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特表2024-526998ロスマピモドによる顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ロスマピモドによる顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4418 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/4418
A61P21/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504475
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022038589
(87)【国際公開番号】W WO2023009672
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/203,628
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/320,510
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/328,975
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/344,844
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520117639
【氏名又は名称】フルクラム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メリオン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アコルシ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャス,アレハンドロ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
(57)【要約】
本明細書では、一部には、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者にロスマピモドを投与することを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、
前記患者に15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与することを含み、
前記少なくとも40週間後、前記患者は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)によって測定される筋肉の健康状態が改善される、方法。
【請求項2】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の進行のリスクが高い筋肉中の脂肪蓄積の低減を、それを必要とする患者において行う方法であって、
15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与すること
を含む方法。
【請求項3】
前記少なくとも40週間後、前記筋肉は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)によって測定される低減した脂肪蓄積を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)を使用して前記筋肉を画像化して、筋肉の健康の尺度と、前記患者の臨床アウトカム評価との間の相関関係を決定することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記筋肉の健康の尺度は、筋脂肪分率(MFF)、筋脂肪浸潤(MFI)及び除脂肪筋量(LMV)からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記臨床アウトカム評価は、到達可能なワークスペース(RWS)、相対表面積(RSA)及びタイムアップアンドゴー(TUG)テストからなされた評価からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記筋肉は、前記患者にロスマピモドを投与する前に、約0.10未満の筋脂肪浸潤(MFI)及び約0.50未満の筋脂肪分率(MFF)によって特徴付けられる、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記筋肉は、前記患者にロスマピモドを投与する前に、約0.10以上の筋脂肪浸潤(MFI)及び約0.50未満の筋脂肪分率(MFF)によって特徴付けられる、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも48週間にわたって投与することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記FSHDは、FSHD1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記筋肉は、上肢の筋肉及び下肢の筋肉からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記筋肉は、肩外転筋及び足首背屈筋からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記肩外転筋は、両側の肩外転筋、利き側の肩外転筋及び非利き側の肩外転筋からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001] 本出願は、2021年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/203,628号、2022年3月16日に出願された米国仮特許出願第63/320,510号、2022年4月8日に出願された米国仮特許出願第63/328,975号及び2022年5月23日に出願された米国仮特許出願第63/344,844号に対する優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 筋ジストロフィー(MD)は、動作を制御する骨格筋の進行性の筋力低下及び変性によって特徴付けられる、30を超える異なる遺伝性疾患の群である。MDの一部の形態は、乳児期又は小児期に発症するが、他の形態は、中高年まで現れないことがある。様々なMD疾患は、筋力低下の分布及び程度(MDの一部の形態は、心筋にも影響を与える)、発症年齢、進行速度並びに遺伝パターンの点で異なる。
【0003】
[0003] 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、3番目に一般的な筋ジストロフィーの形態である。FSHDは、DUX4遺伝子のエピジェネティックな抑制解除をもたらす遺伝子変異によって引き起こされ、これにより、この疾患は、筋ジストロフィーの中でも独特なものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004] 現在、FSHDの影響を停止又は逆転することができる承認された治療はないが、快適性及び可動性を改善するために、多くの場合、非ステロイド系抗炎症薬が処方される。FSHDを治療する新しい方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
