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特表2024-526976拡張性かつ不規則性角膜障害の改善のためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】拡張性かつ不規則性角膜障害の改善のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/013 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61F9/013 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504147
(86)(22)【出願日】2022-07-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022036042
(87)【国際公開番号】W WO2023009278
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】17/528,484
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/225,484
(32)【優先日】2021-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524028773
【氏名又は名称】シータック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グリーンスタイン, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルス, ジョン
(57)【要約】
角膜組織から導出される角膜増強物を使用する、拡張性角膜障害の改善のためのデバイスおよび方法が、開示される。増強物の形状は、コンピュータ化された角膜トポグラフィおよびトモグラフィに基づいた患者の角膜のマッピングから取得されるデータを使用して判定される。考慮される因子は、最大角膜曲率測定値と、具体的な等偏差輪郭とを含む。一実施形態では、増強物は、間質内ポケットの中の挿入を意図される角膜インレーである。さらなる実施形態では、増強物は、そこから上皮層が除去されている角膜の領域にわたって位置付けられることが意図される、角膜オンレーである。角膜オンレーは、上皮層が、増強物にわたって再成長するまで、定位置に保持される。さらなる実施形態では、インレーまたはオンレー増強物は、角膜増強物の増強後のさらなる再成形が続く。一実施形態では、本さらなる再成形は、光屈折矯正角膜切除(PRK)手術である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜の異常の改善のための方法であって、
前記角膜の前記異常の重症度の尺度を判定することと、
最適な角膜形状からの前記異常な角膜の偏差を定量化する、前記角膜の角膜マップを生成することと、
前記角膜マップおよび前記重症度の尺度を使用して、前記角膜の前記障害を改善するために、角膜増強物の適切な3次元形状を計算することと、
角膜組織から成り、かつ前記適切な3次元形状を有する角膜テンプレートを使用して、前記角膜増強物を生産することと、
前記角膜増強物を用いて、前記角膜を増強することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記角膜増強物を前記生産することはさらに、
角膜同種移植片および角膜異種移植片のうちの1つを用いて治療されている前記角膜以外の源から前記角膜テンプレートを取得することと、
増強に先立って、前記角膜テンプレートを成形し、前記角膜増強物の前記適切な3次元形状を生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角膜の前記異常は、円錐角膜であり、前記重症度の尺度は、最大角膜曲率測定値(K-max)であり、前記角膜マップは、角膜トモグラフィまたは角膜トポグラフィを使用して取得される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記適切な3次元形状は、3~5mmの範囲内の内側半径と、7~9mmの範囲内の外側半径とを有する、ドーナツ形の形状から切断される扇形であり、均一な厚さは、方程式:t=10×K-max-300を使用して判定され、式中、tは、μm単位における前記厚さであり、K-maxは、ジオプタ単位において測定される前記最大角膜曲率測定値である、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
前記角膜マップは、標高マップであり、前記角膜増強物の前記適切な3次元形状は、部分的に前記標高マップの等標高線に対して最良適合である曲線である、平面投影を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記角膜増強物の最大厚は、前記円錐角膜の前記最大角膜曲率測定値に比例し、前記方程式:t=10×K-max-300を使用して判定され、式中、tは、μm単位における前記最大厚を表し、K-maxは、ジオプタ単位において測定される前記最大角膜曲率測定値を表す、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記適切な3次元形状は、前記角膜マップと、前記重症度の尺度とを備えるデータを使用して、好適にプログラミングされたデジタルプロセッサによって自動的に判定され、切断ファイルは、前記好適にプログラミングされたデジタルプロセッサによって発生され、前記切断ファイルは、前記角膜増強物を形成するために、コンピュータ制御されたフェムト秒レーザによって読取可能な命令を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記角膜マップは、標高マップであり、前記角膜増強物の前記適切な3次元形状は、多角形、レンズ形、ドーナツ形、三日月形、および円弧形のうちの1つである平面投影を有し、前記平面投影は、部分的に前記標高マップの等標高線に対して最良適合である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記角膜増強物は、インレーであり、前記角膜を前記角膜増強物を用いて増強することはさらに、フェムト秒レーザを使用して、間質内空洞を生成することを含み、前記空洞は、前記インレーを収容するようにサイズ指定および成形される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記角膜増強物は、治療されている前記角膜の外部に設置される、オンレーであり、前記角膜を前記角膜増強物を用いて増強することはさらに、フェムト秒レーザを使用して、面積単位において前記角膜増強物の平面投影に対応する上皮組織の連続領域を最初に除去することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記増強することはさらに、上皮組織の前記除去された領域の周縁部上の上皮組織の表面面取部を使用して、前記オンレーを前記角膜上に一時的に留保することを含む、請求項xxに記載の方法。
