(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電気直流網のための保護装置、車両のための車載電気システム、車両、及び直流充電ステーション
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240711BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02H9/04 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504153
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022070890
(87)【国際公開番号】W WO2023006715
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021003830.4
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
【テーマコード(参考)】
5G013
5G503
【Fターム(参考)】
5G013CB21
5G013DA05
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA16
5G503GA01
(57)【要約】
本発明は直流網(1)のための保護装置(8)に関し、それぞれ電位線(HV+L,HV-L)と基準電位線(ML)の間の電圧測定装置(SV1)と、電気直流網(1)のYコンデンサ(CyF+,CyF-,CyL+,CyL-)に起因する電気ショックを低減するための保護回路(9)とを含み、保護回路(9)はそれぞれの電位線(HV+L,HV-L)と基準電位線(ML)の間の保護スイッチ(SS1,SS2)を含み、複数のトリガー基準が設定され、第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は第2の保護スイッチ(SS2)は、第1の電圧測定装置(SV1)及び/又は第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ閉じるように作動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気直流網(1)のための保護装置(8)であって、
正電位線(HV+L)と基準電位線(ML)の間の電圧を測定するための、前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間の第1の電圧測定装置(SV1)と、
負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の電圧を測定するための、前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の第2の電圧測定装置(SV2)と、
前記電気直流網(1)のYコンデンサに起因する電気ショックを低減するための保護回路(9)と、を有し、
前記保護回路(9)は、前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間の第1の保護スイッチ(SS1)と、前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の第2の保護スイッチ(SS2)とを含み、
複数のトリガー基準が設定され、
前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)は、前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ閉じるように作動可能である、前記保護装置(8)において、
前記トリガー基準は、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で現在生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異と、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、電圧変化と、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、逆の符号と、
他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在と、
を含むものであり、
前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)は、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で現在生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する前記電圧差異が設定された限界値を上回っており、かつ、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、前記電圧変化が設定された限界値を上回っており、かつ、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、前記逆の符号が存在し、かつ、
前記他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在も判定された、
ときにのみ作動可能であることを特徴とする、前記保護装置(8)。
【請求項2】
前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された電圧のアナログ式及び/又はデジタル式の評価が提供されることを特徴とする、請求項1に記載の保護装置(8)。
【請求項3】
前記第1の電圧測定装置(SV1)により判定された電圧及び前記第2の電圧測定装置(SV2)により判定された電圧を評価するために、及び、前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)を作動させるために、前記電圧測定装置(SV1,SV2)及び前記保護回路(SS1,SS2)と接続された共通の電圧評価ユニット(12)が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の保護装置(8)。
【請求項4】
それぞれの前記保護スイッチ(SS1,SS2)は半導体スイッチとして構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護装置(8)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の保護装置(8)を含む、車両(2)のための車載電気システム(3)、特に高圧車載電気システム(3)。
【請求項6】
請求項5に記載の車載電気システム(3)を含む車両(2)、特に電気車両又はハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の保護装置(8)を含む直流充電ステーション(5)、特に高圧直流充電ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の構成要件に基づく電気直流網のための保護装置、車両のための車載電気システム、車両、及び直流充電ステーションに関する。
【0002】
従来技術より、当該分野に属する特許文献1が、自動車のための車載電気システム構造を記載しており、この車載電気システム構造は、第1の高圧電位と第2の高圧電位とを提供するための高圧エネルギー蓄積器を有する。第1及び第2の高圧電位の間で全体電圧をピックアップ可能であり、第1の高圧電位と事前決定された電気接地との間に第1の絶縁抵抗があり、第2の高圧電位と事前決定された電気接地との間に第2の絶縁抵抗がある。絶縁監視装置が第1及び第2の絶縁抵抗を監視するとともに、能動的な対称化プロセスを実行するために設計された平衡回路を有し、それにより、能動的な対称化プロセスによって第1の絶縁抵抗と第2の絶縁抵抗の間の相違が少なくとも低減される。
【0003】
特許文献2も、第1及び第2の高圧電位を提供するための車載電気システム構造を開示しており、これらの高圧電位の間で全体電圧をピックアップ可能である。この車載電気システム構造は、第1の高圧電位と接地の間の第1の絶縁抵抗と、第2の高圧電位と接地の間の第2の絶縁抵抗とが、最大で、事前決定可能な程度だけ相違するように対称に構成される。そのためにこの車載電気システム構造は対称性監視装置を有し、この対称性監視装置は車載電気システム対称性を監視するために設計され、第1の絶縁抵抗が第2の絶縁抵抗から事前決定可能な範囲を超えて相違した場合に、事前決定された方策をトリガーする。
【0004】
従来技術より、特許文献3に記載されているように、電気式の車載電気システムを作動させる方法も同じく公知である。第1の直流電圧で負荷される第1の車載電気システムと、第2の直流電圧で負荷される第2の車載電気システムとを作動させるこの方法では、第1及び第2の車載電気システムが、第1のクロック式のエネルギー変換器を有するエネルギー結合器によって電気的に結合される。第1及び第2の直流電圧は、電気絶縁装置によって電気基準電位に対して電気絶縁される。電気絶縁装置が監視される。第1及び第2の車載電気システムは、エネルギー結合器によって導電結合される。両方の車載電気システムのうちの一方の領域で絶縁装置に干渉が生じると、エネルギー結合器が、両方の車載電気システムのうちのそれぞれ他方の電気電位を制御して、基準電位に対するこれらの電気電位のそれぞれの電位差が、設定された参照値よりも小さくなるようにする。
特許文献4には、電気直流網のための、特に高圧網のための保護装置、車両のための車載電気システム、車両、及び直流充電ステーションが記載されている。この保護装置は、正電位線と基準電位線の間で電圧を測定するための、正電位線と基準電位線の間の第1の電圧測定装置と、負電位線と基準電位線の間で電圧を測定するための、負電位線と基準電位線の間の第2の電圧測定装置とを含むか、又は、基準電位線に故障電流測定装置を含む。更に、この保護装置は保護回路を含み、正電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路とを有するか、又は、2つの保護回路部分を有し、第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路を含む。第1の保護スイッチは、所定の電圧値を下回っていることが第1及び/又は第2の電圧測定装置によって判定されたときに閉じるように作動可能であり、第2の保護スイッチは、所定の電圧値を下回っていることが第2及び/又は第1の電圧測定装置によって判定されたときに閉じるように作動可能である。その代替として、第1の保護スイッチ及び/又は第2の保護スイッチは、故障電流装置によって故障電流が測定されたときに閉じるように作動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE102019202892A1
【特許文献2】DE102018211625A1
【特許文献3】DE102017009355A1
【特許文献4】DE102019008833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術に比べて改善された電気直流網のための保護装置、従来技術に比べて改善された車両のための車載電気システム、従来技術に比べて改善されたそのような車載電気システムを有する車両、及び、従来技術に比べて改善された直流充電ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明によると、請求項1に記載の特徴を有する電気直流網のための保護装置、請求項5の特徴を有する車両のための車載電気システム、請求項6の特徴を有する車両、及び、請求項7の特徴を有する直流充電ステーションによって解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0009】
電気直流網のための、特に高圧網のための、たとえば車両の車載電気システムのための、保護装置は、正電位線と基準電位線の間の電圧を測定するための、正電位線と基準電位線の間の第1の電圧測定装置と、負電位線と基準電位線の間の電圧を測定するための、負電位線と基準電位線の間の第2の電圧測定装置とを含む。基準電位線は特に電気的な接地電位であり、保護装置が車両で使用される場合には特に車両接地電位であり、保護装置が直流充電ステーションで使用される場合には、たとえば接地電位である。
【0010】
更に保護装置は、電気直流網のYコンデンサに起因する、特に人への、すなわち人間の身体への、電気ショックを低減するための保護回路を含む。
【0011】
保護回路は、正電位線と基準電位線の間の第1の保護スイッチと、負電位線と基準電位線の間の第2の保護スイッチとを含む。複数のトリガー基準が設定され、第1の保護スイッチ及び/又は第2の保護スイッチは、第1の電圧測定装置及び/又は第2の電圧測定装置によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ閉じるように作動可能である。トリガー基準は、特に、発生する可能性がある、発生した場合に保護スイッチの閉止が妨げられるべきである、故障原因/干渉に関する。好ましくは、これらの故障原因/干渉の各々について少なくとも1つのトリガー基準が設定されて、高圧電位のうちの1つとの身体接触が生じたときに、すなわち人との接触すなわち人間の身体との接触が生じたときに、成立し、それぞれの故障原因の発生時には成立しない。それぞれの保護スイッチのトリガーは、すなわち閉止は、所定のトリガー基準がすべて成立した場合にのみ、すなわち充足された場合にのみ、行われる。それにより、高圧電位のうちの1つとの身体接触が生じたときにのみ、すなわち人との接触すなわち人間の身体との接触が生じたときにのみ、それぞれの保護スイッチが閉じられ、故障原因/干渉のうちの1つ又は複数の発生に基づく誤った閉止が回避されることが保証される。
【0012】
車両のための、特に電気車両又はハイブリッド車両のための、特に高圧車載電気システムのための、本発明による電気車載電気システムは、特に高圧車載電気システムは、このような保護装置を含む。
【0013】
本発明による車両、特に電気車両又はハイブリッド車両は、このような保護装置を含み、特に、このような保護装置を含む、このような電気車載電気システム、特に高圧車載電気システムを含む。
【0014】
特に車両を、特に電気車両又はハイブリッド車両を、特にこのような車両の高圧バッテリを、電気充電するための、本発明による特に車両外部の直流充電ステーション、特に高圧直流充電ステーションは、このような保護装置を含む。
【0015】
「高圧」という概念は、特に、約60Vよりも大きい電気直流電圧が意味される。特に「高圧」という概念は、規格ECE R 100と適合するように設計される。
【0016】
本発明の解決法により、身体抵抗で具体化される帯電やエネルギーを低く抑えるために保護回路を非常に迅速にトリガーすることだけでなく、誤ったトリガーが可能な限り僅少にしか行われず、又は、好ましくは回避されることも実現されるという利点がある。誤トリガーは、非常に短い時間的スパンで絶縁不良につながることになる。更に、この保護回路は高圧電位の大幅なシフトが生じるように作用し、このことは、Yコンデンサに蓄えられるエネルギーのエネルギー最小値に対する最大の差異である。更に、保護回路の誤トリガーが繰り返されると、絶縁モニタの機能が損なわれる恐れがある。たとえば車両及び/又は直流充電ステーションの干渉発生源が、保護回路の誤ったトリガーの契機となることがある。このことが本発明の解決法によって回避され、又は、少なくとも著しく低減される。
【0017】
本発明の解決法により、複数のトリガー基準が同時に成立しなければならないことによって、保護回路の評価が誤トリガーに対していっそう安定的になる。個々のトリガー基準は、特にAND演算によって評価される。個々のトリガー基準は、干渉の種類に依存して決まる。身体接触によるYコンデンサの放電の特性と、干渉形態とが比較される。そのようなCY身体抵抗放電に対して各々の干渉を区別するために、測定又は評価によって検出することができる少なくとも1つの指標が見出されるのが好ましい。このような少なくとも1つの指標が1つの干渉ごとに、CY身体電流放電の特性に対して区別されなければならない。たとえばこのことは、コモンモードとディファレンシャルモード事象の間の区別、最低再充電電圧、コンデンサ再充電の時間定数(e関数の時間定数)、クロック干渉の周波数/周波数スペクトル又は繰り返し率などの間の区別である。測定入力量として電圧測定装置による電圧測定が利用され、すなわち正電位線と基準電位線の間の、及び負電位線と基準電位線の間の、電圧測定が利用される。
【0018】
保護回路のトリガーがCY身体放電のさまざまな特徴的指標と結びつけられることで、誤トリガーの回数が最小化され、又は全面的に回避されることを実現することができる。それと同時に非常に迅速なトリガー時間が実現され、それに伴い、人間の身体で具体化されるエネルギー/放電が最小化される。
【0019】
電圧測定装置によって測定された電圧が、特に次のように評価される:
-正電位線から基準電位線への、及び負電位線から基準電位線への、現在生じている電圧dUの、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する差異が判定され、及び/又は、
