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特表2024-526985生分解性樹脂組成物、並びにそれぞれ生分解性樹脂組成物を使用した生分解性フィルム及び生分解性マルチングフィルム
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  • 特表-生分解性樹脂組成物、並びにそれぞれ生分解性樹脂組成物を使用した生分解性フィルム及び生分解性マルチングフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】生分解性樹脂組成物、並びにそれぞれ生分解性樹脂組成物を使用した生分解性フィルム及び生分解性マルチングフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20240711BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08H 8/00 20100101ALI20240711BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L101/00
C08L97/00
C08L1/00
C08L67/00
C08H8/00
C08J5/18 CFD
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504210
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2022011029
(87)【国際公開番号】W WO2023008903
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0101044
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ, ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ムン, ソン‐ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュン イル
(72)【発明者】
【氏名】ユン, キ チュル
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA08
4F071AA43
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071BA01
4F071BB09
4F071BC01
4J002AA003
4J002AB01X
4J002AB043
4J002AH00X
4J002CF033
4J002CF053
4J002CF183
4J002CF18W
4J002CF193
4J002GA01
4J002GT00
4J200AA04
4J200BA07
4J200BA12
4J200BA14
4J200BA15
4J200BA16
4J200BA19
4J200BA20
4J200BA37
4J200BA38
4J200CA01
4J200DA03
4J200EA07
4J200EA11
(57)【要約】
本発明の一実施形態は、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含有する生分解性樹脂組成物、生分解性樹脂組成物を使用して形成された生分解性フィルム及びマルチングフィルム、並びに生分解性樹脂組成物を調製するための方法を提供する。一実施形態による生分解性樹脂組成物は、特定の成分を含有することによって、生分解性樹脂組成物から形成されたフィルムの引張強度、伸び率、柔軟性、及び耐衝撃性を向上させることができ、土壌及び海洋の両方でその生分解性を理由に様々な分野に適用することができ、特にマルチングフィルムに対して有用に適用される場合に優れた特性を発揮することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂が、3-ヒドロキシブチレート(3-HB)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)、3-ヒドロキシバレレート(3-HV)、3-ヒドロキシヘキサノエート(3-HH)、4-ヒドロキシバレレート(4-HV)、5-ヒドロキシバレレート(5-HV)、6-ヒドロキシヘキサノエート(6-HH)、及び4-ヒドロキシブチレート(4-HB)繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂である、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂が、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂を含み、
前記第1のPHA樹脂が、前記第1のPHA樹脂の総重量に基づいて、15重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み、
前記第2のPHA樹脂が、前記第2のPHA樹脂の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み、
前記第1のPHA樹脂の前記4-HB繰り返し単位の含有量及び前記第2のPHA樹脂の前記4-HB繰り返し単位の含有量が互いに異なる、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記バイオマスが、エポキシ化ヒドロキシル基(OH基)を含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記バイオマスが、薬草由来の天然物質、木質由来の天然物質、リグニン、セルロース、及びバイオ副産物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項4に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、10~50重量%の量の前記バイオマス及び10~80重量%の量の前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
前記生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、5重量%~80重量%の量の前記第1のPHA樹脂及び5重量%~80重量%の量の前記第2のPHA樹脂を含む、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第1のPHA樹脂と前記第2のPHA樹脂と前記バイオマスとの重量比が、1:0.5~9:1~2である、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1のPHA樹脂が、-45℃~-10℃のガラス転移温度(Tg)を有し、
前記第2のPHA樹脂が、-30℃~80℃のガラス転移温度(Tg)、70℃~120℃の結晶化温度(Tc)、及び100℃~170℃の溶融温度(Tm)から選択される少なくとも1つの特性を満たし、且つ
前記第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)及び前記第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)が互いに異なる、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項10】
前記生分解性樹脂組成物が、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリブチレンスクシネート-アジペート(PBSA)、ポリブチレンスクシネート-テレフタレート(PBST)、ポリヒドロキシブチレート-バレレート(PHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンスクシネートアジペートテレフタレート(PBSAT)、及び熱可塑性デンプン(TPS)からなる群から選択される少なくとも1種の生分解性樹脂をさらに含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項11】
前記生分解性樹脂組成物が、物理特性改善剤をさらに含み、前記物理特性改善剤が、ジアミン、二酸、及びイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項12】
前記生分解性樹脂組成物が、顔料、着色剤吸収剤、光吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、増量剤、核形成剤、溶融強度向上剤、及びスリップ剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項13】
バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性フィルム。
【請求項14】
ASTM D882に準拠した万能試験機(UTM)を使用して測定した場合、5~50MPaの引張強度及び50%~900%の伸び率を有する、請求項13に記載の生分解性フィルム。
【請求項15】
(1)バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを調製するステップ、並びに(2)前記生分解性ペレットを成形するステップを含む、生分解性フィルムを調製するための方法。
【請求項16】
前記バイオマスが、エポキシ化バイオマスを含み、
エポキシ化処理が、アルカリ溶液においてバイオマスをエピハロヒドリンで重合させて、エポキシ重合バイオマスを得るステップ、並びに前記エポキシ重合バイオマスを濾過して乾燥させるステップを含む、請求項15に記載の生分解性フィルムを調製するための方法。
【請求項17】
前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂が、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂を含み、
前記第1のPHA樹脂が、前記第1のPHA樹脂の総重量に基づいて、15重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み、
前記第2のPHA樹脂が、前記第2のPHA樹脂の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み、
前記第1のPHA樹脂の前記4-HB繰り返し単位の含有量及び前記第2のPHA樹脂の前記4-HB繰り返し単位の含有量が互いに異なる、請求項15に記載の生分解性フィルムを調製するための方法。
【請求項18】
前記溶融押出を120℃~200℃の温度で行い、前記成形を100℃~180℃で押出成形又はブロー成形によって行う、請求項15に記載の生分解性フィルムを調製するための方法。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載の生分解性樹脂組成物から形成された、生分解性マルチングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂組成物、並びに生分解性樹脂組成物を使用した生分解性フィルム及び生分解性マルチングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチングフィルムは、作物を栽培する際に畝間などの作物畑の表面を覆うフィルムを指す。水分蒸発の抑制、雑草生長の抑制、及び土壌の肥料成分の損失の抑制などの様々な機能によって、マルチングフィルムの利用が増え続けており、マルチングフィルムは、農業の生産性の上昇に著しく寄与している。
