する。
【0054】
病態は、胃食道逆流症;機能性胃腸症;過敏性腸症候群;便秘症;偽性腸閉塞;術後または他の処置後の麻痺性イレウス;嘔吐;糖尿病などの種々の疾患および/または薬物の投与、または経腸栄養療法を受けている患者において引き起こされる胃内容うっ滞もしくは胃運動低下;クローン病;結腸炎;がんなどの進行性疾患および/またはその治療に伴う悪液質;ならびに失禁のような他の障害からなる群から選択することができる。
【0055】
本発明の他の一面として、モチリン受容体活性によって媒介される任意の疾患の治療、特に胃食道逆流症;機能性胃腸症;過敏性腸症候群;便秘症;偽性腸閉塞;術後または他の処置後の麻痺性イレウス;嘔吐;糖尿病などの種々の疾患および/または薬物の投与、または経腸栄養療法を受けている患者において引き起こされる胃内容うっ滞もしくは胃運動低下;クローン病;結腸炎;がんなどの進行性疾患および/またはその治療に伴う悪液質;ならびに失禁のような他の障害の治癒的、予防的または緩和的治療のための方法であって、そのような治療を必要とするヒトを含む動物への治療有効量の本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aおよび/または塩酸塩結晶形Bの投与を含む方法を提供する。
【0056】
本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aは、モチリン受容体活性によって媒介される病態の一般的な治療に有用である。
【0057】
本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aおよび/または塩酸塩結晶形Bは、胃食道逆流症;機能性胃腸症;過敏性腸症候群;便秘症;偽性腸閉塞;術後または他の処置後の麻痺性イレウス;嘔吐;糖尿病などの種々の疾患および/または薬物の投与、または経腸栄養療法を受けている患者において引き起こされる胃内容うっ滞もしくは胃運動低下;クローン病;結腸炎;がんなどの進行性疾患および/またはその治療に伴う悪液質;ならびに失禁のような他の障害からなる群から選択される障害または病態の治療にも有用でありうる。
【0058】
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの調製のための合成経路は、WO2010/098145および下記の実験の部に記載する。
【0059】
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aは、塩酸を含んだジエチルエーテルやMTBE(t-ブチルメチルエーテル)などのエーテルを添加することにより、酢酸エチルなどの有機溶媒中の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの溶液から結晶化することによって調製することができる。
【0060】
塩酸塩結晶形の結晶化のために使用できる有機溶媒としては、酢酸エチルやテトラヒドロフランなどのカルボン酸エステルが挙げられる。
酢酸エチルと混合できる好ましい溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドから選ばれる1種または2種以上の溶媒が挙げられる。
【0061】
本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aおよび/または塩酸塩結晶形Bは、単独で、または1つもしくは複数のその他の薬物と組み合わせて(またはその任意の組合せとして)投与することができる。一般に、それらは、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を伴った製剤として投与される。「賦形剤」という用語は、本明細書中では、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために用いられる。賦形剤の選択は、大部分は、特定の投与方法、溶解性および安定性に及ぼす賦形剤の作用、ならびに剤形の性質といった因子に依存している。
【0062】
したがって本発明のさらなる態様として、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形および1つまたは複数の適切な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。その組成物は、モチリン受容体活性によって媒介される病態の治療に適している。
【0063】
本明細書で使用される「塩酸塩結晶形」という用語は、塩酸塩結晶形Aおよび/または塩酸塩結晶形Bを含む。
【0064】
本発明の(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形Aの重量純度は、限定されるものではないが、好ましくは、本質的に純粋な結晶形を本発明の具体的実施態様で用いることができる。
【0065】
疑念を避けるために、「本質的に純粋な」という表現は、本明細書中で用いる場合、少なくとも90重量%純度を意味する。より好ましくは、「本質的に純粋な」とは、少なくとも95重量%純度を意味し、最も好ましくは、少なくとも98重量%純度を意味する。
「治療」に対する本明細書中での言及は、治癒的、緩和的および予防的治療への言及を含む。
本明細書で使用される場合、冠詞「a」または「an」は、別段の指示がない限り、それが指す対象の単数形と複数形の両方を指す。
【0066】
本明細書で使用される「動物」という用語は、ほ乳類または非ほ乳類を含む。適切なほ乳類の例としては、ヒト、げっ歯動物、伴侶動物、家畜、および霊長類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切なげっ歯類としては、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な伴侶動物としては、ネコ、イヌ、ウサギ、フェレットが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な家畜としては、馬、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ラマ、アルパカが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な霊長類としては、チンパンジー、キツネザル、アカゲザル、マーモセット、クモザル、リスザル、ベルベットモンキーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な非ほ乳類の例としては、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類が挙げられる。鳥類の例としては、限定されないが、鶏、七面鳥、アヒル、そしてガチョウなどが挙げられる。好ましいほ乳類はヒトである。
非ヒト動物投与に関しては、本明細書中で使用される「医薬、薬学的(pharmaceutical)」という用語は、「獣医学的(veterinary)」に置き換えることができる。
【0067】
本発明の塩酸塩結晶形の送達に適した医薬組成物、およびそれらの調製方法は、当業者には容易に明らかであろう。このような組成物およびそれらの調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition(Mack Publishing Company, 1995);Rolf HilfikerによるPolymorphism: In the Pharmaceutical Industry (John Wiley & Sons, 2006)に見出すことができる。
【0068】
経口投与
本発明の塩酸塩結晶形は、経口的に投与することができる。経口投与には、化合物が胃腸管に入るような嚥下、および/または化合物が口から直接、血流に入る頬側、舌面、もしくは舌下投与を含んでもよい。
【0069】
経口投与に適した製剤としては、錠剤などの固体、半固体、および液体系であり;マルチ-もしくはナノ-粒子、液体または粉末を含有する軟質または硬質カプセル;トローチ剤(lozenges;例えば、液体充填を含む);チューイング剤;ゲル剤;急速分散剤形;フィルム剤;オブルス(ovules)剤;スプレー剤;および頬側または粘膜粘着パッチ剤などが挙げられる。
【0070】
液体製剤としては、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。このような製剤は、軟質または硬質カプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)中の充填剤として用いられ、典型的には担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切な油、ならびに1つまたは複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含んでもよい。液体製剤は、固体、例えばサシェ(sachet)からの再構成によっても調製できる。
【0071】
本発明の塩酸塩結晶形はまた、例えば、LiangおよびChen、Expert Opinion in Therapeutic Patents, 11 (6), 981-986 (2001)に記載されたものなど、急速溶解性、急速崩壊性の剤形にも用いることができる。
【0072】
錠剤剤形に関しては、用量に応じて、薬物は、剤形の1重量%~80重量%、より典型的には剤形の5重量%~60重量%を構成しうる。薬物に加えて、錠剤は一般に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。一般に崩壊剤は、剤形の1重量%~25重量%、好ましくは、5重量%~20重量%を構成する。
【0073】
結合剤は一般に、錠剤の製剤に粘着性を付与するために用いられる。適切な結合剤としては、微結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、例えば、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥した一水和物、および無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン、および二塩基性リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含んでもよい。
錠剤はまた、場合により、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤、ならびに、例えば、二酸化ケイ素およびタルクなどの流動促進剤を含んでもよい。もし存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%~5重量%に含有され、流動促進剤は錠剤の0.2重量%~1重量%に含有されてもよい。
【0074】
