(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】大規模なアデノ随伴ウイルス産生システム
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20240711BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240711BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240711BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20240711BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12Q1/70
C12Q1/6897 Z
C12N15/864 100Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504489
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022074046
(87)【国際公開番号】W WO2023009968
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506136483
【氏名又は名称】バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】チネク・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ・ジョセフ チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】アポンテ-ウビルス・フアン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】バラハス・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パンデ・サントッシュ ジー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ10
4B063QQ13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR79
4B063QR80
4B063QS36
4B063QS38
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA29
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、アデノ随伴ウイルス粒子及びバキュロウイルス粒子を産生及び特徴付けるためのプロセスを提供する。本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)産生を改善する方法を対象とする。本発明は、バキュロウイルス感染Sf9細胞を使用したrAAVの産生に関連する問題に対処し、rAAVを産生するための改善された方法を達成する。本発明は、組換えバキュロウイルス(rBV)及び組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生するための異なる方法を開発した。これらの方法は、ゲノム不安定性などの問題に対処し、また、rAAVの産生の改善をもたらすとともに、特性が改善されたrAAVを産生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生する方法であって、
細胞を少なくとも1つの組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップであって、前記少なくとも1つのrBVが、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する、感染させるステップと、
前記感染した細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、を含み、
前記感染させるステップの前に、少なくとも1つのrBVが、前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つでトランスフェクトされた細胞を含む、少なくとも1つの細胞培養物から単離される、方法。
【請求項2】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生する方法であって、
細胞を少なくとも1つの組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップであって、前記少なくとも1つのrBVが、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する、感染させるステップと、
前記感染した細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、を含み、
前記感染させるステップの前に、前記少なくとも1つのrBVが、
バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、かつ
前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分と組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、少なくとも1つのヌクレオチド配列でトランスフェクトされた細胞を含む少なくとも1つの細胞培養物から単離される、方法。
【請求項3】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生する方法であって、
細胞を継代ゼロ(P0)組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップであって、前記rBVが、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する、感染させるステップと、
前記感染した細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、を含む、方法。
【請求項4】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生する方法であって、
細胞を0.01未満の感染多重度(MOI)で組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップであって、前記rBVが、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する、感染させるステップと、
前記感染した細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、を含む、方法。
【請求項5】
前記MOIが、0.002以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記MOIが、10E-4未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記MOIが、10E-5未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記rBVが、継代ゼロ(P0)rBVである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記rBVが、rAAVベクターゲノムに対するヌクレオチド配列を有する第1のrBVと、Rep及びCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する1つ以上の第2のrBVとを含み、前記細胞を、0.01~10.0の範囲の前記第1のrBVのMOI:前記1つ以上の第2のrBVのMOIの比で感染させる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
生成された前記rAAVが、キャプシド化rAAVベクターゲノムのナノグラム当たり1E-9ナノグラム未満であるキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記生成されたrAAVが、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-2コピー未満であるバキュロウイルスDNAポリメラーゼの少なくとも一部分をコードするキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記生成されたrAAVが、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-3コピー未満であるキャプシド化細胞18SリボソームRNA遺伝子ヌクレオチド配列の濃度を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の産生を増加させ、前記産生されたrAAV内にキャプシド化されたヌクレオチド不純物を低減するための方法であって、
異なる細胞培養物を、rAAVベクターゲノムのヌクレオチド配列を有する第1の組換えバキュロウイルス(rBV)と、Rep及びCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する1つ以上の第2のrBVとに感染させるステップであって、各細胞培養物を、前記第1のrBVの感染多重度(MOI):前記1つ以上の第2のrBVのMOIの異なる比で、前記第1のrBV及び前記1つ以上の第2のrBVに感染させる、感染させるステップと、
前記異なる細胞培養物からrAAVを単離するステップと、
前記異なる細胞培養物からの前記単離されたrAAVの力価を決定するステップと、
前記異なる細胞培養物からの前記単離されたrAAV内のキャプシド化ヌクレオチド不純物の濃度を決定するステップと、
両方の決定するステップから、前記第1のrBVのMOI:前記1つ以上の第2のrBVのMOIの1つ以上の比(複数可)を特定するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
組換えバキュロウイルス(rBV)力価を測定する方法であって、
インジケーター細胞をrBVに感染させるステップであって、前記インジケーター細胞が、バキュロウイルス感染によって活性化された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を有し、前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、初期バキュロウイルスプロモーター配列及び中間バキュロウイルスプロモーター配列のうちの少なくとも1つから選択される、感染させるステップと、
前記レポーターヌクレオチド配列の発現を測定するステップと、
前記レポーターヌクレオチド配列の前記発現からrBV力価を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
前記レポーターヌクレオチド配列が、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レポーターヌクレオチド配列の発現が、フローサイトメトリーを使用して測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記決定するステップが、前記感染させるステップの3時間以上後に起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
組換えバキュロウイルス(rBV)力価を測定するためのインジケーター細胞を生成するための方法であって、バキュロウイルス感染によって活性化された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含むベクターを細胞内にトランスフェクトするステップを含み、前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、早期バキュロウイルスプロモーター配列及び中間バキュロウイルスプロモーター配列のうちの少なくとも1つから選択される、方法。
【請求項19】
前記レポーターヌクレオチド配列が、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベクターが、発現制御配列に作動可能に連結された耐性ヌクレオチド配列を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞を培養するステップと、前記ベクターが安定して維持される少なくとも1つの細胞を正に選択するステップと、を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞を培養するステップと、前記培養物から細胞を単離するステップと、前記単離された細胞を別々に培養するステップと、を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記レポーターヌクレオチド配列が、レポータータンパク質をコードする、請求項14又は18に記載の方法。
【請求項24】
前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、gp64プロモーター、Polhプロモーター、及びp10プロモーターのうちの少なくとも1つから選択される、請求項14又は18に記載の方法。
【請求項25】
前記レポーターヌクレオチド配列及び前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、前記細胞内で安定して維持される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記レポーターヌクレオチド配列、前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列、及び前記バキュロウイルス由来エンハンサー配列が、前記細胞内で安定して維持される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、昆虫細胞である、請求項1、2、3、4、14、及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、Spodoptera frugiperda、Aedes albopictus、Bombyxmori、Trichoplusia ni、Ascalapha odorata、Drosphila、Anophele、Culex、又はAedesに由来する昆虫細胞である、請求項1、2、3、4、14、及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、Sf9細胞、High Five細胞、Se301細胞、SeIZD2109細胞、SeUCR1細胞、Sf900+細胞、Sf21細胞、BTI-TN-5B1-4細胞、MG-1細胞、Tn368細胞、HzAm1細胞、BM-N細胞、Ha2302細胞、Hz2E5細胞、又はAo38細胞である、請求項1、2、3、4、14、及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞培養物が各々、昆虫細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞培養物が各々、Spodoptera frugiperda、Aedes albopictus、Bombyxmori、Trichoplusia ni、Ascalapha odorata、Drosphila、Anophele、Culex、又はAedesに由来する昆虫細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞培養物が各々、Sf9細胞、High Five細胞、Se301細胞、SeIZD2109細胞、SeUCR1細胞、Sf900+細胞、Sf21細胞、BTI-TN-5B1-4細胞、MG-1細胞、Tn368細胞、HzAm1細胞、BM-N細胞、Ha2302細胞、Hz2E5細胞、又はAo38細胞から選択される細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項33】
バキュロウイルス感染によって活性化された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含む細胞であって、前記誘導性バキュロウイルスプロモーターが、初期バキュロウイルスプロモーター配列及び中間バキュロウイルスプロモーター配列のうちの少なくとも1つから選択され、
前記レポーターヌクレオチド配列及び前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、前記細胞内で安定して維持される、細胞。
【請求項34】
前記レポーターヌクレオチド配列が、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結され、前記バキュロウイルス由来エンハンサー配列が、前記細胞内で安定して維持される、請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
前記レポーターヌクレオチド配列が、レポータータンパク質をコードする、請求項33に記載の細胞。
【請求項36】
前記誘導性バキュロウイルスプロモーター配列が、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、gp64プロモーター、Polhプロモーター、及びp10プロモーターのうちの少なくとも1つから選択される、請求項31に記載の細胞。
【請求項37】
前記細胞が、昆虫細胞である、請求項33に記載の細胞。
【請求項38】
前記細胞が、Spodoptera frugiperda、Aedes albopictus、Bombyxmori、Trichoplusia ni、Ascalapha odorata、Drosphila、Anophele、Culex、又はAedesに由来する、請求項33に記載の細胞。
【請求項39】
前記細胞が、Sf9細胞、High Five細胞、Se301細胞、SeIZD2109細胞、SeUCR1細胞、Sf900+細胞、Sf21細胞、BTI-TN-5B1-4細胞、MG-1細胞、Tn368細胞、HzAm1細胞、BM-N細胞、Ha2302細胞、Hz2E5細胞、又はAo38細胞である、請求項33に記載の細胞。
【請求項40】
発現制御配列に作動可能に連結された耐性ヌクレオチド配列を更に含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項41】
前記耐性ヌクレオチド配列及び発現制御配列が、前記細胞内で安定して維持される、請求項40に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
2022年7月21日に作成され、サイズが6KBである「6439-0113PWO1」という名前のXMLファイルとして本明細書と同時に提出された配列表は、37C.F.R.§1.52(e)(5)に従って参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を産生するための方法及びプロセスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)産生を改善する方法を対象とする。AAVは、末端に少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)を有する一本鎖DNAゲノムを有する非エンベロープウイルスである。例えば、AAV2血清型は、2つの145ヌクレオチド長の逆位末端反復(ITR)を末端に有する、およそ4.7キロベース(kb)の一本鎖DNAゲノムを有し得る。このウイルスは、ポリメラーゼをコードせず、したがって、ゲノム複製のために細胞のポリメラーゼに依存する。ITRは、それぞれ非構造タンパク質及び構造タンパク質をコードするrep(複製)及びcap(キャプシド)の2つのウイルス遺伝子に隣接している。Rep遺伝子は、2つのプロモーターの使用及び選択的スプライシングを介して、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40と称される4つの調節タンパク質をコードする。これらのタンパク質は、AAVゲノムの複製及びパッケージングに関与している。Cap遺伝子は、選択的スプライシング及び翻訳の開始を介して、VP1(ビリオンタンパク質1)、VP2、及びVP3の3つのキャプシドタンパク質を生じさせる。AAV2のVP1、VP2、及びVP3の分子量は、それぞれ87、72、及び62kDaである。これらのキャプシドタンパク質は、60サブユニットのほぼ球状のタンパク質シェルに組み立てられる。
【0004】
AAVは、自己で複製することができず、ヘルパーウイルス、典型的には、アデノウイルス又はヘルペスウイルスの同時感染を必要とする。AAVが単独でヒト細胞に感染すると、AAVの遺伝子発現プログラムは自己抑制され、細胞の潜伏感染が発生する。しかしながら、潜伏感染細胞が、アデノウイルス又は単純ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスに同時感染すると、AAV遺伝子発現が活性化されて、宿主細胞染色体からのプロウイルスDNAの切除、続いて、ウイルスゲノムの複製及びパッケージングを導く。
【0005】
AAV遺伝子及び治療用遺伝子を含有するバキュロウイルスは、Sf9細胞に感染して、治療遺伝子を含有するAAVキャプシドを産生するために使用されている。例えば、AAV Rep/Cap遺伝子又は治療用遺伝子のいずれかを含有するバキュロウイルスを使用して、Sf9細胞を共感染させる。この方法では、バキュロウイルスは、AAV産生に必要な「ヘルパー」ウイルスとして、かつAAV及び治療用遺伝物質のビヒクルとして機能する、二重の役割を果たす。
【0006】
バキュロウイルスAAVの産生方法は、多くの利点を提供する。第一に、Sf9細胞は、最大2000リットル(L)の容量を有する大型バイオリアクター内で自由浮遊性懸濁液として高密度で培養することができ、接着細胞培養で達成されるよりも効率的なAAV産生を可能にする。加えて、Sf9細胞は、無血清条件下で成長させることができ、これは、潜在的に免疫原性又は毒性の動物由来タンパク質の存在を排除することによって生体安全性を改善する。更に、バキュロウイルスは、ヒト細胞で複製することができない。
【0007】
しかしながら、AAVキャプシドのバキュロウイルス/Sf9産生にも著しい制限がある。例えば、バキュロウイルスゲノムは、複数の継代から不安定になる可能性がある。rep遺伝子が失われると、rAAVの産生が停止する。Pijlman(Pijlman,Gorben P.,et al.“Autographa californica baculoviruses with large genomic deletions are rapidly generated in infected insect cells”Virology 283.1(2001):132-138)は、2つの継代内のバキュロウイルスゲノムにおける欠失を具体的に開示している。Airenne(Airenne,Kari J.,et al.“Improved generation of recombinant baculovirus genomes in Escherichia coli”Nucleic acids research 31.17(2003):e101-e101)は、組換えバクミドを有するE.coliコロニーを選択するための致死的選択戦略を開示している。Scholz及びSuppmann(Scholz,Judith,and Sabine Suppmann.“A new single-step protocol for rapid baculovirus-driven protein production in insect cells”BMC biotechnology 17.1(2017):83)は、組換えタンパク質の産生時間を短縮するための懸濁液中のバクミドトランスフェクション及びP0バキュロウイルスの単離を開示しているが、ゲノム不安定性に対処するための、又はAAV産生における使用のためのP0 BVの単離は開示していない。Negrete(Negrete,Alejandro,et al.“Economized large-scale production of high yield of rAAV for gene therapy applications exploiting baculovirus expression system”The Journal of Gene Medicine:A cross-disciplinary journal for research on the science of gene transfer and its clinical applications 9.11(2007):938-948)は、Sf細胞を0.03のMOIでバキュロウイルスに感染させてAAVを産生することを開示している。Mena(Mena,Jimmy A.,et al.“Improving adeno-associated vector yield in high density insect cell cultures”The Journal of Gene Medicine:A cross-disciplinary journal for research on the science of gene transfer and its clinical applications 12.2(2010):157-167)もまた、Sf細胞を0.3のMOIでバキュロウイルスに感染させてAAVを産生することを開示している。NegreteもMenaも、AAV産生のために0.3未満のBVのMOIを使用することを示唆していない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、バキュロウイルス感染Sf9細胞を使用したrAAVの産生に関連する問題に対処し、rAAVを産生するための改善された方法を達成する。本発明者らは、組換えバキュロウイルス(rBV)及び組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を産生するための異なる方法を開発した。これらの方法は、ゲノムの不安定性などの問題に対処し、またrAAVの産生の改善をもたらすとともに、改善された特性(例えば、より高い感染性、より低いキャプシド化核酸不純物など)を有するrAAVを産生する。