【0003】
しかしながら、マルチングフィルムは、使用後の回収又はリサイクルが難しいことを理由に土壌に放置されるため、農村環境を著しく汚染する要因として認識されている。
【0004】
現在、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの脂肪族ポリエステルが生分解性マルチングフィルムの材料として広く使用されている。近年、様々な生分解性ポリエステルを使用して、フィルムの機械的強度及び加水分解特性などの生分解性ポリエステルの物理特性の限界を改善するための研究が盛んに行われている。
【0005】
しかしながら、PBATは、優れた機械特性及び成形性を有するものの、PBATの使用は、他の生分解性ポリマー樹脂と同様にその原料が高価であるため、限定されている。さらに、PBATは、化学加水分解によって容易且つ迅速に分解されるが、テレフタレートは、規制対象有害物質であり、土壌の汚染及び環境ホルモンの形成を引き起こし得る。
【0006】
さらに、PBAT及びポリ乳酸(PLA)などの生分解性材料を使用した生分解性マルチングフィルムも開発されている。
【0007】
しかしながら、作物の生長期間を考慮して生分解速度を調整することは容易ではなく、品質は、生分解性マルチングフィルムが低い強度及び柔軟性を理由に破れやすいために悪く、また生分解性マルチングフィルムは高価であり、したがって、広く使用することが困難である。
【0008】
したがって、土壌汚染及び環境ホルモン形成の問題を最小限に抑えながら強度及び柔軟性などの優れた機械特性と生分解性とを有する生分解性マルチングフィルムを開発することが早急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許第1294346号
【0010】
[発明の開示]
[技術的問題]
本発明の目的は、引張強度、伸び率、柔軟性、及び耐衝撃性などの機械特性を向上させることができ、且つ同時に土壌及び海洋の両方で生分解性である、生分解性樹脂組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、生分解性樹脂組成物から形成された生分解性フィルム及び生分解性フィルムを調製するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、生分解性樹脂組成物から形成されており、土壌及び海洋の両方で生分解性であり、上記のような優れた機械特性を有し、且つ土壌改善、水分蒸発の抑制、及び雑草生長の抑制などの様々な機能を有する、生分解性マルチングフィルムを提供することである。
【0013】
[問題の解決策]
本発明は、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性樹脂組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性フィルムを提供する。
【0015】
さらに、本発明は、(1)バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを調製するステップ、並びに(2)生分解性ペレットを成形するステップを含む、生分解性フィルムを調製するための方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、生分解性樹脂組成物から形成された、生分解性マルチングフィルムを提供する。
【0017】
[発明の有利な効果]
実施形態による生分解性樹脂組成物はバイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含むため、生分解性樹脂組成物から形成されたフィルムは、引張強度、伸び率、柔軟性、及び耐衝撃性などの機械特性を向上させることができ、この生分解性樹脂組成物を使用したフィルムは、土壌及び海洋の両方で生分解性である。したがって、生分解性樹脂組成物は、より多様な分野に適用することができ、優れた特性を示す。
【0018】
特に、バイオマスがエポキシ化バイオマスを含む場合、相溶性をさらに改善し、生分解速度をさらに向上させ、生分解性フィルム及びマルチングフィルムのコストを改善することができる。
【0019】
したがって、本発明の一実施形態によると、生分解性樹脂組成物を使用して、土壌及び海洋の両方で生分解することができ、且つ同時に向上した熱特性及び機械特性を有する優れた品質を有し得る、生分解性フィルム及びマルチングフィルムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による生分解性フィルムを調製するプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0022】
実施形態は、下記のものに限定されることはない。むしろ、実施形態は、本発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形させることができる。
【0023】
本明細書全体を通じて、部品が要素を「含む」と言及される場合、特に明記されない限り、他の要素が除外されるのではなく、他の要素が含まれ得ると理解される。
【0024】
さらに、本明細書で使用されている要素の物理特性、寸法などを表すすべての数値は、特に示されない限り、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。
【0025】
本明細書全体を通じて、第1、第2などの用語は、様々な成分を説明するために使用される。しかしながら、成分は、用語によって制限されるべきではない。これらの用語は、ある成分を別の成分から区別する目的でのみ使用される。
【0026】
[生分解性樹脂組成物]
本発明の一実施形態による生分解性樹脂組成物は、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称される)樹脂を含む。
【0027】
生分解性樹脂組成物はバイオマス及びPHA樹脂を含むため、引張強度、伸び率、柔軟性、及び耐衝撃性などの機械特性を向上させることが可能であり、生分解性樹脂組成物から形成された生分解性フィルム及びマルチングフィルムは、土壌及び海洋の両方で生分解性であり、優れた強度及び柔軟性によって破れにくい。したがって、このフィルムは、優れた品質及び寿命特性を呈し得る。
【0028】
特に、本発明は、一実施形態によると、バイオマスの使用によって肥料の改善及び土壌肥沃度の増加などの土壌改善効果がもたらされる点、並びにバイオマスとPHAとの間の相溶性が優れており、それによって、架橋能が改善されて、本発明で望まれる効果が効率的に達成可能である点で、技術的意義を有する。
【0029】
以下で、生分解性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0030】
バイオマス
本発明の一実施形態による生分解性樹脂組成物は、バイオマスを含む。
【0031】
生分解性樹脂組成物はバイオマスを含むため、生分解性を向上させること及び土壌を改善することが可能である。すなわち、バイオマスは、優れた生分解性を有し、未分解時には容易に破砕され、肥料を改善し、土壌強度を増加させ、それによって、土壌改善効果をもたらす。
【0032】
本発明の一実施形態によって使用することができるバイオマスは、植物源であり、様々な分類の植物由来の天然産物を含み得る。
【0033】
バイオマスは、薬草由来の天然物質及び木質由来の天然物質、並びにリグニン、セルロース、及びそれらの構成成分としてのバイオ副産物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0034】
具体的には、バイオマスは、稲わら、大麦わら、小麦わら、もみ殻、トウモロコシの茎及び葉、大豆の茎、豆の鞘、玉ねぎの茎、サツマイモの茎、松葉、並びにコーヒーかすからなる群から選択される少なくとも1つを含む薬草由来の天然物質を含み得る。
【0035】
バイオマスは、ポプラ、ヤナギ、シルバーメープル、ハコヤナギ、グリーンアッシュ、クロクルミ、スギ、及びシカモアからなる群から選択される少なくとも1つを含む針葉樹及び広葉樹の木質由来の天然物質を含み得る。
【0036】
さらに、バイオマスは、リシノール酸を抽出するための穀粒及びわら及びトウゴマ種子;トウモロコシデンプン、トウモロコシ油、大豆油、大豆粉、小麦ふすま、及び他の植物油などの作物;藻類、大型藻類、海草、及び海洋微生物などの水産資源;トウモロコシ穂軸、小麦わら、及び稲わらなどの農作物残留物;並びに他の農場又は食肉加工作業からの廃棄物及びエネルギーなどの工業用作物を含む様々な供給源を含み得る。
【0037】
さらに、バイオマスは、植物源の構成成分、例えば、リグニン、セルロース、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0038】
さらに、バイオマスは、植物源に由来するバイオ副産物、例えば、コーヒーかす、大豆皮、トウモロコシ皮、及びトウモロコシ穂軸からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0039】
バイオマスは、その表面に官能基としてヒドロキシル基(OH基)を含み得る。
【0040】
本発明の一実施形態によると、バイオマスは、エポキシ化表面修飾バイオマスを含み得る。
【0041】
バイオマスの結合特性がエポキシ化処理によって向上されるため、バイオマスの分子量及び含有量が増加し得る。
【0042】
バイオマスは、エポキシ化ヒドロキシル基(OH基)を含有するバイオマスを含み得る。このバイオマスは、ヒドロキシル基(OH基)を含有するPHA樹脂との優れた相溶性を有し、互いに容易に混合される一方で架橋によって優れた結合強度を有し得る。
【0043】
一般に、セルロース及びリグニンなどのエポキシ化されていないバイオマスは、ヒドロキシル基(OH基)を含有しているが、バイオマスは、熱が適用される際に溶融しにくく、それによって、分散性が悪化し、またバイオマスは、固体状態で存在し、それによって、PHA樹脂との混合が困難になる。この問題を理由に、バイオマス含有量が増加するにつれてフィルムの物理特性が悪化する。
【0044】
本発明において、エポキシ化ヒドロキシル基(OH基)を有するバイオマスを使用することが非常に重要であり、それによって、同じ官能基(OH基)を有するPHA樹脂との相溶性をさらに向上させて、PHA樹脂との混合を容易にし、さらに、生分解性フィルムの物理特性を、これがPHA樹脂と架橋されることから、さらに向上させることができる。
【0045】
さらに、エポキシ化バイオマスは、非エポキシ化バイオマス(例えば、非エポキシ化リグニン、塩酸糖化リグニン、非エポキシ化薬草系酵素糖化リグニン)と比較して、フィルム製造中に伸び率及び引張強度をさらに向上させることができる。
【0046】
エポキシ化バイオマスは、エポキシ化バイオマスのヒドロキシル基(OH基)1当量に基づいて、1~20モル又は5~10モルのエポキシ官能基を含み得る。
【0047】
エポキシ化処理については後に説明する。
【0048】
バイオマスは、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、10~50重量%の量で用いられ得る。具体的には、バイオマスの含有量は、例えば15~50重量%、例えば15~45重量%、例えば15~40重量%、例えば15~35重量%、例えば17~50重量%、例えば17~45重量%、例えば17~40重量%、例えば17~35重量%、例えば17~30重量%、例えば20~50重量%、例えば20~45重量%、又は例えば20~40重量%であり得る。