錠剤は一般に、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物などの滑沢剤も含有する。滑沢剤は一般に、錠剤の0.25重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%を構成する。
その他の可能な成分としては、酸化防止剤、着色剤、風味剤、防腐剤、および矯味剤(taste-masking agents)などが挙げられる。
例示的な錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%~約90重量%の結合剤、約0重量%~約85重量%の希釈剤、約2重量%~約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%~約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0075】
錠剤配合物は、直接的にまたはローラーにより圧縮して、錠剤を形成することができる。代替的には、錠剤配合物または配合物の一部分は、錠剤成形前に、湿式、乾式もしくは溶融造粒され、溶融凝固され、または押し出されてもよい。最終製剤は1つまたは複数の層を含んでもよく、コーティングされることもあれば、コーティングされないこともある;それはさらに、カプセルに封入されてもよい。
【0076】
錠剤の製剤は、H. LiebermanおよびL. Lachman、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1 (Marcel Dekker, New York, 1989);Larry L. AugsburgerおよびHoag W. Stephen、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Third Edition, Volume 2: Rational Design and Formulation (Informa Healthcare, 2008年6月出版)で議論されている。
【0077】
ヒトまたは獣医学的使用のための一般用経口フィルム製剤(consumable oral films)は、典型的には柔軟性のある水溶性または水膨潤性の薄膜剤形であり、これは迅速溶解性または粘膜粘着性であってもよいし、典型的には本発明にかかる塩酸塩結晶形、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、保湿剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度改質剤および溶媒を含んでもよい。製剤のいくつかの構成成分は、1つの機能より多くを実現することができる。
【0078】
本発明の塩酸塩結晶形の製剤は、環境状況に応じて水溶性または水不溶性であってもよい。水溶性化合物は、典型的には1重量%~80重量%、さらに典型的には20重量%~50重量%の溶質を含んでもよい。溶解性の低い化合物は、組成物のより大きい割合、すなわち典型的には88重量%までの溶質を含んでもよい。別の方法として、本発明の塩酸塩結晶形は、多粒子ビーズの形態であってもよい。
【0079】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖、タンパク質、または合成親水コロイドから選択することができるが、典型的には0.01~99重量%の範囲で、さらに典型的には30~80重量%の範囲で存在する。
【0080】
その他の考えうる成分としては、酸化防止剤、着色剤、風味剤および風味増強剤、防腐剤、唾液分泌刺激剤、冷却剤、補助溶媒(例えば、油を含む)、皮膚軟化剤、膨化剤、消泡剤、界面活性剤および矯味剤などが挙げられる。
【0081】
本発明にかかるフィルムは、典型的には、剥脱可能な裏張り支持体または紙上にコーティングした水性薄膜の蒸発乾燥により調製する。
【0082】
これは、乾燥オーブンまたは横穴(tunnel)、典型的には複合コーティング乾燥機(a combined coater dryer)中で、あるいは凍結乾燥または真空処理により実行できる。
【0083】
経口投与のための固体製剤は、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出およびプログラム化放出などが挙げられる。
【0084】
本発明の目的のための適切な放出調節製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。その他の適切な放出技法、例えば、高エネルギー分散、浸透性粒子、およびコーティングした粒子の詳細は、Vermaら、Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14, (2001)に見出される。制御放出を達成するためのチューイングガムの使用は、WO00/35298に記載されている。
【0085】
非経口投与
本発明の塩酸塩結晶形はまた、血流中、筋肉中、または内部器官中に直接投与することができる。非経口投与のための適切な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内および皮下が挙げられる。非経口投与のための適切な用具としては、針(例えば、微小針を含む)注射器、無針注射器および注入技法が挙げられる。
【0086】
非経口製剤は、典型的には、賦形剤、例えば、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくはpH 3~9である)を含有してもよい水溶液であるが、いくつかの用途のためには、それらは、滅菌非水性溶液として、または適切なベヒクル、例えば、滅菌水、発熱物質除去水とともに用いられるための乾燥形態としてより適切に製剤化することができる。
【0087】
例えば、凍結乾燥による滅菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準の薬学的技術を用いて容易に成し遂げられる。
【0088】
非経口投与のための製剤は、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出およびプログラム化放出などが挙げられる。したがって本発明の塩酸塩結晶形は、懸濁液として、あるいは活性化合物の調節放出を提供する埋め込みデポー剤として投与するための固体、半固体または揺変性(thixotropic)液体として製剤化することができる。このような製剤の例としては、薬物でコーティングしたステントおよび薬物充填ポリ(乳酸‐コ‐グリコール酸)(PLGA)微小球を含む半固体および懸濁液などが挙げられる。
【0089】
局所投与
本発明の塩酸塩結晶形はまた、局所的、皮膚(皮膚内)的、または経皮的に、皮膚または粘膜に投与することができる。この目的のための典型的な製剤としては、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤、汗取りパウダー剤、仕上げ剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウエハース剤、インプラント剤、スポンジ、繊維、包帯およびマイクロエマルジョン剤が挙げられる。リポソームも用いることができる。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤も組入れることができる(例えば、FinninおよびMorgan、J Pharm Sci, 88 (10), 955-958 (October 1999)参照)。
【0090】
局所投与のその他の手段としては、電気穿孔、イオン導入法、音波導入法(phonophoresis)、超音波導入法(sonophoresis)および顕微針または無針注射(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)による送達が挙げられる。局所投与は、パッチ、例えば、経皮イオン導入パッチを用いても達成することができる。
【0091】
局所投与のための製剤は、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出およびプログラム化放出が挙げられる。
【0092】
本発明の塩酸塩結晶形は、典型的には乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末(単独で、例えば、ラクトースとの乾燥配合物中で混合物として、または例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合された混合構成成分粒子として)の形態で、1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射推進剤(propellant)の使用を伴って、または伴わずに、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(atomizer)(好ましくは微細霧を生成するために電気流体力学を用いた噴霧器)または吸入器(nebulizer)からのエアロゾルスプレーとして、あるいは点鼻薬として、鼻内に、または吸入によっても投与することができる。鼻内使用のために、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含んでもよい。
【0093】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、または吸入器は、有効成分、溶媒としての噴射推進剤、および任意の界面活性剤、例えば、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸またはオリゴ乳酸の分散、可溶化または放出延長のために、例えば、エタノール、水性エタノール、または適切な代替物質を含む本発明にかかる塩酸塩結晶形の溶液または懸濁液を含有する。
【0094】
乾燥粉末または懸濁液製剤中で用いる前に、薬物製品を吸入による送達に適したサイズ(典型的には5ミクロン未満)に微粉状にする。これは、任意の適切な微粉砕方法、例えば、渦巻きジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を生成するための超臨界流体処理、高圧均質化、または噴霧乾燥により達成することができる。
【0095】
吸入器または吹付け器中で用いるためのカプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製される)、ブリスターおよびカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤、およびL-ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムなどの性能改質剤の粉末混合物を含有するように製剤化することができる。ラクトースは、無水であるか、または一水和物の形態であってもよいが、好ましくは後者である。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースが挙げられる。
