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特表2024-527002少なくとも1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法
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  • 特表-少なくとも1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図1
  • 特表-少なくとも1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】少なくとも1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20240711BHJP
   C08G 64/18 20060101ALN20240711BHJP
   C08G 64/20 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C08G81/00
C08G64/18
C08G64/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504496
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070219
(87)【国際公開番号】W WO2023006512
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21187920.0
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーゼンフェルダー ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファンデン アインデ ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】バッツ マルク
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドルスト ポール
(72)【発明者】
【氏名】スパーペンス マックス
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴォルフ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エングベルグ ローランド
(72)【発明者】
【氏名】カーレンベルク グレゴール
【テーマコード(参考)】
4J029
4J031
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC03
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE06
4J029BB10A
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BB16A
4J029BD09A
4J029BH02
4J029DB13
4J029HA01
4J029JA121
4J029JB171
4J029JB201
4J029JC591
4J029JE222
4J029JF021
4J029JF031
4J029JF041
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF151
4J029JF161
4J029KB02
4J029KB05
4J029KB15
4J029KC05
4J029KD02
4J029KD07
4J029KD17
4J029KE07
4J031AA52
4J031AA59
4J031AB04
4J031AC03
4J031AC05
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE04
4J031AE05
4J031AE11
4J031AF10
4J031AF24
(57)【要約】
本発明は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを重縮合によって連続調製する多段階方法であって、第1の段階においてオリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを提供し、第2の段階において少なくとも1つの特殊縮合反応器を使用し、好ましくは、第2の段階において厳密に1つの特殊縮合反応器を使用するか、又は厳密に2つの特殊縮合反応器を使用することを特徴とする、方法に関する。この方法は、或る特定の量の或る特定の助触媒を添加し、この助触媒を最初の特殊縮合反応器の前に添加することも特徴とする。本発明による方法によって調製されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、小さなポリシロキサンドメインの割合が高く、良好な機械的特性、特にISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ衝撃試験における強靭な破壊挙動、例えば射出成形又は押出しにおける良好な加工性、及び良好な流動性を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確に1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からの前記オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を、前記正確に1つの特殊縮合反応器に導入する方法工程、
なお、前記特殊縮合反応器は、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、前記反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記特殊縮合反応器の入口から前記特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、前記正確に1つの特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの前記反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での前記少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【請求項2】
直列に配置された多数の特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からの前記オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を、直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最初の反応器に導入する方法工程、
なお、直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の各々が、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、前記反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、最初の特殊縮合反応器の入口から直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の最後の特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記最後の特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の最後の反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの前記反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での前記少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【請求項3】
前記助触媒を工程(2)の前に既に前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに指定の量で添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(4)において、前記単一の特殊縮合反応器又は直列に配置された多数の特殊縮合反応器の前記最後の特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)特殊反応反応器の前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
本発明による方法の第1の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方のポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が3重量%~10重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4重量%~8重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートのOH基含有量が1200ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有し、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有し、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する前記反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記方法の工程(4)において、好ましくは以下の方法条件:
前記最初の特殊縮合反応器では、
(4.1.a)1mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.1.b)270℃~350℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.1.c)10Hz~30Hzの前記反応混合物の表面更新周波数、
前記最後の特殊縮合反応器では、
(4.2.a)0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.2.b)280℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.2.c)10Hz~30Hzの前記反応混合物の表面更新周波数、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が30kg/mh~60kg/mhである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項14】
以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして3重量%~10重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項15】
成形体の製造への請求項13に記載のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを重縮合によって連続製造する多段階方法であって、第1の段階においてオリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを提供し、第2の段階において少なくとも1つの特殊縮合反応器を使用し、好ましくは、第2の段階において正確に1つの特殊縮合反応器を使用するか、又は直列に配置された正確に2つの特殊縮合反応器を使用することを特徴とする、方法に関する。この方法は、或る特定の量の特定の助触媒(以下に更に記載する)を添加し、この助触媒を最初の特殊縮合反応器の上流に添加することを更に特徴とする。本発明による方法は、好ましくは、第1の段階において横型反応器を用いてオリゴカーボネートを製造することを含み、上記オリゴカーボネートを、第2の段階においてヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと反応させて、SiCoPCとしても知られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る。この方法は、少なくとも1つの特殊縮合反応器を用いたオリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの反応において、或る特定のプロセスパラメーターが観察されることを更に特徴とする。本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、小さなポリシロキサンドメインの割合が高く、良好な機械的特性、特にISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験における強靭な破壊挙動、例えば射出成形又は押出しにおける良好な加工性、及び良好な流動性を特徴とする。