【0049】
バイオマスの含有量が先の範囲を満たす場合、生分解性をさらに向上させ、土壌改善効果をもたらし、PHA樹脂との架橋強度を改善し、それによって、本発明の望ましい効果を効果的に達成することが可能である。
【0050】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂
本発明の一実施形態による生分解性樹脂組成物は、PHA樹脂を含む。
【0051】
PHA樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンスクシネートテレフタレート(PBST)、及びポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)などの従来の石油由来の合成ポリマーの物理特性と同様の物理特性を有し、完全な生分解性を呈し、生体適合性に優れている。
【0052】
具体的には、PHA樹脂は、微生物細胞内に蓄積している天然の熱可塑性ポリエステルポリマーである。天然の熱可塑性ポリエステルポリマーは生分解性材料であるため、これは、堆肥化することができ、最終的には、有害な廃棄物を発生させることなく、二酸化炭素、水、及び有機廃棄物に分解することができる。特に、PHA樹脂は、土壌及び海洋で生分解性である。したがって、生分解性樹脂組成物がPHA樹脂を含む場合、生分解性樹脂組成物は、土壌及び海洋などのいかなる環境条件でも生分解性であり、環境に優しい特性を有する。したがって、PHA樹脂を含有する生分解性樹脂組成物を使用して形成された生分解性フィルムは、様々な分野で使用することができる。
【0053】
PHA樹脂は、生細胞における1つ以上のモノマー繰り返し単位の酵素触媒重合によって形成され得る。
【0054】
PHA樹脂は、共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(以下、PHAコポリマーと称される)であり得る。具体的には、PHA樹脂は、2つ以上の異なる繰り返し単位を含有するコポリマーであり得、異なる繰り返し単位は、ポリマー鎖にランダムに分布している。
【0055】
PHAに含有され得る繰り返し単位の例は、2-ヒドロキシブチレート、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチレート(以下、3-HBと称される)、3-ヒドロキシプロピオネート(以下、3-HPと称される)、3-ヒドロキシバレレート(以下、3-HVと称される)、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3-HHと称される)、3-ヒドロキシヘプタノエート(以下、3-HHepと称される)、3-ヒドロキシオクタノエート(以下、3-HOと称される)、3-ヒドロキシノナノエート(以下、3-HNと称される)、3-ヒドロキシデカノエート(以下、3-HDと称される)、3-ヒドロキシドデカノエート(以下、3-HDdと称される)、4-ヒドロキシブチレート(以下、4-HBと称される)、4-ヒドロキシバレレート(以下、4-HVと称される)、5-ヒドロキシバレレート(以下、5-HVと称される)、及び6-ヒドロキシヘキサノエート(以下、6-HHと称される)を含む。PHA樹脂は、先のものから選択される1つ以上の繰り返し単位を含有し得る。
【0056】
具体的には、PHA樹脂は、3-HB、4-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HHからなる群から選択される1つ以上の繰り返し単位を含み得る。
【0057】
より具体的には、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を含み得る。すなわち、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を含有するPHAコポリマーであり得る。
【0058】
さらに、PHA樹脂は、異性体を含み得る。例えば、PHA樹脂は、構造異性体、鏡像異性体、又は幾何異性体を含み得る。具体的には、PHA樹脂は、構造異性体を含み得る。
【0059】
さらに、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位を含み、且つ4-HB繰り返し単位とは異なる1つの繰り返し単位、又は2つ、3つ、4つ、5つ、6つ若しくはそれより多くの互いに異なる繰り返し単位をさらに含む、PHAコポリマーであり得る。
【0060】
本発明の一実施形態によると、PHA樹脂は、3-HB、3-HP、3-HH、3-HV、4-HV、5-HV、及び6-HH、及び4-HB繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含み得る。
【0061】
具体的には、PHAコポリマーは、4-HB繰り返し単位を含み得、3-HB繰り返し単位、3-HP繰り返し単位、3-HH繰り返し単位、3-HV繰り返し単位、4-HV繰り返し単位、5-HV繰り返し単位、及び6-HH繰り返し単位からなる群から選択される1つ以上の繰り返し単位をさらに含む。より具体的には、PHA樹脂は、3-HB繰り返し単位及び4-HB繰り返し単位を含む共重合ポリヒドロキシアルカノエート樹脂であり得る。
【0062】
例えば、PHA樹脂は、ポリ-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート(以下、3HB-co-4HBと称される)であり得る。
【0063】
本発明の一実施形態によると、PHAコポリマーの4-HB繰り返し単位の含有量を調整することが重要である。
【0064】
すなわち、本発明で望まれる物理特性を達成するためには、特に、土壌及び海洋での生分解性を向上させ、熱特性及び機械特性などの優れた物理特性を達成するためには、PHAコポリマーの4-HB繰り返し単位の含有量が重要であり得る。
【0065】
より具体的には、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量に基づいて、0.1重量%~60重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。例えば、4-HB繰り返し単位の含有量は、PHAコポリマーの総重量に基づいて、0.1重量%~55重量%、0.5重量%~60重量%、0.5重量%~55重量%、1重量%~60重量%、1重量%~55重量%、1重量%~50重量%、2重量%~55重量%、3重量%~55重量%、3重量%~50重量%、5重量%~55重量%、5重量%~50重量%、10重量%~55重量%、10重量%~50重量%、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~29重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、2重量%~20重量%、2重量%~23重量%、3重量%~20重量%、3重量%~15重量%、4重量%~18重量%、5重量%~15重量%、8重量%~12重量%、9重量%~12重量%、15重量%~55重量%、15重量%~50重量%、20重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~55重量%、25重量%~50重量%、35重量%~60重量%、40重量%~55重量%、又は45重量%~55重量%であり得る。
【0066】
4-HB繰り返し単位の含有量が先の範囲を満たす場合、土壌及び海洋での生分解性を向上させることができ、材料の熱特性を向上させることができ、柔軟性及び強度などの機械特性をさらに向上させることができる。
【0067】
さらに、PHA樹脂は、少なくとも1つ以上の4-HB繰り返し単位を含み、4-HB繰り返し単位の含有量は、PHA樹脂の結晶化度を調整するように制御することができる。すなわち、PHA樹脂は、結晶化度が制御されたPHAコポリマーであり得る。
【0068】
結晶性が調整されたPHA樹脂は、その分子構造において不規則性が増加しているためにその結晶性及び非晶質性が調整されたものであり得る。具体的には、モノマーの種類及び割合、又は異性体の種類及び/若しくは含有量が調整され得る。
【0069】
PHA樹脂は、異なる結晶化度を有する2種以上のPHA樹脂の組み合わせであり得る。すなわち、PHA樹脂は、異なる結晶化度を有する2種以上のPHA樹脂を混合することによって、特定の範囲の4-HB繰り返し単位の含有量を有するように調整され得る。
【0070】
例えば、PHA樹脂は、異なる含有量の4-HB繰り返し単位を有する第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含み、PHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量がPHA樹脂の総重量に基づいて0.1~60重量%であるように調整され得る。第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂の具体的な特性については後に説明する。
【0071】
一方で、PHAコポリマーは、PHAコポリマーの総重量に基づいて、20重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は75重量%以上、且つ99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、91重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は55重量%以下の量の3-HB繰り返し単位を含み得る。
【0072】
一方で、PHA樹脂は、例えば、-45℃~80℃、-35℃~80℃、-30℃~80℃、-25℃~75℃、-20℃~70℃、-35℃~5℃、-25℃~5℃、-35℃~0℃、-25℃~0℃、-30℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、-20℃~0℃、-15℃~0℃、又は-15℃~-5℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。
【0073】
PHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば、測定されなくても、又は例えば、70℃~120℃、75℃~120℃、75℃~115℃、75℃~110℃、若しくは90℃~110℃であってもよい。
【0074】
PHA樹脂の溶融温度(Tm)は、例えば、測定されなくても、又は例えば、100℃~170℃、例えば110℃~150℃、若しくは例えば120℃~140℃であってもよい。
【0075】