-正電位線から基準電位線への、及び負電位線から基準電位線への、電圧の電圧変化dU/dtが、すなわち時間にわたっての電圧変化が、判定され、及び/又は、
-正電位線から基準電位線への、及び負電位線から基準電位線への、電圧の評価に関して、特に上記の両方の判定にあたって、逆の符号が考慮され、及び/又は、
-発生する干渉の周期的な繰り返しが考慮される。
【0020】
したがってトリガー基準は下記を含む:
-正電位線と基準電位線の間で現在生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異、及び/又は、
-正電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、時間にわたっての電圧変化、及び/又は、
-正電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、逆の符号、及び/又は、
-他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在。
【0021】
第1の保護スイッチ及び/又は第2の保護スイッチは次の場合にのみ作動可能である。
-正電位線と基準電位線の間で現在生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異が、設定された限界値を、考えられる1つの実施例では30Vの限界値を、上回っており、かつ、
-正電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、時間にわたっての電圧変化が設定された限界値を上回っており、かつ、
-正電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、及び負電位線と基準電位線の間で生じている電圧の、逆の符号が存在するとき。
【0022】
限界値は、特に、考慮されるべき時間定数t=R*Cに依存する。ここでRは、最大500オームとする規格の設定に準じてもっとも低い値として想定される、人間の身体抵抗である。たとえば身体抵抗は300オームから30kオームの範囲内で考慮される。Cは、高圧システムに、すなわち高圧直流網に、存在するYコンデンサの全体キャパシタンスに依存する。このことはたとえば車両状況依存的であり、たとえば、たとえば走行動作中に車両だけが考慮されるか、それとも直流充電ステーションとの関連で車両が考慮されるかに依存する。たとえば、Cについては200nF(特に車両のみ、特にYコンデンサの低いキャパシタンスに合わせて最適化される)から、メガワット充電のときの、すなわち高出力での直流充電のときの、約8μF(直流充電ステーション及び車両)の値までである。すべてのキャパシタンス値は高圧電位ごとのものであり、すなわち、全体キャパシタンスとしては2倍の値が想定される。保護回路には、特に、60Vを上回る電圧のもとでアクティブになるという要求が課せられる。たとえば低い周波数については絶縁モニタが弁別対象として考慮され(約800kオームの試験抵抗、約10sのクロック時間)、トリガー時間定数を上回る周波数に対しては、少なくとも2kHzのクロック周波数を有するインバータが弁別対象として考慮される。
【0023】
本発明によると、第1の保護回路及び/又は第2の保護回路は、他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在も判定された場合にのみ作動可能である。
【0024】
たとえば第1の電圧測定装置によって及び/又は第2の電圧測定装置によって判定される電圧の、アナログ式及び/又はデジタル式の評価が提供される。
【0025】
たとえば、電圧測定(たとえば高抵抗の抵抗分配器)の出力によるアナログ式の評価では、それぞれ高圧電位ごとに2つの評価が演算増幅回路を介して組み合わされる。これらの演算増幅回路は、2つの異なる時間定数を有する。第1の時間定数の演算増幅回路(低い周波数、人間の身体抵抗を介しての放電の時間定数よりも下方)により、以前に判定された電圧値に対する電圧差異が判定される。第2の時間定数の演算増幅回路(高い周波数、人間の身体抵抗を介しての放電の時間定数よりも上方)により、時間にわたっての電圧変化が判定される。これら両方のトリガー基準が論理的なAND演算を介して組み合わされ、それと同時に、それぞれ他方の高圧電位の評価の否定結果との論理的なAND演算が行われ、それにより、両方の電圧が逆の符号を有しているかどうかを判定する。総合結果が「真」であれば、保護回路の作動が行われる。
【0026】
デジタル式の評価では、測定された電圧がたとえばマイクロコントローラ、Asic(特定用途向け集積回路)、又はFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、すなわち論理回路をロードすることができるデジタル工学式の集積回路)によって検出される。以前に判定された電圧値に対する電圧差異の、及び時間にわたっての電圧変化の、フィルタリングと判定がソフトウェアベースで高圧電位ごとに行われ、次いで、アナログ式の評価についてすでに説明したAND演算が行われる。総合結果が「真」であれば、保護回路の作動が行われる。
【0027】
たとえばアナログ式及びデジタル式の評価が同時に、特に冗長性として、具体化される。
【0028】
上述した解決法により、人間の身体による高圧電位との接触が可能な限り迅速に認識されて、保護回路の作動開始が実行されることが実現される。迅速な作動開始は、人間の身体による高圧電位への接触中に、比較的迅速に進行するYコンデンサの放電プロセス/再充電プロセスによって根拠付けられる(約10msのオーダー)。このとき身体で具体化されるエネルギーの大部分が、又は身体を通って流れる電荷の大部分が、放電プロセス/再充電プロセスの開始時に発生する。これはe関数に従って減衰する。更にこのことは、可能な限り迅速に保護回路をトリガーすることを必要とする。
【0029】
しかしながら、他の影響要因に基づく誤トリガーが排除されることも、又は少なくとも稀にしか発生しないことも、必要である。誤ってトリガーされた保護回路は、それぞれの高圧電位から基準電位への、エネルギー面で非常に不都合な電位分布につながり、そのため、Yコンデンサに蓄えられているエネルギー値がその最大値の近傍に達し、たとえば基準電位に対する正電位がほぼ0Vとなり、基準電位に対する負電位が高圧システムのシステム電圧にほぼ近くなり、たとえば800Vとなる。更に、誤ってトリガーされた保護回路のもとでは、保護回路が作動化した瞬間に絶縁不良が生起される。更に、保護回路のキャパシタンスによる接続のもとで追加のキャパシタンスがYコンデンサと並列につながれ、このことは基本的に、こうして増大されたY全体キャパシタンスに、いっそう多いエネルギーを蓄えるという可能性を提供する。
【0030】
保護回路は、人間の身体抵抗による放電を可能な限り迅速に認識しなければならないので、反応挙動に関して迅速に構成されることが必要である。したがって保護回路は、他の干渉の影響に対しても感度が高い。上述した解決法により、このような引き上げられた感度に起因し得る誤トリガーが回避され、又は少なくとも著しく低減される。干渉と、人間の身体抵抗との接触とを区別するための手段を提供するのは、すでに上で説明したように、たとえば測定された両方の電圧の符号の比較であり、それによりコモンモード障害とディファレンシャルモード障害との間の区別が可能となり、干渉周波数を区別するためのフィルタ、特に小さなエネルギー影響を区別するための平均値形成、又は定義された時間帯にわたる平均値との比較における電圧変化、再充電プロセスの最大の電圧振幅、及び/又は、たとえば規則的に脈動する干渉発生源を、たとえばインバータを、認識するための、設定された繰り返し率に基づく走査プロセスである。
【0031】
人間の身体によって接触されたときのYコンデンサの再充電プロセスに着目すると、このことは、コモンモード干渉に相当し、ないしはコモンモード電流のトリガーに相当する。このことは、次のような影響に対して区別されるのが好ましい:
クロック式の高圧コンポーネントの、コモンモードノイズとも呼ばれるコモンモード干渉は、身体放電の場合と同様に、基準電位を通じての共通の電流寄与を帰結することになる。車両にある多数のクロック式の高圧コンポーネント、そのさまざまに異なるクロック周波数、及び、たとえば絶縁性のLLC-DC-/DCコンバータを有する車載充電器における、可変性の場合すらあるクロック周波数などにより、周波数領域が幅広く分散していることがあり得る。
【0032】
クロック式の高圧電力消費部は、上に説明したコモンモード干渉に加えて、ディファレンシャルモード干渉が生じるように作用する。このような高圧電力消費部も、その干渉レベルをもって同じく評価回路に影響を及ぼすことがある。絶縁モニタも、身体放電と同一のYコンデンサの再充電挙動を惹起する。このとき両方の周知の絶縁モニタ原理のもとでは、特に、再充電抵抗による絶縁モニタがクリティカルである。
次の表には、CY身体放電と上に説明した干渉影響との比較が、周波数スペクトル、電圧振幅、干渉の種類(CM又はDM)、及び繰り返し率に関して対比されている。
【0033】
【0034】
保護回路の誤トリガーを回避するための解決の取り組みは、特に、複数の指標を互いに組み合わせることにある。
【0035】
たとえば電圧測定のために、たとえばハードウェア又はソフトウェアによって具体化することができる帯域通過フィルタが設けられていてよい。このことは、人間の身体抵抗のコモンモード干渉を絶縁モニタの干渉に対して、特に下方に向かって弁別することを可能にし、コモンモード干渉をクロック式のコンポーネントに対して、特に上方に向かって弁別することを可能にする。それにより、絶縁モニタ、高圧電力消費部、及び充電ステーション(EVSE)と、保護回路との相互作用が低減される。
【0036】
たとえば正電位と負電位について、電圧トリガーの論理演算が提供される。このことは、コモンモード干渉とディファレンシャルモード干渉との確実な区別を可能にし、それにより、それ以後はコモンモード干渉だけを考慮すればよくなる。それにより、クロック式の電力消費部と保護回路との相互作用が低減される。
【0037】
たとえば、たとえば50Vの最低再充電振幅が考慮され、すなわち、保護回路がそのとき初めてトリガーされる。すなわち小さな干渉は無視される。それにより、クロック式の電力消費部と保護回路との相互作用が低減される。
【0038】
たとえば移動平均、すなわち設定された時間帯にわたる電圧の平均値が考慮され、これに達したとき初めて保護回路がトリガーされる。非常に低抵抗で規則的な干渉が、それによっていっそう弱く評価される。それにより、クロック式の電力消費部と保護回路との相互作用が低減される。
【0039】
考えられる1つの実施形態では、第1の電圧測定装置により判定された電圧及び第2の電圧測定装置により判定された電圧を評価するために、及び、第1の電圧測定装置及び/又は第2の電圧測定装置により判定された、設定されたすべてのトリガー基準が成立したときにのみ第1の保護スイッチ及び/又は第2の保護スイッチを作動させるために、電圧測定装置及び保護回路と接続された共通の電圧評価ユニットが設けられる。
【0040】
それぞれの保護スイッチは、たとえば半導体スイッチとして、たとえばMOSFET、IGBT、又はサイリスタとして、構成される。
【0041】
考えられる1つの実施形態では、保護回路は、たとえば正電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路とを含む。その代替として、保護回路はたとえば2つの保護回路部分を含み、第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路を含む。
【0042】
上述した解決法は、車両の、特に電気車両及びハイブリッド車両の、及び直流充電ステーションの、Yコンデンサと結びついた問題を、後で説明するように解決する。このようなYコンデンサは、EMC干渉のエミッションを低減するための方策として利用される(EMC=電磁両立性)。しかしYコンデンサにより、高圧安全性の理由から潜在的な危険性が高くなる。たとえば規格SAE J1772、IEC60479-1及び-2には、Yコンデンサに含まれる充電量が健康を脅かす指標として挙げられている(C1特性曲線)。車両の動作電圧が高くなるほど、これらの規格で要求される限界値を順守するのがいっそう難しくなる。部分的には、たとえば強化された、特に倍増された電気絶縁など、安全性設定を守るための代替的な方策も、いわゆる代替的測定値なども、許容されない。別の規格LV123及びこれと関連する規格は、たとえばすべてのYコンデンサの充電量について0.2Jの最大のエネルギー含有量を規定している。代替的な方策を通じての回避が許容される場合には、たとえばすでに述べた強化された、特に倍増された、電気絶縁を適用することができる。しかし、このことが具体化可能であるのは、互いに接続されたすべての高圧システムが相応に強化されて絶縁されている場合に限られる。すなわち、たとえば直流充電の場合、車両だけでなく直流充電ステーションも、特に充電コラムも、相応に強化されて絶縁されていなければならない。しかし、それについて強制的な標準は存在しないので、異なる絶縁設計を有するシステムが接続されることも考えられ、そのために安全性要求が順守されない。
【0043】
こうした問題が上述した回路によって解決される。基準電位に対する、特に接地電位に対する、高圧電位ごとの電圧測定により、身体電流の帰結であり得る、すなわち特に高圧電位のうちの1つと、及び基準電位と、人間との身体接触の帰結であり得る、基準電位に関する高圧電位のシフトが認識されるからである。基準電位に対する電圧が低下している該当する高圧電位で、電圧を可能な限り迅速に低減するために、放電抵抗及び好ましくはこれに対して電気的に並列に未充電の保護コンデンサが付け加えられる。それにより、該当する高圧電位と基準電位との間の電圧が大幅に低いレベルへと急激に飛躍し、それによって身体電流が電圧に比例して低減される。このように上述した解決法は、Yコンデンサに起因する、特に人間の身体への電気ショックの低減を可能にする。上で説明した要求事項の順守がこのようにして可能となる。Yコンデンサに蓄えられるエネルギーが大幅に高くなり得るにもかかわらず、身体抵抗によって具体化されるYコンデンサの電気エネルギーを、0.2Jを下回る程度に制限することも同様に可能である。
【0044】
放電抵抗に対して、すでに上で述べたように、保護コンデンサが電気的に並列につながれるのが好ましい。身体電流を迅速に低減するためには、放電抵抗が単独で非常に低抵抗であればよいはずである。しかしながら、それに伴って低抵抗の絶縁不良が生起されるという不都合がある。したがって放電抵抗と、電気的に並列につながれた保護コンデンサとの組み合わせのほうがはるかに好ましい。放電抵抗は、電気的に並列につながれた保護コンデンサが、接続の瞬間に無電圧になっていることを保証する。保護コンデンサは接続後に、該当する高圧電位のYコンデンサの迅速な放電のために作用する。
【0045】
このように保護回路は、たとえば正電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第2の保護スイッチの電気的な直列回路とを含み、保護コンデンサは放電抵抗に対して電気的に並列につながれる。その代替として、保護回路は両方の保護回路部分を含み、第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第1の放電抵抗に対して第1の保護コンデンサが電気的に並列につながれ、第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の放電抵抗に対して第2の保護コンデンサが電気的に並列につながれる。
【0046】
たとえば放電抵抗に対して、保護コンデンサが電気的に並列につながれるだけでなく、保護コンデンサと保護抵抗からなる電気直列回路も電気的に並列につながれる。保護抵抗により、保護コンデンサを通る電流が制限されるという利点がある。
【0047】
このように保護回路は、たとえば正電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路とを含み、保護コンデンサと保護抵抗からなる電気直列回路が放電抵抗に対して電気的に並列につながれる。その代替として、保護回路は両方の保護回路部分を含み、第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の放電抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第1の放電抵抗に対して第1の保護コンデンサと保護抵抗からなる電気直列回路が第1の放電抵抗に対して電気的に並列につながれ、第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の放電抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の保護コンデンサと第2の保護抵抗からなる電気直列回路が第2の放電抵抗に対して電気的に並列につながれる。
【0048】
