(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ガドリニウム系化合物、これを含むMRI造影剤
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20240711BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240711BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
A61K49/10
A61K9/08
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61K31/555
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504187
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2022010745
(87)【国際公開番号】W WO2023003413
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095823
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089938
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524029714
【氏名又は名称】テーランオキュア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ポ キョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB13
4C076CC01
4C076FF11
4C076FF68
4C085HH01
4C085HH07
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA28
4C085KB12
4C085KB56
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC58
4C086HA05
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC78
(57)【要約】
ガドリニウム系化合物、これを含むMRI造影剤が開示される。前記ガドリニウム系化合物は、バニリン酸が結合されたDO3A系ガドリニウム化合物であってもよい。前記MRI造影剤は、前記化合物を含んでもよい。一方、本発明は、前記化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)を有する、化合物:
【化1】
式(1)において、
Lは、*-(CH
2)
x-A
1-(CH
2)
y-A
2-(CH
2)
z-*であり、
x,yおよびzは、0~5のいずれの整数にそれぞれ独立的に選択され、
A
1およびA
2は、単一結合、*-COO-*、*-CO-*、*-NH-*、*-CH
2-*、*-CONH-*および*-O-*を含む群からそれぞれ独立的に選択された一つ以上の構造であり、
Xは、下記化学式(2)を有する構造であり:
【化2】
*は、結合部位である。
【請求項2】
前記A
2は、*-NH-*である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記A
1は、*-CONH-*である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記xは、1であり、
前記yは、2であり、
前記zは、0である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
下記化学式(3)を有する、化合物。
【化3】
【請求項6】
前記ガドリニウム(Gd)が1つ以上の水分子と配位する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、哺乳動物のアミロイドβ重合体(oligomeric Aβ)に特異的に結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、3.7~4.6s
-1の緩和度(relaxivity)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、静脈注射によって注入される場合、血液脳関門(Blood-Brain-Barrier;BBB)を通過する、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項による化合物を含む、MRI造影剤。
【請求項11】
前記MRI造影剤は、退行性脳疾患の診断に用いられる、請求項10に記載のMRI造影剤。
【請求項12】
前記MRI造影剤は、アルツハイマー(Alzheimer)病の診断に用いられる、請求項11に記載のMRI造影剤。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項による化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項14】
前記神経炎症性疾患は、炎症性神経退行性脳疾患で、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記炎症性神経退行性脳疾患は、アルツハイマー(Alzheimer)病またはパーキンソン病から選択された疾患である、請求項14に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガドリニウム系化合物、これを含むMRI造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、人口の高齢化によって退行性脳疾患患者が増加しており、これによって、該疾病に対する早期発見の必要性が台頭されている。退行性脳疾患としては、パーキンソン病、血管性痴ほう、アルツハイマー病などがあり、該疾患の発生原因の一つとして、アミロイドβ重合体(oligomeric Aβ)の過剰蓄積による神経毒性が考慮されている。