PHA樹脂は、例えば、10,000g/モル~1,200,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有し得る。例えば、PHA樹脂の重量平均分子量は、50,000g/モル~1,200,000g/モル、100,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、250,000g/モル~1,150,000g/モル、300,000g/モル~1,100,000g/モル、350,000g/モル~1,000,000g/モル、350,000g/モル~950,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~700,000g/モル、250,000g/モル~650,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、300,000g/モル~800,000g/モル、300,000g/モル~600,000g/モル、500,000g/モル~1,200,000g/モル、500,000g/モル~1,000,000g/モル、550,000g/モル~1,050,000g/モル、550,000g/モル~900,000g/モル、又は600,000g/モル~900,000g/モルであり得る。
【0076】
PHA樹脂は、第1のPHA樹脂、第2のPHA樹脂、又は第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含み得る。
【0077】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tg)、及び溶融温度(Tm)の点で区別され得る。
【0078】
具体的には、第1のPHA樹脂は、第1のPHA樹脂の総重量に基づいて、例えば、15重量%~60重量%、15重量%~55重量%、20重量%~55重量%、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、20重量%~50重量%、25重量%~50重量%、30重量%~50重量%、35重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。
【0079】
第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-45℃~-10℃、-35℃~-10℃、-35℃~-15℃、-35℃~-20℃、又は-30℃~-20℃であり得る。
【0080】
第1のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、例えば、測定されなくても、又は例えば、60℃~120℃、60℃~110℃、70℃~120℃、若しくは75℃~115℃であってもよい。
【0081】
第1のPHA樹脂の溶融温度(Tm)は、例えば、測定されなくても、又は例えば、100℃~170℃、100℃~160℃、110℃~160℃、若しくは120℃~150℃であってもよい。
【0082】
第1のPHA樹脂は、例えば、10,000g/モル~1,200,000g/モル、10,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,000,000g/モル、50,000g/モル~1,200,000g/モル、200,000g/モル~1,200,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、500,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、又は200,000g/モル~400,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0083】
一方で、第2のPHA樹脂は、第2のPHA樹脂の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。例えば、第2のPHA樹脂は、例えば、0.1重量%~30重量%、0.5重量%~30重量%、1重量%~30重量%、3重量%~30重量%、1重量%~28重量%、1重量%~25重量%、1重量%~24重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、2重量%~25重量%、3重量%~25重量%、3重量%~24重量%、5重量%~24重量%、5重量%~20重量%、5重量%超~20重量%未満、7重量%~20重量%、10重量%~20重量%、15重量%~25重量%、又は15重量%~24重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。
【0084】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量の点で互いに異なり得る。
【0085】
第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば-30℃~80℃、例えば-30℃~10℃、例えば-25℃~5℃、例えば-25℃~0℃、例えば-20℃~0℃、又は例えば-15℃~0℃であり得る。
【0086】
第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)及び第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、互いに異なり得る。
【0087】
第2のPHA樹脂は、例えば70℃~120℃、例えば75℃~115℃、若しくは80℃~110℃の結晶化温度(Tc)を有していても、又は例えば、測定されなくてもよい。
【0088】
第2のPHA樹脂は、例えば100℃~170℃、例えば105℃~165℃、例えば110℃~160℃、例えば100℃~150℃、例えば115℃~155℃、例えば120℃~160℃、又は例えば120℃~150℃の溶融温度(Tm)を有し得る。
【0089】
第2のPHA樹脂は、10,000g/モル~1,200,000g/モル、50,000g/モル~1,100,000g/モル、100,000g/モル~1,000,000g/モル、300,000g/モル~1,000,000g/モル、100,000g/モル~900,000g/モル、200,000g/モル~800,000g/モル、200,000g/モル~600,000g/モル、200,000g/モル~400,000g/モル、又は400,000g/モル~700,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0090】
具体的には、第1のPHA樹脂は、-35℃~-15℃のガラス転移温度(Tg)を有し、第2のPHA樹脂は、-15℃~0℃のガラス転移温度(Tg)、80℃~110℃の結晶化温度(Tc)、及び120℃~160℃の溶融温度(Tm)から選択される少なくとも1つの特性を満たし、第1のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)及び第2のPHA樹脂のガラス転移温度(Tg)は、互いに異なり得る。さらに、第1のPHA樹脂の結晶化温度(Tc)及び溶融温度(Tm)は、測定されなくてもよい。
【0091】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂が、先の範囲の4-HB繰り返し単位、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び溶融温度(Tm)のうちの少なくとも1つをそれぞれ満たす場合、このことは、本発明の望ましい効果を達成するためにより有利であり得る。
【0092】
さらに、第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂はそれぞれ、結晶化度が制御されたPHA樹脂であり得る。
【0093】
例えば、第1のPHA樹脂は、非晶質PHA樹脂(以下、aPHA樹脂と称される)を含み得、第2のPHA樹脂は、半結晶性PHA樹脂(以下、scPHA樹脂と称される)を含み得る。
【0094】
具体的には、第1のPHA樹脂は、aPHA樹脂、又はaPHA樹脂とscPHA樹脂との混合樹脂であり得る。
【0095】
具体的には、第2のPHA樹脂は、scPHA樹脂、又はaPHA樹脂とscPHA樹脂との混合樹脂であり得る。
【0096】
aPHA樹脂及びscPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tg)、溶融温度(Tm)などの点で区別され得る。
【0097】
aPHA樹脂は、PHA樹脂の総重量に基づいて、例えば25~50重量%の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。
【0098】
aPHA樹脂は、例えば-35℃~-20℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。
【0099】
aPHA樹脂の結晶化温度(Tc)は、測定されなくてもよい。
【0100】
aPHA樹脂の溶融温度(Tm)は、測定されなくてもよい。
【0101】
scPHA樹脂は、PHA樹脂の総重量に基づいて、例えば1~25重量%未満の量の4-HB繰り返し単位を含み得る。
【0102】
scPHA樹脂は、-20℃~0℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。
【0103】
scPHA樹脂は、75℃~115℃の結晶化温度(Tc)を有し得る。
【0104】
scPHA樹脂は、110℃~160℃の溶融温度(Tm)を有し得る。
【0105】
本発明の一実施形態によると、PHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、15重量%以上、16重量%以上、又は17重量%以上、且つ80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、又は40重量%以下の量で用いられ得る。
【0106】
具体的には、生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば10~80重量%、例えば10~70重量%、例えば10~60重量%、例えば10~50重量%、例えば10~40重量%、例えば10~30重量%、例えば14~80重量%、例えば14~70重量%、例えば14~60重量%、例えば14~50重量%、例えば15~80重量%、例えば15~70重量%、例えば15~60重量%、例えば15~50重量%、例えば17~80重量%、例えば17~50重量%、例えば17~30重量%、例えば20~80重量%、例えば20~75重量%、例えば20~70重量%、例えば20~60重量%、例えば20~40重量%、又は例えば40~80重量%の量のPHA樹脂を含み得る。
【0107】
本発明の別の実施形態によると、第1のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば5~80重量%、例えば10~80重量%、例えば20~80重量%、例えば20~75重量%、例えば20~70重量%、例えば20~60重量%、例えば20~40重量%、例えば10~40重量%、例えば5~20重量%、又は例えば40~80重量%の量で用いられ得る。
【0108】
本発明の別の実施形態によると、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば5~80重量%、例えば10~80重量%、例えば10~60重量%、例えば20~80重量%、例えば20~75重量%、例えば20~70重量%、例えば20~60重量%、例えば20~40重量%、例えば5~20重量%、又は例えば40~80重量%の量で用いられ得る。
【0109】
一方で、PHA樹脂が第1のPHA樹脂を構成する場合、PHA樹脂は、例えば1重量%~95重量%を占め得る。第1のPHA樹脂が単独で使用されている場合、第1のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば5~80重量%の量で用いられ得る。具体的には、第1のPHA樹脂は、10重量%以上且つ70重量%以下又は40重量%以下の量で用いられ得る。