別の実施形態では、保護回路は、正電位線と基準電位線の間の、電気抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、電気抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路とを含む。電気抵抗は、特に最大800Ω、特に最大600Ω、特に人間の身体抵抗よりも、すなわち人の身体抵抗よりも低い、特に大幅に低い、特に最大200Ω、特に最大50Ωもしくはこれよりも低い、たとえば5Ωよりも低い、固定的な抵抗値を有する電気抵抗である。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。その代替として、電気抵抗はたとえば電圧依存的な電圧抵抗であり、電圧依存的な電気抵抗の抵抗値が、電圧依存的な電気抵抗の接続部を通じて電圧が上昇しているときに低減されるように、特に次第に大きく低減されるように、構成され、電圧依存的な電気抵抗の最大の抵抗値はたとえば最大800Ωであり、特に最大600Ω、特に人間の身体抵抗よりも、すなわち人の身体抵抗よりも低い、特に大幅に低い、特に最大200Ωであり、特に最大で50Ω又はこれより低く、たとえば5Ωよりも低い。したがってこのことは、接続部を通じて電圧が発生したときに電圧依存的な電気抵抗が有し得るすべての抵抗値について当てはまる。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。このように電圧依存的な電気抵抗は、その抵抗値が、接続部を通じて電圧が高くなるほどいっそう低い抵抗値をとるように構成される。
【0049】
このような保護回路の実施形態は、コンポーネント最適化された保護回路である。CY電撃を、すなわちYコンデンサによる人への電気ショックを、低減する役目を果たす保護回路では、1つの電位だけが、すなわち正電位又は負電位だけが、人の身体抵抗を介してフレームグラウンドと接続されることが前提とされる。両方の電位がフレームグラウンドと接続されると、このことは、車両の保護装置で使用される場合には車両のバッテリの短絡と同じであり、直流充電ステーションの保護装置として使用される場合には直流充電ステーションの、たとえば充電コラムの、短絡と同じであり、このような短絡は、ヒューズ又は電流センサ及びこれらにより制御される遮断装置によって分離されなければならない。このことから、保護回路を正電位と負電位について同時に適用することは決してできないことが明らかである。すなわち電気抵抗を上述した方式で、両方の電位の保安のために利用することができる。
【0050】
その代替として保護回路は2つの保護回路部分を含み、第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の電気抵抗と第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の電気抵抗と第2の保護スイッチの電気直列回路を含む。それぞれの電気抵抗は、上で述べた固定的な抵抗値を有する電気抵抗である。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。その代替として、それぞれの電気抵抗は電圧依存的な電気抵抗であり、電圧依存的な電気抵抗の抵抗値が、電圧依存的な電気抵抗の接続部を通じて電圧が上昇しているときに低減されるように、特に次第に大きく低減されるように、構成され、電圧依存的な電気抵抗の最大の抵抗値は最大の抵抗値について上に挙げた値に相当する。したがってこのことは、接続部を通じて電圧が発生したときに電圧依存的な電気抵抗が有し得るすべての抵抗値について当てはまる。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。このように電圧依存的な電気抵抗は、その抵抗値が、接続部を通じて電圧が高くなるほどいっそう低い抵抗値をとるように構成される。
【0051】
1つの電気抵抗だけを含む、すなわち、正電位線と基準電位線の間の第1の保護スイッチを有する電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の第2の保護スイッチを有する電気直列回路とについて同一の電気抵抗を使用する、上で説明した保護回路の実施形態では、特に、両方の保護スイッチが特に同時に閉じるように作動可能なのではなく、ないし作動するのでなく、両方の保護スイッチのうち一方だけが作動することが提供される。
【0052】
上述した解決法は、車両の、特に電気車両及びハイブリッド車両の、及び直流充電ステーションの、Yコンデンサと結びついた問題を、後で説明するように解決する。このようなYコンデンサは、EMC干渉のエミッションを低減するための方策として利用される(EMC=電磁両立性)。しかしYコンデンサにより、高圧安全性の理由から潜在的な危険性が高くなる。さまざまな規格で、Yコンデンサに含まれる充電量が、又は蓄えられるエネルギーが、健康を脅かす指標として挙げられている。たとえば規格SAE J1772、IEC60479-1及び-2には、Yコンデンサに含まれる充電量が健康を脅かす指標として挙げられている(C1特性曲線)。車両の動作電圧が高くなるほど、これらの規格で要求される限界値を順守するのがいっそう難しくなる。部分的には、たとえば強化された、特に倍増された電気絶縁など、安全性設定を守るための代替的な方策も、いわゆる代替的測定値なども、許容されない。別の規格LV123及びこれと関連する規格は、たとえばすべてのYコンデンサの充電量について0.2Jの最大のエネルギー含有量を規定している。代替的な方策を通じての回避が許容される場合には、たとえばすでに述べた強化された、特に倍増された、電気絶縁を適用することができる。しかし、このことが具体化可能であるのは、互いに接続されたすべての高圧システムが相応に強化されて絶縁されている場合に限られる。すなわち、たとえば直流充電の場合、車両だけでなく直流充電ステーションも、特に充電コラムも、相応に強化されて絶縁されていなければならない。しかし、それについて強制的な標準は存在しないので、異なる絶縁設計を有するシステムが接続されることも考えられ、そのために安全性要求が順守されない。
【0053】
こうした問題が上述した回路によって解決される。基準電位に対する、特に接地電位に対する、高圧電位ごとの電圧測定により、身体電流の帰結であり得る、すなわち特に高圧電位のうちの1つと、及び基準電位と、人間との身体接触の帰結であり得る、基準電位に関する高圧電位のシフトが認識されるからである。基準電位に対して電圧が低下している該当する高圧電位で、電圧を可能な限り迅速に低減するために、抵抗が付け加えられる。それにより、該当する高圧電位と基準電位との間の電圧が大幅に低いレベルへと急激に飛躍し、それによって身体電流が電圧に比例して低減される。このように上述した解決法は、Yコンデンサに起因する、特に人間の身体への電気ショックの低減を可能にする。上で説明した要求事項の順守がこのようにして可能となる。Yコンデンサに蓄えられるエネルギーが大幅に高くなり得るにもかかわらず、身体抵抗によって具体化されるYコンデンサの電気エネルギーを、0.2Jを下回る程度に制限することも同様に可能である。
【0054】
保護抵抗と直列につながれたコンデンサ及び放電抵抗の、それぞれの保護スイッチと電気的に直列につながれた並列回路に比べたとき、それぞれの電位線と基準電位線の間の、それぞれ保護スイッチを有する抵抗ないし第1及び第2の抵抗の電気直列回路を有する保護装置の保護回路の利点は、上述した解決法の保護回路がそのような放電抵抗を必要としないことにある。それにより、正電位と基準電位の間で、ないし負電位と基準電位の間で、比較的低い電圧に達すると、第1及び/又は第2の保護スイッチがまだ閉じているにもかかわらず、更に高い絶縁抵抗を有する状態へと自動的に復帰がなされる。保護抵抗と直列につながれたコンデンサ及び放電抵抗の、それぞれの保護スイッチと電気的に直列につながれた並列回路を有する保護回路では、保護抵抗は、第1又は第2の保護スイッチが閉じたときに、高圧システムの、特に直流網の、たとえば車両の車載電気システムの、全体の絶縁値を更に低い値へと低減することになる。このことは、上述した解決法によって回避される。
【0055】
更に、上述した解決法の保護回路は、高圧電位との、すなわち正電位又は負電位との、非常に急速に相次いで進行する複数の接触の場合に、そのたびに身体電流への等価の導出経路となり得る。これとは異なり、保護抵抗と直列につながれたコンデンサ及び放電抵抗の、それぞれの保護スイッチと電気的に直列につながれた並列回路を有する保護回路では、保護コンデンサの放電抵抗を通じて非常に低い電圧値まで放電されるまで待機しなければならず、又は、このような保護回路は、急速に連続して起こる高圧電位との身体接触によって低下していく保護作用を有することになる。保護コンデンサがまだ残留電圧を有しており、さほど多くのエネルギーを蓄えられなくなっているからである。
【0056】
したがって、ここで説明している保護装置は、特にその保護回路は、自律的に接続をすることができ、すなわち第1及び/又は第2の保護スイッチを閉じることができ、この接続された状態での短い持続時間の後にそれぞれの閉じた保護スイッチを再び開くことができるように、構想されることが提供されるのが好ましい。その場合、たとえば接触器の、特に充電接触器及び/又は主接触器の、開放や、Yコンデンサの放電など、どのような方策を実施するかについて、上位の制御装置と車両の内部で通信することが省略されるという利点がある。たとえば高圧ケーブルの不具合のある保護カバーはなく、恒常的に生じている絶縁不良の、すなわち低い絶縁抵抗の、認識は、別途の器具によって、たとえば絶縁モニタによって、及び/又は高圧電位分布の測定によって、認識されるのが好ましく、このような器具はここで説明している保護装置及びその保護回路の構成要素ではなく、これとの関連性もない。前述したように、ここで説明している保護装置及びその保護回路は、非常に短い間隔で反復して、かつそれに伴って迅速に繰り返される人による接触のもとでも、トリガーすることができ、したがって人の保護を保証することができる。たとえばEMC干渉に基づく誤ったトリガーが、たとえば高圧システムの誤った停止などの、車両でのさらなる方策につながることがない。保護装置の、特にその保護回路の、自律的な機能により、既存の高圧システムへのフレキシブルで簡易な統合を具体化可能である。更に、自律的な機能により、保護装置及びその保護回路に関わる安全性要求が低くなり、たとえばヒューズ付きの機能/他の制御装置への通信が不要となる。
【0057】
保護抵抗と直列につながれたコンデンサ及び放電抵抗の、それぞれの保護スイッチと電気的に直列につながれた並列回路を有する保護回路とは異なり、ここで説明している解決法は、正電位と基準電位の間の、及び負電位と基準電位の間の、全体キャパシタンスの増大にはつながらない。
【0058】
保護抵抗と直列につながれたコンデンサ及び放電抵抗の、それぞれの保護スイッチと電気的に直列につながれた並列回路を有する保護回路と、ここで説明している解決法とを比較すると、保護回路が接続された瞬間に、未充電のコンデンサが比較的低いインピーダンスを有することが明らかであり、それにより、身体電流のいっそう迅速な低減を実現することができる。したがって、伝送される電荷及び人間の身体で具体化されるエネルギーが最初の瞬間に若干低くなる。ただし、その後の時間的な過程でコンデンサが充電され、それに伴ってそのインピーダンスが増大する。しかし、ここで説明している解決法の、バリスタの形態の電圧依存的な抵抗として構成される電気抵抗は、たとえば80Vのバリスタ電圧に達するまでほぼ一定に保たれ、それに伴い、その後の過程で身体電流をいっそう迅速に低減することができる。
【0059】
考えられる1つの実施形態では、電圧依存的な電気抵抗は、及びこれに伴って1つの電気抵抗を有する上に挙げた実施形態においてこの1つの電気抵抗は、及び、両方の保護回路部分と第1及び第2の電気抵抗とを有する上に挙げた代替的な実施形態において第1の電気抵抗及び/又は第2の電気抵抗は、1つのバリスタとして、又はたとえば追加配線を有する、及び/又は有さない、複数のバリスタの直列回路及び/又は並列回路として、構成される。追加配線は、特に、バリスタ電流を制限するための直列抵抗である。
【0060】
考えられる1つの実施形態では、電気抵抗及び/又は第1の電気抵抗及び/又は第2の電気抵抗は、電気保護抵抗と電気的に直列につながれる。すなわち、1つの電気抵抗を有する上に挙げた実施形態では、この電気抵抗が電気保護抵抗と電気的に直列につながれる。このとき電気抵抗と電気保護抵抗の電気直列回路は、正電位と基準電位の間の、及び負電位と基準電位の間の、共通の放電網を形成する。両方の保護回路部分と、第1及び第2の電気抵抗とを有する、上に挙げた代替的な実施形態では、第1の電気抵抗は電気保護抵抗と電気的に直列につながれ、及び/又は第2の電気抵抗は電気保護抵抗と電気的に直列につながれる。このとき、それぞれの電気抵抗とそれぞれの電気保護抵抗の電気直列回路は、正電位と基準電位の間の放電網を形成し、ないしは負電位と基準電位の間の放電網を形成する。電気保護抵抗又はそれぞれの電気保護抵抗は、高すぎる電流によるそれぞれの保護スイッチの破損を回避するための役目を果たす。たとえば、特に電圧依存的な電気抵抗としての実施形態における電気抵抗又はそれぞれの電気抵抗によって、最大の通電がそれぞれの保護スイッチの破損につながり得ないように制限されることが常に確保されていれば、電気保護抵抗又はそれぞれの電気保護抵抗を省略することができる。
【0061】
上で述べた人間の身体抵抗として、すなわち人の身体抵抗として、特に順守されるべき規格の指定に基づき、500Ωの抵抗値が想定される。
【0062】
別の実施形態では、保護回路は、正電位線と基準電位線の間の、電気保護コンデンサ、電気保護抵抗、及び第1の保護スイッチの電気直列回路と、負電位線と基準電位線の間の、電気保護コンデンサ、電気保護抵抗、及び第2の保護スイッチの電気直列回路とを含み、保護コンデンサと保護抵抗に対して電気放電抵抗が電気的に並列につながれ、保護コンデンサに対して、又は保護コンデンサと保護抵抗に対して、電気急速放電抵抗と急速放電スイッチからなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。
【0063】
このような保護回路の実施形態は、コンポーネント最適化された保護回路である。CY電撃を、すなわちYコンデンサによる人への電気ショックを、低減する役目を果たす保護回路では、1つの電位だけが、すなわち正電位又は負電位だけが、人の身体抵抗を介してフレームグラウンドと接続されることが前提とされる。両方の電位がフレームグラウンドと接続されると、このことは、車両の保護装置で使用される場合には車両のバッテリの短絡と同じであり、直流充電ステーションの保護装置として使用される場合には直流充電ステーションの、たとえば充電コラムの、短絡と同じであり、このような短絡は、ヒューズ又は電流センサ及びこれらにより制御される遮断装置によって分離されなければならない。このことから、保護回路を正電位と負電位について同時に適用することは決してできないことが明らかである。すなわち保護回路のこの実施形態は、上述した方式で、両方の電位の保安のために適用することができる。
【0064】
保護装置のこの実施形態を作動させる方法では、トリガー基準が成立したときに第1の保護スイッチ又は第2の保護スイッチが閉じられ、保護コンデンサの充電後に再び開かれ、次いで急速放電スイッチが閉じられ、保護コンデンサの放電後に再び開かれる。
【0065】
保護回路のこの実施形態では、両方の保護スイッチが特に同時にではなく、両方の保護スイッチのそのつど一方だけが、特に上記に依存して、閉じるように作動可能であり、ないしは作動することが提供されるのが好ましい。
【0066】
代替的な実施形態では、保護回路は2つの保護回路部分を含む。第1の保護回路部分は、正電位線と基準電位線の間の、第1の電気保護コンデンサ、第1の電気保護抵抗、及び第1の保護スイッチの電気直列回路を含み、第1の保護コンデンサ及び第1の保護抵抗に対して第1の電気放電抵抗が電気的に並列につながれ、第1の保護コンデンサ又は第1の保護抵抗に対して、第1の電気急速放電抵抗と第1の急速放電スイッチからなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。第2の保護回路部分は、負電位線と基準電位線の間の、第2の電気保護コンデンサ、第2の電気保護抵抗、及び第2の保護スイッチの電気直列回路を含み、第2の保護コンデンサ及び第2の保護抵抗に対して第2の電気放電抵抗が電気的に並列につながれ、第2の保護コンデンサ又は第2の保護抵抗に対して、第2の電気急速放電抵抗と第2の急速放電スイッチからなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。
【0067】
その場合に相応に保護装置を作動させる方法では、トリガー基準が成立したときに第1の保護スイッチが閉じられ、第1の保護コンデンサの充電後に再び開かれ、次いで第1の急速放電スイッチが閉じられ、第1の保護コンデンサの放電後に再び開かれ、及び/又はトリガー基準が成立したときに第2の保護スイッチが閉じられ、第2の保護コンデンサの充電後に再び開かれ、次いで第2の急速放電スイッチが閉じられ、第2の保護コンデンサの放電後に再び開かれる。
【0068】
