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特表2024-526971車両用の電気駆動システム及び電気駆動システムを動作させる方法
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  • 特表-車両用の電気駆動システム及び電気駆動システムを動作させる方法 図1
  • 特表-車両用の電気駆動システム及び電気駆動システムを動作させる方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】車両用の電気駆動システム及び電気駆動システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/24 20190101AFI20240711BHJP
【FI】
B60L53/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503992
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070946
(87)【国際公開番号】W WO2023006749
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021003882.7
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・トレースター
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・オルネー
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BA04
5H125BB05
5H125BC23
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE61
5H125FF16
(57)【要約】
本発明は、車両用の電気駆動システム(1)に関し、車両用電気駆動システムは、
-車両の少なくとも1つの駆動軸(4)を駆動するための第1の三相電気機械(5)及び第2の三相電気機械(6)と、
-車両の走行動作中に第1及び第2の三相電気機械(5、6)に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵器(2)であって、第1の三相電気機械(5)の第1のインバータ(9)及び第2の三相電気機械(6)の第2のインバータ(10)がそれぞれ電気エネルギー貯蔵器(2)に結合される、電気エネルギー貯蔵器と、
-電気エネルギー貯蔵器(2)を車両外部の充電ユニット(11)に電気的に結合するための車両側充電端子(3)と、を備え、
-第1及び/又は第2のインバータ(9、10)によって、車両側充電端子(3)の充電電圧(UL)を、電気エネルギー貯蔵器(2)を充電するための供給電圧(UV)に変換可能である。
更に、本発明は方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電気駆動システム(1)であって、
-車両の少なくとも1つの駆動軸(4)を駆動するための第1の三相電気機械(5)及び第2の三相電気機械(6)と、
-前記車両の走行動作中に前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵器(2)であって、前記第1の三相電気機械(5)の第1のインバータ(9)及び前記第2の三相電気機械(6)の第2のインバータ(10)がそれぞれ前記電気エネルギー貯蔵器(2)に結合される、前記電気エネルギー貯蔵器と、
-前記電気エネルギー貯蔵器(2)を車両外部の充電ユニット(11)に電気的に結合するための車両側充電端子(3)と、
を備える、前記電気駆動システム(1)において、
-前記第1及び/又は前記第2のインバータ(9、10)によって、前記車両側充電端子(3)の充電電圧(UL)を、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を充電するための供給電圧(UV)に変換可能であり、
-前記第1の三相電気機械(5)及び前記第2の三相電気機械(6)が前記車両の後車軸又は前記車両の前車軸に配置されており、前記第1の三相機械(5)によって前記前車軸又は前記後車軸の第1の車輪(7)を駆動可能であり、前記第2の三相電気機械(6)によって前記前車軸又は前記後車軸の前記第1の車輪(7)とは異なる第2の車輪(8)を駆動可能である
ことを特徴とする、前記電気駆動システム(1)。
【請求項2】
前記車両の充電動作のために、前記第1のインバータ(9)又は前記第2のインバータ(10)が昇圧変圧器として動作可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項3】