【0009】
rAAVを産生する実施形態が開示される。
【0010】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を少なくとも1つのrBVに感染させるステップを含む。少なくとも1つのrBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法は、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを更に含む。この方法では、少なくとも1つのrBVは、ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つでトランスフェクトされた細胞を含む少なくとも1つの細胞培養物から単離される。
【0011】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を少なくとも1つのrBVに感染させるステップを含む。少なくとも1つのrBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法は、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを更に含む。この方法では、少なくとも1つのrBVは、感染させるステップの前に、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する細胞を含む少なくとも1つの細胞培養物から単離される。細胞はまた、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分と組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、少なくとも1つのヌクレオチド配列でトランスフェクトされる。
【0012】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、少なくとも1つの細胞を継代ゼロ(P0)rBVに感染させ、感染した少なくとも1つの細胞を培養してrAAVを生成するステップを含む。P0 rBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。
【0013】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を0.01未満の感染多重度(MOI)でrBVに感染させるステップを含む。rBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法はまた、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを含む。
【0014】
様々な実施形態では、少なくとも1つのrBVを使用する大規模なrBVベースのrAAV産生の方法が開示される。方法は、AAV Rep遺伝子、AAV Cap遺伝子、及びrAAVベクターゲノムを有するバクミドを含有する組換えEscherichia coli(E.coli)のバンクを作製するステップと、該E.coliバンクを凍結保存するステップと、該E.coliバンクを解凍するステップと、解凍されたE.coliバンクからバクミドを単離するステップと、該解凍されたE.coliバンクからのバクミドを用いて昆虫細胞をトランスフェクトして、トランスフェクトされた昆虫細胞を培養するステップと、トランスフェクトされた昆虫細胞からrBVを単離するステップと、バイオリアクター内で昆虫細胞を単離されたrBVに更に感染させ、感染した昆虫細胞を培養してrAAVを生成するステップと、を含む。
【0015】
rAAVのrBVベースの産生に関する他の実施形態も開示される。
【0016】
様々な実施形態では、rAAVの産生を増加させ、産生されたrAAV内にキャプシド化された核酸不純物を低減するための方法が開示される。方法は、異なる細胞培養物を、rAAVベクターゲノムのヌクレオチド配列を有するrBVと、Rep及びCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する1つ以上の第2のrBVとに感染させるステップを含む。各細胞培養物は、第1のrBV及び1つ以上の第2のrBVに、第1のrBVのMOI:1つ以上の第2のrBVのMOIの異なる比で、感染する。この方法はまた、異なる細胞培養物からrAAVを単離するステップと、異なる細胞培養物からの単離されたrAAVの力価を決定するステップと、異なる細胞培養物からの単離されたrAAV内のキャプシド化核酸不純物の濃度を決定するステップと、両方の決定するステップからの第1のrBVのMOI:1つ以上の第2のrBVのMOIの1つ以上の比(複数可)を特定するステップと、を含む。
【0017】
様々な実施形態では、rBV力価を測定するための方法は、インジケーター細胞をrBVに感染させるステップを含む。インジケーター細胞は、早期又は中間バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、レポーターヌクレオチド配列は、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結されている。この方法はまた、レポーターヌクレオチド配列の発現を測定するステップと、レポーターヌクレオチド配列の発現からrBV力価を決定するステップと、を含む。
【0018】
様々な実施形態では、rBV力価を測定するための細胞は、早期又は中間バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含む。レポーターヌクレオチド配列及び早期又は中間バキュロウイルスプロモーター配列は、細胞内で安定して維持される。異なる実施形態では、レポーターヌクレオチド配列は、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結され、バキュロウイルス由来エンハンサー配列は、細胞内で安定して維持される。
【0019】
様々な実施形態では、rBV力価を測定するためのインジケーター細胞を生成するための方法が開示される。方法は、早期又は中間バキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含むベクターを細胞内にトランスフェクトするステップを含む。他の実施形態では、レポーターヌクレオチド配列は、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】rBVから産生されたAAV力価(ベクターゲノム(vg)/ミリリットル(mL))を示すグラフ表示であり、rBVは、目的の遺伝子(GOI)、Rep、及びCapを有するvgを提供する/コードする。rBVを、0.1、0.01、0.001、0.0001、及び0.00001のMOIで、ナイーブSf9細胞とともに培養した。
【0021】
【
図2】インジケーター細胞株を開発するために使用されるプラスミドのマップである。39kプロモーター配列に作動可能に連結された強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするヌクレオチド配列を有する。
【
図3】インジケーター細胞株を開発するために使用されるプラスミドのマップである。p6.9プロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPをコードするヌクレオチド配列を有する。
【
図4】インジケーター細胞株を開発するために使用されるプラスミドのマップである。ポリヘドリン(Polh)プロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPをコードするヌクレオチド配列を有する。
【0022】
【
図5】トランスフェクトされていないSf9細胞のフローサイトメトリーデータを示す。点線は、細胞の約0.1%が蛍光を示す、緑色蛍光を示すゲートである。
【0023】
【
図6】39kプロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPヌクレオチド配列を含有するプラスミドでトランスフェクトされたSf9細胞のフローサイトメトリーデータを示す。細胞は、rBVでトランスフェクトされていない。点線は、細胞の約0.1%が蛍光を示す、緑色蛍光を示すゲートである。
【0024】
【
図7】39kプロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPヌクレオチド配列を含有するプラスミドでトランスフェクトされたSf9細胞のフローサイトメトリーデータを示す。細胞をrBVに感染させた。点線は、緑色蛍光を示すゲートである。39kプロモーター細胞の55.5%が緑色蛍光を示した。
【
図8】p6.9プロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPヌクレオチド配列を含有するプラスミドでトランスフェクトされたSf9細胞のフローサイトメトリーデータを示す。細胞をrBVに感染させた。点線は、緑色蛍光を示すゲートである。p6.9プロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示した。
【
図9】Polhプロモーター配列に作動可能に連結されたeGFPヌクレオチド配列を含有するプラスミドでトランスフェクトされたSf9細胞のフローサイトメトリーデータを示す。細胞をrBVに感染させた。点線は、緑色蛍光を示すゲートである。Polhプロモーター細胞の2%が緑色蛍光を示した。
【0025】
【
図10】rBV感染後の、ある時間におけるeGFP発現を示すグラフ表示である。示されるように、rBV感染後19時間で、39kプロモーター細胞の55.5%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の2%が緑色蛍光を示した。
【
図11】rBV感染後の、ある時間におけるeGFP発現を示すグラフ表示である。示されるように、rBV感染後40時間で、39kプロモーター細胞の65.4%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の19%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示した。
【
図12】rBV感染後の、ある時間におけるeGFP発現を示すグラフ表示である。示されるように、rBV感染後68時間で、39kプロモーター細胞の66.3%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の19%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の15%が緑色蛍光を示した。
【0026】
【
図13】rBV感染後の、ある時間における39kプロモーター細胞のeGFP発現を示すグラフ表示である。eGFPを発現する39kプロモーター細胞のパーセンテージは、41.1%(15時間)、39.9%(18時間)、40.7%(24時間)、68.0%(43時間)、66.4%(65時間)、67.3%(70時間)、及び69.3%(94時間)であった。
【0027】
【
図14】eGFP、又は昆虫細胞での発現にコドン最適化されたeGFPをコードするヌクレオチド配列を含有する発現細胞を比較するグラフ表示である。示されるように、20時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを56.5%から57.8%に増加させ、PolHプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを4.0%から10.5%に増加させた。
【
図15】eGFP、又は昆虫細胞での発現にコドン最適化されたeGFPをコードするヌクレオチド配列を含有する発現細胞を比較するグラフ表示である。示されるように、25時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージに本質的に差をもたらさず(56.6%及び55.9%)、PolHプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを4.8%から12.0%に増加させた。
【
図16】eGFP、又は昆虫細胞での発現にコドン最適化されたeGFPをコードするヌクレオチド配列を含有する発現細胞を比較するグラフ表示である。示されるように、48時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを58.5%から59.3%に増加させ、PolHプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを10.9%から17.5%に増加させた。
【0028】
【
図17】rAAV5の生産性に対するrBVのMOIの効果の統計分析を強調する。図は、正規化された生産性を示すグラフィック表現であり、値は、第1の条件(GOI 0.01/Rep 0.01/Cap 0.01)に対して提示される。
【
図18】rAAV5の生産性に対するrBVのMOIの効果の統計分析を強調する。図は、rBVに感染した異なる実験細胞培養条件から得られたキャプシド対vg比を示すグラフ表示である。
【0029】
【
図19】AAV5の生産性に対するrBVのMOI及びrBV共感染の効果を示す。2つの異なるrBV導入遺伝子セットを使用した、4つの実験条件間の生産性を示すグラフ表示である。各セットについて、値は、そのGOI 0.03/Rep 0.003/Cap 0.003条件に対して正規化した。
【
図20】AAV5の生産性に対するrBVのMOI及びrBV共感染の効果を示す。正規化された生産性とCapコピー数(VP3/18s)との比較を示すグラフ表示である。ピーク細胞密度は、共感染細胞のパーセンテージに基づいて調整した。VP3/18s比(菱形で示される)について、最終値をdTomato発現細胞のパーセンテージに基づいて調整した。調整された出力間の相関係数は、0.849である。
【0030】
【
図21】バキュロウイルスDNA不純物のパッケージングに対するRep及びCap BVのMOIの効果を示す。GOI-B-rBV、Rep rBV、及びCap rBVに感染した状態における平均α-β:cpを示すグラフ表示である。値は、第1の条件、GOI 0.03/Rep 0.003/Cap 0.003に正規化される。分析を、ヌクレアーゼ処理された清澄化ハーベストから実施した。GOI-B-rBVのみ及びRep Cap-rBVのみ、及びCap-rBVのみの条件を対照として含めた。
【
図22】バキュロウイルスDNA不純物のパッケージングに対するRep及びCap BVのMOIの効果を示す。GOI-B-rBV、Rep rBV、及びCap BVに感染した状態における平均δ-γ:cpを示すグラフ表示である。値は、第1の条件、GOI 0.03/Rep 0.003/Cap 0.003に正規化される。分析を、ヌクレアーゼ処理された清澄化ハーベストから実施した。GOI-B-rBVのみ及びRep Cap-rBVのみ、及びCap-rBVのみの条件を対照として含めた。
【発明を実施するための形態】
【0031】
必要に応じて、本開示の詳細な実施形態が、本明細書に開示されるが、開示される実施形態は、単に例示であり、様々な形態及び代替形態で具現化され得ることを理解されたい。
【0032】
実施例を除いて、又は別途明示的に示されている場合を除いて、材料の量又は反応及び/若しくは使用の条件を示す本明細書中の全ての数値は、「約」という言葉によって修飾されるものとして理解されるべきである。例えば、「約X」を参照する説明は、「X」の説明を含む。一例では、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。異なる例では、「約」は、±0.0001%、±0.0005%、±0.001%、±0.005%、±0.01%、±0.05%、±0.1%、±0.5%、±1%、±5%、又は±10%の変動を指す。更なる例では、「約」は、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、又は±2%以内と理解することができる。
【0033】
頭字語又は他の略語の第1の定義は、同じ略語の本明細書におけるその後の全ての使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形に準用され、反対に明示的に示されない限り、特性の測定は、以前に又は後で同じ特性について参照されたのと同じ技術によって決定される。
【0034】
別途示されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0035】
また、具体的な構成要素及び/又は条件は、もちろん、変動し得るため、本開示は、以下に記載される具体的な実施形態及び方法に限定されないことを理解されたい。更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、なんら限定することは意図されていない。
【0036】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明白に示さない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。例えば、単数形の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことが意図されている。
【0037】
「又は」及び「及び」という用語は、互換的に使用することができ、「及び/又は」を意味すると理解することができる。
【0038】
「comprising(含む)」という用語は、「including(含む)」、「having(有する)」、「containing(含有する)」、又は「characterized by(によって特徴付けられる)」と同義である。これらの用語は、包含的かつオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法のステップを排除するものではない。
【0039】
「~からなる」という語句は、特許請求の範囲で特定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外するものである。この語句がプリアンブルの直後ではなく、特許請求の範囲の本文の条項に出現する場合、その条項に示されている要素のみを制限し、他の要素は全体として特許請求の範囲から除外されない
【0040】
「~から本質的になる」という語句は、特許請求の範囲を、特許請求される主題の特定の材料又はステップに加えて、本質的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0041】
「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」という用語は、代替的に使用することができる。これらの3つの用語のうちの1つが使用される場合、本開示の特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。
【0042】
本出願全体を通して、刊行物が参照される場合、本発明が関連する技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示全体は、参照により本出願に援用される。
【0043】
「異種」という用語は、AAV若しくは細胞に非天然であるか、又はAAV若しくは細胞に天然であるが、ウイルスゲノム又は宿主細胞ゲノム内のその天然の場所又は位置に位置しないポリヌクレオチド配列を指す。
【0044】
「コードする(encodes)」、「コードされた(encoded)」、及び「コードすること(encoding)」は、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指し、生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する。したがって、遺伝子は、その遺伝子によって産生されるmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖との両方は、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると呼ぶことができる。
【0045】
「発現制御エレメント」という用語は、それが作動可能に連結されているヌクレオチド配列の発現を調節することができるポリヌクレオチド中の核酸配列を指す。「作動的に連結された」は、一方の部分の活性(例えば、転写を調節する能力)が、他方の部分の作用(例えば、配列の転写)をもたらす、2つの部分の間の機能的関係を指す。エレメントがヌクレオチド配列の転写又は翻訳を制御又は調節する場合、発現制御エレメントは、ヌクレオチド配列に「作動可能に連結されている」。発現制御エレメントの例としては、プロモーター(例えば、誘導性又は構成性)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(例えば、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、停止コドン、内部リボソーム侵入部位、相同領域エレメント(例えば、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)の相同領域2)、AAV調節エレメント(例えば、Rep結合エレメント)などの配列が挙げられる。
【0046】
「プロモーター」又は「プロモーターポリヌクレオチド」という用語は、RNAポリメラーゼと結合/それを動員し、プロモーターの下流又は3’方向の配列の転写を開始することができる調節配列/エレメント又は制御配列/エレメントを意味すると理解される。プロモーターは、例えば、構成的に活性(常にオン)であり得るか、又はプロモーターが外部刺激の存在下で活性又は不活性である誘導性であり得る。プロモーターは、高濃度でタンパク質を発現することができる。例えば、プロモーターの転写レベルは、調節タンパク質をコードするオペロンについての天然プロモーターの転写レベルよりも約又は少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、10.5倍、11倍、11.5倍、12倍、12.5倍、13倍、13.5倍、14倍、14.5倍、15倍、15.5倍、16倍、16.5倍、17倍、17.5倍、18倍、18.5倍、19倍、19.5倍、20倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1000倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍、5000倍、5500倍、6000倍、6500倍、7000倍、7500倍、8000倍、8500倍、9000倍、9500倍、又は10000倍高い。異なる実施例では、構成的プロモーターポリヌクレオチドの転写レベルは、上に列挙された任意の2つのレベルの間の範囲である。プロモーターはまた、転写発現を制御するために他の発現制御エレメント(複数可)に配置することができる。例えば、プロモーター、相同領域エレメント、及び/又はAAV調節エレメントを有する発現カセットは、昆虫細胞のバキュロウイルス感染が発現カセットからの転写発現を誘導するように、昆虫細胞のゲノムに安定して組み込むことができる(US2012/0100606参照されたい)。
【0047】
アデノ随伴ウイルス
【0048】
治療上有効なrAAV粒子には、US9,504,762、WO2019/222136、US2019/0376081、及びWO2021/097157(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるrAAV粒子が含まれる。
【0049】
「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、キャプシドによってキャプシド化されたゲノムを有する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、特徴付けられているAAVの血清型には13種類がある。AAVの一般的な情報及び概説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、及びBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)で見出され得る。しかしながら、様々な血清型が、遺伝子レベルにおいても、構造的及び機能的の両方で非常に密接に関連していることが周知であるため、これらの同じ原理が、追加のAAV血清型に適用可能であることが十分予想される。(例えば、Blacklowe,1988,Parvoviruses and Human Disease,pp.165-174,J.R.Pattison,ed.及びRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照されたい)。例えば、全てのAAV血清型が、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明白に示し、全てが、3つの関連するキャプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った遺伝子型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、及び「逆位末端反復」(ITR)に対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二本鎖分析によって更に示唆される。同様の感染性パターンは、各血清型における複製機能が同様の調節制御下にあることも示唆する。
【0050】
本明細書で使用される「AAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質及びキャプシド化AAVゲノムからなる感染性ウイルス粒子を指す。「組換えAAV」、又は「rAAV」、「rAAVビリオン」、又は「rAAVウイルス粒子」は、本明細書に記載される少なくとも1つのキャプシド又はCapタンパク質及びキャプシド化rAAVベクターゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。したがって、rAAV粒子の産生には、rAAVベクターゲノムの産生が含まれる。異なる実施形態のrAAVウイルス粒子には、US9,504,762、WO2019/222136、US2019/0376081、及びWO2021/097157(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているAAV粒子及びrAAV粒子が含まれる。