【請求項12】
エキシマレーザを使用する光屈折矯正角膜切除(PRK)手術を備える、前記角膜の増強後再成形をさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
角膜の異常の改善のためのデバイスであって、
角膜増強物を備え、
前記角膜増強物は、前記角膜増強物が角膜組織から成る角膜テンプレートから機械加工されることを特徴とする、適切な3次元形状を有し、
前記適切な3次元形状は、
前記角膜の前記異常の重症度の尺度を判定することと、
最適な角膜形状からの前記異常な角膜の偏差を定量化する、前記角膜の角膜マップを生成することと、
前記角膜マップおよび前記重症度の尺度を使用して、前記角膜の前記障害を改善するために、前記角膜増強物の前記適切な3次元形状を計算することと
を含む方法によって判定される、デバイス。
【請求項14】
前記角膜テンプレートは、角膜同種移植片および角膜異種移植片のうちの1つである、請求項13に記載のデバイス
【請求項15】
前記角膜増強物は、治療されることになる前記角膜内の好適に成形され、かつサイズ指定された間質内空洞の中への挿入が意図される、インレーである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記角膜増強物は、そこからサイズ面積単位において前記角膜増強物の平面投影に対応する上皮組織の連続領域が最初に除去されているであろう、前記角膜の領域にわたって、治療されることになる前記角膜の外部に設置されることが意図される、オンレーである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記角膜の前記異常は、円錐角膜であり、前記重症度の尺度は、最大角膜曲率測定値(K-max)であり、前記角膜マップは、角膜トモグラフィまたは角膜トポグラフィを使用して取得される、請求項15または16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記適切な3次元形状は、3~5mmの範囲内の内側半径と、7~9mmの範囲内の外側半径とを有する、ドーナツ形の形状から切断される扇形であり、均一な厚さは、方程式:t=10×K-max-300を使用して判定され、式中、tは、μm単位における前記厚さであり、K-maxは、ジオプタ単位において測定される前記最大角膜曲率測定値である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記角膜増強物の最大厚は、前記円錐角膜の前記最大角膜曲率測定値に比例し、前記方程式:t=10×K-max-300を使用して判定され、式中、tは、μm単位における前記最大厚を表し、K-maxは、ジオプタ単位において測定される前記最大角膜曲率測定値を表す、請求項15または16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記適切な3次元形状は、前記角膜マップと、前記重症度の尺度とを備えるデータを使用して、好適にプログラミングされたデジタルプロセッサによって自動的に判定され、切断ファイルは、前記好適にプログラミングされたデジタルプロセッサによって発生され、前記切断ファイルは、前記角膜増強物を形成するために、コンピュータ制御されたフェムト秒レーザによって読取可能な命令を含有する、請求項15または16に記載のデバイス。
【請求項21】
前記角膜マップは、標高マップであり、前記角膜増強物の前記適切な3次元形状は、多角形、レンズ形、ドーナツ形、三日月形、および円弧形のうちの1つである平面投影を有し、前記平面投影は、部分的に前記標高マップの等標高線に対して最良適合である、請求項15または16に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Peter S. Hersh、Steven A. Greenstein、およびJohn D. Gelles
【0002】
(関連出願の相互参照)
これは、2021年7月24日に出願された、米国仮特許出願第63/225,484号、および2021年11月17日に出願された、米国特許出願第17/528,484号の優先権を主張する、PCT特許出願であり、この両方の内容は、参照することによって本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
(技術分野)
本発明は、拡張性かつ不規則性角膜障害の改善のための医療用デバイスおよび方法に関し、より具体的には、限定ではないが、円錐角膜等の拡張性角膜障害を改善するために、インレーまたはオンレーのいずれかとして使用され得る、角膜増強物の生産および/または使用に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景技術)
角膜拡張は、角膜の薄化および後続の歪曲の結果である。本歪曲は、角膜の正常な光学的生体構造を改変し、視力を減少させる。角膜拡張は、いくつかの原因を有し得、限定ではないが、円錐角膜、ペルシード角膜変性、および球状角膜等の病状として顕現し得る。角膜拡張はまた、事実上、医原性であり、限定ではないが、レーザ支援上角膜屈折矯正手術(LASIK)、小切開レンズ形抽出(SMILE)、および光屈折矯正角膜切除(PRK)等の種々の手術から結果としてもたらされ得る。
【0005】
角膜拡張の最も一般的な自然な顕現は、円錐角膜であり、2,000人の個人のうちの約1人に生じる病状である。これは、進行性角膜突出および薄化によって特徴付けられる、非対称角膜拡張障害であり、典型的には、不規則性乱視および視覚機能障害を引き起こす。特に、通常ドーム形または球形に成形された角膜が、歪曲された状態になり、円錐体に成形された隆起部の形成を結果としてもたらす。本円錐体に成形された突出部は、典型的には、視力に悪影響を及ぼす。
【0006】