【0002】
ここで、特定の助触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される。
【0003】
本発明の文脈において、小さなポリシロキサンドメインの高い割合は、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超である場合にもたらされる。
【0004】
ポリシロキサンドメインのサイズを決定するために、ポリマーサンプルを低温で切断し、以下により詳細に記載するように走査電子顕微鏡法による試験に供する。本発明の文脈において、ポリシロキサンドメインの直径は、ここでは切断により見られるポリシロキサンドメインの断面の円相当投影面積の直径を意味すると理解される。
【背景技術】
【0005】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが低温衝撃強度/低温ノッチ付き衝撃強度、耐薬品性及び屋外耐候性、並びに経時特性及び耐火性の点で良好な特性を示すことが知られている。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、これらの特性の点で従来のポリカーボネート、すなわち標準的なポリカーボネートよりも優れている。本発明の文脈において、従来のポリカーボネート又は標準的なポリカーボネートとは、ジフェノールモノマー単位としてビスフェノール-Aをベースとしたホモポリカーボネートを意味すると理解される。
【0006】
本発明の文脈において、相対溶液粘度は、いずれの場合もジクロロメタン中、5g/lの濃度で25℃にてウベローデ粘度計を用いて決定される。
【0007】
従来技術によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、ジフェノールモノマー及びポリジオルガノシロキサンから出発し、ホスゲンを用いる、いわゆる相界面プロセスによって工業的に製造される。炭酸ジフェニルを用いる、いわゆる溶融トランスエステル化プロセスによる、ジフェノールモノマー及びポリジオルガノシロキサンから出発したポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造も従来技術から知られている。しかしながら、この溶融トランスエステル化プロセスは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する工業規模では、これまで実施されていない。
【0008】
相界面プロセスの場合、従来技術によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造は、ホスゲン等の特別な取扱い要件を有する出発物質を必要とするという不利点を有する。さらに、標準的なポリカーボネートを製造するように構成された工業プラントを、溶融トランスエステル化プロセスにおけるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用する場合、反応器内にて高温でポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するための反応混合物の滞留時間は、非常に長くなる。これにより、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに対する熱応力が著しく増大し、ポリシロキサンポリカーボネートブロックコポリマーの特性に悪影響を及ぼす。
【0009】
溶融トランスエステル化プロセスによるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造は、特許文献1又は特許文献2にも記載されている。しかしながら、それらに開示されている反応時間は、大規模な工業規模プロセスには経済的に有用でない。これらの文献には、反応時間、ひいては滞留時間を短縮し得る方法についての実際的な教示は全く含まれていない。
【0010】
特許文献2には、15nmまでの小さなポリシロキサンドメインサイズが達成可能であることも開示されているが、図面のみから明らかなポリシロキサンドメインサイズは、現在の需要には有用でない。さらに、小さなポリシロキサンドメインを高い割合で得ることができる方法は開示されていない。
【0011】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中の大きなポリシロキサンドメイン、すなわち200nm以上のポリシロキサンドメインは、特に多数存在する場合、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造される成形品の美的外観及び/又は機械的特性に悪影響を及ぼす。大きなポリシロキサンドメインは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリカーボネート相からのポリシロキサン相の脱混合につながる可能性があり、これはポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの不均質な表面構造として現れ、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから作られた射出成形された成形体においてフローライン及びストライピング、並びに望ましくない光学干渉を引き起こす可能性がある。かかる成形体の美的外観は不十分であり、かかる成形体はもはや均一に着色可能ではなく、したがって多くの商業用途には適さない。大きなポリシロキサンドメインは剪断を受けやすく、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから射出成形によって製造された成形体において剥離を引き起こす可能性があるため、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、射出成形における加工が更に困難であり、結果として、しばしば非常に低い射出速度しか用いることができず、これはサイクル時間が長くなることから望ましくない。
【0012】
さらに、特許文献1も特許文献2も、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの流動性を調整し得る方法について何ら示していない。
【0013】
特許文献3は、アルカリ金属ベース又はアルカリ土類金属ベースの助触媒を用いてポリカーボネートを製造する2段階方法を記載している。特許文献3は、個々の反応段階における反応器の配置を更に記載している。したがって、最後の反応段階に高粘度反応器、特に二軸押出機(特許文献3では特にZSKと称される)の使用が必要とされることに特に留意されたい。しかしながら、驚くべきことに、かかる配置が製品の特性にとって不利であり/経済的製造の要件を満たさないことが見出された。かかるプロセスを工業規模のプロセスにスケールアップすることができないことが見出された。したがって、上記のように、溶融トランスエステル化プロセスを工業プロセスに利用することはできない。
【0014】
加えて、特許文献3は、小さなポリシロキサンドメインの割合が大きいポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造し得る方法を開示していない。
【0015】
当業者は、ポリシロキサンドメインによって理解されるものを認識しており、これは例えば非特許文献1及び非特許文献2の両方に見ることができる。
【0016】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中の大きなポリシロキサンドメインの割合を低減し得る方法は原則として知られている。相溶化剤の添加は、例えば特許文献4/特許文献5に記載されている。しかしながら、特許文献4/特許文献5に記載されている相溶化剤は非常に高価であり、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの原料コストを著しく上昇させる。他の相溶化剤も、非常に高価であるか、又は溶融トランスエステル化プロセスにおける高い温度のために分解を起こすか、若しくは不十分な溶融安定性を有する生成物をもたらし、用いることができないことから不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第0864599号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0770636号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0726285号
【特許文献4】欧州特許出願公開第3719077号
【特許文献5】国際公開第2020201178号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】"Structure to Property Relationship in Polycarbonate/Polydimethylsiloxane Copolymers", by Matthew R. Pixton, published in "Associacao Brasileira de Polimeros, Sao Paulo, SP (Brazil); [vp.]; 2005; 2 p; 8. Brazilian congress on polymers; 8. congresso brasileiro de polimeros; Aguas de Lindoia, SP (Brazil); 6-10 Nov 2005"
【非特許文献2】"Structure to Property Relationship in Polycarbonate/Polydimethylsiloxane Copolymers", by Matthew R. Pixton, published in "ANTEC 2006, Annual Technical Conference, Charlotte, North Carolina, 7-11 May 2006, Conference Proceedings, pages 2655-2659"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、上述の従来技術から出発して、従来技術の少なくとも1つの不利点を克服することが目的であった。特に、本発明の目的は、ホスゲン等の特別な取扱い要件を有する出発物質を避け、無溶媒で行うことができ、工業規模へのスケールアップが可能であり、経済的な運用が可能である、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法を提供することであった。さらに、拡張可能であり、良好な流動性を有すると同時に、小さなポリシロキサンドメインの割合が高いポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造を可能にする溶融トランスエステル化プロセスを開発することが目的であった。射出成形においてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に加工する際に、複雑な形状及び薄い肉厚を有する部品の製造を可能にするため、良好な流動性は有利である。さらに、方法が短い滞留時間を可能にし、コスト効率が良くなるように方法を構成することが目的であった。本文脈において、滞留時間とは、ポリシロキサン成分の組込みにより、所望の相対溶液粘度を有する所望のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に必要とされる時間を意味し、下記の本発明による方法において、滞留時間は反応時間と一致する。