【0051】
「キャプシド」は、rAAVベクターゲノムがパッケージングされている構造を指す。キャプシドは、VP1タンパク質又はVP3タンパク質を含むが、より典型的には、天然AAVに見られるように、VP1、VP2、及びVP3タンパク質の3つ全てを含む。キャプシドタンパク質の配列は、rAAVビリオンの血清型を決定する。rAAVビリオンには、いくつかのAAV血清型に由来するものが含まれ、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、Bfm35、AAV-rh10、AAV-rh39、AAV-rh43、AAVanc80L65、又はそれらの任意のバリアントが含まれる(例えば、米国特許第8,318,480号を、非天然の混合血清型の開示について参照されたい)。例示的なキャプシドは、国際出願第2018/022608号及び同第2019/222136号(その全体が本明細書に組み込まれる)にも提供されている。キャプシドタンパク質はまた、変異タンパク質、キメラタンパク質、又はシャフルタンパク質を含む、天然のVP1、VP2、及びVP3のバリアントであり得る。キャプシドタンパク質は、AAVの様々なクレード内のrh.10又は他のサブタイプのものであり得る。様々なクレード及びサブタイプは、例えば、米国特許第7,906,111号に開示されている。様々な実施形態では、AAVウイルス粒子のキャプシドは、AAV-1(Genbank受託番号AAD27757.1)、AAV-2(NCBI参照配列番号YP_680426.1)、AAV-3(NCBI参照配列番号NP_043941.1)、AAV-3B(Genbank受託番号AAB95452.1)、AAV-4(NCBI参照配列番号NP_044927.1)、AAV-5(NCBI参照配列番号YP_068409.1)、AAV-6(Genbank受託番号AAB95450.1)、AAV-7(NCBI参照配列番号YP_077178.1)、AAV-8(NCBI参照配列番号YP_077179.1)、AAV-9(Genbank受託番号AAS99264.1)、AAV-10(Genbank受託番号AAT46337.1)、AAV-11(Genbank受託番号AAT46339.1)、AAV-12(Genbank受託番号ABI16639.1)、AAV-13(Genbank受託番号ABZ10812.1)からのアミノ酸配列、又はWO2018/022608及びWO2019/222136に開示される任意のアミノ酸配列の一部分と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を有するアセチル化又は非アセチル化VP1、VP2、又はVP3タンパク質を有する。異なる血清型のAAVタンパク質の構成及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001において考察されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、「AAVベクターゲノム」、「ベクターゲノム」、又は「rAAVベクターゲノム」は、一本鎖核酸を指す。rAAVウイルス粒子は、キャプシド内にキャプシド化されたrAAVベクターゲノムを有する。rAAVベクターゲノムは、AAVウイルスゲノムに対して異種である転写調節エレメント(すなわち、1つ以上のプロモーター及び/又はエンハンサー、並びに任意選択的に、ポリアデニル化配列、及び/又は調節エレメント内、若しくは調節エレメントとタンパク質コード配列との間、若しくはタンパク質コード配列のエクソン間に挿入された1つ以上のイントロン)に作動可能に連結されたタンパク質コード配列(好ましくは、機能的な治療用タンパク質コード配列;例えば、FVIII、FIX、及びPAH)に隣接するAAV5’逆位末端反復(ITR)配列及びAAV 3’ITRを有する。rAAVベクターゲノムは、rAAVウイルス粒子中に存在する核酸を指し、本明細書に開示される核酸配列のセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかであり得る。そのような一本鎖核酸のサイズは、塩基数で提供される。本明細書で使用される「逆位末端反復」及び「ITR」という用語は、ウイルスDNA複製の開始点として、及びウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしてシスで機能する、rAAVゲノムの5’末端及び3’末端に見出される、当該技術分野で認識されている領域を指す。AAV ITRは、Repタンパク質とともに、宿主細胞ゲノムからの効率的な除去及びレスキュー、並びに宿主細胞ゲノムへの2つの隣接するITR間に挿入されたヌクレオチド配列の組み込みを提供する。ある特定のAAV関連ITRの配列は、Yan et al.,J.Virol.79(1):364-379(2005)によって開示されている。ITRはまた、「フリップ」又は「フロップ」構成において見出され、「フリップ」又は「フロップ」構成において、(ヘアピンのアームを形成する)AA’逆位反復間の配列が、逆補体内に存在する(Wilmott,Patrick,et al.Human gene therapy methods 30.6(2019):206-213)。異なる血清型のAAVベクターゲノムの構築及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001において考察されている。広範な構築物の利用可能性及び広範な特性評価のために、以下に開示される例示的なAAVベクターゲノムは、血清型2に由来する。
【0053】
治療上有効なrAAV粒子又は治療用rAAVは、感染した細胞が(例えば、転写及び/又は翻訳によって)目的のエレメント(例えば、ヌクレオチド配列、タンパク質など)を発現するように、細胞に感染することができる。この程度まで、治療上有効なrAAV粒子は、異なる特性を有するキャプシド又はベクターゲノム(vg)を有するAAV粒子を含むことができる。例えば、治療上有効なAAV粒子は、異なる翻訳後修飾を有するキャプシドを有することができる。他の例では、治療上有効なAAV粒子は、異なるサイズ/長さ、プラス又はマイナス鎖配列、異なるフリップ/フロップITR構成(フリップ/フロップ、フロップ/フリップ、フリップ/フリップ、フロップ/フロップなど)、異なる数(1、2、3など)のITR又は切断を有するvgを含有し得る。例えば、大きいタンパク質をコードする「完全」核酸が生成され、それによって機能的で完全長の遺伝子を再構築するように、AAV感染細胞において、重複切断プラス及びマイナスゲノムのアニーリング/相補化が起こる。治療上有効なAAV粒子は、「重い」又は「完全な」キャプシドとも呼ばれる。
【0054】
一例として、治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むrAAVビリオン、rAAVウイルス粒子、rAAVベクター粒子、又はrAAVを指す「治療用rAAV」を使用して、インビボでタンパク質を置換又は補完することができる。「治療用タンパク質」は、対応する内因性タンパク質を置換するか、又はその活性の喪失若しくは低減を補完する生物活性を有するポリペプチドを指す。例えば、機能的フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)は、フェニルケトン尿症(PKU)のための治療用タンパク質である。したがって、例えば、組換えAAV PAHウイルスを、PKUに罹患した対象の治療のための薬剤に使用することができる。薬剤は、静脈内(IV)投与によって投与され得、薬剤の投与は、対象における神経伝達物質の代謝産物又は神経伝達物質のレベルを変更するのに十分なレベルで、対象におけるPAHタンパク質の発現をもたらす。任意選択的に、薬剤はまた、PAHをコードするrAAVの投与に関連する任意の肝毒性の予防及び/又は治療のための、予防的及び/又は治療的コルチコステロイドも含み得る。予防的又は治療的コルチコステロイドの処置は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、又はそれ以上のコルチコステロイドを含み得る。予防的又は治療的コルチコステロイドを含む薬剤は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、又はそれ以上の連続的な期間にわたって投与され得る。PKU療法は、任意選択的に、チロシンサプリメントを含んでもよい。
【0055】
AAVキャプシドに取り込まれた導入遺伝子は、限定されないが、治療目的の任意の異種遺伝子であり得る。導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、又は他の産物をコードする導入遺伝子に隣接するAAV ITR配列に対して異種の核酸配列である。核酸コード配列は、宿主細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式で調節構成要素に作動的に連結される。
【0056】
導入遺伝子配列の組成は、得られるウイルスの使用に依存する。例えば、あるタイプの導入遺伝子配列は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。そのようなレポーター配列には、限定するものではないが、b-ラクタマーゼ、b-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質(例えば、CD2、CD4、CD8を含む)、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知の他のものであって、それらに対する高親和性抗体が存在するか又は従来の手段によって産生することができるもの、並びに特にヘマグルチニン又はMyc由来の抗原タグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列が含まれる。
【0057】
これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと会合したときに、酵素アッセイ、放射線撮影アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ、又は他のスペクトログラフィーアッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルをコードするrAAVによって感染した細胞の存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼである場合、シグナルをコードするrAAVは、蛍光又は発光を測定する器具によって検出することができる。
【0058】
しかしながら、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体、又は触媒RNAなどの、生物学及び医学において有用な産物をコードする非マーカー配列であることが望ましい。望ましいRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、低分子ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA、及びアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の一例は、処置される対象において標的の核酸配列の発現を阻害するか又は消失させる配列である。典型的には、好適な標的配列には、腫瘍学的標的及びウイルス性疾患が含まれる。そのような標的の例については、以下の免疫原に関連するセクションで特定される腫瘍標的及びウイルスを参照されたい。
【0059】
導入遺伝子は、遺伝子欠損を修正又は改善するために使用され得、遺伝子欠損は、正常な遺伝子が正常レベル未満で発現される欠損、又は機能遺伝子産物が発現されない欠損を含み得る。好ましいタイプの導入遺伝子配列は、感染した細胞で発現される治療用タンパク質又はポリペプチドをコードする。ベクターゲノムは、例えば、マルチサブユニットタンパク質によって引き起こされる遺伝子欠損を修正又は改善するために、複数の導入遺伝子を更に含み得る。ある特定の状況では、異なる導入遺伝子は、タンパク質の各サブユニットをコードするために、又は異なるペプチド若しくはタンパク質をコードするために使用することができる。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合(例えば、免疫グロブリン、血小板由来成長因子、又はジストロフィンタンパク質)に望ましい。細胞がマルチサブユニットタンパク質を産生するために、異なるサブユニットの各々を含有する組換えウイルスを細胞に感染させる。代替的に、タンパク質の異なるサブユニットは、同じ導入遺伝子によってコードされていてもよい。この場合、単一の導入遺伝子は、各サブユニットのDNAが内部リボザイム進入部位(IRES)によって分離された、サブユニットの各々をコードするDNAを含む。これは、サブユニットの各々をコードするDNAのサイズが小さい場合(例えば、サブユニットをコードするDNA及びIRESの総サイズが5キロベース未満)に望ましい。IRESの代替として、翻訳後事象において自己切断する2Aペプチドをコードする配列によってコード配列が分離されていてもよい。例えば、Donnelly et al,J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13-21(January 1997)、Furler,et al,Gene Ther.,8(11):864-873(June 2001)、Klump et al,Gene Ther.,8(lO):811-817(May 2001)を参照されたい。この2Aペプチドは、IRESよりも著しく小さく、これは、2Aペプチドを、スペースが制限要因であるときの使用に十分に好適にする。より多くの場合、導入遺伝子が大きい場合、マルチサブユニットからなる場合、又は2つの導入遺伝子が同時送達される場合、所望の導入遺伝子(複数可)又はサブユニットを保有するrAAVを同時投与することで、インビボでそれらをコンカテマー化して、単一のベクターゲノムを形成することが可能になる。そのような実施形態では、宿主細胞での同時発現のために、第1のAAVは、単一の導入遺伝子を発現する発現カセットを保有し得、第2のAAVは、異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを保有し得る。しかしながら、選択される導入遺伝子は、任意の生物学的に活性な産物又は他の産物(例えば、研究に望ましい産物)をコードすることができる。
【0060】
好適な導入遺伝子は、当業者によって容易に選択することができる。導入遺伝子の選択は、本発明を限定するとみなすものではない。導入遺伝子は異種タンパク質であってもよく、この異種タンパク質が、治療用タンパク質であってもよい。例示的な治療用タンパク質には、限定されないが、血液因子、例えば、b-グロビン、ヘモグロビン、組織プラスミノーゲン活性化因子、及び凝固因子;コロニー刺激因子(CSF);インターロイキン、例えば、IL-l、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9など;増殖因子、例えば、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えば塩基性FGF及び酸性FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、増殖分化因子9(GDF-9)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-a.)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-.b.)など;可溶性受容体、例えば、可溶性TNF-a.受容体、可溶性VEGF受容体、可溶性インターロイキン受容体(例えば、可溶性IL-l受容体及び可溶性II型IL-l受容体)、可溶性g/dT細胞受容体、可溶性受容体のリガンド結合断片など;酵素、例えば、a-グルコシダーゼ、イミグルカラーゼ、b-グルコセレブロシダーゼ、及びアルグルセラーゼ;酵素活性化剤、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子;ケモカイン、例えば、1P-10、インターフェロン-γによって誘導されるモノカイン(Mig)、Groa/IL-8、RANTES、MIP-la、MIR-1b.、MCP-l、PF-4など;血管新生剤、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF、例えばVEGF121、VEGF165、VEGF-C、VEGF-2)、神経膠腫由来増殖因子、アンギオゲニン、アンギオゲニン-2など;抗血管新生剤、例えば可溶性VEGF受容体;タンパク質ワクチン;神経活性ペプチド、例えば、神経成長因子(NGF)、ブラジキニン、コレシストキニン、ガスチン、セクレチン、オキシトシン、ゴナドトロピン放出ホルモン、β-エンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトスタチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフィン、ワーファリン,ニューロテンシン、モチリン、甲状腺刺激ホルモン、ニューロペプチドY、黄体形成ホルモン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、バソプレシン、アンジオテンシンII、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、睡眠ペプチドなど;血栓溶解剤;心房性ナトリウム利尿ペプチド;リラキシン;グリア線維性酸性タンパク質;卵胞刺激ホルモン(FSH);ヒトα-1アンチトリプシン;白血病抑制因子(LIF);組織因子、黄体形成ホルモン;マクロファージ活性化因子;腫瘍壊死因子(TNF);好中球走化性因子(NCF);メタロプロテイナーゼの組織阻害剤;血管作動性腸管ペプチド;アンギオゲニン;アンギオトロピン;フィブリン;ヒルディン;IF-l受容体アンタゴニストなどが含まれる。いくつかの他の非限定的な目的のタンパク質の例には、毛様体神経栄養因子(CNTF);脳由来神経栄養因子(BDNF);ニューロトロフィン3及び4/5(NT-3及び4/5);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC);血友病関連凝固タンパク質、例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子;ジストロフィン、ミニジストロフィン、又はマイクロジストロフィン;リソソーム酸性リパーゼ;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH);グリコーゲン蓄積疾患関連酵素、例えば、グルコース-6-ホスファターゼ、酸マルターゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、筋グリコーゲンホスホリラーゼ、肝グリコーゲンホスホリラーゼ、筋ホスホフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ(例えば、PHKA2)、グルコーストランスポーター(例えば、GFUT2)、アルドラーゼA、b-エノラーゼ、及びグリコーゲンシンターゼ;リソソーム酵素(例えば、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼA);並びにそれらの任意のバリアントが含まれる。AAVベクターゲノムはまた、ベクターでトランスフェクトされた細胞で又はウイルスに感染した細胞でその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にするような様式で導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメント又は配列を含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」配列には、目的の遺伝子と連続する発現制御配列、及び目的の遺伝子を制御するためにトランスで、又は離れて作用する発現制御配列の両方が含まれる。好適な遺伝子としては、Anguela et al.“Entering the Modern Era of Gene Therapy”,Annual Rev.of Med.Vol.70,pages 272-288(2019)及びDunbar et al.,“Gene comes of age”,Science,Vol.359,Issue 6372,eaan4672(2018)において考察されている遺伝子が挙げられる。
【0061】
発現制御配列は、導入遺伝子に連結され得る。発現制御配列の例としては、適切な転写開始、終結、プロモーター、及びエンハンサーの配列;スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)のシグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強させる配列;及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強させる配列が挙げられる。天然の、構成的、誘導性、及び/又は組織特異的プロモーターを含む多くの発現制御配列が当該技術分野で既知であり、利用することができる。構成的プロモーターの例としては、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択的にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択的にCMVエンハンサーを有する)(例えば、Boshart el al,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、b-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1プロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外来的に供給される化合物、温度などの環境因子、又は特定の生理学的状態(例えば、急性期、細胞の特定の分化状態、若しくは複製細胞中のみ)の存在によって調節することができる。誘導性プロモーター及び誘導系は、Invitrogen、Clontech、及びAriadを含むが限定するものではない、様々な商業的供給者から入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択することができる。外来的に供給される化合物によって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[WO98/10088]、エクジソン昆虫プロモーター[No et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996)]、テトラサイクリン抑制系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992)]、テトラサイクリン誘導系[Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)も参照]、RU486誘導系[Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239-243(1997)及びWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997)]並びにラパマイシン誘導系[Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997)]が挙げられる。この文脈において有用であり得る他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、又は複製細胞中のみで調節されるものである。
【0062】
任意選択的に、導入遺伝子の天然のプロモーターを使用してもよい。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣すべきである場合、天然のプロモーターが好ましいものであり得る。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が、一時的に若しくは発達的に、又は組織特異的な様式で、又は特定の転写刺激に応答して調節されなければならないときに使用され得る。更なる実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、又はコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御エレメントはまた、天然の発現を模倣するために使用することができる。
【0063】
導入遺伝子はまた、組織特異的プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含み得る。例えば、骨格筋での発現が所望される場合、筋肉で活性なプロモーターが使用される必要がある。これらには、骨格bアクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子由来のプロモーター、及び天然に存在するプロモーターよりも高い活性を有する合成筋肉プロモーターが含まれる(Li et al.,Nat.Biotech.,17:241-245(1999)を参照されたい)。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝臓について知られている(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124-32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002-9(1996);α-フェトタンパク質(AFP)、Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503-14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185-96(1997));骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654-64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063-8(1998);免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体鎖)、ニューロンの、例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611-5(1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373-84(1995))。