【0096】
微細霧を生成するために電気流体力学を用いた噴霧器中で用いるための適切な溶液製剤は、一動作当たり1 μg~20 mgの本発明の化合物を含有してもよく、動作容積は1 μL~100 μLまで変わりうる。典型的製剤は、本発明にかかる塩酸塩結晶形、プロピレングリコール、滅菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含んでもよい。プロピレングリコールの代わりに用いうる代替溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0097】
メタノールおよびレボメタノールなどの適切な香味剤、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味剤を、吸入/鼻腔内投与を意図した本発明の製剤に添加することができる。
【0098】
吸入/鼻内投与のための製剤は、例えば、PLGAを用いて、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出およびプログラム化放出が挙げられる。
【0099】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合、投与量単位は、計測量を送達する弁により決定する。本発明にかかる単位は、典型的には1 μg~20 mgの(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形を含有する計測用量または「パフ」を投与するよう調整する。総1日用量は、典型的には1 μg~100 mgの範囲であり、これは1回用量で、またはより通常では、1日を通して分割用量として投与することができる。
【0100】
直腸/膣内投与
本発明の塩酸塩結晶形は、直腸にまたは膣に、例えば坐剤、膣坐剤(pessary)、または浣腸剤の形態で投与することができる。カカオバターは伝統的な座剤基剤であるが、様々な代替物を適宜使用することができる。
【0101】
直腸/膣投与のための製剤は、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出、およびプログラム化放出が挙げられる。
【0102】
眼/耳投与
本発明の塩酸塩結晶形はまた、典型的には、等張性pH調整滅菌生理食塩水中の微粒化懸濁液または溶液の滴剤の形態で、眼または耳に直接投与することができる。眼および耳投与に適した他の製剤には、軟膏剤、ゲル剤、生分解性(例えば、吸収性ゲル、スポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント剤、ウエハース剤、レンズ剤、およびニオソームもしくはリポソームなどの微粒子または小胞状系が挙げられる。ポリマー、例えば、架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはメチルセルロース、あるいはヘテロ多糖ポリマー、例えば、ゲランゴムを、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤と一緒に組み込むことができる。このような製剤も、イオン泳動法により送達することができる。
【0103】
眼/耳投与のための製剤は、即時および/または調節放出するよう製剤化することができる。放出調節製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出およびプログラム化放出が挙げられる。
【0104】
その他の技法
本発明の塩酸塩結晶形は、上記の投与方式のいずれかに用いるために、それらの溶解性、溶解速度、矯味性、生物学的利用能および/または安定性を改良するために、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体、またはポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性高分子物質と組み合わすことができる。
例えば、薬物-シクロデキストリン複合体は、ほとんどの剤形および投与経路のために一般に有用であることが判明している。包接および非包接複合体の両方を用いることができる。薬物との直接複合体生成に代わるものとして、シクロデキストリンを補助添加物として、すなわち担体、希釈剤または可溶化剤として用いることができる。これらの目的のために最も一般的に用いられるのは、アルファ-、ベータ-およびガンマ-シクロデキストリンであり、その実例は、WO91/11172、WO94/02518、WO98/55148およびEvrard, B.ら, Journal of Controlled Release 96 (3), pp. 403-410, 2004に見出すことができる。
【0105】
投与量
モチリン受容体活性によって媒介される病態を治療または予防するために、本発明の塩酸塩結晶形の適切な投与量レベルは、活性化合物として1日あたり約0.0001~1000 mg、好ましくは1日あたり約0.001~100 mg、より好ましくは1日あたり約0.005~50 mg、最も好ましくは1日あたり1~50 mgである。本化合物は、1日1~4回の投与計画で投与することができる。しかし、いくつかのケースでは、これらの制限外の用量を使用することもできる。
【0106】
これらの投与量は、約60 kg~70 kgの体重を有する平均ヒト被験者を基礎にしている。医師は、その体重がこの範囲外である被験者、例えば、幼児および高齢者に関する用量を容易に決定することができる。疑念を避けるために、「治療」に対する本明細書中での言及は、治癒的、緩和的および予防的治療への言及を含んでいる。
【0107】
本発明の塩酸塩結晶形はまた、特にモチリン受容体活性によって媒介される病態の治療のために、もう1つの薬理学的活性化合物と、あるいは2つまたはそれ以上のその他の薬理学的活性化合物と、任意に組み合わすことができる。例えば、上記のような本発明の塩酸塩結晶形は、以下のものから選択される1つまたは複数の作用物質と組み合わせて、同時的に、逐次的にまたは別個に投与することができる;
【0108】
・オピオイド鎮痛薬、例えば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、またはペンタゾシン;
【0109】
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチン、またはゾメピラク;
【0110】
・バルビツール酸系鎮静薬、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、またはチオペンタール;
【0111】
・鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、またはトリアゾラム;
【0112】
・鎮静作用を有するH1拮抗薬、例えば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、またはクロルシクリジン;
【0113】
・鎮静薬、例えばグルテチミド、メプロバメート、メタカロン、またはジクロラルフェナゾン;
【0114】
・骨格筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、またはオルフェナドリン;
【0115】
・NMDA受容体拮抗薬、例えば、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、またはその代謝物であるデキストロルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニン、シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN-3231(MorphiDex(登録商標):モルヒネとデキストロメトルファンとの配合製剤)、トピラマート、ネラメキサン、またはNR2B拮抗薬を含むペルジンホテル、例えば、イフェンプロジル、トラキソプロジル、または(-)-(R)-6-{2-[4-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシエチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン;
【0116】
・アルファアドレナリン作動薬、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デキスメデトミジン、モダフィニル、または4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン;
【0117】
・三環系抗うつ薬、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリン;
【0118】
・抗けいれん薬、例えば、カルバマゼピン、ラモトリギン、トピラマート、またはバルプロ酸塩;
【0119】
・タキキニン(NK)拮抗薬、具体的には、NK-3、NK-2、またはNK-1拮抗薬、例えば(αR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6,13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(MK-869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタント、または3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S);
【0120】
・ムスカリン拮抗薬、例えば、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリン、およびイプラトロピウム;
【0121】
・COX-2選択的阻害薬、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、またはルミラコキシブ;
【0122】
・コールタール鎮痛薬、具体的には、パラセタモール;
【0123】
・神経弛緩薬、例えば、ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドレ、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバント、メクリネルタント、ミラキソン(Miraxion)(登録商標)、またはサリゾタン;
【0124】
・バニロイド受容体作動薬(例えば、レシニフェラトキシン)または拮抗薬(例えば、カプサゼピン);
【0125】
・一過性受容体電位陽イオンチャネルのサブタイプ(V1、V2、V3、V4、M8、A1)作動薬または拮抗薬;
【0126】