上述した解決法は、車両の、特に電気車両及びハイブリッド車両の、及び直流充電ステーションの、Yコンデンサと結びついた問題を、後で説明するように解決する。このようなYコンデンサは、EMC干渉のエミッションを低減するための方策として利用される(EMC=電磁両立性)。しかしYコンデンサにより、高圧安全性の理由から潜在的な危険性が高くなる。たとえば規格SAE J1772、IEC60479-1及び-2には、Yコンデンサに含まれる充電量が健康を脅かす指標として挙げられている(C1特性曲線)。車両の動作電圧が高くなるほど、これらの規格で要求される限界値を順守するのがいっそう難しくなる。部分的には、たとえば強化された、特に倍増された電気絶縁など、安全性設定を守るための代替的な方策も、いわゆる代替的測定値なども、許容されない。別の規格LV123及びこれと関連する規格は、たとえばすべてのYコンデンサの充電量について0.2Jの最大のエネルギー含有量を規定している。代替的な方策を通じての回避が許容される場合には、たとえばすでに述べた強化された、特に倍増された、電気絶縁を適用することができる。しかし、このことが具体化可能であるのは、互いに接続されたすべての高圧システムが相応に強化されて絶縁されている場合に限られる。すなわち、たとえば直流充電の場合、車両だけでなく直流充電ステーションも、特に充電コラムも、相応に強化されて絶縁されていなければならない。しかし、それについて強制的な標準は存在しないので、異なる絶縁設計を有するシステムが接続されることも考えられ、そのために安全性要求が順守されない。
【0069】
こうした問題が上述した回路によって解決される。基準電位に対する、特に接地電位に対する、高圧電位ごとの電圧測定により、身体電流の帰結であり得る、すなわち特に高圧電位のうちの1つと、及び基準電位と、人間との身体接触の帰結であり得る、基準電位に関する高圧電位のシフトが認識されるからである。基準電位に対する電圧が低下している該当する高圧電位で、電圧を可能な限り迅速に低減するために、放電抵抗及び好ましくはこれに対して電気的に並列に未充電の保護コンデンサが付け加えられる。それにより、該当する高圧電位と基準電位との間の電圧が大幅に低いレベルへと急激に飛躍し、それによって身体電流が電圧に比例して低減される。このように上述した解決法は、Yコンデンサに起因する、特に人間の身体への電気ショックの低減を可能にする。上で説明した要求事項の順守がこのようにして可能となる。Yコンデンサに蓄えられるエネルギーが大幅に高くなり得るにもかかわらず、身体抵抗によって具体化されるYコンデンサの電気エネルギーを、0.2Jを下回る程度に制限することも同様に可能である。
【0070】
放電抵抗と、電気的に並列につながれた保護コンデンサとの組み合わせが特別に好ましい。放電抵抗は、電気的に並列につながれた保護コンデンサが、接続の瞬間に無電圧になっていることを保証する。保護コンデンサは接続後に、該当する高圧電位のYコンデンサの迅速な放電のために作用する。
【0071】
放電抵抗に対して保護コンデンサだけでなく、保護コンデンサと保護抵抗からなる電気直列回路も電気的に並列につながれるので、保護コンデンサを通る電流が保護抵抗によって制限されるという利点がある。
【0072】
更に、少なくとも保護コンデンサに対して、又は保護コンデンサと保護抵抗に対して、電気的に並列につながれる追加の急速充電抵抗により、上述した解決法の保護回路は、高圧電位との、すなわち正電位又は負電位との、非常に急速に相次いで進行する複数の接触の場合に、そのたびに身体電流への等価の導出経路となり得る。このような追加の急速放電抵抗がなければ、保護コンデンサは初回の接続後に、高圧システムのYコンデンサのキャパシタンスに対するそのキャパシタンスに依存して、たとえば80Vまで充電されることになる。非常に短時間であらためてこのような電圧と接続されると、最終的に人間の身体で更に若干高い電圧が生じることになる。保護コンデンサでの充電を完全に解消できていないからである。このように、以後の一時的な接続のたびに保護機能が低下していくことになる。そのため、保護コンデンサの放電抵抗を通じて非常に低い電圧値まで放電されるまで待機しなければならず、又は、このような保護回路は、急速に連続して起こる高圧電位との身体接触によって低下していく保護作用を有することになる。保護コンデンサがまだ残留電圧を有しており、さほど多くのエネルギーを蓄えられなくなっているからである。この問題は、上述した保護回路によって解決される。この保護回路は、保護コンデンサを急速放電するための急速放電回路によって拡張されているからである。このとき上述したように、まずそれぞれの保護スイッチが接続される。保護コンデンサの充電後、この保護スイッチが再び開かれる。そして、並列につながれた急速放電抵抗による保護コンデンサの放電が行われて、急速放電スイッチの閉止が行われる。保護コンデンサの放電後に急速放電スイッチが再び開かれて、保護回路の使用準備が再び整う。
【0073】
ここで説明している保護装置は、特にその保護回路は、自律的に接続をすることができ、すなわち第1及び/又は第2の保護スイッチを閉じることができ、この接続された状態での短い持続時間の後にそれぞれの閉じた保護スイッチを再び開くことができるように、構想されることが提供されるのが好ましい。その場合、たとえば接触器の、特に充電接触器及び/又は主接触器の、開放や、Yコンデンサの放電など、どのような方策を実施するかについて、上位の制御装置と車両の内部で通信することが省略されるという利点がある。たとえば高圧ケーブルの不具合のある保護カバーはなく、恒常的に生じている絶縁不良の、すなわち低い絶縁抵抗の、認識は、別途の器具によって、たとえば絶縁モニタによって、及び/又は高圧電位分布の測定によって、認識されるのが好ましく、このような器具はここで説明している保護装置及びその保護回路の構成要素ではなく、これとの関連性もない。前述したように、ここで説明している保護装置及びその保護回路は、非常に短い間隔で反復して、かつそれに伴って迅速に繰り返される人による接触のもとでも、トリガーすることができ、したがって人の保護を保証することができる。たとえばEMC干渉に基づく誤ったトリガーが、たとえば高圧システムの誤った停止などの、車両でのさらなる方策につながることがない。保護装置の、特にその保護回路の、自律的な機能により、既存の高圧システムへのフレキシブルで簡易な統合を具体化可能である。更に、自律的な機能により、保護装置及びその保護回路に関わる安全性要求が低くなり、たとえばヒューズ付きの機能/他の制御装置への通信が不要となる。
【0074】
以下では、本発明の実施例を、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】保護装置の1つの実施形態を有する直流網の1つの実施形態を模式的に示す。
【
図3】保護装置の1つの実施形態を有する直流網の別の実施形態を模式的に示す。
【
図5】保護装置の1つの実施形態を有する直流網の別の実施形態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
いずれの図においても、相互に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0077】
以下において
図1から
図6を参照しながら、電気直流網1のための、特に高圧網のための、たとえば車両2の車載電気システム3のための、保護装置8について説明する。この保護装置は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の電圧を測定するための、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の第1の電圧測定装置SV1と、負電位線HV-Lと基準電位線MLの間の電圧を測定するための、負電位線HV-Lと基準電位線MLの間の第2の電圧測定装置SV2とを含む。基準電位Mは、特に、電気的な接地電位であり、車両2で保護装置8が使用される場合には特に車両接地電位であり、保護装置8が直流充電ステーション5で使用される場合には、たとえば接地電位である。
【0078】
更に保護装置8は、特に電気直流網1のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-に起因する、特に人への、すなわち人間の身体への、電気ショックを低減するための保護回路9を含む。
【0079】
保護回路9は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の第1の保護スイッチSS1と、負電位線HV-Lと基準電位線MLの間の第2の保護スイッチSS2とを含む。複数のトリガー基準が意図され、第1の保護スイッチSS1及び/又は第2の保護スイッチSS2は、第1の電圧測定装置SV1及び/又は第2の電圧測定装置SV2によって判定される、設定されたすべてのトリガー基準が成立したときにのみ閉じるように作動可能である。トリガー基準は、特に、発生する可能性がある故障原因/干渉に関しており、発生時に保護スイッチSS1,SS2の閉止が妨げられる。好ましくは、これらの故障原因/干渉の各々について少なくとも1つのトリガー基準が設定されて、高圧電位HV+,HV-のうちの1つとの身体接触が生じたときに、すなわち人との接触すなわち人間の身体との接触が生じたときに、成立し、それぞれの故障原因の発生時には成立しない。トリガーは、すなわちそれぞれの保護回路SS1,SS2を閉じることは、設定されたすべてのトリガー基準が成立したときにのみ、すなわち充足されたときにのみ、行われる。それにより、高圧電位HV+,HV-のうちの1つとの身体接触が生じたときにのみ、すなわち人との接触すなわち人間の身体との接触が生じたときにのみ、それぞれの保護スイッチSS1,SS2が閉じられ、故障原因/干渉のうちの1つ又は複数の発生に基づく誤った閉止が回避されることが保証される。
【0080】
車両2のための、特に電気車両又はハイブリッド車両のための、特に高圧車載電気システムのための、電気車載電気システム3は、特に高圧車載電気システム3は、このような保護装置8を含む。
【0081】
車両2は、特に電気車両又はハイブリッド車両は、特にこのような保護装置8を含み、特に、このような保護装置8を含むこのような電気車載電気システム3、特に高圧車載電気システム3を含む。
【0082】
特に車両2を、特に電気車両又はハイブリッド車両を、特にこのような車両2の高圧バッテリ6を、充電するための、特に車両外部の直流充電ステーション5は、特に高圧直流充電ステーションは、このような保護装置8を含む。
【0083】
電圧測定装置SV1,SV2によって測定された電圧は、特に次のように評価される:
-正電位線HV+Lから基準電位線MLへの、及び負電位線HV-Lから基準電位線MLへの、現在生じている電圧dUの、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する差異が判定され、及び/又は、
-正電位線HV+Lから基準電位線MLへの、及び負電位線HV-Lから基準電位線MLへの、電圧の電圧変化dU/dtが、すなわち時間にわたって、判定され、及び/又は、
-正電位線HV+Lから基準電位線MLへの、及び負電位線HV-Lから基準電位線MLへの、電圧の評価に関して、特に上記の両方の判定にあたって、逆の符号が考慮され、及び/又は、
-発生する干渉の周期的な繰り返しが考慮される。
【0084】
すなわちトリガー基準は特に次のものを含む:
-正電位線HV+Lと基準電位線MLの間で現在生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で現在生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異、及び/又は、
-正電位線HV+と基準電位線MLの間で生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、時間にわたっての電圧変化、及び/又は、
-正電位線HV+Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、逆の符号、及び/又は、
-他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在。
【0085】
第1の保護スイッチSS1及び/又は第2の保護スイッチSS2は、特に次の場合にのみ作動可能である。
【0086】
正電位線HV+Lと基準電位線MLの間で現在生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異が設定された限界値を、考えられる1つの実施例では30Vの限界値を、上回っており、かつ、
-正電位線HV+Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、時間にわたっての電圧変化が設定された限界値を上回っており、かつ、
-正電位線HV+Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、及び負電位線HV-Lと基準電位線MLの間で生じている電圧の、逆の符号が存在するとき。
【0087】
たとえば第1の電圧測定装置SV1により判定された電圧及び第2の電圧測定装置SV2により判定された電圧を評価するために、及び、第1の電圧測定装置SV1及び/又は第2の電圧測定装置SV2により判定された、設定されたすべてのトリガー基準が成立したときにのみ第1の保護スイッチSS1及び/又は第2の保護スイッチSS2を作動させるために、電圧測定装置SV1,SV2及び保護回路SS1,SS2と接続された共通の電圧評価ユニット12が設けられる。
【0088】
図1及び2,3及び4、並びに5及び6は保護回路9のさまざまな実施形態を示しており、
図2,4及び6は、それぞれの実施形態のコンポーネント最適化された態様を示している。
【0089】
高圧網3は、図示した例では、保護装置8が好ましく適用される車両2の、特に電気車両又はハイブリッド車両の、高圧車載電気システム3である。しかしながら保護装置8は、代替的又は追加的に、車両2及びその他の車両を、特に電気車両又はハイブリッド車両を、車両2の高圧バッテリ6の電気充電のために接続させることができる直流充電ステーション5でも適用可能である。その場合に直流網1は、車両2が接続された状態にあるとき、車両2の車載電気システム3と、特に高圧網3と、直流充電ステーション5とを含む。このような直流充電ステーション5で電気充電される車両2の高圧バッテリ6は、特に、車両2を駆動するための車両2の少なくとも1つの電気駆動ユニットのために、電気エネルギーを提供するための役目を果たす。
【0090】
車両2でも直流充電ステーション5でも、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-は、EMC干渉のエミッションを低減するための方策として利用される(EMC=電磁両立性)。特にYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-は、多くの場合、たとえばコモンモードチョークやディファレンシャルモードチョークなどの誘導式の干渉抑制フィルタと比較して、いっそう好都合でコンパクトなEMCフィルタ方策である。したがってEMCの観点からは、高いキャパシタンス値を有するYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-を使用するのがよい。
【0091】
しかし電装化された車両2では、たとえば電気車両又はハイブリッド車両では、車両利用者が場合により高圧電位HV+,HV-と接触し、それと同時に接地電位と接続された場合に、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-のエネルギー含有量を感知可能となる。その場合、車両利用者は電気ショックをうける。このことは、こうした電気ショックの大きさによっては健康を脅かしかねない。たとえば心室細動や死に至ることがあり得る。このような電気ショックはいわゆる「単一故障」であり、回避されるべきである。したがってこのようなYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-のエネルギー含有量は、車両利用者の危険を排除するために、規格で制限されている。
【0092】
すなわち高圧安全性の観点からは、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の低いキャパシタンス値が好ましい。規格には、たとえばLV123の規定で定められているように、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-における特に0.2Jの最大のエネルギー含有量を上回らないという要求事項があり、又は、いわゆる「代替的測定値」、すなわちたとえば強化された絶縁などの代替的な方策を設けるという要求事項がある。しかしこのことは常に、たとえば車両2と直流充電ステーション5などの2つの高圧システムが接続されるとき、「代替的測定値」として強化された絶縁が選択されている場合には、両方の関与者が常に同時にこのような強化された絶縁を有していなければならないことに帰結するしかし、それを現時点で確保することはできない。
【0093】
