(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高溶融強度ポリプロピレンを含む難燃性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240711BHJP
C09K 21/10 20060101ALI20240711BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L23/10
C09K21/10
C09K21/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503987
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071028
(87)【国際公開番号】W WO2023006797
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】シュトックライター ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ペッレッチア ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ギトサス アントニオス
(72)【発明者】
【氏名】フリードル ベッティナ
(72)【発明者】
【氏名】サリオマー ポーリーナ
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】コスタ フランシス レニー
(72)【発明者】
【氏名】サゲダー アントン
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA03
4H028AA29
4H028AA34
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4H028BA06
4J002BB12W
4J002BB12X
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4J002DH056
4J002EU136
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4J002FD136
4J002FD20X
4J002GG01
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、プロピレンポリマー(PP)と、窒素含有難燃剤(FR)と、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)とを含む難燃性ポリプロピレン組成物(C)に関する。さらに、本発明は、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の垂れ防止剤としての使用、及び難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)23.0~80.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%の、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含み、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)はガラス繊維を含有しない、難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項2】
前記プロピレンポリマー(PP)は、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)と
を含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である請求項1に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項3】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、
i)異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)であって、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)、及び
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)
を含むプロピレンポリマー(PP)と、
ii)窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)任意選択で、カーボンブラック(CB)と
を含む、難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項4】
前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~65.0重量%の前記プロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の前記窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%の前記垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含む請求項3に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項5】
前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)はハロゲンを含まない請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項6】
前記プロピレンポリマー(PP)、前記窒素含有難燃剤(FR)、前記垂れ防止剤(A)及び任意選択で前記カーボンブラック(CB)を合わせた全量は、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成し、好ましくは合計で100重量%になる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項7】
前記窒素含有難燃剤(FR)は、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)及び第2の窒素含有ホスフェート(FR2)を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項8】
前記第1の窒素含有ホスフェート(FR1)と前記第2の窒素含有ホスフェート(FR2)との重量比は60:40~40:60の範囲にある請求項7に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項9】
前記第1の窒素含有ホスフェート(FR1)はメラミンポリホスフェートであり、前記第2の窒素含有ホスフェート(FR2)はピペラジンピロホスフェートである請求項7又は請求項8に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項10】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)4.0~17.0モル%の範囲、好ましくは6.0~10.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の全重量に基づいて7.0~25.0重量%の範囲、好ましくは11.0~22.0重量%の範囲の冷キシレン可溶部(XCS)
を有する請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項11】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の前記キシレン可溶部(XCS)は、
i)25.0~65.0モル%の範囲、好ましくは40.0~45.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)3.5dl/g未満、好ましくは2.4~3.4dl/gの範囲の、ISO1628/1(デカリン中135℃)に従って測定された固有粘度(IV)
を有する請求項10に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項12】
前記高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.5~15.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項13】
1.0~30.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項14】
プロピレンポリマー(PP)及び窒素含有難燃剤(FR)を含む組成物のための垂れ防止剤(A)としての、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の使用であって、
a)前記組成物はガラス繊維を含まず、かつ/又は
b)前記プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である
使用。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンポリマー(PP)と、窒素含有難燃剤(FR)と、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)とを含む難燃性ポリプロピレン組成物(C)に関する。さらに、本発明は、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の垂れ防止剤としての使用、及び難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気用途では、特定の難燃性要件が要求される。最も一般的には、1.6mm以下の試験片厚さのUL94 V0等級が達成されなければならない。さらには、環境にやさしいものであるために、無ハロゲン系が好ましい。
【0003】
難燃性添加剤によって制御される燃焼挙動の次のUL94等級の一部として、滴下挙動が制御される必要があり、そのために、主に未充填、又は低充填ポリプロピレングレードについて典型的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が0.2~0.3重量%の全量で使用される。規制によれば、PTFEと組み合わせた難燃性材料は、依然として無ハロゲン系であると考えられるが、実際には、少量のハロゲンが配合物中に依然として存在する。加えて、EUにおけるすべてのパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の生産、市場への出荷及び使用の制限を目的としたREACH制限が提案されている。従って、フルオロポリマーは、制限の可能性について考慮されているところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、難燃性ポリプロピレン配合物中のPTFEを置き換えて、しかも上記の難燃性要件が依然として満たされることが興味深い。換言すれば、本発明の目的は、ハロゲンを含まない難燃性ポリプロピレン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、この難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)23.0~80.0質量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%の、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含み、この難燃性ポリプロピレン組成物(C)はガラス繊維を含有しない
難燃性ポリプロピレン組成物(C)に向けられる。
【0006】
本発明の1つの実施形態によれば、プロピレンポリマー(PP)は、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)と
を含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である。
【0007】
本発明は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、
i)異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)であって、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)、及び
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)
を含むプロピレンポリマー(PP)と、