[0005] 本開示は、一部には、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の治療を、それを必要とする患者において行う方法を提供する。
【0006】
[0006] 一実施形態では、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与することを含む方法が本明細書で提供され、少なくとも40週間後、患者は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)によって測定される筋肉の健康状態が改善される。
【0007】
[0007] 別の実施形態では、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の進行のリスクが高い筋肉中の脂肪蓄積の低減を、それを必要とする患者において行う方法であって、15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面の簡単な説明
図1】[0008]実施例1の臨床研究の概略図を示す。
図2】[0009]臨床アウトカム評価に関する局所相関複合研究に含まれる筋肉の種類を示す。
図3A】[00010]実施例1の研究の例示的な薬物動態及びターゲットエンゲージメントの結果を示す。血漿中のロスマピモド濃度を示す。赤色の点は、平均濃度をng/mL単位で表し、エラーバーは、標準誤差(SE)を表す。
図3B】[00010]実施例1の研究の例示的な薬物動態及びターゲットエンゲージメントの結果を示す。各時点のプラセボレベルに対するリン酸化HSP27と総HSP27との比率によって決定される、血液中のターゲットエンゲージメントを示す。オレンジ色の四角は、平均及びエラーバー(SE)を表す。
図4】[00011]実施例1の研究の選択された副次的及び探索的有効性評価項目を示す。
図5A】[00012]筋針生検におけるDUX4駆動型遺伝子発現の各測定値を示す散布図によって示されるように、実施例1の研究から得られた例示的なDUX4駆動型遺伝子発現分布及び不均一性の結果を示す。統合したベースライン値及びポストベースライン値(16週目及び36週目)を示す。
図5B】[00012]筋針生検におけるDUX4駆動型遺伝子発現の各測定値を示す散布図によって示されるように、実施例1の研究から得られた例示的なDUX4駆動型遺伝子発現分布及び不均一性の結果を示す。16週目又は36週目の来院で分けられた集団を示す。16週目では、プラセボについてn=21、ロスマピモドについてn=24である。36週目では、プラセボについてn=17、ロスマピモドについてn=15である。線は、1群当たりの平均を表す。
図6】[00013]実施例1の研究の選択された副次的及び探索的有効性評価項目を示す。
図7】[00014]実施例1の研究からの例示的な変化に対する患者の全体的印象の内訳を示す。応答の内訳は、PGIC評価における時点ごとのパーセンテージである。各時点の参加者の数は、上部に表示されている。
図8】[00015]実施例1の研究からの例示的な到達可能なワークスペースの結果を示す。
図9】[00016]到達可能なワークスペースの例示的な年間変化率を示す。年間変化パーセントを推定するために、線型混合効果モデルを用いて年間変化率を計算した(y軸)。凡例に示されるように、オレンジ色の線は、ロスマピモドを表し、青色の線は、プラセボを表す。淡い線は、ロスマピモド及びプラセボの標準誤差を表す。
図10】[00017]実施例1の研究からの例示的な筋力測定結果を示す。
図11】[00018]FSHD-TUG、MFM及びFSHD-HIを含む、実施例1の研究の他の例示的な評価項目を示す。
図12A】[00019]ロスマピモドを受けているFSHD患者の筋肉のエコー輝度zスコア(<2、2~4、4~6及び>6)の分布をベースライン対60週目で示す。
図12B】[00019]15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者における複数の筋肉及び筋肉群のエコー輝度の、ベースラインから60週目までの変化を示す。
図13A】[00020]ベースラインにおけるFSHD患者の上肢のエコー輝度zスコア対到達可能なワークスペースの相関関係を示す。
図13B】[00020]15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者の60週目における上肢のエコー輝度zスコア対到達可能なワークスペースの相関関係を示す。
図14A】[00021]ベースラインにおけるFSHD患者の前脛骨筋のエコー強度と、足首背屈のハンドヘルド筋力測定データとの相関関係を示す。
図14B】[00021]15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者の60週目における前脛骨筋のエコー強度と、足首背屈のハンドヘルド筋力測定データとの相関関係を示す。
図15A】[00022]ベースラインにおけるFSHD患者の下肢のエコー強度対タイムアップアンドゴー(TUG)の相関関係を示す。
図15B】[00022]15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者の60週目における下肢のエコー強度対TUGの相関関係を示す。
図16】[00023]15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者における実施例4のウェアラブルセンサー研究の概略図を示す。
図17】[00024]実施例4のウェアラブルセンサー研究におけるFSHD患者の実現可能性及びコンプライアンスの結果を示す。
図18】[00025]実施例4のウェアラブルセンサー研究におけるFSHD患者の分析、処理及び信頼性の結果を示す。
図19】[00026]実施例4のウェアラブルセンサー研究におけるFSHD患者の臨床的変数と、ウェアラブルセンサー変数との間の相関データを示す。
図20】[00027]実施例4のウェアラブルセンサー研究におけるクリニック内変数とウェアラブル変数との間の身体障害部位の結果を示す。
図21】[00028]実施例4のウェアラブルセンサー研究において、1年のロスマピモド治療期間にわたり、図20の群によって分類されたFSHD患者の歩行速度によって測定される身体機能を示す。
図22】[00029]実施例1の研究において、15mgのロスマピモドを1日2回受けているFSHD患者における、重りを用いた総RSAの最新の年間変化率を示す。
図23】[00030]実施例1の研究において、15mgのロスマピモドを1日2回受けている患者における、重りを使用した場合及び重りなしの場合を含むドメインごとのRSAの年間変化率並びに総RSAを示す。
図24】[00031]実施例1の研究において、15mgのロスマピモドを1日2回受けている患者のMFIの年間変化率、MFFの年間変化率及びLMVの年間変化率を示す。
図25】[00032]実施例1の研究において、15mgのロスマピモドを1日2回受けている患者のTUG平均完了時間の年間変化率を示す。
図26】[00033]実施例1の研究において、15mgのロスマピモドを1日2回受けている患者の手の握り及び肩の最大随意等尺性収縮試験(MVICT)の変化を示す。
図27】[00034]実施例1の非盲検研究(OLS)における探索的な年換算の到達可能なワークスペース(RWS)分析からの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
[00035] 本開示全体を通して、種々の特許、特許出願及び刊行物が参照される。これらの特許、特許出願及び刊行物の開示は、本開示の日付の時点で当業者に知られている従来技術をより詳細に説明するために、参照によりその全体が本開示に援用される。特許、特許出願及び刊行物と本開示との間に矛盾がある場合、本開示が優先されることになる。
