(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】免疫療法後の治療反応のためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240711BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240711BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/06
A61K45/00
A61P35/00
G01N33/574 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504151
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070304
(87)【国際公開番号】W WO2023001874
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524028865
【氏名又は名称】アシリア ダイアグノスティックス ベースローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】フメレフスキー アンドレイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
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4B063QS40
4B063QX10
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は癌免疫療法を導くための診断分野に関する。より具体的には、本発明はバイオマーカーのセットの発現レベルに基づき、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を予測及び/又は判定する方法及びキットを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応又は抵抗性を判定及び/又は予測する方法であって、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる前記被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析することを含む、方法。
【請求項2】
前記免疫療法剤が免疫チェックポイント阻害剤又は免疫チェックポイント阻害剤の併用である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫療法剤がPD-1標的剤、PD-L1標的剤、CTLA-1標的剤及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが腫瘍組織サンプル又は腫瘍細胞を含む液体サンプルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが腫瘍組織サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが循環腫瘍細胞を含む血液サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記被験者の前記サンプルにおけるバイオマーカーCD3G及びITGALの発現レベルを分析することを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3及びIGHV4.4の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つ、更に一層好ましくはすべての発現レベルが前記被験者のサンプルにおいて分析される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーの前記発現レベルが、前記免疫療法剤を用いた処置に対して公知の反応を有する被験者に特有の対応する基準値又は閾値と比較される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマーカーの前記発現レベルに基づき、前記免疫療法剤に対する前記反応の尤度を表すリスクスコアが得られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リスクスコアが、事前トレーニング済み機械学習モデルを使用し、前記バイオマーカーの前記発現レベルを入力値として使用することにより取得及び算出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応がRECIST1.1反応基準から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に、
前記被験者のサンプルにおける前記バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の前記発現レベルを測定する手段と;
任意に、前記被験者のサンプルにおける前記バイオマーカーCD3G及びITGALの前記発現レベルを測定する手段と;
任意に、前記被験者のサンプルにおける前記バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の前記発現レベルを測定する手段と;
任意に、前記バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の基準値又は閾値と;
任意に、前記バイオマーカーCD3G及びITGALの基準値又は閾値と;
任意に、前記バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の基準値又は閾値と、
を含むキットの使用。
【請求項14】
免疫療法剤を用いて癌と診断された被験者を治療する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により前記免疫療法剤に対する前記被験者の反応を判定又は予測することと、前記被験者が前記免疫療法剤を用いた処置に反応することが判明すれば、前記免疫療法剤を前記被験者に投与することとを含む、方法。
【請求項15】
免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応をモニタリング、予測又は判定するコンピュータ実装方法であって、
(a)腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる前記被験者のサンプルにおける前記バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の定量化した発現レベルを提供することと;
(b)任意に、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる前記被験者のサンプルにおける前記バイオマーカーCD3G及びITGALの定量化した発現レベルを提供することと;
(c)基準セットの対応する評価及び発現レベルから得られるデータとの比較により正規化を行うように、前記定量化した発現レベルを正規化することと;
(d)工程(c)の前記正規化値が所定の閾値を超えるかどうかを分類することと;
(d)事前トレーニング済み機械学習モデルを使用して算出し、前記免疫療法剤に対する前記被験者の前記反応の尤度を表す前記正規化値のリスクスコアを取得することと、
を含む方法。
【請求項16】
前記免疫療法剤が免疫チェックポイント阻害剤又は免疫チェックポイント阻害剤の併用である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫療法剤がPD-1標的剤、PD-L1標的剤、CTLA-4標的剤及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが腫瘍組織サンプル又は腫瘍細胞を含む液体サンプルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプルが腫瘍組織サンプルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルが循環腫瘍細胞を含む血液サンプルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマーカーがタンパク質コード遺伝子であり、特に前記バイオマーカーの前記発現レベルが前記タンパク質コード遺伝子のRNAに基づく発現レベルである、請求項1~12又は14~20のいずれか一項に記載の方法、或いは請求項13に記載の使用。
【請求項22】
前記被験者がメラノーマ;好ましくはステージII、ステージIII又はステージIVのメラノーマと診断される、請求項1~12又は14~20のいずれか一項に記載の方法、或いは請求項13又は21に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌免疫療法を導くための診断分野に関する。より具体的には、本発明は免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を予測及び/又は判定する方法及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
癌は公衆衛生上の主要な課題である。2015年、欧州連合では総死亡者数の4分の1超(25.4%)に相当する130万人が癌により死亡した。多くの処置が様々な癌のために考案されている。
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は多くの腫瘍タイプ、特に転移状態の治療状況を変化させている。細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)及びプログラム細胞死1(PD-1/PD-L1)を標的とするICIの開発は、メラノーマ及び非小細胞肺癌(NSCLC)のような多様な癌の処置を著しく改善している。免疫細胞及び腫瘍細胞のどちらにも存在し、T細胞機能の負の調節を示す原型の免疫チェックポイント受容体をブロックすることで、ICIは抗腫瘍免疫を高める。これらの阻害剤は注目すべき反応を引き起こすことができるが、癌患者はICI処置に異なる反応をする。疾病を直ちに改善し、克服できる患者が、処置患者のうちの約25%から30%であるが、処置患者の50%は永続的な恩恵が見られない。更に驚くことに、4%から29%のかなりの患者において、免疫療法は多数の組織構造にわたって腫瘍の進行を加速させ、いわゆるハイパープログレッションに至り得ることを示す研究がますます増えている。
どの患者がICI療法などの免疫療法に反応するかを予後的に特定する、或いはどの患者が腫瘍増大を経験するか、又はICI療法に非レスポンダであるかを特定するのに、現在利用可能な診断は十分効率的ではない。特に、利用できるバイオマーカー又はバイオマーカーのセットの精度はせいぜい52~58%を下回り、ICIに対する非反応性の根底にある生物学的メカニズムの洞察はそれほど提供されていない。例えば、国際公開第2014151006号は、癌の患者選択及び予後のためにバイオマーカーを提供している。しかしながら、この特許出願はPD-L1軸結合アンタゴニストを用いた処置に対する、疾病を有する個体の反応性を予測することに限定される。国際公開第2019012147号は、腫瘍浸潤CD8T細胞の存在及び密度を検出するためのラジオミクスに基づくバイオマーカーを提案しており、抗PD-1/PD-L1単剤療法などの免疫療法で処置した癌患者の生存及び/又は処置効率を予測する。米国特許第20180107786号明細書は、腫瘍浸潤リンパ球、T細胞受容体シグナル伝達及び遺伝子変異量に基づく免疫スコアを生成する方法を開示している。
従って、コンパニオン診断薬開発及び治療決定のための免疫腫瘍微小環境を特徴づけることができるアッセイが必要である。特に、免疫療法処置に対するレスポンダ及び非レスポンダを特定するためのバイオマーカーの必要性が高い。
【発明の概要】
【0003】
本発明者は、RECIST反応基準に基づき免疫療法剤に対する被験者の反応を予測することができるバイオマーカーを特定することにより、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を予測及び/又は判定する課題に取り組んでいる。従って、本発明においては、本発明者は免疫療法剤、より具体的には免疫チェックポイント阻害剤又は免疫チェックポイント阻害剤の併用を用いた処置に対し、被験者が反応する、部分的に反応する、又は反応しないかどうかを予測することができるバイオマーカーを特定した。
従って、本発明の第1の態様は、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法に関する。本方法は1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルの分析に基づくものであり、より具体的には1つ又は複数のタンパク質コード遺伝子のRNA発現レベルの分析に基づくものである。この発現レベルに基づき、被験者が免疫療法剤に反応するかどうかを予測する。
【0004】
従って、本発明の実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供する。本方法はCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧の少なくとも3つのバイオマーカー;好ましくは少なくとも4つ又は5つ、更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーの発現レベルを分析することを含む。
本発明の別の実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供する。本方法はCD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGAL、CD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3及びIGHV4.4からなる一覧の少なくとも3つのバイオマーカー;好ましくは少なくとも4つ又は5つ、更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーの発現レベルを分析することを含む。
更なる実施形態において、腫瘍細胞を含有する、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析し、これらのバイオマーカーの発現レベルは免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測するのに使用される。なお更なる実施形態において、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルをバイオマーカーCD3G及びITGALの発現レベルと組み合わせて分析する。なお更なる実施形態において、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALの発現レベルをバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の少なくとも2つ;好ましくは少なくとも4つ;更に一層好ましくはすべての発現レベルと組み合わせて分析する。
【0005】
本方法のいくつかの実施形態において、分析したバイオマーカーの発現レベルを対応する基準値又は閾値と比較する。この値は免疫療法剤を用いた処置に対して公知の反応を有する被験者に特有である。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は分析したバイオマーカーの発現レベルに基づくリスクスコアを取得することを更に含み、リスクスコアは被験者の免疫療法剤を用いた処置に反応する尤度を表す。
いくつかの実施形態において、反応はRECIST1.1基準反応であり、例えば早期死亡(ED)、進行(PD)、安定(SD)、部分奏効(PR)及び完全奏効(CR)である。
【0006】
別の態様において、免疫療法剤に対する被験者の反応を判定及び/又は予測するキットを提供する。本キットは被験者のサンプルにおけるCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つ;好ましくは少なくとも5つ、更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーの発現レベル;及び任意にCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つ;好ましくは少なくとも5つ、更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーに関する基準値又は閾値を測定する手段を含む。また、癌と診断された被験者が免疫療法剤を用いた処置に反応しやすいかどうかを判定及び/又は予測する方法におけるキットの使用を開示している。
【0007】
いくつかの実施形態において、本願の方法は、事前トレーニング済み機械学習モデルを使用し、バイオマーカーの発現レベルを入力値として使用し、リスクスコアを取得及び算出することを更に特徴とする。特に、バイオマーカーシグネチャの正規化発現レベルを入力データとして使用する機械学習モデルにより、リスクスコアを作製する。より具体的に、機械学習モデルは事前トレーニングアーキテクチャを使用して、0から1のリスクスコアを算出する。
いくつかの実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応をモニタリング、予測又は判定するコンピュータ実装方法を提供する。本方法は(a)腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つ;好ましくは少なくとも5つ;更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーの定量化した発現レベルを提供することと;(b)基準セットの対応する評価及び発現レベルから得られるデータと比較することにより正規化を行うように、定量化した発現レベルを正規化することと;(c)工程(a)の正規化値が所定の閾値を超えるかどうかを分類することと;(d)事前トレーニング済み機械学習モデルを使用して算出し、被験者の免疫療法剤に対する反応の尤度を表す該正規化値のリスクスコアを取得することとを含む。
いくつかの実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応をモニタリング、予測又は判定するコンピュータ実装方法を提供する。本方法は(a)腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の定量化した発現レベルを提供することと;(b)任意に腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD3G及びITGALの定量化した発現レベルを提供すること;及び/又はバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の定量化した発現レベルを提供することと;(c)基準セットの対応する評価及び発現レベルから得られるデータと比較することにより正規化を行うように、定量化した発現レベルを正規化することと;(d)工程(c)の正規化値が所定の閾値を超えるかどうかを分類することと;(e)事前トレーニング済み機械学習モデルを使用して算出し、被験者の免疫療法剤に対する反応の尤度を表す該正規化値のリスクスコアを取得することとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本願にかかる方法は、免疫療法剤が免疫チェックポイント阻害剤、又はいくつかの異なる免疫チェックポイント阻害剤の併用であることを特徴とする。いくつかの更なる好ましい実施形態において、免疫療法剤はPD-1標的剤、PD-L1標的剤及びCTLA-4標的剤、又はこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの更なる好ましい実施形態において、免疫療法処置として、PD-1標的剤又はPD-L1標的剤はCTLA-4標的剤と併用される。