角膜拡張を改善するためのデバイスおよび方法は、病状のタイプおよび重症度に依存し、限定ではないが、コンタクトレンズ、角膜内埋込物、クロスリンキング、および角膜移植等の治療を含む。
【0007】
角膜内埋込物は、限定ではないが、PMMA等の材料から作製される間質内角膜リング片(ICRS)を含む。米国では、これらは、多くの場合、Intacs(登録商標)と称され、これは、スペイン(Minano, Alva)に本社を置くスペインの会社である、AJL Ophthalmicの子会社である、イリノイ州LombardのAddition Technology, Inc.によって生産されるデバイスの商標名である。そのような挿入物の1つの欠陥は、殆ど全ての好適な材料が、角膜の間質コラーゲンの屈折率1.376よりも有意に高い屈折率を有することである。本不一致は、視力に干渉し得る、望ましくない反射表面を結果としてもたらし得る。生体適合性の欠如から生じ得る付加的な合併症は、間質溶解と、リング片突出とを含む。さらに、市販のリング片は、現在のところ、円弧長、幅、内側および外側直径において固定される。唯一の変数は、厚さであり、したがって、本デバイスは、任意の優れた程度の精度にカスタムされることができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
拡張性角膜障害の改善のための発明デバイスおよび方法が、開示される。角膜拡張障害は、歪曲された状態であり得る角膜の薄化の結果であり、したがって、患者の視力に悪影響を及ぼし得る。それらは、限定ではないが、球状角膜、ペルシード角膜変性、円錐角膜、および不規則性乱視を含む、乱視の形態等の診断を含む。
【0009】
患者の障害の重症度の査定の一環として、患者の角膜の1つ以上の角膜マップが、取得され得る。これらのマップは、限定ではないが、トモグラフィ、トポグラフィ、または標高マップ、もしくはそれらのいくつかの組み合わせであり得る。これらのマップは、例えば、円錐角膜の円錐体を位置特定するために、かつ患者の角膜の最大角膜曲率測定値を定量化するために使用され得る。
【0010】
好ましい実施形態では、拡張性または不規則性障害を呈する患者の角膜マップは、限定ではないが、コンピュータ化された角膜トポグラフィおよび角膜トモグラフィ等の方法を使用して生成され得る。限定ではないが、最大角膜曲率測定値および種々の等偏差輪郭等のこれらのマップから導出される情報は、次いで、拡張性または不規則性障害を改善するために好適な角膜増強物の適切な3次元形状を計算するために使用され得る。角膜増強物の理想的な形状は、例えば、患者の角膜を理想的な角膜に復元するもの、すなわち、30~50ジオプタの範囲内の屈折度数を有し、-2~+2の範囲にある偏心率を伴う、回転楕円体の一部であり得る。
【0011】
角膜テンプレートは、例えば、角膜自家移植片、角膜同種移植片、角膜異種移植片として、または製造される角膜組織、もしくはそれらのいくつかの組み合わせとして取得され得る。
【0012】
本角膜テンプレートは、限定ではないが、その生体適合性を改良するため、その明瞭度を維持するため、およびその生体力学的強度を増加させるため等のいくつかの目的のために取り扱われてもよい。
【0013】
本角膜テンプレートは、所望の3次元形状を有する角膜増強物である、デバイスの中に形成され得る。これは、例えば、コンピュータ誘導型フェムト秒、またはエキシマレーザ、もしくはそれらの組み合わせを使用して遂行されてもよい。
【0014】
角膜増強物は、次いで、インレーとして、またはオーバーレイとしてのいずれかで角膜を増強するために使用され得る。
【0015】
角膜増強物が、インレーであるとき、拡張性障害を呈する患者の角膜は、例えば、フェムト秒レーザを使用して、角膜内空洞を生成することによって、角膜増強物を受容するように調製され得る。角膜内空洞は、限定ではないが、増強物の挿入のための適切な開口部を伴うチャネルまたはポケット等の空間であり得る。角膜増強物は、次いで、角膜内空洞の中に挿入され、それによって、患者の角膜を増強し、患者の角膜の形状および光学的性能を改良することによって、患者の視力を改善し得る。
【0016】
角膜増強物が、オンレーであるとき、拡張性障害を呈する患者の角膜は、最初に、角膜から上皮組織の領域を除去することによって調製され得る。表面面取部が、次いで、例えば、フェムト秒レーザを使用して、除去された上皮組織の領域の周縁部上に生成され得る。角膜増強物は、次いで、患者の角膜の上で増強され、例えば、角膜増強物のテーパ状または面取された縁を上皮組織の面取部の中に挿入することによって、最初に定位置に保持され得る。これは、上皮組織が、オンレーにわたって成長する間、オンレーを定位置に維持し得る。外科手術用接着剤または縫合糸はまた、または代わりに、本一時的な保持のために使用され得る。上皮の再成長は、数日から1週間かかり得、その時間の間、患者の角膜は、外科手術用コンタクトレンズによって保護され得る。いったん定位置に置かれると、オンレーは、患者の角膜の光学的性能を改良することによって、患者の視力を改善し得る。
【0017】
インレーおよびオンレー角膜増強物が、定位置に置かれるとき、それらは、それ自体が、異常または拡張性角膜障害を改善するために十分であり得る。しかしながら、それらはまた、または代わりに、最初のステップであり得、角膜の増強後のさらなる再成形が続き得る。角膜増強物の術後のさらなる再成形は、例えば、限定ではないが、光屈折矯正角膜切除(PRK)手術および光線治療角膜切除(PTK)等の手術であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、正常に機能しているヒトの眼の概略断面図を示す。
【0019】
図1B図1Bは、角膜の異常を呈するヒトの眼の概略断面図を示す。
【0020】
図2A図2Aは、角膜増強物をインレーとして有することに備えて、2つの間質内空洞を有する角膜の概略断面図を示す。
【0021】
図2B図2Bは、2つの間質内空洞を有する角膜の概略断面図を示す。
【0022】
図2C図2Cは、2つの間質内角膜増強物をインレーとして有する角膜の概略断面図を示す。
【0023】
図3A図3Aは、円錐角膜を呈する角膜の概略断面図を示す。
【0024】
図3B図3Bは、角膜増強物をオンレーとして受容するように調製される、角膜の概略断面図を示す。
【0025】
図3C図3Cは、オンレーとしての角膜増強物を用いて増強される、角膜の概略断面図を示す。
【0026】
図3D図3Dは、上皮組織の再成長後に角膜オンレーを用いて増強される、角膜の概略断面図を示す。