【0020】
方法は連続的に行わなければならない。さらに、高価な相溶化剤を避けることを可能にすることが目的であった。
【0021】
特に、スケールアップが可能であり、すなわち、単一の実験室プラントにおいて、例えば1バッチ当たり1g~200g、最大でも1kgのポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを非連続的に製造することが可能な実験室プロセスから出発して、単一のパイロットプラントにおいて、例えば1時間当たり1kg~100kgのポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続的に製造することが可能なパイロット規模のプロセスを介して、100kg/時間~500kg/時間超のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、好ましくは1000kg/時間超のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを1つの製造ラインで連続的に製造可能な工業規模へと移行することができる方法を提供することが目的であった。
【0022】
ここでは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合は、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であるものとする。
【0023】
同時に、流動性は高いままでなければならない。しかしながら、流動性は、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから、特に射出成形によって製造される成形品の機械的特性の低下をもたらす値を超えてはならない。相対溶液粘度を流動性の尺度とみなすことができる。このため、2重量%~15重量%、好ましくは3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量を有し、特に好ましくは4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度は、好ましくは1.24~1.38、好ましくは1.26~1.36、特に好ましくは1.27~1.35であるものとする。本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、この範囲の相対溶液粘度で、例えば射出成形又は押出しによって容易に加工可能である。
【0024】
非常に特に好ましくは、4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度は、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.32であるものとする。
【0025】
ここで、特に好ましい範囲は、このポリシロキサン含有量と指定の粘度との組合せにより、良好な機械的特性だけでなく、良好な加工性も達成され得るように選択される。特により高いポリシロキサン濃度で上昇する溶液粘度の結果として、加工性が最適でなくなる可能性がある。しかしながら、より低い粘度を有する従来のポリカーボネートの混入により、非常に特に好ましい範囲に相当するポリシロキサン含有量を確立することが可能である。この材料の場合も良好な流動性と同時に良好な機械的特性を特徴とする。当業者は、かかる成分の混合/配合、特に対応する粘度を達成するために、従来のポリカーボネートのどの粘度を用いる必要があるかについても熟知している。
【0026】
ここでも、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合は、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であるものとする。
【0027】
本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、非常に特に好ましい範囲の相対溶液粘度で、例えば射出成形又は押出しによって非常に特に容易に加工可能である。
【0028】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示すことが更に特に好ましい。これは特に、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する場合に当てはまる。しかしながら、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリシロキサン含有量が高くても、これらのポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーと従来技術による従来のポリカーボネートとの配合により、この場合も同じ良好な機械的特性が達成可能であることに留意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0029】
これらの目的は、驚くべきことに、オリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンからポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法によって達成され、この方法は、一連の異なる反応器を用いる多段階方法であることを特徴とする。これらの目的は、驚くべきことに、第1の段階においてオリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを提供し、第2の段階において少なくとも1つの特殊縮合反応器を用い、好ましくは、第2の段階において正確に1つの特殊縮合反応器を用いるか、又は正確に2つの特殊縮合反応器を用いる方法であって、或る特定の量の特定の助触媒を添加し、この或る特定の量のこの特定の助触媒を最初の特殊縮合反応器の上流に添加する、方法によって特に達成される。ここで、特定の助触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される。さらに、特定の方法条件も観察される。本発明による方法において、第1の段階で、オリゴカーボネートは、横型反応器を用いて製造するのが好ましい。
【0030】
本発明の文脈において、好ましくは本発明による方法の第1の段階で用いられる、例えば独国特許出願公開第4447422号又は欧州特許出願公開第0460466号に開示される横型反応器は、少なくとも1つのシャフトを有する反応空間を含み、反応空間の長さが、反応空間の最大の断面直径よりも大きいことを特徴とする。反応空間の長さ及び断面直径は、互いに垂直な空間的広がりである。ここで、反応空間の前後軸は、反応チャンバの入口から反応チャンバの出口までの傾斜として最大でも±0.2°のずれで水平である。反応チャンバが備える少なくとも1つのシャフトは、反応チャンバの前後軸と平行に配向するのが好ましい。横型反応器の反応空間は、1つのシャフトのみを備える場合には円筒形であるのが好ましい。横型反応器の反応空間が複数のシャフト、特に相互に平行かつ反応空間の前後軸と平行なシャフトを備える場合、例えば欧州特許出願公開第0460466号に開示されているように、相互に平行な相互貫入円筒ハウジングから構成されるのが好ましい。
【0031】
本発明の文脈において、明確にするために、単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機は、横型反応器とみなされないことに留意されたい。
【0032】
本発明の文脈における特殊縮合反応器は、以下を特徴とする:
シャフトを有する反応チャンバを備え、回転軸の方向の反応チャンバの長さは、反応チャンバの最大の断面直径よりも大きい。反応チャンバの長さ及び断面直径は、互いに垂直な空間的広がりである。ここで、反応チャンバの前後軸は、垂直に対する傾斜として最大でも±0.1°のずれで垂直である。反応チャンバが備えるシャフトは、反応チャンバの前後軸と平行に取り付けられる。例えばワイパー又はワイパーブレード要素又はスパイラル又はスクリューの形態の少なくとも1つのスプレッダーが、シャフトの周縁に圧入により固定されるか、又はシャフトの構成要素として構成され、これは、シャフトの回転時に、
(1)上記シャフトとともに回転し、
(2)シャフトから反応チャンバ内表面積に向かって配向し、
(3)反応チャンバ内表面積に向かって配向したその外縁は、反応チャンバ内表面積に触れることなく、シャフトの回転時に反応チャンバ内表面積をワイピングする。したがって、反応チャンバ内表面積に向かって配向したスプレッダーの外縁と反応チャンバ内表面積との間に隙間が存在する。このワイピングは、反応チャンバ内表面積に広げられた反応混合物の層厚が少なくとも0.5mmかつ最大でも20mm、特に好ましくは少なくとも1mmかつ最大でも10mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmかつ最大でも6mmとなるように行うのが好ましい。特殊縮合反応器が多数、例えば2個、3個、4個、或いはかなり多く、例えば20個以上のスプレッダーを備えるのが好ましい。
【0033】
本発明の文脈において、「反応チャンバ内表面積」は、反応混合物が適用される特殊縮合反応器の表面積を意味すると理解される。薄膜蒸発器のそれぞれの反応チャンバ内表面積は、製造業者により個々の薄膜蒸発器について構成の結果として明確に指定される特徴であり、簡単な測定によって決定可能である。
【0034】
反応混合物は、特殊縮合反応器を上から下及び下から上の両方、好ましくは上から下に横断することができる。反応混合物が特殊縮合反応器を上から下に横断する場合、これは少なくとも部分的に重力駆動される。反応混合物が特殊縮合反応器を下から上に横断する場合、重力に逆らうこの流れを維持する装置、例えばスクリュー又はスパイラルの存在が必要とされる。
【0035】
特殊縮合反応器は、例えば薄膜蒸発器又は押出機として構成することができる。
【0036】
本発明の文脈における特殊縮合反応器は、適当な操作において、反応チャンバ内表面積をベースとして20kg/mh~100kg/mhのこの特殊縮合反応器への反応混合物の投入量を達成することを可能にする。反応チャンバ内表面積をベースとした特殊縮合反応器への反応混合物のこの投入量を以下で「適用速度」と称する。2つ以上の特殊縮合反応器を使用する場合、適用速度の算出に用いられる内表面積は、直列に配置された特殊縮合反応器の反応チャンバの内表面積の合計であり、反応混合物による反応チャンバ内表面積の適用速度については20kg/mh~100kg/mhの値が保持される。これは、1つの特殊縮合反応器しか使用しないか、又は複数の直列に配置された特殊縮合反応器を使用するかとは無関係に当てはまる。
【0037】
特殊縮合反応器が薄膜蒸発器である場合が好ましい。
【0038】