ii)窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)任意選択で、カーボンブラック(CB)と
を含む難燃性ポリプロピレン組成物(C)にも向けられる。
【0008】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~65.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%の垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)はハロゲンを含まない。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、プロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)及び任意選択でカーボンブラック(CB)を合わせた全量は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成し、好ましくは合計で100重量%になる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態によれば、窒素含有難燃剤(FR)は、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)及び第2の窒素含有ホスフェート(FR2)を含む。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態によれば,第1の窒素含有ホスフェート(FR1)と第2の窒素含有ホスフェート(FR2)との重量比は60:40~40:60の範囲にある。
【0013】
第1の窒素含有ホスフェート(FR1)がメラミンポリホスフェートであり、第2の窒素含有ホスフェート(FR2)がピペラジンピロホスフェートであることがとりわけ好ましい。
【0014】
本発明の1つの実施形態によれば、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)4.0~17.0モル%の範囲、好ましくは6.0~10.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)異相プロピレンコポリマー(HECO)の全重量に基づいて、7.0~25.0重量%の範囲、好ましくは11.0~22.0重量%の範囲の冷キシレン可溶部(XCS)
を有する。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、異相プロピレンコポリマー(HECO)のキシレン可溶部(XCS)は、
i)25.0~65.0モル%の範囲、好ましくは40.0~45.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)3.5dl/g未満、好ましくは2.4~3.4dl/gの範囲の、ISO1628/1(デカリン中135℃)に従って測定された固有粘度(IV)
を有する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.5~15.0g/10分の範囲の、ISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0017】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、1.0~30.0g/10分の範囲の、ISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有することがとりわけ好ましい。
【0018】
さらに、プロピレンポリマー(PP)及び窒素含有難燃剤(FR)を含む組成物のための垂れ防止剤(A)としての、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の使用であって、
a)上記組成物はガラス繊維を含まず、かつ/又は
b)上記プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である
使用に向けられる。
【0019】
本発明は、上記の難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品にも向けられる。
【0020】
以下で、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)
本発明に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、プロピレンポリマー(PP)と、窒素含有難燃剤(FR)と、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)とを含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)はフルオロポリマーを含まない。特に、難燃性ポリプロピレン組成物(C)が、0.5重量%を超える、より好ましくは0.1重量%を超える、さらにより好ましくは0.01重量%を超える、例えば0.001重量%を超える量のフルオロポリマーを含有しないことが好ましい。難燃性ポリプロピレン組成物(C)の製造においてフルオロポリマーが使用されていないことがとりわけ好ましい。
本明細書で使用する場合、用語「フルオロポリマー」は、フッ素原子を含むポリマー化合物を指す。フルオロポリマーの例は、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)である。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)はハロゲン原子を含まない。本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、周期表の17族の元素を指す。従って、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の製造においてハロゲン原子を含む化合物を使用しないことが好ましい。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、ガラス繊維を含まない。特に、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、0.5重量%を超える、より好ましくは0.1重量%を超える、さらにより好ましくは0.01重量%を超える、例えば0.001重量%を超える量のガラス繊維を含有しないことが好ましい。難燃性ポリプロピレン組成物(C)の製造においてガラス繊維を使用しないことがとりわけ好ましい。
【0025】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)がガラス繊維を含まない実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i))23.0~80.0重量%、より好ましくは28.0~65.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と
を含む。
【0026】
プロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)及び垂れ防止剤(A)を合わせた全量は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、カーボンブラック(CB)をさらに含む。この実施形態に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、好ましくは、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)23.0~65.0重量%、より好ましくは28.0~60.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と、
iv)0.01~15.0重量%、より好ましくは1.0~12.0重量%、さらにより好ましくは2.0~11.0重量%、例えば3.0~10.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含む。
【0028】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)がカーボンブラック(CB)を含む実施形態では、プロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)及びカーボンブラック(CB)を合わせた全量が難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0029】
本発明に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、添加剤(AD)、例えば、酸捕捉剤、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、スリップ剤、擦り傷防止剤(anti-scratch agent)、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料等をさらに含んでもよい。
【0030】
従って、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)23.0~64.99重量%、より好ましくは28.0~60.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と、
iv)0.01~15.0重量%、より好ましくは1.0~12.0重量%、さらにより好ましくは2.0~11.0重量%、例えば3.0~10.0重量%のカーボンブラック(CB)と、
v)0.01~5.0重量%、より好ましくは0.1~3.5重量%、さらにより好ましくは0.2~2.0重量%、例えば0.3~1.0重量%の添加剤(AD)と
を含むことが好ましく、より好ましくはこれらからなる。添加剤(AD)は、以下により詳細に記載される。
【0031】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)が添加剤(AD)を含む実施形態では、プロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)、任意選択で、カーボンブラック(CB)及び添加剤(AD)を合わせた全量が、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である。
【0033】
プロピレンポリマー(PP)が異相プロピレンコポリマー(HECO)である実施形態では、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~80.0重量%、より好ましくは28.0~65.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%の異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と
を含む。
【0034】
異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)及び垂れ防止剤(A)を合わせた全量が難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、カーボンブラック(CB)をさらに含む。この実施形態に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、好ましくは、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~65.0重量%、より好ましくは28.0~60.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%の異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と、
iv)0.01~15.0重量%、より好ましくは1.0~12.0重量%、さらにより好ましくは2.0~11.0重量%、例えば3.0~10.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含む。
【0036】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)がカーボンブラック(CB)を含む実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)及びカーボンブラック(CB)を合わせた全量が難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0037】