【0064】
組換えAAVを使用して、例えば、細胞培養で目的のタンパク質をインビトロで産生することができる。例えば、AAVは、インビトロで目的のタンパク質を産生するための方法において使用することができ、本方法は、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVを提供することと、組換えAAVを細胞培養中の細胞と接触させることと、を含み、それによって、組換えAAVが細胞において目的のタンパク質を発現する。目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のサイズは変動し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.1キロ塩基(kb)長、少なくとも約0.2kb長、少なくとも約0.3kb長、少なくとも約0.4kb長、少なくとも約0.5kb長、少なくとも約0.6kb長、少なくとも約0.7kb長、少なくとも約0.8kb長、少なくとも約0.9kb長、少なくとも約1kb長、少なくとも約1.1kb長、少なくとも約1.2kb長、少なくとも約1.3kb長、少なくとも約1.4kb長、少なくとも約1.5kb長、少なくとも約1.6kb長、少なくとも約1.7kb長、少なくとも約1.8kb長、少なくとも約2.0kb長、少なくとも約2.2kb長、少なくとも約2.4kb長、少なくとも約2.6kb長、少なくとも約2.8kb長、少なくとも約3.0kb長、少なくとも約3.2kb長、少なくとも約3.4kb長、少なくとも約3.5kb長、少なくとも約4.0kb長、少なくとも約5.0kb長、少なくとも約6.0kb長、少なくとも約7.0kb長、少なくとも約8.0kb長、少なくとも約9.0kb長、又は少なくとも約10.0kb長であり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは少なくとも約1.4kbの長さである。
【0065】
組換えAAVを使用して、動物(例えば、哺乳動物)において目的のタンパク質をインビボで産生することができる。いくつかの実施形態は、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVを提供することと、組換えAAVを対象に投与し、それにより組換えAAVは対象において目的のタンパク質を発現することとを含む、目的のタンパク質をインビボで産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物、例えば、サル、イヌ、ネコ、マウス、又はウシであることができる。目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のサイズは変動し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.1kb長、少なくとも約0.2kb長、少なくとも約0.3kb長、少なくとも約0.4kb長、少なくとも約0.5kb長、少なくとも約0.6kb長、少なくとも約0.7kb長、少なくとも約0.8kb長、少なくとも約0.9kb長、少なくとも約1kb長、少なくとも約1.1kb長、少なくとも約1.2kb長、少なくとも約1.3kb長、少なくとも約1.4kb長、少なくとも約1.5kb長、少なくとも約1.6kb長、少なくとも約1.7kb長、少なくとも約1.8kb長、少なくとも約2.0kb長、少なくとも約2.2kb長、少なくとも約2.4kb長、少なくとも約2.6kb長、少なくとも約2.8kb長、少なくとも約3.0kb長、少なくとも約3.2kb長、少なくとも約3.4kb長、少なくとも約3.5kb長、少なくとも約4.0kb長、少なくとも約5.0kb長、少なくとも約6.0kb長、少なくとも約7.0kb長、少なくとも約8.0kb長、少なくとも約9.0kb長、又は少なくとも約10.0kb長であり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは少なくとも約1.4kbの長さである。
【0066】
特に興味深いのは、様々な疾患又は障害を治療するための1つ以上の治療用タンパク質を発現するための組換えAAVの使用である。疾患の非限定的な例には、がん腫、肉腫、白血病、リンパ腫などのがん;並びに多発性硬化症などの自己免疫疾患が含まれる。がん腫の非限定的な例には、食道がん;肝細胞がん;基底細胞がん、扁平上皮がん(種々の組織);移行上皮がんを含む膀胱がん;気管支原性がん;結腸がん;大腸がん;胃がん;肺の小細胞がん及び非小細胞がんを含む肺がん;副腎皮質がん;甲状腺がん;膵臓がん;乳がん;卵巣がん;前立腺がん;腺がん;汗腺がん;脂腺がん;乳頭がん;乳頭腺がん;嚢胞腺がん;髄様がん;腎細胞がん;非浸潤性乳管がん又は胆管がん;絨毛がん;セミノーマ;胎児性がん;ウィルムス腫瘍;子宮頸がん;子宮がん;精巣がん;骨形成がん;上皮がん;並びに鼻咽頭がんが含まれる。肉腫の非限定的な例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、及び他の軟部組織肉腫が挙げられる。固形腫瘍の非限定的な例には、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が含まれる。白血病の非限定的な例には、慢性骨髄増殖性症候群;急性骨髄性白血病;B細胞CLL、T細胞CLL前リンパ球性白血病及び有毛細胞白血病を含む、慢性リンパ球性白血病;並びに急性リンパ芽球性白血病が含まれる。リンパ腫の例には、B細胞リンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫等が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書に開示されるrAAV及び方法を使用して治療することができる疾患の他の非限定的な例としては、鎌状赤血球症、嚢胞性線維症、リソソーム酸性リパーゼ(LAL)欠損1、テイ=サックス病、フェニルケトン尿症、ムコ多糖症、糖原病(GSD、例えば、GSD I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、及びXIV型)、ガラクトース血症、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ筋ジストロフィー)、及び血友病(例えば、血友病A(古典的血友病)及び血友病B(クリスマス病))、ウィルソン病、ファブリー病、ゴーシェ病、遺伝性血管浮腫(HAE)、並びにα1アンチトリプシン欠損症が挙げられる。加えて、本明細書に開示されるrAAV及び方法は、肝臓における導入遺伝子の局所発現によって、又は肝臓若しくは肝細胞からの分泌タンパク質の発現によって治療され得る他の障害を治療するために使用することができる。
【0068】
対象(例えば、対象の血清)において発現される異種タンパク質の量は変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質は、対象の血清中に、少なくとも約9ミリグラム(mg)/mL、少なくとも約10mg/mL、少なくとも約11mg/mL、少なくとも約12mg/mL、少なくとも約13mg/mL、少なくとも約14mg/mL、少なくとも約15mg/mL、少なくとも約16mg/mL、少なくとも約17mg/mL、少なくとも約18mg/mL、少なくとも約19mg/mL、少なくとも約20mg/mL、少なくとも約21mg/mL、少なくとも約22mg/mL、少なくとも約23mg/mL、少なくとも約24mg/mL、少なくとも約25mg/mL、少なくとも約26mg/mL、少なくとも約27mg/mL、少なくとも約28mg/mL、少なくとも約29mg/mL、少なくとも約30mg/mL、少なくとも約31mg/mL、少なくとも約32mg/mL、少なくとも約33mg/mL、少なくとも約34mg/mL、少なくとも約35mg/mL、少なくとも約36mg/mL、少なくとも約37mg/mL、少なくとも約38mg/mL、少なくとも約39mg/mL、少なくとも約40mg/mL、少なくとも約41mg/mL、少なくとも約42mg/mL、少なくとも約43mg/mL、少なくとも約44mg/mL、少なくとも約45mg/mL、少なくとも約46mg/mL、少なくとも約47mg/mL、少なくとも約48mg/mL、少なくとも約49mg/mL、又は少なくとも約50mg/mLの量で発現され得る。目的のタンパク質は、対象の血清中に、約9ピコグラム(pg)/mL、約10pg/mL、約50pg/mL、約100pg/mL、約200pg/mL、約300pg/mL、約400pg/mL、約500pg/mL、約600pg/mL、約700pg/mL、約800pg/mL、約900pg/mL、約1000pg/mL、約1500pg/mL、約2000pg/mL、約2500pg/mL、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の量で発現され得る。当業者は、目的のタンパク質が治療有効性に必要な発現レベルは、目的の特定のタンパク質及び治療を受けている対象などの非限定的な因子によって変動し得るものであり、有効量のタンパク質は、過度の実験をすることなく当該技術分野で既知の従来の方法を使用して当業者によって容易に決定され得ることを理解するであろう。
【0069】
アデノ随伴ウイルスの産生方法
【0070】
本開示は、rAAVビリオンを、昆虫細胞などの細胞内で産生するための材料及び方法を提供する。
【0071】
AAVウイルス粒子を作製する方法は、例えば、米国特許第6204059号、同第5756283号、同第6258595号、同第6261551号、同第6270996号、同第6281010号、同第6365394号、同第6475769号、同第6482634号、同第6485966号、同第6943019号、同第6953690号、同第7022519号、同第7238526号、同第7291498号、及び同第7491508号、同第5064764号、同第6194191号、同第6566118号、同第8137948号、又は国際公開第1996/039530号、同第1998/010088号、同第1999/014354号、同第1999/015685号、同第1999/047691号、同第2000/055342号、同第2000/075353号、同第2001/023597号、同第2015/191508号、同第2019/217513号、同第2018/022608号、同第2019/222136号、同第2020/232044号、同第2019/222132号、Methods In Molecular Biology,ed.Richard,Humana Press,NJ(1995)、O‘Reilly et al.,Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,Oxford Univ.Press(1994)、Samulski et al.,J.Vir.63:3822-8(1989)、Kajigaya et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 88:4646-50(1991)、Ruffing et al.,J.Vir.66:6922-30(1992)、Kimbauer et al.,Vir.,219:37-44(1996)、Zhao et al.,Vir.272:382-93(2000)に記載されており、それらの各々の内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
例えば、昆虫細胞、酵母細胞、及び哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞又は非ヒト哺乳動物細胞)などの細胞は、rAAVを生成することができる。例えば、細胞は、提供されたAAVヘルパー機能、AAV非ヘルパー機能、及び細胞がAAVベクターゲノムを生成するために使用するヌクレオチド配列を生成することができる。様々な実施形態では、AAVヘルパー機能、AAV非ヘルパー機能、及び細胞がrAAVを生成するために使用するヌクレオチド配列は、例えば、トランスフェクション試薬によるトランスフェクションを介して、他の組換えウイルスによる形質導入/感染を介して、ヌクレオチド配列を細胞のゲノムに組み込むことによって、又は他の方法によって、細胞に送達されるベクターによって提供される。
【0073】
「ベクター」という用語は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、バクミド、ミニプラスミド(例えば、細菌エレメントを含まないプラスミド)、ドギーボーンDNA(例えば、最小の閉じた線形構築物)、染色体、ウイルス、ビリオン(例えば、バキュロウイルス)などの、適切な制御エレメントを伴う場合に複製することができ、かつ細胞間で遺伝子配列を伝達することができる、任意の遺伝子エレメントを指すと理解される。本明細書で使用される「昆虫細胞適合性ベクター」又は「ベクター」は、昆虫又は昆虫細胞の産生的形質転換又はトランスフェクションが可能な核酸分子を指す。例示的な生物学的ベクターとしては、プラスミド、直鎖核酸分子、及び組換えウイルスが挙げられる。任意のベクターが、昆虫細胞適合性である限り用いられ得る。ベクターは、昆虫細胞ゲノムに組み込まれ得るが、昆虫細胞中のベクターの存在は、永久的である必要はなく、一過性のエピソームベクターも含まれる。ベクターは、既知の任意の手段、例えば、細胞の化学処理、エレクトロポレーション、又は感染によって導入され得る。バキュロウイルスベクター及びその使用方法は、昆虫細胞の分子工学に関する上記引用文献に記載されている。
【0074】
細胞がrAAVベクターゲノムを生成するベクターは、プロモーターと、1つ以上の目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの挿入を可能にするためのプロモーターの下流の制限部位と、を含み得、プロモーター及び制限部位は、5’AAV ITRの下流及び3’AAV ITRの上流に位置する。ベクターはまた、制限部位の下流及び3’AAV ITRの上流の転写後調節エレメントを含み得る。ウイルス構築物は、制限部位に挿入され、プロモーターと作動可能に連結されたポリヌクレオチドを更に含み得、ポリヌクレオチドが、対象となるタンパク質のコード領域を含む。
【0075】
「AAVヘルパー」という用語は、AAV遺伝子産物を提供するために発現され得、AAV遺伝子産物が、次いで生産的なAAV複製のためにトランスで機能する、AAV由来コード配列を指す。したがって、AAVヘルパー機能には、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)であるrep及びcapの両方が含まれる。Rep発現産物は、特に以下のものを含む、多くの機能を有することが示されている:DNA複製のAAV起点の認識、結合、及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;並びにAAV(又は他の異種)プロモーターからの転写の調節。キャプシド(Cap)発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書では、AAVベクターゲノムから失われたAAV機能をトランスで補完するために使用される。
【0076】
様々な実施形態では、AAVヘルパー機能を提供するベクターは、キャプシドタンパク質又はRepタンパク質をコードするヌクレオチド配列(複数可)を含む。任意のAAV血清型(限定されないが、AAV1(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_002077.1)、AAV2(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_001401.2)、AAV3(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_001729.1)、AAV3B(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号AF028705.1)、AAV4(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_001829.1)、AAV5(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_006152.1)、AAV6(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号AF028704.1)、AAV7(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_006260.1)、AAV8(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号NC_006261.1)、AAV9(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号AX753250.1)、AAV10(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号AY631965.1)、AAV11(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号AY631966.1)、AAV12(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号DQ813647.1)、AAV13(NCBI参照配列番号/Genbank受託番号EU285562.1)Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、Bfm35、AAV-rh10、AAV-rh39、AAV-rh43、AAVanc80L65、又はそれらの任意のバリアントを含む)からのキャップ遺伝子及び/又はrep遺伝子を本明細書で使用して、組換えAAVを産生することができる。例示的なキャプシドはまた、国際出願第2018/022608号及び同第2019/222136号(それらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)においても提供される。上で提供された各NCBI参照配列番号又はGenbank受入番号も、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、血清型1、血清型2、血清型3,血清型3B、血清型4、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、血清型9、血清型10、血清型11、血清型12、血清型13、又はこれらのバリアントからのキャプシドをコードする。
【0077】
生産のために、AAVヘルパー機能を有する細胞は、キャプシドを形成するのに十分な組換えキャプシドタンパク質を産生する。これには、少なくともVP1及びVP3タンパク質が含まれるが、より典型的には、天然AAVに見出されるVP1、VP2、及びVP3タンパク質の3つ全てが含まれる。キャプシドタンパク質の配列は、宿主細胞によって産生されるAAVビリオンの血清型を決定する。本発明において有用なキャプシドは、1、2、3、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は混合血清型を含むいくつかのAAV血清型に由来するものを含む(例えば、米国特許第8,318,480号を、非天然混合血清型のその開示について参照されたい)。キャプシドタンパク質はまた、変異タンパク質、キメラタンパク質、又はシャフルタンパク質を含む、天然のVP1、VP2、及びVP3のバリアントであり得る。キャプシドタンパク質は、AAVの様々なクレード内のrh.10又は他のサブタイプのものであり得る。様々なクレード及びサブタイプは、例えば、米国特許第7,906,111号に開示されている。広範な構築物の利用可能性及び広範な特徴付けのために、以下に開示される例示的なAAVベクターは、血清型2に由来する。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001において考察されている。
【0078】
様々な実施形態では、VPタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、Polhプロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0079】
異なる実施例では、39Kプロモーターは、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99超%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0080】
TTCGGACTGCTTGACTCGCAGCGAAATACAAGCGCTGTTCAGGGAAGCCATCAACACGCTCAAGCACACGATGAACACAGAAAACGTCTGCGCGCACATGTTGGACATCGTGTCGTTTGAGCGTATAAAAGAATATATAAGAGCTAATTTAGGCCATTTCACAGTAATCACCGACAAATGTTCGAAGCGTAAGGTGTGTCTTCATCACAAACGAATTGCCAGGTTGTTGGGCATTAAAAAAATATATCATCAAGAATACAAACGGGTTGTTTCAAAGGTTTACAAGAAGCAAAC
【0081】
異なる実施例では、p6.9プロモーターは、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99超%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0082】
AAATTCCGTTTTGCGACGATGCAGAGTTTTTGAACAGGCTGCTCAAACACATAGATCCGTACCCGCTCAGTCGGATGTATTACAATGCAGCCAATACCATGTTTTACACGACTATGGAAAACTATGCCGTGTCCAATTGCAAGTTCAACATTGAGGATTACAATAACATATTTAAGGTGATGGAAAATATTAGGAAACACAGCAACAAAAATTCAAACGACCAAGACGAGTTAAACATATATTTGGGAGTTCAGTCGTCGAATGCAAAGCGTAAAAAATATTAATAAGGTAAAAATTACAGCTACATAAATTACACAATTTAAAC
【0083】
異なる実施例では、Polhプロモーターは、配列番号3と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99超%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0084】
ATCATGGAGATAATTAAAATGATAACCATCTCGCAAATAAATAAGTATTTTACTGTTTTCGTAACAGTTTTGTAATAAAAAAACCTATAAATATTCCGGATTATTCATACCGTCCCACCATCGGGCGCG
【0085】
生産のために、AAVヘルパー機能を有する細胞は、rAAVの生産を促進するためのRepタンパク質を産生する。感染性粒子は、少なくとも1つの大きなRepタンパク質(Rep78又はRep68)及び少なくとも1つの小さなRepタンパク質(Rep52及びRep40)が細胞で発現される場合に産生され得ることが見出されている。特定の実施形態では、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40の4つ全てが発現される。あるいは、Rep78及びRep52、Rep78及びRep40、Rep68及びRep52、又はRep68及びRep40が発現される。以下の例は、Rep78/Rep52の組み合わせの使用を示す。Repタンパク質は、AAV-2又は他の血清型に由来し得る。様々な実施形態では、Repタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、ポリヘドリン(Polh)プロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0086】
AAVヘルパー機能を有する細胞はまた、キャプシドのアセンブリを助けるアセンブリ活性化タンパク質(AAP)を産生することができる。様々な実施形態では、AAPをコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、ポリヘドリン(Polh)プロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0087】
「非AAVヘルパー機能」という用語は、AAVがその複製に依存する非AAV由来のウイルス機能及び/又は細胞機能を指す。したがって、この用語は、AAV遺伝子転写の活性化、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、及びAAVキャプシドアセンブリに関与する部分を含む、AAVの複製に必要なタンパク質及びRNAを捕捉する。ウイルスベースのアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型を除く)、及びワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0088】