本発明の文脈において、薄膜蒸発器は、軸方向に延びる回転対称、好ましくは円筒形の反応チャンバを備え、その上端に、溶融分散液の形態のポリマー溶融物と液体ポリシロキサンとから構成される反応混合物が供給され、その下端で、上記混合物が更に反応した反応混合物の形態で装置から排出される垂直に配置された装置であり、少なくとも2つのワイパーブレード要素、一般に3つ、4つ又はそれ以上のワイパーブレード要素が周縁に固定されたローター、すなわち回転シャフトが装着されている。ここで、各ワイパーブレード要素は外縁を有し、ワイパーブレード要素の外縁は軸方向に延び、軸方向に延びる回転対称反応チャンバの内表面積に向けられ、軸方向に延びる回転対称反応チャンバの内周縁上に反応混合物を広げることで、反応混合物の表面更新を常に確実にする。ここで、反応チャンバの内表面積は、反応チャンバと同じ幾何学形状を有し、すなわち、円筒形の反応チャンバも円筒形内表面積を有する。ここで、ワイパーブレード要素は、軸方向に平行に又は前後軸に対して作用角で配置することができる。本発明による方法の実施に原則として適した薄膜蒸発器は、例えば欧州特許出願公開第3318311号、欧州特許出願公開第1792643号、欧州特許出願公開第0356419号、独国特許出願公開第19535817号、独国特許出願公開第102012103749号、独国特許出願公開第2011493号若しくは旧東ドイツ国特許第226778号、又は刊行物(1)「Platzer (ed.): Polymerization Kinetics and Technology, Advances in Chemistry; American Chemical Society: Washington, DC, 1973, pages 51 to 67: Fritz Widmer: Behaviour of Viscous Polymers during Solvent Stripping or Reaction in an Agitated Thin Film; Swiss Federal Institute of Technology, Zurich, Switzerland」に開示されており、ここで、独国特許出願公開第19535817号、旧東ドイツ国特許第226778号若しくは欧州特許出願公開第3318311号に開示されている薄膜蒸発器、又は(1)の図7、58頁及び図9、60頁に開示されている薄膜蒸発器が、本発明による方法の実施に特に適している。さらに、薄膜蒸発器を構成するための選択肢が、論文"Scaleup of Agitated Thin-film Evaporators", William B. Glover, reprinted from Chemical Engineering, April 2004に開示されている。
【0039】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得るためのオリゴカーボネートとポリシロキサンとの重縮合では、重縮合中に形成されるヒドロキシル化合物、一般にフェノールを蒸発により効果的に除去する必要があり、したがって常に表面更新が必要とされるため、薄膜蒸発器の反応チャンバ内表面積に反応混合物の溶融物を広げることが重要である。良好な表面更新に加えて大きな表面積がもたらされる、かかる作業では、通常は反応器、例えば独国特許出願公開第4447422号若しくは欧州特許出願公開第0460466号に開示されているような高粘度回転ディスク反応器、又は例えば国際公開第02085967号に開示されているようなメッシュバスケット反応器等の他の高粘度反応器を用いる。しかしながら、かかる高粘度反応器は、特にポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造において長い滞留時間という不利点を有する。
【0040】
長い滞留時間は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法を柔軟性のないものとする。このため、連続方法において製造すべき或るポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、製造すべき別のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに変更する際に、長い滞留時間により多量の移行生成物が発生し、これは更なる処理に使用可能でないことが多い。長い滞留時間で熱的損傷が増加するため、長い滞留時間は製品品質にも悪影響を及ぼす。
【0041】
更に上で既に提示したように、特許文献3には、表面更新を確実にするために最終プロセスセクションにおける二軸押出機(特許文献3では特にZSKと称される)の好ましい使用が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されている反応器の組合せが製品品質に最適ではなく、プロセスを工業規模にスケールアップすることができないか、及び/又は小さなポリシロキサンドメインの高い割合という点での製品品質が達成可能でないことが見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(1)目的は特に、本発明の第1の実施形態において以下によって達成される:
正確に1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する多段階方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からのオリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された反応混合物を、正確に1つの特殊縮合反応器に導入する方法工程、
なお、特殊縮合反応器は、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、反応混合物は、特殊縮合反応器の入口から特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、正確に1つの特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【0043】
(2)あるいは、目的は、本発明の第2の実施形態において以下によって達成される:
直列に配置された多数の特殊縮合反応器1を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する多段階方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からのオリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された反応混合物を、直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最初の反応器に導入する方法工程、
なお、直列に配置された多数の特殊縮合反応器の各々が、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、反応混合物は、最初の特殊縮合反応器の入口から直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最後の特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを最後の特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最後の反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【0044】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、助触媒がナトリウムベースの助触媒である場合、添加する助触媒の量が、特にヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~2×10-4molの助触媒、非常に特にヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの助触媒であることが当てはまる。
【0045】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、反応チャンバ内表面積上に存在する反応混合物の層厚が少なくとも0.5mmかつ最大でも20mm、好ましくは少なくとも1mmかつ最大でも10mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmかつ最大でも6mm、非常に特に好ましくは少なくとも3mmかつ最大でも4mmであることが当てはまる。
【0046】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、ここでは、反応チャンバ内表面積上に存在する反応混合物の層の厚さは、あらゆる点で同一である必要はなく、むしろ層が、例えば波の形態で隆起及び陥凹、すなわちより高い層厚の領域及びより低い層厚の領域を含み得ることが当てはまる。反応混合物の層におけるこれらの隆起及び陥凹は、反応チャンバ内表面積上にローターの運動によって広げられるのが好ましい。かかる隆起及び陥凹は、物質移動を改善し、反応混合物の層の表面積を増加させることで、重縮合中に形成されるヒドロキシル化合物、一般にフェノールの除去を容易にするため好ましい。
【0047】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、以下のことが当てはまる:
圧力測定は、例えばWIKAのIS-3圧力センサー又はEndress+HauserのCerabar圧力センサーを用いて行うことができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術の圧力センサーを使用することも可能である。
【0048】
本発明の文脈において、「mbara」という用語は、絶対圧力をmbarで報告するための単位「mbar absolute」を表す。
【0049】
反応混合物の温度の測定は例えば、測定チップが反応混合物中に十分に深く浸漬されたL型熱電対又はPt100抵抗温度計を用いて行うことができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術の温度測定手段を使用することも可能である。薄膜蒸発器の内部における温度測定は、ここでは欧州特許出願公開第3318311号から既知の方法で行うことができる。
【0050】
回転速度は、好ましくは当業者に既知の方法でローター上の従来技術のイニシエーター/パルサーを介して測定することができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術のタコメーターを使用することも可能である。表面更新周波数は、回転速度に周縁のワイパーブレード要素の数を乗算することによって得られる。
【0051】
本発明の第2の実施形態において、直列に配置された多数の特殊縮合反応器は、2つ若しくは3つ若しくは4つ、又はそれ以上の直列に配置された特殊縮合反応器であってもよい。
【0052】
本発明によると、本発明の第2の実施形態において、直列に配置された多数の特殊縮合反応器が正確に2つであることが好ましい。
【0053】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、方法工程(1)における反応混合物、及び直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最後の特殊縮合反応器からの排出時に得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、及びポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得るための反応において方法工程(1)で反応混合物から中間で形成される反応混合物が溶融形態であることが当てはまる。ここで、本発明による方法の第1の実施形態においては、唯一の特殊縮合反応器を最後の特殊縮合反応器とみなすことができる。
【0054】
本発明に従って用いることができる特殊縮合反応器は、好ましくは薄膜蒸発器であり、薄膜蒸発器は、薄膜蒸発器内で回転可能な少なくとも2つのワイパーブレード要素を周縁に備えることを特徴とする。薄膜蒸発器は、薄膜蒸発器内で回転可能な3つ以上のワイパーブレード要素、特に3つ、4つ又はそれ以上のワイパーブレード要素を周縁に備えるのが好ましい。
【0055】
薄膜蒸発器の軸方向に延びる回転対称反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面積の少なくとも一部は、熱伝達領域としても機能する。熱伝達領域を介して反応チャンバに熱を供給してもよく、又は熱伝達領域を介して反応チャンバから熱を除去してもよい。薄膜蒸発器において、熱伝達領域として機能する、反応混合物を適用する軸方向に延びる回転対称反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面積の割合は、90%~100%、好ましくは100%である。薄膜蒸発器のそれぞれの熱伝達領域は、製造業者により個々の薄膜蒸発器について構成の結果として明確に指定される特徴であり、簡単な測定によって決定可能であるが、使用者により、例えば加熱装置の部分的又は完全な不使用によって明確に変更され得る。
【0056】