本発明の上記実施形態に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、添加剤(AD)、例えば、酸捕捉剤、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、スリップ剤、擦り傷防止剤、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料等をさらに含んでもよい。
【0038】
従って、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~64.99重量%、より好ましくは28.0~60.0重量%、さらにより好ましくは30.0~55.0重量%、例えば35.0~50.0重量%の異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~35.0重量%、さらにより好ましくは18.0~33.0重量%、例えば22.0~30.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%、より好ましくは12.0~36.0重量%、さらにより好ましくは15.0~32.0重量%、例えば19.0~31.0重量%の垂れ防止剤(A)と、
iv)0.01~15.0重量%、より好ましくは1.0~12.0重量%、さらにより好ましくは2.0~11.0重量%、例えば3.0~10.0重量%のカーボンブラック(CB)と、
v)0.01~5.0重量%、より好ましくは0.1~3.5重量%、さらにより好ましくは0.2~2.0重量%、例えば0.3~1.0重量%の添加剤(AD)と
を含むことが好ましく、より好ましくはこれらからなる。添加剤(AD)は、以下により詳細に記載される。
【0039】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)が添加剤(AD)を含む実施形態では、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)、任意選択でカーボンブラック(CB)及び添加剤(AD)を合わせた全量が難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成することが好ましく、より好ましくは合計で100重量%になる。
【0040】
本発明に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、好ましくは1.0~30.0g/10分の範囲、より好ましくは3.0~20.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは4.0~15.0g/10分の範囲、例えば5.0~10.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0041】
機械的特性に関して、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、1000~5000MPaの範囲、より好ましくは1100~3000MPaの範囲、さらにより好ましくは1500~2500MPaの範囲、例えば1700~2200MPaの範囲のISO527-1Aに従って23℃で決定された引張弾性率を有することが好ましい。
【0042】
前の段落に加えて又はその代わりに、難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、少なくとも2.0kJ/m2、より好ましくは2.0~30.0kJ/m2の範囲、さらにより好ましくは2.2~20.0kJ/m2の範囲、例えば2.5~10.0kJ/m2の範囲のISO179 1eAに従って23℃で決定されたノッチ付きシャルピー衝撃強さを有することが好ましい。
【0043】
さらに、本発明に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、1.6mm以下、より好ましくは1.2mm以下、さらにより好ましくは1.0mm以下、例えば0.9mm以下の厚さで、Standard for Safety of Flammability of Plastic Materials(プラスチック材料の燃焼試験規格)UL94V-0の要件を満たすことが好ましい。
【0044】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、好ましくは、プロピレンポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)、並びに任意選択でカーボンブラック(CB)及び添加剤(AD)をブレンド、好ましくは溶融ブレンド(溶融混合)することによって得られる。
【0045】
以下で、プロピレンポリマー(PP)、含窒素難燃剤(FR)、垂れ防止剤(A)について、より詳細に説明する。
【0046】
プロピレンポリマー(PP)
本発明に係る難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、プロピレンポリマー(PP)を含む。プロピレンポリマー(PP)は、2種以上のプロピレンポリマー(PP)成分の混合物であってもよい。
【0047】
プロピレンポリマー(PP)は、5.0~300g/10分の範囲、より好ましくは8.0~100g/10分の範囲、さらにより好ましくは10.0~75.0g/10分の範囲、例えば15.0~50.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0048】
プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのホモポリマー又はコポリマーであることができる。さらに、プロピレンポリマー(PP)は、異なる1種以上のプロピレンポリマー(PP)成分を含むことができる。
【0049】
プロピレンポリマー(PP)がプロピレンのコポリマーである場合、コモノマーは、エチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから選択されることが好ましい。コモノマーがエチレンであることがとりわけ好ましい。複数の、例えば2種の、プロピレンのコポリマーである異なるプロピレンポリマー成分を含むプロピレンポリマー(PP)については、すべてのプロピレンポリマー成分が同じコモノマー、例えばエチレンを含有することが好ましい。
【0050】
プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンとエチレン及び/又は少なくとも別のC4~C8α-オレフィンのコポリマーであることが好ましい。
【0051】
プロピレンポリマー(PP)は、好ましくは、2.0~25.0モル%の範囲、より好ましくは4.0~20.0モル%の範囲、さらにより好ましくは6.0~15.0モル%の範囲、例えば6.2~12.0モル%の範囲のコモノマー含有量、例えばエチレン含有量を有する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、プロピレンポリマー(PP)は、
i)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、
ii)プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)と
を含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である。
【0053】
本発明において全般的に、表現「異相」(heterophasic)は、エラストマーがマトリクス中に(微細に)分散していることを示す。言い換えると、エラストマーはマトリクス中に混在物を形成する。従って、マトリクスは、マトリクスの一部ではない(微細に)分散した混在物を含有し、この混在物はエラストマーを含有する。本発明に係る用語「混在物」は、好ましくは、マトリクス及びこの混在物が異相ポリプロピレン内で異なる相を形成し、この混在物が、例えば、電子顕微鏡法又は走査型力顕微鏡法等の高分解能顕微鏡法によって可視であることを示すものとする。
【0054】
異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)が、好ましくは、かなり低い総コモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量を有することが理解される。従って、異相プロピレンコポリマー(HECO)のコモノマー含有量は、4.0~17.0モル%の範囲、好ましくは5.0~14.0モル%の範囲、より好ましくは6.0~10.0モル%の範囲にあることが好ましい。
【0055】
異相プロピレンコポリマー(HECO)は、一般に、冷キシレン可溶部(XCS)画分及び冷キシレン不溶部(XCI)画分を特徴とする。本出願の目的のために、異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶部(XCS)画分は、上記異相プロピレンコポリマー(HECO)のエラストマーと本質的に同一である。
【0056】
従って、異相プロピレンコポリマー(HECO)のエラストマーの固有粘度及びエチレン含有量について言及する場合、この異相プロピレンコポリマー(HECO)の冷キシレン可溶部(XCS)画分の固有粘度及びエチレン含有量が意図される。
【0057】
従って、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)中のマトリクス(M)含有量、すなわち冷キシレン不溶部(XCI)含有量は、好ましくは75.0~93.0重量%の範囲、より好ましくは77.0~91.0重量%の範囲、例えば78.0~89.0重量%の範囲にある。
【0058】
他方で、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)中のエラストマー(E)、すなわち冷キシレン可溶部(XCS)の含有量は、好ましくは7.0~25.0重量%の範囲、より好ましくは9.0~23.0重量%の範囲、例えば11.0~22.0重量%の範囲にある。
【0059】
異相プロピレンコポリマー(HECO)としてのプロピレンポリマー(PP)の第1の成分は、マトリクス(M)である。
【0060】
マトリクス(M)としての使用に適したポリプロピレンは、当該技術分野で公知の任意のタイプのアイソタクチック若しくは主にアイソタクチックなポリプロピレンホモポリマー又はランダムコポリマーを含んでもよい。従って、ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンとエチレン及び/若しくはC4~C8α-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン若しくは1-オクテンとのアイソタクチックランダムコポリマーであって、総コモノマー含有量が0.05~10重量%の範囲にあるアイソタクチックランダムコポリマーであってもよい。
【0061】
さらに、及び好ましくは、ポリプロピレンマトリクス(M)は、中程度のメルトフローレートを有する。従って、本発明において、ポリプロピレンマトリクス(M)、すなわちプロピレンポリマー(PP)の冷キシレン不溶部(XCI)画分は、15.0~120g/10分、より好ましくは20.0~100g/10分、さらにより好ましくは30.0~80.0g/10分の範囲、例えば35.0~50.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0062】
さらには、ポリプロピレンマトリクス(M)は、分子量の観点では、マルチモーダル(多峰性)又はバイモーダル(二峰性)であることができる。
【0063】
本発明を通して使用される表現「マルチモーダル」又は「バイモーダル」は、ポリマーのモダリティ(様相)、すなわち
・分子量の関数としての分子量分率のグラフである、そのポリマーの分子量分布曲線の形態、
及び/又は
・ポリマー画分の分子量の関数としてのコモノマー含有量のグラフである、そのポリマーのコモノマー含有量分布曲線の形態
に関して用いられる。
【0064】
しかしながら、ポリプロピレンマトリクス(M)はマルチモーダルでもバイモーダルでもないことが好ましい。
【0065】
異相プロピレンコポリマー(HECO)としてのプロピレンポリマー(PP)の第2の成分は、エラストマー(E)である。
【0066】