たとえばSAE J1772、IEC60479-1、及びIEC60479-2などの別の規格には、上回ってはならない健康を脅かす量としてYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-のエネルギー含有量が挙げられるのではなく、設定された値を上回ってはならない充電量が有害なメカニズムとして挙げられている。たとえばそのために、身体電流の値に対する身体電流の時間の関係を表すグラフが掲載されている。たとえば強化された絶縁などの代替措置は、そこでは容認されない。
【0094】
図1,3及び5は、車両2の直流充電プロセスのときの、高圧網として構成された電気直流網1のそれぞれの実施形態の回路構造を示している。したがってこの直流網1は、車両2の高圧車載電気システム3と、充電ケーブル4によってこれに接続された直流充電ステーション5とを含んでいる。ここに図示した実施例では、充電ケーブル4がすでに車両2の直流充電接続部の接続接点AK+,AK-と接続されており、高圧電位線HV+L,HV-Lにある車両2の充電接触器LS+,LS-はまだ開いている。
【0095】
左側には、充電ステーション電圧源13と、充電ステーション内部抵抗RLSと、YコンデンサCyL+,CyL-とを有する直流充電ステーション5がある。
【0096】
その右側に、充電ケーブル4が示されている。
【0097】
その右側に、充電接触器LS+,LS-と、YコンデンサCyF+,CyF-、たとえばEMCフィルタと、たとえば直流中間回路のXコンデンサCxと、高圧バッテリ6及びその主接触器HS+,HS-と含む、車両2及びその高圧車載電気システム3が示されている。高圧バッテリ6は、たとえば直列及び/又は並列につながれた、バッテリ内部抵抗RBattを有する複数の個別セルを含む、電気式のバッテリエネルギー源7として示されている。
【0098】
これに加えてこの回路図には、身体抵抗RK-と、たとえば充電ケーブル4に不具合があるときの、ここでは例示として正電位線HV+での不具合である、絶縁不良IFを表す回路記号とを含む、人間の身体MKが示されている。絶縁不良IFは負電位線HV-でも同様に発生し得る。このことは図示していない。絶縁不良IFが発生すると、スイッチ記号が閉じられる。このような絶縁不良IFが生じ、高圧電位HV+,HV-のうちの一方及び基準電位と人間の身体MKとの接触が生じると、人間の身体MKを通して放電が起こる。
【0099】
人間の身体MKを通るこのような放電を回避するために、又は、少なくとも特に健康危害に関して許容される程度まで低減するために、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-による電気ショックを低減するための保護回路9を有する保護装置8が設けられている。保護装置8は、図示するすべての例において、両方の電圧測定装置SV1,SV2と、両方の保護スイッチSS1,SS2を有する保護回路9とを含んでいる。それにより、正電位HV+と基準電位Mとの間の、特にボデー接地との間の、放電網が創出され、及び負電位HV-と基準電位Mとの間の、特にボデー接地との間の、放電網が創出される。このような放電網は、
図1,3及び5に示す例では、保護回路9の保護回路部分9.1,9.2である。
【0100】
それぞれの放電網は、すなわちそれぞれの保護回路部分9.1,9.2は、
図1及び2に示す実施形態では、以下において保護コンデンサCs,Cs1,Cs2と呼ぶ未充電のコンデンサと、以下において放電抵抗Re,Re1,Re2と呼ぶ電気的に並列につながれた抵抗とで構成されるのが好ましい。これに加えて、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2に対して電気的に直列につながれた保護抵抗Rs,Rs1,Rs2が設けられる。たとえば放電抵抗Re,Re1,Re2だけが設けられていてもよいが、身体電流を迅速に低減するためには、これが非常に低抵抗でなければならない。しかしながら、それに伴って低抵抗の絶縁不良が生起されるという不都合がある。したがって以下においては、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2と放電抵抗Re,Re1,Re2との組み合わせだけに着目する。
【0101】
それぞれの放電抵抗Re,Re1,Re2は、電気的に並列につながれた保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が接続の瞬間に無電圧であることを保証する。保護コンデンサは接続後に、該当する高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の迅速な放電のために作用する。図示している
図1の例では、保護装置8は車両2の保護回路9を有するように配置されて示されている。しかしながら保護装置は、同じ機能のもとで直流充電ステーション5に配置されていてもよい。
【0102】
直流充電プロセス中に、高圧電位HV+,HV-は必ずしも基準電位Mに関して対称に配分されていなくてよいが、少なくとも高圧電位HV+,HV-の順守されるべき絶縁値が基準電位Mに対して、たとえば100オーム/ボルトで、保証されなくてはならない。人間による高圧電位HV+,HV-への接触は絶縁抵抗の低下となって顕在化し、及びその結果として、基準電位Mに対する高圧電位HV+,HV-のシフトによって顕在化する。
【0103】
車両2又は直流充電ステーション5の絶縁モニタが絶縁抵抗を周期的に検査しているが、絶縁不良IFが認識されるまでの時間幅は、車両2では最大30秒、又は直流充電ステーション5では最大2分であり、開放絶縁の場合にYコンデンサCyF+,CyF-,CyF+,CyF-に蓄えられているエネルギーによるショックから人を保護できるようにするには長すぎる。
【0104】
Cyショックを低減するための保護回路9を有する保護装置8の機能形態は、たとえばSAE J1772、IEC 60479-1、及びIEC60479-2に記載されている潜在的危険性に関わる限界値に準ずる。そこでは、人間の身体MKを通って流れる充電量が有害なメカニズムとして挙げられ、グラフに示されている。したがって、流れる電荷を最小化するために、目標となるのは身体電流の迅速な認識と低減である。機械式の充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-単独での作動は、そのためには遅すぎる。
【0105】
上で説明した保護回路9では、絶縁値の降下が電圧測定によって迅速に認識され、それによって即座に、たとえばハードウェア回路を介して、放電された保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が該当する高圧電位HV+,HV-に対して、身体抵抗RKないしYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-と並列につながれる。このようにして、この高圧電位HV+,HV-及び基準電位Mでの電圧が急激に低下する。人間の身体MKを通る通電も、電圧低下と比例して減少する。
【0106】
このとき放電抵抗Re,Re1,Re2は2つの機能を有する。一方では放電抵抗は、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の接続前にその完全な放電のために作用する。他方では放電抵抗は接続後に、高圧電位HV+,HV-と基準電位Mの間ですでに低減された電圧の除去を迅速化し、それにより、引き続き低下する電圧とともに、人間の身体MKを通る電流も再度低減される。それぞれ他方の高圧電位HV+,HV-は、基準電位Mに対して電圧をこれと同程度に高めるが、人間の身体MKによって接触されてはおらず、したがってクリティカルではない。次のステップで、高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-が開き、直流電流充電ステーション5の接触器及び/又は充電接触器LS+,LS-が開き、最後のステップで、車両2のXコンデンサCxとYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電が実行されるのが好ましい。
【0107】
保護回路9を有する保護装置8により、たとえば規格IEC60479-1などの設定されている規格を順守することができる。直流充電電圧が高くなるほど、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-を通じて生じる電圧はいっそう高くなる。その結果として、想定される身体抵抗RKのもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の電圧に比例して高くなる電流も、接触プロセスの開始時に生じる。身体を通る電流は、抵抗を通してのコンデンサ放電の過程に伴い、特に指数関数の形態で低下していく。接触の開始時の電流は、電圧と抵抗の商として計算される。想定される920Vの最大充電電圧のとき、基準電位M(各々のYコンデンサで460V)に関して同じく対称であると想定される高圧電位分布のもとで、460V/1200オーム=383mA接触電流の初期値が得られる。電流のこの初期値を前提としたうえで、ルート6で除算することによって、この電流を正弦波形のAC電流に換算することができる。このことは、規格SAE J 1772のいわゆるC1特性曲線におけるX軸の値に相当する。この電流の時間長は、コンデンサ放電の時間定数t=R×Cの算出を通じて求めることができる。このとき対応する時間長(Y軸)は3×tに相当する。たとえば、約100msのこの状態での持続時間がまだ許容される。目標として、5mAよりも低い残存身体電流が選択されており、すなわち残留電圧は6Vよりも低くなくてはならない。
【0108】
たとえば基準電位Mに関する非対称の高圧電位分布のもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧が高いほど、最大の持続時間はいっそう短くなる。500mAを超える電流は許容されない。その場合、600Vの最大電圧がYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-で発生することになるからである。これを超えると充電プロセスを中止しなければならない。
【0109】
したがって保護回路9を有する保護装置8により、要求される最大の電流・時間長を順守することができるかどうかを計算することができる。この条件が満たされていないとき、充電プロセスを即座に中止しなければならない。それ以上の過誤は人身の危険につながることになるからである。この計算のための入力量は、両方の高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧測定、回路独自の反応速度に関する知見、及び最大限許容される電流・持続時間の数値表である。
【0110】
ここでは電圧評価ユニット12が設けられており、電圧測定装置SV1,SV2によって検出された電圧がここで評価され、保護スイッチSS1,SS2を相応に作動させることができる。更に、電圧評価ユニット12が別の情報を、特にこれよりも低速の制御装置へ、又は直流充電ステーション5へ、出力できることが意図されていてよい。例示としての情報は、充電接触器LS+,LS-の開放又は閉止、直流充電プロセスの中断、高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-の開放又は閉止、車両2の高圧中間回路の能動的な放電の開始、及び/又はすべて正常なので直流充電プロセスを開始できるという情報である。
【0111】
特に車両2の走行動作のための、交流充電動作のための、並びに組立・整備作業のための、直流充電ステーション5なしでの直流網1の場合、直流充電での状態との唯一の相違は、直流充電ステーション5がないことである。故障メカニズムとして、たとえば事故の結果として高圧ケーブルの不具合や、高圧エレクトロニクスのハウジングの不具合などが考慮の対象となる。組立や整備のときに高圧システムが損傷した場合にも、保護回路9を有する保護装置8が充電量を低減させることができる。
【0112】
絶縁不良IFに起因するYショックを低減させるための保護回路9は、上で説明したものと同一のままである。そのためには、保護回路9を有する保護装置8が当然ながら車両2に配置される。機能は、上で説明した直流充電中の絶縁での不具合についてと同一である。高圧電位HV+,HV-のうちの1つと基準電位Mの間の電圧の低下が認識されると、それぞれの保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が追加してつながれ、該当する高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の全体キャパシタンスが放電される。高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-の開放が指示され、車両2のXコンデンサCx及び両方のYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電が開始されるのが更に好ましい。充電接触器LS+,LS-はすでにそれ以前に開いており、開いたままに保たれる。
【0113】
図2は、コンポーネント最適化された保護回路9を示している。Cyショックを低減するための保護回路9では、1つの高圧電位HV+,HV-だけが身体抵抗R
Kを介して基準電位Mと、たとえばフレームグラウンドと、接続されることが前提となる。両方の高圧電位HV+,HV-が基準電位Mと、特にフレームグラウンドと、接続されると、このことは、高圧バッテリ6又は直流充電ステーション5の短絡と同じであり、このような短絡は、ヒューズ又は電流センサ及びこれらにより制御される遮断装置によって分離されなければならない。
【0114】
このことから、Cyショックを低減するための保護回路9を正電位HV+と負電位HV-について同時に適用することは決してできないことが明らかである。したがって
図2に示すように、単一の保護コンデンサCs、放電抵抗Re、及び更に保護抵抗Rsを、両方の高圧電位HV+,HV-の保安のために適用することができる。すなわち、2つの保護回路9.1,9.2が必要なわけではない。保護回路9の接続のための両方の電圧保護装置SV1,SV2による電圧測定、及び両方の保護スイッチSS1,SS2は、引き続き存続させなければならない。
図2は、このようなコンポーネント最適化を示している。このことが有意義なのは、たとえば車両2と直流充電ステーション5での高い動作電圧やYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の大きいキャパシタンスに基づき、放電抵抗Reも同じく比較的高いコンポーネント値をとらなければならない場合である。ここでは保護装置8は、特にその保護回路9は、車両2又は直流充電ステーション5に統合されるべき必要な追加コストだけに縮減されている。正電位HV+、負電位HV-、及び基準電位Mへの接続部AHV+,AHV-,AMを非常に小型に抑えることができる。故障発生時にミリセカンド単位の電流が流れるだけだからである。それ以外では接続部AHV+,AHV-,AMは無電流であり、電圧測定の役目だけを果たす。その帰結として、既存の高圧システムへの、保護回路9を有する保護装置8の迅速な統合が少ない改変で可能である。計画時間が十分ある場合には、当然ながら、この機能も既存の機器に統合することができる。
【0115】
すなわち保護回路9は、
図2に示すように、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、放電抵抗Reと第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、同じ放電抵抗Reと第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含む。
【0116】
その代替として保護回路9は、
図1に示すように、2つの保護回路部分9.1,9.2を含み、第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第1の放電抵抗Re1と第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第2の保護回路部分9.2は、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、第2の放電抵抗Re2と第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含む。
【0117】
放電抵抗Re,Re1,Re2に対して、すでに上で述べたように、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が電気的に並列につながれるのが好ましく、すなわち、
図2に示すように、単独の放電抵抗Reに対して単独の保護コンデンサCsが電気的に並列につながれ、又は、
図1に示すように、それぞれの保護回路部分9.1,9.2の放電抵抗Re1,Re2に対してそれぞれの保護コンデンサCs1,Cs2が電気的に並列につながれる。
【0118】
すなわち保護回路9は、
図2に示すように、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、放電抵抗Reと第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、放電抵抗Reと第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含み、保護コンデンサCsが放電抵抗Reに対して電気的に並列につながれる。その代替として保護回路9は、