【0003】
アミロイドβ(Aβ)は、アルツハイマー患者の脳で発見されるアミロイドプラークの主成分で、アルツハイマー病に決定的に関与する36~43個のアミノ酸ペプチドを意味する。前記ペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から誘導される。
【0004】
前記アミロイドβ分子は凝集されて多数の形態で存在し得る可溶性重合体を形成することができる。形成されたアミロイドβ重合体(oligomeric Aβ)は、神経細胞に毒性があって、脳に過剰に蓄積されながらアルツハイマー病の発病に直接関与することと知られている。よって、アミロイドβ重合体の濃度変化を感知することは、退行性脳疾患の早期診断ができることと予想した。
【0005】
一方、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Image、以下、MRI)は、体内組職間水素原子の分布が異なり、磁場の中で水素原子が弛緩される現象を利用して、体の解剖学的、生理学的、生化学的情報映像を得る方法である。MRIは、CTやPETとは違って、人体に有害な放射線を使用せず、強い磁場下で磁場の勾配および無線周波を利用して、体の内部のイメージを生成するので、非侵襲的であり、解像度が高く、軟部組職検査に優れている。
【0006】
このようなMRI装備をさらに精密に活用するために、造影剤(contrast agent)を対象に注入してMRI画像を得る。MRIイメージ上での組職間のコントラスト(contrast)は、組職内の水分子核スピンが平衡状態に戻る弛緩(relaxation)作用が組職別に異なることから発生する現象である。造影剤は常磁性または超常磁性を有する物質を利用して、前記弛緩作用に影響を及ぼして、組職間の弛緩度差を広げてMRI信号の変化を誘発して、組職間のコントラストをより明確にする役割をする。
【0007】
現在、臨床的に最も一般的に用いられている造影剤は、ガドリニウム(Gd)キレートに基づいた造影剤である。現在は、DTPA(Magnevist(登録商標))、Gd-DOTA(Dotaram(登録商標))、Gd(DTPA-BMA)(Omniscan(登録商標))、Gd(DO3A-HP)(ProHance(登録商標))、Gd(BOPTA)(MultiHance(登録商標))などが用いられている。しかしながら、常用化されている造影剤の大部分が細胞外空間(extracellular fluide、ECF)に分布される非特異的造影剤である。特異的造影剤としては、特別に肝臓特異的造影剤が使用されているだけである。
【0008】
最近の研究は、特定標的性を有するか、生理的活性(pH変化、酵素活性)によって信号増強を示すことができる造影剤の開発が推進されているが、今までは、特定標的性を有するMRI造影剤、特に、退行性脳疾患に対する特異的MRI造影剤に対して十分な結果が得られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一目的は、アミロイドβ重合体に特異的に結合する化合物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記化合物を含むMRI造影剤を提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記化合物を含む神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一側面において、本発明は下記化学式(1)を有する、化合物を提供する。
【化1】
【0013】
式において、
Lは、*-(CH
2)
x-A
1-(CH
2)
y-A
2-(CH
2)
z-*であり、
x,yおよびzは、0~5のいずれの整数にそれぞれ独立的に選択され、
A
1およびA
2は、単一結合、*-COO-*、*-CO-*、*-NH-*、*-CH
2-*、*-CONH-*および*-O-*を含む群からそれぞれ独立的に選択された一つ以上の構造であり、
Xは、下記化学式(2)を有する構造であり:
【化2】
*は、結合部位である。
【0014】
一実施例において、前記A
2は、*-NH-*であってもよい。
一実施例において、前記A
1は、*-CONH-*であってもよい。
一実施例において、前記xは、1であってもよい。
一実施例において、前記yは、2であってもよい。
一実施例において、前記zは、0であってもよい。
一実施例において、前記化合物は、下記化学式(3)を有してもよい。
【化3】
【0015】
一実施例において、前記ガドリニウム(Gd)が一つ以上の水分子と配位してもよい。
一実施例において、前記化合物は、哺乳動物のアミロイドβ重合体(oligomeric Aβ)に特異的に結合してもよい。
一実施例において、前記化合物は、3.7~4.6s-1の緩和度(relaxivity)を有してもよい。
一実施例において、前記化合物は、静脈注射を介して注入される場合、血液脳関門(Blood-Brain-Barrier;BBB)を通過することができる。
【0016】
他の側面において、本発明は、前記化合物を含むMRI造影剤を提供する。
一実施例において、前記MRI造影剤は、退行性脳疾患の診断に用いられることができる。
一実施例において、前記MRI造影剤は、アルツハイマー(Alzheimer)病の診断に用いられることができる。
【0017】
また他の側面において、本発明は、前記化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