ここで、本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、熱伝達領域の温度は、280℃~350℃、好ましくは290℃~340℃であり、方法工程(4)において反応混合物の反応中に、例えば反応混合物の剪断により生成した任意の熱を、熱伝達領域を介して除去することができる。ここで、熱伝達領域は、温度プロファイルを有していても、又は2つ以上の温度帯を有していても、又はその両方であってもよい。
【0057】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、工程(4)における反応混合物の滞留時間は、好ましくは6分~12分、特に好ましくは7分~10分である。
【0058】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、それにより製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、このように短い滞留時間で得ることができる。
【0059】
本発明によると、例えば工程(4)において中間で、すなわち工程(3)による導入後及び工程(5)における排出前に形成されるような「中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー」という用語は、工程(5)による特殊縮合反応器からの排出時に得られるようなポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの区別のために使用される。
【0060】
したがって、「中間体」という用語は、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーがポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも低い分子量を有することを明確にするために使用される。このため、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、工程(5)に従って特殊縮合反応器の出口で得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも低い相対溶液粘度を有する。中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.20~1.27の相対溶液粘度を有するのが好ましい。より低い相対溶液粘度を有するオリゴカーボネートの使用によって、一般により低い相対溶液粘度を有する中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーも得られることが当業者には明らかである。また、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、工程(1)に用いられるオリゴカーボネートよりも高い相対溶液粘度を有する更に縮合したオリゴカーボネートも含むことが当業者には明らかである。
【0061】
本発明による方法の第2の実施形態において、以下のことが当てはまる:
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するための反応混合物が、2つの直列に配置された特殊縮合反応器を連続的に横断し、これらの特殊縮合反応器は、パイプ導管を介して互いに直接接続される。これら2つの特殊縮合反応器の間に更なる反応器が存在しないことが好ましい。しかしながら、ポンプ又は混合要素、例えばスタティックミキサー又はダイナミックミキサーを、特殊縮合反応器の間の接続に用いることができる。これらのポンプ又はこれらの混合要素の目的は、単に物質の機械的処理であるため、これらのポンプ又はこれらの混合要素は、反応器とはみなされない。第2の特殊縮合反応器に続いて、更なる特殊縮合反応器又は2つ以上の更なる特殊縮合反応器を全て直列に配置してもよい。
【0062】
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方が、小さなポリシロキサンドメインの高い割合を有し、すなわち、
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方において、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合は、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超である。
【0063】
本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、12nm未満の直径を有するポリシロキサンドメインを多く有し得るが、これらのポリシロキサンドメインは、200nm以上のポリシロキサンドメインの数値的に高い割合について更に上で説明した不利点にとって重要ではない。
【0064】
このため、本発明による方法の第1の実施形態に従って得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方が、2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、特に3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、特に4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも優れており、ここで、ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量を指す。これは特に、本発明に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーと、溶融トランスエステル化プロセスによって製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとを比較する場合に当てはまる。
【0065】
但し、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有し、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度を有し、ここでも以下のことが当てはまる:
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方が、小さなポリシロキサンドメインの高い割合を有し、すなわち、
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方において、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合は、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.7%超である。
【0066】
4.5重量%~5.5重量%の非常に特に好ましい範囲のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの有利な相対溶液粘度は、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの上述の利点が特定の程度まで達成されることを意味する。特に、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、例えば射出成形又は押出しによって特に容易に加工可能である。
【0067】
ここで、非常に特に好ましい範囲は、指定の相対溶液粘度と同時に、このポリシロキサン含有量を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、良好な機械的特性及び良好な加工性を達成し得るように選択される。特にポリシロキサン含有量がより高い場合に相対溶液粘度が上昇することで、加工性が最適でなくなる可能性がある。しかしながら、より低い相対溶液粘度の従来のポリカーボネートを混入することで、非常に特に好ましい範囲に相当するポリシロキサン含有量を確立することが可能である。かかる混合物は、この場合も良好な流動性と同時に良好な機械的特性を特徴とする。
【0068】
更なる加工工程において、本発明による方法によって得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに着色剤及び添加剤、並びに任意に更なるポリカーボネートを配合してもよい。当業者であれば、従来のポリカーボネートとポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの混合/配合、特に従来のポリカーボネートとポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの混合物の所望の相対溶液粘度を達成するために従来のポリカーボネートが有する必要がある相対溶液粘度についても精通している。このため、特にポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリシロキサン含有量が高い場合、ポリシロキサン含有量と相対溶液粘度との好ましい組合せが、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーと従来のポリカーボネートとの従来技術の配合によって達成可能であることから、ポリシロキサン含有量の特に好ましい範囲は限定されない。しかしながら、高いポリシロキサン含有量を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度値が過度である場合に、この高い相対溶液粘度値を、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの良好な加工性が、相対溶液粘度がより低い従来のポリカーボネートの混和によって依然として確実な相対溶液粘度値まで低下させることができないことも当てはまる。
【0069】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、低いポリシロキサン含有量、すなわち5重量%未満のポリシロキサン含有量であっても、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示す。
【0070】
反応チャンバへの反応混合物の20kg/mh~100kg/mhと高い適用速度により、このように良好な特徴及び特性を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られるとは予想されていなかったため、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、このように小さなポリシロキサンドメインの高い割合を有し、このように良好な特性を示すことは驚くべきことである。このことは、特殊縮合反応器(単数/複数)における短い滞留時間の観点から特に当てはまる。
【0071】
このように少量の助触媒の添加により、このように良好な特徴及び特性を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られることも驚くべきことである。
【0072】
(3)本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、以下のことが当てはまる:
既に工程(2)の前に助触媒をヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに指定の量で添加する。
【0073】
(4)ここで、本発明によると、方法工程(4)において、単一の特殊縮合反応器又は直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最後の特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)特殊反応反応器の反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される場合が更に好ましい。
【0074】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第4の実施形態である。
【0075】
(5)ここで、本発明によると、工程(1)で提供されたオリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である場合も好ましい。