【0027】
図4図4は、ヒトの眼の概略平面図を示す。
【0028】
図5A図5Aは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートの平面図を示す。
【0029】
図5B図5Bは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートから切断される2つの片の平面図を示す。
【0030】
図5C図5Cは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートから切断される片の断面図を示す。
【0031】
図6A図6Aは、円錐角膜を呈する角膜の接線方向マップの平面図を示す。
【0032】
図6B図6Bは、円錐角膜を呈する角膜の接線方向マップに対して位置する、ドーナツ形片角膜増強物の概略平面図を示す。
【0033】
図7A図7Aは、円錐角膜を呈する角膜の標高マップの概略的レンダリングを示す。
【0034】
図7B図7Bは、円錐角膜を呈する角膜の表面と、基準としての最良適合球体とを示す、概略断面図を示す。
【0035】
図7C図7Cは、円錐角膜を呈する角膜の表面と、基準としての強調表示された最良適合球体とを示す、概略断面図を示す。
【0036】
図8A図8Aは、標高マップ上に重ね合わせられる虹彩画像の概略描写を示す。
【0037】
図8B図8Bは、円錐角膜円を示す標高マップおよび瞳孔の3mm表現の概略描写を示す。
【0038】
図9図9は、等標高線に一致する平面投影を有するように成形される、角膜増強物の概略描写を示す。
【0039】
図10A図10Aは、角膜増強物の一実施形態の概略平面図を示す。
【0040】
図10B図10Bは、角膜増強物の一実施形態の概略断面図を示す。
【0041】
図11図11は、瞳孔を被覆することを回避するように成形される、角膜増強物の概略平面図を示す。
【0042】
図12図12は、瞳孔を被覆することを回避するためにドーナツ形の形状を有する、角膜増強物の概略平面図を示す。
【0043】
図13図13は、角膜増強物の3次元形状の自動化された判定における代表的なステップを示す、フロー図を示す。
【0044】
図14図14は、角膜増強物の自動化された加工における代表的なステップを示す、フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明を行うための最良モード)
図1Aは、正常に機能しているヒトの眼の概略断面図101を示す。
【0046】
正常に機能しているヒトの眼では、入射する平行な光のビーム110は、水晶体107および角膜105の複合作用によって、網膜108の上に正確に合焦される(111)光であり得る。網膜108上に生成される画像は、次いで、視神経109を介して、脳に伝達され得る。前部空洞106は、典型的には、透明な流体、房水で充填され、角膜105を水晶体107から分離する。
【0047】
図1Bは、拡張性障害であり得る、角膜の異常を呈するヒトの眼の概略断面図102を示す。
【0048】
角膜拡張は、角膜の薄化および後続の歪曲によって引き起こされ得、限定ではないが、円錐角膜、ペルシード角膜変性、および球状角膜等の病状として顕現され得る。薄化の必然的に導かれる結果として、拡張性障害を呈する角膜112は、健康な角膜の正常な回転楕円体形状から離れるように歪曲され、それによって、その光学的性能を損ない得る。例えば、入射する平行な光のビーム110のわずかな割合のみが、網膜108上に正確に合焦され得る一方、光の残りの部分113は、網膜上に正確に合焦させられ得ない。
【0049】
図2Aは、拡張性障害を呈する角膜の概略断面図を示す。
【0050】
示されるように、角膜は、その中で角膜の一部が、時として、円錐体と称され得る不規則性光学表面をとり得る、円錐角膜209を呈している場合がある。
【0051】
円錐角膜209の程度または重症度は、最適な光学的構造からの角膜の偏差によって特徴付けられ得る。そのような最適な光学的構造は、例えば、理想的な角膜、すなわち、30~50ジオプタの範囲内の屈折度数を有し、-2~+2の範囲にある偏心率を伴う、回転楕円体の一部であり得る。病状の重症度は、いくつかの臨床的変数によって定量化され得る。これらの変数は、例えば、以下を含んでもよい。
1:最大角膜曲率測定値またはK-max。これは、理想値からの角膜の最大偏差として測定され得、円錐角膜の重症度を判定し得る。最大角膜曲率測定値210の測定値は、例えば、限定ではないが、
【化1】
によって製造される、PentacamTM等の器具を使用して取得され得る。測定値は、ジオプタ単位において、または角膜の前部表面に関する最良適合球体207からの角膜211の前部表面のμm単位における偏差として、または角膜の後部表面に関する最良適合球体208からの角膜212の後部表面のμm単位における偏差、もしくはそれらの組み合わせとして定量化され得る。
2:視軸にわたる角膜湾曲部の推定値。これは、変形された角膜によって引き起こされる近視および遠視の程度の屈折測定値から取得され得る。近視は、視軸が、変形された角膜の最も急峻な部分、すなわち、円錐角膜の円錐体を通して通過することを仮定して測定され得る。遠視は、視軸が、変形された角膜のより平坦な部分を通して通過することを仮定することによって測定され得る。本屈折測定値はまた、両方とも、限定ではないが、前述のPentacamTM等の器具によって実施されるように、角膜トモグラフィまたはトポグラフィを使用して取得されるデータから計算されてもよい。
3:円錐角膜のいわゆる円錐体の場所、特に、瞳孔に対する円錐体の場所。本臨床的場所は、角膜のマップを虹彩画像にオーバーレイすることによって取得され得る。角膜のマップは、角膜の局所的合焦力を示し得、限定ではないが、PentacamTM等の器具を用いて取得され得る。PentacamTM等の光学的トポグラフィおよびトモグラフィ器具は、典型的には、好適な虹彩画像を提供し得る、虹彩カメラを有する。
4:角膜上の円錐体の直径。これは、例えば、角膜の局所的高さを、限定ではないが、最良適合球体等の基準表面と比較し得る、標高マップから取得され得る。例えば、角膜の前部表面に関する最良適合球体207は、標高マップを生産するために、角膜211の前部表面と比較され得る。略円形パッチが、次いで、そこにおいて角膜が、最良適合球体から有意に偏移し始める境界として、明白な状態になり得る。本領域に対する最良適合円の直径は、次いで、円錐体の直径であると見なされ得る。同一の計算は、角膜212の後部表面を、角膜の後部表面に関する最良適合球体208と比較して行われてもよい。