図1に示すように、両方の保護回路部分9.1,9.2を含み、第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第1の放電抵抗Re1と第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第1の放電抵抗Re1に対して第1の保護コンデンサCs1が電気的に並列につながれ、第2の保護回路部分9.2は、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、第2の放電抵抗Re2と第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含み、第2の放電抵抗Re2に対して第2の保護コンデンサCs2が電気的に並列につながれる。
【0119】
放電抵抗Re,Re1,Re2に対して、ここに図示する例では、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が電気的に並列につながれるだけでなく、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2と保護抵抗Rs,Rs1,Rs2からなる電気直列回路も電気的に並列につながれる。
【0120】
すなわち保護回路9は、
図2に示すように、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、放電抵抗Reと第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、放電抵抗Reと第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含み、保護コンデンサCsと保護抵抗Rsからなる電気直列回路が放電抵抗Reに対して電気的に並列につながれる。その代替として保護回路9は、
図1に示すように、両方の保護回路部分9.1,9.2を含み、第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第1の放電抵抗Re1と第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第1の放電抵抗Re1に対して、第1の保護コンデンサCs1と第1の保護抵抗Rs1からなる電気直列回路が電気的に並列につながれ、第2の保護回路部分9.2は、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、第2の放電抵抗Re2と第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含み、第2の放電抵抗Re2に対して、第2の保護コンデンサCs2と第2の保護抵抗Rs2からなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。
【0121】
図3及び4は、保護装置8の、特にその保護回路9の、別の実施形態を示しており、
図4はコンポーネント最適化された態様を示している。
【0122】
それぞれの放電網は、すなわち
図3ではそれぞれの保護回路部分9.1,9.2は、抵抗R,R1,R2と保護抵抗Rs,Rs1,Rs2の電気直列回路で構成されるのが好ましい。
【0123】
電気抵抗R,R1,R2は、図示した例では電圧依存的な電圧抵抗であり、電圧依存的な電気抵抗の抵抗値が、電圧依存的な電気抵抗の接続部を通じて電圧が上昇しているときに低減されるように、特に次第に大きく低減されるように、構成され、電圧依存的な電気抵抗の最大の抵抗値はたとえば最大800Ωであり、特に最大600Ω、特に人間の身体抵抗RKよりも、すなわち人の身体抵抗よりも低い、特に大幅に低い、特に最大200Ωであり、特に最大で50Ω又はこれより低く、たとえば5Ωよりも低い。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。電圧依存的な抵抗は、たとえば1つのバリスタとして、又はたとえば追加配線を有する、及び/又は有さない、複数のバリスタの直列回路及び/又は並列回路として、構成される。
【0124】
その代替として電気抵抗R,R1,R2は、特に最大800Ω、特に最大600Ω、特に人間の身体抵抗RKよりも、すなわち人の身体抵抗よりも低い、特に大幅に低い、特に最大200Ω、特に最大50Ωもしくはこれよりも低い、たとえば5Ωよりも低い、固定的な抵抗値を有する電気抵抗である。それにより、同じく人間の身体への通電が明らかに低減される。
【0125】
たとえば抵抗R,R1,R2だけが設けられていてもよい。電気保護抵抗Rs,Rs1,Rs2は、高すぎる電流によるそれぞれの保護スイッチSS1,SS2の破損を回避するための役目を果たす。したがって、たとえば特に電圧依存的な電気抵抗としての実施形態における電気抵抗R,R1,R2によって、最大の通電がそれぞれの保護スイッチSS1,SS2の破損につながり得ないように制限されることが常に確保されていれば、電気保護抵抗R,R1,R2を省略することができる。
【0126】
図3に図示した例では、保護回路9を有する保護装置8が車両2に配置されて示されている。しかしながら保護装置は、同じ機能のもとで直流充電ステーション5に配置されていてもよい。
【0127】
ここに図示する保護装置8では、特に保護回路9では、特にそれぞれの保護回路部分9.1,9.2では、基準電位Mに関する電圧測定を通じて故障認識が行われる。
【0128】
図3では開いて図示されている充電接触器LS+,LS-が閉じられる直流充電プロセス中に、高圧電位HV+,HV-は必ずしも基準電位Mに関して対称に配分されていなくてよいが、少なくとも高圧電位HV+,HV-の順守されるべき絶縁値が基準電位Mに対して、たとえば100オーム/ボルトで、保証されなくてはならない。人間による高圧電位HV+,HV-への接触は絶縁抵抗の低下となって顕在化し、及びその結果として、基準電位Mに対する高圧電位HV+,HV-のシフトによって顕在化する。
【0129】
車両2又は直流充電ステーション5の絶縁モニタが絶縁抵抗を周期的に検査しているが、絶縁不良IFが認識されるまでの時間幅は、車両2では最大30秒、又は直流充電ステーション5では最大2分であり、開放絶縁の場合にYコンデンサCyF+,CyF-,CyF+,CyF-に蓄えられているエネルギーによるショックから人を保護できるようにするには長すぎる。
【0130】
Cyショックを低減するための保護回路9を有する保護装置8の機能形態は、たとえばSAE J1772、IEC 60479-1、及びIEC60479-2に記載されている潜在的危険性に関わる限界値に準ずる。そこでは、人間の身体MKを通って流れる充電量が有害なメカニズムとして挙げられ、グラフに示されている。したがって、流れる電荷を最小化するために、目標となるのは身体電流の迅速な認識と低減である。機械式の充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-単独での作動は、そのためには遅すぎる。
【0131】
上で説明した保護回路9では、絶縁値の降下が電圧測定によって迅速に認識され、それによって即座に、たとえばハードウェア回路を介して、電気抵抗R,R1,R2が該当する高圧電位HV+,HV-に対して、身体抵抗RKないしYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-と並列につながれる。このようにして、この高圧電位HV+,HV-及び基準電位Mでの電圧が急激に低下する。人間の身体MKを通る通電も、電圧低下と比例して減少する。
【0132】
それぞれ他方の高圧電位HV+,HV-は、基準電位Mに対して電圧をこれと同程度に高めるが、人間の身体MKによって接触されてはおらず、したがってクリティカルではない。
【0133】
次のステップで、高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-が開き、直流電流充電ステーション5の接触器及び/又は充電接触器LS+,LS-が開き、最後のステップで、車両2のXコンデンサCxとYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電が実行されるのが好ましい。
【0134】
保護回路9を有する保護装置8により、たとえば規格IEC60479-1などの設定されている規格を順守することができる。直流充電電圧が高くなるほど、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-を通じて生じる電圧はいっそう高くなる。その結果として、想定される身体抵抗RKのもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の電圧に比例して高くなる電流も、接触プロセスの開始時に生じる。身体を通る電流は、抵抗を通してのコンデンサ放電の過程に伴い、特に指数関数の形態で低下していく。接触の開始時の電流は、電圧と抵抗の商として計算される。想定される920Vの最大充電電圧のとき、基準電位M(各々のYコンデンサで460V)に関して同じく対称であると想定される高圧電位分布のもとで、460V/1200オーム=383mA接触電流の初期値が得られる。電流のこの初期値を前提としたうえで、ルート6で除算することによって、この電流を正弦波形の交流に換算することができる。このことは、規格SAE J 1772のいわゆるC1特性曲線におけるX軸の値に相当する。この電流の時間長は、コンデンサ放電の時間定数t=R×Cの算出を通じて求めることができる。このとき対応する時間長(Y軸)は3×tに相当する。たとえば、約100msのこの状態での持続時間がまだ許容される。目標として、5mAよりも低い残存身体電流が選択されており、すなわち残留電圧は6Vよりも低くなくてはならない。
【0135】
たとえば基準電位Mに関する非対称の高圧電位分布のもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧が高いほど、最大の持続時間はいっそう短くなる。500mAを超える電流は許容されない。その場合、600Vの最大電圧がYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-で発生することになるからである。これを超えると充電プロセスを中止しなければならない。
【0136】
したがって保護回路9を有する保護装置8により、要求される最大の電流・時間長を順守することができるかどうかを計算することができる。この条件が満たされていないとき、充電プロセスを即座に中止しなければならない。それ以上の過誤は人身の危険につながることになるからである。この計算のための入力量は、両方の高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧測定、回路独自の反応速度に関する知見、及び最大限許容される電流・持続時間の数値表である。
【0137】
保護回路9は、高圧電位HV+,HV-との非常に急速に相次いで進行する複数の接触の場合に、そのたびに身体電流への等価の導出経路となり得るので、ここで説明している保護装置8は、特にその保護回路9は、自律的に接続をすることができ、すなわち第1及び/又は第2の保護スイッチSS1,SS2を閉じることができ、この接続された状態での短い持続時間の後にそれぞれの閉じた保護スイッチSS1,SS2を再び開くことができるように、構想されることが提供されるのが好ましい。その場合、充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-の、開放や、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の放電など、どのような方策を実施するかについて、上位の制御装置と車両2の内部で通信することが省略されるという利点がある。たとえば高圧ケーブルの不具合のある保護カバーはなく、恒常的に生じている絶縁不良の、すなわち低い絶縁抵抗の、認識は、別途の器具によって、たとえば絶縁モニタによって、及び/又は高圧電位分布の測定によって、認識されるのが好ましく、このような器具はここで説明している保護装置8及びその保護回路9の構成要素ではなく、これとの関連性もない。前述したように、ここで説明している保護装置8及びその保護回路9は、非常に短い間隔で反復して、かつそれに伴って迅速に繰り返される人による接触のもとでも、トリガーすることができ、したがって人の保護を保証することができる。たとえばEMC干渉に基づく誤ったトリガーが、たとえば高圧システムの誤った停止などの、車両2でのさらなる方策につながることがない。保護装置8の、特にその保護回路9の、自律的な機能により、既存の高圧システムへのフレキシブルで簡易な統合を具体化可能である。更に、自律的な機能により、保護装置8及びその保護回路9に関わる安全性要求が低くなり、たとえばヒューズ付きの機能/他の制御装置への通信が不要となる。
【0138】
特に車両2の走行動作のための、交流充電動作のための、並びに組立・整備作業のための、直流充電ステーション5なしでの直流網1の場合にも、保護装置8を適用可能である。直流充電の場合との唯一の相違は、直流充電ステーション5がないことである。故障メカニズムとして、たとえば事故の結果として高圧ケーブルの不具合や、高圧エレクトロニクスのハウジングの不具合などが考慮の対象となる。組立や整備のときに高圧システムが損傷した場合にも、保護回路9を有する保護装置8が充電量を低減させることができる。
【0139】
このとき、絶縁不良IFに起因するYショックを低減させるための保護回路9は、上で説明したものと同一のままである。そのためには、保護回路9を有する保護装置8が当然ながら車両2に配置される。機能は、上で説明した直流充電中の絶縁での不具合についてと同一である。高圧電位HV+,HV-のうちの1つと基準電位Mの間の電圧の低下が認識されると、それぞれの電気抵抗R,R1,R2が追加してつながれ、該当する高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の全体キャパシタンスが放電される。高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-の開放が指示され、車両2のXコンデンサCx及び両方のYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電が開始されるのが更に好ましい。充電接触器LS+,LS-は、すでにそれ以前に開いており、開いたままに保たれる。
【0140】
図4は、コンポーネント最適化された保護回路9を示している。Cyショックを低減するための保護回路9では、1つの高圧電位HV+,HV-だけが身体抵抗R
Kを介して基準電位Mと、たとえばフレームグラウンドと、接続されることが前提となる。両方の高圧電位HV+,HV-が基準電位Mと、特にフレームグラウンドと、接続されると、このことは、高圧バッテリ6又は直流充電ステーション5の短絡と同じであり、このような短絡は、ヒューズ又は電流センサ及びこれらにより制御される遮断装置によって分離されなければならない。
【0141】
このことから、Cyショックを低減するための保護回路9を正電位HV+と負電位HV-について同時に適用することは決してできないことが明らかである。したがって
図4に示すように、単一の抵抗R及び任意選択として単一の保護抵抗Rsを、両方の高圧電位HV+,HV-の保安のために適用することができる。すなわち、2つの保護回路9.1,9.2が必要なわけではない。保護回路9の接続のための両方の電圧保護装置SV1,SV2による電圧測定、及び両方の保護スイッチSS1,SS2は、引き続き存続させなければならない。
【0142】
図4では保護装置8は、特にその保護回路9は、車両2又は直流充電ステーション5に統合されるべき必要な追加コストだけに縮減されている。正電位HV+、負電位HV-、及び基準電位Mへの接続部AHV+,AHV-,AMを非常に小型に抑えることができる。故障発生時にミリセカンド単位の電流が流れるだけだからである。それ以外では接続部AHV+,AHV-,AMは無電流であり、電圧測定の役目だけを果たす。その帰結として、既存の高圧システムへの、保護回路9を有する保護装置8の迅速な統合が少ない改変で可能である。計画時間が十分ある場合には、当然ながら、この機能も既存の機器に統合することができる。
【0143】
すなわち、たとえば
図4に示すように保護回路9は、正電位線HV+Lと基準電位MLの間の電気抵抗Rと第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の同じ放電抵抗Rと第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含む。
【0144】
電気抵抗Rはたとえば上に挙げた固定的な抵抗値を有する電気抵抗であり、又は
図4に示すように電圧依存的な電圧抵抗であり、電圧依存的な電気抵抗の抵抗値が、電圧依存的な電気抵抗の接続部を通じて電圧が上昇しているときに低減されるように、特に次第に大きく低減されるように、構成され、最大の抵抗値は上で説明したように提供される。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。