【0076】
本発明による方法のこの非常に特に好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第5の実施形態である。
【0077】
(6)ここで、本発明によると、本発明による方法の第1の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方のポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする場合が更に好ましい。
【0078】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第6の実施形態である。
【0079】
(7)ここで、本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が3重量%~10重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする場合が特に好ましい。
【0080】
本発明による方法のこの特に好ましい実施形態は、上述の第6の実施形態による第7の実施形態である。
【0081】
(8)ここで、本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4重量%~8重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする場合が非常に特に好ましい。
【0082】
本発明による方法のこの非常に特に好ましい実施形態は、上述の第6の実施形態による第8の実施形態である。
【0083】
(9)ここで、本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする場合がとりわけ非常に特に好ましい。
【0084】
本発明による方法のこのとりわけ非常に特に好ましい実施形態は、上述の第6の実施形態による第9の実施形態である。
【0085】
(10)ここで、本発明によると、工程(1)で提供されたオリゴカーボネートのOH基含有量が1200ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmである場合が更に好ましい。
【0086】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第10の実施形態である。
【0087】
(11)ここで、本発明によると、工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有し、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有し、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する場合が更に好ましい。
【0088】
本発明による方法のこの更に好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第11の実施形態である。
【0089】
(12)直列に配置された特殊縮合反応器の数が少なくとも2つである場合、方法の工程(4)において、以下の方法条件:
最初の特殊縮合反応器では、
(4.1.a)1mbara~10mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(4.1.b)270℃~350℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(4.1.c)10Hz~30Hzの反応混合物の表面更新周波数、
最後の特殊縮合反応器では、
(4.2.a)0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(4.2.b)280℃~370℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(4.2.c)10Hz~30Hzの反応混合物の表面更新周波数、
が好ましくは観察され、
反応チャンバへの反応混合物の適用速度は、30kg/mh~60kg/mhである。
【0090】
本発明による方法のこの実施形態は、上述の第2の実施形態による第12の実施形態である。
【0091】
ここで、反応チャンバ内表面積上に存在する反応混合物の層厚が少なくとも1mmかつ最大でも10mm、特に好ましくは少なくとも1.5mmかつ最大でも6mm、非常に特に好ましくは少なくとも3mmかつ最大でも4mmであることが当てはまる。
【0092】
本発明は、以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に提供する。
【0093】
ここで、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度を有する。
【0094】
本発明は、以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして3重量%~10重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に提供する。
【0095】
同時に、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度を有する。
【0096】
本発明は、以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして4重量%~8重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に提供する。
【0097】
同時に、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度を有する。
【0098】
本発明は、以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして4.5重量%~5.5重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に提供する。
【0099】
同時に、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度を有する。
【0100】
本発明は、例えばハウジング、ヘルメット、食器洗い機対応の家庭用品、やかんの覗き窓、調節つまみ及び調節ボタン、スナップクロージャー、ケーキ及びチョコレートの型、太陽光発電所用のプラグコネクタ、太陽光発電所用のカップリング等の成形体の製造への本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用を更に提供する。
【0101】
ハウジングの製造への使用に関しては、本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、以下の物品のハウジングの製造に適している:
医療機器、モバイル電気小型機器、モバイルスキャナー、モバイルプレイステーション、モバイル音楽プレーヤー、ウェアラブル機器、モノのインターネット用のセンサー又はコンピューター機器、モバイル電気充電機器、モバイル電気アダプター、機械工学用の制御手段、スマートメーター、モバイルワイヤレス機器、タブレット型コンピューター、電気機器用の充電ステーション、5G基地局用のアンテナハウジング、屋外電気用途、配電盤、現金自動預払機、パーキングメーター。
【0102】
本発明に従って用いられるオリゴカーボネートと本発明に従って用いられるヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを、工程(4)において助触媒を用いて互いに反応させる。
【0103】
オリゴカーボネート、特にジフェノールモノマー単位としてのビスフェノールAと炭酸ジフェニル(DPC)とをベースとしたオリゴカーボネートを製造する本発明による方法に適した触媒としては、例えば以下のものが挙げられる:
アンモニウム触媒、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボラネート、ジメチルジフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、セチルトリメチルアンモニウムテトラフェニルボラネート及びセチルトリメチルアンモニウムフェノキシド。特に好適な触媒としては、式(K):
【化1】
(式中、R、R、R及びRは、同一の又は異なるC1~C10アルキル、C6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル又はC5~C6シクロアルキル、好ましくはメチル又はC6~C14アリール、特に好ましくはメチル又はフェニルとすることができ、Aは水酸化物アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、炭酸水素アニオン、炭酸アニオン若しくはハロゲン化物アニオン、好ましくは塩化物アニオン等のアニオン、又は式-ORのアルコキシド若しくはアロキシドとすることができ、ここで、RはC6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル又はC5~C6シクロアルキル、好ましくはフェニルとすることができる)のホスホニウム触媒も挙げられる。
【0104】
特に好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド又はテトラフェニルホスホニウムフェノキシドであり、テトラフェニルホスホニウムフェノキシドが非常に特に好ましい。これらのアンモニウム触媒及び/又はホスホニウム触媒のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることが特に好ましい。
【0105】
触媒は、用いるオリゴカーボネートの重量をベースとして0.0001重量%~1.0重量%、好ましくは0.001重量%~0.5重量%、特に好ましくは0.005重量%~0.3重量%、非常に特に好ましくは0.01重量%~0.15重量%の量で用いるのが好ましい。
【0106】
触媒は、単独で又は触媒混合物として用いることができ、純粋な形態で、又は例えば水若しくはフェノール中の溶液として、例えばフェノールとの固溶体として添加することができる。触媒は、例えばマスターバッチを用いて、好ましくはオリゴカーボネートとともに反応に導入してもよく、又は別個に/追加で添加してもよい。
【0107】
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを、3~7の範囲のpK(25℃)を有する弱酸の有機塩又は無機塩の存在下で反応させることも同様に好ましい。この塩は、本発明の文脈において助触媒とも称される。好適な弱酸は、カルボン酸、好ましくはC2~C22カルボン酸、例えば酢酸、プロパン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トルエン酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸及びサリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、リン酸の部分エステル、例えばモノ有機又はジ有機リン酸エステル、分岐脂肪族カルボン酸、例えば2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸及び2-エチルヘキサン酸を含む。
【0108】
好適な有機塩又は無機塩は、炭酸水素塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩又はジリチウム塩から選択又は誘導される。塩は炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム及び対応するオレイン酸塩を更に含んでいてもよい。これらの塩は全て、単独で又は任意の所望の混合物で使用することができる。
【0109】
塩は、特に好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びホスホニウム塩からなる群より選択される。更なる好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩は、カルボン酸から誘導される。