【0052】
円錐角膜円錐体の重症度、場所、および直径の臨床的測定値に基づいて、臨床医は、次いで、最良のデバイスまたは角膜増強物および最良の治療過程の両方を判定し得る。デバイスは、角膜インレーまたは角膜オンレーのいずれかであり得、治療は、例えば、角膜インレーまたはオンレーが、本特許の角膜に追加され、後に、厚化された角膜のレーザ再成形が続く、多段階治療であってもよい。
【0053】
図2Bは、角膜増強物をインレーとして有することに備えて、2つの間質内空洞を有する角膜の概略断面図202を示す。
【0054】
限定ではないが、障害の重症度および場所等の因子に応じて、臨床医は、単一のインレーを用いて、または複数のインレーを用いてこれを治療することを選び得る。
【0055】
間質内空洞213および214は、任意の好適な外科手術手段を使用して、角膜間質205内に生成され得るが、フェムト秒レーザの使用は、フェムト秒レーザによって生産される光解離切開が、周囲の組織に対する最小限の損傷を引き起こすため、好ましくあり得る。間質内空洞213および214またはポケットは、それぞれが、角膜増強物を受容するように適切にサイズ指定および成形される空間を生成し得る。典型的な角膜は、約540μm+/-30μm厚であるが、拡張症の場合、領域内の厚さは、わずか300μmであり得る。間質内空洞を位置特定するための最適深度は、上皮組織から90μm~角膜の後部表面またはデスメ層の上方に少なくとも100μmであり得る。好ましくは、場所は、可能な限り90μmの限界近傍にあり得る。上皮組織206を穿刺し、角膜増強物の挿入を可能にする、間質内空洞213および214への入口が存在し得る。
【0056】
図2Cは、角膜インレーであり得る、2つの間質内角膜増強物216および218を有する角膜の概略断面図202を示す。
【0057】
角膜増強物216および218は、間質内空洞213および214の中に設置または嵌込され、それによって、角膜を強化および再成形することによって、円錐角膜を改善しているとされ得る。特に、角膜211の前部表面および角膜212の後部表面は両方とも、ここでは、それぞれ、角膜の前部表面に関する最良適合球体207および角膜の後部表面に関する最良適合球体208により緊密に整合され得る。角膜は、ここでは、理想的な光学的構造により緊密に近似し、それによって、その光学的性能および患者の視力を改善し得る。
【0058】
図3Aは、円錐角膜を呈する角膜の概略断面図301を示す。
【0059】
図2Aのように、角膜は、角膜間質205の最薄部分の近傍内に最大角膜曲率測定値210を有する、円錐角膜209を呈している場合がある。角膜の変形は、角膜の前部表面に関する最良適合球体207からの角膜211の前部表面の偏差として測定され得る。ほぼ同じパターンが、角膜の後部表面に関する最良適合球体208からの角膜212の後部表面の偏差においても見られ得る。これらの偏差は両方とも、限定ではないが、上記で述べられるPentacamTM等の器具を使用して、トモグラフィまたはトポグラフィを用いて、標高マップとしてマッピングおよび可視化されてもよい。
【0060】
図3Bは、2つの角膜増強物を角膜オンレーとして受容するように調製される、角膜の概略断面図302を示す。オンレー手技における最初の外科手術ステップは、上皮組織206の1つ以上の領域305および310を除去することであり得る。本除去は、任意の好適な外科手術手技によって実施され得るが、フェムト秒レーザの使用は、フェムト秒レーザによって生産される光解離切開が、周囲の組織に対する最小限の損傷を引き起こすため、好ましくあり得る。その中で上皮組織が除去される領域305および310は、典型的には、角膜間質205の最薄部分の両側上にあり得る。
【0061】
上皮組織を除去することに加えて、表面面取部306は、除去された上皮組織の領域の周縁部上に生産され得る。これはまた、フェムト秒レーザを使用して行われてもよく、オンレーされた角膜増強物を固着することに役立つ役割を果たし得る。
【0062】
図3Cは、角膜オンレーであり得る、2つの角膜増強物308および311を用いて増強される、角膜の概略断面図303を示す。
【0063】
角膜増強物308および311は、その中で上皮組織が除去されている領域にわたって設置される、またはそれにわたってオンレーされ得る、角膜オンレーであり得る。角膜増強物は、その外側周縁部を、除去された上皮組織の領域の周縁部上の表面面取部306の下に押し込むことによって、一時的に定位置に保持され得る。角膜増強物はまた、または代わりに、外科手術用接着剤、または縫合糸、もしくはそれらの組み合わせによって、一時的に定位置に保持されてもよい。
【0064】
図3Dは、上皮組織309の再成長後に2つの角膜オンレーを用いて増強される、角膜の概略断面図304を示す。
【0065】
上皮組織の再成長は、約数日~1週間かかり得る。本周期の間、患者は、増強物を保護するために、外科手術用コンタクトレンズを装用してもよい。上皮組織が、再成長するにつれて、角膜増強物308は、角膜間質205と統合し、それによって、角膜を強化および再成形し得る。特に、角膜211の前部表面および角膜212の後部表面は両方とも、ここでは、それぞれ、角膜の前部表面に関する最良適合球体207および角膜の後部表面に関する最良適合球体208により緊密に整合され得る。角膜は、ここでは、理想的な光学的構造により緊密に近似し、それによって、円錐角膜を改善し得る。これはまた、角膜の光学的性能および患者の視力も改善し得る。
【0066】
図2A-Cおよび3A-Dに詳述される手技は、それぞれ、2つの角膜増強物を有するものとして示されるが、単一の好適に成形および設置された角膜増強物が、角膜異常を改善する際に有効である、またはさらにより有効であると証明され得る、多くの機会が、存在する。
【0067】
図2A-Cおよび3A-Dに詳述される手技、すなわち、角膜インレーおよび角膜オンレーを用いた増強は、それ自体が、異常または拡張性角膜障害を改善するために十分であり得る。しかしながら、それらはまた、または代わりに、最初のステップであり得、角膜増強物の増強後のさらなる成形が続き得る。角膜増強物の増強後のさらなる成形は、例えば、限定ではないが、光屈折矯正角膜切除(PRK)手術または光線治療角膜切除(PTK)等の手術であってもよい。そのような手術は、例えば、限定ではないが、フェムト秒レーザ、またはエキシマレーザ、もしくはそれらの組み合わせ等の好適なレーザを使用して遂行されてもよい。
【0068】