【0009】
上記のように、本願の方法において、癌と診断された被験者のサンプルを分析して、1つ又は複数のバイオマーカー;特に1つ又は複数のタンパク質コード遺伝子の発現レベルを定量化する。サンプルは腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍細胞を含有する。サンプルは好ましくは腫瘍組織サンプル又は循環腫瘍細胞を含む血液サンプル、或いは被験者;好ましくは癌と診断された被験者に由来する生検サンプル又は液体生検サンプルなど、腫瘍細胞を含むことが疑われるサンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍組織サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは循環腫瘍細胞を含む血液サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは単離した循環腫瘍細胞サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは膀胱癌、腎臓癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮癌、卵巣癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、皮膚癌と診断された癌患者;更に一層好ましくは皮膚癌又はメラノーマ、肺腺癌、肺扁平上皮癌、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌と診断された癌患者に由来する腫瘍組織サンプルである。好ましい実施形態において、癌はメラノーマ;好ましくはステージII、ステージIII又はステージIVのメラノーマである。いくつかの実施形態において、サンプルは循環腫瘍細胞を含む血液サンプル、或いは膀胱癌、腎臓癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮癌、卵巣癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、皮膚癌と診断された癌患者;更に一層好ましくは皮膚癌又はメラノーマ、肺腺癌、肺扁平上皮癌もしくは非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌と診断された癌患者に由来する単離した循環腫瘍細胞のサンプルである。好ましい実施形態において、癌はメラノーマである。いくつかの更なる好ましい実施形態において、癌はステージII、ステージIII又はステージIVのメラノーマである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)ソースデータセットのPCA分析(log2正規化RNA発現値-combat前)。(B)ソースデータセットのPCA分析(log2正規化RNA発現値-combat後)。
【
図2】発見(DC)及び検証コホート(VC)のcombat後の正規化RNA発現レベル(LASSO学習器機械学習モデルに基づく上位10のバイオマーカー)。ED-早期死亡;PD-進行;SD-安定;PR-部分奏効;CR-完全奏効。
【
図3】(A)発見コホート:LASSO学習器機械学習モデルに基づく上位10のマーカー。ED-早期死亡;CR-完全奏効;(B)発見コホート:LASSO学習器機械学習モデルに基づく上位3つのマーカー。ED-早期死亡;CR-完全奏効;(C)検証コホート:発見コホートで特定された上位10のマーカー。ED-早期死亡;CR-完全奏効;(D)検証コホート:発見コホートで特定された上位3つのマーカー。ED-早期死亡;CR-完全奏効。
【
図4】ランダムフォレストバイナリ分類器に基づくED+PDvsPR+CR予測のROC AUC曲線。モデルを発見コホートの75%でトレーニング後、検証コホートに適用する。コホート間には混合データは無く、データセットは十分に独立している。青色の実線は3マーカーモデル(CD247、LAX1、IKZF3)のROC AUCを示し;紫色の破線は25マーカーモデルのROC AUCを示し、緑色の破線はベースラインモデル(CD274のみ)のROC AUCを示す;ED-早期死亡;CR-完全奏効。
【
図5】(A)発見コホートにおけるEDvsCRグループ間のDEGバイオマーカーのボルケーノプロット。強調させたマーカーはLASSO学習器MLモデルにより特定されたものである。ED-早期死亡;CR-完全奏効;(B)検証コホートにおけるEDvsCRグループ間のDEGバイオマーカーのボルケーノプロット。強調させたマーカーはLASSO学習器MLモデルにより特定されたものである。ED-早期死亡;CR-完全奏効。
【
図6】(A)発見コホートに関する25のバイオマーカーの対数正規化した発現を示すスケーリングしたヒートマップ。階層クラスタリングは、遺伝子発現が低下した顕著なクラスタを示し、ED及びPD患者に多い。(B)検証コホートに関する25のバイオマーカーの対数正規化した発現を示すスケーリングしたヒートマップ。階層クラスタリングは、遺伝子発現が低下した顕著なクラスタを示し、ED及びPD患者に多い。ED-早期死亡;PD-進行;SD-安定;PR-部分奏効;CR-完全奏効。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別に定義されない限り、本発明を開示する際に使用され、技術及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する当業者に通常理解される意味を有する。更に教示すると、用語の定義は本発明の教示をより理解するために含まれる。
ここで使用される以下の用語は以下の意味を有する。
ここで使用される「a」、「an」及び「the」は文脈から明らかでない限り、単数及び複数の指示物を指す。例として、「a compartment」は1つ又は1つ超のcompartmentを指す。
ここで使用され、例えばパラメータ、量、一時的な継続時間などの測定可能な値を指す「約」は、特定値から±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、更に一層好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味するが、このような変動が開示した発明で実施するのに適切である場合に限る。しかしながら、修飾語である「約」が指す値自体も具体的に開示されていることを理解すべきである。
ここで使用される「comprise」、「comprising」及び「comprises」及び「comprised of」は「include」、「including」、「includes」又は「contain」、「containing」、「contains」と同義である。包括的つまりオープンエンドな用語であり、次に来る例えば構成要素の存在を明記し、当技術分野で公知である、又はここで開示された追加の列挙されていない構成要素、特徴、要素、部材、工程の存在を排除又は除外しない。
【0012】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、特に記載がない限り、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番又は時系列を記載するものではない。このように使用される用語は適当な状況下で交換可能であること、ここに記載する本発明の実施形態は、ここに記載又は説明されている以外の順番で操作することができることを理解すべきである。
端点による数値範囲の記述は、その範囲並びに記載した端点内に含まれるすべての数字及び比を含む。
他に定義されない限り、ここでの及び本明細書を通して「質量%」、「質量パーセント」、「%質量」又は「質量%」の表現は、製剤の全質量に基づくそれぞれの成分の相対質量を指す。
「1つ又は複数」或いは「少なくとも1つ」という用語、例えば部材群のうちの1つ又は複数或いは少なくとも1つの部材は、更なる例示によりそれ自体明らかであるが、この用語は特に該部材のいずれか1つ、或いは該部材の任意の2つ以上、例えば該部材の≧3、≧4、≧5、≧6又は≧7等のいずれか、及び該部材のすべてに対する参照を包含する。
【0013】
「遺伝子」は、ここでは広く用いられ、オープンリーディングフレームを定義する核酸配列など、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを包含する。
ここで使用される「診断」は一般的に疾病又は疾患に被験者が影響を受けやすいことの判定、被験者が現在疾病又は疾患に罹患しているかどうか、並びに疾病又は疾患に罹患した被験者の予後の判定を含む。
「個体」、「被験者」、「宿主」及び「患者」の用語はここで交換可能に用いられ、診断、処置又は治療が望まれる任意の哺乳類の被験者、特にヒトを指す。
「サンプル」又は「生体サンプル」という用語は、有機体から得られた多様なサンプルタイプを包含し、診断又はモニタリングアッセイで使用することができる。この用語は生体起源の血液及び他の液体サンプル、生体由来及びその後代の生検試料又は培養組織又は細胞などの固形組織サンプルを包含する。この用語は試薬を用いた処理、可溶化又は特定成分の濃縮などにより、調達後何らかの方法で処理されているサンプルを包含する。この用語は臨床サンプルを包含し、細胞培養物、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液及び組織サンプル中の細胞も含む。
「癌」、「新生物」、「腫瘍」及び「癌腫」という用語は、ここで交換可能に使用され、相対的に自律的な増殖を示す細胞を指すため、細胞増殖制御の顕著な損失により特徴づけられる異常増殖表現型を示す。一般的に、本願における検出のための目的の細胞は腫瘍微小環境における免疫細胞を含む。
【0014】
「発現変動遺伝子」という用語は、同じ細胞型の別の細胞と比較した場合に、腫瘍細胞において発現変動する遺伝子を表すポリヌクレオチド、又は発現変動する遺伝子に相当するポリヌクレオチドを包含することが意図される。このような発現変動遺伝子は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)をコードするオープンリーディングフレーム、並びにこのような遺伝子のイントロン、及び発現の調節に関わり、コード領域以外の最大約20kbである隣接する5’及び3’非コードヌクレオチド配列、或いは更にどちらか一方向を含み得る。一般的に、少なくとも約25%、通常少なくとも約50%から75%、より通常少なくとも約90%以上の発現レベル減少に伴う発現レベル差は、目的の発現変動遺伝子を示し、つまり試験サンプルにおいて対照サンプルに対して発現低下した遺伝子を示す。更に、少なくとも約25%、通常少なくとも約50%から75%、より通常少なくとも約90%の発現増加に伴う発現レベル差は、対照サンプルに対し、少なくとも約1.5倍、通常少なくとも約2倍から約10倍であり得、約100倍から約1,000倍増加し得、目的の発現変動遺伝子、つまり過剰発現又は発現上昇した遺伝子を示す。
ここで使用される「発現変動ポリヌクレオチド」は、発現変動遺伝子を表す配列を含む核酸分子(RNA又はDNA)を意味し、例えば発現変動ポリヌクレオチドは発現変動遺伝子を特異的に特定する配列(例えば、遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレーム)を含み、サンプルにおける発現変動ポリヌクレオチドの検出が、サンプルにおける発現変動遺伝子又は発現変動遺伝子の遺伝子産物の存在と相関する。「発現変動ポリヌクレオチド」は開示したポリヌクレオチドの断片、例えば生物活性を保持する断片、並びに開示したポリヌクレオチドと相同する、実質的に類似する、又は実質的に同一(例えば、約90%の配列同一性を有する)である核酸を包含することも意味する。
【0015】
ここで使用される「微小環境」という用語は、全体としての腫瘍微小環境、又は微小環境内における細胞の個別の部分集合を指し得る。腫瘍微小環境内で見出される免疫細胞は、マクロファージ、単球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、制御性B細胞、好中球、樹状細胞及び線維芽細胞である。一般的に、腫瘍微小環境は悪性形質転換を促進し、腫瘍増殖及び浸潤を支持し、宿主免疫から腫瘍を保護する細胞、可溶性因子、シグナリング分子、細胞外マトリックス及び機械的キューの複合混合物として定義される。
ここで使用される「マーカー」、「バイオマーカー」という用語は、遺伝子又は複数の遺伝子、或いはこの遺伝子又は複数の遺伝子により発現するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを指し、その単独又は他の遺伝子と組み合わせた発現レベルは免疫療法処置に対する反応と相関する。相関関係は遺伝子発現の増加又は減少に関係し得る(例えば、mRNA又は遺伝子によりコードされるペプチドレベルの増加又は減少)。
ここで使用される「インビトロ」という用語は人工環境、及び人工環境内で起こるプロセス又は反応を指す。インビトロ環境は限定されないが試験管及び細胞培養からなり得る。「インビボ」という用語は自然環境(例えば、動物又は細胞)、及び自然環境内で起こるプロセス又は反応を指す。「インシリコ」という用語は、処理がコンピュータシステムを用いて実施又はモデル化され、これによりデータ(例えば遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、・・・)を物理的に操作する必要性を部分的又は完全に回避する人工環境を指す。
【0016】
本明細書に引用される参考文献はすべて、その全体が参照によりここに組み入れられたものとする。特に、ここで具体的に参照される参考文献のすべての教示は参照により組み入れられたものとする。
別に定義されない限り、本発明を開示する際に使用され、技術及び科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する当業者により通常理解される意味を有する。更に教示すると、本説明で使用される用語の定義は本発明の教示をより理解するために含まれる。ここで使用される用語又は定義は、本発明の理解を助けるために示されているにすぎない。
本明細書を通して「1つの実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、この実施形態に関連して記載する特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な位置の「1つの実施形態において」又は「ある実施形態において」という表現の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するわけではないが、参照する場合もある。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、好適に組み合わせてよい。更に、ここに記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴を含むものもあるが、含まないものもあり、異なる実施形態の特徴の組合せは、当業者に理解されるように本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲において、クレームされた実施形態のいずれかは任意に組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明において、本発明者は免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を予測及び/又は判定するバイオマーカーを特定した。より具体的には、本発明者はCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つのバイオマーカーの発現レベルに基づき、免疫療法に対する癌と診断された被験者の反応を判定又は予測することができることを示す。より具体的には、本発明者は3つのみのバイオマーカーのセットCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルに基づき、免疫療法に対する反応を予測することができることを見出した。この3つのバイオマーカーのセットはバイオマーカーCD3G及びITGALを用いて任意に拡大することができる。更に、5つのバイオマーカーのセットCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALは、バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4で更に拡大することができ、これにより免疫療法処置に対する反応を予測するための10のバイオマーカーシグネチャを形成する。
免疫チェックポイント阻害剤を使用する免疫療法は多くの腫瘍タイプ、特に転移状態の治療状況を変化させている。しかしながら、重要で永続的な反応が一部の患者で達成されるが、患者の大多数は一部のみ反応するか又は反応せず、或いは更に厄介なことに、一部の患者には腫瘍増大が起きる。腫瘍増大は、動的パラメータを用いた画像処理で測定される腫瘍動態の予期せぬ促進として、臨床的に定義される現象である。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)などの免疫療法を用いた処置後の腫瘍増大(HPD)では、ICI処置後24~65日以内に患者が死亡することが多い(Ferraraら、2020a)。
現在まで、免疫療法処置に対する反応を予測し、更に患者がHPDを起こすかどうかを予測するバイオマーカーの探索は、ICI及び免疫微小環境間の動的相互作用、並びに異なる腫瘍タイプにおける免疫環境の不均一性により調査されている(Davis及びPatel、2019)。本願において、本発明者は免疫療法処置に対する被験者の反応を予測及び/又は判定することができるいくつかのバイオマーカーを特定した。
【0018】
第1の態様において、本出願はいくつかのバイオマーカーの発現解析に基づき、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供する。より具体的には、CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ又は5つ、更に一層好ましくは少なくとも10又はすべてのバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子の発現レベルを、癌と診断された被験者のサンプルにおいて評価し、免疫療法剤を用いた処置に対する反応を判定及び/又は予測する方法で使用される。別の実施形態では、癌と診断された被験者のサンプルにおいて、CD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGAL、CD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3及びIGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つのバイオマーカー、好ましくは少なくとも4つ又は5つのバイオマーカー、更に一層好ましくは10すべてのバイオマーカーの発現レベルを評価し、これらの発現レベルは免疫療法剤を用いた処置に対する反応を判定及び/又は予測する方法で使用される。