・β-アドレナリン作動薬、例えば、プロプラノロール;
【0127】
・局所麻酔薬、例えば、メキシレチン;
【0128】
・コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン;
【0129】
・5-HT受容体作動薬または拮抗薬、特に、5-HT1B/1D作動薬、例えば、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、またはリザトリプタン;
【0130】
・5-HT2A受容体拮抗薬、例えば、R(+)-α-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907);
【0131】
・コリン作動薬(ニコチン)鎮痛薬、例えば、イスプロニクリン(TC-1734)、(E)-N-メチル-4-(3-ピリジニル)-3-ブテン-1-アミン(RJR-2403)、(R)-5-(2-アゼチジニルメトキシ)-2-クロロピリジン(ABT-594)、またはニコチン;
【0132】
・トラマドール(Tramadol)(登録商標);
【0133】
・PDEV阻害薬、例えば、5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニル-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン(シルデナフィル)、(6R,12aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-ピラジノ[2’,1’:6,1]-ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(IC-351またはタダラフィル)、2-[2-エトキシ-5-(4-エチル-ピペラジン-1-イル-1-スルホニル)-フェニル]-5-メチル-7
-プロピル-3H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン(バルデナフィル)、5-(5-アセチル-2-ブトキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-エチル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-(5-アセチル-2-プロポキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-イソプロピル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-[2-エトキシ-5-(4-エチルピペラジン-1-イルスルホニル)ピリジン-3-イル]-3-エチル-2-[2-メトキシエチル]-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、4-[(3-クロロ-4-メトキシベンジル)アミノ]-2-[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]-N-(ピリミジン-2-イルメチル)ピリミジン-5-カルボキサミド、3-(1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-N-[2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミド;
【0134】
・α-2-δリガンド、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、3-メチルガバペンチン、(1α,3α,5α)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプト-3-イル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-オクタン酸、(2S,4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S,4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R,5R,6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S,4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチル-オクタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ノナン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-オクタン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸、および(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸;
【0135】
・カンナビノイド;
【0136】
・代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)拮抗薬;
【0137】
・セロトニン再取り込み阻害薬、例えば、セルトラリン、セルトラリンの代謝物であるデメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンのデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラムの代謝物であるデスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l-フェンフルラミン、フェモキセチン、イホキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン、およびトラゾドン;
【0138】
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害薬、例えば、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロピオン、ブプロピオンの代謝物であるヒドロキシブプロピオン、ノミフェンシン、およびビロキサジン(Vivalan(登録商標))、特に、レボキセチンなどの選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、具体的には、(S,S)-レボキセチン;
【0139】
・デュアルセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、例えば、ベンラファキシン、ベンラファキシンの代謝物であるO-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミンの代謝物であるデスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプラン、およびイミプラミン;
【0140】
・誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害薬、例えば、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)-ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル;2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィド;
【0141】
・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジル;
【0142】
・プロスタグランジンE2サブタイプ4(EP4)拮抗薬、例えば、N-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミド、または4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸;
【0143】
・ロイコトリエンB4拮抗薬、例えば、1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸(CP-105696)、5-[2-(2-カルボキシエチル)-3-[6-(4-メトキシフェニル)-5E-ヘキセニル]オキシフェノキシ]-吉草酸(ONO-4057)、またはDPC-11870;
【0144】
・5-リポキシゲナーゼ阻害薬、例えばジリュートン(zileuton)、6-[(3-フルオロ-5-[4-メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル])フェノキシ-メチル]-1-メチル-2-キノロン(ZD-2138)、または2,3,5-トリメチル-6-(3-ピリジルメチル)-1,4-ベンゾキノン(CV-6504);
【0145】
・ナトリウムチャネル遮断薬、例えば、リドカイン;
【0146】
・カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ジコノチド(ziconotide)、ゾニサミド、ミベフラジル;
【0147】
・5-HT3拮抗薬、例えば、オンダンセトロン;
・化学療法薬、例えば、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、パクリタキセル;
・カルシトニン遺伝子関連タンパク(CGRP)拮抗薬;
・ブラジキニン(BK1およびBK2)拮抗薬;
・電圧依存性ナトリウム依存性チャネル遮断薬(Nav1.3, Nav1.7, Nav1.8);
・電圧依存性カルシウムチャネル遮断薬(N-型, T-型);
・P2X(イオンチャネル型ATP受容体)拮抗薬;
・酸感受性イオンチャネル(ASIC1a、ASIC3)拮抗薬;
・アンジオテンシンAT2拮抗薬;
・ケモカインCCR2B受容体拮抗薬;
・カテプシン(B、S、K)阻害剤;
・シグマ1(σ-1)受容体作動薬または拮抗薬;
【0148】
ならびに、薬学的に許容されるこれらの塩および溶媒和物。
【0149】
このような併用により、治療において相乗効果を含む優れた効果を発揮する。
【0150】
併用薬およびキット:
本発明の一実施態様は、本発明の塩酸塩結晶形および本発明の塩酸塩結晶形とは異なる疾患用薬の併用である。
本発明の「併用」は、「固定の併用(fix combination)」または「パーツの併用キット(kit of parts combination)」として存在することができる。「固定の併用」は、(i)少なくとも1つの本発明の塩酸塩結晶形とは異なる疾患用薬;および(ii)塩酸塩結晶形が1つの単位中に存在する併用として定義される。「パーツの併用キット」は、(i)少なくとも1つの本発明の塩酸塩結晶形とは異なる疾患用薬;および(ii)塩酸塩結晶形が複数の単位中に存在する併用として定義される。「パーツの併用キット」の成分は、同時に、順次に、または別々に投与することができる。本発明にしたがって使用される本発明の塩酸塩結晶形とは異なる疾患用薬に対する塩酸塩結晶形のモル比は、1:100~100:1まで、例えば、1:50~50:1まで、または1:20~20:1まで、または1:10~10:1までの範囲内にある。2つの薬物は、同じ比率で別々に投与することができる。