前記電気駆動システム(1)は、前記車両の充電動作のために、前記車両側充電端子(3)を前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に結合するためのスイッチング装置(12)を有し、前記スイッチング装置(12)の第1の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記電気エネルギー貯蔵器(2)に直接電気的に接続され、前記スイッチング装置(12)の第2の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に接続される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項4】
前記スイッチング装置(12)の前記第1の切替位置において、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を前記充電電圧(UL)で直接充電可能であり、前記スイッチング装置(12)の第2の切替位置において、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を前記充電電圧(UL)より高い前記供給電圧(UV)で充電可能である
ことを特徴とする、請求項3に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項5】
車両の電気駆動システム(1)を動作させる方法であって、
-前記車両の走行運転中に、前記車両の少なくとも1つの駆動軸(4)が第1の三相電気機械(5)及び第2の三相電気機械(6)によって駆動され、
-前記第1の三相機械(5)の第1のインバータ(9)及び前記第2の三相機械(6)の第2のインバータ(10)がそれぞれ電気エネルギー貯蔵器(2)によって電気を供給される、前記方法において、
-前記車両の充電動作のために、前記車両の車両側充電端子(3)が前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に結合され、
-前記第1及び前記第2のインバータ(9、10)によって、前記車両側充電端子(3)の充電電圧(UL)が前記電気エネルギー貯蔵器(2)を充電するための供給電圧(UV)に変換され、
-前記第1の三相電気機械(5)及び前記第2の三相電気機械(6)は、前記第1の三相機械(5)によって前車軸又は後車軸の第1の車輪(7)を駆動することができ、前記第2の三相電気機械(6)によって前記前車軸又は前記後車軸の前記第1の車輪(7)とは異なる第2の車輪(8)を駆動することができるように、前記車両の前記後車軸又は前記車両の前記前車軸に配置される
ことを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の車両用の電気駆動システムに関する。更に、本発明は、請求項5の前提部に記載の電気駆動システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に駆動される車両の電圧レベルは、現在、800ボルトである。その場合、これらの車両には800ボルトの車両バッテリが搭載されており、このバッテリを用いて車載電気システム及び/又は電気駆動機械にエネルギーを供給することができる。
例えば、これは特許文献1及び特許文献2に開示されている。車両の電気機械が車両を駆動できるようにするには、交流電圧が必要である。この交流電圧は、車載バッテリのバッテリ電圧からインバータを用いて生成される。例えば、これは特許文献3に開示されている。
【0003】
特許文献4及び特許文献5はそれぞれ、自動車用のスイッチングアセンブリを開示している。その場合、それぞれ車両の電気機械には、車両の高電圧バッテリを介して電力変換器によって電気エネルギーが供給される。
800ボルトの車両を400ボルトの充電コラムで充電する場合の欠点は、下位互換性のための追加コストが高いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE102019005621A1
【特許文献2】DE102009052680A1
【特許文献3】DE102018000488A1
【特許文献4】DE102018009848A1
【特許文献5】DE102018009840A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、少なくとも部分的に電気的に動作する車両の電気エネルギー貯蔵器をより容易に、かつ充電ステーションの電圧レベルとは無関係に充電できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、独立請求項に記載の電気駆動システム及び方法によって解決される。有意義な発展形態は、従属請求項より明らかになる。
【0007】
本発明の態様は、車両用の電気駆動システムに関し、車両用の電気駆動システムは、
-車両の少なくとも1つの駆動軸を駆動するための第1の三相電気機械及び第2の三相電気機械と、
-車両の走行動作中に第1及び第2の三相電気機械に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵器であって、第1の三相電気機械の第1のインバータ及び第2の三相電気機械の第2のインバータがそれぞれ電気エネルギー貯蔵器に結合される、電気エネルギー貯蔵器と、
-電気エネルギー貯蔵器を車両外部の充電ユニットに電気的に結合するための車両側充電端子と、を備え、