【0019】
好ましい実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応又は抵抗性を判定及び/又は予測する方法を提供する。本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析することを含む。更なる実施形態において、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD3G及びITGALの発現レベルを分析することを更に含む。なお更なる実施形態において、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は好ましくはすべての発現レベルを分析することも更に含む。このように、いくつかの実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALの発現レベルを分析することを含む。いくつかの実施形態において、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGAL、CD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3及びIGHV4.4の発現レベルを分析することを含む。いくつかの実施形態において、これらの方法のいずれかは、被験者のサンプルにおけるCXCR6、SLAMF7、MYO1G、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV4.28、IGHV4.31からなる一覧から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを分析することを更に追加することができる。
【0020】
1つの実施形態において、このように免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析することを含む。
別の実施形態において、このように免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALの発現レベルを分析することを含む。
更に別の実施形態において、このように免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALの発現レベルをバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の1つ又は複数の発現レベルと組み合わせ;好ましくはバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの発現レベルと組み合わせ;更に一層好ましくは、バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4のすべての発現レベルと組み合わせて分析することを含む。
【0021】
なお更なる実施形態において、このように免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGAL、CD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の発現レベルを分析することを含む。
別の実施形態において、本願は免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を判定及び/又は予測する方法を提供し、本方法は腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われるサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGAL、CD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の発現レベルをCXCR6、SLAMF7、MYO1G、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV4.28、IGHV4.31からなる一覧から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと組み合わせて分析することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルを対応する基準値又は閾値と比較する。この値は免疫療法剤、特に免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対し、公知の反応を有する被験者に特有である。
いくつかの実施形態において、1つの発現解析に基づきリスクスコアを取得する。このリスクスコアは免疫療法剤に対する反応の尤度を表す。いくつかの更なる実施形態において、リスクスコアは閾値スコアと比較される。この閾値スコアは、免疫療法剤を用いた処置に対し、公知の反応を有する被験者から得られたサンプルにおけるバイオマーカーの発現解析に基づいて算出される。
【0023】
CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4を含むバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子の一覧は、このように本出願における1つの態様の効果予測バイオマーカーを含む。被験者が免疫療法剤を用いた処置に反応するかどうか、及びどのように反応するかを判定するために、好ましくはこれらの効果予測バイオマーカーの少なくとも3つ;少なくとも5つ;少なくとも10、又はすべてを使用する。
【0024】
具体的な実施形態において、ここで教示されるような方法は、バイオマーカーの発現レベルを1つ又は複数の対応する基準値又は閾値と比較することを含んでよく、この値は免疫療法剤、特に免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対し、公知の反応を有する被験者に特有である。該基準値又は閾値は、免疫療法剤を用いた処置後、公知の予後を有する被験者における1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを示し得る。該公知の予後は、処置に対して反応する、処置に対して部分奏効する、処置に対して反応しない、又は処置に対して反応し、腫瘍増大が発生するであり得る。具体的な実施形態において、該公知の予後は進行(PD)、安定(SD)、部分奏効(PR)及び完全奏効(CR)から選択される固形癌治療効果判定1.1(RECIST1.1;(Eisenhauerら、2019)の反応基準のいずれかであり得る。進行(PD)は更に早期死亡(ED)及び非早期死亡コホートに分けられる。EDは無憎悪生存期間(PFS)<90日間及び全生存期間(OS)<180日間として定義される(Ferraraら、2020b)。他の実施形態において、該基準値又は閾値は、健常被験者における1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを表し得る。該比較は、一般的に少なくとも1つの差の有無、及び任意に比較される値又はプロファイル間の差の大きさを判定する任意の手段を含んでよい。比較は外観検査、測定値の算術比較又は統計比較を含み得る。このような統計比較は限定されないがアルゴリズムを適用することを含む。値又はバイオマーカーの発現プロファイルが少なくとも1つの標準を含む場合、該値又はバイオマーカーの発現プロファイルの差を判定するための比較は、これらの標準の測定値も含み得、バイオマーカーの測定値は内部標準の測定値と相関する。
いずれかのバイオマーカーの発現レベルに関する基準値又は閾値は、他のバイオマーカーのために以前に使用された公知の手順に従って確立することができる。
例えば、バイオマーカーの発現レベルの基準値は、被験者がここに教示される免疫療法処置に反応しやすいかどうかを判定するためのものであり、免疫療法剤を用いた処置に対する公知の反応により特徴づけられる1つの個体又は個体集団(例えば、グループ)のサンプルにおいて、バイオマーカーの量又は発現を判定することにより確立することができる。このような集団は限定されないが、≧2、≧10、≧100又は数百以上の個体を含み得る。
ある実施形態において、ここで意図されるような基準値又は閾値は、ここで意図されるようなバイオマーカーの絶対量を示唆し得る。別の実施形態において、試験の被験者由来のサンプルにおけるバイオマーカーの量は、基準値と比較してそのまま判定してよい(例えば、増加又は減少、或いは倍増加又は倍減少の観点)。有利には、これにより、バイオマーカーのそれぞれの絶対量をまず判定する必要はなく、被験者由来のサンプルにおけるバイオマーカーの量又は発現レベルを基準値と比較することが可能になり得る(言い換えれば、基準値に対する被験者由来のサンプルにおけるバイオマーカーの相対量を測定する)。
【0025】
説明したとおり、本方法、使用又は製品は、ここで教示されるように被験者のサンプルにおける1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベル、及び所与の基準値又は閾値間にずれがあるか、無いかを見出すことを含み得る。
第2の値から第1の値の「ずれ」又は第1の値及び第2の値間の「差」は、一般的に任意の方向(例えば、増加:第1の値>第2の値;又は減少:第1の値<第2の値)及び任意の変化の程度を包含し得る。
例えば、ずれ又は差については、比較される第2の値に対して、限定されないが、第1の値が少なくとも約10%(約0.9倍以下)、又は少なくとも約20%(約0.8倍以下)、又は少なくとも約30%(約0.7倍以下)、又は少なくとも約40%(約0.6倍以下)、又は少なくとも約50%(約0.5倍以下)、又は少なくとも約60%(約0.4倍以下)、又は少なくとも約70%(約0.3倍以下)、又は少なくとも約80%(約0.2倍以下)、又は少なくとも約90%(約0.1倍以下)減少することを包含し得る。
例えば、ずれ又は差については、比較される第2の値に対して、限定されないが、第1の値が少なくとも約10%(約1.1倍以上)、又は少なくとも約20%(約1.2倍以上)、又は少なくとも約30%(約1.3倍以上)、又は少なくとも約40%(約1.4倍以上)、又は少なくとも約50%(約1.5倍以上)、又は少なくとも約60%(約1.6倍以上)、又は少なくとも約70%(約1.7倍以上)、又は少なくとも約80%(約1.8倍以上)、又は少なくとも約90%(約1.9倍以上)、又は少なくとも約100%(約2倍以上)、又は少なくとも約150%(約2.5倍以上)、又は少なくとも約200%(約3倍以上)、又は少なくとも約500%(約6倍以上)、又は少なくとも約700%(約8倍以上)等増加することを包含し得る。
好ましくは、ずれ又は差は統計学的に有意な観察された変化を指し得る。例えば、ずれ又は差は所与の集団における基準値の許容誤差からはずれた、観察された変化を指し得る(上記のように、例えば標準偏差又は標準誤差、或いはこれらの所定の倍数、例えば±1×SD又は±2×SD又は±3×SD、或いは±1×SE又は±2×SE又は±3×SEの違い)。ずれ又は差は、所与の集団の値により定義される参考範囲をはずれた値を指す場合もある(例えば、該集団における値の≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧75%又は≧80%又は≧85%又は≧90%又は≧95%或いは≧100%を含む範囲の外側)。
【0026】
更なる実施形態において、観察された変化が所与の閾値又はカットオフを超える場合、ずれ又は差が断定され得る。このような閾値又はカットオフを当技術分野で一般的に公知であるように選択してよく、予測方法の選択された精度、感度及び/又は特異度、例えば少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%の精度、感度及び/又は特異度を提供する。
例えば、受信者操作特性(ROC)曲線分析は、本診断試験を臨床使用するために、所与のバイオマーカー量の最適な閾値又はカットオフ値を選択するのに使用することができる。これは、許容可能な全体的な精度、感度及び/又は特異度、或いは陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、陽性尤度比(LR+)、陰性尤度比(LR-)、ヨーデン指標又は類似のものなど、それ自体周知である関連性能評価尺度に基づくものである。
例えば、Robin X.,PanelomiX:A threshold-based algorithm to create panels of biomarkers,2013,Translational Proteomics,1(1):57-64に記載のとおり、各個別のバイオマーカーに最適な閾値又はカットオフ値を受信者操作特性(ROC)曲線の極値として、つまり斜線から最も離れた点として選択することができる。
当業者は正確な閾値又はカットオフ値を示すことは適切でないことを理解するであろう。関連する閾値又はカットオフ値は、任意の閾値又はカットオフ値に関する感度及び特異度並びに感度/特異度を相互に関連付けることにより得ることができる。
陽性的中率/陰性的中率/感度/特異度のどのレベルが望ましいか、陽性又は陰性的中率のどのくらいの低下が許容されるのかを判定するのは診断技術者である。選択された閾値又はカットオフレベルは、診断技術者により本方法と組み合わせて使用される他の診断パラメータ次第であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、ここで教示されるような方法、使用又は製品では、リスクスコアが生成される。生成されるリスクスコアは免疫療法処置に被験者が反応する尤度を表す。いくつかの実施形態において、該リスクスコアは0から1で、免疫療法処置に被験者が反応する尤度を示し、1は免疫療法剤を用いた処置に被験者が反応する尤度が100%であり、0は免疫療法剤を用いた処置に反応する尤度が0%である。
いくつかの実施形態において、尤度値は機械学習モデルにより作製され、入力データとして1つのバイオマーカーシグネチャの正規化した発現レベルを使用する。更なる実施形態において、機械学習モデルは事前トレーニング済み機械学習モデルであり、事前トレーニングアーキテクチャを使用して0から1のリスクスコアを算出する。この事前トレーニングアーキテクチャは、免疫療法処置に対する反応に関して、すでに公知のアノテーションを有する後ろ向き及び前向きサンプルのプールに基づいてトレーニング及び更新される。特にこの事前トレーニングアーキテクチャは、免疫療法処置に対する反応に関して、すでに公知のアノテーションを有する被験者のサンプルから得られた基準値又は閾値のプールに基づき、トレーニング及び更新される。
【0028】
いくつかの実施形態において、機械学習モデルは(1)ランダム効果を用いた線形混合効果モデル、(2)発現差異解析、(3)ランダムフォレスト機械学習モデル、(4)勾配ブースティングマシンモデル及び(5)VGG16及びResNet50アーキテクチャなど、新規の深層回帰モデルに基づく事前トレーニングアーキテクチャから選択される。いくつかの実施形態において、機械学習モデルの組合せを適用することができる。各モデルを各データセットで独立してランした後、集合的に集合体データでランし、確実にシグネチャが独立したトライアルで良好に繰り返される。いくつかの更なる実施形態において、遺伝子及びラベルのブートストラップ並びに独立したコホートの比較を適用することができ、これらのモデルのランダムな一致の確率を除外し、確実に1つ又は複数のバイオマーカーが偶然に単独でデータに現れることがないようにする。
【0029】
特定の好ましい実施形態において、特にバイオマーカー発現解析及びリスクスコアの算出などの分析は、このように勾配ブースティングマシン(GBM)分類法などの機械学習を使用してトレーニング及び更新され、免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応に関与する特異的なバイオマーカー発現の特徴パターンを学習する。
いくつかの実施形態によれば、勾配ブースティングマシン(GBM)分類法において、CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを使用し、1つ又は複数の免疫療法に対する被験者の反応に関与する特異的なバイオマーカー発現の特徴パターンを学習する。これらのGBMモデルにおける反応変数は、早期死亡(ED)、進行(PD)、部分奏効(PR)及び完全奏効(CR)から選択されるRECIST1.1基準、並びに免疫療法に対する反応のために更に最適化される。具体的な実施形態において、バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを勾配ブースティングマシン(GBM)分類法で使用し、免疫療法に対する被験者の反応に関与する特異的なバイオマーカー発現の特徴パターンを学習する。他の実施形態において、バイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G及びITGALの発現レベルを勾配ブースティングマシン(GBM)分類法で使用し、免疫療法に対する被験者の反応に関与する特異的なバイオマーカー発現の特徴パターンを学習する。なお更なる実施形態において、バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は好ましくはすべてと組み合わせたバイオマーカーCD247、LAX1、IKZF3、CD3G、ITGALの発現レベルを勾配ブースティングマシン(GBM)分類法で使用し、免疫療法に対する被験者の反応に関与する特異的なバイオマーカー発現の特徴パターンを学習する。
【0030】
いくつかの実施形態において、リスクスコアが得られる本発明の方法には、当業者に公知の他の癌診断を使用することが更に追加される。
本方法、使用及び製品は、このように免疫療法剤を用いた処置に対する被験者の反応を予測及び/又は判定することが意図される。被験者の反応はRECIST1.1反応基準に基づき判定することができ、早期死亡(ED)、進行(PD)、安定(SD)、部分奏効(PR)及び完全奏効(CR)から選択することができる(https://recist.eortc.org/recist-1-1-2/;Eisenhauerら、2009)。
【0031】
通常、ここに教示される方法、キット又は使用は、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおける1つ又は複数のバイオマーカーの発現解析を特徴とする。ここで使用される「バイオマーカー」は当技術分野で普及しており、生体分子及び/又はその検出可能部分を広く示す場合があり、被験者における定性的及び/又は定量的評価は、被験者の表現型及び/又は遺伝子型の1つ又は複数の態様、例えば所与の疾病又は状態に関する被験者の状況等に対し、予測的であり又は情報に富むものである(例えば、予測、診断及び/又は予後)。
好ましい実施形態において、ここに教示されるバイオマーカーはタンパク質コード遺伝子であり、タンパク質コード遺伝子の発現レベルが評価される。更に一層好ましい実施形態において、1つ又は複数のタンパク質コード遺伝子のRNAに基づく発現レベルが評価される。サンプルにおける特異的な遺伝子発現レベルを判定するのに好適で、当技術分野で公知の任意の方法により、ここに開示されるタンパク質コード遺伝子の発現レベルを評価してよい。このような方法は周知であり、当技術分野で日常的に実施されている。遺伝子発現解析は、例えば逆転写酵素リアルタイム定量PCR、遺伝子発現アレイ、TruSeq遺伝子発現解析、in-situハイブリダイゼーション、ダイシーケンシング、パイロシーケンシング、トランスクリプトームシーケンシングのCRISPR-Casに基づく形態又はその他の形態(トータルRNA-Seq、mRNA-Seq、遺伝子発現プロファイリング)により実施することができる。