【0151】
本発明は、モチリン受容体活性によって媒介される病態に対して、治癒的、予防的または緩和的治療における、同時的、分離的または逐次的使用のための、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形、および1つまたは複数の治療薬(例えば、上記のもの)を含む併用に及ぶ。
【0152】
実施例
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。次の実施例は参考のためのみである。
【0153】
分析
【0154】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、Cu-Kα放射線を使用するRiraku RINT-TTRまたはRiraku MiniFlex600 X線粉末回折装置を使用して実行する。可変温度試料ホルダーの付属物(attachment)を使用することで、高温/低温条件下での試料の測定も可能である。この装置には高精度焦点X線管が装備されている。
管電圧とアンペア数は、50 kVおよび300 mA(RINT-TTR)または40 kVおよび15 mA(MiniFlex600)に設定する。発散スリット、散乱スリット、および受光スリットは、それぞれ0.5o、0.5o、および0.15 mm(RINT-TTR)、または1.25o、13.0 mm(開放(Open))、および13.0 mm(開放(Open))(MiniFlex600)に設定する。回折放射線は、NaIシンチレーション検出器(RINT-TTR)またはD/teX Ultra(MiniFlex600)によって検出する。3~40(o)2-シータまで4o/分(RINT-TTR)または20o/分(MiniFlex600)でのシータ-2シータ連続走査を使用する。シリコン標準を分析して、機械のアライメント(alignment)をチェックする。データはRigaku X線システムを使用して収集し、分析する。試料は、データ取得中に回転するアルミニウム製試料ホルダーに置き、分析用に調整する。
【0155】
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)
TG/DTAはセイコー(Seiko)6200Rシステムを使用して行う。試料をアルミニウムTG/DTAパンに置く。各試料を窒素パージ下、300℃の最終温度まで5℃/分の速度で加熱する。金属インジウムを校正標準として使用する。記載されている数値は丸めたものであり、概算値と考えられたい。
【0156】
示差走査熱量測定(DSC)
メトラートレド(Mettler Toledo)DSC822を用いて、示差走査熱量測定(DSC)を実施する。試料をアルミニウムDSCパン中に入れて、重量を正確に記録する。パンは、ピンホールを有する蓋を被せ、そして次に蓋をしめる。各試料を窒素パージ下で280℃の最終温度まで、5℃/分の速度で加熱する。金属インジウムを校正標準として用いる。記載されている数値は丸めたものであり、概算値と考えられたい。
【0157】
FT-IR分光法
赤外スペクトルは、空冷高エネルギーセラミック光源、中赤外ビームスプリッター用のゲルマニウムでコーティングした臭化カリウム(KBr)プレート、および高感度焦電型赤外線検出器(DLATGS)を備えた島津IRPrestage-21(FT-IR)分光光度計で取得する。測定には拡散反射アクセサリDRS-8000を使用した拡散反射法を使用する。試料粉末は、直径6 mm、深さ1.5 mmの試料プレート上で少量のKBr粉末と混合する。各スペクトルは、4 cm-1のスペクトル分解能で収集された40回の追加スキャンを表す。KBr粉末を充填してバックグラウンドデータセットを取得する。波長の校正はポリスチレンを使用して実行する。記載されている数値は丸めたものであり、概算値と考えられたい。
【0158】
動的蒸気収着分析(DVS)による吸湿性試験
吸湿性試験は、表面測定システムDVS-1を用いて行う。試料は装置内の微量天秤に置き、25℃における吸着中の重量変化をモニターする。プログラムの1つは、相対湿度(RH)0~90%まで5% RH刻みでの収着スキャンから構成され、試料は360分間か、または各工程で平衡に達するまで平衡化する。
【0159】
核磁気共鳴(NMR)
NMRデータは、特に明示しない限り、溶媒として重水素化クロロホルム(99.8%D)またはジメチルスルホキシド(99.9%D)を用いて270 MHz(JEOL JNM-LA 270分光計)、または300 MHz(JEOL JNM-LA 300分光計)で測定し、データは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して、百万分率(parts per million; ppm)で示す。使用した慣用略語は、s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=ブロードなどである。
【0160】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定
HPLCデータは、2996 PDA検出器を備えたWaters Alliance 2695 HPLCシステムによって、以下の条件を使用して得る。
カラム:XBridge Phenyl(3.5 μm、4.6×150 mm)、
溶出液:アセトニトリル/0.3%過塩素酸=35:65、
検出:215 nmにおけるUV、
流速:1 mL/分、および
カラム温度:40℃。
データ処理はWaters社から供給されるEmpower 3ソフトウェアを用いて行う。
【0161】
室温とは15~35℃を意味するが、目的が達成される限りこれに限定されるものではない。
化学記号は、M(モル/リットル)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)の通常の意味である。
【0162】
本出願を通じて、以下の略語は下記の意味で使用される:CPME(シクロペンチルメチルエーテル)、EtOAc(酢酸エチル)、EtOH(エタノール)、MeCN(アセトニトリル)、MEK(メチルエチルケトン)、MeOH(メタノール)、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)、MTBE(t-ブチルメチルエーテル)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)。
【0163】
他の試験のために、本発明の結晶形は、偏光顕微鏡法(PLM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、ホットステージ光学顕微鏡法、電子結晶学、単結晶X線回折法、定量分析、粒度分析(PSA)(例えば、粒子径、粒子径分布(PSD)、および粒子形状)、比表面積(SSA)分析、表面エネルギー分析(例えば、逆ガスクロマトグラフィーまたはIGC)、溶解試験、またはこれらの技術の組み合わせによって区別することができる。
【0164】
実施例1
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドの調製]
この化合物は、WO2010/098145の実施例1に記載されている従来のプロセスに従って合成される。
【0165】
実施例2
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の非晶質固体(HCl塩非晶質)の調製]
実施例1の方法に従って得た(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド(50 mg, 97 μmol)を酢酸エチル(0.75 mL)に溶解し、これに酢酸エチル中の4N塩酸(32 μL, 126 μmol)を加える。混合物にt-ブチルメチルエーテル(2.0 mL)を加えた後、沈殿した固体を吸引して集め、塩酸塩を白色粉末として得る(46 mg, 83 μmol, 収率85%)。別のバッチ(38 mg, 69 μmol)を同じ方法で調製し、合わせた白色粉末(84 mg, 152 μmol)をジクロロメタン(5 mL)に完全に溶解する。溶媒を蒸発除去した後、得られた固体を減圧下、室温で乾燥し、塩酸塩の非晶質固体(73 mg, 132 μmol, 回収率87%)を得る。
【0166】
実施例3
[R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(HCl塩結晶形A)の調製]
調製法1:
酢酸エチル中の4N-HCl(2.25 mL, 8.9 mmol)を、実施例1の方法に従って得られた(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド(3.83 g, 7.41 mmol)を酢酸エチル(30 mL)に0℃で溶解し、揮発成分を真空中で除去して、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩をガム状物として得る。ガム状物を加熱しながら酢酸エチル(60 mL)に溶解した後、混合物を室温まで冷却し、無色の懸濁固体を得る。混合物を窒素下40℃で一晩撹拌し、ヨーグルト状物を得る。揮発成分を真空中で除去し、無色の固体(4.04 g, 7.30 mmol)を塩酸塩部分結晶として得る。
塩酸塩部分結晶(186 mg)の2%含水テトラヒドロフラン(5 mL)に酢酸エチル(5 mL)を加え、上記の塩酸塩部分結晶の固体を種結晶の役割として加える。混合物を室温で約5分間穏やかに撹拌し、次いで混合物を60℃で一晩撹拌する。沈殿物をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、50℃で真空乾燥し、固形物(175 mg)を塩酸塩結晶形Aとして得る。
【0167】
本明細書では、記号「α」、「θ」、「δ」および「ν」を「アルファ」、「シータ」、「デルタ」および「ニュウ」と表記することがある。
【0168】
1H-NMR (CDCl3)デルタ:9.81-9.47 (1H, br)、7.55 (1H, dd, J=8.1, 3.6Hz)、7.30-7.14 (5H, m)、7.07-6.85 (3H, m)、4.92-4.83 (1H, m)、4.78-4.69 (1H, m)、4.47-4.26 (1H, m)、3.95-3.82 (1H, m)、3.72-3.57 (1H, m)、3.51-3.41 (1H, m)、3.18-2.55 (7H, m)、2.46-1.58 (10H, m)、1.35 (3H, s)、1.33 (3H, s).