第1及び/又は第2のインバータによって、車両側充電端子の充電電圧を、電気エネルギー貯蔵器を充電するための供給電圧に変換可能である。
【0008】
提案される電気駆動システムの2つのインバータを使用することによって、電圧レベルが800ボルトの電動車両を400ボルト又は500ボルトの充電ステーションで効率的かつ簡単に充電できる。その結果、提案される電気駆動システムを用いて電動車両の下位互換性を向上させることができ、バッテリ電圧が800ボルトの電動車両を400ボルトの充電コラムでも充電することができる。三相電気機械の2つのインバータを使用することによって、400ボルトの充電コラムで充電するための追加の電圧コンバータ又はその他の回路アセンブリを省略することができる。したがって、提案される電気駆動システムを用いて、充電ステーションの電圧レベルがバッテリ電圧と比べて低い場合でも、電気的に駆動される車両を効率的かつ簡単に充電することができる。この下位互換性によって、追加のスイッチング構成を省略することにより重量軽減及びコストの削減が達成される。
【0009】
換言すれば、車両、特に少なくとも部分的に電気的に駆動される車両の電気駆動システムは、駆動軸当たり2つの電気駆動機械若しくは三相電気機械を有することができる。特に、車両の駆動軸ごとに2つの電気機械を配置することができる。したがって、特に、例えば車両の各車輪、特に車両の各車軸を、それ自体の電気機械によって個別に駆動及び制御することができる。このことは、一方では、機械的な差動装置を省略でき、これを電気機械によって提供される電気的な差動装置で置き換えることができるという追加の利点を提供する。それによって、特に車両の重量節約とコスト節約を達成することができる。駆動軸ごとに複数の電気機械を使用することの利点の1つは、「トルクベクタリング」の実装である。
【0010】
換言すれば、例えば、車両の車軸の2つの駆動インバータが本来の目的以外に充電プロセスに使用される。したがって、これらの駆動インバータは、一次的機能として三相電気機械への電気の供給を実現し、二次的機能として、車両の電圧レベルと比べて低い電圧レベルの充電ステーションでの電気エネルギー貯蔵装置の充電を可能にする。
【0011】
更に、三相電気機械のインダクタンスを充電ステーションでの充電プロセスに利用することができ、それにより充電ステーションの比較的低い電圧を上げるために、大きくて重いチョークを設置するための追加のスペースは必要とされない。直流充電源での充電に2つの三相電気駆動機械を使用することによって、直流充電源(DC充電ソケット)の方向でのEMC干渉若しくは電磁的外乱を低く抑えることができ、DC充電ソケットの方向で必要なEMCフィルタをより小さく、より安価に設計することができる。EMCフィルタは通常、充電コラムを外乱若しくは変動から保護するために用いられる。三相機械の2つのインバータ、特に三相機械のインダクタンスを使用することによって、そのようなEMCフィルタを省略することができる。これにより、コストと重量が更に削減される。
【0012】
400ボルトの充電コラムで充電する場合に2つのインバータのうちの1つが使用され、もう1つのインバータが必要な電流経路を特にクロック方式で切り替える場合が特に有利である。これにより、充電コラムの400ボルトを車両バッテリの800ボルトに昇圧するために、少なくとも1つのインバータがステップアップコンバータとして使用される。これにより、車両にすでに搭載されているインバータが本来の目的以外に使用されるため、400ボルトの充電プロセスでの下位互換性のための追加コンポーネントを省略することもできる。その結果、電気駆動システムのインバータがその一次的機能の他に、400ボルトの充電コラムで充電するための追加機能を有するため、追加のコンポーネントを省略することができる。
【0013】
本発明の別の態様は、車両の電気駆動システムを動作させる方法に関し、方法は、
-車両の走行運転中に、車両の少なくとも1つの駆動軸が第1の三相電気機械及び第2の三相電気機械によって駆動され、
-第1の三相機械の第1のインバータ及び第2の三相機械の第2のインバータがそれぞれ電気エネルギー貯蔵器によって電気を供給され、
-車両の充電動作のために、車両の車両側充電端子が第1及び第2の三相電気機械に電気的に結合され、かつ
-第1及び第2のインバータによって、車両側充電端子の充電電圧が電気エネルギー貯蔵器を充電するための供給電圧に変換される。
【0014】
提案される方法によって、電気駆動システムは、三相電気機械を用いて車両を駆動するためのその一次的機能の他に、車両の充電動作のために、本来の目的以外に使用でき、それにより電気駆動システムは、車両を駆動するために三相電気機械に供給する機能と、400ボルトの充電ステーションで800ボルトの車両を充電するための二次的機能とを有する。
【0015】
特に、たった今説明した方法は、前述の態様又はその有利な実施形態による電気駆動システムを用いて実行することができる。
【0016】
電気駆動システムの有利な実施形態は、方法の有利な実施形態と見なすことができる。このために、電気駆動システムは、方法の実行又はその有利な実施形態を可能にする具体的な特徴を有する。
【0017】