【0110】
本発明によると、有機塩又は無機塩は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの助触媒、好ましくはヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの助触媒、特に好ましくはヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの助触媒、非常に特に好ましくはヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの助触媒の量で用いられる。
【0111】
好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩はナトリウム塩、好ましくはカルボン酸のナトリウム塩である。助触媒は、好適な溶媒でヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに溶解するのが好ましい。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのナトリウム含有量は、例えば原子吸光分光法によって決定することができる。
【0112】
ナトリウム含有量がより高いと、熱応力下でポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの分解が増加する可能性があるため、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のナトリウム含有量が従来技術よりも少ないことが有利である。
【0113】
有機塩又は無機塩、すなわち助触媒は、単独で又は任意の所望の混合物で用いることができる。助触媒は、固体として又は溶液で添加してもよい。好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと有機塩又は無機塩とを含有する混合物の形態で添加される。
【0114】
触媒は、単独で又は他の触媒と混合して用いることができ、純粋な形態で又は溶液として、例えば水又はフェノール中で添加することができる。助触媒も単独又は他の助触媒と混合して用いることができ、純粋な形態で又は溶液として添加することができる。
【0115】
少なくとも1つの触媒がオリゴカーボネートに組み込まれ、助触媒がヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに組み込まれる場合が特に好ましい。
【0116】
オリゴカーボネート(成分A)
本発明の文脈におけるオリゴカーボネート(以下、成分(A)とも称される)は、ホモオリゴカーボネートであるのが好ましい。オリゴカーボネートは、既知の方法で直鎖状又は分岐状であってもよい。本発明に従って用いられるオリゴカーボネートの製造は、上記のように、好ましくは溶融トランスエステル化プロセスによって、特に国際公開第2019238419号に従って行われる。本発明による方法に有用なオリゴカーボネートの製造は、独国特許出願公開第10119851号、国際公開第02077066号、国際公開第02077067号又は国際公開第02085967号にも記載されている。オリゴカーボネートを、ポリカーボネートを得るための重縮合の最後から2番目の段階を形成するメッシュバスケット反応器から取り出す、国際公開第02085967号に従う本発明による方法に有用なオリゴカーボネートの製造が特に有利である。
【0117】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するには、5000g/mol~20000g/mol、特に好ましくは8000g/mol~19000g/mol、特に好ましくは10000g/mol~18000g/molの分子量(Mw)を有するオリゴカーボネートを用いることが好ましい。このオリゴカーボネートは、好ましくは1000ppm~2500ppm、好ましくは1300ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのフェノール性OH基含有量を有する。フェノール性OH基は、IR分光法によって決定するのが好ましい。本発明の文脈において、ppmは、特に明記しない限り、重量部を意味すると理解される。
【0118】
オリゴカーボネート、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン又はポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーについて本発明の文脈で報告されるモル質量の決定に使用される方法は、Currenta GmbH & Co. OHGからいつでも請求に応じて利用可能なCurrenta GmbH & Co. OHGの方法番号2301-0257502-09Dである。
【0119】
本発明の文脈において、以下の式:
Mw(オリゴカーボネート)(g/mol)=160799×(溶液粘度-1)exp(1.3862)
によってオリゴカーボネートのモル質量を算出することも可能である。
【0120】
1.08~1.22の相対溶液粘度を有するオリゴカーボネートを本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に用いる場合が更に好ましい。ここで、相対溶液粘度(ηrel;eta relとも称される)は、ジクロロメタン中、5g/lの濃度にて25℃でウベローデ粘度計を用いて決定するのが好ましい。
【0121】
オリゴカーボネートの製造に好ましいジフェノールは、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0122】
特に好ましいジフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、ハイドロキノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン及び2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0123】
オリゴカーボネートは、特にジフェノールモノマー構成単位としてのビスフェノールAと炭酸ジフェニル(DPC)とをベースとしたホモオリゴカーボネートである。このホモオリゴカーボネートが末端基としてフェノールを含む場合が非常に特に好ましい。
【0124】
末端基としてフェノールを有するオリゴカーボネート(フェニル末端オリゴカーボネート)も好ましい。tert-ブチルフェノール及びクミルフェノールが更に可能な末端基である。
【0125】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、好ましくは以下の構造(4)~(7)の少なくとも1つ、特に好ましくは2つ以上を含む:
【化2】
ここで、フェニル環は、互いに独立してC1~C8アルキル、ハロゲン、好ましくはC1~C4アルキル、特に好ましくはメチルで一置換又は二置換されていてもよく、Xは単結合、C1~C6アルキレン、C2~C5アルキリデン又はC5~C6シクロアルキリデン、好ましくは単結合又はC1~C4アルキレン、特に好ましくはイソプロピリデンを表し、構造単位(4)~(7)の総量(好ましくは定量的HPLCを用いた全加水分解により決定される)は、一般に50ppm~1000ppmの範囲、好ましくは80ppm~850ppmの範囲である。このためまた、本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、好ましくは上述の構造(4)~(7)の少なくとも1つ、特に好ましくは2つ以上を含む。
【0126】
再配置構造の量を決定するために、それぞれのポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを全加水分解に供し、式(4a)~式(7a)の対応する分解生成物を形成し、その量をHPLCによって決定する。これは例えば以下のように達成することができる:ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーサンプルを、ナトリウムメトキシドを用いて還流下で加水分解する。対応する溶液を酸性化し、濃縮乾固する。乾燥残渣をアセトニトリルに溶解し、式(4a)~式(7a)のフェノール化合物を、UV検出を伴うHPLCを用いて決定し、ここで、式(4a)の化合物は、式(4)の化合物の分解生成物であり、式(5a)の化合物は、式(5)の化合物の分解生成物であり、式(6a)の化合物は、式(6)の化合物の分解生成物であり、式(7a)の化合物は、式(7)の化合物の分解生成物であり、これらの場合の全てにおいて、Xはイソプロピリデンと仮定される:
【化3】
【0127】
このように遊離した式(4a)の化合物の量は、好ましくは10ppm~500ppm、特に好ましくは30ppm~300ppmである。
【0128】
このように遊離した式(5a)の化合物の量は、好ましくは0ppm(すなわち、10ppmの検出限界未満)~100ppm、特に好ましくは1ppm~50ppmである。
【0129】
このように遊離した式(6a)の化合物の量は、好ましくは1ppm(すなわち、10ppmの検出限界未満)~100ppm、より好ましくは1ppm~50ppmである。
【0130】
このように遊離した式(7a)の化合物の量は、好ましくは10ppm(すなわち、10ppmの検出限界)~300ppm、好ましくは20ppm~250ppmである。
【0131】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B)
本発明に従って使用されるポリシロキサンは、ヒドロキシアリール末端である。これは、ポリシロキサンの少なくとも1つの末端、好ましくは少なくとも2つの末端、特に好ましくは全ての末端(3つ以上の末端が存在する場合)がヒドロキシアリール末端基を有することを意味する。
【0132】
成分Bは、式(1):
【化4】
(式中、
は水素又はC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、好ましくは水素、メトキシ又はメチルであり、
、R、R及びRは、各々互いに独立してC~Cアルキル又はC~C12アリール、好ましくはメチル又はフェニルであり、
Yは単結合、SO-、-S-、-CO-、-O-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C~C12アリーレンであり、任意にヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合していてもよく、又はC~Cアルキルによって一置換若しくは多置換されていてもよいC~Cシクロアルキリデンラジカルであり、好ましくは単結合、-O-、イソプロピリデン、又はC~Cアルキルによって一置換若しくは多置換されていてもよいC~Cシクロアルキリデンラジカルであり、
Vは酸素、C~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくは酸素又はCアルキレンであり、
p、q及びrは、各々独立して0又は1であり、
q=0である場合、Wは単結合、好ましくは同時にr=0であり、
q=1かつr=0の場合、Wは酸素、C~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくは酸素又はCアルキレンであり、
q=1かつr=1の場合、W及びVは、各々独立して酸素又はC~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくはCアルキレンであり、
ZはC~Cアルキレン、好ましくはCアルキレンであり、
oは10~500、好ましくは10~100の反復単位の平均数であり、
mは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1.5~5の反復単位の平均数である)のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンであるのが好ましい。一般式(1a)の2つ以上のシロキサンブロックがテレフタル酸及び/又はイソフタル酸を介して互いに連結して、エステル基を形成するジフェノールを使用することも同様に可能である。