「非AAVヘルパー機能ベクター」という用語は、一般に、アクセサリー機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。アクセサリー機能ベクターを、好適な宿主細胞にトランスフェクトすることができ、ベクターは、次いで、宿主細胞におけるAAVビリオンの産生をサポートすることができる。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルス粒子など、自然界に存在する感染性ウイルス粒子は、この用語から明示的に除外される。したがって、アクセサリー機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、又はコスミドの形態であってもよい。特に、アデノウイルス遺伝子の完全相補体は、アクセサリーヘルパー機能に必要ではないことが実証されている。例えば、DNA複製及び後期遺伝子合成が不可能なアデノウイルス変異体は、AAV複製を許容することが示されている。Ito et al.,(1970)J.Gen.Virol.9:243、Ishibashi et al,(1971)Virology 45:317。同様に、E2B及びE3領域内の変異体は、AAV複製をサポートすることが示されており、E2B及びE3領域がアクセサリー機能の提供におそらく関与していないことが示されている。Carter et al.,(1983)Virology 126:505。しかしながら、E1領域に欠陥がある、又はE4領域が欠失しているアデノウイルスは、AAV複製をサポートすることができない。したがって、E1A及びE4領域は、直接的に又は間接的にいずれかで、AAV複製に必要とされる可能性が高い。Laughlin et al.,(1982).J.Virol.41:868、Janik et al.,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925、Carter et al.,(1983)Virology 126:505。その他の特徴付けられたAd変異体には、以下のものが含まれる:E1B(Laughlin et al.(1982),上記、Janik et al.(1981),上記、Ostrove et al.,(1980)Virology 104:502)、E2A(Handa et al.,(1975)J.Gen.Virol.29:239、Strauss et al.,(1976)J.Virol.17:140、Myers et al.,(1980)J.Virol.35:665、Jay et al.,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927、Myers et al.,(1981)J.Biol.Chem.256:567);E2B(Carter,Adeno-Associated Virus Helper Functions,I CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen ed.,1990));E3(Carter et al.(1983),上記);及びE4(Carter et al.(1983),上記、Carter(1995))。E1Bコード領域に変異を有するアデノウイルスによって提供されるアクセサリー機能の研究は、矛盾する結果をもたらしたが、Samulski et al.,(1988)J.Virol.62:206-210は最近、E1B55kがAAVビリオンの産生に必要であるが、E1B19kはそうではないことを報告した。加えて、国際公開第97/17458号及びMatshushita et al.,(1998)Gene Therapy 5:938-945には、様々なAd遺伝子をコードするアクセサリー機能ベクターが記載されている。特に好ましいアクセサリー機能ベクターは、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、及びインタクトのE1B55kコード領域を欠くアデノウイルスE1B領域を含む。かかるベクターは、国際公開第01/83797号に記載されている。
【0089】
異種タンパク質の発現のための昆虫細胞の使用は、文書により十分に説明されており、核酸、例えばベクター、例えば昆虫細胞適合性ベクターをそのような細胞に導入する方法、及びそのような細胞を培養液中で維持する方法も同様である。(例えば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,ed.Richard,Humana Press,N J(1995)、O‘Reilly et al.,BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS,A LABORATORY MANUAL,Oxford Univ.Press(1994)、Samulski et al.,J.Vir.(1989)vol.63,pp.3822-3828、Kajigaya et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA(1991)vol.88,pp.4646-4650、Ruffing et al.,J.Vir.(1992)vol.66,pp.6922-6930、Kirnbauer et al.,Vir.(1996)vol.219,pp.37-44、Zhao et al.,Vir.(2000)vol.272,pp.382-393、及び米国特許第6,204,059号を参照されたい)。使用することができる昆虫細胞株の例は、Spodoptera frugiperda、例えば、Sf9、Sf21、Sf900+、drosophila細胞株、蚊細胞株、例えば、Aedes albopictus由来細胞株、飼育カイコ細胞株、例えば、Bombyxmori細胞株、Trichoplusia ni細胞株、例えば、High Five細胞株、又は鱗翅類細胞株、例えば、Ascalapha odorata細胞株に由来し得る。例示的な昆虫細胞は、バキュロウイルス感染に感受性である昆虫種由来の細胞であり、High Five、Sf9、Sf-RVN、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、及びAo38が含まれる。
【0090】
様々な実施形態では、rAAV産生のためのベクターを有する昆虫細胞が提供される。rAAV産生のためのヌクレオチド配列を有する組換えバキュロウイルス(rBV)を使用して、これらのヌクレオチド配列をrAAV産生のために昆虫細胞に送達することができる。rBVなどのバキュロウイルスは、節足動物のエンベロープDNAウイルスであり、そのうち2つのメンバーは、細胞培養で組換えタンパク質を産生するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、環状二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有し、これを操作して、特定の細胞に大量のゲノム内容物の送達を可能にすることができる。ベクターとして使用されるウイルスは、一般に、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)又はBombyx mori核多角体病ウイルス(Bm-NPV)である(Katou,Yasuhiro,et al.,Virology 404.2(2010):204-214)。バキュロウイルスは、一般に、組換えタンパク質の発現のための昆虫細胞の感染に使用される。特に、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号、Friesen,P.D.,and L.K.Miller.,Current topics in microbiology and immunology 131(1986):31-49、EP 127839、EP 155476、Vlak,Just M.,et al.,Journal of General Virology 69.4(1988):765-776、Miller,Lois K.,Annual Reviews in Microbiology 42.1(1988):177-199、Carbonell,Luis F.,et al.,Gene 73.2(1988):409-418、Maeda,Susumu,et al.,Nature 315.6020(1985):592-594、Lebacq-Verheyden,ANNE-MARIE,et al.,Molecular and cellular biology 8.8(1988):3129-3135、Smith,Gale E.,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences 82.24(1985):8404-8408、Miyajima,Atsushi,et al.,Gene 58.2-3(1987):273-281、及びMartin,Brian M.,et al.,DNA 7.2(1988):99-106に記載されるように達成され得る。多数のバキュロウイルス株及びバリアント、並びにタンパク質の産生に使用することができる対応する許容昆虫宿主細胞は、Luckow,Verne A.,and Max D.Summers.,Bio/technology 6.1(1988):47-55、Miller et al.(1986)Genetic Engineering,Principles and Methods,Vol.8(eds.J.Setlow and A.Hollaender),Plenum Press,N.Y.,pp.277-298,1986)、Maeda,Susumu,et al.,Nature 315.6020(1985):592-594、及びMcKenna,Kevin A.,Huazhu Hong,and Robert R.Granados.,Journal of Invertebrate Pathology 71.1(1998):82-90に記載されている。
【0091】
組換えバキュロウイルス(rBV)を生成するために、ドナーベクター及びバクミド又はトランスファーベクター及び線形化バキュロウイルスDNAが使用される。バクミドは、Escherichia coli(大腸菌)などの細菌で大きなプラスミドとして増殖する。バクミドは、昆虫細胞にトランスフェクトされた場合、バキュロウイルスを生成する。従来のバキュロウイルス生成、例えば、InvitrogenのBac-to-Bacシステムにおけるものは、E.coliにおける部位特異的転置によって組換えバキュロウイルスを生成する。次いで、高分子量バクミドDNAを単離し、Sf9又はSf21細胞にトランスフェクトし、そこから組換えバキュロウイルスを単離し、増幅する。
【0092】
昆虫細胞は、rAAVベクターゲノムのヌクレオチド配列を有するか、又はrBVを生成するためのAAVヘルパー機能を提供するヌクレオチド配列を有するバクミドで別々にトランスフェクトすることができる。続いて、これらの異なるrBVを使用してナイーブ昆虫細胞を共感染させて、rAAVを生成する。
【0093】
昆虫細胞におけるAAV産生のために現在使用されているプロトコルに存在する重要な問題は、バキュロウイルスの不安定性である。この不安定性は、欠陥干渉粒子(DIP)の生成につながる。不安定性は、部分的には、バキュロウイルスゲノム複製が本質的に不安定であり、目的の遺伝子を含む大きな欠失をもたらし、低いrAAV生産性をもたらすために引き起こされる。この問題に対処するための一般的な緩和戦略は、非常に低い感染多重度(MOI)でのrBVによる継代及び感染を行うことを伴う。(MOIは、各細胞に感染するウイルス粒子の平均数、すなわち、感染中に細胞当たり追加されたウイルスの数を指す。)第2の戦略は、安定性のために選択するためにrBVをクローニングすることである。他の戦略は、例えば、重要な遺伝子の近くに選択マーカーを再配置すること、及び/又は反復hr領域を移動/欠失させることによって安定性を最適化しようとする、バキュロウイルス骨格の修飾を伴う。
【0094】
上記に記載されるように、バキュロウイルスの不安定性に対処するための1つの戦略は、低MOIを使用することを伴う。低MOIを使用すると、小規模にバキュロウイルスの不安定性がいくらか改善されるが、その改善は、商業的生産には十分ではない。
【0095】
例えば、バキュロウイルス(BV)ゲノムが不安定であり、複数の継代後にrep及びcap遺伝子又は治療用遺伝子において欠失が起こることが発見された。これらの欠失は、rAAVの生産性を損なう。欠失及び生産性低下に対処するために、異なるプロセスが開発された。第1のプロセスは、安定したE.coliクローンをバクミドとともにバンクし、クローン内でバクミドを増殖させることである。第2のプロセスは、懸濁液中でSf細胞のトランスフェクションを実施してBVを生成し、rAAVの産生のために継代0(P0)BVを単離することである。第3のプロセスは、超低感染多重度(MOI)(例えば、0.01未満)でSf細胞をP0 BVで感染させて、rAAVを産生することである。
【0096】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を少なくとも1つの組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップを含む。少なくとも1つのrBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法は、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを更に含む。この方法では、少なくとも1つのrBVは、ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つでトランスフェクトされた細胞を含む少なくとも1つの細胞培養物から単離される。例えば、ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つは、バクミド中にある。
【0097】
様々な実施形態では、rAAVは、High Five、Sf9、Sf-RVN、Se30l、SeIZD2l09、SeUCRl、Sf900+、Sf2l、BTI-TN-5B1-4、MG-l、Tn368、HzAml、BM-N、Ha2302、Hz2E5及びAo38を含むがこれらに限定されない、AAV又は生物学的産物の産生を可能にし、培養で維持され得、バキュロウイルス感染に感受性である任意の昆虫細胞型を使用して産生される。
【0098】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を少なくとも1つの組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させるステップを含む。少なくとも1つのrBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法は、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを更に含む。この方法では、少なくとも1つのrBVは、感染させるステップの前に、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する細胞を含む少なくとも1つの細胞培養物から単離される。細胞はまた、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分と組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、少なくとも1つのヌクレオチド配列でトランスフェクトされる。例えば、線状化されたバキュロウイルスゲノムは、新しく形成されたバキュロウイルスゲノムを有する細胞がrBVを生成することができるように、ヌクレオチド分子を含むバキュロウイルスゲノムが生成されるように、ヌクレオチド分子と組み換えることができる。
【0099】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を継代0(P0)rBVに感染させるステップと、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップと、を含む。P0 rBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、rAAVを生成するために細胞に感染するために使用されるrBVは、1未満の継代である。
【0100】
様々な実施形態では、少なくとも1つのrBVを使用する大規模なrBVベースのrAAV産生の方法が開示される。方法は、AAV rep遺伝子、AAV cap遺伝子、及びrAAVベクターゲノムを有するバクミドを含有する組換えE.coliのバンクを作製するステップと、該E.coliバンクを凍結保存するステップと、該E.coliバンクを解凍するステップと、解凍されたE.coliバンクからバクミドを単離するステップと、該解凍されたE.coliバンクからのバクミドを用いて昆虫細胞をトランスフェクトして、トランスフェクトされた昆虫細胞を培養するステップと、トランスフェクトされた昆虫細胞からrBVを単離するステップと、バイオリアクター内で昆虫細胞を単離されたrBVに更に感染させ、感染した昆虫細胞を培養してrAAVを生成するステップと、を含む。
【0101】
rBVに関連する「継代」という用語は、培養物中でSf9細胞などのナイーブ昆虫細胞に感染させてより多くのrBVを生成することによって、rBV濃度を増殖させるプロセスである。「継代」という用語に関連付けられた数は、以前の継代からのバクミド又はrBVがより多くのrBVを生成するために使用された連続回数を指す。例えば、培養物中のナイーブSf9細胞の少なくとも一部分にバクミドをトランスフェクトし、これらの細胞を培養することで、単離される継代0又はP0 rBVを産生する。P0 rBVを使用して培養物中のナイーブSf9細胞の少なくとも一部分に感染させるとき、これらの細胞は、P1 rBVを生成する。
【0102】
様々な実施形態では、様々な実施形態の方法によって生成されたP0 rBVの少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99%超、又は100%は、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。
【0103】
様々な実施形態では、様々な実施形態の方法によって生成されたP0 rBVの20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%は、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。他の実施形態では、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する様々な実施形態の方法によって生成されたP0 rBVのパーセンテージは、上記で提供されるいずれか2つのパーセンテージの間の範囲である。
【0104】
様々な実施形態では、E.coliバンク又はクローンを既定の細胞密度まで増殖させて既定濃度のバクミドを抽出して、少なくとも5ミリリットル(mL)、少なくとも10mL、少なくとも50mL、少なくとも100mL、少なくとも500mL、少なくとも1リットル(L)、少なくとも10L、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1000L、少なくとも1500L、少なくとも2000L、又は少なくとも2500Lの培養量で細胞をトランスフェクトする。
【0105】
様々な実施形態では、トランスフェクション後の細胞は、トランスフェクション後約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、約144時間、約168時間、約192時間、約216時間、約240時間、又はこれらの2つの時点のうちのいずれかの間の時間にわたって培養される。
【0106】
様々な実施形態では、rAAVを産生する方法は、細胞を0.01未満の感染多重度(MOI)でrBVに感染させるステップを含む。rBVは、rAAVを生成するためのヌクレオチド配列を有する。この方法はまた、感染した細胞を培養してrAAVを生成するステップを含む。様々な実施形態のrAAVを生成するためのヌクレオチド配列は、rAAVベクターゲノムを提供し、Rep及びキャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0107】
様々な実施形態では、少なくとも1つのrBVを使用する大規模なrBVベースのrAAV産生の方法が開示される。方法は、Repタンパク質をコードするAAV rep遺伝子、Capタンパク質をコードするAAV cap遺伝子、及びrAAVベクターゲノムを提供するヌクレオチド配列を含むバクミドで、ある量の懸濁液中の昆虫細胞を別々にトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた昆虫細胞を培養し、rBVを単離するステップと、バイオリアクター内で昆虫細胞をrBVに更に感染させるステップと、感染した昆虫細胞を培養してrAAVを生成するステップと、を含む。様々な実施形態の量は、例えば、少なくとも0.0001ミリリットル(mL)、少なくとも0.0005mL、少なくとも0.001mL、少なくとも0.005mL、少なくとも0.01mL、少なくとも0.05mL、少なくとも0.1mL、少なくとも0.5mL、少なくとも1mL、少なくとも5mL、少なくとも10mL、少なくとも20mL、少なくとも30mL、少なくとも40mL、少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも200mL、少なくとも300mL、少なくとも400mL、又は少なくとも500mLである。
【0108】
「感染多重度」及び「MOI」という用語は、感染中に細胞当たりに添加されるウイルス粒子の総数の比である。例えば、1×106 rBV粒子を1×106細胞を含む培養物に添加する場合、MOIは、1である。
【0109】
様々な実施形態では、MOIは、0.01、0.0099、0.0098、0.0097、0.0096、0.0095、0.0094、0.0093、0.0092、0.0091、0.009、0.0089、0.0088、0.0087、0.0086、0.0085、0.0084、0.0083、0.0082、0.0081、0.008、0.0079、0.0078、0.0077、0.0076、0.0075、0.0074、0.0073、0.0072、0.0071、0.007、0.0069、0.0068、0.0067、0.0066、0.0065、0.0064、0.0063、0.0062、0.0061、0.006、0.0059、0.0058、0.0057、0.0056、0.0055、0.0054、0.0053、0.0052、0.0051、0.005、0.0049、0.0048、0.0047、0.0046、0.0045、0.0044、0.0043、0.0042、0.0041、0.004、0.0039、0.0038、0.0037、0.0036、0.0035、0.0034、0.0033、0.0032、0.0031、0.003、0.0029、0.0028、0.0027、0.0026、0.0025、0.0024、0.0023、0.0022、0.0021、0.002、0.0019、0.0018、0.0017、0.0016、0.0015、0.0014、0.0013、0.0012、0.0011、0.001、0.00099、0.00098、0.00097、0.00096、0.00095、0.00094、0.00093、0.00092、0.00091、0.0009、0.00089、0.00088、0.00087、0.00086、0.00085、0.00084、0.00083、0.00082、0.00081、0.0008、0.00079、0.00078、0.00077、0.00076、0.00075、0.00074、0.00073、0.00072、0.00071、0.0007、0.00069、0.00068、0.00067、0.00066、0.00065、0.00064、0.00063、0.00062、0.00061、0.0006、0.00059、0.00058、0.00057、0.00056、0.00055、0.00054、0.00053、0.00052、0.00051、0.0005、0.00049、0.00048、0.00047、0.00046、0.00045、0.00044、0.00043、0.00042、0.00041、0.0004、0.00039、0.00038、0.00037、0.00036、0.00035、0.00034、0.00033、0.00032、0.00031、0.0003、0.00029、0.00028、0.00027、0.00026、0.00025、0.00024、0.00023、0.00022、0.00021、0.0002、0.00019、0.00018、0.00017、0.00016、0.00015、0.00014、0.00013、0.00012、0.00011、0.0001、0.000099、0.000098、0.000097、0.000096、0.000095、0.000094、0.000093、0.000092、0.000091、0.00009、0.000089、0.000088、0.000087、0.000086、0.000085、0.000084、0.000083、0.000082、0.000081、0.00008、0.000079、0.000078、0.000077、0.000076、0.000075、0.000074、0.000073、0.000072、0.000071、0.00007、0.000069、0.000068、0.000067、0.000066、0.000065、0.000064、0.000063、0.000062、0.000061、0.00006、0.000059、0.000058、0.000057、0.000056、0.000055、0.000054、0.000053、0.000052、0.000051、0.00005、0.000049、0.000048、0.000047、0.000046、0.000045、0.000044、0.000043、0.000042、0.000041、0.00004、0.000039、0.000038、0.000037、0.000036、0.000035、0.000034、0.000033、0.000032、0.000031、0.00003、0.000029、0.000028、0.000027、0.000026、0.000025、0.000024、0.000023、0.000022、0.000021、0.00002、0.000019、0.000018、0.000017、0.000016、0.000015、0.000014、0.000013、0.000012、0.000011、0.00001、0.0000099、0.0000098、0.0000097、0.0000096、0.0000095、0.0000094、0.0000093、0.0000092、0.0000091、0.000009、0.0000089、0.0000088、0.0000087、0.0000086、0.0000085、0.0000084、0.0000083、0.0000082、0.0000081、0.000008、0.0000079、0.0000078、0.0000077、0.0000076、0.0000075、0.0000074、0.0000073、0.0000072、0.0000071、0.000007、0.0000069、0.0000068、0.0000067、0.0000066、0.0000065、0.0000064、0.0000063、0.0000062、0.0000061、0.000006、0.0000059、0.0000058、0.0000057、0.0000056、0.0000055、0.0000054、0.0000053、0.0000052、0.0000051、0.000005、0.0000049、0.0000048、0.0000047、0.0000046、0.0000045、0.0000044、0.0000043、0.0000042、0.0000041、0.000004、0.0000039、0.0000038、0.0000037、0.0000036、0.0000035、0.0000034、0.0000033、0.0000032、0.0000031、0.000003、0.0000029、0.0000028、0.0000027、0.0000026、0.0000025、0.0000024、0.0000023、0.0000022、0.0000021、0.000002、0.0000019、0.0000018、0.0000017、0.0000016、0.0000015、0.0000014、0.0000013、0.0000012、0.0000011、0.000001、0.000001、9e-7、8e-7、7e-7、6e-7、5e-7、4e-7、3e-7、2e-7、1e-7、9e-8、8e-8、7e-8、6e-8、5e-8、4e-8、3e-8、2e-8、1e-8、9e-9、8e-9、7e-9、6e-9、5e-9、4e-9、3e-9、2e-9、1e-9、9e-10、8e-10、7e-10、6e-10、5e-10、4e-10、3e-10、2e-10、1e-10未満である。他の実施形態では、MOIは、提供されるいずれかの2つのMOI間の範囲である。他の実施形態では、培養物に添加されるrBV粒子の数は、1ビリオン、2ビリオン、3ビリオン、4ビリオン、5ビリオン、6ビリオン、7ビリオン、8ビリオン、9ビリオン、又は10ビリオンである。他の実施形態では、培養物に添加されるrBV粒子の数は、0.01 MOI~1ビリオン、0.01 MOI~2ビリオン、0.01 MOI~3ビリオン、0.01 MOI~4ビリオン、0.01 MOI~5ビリオン、0.01 MOI~6ビリオン、0.01 MOI~7ビリオン、0.01 MOI~8ビリオン、0.01 MOI~9ビリオン、0.01 MOI~10ビリオンの範囲である。