【0145】
電圧依存的な電気抵抗として構成される抵抗Rは、たとえば1つのバリスタとして、又は追加配線を有する、及び/又は有さない、複数のバリスタの直列回路及び/又は並列回路として、構成される。
【0146】
その代替として保護回路9は、
図3に示すように、2つの保護回路部分9.1,9.2を含み、第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第1の電気抵抗R1と第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第2の保護回路部分9.2は、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、第2の電気抵抗R2と第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含む。
【0147】
それぞれの電気抵抗R1,R2は、たとえば上で挙げた固定的な抵抗値を有する電気抵抗であり、又は
図3に示すように電圧依存的な電圧抵抗であり、電圧依存的な電気抵抗の抵抗値が、電圧依存的な電気抵抗の接続部を通じて電圧が上昇しているときに低減されるように、特に次第に大きく低減されるように、構成され、最大の抵抗値は上で述べたように提供される。それにより、人間の身体への通電が明らかに低減される。
【0148】
電圧依存的な電気抵抗として構成されるそれぞれの抵抗R1、R2は、たとえば1つのバリスタとして、又は追加配線を有する、及び/又は有さない、複数のバリスタの直列回路及び/又は並列回路として、構成される。
【0149】
考えられる1つの実施形態では、すでに上で述べたように、電気抵抗R,R1,R2が保護抵抗Rs,Rs1,Rs2と電気的に直列につながれる。すなわち、
図4に示すように、単独の電気抵抗Rが単独の電気保護抵抗Rsと電気的に直列につながれ、又は
図3に示すように、それぞれの保護回路部分9.1,9.2の電気抵抗R1,R2がそれぞれの保護回路部分9.1,9.2の電気保護抵抗Rs1,Rs2と電気的に直列につながれる。
【0150】
このとき、それぞれの電気抵抗R,R1,R2とそれぞれの電気保護抵抗Rs,Rs1,Rs2の電気直列回路が、正電位HV+と基準電位Mの間の放電網を形成し、ないしは、負電位HV-と基準電位Mの間の放電網を形成する。電気保護抵抗Rs又はそれぞれの電気保護抵抗Rs1,Rs2は、高すぎる電流によるそれぞれの保護スイッチSS1,SS2の破損を回避するための役目を果たす。たとえば、特に電圧依存的な電気抵抗としての実施形態における電気抵抗R又はそれぞれの電気抵抗R1,R2によって、最大の通電がそれぞれの保護スイッチSS1,SS2の破損につながり得ないように制限されることが常に確保されていれば、電気保護抵抗Rs又はそれぞれの電気保護抵抗Rs1,Rs2を省略することができる。
【0151】
したがって、電気保護抵抗Rsないしそれぞれの保護抵抗Rs1,Rs2が存在する場合、保護回路9は、
図4に示すように、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、電気抵抗R、電気保護抵抗Rs、及び第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、抵抗R、電気保護抵抗Rs、及び第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含み、又は保護回路9は、
図3に示すように両方の保護回路部分9.1,9.2を含み、第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第1の電気抵抗R1、第1の電気保護抵抗Rs1、及び第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第2の保護回路部分9.2は、正電位線HV+Lと基準電位線MLの間の、第2の電気抵抗R2、第2の電気保護抵抗Rs2、及び第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含む。
【0152】
上で述べた人間の身体抵抗RKとして、すなわち人の、すなわち人間の身体MKの、身体抵抗として、特に順守されるべき規格の指定に基づき、500Ωの抵抗値が想定される。
【0153】
図5及び6は、保護装置8の、特にその保護回路9の、別の実施形態を示しており、
図6はコンポーネント適合化された態様を示している。
【0154】
それぞれの放電網は、すなわち
図5ではそれぞれの保護回路部分9.1,9.2は、ここでは、以下において保護コンデンサCs,Cs1,Cs2と呼ぶ未充電のコンデンサと、以下において放電抵抗Re,Re1,Re2と呼ぶ電気的に並列につながれた抵抗とで構成されるのが好ましい。これに加えて、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2に対して電気的に直列につながれた保護抵抗Rs,Rs1,Rs2が設けられる。更に、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2に対して並列に、かつたとえば保護抵抗Rs,Rs1,Rs2に対しても並列に、急速放電抵抗Rse,Rse1,Rse2が急速放電スイッチSe,Se1、Se2と電気的に直列に設けられる。
【0155】
それぞれの放電抵抗Re,Re1,Re2は、電気的に並列につながれた保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が接続の瞬間に無電圧であることを保証する。保護コンデンサは接続後に、該当する高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の迅速な放電のために作用する。
【0156】
追加の急速放電抵抗Rse,Rse1,Rse2によって保護回路9は、高圧電位HV+,HV-との非常に急速に相次いで進行する複数の接触の場合に、そのたびに身体電流への等価の導出経路となり得る。このような追加の急速放電抵抗Rse,Rse1,Rse2がなければ、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2は初回の接続後に、高圧システムのYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-のキャパシタンスに対するそのキャパシタンスに依存して、たとえば80Vまで充電されることになる。非常に短時間であらためてこのような電圧と接続されると、最終的に人間の身体MKで更に若干高い電圧が生じることになる。保護コンデンサCs,Cs1,Cs2での充電を完全に解消できていないからである。このように、以後の一時的な接続のたびに保護機能が低下していくことになる。そのため、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の放電抵抗Re,Re1,Re2を通じて非常に低い電圧値まで放電されるまで待機しなければならず、又は、このような保護回路は、急速に連続して起こる高圧電位HV+,HV-との身体接触によって低下していく保護作用を有することになる。保護コンデンサCs,Cs1,Cs2がまだ残留電圧を有しており、さほど多くのエネルギーを蓄えられなくなっているからである。この問題は、上述した保護回路9によって解決される。この保護回路9は、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2を急速放電するための急速放電回路によって拡張されているからである。この場合、まずそれぞれの保護スイッチSS1,SS2が接続される。保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の充電後、この保護スイッチSS1,SS2が再び開かれる。そして保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の放電が、並列に位置する急速放電抵抗Rse,Rse1,Rse2によって行われ、急速放電スイッチSe,Se1、Se2の閉止が行われる。保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の放電後に急速放電スイッチSe,Se1、Se2が再び開かれて、保護回路9の使用準備が再び整う。
【0157】
ここで説明している保護装置8は、特にその保護回路9は、自律的に接続をすることができ、すなわち第1及び/又は第2の保護スイッチSS1,SS2を閉じることができ、この接続された状態での短い持続時間の後にそれぞれの閉じた保護スイッチSS1,SS2を再び開くことができるように、構想されることが提供されるのが好ましい。その場合、たとえば接触器の、特に充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-の、開放や、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の放電など、どのような方策を実施するかについて、上位の制御装置と車両2の内部で通信することが省略されるという利点がある。たとえば高圧ケーブルの不具合のある保護カバーはなく、恒常的に生じている絶縁不良の、すなわち低い絶縁抵抗の、認識は、別途の器具によって、たとえば絶縁モニタによって、及び/又は高圧電位分布の測定によって、認識されるのが好ましく、このような器具はここで説明している保護装置8及びその保護回路9の構成要素ではなく、これとの関連性もない。前述したように、ここで説明している保護装置8及びその保護回路9は、非常に短い間隔で反復して、かつそれに伴って迅速に繰り返される人による接触のもとでも、トリガーすることができ、したがって人の保護を保証することができる。たとえばEMC干渉に基づく誤ったトリガーが、たとえば高圧システムの誤った停止などの、車両2でのさらなる方策につながることがない。保護装置8の、特にその保護回路9の、自律的な機能により、既存の高圧システムへのフレキシブルで簡易な統合を具体化可能である。更に、自律的な機能により、保護装置8及びその保護回路9に関わる安全性要求が低くなり、たとえばヒューズ付きの機能/他の制御装置への通信が不要となる。
【0158】
図5に図示している例では、保護回路9を有する保護装置8は、車両2に配置されて図示されている。しかしながら保護装置は、同じ機能のもとで直流充電ステーション5に配置されていてもよい。
【0159】
ここに図示する保護装置8では、特に保護回路9では、特にそれぞれの保護回路部分9.1,9.2では、基準電位Mに関する電圧測定を通じて故障認識が行われる。
【0160】
図5では開いて図示されている充電接触器LS+,LS-が閉じられる直流充電プロセス中に、高圧電位HV+,HV-は必ずしも基準電位Mに関して対称に配分されていなくてよいが、少なくとも高圧電位HV+,HV-の順守されるべき絶縁値が基準電位Mに対して、たとえば100オーム/ボルトで、保証されなくてはならない。人間による高圧電位HV+,HV-への接触は絶縁抵抗の低下となって顕在化し、及びその結果として、基準電位Mに対する高圧電位HV+,HV-のシフトによって顕在化する。
【0161】
車両2又は直流充電ステーション5の絶縁モニタが絶縁抵抗を周期的に検査しているが、絶縁不良IFが認識されるまでの時間幅は、車両2では最大30秒、又は直流充電ステーション5では最大2分であり、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-に蓄えられているエネルギーからの開放絶縁の場合に人間の感電への保護を実現できるようにするには長すぎる。
【0162】
Cyショックを低減するための保護回路9を有する保護装置8の機能形態は、たとえばSAE J1772、IEC 60479-1、及びIEC60479-2に記載されている潜在的危険性に関わる限界値に準ずる。そこでは、人間の身体MKを通って流れる充電量が有害なメカニズムとして挙げられ、グラフに示されている。したがって、流れる電荷を最小化するために、目標となるのは身体電流の迅速な認識と低減である。機械式の充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-単独での作動は、そのためには遅すぎる。
【0163】
上で説明した保護回路9では、絶縁値の降下が電圧測定によって迅速に認識され、それによって即座に、たとえばハードウェア回路を介して、放電された保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が該当する高圧電位HV+,HV-に対して、身体抵抗RKないしYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-と並列につながれる。このようにして、この高圧電位HV+,HV-及び基準電位Mでの電圧が急激に低下する。人間の身体MKを通る通電も、電圧低下と比例して減少する。
【0164】
このとき放電抵抗Re,Re1,Re2は2つの機能を有する。一方では放電抵抗は、保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の接続前にその完全な放電のために作用する。他方では放電抵抗は接続後に、高圧電位HV+,HV-と基準電位Mの間ですでに低減された電圧の除去を迅速化し、それにより、引き続き低下する電圧とともに、人間の身体MKを通る電流も再度低減される。それぞれ他方の高圧電位HV+,HV-は、基準電位Mに対して電圧をこれと同程度に高めるが、人間の身体MKによって接触されてはおらず、したがってクリティカルではない。次のステップで、高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-、直流充電ステーション5の接触器、及び/又は充電接触器LS+,LS-の開放を行うことができ、最後のステップで、車両2のXコンデンサCx及びYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電を実行することができる。ただし上で説明したように、ここで説明している解決法では、接触器のこのような開放が行われるのではなく、少なくとも保護装置8によって行われるのではなく、上で説明した方式で、急速放電抵抗Rse,Rse1,Rse2による保護コンデンサCs,Cs1,Cs2の急速放電が行われ、それによって保護回路9の使用準備が迅速に再び整う。
【0165】
保護回路9を有する保護装置8により、たとえば規格IEC60479-1などの設定されている規格を順守することができる。直流充電電圧が高くなるほど、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-を通じて生じる電圧はいっそう高くなる。その結果として、想定される身体抵抗RKのもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の電圧に比例して高くなる電流も、接触プロセスの開始時に生じる。身体を通る電流は、抵抗を通してのコンデンサ放電の過程に伴い、特に指数関数の形態で低下していく。接触の開始時の電流は、電圧と抵抗の商として計算される。想定される920Vの最大充電電圧のとき、基準電位M(各々のYコンデンサで460V)に関して同じく対称であると想定される高圧電位分布のもとで、460V/1200オーム=383mA接触電流の初期値が得られる。電流のこの初期値を前提としたうえで、ルート6で除算することによって、この電流を正弦波形の交流に換算することができる。このことは、規格SAE J 1772のいわゆるC1特性曲線におけるX軸の値に相当する。この電流の時間長は、コンデンサ放電の時間定数t=R×Cの算出を通じて求めることができる。このとき対応する時間長(Y軸)は3×tに相当する。たとえば、約100msのこの状態での持続時間がまだ許容される。目標として、5mAよりも低い残存身体電流が選択されており、すなわち残留電圧は6Vよりも低くなくてはならない。
【0166】
たとえば基準電位Mに関する非対称の高圧電位分布のもとで、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧が高いほど、最大の持続時間はいっそう短くなる。500mAを超える電流は許容されない。その場合、600Vの最大電圧がYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-で発生することになるからである。これを超えると充電プロセスを中止しなければならない。
【0167】
したがって保護回路9を有する保護装置8により、要求される最大の電流・時間長を順守することができるかどうかを計算することができる。この条件が満たされていないとき、充電プロセスを即座に中止しなければならない。それ以上の過誤は人身の危険につながることになるからである。この計算のための入力量は、両方の高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-での電圧測定、回路独自の反応速度に関する知見、及び最大限許容される電流・持続時間の数値表である。
【0168】