特に、一方の態様の有利な実施形態は、他方の態様の有利な実施形態としてみなされるべきであり、またその逆も同様である。
【0018】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、好適な実施例並びに(1つ以上の)図面に基づく以下の説明より明らかになる。上記の説明において挙げた特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下の各図に関する説明において挙げられる特徴及び特徴の組み合わせ、並びに/又は各図においてのみ示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ提示した組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組み合わせで使用することもできるし、単独で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両の800V充電プロセスにおける車両の駆動システムの概略ブロック図である。
図2】車両の400V充電プロセスにおける図1の駆動システムの別の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図中、機能的に同一の要素には同一の参照符号を付している。
【0021】
図1は、例えば、本発明による車両の電気駆動システム1の概略図を示す。これは、電気自動車又はハイブリッド車の電気駆動システムである。例えば、車両の電圧レベルは800ボルトである。この電圧レベルでは、電圧は、特に車両の電気エネルギー貯蔵器2のバッテリ電圧UBattと理解することができる。その場合、電気エネルギー貯蔵器2のバッテリ電圧UBattは、770ボルトから830ボルトの電圧範囲を有する。特に、バッテリ電圧UBattは、電気エネルギー貯蔵器2の充電状態、及び/又は電気駆動システム1の回路構成、及び/又は電気駆動システム1の動作状態に応じて変動する可能性がある。特に、電気エネルギー貯蔵器は、実質的に800ボルトの電圧のバッテリ電圧UBattを有する。
【0022】
本出願において、「実質的に」とは、+/-5パーセント、特に+/-10パーセントの許容差と理解されるべきである。特に、電圧値が記載される場合、5%、特に10%の許容差及び/又は測定許容差を考慮する必要がある。
【0023】
特に、電気駆動システム1とは、車両を駆動又は移動させるために必要なすべてのコンポーネント及び/又はシステムと理解されるべきである。特に、電気駆動システム1には、車両フレーム、電気エネルギー貯蔵器2、車両側充電端子3、少なくとも1つの駆動軸4、電気エネルギー貯蔵器2、及び少なくとも第1の三相電気機械5及び第2の三相電気機械6が属し得る。したがって、電気駆動システム1を用いて車両の移動走行を実行することができる。
【0024】
特に、電気駆動システム1は、少なくとも1つの駆動軸4を有する。これは、特に三相電気機械5、6によって駆動される軸である。特に、車両若しくは電気駆動システム1は、複数の駆動軸を有することができる。特に、車両は、1つ又は2つの駆動軸を有する乗用車、又は複数の駆動軸を有する貨物自動車であり得る。
【0025】
特に、この少なくとも1つの駆動軸4は、2つの三相電気機械5、6を有する。したがって、車両の各駆動軸は少なくとも2つの三相電気機械を有することができる。言い換えれば、例えば、駆動軸の各車輪は、それ自体の電気機械、すなわち2つの三相機械5、6によって駆動され得る。特に、車両の各タイヤは、それ自体の電気駆動機械によって駆動又は制御され得る。
【0026】
例えば、第1の三相電気機械5と第2の三相電気機械6を駆動軸としての後車軸又は前車軸に一緒に若しくは共に配置することができる。したがって、例えば、軸ごとに2つの三相電気機械を配置することができる。例えば、後車軸と前車軸の両方が2つの三相機械を有することができる。特に、2つの三相機械5、6は、車両の駆動軸が後車軸であるのか、前車軸であるのかに応じて、後車軸又は前車軸のいずれかに配置される。その場合、例えば、駆動軸4の第1の車輪7を第1の三相機械5によって駆動することができ、駆動軸4の第1の車輪7とは異なる第2の車輪8を第2の三相電気機械6によって駆動することができる。
【0027】
2つの三相電気機械5、6が駆動軸4を駆動できるようにするために、これらの三相電気機械には電気エネルギー貯蔵器2によってエネルギーが供給される、若しくは送り込まれる。バッテリ電圧UBattは直流電圧であるが、三相電気機械5、6は交流電圧を必要とするため、三相電気機械5、6はそれぞれインバータ9、10を有する。第1の三相電気機械5は第1のインバータ9を有し、第2の三相電気機械6は第2のインバータ10を有する。インバータ9、10は、特に、電力コンバータ、インバータ、又はロータリコンバータである。インバータ9、10を用いて、バッテリ電圧UBattを、それぞれ三相機械5、6に供給若しくは動作させるための交流電圧に変換若しくは逆変換することができる。
【0028】