図4は、ヒトの眼の概略平面図401を示す。示されるように、眼は、典型的には、保護用眼窩内に含有され、睫毛408によって囲繞される、眼球407から成る。眼の結像機能に関与する眼の構成要素は、虹彩406と、瞳孔405とを含む。瞳孔405は、例えば、それを通して光線が、眼の後部における網膜の上に結像されるように通過する、可変開口である。
【0069】
図5Aは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートの平面図501を示す。
【0070】
初期の角膜テンプレートは、ドーナツ形に成形される前に、限定ではないが、角膜自家移植片、角膜同種移植片、角膜異種移植片、製造された角膜組織、またはそれらのいくつかの組み合わせとして等、任意の好適な材料として取得されている場合がある。好ましい実施形態では、角膜テンプレートは、例えば、限定ではないが、ワシントン州Seattleに本社を置く、SightLife, Inc.の子会社である、これもまたワシントン州Seattleに本社を置く、CorneaGen Inc.等の信頼できるアイバンクによって調製される、および/または保存されるような提供されたヒトの角膜から取得されてもよい。
【0071】
そのようなアイバンクは、典型的には、限定ではないが、
脱細胞化によって、角膜テンプレートの生体適合性を改良する、
除染および殺菌によって、角膜テンプレートを保存する際に援助する、
脱撥剤によって、角膜テンプレートの明瞭度を維持し、浮腫を最小限にする、
硬化剤の添加によって、角膜テンプレートの生体力学的強度を増加させる、
配向のためのマーキングによって、かつ可視性のための好適な染色によって、増強手技を実施することの容易性を改良する、
角膜テンプレートおよびそれから取得される角膜増強物が、合理的な時間の長さ、典型的には、最大2年間にわたって、室温に保たれることを可能にする、および
薬品、生物学的医薬品内に浸漬すること、または再生式療法によって、術後の治癒および予防を改良する
等の複数の目的のために、角膜テンプレートを取り扱う。
【0072】
初期の角膜テンプレートは、次いで、円形の外側半径505と、円形の内側半径506とを有する、ドーナツ形またはリング形に成形され得る。本成形は、例えば、フェムト秒レーザまたはエキシマレーザを使用して行われてもよい。ドーナツ形またはリング形は、フェムト秒レーザを使用して遂行され得る、1つ以上の側方切断部507を有し得る。これらの側方切断部は、要求される円弧長508を有する、角膜片を結果としてもたらし得る。
【0073】
外側半径505は、例えば、7~9mmの範囲内にあってもよく、より好ましくは、約8mmである。ドーナツ形に成形された角膜テンプレートの内側半径506は、3~5mmの範囲内にあってもよく、より好ましくは、約4mmである。
【0074】
図5Bは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートから切断される2つの片509および510の平面図502を示す。いったん適切な厚さにトリミングされると、これらの片は、好適な角膜増強物となり得る。それらは、単一で、または組み合わせて使用されてもよい。図5Bは、ドーナツ形から切断されている2つの片を示すが、180度よりも大きい円弧長を有する、単一の円弧形に成形された片が、代わりに、ドーナツ形から取得されてもよい。
【0075】
図5Cは、ドーナツ形に成形された角膜テンプレートから切断される片の断面図503を示す。いったん適切な厚さにトリミングされると、本片は、その時点で、好適な角膜増強物となり得る。
【0076】
ドーナツ扇形に成形された角膜増強物の典型的な幅512は、3~5mmの範囲内にあってもよく、より好ましくは、約4mmである。
【0077】
ドーナツ扇形に成形された角膜増強物の厚さ511は、角膜異常の重症度に依存し得る。角膜増強物の厚さ511は、例えば、異常の最大角膜曲率測定値、別名、K-maxに比例し得る。
【0078】
例えば、角膜増強物の最大厚とK-maxとの間の満足の行く関係は、経験を通して判定されており、表1に表されるものである。
【表1】
【0079】
表1における値は、以下の方程式によって近似され得る。
t=10×K-max-300 ... (1)
式中、tは、μm単位における最大厚を表し、K-maxは、ジオプタ単位における最大角膜曲率測定値を表す。
【0080】
図6Aは、円錐角膜を呈する角膜の接線方向マップの平面図601を示す。
【0081】
限定ではないが、PentacamTM等のトモグラフィまたはトポグラフィシステムを使用して眼を検査する際に取得されるデータは、限定ではないが、角膜厚を表示する、パキメトリックマップと、角膜の局所的湾曲部を表示する、軸方向および接線方向マップと、基準表面に対する角膜表面を表示する、標高マップとを含む、いくつかの方法において表示され得る。
【0082】
接線方向マップは、典型的には、疑似色において表示され、特定の色が、具体的な局所的屈折度数を表す。例えば、上昇された度数の等ジオプタ線605が、スペクトルの赤色端に進むより暖色において表示され得る一方、減少された度数の等ジオプタ線606は、スペクトルの青色端に進むより寒色において表示され得る。最大角膜曲率測定値210は、したがって、暗赤色として表示され得る。典型的な接線方向マップは、角膜の円周607を満たし、眼の瞳孔を表す、3mm円608を用いてオーバーレイされ得る。
【0083】
図6Bは、円錐角膜を呈する角膜の接線方向マップに対して位置する、2つのドーナツ形片角膜増強物の概略平面図602を示す。
【0084】
図6Bに示されるように、第1の角膜増強物609は、最大角膜曲率測定値210の片側上に位置し得る。第1の角膜増強物609はさらに、外縁が、部分的に上昇された度数の第1の等ジオプタ線610に対して最良適合である一方、内縁が、上昇された度数の第2の等ジオプタ線611に対して最良適合であり得るように位置し得る。第1の角膜増強物609の円弧長はまた、等度数線によっても制約され得る。
【0085】
第2の角膜増強物612は、角膜障害の改善のために必要であると見なされる場合、最大角膜曲率測定値210の他方側上に位置し得る。第2の角膜増強物612はさらに、外縁が、部分的に減少された度数の第1の等ジオプタ線613に対して最良適合であり得る一方、内縁が、部分的に減少された度数の第2の等ジオプタ線614に対して最良適合であり得るように位置し得る。第2の角膜増強物609の円弧長はまた、等度数線によっても制約され得る。
【0086】
図7Aは、円錐角膜を呈する角膜の標高マップ701の概略的レンダリングを示す。