エラストマー(E)は、(i)プロピレン並びに(ii)エチレン及び/又は少なくとも別のC4~C8α-オレフィンから誘導可能な単位、より好ましくは(i)プロピレン並びに(ii)エチレン並びに1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び1-オクテンからなる群から選択される少なくとも別のα-オレフィンから誘導可能な単位を含み、好ましくはこれらからなる。エラストマーコポリマー(E)は、共役ジエン、例えばブタジエン、又は非共役ジエンから誘導される単位をさらに含有してもよいが、しかしながら、このエラストマーコポリマーは、(i)プロピレン並びに(ii)エチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導可能な単位のみからなることが好ましい。使用される場合の適切な非共役ジエンとしては、直鎖状及び分岐鎖状の非環式ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、並びにジヒドロミルセン及びジヒドロオシメンの混合異性体、並びに単環脂環式ジエン、例えば1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,5-シクロドデカジエン、4-ビニルシクロヘキセン、1-アリル-4-イソプロピリデンシクロヘキサン、3-アリルシクロペンテン、4-シクロヘキセン及び1-イソプロペニル-4-(4-ブテニル)シクロヘキサンが挙げられる。テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ(2,2,1)ヘプタ-2,5-ジエン、2-メチルビシクロヘプタジエン、並びにアルケニルノルボルネン、アルキリデンノルボルネン、シクロアルケニルノルボルネン及びシクロアルキリデンノルボルネン、例えば5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデンノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、及び5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネンを含む多環脂環式の縮合環ジエン及び架橋環ジエンも適切である。好ましい非共役ジエンは5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン及びジシクロペンタジエンである。
【0067】
従って、エラストマー(E)は、少なくともプロピレン及びエチレンから誘導可能な単位を含み、前の段落で定義されたさらなるα-オレフィンから誘導可能な他の単位を含んでもよい。しかしながら、エラストマー(E)は、プロピレン及びエチレン、及び任意選択で、ブタジエン等の共役ジエン、又は前段落で定義された1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエンから誘導可能な単位のみを含むことが特に好ましい。従って、エラストマー(E)としてのエチレンプロピレン非共役ジエンモノマーポリマー(EPDM)及び/又はエチレンプロピレンゴム(EPR)がとりわけ好ましく、後者が最も好ましい。
【0068】
マトリクス(M)と同様に、エラストマー(E)は、ユニモーダル(単峰性)又はマルチモーダル、例えばバイモーダルであってもよい。ユニモーダル及びマルチモーダル、例えばバイモーダルの定義に関しては、上記の定義を参照されたい。
【0069】
本発明において、エラストマー(E)中のプロピレンから誘導可能な単位の含有量は、冷キシレン可溶部(XCS)画分中の検出可能なプロピレンの含有量に等しい。従って、冷キシレン可溶部(XCS)画分中で検出可能なプロピレンは、20.0~80.0モル%、より好ましくは35.0~70.0モル%の範囲にある。冷キシレン可溶部(XCS)画分中に存在するコモノマーは、エラストマー(E)について上で定義されたものである。従って、特定の実施形態では、エラストマー(E)、すなわち冷キシレン可溶部(XCS)画分は、エラストマー(E)について上で定義されたコモノマーの少なくとも1種から誘導可能な単位を25.0~65.0モル%、より好ましくは30.0~60.0モル%、さらにより好ましくは35.0~50.0モル%、例えば40.0~45.0モル%含む。好ましくは、エラストマー(E)は、この段落で規定されるプロピレン及び/又はエチレン含有量を有する、エチレンプロピレン非共役ジエンモノマーポリマー(EPDM)又はエチレンプロピレンゴム(EPR)であり、後者が特に好ましい。1つの好ましい実施形態では、エラストマー(E)のコモノマーはエチレンのみである。
【0070】
本発明のさらに好ましい要件は、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)の冷キシレン可溶部(XCS)画分の固有粘度(IV)がかなり低いことである。従って、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)の冷キシレン可溶部(XCS)画分の固有粘度は、3.5dl/g未満、より好ましくは3.4dl/g以下であることが理解される。さらにより好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)の冷キシレン可溶部(XCS)画分の固有粘度は、1.8~3.5未満dl/gの範囲、より好ましくは1.9~3.4dl/gの範囲、例えば2.0~3.4dl/gである。固有粘度は、ISO1628に従ってデカリン中135℃で測定される。
【0071】
プロピレンポリマー(PP)が上記で定義された異相プロピレンコポリマー(HECO)である場合、好ましくは、プロピレンポリマー(PP)のプロピレン含有量は、プロピレンポリマー(PP)の総重量に基づいて、より好ましくはマトリクス(M)及びエラストマーコポリマー(E)を合わせた量に基づいて85.0~96.0重量%、より好ましくは88.0~94.0重量%である。
【0072】
異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)は、マトリクス(M)とエラストマー(E)とをブレンドすることにより製造することができる。しかしながら、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、直列構成であり異なる反応条件で動作する複数の反応器を使用し、連続工程プロセスで生成されることが好ましい。結果として、特定の反応器中で調製される各画分は、それ自体の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を有してもよい。
【0073】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)は、好ましくは、(半)結晶性プロピレンポリマー(M)が、少なくとも、1つのスラリー反応器において、好ましくはスラリー反応器において、及び任意選択で後続の気相反応器において生成され、続いてエラストマー(E)が、少なくとも、1つの、すなわち1つ又は2つの気相反応器において生成される、当該技術分野において公知の逐次重合プロセス、すなわち多段階プロセスで製造される。
【0074】
従って、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)は、
(a)第1の反応器(R1)においてプロピレン並びに任意選択で少なくとも1種のエチレン及び/又はC4~C8のα-オレフィンを重合して、マトリクス(M)の第1のポリプロピレン画分を得る工程であって、好ましくはこの第1のポリプロピレン画分はプロピレンホモポリマーである工程と、
(b)任意選択で、第1のポリプロピレン画分を第2の反応器(R2)に移す工程と、
(c)任意選択で、第2の反応器(R2)においてかつ上記第1のポリプロピレン画分の存在下でプロピレン並びに任意選択で少なくとも1種のエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンを重合して、これにより第2のポリプロピレン画分を得る工程であって、好ましくはこの第2のポリプロピレン画分は第2のプロピレンホモポリマーであり、上記第1のポリプロピレン画分及び任意選択で上記第2のポリプロピレン画分はマトリクス(M)、すなわち、異相プロピレンコポリマー(HECO)のマトリクス、を形成する工程と、
(d)工程(c)のマトリクス(M)を第3の反応器(R3)に移す工程と、
(e)第3の反応器(R3)においてかつ工程(a)又は(c)で得られたマトリクス(M)の存在下で、プロピレン及びエチレンを重合して、マトリクス(M)中に分散したエラストマー(E)を得る工程であって、このマトリクス(M)及びエラストマー(E)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)を形成する工程と
を含む逐次重合プロセスで生成されることが好ましい。
【0075】
異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)は、
(a)IUPACの第4~6族の遷移金属の化合物(TC)、第2族金属化合物(MC)、及び内部ドナー(ID)を含むZiegler-Natta(チーグラー・ナッタ)触媒、
(b)任意選択で、共触媒(Co)、並びに
(c)任意選択で外部ドナー(ED)
の存在下で調製されることが好ましい。
【0076】
このZiegler-Natta触媒は、プロピレン重合のためのいずれの立体特異的Ziegler-Natta触媒であってもよく、このような触媒は、好ましくは、500~10000kPa、特に2500~8000kPaの圧力、及び40~110℃、特に60~110℃の温度で、プロピレン及び任意選択のコモノマーの重合及び共重合を触媒することができる。
【0077】
好ましくは、上記Ziegler-Natta触媒は、内部ドナー成分を含む高収率のZiegler-Natta型触媒を含み、これは80℃以上の高重合温度で使用することができる。このような高収率Ziegler-Natta触媒は、内部ドナー(ID)としてコハク酸エステル、ジエーテル、シトラコン酸エステル、フタル酸エステル等、又はこれらの混合物を含むことができる。好ましくは、内部ドナー(ID)はフタル酸エステル化合物を含まない。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、プロピレンポリマー(PP)は異相プロピレンコポリマー(HECO)からなる。
【0079】
別の実施形態では、プロピレンポリマー(PP)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)と、さらなる異相プロピレンコポリマー等のプロピレンの1種以上のさらなるホモポリマー又はコポリマーとを含む。プロピレンポリマー(PP)が、さらなる異相プロピレンコポリマー等のプロピレンのさらなるコポリマーを含む場合、異相プロピレンコポリマー(HECO)及びプロピレンのさらなるコポリマーは、同じコモノマー、好ましくはエチレンを含有することが好ましい。
【0080】
難燃剤組成物(FR)
本発明に係るポリプロピレン組成物(C)は、窒素含有難燃剤(FR)を含む。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、窒素含有難燃剤(FR)はハロゲンを含まない。すなわち、窒素含有難燃剤(FR)が、ハロゲン原子を含む有機化合物又は無機化合物を含まないことが好ましい。本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、周期表の17族の元素を指す。
【0082】
窒素含有難燃剤(FR)は、少なくとも1種の窒素含有ホスフェート(リン酸エステル)、好ましくは少なくとも1種の有機窒素含有ホスフェートを含むことが好ましい。好ましくは、この有機窒素含有ホスフェートは、少なくとも1つのN原子を含む複素環式C3~C6-、より好ましくはC3~C4-アルキル又はアリール化合物のホスフェートである。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、窒素含有難燃剤(FR)は、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)と、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)とは異なる第2の窒素含有ホスフェート(FR2)とを含む。
【0084】
好ましくは、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)及び第2の窒素含有ホスフェート(FR2)は、有機窒素含有ホスフェートである。第1の窒素含有ホスフェート(FR1)及び第2の窒素含有ホスフェート(FR2)が、少なくとも1つのN原子を含む複素環式C3~C6、より好ましくはC3~C4-アルキル又はアリール化合物のホスフェートであることがとりわけ好ましい。
【0085】
第1の窒素含有ホスフェート(FR1)が、有機窒素含有ポリホスフェートであることが好ましい。より好ましくは、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)は、少なくとも1つのN原子を含む複素環式C3~C6-、より好ましくはC3~C4-アリール化合物のポリホスフェートである。第1の窒素含有ホスフェート(FR1)がメラミンポリホスフェート(ポリリン酸メラミン)であることがとりわけ好ましい。
【0086】
第2の窒素含有ホスフェート(FR2)が、有機窒素含有ジホスフェートであることが好ましい。より好ましくは、第2の窒素含有ホスフェート(FR2)は、少なくとも1つのN原子、例えば2つのN原子を含む複素環式C3~C6-、より好ましくはC3~C4-アルキル化合物のジホスフェートである。第2の窒素含有ホスフェート(FR2)がピペラジンピロホスフェート(ピロリン酸ピペラジン)であることがとりわけ好ましい。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)と第2の窒素含有ホスフェート(FR2)との重量比は、60:40~40:60の範囲にある。