特に、2つのインバータ9、10は、電気エネルギー貯蔵器2に接続若しくは結合される。例えば、このために、2つのインバータ9、10を共に、それぞれ、それらの入力側を介して電気エネルギー貯蔵器2に接続することができる。したがって、両方のインバータ9、10に同時に、特に同一のバッテリ電圧UBattを供給することができる。
【0029】
特に、インバータ9、10を駆動インバータと呼ぶことができる。特に、インバータ9、10は、S3Lインバータ又は3レベルインバータであり得る。
【0030】
電気エネルギー貯蔵器2を充電できるようにするために、この電気エネルギー貯蔵器は車両側充電端子3に電気的に結合される。車両側充電端子3は、特に、車両の充電ソケット若しくは充電コンセントである。特に、車両外部の充電ユニット11を車両側充電端子に接続することができる。車両外部の充電ユニット11は、例えば、充電ステーション又は充電コラムであり得る。特に、充電ユニット11は、直流電圧を提供するための直流充電源である。特に、充電ユニット11により、車両側充電端子3に充電電圧ULが提供される。
【0031】
電気エネルギー貯蔵器2を効率的に充電できるようにするために、充電電圧ULがバッテリ電圧UBattと実質的に同じ電圧値を有する場合が有利である。換言すれば、バッテリ電圧UBatt及び充電電圧ULが800ボルトである場合が有利である。これは常に当てはまるわけではないので、充電ユニット11が500ボルト未満の充電電圧Lのみを提供できる場合には、2つのインバータ9、10、特に三相電気機械5、6を本来の目的以外に使用することができる。したがって、この場合、電気駆動システム1の下位互換性が必要とされる。電圧コンバータ又は車載充電器などの追加の充電ユニットを省略できるようにするために、この充電動作のための三相電気機械5、6、特にインバータ9、10が本来の目的以外に使用される。その場合、車両、特に電気エネルギー貯蔵器2の充電動作のために、第1のインバータ9又は第2のインバータ10のいずれかが昇圧コンバータ若しくはステップアップコンバータとして動作する。
【0032】
電気エネルギー貯蔵器2は、例えば、車両バッテリ、或いはバッテリシステム又は複数の部分バッテリ、或いは高電圧バッテリであり得る。
【0033】
その場合、電気エネルギー貯蔵器2の充電動作のためにインバータ9、10を使用できるようにするために、電気駆動システム1は、スイッチング装置12若しくはスイッチング機器若しくはスイッチングマトリクスを有することができる。このスイッチング装置12を用いて、充電ユニット11による電気エネルギー貯蔵器2の直接的な充電プロセスに、又はインバータ9、10を介して間接的に設定若しくは切替えることができる。
【0034】
図1において、800ボルトのDC充電の場合が示される。ここでは、スイッチング装置12は、第1の切替位置に切り替えられている。この場合、車両側充電端子3若しくは充電ユニット11は、電気エネルギー貯蔵器2に直接接続若しくは結合され、それにより電気エネルギー貯蔵器2を充電電圧ULにより充電することができる。
【0035】
この800ボルトDC直接充電は、図1に電流の流れ方向矢印13で示されている。次に、次の図2において、電気エネルギー貯蔵器2の400ボルトDC充電プロセスが例示的に示されている。その場合、電気駆動システムについての説明は図1のものと同じである。
【0036】
この場合、スイッチング装置12は、第1の切替位置とは異なる第2の切替位置に切り替えられている。したがって、第2の切替位置において、車両側充電端子3は、第1及び第2の三相電気機械5、6とインバータ9、10に電気的に接続若しくは結合される。この場合、第1及び/又は第2のインバータ9、10によって、この場合400ボルトであり得る充電電圧ULを、供給電圧UVに変換若しくは昇圧変圧することができる。したがって、充電電圧ULの電圧値を、800ボルトの電圧値が供給電圧UVとして存在するように昇圧変圧することができる。この場合、電気エネルギー貯蔵器2をこの供給電圧で充電することができる。このために、例えば図2において、充電ユニット11から三相機械5、6及びインバータ9、10を介して電気エネルギー貯蔵器2への電流の流れが電流の流れ方向矢印14で示されている。特に、この場合、2つのインバータ9、10のうちの少なくとも1つはステップアップコンバータとして動作する。この場合、もう1つのインバータ9、10は、クロック方式で、若しくはクロック発生器として動作する。この場合、クロック生成素子の電流の流れが電流流れ方向矢印15で示されている。この場合、クロック動作の電流流れ方向矢印15は破線で示されている。
【0037】
例えば、インバータ9、10の様々な半導体スイッチを第1及び/又は第2のインバータ9、10のステップアップ動作及びクロック生成動作のために制御することができる。例えば、インバータ9、10は、このためにIGBT又はMOSFETを有することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電気駆動システム
2 電気エネルギー貯蔵器
3 車両側充電端子
4 駆動軸
5、6 第1及び第2の三相電気機械
7、8 第1及び第2の車輪
9、10 第1及び第2のインバータ
11 車両外部の充電ユニット
12 スイッチング装置