【0110】
さらに、本発明の別の実施形態によると、PHA樹脂が第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含む場合、第1のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば1~50%、例えば5~40重量%、5~20重量%、10重量%~40重量%、又は例えば20~40重量%の量で用いられ得る。
【0111】
PHA樹脂が第2のPHA樹脂を含む場合、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば1重量%~95重量%の量で用いられ得る。第2のPHA樹脂が単独で使用されている場合、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上、且つ95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下の量で用いられ得る。第2のPHA樹脂が単独で使用されている場合、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば50~95重量%の量で用いられ得る。
【0112】
別の例として、第2のPHA樹脂が第1のPHA樹脂と混合して使用されている場合、第2のPHA樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば5~99重量%、例えば20~80重量%、例えば30~70重量%、又は例えば30~50重量%の量で用いられる。さらに、第2のPHA樹脂は、5重量%~60重量%、5重量%~40重量%、40重量%~60重量%、5重量%~20重量%、又は10重量%~40重量%の量で用いられ得る。
【0113】
本発明の別の実施形態によると、PHA樹脂が第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含む場合、第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との重量比は、例えば1:0.5~3、例えば1:0.5~2.5、又は例えば1:0.5~2であり得る。
【0114】
本発明の別の実施形態によると、第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂とバイオマスとの重量比は、1:0.5~9:1~2であり得る。
【0115】
PHA樹脂及びバイオマスの含有量、並びにそれらの含有量比が先の範囲をそれぞれ満たす場合、熱特性及び機械特性をさらに向上させることができ、生分解性フィルム又はマルチングフィルムを製造する際の成形性、加工性、及び生産性も向上させることができる。
【0116】
生分解性樹脂
本発明の一実施形態による生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物を使用した生分解性フィルム又はマルチングフィルムの使用に適切な機械特性を確保しながら生分解性を提供する成分としての脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂及び脂肪族/芳香族コポリエステル系生分解性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含み得る。
【0117】
具体的には、生分解性樹脂の種類は、一般に使用されている限り、特に限定されることはない。代表的な生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリブチレンスクシネート-アジペート(PBSA)、ポリブチレンスクシネート-テレフタレート(PBST)、ポリヒドロキシブチレート-バレレート(PHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンスクシネートアジペートテレフタレート(PBSAT)、及び熱可塑性デンプン(TPS)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。具体的には、生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、及び熱可塑性デンプン(TPS)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。より具体的には、生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)及びポリ乳酸(PLA)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。さらに、生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含み得る。
【0118】
生分解性樹脂は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、例えば、0.001重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上、且つ例えば、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下の量で用いられ得る。
【0119】
具体的には、生分解性樹脂組成物が生分解性樹脂をさらに含む場合、PHA樹脂と生分解性樹脂との重量比は、1:0.1~9、1:0.5~8、1:0.5~6、1:0.5~5、1:1~8、1:1~6、1:1~5、又は1:1~4であり得る。例えば、生分解性組成物は、生分解性樹脂としてPBAT樹脂をさらに含み得、1:0.1~9、1:0.5~9、1:0.7~8、1:0.8~8、1:1~8、1:1~6、1:1~5、又は1:1~4の重量比のPHA樹脂及びPBAT樹脂を含み得る。
【0120】
生分解性樹脂組成物が先の範囲の生分解性樹脂を含む場合、生分解性フィルム又はマルチングフィルムとしての使用に適切な機械特性を容易に達成することができ、したがって、このフィルムを様々に使用することができるという利点がある。例えば、生分解性樹脂をさらに用いると、引張強度及び伸び率をさらに向上させることが可能である。
【0121】
物理特性改善剤
本発明の一実施形態による生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物を使用して調製された生分解性フィルム又はマルチングフィルムの物理特性をさらに向上させるために、物理特性改善剤をさらに含み得る。
【0122】
物理特性改善剤は、ジアミン、二酸、及びイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0123】
物理特性改善剤は、エポキシ化バイオマスに含有されるエポキシ官能基、並びに/又はバイオマス及び/若しくはPHA樹脂に含有されるヒドロキシル基(OH基)と組み合わせることによって、物理特性をさらに向上させることができる。
【0124】
物理特性改善剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.001~30重量%の量で用いられ得る。物理特性改善剤は、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、又は2重量%以上の量で用いられ得る。添加剤は、30重量%以下、28重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、又は5重量%以下の量で用いられ得る。
【0125】
物理特性改善剤は、生分解性樹脂組成物の使用に応じて様々に選択され得る。先の範囲を満たす場合、本発明における望ましい物理特性を効果的に達成することができる。
【0126】
添加剤
生分解性樹脂組成物は、顔料、着色剤吸収剤(colorant absorbers)、光吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、増量剤、核形成剤、溶融強度向上剤、及びスリップ剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含み得る。
【0127】
添加剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.1~30重量%の量で用いられ得る。
【0128】
添加剤は、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、又は2重量%以上の量で用いられ得る。添加剤は、30重量%以下、28重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、又は5重量%以下の量で用いられ得る。
【0129】
顔料は、カーボンブラック及びコバルトグリーンからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。顔料は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0130】
酸化防止剤は、オゾン又は酸素による分解を防止し、保存中の酸化を防止し、且つフィルムの物理特性の悪化を防止するための添加剤である。
【0131】
酸化防止剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれの酸化防止剤も使用することができる。
【0132】
具体的には、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びホスファイト系(リン系)酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0133】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、及び3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0134】
ホスファイト系(リン系)酸化防止剤は、例えば、トリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、ビス-(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、ジステアリル-ペンタエリスリトール-ジホスファイト、[ビス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル、及びN,N-ビス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキシホスフェピン-6-イル]オキシ]-エチル]エタンアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0135】
酸化防止剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0136】
酸化防止剤の含有量が先の範囲を満たす場合、フィルムの物理特性を向上させることができ、このことは、本発明の望ましい効果を達成するのにより有利であり得る。
【0137】
相溶化剤は、バイオマス、PHA樹脂、及び/又は生分解性ポリマー樹脂の異相を除去することによって相溶性を付与するための添加剤である。
【0138】