【0010】
定義
[00036] 「個体」、「患者」又は「対象」は、本明細書では互換的に使用され、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ又は霊長類及びヒトなどの哺乳類を含むあらゆる動物を含む。本明細書に記載される化合物は、ヒトなどの哺乳類に投与することができるが、獣医学的治療を必要とする動物などの他の哺乳類、例えば飼育動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)に投与することもできる。本明細書に記載される方法で治療される哺乳類は、望ましくは、本明細書に記載される障害の治療が望まれる哺乳類、例えばヒトである。
【0011】
[00037] 本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合った塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られている。例えば、S. M. Bergeらは、参照により本明細書に援用されるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において、薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機及び有機酸並びに無機及び有機塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容される無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸などの有機酸を用いて、或いはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。
【0012】
[00038] 適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C1~4アルキル)塩を含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらなる薬学的に許容される塩は、適切な場合、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン及びアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを用いて形成される無毒性アンモニウム、第4級アンモニウム及びアミンカチオンを含む。
【0013】
[00039] 他に明言されない限り、本明細書に記載される構造は、その構造の全てのエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何(又は立体配座)異性体、例えば各不斉中心のR及びS配置、Z及びE二重結合異性体並びにZ及びE配座異性体を含むことも意味する。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何(又は立体配座)異性体の混合物は、本開示の範囲内に含まれる。他に明言されない限り、本開示の化合物の全ての互変異性体は、本開示の範囲内に含まれる。
【0014】
[00040] 「治療有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって探求されている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発し得る主題の化合物の量を含む。本明細書に記載される化合物、例えば本明細書に記載されるp38α/β MAPK阻害薬は、状態、例えば本明細書に記載される状態を治療するために治療有効量で投与される。代わりに、化合物の治療有効量は、所望の治療及び/又は予防効果を達成するために必要とされる量、例えばその状態に関連する症状の予防又は低減をもたらす量である。
【0015】
[00041] 本明細書で使用される場合、「Wk」は、週を指す。
【0016】
[00042] 本明細書に記載される化合物、例えば本明細書に記載されるp38α/β MAPK阻害薬は、薬学的に許容される担体を用いて医薬組成物として配合し、様々な経路によって投与することができる。いくつかの実施形態では、このような組成物は、経口(PO)投与のためのものである。いくつかの実施形態では、このような組成物は、非経口(注射による)投与のためのものである。いくつかの実施形態では、このような組成物は、経皮(TD)投与のためのものである。いくつかの実施形態では、このような組成物は、静脈内(IV)投与のためのものである。いくつかの実施形態では、このような組成物は、筋肉内(IM)投与のためのものである。このような医薬組成物及びその調製方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A. Gennaro, et al., eds., 19th ed., Mack Publishing Co., 1995)を参照されたい。
【0017】
使用方法及び治療
[00043] 本開示は、別の実施形態において、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、本明細書に記載される治療薬、例えばp38α/β MAPK阻害薬を患者に投与することを含む方法も提供する。特定の実施形態では、p38α/β MAPK阻害薬は、式(I):
【化1】

の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0018】
[00044] 別の実施形態では、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与することを含む方法が本明細書で提供され、少なくとも40週間後、患者は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)によって測定される筋肉の健康状態が改善される。
【0019】
[00045] 別の実施形態では、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の進行のリスクが高い筋肉中の脂肪蓄積の低減を、それを必要とする患者において行う方法であって、15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも40週間にわたって投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0020】