一実施例において、前記神経炎症性疾患は、炎症性神経退行性脳疾患であってもよい。
一実施例において、前記炎症性神経退行性脳疾患は、アルツハイマー(Alzheimer)病またはパーキンソン病から選択された疾患であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施例による化合物は、アミロイドβ重合体に特異的に結合することができ、これにより、前記化合物を含むMRI造影剤は、アルツハイマーを含む退行性脳疾患の診断に用いられることができる。
【0019】
一方、本発明の実施例による化合物は、神経炎症発生と関連する因子であるNLRP3、ASC、iL-1βなどを減少させ、アミロイドβ発現と関連するAβおよびBace-1を減少させて、アミロイドβ形成を抑制する抗炎症機能によって、神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物の有効成分として用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図2】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図3】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図4】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図5】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図6】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図7】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図8】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【
図9】本発明の実験例による実験結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。本発明は多様に変化してもよく、様々な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し本文に詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むことに理解されるべきである。各図面を説明するに当たり、類似する構成要素には類似する参照符号を付している。添付の図面における構造物の寸法は、本発明を明確にするために拡大して示している。
【0022】
本出願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いられたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに相違する意味を持たない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを示すものであって、1つもしくはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないことに理解されるべきである。
【0023】
特に定義しない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使われるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解析されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解析されない。
【0024】
本発明の実施例による化合物は、下記化学式(1)を有することができる。
【化4】
【0025】
前記化学式(1)において、ガドリニウムイオン(Gd3+)は、前記化学式(1)のカルボキシレート(carboxylate;COO-)基と配位して、錯体を形成することができる。
【0026】
前記化学式(1)において、Lは、*-(CH2)x-A1-(CH2)y-A2-(CH2)z-*であってもよく、x,yおよびzは、0~5のいずれの整数にそれぞれ独立的に選択されてもよく、A1およびA2は、単一結合、*-COO-*、*-CO-*、*-NH-*、*-CH2-*、*-CONH-*および*-O-*を含む群からそれぞれ独立的に選択された一つ以上の構造であってもよい。*は、結合部位である。
【0027】
前記Lは、前記化合物の環状構造内の窒素と前記Xを連結するリンカー(linker)であってもよい。前記A1およびA2は、前記リンカーが前記化合物の環状構造内の窒素と前記Xを連結する方法またはその方法によって決まる官能基を決めることができる。前記x,yおよびzは、前記リンカー内の前記A1およびA2を連結する鎖の長さを決めることができる。一実施例において、前記A2は、*-NH-*一であってもよい。一実施例において、前記A1は、*-CONH-*であってもよい。一実施例において、前記xは、1であってもよい。一実施例において、前記yは2であってもよい。一実施例において、前記zは0であってもよい。
【0028】
本発明の実施例による化合物は、実質的に前記化学式(1)の構造を有する限り、当業者に許容可能な結合または結合の除去を本発明の範囲で排除しない。一例として、一実施例において、前記化合物で前記ガドリニウム(Gd)が一つ以上の水分子と配位することができる。
【0029】
前記化学式(1)において、Xは下記化学式(2)を有する構造であってもよい。
【化5】
*は結合部位である。
【0030】
一実施例において、前記化合物は下記化学式(3)を有してもよい。
【化6】
【0031】