【0087】
限定ではないが、PentacamTM等のトモグラフィまたはトポグラフィシステムを使用して眼を検査する際に取得されるデータは、限定ではないが、角膜厚を表示する、パキメトリックマップと、角膜の局所的湾曲部を表示する、軸方向および接線方向マップと、基準表面に対する角膜表面を表示する、標高マップとを含む、いくつかの方法において表示され得る。
【0088】
標高マップは、典型的には、疑似色において表示され、特定の色が、基準表面からの特定の量の角膜表面の偏差を表す。特許庁の図面要件に適合させるために、標高マップ701は、等標高線を表す点線、すなわち、通常、特定の色として表示されるであろう線を用いて示されている。例えば、等標高線706は、基準表面の上方の角膜表面の特定の量の標高を表し、慣例により、通常、スペクトルの赤色端に進む暖色によって表示されるであろう。等標高線707は、基準表面の下方の角膜表面の標高を表し、通常、スペクトルの青色端に進む寒色によって表示されるであろう。ゼロ等標高線705は、通常、スペクトルの黄色から緑色部分内のある色として表示されるであろう。
【0089】
数字0、90、180、および270は、眼科の慣例に従って、度単位における配向を表す。
【0090】
図7Bは、円錐角膜710を呈する角膜の表面と、基準としての最良適合球体709とを示す概略断面図502を示す。
【0091】
断面702は、図7Aにおける線「BB」上で得られる。最良適合球体709は、円錐角膜710の領域からのデータ点を含み得る、角膜表面全体708に対する最良適合球体である。図7Aに示される標高マップは、最良適合球体709と角膜の表面のうちの1つとの間の差異を表し得る。基準点として、正常な眼では、前部標高は、典型的には、1.63+/-1.4μmの範囲内にある。円錐角膜を伴う患者では、前部標高は、20.9+/-21.9μmの範囲であり得る。最良適合球体は、典型的には、6.5+/-2mmの範囲内の半径を有する。
【0092】
図7Cは、円錐角膜710を呈する角膜の表面と、基準表面としての強調表示された最良適合球体711とを示す概略断面図703を示す。
【0093】
強調表示された最良適合球体711は、角膜表面708からのデータを使用して計算されるが、円錐角膜710によって最も影響を受ける領域を表し得る、領域712からのデータを除外し得る。
【0094】
図8Aは、標高マップ上に重ね合わせられる虹彩画像406の概略描写801を示す。
【0095】
虹彩406の画像を標高マップ上に重ね合わせることによって、瞳孔405、および円錐角膜の直径を画定する円806の相対的な位置を判定することが可能であり得る。また、示されるものは、他の等標高線805である。
【0096】
図8Bは、等標高線805を有する標高マップの概略描写802を示す。また、示されるものは、円錐角膜円806、および瞳孔の位置を表し得る3mm円807である。円錐角膜の直径を画定する円806は、例えば、そこにおいて角膜の表面が、最良適合球体から有意に偏移し始める、等標高線に対する最良適合円であり得る。最良適合円の直径は、円錐角膜の円錐体の直径であると見なされ得る。
【0097】
また、示されるものは、瞳孔の中心と円錐角膜最大値の中心808との間の距離および方向を表す、ベクトル810である。
【0098】
図9は、角膜の標高マップの等標高線805に一致する平面投影を有するように成形される、角膜増強物905の概略描写901を示す。角膜増強物905は、円錐角膜最大値808にわたっておおよそ中心に置かれ得る。
【0099】
適切な等標高線の選択は、角膜増強物905の平面投影の周縁形状を画定し得、その最大厚は、円錐角膜最大値、別名、K-maxの値によって測定されるような円錐角膜の重症度によって判定され得る。
【0100】
例えば、角膜増強物の最大厚とK-maxとの間の満足の行く関係は、経験を通して見出されており、上記に示される表1に表されるものであり、上記に示される方程式1によって近似され得る。
【0101】
図10Aは、角膜増強物905の概略平面図1001を示す。
【0102】
図に示される角膜増強物905は、角膜の標高マップの等標高線に一致する平面投影を有するが、当業者は、平面投影が、限定ではないが、部分的に等標高線に対して最良適合であり得る多角形、部分的に等標高線に対して最良適合であり得るレンズ形、部分的に等標高線に対して最良適合であり得る円、部分的に等標高線に対して最良適合であり得る自由形態曲線、部分的に等標高線に対して最良適合であり得る三日月形、またはそれらのいくつかの組み合わせ等の任意の好適な平面投影であり得ることを理解し得る。
【0103】
角膜増強物905は、角膜テンプレートから生成されているとされ得、次いで、限定ではないが、コンピュータ誘導型フェムト秒レーザ、またはコンピュータ誘導型エキシマレーザ、もしくはそれらのいくつかの組み合わせ等の任意の好適な材料除去または切断技法を使用して、適切な3次元形状に変換されているとされ得る。
【0104】
角膜テンプレートは、先にさらに詳細に議論されるように、任意の好適な材料として取得されているとされ得る。
【0105】
図10Aはまた、設置印を用いてマーキングされる角膜増強物905を示す。印は、例えば、角膜増強物内に開孔される、小さい孔であり、位置付けおよび配向情報の両方を提供するように配列され得る。例えば、90度の整合をマーキングする第1の設置印1005は、垂直に上方への設置を示す、3つの小さい孔を有し得る。270度の整合をマーキングする第2の設置印1006は、垂直に下方への設置を示す、単一の孔のみを有し得る。仮想線が、第1の印から第2のものまで描かれるとき、本線は、瞳孔を表す、3mm直径円807の中心を通して通過し得る。実際の設置では、正確に設置されるとき、仮想線は、患者の瞳孔の中心を通して通過し得る。同様に、180度の整合をマーキングする第3の設置印1008は、2つの孔を有し得る一方、0度の整合をマーキングする第4の設置印1007は、単一の孔を有し得る。仮想線が、第3の設置印から第4のものまで描かれるとき、これは、増強物が、正確に位置付けられ、配向されるとき、瞳孔の中心を通して水平に通過し得る。
【0106】
当業者は、設置印が、開孔された孔の観点において説明されているが、限定ではないが、着色染料、小さい切開、またはそれらのいくつかの組み合わせを含む、任意の好適なマーキングシステムが、使用され得ることを理解し得る。
【0107】