更に、TruSeq Targeted RNA Expression Kitのカスタマイズ版は、ここにリストされる複数の遺伝子の発現レベルを測定するのに使用される。TruSeq Targeted RNA Expression Kitは高度にカスタマイズ可能なミッドプレックスからハイプレックスの遺伝子発現プロファイリング研究を可能にし、384サンプルまでのマルチプレックスに加えて、12~1,000アッセイの定義済みのパネルは個別のエクソン、アイソフォーム、スプライスジャンクション、コーディングSNP(cSNP)、遺伝子融合、及びノンコーディングRNA転写産物をターゲットとする。
また、TruSeq Custom Amplicon Kit Dxのカスタマイズ版は、ここにリストされる複数の遺伝子の定性的及び/又は定量的評価に使用することができる。TruSeq Custom Amplicon Kit DxはFDA認証済み、FDA規制対応、CE-IVDマーク取得済みのアンプリコンシーケンシングキットであり、FDA規制に対応し、CE-IVDマーク取得済みのMiSeqDx及びNextSeq550dx機器で使用するための独自の次世代シーケンス(NGS)アッセイを臨床検査室で展開することができる。
【0032】
特定の他の実施形態において、ここで教示されるバイオマーカーはペプチド、ポリペプチド及び/又はタンパク質を基にするものでよい。任意の遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質を含む任意のマーカーへの言及は、当技術分野におけるそれぞれの名称で一般的に知られたマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質に相当する。これらの用語は、任意の有機体、特に動物、好ましくは温血動物、より好ましくは脊椎動物、更により好ましくはヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物、なおより好ましくはヒトのマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質を包含する。これらの用語は特に天然配列を有するマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質を包含し、つまり一次配列が自然界で見出された、又は自然界由来のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質と同じであるものである。当業者は、天然配列は異なる種間で該種間の遺伝的分岐により異なる場合があることを理解している。更に、天然配列は、同じ種の異なる個体間又は個体内で所与の種内の正常な遺伝的多様性(変異)により異なる場合がある。また、天然配列は、同じ種の異なる個体間又は個体内で遺伝子変化、或いは転写後又は翻訳後修飾により異なる場合がある。ここではマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質の任意のこのような変異体又はアイソフォームが意図されている。その結果、自然界で見出される、又は自然界由来のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の全配列は「天然」とみなされる。これらの用語は、生体、臓器、組織又は細胞の一部を形成する場合の、生体サンプルの一部を形成する場合の、並びにこのような供給源から少なくとも一部が単離される場合のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を包含する。これらの用語は、組換え又は合成手段により作製される場合のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質も包含する。
特定の実施形態において、ここで教示されるバイオマーカーは、ヒトバイオマーカー、例えば特にCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31及びIGHV4.4から選択されるバイオマーカーのいずれかでよい。
【0033】
「CD247」への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CD247マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CD247は「CD3-zeta」、「CD3H」、「CD3Q」、「CD3Z」、「IMD25」、「T3Z」又は「TCRZ」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CD247核酸、並びにCD247ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。
例を挙げると、ヒトCD247 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NM_000734.4(「アイソフォーム2前駆体」)、NM_198053.3(「アイソフォーム1前駆体」)、XM_011510145.2(「アイソフォームX2」)、XM_011510144.3(「アイソフォームX1」)、NM_001378516.1(「アイソフォーム4前駆体」)、NM_001378515.1(「アイソフォームX3前駆体」)にアノテーションされる。
NM_000734.4のヌクレオチド65(開始コドン)から556(終止コドン)はCD247コード配列(CDS)を構成する。例により、NM_00734.4のヌクレオチド65~556を以下に再現する。
ATGAAGTGGAAGGCGCTTTTCACCGCGGCCATCCTGCAGGCACAGTTGCCGATTACAGAGGCACAGAGCTTTGGCCTGCTGGATCCCAAACTCTGCTACCTGCTGGATGGAATCCTCTTCATCTATGGTGTCATTCTCACTGCCTTGTTCCTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA(配列番号:1)
【0034】
例を挙げると、ヒトCD247タンパク質配列は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_000725.1、NP_932170.1、XP_011508447.1、XP_011508446.1、NP_001365445.1、NP_001365444.1にアノテーションされる。
例として、NP_000725.1のアミノ酸配列を更に以下に再現する。
MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号:2)
例を挙げると、ヒトCD247遺伝子は、NCBI Genbank Gene ID919にアノテーションされる。
【0035】
「LAX1」(「リンパ球膜貫通アダプタ1」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、LAX1マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、LAX1は「LAX」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、LAX1核酸、並びにLAX1ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。
例を挙げると、ヒトLAX1 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NM_017773.4(「アイソフォームa」)、NM_006711397.4(「アイソフォームX1」)、NM_001136190.2(「アイソフォームb」)又はNM_001282878.1(「アイソフォームc」)にアノテーションされる。
NM_017773.4のヌクレオチド384(開始コドン)から1580(終止コドン)はLAX1コード配列(CDS)を構成する。例により、NM_017773.4のヌクレオチド384~1580を以下に再現する。
ATGGATGGTGTCACTCCAACCCTTTCGACAATCAGAGGGAGGACCTTGGAGTCCAGCACTCTGCATGTGACTCCCCGCAGCCTGGACAGAAATAAAGACCAGATCACCAACATCTTTTCCGGGTTTGCGGGACTCCTCGCCATCCTCCTGGTCGTTGCGGTTTTCTGCATCTTGTGGAATTGGAATAAACGGAAGAAGCGACAAGTTCCTTACCTCCGAGTTACCGTCATGCCCTTGCTGACTTTGCCACAAACCAGACAAAGAGCCAAAAATATTTATGACATCTTGCCTTGGCGACAGGAAGACCTGGGGAGACATGAGTCGAGGAGTATGCGCATTTTCAGTACTGAGAGCCTCCTCTCCAGAAATTCTGAGAGCCCGGAGCATGTGCCCTCCCAAGCAGGCAATGCCTTCCAGGAGCATACAGCCCACATCCATGCCACAGAGTACGCGGTGGGTATCTATGACAACGCCATGGTCCCCCAGATGTGTGGGAACCTCACTCCCTCGGCACACTGCATCAATGTCAGAGCTTCCAGAGACTGCGCAAGCATTTCTTCAGAGGATTCGCATGATTATGTCAATGTCCCCACAGCAGAAGAGATTGCTGAGACTCTAGCTTCTACCAAAAGCCCTTCCAGAAATCTCTTTGTTCTTCCCAGTACCCAGAAGCTGGAGTTTACTGAGGAAAGAGATGAGGGCTGTGGAGATGCTGGTGACTGCACCAGTTTGTATTCTCCAGGAGCTGAGGACAGTGATTCACTCAGCAATGGAGAAGGTTCTTCTCAGATCTCAAATGACTATGTCAACATGACAGGGTTGGATCTCAGTGCCATCCAGGAAAGGCAGCTCTGGGTGGCTTTTCAGTGCTGCAGAGACTATGAAAATGTTCCAGCAGCAGATCCCAGTGGAAGCCAGCAGCAGGCTGAGAAAGATGTGCCATCCTCAAACATAGGTCATGTCGAGGACAAGACAGATGATCCCGGGACCCATGTCCAATGTGTCAAAAGGACATTCCTTGCTTCAGGGGATTATGCAGACTTTCAGCCATTCACACAGAGTGAGGACAGTCAGATGAAACATAGAGAAGAGATGTCAAATGAGGACTCCAGTGACTATGAAAATGTGCTAACTGCCAAGTTAGGAGGCAGGGACTCTGAGCAGGGGCCTGGCACTCAGCTCCTTCCTGATGAATGA(配列番号:3)
【0036】
例を挙げると、ヒトLAX1タンパク質配列は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_060243.2、NP_00112966.2、NP_001269807にアノテーションされる。
例として、NP_060243.2のアミノ酸配列を更に以下に再現する。
MDGVTPTLSTIRGRTLESSTLHVTPRSLDRNKDQITNIFSGFAGLLAILLVVAVFCILWNWNKRKKRQVPYLRVTVMPLLTLPQTRQRAKNIYDILPWRQEDLGRHESRSMRIFSTESLLSRNSESPEHVPSQAGNAFQEHTAHIHATEYAVGIYDNAMVPQMCGNLTPSAHCINVRASRDCASISSEDSHDYVNVPTAEEIAETLASTKSPSRNLFVLPSTQKLEFTEERDEGCGDAGDCTSLYSPGAEDSDSLSNGEGSSQISNDYVNMTGLDLSAIQERQLWVAFQCCRDYENVPAADPSGSQQQAEKDVPSSNIGHVEDKTDDPGTHVQCVKRTFLASGDYADFQPFTQSEDSQMKHREEMSNEDSSDYENVLTAKLGGRDSEQGPGTQLLPDE(配列番号:4)
例を挙げると、ヒトLAX1遺伝子は、NCBI Genbank Gene ID54900にアノテーションされる。
【0037】
「IKZF3」(「IKAROSファミリージンクフィンガ3」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IKZF3マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IKZF3は「AIO」、「AIOLOS」、「IMD84」及び「ZNFN1A3」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IKZF3核酸、並びにIKZF3ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。
例を挙げると、ヒトIKZF3 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号XM_047435625.1(アイソフォームX1)、NM_001284516.1(アイソフォーム14)、NM_001257409.2(アイソフォーム8)、NM_001257408.2(アイソフォーム7)、NM_001257413.2(アイソフォーム12)、NM_001257412.2(アイソフォーム11)、NM_001257411.2(アイソフォーム10)、NM_001257410.2(アイソフォーム9)、NM_001257414.2(アイソフォーム13)、NM_183231.3(アイソフォーム5)、NM_183228.3(アイソフォーム2)、NM_001284515.2(アイソフォーム14)、NM_183232.3(アイソフォーム6)、NM_183229.3(アイソフォーム3)、NM_183230.3(アイソフォーム4)、NM_012481.5(アイソフォーム1)、NM_001284514.2(アイソフォーム14)にアノテーションされる。
NM_001257409.2のヌクレオチド187(開始コドン)から1497(終止コドン)はIKZF3コード配列(CDS)を構成する。例により、NM_001257409.2のヌクレオチド187~1497を以下に再現する。
ATGGAAGATATACAAACAAATGCGGAACTGAAAAGCACTCAGGAGCAGTCTGTGCCCGCAGATGATTCAATGAAAGTGAAAGATGAATACAGTGAAAGAGATGAGAATGTTTTAAAGTCAGAACCCATGGGAAATGCAGAAGAGCCTGAAATCCCTTACAGCTATTCAAGAGAATATAATGAATATGAAAACATTAAGTTGGAGAGACATGTTGTCTCATTCGATAGTAGCAGGCCAACCAGTGGAAAGATGAACTGCGATGTGTGTGGATTATCCTGCATCAGCTTCAATGTCTTAATGGTTCATAAGCGAAGCCATACTGGTGAACGCCCATTCCAGTGTAATCAGTGTGGGGCATCTTTTACTCAGAAAGGTAACCTCCTCCGCCACATTAAACTGCACACAGGGGAAAAACCTTTTAAGTGTCACCTCTGCAACTATGCATGCCAAAGAAGAGATGCGCTCACGGGGCATCTTAGGACACATTCTGCAAGTGCGGAGGCAAGACACATCAAAGCAGAGATGGGAAGTGAAAGAGCTCTCGTACTGGACAGATTAGCAAGCAATGTGGCAAAACGAAAAAGCTCAATGCCTCAGAAATTCATTGGTGAGAAGCGCCACTGCTTTGATGTCAACTATAATTCAAGTTACATGTATGAGAAAGAGAGTGAGCTCATACAGACCCGCATGATGGACCAAGCCATCAATAACGCCATCAGCTATCTTGGCGCCGAAGCCCTGCGCCCCTTGGTCCAGACACCGCCTGCTCCCACCTCGGAGATGGTTCCAGTTATCAGCAGCATGTATCCCATAGCCCTCACCCGGGCTGAGATGTCAAACGGTGCCCCTCAAGAGCTGGAAAAGAAAAGCATCCACCTTCCAGAGAAGAGCGTGCCTTCTGAGAGAGGCCTCTCTCCCAACAATAGTGGCCACGACTCCACGGACACTGACAGCAACCATGAAGAACGCCAGAATCACATCTATCAGCAAAATCACATGGTCCTGTCTCGGGCCCGCAATGGGATGCCACTTCTGAAGGAGGTTCCCCGCTCTTACGAACTCCTCAAGCCCCCGCCCATCTGCCCAAGAGACTCCGTCAAAGTGATCAACAAGGAAGGGGAGGTGATGGATGTGTATCGGTGTGACCACTGCCGCGTCCTCTTCCTGGACTATGTGATGTTCACGATTCACATGGGCTGCCACGGCTTCCGTGACCCTTTCGAGTGTAACATGTGTGGATATCGAAGCCATGATCGGTATGAGTTCTCGTCTCACATAGCCAGAGGAGAACACAGAGCCCTGCTGAAGTGA(配列番号:5)
【0038】
例を挙げると、ヒトIKZF3タンパク質配列は、NCBI Genbankアクセッション番号XP_047291581.1、NP_001271445.1、NP_001244338.1、NP_001244337.1、NP_001244342.1、NP_001244340.1、NP_001244339.1、NP_001244343.1、NP_899054.1、NP_899051.1、NP_001271444.1、NP_899055.1、NP_899052.1、NP_899053.1、NP_036613.2、NP_001271443.1にアノテーションされる。
例として、NP_001244338.1のアミノ酸配列を以下に更に再現する。
MEDIQTNAELKSTQEQSVPADDSMKVKDEYSERDENVLKSEPMGNAEEPEIPYSYSREYNEYENIKLERHVVSFDSSRPTSGKMNCDVCGLSCISFNVLMVHKRSHTGERPFQCNQCGASFTQKGNLLRHIKLHTGEKPFKCHLCNYACQRRDALTGHLRTHSASAEARHIKAEMGSERALVLDRLASNVAKRKSSMPQKFIGEKRHCFDVNYNSSYMYEKESELIQTRMMDQAINNAISYLGAEALRPLVQTPPAPTSEMVPVISSMYPIALTRAEMSNGAPQELEKKSIHLPEKSVPSERGLSPNNSGHDSTDTDSNHEERQNHIYQQNHMVLSRARNGMPLLKEVPRSYELLKPPPICPRDSVKVINKEGEVMDVYRCDHCRVLFLDYVMFTIHMGCHGFRDPFECNMCGYRSHDRYEFSSHIARGEHRALLK(配列番号:6)
例を挙げると、ヒトIKZF3遺伝子は、NCBI Genbank Gene ID22806にアノテーションされる。
【0039】