一実施例において、前記化合物は、哺乳動物のアミロイドβ重合体(oligomeric Aβ)に特異的に結合することができる。一実施例において、前記化合物は、3.7~4.6s-1の緩和度(relaxivity)を有してもよい。一実施例において、前記化合物は、静脈注射を介して注入される場合、血液脳関門(Blood-Brain-Barrier;BBB)を通過することができる。
【0032】
以上で説明したように、本発明の実施例による化合物は、アミロイドβ重合体に特異的に結合することができる。
【0033】
本発明の一実施例によるMRI造影剤は、前記化合物を含んでもよい。一実施例において、前記MRI造影剤は、退行性脳疾患の診断に用いられることができる。一実施例において、前記MRI造影剤はアルツハイマー(Alzheimer)病の診断に用いられることができる。
【0034】
以上で説明したように、本発明の実施例によるMRI造影剤は、アルツハイマーを含む退行性脳疾患の診断に用いられることができる。
【0035】
本発明の一実施例による神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、前記化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含んでもよい。一実施例において、前記神経炎症性疾患は、炎症性神経退行性脳疾患であってもよい。一実施例において、前記炎症性神経退行性脳疾患は、アルツハイマー(Alzheimer)病またはパーキンソン病から選択された疾患であってもよい。
【0036】
一実施例において、前記「薬学的に許容可能な塩」は、前記化合物と付加塩を形成するものであれば限定されず、薬学的に許容可能な無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。本発明に係る前記化合物は、通常の方法によってその塩に転換されることができ、塩の製造は別途の説明がなくても化合物の構造に基づいて当業者によって容易に実行され得る。
【0037】
本発明の薬学的組成物は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を単独で含んでもよいが、それに加えて薬学的に許容可能な担体を追加的にさらに含んでもよい。前記薬学的に許容可能な担体は、薬剤学分野で通常的に用いられるものであってもよく、賦形剤(例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、セルロースなど)または希釈剤(例えば、生理食塩水、精製水など)であってもよい。
【0038】
本発明において、用語「予防」は、神経炎症性疾患または疾病を保有していると診断されたことがないが、このような疾患または疾病にかかりやすいきらいがある個体で、疾患または疾病の発生を抑制することを意味する。また、本発明において、用語「治療」とは、神経炎症性疾患または疾病の発展の抑制、疾患または疾病の軽減、および疾患または疾病の除去を意味する。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、公知の方法によって多様な非経口または経口投与用形態に製造されてもよい。
【0040】
以下、本発明の実施例について叙述する。ただ、以下に記載された実施例は、本発明の一部実施形態に過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるのではない。
【0041】
<Gd-DO3A-Vaの合成>
【化7】
物質1から最終物質5までを段階的に合成して、Gd-DO3A-Va化合物を製造した。
【0042】
<1>トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-エトキシ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(tri-tert-butyl 2,2’,2’’-(10-(2-ethoxy-2-oxoethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-triyl)triacetate)、1の合成
160mLのアセトニトリルにトリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(tri-tert-butyl 2,2’,2’’-(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-triyl)triacetate)(9.72mmol)を溶かした後、炭酸水素カリウム(29.69mmol)を添加して30分間撹拌した。その後、ブロモ酢酸エチル(10.69mmol)を添加して、60℃で24時間撹拌した。24時間後に生成物をフィルタで濾過し、減圧濾過して、溶媒を取り除いた。生成物をジクロロメタンに溶かした後、溶けていない物質を取り除き、溶媒を全部取り除いた後、真空乾燥してやや黄色固体を得た。収率:99%
【0043】
<2>トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-オキソ-2-((2-(3,4,5-トリヒドロキシベンズアミド)エチル)アミノ)エチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(tri-tert-butyl 2,2’,2’’-(10-(2-oxo-2-((2-(3,4,5-trihydroxybenzamido)ethyl)amino)ethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-triyl)triacetate)、2の合成