【0110】
様々な実施形態では、0.01未満のP0 rBV又はrBVのMOIの使用は、rAAV力価が少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも600%、少なくとも700%、少なくとも800%、少なくとも900%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも100000%、少なくとも7log増加、少なくとも8log増加、又は少なくとも9log増加する結果となる。例えば、rAAV力価の増加は、1以上の継代又は0.01以上のrBVのMOIでのrBVに対してである。
【0111】
様々な実施形態では、rAAV産生のために細胞を感染させるように使用されるrBVとしては、rAAVベクターゲノムについてのヌクレオチド配列を有する第1のrBVと、Rep及びCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する1つ以上の第2のrBVとが挙げられる。様々な実施形態では、細胞は、0.01~10.0、0.05~7.5、0.1~5、0.5~5、0.7~3.0、0.8~3.0、0.9~3.0、又は1.0~3.0の範囲の第1のrBVのMOI:1つ以上の第2のrBVのMOIの比で感染する。他の実施形態では、第1のrBVのMOI:1つ以上の第2のrBVのMOIの比は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、又は10である。他の実施形態では、比は、上記の任意の2つの比の間の範囲である。
【0112】
様々な実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-9ナノグラム未満、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-10ナノグラム未満、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-11ナノグラム未満、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-12ナノグラム未満、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-13ナノグラム未満、キャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-14ナノグラム未満、又はキャプシド化rAAVベクターゲノム1ナノグラム当たり1E-15ナノグラム未満のキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有する。他の実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、規制当局(例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)など)による規制承認のために少なくとも許容レベルであるキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有する。
【0113】
様々な実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、バキュロウイルスDNAポリメラーゼの少なくとも一部分をコードするキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有し、これは、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-3コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-4コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-6コピー未満、1E-7コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-8コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-9コピー未満、又はキャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-10コピー未満である。他の実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、規制当局(例えば、FDA、EMAなど)による規制承認のために少なくとも許容されるレベルである、バキュロウイルスDNAポリメラーゼの少なくとも一部分をコードするキャプシド化バキュロウイルスヌクレオチド配列の濃度を有する。
【0114】
様々な実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-3コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-3コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-4コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-4コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-5コピー未満、キャプシド化AAVベクターゲノムのコピー当たり2E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり3E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり4E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり6E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり7E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり8E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり9E-5コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-6コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-6コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-7コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-7コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり1E-8コピー未満、キャプシド化rAAVベクターゲノムのコピー当たり5E-8コピー未満のキャプシド化細胞18SリボソームRNA(rRNA)遺伝子ヌクレオチド配列の濃度を有する。他の実施形態では、異なる実施形態の方法によって生成されたrAAVは、規制当局(例えば、FDA、EMAなど)による規制承認のために少なくとも許容されるレベルであるキャプシド化細胞18S rRNA遺伝子ヌクレオチド配列の濃度を有する。
【0115】
様々な実施形態では、rBVに感染した細胞を、rAAVが収集される前に所定の期間培養する。例えば、rAAVウイルス粒子は、感染の約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、約144時間、約168時間、約192時間、約216時間、約240時間、又はこれらの2つの時点のうちのいずれかの間の時間後に収集され得る。
【0116】
様々な実施形態では、様々な実施形態の培養ステップ(例えば、Sf9細胞又はE.coli)は、少なくとも5mL、少なくとも10mL、少なくとも20mL、少なくとも50mL、少なくとも100mL、少なくとも500mL、少なくとも1リットル(L)、少なくとも10L、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1000L、少なくとも1500L、少なくとも2000L、又は少なくとも2500Lの量で発生する。
【0117】
実施例では、培養ステップ(例えば、Sf9細胞又はE.coli)は、スピンチューブ(複数可)又は振盪フラスコ(複数可)で発生することができる。様々な実施形態では、いずれかの態様又は実施形態の培養ステップは、0.0001mL、0.0005mL、0.001mL、0.005mL、0.01mL、0.05mL、0.1mL、0.5mL、1mL、5mL、10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、1L、2L、3L、4L、又は5Lの量で発生する。他の実施形態では、培養ステップの量は、上記で提供されるいずれかの2つの量の間の範囲である。
【0118】
他の実施例では、培養ステップ(例えば、Sf9細胞又はE.coli)は、1つ又は複数のバイオリアクター内で発生し得る。様々な実施形態では、いずれかの態様又は実施形態の培養ステップは、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、11L、12L、13L、14L、15L、16L、17L、18L、19L、20L、21L、22L、23L、24L、25L、26L、27L、28L、29L、30L、31L、32L、33L、34L、35L、36L、37L、38L、39L、40L、41L、42L、43L、44L、45L、46L、47L、48L、49L、50L、51L、52L、53L、54L、55L、56L、57L、58L、59L、60L、61L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、72L、73L、74L、75L、76L、77L、78L、79L、80L、81L、82L、83L、84L、85L、86L、87L、88L、89L、90L、91L、92L、93L、94L、95L、96L、97L、98L、99L、100L、110L、120L、130L、140L、150L、160L、170L、180L、190L、200L、210L、220L、230L、240L、250L、260L、270L、280L、290L、300L、310L、320L、330L、340L、350L、360L、370L、380L、390L、400L、410L、420L、430L、440L、450L、460L、470L、480L、490L、500L、510L、520L、530L、540L、550L、560L、570L、580L、590L、600L、610L、620L、630L、640L、650L、660L、670L、680L、690L、700L、710L、720L、730L、740L、750L、760L、770L、780L、790L、800L、810L、820L、830L、840L、850L、860L、870L、880L、890L、900L、910L、920L、930L、940L、950L、960L、970L、980L、990L、1000L、1010L、1020L、1030L、1040L、1050L、1060L、1070L、1080L、1090L、1100L、1110L、1120L、1130L、1140L、1150L、1160L、1170L、1180L、1190L、1200L、1210L、1220L、1230L、1240L、1250L、1260L、1270L、1280L、1290L、1300L、1310L、1320L、1330L、1340L、1350L、1360L、1370L、1380L、1390L、1400L、1410L、1420L、1430L、1440L、1450L、1460L、1470L、1480L、1490L、1500L、1510L、1520L、1530L、1540L、1550L、1560L、1570L、1580L、1590L、1600L、1610L、1620L、1630L、1640L、1650L、1660L、1670L、1680L、1690L、1700L、1710L、1720L、1730L、1740L、1750L、1760L、1770L、1780L、1790L、1800L、1810L、1820L、1830L、1840L、1850L、1860L、1870L、1880L、1890L、1900L、1910L、1920L、1930L、1940L、1950L、1960L、1970L、1980L、1990L、2000L、2010L、2020L、2030L、2040L、2050L、2060L、2070L、2080L、2090L、2100L、2110L、2120L、2130L、2140L、2150L、2160L、2170L、2180L、2190L、2200L、2210L、2220L、2230L、2240L、2250L、2260L、2270L、2280L、2290L、2300L、2310L、2320L、2330L、2340L、2350L、2360L、2370L、2380L、2390L、2400L、2410L、2420L、2430L、2440L、2450L、2460L、2470L、2480L、2490L、2500L、2510L、2520L、2530L、2540L、2550L、2560L、2570L、2580L、2590L、2600L、2610L、2620L、2630L、2640L、2650L、2660L、2670L、2680L、2690L、2700L、2710L、2720L、2730L、2740L、2750L、2760L、2770L、2780L、2790L、2800L、2810L、2820L、2830L、2840L、2850L、2860L、2870L、2880L、2890L、2900L、2910L、2920L、2930L、2940L、2950L、2960L、2970L、2980L、2990L、又は3000Lの量で発生する。他の実施形態では、培養ステップの量は、上記で提供されるいずれかの2つの量の間の範囲である。
【0119】
様々な実施形態では、rBVの力価は、フォーカス/ウイルスプラークアッセイを使用して決定される。このアッセイは、細胞を、rBVを含有する溶液の段階希釈液で感染させるステップを、最初に含む。感染が所定の時間にわたって発生した後に、rBVは、培養物から除去され、細胞が、所定の時間にわたってインキュベートされる。所定の時間が経過した後に、(例えば、アガロースを含有する)プラーク培地が、培養物に付加され、硬化させる。細胞は、所定の時間にわたって更にインキュベートされ、プラークの数が、所定の時間後にカウントされる。力価は、以下の式を使用して計算される。
【0120】
力価(プラーク形成単位/mL)=プラークの数×希釈係数×(1/(接種物のmL/ウェル)
【0121】
上記のプロセスを含むrAAVを産生する任意のプロセスについて、不純物はまた、治療上有効なrAAV粒子を有する組成物中で産生されるか、又は見出される。したがって、rAAV産生不純物は、治療上有効でないrAAV粒子、外因性高分子量DNA、小ポリヌクレオチド、タンパク質、緩衝液成分などを含むことができる。
【0122】
rAAVのrBVベースの産生に関する他の実施形態も開示される。
【0123】
様々な実施形態では、rAAVの産生を増加させ、産生されたrAAV内にキャプシド化されたポリヌクレオチド不純物を低減するための方法が開示される。方法は、異なる細胞培養物を、rAAVベクターゲノムのヌクレオチド配列を有するrBVと、Rep及びCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する1つ以上の第2のrBVとに感染させるステップを含む。各細胞培養物は、第1のrBVの感染多重度(MOI):1つ以上の第2のrBVのMOIの異なる比で、第1のrBV及び1つ以上の第2のrBVに感染する。この方法はまた、異なる細胞培養物からrAAVを単離するステップと、異なる細胞培養物からの単離されたrAAVの力価を決定するステップと、異なる細胞培養物からの単離されたrAAV内のキャプシド化ヌクレオチド不純物の濃度を決定するステップと、両方の決定するステップから第1のrBVのMOI:1つ以上の第2のrBVのMOIの1つ以上の比(複数可)を特定するステップと、を含む。
【0124】
様々な実施形態では、rBV力価を測定するためのインジケーター細胞は、バキュロウイルス感染によって活性化される誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含む。誘導性バキュロウイルスプロモーター配列は、初期バキュロウイルスプロモーター配列及び中間バキュロウイルスプロモーター配列のうちの少なくとも1つから選択される。レポーターヌクレオチド配列及び誘導性バキュロウイルスプロモーター配列は、インジケーター細胞内で安定して維持される。様々な実施形態のレポーターヌクレオチド配列及び様々な実施形態の誘導性バキュロウイルスプロモーター配列は、インジケーター細胞内で安定して維持される(例えば、エピソームミニサークルなどのエピソーム発現)。他の実施形態では、レポーターヌクレオチド配列及び誘導性バキュロウイルスプロモーター配列は、インジケーター細胞のゲノムに安定して組み込まれる。様々な例では、異なる実施形態のレポーターヌクレオチド配列は、レポータータンパク質をコードする。レポータータンパク質の例としては、蛍光タンパク質、発光タンパク質、又は組織化学(例えば、免疫組織化学、免疫組織化学など)で使用されるタンパク質が挙げられる。そのようなタンパク質の更なる例としては、シアン蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、DsRed、mCherry、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、及びグルコースオキシダーゼが挙げられる。様々な実施例では、誘導性バキュロウイルスプロモーター配列は、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、gp64プロモーター、Polhプロモーター、及びp10プロモーターのうちの少なくとも1つから選択される。異なる実施形態の誘導性バキュロウイルスプロモーター配列はまた、転写発現を制御するために、他の発現制御エレメント(複数可)に配置される。
【0125】
異なる実施例では、インジケーター細胞は、配列番号1、2、又は3と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99超%、又は100%同一であるプロモーターヌクレオチド配列を含む。
【0126】
様々な実施形態では、異なる実施形態のレポーターヌクレオチド配列は、バキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結され、バキュロウイルス由来エンハンサー配列は、インジケーター細胞内で安定して維持される。様々な実施形態のバキュロウイルス由来エンハンサー配列は、インジケーター細胞内で安定して維持される(例えば、エピソームミニサークルなどのエピソーム発現)。他の実施形態では、バキュロウイルス由来エンハンサー配列は、インジケーター細胞のゲノムに安定して組み込まれる。様々な実施形態のバキュロウイルス由来エンハンサー配列の例としては、HR1、HR1a、HR2、HR2a、HR3、HR4a、HR4b、HR4c、HR5などの相同領域(HR)エンハンサー配列が挙げられる。例えば、プロモーター、相同領域エレメント、及び/又はアセチルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を有する発現カセットは、昆虫細胞のバキュロウイルス感染が発現カセットからの転写発現を誘導するように、昆虫細胞のゲノムに安定して組み込むことができる(US2012/0100606参照されたい)。
【0127】
様々な実施形態では、異なる実施形態のrBV力価を測定するためのインジケーター細胞は、異なる実施形態のレポーターヌクレオチド配列、異なる実施形態の誘導性バキュロウイルスプロモーター配列、又は異なる実施形態のバキュロウイルス由来エンハンサー配列(例えば、陽性抗生物質選択、選択マーカーなど)を有する細胞を選択するための1つ以上のエレメントを提供又はコードする1つ以上のヌクレオチド配列を更に含む。異なる実施例では、1つの選択エレメントは、1つの細胞タイプ(例えば、Sf9細胞)における選択のためであり得、別の選択エレメントは、別の細胞タイプ(例えば、E.coli)における選択のためであり得る。異なる実施形態のヌクレオチド配列、並びに異なる実施形態の細胞を選択するためのエレメントの例を以下に提供する。耐性遺伝子及びタンパク質などのエレメントが利用可能な真核生物選択抗生物質の例としては、ブラスチジン(ブラスチジン-Sデアミナーゼをコードするブラスチジン耐性遺伝子(bsr))、ジェネチシン(アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼをコードするTn5由来のネオマイシン耐性遺伝子(neo)、APH 3’II)、ハイグロマイシンB(ハイグロマイシン-B 4-Oキナーゼをコードするhph遺伝子)、ピューロマイシン(ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼをコードするPac遺伝子)、フレオマイシン(Sh ble遺伝子)、又はゼオシン(Sh ble遺伝子)が挙げられる。耐性遺伝子及びタンパク質などのエレメントが利用可能な細菌選択抗生物質の例としては、カナマイシン(KanR-Tn5遺伝子産物(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ))、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、アンピシリン(β-ラクタマーゼをコードするbla遺伝子)、カルベニシリン、ブレオマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシンB、テトラサイクリン(テトラサイクリン抑制タンパク質をコードするTetR-Tn10遺伝子)、及びクロラムフェニコールが挙げられる。
【0128】
様々な実施形態では、異なる実施形態のrBV力価を測定するためのインジケーター細胞(複数可)を生成するための方法が開示される。この方法は、バキュロウイルス感染によって活性化された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含むベクターをトランスフェクトするステップを含む。異なる実施形態のレポーターヌクレオチド配列は、異なる実施形態のバキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結される。様々な実施形態では、ベクターは、発現制御配列に作動可能に連結された耐性ヌクレオチド配列を更に含み、この方法は、細胞を培養するステップと、ベクターが安定して維持されている少なくとも1つの細胞を正に選択するステップと、を更に含む。他の実施形態では、方法は、細胞を培養するステップと、培養物から細胞を単離するステップと、単離された細胞を別々に培養するステップと、を更に含む。
【0129】