「ITGAL」(「インテグリンサブユニットアルファL」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、ITGALマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、ITGALは「CD11A」、「LFA-1」、「LFA1A」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、ITGAL核酸、並びにITGALペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトITGAL mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_002209.3、XM_005255.13.1、XM_006721044.2、NM_001114380.2、XM_047434073.1、XM_047434072.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトITGALタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_002200.2、XP_005255370.1、XP_006721107.1、NP_001107852.1、XP_047290029.1、XP_047290028.1にアノテーションされる。
【0040】
「CD3G」(「T細胞受容体複合体のCD3ガンマサブユニット」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CD3Gマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CD3Gは「CD3ガンマ」、「IMD17」又は「T3G」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CD3G核酸、並びにCD3Gペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトCD3G mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_000073.3、XM_006718941.4又はXM_005271724.5にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCD3Gタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_000064.1、NP_006719004.1又はXP_005271781.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCD3G遺伝子は、NCBI Genbank ID:917にアノテーションされる。
「CD3E」(「T細胞受容体複合体のCD3イプシロンサブユニット」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CD3Eマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CD3Eは「CD3イプシロン」、「IMD18」、「T3E」又は「TCRE」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CD3E核酸、並びにCD3Eペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトCD3E mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_000733.4にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCD3Eタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_XXX NP_000724.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCD3E遺伝子は、NCBI Genbank ID:916にアノテーションされる。
【0041】
「CXCR6」(「C-X-Cモチーフケモカイン受容体6」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CXCR6マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CXCR6は「BONZO」、「CD186」、「CDw186」、「STRL33」、「TYMSTR」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CXCR6核酸、並びにCXCR6ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトCXCR6 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001386436.1、NM_001386437.1、NM_006564.2又はNM_001386435.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCXCR6タンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001373365.1、NP_00137336.1、NP_006555.1又はNP_001373364.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCXCR6遺伝子は、NCBI Genbank ID:10663にアノテーションされる。
「SLAMF7」(「SLAMファミリーメンバー7」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、SLAMF7マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、SLAMF7は「19A」、「CD319」、「CRACC」、「CS1」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、SLAMF7核酸、並びにSLAMF7ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトSLAMF7 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001282588.2、NM_001282589.2、NM_001282590.2、NM_001282591.2、NM_001282592.2、NM_001282593.2、NM_001282594.2、NM_001282595.1、NM_001282596.2又はNM_021181.5にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトSLAMF7タンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001269517.1、NP_001269518.1、NP_001269519.1、NP_001269520.1、NP_001269521.1、NP_001269522.1、NP_001269523.1、NP_001269524.1、NP_001269525.1又はNP_067004.3にアノテーションされる。NP_XXX。例を挙げると、ヒトSLAMF7遺伝子は、NCBI Genbank ID:57823にアノテーションされる。
【0042】
「MYO1G」(「ミオシンIG」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、MYOIGマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、MYOIGは「HA」、「HLA-HA2」又は「MHAG」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、MYO1G核酸、並びにMYO1Gペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトMYO1G mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_033054.3にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトMYO1Gタンパク質はNCBI Genbankアクセッション番号NP_149043.2にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトMYO1G遺伝子は、NCBI Genbank ID:64005にアノテーションされる。
「TIGIT」(「Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、TIGITマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、TIGITは「VSIG9」、「VSTM3」又は「WUCAM」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、TIGIT核酸、並びにTIGITペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトTIGIT mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_173799.4、XM_047447671.1又はXM_047447672.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトTIGITタンパク質はNCBI Genbankアクセッション番号NP_776160.2、XP_047303627.1又はXP_047303628にアノテーションされる。例を挙げると、TIGIT遺伝子は、NCBI Genbank ID:201633にアノテーションされる。
【0043】
「ICOS」(「誘導性T細胞共刺激分子」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、ICOSマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、ICOSは「AILIM」、「CD278」又は「CVID1」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、ICOS核酸、並びにICOSペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトICOS mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_012092.4又はXM_047444022.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトICOSタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_036224.1又はXP_047299978.1にアノテーションされる。例を挙げると、ICOS遺伝子はNCBI Genbank ID:29851にアノテーションされる。
「CLEC4C」(「C型レクチンドメインファミリー4メンバーC」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CLEC4Cマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CLEC4Cは「BDCA-2」、「BDCA2」、「CD303」、「CLECSF11」、「CLECSF7」、「DLEC」、「HECL」又は「PRO34150」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CLEC4C核酸、並びにCLEC4ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトCLEC4C mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001371390.1、NM_001371391.1、NM_130441.3又はNM_203503.2にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCLEC4Cタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001358319.1、NP_001358320.1、NP_569708.1又はNP_987099.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCLEC4C遺伝子は、NCBI Genbank ID:170482にアノテーションされる。
【0044】
「CXCR3」(「C-X-Cモチーフケモカイン受容体3」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、CXCR3マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、CXCR3は「CD182」、「CD183」、「CKR-L2」、「CMKAR3」、「GPR9」、「IP10-R」、「Mig-R」又は「MigR」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、CXCR3核酸、並びにCXCR3ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトCXCR3 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001504.2、XM_047442010.1、NM_001142797.2、XM_005262257.4、XM_005262256.4又はXM_017029435.2にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCXCR3タンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001495.1、XP_047297966.1、NP_001136269.1、XP_005262314.1、XP_00526313.1、XP_016884924.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトCXCR3遺伝子は、NCBI Genbank ID:2833にアノテーションされる。
「TLR8」(「トール様受容体8)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、TLR8マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、TLR8は「CD288」、「IMD98」、「hTLR8」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、TLR8核酸、並びにTLR8ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトTLR8 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_016610.4又はNM_138636.5にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトTLR8タンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_057694.2又はNP_619542.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトTLR8遺伝子は、NCBI Genbank ID:51311にアノテーションされる。
【0045】
「FCGR2A」(「Fcガンマ受容体IIa」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、FCGR2Aマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、FCGR2Aは「CD32」、「CD32A」、「CDw32」、「FCG2」、「FCGR2」、FCGR2A1」、「FcGR」、「FcgammaRIIa」又は「IGFR2」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、FCGR2A核酸、並びにFCGR2Aペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトFCFR2A mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001136219.3、NM_001375296.1、NM_001375297.1又はNM_021642.5にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトFCGR2Aタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001129691.1、NP_001362225.1、NP_001362226.1又はNP_067674.2にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトFCGR2A遺伝子は、NCBI Genbank ID:2212にアノテーションされる。
「IDO1」(「インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IDO1マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IDO1は「IDO」、「IDO-1」又は「INDO」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IDO核酸、並びにIDOペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIDO mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_002164.6にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトIDOタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_002155.1にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトIDO1遺伝子はNCBI Genbank ID:3620にアノテーションされる。
【0046】
「TRAF3IP3」(「TRAF3相互作用タンパク質3」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、TRAF3IP3マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、TRAF3IP3は「T3JAM」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、TRAF3IP3核酸、並びにTRAF3IP3ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトTRAF3IP3 mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001287754.2、NM_001320143.2、NM_001320144.2、NM_025228.4にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトTRAF3IP3タンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001274683.1、NP_001307072.1、NP_001307073.1又はNP_079504.2にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトTRAF3IP3遺伝子はNCBI Genbank ID:80342にアノテーションされる。