7mLのメタノールに1(5.33mmol)を溶かした後、6mLのエチレンジアミンを添加し、常温で4日間反応した。真空下で55℃に加熱して、溶媒を取り除き、オイルのような状態の固体を得て、エチルエーテルで数回洗浄した。真空乾燥させた後、メタノールに溶かし、溶けていな物質を濾過して取り除いた後、ジクロロメタン/メタノール混合溶媒条件でオープンカラムクロマトグラフィーを行って、やや黄色固体を分離精製した。収率:57%
【0044】
<3>トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-((2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド)エチル)アミノ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(tri-tert-butyl 2,2’,2’’-(10-(2-((2-(4-hydroxy-3-methoxybenzamido)ethyl)amino)-2-oxoethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-triyl)triacetate)、3の合成
バニリン酸(6.97mmol)をジメチルホルムアミドに溶かし、0℃で撹拌した。その後、ジメチルホルムアミドに溶かしたEDC・HCl(7.67mmol)とHOBt hydrate(7.67mmol)を没食子酸溶液に添加して、30分間撹拌した。次に、ジメチルホルムアミドに溶かした2(4.88mmol)を反応物に入れ、DIPEA(13.94mmol)を添加して、常温で24時間撹拌した。その後、減圧濾過して、ジメチルホルムアミドを最大限に濃縮させた後、ジクロロメタンとブライン(brine)を利用して抽出し、硫酸ナトリウムで脱水して減圧濾過した。その後、ジクロロメタン/メタノール混合溶媒条件でオープンカラムクロマトグラフィーを行って、固体を分離した。追加の分離精製なしに次の反応を実行した。
【0045】
<4>2,2’,2’’-(10-(2-((2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド)エチル)アミノ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)トリアセテート(2,2’,2’’-(10-(2-((2-(4-hydroxy-3-methoxybenzamido)ethyl)amino)-2-oxoethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7-triyl)triacetic acid)、4の合成
0℃で3にトリフルオロ酢酸を過量で添加した後、反応物を常温で20時間撹拌した。その後、ジクロロメタンを添加して減圧濾過を繰り返した。次に、0.1%トリフルオロ酢酸が添加された水/アセトニトリル混合溶媒条件で高性能液体クロマトグラフィーをして精製された固体を得た。収率(2→4):44%
【0046】
<5>Gd-DO3A-Va、5の合成
4(0.84mmol)を水に溶かした後、1M水酸化ナトリウムでpHを3に調節し、水に溶かしたGdCl3・6H2O(0.59mmol)を添加した。その後、1M水酸化ナトリウムでpHを7に調節した後、常温で20時間撹拌した。減圧濾過して得た固体を10mM酢酸アンモニウムが添加された水/アセトニトリル混合溶媒条件で高性能液体クロマトグラフィーを用いて分離精製して固体を得た。収率:73%
【0047】
<Gd-DO3A-VaのHR-MSおよび純度分析結果>
Gd-DO3A-VaをHR-MSによって分析した。
図1は、その結果を示した図面である。
図1を参照すると、Gd-DO3A-Vaに対して予測されたピーク(752.1890m/z)に対応するピーク(752.1894m/z)が現われることを確認することができる。
また、HPLCを利用してGd-DO3A-Vaの純度を分析した結果を
図2に示した。
図2を参照すると、Gd-DO3A-Vaは、約98%の純度を有することを確認することができる。
【0048】
<Gd-DO3A-Va性能評価方法および結果>
1)緩和度(Relaxivity)測定
合成したGd-DO3A-Vaと環状常用造影剤であるGadovist(登録商標)、Dotarem(登録商標)を比較群として、各物質の緩和度(r
1、r
2)を測定した。具体的には、3次蒸溜水にガドリニウム複合体を5種類の濃度(0.0625、0.125、0.25、0.5、1mM)に希釈してファントムを製作した後、3T MRIでT
1、T
2緩和度(Relaxation time)を測定した。これによって、各濃度のR(Relaxation rate=1/T)を計算し、線型回帰分析(
図3参照)を通じてガドリニウム複合体の緩和度(r
1、r
2)結果を得て、下記表1に示した。
【0049】
【0050】
前記表1を参照すると、Gd-DO3A-Vaのr1は、3.8±0.1、r2は4.4±0.2値を有することが分かり、これは臨床で活用するのに十分な緩和度値であるので、Gd-DO3A-Vaを造影剤として活用することができることを確認した。
【0051】
2)速度論的安定性(Kinetic stability)評価
Gd-DO3A-Vaと各種の常用造影剤を2.5mM濃度にPBS(pH7.4)に希釈してファントムを製作した後、250mM塩化亜鉛(ZnCl
2)を1当量添加して、DO3Aリガンド(ligand)とGd金属イオンの結合安定性を評価した。これは亜鉛イオンによるガドリニウムイオンの金属交換反応(Transmetallation)を緩和度変化で測定して確認することができる。
その結果を示した
図4を参照すると、本発明のGd-DO3A-Vaは、R
2変化率が1に近い値を保持するので、MRI造影剤として活用するのに十分な安定性を有することを確認することができる。
【0052】
3)pH安定性評価