保護回路9は、高圧電位HV+,HV-との非常に急速に相次いで進行する複数の接触の場合に、そのたびに身体電流への等価の導出経路となり得るので、ここで説明している保護装置8は、特にその保護回路9は、自律的に接続をすることができ、すなわち第1及び/又は第2の保護スイッチSS1,SS2を閉じることができ、この接続された状態での短い持続時間の後にそれぞれの閉じた保護スイッチSS1,SS2を再び開くことができるように、構想されることが提供されるのが好ましい。その場合、充電接触器LS+,LS-及び/又は主接触器HS+,HS-の、開放や、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の放電など、どのような方策を実施するかについて、上位の制御装置と車両2の内部で通信することが省略されるという利点がある。たとえば高圧ケーブルの不具合のある保護カバーはなく、恒常的に生じている絶縁不良の、すなわち低い絶縁抵抗の、認識は、別途の器具によって、たとえば絶縁モニタによって、及び/又は高圧電位分布の測定によって、認識されるのが好ましく、このような器具は、ここで説明している保護装置8及びその保護回路9の構成要素ではなく、これとの関連性もない。前述したように、ここで説明している保護装置8及びその保護回路9は、非常に短い間隔で反復して、かつそれに伴って迅速に繰り返される人による接触のもとでも、トリガーすることができ、したがって人の保護を保証することができる。たとえばEMC干渉に基づく誤ったトリガーが、たとえば高圧システムの誤った停止などの、車両2でのさらなる方策につながることがない。保護装置8の、特にその保護回路9の、自律的な機能により、既存の高圧システムへのフレキシブルで簡易な統合を具体化可能である。更に、自律的な機能により、保護装置8及びその保護回路9に関わる安全性要求が低くなり、たとえばヒューズ付きの機能/他の制御装置への通信が不要となる。
【0169】
特に車両2の走行動作のための、交流充電動作のための、並びに組立・整備作業のための、直流充電ステーション5なしでの直流網1の場合にも、保護装置8を適用可能である。直流充電の場合との唯一の相違は、直流充電ステーション5がないことである。故障メカニズムとして、たとえば事故の結果として高圧ケーブルの不具合や、高圧エレクトロニクスのハウジングの不具合などが考慮の対象となる。組立や整備のときに高圧システムが損傷した場合にも、保護回路9を有する保護装置8が充電量を低減させることができる。
【0170】
絶縁不良IFに起因するYショックを低減させるための保護回路9は、上で説明したものと同一のままである。そのためには、保護回路9を有する保護装置8が当然ながら車両2に配置される。機能は、上で説明した直流充電中の絶縁での不具合についてと同一である。高圧電位HV+,HV-のうちの1つと基準電位Mの間の電圧の低下が認識されると、それぞれの保護コンデンサCs,Cs1,Cs2が追加してつながれ、該当する高圧電位HV+,HV-のYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の全体キャパシタンスが放電される。たとえば更に高圧バッテリ6の主接触器HS+,HS-の開放を指示し、車両2のXコンデンサCx及び両方のYコンデンサCyF+,CyF-の能動的な放電を開始することができる。充電接触器LS+,LS-はすでにそれ以前に開いており、開いたままに保たれる。
【0171】
図6は、コンポーネント最適化された保護回路9を示している。Cyショックを低減するための保護回路9では、1つの高圧電位HV+,HV-だけが身体抵抗R
Kを介して基準電位Mと、たとえばフレームグラウンドと、接続されることが前提となる。両方の高圧電位HV+,HV-が基準電位Mと、特にフレームグラウンドと、接続されると、このことは、高圧バッテリ6又は直流充電ステーション5の短絡と同じであり、このような短絡は、ヒューズ又は電流センサ及びこれらにより制御される遮断装置によって分離されなければならない。
【0172】
このことから、Cyショックを低減するための保護回路9を正電位HV+と負電位HV-について同時に適用することは決してできないことが明らかである。したがって
図6に示すように、単一の保護コンデンサCs、放電抵抗Re、保護抵抗Rs、急速放電抵抗Rse、及び急速放電スイッチSeを、両方の高圧電位HV+,HV-の保安のために適用することができる。すなわち、2つの保護回路9.1,9.2が必要なわけではない。保護回路9の接続のための両方の電圧保護装置SV1,SV2による電圧測定、及び両方の保護スイッチSS1,SS2は、引き続き存続させなければならない。
図6は、そのようなコンポーネント最適化を示している。このことが有意義なのは、たとえば車両2と直流充電ステーション5での高い動作電圧やYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の大きいキャパシタンスに基づき、放電抵抗Reも同じく比較的高いコンポーネント値をとらなければならない場合である。
【0173】
図6は、このようなコンポーネント最適化された保護回路9を有する、すなわち両方の保護回路部分9.1,9.2を有するのでない、保護装置8全体の実施形態を示している。ここでは保護装置8は、特にその保護回路9は、車両2又は直流充電ステーション5に統合されるべき必要な追加コストだけに縮減されている。正電位HV+、負電位HV-、及び基準電位Mへの接続部AHV+,AHV-,AMを非常に小型に抑えることができる。故障発生時にミリセカンド単位の電流が流れるだけだからである。それ以外では接続部AHV+,AHV-,AMは無電流であり、電圧測定の役目だけを果たす。その帰結として、既存の高圧システムへの、保護回路9を有する保護装置8の迅速な統合が少ない改変で可能である。計画時間が十分ある場合には、当然ながら、この機能も既存の機器に統合することができる。
【0174】
すなわち保護回路9は、
図6に示すように、正電位線HV+Lと基準電位MLの間の、電気保護コンデンサCs、電気保護抵抗Rs、及び第1の保護スイッチSS1の電気直列回路と、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、電気保護コンデンサCs、電気保護抵抗Rs、及び第2の保護スイッチSS2の電気直列回路とを含み、保護コンデンサCsと保護抵抗Rsに対して電気放電抵抗Reが電気的に並列につながれ、保護コンデンサCsに対して、又は保護コンデンサCsと保護抵抗Rsに対して、電気急速放電抵抗Rseと急速放電スイッチSeからなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。
【0175】
保護装置8を作動させる方法では、トリガー基準が成立したときに第1の保護スイッチSS1又は第2の保護スイッチSS2が閉じられ、保護コンデンサCsの充電後に再び開かれ、次いで急速放電スイッチSeが閉じられ、保護コンデンサCsの放電後に再び開かれる。
【0176】
代替的な実施形態では、保護回路9は、
図5に示すように、2つの回路部分9.1,9.2を含む。第1の保護回路部分9.1は、正電位線HV+Lと基準電位MLの間の、第1の電気保護コンデンサCs1、第1の電気保護抵抗Rs1、及び第1の保護スイッチSS1の電気直列回路を含み、第1の電気保護コンデンサCs1と第1の電気保護抵抗Rs1に対して第1の電気放電抵抗Re1が電気的に並列につながれ、第1の電気保護コンデンサCs1に対して、又は第1の保護コンデンサCs1と第1の電気保護抵抗Rs1に対して、第1の電気急速放電抵抗Rse1と第1の急速放電スイッチSe1からなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。第2の保護回路部分9.2は、負電位線HV-Lと基準電位MLの間の、第2の電気保護コンデンサCs2、第2の電気保護抵抗Rs2、及び第2の保護スイッチSS2の電気直列回路を含み、第2の電気保護コンデンサCs2と第2の電気保護抵抗Rs2に対して第2の電気放電抵抗Re2が電気的に並列につながれ、第2の電気保護コンデンサCs2に対して、又は第2の保護コンデンサCs2と第2の電気保護抵抗Rs2に対して、第2の電気急速放電抵抗Rse2と第2の急速放電スイッチSe2からなる電気直列回路が電気的に並列につながれる。
【0177】
その場合、保護装置8を作動させる方法では相応に、トリガー基準が成立したときに第1の保護スイッチSS1が閉じられ、第1の保護コンデンサCs1の充電後に再び開かれ、次いで第1の急速放電スイッチSe1が閉じられ、保護コンデンサCs1の放電後に再び開かれ、及び/又はトリガー基準が成立したときに第2の保護スイッチSS2が閉じられ、第2の保護コンデンサCs2の充電後に再び開かれ、次いで第2の急速放電スイッチSe2が閉じられ、保護コンデンサCs2の放電後に再び開かれる。
【0178】
以下において、保護装置8の好ましい利用可能性について説明する。800Vレベルの高圧システムを有する車両2では、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-による放電の、規格で要求される限界値を順守するのが難しい。このことは特に、車両2の設計スペースがすでに埋まっているために、大型の追加コンポーネントに合わせた高圧システムでの適合化が可能でない、既存の車両2について当てはまる。その場合、簡易に、低コストに、かつ少ない所要スペースで、車両2に設置することができる、上述した解決法が適している。
【0179】
更に、上述した解決法によって特に規格の規定が充足され、それにより、車両2の認可が容易になり、又は初めて可能となる。このような保護装置8及びその保護回路9により、エレクトロニクスを付け加えることなく限界値が実現され、高圧システムやそのコンポーネントに何らかの改変を加える必要がない。
【0180】
LV123で要求されている0.2Jの最大エネルギー含有量は、すでに632Vのもとで直流充電ステーション5により超過される。「代替的測定値」すなわち代替的な方策が、必然的に必要となる。唯一の解決法として、倍増された絶縁が目下のところ検討されている。その場合、接続されているすべてのシステムが、すなわち車両2と直流充電ステーション5が、強化された絶縁を同時に有していなければならず、このことは現在では確保することができない。しかし保護装置8とその保護回路9は、人間の身体MKを通って流れるエネルギーを、同じように0.2Jを下回る値に抑えることができる。したがって、「代替的測定値」に対する更に別の解決法となる。
【0181】
保護装置8とその保護回路9は、直流充電中に絶縁が損傷したとき、たとえば充電プラグや充電ケーブル4が損傷したとき、人間が接触したときのYコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-の危険な放電電流を低減することを可能にする。他のどのような車両状態のときでも、同じく絶縁が損傷しているときに、人間が接触したときの危険な放電電流が低減される。
【0182】
改善されたEMC干渉抑制が、YコンデンサCyF+,CyF-,CyL+,CyL-のいっそう大型の構成によって可能となる。高圧システム全体の倍増された絶縁という要求を不要にすることが可能となる。このことは車両2にも直流充電ステーション5にも当てはまる。
【0183】
保護回路9を有する保護装置8は、車両2及び/又は直流充電ステーション5に配置することができる。
【符号の説明】
【0184】
1 直流網
2 車両
3 高圧車載電気システム
4 充電ケーブル
5 直流充電ステーション
6 高圧バッテリ
7 バッテリエネルギー源
8 保護装置
9 保護回路
9.1,9.2 保護回路部分
12 電圧評価ユニット
13 充電ステーション電圧源
AHV+,AHV-,AM 接続部
AK+,AK- 接続接点
Cs,Cs1,Cs2 保護コンデンサ
Cx Xコンデンサ
CyF+,CyF- Yコンデンサ 車両
CyL+,CyL- Yコンデンサ 直流充電ステーション
HS+,HS- 主接触器
HV+,HV- 高圧電位
HV+L,HV-L 高圧電位線
IF 絶縁不良
LS+,LS- 充電接触器
M 基準電位
ML 基準電位線
MK 人間の身体
RBatt バッテリ内部抵抗
R,R1,R2 抵抗
Re,Re1,Re2 放電抵抗
RK 身体抵抗
RLS 充電ステーション内部抵抗
Rs,Rs1,Rs2 保護抵抗
Rse,Rse1,Rse2 急速放電抵抗
Se,Se1,Se2 急速放電スイッチ
SS1,SS2 保護スイッチ
SV1,SV2 電圧測定装置
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気直流網(1)のための保護装置(8)であって、
正電位線(HV+L)と基準電位線(ML)の間の電圧を測定するための、前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間の第1の電圧測定装置(SV1)と、
負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の電圧を測定するための、前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の第2の電圧測定装置(SV2)と、
前記電気直流網(1)のYコンデンサに起因する電気ショックを低減するための保護回路(9)と、を有し、
前記保護回路(9)は、前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間の第1の保護スイッチ(SS1)と、前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間の第2の保護スイッチ(SS2)とを含み、
複数のトリガー基準が設定され、
前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)は、前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ閉じるように作動可能である、前記保護装置(8)において、
前記トリガー基準は、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で現在生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する電圧差異と、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、電圧変化と、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、逆の符号と、
他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在と、
を含むものであり、
前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)は、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で現在生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、時間的にそれ以前に判定された電圧値に対する前記電圧差異が設定された限界値を上回っており、かつ、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、前記電圧変化が設定された限界値を上回っており、かつ、
前記正電位線(HV+L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、及び前記負電位線(HV-L)と前記基準電位線(ML)の間で生じている電圧の、前記逆の符号が存在し、かつ、
前記他のトリガー基準の周期的な繰り返しの非存在も判定された、
ときにのみ作動可能であることを特徴とする、前記保護装置(8)。
【請求項2】
前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された電圧のアナログ式及び/又はデジタル式の評価が提供されることを特徴とする、請求項1に記載の保護装置(8)。
【請求項3】
前記第1の電圧測定装置(SV1)により判定された電圧及び前記第2の電圧測定装置(SV2)により判定された電圧を評価するために、及び、前記第1の電圧測定装置(SV1)によって及び/又は前記第2の電圧測定装置(SV2)によって判定された、すべての設定されたトリガー基準が成立したときにのみ前記第1の保護スイッチ(SS1)及び/又は前記第2の保護スイッチ(SS2)を作動させるために、前記電圧測定装置(SV1,SV2)及び前記保護回路(SS1,SS2)と接続された共通の電圧評価ユニット(12)が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の保護装置(8)。
【請求項4】
それぞれの前記保護スイッチ(SS1,SS2)は半導体スイッチとして構成されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の保護装置(8)。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の保護装置(8)を含む、車両(2)のための車載電気システム(3)、特に高圧車載電気システム(3)。
【請求項6】
請求項5に記載の車載電気システム(3)を含む車両(2)、特に電気車両又はハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の保護装置(8)を含む直流充電ステーション(5)、特に高圧直流充電ステーション。
【国際調査報告】