「PIK3CD」(「ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート3-キナーゼ触媒サブユニットデルタ」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、PIK3CDマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、PIK3CDは「APDS」、「IMD14」、「IMD14A」、「IMD14B」、「P110DELTA」、「PI3K」、「ROCHIS」又は「p110D」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、PIK3CD核酸、並びにPIK3CDペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトPIK3CD mRNAは、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nig.gov/)アクセッション番号NM_001350234.2、NM_001350235.1又はNM_005026.5にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトPIK3CDタンパク質は、NCBI Genbankアクセッション番号NP_001337163.1、NP_001337164.1、NP_005017.3にアノテーションされる。例を挙げると、ヒトPIK3CD遺伝子は、NCBI Genbank ID:5293にアノテーションされる。
【0047】
「IGLV1.36」(「免疫グロブリンラムダ鎖可変領域1-36」への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IGLV1.36マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、ITGALは「IGLV136」、「V1-11」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IGLV1.36核酸、並びにIGLV1.36ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIGLV1.36遺伝子は、NCBI Genbank ID:28826にアノテーションされる。
「TRAV14DV4」(「T細胞受容体アルファ鎖可変領域14/デルタ鎖可変領域4」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、TRAV14DV4マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、TRAV14DV4は「hADV14S1」、「TRAV14/DV4」、「TCRAV6S1-hDV104S1」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、TRAV14DV4核酸、並びにTRAV14DV4ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトTRAV14DV4遺伝子は、NCBI Genbank ID:28669にアノテーションされる。
「TRAJ16」(T細胞受容体アルファJ鎖16」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、ITGALマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、これらの用語は文脈から明らかなように、TRAJ16核酸、並びにTRAJ16ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトTRAJ16遺伝子は、NCBI Genbank ID:28739にアノテーションされる。
【0048】
「IGHV1.3」(「免疫グロブリン重鎖可変領域1-3」への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IGHV1.3マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IGHV1.3は「IGHV1-3」、「IGHV13」又は「VI-3B」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IGHV1.3核酸、並びにIGHV1.3ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIGHV1.3遺伝子は、NCBI Genbank ID:28473にアノテーションされる。
「IGHV4.28」(「免疫グロブリン重鎖可変領域4-28」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IGHV4.28マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IGHV4.28は「IGHV4-28」、「IGHV428」又は「VH」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IGHV4.28核酸、並びにIGHV4.28ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIGHV4.28遺伝子は、NCBI Genbank ID:28400にアノテーションされる。
「IGHV4.31」(「免疫グロブリン重鎖可変領域4-31」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IGHV4.31マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IGHV4.31は「IGHV4-31」又は「IGHV431」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IGHV4.31核酸、並びにIGHV4.31ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIGHV4.31遺伝子は、NCBI Genbank ID:28396にアノテーションされる。
「IGHV4.4」(「免疫グロブリン重鎖可変領域4-4」)への言及は、当技術分野の名称で一般的に公知であるように、IGHV4.4マーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸を意味する。更に教示すると、IGHV4.4は「IGHV4-4」又は「IGHV44」としても知られる。これらの用語は、文脈から明らかなように、IGHV4.4核酸、並びにIGHV4.4ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を示す。例を挙げると、ヒトIGHV4.4遺伝子は、NCBI Genbank ID:28401にアノテーションされる。
【0049】
配列データベース又は本明細書に表される任意の配列がマーカー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は核酸の前駆体であり得、成熟分子を避けてプロセシングされる部分を含み得ることを当業者は理解することができる。
他に文脈から明らかでない限り、ここでの任意のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、或いはこれらの断片への言及は、一般的に該マーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、或いはこれらの断片の修飾形態を包含することもあり、例えば突然変異などの遺伝子変化、又は例えばリン酸化、グリコシル化、脂質修飾、メチル化、システイン化、スルホン化、グルタチオン化、アセチル化、酸化等を含む発現後修飾を含む。
ここでの任意のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質への言及は、これらの断片も包含する。従って、ここでのいずれか1つのマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の測定(又は量の測定)、存在の判定、或いはこれらの発現レベルの判定への言及は、例えばこれらの任意の成熟した及び/又はプロセシングした可溶/分泌形態(例えば、血漿循環形態)の測定、並びに/或いはこれらの1つ又は複数の断片の測定など、該マーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の測定、存在の判定、或いはその発現レベルの判定を包含し得る。
例えば、任意のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、及び/或いはこれらの1つ又は複数の断片はまとめて測定されてよく、測定した量はまとめて測定した種の総量に相当する。更なる例において、任意のマーカー、遺伝子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、及び/或いは1つ又は複数のこれらの断片は個別に測定されてよい。
【0050】
ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に関する「断片」という用語は、一般的にペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のN及び/又はC末端切断形態を意味する。好ましくは、断片は該ペプチド、ポリペプチド又は10のタンパク質のアミノ酸配列長のうちの少なくとも約30%、例えば少なくとも約50%又は少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、又は約99%を含み得る。例えば、全長ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の長さを超えない限り、断片は対応する全長ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の≧5の連続するアミノ酸、又は≧10の連続するアミノ酸、又は≧20の連続するアミノ酸、又は≧30の連続するアミノ酸、例えば≧50の連続するアミノ酸などの≧40の連続するアミノ酸等、例えば、≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧200、≧300又は≧400の連続するアミノ酸の配列を含み得る。
ここでの任意のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドへの言及は、その変異型も包含し得る。タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの「変異型」という用語は、その配列(つまりアミノ酸配列)が記載されたタンパク質又はポリペプチドの配列と実質的に同一(つまり大部分が同一であるが、完全ではない)であり、例えば少なくとも約80%同一又は少なくとも約85%同一であり、例えば好ましくは少なくとも約90%同一、例えば少なくとも91%同一、92%同一、より好ましくは少なくとも約93%同一、例えば少なくとも94%同一、更に一層好ましくは少なくとも約95%同一、例えば少なくとも96%同一、更により好ましくは少なくとも約97%同一、例えば少なくとも98%同一、及び最も好ましくは少なくとも99%同一であるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドを指す。好ましくは、変異型は記載したタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの全配列を配列アラインメントでクエリすると、記載したタンパク質、ポリペプチド又はペプチドとの同一性の程度を表示することができる(つまり、全体の配列同一性)。
【0051】
タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの変異型は、該タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのホモログ(例えば、オーソログ又はパラログ)でよい。ここで使用される「相同性」という用語は、一般的に同じ又は異なるタクソンの高分子間、特に2つのタンパク質又はポリペプチド間の構造的類似性を示し、この類似性は共有する系統によるものである。
本明細書がタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの断片及び/又は変異型を指す又は包含する場合、これは好ましくは「機能的」である変異型及び/又は断片を示し、つまり少なくとも部分的にそれぞれのタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの生物活性又は意図された機能性を保持する。好ましくは、機能的な断片及び/又は変異型は、対応するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドと比較して、意図された生物活性又は機能性の少なくとも約20%、例えば少なくとも30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約70%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも約85%、なおより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%、又は約100%以上を保持し得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本願のいずれかの方法で得られるリスクスコアは、被験者の腫瘍の免疫組織化学又はタンパク質発現データにより更に改善することができる。例えば、Cytokine 30-Plex Human Panel及び免疫組織化学染色は、被験者サンプルの更なる定性的及び/又は定量的評価に使用することができる。
【0053】
本発明は、免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応を予測及び/又は判定するコンピュータ実装方法も提供し、該被験者から得られるサンプルを分析する。本方法は(a)CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31及びIGHV4.4からなる一覧から選択され、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて定量される少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ又は5つ、更に一層好ましくは少なくとも10のバイオマーカーの定量された発現レベルを提供することと;(b)基準セットの対応する評価及び発現レベルから得られたデータと比較することにより正規化を行うように、定量化した発現レベルを正規化することと、(c)工程(b)の正規化値が所定の閾値を超えるかどうかを分類することと、(d)予測アルゴリズム又は機械学習モデルを用いて算出し、免疫療法剤に対する被験者の反応の尤度を示す該正規価値のリスクスコアを取得することと、を含む。
別の実施形態において、癌と診断された被験者が免疫療法剤を用いた処置に反応するかどうかを予測及び/又は判定するコンピュータ実装方法を提供し、該被験者から得られる腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われるサンプルを分析する。本方法は(a)バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の定量化した発現レベルを提供することであって、バイオマーカーは被験者サンプルにおいて定量化されることと;(b)任意に被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD3G及びITGAL、並びに/或いはCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4からなる群から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの定量化した発現レベルを提供することと、(c)基準セットの対応する評価及び発現レベルから得られたデータと比較することにより正規化を行うように、定量化した発現レベルを正規化することと、(d)工程(c)の正規化値が所定の閾値を超えるかどうかを分類することと、(e)予測アルゴリズム又は機械学習モデルを用いて算出し、免疫療法剤に対する被験者の反応の尤度を示す該正規価値のリスクスコアを取得することとを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、免疫療法剤に対する被験者の反応を予測及び/又は判定するキットを開示する。いくつかの実施形態において、本キットは、被験者のサンプルにおけるCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ又は5つ、更に一層好ましくは少なくとも10又はすべてのバイオマーカーの発現レベルを測定する手段を含む。任意に、本キットはCD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの基準値又は閾値を更に含む。
いくつかの他の実施形態において、免疫療法剤に対する被験者の反応を予測及び/又は判定するキットは、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを測定する手段;任意に、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおけるバイオマーカーCD3G及びITGAL、並びに/或いはCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4からなる一覧から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを測定する手段を含む。任意に、本キットはバイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の基準値又は閾値を更に含む。本キットはバイオマーカーCD3G及びITGAL、並びに/或いはCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4からなる一覧から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの基準値又は閾値も更に含んでよい。