[00046] いくつかの実施形態では、少なくとも40週間後、筋肉は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)によって測定される低減した脂肪蓄積を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、全身筋骨格磁気共鳴イメージング(WB-MSK-MRI)を使用して筋肉を画像化して、筋肉の健康の尺度と、患者の臨床アウトカム評価との間の相関関係を決定することを含む。いくつかの実施形態では、筋肉の健康の尺度は、筋脂肪分率(MFF)、筋脂肪浸潤(MFI)及び除脂肪筋量(LMV)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、臨床アウトカム評価は、到達可能なワークスペース(RWS)、相対表面積(RSA)及びタイムアップアンドゴー(TUG)テストからなされた評価からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、筋肉は、患者にロスマピモドを投与する前に、約0.10未満の筋脂肪浸潤(MFI)及び約0.50未満の筋脂肪分率(MFF)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、筋肉は、患者にロスマピモドを投与する前に、約0.10以上の筋脂肪浸潤(MFI)及び約0.50未満の筋脂肪分率(MFF)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、筋肉は、患者にロスマピモドを投与する前に、約0.50以上の筋脂肪分率(MFF)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、本方法は、患者に15mgのロスマピモドを1日2回、少なくとも48週間にわたって投与することを含む。いくつかの実施形態では、FSHDは、FSHD1である。いくつかの実施形態では、筋肉は、上肢の筋肉及び下肢の筋肉からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、筋肉は、肩外転筋及び足首背屈筋からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、肩外転筋は、両側の肩外転筋、利き側の(dominant)肩外転筋及び非利き側の肩外転筋からなる群から選択される。
【0021】
[00047] 他の実施形態では、本明細書に記載される方法における患者の治療は、総相対表面積(Q1~Q5)の到達可能なワークスペースの定量化(例えば、利き腕に500gの手首の重りを有する)、神経障害における生活の質の上肢スケール(Neuro-QoL UE)、変化に対する患者の全体的印象(PGIC)及び筋肉超音波検査を含むが、これらに限定されない、患者の評価によって評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法における患者の治療は、慢性疾患治療の機能評価(FACIT)によって評価される。いくつかの実施形態では、前記方法は、15mgのロスマピモドを、それを必要とする患者に1日2回投与することを含む。
【0022】
[00048] いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法における患者の治療は、患者報告アウトカム(PRO)によって評価される。いくつかの実施形態では、PROは、身体機能のPROである。本明細書に記載されるPROによって測定される例示的な身体機能は、可動性、上肢の器用さ、日常活動、顔面機能(例えば、微笑、言語コミュニケーション)、中枢/軸機能、痛み、疲労、上肢可動域、上肢脱力、中央部の脱力、下肢脱力、顔面脱力及び下垂足を含むが、これらに限定されない。
【0023】
化合物
[00049] 一実施形態では、本開示の方法は、治療有効量の式(I)の化合物(本明細書では「ロスマピモド」とも称される)の投与を含む。ロスマピモドは、p38α/β MAPKの阻害薬であり、化学名6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル-)-ニコチンアミド及び構造:
【化2】

を有する。
【0024】
[00050] ロスマピモドを調製するのに適した方法は、例えば、米国特許第7,125,898号に開示されている。
【実施例
【0025】
実施例
[00051] 以下に記載される実施例は、本明細書で提供される化合物、医薬組成物及び方法を説明するために提供され、決してその範囲を限定すると解釈されてはならない。
【0026】
実施例1.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療におけるロスマピモドの有効性及び安全性についての48週間の無作為化二重盲検プラセボ対照研究
[00052] これは、非盲検継続投与(OLE)を伴う、FSHDを有する対象におけるロスマピモドの有効性及び安全性についての48週間の第2b相無作為化二重盲検プラセボ対照の国際的な並行群間研究(RCT)であり、FSHDの治療におけるロスマピモドの有効性を評価するように設計及び実施された。
【0027】
[00053] この治験は、2つの部分:RCT治療期間及びOLE期間(全ての対象がロスマピモドで治療される)で実施されている。RCT期間では、FSHD対象におけるロスマピモドの有効性及び安全性を最長48週間にわたって評価した。OLE期間は、継続中である。
【0028】
[00054] 80人の対象を1:1で無作為化して、ロスマピモド又はプラセボの15mg錠剤をBIDで経口投与した。RCT期間は、24週間継続する予定であった。COVID-19パンデミックのため、それは、48週間に修正された。OLE期間は、販売が承認されるか又はスポンサーが研究を停止するまで継続中である(図1)。77人の対象がRCT期間を完了した。16人の対象は、Wk24の来院を完了した後にOLEに入った(COVID19による修正前)。60人の対象は、Wk48の来院後にOLEに入った。1人の対象は、RCTを完了した後にOLEを辞退した。一般的な選択規準は、年齢18~65歳、FSHD1の診断の確定、スクリーニング時のRicciスコア2~4及びセントラルリーダーによって決定される、MRIによる針生検で安全にアクセスできるSTIR+筋肉であった。
【0029】
[00055] 主要評価項目は、骨格筋における選択されたDUX4調節性遺伝子転写物の複合尺度によって評価されるDUX4発現の変化であった。副次的評価項目は、安全性及び忍容性(AE)、進行のリスクが高い筋肉(B筋肉と分類される)における筋脂肪浸潤(MFI)、筋脂肪分率(MFF)及び除脂肪筋量(LMV)の事前指定されたWB-MSK-MRI複合スコア並びにPK(血漿及び筋肉)/ターゲットエンゲージメント(血液)を含んだ。探索的評価項目は、2つのPRO(変化に対する患者の全体的印象[PGIC]アンケート及びFSHD-健康指標[FSHD-HI])の変化の評価と、肩及び近位腕を含む個々の上肢の全体的な機能を測定する3D運動センサーに基づくアウトカム評価である到達可能なワークスペース(RWS);対象が座位から立ち上がり、3m歩いてから椅子に戻るまでにかかる時間を測定するタイムアップアンドゴー[TUG];FSHD-TUG;ハンドヘルド手動筋力測定によって測定される筋力(肩の外転、肘の屈曲/伸長、足首の背屈及び手の握り)並びに運動機能尺度ドメイン1(MFM)を含むFSHD関連のCOAとであった。
【0030】
[00056] 全ての無作為化対象が有効性分析に含まれ、対象は、無作為化治療に従って分析された(最大の解析対象集団)。主要評価項目など、ベースライン後のフォローアップが1回のみである有効性評価項目は、共分散分析(ANCOVA)アプローチを用いて分析した。副次的及び探索的有効性評価項目など、ベースライン後のフォローアップが2回以上ある有効性評価項目は、反復測定の混合効果モデル(MMRM)を用いて分析した。階層的な仮説検定は、主要評価項目から始まり、次にLMV、次にFSHD-TUGを行った。他の副次的及び探索的分析は、階層的な優先順序付けを行わずに事前指定された。
【0031】
方法
Ricciスコア
[00057] Ricciスコアは、患者の身体障害の十分に確立された測定基準である。スコアは、0~10の範囲であり、0は、筋力低下がないことを示し、10は、車椅子への依存を示す。
【0032】
統計的方法