MS (ESI) m/z: 517 (M+H)+.
【0169】
XRPDによる結晶化度:塩酸塩結晶形A(図1)。2-シータ4.0、7.9、14.7、17.5、および22.3(o)の主要ピーク。さらに詳細には、2-シータ4.0、7.9、13.6、14.7、15.7、16.7、17.5、22.3、25.5、27.1、および31.7(o)。各ピークには +/- 0.2(o)の誤差がある。
【0170】
融点 (DSC開始):(図2)。吸熱ピークは、開始温度が254℃、ピーク温度が257℃であることを示す。各温度には+/- 1℃の誤差がある。
【0171】
IR (KBr):(図3)。3327、2926、1707、1668、1616、および700 cm-1に吸収バンド;さらに詳細には、4047、3971、3327、2926、2758、2712、2621、2523、2490、2401、2120、1952、1898、1707、1668、1616、1460、1385、1358、1306、1250、1223、1119、1061、1051、990、953、912、745、700、631、561、および494 cm-1に吸収バンド。各ピークには +/- 2cm-1の誤差がある。
【0172】
元素分析、C31H41ClN4O3に対する計算値:C, 67.3; H, 7.5; Cl, 6.4; N, 10.1。実測値:C, 66.8; H, 7.5; Cl, 6.4; N, 10.0。
【0173】
実施例4
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(HCl塩結晶形A)の調製]
調製法2:
実施例2の方法に従って得られた(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の非晶質固体(HCl塩非晶質)(40.5 g, 73.1 mmol)を2%含水テトラヒドロフラン(102 mL)に少しずつ加え、さらに2%含水テトラヒドロフラン(204 mL)を加え、60℃で透明な溶液を得る。酢酸エチル(400 mL)を溶液に加え、得られた混合物を60℃で5分間撹拌する。
種結晶(実施例3の調製法1で調製した塩酸塩結晶形A(20mg))を混合物に加えた後、50℃で1時間、次いで40℃で1時間、室温で一晩撹拌する。沈殿物をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、真空オーブンで50℃で6時間乾燥して、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(37.7 g, 68.2 mmol, 回収率93%)を固体として得る。
したがって、薬学的に許容される塩として実用的な塩酸塩結晶形Aを得るには、実施例4に記載した手順が好ましい。この手順は、上記の例で使用した溶媒だけでなく、MTBE、ジオキサン中の塩酸溶液、水/EtOH、または他の溶媒でも実行できる。
XRPD、融点(DSC開始)およびIR(KBr)において、実施例3の調製法1に記載したものと同じシグナルが観察される。
【0174】
実施例5
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形A(HCl塩結晶形A)の調製]
大型スケール(1 kgスケール):
1.2 kgの塩酸塩結晶形Aは、酢酸エチル中、70℃で加熱し、濃塩酸(217 mL、1.04当量)を用いて、WO2010/098145の実施例1に記載の従来法に従って得られた(R)-tert-ブチル3-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イルカルバモイル)ピペリジン-1-カルボン酸塩(1.5 kg、2.5 mol)から調製する。
【0175】
実施例6
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B(HCl塩結晶形B)の調製]
実施例1の方法に従って得られた(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド(9.8 g、18 mmol)をTHF(250 mL、25 vol)および脱イオン水(1 mL)中で60℃に加熱し、固体が完全に溶解するまでさらに脱イオン水(3.2 mL)を少しずつ添加する。酢酸エチル(150 mL、15 vol)を60℃で30分かけて滴下する。約50mLの酢酸エチルの添加後、白色の固体が現れる。混合物を60℃で17時間撹拌した後、30分ごとに5℃の速度で室温まで冷却し、5℃で1時間撹拌する。固体をろ過し、無水酢酸エチル(2 x 10 mL)で洗浄し、真空オーブン中、50℃で3時間乾燥して、(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩結晶形B(5.8 g, 10 mmol, 回収率59%)を固体として得る。
【0176】
XRPDによる結晶化度:塩酸塩結晶形B(図4)。2-シータ4.0、7.9、15.7、17.9、19.8、および21.6(o)の主要ピーク。さらに詳細には、2-シータ4.0、7.9、15.7、17.9、19.8、21.6、25.5、および31.7(o)。各ピークには+/- 0.2(o)の誤差がある。
融点(DSC開始):(図5)。吸熱ピークは、開始温度が258℃、ピーク温度が260℃であることを示す。各温度には+/- 1℃の誤差がある。
【0177】
IR (KBr):(図6)。3327、2926、1707、1670、1616、および700 cm-1に吸収バンド;さらに詳細には、4049、3971、3327、2926、2758、2712、2621、2523、2490、2401、2120、1952、1898、1707、1670、1616、1458、1385、1356、1306、1254、1221、1117、1059、989、955、910、750、700、631、563、544、519、および494 cm-1に吸収バンド。各ピークには+/- 2cm-1の誤差がある。
【0178】
実施例3、4、または5の方法に従って得られた塩酸塩結晶形Aが塩酸塩結晶形Bを含有する場合、酢酸エチル中の塩酸塩結晶形Aと塩酸塩結晶形Bの懸濁液を撹拌棒を用いて室温または60℃で6日間撹拌すると、塩酸塩結晶形Bは塩酸塩結晶形Aに完全に転化し、塩酸塩結晶形Aのみが得られる。
60℃の酢酸エチルおよび/またはTHF-水-酢酸エチル(1:0.04:3)混合溶液中では、塩酸塩結晶形Aから塩酸塩結晶形Bへの顕著な変換は観察されず、5、25、および60℃でTHF-水中の塩酸塩溶液に塩酸塩結晶形Bを播種しても塩酸塩結晶形Bは現れない。
【0179】
実施例7
[吸湿性試験]
吸湿性試験は、動的蒸気収着(DVS)分析を用いて行った。以下の表1は、先行技術WO2010/098145に開示された塩酸塩結晶形A、塩酸塩結晶形B、塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質の重量増加%を示す。
塩酸塩結晶形Aおよび塩酸塩結晶形Bは、25℃、90%の相対湿度(RH)下で、それぞれ3.4重量%および8.6重量%以下の水を吸収する。一方、塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質は、25℃、90%相対湿度(RH)下で、それぞれ20.5重量%および17.9重量%の水を吸収する。したがって、塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質は、塩酸塩結晶形Aおよび結晶形Bよりもはるかに吸湿性が高いことがわかる。
【0180】
【表1】
【0181】
実施例8
[安定性試験]
ナガノサイエンス製恒温恒湿槽LH-20-11M、LH-21-11M、LTL-200D3CJ-14またはLTX-01を用いて固体安定性試験を行う。試料を恒温恒湿槽に置き、25℃/60%RH、40℃/75%RHの下に曝露し、および/またはD65ランプ、キセノンランプなどの光照射下で測定する。曝露または照射後の試料の結晶形、熱挙動、純度、および/または重量変化を、それぞれXRPD、TG/DTAまたはDSC、HPLC、微量天秤(microbalance)で評価する。
【0182】
40℃/75%RHの加速条件下での固体安定性試験において、曝露後26日目および50日目に採取した試料は、塩酸塩結晶形Aの場合、50日間保存後、初期試料(0日目)の分解物を除き、他の分解生成物は生じなかった。しかし、塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質の場合、50日間の保存で1つの生成物(保持時間9.6分)および4つの生成物(それぞれ保持時間3.7、9.6、13.1および21.3)が見られ、残存率はそれぞれ97.0%および97.2%に減少する。
塩酸塩結晶形Aは、先行技術WO2010/098145に開示された塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質と比較して安定であることがわかる。