【0088】
好適な窒素含有難燃剤(FR)は、好ましくは市販されている。市販の窒素含有難燃剤(FR)の非常に好適な例は、SULI(スリ、蘇利、江蘇蘇利精細化工股フン有限公司)によって製造され供給される商品名Phlamoon-1090Aで販売されている難燃剤製品である。
【0089】
窒素含有難燃剤(FR)の量は、本明細書において、ポリプロピレン組成物(C)の総重量に対する、製造業者によって供給される窒素含有難燃剤(FR)の量を意味する。従って、窒素含有難燃剤(FR)は、添加剤、難燃性相乗剤及び/又は担体媒体のようなさらなる成分を少量で含有してもよい。従って、そのようなさらなる成分は、窒素含有難燃剤(FR)の量に算入されることを理解されたい。
【0090】
垂れ防止剤(A)
本発明のポリプロピレン組成物(C)は、垂れ防止剤(antidripping-agent)(A)をさらに含む。
【0091】
本明細書で使用する場合、用語「垂れ防止剤」は、UL94試験条件下でのポリマー材料の垂れ(滴下)の影響を防止又は低減する添加剤を指す。UL94試験中、試料が垂れるか否か、及び垂れがある場合、滴(垂れ)が炎を発している(燃えている)か否かを観察する必要がある。UL94垂直燃焼試験におけるポリマー生成物の等級は、燃焼時間及び垂れ現象に依存する。点火源の除去後の燃焼時間は、ポリマーがV0、V1であるか、等級なし(不合格)であるかを決定する。垂れ現象は、V2等級とV1等級とを区別する。炎を発している材料が垂れ、試験片の下に置かれた綿に点火する場合、ポリマー製品の等級はV2と評価される。明らかに、垂れ現象は、UL94垂直試験にとって重要である(Y.Wangら、Journal of Fire Sciences 2012、30(6)、477-501を参照)。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、垂れ防止剤(A)はハロゲンを含まない。すなわち、垂れ防止剤(A)は、ハロゲン原子を含有するいずれの有機化合物又は無機化合物も含まないことが好ましい。本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」は、周期表の17族の元素を指す。
【0093】
本発明に係る垂れ防止剤(A)は、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である。
【0094】
高溶融強度ポリプロピレンは分岐しており、従って、ポリプロピレン骨格が側鎖に及ぶのに対して、非分岐ポリプロピレン、すなわち直鎖状ポリプロピレンは側鎖には及ばないという点で直鎖状ポリプロピレンとは異なる。側鎖は、ポリプロピレンのレオロジーに著しい影響を及ぼす。従って、直鎖状ポリプロピレン及び高溶融強度ポリプロピレンは、応力下でのそれらの流動挙動によって明確に区別することができる。
【0095】
分岐は、特定の触媒、すなわち特定のシングルサイト触媒を使用することによって、又は化学変性によって達成することができる。特定の触媒の使用によって得られる分岐ポリプロピレンの調製に関しては、欧州特許出願公開第1892264号明細書が参照される。化学変性によって得られる分岐ポリプロピレンに関しては、欧州特許出願公開第0879830A1号明細書が参照される。このような場合、分岐ポリプロピレンは、高溶融強度ポリプロピレンとも呼ばれる。
【0096】
分岐指数g’は、分岐の程度を定義し、ポリマーの分岐の量と相関する。好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.95以下、より好ましくは0.90以下、さらにより好ましくは0.85以下、例えば0.80以下のGPCにより求められる分岐指数g’を有する。
【0097】
ポリプロピレン組成物の主成分としての高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、少なくとも20cNのF30溶融強度及び200mm/s超のv30溶融延伸性(melt extensibility)を有し、好ましくは、20~50cNのF30溶融強度及び200超~300mm/sのv30溶融延伸性を有する。F30溶融強度及びv30溶融延伸性は、ISO16790:2005に従って測定される。
【0098】
加えて、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、歪み硬化係数(strain hardening factor、SHF)によってさらに定義することができる。従って、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、少なくとも1.7、より好ましくは少なくとも1.9、さらにより好ましくは1.9~7.0の範囲、さらにより好ましくは1.9~6.5の範囲の、3.0s-1のひずみ速度及び2.5のヘンキー(Hencky)歪みで測定した歪み硬化係数(SHF)を有することが好ましい。
【0099】
さらに、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、好ましくは0.5~15.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは1.0~10.0g/10分の範囲、例えば1.8~3.0g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されたメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0100】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも135℃、最も好ましくは少なくとも140℃の融点を有する。結晶化温度は、好ましくは少なくとも120℃である。
【0101】
さらに、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)又は高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)であることができ、後者が好ましい。
【0102】
本発明の目的のために、表現「プロピレンホモポリマー」は、実質的に、すなわち、少なくとも97モル%、好ましくは少なくとも98モル%、より好ましくは少なくとも99モル%、最も好ましくは少なくとも99.8モル%のプロピレン単位からなるポリプロピレンを指す。好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマー中ではプロピレン単位のみが検出可能である。
【0103】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)である場合、それはプロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC4~C12α-オレフィン、特にエチレン及び/又はC4~C10α-オレフィン、例えば1-ブテン及び/又は1-ヘキセン等のコモノマーを含む。好ましくは、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、エチレン、1-ブテン及び1-ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、とりわけそれらからなる。より具体的には、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、プロピレンとは別に、エチレン及び/又は1-ブテンから誘導可能な単位を含む。好ましい実施形態では、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、エチレン及びプロピレンから誘導可能な単位のみを含む。高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)中のコモノマー含有量は、好ましくは0.2超~10.0モル%の範囲、さらにより好ましくは0.5超~7.0モル%の範囲にある。
【0104】
この点に関して、高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)又は高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)のいずれかである高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)について定義されたコモノマーとは異なる追加の不飽和モノマーを含んでもよいことに言及すべきである。言い換えれば、高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)又は高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)は、以下で詳細に定義されるような二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーのような、プロピレン、エチレン及び他のC4~C12α-オレフィンとは異なる不飽和モノマーを含んでもよい。従って、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の観点からのホモポリマー及びコポリマーの定義は、実際には、以下に詳細に定義される化学変性によって溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を得るために使用される未変性ポリプロピレンに関するものである。
【0105】
上述のように、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は変性ポリプロピレンである。従って、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、得られた方法によってさらに定義することができる。高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、好ましくは、未変性ポリプロピレンを熱分解性ラジカル形成剤及び/又は電離放射線で処理した結果物である。しかしながら、そのような場合、未変性ポリプロピレンが劣化する高いリスクが存在し、劣化することは有害である。従って、変性は、化学結合架橋単位としての二官能性不飽和モノマー(複数種可)及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー(複数種可)の使用によって達成されることが好ましい。高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)を得るための好適な方法は、例えば、欧州特許出願公開第0787750号明細書、欧州特許出願公開第0879830A1号明細書及び欧州特許出願公開第0890612A2号明細書に開示されている。すべての文書は、参照により本明細書に含まれる。これにより、過酸化物の量は、好ましくは未変性ポリプロピレン(PP)に基づいて0.05~3.00重量%の範囲である。
【0106】
従って、1つの好ましい実施形態では、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、
(a)高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が高溶融強度プロピレンホモポリマー(H-HMS-PP)である場合、
(i)プロピレン、及び
(ii)二官能性不飽和モノマー(複数種可)及び/若しくは多官能性不飽和低分子量ポリマー(複数種可)
から誘導される単位を、
又は
(b)高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)が高溶融強度ランダムプロピレンコポリマー(R-HMS-PP)である場合、
(i)プロピレン、
(ii)エチレン及び/若しくはC4~C10α-オレフィン、例えば1-ブテン及び/若しくは1-ヘキセン、好ましくはエチレン、並びに
(iii)二官能性不飽和モノマー(複数種可)及び/若しくは多官能性不飽和低分子量ポリマー(複数種可)
から誘導される単位
を含む。
【0107】
上記で使用される「二官能性不飽和又は多官能性不飽和」は、好ましくは、例えばジビニルベンゼン又はシクロペンタジエン又はポリブタジエンにおけるように、2つ以上の非芳香族二重結合の存在を意味する。好ましくはフリーラジカルの助けを借りて重合することができるそのような二官能性又は多官能性不飽和化合物のみが使用される。二重結合はそれぞれ、未変性ポリプロピレンのポリマー鎖への共有結合に使用されるため、二官能性又は多官能性不飽和化合物中の不飽和部位は、実際には「不飽和」ではない化学結合状態にある。
【0108】