[00058] 効果量を0.70と仮定すると、プラセボ対照治療期間中の16週後又は36週後(筋生検が実施されたときによる)、患部の骨格筋でのDUX4活性のベースラインからの変化においてロスマピモドとプラセボとの差を検出するために、有意水準0.05の両側検定で80%の検定力を提供するには、68人の対象(各群につき34人の対象)のサンプルサイズが必要であると考えられた。対象の約10%が評価不能であると仮定すると、約76人の対象をロスマピモド及びプラセボに1:1の比率でランダムに割り当てることが必要であった(1群につき38人の対象)。
【0033】
[00059] 対象は、ベースライン来院時(1日目)、ロスマピモド(活性薬物)又はプラセボを受けるように、1:1の配分比を用いてランダムに割り当てられた。無作為化は、治療の割り当てがFSHD反復数カテゴリー(すなわち1~3反復対4~9反復)にわたって釣り合うことを確実にするために層別化された。双方向応答技術(IRT)システムを使用して、無作為化スケジュールに従って治験薬を投与した。
【0034】
[00060] 全ての有効性分析は、無作為化治療群に従って最大の解析対象集団(FAS)を用いて実施した。主要評価項目のDUX4活性のベースラインからの変化(DUX4スコア1)は、固定効果として治療群及びFSHD反復数カテゴリー(1~3反復対4~9反復)を、また共変数としてベースラインDUX4スコア1を使用し、共分散分析アプローチを用いて分析した。主要評価項目が満たされなかったため、多重性調整は、実施されなかった。
【0035】
[00061] ベースライン後のフォローアップが2回以上である連続的な副次的及び探索的有効性評価項目は、従属変数としてベースラインからの変化を、また固定効果として治療群、来院、治療群-来院相互作用及びFSHD反復数カテゴリーを、また共変数としてベースライン値を使用し、反復測定の混合効果モデル(MMRM)を用いて分析した。非構造化共分散行列を使用して、各対象における反復測定間の相関関係をモデル化した。Kenward-Roger近似を使用して、分母の自由度を推定した。
【0036】
[00062] RWS RSAスコアは、固定効果として治療群を、また変量効果として切片、時間及び治療群-時間相互作用を使用し、FSHD反復数カテゴリー及び地域(米国、カナダ及びEU)を調整して、線型混合効果モデルを用いても分析した。
【0037】
[00063] プラセボ対照治療期間は、二重盲検法で実施した。治験責任医師、治験スタッフ、対象、スポンサー及びモニターは、研究終了まで治療について盲検化されたままであった。
【0038】
[00064] 一次分析及び主要な二次分析の試験の階層は、以下のように順序付けた:16週目又は36週目の統合したDUX4活性(DUX4スコア1)のベースラインからの変化、48週目の縦方向全身LMV複合スコアのベースラインからの変化及び48週目のFSHD TUGの平均完了時間のベースラインからの変化。これらは、それぞれ5%有意水準で試験された。他の副次的及び探索的評価項目は、階層的な優先順序付けを行わずに、事前指定された通りに分析した(他に言及されない限り)。
【0039】
[00065] 全ての安全性分析は、治療したままの治療群に基づいて安全性分析セットを用いて実施した。安全性分析は、TEAE、臨床検査、バイタルサイン及びECGの概要を含んだ。
【0040】
筋針生検
[00066] 筋針生検は、Bergstrom針若しくは細針を用いてD1及びWk16に実施するか、又はWk16に筋生検を実施できなかった場合にはWk36に実施した。生検する筋肉の選択は、スクリーニング中に撮影されたMRIから情報を得て、治験責任医師によって決定された。10%≦MFF≦40%のSTIR+筋肉のみが生検の対象となった。これまでの研究により、STIR+筋肉においてDUX4活性が検出される確率が高いことが実証された。両側の外側広筋、内側広筋、外側腓腹筋、内側腓腹筋及び前脛骨筋を、セントラルリーダーを用いてMRIによって適格性について評価した。Wk16又はWk36の筋針生検は、治療前(D1)筋生検と同じ近似位置で実施した。ベースライン時、針生検の位置を特定するためにMRI基準を配置した。最も近い基準に関する座標により、筋生検の位置を定義した。格子を使用して基準の配置を記録し、したがってWk16又はWk36の時点でその位置(したがって生検する領域)が特定され得る。各生検で約15~40mgの組織を採取し、切除後60秒以内に液体窒素中で凍結させ、分析まで-80℃で貯蔵した(SciSafe Inc. Billerica, MA, USA)。
【0041】
筋生検におけるRT-qPCRによるDUX4調節性転写物の分析
[00067] DUX4調節性遺伝子転写物の分子パネル(CCNA1、KHDC1L、MBD3L2、PRAMEF6、SLC34A2及びZSCAN4、参照遺伝子としてTBP、HMBS、CDKN1B)を用いて、各筋針生検(D1及びWk16又はWk36)で採取した筋組織をDUX4活性について分析した。確証されたアッセイ(Fluidigm)を用いて、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)からの生のサイクル閾値(Ct)をDUX4調節性遺伝子に対して決定した。サンプル(通常、複製される)ごとの1遺伝子当たりの生のCtを、盲検化された科学者によって参照遺伝子値に対して正規化した。参照遺伝子は、全ての遺伝子対について30%未満の変動係数を有することが確認された。サンプル-分析物平均Ct値(分析物別及びサンプル別の算術平均)は、アッセイされたサンプルにおけるその分析物の相対存在量レベルを表す。各参照遺伝子値のサンプル-分析物平均の算術平均(シグナルの幾何平均)は、そのサンプルの全ての標的分析物によって使用されるサンプル参照値である。各サンプル/分析物の反転デルタCt値は、30と、標的分析物Ct及び参照Ct値の差との間の差である。30は、通常、最大サイクルであり、デルタCt値の反転を可能にするため、最初の差が使用される。6つの転写物の全てにわたる対象別、時点別の反転デルタCt値の平均は、DUX4駆動型遺伝子発現(主要評価項目)である。
【0042】
WB-MSK MRI
[00068] 5つの異なるセクションで画像を取得した。四肢がMRIスキャナーの中心になるように患者の体位を変えた後、回旋腱板は、頸部コイルを使用し、胴体及び脚は、前面コイル及び一体型テーブルコイルを使用し、及び上肢は、表面及びテーブルコイルを使用して画像化した。
【0043】
[00069] 両側の18の筋肉、合計36の筋肉のT1強調Dixon画像を取得し、スキャナー内臓の位相敏感再構成(Siemens:Dixon-Vibe;Philips:mDixon)を用いて水及び脂肪画像を再構成した。各筋肉に対して3つの異なる尺度を計算した。筋脂肪分率(MFF)は、筋膜内の総脂肪分率である。筋脂肪浸潤(MFI)は、筋組織内の広範性の脂肪浸潤を表し、50%未満の脂肪を含有する筋肉ボクセルの脂肪分率と定義される。したがって、MFIは、末期でない筋組織のMFFを測定する。除脂肪筋量(LMV)は、機能性筋組織の総量を表し、筋肉量内の全ての脂肪を除去することによって測定される。各筋肉は、正常に見える(カテゴリーA、MFI<0.10;MFF<0.50)、中間(カテゴリーB、MFI≧0.10;MFF<0.50)及び後期(カテゴリーC、MFF≧0.50)として、これらの尺度に基づいて分類され、先行文献によって支持された。
【0044】