【0183】
実施例9
[光安定性試験]
ナガノサイエンスLTL-200D3CJ-14に光安定性の試料をセットする。試料をチャンバーに入れ、25℃/60%RHの条件下で保存し、D65ランプで4000ルクスの光条件で照射した。この条件下で13日、26日、50日間保存した塩酸塩結晶形A、塩酸塩非晶質、遊離塩基非晶質試料をそれぞれHPLCで分析する。
【0184】
図7図8、および図9は、初期試料(0日(Day 0))の既存の生成物を除く分解生成物のデータ、すなわち初期試料を光照射下で保存した後にHPLCチャート上で明確に生じるピークを示す。相対保持時間(RRT)は、主要ピークの保持時間(RT)に対する標的ピークの保持時間(RT)の比を示す。13日、26日、および50日のうち少なくとも2回連続した保存期間で同じRRTにピークが出現した場合、そのピークを分解物として認識する。
図7に示すように、塩酸塩非晶質では、保存期間13日、26日、および50日において、照射光による分解生成物により、それぞれ2本、5本、および5本のピークが生じている。
図8に示すように、遊離塩基非晶質では、保存期間13日、26日、および50日において、照射光による分解生成物により、それぞれ2本、4本、および4本のピークが生じている。
図9に示すように、塩酸塩結晶形Aでは、照射光による分解生成物は生じない。
【0185】
実施例10
[溶解度試験]
各5 mgの塩酸塩結晶形Aをバイアルに秤量し、各20 μLの緩衝液(pH 1.06、2.98、4.44、7.34、7.40、9.22)およびWFI(注射用水)を前記バイアルに加えた。混合物をボルテックスミキサーで振とうし、15分間静置したが、不溶解物は観察されなかった。混合物は2日間静置した後も透明な溶液を維持した。
塩酸塩結晶形Aは、いずれの緩衝液にも良好な溶解性(>250 mg/mL)を示す。
【0186】
実施例11
[キラル分析]
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定
HPLCデータは、2996 PDA検出器を備えたWaters Alliance 2695 HPLCシステムによって、以下の条件を使用して得る。
カラム:DAICEL CHIRALPAK IC (5μm、4.6×250 mm)、
溶出液:n-ヘキサン/エタノール/ジエチルアミン=87/13/0.1(v/v/v)、
検出:254 nmにおけるUV、
流速:1 mL/分、および
カラム温度:40℃。
データ処理はWaters社から供給されるEmpower 3ソフトウェアを用いて行う。
本発明において、塩酸塩結晶形Aおよび塩酸塩結晶形Bは好ましい安定性を示し、上記の実用性を示す。
【0187】
実施例12
[静電気誘導性試験]
静電気誘導性の高い物質は、製薬技術の条件下、特に従来の工業用粗薬物の薬理学的条件下では一般に取り扱いが困難であり、また、均一含量の薬物として実現することも容易でないことを考慮すると、本発明において試験した結晶の静電気誘導性は、上記の実用性を示す好ましい結果を示す。試験は常法により行う。
【0188】
実施例13
[インビトロ薬理アッセイ]
モチリン受容体とレポーター遺伝子を発現する細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイにより、モチリン受容体作動活性を同定する。アッセイ試料の用量反応曲線をプロットおよび計算して、作動活性(EC50)を決定する。
塩酸塩結晶形Aは、初期の試料と一致する高い効力を示した。
【0189】
要約すると、塩酸塩結晶形Aおよび塩酸塩結晶形Bは吸湿性が著しく低く、塩酸塩結晶形Aは、塩酸塩非晶質および遊離塩基非晶質と比較して光による分解がより抑制されている。塩酸塩結晶形Aは保存安定性を示している。保存期間中、塩酸塩結晶形Aの外観、XRPD、IR(KBr)、融点(DSC開始)および塩酸塩結晶形Aの効力に有意な変化は観察されていない。
【0190】
参考例1
[(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩の調製のための一般的手順]:
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド(約25 mg)のEtOH、THF、MTBE、MeCN、MEK、またはEtOAcなどの溶液を、対イオン溶液を添加する前に、昇温(50℃~70℃)して約5分間平衡化する。MeCN、EtOH、MEK、THF、DMSO、ジオキサンおよび/または水などの対イオン溶液を、各混合物の1.05モル当量に相当する量で添加し、次いで得られた混合物を20℃/時間で周囲温度までゆっくりと冷却し、一晩平衡化する。沈殿物すべてを真空ろ過で単離し、真空下、周囲温度で一晩乾燥する。
【0191】
参考例1(a)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド ベンゼンスルホン酸塩の調製
ベンゼンスルホン酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物およびMeCN中のベンゼンスルホン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0192】
EtOAc中の前記化合物とMeCN中のベンゼンスルホン酸溶液を、上記の一般的手順によりベンゼンスルホン酸との塩形成に使用すると、油が得られるが、固体は得られない。
【0193】
参考例1(b)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド クエン酸塩の調製
クエン酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物およびMeCN中のクエン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0194】
EtOAc中の前記化合物とEtOH中のクエン酸溶液を、上記の一般的手順によりクエン酸との塩形成に使用すると、油が得られるが、固体は得られない。
【0195】
参考例1(c)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドL-リンゴ酸塩の調製
L-リンゴ酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物およびMeCN中のL-リンゴ酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0196】
EtOAc中の前記化合物とEtOH中のL-リンゴ酸溶液を、上記の一般的手順によりL-リンゴ酸との塩形成に使用すると、油が得られるが、固体は得られない。
【0197】
参考例1(d)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドL-酒石酸塩の調製
L-酒石酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物およびEtOH中のL-酒石酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0198】
参考例1(e)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミドp-トルエンスルホン酸塩の調製
p-トルエンスルホン酸塩との塩形成の試験は、EtOAc中の前記化合物およびMeCN中のp-トルエンスルホン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0199】
参考例1(f)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド ナフタレン-2-スルホン酸塩の調製
ナフタレン-2-スルホン酸塩との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物とMeCN中のナフタレン-2-スルホン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわる。塩の結晶は得られない。
【0200】
参考例1(g)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド硫酸塩の調製
硫酸との塩形成の試験は、MTBE中の前記化合物およびEtOH中の硫酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固すると油が得られるが、固体は得られない。
【0201】
参考例1(h)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド エタンスルホン酸塩の調製
エタンスルホン酸との塩形成の試験は、MEK中の前記化合物とMEK中のエタンスルホン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0202】