相溶化剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれの相溶化剤も使用することができる。
【0139】
具体的には、相溶化剤は、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、イソシアネート、ポリプロピレンカーボネート、グリシジルメタクリレート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸ビニル、及び無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0140】
相溶化剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0141】
相溶化剤の含有量が先の範囲を満たす場合、使用されている樹脂間の相溶性を増加させることによってフィルムの物理特性を向上させることができ、このことは、本発明の望ましい効果を達成するのにより有利であり得る。
【0142】
増量剤は、無機材料であり、成形プロセス中の結晶化速度を増加させることによって成形性を増加させるための、且つ生分解性樹脂の使用を理由としたコスト増加の問題を軽減するための添加剤である。
【0143】
増量剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれの無機材料も使用することができる。
【0144】
具体的には、増量剤は、軽質又は重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、シリカ、タルク、カオリン、硫酸バリウム、粘土、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック、及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0145】
増量剤は、0.5μm~5μmの平均粒子サイズを有し得る。増量剤の平均粒子サイズが0.5μm未満である場合、粒子を分散させることが困難である。平均粒子サイズが5μmを上回る場合、粒子のサイズが過剰に大きくなり、それによって、本発明の効果が損なわれ得る。
【0146】
増量剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0147】
増量剤の含有量が先の範囲を満たす場合、このことは、本発明の望ましい効果を達成するのにより有利であり得る。
【0148】
核形成剤は、ポリマーの結晶化形態の補足又は変化のための、且つポリマーの溶融物が冷却されたときの結晶化(固化)速度を向上させるための添加剤である。特に、本発明で使用されているPHA樹脂は低い結晶化速度を有するため、PHA樹脂が柔らかくなり過ぎて、加工が容易に行われない場合がある。この問題を解決するために核形成剤を使用する場合、結晶化速度を増加させて、加工性、成形性、及び生産性をさらに向上させることができ、望ましい物理特性を効果的に達成することが可能である。
【0149】
本発明の効果が損なわれない限り、一般的な核形成剤を使用することができる。
【0150】
具体的には、核形成剤は、単体物質(純物質)、複合酸化物を含む金属化合物、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、合成ケイ酸及び塩、シリカ、亜鉛白、粘土、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、珪藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、有機リンの金属塩、及び窒化ホウ素;金属カルボキシレート基を有する低分子量有機化合物、例えば、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ベンゼン酸、p-tert-ブチルベンゼン酸、テレフタル酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸、及びイソフタル酸モノメチルエステルの金属塩;金属カルボキシレート基を有するポリマー有機化合物、例えば、ポリエチレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリエチレンの塩、ポリプロピレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリプロピレン、アクリル酸又はメタクリル酸とオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、及びブテン-1)とのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とスチレンとのコポリマー、オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマー、及びスチレンと無水マレイン酸とのコポリマー;ポリマー有機化合物、例えば、3位の炭素原子に分岐した5個以上の炭素原子を有するアルファ-オレフィン(例えば、3,3-ジメチルブテン-1,3-メチルブテン-1,3-メチルペンテン-1,3-メチルヘキセン-1及び3,5,5-トリメチルヘキセン-1)、ビニルシクロアルカン(例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、及びビニルノルボルナン)のポリマー、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール)、ポリ(グリコール酸)、セルロース、セルロースエステル、及びセルロースエーテル;リン酸又は亜リン酸及びその金属塩、例えば、ジフェニルホスフェート、ジフェニルホスファイト、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフェートの金属塩、及びメチレンビス(2,4-tert-ブチルフェニル)ホスフェート;ソルビトール誘導体、例えば、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール及びビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール;並びに無水チオグリコール酸、p-トルエンスルホン酸、及びそれらの金属塩であり得る。核形成剤は、単独で使用しても、又はそれらの組み合わせで使用してもよい。
【0151】
核形成剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0152】
核形成剤の含有量が先の範囲を満たす場合、結晶化速度を増加させて、成形性を向上させることができ、例えば、ペレットを製造するための切断ステップ中に又は調製方法において結晶化速度を向上させることによって生産性及び加工性をさらに向上させることが可能である。
【0153】
溶融強度向上剤は、反応物の溶融強度を改善するための添加剤である。
【0154】
溶融強度向上剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれの溶融強度向上剤も使用することができる。
【0155】
具体的には、溶融強度向上剤は、ポリエステル、スチレン系ポリマー(アクリロニトリルブタジエンスチレン及びポリスチレンなど)、ポリシロキサン、有機変性シロキサンポリマー、及び無水マレイン酸グラフト化エチレンプロピレンジエンモノマー(MAH-g-EPDM)からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0156】
溶融強度向上剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0157】
溶融強度剤の含有量が先の範囲を満たす場合、このことは、本発明の望ましい効果を達成するのにより有利であり得る。
【0158】
スリップ剤は、押出中のスリップ特性(スリップしやすい特性)を向上させるための、且つフィルム表面が互いに貼り付くことを防止するための添加剤である。
【0159】
スリップ剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれのスリップ剤も使用することができる。例えば、スリップ剤は、エルカミド、オレアミド、及びステアラミドからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0160】
スリップ剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0161】
スリップ剤の含有量が先の範囲を満たす場合、加工性、生産性、及び成形性をさらに向上させることができ、このことは、本発明の望ましい効果を達成するのにより有利であり得る。
【0162】
生分解性樹脂組成物は、さらなる添加剤として架橋剤及び/又は安定剤を含み得る。
【0163】
架橋剤は、PHAの特性を変更し、且つ樹脂の分子量を増加させるための添加剤である。本発明の効果が損なわれない限り、一般的な架橋剤を使用することができる。
【0164】
例えば、架橋剤は、脂肪酸エステル、エポキシ基を含有する(エポキシ化)天然油、ジアリルフタレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、及びビス(2-メタクリロキシエチル)ホスフェートからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0165】
架橋剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0166】
安定剤は、酸化及び熱に対して保護し、且つ変色を防止するための添加剤である。安定剤としては、本発明の効果が損なわれない限り、一般に使用されているいずれの安定剤も使用することができる。
【0167】
具体的には、安定剤は、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸、及び亜リン酸からなる群から選択されるものであり得る。
【0168】
安定剤は、生分解性樹脂組成物の総重量に基づいて、0.01~20重量%、0.01~15重量%、0.01~12重量%、0.01~10重量%、0.01~8重量%、0.01~5重量%、例えば0.2~4.5重量%、例えば0.2~4重量%、又は例えば0.5~3重量%の量で用いられ得る。
【0169】
[生分解性フィルム及び生分解性フィルムを調製するための方法]
本発明の一実施形態によると、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性フィルムが提供される。
【0170】
バイオマス及びPHA樹脂は、上記の通りである。
【0171】
本発明の一実施形態によると、生分解性樹脂組成物から形成された生分解性フィルムが提供される。
【0172】
バイオマス及びPHA樹脂は、上記の通りである。
【0173】
一方で、本発明の一実施形態によると、(1)バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを調製するステップ、並びに(2)生分解性ペレットを成形するステップを含む、生分解性フィルムを調製するための方法が提供される。
【0174】
図1を参照すると、生分解性フィルムを調製するための方法(S100)は、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを調製するステップ(S110)を含む。
【0175】
バイオマス及びPHA樹脂は、上記の通りである。