[00070] 2つの複合スコアを使用して、治療有効性及び関連の臨床アウトカム評価との相関関係を評価した。治療有効性の複合スコアは、信号品質に問題がなく、両方の観察時点で測定可能である、ベースラインで正常に見えるか又は進行のリスクが高いと特定された筋肉(カテゴリーA又はB筋肉)のみを含む。相関関係の局所的な複合スコアは、そのカテゴリー化に関係なく、対象となる特定の機能評価に関与した全ての筋肉から構成される(図2)。このスコアは、治療評価情報を入手することが不可能なMRIサービスプロバイダー(AMRA Medical Inc.)の科学者によって盲検法で得られた。品質に大きい問題のある筋肉(すなわち欠側値のある筋肉)の測定は、補完された。後期の筋肉は、正確な定量を困難にする高脂肪分率を有し、既に機能していない可能性が高いため、これらは、分析に含めなかった。
【0045】
[00071] 反復測定の混合効果モデル(MMRM)を使用して、固定効果として反復数カテゴリー、治療群、来院及び治療-来院相互作用を、また共変数としてパラメーターのベースライン値を用いて、各複合MRIスコア(MFFtotal、LMVtotal及びMFItotal)のベースラインからの変化を分析した。ベースラインからの群内LS平均変化、関連のSE及び両側95%CI、12週目及び48週目におけるベースラインからのLS平均変化の治療差並びに関連の両側95%CI及び両側p値は、MMRMから導出された。
【0046】
薬物動態及びターゲットエンゲージメント
[00072] PK評価(血漿ロスマピモド濃度)のための血液サンプルは、D1、Wk4、Wk16及びWk36に以下の時点で採取した:投与直前及び治験用量投与の4時間(±30分)後(およそのCmax)。PKサンプルは、可能な場合、Wk12、Wk24及びWk48の来院中の投与後、好ましくは投与の1時間以上後にも採取した。
【0047】
[00073] 血漿及び筋肉ロスマピモド濃度は、PPD,USA(PPD2019)による2つの確証された生物分析高速液体クロマトグラフィー法によって測定した。
【0048】
[00074] ターゲットエンゲージメントのための血液サンプルは、D1及びWk16又はWk36にPKサンプルと同じ投与前及び投与後の時点で採取した。
【0049】
[00075] 総熱ショックタンパク質27(HSP27total)及びリン酸化熱ショックタンパク質27(pHSP27)の測定のための血液サンプルは、EDTA含有チューブに採取した。2mLの全血をソルビトールによって室温で30分間にわたってエキソビボで刺激して、p38a/b MAPK活性の尺度としてHSP27のリン酸化を誘導した。ソルビトール刺激は、血中のp38a/b MAPK経路を活性化し、ロスマピモドによるp38a/b MAPK経路の阻害のよりロバストな検出を可能にする。続いて、サンプルを氷上で溶解させ、溶解物を-80℃で凍結させた。pHSP27及びHSP27totalは、確証された酵素結合免疫吸着検定法(Cambridge Biomedical Inc., Boston, MA, USA及びImmunologix, Tampa, FL, USA)によって測定した。pHSP27及びHSP27totalの両方のアッセイ間及びアッセイ内精度は、5回の再現で実行されてCV25%未満という事前承認された基準を満たし、pHSP27のLLOQは、20.7ng/mLに、ULOQは、470.1ng/mLに設定され、HSP27totalのLLOQは、105.2ng/mLに、ULOQは、2168.1ng/mLに設定された。
【0050】
臨床アウトカム評価(COA)
[00076] 全ての臨床アウトカム評価は、高度に訓練された理学療法士によって実施された。
【0051】
到達可能なワークスペース
[00077] RWSは、16週目を除く全ての来院時に実施された。これは、対象のRWSを目立たないように検出することができる単一の3Dセンサーベースのシステム((Microsoft Kinect)を使用し、肩及び近位腕を含む個々の全体的な上肢(UE)機能を反映する。RWSは、高い信頼性、再現性、表面的妥当性、実現可能性、変化に対する感度を有し、FSHD及び他の神経筋障害の臨床アウトカム評価(COA)として有望である。
【0052】
[00078] 評価中、患者は、Microsoft Kinectセンサーの前に座り、TVモニターを見ながら、標準化されたUE動作プロトコルを受けた。評価は、500gの重りを使用した場合及び使用しない場合で1回の来院につき2回実施した。スポンサーにより、全ての現場に同じ標準化されたソフトウェア及びハードウェアが提供され、訓練された。セントラルリーダーは、研究の全ての現場にわたるRWSの訓練、品質管理、データ分析及び標準化の責任を担った。
【0053】
タイムアップアンドゴー
[00079] TUG評価は、Wk16を除く全ての来院時に実施した。TUG試験は、対象の可動性を評価するために使用される簡単な試験であり、静的バランス及び動的バランスの両方を必要とする。TUGは、人が椅子から立ち上がって3メートル歩き、向きを変え、椅子まで歩いて戻って座るのにかかる時間を測定する確証された手段である。対象は、その通常の履き物と、その通常の歩行補助具とを使用した(歩行器は許されない)。患者は、仰向けの位置から開始し、その後、起き上がり、TUGを完了し、再び横になるという修正された試験(FSHD TUG)でも時間を測定された。
【0054】
筋力測定
[00080] 定量的な等尺性筋力測定強度評価は、16週目を除く全ての来院時に実施した。MicroFET2ハンドヘルド筋力計を使用して、両側の肩、肘の屈筋及び伸筋並びに足首の背屈筋の強度を測定した。Jamar Plus Digital Hand筋力計を使用して、両側の握力を測定した。標準的な理学療法技術を使用した。
【0055】
運動機能尺度ドメイン1
[00081] MFMドメイン1の評価は、Wk4及びWk16を除く全ての来院時に実施した。MFMスケールは、運動障害の重症度を評価する。MFMのドメイン1は、起立及び移動についての機能障害の評価を提供する。
【0056】
FSHD-HI
[00082] FSHD健康指標アンケートは、Wk16を除く全ての来院時に行われた。これは、日常生活の活動、生活の質並びに症状の有病率及び重症度についての、FSHDに特有の患者報告による疾病負荷の尺度である。これは、患者の定性的なインタビューと、それに続く全国的な断面検証研究とから開発された116項目のアンケートからなる。尺度は、患者の歩行運動及び可動性、手の機能、肩及び腕の機能、情緒的健康、背中/胸/腹部の強度、疲労、痛み、摂食機能、活動する能力、コミュニケーション能力、社会的状況における満足感、社会的状況における能力、身体像並びに認知についての患者の認識を測定する14のサブスケールからなる。採点は、開発者によって一元的に実施された。
【0057】
PGIC
[00083] 変化に対する患者の全体的印象(PGIC)アンケートは、ベースライン後の全ての来院時に行われた。対象は、研究の開始からの全体的な状態を1(非常に大きく改善)~7(非常に大きく悪化)のスケールで評価することが求められた。PGICスケールは、いくつかの他の適応症で確証されており、患者内変化の有意義な尺度としての使用がFDAによって推奨されている。
【0058】
結果
[00084] ロスマピモドの血漿濃度は、投与前25.2~34.4ng/ml及び投与の4時間後66.4~91.8ng/ml(およそのCmax)であり、以前の研究と一致していた。筋肉中の濃度も臨床効果の予想される範囲内であり、Wk16では61.0±7.7ng/g及びWk36では91.1±10.7ng/gであった。リン酸化熱ショックタンパク質27(pHSP27)/総熱ショックタンパク質27(HSP27total)のレベルは、Cmaxにおいてプラセボと比較して48.0~70.2%の低下を示し、ターゲットエンゲージメントが確認された(図3A及び3B)。
【0059】