エタンスルホン酸との塩形成にMEKの代わりにEtOHを使用すると、油が得られるが、固体は得られない。
【0203】
参考例1(i)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド メタンスルホン酸塩(メシレート塩)の調製
メタンスルホン酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物とMeCN中のメタンスルホン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0204】
一方、MTBE中の前記化合物とMeCN中のメタンスルホン酸溶液を、上記の一般的手順によりメタンスルホン酸との塩形成に使用すると、対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、メシル酸塩の結晶を得たことがわかる。
【0205】
しかし、実施例7に記載した吸湿性試験と同様の方法で、メシル酸塩結晶の水分吸着量は、60%RHで3.7重量%、90%RHで16.9重量%を示す。
【0206】
実施例11のキラル分析と同様の方法で、メシル酸塩結晶はR,S-とR,R-異性体の混合物(79:21)が存在することを示す。次いで、等温保持後の試料を分析すると、キラル純度は93%である(R,S-とR,R-異性体(93:7)が存在する)。しかし、等温ストレス(isothermal stress)前と等温ストレス後の両方の試料にR,R-異性体をスパイクして分析すると、保持時間がR,R-異性体の保持時間と一致しない。この不一致の原因は不明であるが、保持時間の変化の理由として考えられるのは、ピークの分裂、分解、保持時間のシフトなどである。
【0207】
したがって、メシル酸塩結晶は薬学的に許容される塩としては実用的ではない。
【0208】
参考例1(j)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド馬尿酸塩(ヒプル酸塩)の調製
馬尿酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物とEtOH中の馬尿酸溶液を用いて、上記の一般的手順によって行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0209】
MEK中の前記化合物とMEK中の馬尿酸溶液を上記の一般的手順により馬尿酸との塩形成に使用すると、対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、馬尿酸塩の結晶を得たことがわかる。
【0210】
しかし、実施例7に記載の吸湿性試験と同様の方法で、馬尿酸塩結晶の水分吸着量は90%RHで16.0重量%を示し、部分的な潮解が観察される。
吸湿性試験後の材料のXRPD分析により、非晶質材料を得る。吸湿性試験後の材料の1H-NMR分析では、MEK量が1.6重量%まで減少していることが示されている。DVS分析後の非晶質物質の形成、および同時に起こるMEKの損失は、馬尿酸塩がMEK溶媒和物であることと一致する。
【0211】
したがって、馬尿酸塩の結晶は、薬学的に許容される塩としては実用的ではない。
【0212】
参考例1(k)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド塩酸塩(HCl塩)の調製
塩酸による塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物および水/EtOH中の塩酸溶液を用いて、上記の一般的手順によって行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析によって評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0213】
MeCN中の前記化合物とジオキサン中の塩酸溶液を、上記の一般手順により塩酸との塩形成に使用すると、対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0214】
参考例1(l)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド リン酸塩の調製
リン酸との塩形成の試験は、MeCN中の前記化合物とEtOH中のリン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0215】
EtOAc中の前記化合物とEtOH中のリン酸溶液を、上記の一般的手順によりリン酸との塩形成に使用すると、油が得られるが、固体は得られない。
【0216】
次いで、前記油をMeCNに溶解し、MTBEを加える。溶液はわずかに濁っており、ろ過可能な固体が得られてはいる。しかし、分析に十分な量を分離することはできなかった。
【0217】
参考例1(m)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド D-グルコン酸塩の調製
D-グルコン酸との塩形成の試験は、MTBE中の前記化合物およびジオキサン/水(体積比4:1)中のD-グルコン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は2層になる。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0218】
参考例1(n)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド 1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の調製
1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との塩形成の試験は、MEK中の前記化合物とMEK中の1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0219】
参考例1(o)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド L-ピログルタミン酸塩の調製
L-ピログルタミン酸との塩形成の試験は、EtOAc中の前記化合物とEtOH中のL-ピログルタミン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、XRPD分析で評価すると、非晶質が得られたことがわかる。塩の結晶は得られない。
【0220】
参考例1(p)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド L-乳酸塩の調製
L-乳酸との塩形成の試験は、上記化合物のMeCN溶液とL-乳酸のMeCN溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0221】
上記化合物のEtOAc溶液とL-乳酸のEtOH溶液を上記の一般手順によりL-乳酸との塩形成に使用すると、対イオンの添加後、混合物は2層となる。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0222】
参考例1(q)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド グルタル酸塩の調製
グルタル酸との塩形成の試験は、上記化合物のMEK溶液とグルタル酸のMEK溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0223】
参考例1(r)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド パモ酸塩の調製
パモ酸との塩形成の試験は、EtOAc中の前記化合物とDMSO中のパモ酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0224】
参考例1(s)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド ニコチン酸塩の調製
ニコチン酸との塩形成の試験は、MEK中の前記化合物とDMSO中のニコチン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
【0225】
参考例1(t)
(R)-N-((S)-1-(4-(3,3-ジメチル-2-オキソインドリン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-1-オキソ-4-フェニルブタン-2-イル)ピペリジン-3-カルボキサミド セバシン酸塩の調製
セバシン酸との塩形成の試験は、THF中の前記化合物とTHF中のセバシン酸溶液を用いて、上記の一般的手順により行う。対イオンの添加後、混合物は透明である。溶液を蒸発乾固した後、油が得られるが、固体は得られない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】