【0176】
一方で、本発明の一実施形態によると、バイオマスは、エポキシ化バイオマスを含み得る。
【0177】
エポキシ化処理は、アルカリ溶液においてバイオマスをエピハロヒドリンで重合させて、エポキシ重合バイオマスを得るステップ(ステップA)、並びにエポキシ重合バイオマスを濾過して乾燥させるステップ(ステップB)を含み得る。
【0178】
アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化リチウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0179】
使用されるアルカリ溶液の量は、反応組成物の総重量に基づいて、1~10重量%であり得る。ここで、反応組成物は、アルカリ溶液、バイオマス、及びエピハロヒドリンを含み得る。
【0180】
エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリンを含み得る。
【0181】
さらに、使用されるエピハロヒドリンの量は、バイオマスのヒドロキシル基(OH基)1当量に対して、例えば1~200モル、例えば10~200モル、又は例えば50~200モルであり得る。
【0182】
重合は、例えば、25℃~150℃又は25℃~100℃で行うことができる。
【0183】
乾燥は、25℃~80℃で行うことができる。
【0184】
一方で、バイオマス及びPHA樹脂はそれぞれ、粉末、顆粒、又はペレットの形態であり得る。具体的には、バイオマス及びPHA樹脂はそれぞれ、ペレットの形態であり得、バイオマス及びPHA樹脂を含む生分解性樹脂組成物もペレットの形態であり得る。
【0185】
すなわち、本発明による生分解性樹脂組成物は、生分解性フィルム又は生分解性マルチングフィルムを調製する際のマスターバッチとして使用されるため、ペレットの形態であることが好ましい。ペレットの形態の生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂組成物を構成している成分を混合及び溶融し、次いで、これらの成分を二軸押出機などによって押出しながら押出物をペレット化することによって調製することができる。
【0186】
切断ステップは、当技術分野で一般に使用されている限りは限定されることなくペレットカッターを使用して行うことができ、ペレットは、様々な形状を有し得る。
【0187】
さらに、ペレットを乾燥させるステップをさらに行ってもよい。乾燥は、2時間~12時間にわたって60℃~100℃で行うことができる。具体的には、乾燥は、3時間~12時間又は4時間~10時間にわたって、65℃~95℃、70℃~90℃、又は75℃~85℃で行うことができる。ペレットの乾燥ステップ条件が先の範囲を満たすとき、品質をさらに向上させることができる。
【0188】
一方で、本発明の一実施形態によると、PHA樹脂は、第1のPHA樹脂、第2のPHA樹脂、又は第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含み得る。
【0189】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂の種類及び具体的な特性は、上記の通りである。
【0190】
さらに、意図される使用及び物理特性設計に応じて、バイオマス及びPHA樹脂を含む生分解性樹脂組成物は、物理特性改善剤、添加剤、及び/又は生分解性樹脂をさらに含み得る。
【0191】
物理特性改善剤、添加剤、及び生分解性樹脂は、上記の通りである。
【0192】
一方で、バイオマス及びPHA樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを得ることができる。
【0193】
本発明の一実施形態によると、PHA樹脂が第1のPHA樹脂と第2のPHA樹脂との混合樹脂を含む場合、第1のPHA樹脂、第2のPHA樹脂、及びバイオマスを溶融押出して、ペレットを形成することができる。
【0194】
本発明の別の実施形態によると、物理特性改善剤、添加剤、及び生分解性樹脂をさらに用いる場合、PHA樹脂(第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂)、バイオマス、物理特性改善剤、添加剤、及び/又は生分解性樹脂を溶融押出して、ペレットを形成することができる。
【0195】
PHA樹脂及びバイオマスの溶融押出温度は、個別に制御することができる。溶融押出は、120℃~200℃の温度で行うことができる。
【0196】
具体的には、PHA樹脂の押出温度及びバイオマスの押出温度は、同じであっても、又は異なっていてもよい。
【0197】
PHA樹脂の押出温度は、例えば120℃~200℃、例えば120℃~190℃、例えば130℃~180℃、例えば140℃~170℃であり得る。
【0198】
バイオマスの押出温度は、例えば120℃~200℃、例えば120℃~190℃、例えば130℃~180℃、例えば140℃~170℃であり得る。
【0199】
さらに、溶融押出後に、熱処理(ヒートセット)及び/又は乾燥をさらに行うことができる。これらのステップの加工条件としては、本発明の望ましい効果が損なわれない限り、当分野で使用されている加工条件を使用することができる。
【0200】
戻って図1を参照すると、生分解性フィルムを調製するためのプロセス(S100)は、生分解性ペレットを成形するステップ(S120)を含む。
【0201】
成形は、生分解性ペレットを望ましい形状に加工し、次いで、形状が固まり、結晶化が誘発されるように冷却することによって行うことができる。形状は、繊維、フィラメント、フィルム、シート、ロッド、又は他の形状を含むが、形状は、これらに限定されることはない。成形は、押出成形、射出成形、圧縮成形、加圧成形、ブローイング若しくはブロー成形(例えば、ブローフィルム、フォームのブローイング)、カレンダー加工、回転成形、注型(例えば、注型シート、注型フィルム)、又は熱成形などの当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。
【0202】
例えば、押出成形条件は、生分解性フィルムの使用に応じて異なっていてもよく、押出は、一般に使用されている方法によって行うことができる。例えば、押出成形は、二軸押出機を使用して、100℃~180℃で行うことができる。
【0203】
例えば、成形は、ブロー成形を含み得る。
【0204】
ブロー成形条件は、生分解性フィルムの使用に応じて異なっていてもよく、ブロー成形は、一般に使用されている方法によって行うことができる。例えば、生分解性樹脂ペレットは、ブローフィルム押出機を使用して、100℃~180℃でブロー成形することができる。
【0205】
生分解性フィルムは、優れた機械特性、特に、優れた強度及び柔軟性、並びに土壌及び海洋で90%以上の生分解性を特徴とする。
【0206】
生分解性は、同期間における標準物質(例えば、セルロース)と比較した分解の速度を示す。韓国環境部は、生分解性が標準材料と比較して90%以上である生分解性材料を定義している。
【0207】
[生分解性フィルムの物理特性]
本発明の生分解性フィルムは、微生物、水分、酸素、光、及び熱のうちのいずれかによって生分解することができ、優れた機械特性を有する。
【0208】
具体的には、生分解性フィルムは、例えば5~50MPa、10~45MPa、例えば10~40MPa、例えば15~40MPa、又は15~35MPaの引張強度を有し得る。
【0209】
さらに、生分解性フィルムの引張強度は、生分解性フィルムの長手方向(MD)及び横方向(TD)において、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0210】
例えば、生分解性フィルムは、例えば5~50MPa、10~45MPa、例えば10~40MPa、例えば15~40MPa、又は15~35MPaの長手方向(MD)の引張強度を有し得る。
【0211】
生分解性フィルムは、例えば5~50MPa、10~45MPa、例えば10~40MPa、例えば15~35MPa、又は15~30MPaの横方向(TD)の引張強度を有し得る。
【0212】
生分解性フィルムを、長さ100mm及び幅15mmに切断し、ASTM-D882に準拠して50mmのチャック間間隔でINSTRONの万能試験機(4206-001、製造業者:UTM)に取り付ける。試験を25℃の室温で200mm/分の引張速度で実施し、引張強度をデバイスにインストールされたプログラムで測定する。引張強度が先の範囲を満たす場合、生分解性フィルムの生産性、加工性、及び成形性を同時に向上させることが可能である。
【0213】
さらに、生分解性フィルムは、例えば50%~900%、例えば100%~900%、例えば100%~800%、例えば100%~700%、例えば100%~600%、例えば100%~500%、例えば120%~450%、又は例えば150%~450%の伸び率を有し得る。
【0214】
さらに、生分解性フィルムの伸び率は、生分解性フィルムの長手方向(MD)及び横方向(TD)において、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0215】
例えば、生分解性フィルムは、例えば50%~900%、例えば100%~900%、例えば100%~800%、例えば100%~700%、例えば100%~600%、例えば100%~400%、例えば100%~350%、例えば120%~320%、例えば120%~300%、又は例えば120%~250%の長手方向(MD)の伸び率を有し得る。
【0216】
生分解性フィルムは、例えば50%~900%、例えば100%~900%、例えば100%~800%、例えば100%~700%、例えば100%~600%、例えば100%~500%、例えば150%~450%、例えば200%~450%、又は例えば250%~450%の横方向(TD)の伸び率を有し得る。伸び率が先の範囲を満たす場合、このことは、フィルムの柔軟性の点で有利であり得る。
【0217】
生分解性フィルムを、長さ4cm及び幅1cmのサイズに切断し、50mm/分の引張速度でINSTRONの万能試験機(4206-001、製造業者:UTM)によって破断直前の最大変形について測定する。最大変形と初期長さとの比率を伸び率として計算する。
【0218】
一方で、生分解性フィルムは、ひずみ-応力曲線において、例えば50~400MPa、例えば80~350MPa、例えば100~350MPa、又は100~300MPaの引張弾性率を有し得る。引張弾性率が先の範囲を満たす場合、このことは、フィルムの柔軟性の点で有利であり得る。
【0219】
さらに、生分解性フィルムの引張弾性率は、生分解性フィルムの長手方向(MD)及び横方向(TD)において、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0220】
例えば、生分解性フィルムは、例えば100~400MPa、150~350MPa、例えば180~320MPa、又は例えば200~300MPaの長手方向(MD)の引張弾性率を有し得る。
【0221】
生分解性フィルムは、例えば50~300MPa、80~300MPa、例えば100~300MPa、例えば100~250MPa、又は100~200MPaの横方向(TD)の引張弾性率を有し得る。
【0222】