様々な実施形態では、rBV力価を測定するための方法は、細胞をrBVに感染させるステップを含む。様々な実施形態のインジケーター細胞は、バキュロウイルス感染によって活性化された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されたレポーターヌクレオチド配列を含む。早期バキュロウイルスプロモーター配列及び中間バキュロウイルスプロモーター配列のうちの少なくとも1つから選択された誘導性バキュロウイルスプロモーター配列。異なる実施形態のレポーターヌクレオチド配列は、異なる実施形態のバキュロウイルス由来エンハンサー配列に作動可能に連結される。様々な実施形態の方法はまた、レポーターヌクレオチド配列の発現を測定するステップと、レポーターヌクレオチド配列の発現からrBV力価を決定するステップと、を含む。例えば、レポーターヌクレオチド配列は、フローサイトメトリーを使用して測定される。他の実施形態では、決定するステップは、感染させるステップの3時間以上、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、11時間以上、12時間以上、13時間以上、14時間以上、15時間以上、16時間以上、17時間以上、18時間以上、19時間以上、20時間以上後に起こる。
【0130】
概して、vg及びキャプシド(cp)力価は、それぞれのvg及びキャプシドを測定するのに好適であるいずれかの様式で評価され得る。例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)が、vg力価を測定するために使用され得、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が、Cp力価を測定するために使用され得る。代替的に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)-HPLCが、vg及びcp力価を測定するために使用され得る。加えて、RP(逆相)-HPLCアッセイが、VP比へのプロセスパラメータの潜在的な影響を評価するために使用され得る。
【0131】
qPCRが、Applied Biosystems 7500 FastリアルタイムPCRシステムなどの標準的なqPCRシステムを使用する、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるvg定量化のために使用され得る。代替的に、デジタル液滴PCR(ddPCR)が、Vg定量化のために使用され得る。プライマー及びプローブは、AAVのDNAを標的とするように設計され得、PCR中に、DNAが蓄積されたときに、DNAの定量化を可能にする。ddPCRの例は、Pasi,K.John,et al.“Multiyear Follow-Up of AAV5-hFVIII-SQ Gene Therapy for Hemophilia A.”New England Journal of Medicine 382.1(2020):29-40、Regan,John F.,et al.“A Rapid Molecular Approach for Chromosomal Phasing.PloS one 10.3(2015):e0118270、及びFuruta-Hanawa,Birei,Teruhide Yamaguchi,and Eriko Uchida.“Two-Dimensional Droplet Digital PCR as a Tool for Titration and Integrity Evaluation of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors”Human gene therapy methods 30.4(2019):127-136に記載されている。vg定量化のための他のシステムは、SEC、SEC-HPLC、及びサイズ交換クロマトグラフィー多角度光散乱を含み、これらの全ては、全体が参照により援用されるWO2021/062164に記載されている。
【0132】
キャプシドELISA(cp-ELISA)アッセイは、インタクトなキャプシドを、例えば、AAV5キャプシドELISA方法を使用して測定し、市販のキット(例えば、Progen PRAAV5)を利用し得る。このキットELISAは、アセンブルされたAAV5又は他のキャプシド上のコンフォメーションエピトープに特異的なモノクローナル抗体を使用する。キャプシドは、プレート結合モノクローナル抗体上で捕捉され得、続いて、検出抗体の後続の結合が行われる。アッセイシグナルは、コンジュゲートストレプトアビジンペルオキシダーゼを付加し、続いて、比色TMB基質溶液及び硫酸を付加して、反応を終了することによって生成され得る。試験試料の力価は、標的キャプシド標準物の4パラメータ較正曲線から補間される。キャプシド力価を定量化するための別のシステムは、WO2021/062164に記載されているSEC-MALSである。
【0133】
本発明は、以下の実施例で更に説明され、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0134】
rAAV産生のために超低MOIでの継代0(P0)rBVを使用する
【0135】
バクミドの構築及び産生:Repタンパク質及びキャプシドタンパク質をコードし、目的の遺伝子(GOI)を有するrAAVベクターゲノムを提供するDNA配列を、ドナープラスミドにクローニングした。次いで、ドナープラスミドを使用して、DH10BacコンピテントE.coli細胞を形質転換し、rep及びcapをコードするDNA配列を有するバクミドを生成し、プロモーターの下でGOIを有する2つのITRに隣接するrAAVベクターゲノムを提供した。異なるE.coliクローン由来のバクミドを単離し、サンガー配列決定技法を介して分析して、正しいヌクレオチド配列を有するクローンを選択した。正しいヌクレオチド配列を有するE.coliクローンを使用して、マスターバクミドE.coli細胞バンク及びワーキングバクミドE.coli細胞バンクを生成した。
【0136】
P0 rBV産生のためのバクミドを生成するために、マスターバクミドE.coli細胞バンク又はワーキングバクミドE.coli細胞バンクのいずれかからのバイアルを解凍し、培養物に入れた。E.coli細胞を所定の細胞密度まで培養した後、細胞を濃縮し、溶解した。バクミドを、異なるクロマトグラフィー及び濾過プロセスを使用して溶解細胞から単離した。
【0137】
P0 rBVの産生:継代0(P0)rBV産生ステップでは、Sf9細胞を培養物に入れ、所定の細胞密度に拡張した。次いで、Sf9細胞を、トランスフェクション試薬を使用して、生成されたバクミドでトランスフェクトした。トランスフェクトされたSf9細胞を所定の時間培養して、P0 rBVを生成した。P0 rBVを、デジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を使用して分析して、P0 rBVのゲノムがrAAV産生のためのヌクレオチド配列の欠失を含有するかどうかを決定した。rBVのその後の継代は、Repタンパク質又はキャプシドタンパク質をコードするDNA配列を含有するrBVゲノムの欠失をもたらしたか、又はGOIを有するrAAVベクターゲノムを提供したことが注目された。所定の時間に、rBVを遠心分離を使用して細胞培養物から単離し、15℃未満で保存した。
【0138】
rAAVの産生:rAAV産生のために、Sf9細胞を培養物に入れ、所定の細胞密度に拡張した。培養されたSf9細胞が所定の細胞密度に達したとき、Repタンパク質及びキャプシドタンパク質をコードするDNA配列を含有し、GOIを有するrAAVベクターゲノムを提供するrBVを培養物に添加した。異なるrAAV産生において、rBVを、0.1~1e-10の範囲から選択された異なるMOI(例えば、細胞数に対するrBV粒子数)で培養物に添加した。
【0139】
Sf9細胞をrBVに感染させた後、細胞を所定時間培養してrAAVを生成した。所定の時間が経過した後、rAAVを含有する上清を回収し、ヌクレアーゼで処理し、異なるデプスフィルターを使用して濾過した。次いで、親和性クロマトグラフィーを使用して、rAAVを上清から単離した。P0 rBVを生成する、E.coliでバクミドを増殖させてトランスフェクションのためにそれらを単離する、Sf9細胞(5mL以上)でバクミドをトランスフェクトしてP0 rBVを生成する、又はSf9細胞を0.01未満のMOIでrBVに感染させるための、バクミドE.coli細胞バンクの使用は、rBVの安定性を実質的に改善し、Sf9細胞におけるrAAVの産生並びに生成されたrAAVの感染性を実質的に改善した。
【0140】
rAAV産生におけるrBV継代の分析:バキュロウイルス感染昆虫細胞系(BIIC)を使用して、rBVの異なる継代を含有するBIICを分析した。特に、4つの継代レベルにまたがり、GOI、Rep、及びCapを提供する/コードするBIICを使用して、rAAVを産生した。BIICを、1:500のMOIでナイーブSf9細胞と共培養し、各BIICは、およそ数百のrBVを放出することができると理解される。最低継代のBIICは、およそ9.55×10e11vg/mLのAAV力価をもたらす。次の継代のBIICは、およそ1.8×10e11vg/mLのAAV力価をもたらす。次の継代のBIICは、およそ3.8×10e10vg/mLのAAV力価をもたらす。最高継代のBIICは、およそ5.2×10e9vg/mLのAAV力価をもたらす。したがって、rBVの連続通過は、AAV力価を低減し、BIICをrAAVの大規模産生に不十分にする。
【0141】
BIICに関連する制限を克服するために、高力価rBVを産生するための出発物質としてバクミドを用いる新規rAAV産生プロセスを開発した。rBVストックは、各産生実行中に振盪懸濁培養物中でSf9細胞をトランスフェクトすることによってプロセス中に生成され、2,000Lの産生タンクを低MOIで感染させるのに十分なrBV力価をもたらす。rBV継代を、BIIC増殖又はrBVストック増幅のいずれかの形態で排除することによって、rBVをSf9産生培養物に感染させるために利用した後、rBV固有の不安定性が、得られるrAAV力価に著しく影響を及ぼすことができる。したがって、低継代BIICSに由来するrBVで達成可能なものと同等以上のrAAV力価を達成したが、スケーラビリティ及び供給に制限はなかった。
【0142】
GOI、Rep、及びCapを提供する/コードするP0 rBVをその後使用して、rAAVを生成した。
図1に示されるように、ナイーブsf9細胞を、0.1、0.01、0.001、0.0001、及び0.00001でrBVに感染させた。
図1は、Sf9細胞を0.01以下のMOIでP0 rBVに感染させると、rAAV力価が著しく改善したことを示す。
【実施例2】
【0143】
インジケーター細胞株の生成
【0144】
プラスミドの構築:ギブソンアセンブリを使用して、E.coli選択カセット、及びpIB CMV GFPからの昆虫細胞選択カセット、AcMNPV E2ゲノムKM667940からの相同領域5配列、並びに39k(配列番号1)、p6.9(配列番号2)、及びPolh(配列番号3)プロモーターを含む断片を連結した。最初に、各々が異なるプロモーター、39k(
図2)、p6.9(
図3)、又はPolh(
図4)のいずれかを使用して、3つのプラスミドを構築した。各プラスミドは、レポーターカセット、Escherichia coli(E.coli)選択カセット、及び昆虫細胞選択カセットを含有した。レポーターカセットは、レポータータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された39kプロモーター、p6.9プロモーター、又はPolhプロモーターのいずれかを含有した。E.coli選択カセットは、アンピシリン耐性遺伝子に作動可能に連結されたアンピシリン耐性プロモーターを含むアンピシリン耐性カセットであった。昆虫細胞選択カセットは、EM7プロモーターに作動可能に連結されたブラストサイジン耐性遺伝子を含有した。後で、3つのプラスミドの第2のセットを構築し、そこでGFP遺伝子を、昆虫細胞での発現のために最適化されたものに置き換えた。プラスミドミニ調製物を正確なアセンブリについて検証し、正しい構築物を持つE.coliクローンをスケールアップし、プラスミドを抽出し、マキシ調製物を使用して精製した。加えて、次いで、トランスフェクションの前に、最適化されたGFP遺伝子を含有する構築物をScaIで線形化した。
【0145】
トランスフェクション:トランスフェクションは、6ウェルプレートで実施した。0.5E6細胞/mLのSf9細胞の2mL/ウェルをSF900 IIIにプレーティングして、1e6細胞/ウェルを得た。56μLのCellfectin II試薬を700uLのPBS中で希釈し、3μgの各プラスミドを100μLのPBS中に希釈した。100μlの希釈したCellfectinを、希釈されたプラスミド溶液の各々に添加し、次いで、30分間室温でインキュベートした。次いで、Sf900III(0.8mL)をプラスミド溶液に添加し、プレート中の培地を除去し、プラスミド溶液で置き換えた。次いで、プレートを28℃で4~5時間インキュベートした後、ウェルからトランスフェクションミックスを除去し、ウェルに応じて、25μg/mL又は50μg/mLのブラストサイジンを含む3mLのSf900III培地で置き換えた。次いで、それらを28℃で更に72~96時間インキュベートした。
【0146】
選択:トランスフェクション中に25μg/mL又は50μg/mLのブラストサイジンのいずれかを含む培地中で選択を実施した。細胞を振盪フラスコに移した後、選択的圧力を維持するために、ブラストサイジンの濃度を全ての培養物について25μg/mLのままにした。
【0147】
最初のクローンの特定及びスクリーニング:振盪フラスコからの分裂物を、高いMOIで組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させ、次いで、15~96時間の間の様々な時間でGFPの発現についてフローサイトメトリーによって分析した。39k-unoptGFP培養物由来の細胞を希釈し、サブクローニングのために96ウェルプレートに播種した。細胞を、馴化培地+25μg/mLのブラストサイジン中で5細胞/mLに希釈し、20のプレート中で200μL/ウェル(1細胞/ウェル)で播種した。別の10個のプレートを同じ方法で播種したが、1e4フィーダー細胞/ウェル(トランスフェクトされていないSf9細胞)を添加した。
【0148】
細胞バンキング:0日目に0.5E6細胞/mLで細胞を播種し、播種後2日目にバンクに入れた。5つのバイアルを、30E6細胞/バイアルで調製した。細胞を振盪フラスコから取り出し、300gにて4℃で10分間遠心分離した。凍結培地を、7.5%のDMSOを有する50%の新鮮培地及び50%の使用済み培地の濃度で調製した。凍結培地を濾過し、5mLを使用して細胞を再懸濁した。1mLの細胞を各バイアルに添加し、それらを凍結容器に-80℃で24時間入れた後、凍結タンクに移した。
【0149】
39k-GFP安定プールのサブクローニング:馴化培地をナイーブSf9細胞(4e6細胞/mL、3日目培養物)から収穫し、滅菌濾過した。39k-GFPプラスミドでトランスフェクトしたSf9細胞を、馴化培地+25μg/mLのブラストサイジン中5細胞/mLに希釈し、20プレート中200μL/ウェル(1細胞/ウェル)で播種した。単一細胞クローンを、96ウェルプレートに選別し、拡張した。クローンの試料を抽出し、異なるMOIでrBVに感染させた。GFP発現を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0150】
インジケーター細胞株の分析
【0151】
インジケーター細胞を96ウェルのディープウェルプレートに播種し、続いてバキュロウイルスの連続希釈液で感染させ、シェーカーにて28℃で18時間インキュベートした。インジケーター細胞を、39kプロモーターヌクレオチド配列、p6.9プロモーターヌクレオチド配列、又はポリヘドリンプロモーターヌクレオチド配列のいずれかを含有するGFP発現カセットを有するプラスミドでトランスフェクトした。
【0152】
感染後、細胞を、GFPの発現についてフローサイトメトリーによって分析した。
図5は、ナイーブSf9細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフである。
図6は、39kプロモーターヌクレオチド配列を含有するGFP発現カセットでトランスフェクトしたSf9細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフである。これらのSf9細胞は、rBVに感染させなかった。両方の図について、点線は緑色蛍光を示し、ナイーブSf9細胞も39kプラスミドを有する未感染Sf9細胞も蛍光を発していなかった。具体的には、細胞の約0.1%が緑色蛍光を示した。
【0153】
図7は、39kプロモーターヌクレオチド配列を含有するGFP発現カセットでトランスフェクトしたSf9細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフである。
図8は、p6.9プロモーターヌクレオチド配列を含有するGFP発現カセットでトランスフェクトしたSf9細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフである。
図9は、ポリヘドリンプロモーターヌクレオチド配列を含有するGFP発現カセットでトランスフェクトしたSf9細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフである。これらのSf9細胞をrBVに感染させた。これらの図では、点線は緑色蛍光を示し、異なる細胞は蛍光を示した。
図7について、39kプロモーター細胞の55.5%が緑色蛍光を示した。
図8について、p6.9プロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示した。
図9について、Polhプロモーター細胞の2%が緑色蛍光を示した。
【0154】
各プロモーターヌクレオチド配列下のGFP発現を、経時的に測定した。
図10に示されるように、rBV感染後19時間で、39kプロモーター細胞の55.5%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の2%が緑色蛍光を示した。
図11に示されるように、rBV感染後40時間で、39kプロモーター細胞の65.4%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の19%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の11%が緑色蛍光を示した。
図12に示されるように、rBV感染後68時間で、39kプロモーター細胞の66.3%が緑色蛍光を示し、p6.9プロモーター細胞の19%が緑色蛍光を示し、Polhプロモーター細胞の15%が緑色蛍光を示した。
図10、11、及び12に示されるように、p6.9及びポリヘドリンプロモーター配列はともに、GFP発現の大きな増加を示すが、発現は、39Kプロモーター配列よりも遅い。更に、39Kプロモーター配列は、最高のGFP発現を示した。
【0155】
図13は、39kプロモーターの分析からのデータを示し、39kプロモーターを有するレポーターカセットを含む昆虫細胞を、昆虫細胞をrBVに感染させ、所定の期間インキュベートした後、フローサイトメトリーを介してGFPの発現について分析した。eGFPを発現する39kプロモーター細胞のパーセンテージは、41.1%(15時間)、39.9%(18時間)、40.7%(24時間)、68.0%(43時間)、66.4%(65時間)、67.3%(70時間)、及び69.3%(94時間)であった。また、
図13に示されるように、39kプロモーター下のGFP発現は、感染の15時間後という早さで発現される。GFP発現が維持されたことが注目され、これは24時間後の二次的なrBV感染に起因する可能性がある。この程度まで、アッセイは、二次的なrBV感染(例えば、24時間)の前に実施され得る。
【0156】
細胞を、GFPをコードするヌクレオチド配列を含有するプラスミドでトランスフェクトもして、ヌクレオチド配列を、昆虫細胞におけるGFPの発現のためにコドン最適化した。これらのヌクレオチド配列は、39K及びPolhプロモーターに作動可能に連結された。
図14、15、及び16に示されるように、コドン最適化GFPヌクレオチド配列の使用は、39K及びPolhプロモーターのGFP発現を増加させた。
図14に示されるように、20時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを56.5%から57.8%に増加させ、PolHプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを4.0%から10.5%に増加させた。
図15に示されるように、25時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFP発現に本質的に差をもたらさず(56.6%及び55.9%)、Polhプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを4.8%から12.0%に増加させた。
図16に示されるように、48時間で、39kプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを58.5%から59.3%に増加させ、Polhプロモーター細胞に対するコドン最適化eGFP配列の使用は、eGFPを発現する細胞のパーセンテージを10.9%から17.5%に増加させた。GFPの発現は、依然として、39Kプロモーターの方が大きいことが注目された。
【0157】
以下は、インジケーター細胞株を使用したrBV滴定の例である。P0バキュロウイルス感染力価は、フローサイトメトリーベースのバキュロウイルス感染力価アッセイ(FC-BITA)を使用して測定し、生産を開始するためにSf9細胞に感染するために必要なrBVの体積を計算する。このアッセイは、rBVに感染するとGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現するSf9細胞株を使用する。GFPレベルをフローサイトメトリーによって検出し、ポアソン分布を使用して蛍光細胞のパーセンテージをrBV濃度に変換する。陽性対照が、アッセイ性能を確認するために全てのアッセイで実行される。
【実施例3】
【0158】
AAV生産性及びキャプシド化されたバキュロウイルス由来DNAプロファイルに対するバキュロウイルスMOIの影響
【0159】
組換えアデノ関連ウイルス(rAAV)の昆虫細胞ベースの産生は、典型的には、AAV Rep遺伝子、AAV Cap遺伝子、及び目的の導入遺伝子をコードするrBVでSf9細胞を感染させることによって達成される。Sf9産生、AAVベクター収率、及びDNA不純物のパッケージングに対するrBVのMOIの効果を評価した。低MOIでの独立した効果を調査するために、バイオリアクター内で全要素、3レベルの実験を実施し、続いて小規模な試験を行った。全てのrBVについて、10倍のMOI範囲(0.003~0.03)を調べた。統計分析は、AAV5の生産性が、Rep及びCapの初期遺伝子レベルによって正の影響を受けたが、GOIの初期レベルによって負の影響を受けたことを示した。全キャプシド産生について同様の傾向が観察され、これは条件間の同等のキャプシド対ベクターゲノム比(cp:vg)に変換された。AAV5におけるBV DNA不純物のパッケージングは、AAV ITRから近く(α及びβ)及び遠く(γ及びδ)に位置するBV遺伝子マーカーのコピー数を追跡することによって計算した。結果は、MOI効果がITRからの距離に依存していたことを示唆している。全てのrBVのMOIの増加は、ITRに近い遺伝子座からのDNA蓄積(α:vg及びβ:vg比)に軽度の負の効果を及ぼした。一方、ITRから遠い遺伝子座からのDNA蓄積(γ:vg及びδ:vg比)は、Rep初期遺伝子レベルによって正の影響を受け、GOI初期レベルによって負の影響を受けた。特定された傾向は、BVのMOIがベクターの生産性及び産物の品質に与える大きな影響を浮き彫りにしている。全体として、我々のデータは、より高いRep及びCap初期レベルが、より高い生産性につながる可能性があるが、共パッケージングされたrBV DNA不純物の追加増加を犠牲にしている可能性があることを示唆している。この負の効果は、同様のMOIで全てのrBVを感染させることによって緩和され得る。我々は、rBV DNA不純物のパッケージングは、Rep依存性であり、キャプシド化されたrBV DNA不純物のレベルは、Rep濃度に依存すると推測する。
【0160】
序論
rAAVは、様々な単一遺伝子障害の効果を治癒又は緩和することを意図した最も有望な治療モダリティのうちの1つである。AAVの生物学の理解に焦点を当てた広範な科学的証拠、並びにrAAVの安全性及び有効性の臨床評価は、患者の使用のために遺伝子療法を利用可能にするための現在の努力を支持する[Aguti S et al.Expert Opin Biol Ther 2018;18:681-93、Ramlogan-Steel CA et.Clin Experiment Ophthalmol 2019;47:521-36;Li C and Samulski RJ.Nat Rev Genet 2020;21:255-72]。rAAVは、プラスミドトランスフェクションによって、HEK293などの固定依存性哺乳動物細胞株において伝統的に産生されてきた。特定の生産性、プロセスの堅牢性及びスケーラビリティを改善する必要性は、様々な宿主を使用する代替細胞培養プロセスの開発につながった。昆虫細胞/rBVシステムは、rAAV製造のための最もスケーラブルで生産性の高いもののうちの1つとして多くの人に認識されている。Robert Kotin及びMasashi Urabeの顕著な論文は、ウイルスベクター産生のための効率的な手段として、昆虫細胞/BVシステムの基礎を確立した[Urabe M et al.Hum Gene Ther 2002;13:1935-43、Urabe M etal.J Virol 2006;80:1874-85]。彼らのアプローチは、昆虫特異的プロモーターによって制御され、2つ又は3つのバキュロウイルス間のそれらのシス又はトランス調節活性によって分布するAAV遺伝子の配列を含んでいた。時を経て、いくつかのグループが、組換えBVの分子設計を改善する方法を特定し、これはより堅牢なベクター産生につながった[Chen H.Mol Ther 2008;16:924-30、Smith RH et al.Mol Ther 2009;17:1888-96、Mietzsch M et al.Hum Gene Ther Methods 2017;28:15-22]。