図10Bは、角膜増強物905の概略断面図1002を示す。示されるように、角膜増強物905は、最大角膜曲率測定値またはK-maxに比例し得る、最大厚1009を伴う三日月形に成形された断面を有し、方程式1または表1によって判定され得る。角膜増強物905が、オンレーとしての使用を意図される場合、後部表面1010は、オンレー増強物が設置されることが意図される領域内の角膜の前部表面と一致するように成形されてもよい。
【0108】
補強物の断面は、三日月形として示されるが、当業者は、これが、限定ではないが、矩形、楕円形、球体、球体の一部、またはそれらのいくつかの組み合わせ等の任意の好適な形状のものであり得ることを認識し得る。
【0109】
図11は、瞳孔を被覆することを回避するように成形される、角膜増強物1105の概略平面図1101を示す。
【0110】
瞳孔を被覆することを回避するように成形される、角膜増強物1105の平面投影は、等標高線805に適合され得る周縁部の一部1106と、瞳孔の位置を表す3mm直径円807に対する周縁部の一部1107とを有し得る。そのような増強物を作製するための理由は、増強物の表面が、十分に平滑ではない場合があり、患者の視力に悪影響を及ぼし得るため、増強物が、患者の通視線を遮断することを回避するためであり得る。
【0111】
図11に示される補強物の平面投影は、等標高線に対して部分的な最良適合であり、円に対して部分的な最良適合であるものとして描かれるが、当業者は、平面投影が、限定ではないが、等標高線に対して、および/または瞳孔を表す円に対して部分的な最良適合でもあり得る、三日月形、または円弧、または自由形態曲線、もしくはそれらのいくつかの組み合わせ等の任意の好適な形状であり得ることを理解し得る。
【0112】
図12は、瞳孔を被覆することを回避するためにドーナツ形の形状を有する、角膜増強物1205の概略平面図1201を示す。
【0113】
切断の目的は、増強物の表面が、十分に非摂動である光の透過を確実にするために十分に平滑ではない場合があるため、角膜を通した通視線を不明瞭にすることを回避することであり得る。
【0114】
瞳孔を被覆することを回避するためにドーナツ形の形状を有する角膜増強物1205の平面投影の外側周縁部は、等標高線に対して最良適合である自由形態であり得る、またはこれは、限定ではないが、部分的に選択された等標高線に対して最良適合でもあり得る多角形または円等の任意の好適な幾何学形状であり得る。角膜増強物はまた、3mm直径807によって表されるように、瞳孔を不明瞭にすることを回避するように成形およびサイズ指定される切抜部1206を有し得る。本切抜部の平面投影は、直径3mm円807を網羅する円であり得る、またはこれは、それに対して最良適合であり得る。当業者は、切抜部の平面投影もまた、瞳孔を表す3mm直径円807を網羅する、またはそれに対して最良適合であり得る、任意の好適な自由形態形状、または多角形、もしくはそれらの組み合わせであり得ることを理解し得る。
【0115】
図13は、角膜増強物の3次元形状の自動化された判定における代表的なステップを示す、フロー図1301を示す。
【0116】
ステップ1301「トポグラフィおよびトモグラフィの評価」では、患者の角膜は、限定ではないが、PentacamTM等の好適なコンピュータ制御型トポグラフィまたはトモグラフィ器具を使用して検査され得る。
【0117】
ステップ1302「光学的3D形状を判定する」では、好適にプログラミングされたデジタルプロセッサが、先のステップにおいて取得されるデータを取り込み、患者の角膜異常を改善するために、角膜増強物に関する最適な3次元形状を計算し得る。本計算は、例えば、限定ではないが、最大角膜曲率測定値と補強物の好適な厚さとの間の関係、および補強物の周縁部を、部分的に標高における1つ以上の等偏差または等度数線に対して最良適合にさせること等、上記に議論される概念の一部または全部を含んでもよい。本計算はまた、限定ではないが、患者の他の眼または角膜の性質等、提供され得る他のデータも考慮に入れてもよい。
【0118】
ステップ1303「切断ファイルを発生させ、エクスポートする」では、好適にプログラミングされたデジタルプロセッサは、最適な3次元形状を、コンピュータ制御型微細精度成形機械による使用にとって好適な形態に変換し得る。これは、好適なCAD形式においてフォーマット化される切断ファイルを結果としてもたらし得る。好適なCAD形式のファイルタイプは、限定ではないが、周知のSTEPおよびSTLファイル形式を含む。
【0119】
図14は、角膜増強物の自動化された加工における代表的なステップを示す、フロー図1401を示す。
【0120】
ステップ1401「切断ファイルを取得する」では、上記に説明されるプロセスにおいて発生されるCAD切断ファイルは、好適なコンピュータ制御型微細精度成形機械に入力され得る。微細精度成形機械は、フェムト秒レーザと、コンピュータ制御型微細精度XYZ段とを含んでもよい。そのような段は、例えば、ニュージャージー州NewtonのThorlabsによって供給される構成要素から構成されてもよい。本構成要素は、例えば、それらのMLS203-1-高速XY走査段と、それらのMZS500-EZ軸ピエゾ段とを含み得る。
【0121】
ステップ1402「光学的3D形状を機械加工する」では、コンピュータ制御型微細精度XYZ段上に搭載される角膜テンプレートが、角膜増強物を生産するために、好適に強力なフェムト秒レーザの焦点を通り越して平行移動され得る。本プロセスは、3D印刷を逆にしたものと類似し得、すなわち、連続材料層が、追加される代わりに、除去され得る。
【0122】
当業者は、本発明が、主に、円錐角膜に対して説明されているが、本発明の方法は、限定ではないが、球状角膜、ペルシード角膜変性、後部円錐角膜、LASIK後拡張症、テリエン周辺角変性、および不規則性乱視等の様々な他の角膜拡張に対して使用される、または使用のために適応され得ることを理解し得る。
【0123】
当業者はさらに、本発明が、主に、標高マップの言及を通して説明されているが、本発明のステップはまた、または代わりに、限定ではないが、角膜厚を表示する、パキメトリックマップ、および角膜の局所的湾曲部を表示する、軸方向および接線方向マップ等の他の角膜マップの使用を通して実装され得ることを理解し得る。
【0124】
(産業上の可用性)
本発明は、光学デバイスの分野における、かつ矯正眼科手術の分野における可用性を有し得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図6A
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】