生分解性フィルムを、長さ100mm及び幅15mmに切断し、ASTM-D882に準拠して50mmのチャック間間隔でINSTRONの万能試験機(4206-001、製造業者:UTM)に取り付ける。試験を25℃の室温で200mm/分の引張速度で実施し、引張弾性率をデバイスにインストールされたプログラムで測定する。引張弾性率が先の範囲を満たす場合、生分解性フィルムの生産性、加工性、及び成形性を同時に向上させることが可能である。
【0223】
さらに、生分解性フィルムは、土壌及び海洋で90%以上の生分解性を特徴とする。生分解性は、同期間における標準物質(例えば、セルロース)と比較した分解の速度を示す。韓国環境部は、生分解性が標準材料と比較して90%以上である生分解性材料を定義している。
【0224】
[生分解性マルチングフィルム及び生分解性マルチングフィルムを調製するための方法]
本発明の一実施形態によると、生分解性樹脂組成物から形成された生分解性マルチングフィルムが提供される。
【0225】
具体的には、マルチングフィルムは、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を含む、生分解性樹脂組成物から形成され得る。
【0226】
具体的には、マルチングフィルムは、バイオマス及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)樹脂を溶融押出して、生分解性ペレットを調製するステップ、並びに生分解性ペレットを成形するステップを含む、方法によって調製され得る。
【0227】
成形は、押出成形、射出成形、圧縮成形、加圧成形、ブローイング若しくはブロー成形(例えば、ブローフィルム、フォームのブローイング)、カレンダー加工、回転成形、注型(例えば、注型シート、注型フィルム)、又は熱成形などの当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。具体的には、成形は、例えば、100℃~180℃での押出成形又はブロー成形を含み得る。
【0228】
本発明の一実施形態によると、生分解性樹脂組成物を使用して、土壌及び海洋の両方で生分解することができ、且つ同時に向上した柔軟性及び適度なレベルの強度を有する優れた品質を有し得る、生分解性フィルム及びマルチングフィルムを提供することが可能である。
【0229】
マルチングフィルムの物理特性は、生分解性フィルムの物理特性と同様又は同一であり得る。
【0230】
特に、生分解性樹脂組成物を使用することから、マルチングフィルムは、紫外線を遮蔽するのに効果的であり、それによって、それ自体が紫外線によってエージングすることを防止し、改善された寿命特性をもたらす。
【0231】
さらに、マルチングフィルムは、水分蒸発の抑制、雑草生長の抑制、土壌の肥料成分の損失の抑制、一定の温度及び湿度の機能、並びに保温などの優れた効果をもたらすことができる。
【0232】
発明の態様
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、本発明の範囲は、これらのみに限定されることはない。
【実施例
【0233】
実施例1
以下の表1に示されるように、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂(製造業者:Ankor Bioplastics)、PHA樹脂(3-HB-co-4-HB、aPHA)(製造業者:CJ)、コーヒーかす(コーヒー廃棄物)(製造業者:CJ)、及び二酸系添加剤を溶融押出して、生分解性ペレットを得た。
【0234】
溶融押出を約160℃で行い、押出物を約30℃に冷却し、ペレットカッターで切断して、ペレットを調製した。
【0235】
ペレットを、4時間にわたって約80℃で乾燥させ、約150℃でブロー成形して、生分解性フィルムを調製した。
【0236】
実施例2
以下の表1に示されるように、実施例1のコーヒーかすの代わりにエポキシ化コーヒーかすを使用したことを除いて、実施例1と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0237】
エポキシ化コーヒーかすを、バイオマスとしてのコーヒーかす(コーヒー廃棄物)を2%のNaOHのアルカリ溶液において約5時間にわたって約80℃でエピクロロヒドリンと重合させることによって得た。
【0238】
フィルターを使用してエポキシ重合コーヒーかすを濾過し、5時間にわたって約50℃で乾燥させた。
【0239】
実施例3及び4
以下の表1に示されるように生分解性フィルムの組成を変化させたことを除いて、実施例2と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0240】
実施例5及び6
以下の表1に示されるように、エポキシ化コーヒーかすの代わりにエポキシ化大豆皮を使用し、生分解性フィルムの組成を変化させたことを除いて、実施例2と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0241】
実施例7及び8
以下の表1に示されるように、エポキシ化コーヒーかすの代わりにエポキシ化トウモロコシ穂軸を使用し、生分解性フィルムの組成を変化させたことを除いて、実施例2と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0242】
実施例9及び10
以下の表1に示されるように、エポキシ化コーヒーかすの代わりにエポキシ化セルロースを使用し、生分解性フィルムの組成を変化させたことを除いて、実施例2と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0243】
実施例11
以下の表1に示されるように、コーヒーかすの代わりにリグニンを使用し、生分解性フィルムの組成を変化させたことを除いて、実施例1と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0244】
実施例12
以下の表1に示されるようにリグニンの代わりにエポキシ化リグニンを使用したことを除いて、実施例11と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0245】
比較例1
以下の表1に示されるように、生分解性フィルムがPBAT樹脂及び熱可塑性デンプン(TPS)のみを含みPHA及びバイオマスを含まないことを除いて、実施例1と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0246】
比較例2
以下の表1に示されるように、生分解性フィルムがPBAT樹脂及びコーヒーかすのみを含みPHA樹脂を含まないことを除いて、実施例1と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0247】
比較例3
以下の表1に示されるように、コーヒーかすの代わりにエポキシ化コーヒーかすを使用したことを除いて、比較例2と同じ手段で生分解性フィルムを調製した。
【0248】
試験例
試験例1:引張強度
実施例及び比較例で調製した生分解性フィルムを、長さ100mm及び幅15mmにそれぞれ切断し、ASTM-D882に準拠して50mmのチャック間間隔でINSTRONの万能試験機(4206-001、製造業者:UTM)に取り付けた。試験を25℃の室温で200mm/分の引張速度で実施し、引張強度をデバイスにインストールされたプログラムで測定した。
【0249】
試験例2:伸び率
実施例及び比較例で調製した生分解性フィルムを、長さ4cm及び幅1cmのサイズにそれぞれ切断し、50mm/分の引張速度でINSTRONの万能試験機(4206-001、製造業者:UTM)によって破断直前の最大変形について測定した。最大変形と初期長さとの比率を伸び率として計算した。
【0250】
実施例及び比較例で得られた生分解性フィルムの引張強度及び伸び率は、以下の表1に要約されている。
【0251】
【表1】
【0252】
先の表1から分かるように、実施例1~12の生分解性フィルムは、比較例1~3の生分解性フィルムと比較して、引張強度及び伸び率が著しく優れていた。さらに、実施例1~12の生分解性フィルムは、土壌及び海洋の両方で生分解性であった。
【0253】
具体的には、実施例1~12の生分解性フィルムは、PHA樹脂と、コーヒーかす、大豆皮、トウモロコシ穂軸、セルロース、又はリグニンのバイオマスとを含んでいたため、引張強度は、約7.57~約24.57MPaであり、伸び率は、約50.48%~約778.00%であり、適度な強度を維持しながら優れた柔軟性を示した。さらに、実施例の生分解性フィルムのほとんどは、100%~900%の範囲の伸び率で非常に優れていた。
【0254】
対照的に、PBAT樹脂及びTPSのみを含みバイオマス及びPHA樹脂を含まない比較例1のフィルムでは、引張強度及び伸び率は優れているが、土壌及び海洋での生分解性が、実施例1~12の生分解性フィルムの生分解性より著しく低いか、又は生分解が長い期間を必要とし得ると予想される。
【0255】
さらに、PBAT樹脂及びコーヒーかすのみを含みPHA樹脂を含まない比較例2及び3のフィルムでは、引張強度及び伸び率は、PHA樹脂及びコーヒーかすを含む実施例3及び4の生分解性フィルムと比較して、著しく低下している。さらに、PHA樹脂を含まない比較例2及び3のフィルムでは、土壌及び海洋での生分解性が、実施例1~12の生分解性フィルムの生分解性より著しく低いか、又は生分解が長い期間を必要とし得ると予想される。
【0256】
一方で、バイオマスがエポキシ化されているかどうかに応じて、引張強度及び伸び率が異なることが確認された。
【0257】
具体的には、実施例2の生分解性フィルムは、実施例1の生分解性フィルムの組成と同じ組成を有していたにもかかわらず、エポキシ化バイオマスを使用したとき、引張強度は約15.61MPaであり、伸び率は約277.60%であり、このことは、引張強度及び伸び率が、約13.16MPaの引張強度及び約56.92%の伸び率を有する実施例1の生分解性フィルムと比較して、著しく増加したことを示した。
【0258】
したがって、生分解性フィルムがPHA樹脂及びエポキシ化バイオマスを含む場合、適度な引張強度を維持しながら伸び率を向上させることができ、この生分解性フィルムは土壌及び海洋の両方で生分解性を有するため、優れたフィルムを達成することができる。

図1
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-02-02
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0077
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0077】
第1のPHA樹脂及び第2のPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(T)、及び溶融温度(Tm)の点で区別され得る。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0096
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0096】
aPHA樹脂及びscPHA樹脂は、4-HB繰り返し単位の含有量、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(T)、溶融温度(Tm)などの点で区別され得る。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0251
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0251】
【表1】
【国際調査報告】