[00085] さらに、ロスマピモドのPKプロファイルは、研究レジメンの良好なアドヒアランスを実証している。丸剤数は、治療コンプライアンスが80%を超えていたことを示唆する。
【0060】
[00086] プラセボ群又はロスマピモド群のいずれにおいても、DUX4活性の変化は認められず(ベースラインをWk16又はWk36からの全てのサンプルの統合データと比較)、群間で差はなかった(ロスマピモド0.83、プラセボ0.40、差0.43、95%CI -1.04、1.89;p=0.56;log2スケール)。DUX4駆動型遺伝子発現による事前指定されたサブグループ分析では、ロスマピモド及びプラセボ間に差異は示されなかった(図4)。両方の群において、DUX4活性の有意なばらつきが観察された(投与前及び投与後)(図5A及び5B)。
【0061】
[00087] MFIで事前指定された有効性の複合尺度により、進行のリスクが高い筋肉(B筋肉と分類される)において、ロスマピモド群では、プラセボ群と比較して有意に少ない脂肪浸潤(p=0.01)が示された。MFFにおける脂肪置換の低減は有意ではなく、LMVでは差がなかった。ベースライン時に正常に見える筋肉(A筋肉と分類される)の事後分析により、ロスマピモド群では、プラセボ群と比較してMFI又はMFFにおける脂肪の蓄積がほとんど又は全くないことが示された(図6)。
【0062】
[00088] 対象となる特定の機能評価に関与する筋肉の局所的なMRI複合スコアは、プラセボ群で重りを使用した場合の利き側の総到達可能な表面積(RSA)を1つの例外として、研究を通して個々の時点でMFI、MFF及びLMVと、TUG、FSHD-TUG及びRWSとの中程度及び強度の断面相関を実証した。表1は、48週目における局所相関及び複合の測定基準と臨床アウトカム評価との間のスピアマンの相関分析を示す。表1では、「LOS」は、ロスマピモドを指し、「PBO」は、プラセボを指す。
【0063】
【表1】
【0064】
[00089] Wk48において、ロスマピモド群では、プラセボ群と比較して有意な改善(1~7のリッカート尺度における差0.58;p=0.02)が報告された(図6)。ロスマピモド患者の27.5%及びプラセボ患者の6.4%が改善を報告した(リッカート尺度の1~3)。ロスマピモドで治療された患者は、「非常に大きく悪化した」(リッカート尺度の6~7)と報告しなかったが、プラセボ対象の12.9%は報告した。プラセボ群の対象は、RCT中に悪化の増大を報告し、PGICが疾患の進行を捉えたことが示された(図7)。
【0065】
[00090] ロスマピモドは、0~1.25のスケールで測定されるRSAの有意な改善をもたらした(利き腕:0.019対プラセボ-0.048;差0.067、95%CI 0.017、0.118;p=0.01;非利き腕:0.021対-0.024、差0.045、95%CI 0.0007、0.09;p<0.05)(図6)。プラセボ対象は、RWSにおいて重りのない場合に2.6~3.6%、重りのある場合に1.9~3.8%の総RSAを失い、疾患の進行が捉えられた(図8)。総RSAの年間変化率も重りを用いた評価で改善を示した(利き側、年間変化率:0.28対8.45;p=0.07;非利き側、4.88対-4.02;p=0.01)(図9)。図22に示されるように、総RSAの最新の年間変化率も、重りを用いた総RSA(Q1~Q5)においてロスマピモドが疾患進行の遅延又は機能の改善を示すことを実証している。
【0066】
[00091] 図23は、ロスマピモドが全てのドメインにわたって疾患進行の遅延又は機能の改善を示し、肩の上のドメイン(Q1及びQ3)において最も顕著に示すことを示す。さらに、MFIの年間変化率、MFFの年間変化率及びLMVの年間変化率は、図24に示される。TUG平均完了時間の年間変化率は、図25に示される。手の握り及び肩の最大随意等尺性収縮試験(MVICT)の年間変化率は、図26に示される。
【0067】
[00092] 非盲検研究でも、重りを用いた場合及び重りなしの場合の到達可能なワークスペース(RWS)が評価された。図27は、研究に参加した患者のベースラインからのRWSの探索的な年間変化率を提供する。データは、非盲検研究において年換算RWSが全ての四半部で増大し、Q1及びQ3の増大が最大である(7~17%)ことを示す。
【0068】
[00093] 最大随意等尺性収縮(MVICT)の評価は、ハンドヘルド筋力計を用いて実行した。事後分析により、ロスマピモド群の肩外転筋及び足首背屈筋の強度は、悪化が少ない(利き側の肩-3.79%、ns)か又は改善されている(非利き側の肩17.85%、差34.89;p<0.01;右足首12.72%、差38.39;p<0.05;左足首27.17%、差37.37;p=0.11)ことが示された(図6)。プラセボ群の対象は、Wk48に肩外転筋(利き側、-13.1%、非利き側-17.0%)及び足首背屈筋(右足首-25.7%、左足首10.20%)の強度を失った(図10)。3回の反復試験の平均の評価は、MVICTと一致し、両側の肩外転筋及び足首背屈筋の改善又は保存が示された。両側の手の握り、肘屈筋又は伸筋を含む他の筋肉群では、平均又はMVICTのいずれにおいても差が観察されなかった(図10)。
【0069】
[00094] ロスマピモド対象は、有意ではないが、臨床的に意味のあるTUG時間の進行の遅延を示した(0.16秒対0.74秒;差0.58秒)(図6)。FSHD-TUG、MFM総スコア及びFSHD-HIは、差を示さなかった(図6及び図11)。
【0070】
[00095] 本治験において、ロスマピモドは、ロスマピモドがFSHDの進行を遅延し得るという仮説と一致する、複数の臨床アウトカム評価(COA)及びWB-MSK-MRI尺度における臨床的有用性を実証した。ロスマピモドは、これまでに投与された3500人を超える対象で観察されたものと一致する有利な安全性及び忍容性を実証し続けた。
【0071】
[00096] WB-MSK-MRIは、疾患の不均一性を捉え、FSHDに関する臨床評価項目と相関するため、疾患の重症度についての重要な情報を提供した。MRI複合スコアは、断面分析でFSHD関連COAと相関することにより、疾患進行に対する感度を実証した。MFIは、サルコペニアにおける筋肉機能の喪失に対する高感度の近位バイオマーカーであることが示されており、本研究は、FSHDについても同じであることを意味する。48週間後にA及びB筋肉におけるMFI及びMFFの進行が低下したことは、ロスマピモドが、機能的能力がほとんど残っていないと以前に報告された末期に依然として達していない筋肉中の脂肪蓄積に影響を与えたことを示唆する。
【0072】
[00097] MRIで測定された筋肉構造の保存によって示唆されるように、ロスマピモドによる治療は、進行の遅延又はFSHD関連の臨床評価の改善をもたらした。肩機能の改善は、高い信頼性、再現性、表面的妥当性、実現可能性及び変化に対する感度を有し、日常生活の活動と高度に相関するCOAであるRWSによって評価した。この知見は、筋力測定における肩の外転強度の保存又は改善によって裏付けられる。さらに、足首背屈強度の改善は、TUG時間の短縮傾向を支持する。年間変化率によって経時的に予測されるこれらのCOAの進行遅延又は改善は、ロスマピモドがFSHDの疾患進行を有利に変化させる証拠である。
【0073】
[00098] これらの改善は、対象によって認識される(ロスマピモド群とプラセボ群との間において、PGICにおける臨床的に意味のある差は、0.58である)。治療された対象のほぼ20%は、PGICにおける改善の認識を報告したが、多くのプラセボ対象は、低下の認識を報告した。
【0074】