更にいくつかの更なる実施形態において、本願のキットはすぐに使える基質溶液、洗浄溶液、希釈バッファ及び説明書を含んでよい。本キットは陽性及び/又は陰性対照サンプルも含んでよい。いくつかの実施形態において、本キットは使用説明書を含む。好ましくは、本キットに含まれる使用説明書は、当業者には明白で、簡潔及び包括的である。通常、説明書はキットの内容、サンプルの採取方法、方法、実験の読み出し及びその解釈に関する情報、並びに注意及び警告を提供する。
【0055】
本明細書を通して用いられる「部品キット」及び「キット」という用語は、特定の方法(例えば、免疫療法剤に対する被験者の反応を予測及び/又は判定する方法、被験者が免疫療法処置に適しているかどうかを判断する方法、又は被験者が免疫療法処置に反応しやすいかどうかを判定する方法)を実施するのに必要な構成要素を含有する製品を指し、輸送及び保管するために包装される。キットに含まれる構成要素を包装するのに好適な材料は、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボナート)、瓶、フラスコ、バイアル、アンプル、紙、包装材料、或いは他の種類の容器、運搬装置又は支持物が挙げられる。キットが複数の構成要素を含む場合、少なくとも一部の構成要素(例えば、複数の構成要素のうちの2つ以上)又は構成要素すべてが物理的に分離されてよく、例えば別々の容器、運搬装置又は支持物に含まれる。キットに含まれる構成要素は、特定の方法を実施するのに十分である場合も、十分でない場合もあり、それぞれ外部の試薬又は物質が本方法を実施するのに必要でない場合も、必要である場合もある。通常、キットはリキッドハンドリング機器、環境(例えば、温度)制御機器、分析機器等の標準的な実験機器と併せて利用される。本キットは、特定の方法で有用である溶媒、バッファ(例えば、限定されないが、ヒスチジンバッファ、クエン酸塩バッファ、コハク酸塩バッファ、酢酸塩バッファ、リン酸塩バッファ、ギ酸塩バッファ、安息香酸塩バッファ、TRIS((トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)バッファ又はマレイン酸塩バッファ、又はこれらの混合物など)、酵素(例えば、限定されないが、熱安定性DNAポリメラーゼなど)、検出可能な標識、検出試薬、及び対照製剤(陽性及び/又は陰性)の一部又はすべてを含み得る。
【0056】
通常、本キットは、印刷挿入物などの使用説明書、又はコンピュータ読み取り可能媒体に使用説明書を含み得る。これらの用語は、「製品」という用語と交換可能に使用されてよく、製品はこの文脈で用いられる場合、任意の人造の実体的な構造製品を広く包含する。
具体的な実施形態において、本キットはここに教示される方法を実施するための1つ又は複数のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能記憶媒体を更に含む。
更に、特に免疫療法剤に対する被験者の反応を予測及び/又は判定するため、或いは被験者が免疫療法処置に適しているかどうかを判断するため、或いは被験者が免疫療法処置に反応しやすいかどうかを判定するための本キットの使用も提供する。
【0057】
更に、ここに開示される実施形態のいずれかに記載のキットの使用を提供する。ある態様において、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて、バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを測定する手段を含むキットの使用が、ここで教示されるような免疫療法剤を用いた処置に対する、癌と診断された被験者の反応又は抵抗性を判定及び/又は予測する方法で提供される。更なる実施形態において、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて、バイオマーカーCD3G及びITGALの発現レベルを測定する手段を更に含むキットの使用が提供される。別の実施形態において、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて、バイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4の発現レベルを測定する手段を更に含むキットの使用が提供される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の基準値又は閾値、並びに/或いはバイオマーカーCD3G及びITGALの基準値又は閾値、並びに/或いはバイオマーカーCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3及びIGHV4.4の基準値又は閾値を更に含むキットの使用が提供される。
【0058】
本願の発明者は、免疫療法剤に対する被験者の反応を予測及び/又は判定する、或いは被験者が免疫療法剤を用いた処置に適しているかどうかを判断するいくつかのバイオマーカーを特定した。より具体的には、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置後の反応を予測するのに特に好適なバイオマーカーを特定した。従って、いくつかの実施形態において、免疫療法剤は免疫チェックポイント阻害剤、又はいくつかの免疫チェックポイント阻害剤の併用である。更に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1標的剤、PD-L1標的剤、CTLA-4標的剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの更なる好ましい実施形態において、免疫療法処置はPD-1標的剤又はPD-L1標的剤とCTLA-4標的剤との併用である。いくつかの実施形態において、PD-1標的剤は例えばペムブロリズマブ、ニボルマブ又はセミプリマブなどのPD-1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1標的剤は例えばアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ又はペムブロリズマブなどのPD-L1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、CTLA-4標的剤は例えばイピリムマブなどのCTLA-1に対するモノクローナル抗体である。更にいくつかの更なる実施形態において、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ又はペムブロリズマブなどのPDL-1標的剤は、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤と併用される。
【0059】
免疫チェックポイント阻害剤のような免疫療法薬は特定の免疫細胞を標的とし、免疫応答を開始するために活性化又は不活性化される必要がある。PD-1又はPD-L1のどちらかを標的とするモノクローナル抗体は、それぞれT細胞及び正常(又は癌)細胞に存在するこれらのタンパク質をブロックし、癌細胞に対する免疫応答を促進することができる。これらの薬剤は、膀胱癌、非小細胞肺癌及びメルケル細胞皮膚癌を含む異なるタイプの癌を処置するのに有用である。CTLA-4は一部のT細胞上の別のタンパク質であり、PD-1のように、免疫システムを抑制する一種のスイッチとして作用する。抗CTLA4処置は、皮膚のメラノーマ及び一部の他の癌を処置するのに使用することが多い。
PD-1標的剤、PD-L1標的剤又はCTLA-4標的剤は、PD-1、PD-L1又はCTLA-4を認識及びブロックする抗体又はその断片など、当技術分野で公知の任意の標的剤であり得る。いくつかの実施形態において、PD-1標的剤は例えばペムブロリズマブ、ニボルマブ又はセミプリマブなどのPD-1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1標的剤は例えばアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ又はペムブロリズマブなどのPD-L1に対するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、CTLA-4標的剤は例えばイピリムマブなどのCTLA-1に対するモノクローナル抗体である。更にいくつかの更なる実施形態において、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ又はペムブロリズマブなどのPLD-1標的剤は、イピリムマブなどのCTLA-4標的剤と併用される。
【0060】
本発明の更なる態様において、免疫チェックポイント阻害剤又はチェックポイント阻害剤の併用などの免疫療法剤は、ここで開示されるように、被験者サンプルにおける1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを分析するいずれかの方法を使用することで、免疫療法剤を用いた処置に反応することが判明している被験者の癌の処置で使用するために提供される。特に、免疫療法剤は、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて、CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4からなる一覧から選択される1つ又は複数、好ましくは少なくとも3つ、更に一層好ましくは少なくとも4つ又は5つのバイオマーカーの発現レベルを分析するいずれかの方法を使用することで、免疫療法剤を用いた処置に反応することが判明している被験者の癌、好ましくはメラノーマ、より好ましくはステージII、ステージIII又はステージIVのメラノーマの処置で使用するために提供される。別の実施形態において、免疫療法剤は、腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる被験者のサンプルにおいて、任意にバイオマーカーCD3G及びITGAL、並びに/或いはCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4からなる群から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルと組み合わせ、バイオマーカーCD247、LAX1及びIKZF3の発現レベルを分析するいずれかの方法を使用することで、免疫療法剤を用いた処置に反応することが判明している被験者の癌、好ましくはメラノーマの処置で使用するために提供される。
【0061】
癌の種類に応じて、別のICI処置が助言される。併用療法又は単剤治療が可能である。本発明の効果予測バイオマーカーのセットは、好ましくは癌と診断された被験者が免疫療法剤、特に免疫チェックポイント阻害剤又はチェックポイント阻害剤の併用を用いた処置に反応するかどうかを判定するのに使用される。より好ましくは、本発明の効果予測バイオマーカーのセットは、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置など、免疫療法処置を受けるときの被験者の反応を判定するのに使用される。最も好ましくは、本発明の効果予測バイオマーカーのセットは、PD-1標的剤、PD-L1標的剤、CTLA-4標的剤及びこれらの組合せからなる群から選択される免疫チェックポイント阻害剤の処置を受けるときの被験者の反応を判定するのに使用される。
本発明の更なる態様は、免疫療法剤で癌と診断された被験者を処置する方法に関する。本方法は、ここに開示されるいずれかの方法により、被験者が免疫療法剤を用いた処置に反応しやすいかどうかを判定することと、被験者が免疫療法処置に反応することが判明すると、被験者に免疫療法剤を投与することとを含む。いくつかの好ましい実施形態において、免疫療法剤はPD-1標的剤、PD-L1標的剤又はCTLA-4標的剤などの免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの更なる好ましい実施形態において、免疫療法剤は異なる免疫チェックポイント阻害剤の併用であり、例えばPD-1標的剤又はPD-L1標的剤とCTLA-4標的剤との併用である。
本発明の別の実施形態は腫瘍反応報告を提供する。これは腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われる1つ又は複数の患者のサンプルを単離する工程と;1つ又は複数のサンプルから、任意にCD3G及びITGALと組み合わせ、及び/又は任意にCD3E、TIGIT、PIK3CD、IGHV1.3、IGHV4.4から選択される複数のタンパク質コード遺伝子と組み合わせ、CD247、LAX1、IKZF3、ITGAL、CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIK3CD、IGLV1.36、TRAV14DV4、TRAJ16、IGHV1.3、IGHV4.28、IGHV4.31、IGHV4.4から選択される複数のバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子、特に複数のタンパク質コード遺伝子;及び/又はタンパク質コード遺伝子CD247、LAX1及びIKZF3に関する情報を含む発現データ、好ましくは遺伝子発現データ、更に一層好ましくはRNAシーケンスデータを生成する工程と;複数の可能な処置;好ましくは免疫療法剤を用いた処置に反応する患者の腫瘍の尤度を評価する工程とを含む。更なる実施形態において、免疫組織化学データ或いはその他の有益な患者又は腫瘍データを腫瘍反応報告に追加することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍細胞を含有するか、又は含有することが疑われるサンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍細胞を含有する。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍組織サンプル又は腫瘍細胞を含む液体サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは癌と診断された被験者由来の腫瘍組織サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍細胞、特に循環腫瘍細胞を含む血液サンプルなどの液体サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは循環腫瘍細胞を含むサンプルである。このように、バイオマーカーの発現レベルは、癌細胞を含有するか、又は含有することが疑われる生体サンプルにおいて評価される。組織サンプルは、例えば癌に罹患している、癌に罹患することが疑われる、癌と診断された患者の切除組織、組織生検材料又は転移性病変でよい。好ましくは、サンプルは腫瘍の組織サンプル、切除サンプル又は生検サンプル、公知の又は疑わしい転移癌病変又は切片である。
癌/腫瘍細胞を含む血液サンプルなど、切除組織、生検材料及び体液を含む生体サンプルを得る方法は、当技術分野で周知である。
いくつかの実施形態において、サンプルは新鮮凍結腫瘍組織サンプル、新鮮な腫瘍組織サンプル又はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織サンプルなどの腫瘍組織サンプルである。当技術分野で公知の任意の技術を使用し、腫瘍組織サンプルからRNA又はDNAなどの核酸を単離することができる。例えば、QIAGEN RNeasy FFPE kit(標準キット)を使用し、メーカの説明書(キアゲン)に従って、FFPE腫瘍組織サンプルなどの腫瘍組織サンプルからRNAを単離することができる。
いくつかの実施形態において、サンプルは腫瘍細胞、特に循環腫瘍細胞を含む液体サンプルである。いくつかの実施形態において、液体サンプルは循環癌細胞を含むことが知られた、又は含むことが疑われる血液サンプル、例えば末梢血サンプルである。サンプルは両方の癌細胞、つまり腫瘍細胞及び非癌性細胞を含んでよく、特定の実施形態では、癌性及び非癌性細胞のどちらも含む。いくつかの実施形態において、サンプルは単離した循環腫瘍細胞のサンプルである。当技術分野で公知の任意の技術を使用し、血液サンプルなどの液体サンプルから循環腫瘍細胞を単離することができる。例えば、EasySep(登録商標)Direct human CTC enrichment kit(ステムセルテクノロジーズ)、又はキアゲンのCTC ready-to-use CTC AdnaTest(キアゲン)を使用し、循環腫瘍を単離することができる。例えば、AllPrep RNA/mRNA Nano kit(キアゲン)、又はRNeasy Tissue/Cells Advances mini kit(キアゲン)を使用し、単離したCTCからRNA及び/又はDNAを単離することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、任意の免疫療法、或いは癌の処置又はその症状の管理もしくは改善のための化学療法又は放射線療法など、他の処置計画又は治療を開始する前に、患者から得られるサンプルを集める。従って、いくつかの実施形態において、免疫療法剤又は他の薬剤の投与前、或いは免疫療法又は他の処置計画の開始前にサンプルを集める。
いくつかの実施形態において、被験者は癌と診断された被験者である。癌は膀胱癌、腎臓癌、肝癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮癌、卵巣癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、皮膚癌;更に一層好ましくは皮膚癌又はメラノーマ、肺腺癌、肺扁平上皮癌、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌と診断された癌患者から選択することができる。好ましい実施形態において、被験者はメラノーマ及び/又は肺癌と診断された被験者である。更なる好ましい実施形態において、被験者はメラノーマと診断されている。いくつかの実施形態において、被験者はステージII、ステージIII又はステージIVのメラノーマと診断されている。
本発明は、好ましくはメラノーマと診断された患者について記載する。これらの患者は既に抗PD-1、抗PD-L1及び/又は抗CTLA-4処置を受けている場合があり、このような処置を受けているか、又はこのような薬剤での処置が計画されている。効果予測バイオマーカーのセットは該患者のために最適化され、高い特異度及び感度により、このような処置に対する患者の腫瘍の反応、或いは進行又は早期死亡になる可能性を予測する。
好ましい実施形態において、本発明のバイオマーカーの様々なセットは、新規免疫療法薬の開発に使用される。
【0064】
本発明のある態様は、免疫療法処置を受けるときの進行に関する効果予測バイオマーカーの開発方法に関し、本方法は(a)免疫療法処置で動物モデルを処置する工程と;(b)免疫療法処置に対する反応性を発現することに関与するバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子の発現レベルを分析する工程と;(c)免疫療法処置に対して反応する、部分的に反応する又は反応しない傾向と相関する発現変動バイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子を選択する工程とを含む。
本発明の別の態様は、免疫療法処置に対する反応性を予測するバイオマーカーをテストする方法を提供し、本方法は(a)免疫療法処置で動物モデルを処置する工程と;(b)免疫療法処置に対する反応性を発現することに関与するバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子の発現レベルを分析する工程と;(c)発現変動バイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子を選択する工程であって、免疫療法処置に対して反応する、部分的に反応する又は反応しない動物モデルの傾向と相関する該タンパク質コード遺伝子が明示される工程と、を含む。