1mM Gd-DO3A-Vaおよび比較群として常用造影剤であるGadovist(登録商標)をpH1、3、5、7、9、11のバッファー溶液に希釈した後、3週間の間、3TMRIで、T
2強調映像を撮影して、R
2値を測定する。時間によるR
2値を測定して、希釈直後に対する数値変化を確認することができ、その値が一定に保持されるほど、pHに対する安定性が高いことに評価することができる。
その結果を示した
図5を参照すると、本発明のGd-DO3A-Vaは、pH3~11の範囲で、3週の間R
2値の変化がなかった。pH1の強い酸条件でその値が若干変化したが、その変化が大きくなかった。この結果により、Gd-DO3A-Vaが体内pH条件で安定しており、強い酸塩基条件でも安定していることを確認した。
【0053】
4)アミロイドβ重合体標的性評価
4-1)アミロイドβ重合体標的性の確認のためのファントム実験方法
<1>1mgの1mM濃度のアミロイドβに221.5uLのHFIPを入れた後、シェーカーを用いて常温で1時間シェーキングして、Preaggregationを取り除いた。
<2>Preaggregationを取り除いたアミロイドβを乾燥し、221.5uLのDMSOを入れて1mM濃度に作った後、ミキサーと超音波機で懸濁液が形成されるようにし、その後、878.5uLのPBS(1X、pH7.4)を入れて、0.2mM濃度に作る。
<3>シェーカーを用いて、37℃で4日間培養した後、重合が完了されたアミロイドβ重合体を200uLずつ分注し、PBSに2mM濃度に溶かしたGd-DO3A-Vaと常用造影剤(Gadovist)を20uLずつ添加し、その後、シェーカーを用いて、37℃で24時間培養した。
<4>24時間後に遠心分離して上層液を取り除いた後、PBSでアミロイドβ重合体を洗浄し、その後、ペレット(Pellet)にPBS:DMSO=9:1溶液を200uL入れて、MRIファントム試料を製作した。対照群としては、アミロイドβ重合体のみを培養したファントム試料を使用した。
【0054】
4-2)アミロイドβ重合体標的効果分析結果
前記ファントム試料を使用して、本発明の実施例によるGd-DO3A-Vaおよび常用造影剤(Gadovist(登録商標))のアミロイドβ重合体標的性評価を9.4T MR装備で行った。
その結果を示した
図6を参照すると、アミロイドβ重合体のみを培養したファントム(Aβ)とGadovist(登録商標)を一緒に培養したファントム(Aβ+Gadovist)は、造影増強効果の差がほとんどなかったが、Gd-DO3A-Vaと一緒に処理したファントム((Aβ+Gd-DO3A-Va)は、アミロイドβ重合体のみ培養したファントムに比べて増加した信号強度を見せた。これによって、本発明のガドリニウム造影剤がアミロイドβ重合体を標的効果を有することを確認した。
過剰発現されたアミロイドβ重合体は、神経細胞に蓄積されて毒性を誘発し、神経細胞を破壊して、退行性脳疾患であるアルツハイマー病を引き起こす。本発明の実施例によるGd-DO3A-Vaは、毒性タンパク質であるアミロイドβ重合体を標的する機能を有するので、アルツハイマー病を診断する製剤として活用されることができる。
【0055】
5)イン・ビトロ(in vitro)毒性評価
C8-D1A(Astrocyte cells)とSIM-A9(Microglial cells)に対する細胞毒性を評価する実験をそれぞれ行い、その結果を
図7、8に示した。
図7を参照すると、Gd-DO3A-Vaを各種濃度(0、100、200、400μM)で処理した時、400μMの高濃度まで約100%の細胞生存率(Cell viability)を見せた。
SIM-A9(Microglial cells)に対する細胞毒性評価も
図8に示したように、Gd-DO3A-Vaを各種濃度(0、100、200、400μM)で処理した時、400μMの高濃度まで約100%の細胞生存率を見せた。
【0056】
脳細胞の2つの主な類型は、ニューロン(neuron)と神経膠細胞(neuroglia;glica cells)である。神経膠細胞(glia cells)にはアストロサイト(astrocyte)とミクログリア(microglia)が含まれ、このような神経膠細胞(glia cells)は、ニューロンを支援し、栄養素を提供するなどの機能をすることと知られている。Gd-DO3A-Vaは、アストロサイト(astrocyte)、ミクログリア(microglia)のような脳細胞で、400μMの高濃度まで細胞毒性がないことに確認された。
【0057】
6)イン・ビボ(in vivo)効能評価
痴ほうマウスモデルである5XFAD(6ヶ月、雄)に、Gd-DO3A-Vaを2ヶ月間15回繰り返し投与した。対照群(control)は、同一週齢のマウスに食塩水(saline)を投与したグループであり、WBは未処理(non-treatment)6ヶ月マウスグループである。実験が終わったマウスの脳を摘出して、海馬(Hippocampus)と皮質(Cortex)を分離した後、ウェスタンブロット(western blot)によって分析した。
その結果を示した
図9を参照すると、WBに比べて、対照群(control)グループで、NLRP3、ASC、iL-1βなどの炎症発生に関する因子が増加することを確認した。一方、Gd-DO3A-Va投与グループで、該因子とアミロイドβ発現に関するAβおよびBace-1が全部減少する結果を得た。この実験により、Gd-DO3A-Vaは、炎症性因子を減少させ、アミロイドβ 形成を抑制して、アルツハイマー病を治療することを確認することができる。
【0058】
上記では本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野において熟練された当業者は、添付の特許請求範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることを理解すべきである。
【国際調査報告】