1つ及び/又は複数の不飽和モノマーから合成された、二官能性不飽和モノマー、及び/又は好ましくは10000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する多官能性不飽和低分子量ポリマーの、未変性ポリプロピレンとの反応は、熱フリーラジカル形成剤、例えば分解フリーラジカル形成剤、例えば熱分解性過酸化物及び/又は電離放射線若しくはマイクロ波放射線の存在下で行われてもよい。
【0109】
二官能性不飽和モノマーは、
ジビニルアニリン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、ジビニルペンタン及びジビニルプロパン等のジビニル化合物、
アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸アリルメチル及びアリルビニルエーテル等のアリル化合物、
1,3-ブタジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、ヘプタジエン、ヘキサジエン、イソプレン及び1,4-ペンタジエン等のジエン、
芳香族及び/又は脂肪族ビス(マレイミド)ビス(シトラコンイミド)並びにこれらの不飽和モノマーの混合物
であってもよい。
【0110】
とりわけ好ましい二官能性不飽和モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン及びジビニルベンゼンである。
【0111】
好ましくは10000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する多官能性不飽和低分子量ポリマーは、1種以上の不飽和モノマーから合成されてもよい。
【0112】
このような低分子量ポリマーの例は、
・ポリブタジエン、とりわけポリマー鎖中の異なる微細構造、すなわち1,4-cis、1,4-trans及び1,2-(ビニル)が主に1,2-(ビニル)配置であるポリブタジエン、
・ポリマー鎖中に1,2-(ビニル)を有するブタジエン及びスチレンのコポリマー
である。
【0113】
好ましい低分子量ポリマーは、ポリブタジエン、特に1,2-(ビニル)配置のブタジエンを50.0重量%超有するポリブタジエンである。
【0114】
高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、複数の二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを含有してもよい。さらにより好ましくは、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)中の二官能性不飽和モノマー及び多官能性不飽和低分子量ポリマーの量は、合わせて、上記高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)に基づいて0.01~10.0重量%である。
【0115】
上述のように、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーは、熱分解性フリーラジカル形成剤の存在下で使用されることが好ましい。
【0116】
過酸化物は、好ましい熱分解性フリーラジカル形成剤である。より好ましくは、熱分解性フリーラジカル形成剤は、アシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステル(過酸エステル)及びペルオキシカーボネート(過炭酸エステル)からなる群から選択される。
【0117】
以下の列挙された過酸化物が特に好ましい。
【0118】
アシルペルオキシド:ベンゾイルペルオキシド、4-クロロベンゾイルペルオキシド、3-メトキシベンゾイルペルオキシド及び/又はメチルベンゾイルペルオキシド。
【0119】
アルキルペルオキシド:アリルt-ブチルペルオキシド、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシブタン)、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル-t-アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル-t-アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル-t-ブチルペルオキシド、1,1-ジ-(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド及び/又は1-ヒドロキシブチルn-ブチルペルオキシド。
【0120】
ペルエステル及びペルオキシカーボネート:過酢酸ブチル、過酢酸クミル、過プロピオン酸クミル、過酢酸シクロヘキシル、過アジピン酸ジ-t-ブチル、過アゼライン酸ジ-t-ブチル、過グルタル酸ジ-t-ブチル、過フタル酸ジ-t-ブチル、過セバシン酸ジ-t-ブチル、過プロピオン酸4-ニトロクミル、過安息香酸1-フェニルエチル、ニトロ過安息香酸フェニルエチル、ビシクロ-(2,2,1)ヘプタン過カルボン酸t-ブチル、4-カルボメトキシ過酪酸t-ブチル、シクロブタン過カルボン酸t-ブチル、シクロヘキシル過カルボン酸t-ブチル、シクロペンチル過カルボン酸t-ブチル、シクロプロパン過カルボン酸t-ブチル、ジメチル過ケイ皮酸t-ブチル、2-(2,2-ジフェニルビニル)過安息香酸t-ブチル、4-メトキシ過安息香酸t-ブチル、過安息香酸t-ブチル、t-ブチルカルボキシシクロヘキサン、過ナフトエ酸t-ブチル、過炭酸t-ブチルイソプロピル、過トルイル酸t-ブチル、1-フェニルシクロプロピル過カルボン酸t-ブチル、2-プロピル-2-過ペンテン酸t-ブチル、1-メチルシクロプロピル過カルボン酸t-ブチル、4-ニトロフェニル過酢酸t-ブチル、ニトロフェニル過カルバミン酸t-ブチル、N-スクシンイミド過カルボン酸t-ブチル、過クロトン酸t-ブチル、過マレイン酸t-ブチル、過メタクリル酸t-ブチル、過オクタン酸t-ブチル、過炭酸t-ブチルイソプロピル、過イソ酪酸t-ブチル、過アクリル酸t-ブチル及び/又は過プロピオン酸t-ブチル。
【0121】
これらの上に列挙したフリーラジカル形成剤の混合物も企図される。
【0122】
好ましくは、未変性ポリプロピレンはプロピレンホモポリマーである。
【0123】
調製後、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、変性(改質)工程に供されて、ポリマーがさらに変性されてもよい。このような変性工程は、例えば、1種以上の官能性コモノマーがポリプロピレン鎖にグラフトされるグラフト化、及び押出機中で溶融状態のポリマーを過酸化物等のフリーラジカル発生剤と組み合わせることによってポリプロピレンの分子量が低下されるビスブレーキング(visbreaking)を含む。このような工程は当業者に周知であり、それらへの言及は文献に見出すことができる。
【0124】
添加剤(AD)
プロピレンコポリマー(PP)、窒素含有難燃剤(FR)、及び垂れ防止剤(A)に加えて、本発明のポリプロピレン組成物(C)は、添加剤(AD)を含んでもよい。典型的な添加剤は、酸捕捉剤、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、スリップ剤、擦り傷防止剤、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料などである。
【0125】
本発明のポリプロピレン組成物(C)中の添加剤の含有量は、通常5.0重量%を超えず、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.1~3.5重量%、さらにより好ましくは0.2~2.0重量%の範囲、例えば0.3~1.0重量%にある。
【0126】
このような添加剤は市販されており、例えば、Hans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」、第6版、2009年(1141~1190頁)に記載されている。
【0127】
さらには、本発明に係る用語「添加剤(AD)」は、担体材料、特にポリマー担体材料も含む。
【0128】
ポリマー担体材料
好ましくは、本発明の難燃性ポリプロピレン組成物(C)は、プロピレンポリマー(PP)及び高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)とは異なるさらなるポリマー(複数種可)を、難燃性ポリプロピレン組成物(C)の重量に基づいて5.0重量%を超える量、好ましくは3.0重量%を超える量、より好ましくは2.0重量%を超える量では含まない。添加剤(AD)のための担体材料であるいずれのポリマーも、本発明に示されるようなポリマー化合物の量ではなく、それぞれの添加剤の量に算入される。
【0129】
添加剤(AD)のポリマー担体材料は、本発明の難燃性ポリプロピレン組成物(C)中での均一分布を確保するための担体ポリマーである。このポリマー担体材料は特定のポリマーには限定されない。ポリマー担体材料は、エチレンホモポリマー、エチレン及びC3~C8α-オレフィンコモノマー等のα-オレフィンコモノマーから得られるエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、並びに/又はプロピレン並びにエチレン及び/若しくはC4~C8α-オレフィンコモノマー等のα-オレフィンコモノマーから得られるプロピレンコポリマーであってもよい。ポリマー担体材料がスチレン又はその誘導体から誘導可能なモノマー単位を含有しないことが好ましい。
【0130】
使用
本発明はさらに、プロピレンポリマー(PP)及び窒素含有難燃剤(FR)を含む組成物のための垂れ防止剤(A)としての、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の使用であって、上記組成物はガラス繊維を含まず、かつ/又は上記プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、プロピレン並びにエチレン及び/又はC4~C8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である、使用に向けられる。
【0131】
プロピレンポリマー(PP)、異相プロピレンコポリマー(HECO)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)及び窒素含有難燃剤(FR)に関しては、上で提供された定義を参照されたい。
【0132】
物品
本発明は、上記で規定された難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品にも関する。本発明は、特に、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%の、上記で規定された難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品に関する。とりわけ好ましい実施形態では、本発明は、上記で規定された難燃性ポリプロピレン組成物(C)からなる物品に関する。
【0133】
好ましくは、当該物品は、電気ケーブル絶縁体、電気機器の筐体等の電子部品の分野における自動車用物品、自動車部品及び家電部品のパワーエレクトロニクスコンポーネントの容器や部品などである。
【0134】
本発明は、これより、以下に提供される実施例によりさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0135】
A. 測定方法
以下の用語の定義及び決定方法は、別段の定義がない限り、本発明の上記の全般的な説明及び以下の実施例に適用される。
【0136】
MFR2(230℃)はISO1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
【0137】
NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量及びコモノマー配列分布を定量した。定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの材料を、溶媒中の緩和剤の65mM溶液(Singh,G.、Kothari,A.、Gupta,V.、Polymer Testing 28 5(2009)、475)を与えるクロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac)3)とともに3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解した。均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。正確なエチレン含有量の定量のために必要である高分解能及び定量性を主な理由としてこの設定を選んだ。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.、Winniford,B.、J.Mag.Reson. 187(2007)225;Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128)を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルを、独自のコンピュータープログラムを使用して処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較可能な基準設定が可能になった。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察した(Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)。