好ましくは、動物モデルはマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、カエルからなる群から選択される。これらの動物モデルは、効果予測バイオマーカーの開発及びテストに利用することができる。好ましい動物モデルはマウスモデルである。
別の好ましい実施形態において、本発明のバイオマーカーを動物モデルで発現させる。本発明の効果予測バイオマーカーをマウスモデルで発現させる。好ましいマウスモデルはMISTRG、NSG-SGM3、NOG-EXL、BRG hIL-3 hGM-CSFである。本発明の別の及び更なる実施形態において、効果予測バイオマーカーを動物モデル、好ましくはマウスモデルでテストする。
【0065】
本願のいくつかの実施形態は、1つ又は複数の免疫療法処置を受ける被験者の反応性又は非反応性を予測する前述した方法の使用に関する。好ましくは、抗PD-1/PD-L1単剤療法、又は抗CTLA-4療法との併用を受ける被験者の反応性又は非反応性を予測する前述した方法の使用に関する。
どの患者が進行を経験するのか、又は免疫療法処置に対して非レスポンダとなるのかを予後的に特定することは、医学的及び経済的な関心である。より良好で安全な治療を確実にする最適な患者特異的療法を判定することができる。
本発明は、免疫療法処置に対する腫瘍の反応を判定する方法を更に提供し;本方法は、免疫療法処置に対する反応性又は抵抗性に関与する複数のバイオマーカー、好ましくはタンパク質コード遺伝子の発現レベルを定量的に評価する工程と;この定量的評価に基づき、治療に対するレスポンダ、部分レスポンダ又は非レスポンダとして、腫瘍を分類する工程とを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本方法は腫瘍に関する免疫組織化学データを判定する工程を更に含む。
好ましくは、免疫組織化学データは腫瘍及び腫瘍微小環境の特性評価に含まれる。この余分なデータセットは、測定の繰り返しにより類似の出力が生成されるにつれ、レスポンダ、部分レスポンダ又は非レスポンダの腫瘍の特定は信頼度が高く、有効となる。
より好ましい実施形態において、本方法は1つ又は複数の可能な免疫療法処置治療を判定する工程を更に含む。
標的ICI処置の次に、癌患者の処置において他の免疫療法処置治療を扱うことができ、癌患者処置の前向きな結果につながる。
【0067】
本願は、患者におけるここに開示されるような1つ又は複数の遺伝子シグネチャの発現レベルが変化していると判定される場合、活性化する又は抑制する免疫療法処置を癌患者に施す方法を更に提供する。1つの実施形態において、本発明の方法は治療に反応する尤度が増加した患者を通知する工程を含む。別の実施形態において、本発明の方法は特定の治療処置を患者に推奨する工程を含む。他の実施形態において、本発明の方法は患者が治療、特に免疫療法から恩恵を受ける場合があると判明すれば、治療を患者に施す工程を更に含む。
更なる実施形態において、免疫療法剤はチェックポイント阻害剤、キメラ抗原受容体T細胞療法、腫瘍溶解性ワクチン、サイトカインアゴニストもしくはサイトカインアンタゴニスト又はこれらの組合せ、或いは当技術分野で利用できる他の免疫療法を含む。活性化免疫療法は、チェックポイント阻害剤の使用を更に含み得る。チェックポイント阻害剤は当技術分野で容易に利用でき、限定されないが、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、PD-L2阻害剤、CTLA-4阻害剤又はこれらの組合せを含む。
【実施例】
【0068】
本発明を更に以下の非限定的な実施例に基づき記載し、本発明を更に説明するが、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、そのように解釈されるべきでもない。
方法
研究デザイン、患者コホート及び反応評価
PD1/PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤との併用により処置された転移性メラノーマ患者、合計273名を分析のために選んだ。GEO及びdbGaPデータベース(Study356761[doi:10.1016/j.cell.2017.09.028]、522397[doi:10.1016/j.ccell.2019.01.003]、phs000452_01[doi:10.1038/s41591-019-0654-5]及びGSE78220[doi:10.1016/j.cell.2016.02.065])にある4つの介入臨床試験から患者210名、並びにベルギー及びオーストリアの3病院における進行中の後ろ向き観察研究(NCT04860076)の患者63名を含んでいた。この研究に登録された患者をニボルマブ又はペムブロリズマブ、或いはイピリムマブと併用して処置した。我々はヒトの参加者を対象とする研究におけるすべての関連する倫理規定に準拠し、インフォームドコンセントを患者全員から得た。各参加施設でプロトコルは独立倫理委員会により承認された。RECISTv1.1(PD-進行、SD-安定、PR-部分奏効、CR-完全奏効)により反応を評価した。CR/PR/SD/PDにより定義されるような評価可能なRECISTスコアに達しない患者は、研究から除外した。PFS<90日間及びOS<180であった患者を早期死亡(ED)サブグループとして分類分けした。結果の翻訳可能性を確実にするために、dbGaPデータセットを1つの発見コホートとして使用し、NCT04860076臨床試験のデータのみを検証コホートとして扱った。
【0069】
RNA抽出及び全トランスクリプトームシーケンシング
NCT04860076に関して、QIAGEN RNeasy FFPE kit(標準キット)を使用し、メーカの説明書(キアゲン、ドイツヒルデン)に従ってFFPEブロックからトータルRNAを抽出した。免疫チェックポイント阻害剤を用いて処置を開始する前に、取り出した生検材料からすべてのFFPEブロックを得た。平均で5~7のFFPE薄片をRNA抽出に使用した。Qubit 2.0 Fluorometer RNA assay(インビトロジェン、米国カリフォルニア州カールスバッド)を使用してRNAサンプルを定量化し、Agilent 4200 TapeStation(アジレントテクノロジー、米国カリフォルニア州パロアルト)でRNAの完全性を検査した。DV200スコアが30%未満のサンプルを更なる分析から除外した。満足な品質のRNAサンプルをTURBO DNase(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で処理し、メーカのプロトコルに従ってDNAを除いた。QIAGEN FastSelect rRNA HMR Kit(キアゲン、ドイツヒルデン)を使用し、rRNAを除去した。
RNAシーケンスライブラリ調製は、メーカの推奨に従い、NEBNext Ultra II RNA Library Preparation Kit for Illuminaを使用する(NEB、米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)。簡潔には、濃縮したRNAを15分間94℃で断片化する。次に、ファーストストランド及びセカンドストランドcDNAを合成する。cDNA断片を末端修復し、3’末端でアデニル化し、ユニバーサルアダプタをcDNA断片にライゲーションした後、限定したサイクルPCRでインデックス付加及びライブラリの強化を行う。Agilent Tapestation 4200(アジレントテクノロジー、米国カリフォルニア州パロアルト)を用いて、シーケンスライブラリを有効化し、Qubit 2.0 Fluorometer(インビトロジェン、カリフォルニア州カールスバッド)を使用し、定量PCR(アプライドバイオシステムズ、米国カリフォルニア州カールスバッド)により定量化した。
メーカの説明書に従って、シーケンスライブラリをフローセルレーンでマルチプレックス化及びクラスタ化し、Illumina NovaSeq S4機器にローディングした。2×150ペアエンド(PE)形式で、5000万リードのターゲットに対して、サンプルをシークエンスした。イメージ分析及び塩基呼び出しをHiSeq Control Software(HCS)により実施した。イルミナのbcl2fastq2.17ソフトウェアを用いて、Illumina HiSeqから生成した生シーケンスデータ(bclファイル)をFASTQファイルに変換し、逆多重化した。インデックスシーケンス識別にミスマッチを1つ許可した。
GEO及びdbGaPデータベースのStudy356761、522397、phs000452_01及びGSE78220におけるRNA抽出及びシーケンスのために、類似の手順を使用した[doi:10.1016/j.cell.2017.09.028、10.1016/j.ccell.2019.01.003]、10.1038/s41591-019-0654-5、10.1016/j.cell.2016.02.065]。
【0070】
RNA-seqデータ処理及び正規化
NCT04860076研究の患者63名について全トランスクリプトームプロファイルを生成し、dbGaPデータセットの全トランスクリプトームプロファイルと組み合わせた。カスタム内部パイプラインを使用し、得られたFASTQファイルを処理した。簡潔には、nf-core/rnaseqパイプラインを使用し、生バルクRNA-seqリードを処理して、生RNAリードを変換し、遺伝子発現マトリクスを得た。ワークフローは、リードのクオリティコントロール及びリードトリミング(FastQC、Trim Galore!)、ヒトリファレンスゲノムGRCh38にリードをアライメントすること(STAR)、遺伝子に関する数をカウントすること(featureCounts)、結果のクオリティコントロール(RSeQC、Qualimap、Preseq、edgeR、MultiQC)の一連の工程を含んでいた。パイプラインを調節及びファインチューニングして、下流分析の必要性及び利用できるリソースを最も良好に適合させた。ComBat-seq[doi:10.1093/nargab/lqaa078]を使用し、すべてのデータセットにわたるデータを正規化した。
【0071】
主成分分析(PCA)及び主成分分散成分分析(PVCA)
prcomp()関数を使用し、データセット内で検出された24,3769遺伝子にPCAを実施した。dbGaP及びNCT04860076研究のMMコホートにもPCA分析を行った。PVCAは、PCA及びVCAを組み合わせたハイブリッド方法であり、トランスクリプションデータで観察された全体的変動への公知の変数の寄与を定量化する。pvcaパッケージ(v1.18.0.Bioconductor)を使用し、PVCA分析を実施した。PCAを使用して、combat後正規化データの比較可能性を確認し、分析に影響を及ぼす場合がある潜在的な交絡変数を特定した。
【0072】
機械学習を用いた予測シグネチャの発見及び検証
LASSOに基づく学習器を用いたアンサンブルモデルを発見コホート(dbGaP)で使用し、処置に対する反応の予測マーカーを特定した。アンサンブルモデルは安定し、初期シードの影響を受けにくいことが知られている。この回帰分析方法は、同時に変数選択及び正則化を実施して、精度を改善する。基本学習器を作成するために、1000のLASSOモデルを異なるシードを用いて作成した。各モデルにおいて、ハイパーパラメータ選択を5倍交差検証により実施した。1000のLASSOモデルの平均係数を取ることにより最終的なアンサンブルモデルを作成した。より詳細には、各LASSOモデルにおいて、各遺伝子は係数が与えられる(遺伝子がこのモデルにより選択されない場合、係数は0となる)。その結果、最終的なアンサンブルモデルにおける遺伝子の係数は、各個別のLASSOモデルにおいてその係数の平均を取ることにより得られる。R package glmnet(v2.0-13)を使用した。
その後、LASSOモデルにより特定された多くの予測パラメータを使用して、発見コホートでランダムフォレスト分類器(RFC)をトレーニングした。RFCのために、発見コホートの75%のデータをモデルトレーニングのトレーニングセットとして使用し、発見コホートの25%のデータをテストに使用した。CD274(PD-L1のみ)モデルをベースラインモデルとして使用して、バイオマーカーシグネチャの予測性能を比較した。分類器をバイナリアウトカムモデルとしてトレーニングし、以下の結果クラスの組合せ:(ED+PD)vs(PR+CR)、(ED+PD+PR)vsCR、(ED+PD)vsCR、EDvsCRを使用した。様々なバイナリアウトカムを使用することにより、各RECIST1.1のステータスカテゴリに関する個別のマーカーの具体的な効果を検討すること、クラスの定義に対するモデル性能の感度を評価することができる。
次に、最も優れたバイオマーカーを用いたトレーニング済みモデルをNCT04860076研究データである検証コホートで検証した。上記の通り、モデルトレーニングの手順は検証コホートには全く左右されない。モデルを発見コホート(dbGaP)の75%でトレーニングした後、「as-is」を適用して、NCT04860076データ(検証データセット)で予測コールを作成した。その後、予測したコールを病院から得たグランドトゥルースアノテーションと比較した。ROC AUCの測定規準を使用し、モデルのトレーニング、テスト及び検証中のモデル性能を常に評価した。
【0073】
バイオインフォマティクス分析
アノテーションした遺伝子のエクソンにマッピングされたリード数をカウントした後(Ensemblリリース100[doi:10.1093/nar/gkaa942])、遺伝子ヒット数テーブルを下流の微分遺伝子発現解析に使用した。DESeq2(v1.26.0)[doi:10.1186/s13059-014-0550-8]Rパッケージを使用し、サンプルのユーザ定義グループ間の遺伝子発現を比較した。Wald検定を使用してp値を生成し、log2倍率変化値を算出した。ベンジャミニ-ホッホベルク法を使用し、多重検定のためにP値を補正した。調節したp値<0.05を有する遺伝子を各比較のための発現変動遺伝子と呼んだ。
clusterProfiler(v3.16.1)[doi:10.1016/j.xinn.2021.100141]Rパッケージから過剰発現解析(ORA)を実行することにより、発現変動遺伝子セットに機能的エンリッチメント解析を実施した。機能的アノテーションをGene Ontology[doi:10.1038/75556、10.1093/nar/gkaa1113]及びKEGG[doi:10.1093/nar/28.1.27]データベースに対して実施した。
箱ひげ図及びバイオリン図を使用して、グループにおけるlog2変換した正規化遺伝子発現を可視化した。スケーリングしたヒートマップにより、予測された重要な遺伝子セットのlog2変換した正規化発現を可視化した。
【0074】
統計及び再現性
特に明記しない限り、連続変数のすべての2群比較はスチューデントの両側t検定(R関数t検定)を使用する。特に明記しない限り、FDR補正したp値を報告する。
【0075】
結果
研究デザイン、患者コホート及び反応評価
コホートを通して、15%の患者をPD1/L1とCTLA4との併用により処置し、85%を単剤治療としてPD1/L1で処置した(表1)。特定のタイプの処置反応(RECIST)を発現する患者の分布は、PRカテゴリ(部分奏効)を除き、発見及び検証セット間で比較可能であった(表2)。発見データセットは検証コホートと比較して、ほぼ3倍のPR患者を含んでいた。他のRECIST1.1カテゴリについて、患者分布が比較可能であった。
【表1】
【表2】
【0076】
RNA抽出及びRNA品質
全体として、NCT04860076臨床試験の多くのRNAサンプルが品質の閾値(DV200>30%)を超え、抽出したRNA量は下流の全トランスクリプトームシーケンシングに十分であった。しかしながら、我々は高レベルのDNA混入を観察しており、単一のDNAse処置ではうまく除外できなかった。残存するDNA混入は、予想よりも高いイントロン及び遺伝子間リードカバレッジを引き起こした。それにも関わらず、転写産物量を表す適切なエクソンリードカバレッジを達成した。
【0077】
RNA-seqデータ処理、正規化及びPCA分析
発見及び検証コホート間のデータ分布をPCAに基づき調査すると、異なるStudy間でPC1軸に沿ったかなりのばらつき、及びPC2軸に沿った部分的なばらつきが明らかになった(
図1A)。combat後の正規化値により、Studyに特異的な差を大幅に削減し、異なるデータセット間の許容可能なレベルの正規化を達成した(
図1B)。更に、選択したバイオマーカーの統計調査(以下の結果を参照のこと)については、発見及び検証コホート間でlog2正規化発現値の分布に優れたレベルの一致を確認した(
図2)。
【0078】
機械学習を使用した予測シグネチャの発見及び検証
LASSOに基づく学習器は25の遺伝子シグネチャを特定し、その10の遺伝子(TIGIT、PIK3CD、IKZF3、ITGAL、CD247、LAX1、CD3G、CD3E、IGHV1.3、IGHV4.4)が説明力の大部分を構成し(表3)、そのうちの更なる3つの遺伝子(CD247、LAX1及びIKZF3)が機械学習モデルで最も予測的であった。これらのマーカーは、我々が行った統計分析及び群間比較の種類に関わらず、最も高い識別力を発揮した(
図3A及び3B)。重要なことは、マーカーを発見コホート単独により特定した後、検証コホートで確認のために調査したことである(
図3C及び3D)。
発見(テストセット)及び検証セットのCRFモデル性能は、RECIST1.1.のカテゴリ間で、25のマーカーセットのすべてに関して検証コホートで73%から78%(
図4A)、及び3つのマーカーモデルに関して検証コホートで64%から77%(
図4B)の分類によって高い識別力性能を達成した(表4)。すべての例で、3つのマーカーモデル(CD247、LAX1及びIKZF3)並びに完全なモデル(25のバイオマーカー)は、CD274(PD-L1阻害剤のみ)マーカーを用いたベースラインモデルより優れていた(
図4C)。ROCAUCの最大の予測的上昇(+15%)は、3つのマーカーモデル(CD247、LAX1及びIKZF3)、並びに22超のバイオマーカー(CD3G、CD3E、CXCR6、SLAMF7、MYO1G、TIGIT、ICOS、CLEC4C、CXCR3、TLR8、ITGAL、FCGR2A、IDO1、TRAF3IP3、PIKCD、IGLV1.36、TRBJ2.7、TRAV14DV4、TRAJ16、IGH1.3、IGH4.28、IGHV4.31、IGHV4.4)の添加により達成され、ROC AUCが約5%更に改善したモデルとなった。
【表3】
【表4】
【0079】
バイオインフォマティクス分析
発現差異解析は、DEG遺伝子の大多数が反応に乏しいサブグループで発現低下することを明らかにした。LASSO学習器MLモデルにより特定された上位のバイオマーカーは、主にFDR補正した有意な閾値が0.05を超え、発見及び検証コホートの両方で支持された(
図5A及び5B)。すべてのマーカーは、PR及びCRサブグループと比較して、ED、PD、SDサブグループで発現低下している。
バイオマーカーパネルのヒートマップは、発見コホートにおけるRECICTグループに対する患者の妥当なクラスタリング(
図6A)及び検証コホートに関するより一層矛盾のないクラスタリング(
図6B)を示した。
【0080】
【配列表】
【国際調査報告】