【0161】
ほとんどの生物製剤の生産プラットフォームと同様に、徹底的なプロセス特性評価が、プロセス性能及び製品品質に影響を与えるパラメータを特定するための鍵である。MOIは、感染性rBVの数を細胞の総数で割った数として定義され、組換えタンパク質発現中に重要な役割を果たすことが周知である。いくつかの研究は、様々なMOI濃度が、rBV複製ダイナミクス、宿主-rBV代謝相互作用、及び全体的なタンパク質発現にどのように影響するかを記載している[Radford KM et al.Cytotechnology 1997;24:73-81、Pastor AR et al.Vaccine 2019;37:6962-9、Virag T et al.Hum Gene Ther 2009;20:807-17]。rAAV産生の文脈において、この情報は、後続のベクター特異的分子事象(例えば、キャプシドアセンブリ、rAAV DNA複製及びパッケージング)が、感染性ベクター粒子を生成するためにタンパク質発現後に行われなければならないため、部分的にのみ適用可能である[Aponte-Ubillus JJ et al.Appl Microbiol Biotechnol 2018;102:1045-54]。組換えAAV産生に対するMOIの効果を評価するいくつかの研究がある。Meghrous及びAucoinは、AAV遺伝子を提供するために3つのrBVを使用して、総MOI及びMOI比の効果を評価した。最初の評価は、高MOI戦略(MOI>3)を使用することの利点、及び高生産性のためのバランスのとれたBVのMOI比の重要性を強調した[Meghrous J et al.Biotechnol Prog 2005;21:154-60]。後の報告書は、高MOI戦略に関する研究を強化し、感染性ベクターの収率に対するRep BV及びCap BVのMOIの正の効果を確認した[Aucoin MG et al.Biotechnol Bioeng 2006;95:1081-92]。rAAV産生プロセスにおける非同期、低MOIのBV感染を特徴付ける研究が不足している。低MOI感染では、ウイルスの添加後に少数の細胞が感染する。二次感染ラウンドは、ウイルス複製の結果であり、細胞集団の全体の感染につながる。Menaら[Mena JA et al.J Gene Med 2010;12:157-67]は、3-rBVプロセスで低MOI(0.3)又は高MOI(9)のいずれを使用する場合にも同等のAAV感染収率を記載した。播種細胞密度及び給餌戦略の更なる最適化は、更なる収率増加をもたらした。あまり理解されていないのは、rAAV産物の品質に対するBVのMOIの効果である。ベクター品質は、AAV由来導入遺伝子の堅牢な発現及び活性を保証するため、ベクター生産性と同程度に重要である。DNA不純物のパッケージングは、ヘルパープラスミド又はBVのDNAに由来する配列が誤ってキャプシド化される、rAAV産生中に文書化されている現象である[Chadeuf G et al.Molecular Therapy 2005;12:744-53、Wright JF.Biomedicines 2014;2:80-97]。研究では、プラスミド骨格及びrBV骨格配列が、それぞれ6%及び3%の高いパーセンテージでrAAVベクターストックに存在し得ることが報告されている[Lecomte E al.Molecular Therapy-Nucleic Acids 2015;4:e260、Penaud-Budloo M et al.Hum Gene Ther Methods 2017;28:148-62]。昆虫細胞システムの文脈では、rBV分子設計だけでなく、上流のプロセスパラメータもDNA不純物のパッケージングに役割を果たす可能性があると考えられている。この産物関連の不純物の形成に対する生物学的入力及び細胞培養パラメータの寄与に関する手がかりを得るためには、より多くの研究を実施する必要がある。
【0162】
大規模では、低いrBVのMOI戦略は、BV拡張操作を簡素化し、運用コストを削減し、BV遺伝的安定性を改善することができ得る。したがって、rAAV生成に対する低MOI戦略の意味の理解が重要になる。本試験では、我々は、細胞当たりの生産性、キャプシド対ベクターゲノム比、及びrBV由来のDNA不純物のパッケージングなどの特定の出力をモニタリングすることによって、異なる低いBVのMOI及び遺伝子初期比が生産性及びrAAV品質にどのように影響するかを調査した。フォローアップ評価を実施し、特定された傾向を説明することができ得る仮説を構築した。
【0163】
材料及び方法
細胞株及び培養の維持
Spodoptera frugiperda細胞株Sf9からのサブクローニングを本試験に使用した。細胞を、5×105細胞/mLの初期細胞密度を標的にして、独自の無血清培地を含有する振盪フラスコ(Corning,NY)中で、週に2回継代させた。振盪フラスコを、28℃でインキュベートした。
【0164】
組換えBVの生成
組換えバクミド及びrBVを、bac-to-bac発現系(Thermo Fisher Scientific、CA)を使用して設計し、産生した。Bac-GOI-A(導入遺伝子A)及びBac-GFP-GOI-B(導入遺伝子B)は、それぞれ、4.6及び4.8kbの長さのITR隣接導入遺伝子を含有した。Bac-GFP-GOI-Bは、導入遺伝子Bに加えて、GP64プロモーターによって制御されるGFP遺伝子を含有した。バキュロウイルスは、異なるバキュロウイルスプロモーターを介してRep(例えば、Rep78及びRep52)及びCap遺伝子を発現するように設計された。追加の構築物は、別のバキュロウイルスプロモーターによって調節されるdTomato蛍光タンパク質発現カセットを含有した。感染性BVの定量化は、39kプロモーターの制御下でGFPを発現するSf9由来のインジケーター細胞株を使用して、フローサイトメトリーによって決定した。この滴定法は、後続の実験(データは示されていない)で使用される感染多重度値(MOI)の正確性を保証するために、他の十分に確立されたプロトコルに対して評価されている。
実験の設計
【0165】
AAV5の生産性及びBV由来のキャプシド化DNA不純物に対するrBVのMOIの効果を評価するために、バイオリアクター試験を実施した。完全要因実験マトリックスを、JMP14(SAS)を用いて設計した。MOI評価範囲は、細胞増殖又は栄養素消費の著しい違いによるプロセスの変動を防ぐために、1つのログとして定義された。容器当たりに添加されたBV体積の量は、全ての場合において、作動体積(3L)の0.1%未満の割合を表した。Dasgipコントローラー(Eppendorf、CT)を使用して、バイオリアクターを操作した。全ての播種細胞密度、感染時間、収穫時間、及び物理化学的パラメータ(pH、DO、温度)は、条件間で一貫していた。上清は、追加のrAAV粒子放出を促進し、プロセス関連の不純物を除去するために化学処理を受けた。4000×gで15分間遠心分離し、デプス濾過を実施して、収穫材料を更に清澄化した。
【0166】
振盪フラスコのフォローアップ試験を実行して、バイオリアクター試験中に観察された傾向を一般化した。2つの異なるGOI BVを試験した。125mLの振盪フラスコを使用して、以前の試験で特定された4つの代表的な条件を試験した。バイオリアクター試験と同一の接種、感染、及び収穫スケジュールに従い、最終的な上流材料として清澄化した収穫物を得た。
【0167】
AAVアフィニティ精製
各清澄化された収穫材料のアリコートを、AVBセファロース樹脂(Thermo Fisher Scientific、CA)のスラリーとともに、室温及び一定の撹拌で2時間インキュベートした。次いで、各AVB樹脂/収穫混合物を遠心分離し、ペレット化した樹脂をAcroprepフィルタープレート(Pall Corporation、NY)に移し、そこでそれらを並行して処理した。樹脂をリン酸緩衝液で3回洗浄し、低pH緩衝液とともに、3.5分間インキュベートして、rAAVキャプシドを溶出した。液体の内容物を、マルチプレート吸引マニホールド(Pall Corporation、NY)を使用して、フィルタープレートから96ディープウェルプレートに除去した。収集した溶出液を、貯蔵前にpH7.0~7.2に調整した。
【0168】
デジタル液滴PCR(ddPCR)によるDNA定量化
キャプシド保護導入遺伝子及びBV由来DNA不純物の存在を、Barajasら[Barajas D et al.PLoS One 2017;12]に記載されるプロトコルに従い、ddPCRによって追跡した。試験した標的配列の広い濃度範囲をカバーするために、AVB溶出液の連続希釈を実施した。-5000コピー/マイクロリットル未満の反応をもたらした希釈を定量化に使用した。適切な非テンプレート対照では、常にコピー数が1未満であることが示された。自動液滴生成器及びリーダー(Bio-Rad Laboratories、CA)を使用した。陽性液滴の検出及びコピー数の決定は、Quantasoftソフトウェア(Bio-Rad Laboratories、CA)によって実施した。細胞からVP3/18s比を決定するために、2mLの細胞培養物を500×gで2分間スピンダウンさせ、細胞ペレットを回収し、-80℃で凍結した。凍結したペレットを後でTE緩衝液+0.5% SDSに再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。この懸濁液を、ddPCR定量化のための出発物質として使用した。
【0169】
キャプシド定量化
Octetシステム(Molecular Devices、CA)ベースのハイスループット法を使用して、異なる濃度のAAV5標準材料を使用して抗体-キャプシド結合動態情報から構築された標準曲線に基づいて総キャプシドを定量化した。アッセイのダイナミックレンジを満たすように希釈を実施した。各試料を、3つの希釈に沿って二重で分析した。アッセイの精度を追跡するために、陽性対照を含めた。
【0170】
フローサイトメトリー分析
Attune NxT(Thermo Fisher Scientific、CA)を使用して、培養時間にわたってGFP発現細胞及びdTomato発現細胞のパーセンテージをモニタリングした。チャネルYL1及びBL1を使用して、異なるシグナルを追跡した。アナライザーで実行した試料ごとに、条件当たり100万個の細胞を収集した。GFP陽性、dTomato陽性、及び陰性(未感染)対照を分析中に含めた。試料を、BV感染後の異なる時点で採取した。感染パーセンテージを計算するために、試料当たり少なくとも20,000の事象を分析した。
【0171】
結果
AAV導入遺伝子Aを産生するバイオリアクター内で実施された予備試験。ウイルス負荷の変化によって引き起こされる細胞培養成長能力への影響を最小限に抑えるために、10倍のMOI範囲をカバーすることを決定した。生存率及び成長率の傾向は、試験された条件間の細胞成長及び死亡傾向の潜在的な変動性は重要ではなく、生産性及び産物の品質に対するBVのMOIの効果に関する結論に影響を及ぼすことはないという主張を支持している。
【0172】
清澄化された収穫物及び親和性精製された材料を、rAAV-導入遺伝子A vg力価及びキャプシド対ベクターゲノム(cp:vg)比についてアッセイした。生産性を正規化し、
図17に示す。最高の生産性値は、AAV遺伝子が、以下のrBVのMOI、すなわちGOI 0.003/Rep 0.03/Cap 0.03で提供されたときに得られたが、最小値は、それらが初期遺伝子レベルGOI 0.03/Rep 0.003/Cap 0.003で提供されたときに得られた。GOI、Rep、及びCapを提供/コードするrBVのMOIの効果、並びに細胞当たりの生産性に対するそれらの相互作用を記述するために、統計モデルを開発した。Cp:vg比は、試験条件間で1.5~3の範囲である(
図18)。当初、Rep及びCap BVのMOIが高い条件は、空のキャプシド産生の可能性が高いため、より高い比を示す可能性があると仮定されたが、この実験ではその現象は証明されなかった。10倍を超える評価範囲が、キャプシド化効率の有意差を検出することができることは妥当である。
【0173】
rAAV材料の品質に対するrBVのMOIの影響が、精製された産物に存在する4つの特異的なヌクレアーゼ耐性のrBV由来の遺伝子マーカーを定量化することによって特徴付けられた。マーカーα及びβは、AAV ITRに隣接するが、バキュロウイルスゲノム内のrAAVベクターゲノムヌクレオチド配列の外部の10キロベース(kb)領域内に位置し、マーカーγ及びδは、ITRから離れており、およそ135kbのBV DNAゲノムをカバーする。表1は、マーカー:vg比として、及びrBV由来cDNA不純物のパーセンテージとして決定された結果を示す。表1は、rBV由来DNA不純物のキャプシド化に対するrBVのMOIの効果を示す。個々のrBVのMOI及びrBVのMOI比に基づいて、実験条件を提示する。比を平均化し(α-β、γ-δ)、条件#10に正規化した。更に、Penaud-Budloo[Grosse S et al.J Virol 2017;91]からの方法論を参照として使用して、精製されたベクターに存在するrBV由来のDNA不純物のパーセンテージを推定した。DNA汚染物質のパーセンテージを、rAAV導入遺伝子、平均化されたα-β、及び平均化されたγ-δのコピー数から計算し、各参照サイズに正規化した(AAV導入遺伝子=4.8kb、α-β近ITR領域=10kb、γ-δ骨格領域=135kb)。平均αβ:vg又はγ-δ:vg比を使用して、各領域からのBV由来DNA不純物頻度のパッケージングのより代表的な推定値を提供した。Rep及びCapレベルの増加は、10kbセクション内のITRを囲むマーカーの濃度の低下に寄与すると推定した。低GOIレベル(0.003)では、Rep及びCap BVのMOIレベルの低(0.003)から高(0.03)までの変動により、正規化されたα-β DNA比が1.55から0.75に低減する(52%減少)。更に、γ-δマーカーの濃度パターンは、GOI BVのMOIによって悪影響を受けた。評価された条件内の正規化されたγ-δ:vg濃度は、0.98~16.09の範囲であり、BVのMOIが、ITRから遠く離れた遺伝子配列に強い影響を与えることを示唆し、ITRは、リバースパッケージング事象の一部である可能性が低い。rAAV粒子中のBV由来DNA不純物のパーセンテージの推定は、0.22~0.60%の範囲の合計(α-β+γ-δ)値を示し、これは以前の報告[Penaud-Budloo M et al.Hum Gene Ther Methods 2017;28:148-62]と一致した。全体として、より高いRep及びCap初期レベルは、より高い生産性につながる可能性があるが、BV由来のDNA不純物の更なる増加を犠牲にしていることが示唆される。この負の効果は、rBV比を1に近づけることによって緩和することができる。
【表1】
【0174】
BV由来DNA不純物の生産性及び傾向の理解を高めるために、振盪フラスコにおけるフォローアップ試験を実施した。異なるBVセット、すなわちGOI-A、Rep、及びCap(上記と同じ)を提供する/コードするrBVと、Rep、Cap、及びGFP-GOI-Bを提供する/コードする蛍光標識されたdTomato-rBVとを使用して、異なるBVのMOI条件を複製して、以前の生産性傾向を確認した。蛍光タンパク質産生BVセットに感染した全ての条件を、フローサイトメトリー及びddPCRを使用してモニタリングして、Rep又はCapをコードするrBV間の感染レベル、Cap発現及び生産性の潜在的な相関を特定した。フローサイトメトリー分析は、AAV-GFP-GOI-Bの産生中の感染後90時間(hpi)での共感染細胞のパーセンテージを強調した。BVのMOI比の著しい不均衡は、低い共感染パーセント(GOI 0.03/Rep 0.003/Cap 0.003条件及びGOI 0.003/Rep 0.03/Cap 0.03条件の場合、それぞれ32.2%及び28.9%)をもたらすことができるが、BV比が1:1:1の条件は、68.8~70.6%の間の共感染パーセントを示した。タンパク質産生を目的とした昆虫細胞/BVプロセスと比較して、rAAV粒子の良好な生成は、細胞を全てのBVに共感染させることを必要とする。したがって、BV共感染率は、理論上、細胞当たりの生産性に影響を与えることができる。
図19は、導入遺伝子同一性にかかわらず、GOI/Rep/Cap BVのMOI比が1:1:1以下(例えば、1:<1:<1)の条件間の同等の生産性を示す。以前の結果は、ベクター収率に対するRep又はCapをコードするrBVのMOIの正の影響を示唆したため、感染後の細胞ペレット中のVP3遺伝子コピー数を測定した。この例では、VP3は、細胞Rep又はCapコピー数のプロキシとして機能する。宿主細胞18sリボソームRNA遺伝子マーカーもまた、異なる細胞密度を説明するために追跡した。
図20は、様々なBVのMOIの組み合わせに対するAAV-GOI-Bの生産性及びVP3/18sの比を比較する。生産性及びVP3/18s比は、共感染した細胞のみが「完全な」AAV粒子を産生し、Rep又はCapをコードするrBVに感染した細胞のみが検出可能なレベルのAAV VP3 DNAを含むという仮定に基づいて調整された。これらの結果は、調整されたVP3/18s DNA比と調整された細胞当たりの生産性との間に正の相関を示した。まとめると、
図19及び
図20の結果は、Rep又はCapをコードするrBVのMOIが生産性に及ぼす強力な影響を確認する。GOI/Rep/Cap rBVのMOI比が1:1:1未満(例えば、1:<1:<1)で作動する条件は、より少ない数の細胞を共感染させるように見えるが、この亜集団は、より高いRep又はCapコピー数を含む。この効果は、その特定の亜集団におけるベクター生産性を改善し、バルク細胞の生産性を、BVのMOI比が1:1:1に等しい条件と同様のレベルにするように思われる。
【0175】
最後に、Rep又はCapをコードするrBVのMOIが、BV由来のDNA不純物のキャプシド化に及ぼす効果を確認した。Rep、Cap、及びGFP-GOI-B MOI条件を提供する/コードする別個のdTomato-rBVから作製されたベクター粒子を精製し、キャプシド当たりのBV由来DNA不純物のレベル(res DNA:cp比)を決定した。
図21及び
図22は、それぞれ、平均化されたα-βマーカー及びγ-δマーカーの正規化されたBV由来DNA:cp比を示す。バイオリアクター試験と同様に、Rep又はCapをコードするrBVのMOIの増加は、α-β:cp比に悪影響を及ぼし、GOI/Rep/Cap BVのMOI比を10(例えば、10:1:1)から0.1(例えば、0.1:1:1)に切り替えると、50%の低減につながる。Rep又はCapをコードするrBVのみで産生されたキャプシド中のBV由来DNA不純物の濃度は、この蓄積傾向と十分に一致した。GOI/Rep/Cap BVのMOIを10から0.1とする切り替えは、γ-δ DNA:cp比でおよそ15倍の増加をもたらし、Rep又はCapのみをコードするrBVで産生されるrAAV粒子では最大30倍の増加が見られた。更に、GOI/Rep/Cap BVのMOI比が1で感染した条件では、正確なMOIに関係なく、同等の結果を示した。加えて、90hpiでRep又はCapのみに感染した細胞をコードするrBV%は、α-β DNA:cp比と負の相関があり、γ-δ DNA:cp比と正の相関がある。全体として、これらの結果は、Rep又はCapをコードするrBVのより高いMOIに傾いているBVのMOI比の不均衡が、細胞のパーセンテージの増加が導入遺伝子を含まないキャプシドを産生し得る細胞亜集団のシフトにつながり、導入遺伝子を含まないキャプシドにおけるBV由来DNAの不均衡な蓄積が、rAAVキャプシドにおけるBV由来DNA不純物の全体的な増加につながり得ることを示唆している。これらの結果はまた、BVゲノム内のマーカーの位置に応じて、BV由来DNA不純物のキャプシド化の対照的な傾向を確認した。
【0176】
低rBVのMOI感染戦略の概念は、ウイルスストック調製に重要な利点をもたらす。BVストックの100~1000倍の低減は、バキュロウイルス生成における著しい操作上の緩和を表し、これは、大規模に操作するときに究極的に重要になる[Virag T et al.Hum Gene Ther 2009;20:807-17]。低BV接種物は、接種物の拡張中の「継代効果」の結果としての欠陥干渉粒子の生成を最小限に抑えるため、BVの遺伝的安定性にもプラスの影響を与える[Krell PJ.Cytotechnology 1996;20:125-37]。rAAV製造の文脈では、昆虫細胞/BV操作中の低BVのMOI戦略の有用性は、様々なMOIがベクター粒子の収率及び品質にどのように影響するかについての徹底的な調査を正当化する。
【0177】
総BVのMOIが減少するにつれて、最初のウイルス感染ラウンド中に共感染される細胞のパーセンテージは減少する。その後の非同期感染プロセスは、細胞株挙動、使用されるBVの数、及び感染時間などの他の入力の影響を受ける[Mena JA et al.BMC Biotechnol 2007;7:39、Lee DF et al.J Virol 2000;74:11873-80、Sokolenko S et al.Biotechnol Adv 2012;30:766-81]。培養温度などの物理化学パラメータもまた、AAVタンパク質発現及びベクター産生のタイミングに影響を及ぼし、このパラメータがBV複製及び細胞死動態に影響を及ぼす可能性があることを示唆している[Aucoin MG et al.Biotechnol Bioeng 2007;97:1501-9]。本試験は、Rep、Cap及びGOI配列を含有するrBVについて様々なMOI値を探索したが、他の全てのプロセスパラメータは一定のままであった。データ分析は、感染プロセス中のvg生産性に対するRep遺伝子及びCap遺伝子のプラスの効果を強調する。この結果は、高MOIでMeghrous及びAucoinによって実施された以前の実験と一致する[Meghrous J et al.Biotechnol Prog 2005;21:154-60、Aucoin MG et al.Biotechnol Bioeng 2006;95:1081-92]。Rep及びCap BVの感染に成功すると、rAAV DNA複製、ゲノム分解、及び事前形成されたキャプシドへのパッケージングに必要なRepタンパク質の強力な発現が促進される[Samulski RJ and Muzyczka N.Annual Review of Virology 2014;1:427-51]。これはまた、AAV VPタンパク質及びアセンブリ活性化タンパク質(AAP)の発現を促進し、後者は、適切なキャプシドアセンブリのためのタンパク質輸送のシャペロニングにとって重要である[Grosse S et al.J Virol 2017;91]。関連文献のレビューは、一貫したプロセス性能につながるため、1のBVのMOI比で操作することが好ましいことを示した。結果はその経験則を支持したが、その比に柔軟性があるという考えにも寄与している。Aucoin[Aucoin MG et al.Biotechnol Bioeng 2006;95:1081-92]は、GOI:Rep:Cap BV比を10:10:10(30の合計MOI)から3:10:10(23の合計MOI)に低減することが同等の感染力価結果をもたらすことを示し、同期感染プロセスで提供される導入遺伝子(GOI)コピーの初期数が、Rep及びCapコピー数と比較して少ない量で必要とされることを示唆する。この理論に縛られるものではないが、本発明者らは、低い初期GOIコピー数の条件下で、Rep駆動型導入遺伝子複製は、後続のパッケージングのために豊富なITR隣接DNAを供給することができるという仮説を立てる。GOIが低いが、Rep及びCapレベルが高い条件では、フローサイトメトリーデータは、ウイルスに感染した細胞のパーセンテージ及び重感染レベルの両方が潜在的に影響を受けることを示唆する(データは示されていない)。興味深いことに、そのような比は、バルクの細胞生産性を改善した。
【0178】
BV由来DNA不純物のキャプシド化もまた、本試験で評価した。Sf9産生システムにおいて、次世代シーケンシング及びPCRベースの技法によるDNA不純物の評価は、ゲノムの0.2~2%の範囲の合計パーセンテージでBV及び宿主細胞由来DNA配列を特定し、BV DNAは最も豊富である[Penaud-Budloo M et al.Hum Gene Ther Methods 2017;28:148-62、Kondratov O et al.Mol Ther 2017;25:2661-75]。DNA不純物はわずかなパーセンテージで存在するが、規制保健当局は、いかなる潜在的な遺伝毒性リスクも低減するために、この製品関連の不純物を制御するようメーカーに助言する[FDA Briefing Document:Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting:September 19,2012:Cell Lines Derived from Human Tumors for Vaccine Manufacture n.d.:30]。上流及び下流のrAAV産生操作は、原薬中のDNA不純物レベルに影響を与えると考えられる。しかしながら、これらの仮説を評価する研究は不足している。これは、昆虫細胞培養におけるBV由来のパッケージ化DNA不純物に対するBVのMOIの効果を体系的に特徴付ける最初の報告であると考えられる。予備的な結果は、GOIのMOIと比較してRep及びCap BVのMOIを増加させると、ITR隣接遺伝子座からのBV DNAのパッケージングが低下する一方で、ITRから離れた遺伝子座のキャプシド化が増加することを示唆しており、これらの効果は対照的であるだけでなく、強度が異なる。これらのデータは、BV由来DNA不純物パッケージングの2つの潜在的な機序を説明する。1)ITR配列の存在に大きく影響される、以前に報告された「リバースパッケージング」、及び2)全てのバキュロウイルスゲノム配列に適用されるRep依存性機序。例示的な実施形態が上に説明されているが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を説明することは意図されていない。むしろ、本明細書で使用される語は、限定ではなく説明の語であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解される。更に、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、本発明の更なる実施形態を形成し得る。
【配列表】
【国際調査報告】