ポリプロピレンホモポリマーについては、すべての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部基準としている。
位置欠陥(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253;Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157;Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)又はコモノマーに対応する特徴的なシグナルを観察した。
タクチシティ分布は、23.6~19.7ppmのメチル領域の積分により、注目する立体配列に関連しない部位があればそれを補正して定量した(Busico,V.、Cipullo,R.、Prog.Polym.Sci. 26(2001) 443;Busico,V.、Cipullo,R.、Monaco,G.、Vacatello,M.、Segre,A.L.、Macromolecules 30(1997) 6251)。
具体的には、タクチシティ分布の定量に及ぼす位置欠陥及びコモノマーの影響は、立体配列の特定の積分領域から代表的な位置欠陥及びコモノマーの積分値を減算することにより補正した。
アイソタクティシティは、ペンタッドレベルで決定し、すべてのペンタッド配列に対するアイソタクチックペンタッド(mmmm)配列の百分率として報告した。
[mmmm]%=100×(mmmm/全ペンタッドの和)
2,1エリスロ位置欠陥の存在は、17.7及び17.2ppmの2つのメチル部位の存在によって示され、他の特徴的部位によって確認した。
他のタイプの位置欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253)。
2,1エリスロ位置欠陥の量は、17.7及び17.2ppmの2つの特徴的なメチル部位の平均積分値を使用して定量した。
P21e=(Ie6+Ie8)/2
1,2一次挿入プロペンの量はメチル領域に基づいて定量した。その際、この領域に含まれるが一次挿入に関連しない部位及びこの領域から除外される一次挿入部位について補正を行った。
P12=ICH3+P12e
プロペンの全量は、一次挿入プロペン及びすべての他の存在する位置欠陥の和として定量した。
P全=P12+P21e
2,1エリスロ位置欠陥のモルパーセントは、全プロペンに対して定量した。
[21e]モル%=100×(P21e/P全)
コポリマーについては、エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察した(Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)。
位置欠陥も観察された(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev. 2000、100、1253;Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157;Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)場合には、コモノマー含有量に対するそのような欠陥の影響の補正が必要であった。
コモノマー分率は、13C{1H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分により、Wangら(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000) 1157)の方法を使用して定量した。この方法を、そのロバスト性、及び必要な場合には位置欠陥の存在を考慮できることが理由で選んだ。積分領域は、直面するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。
PPEPP配列中の孤立したエチレンのみが観察される系については、Wangらの方法を、存在しないことが既知の部位の非ゼロ積分の影響を低減するように改変した。このアプローチはそのような系に対するエチレン含有量の過大評価を低減し、これは、絶対的なエチレン含有量を求めるために使用される部位の数を
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
に減じることにより成し遂げられた。
この部位の組の使用により、対応する積分方程式は、Wangらの論文(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)で使用されたのと同じ表記法を使用して、
E=0.5(IH+IG+0.5(IC+ID))
となる。絶対的プロピレン含有量のために使用した式は改変しなかった。
絶対プロピレン含有量に使用した方程式は修正しなかった。
モルパーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[モル%]=100×fE
重量パーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1-fE)×42.08))
トライアド(triad)レベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの分析方法(Kakugo,M.、Naito,Y.、Mizunuma,K.、Miyatake,T. Macromolecules 15(1982)1150)を使用して決定した。この方法は、そのロバスト性、及びより広い範囲のコモノマー含有量への適用性を高めるためにわずかに調整される積分領域が理由で選んだ。
【0138】
プロピレンホモポリマー及びコポリマーの固有粘度(IV)は、DIN ISO1628/1、1999年10月(デカリン中135℃)に従って測定する。
【0139】
冷キシレン可溶部(XCS、重量%):冷キシレン可溶部(XCS)の含有量はISO16152;第1版;2005-07-01に従って25℃で決定した。
【0140】
ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、EN ISO1873-2に従って調製した射出成形試験片(80×10×4mm)を用いて、23℃及び-30℃でISO179-1/1eAに従って決定した。
【0141】
引張特性は、EN ISO1873-2に従って調製した厚さ4mmの射出成形ドッグボーン試験片に対して決定した。引張弾性率は、1mm/分のひずみ速度並びに23℃、80℃及び120℃でISO527-1Aに従って決定し、降伏応力は、50mm/分のひずみ速度並びに23℃、80℃及び120℃で決定した。
【0142】
分岐指数g’
分岐の相対量は、分岐ポリマー試料のg’指数を用いて決定する。長鎖分岐(LCB)指数は、g’=[η]
br/[η]
linと定義される。g’値が増加すると分岐含量が減少することは周知である。[η]は、ある分子量のポリマー試料のTCB中160℃における固有粘度であり、オンライン粘度及び濃度検出器により測定される。固有粘度は、Cirrus Multi-Offline SEC-Softwareバージョン3.2のハンドブックに記載されているように、Solomon-Gatesman(ソロモン-ゲーツマン)式を使用して測定した。
各溶出スライスの必要な濃度は、RI検出器によって決定される。
[η]
linは直鎖状試料の固有粘度であり、[η]
brは同じ分子量及び化学組成の分岐状試料の粘度である。数平均g’
n及び重量平均g’
wは、以下のように定義される。
【数1】
上記式中、a
iは画分iのdW/dlogMであり、A
iは画分iまでのポリマーの累積dW/dlogMである。分子量に対する直鎖状基準(直鎖状アイソタクチックPP)の[η]
linをオンライン粘度検出器で測定した。K及びα値(K=30.68×10
-3及びα=0.681)は、logM=4.5~6.1の分子量範囲において直鎖状基準から得た。g’計算のためのスライス分子量当たりの[η]
linは、以下の関係[η]
lin,i=K×M
i
αによって計算した。[η]
br,iは、オンライン粘度及び濃度検出器によって各特定の試料について測定した。
【0143】
gpcBR指数
gpcBR指数は、下記式を用いて算出される。
【数2】
上記式中、Cirrus Multi-Offline SEC-Softwareバージョン3.2及び以下のアプローチを用いて、Mw(LS15)は、15°の角度の光散乱溶出面積から計算され、[η](バルク)は対応する粘度検出器溶出面積から計算される。
【数3】
上記式中、K
LSは15°の角度の光散乱定数であり、dn/dcはRI検出器の検出器定数から計算される屈折率増分であり、K
IVは粘度計の検出器定数であり、Sp
iは各クロマトグラフィースライスにおける比粘度であり、Cはg/dl単位の対応する濃度である。
【0144】
F30及び溶融強度並びにv30及び溶融延伸性
本明細書に記載する試験は、ISO16790:2005に従う。歪み硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts(ポリマー溶融物のRheotens(レオテンス)マスターカーブ及び延伸性)」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Science、第36巻、925-935頁に記載されている方法によって決定する。ポリマーの歪み硬化挙動は、Rheotens装置(ジーメンス通り(Siemensstr.) 2、74711 ブーヒェン(Buchen)、ドイツのGoettfert(ゲットフェルト)の製品)によって分析する。この装置では、規定の加速度で引き下げることにより、溶融物のストランドが延伸される。
Rheotens実験は、工業用の紡糸及び押出成形プロセスをシミュレートする。原理的には、溶融物を丸いダイを通して圧迫するか又は押し出して、得られたストランドを引き出す。押出成形品にかかる応力を、溶融物の特性及び測定パラメータ(とりわけ、出力と引き出し速度の比、実用的には伸長率の尺度)の関数として記録する。以下に示す結果については、材料は、実験用押出機HAAKE Polylabシステムと、円筒形ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギアポンプを用いて押し出した。F30溶融強度及びv30溶融延伸性を測定するために、押出ポリマーの一部をバイパスすることにより、押出機出口(=ギヤポンプ入口)における圧力を30barに設定する。
ギアポンプは、ストランドの押し出し速度が5mm/sになるようにあらかじめ調整し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールの間のスピンライン長は80mmであった。実験開始時には、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押し出されたポリマーストランドの速度に調整した(引張力ゼロ)。その後、ポリマーフィラメントが破断するまでRheotensホイールの巻き取り速度をゆっくりと上げて実験を開始した。ホイールの加速度は、引張力が準定常状態で測定されるように十分小さくした。引き下げられたメルトストランドの加速度は120mm/秒2である。このRheotensは、PCプログラム「EXTENS」と組み合わせて操作した。これは、リアルタイムのデータ取得プログラムであり、引張力と引き下げ(ドローダウン)速度の測定データを表示及び保存する。ポリマーストランドが破断するRheotens曲線(力対プーリー回転速度)の終点を、F30溶融強度及びv30溶融延伸性の値とした。
【0145】
UL94垂直燃焼試験は、UL94:2016に従って行った。試料を、長さ125±5mm、幅13.0±0.5mm及び厚さ0.025~13mmの片に射出成形する。前処理条件Iでは、試料は、23±2℃の一定の室温及び50±10%の湿度で48時間コンディショニング(調整)されなければならない。前処理条件IIでは、試料は、試験の前に、空気循環オーブン内で70±1℃で168時間コンディショニングされ、次いでデシケータ内で室温で少なくとも4時間冷却されなければならない。試験は、試料をコンディショニングから取り出してから30分以内に行わなければならない。試料を試験チャンバ内で垂直に吊り下げ、10秒間の第1の点火、次いでさらに10秒間の第2の点火に供する。各点火後の燃焼時間を記録し、残光、チャンバの底部で綿を点火する燃焼液垂れがあるかどうか、及び保持クランプまで炎又は赤熱光があるかどうかも留意する。分類は、V-0、V-1、V-2又は分類なしであり、分類は、試験対象物の厚さに依存する。