[00099] DUX4減少の利点を示す下流の証拠があるにもかかわらず、事前指定された集団及びサブグループ分析は、Wk16又はWk36において群間又は郡内でDUX4駆動型遺伝子発現の差を示さなかった。前臨床の研究で観察されたターゲットエンゲージメントに基づいて、DUX4駆動型遺伝子発現の同程度の30~70%の減少が仮定された。集団レベルでは、DUX4駆動型遺伝子発現は、ベースライン時に対象間で1,000倍を超える広がりがあり、分散が大きいこと実証された。DUX4駆動型遺伝子発現の確立的性質、筋核内でのDUX4発現の非常に一時的な持続期間及び相対的な不足(約1/1000~1/3000と仮定されている)、FSHD筋肉の組成の不均一性及び生検手順の相対的な不正確さを含む複数の要因がこの大きいばらつきに寄与した。
【0075】
実施例2.FSHDにおけるロスマピモドの有効性及び安全性についての48週間の第3相無作為化二重盲検プラセボ対照研究
[000100] この研究の目的は、FSHDの治療のためのロスマピモドの有効性及び安全性を評価することである。遺伝的に確認されたFSHD1患者210人及びFSHD2患者20人の合計約230人の患者を1:1で無作為化して、ロスマピモド又はプラセボを1日2回、48週間にわたって経口投与する。有効性評価は、利き腕に500gの手首の重りを用いた総相対表面積(Q1~Q5)の到達可能なワークスペースの定量化、神経障害における生活の質の上肢スケール(Neuro-QoL UE)の評価、変化に対する患者の全体的印象(PGIC)及び全身筋骨格MRI(WB-MSK MRI)における筋脂肪浸潤(MFI)を含む。探索的評価は、筋脂肪分率、ハンドヘルド筋力測定による筋肉強度の評価並びに重症度に対する患者の全体的印象(PGIS)、新規のFSHD PRO、数値による疼痛評価尺度(NPRS)、5段階EQ-5D(EQ-5D-5L)及び医療利用アンケートを含む患者報告アウトカム(PRO)を含む。
【0076】
実施例3.FSHD1を有する対象でのロスマピモドの非盲検研究における筋肉超音波検査
[000101] 遺伝的に確認されたFSHD1を有し、臨床重症度スコアが2~4(範囲0~5)であり、針生検のためにMRI適格の骨格筋を有する18歳~65歳の14人の対象は、安全性を主目的として、15mgのロスマピモドを1日2回、52週間非盲検で投与された。評価は、安全性、MRI、筋肉超音波検査(US)、臨床アウトカム及びPROを含んだ。USは、標準化されたプロトコルを用いて両側の7つの筋肉において実施された。USのエコー強度は、対応する健常対照に対するzスコアで表され、異常は、2を超えるものと定義された。
【0077】
[000102] 全ての筋肉のエコー輝度の、ベースラインからの平均(SD)変化は、-0.17(0.9)であり、上肢筋肉では-0.32(0.9)、下肢では-0.13(1.0)であり、改善傾向が示された。ベースライン時対最後の来院時における筋肉のzスコアの分布(<2、2~4、4~6及び>6)は、安定性と一致して、同じ状態のままであるか又は低下した。分布は、図12Aにさらに詳細に示される。さらに、ほとんどの筋肉は、52週間の治療にわたって安定性又は改善を示した(図12B)。自然経過研究では、1年にわたってエコー輝度が増大又は悪化することが以前に実証された。エコー強度は、上腕二頭筋(r=0.84、p<0.01)、前脛骨筋(r=0.76、p<0.01)及び内側腓腹筋(r=0.50、p<0.01)の筋脂肪浸潤(MFI)と強く相関した。MFIにおいて、上腕二頭筋では約10%を超え、前脛骨筋及び四頭筋では約20%を超えて、エコー輝度の天井効果が観察された。さらに、MFIが25%を超えるより重度に脂肪置換された筋肉である内側腓腹筋では、組織が均一(脂肪)になるために、エコー強度は、誤って正常化すると思われる。
【0078】
[000103] 臨床アウトカム評価(COA)との相関関係も評価した。1つの例では、ベースライン及び60週目における到達可能なワークスペースのデータが図13A(ベースライン)及び図13B(60週目)に提供され、総加重RSAと、上肢エコー輝度(二頭筋及び三角筋)との間の有意でない相関傾向が示される。別の例では、ベースライン及び60週目における足首背屈のハンドヘルド筋力測定データが図14A(ベースライン)及び図14B(60週目)に提供され、最大足首背屈に対する前脛骨筋のエコー輝度の強い相関関係が示される。別の例では、ベースライン及び60週目におけるタイムアップアンドゴー(TUG)データが図15A(ベースライン)及び図15B(60週目)に提供され、下肢の平均エコー輝度が60週目に古典的なTUGに対する強い相関関係を示したことが示される。ベースラインの相関関係は、TUGの異常値によって制限された。
【0079】
実施例4.ウェアラブルセンサーを使用して身体活動を定量化するためのFSHD患者の機能性能の測定の実現可能性
[000104] 本研究は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)でのロスマピモドの非盲検研究(OLS)において、ウェアラブルセンサーデバイスを用いて日常活動をモニターし、機能的帰結を評価することの実現可能性を評価した。14人のFSHD1患者は、52週間の非盲検治療期間中、15mgのロスマピモドを1日2回受けた。
【0080】
[000105] 経時的なデータの信頼性と、バックグラウンドノイズの量とによって実現可能性を測定した。副次的目的は、ウェアラブルデバイスの使用に関する患者のコンプライアンスであった。
【0081】
[000106] 上肢及び下肢の可動性は、Sysnav製の「Actimyo」で評価した。Actimyoは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、パーキンソン病などの神経筋障害を有する患者の動作を定量化し、磁気-慣性ナビゲーションに基づいて活動を記録する。センサーからの生データは、ドッキングステーション/充電ユニットの内部メモリにロードされ、インターネット接続を介してリモート記憶域プラットフォームに毎日送信される。参加者には、動作を測定するために2つの時計のようなセンサーが提供される:歩行のような下肢の動作について足首に、可動性のような上肢の動作について手首に提供される。2種類の動作を評価した:2つのデバイスを毎日(12~16時間)装着することによって記録される自由生活の動作;及び1日2回評価される一連の動作である強制動作(1日2回)。患者のデバイス使用の概略図は、図16に示される。
【0082】
結果:
[000107] 実現可能性及びコンプライアンス:デバイスの装着についての参加者のコンプライアンスは、99%であった。14人全ての参加者がモニターされた総日数は、2,941日又は36,758時間(参加者1人当たりの平均2,626時間)であった。期間ごとの患者の結果は、図17に示される。
【0083】
[000108] 分析、処理及び信頼性の結果は、図18に示される。ベースラインにおけるクリニック変数とウェアラブル変数との間の中程度~強度の相関関係も図19に示される。
【0084】
[000109] FSHD参加者は、身体障害の部位が異なる。4つの群に分けたとき、クリニック内変数及びウェアラブル変数は、重症度部位で調整される。その結果は、図20に示される。
【0085】
[000110] さらに、歩行速度で測定される身体機能は、「下肢」又は「両方」群と比較して、「軽度」又は「上肢」群では1年の治療期間にわたって増大する傾向にあり、これは、図21にさらに示される。
【0086】
均等物
[000111] 当業者は、日常的にすぎない実験を用いて、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
【国際調査報告】