13、14、15 電流の流れ方向矢印
Batt バッテリ電圧
UL 充電電圧
UV 供給電圧
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電気駆動システム(1)であって、
-車両の少なくとも1つの駆動軸(4)を駆動するための第1の三相電気機械(5)及び第2の三相電気機械(6)と、
-前記車両の走行動作中に前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵器(2)であって、前記第1の三相電気機械(5)の第1のインバータ(9)及び前記第2の三相電気機械(6)の第2のインバータ(10)がそれぞれ前記電気エネルギー貯蔵器(2)に結合される、前記電気エネルギー貯蔵器と、
-前記電気エネルギー貯蔵器(2)を車両外部の充電ユニット(11)に電気的に結合するための車両側充電端子(3)と、
を備え、
-前記第1及び/又は前記第2のインバータ(9、10)によって、前記車両側充電端子(3)の充電電圧(UL)を、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を充電するための供給電圧(UV)に変換可能であり、
-前記第1の三相電気機械(5)及び前記第2の三相電気機械(6)が前記車両の後車軸又は前記車両の前車軸に配置されており、前記第1の三相電気機械(5)によって前記前車軸又は前記後車軸の第1の車輪(7)を駆動可能であり、前記第2の三相電気機械(6)によって前記前車軸又は前記後車軸の前記第1の車輪(7)とは異なる第2の車輪(8)を駆動可能であり、
前記車両の充電動作のために、前記第1のインバータ(9)又は前記第2のインバータ(10)が昇圧変圧器として動作可能である、前記電気駆動システム(1)において、
前記電気駆動システム(1)は、前記車両の充電動作のために、前記車両側充電端子(3)を前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に結合するためのスイッチング装置(12)を有し、前記スイッチング装置(12)の第1の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記電気エネルギー貯蔵器(2)に直接電気的に接続され、前記スイッチング装置(12)の第2の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に接続される
ことを特徴とする、前記電気駆動システム(1)。
【請求項2】
前記スイッチング装置(12)の前記第1の切替位置において、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を前記充電電圧(UL)で直接充電可能であり、前記スイッチング装置(12)の第2の切替位置において、前記電気エネルギー貯蔵器(2)を前記充電電圧(UL)より高い前記供給電圧(UV)で充電可能である
ことを特徴とする、請求項に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項3】
車両の電気駆動システム(1)を動作させる方法であって、
-前記車両の走行運転中に、前記車両の少なくとも1つの駆動軸(4)が第1の三相電気機械(5)及び第2の三相電気機械(6)によって駆動され、
-前記第1の三相電気機械(5)の第1のインバータ(9)及び前記第2の三相電気機械(6)の第2のインバータ(10)がそれぞれ電気エネルギー貯蔵器(2)によって電気を供給され、
-前記車両の充電動作のために、前記車両の車両側充電端子(3)が前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に結合され、
-前記第1及び前記第2のインバータ(9、10)によって、前記車両側充電端子(3)の充電電圧(UL)が前記電気エネルギー貯蔵器(2)を充電するための供給電圧(UV)に変換され、
-前記第1の三相電気機械(5)及び前記第2の三相電気機械(6)は、前記第1の三相電気機械(5)によって前車軸又は後車軸の第1の車輪(7)を駆動することができ、前記第2の三相電気機械(6)によって前記前車軸又は前記後車軸の前記第1の車輪(7)とは異なる第2の車輪(8)を駆動することができるように、前記車両の前記後車軸又は前記車両の前記前車軸に配置され
前記車両の充電動作のために、前記第1のインバータ(9)又は前記第2のインバータ(10)を昇圧変圧器として動作させる、前記方法において、
前記電気駆動システム(1)は、前記車両の充電動作のために、前記車両側充電端子(3)を前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に結合するためのスイッチング装置(12)を有し、前記スイッチング装置(12)の第1の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記電気エネルギー貯蔵器(2)に直接電気的に接続され、前記スイッチング装置(12)の第2の切替位置において、前記車両側充電端子(3)が前記第1及び前記第2の三相電気機械(5、6)に電気的に接続される
ことを特徴とする、前記方法。
【国際調査報告】