【0146】
垂れ試験
この方法は、異なる配合物が燃焼するときにどのように滴下するかを決定することを意図している。サイズ8メッシュ、直径150mmの金属グリッドを使用する。各ポリマー組成物試験プレートを、厚さ3.0mmにプレスし、65×65mmの面積に切断する。試験前に、試料を相対湿度50%で少なくとも16時間23℃でコンディショニングする。次いで、試験をヒュームカップボード中で実施する。ヒュームカップボード内の温度は、(23±10)℃であるものとする。流量計の較正は、ガス容器を交換する際に行う。レコーダーを較正し、流量計上の流量をブタン:650±30ml/分(23℃、100kPa)に設定する。プレートをネットの中央に配置する。バーナーを、約50mmの内側の青色の火炎を伴う約130mmの安定した火炎で点灯する。バーナーを、試料の中心に向かって傾斜した45度の角度で配置し、内側青色火炎の先端が試験対象物の表面の中心に当たるようにする。試験実行全体の間、バーナーをこの位置に維持する。試験時間は、材料の可燃性によって大きく異なる。試料の燃焼が停止すると、バーナーを取り外す。試料あたり少なくとも3回の試験を行う。滴下物を底部の水浴に集める。水を乾燥させ、滴下物を秤量する。残留する乾燥液滴の重量を元の質量で除し(m/m)、元の質量の重量%として計算する。この試験は、比較可能な試験であり、比較可能な材料に分かれることができる。
【0147】
2. 実施例
プロピレンポリマー(PP)
触媒調製
PPの調製のための触媒を以下のように調製した。
3.4Lの2-エチルヘキサノールと810mLのプロピレングリコールブチルモノエーテル(モル比4/1)を20Lの反応器に加えた。次に、Crompton GmbH(クロンプトン)が提供するBEM(ブチルエチルマグネシウム)の20.0%トルエン溶液7.8Lを、よく撹拌した上記アルコール混合物にゆっくりと加えた。添加の間、温度を10.0℃に保った。添加後、反応混合物の温度を60.0℃に上昇させ、この温度で30分間混合を続けた。最後に室温まで冷却した後、得られたMg-アルコキシドを貯蔵容器に移した。上記で調製したMgアルコキシド21.2gをビス(2-エチルヘキシル)シトラコネート4.0mLと5分間混合した。混合後、得られたMg錯体は直ちに触媒成分の調製に使用した。メカニカルスターラーを備えた300mLの反応器に、四塩化チタン19.5mLを25.0℃で入れた。混合速度は170rpmに調整した。上記で調製したMg錯体26.0gを、温度を25.0℃に保ったまま30分以内に添加した。3.0mLのViscoplex 1-254と、2mgのNecadd 447を含む1.0mLのトルエン溶液とを加えた。その後、24.0mLのヘプタンを加えてエマルションを形成した。混合を25.0℃で30分間続けた。その後、30分以内に反応器の温度を90.0℃まで上げた。この反応混合物を90.0℃でさらに30分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90.0℃で15分間沈降させた。
【0148】
この固体材料を5回洗浄した。洗浄は、170rpmで30分間撹拌しながら80.0℃で行った。撹拌を停止した後、反応混合物を20~30分静置し、続いてサイフォンで吸引した。
洗浄1:洗浄は、100mLのトルエン及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄2:洗浄は、30mLのTiCl4及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄3:洗浄は、100mLのトルエンで行った
洗浄4:洗浄は、60mLのヘプタンで行った
洗浄5:洗浄は、10分間の撹拌下で、60mLのヘプタンで行った
【0149】
その後、撹拌を停止し、反応混合物を10分間静置し、温度を70℃に下げ、続いてサイフォンで吸引し、続いてN2注入(スパージ、sparging)を20分間行い、空気に敏感な粉末を得た。
【0150】
触媒のVCH変性
35mLの鉱油(Paraffinum Liquidum PL68)を125mLのステンレス鋼反応器に加え、続いて0.82gのトリエチルアルミニウム(TEAL)及び0.33gのジシクロペンチルジメトキシシラン(ドナーD)を不活性条件下、室温で加えた。10分後、5.0gの1aで調製した触媒(Ti含有量1.4重量%)を添加し、さらに20分後、5.0gのビニルシクロヘキサン(VCH)を添加した。温度を、30分かけて60℃に上昇させ、この高さで20時間保った。最後に、温度を20℃に下げ、油/触媒混合物中の未反応VCHの濃度を分析したところ、120ppm重量であることが判明した。
【0151】
異相プロピレンコポリマーであるプロピレンポリマー(PP)の調製のプロセスを表1に要約する。
【0152】
【0153】
ポリプロピレン組成物(C)の調製
プロピレンポリマーPPを、下記表2に示す量の難燃剤組成物(FR)及び垂れ防止剤(A)と同方向回転(共回転)二軸押出機で溶融ブレンドした。
【0154】
【0155】
FRは、55~60重量%のメラミンポリホスフェート及び40~55重量%のピペラジンピロホスフェートを含むSULIの市販の難燃剤組成物Phlamoon-1090Aである。
HMS-PPは、2.1g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)、36cNのF30溶融強度及び230mm/秒のv30溶融延伸性を有するBorealis(ボレアリス)の市販の長鎖分岐ポリプロピレンWB140HMSである。
PTFEは市販のPTFE DYNEON TF 2025 Z PTFE(3M)である。
CBは、市販のカーボンブラックマスターバッチCBMB-LD-09-A02(PE中40%カーボンブラック)である。
【0156】
表2から分かるように、垂れ防止剤としてPTFEの代わりにHMS-PPを含む本発明の組成物はV0と評価され、垂れ現象の発生は低いレベルにある。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)23.0~80.0重量%のプロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~37.0重量%の、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含み、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)はガラス繊維を含有しない、難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項2】
前記プロピレンポリマー(PP)は、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)と
を含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である請求項1に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項3】
難燃性ポリプロピレン組成物(C)であって、
i)異相プロピレンコポリマー(HECO)であるプロピレンポリマー(PP)であって、
a)プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)、及び
b)プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)
を含むプロピレンポリマー(PP)と、
ii)窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である垂れ防止剤(A)と、
iv)任意選択で、カーボンブラック(CB)と
を含む、難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項4】
前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の全重量に基づいて、
i)20.0~65.0重量%の前記プロピレンポリマー(PP)と、
ii)10.0~40.0重量%の前記窒素含有難燃剤(FR)と、
iii)10.0~40.0重量%の前記垂れ防止剤(A)と、
iv)0.0~15.0重量%のカーボンブラック(CB)と
を含む請求項3に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項5】
前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)はハロゲンを含まない請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項6】
前記プロピレンポリマー(PP)、前記窒素含有難燃剤(FR)、前記垂れ防止剤(A)及び任意選択で前記カーボンブラック(CB)を合わせた全量は、前記難燃性ポリプロピレン組成物(C)の少なくとも90重量%を構成し、好ましくは合計で100重量%になる請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項7】
前記窒素含有難燃剤(FR)は、第1の窒素含有ホスフェート(FR1)及び第2の窒素含有ホスフェート(FR2)を含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項8】
前記第1の窒素含有ホスフェート(FR1)と前記第2の窒素含有ホスフェート(FR2)との重量比は60:40~40:60の範囲にある請求項7に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項9】
前記第1の窒素含有ホスフェート(FR1)はメラミンポリホスフェートであり、前記第2の窒素含有ホスフェート(FR2)はピペラジンピロホスフェートである請求項
7に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項10】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)は、
i)4.0~17.0モル%の範囲、好ましくは6.0~10.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の全重量に基づいて7.0~25.0重量%の範囲、好ましくは11.0~22.0重量%の範囲の冷キシレン可溶部(XCS)
を有する請求項2から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項11】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の前記キシレン可溶部(XCS)は、
i)25.0~65.0モル%の範囲、好ましくは40.0~45.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び/又は
ii)3.5dl/g未満、好ましくは2.4~3.4dl/gの範囲の、ISO1628/1(デカリン中135℃)に従って測定された固有粘度(IV)
を有する請求項10に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項12】
前記高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、0.5~15.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項13】
1.0~30.0g/10分の範囲のISO1133に従って決定されたメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)。
【請求項14】
プロピレンポリマー(PP)及び窒素含有難燃剤(FR)を含む組成物のための垂れ防止剤(A)としての、少なくとも20cNのISO16790:2005に従って決定されたF
30溶融強度を有する高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)の使用であって、
a)前記組成物はガラス繊維を含まず、かつ/又は
b)前記プロピレンポリマー(PP)は、プロピレンのポリマーであるマトリクス(M)と、プロピレン並びにエチレン及び/又はC
4~C
8α-オレフィンから誘導される単位を含むコポリマーであるエラストマー(E)とを含む異相プロピレンコポリマー(HECO)である
使用。
【請求項15】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン組成物(C)を含む物品。
【国際調査報告】