【0133】
式(2)及び式(3):
【化5】
(式中、R1は水素、C~Cアルキル、好ましくは水素又はメチル、特に好ましくは水素であり、
各R2は、独立してアリール又はアルキル、好ましくはメチルであり、
Xは単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン又はC~C12アリーレンであり、任意にヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合していてもよく、
Xは、好ましくは単結合、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C~C12シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-であり、特に好ましくは、Xは単結合、イソプロピリデン、C~C12シクロアルキリデン又は酸素であり、非常に特に好ましくはイソプロピリデンであり、
nは10~400、好ましくは10~100、特に好ましくは15~50の平均数であり、
mは1~10、好ましくは1~6、特に好ましくは1.5~5の平均数である)の(ポリ)シロキサンが特に好ましい。
【0134】
シロキサンブロックは、同様に好ましくは以下の構造:
【化6】
から誘導することができ、ここで、式(VII)、式(VIII)及び式(IX)におけるaは、10~400、好ましくは10~100、特に好ましくは15~50の平均数を表す。
【0135】
ここで、一般式(VII)、一般式(VIII)又は一般式(IX)の少なくとも2つの同一の又は異なるシロキサンブロックが、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を介して互いに連結して、エステル基を形成する場合も同様に好ましい。
【0136】
式(1a)において、p=0であり、VがCアルキレンであり、r=1であり、ZがCアルキレンであり、R及びRがメチルであり、q=1であり、WがCアルキレンであり、m=1であり、Rが水素又はC~Cアルキル、好ましくは水素又はメチルであり、R及びRが各々互いに独立してC~Cアルキル、好ましくはメチルであり、oが10~500である場合も同様に好ましい。
【0137】
式(1)~式(3)のいずれかによるヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの製造は、例えば欧州特許出願公開第0122535号、米国特許出願公開第20130267665号又は国際公開第2015/052229号に記載されている。
【0138】
式(1)、式(2)又は式(3)、或いは式(VII)又は式(VIII)のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、いずれの場合もオリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量の合計をベースとして0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~40重量%、特に好ましくは2重量%~20重量%、非常に特に好ましくは2.5重量%~10重量%の量で用いられる。
【0139】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー、特にポリカーボネートについて既知の方法で任意の所望の成形体に加工することができる。
【0140】
これに関連して、本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物は、ホットプレス、紡糸、ブロー成形、熱成形、押出し又は射出成形によって、例えば製造品、成形体又は成形品(成形部品としてまとめられる)に変換することができる。多層システムにおける使用も興味深い。本発明に従って得ることができる組成物の適用は、例えば多成分射出成形において、又は共押出層の基材として用いることができる。しかしながら、適用は、例えばフィルムとのラミネーション又は溶液でのコーティングによる、既成の本体に対するものであってもよい。
【0141】
基層と任意の外層(単数/複数)とから構成されるシート又は成形体(多層システム)は、(共)押出し、直接スキニング、直接コーティング、インサート成形、インモールドコーティング、又は当業者に既知の他の好適な方法によって製造することができる。
【0142】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物、特にポリカーボネート組成物は、既知の芳香族ポリカーボネートがこれまで使用されており、離型特性の改善に加えた良好な流動性、低温で高い靱性及びより良好な耐薬品性が更に必要とされるいずれの分野にも、例えば大型自動車の外装部品及び外装用の制御ボックス、シート、ツインウォールシート、電気部品及び電子部品、並びに光学記憶媒体の製造に用いることができる。このため、本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、IT分野ではコンピュータハウジング及びマルチメディアハウジング、携帯電話ハウジングに、家庭分野では洗濯機又は食器洗い機等に、スポーツ分野では、例えばヘルメット用の材料として用いることができる。
【実施例
【0143】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明をこれらの実施例に限定することは何ら意図されない。ここで、下記の決定方法が、反対の記載がない限り、本発明における対応する全てのパラメーターに用いられる。
【0144】
相対溶液粘度
相対溶液粘度(ηrel;eta relとも称される)はジクロロメタン中、5g/lの濃度にて25℃でウベローデ粘度計を用いて決定した。
【0145】
原子間力顕微鏡法(AFM)によるポリシロキサンドメインサイズの評価
ポリシロキサンドメインサイズを原子間力顕微鏡法によって決定した。この目的で、それぞれのサンプル(押出バッチにおいてはペレット材料の形態)を、ウルトラミクロトームを用いて窒素冷却(-196℃)下で切断した。BrukerのD3100 AFM顕微鏡を使用した。AFM画像は、室温(25℃、相対湿度30%)で記録した。「ソフト間欠接触モード」又は「タッピングモード」を測定に用いた。約2.8Nm-1のばね定数及び約75kHzの共振周波数を有する「タッピングモードカンチレバー」(Nanoworldのpointprobe)をサンプルの走査に使用した。タッピング力は、標的振幅と自由振動振幅(空気中で自由振動するプローブチップの振幅)との比率によって制御する。サンプリングレートは1Hzに設定した。表面形態を記録するために、位相差画像及びトポグラフィー画像を2.5μm×2.5μmの領域で記録した。ポリシロキサンドメインは、Olympus SIS画像処理ソフトウェア(Olympus Soft Imaging Solutions GmbH、48149、ドイツ、ミュンスター)を用い、位相差画像から明暗コントラストにより自動的に評価した。ポリシロキサンドメインの直径は、切断により見られるポリシロキサンドメインの断面の円相当投影面積の直径により決定した。画像評価の分解能は12nmであった。
【0146】
出発物質:
オリゴカーボネート(成分A)
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用した出発物質は、フェニル末端基及びフェノール性OH末端基を有し、1.17の相対溶液粘度を有する直鎖ビスフェノールAオリゴカーボネートであった。このオリゴカーボネートは、UV安定剤、離型剤又は熱安定剤等の任意の添加剤を何ら含有しなかった。オリゴカーボネートは、国際公開第02085967号に記載されている溶融トランスエステル化方法によって調製され、最初の横型反応器からの出口で即座に取り出された。オリゴカーボネートは、0.16%のフェノール性末端基含有量を有する。
【0147】
オリゴカーボネートは、使用前に空気循環乾燥機において120℃で少なくとも2時間乾燥させた。
【0148】
相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)
用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、14mg KOH/g~20mg KOH/gのヒドロキシ含有量及び350mPas~650mPasの粘度(23℃)を有する、nが25~32であり、mが2.5~4の範囲である(R=H、R=メチル;X=イソプロピリデン)、式(3)のビスフェノールA末端ポリジメチルシロキサンであった。ポリシロキサンに安息香酸ナトリウムを混入し、ナトリウム含有量は、0.3ppm~1.5ppmである。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン9部に対し、相溶化剤としてシロキサンDow Corning(商標)40-001(Dow Corning Corporation)を1部添加する。
【0149】
相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)
用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、14mg KOH/g~20mg KOH/gのヒドロキシ含有量及び350mPas~650mPasの粘度(23℃)を有する、nが25~32であり、mが2.5~4の範囲である(R=H、R=メチル;X=イソプロピリデン)、式(3)のビスフェノールA末端ポリジメチルシロキサンであった。ポリシロキサンに安息香酸ナトリウムを混入し、ナトリウム含有量は、0.8ppm~1.3ppmである。
【0150】
正確に1つの特殊縮合反応器を用いた実施例7及び実施例8(本発明)の実験セットアップ
図4は、正確に1つの特殊縮合反応器、このセットアップにおいては正確に1つの薄膜蒸発器を、重縮合によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用する実施形態における本発明による方法の工程(1)~(5)である、本発明による方法の実施形態の1つに関する実験のための実験セットアップを示す。
【0151】
オリゴカーボネート(成分A)及び相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を、ペレット材料の形態で重量計量天秤4を用いて物理的混合物として可塑化押出機1に導入し、そこで溶融させた。
【0152】
真空ポンプ8を用いて薄膜蒸発器2を排気した。オフガスを凝縮器9に通し、そこで凝縮性構成要素、特にフェノールが分離された。得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、ギヤポンプ3を介して薄膜蒸発器2から排出させ、ダイプレート(図示せず)を通して紡糸し、ペレット化した。
【0153】
薄膜蒸発器2は、0.5mの反応チャンバ内表面積を有していた。薄膜蒸発器2の反応チャンバ内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによってワイピングされた。
【0154】
正確に2つの特殊縮合反応器を用いた実施例9及び実施例10(本発明)の実験セットアップ
図1は、正確に2つの特殊縮合反応器、このセットアップにおいては正確に2つの薄膜蒸発器を、重縮合によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用する実施形態における本発明による方法の工程(1)~(5)である、本発明による方法の実施形態の1つに関する実験のための実験セットアップを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、ペレット材料の形態で重量計量天秤4を用いて可塑化押出機1に導入し、溶融させた。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B)を液体形態でリザーバ容器6に供給し、ポンプ7を介して可塑化押出機1に連続的に計量供給した。可塑化押出機1へのヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの計量供給は、オリゴカーボネートの溶融物中、すなわち押出機1の可塑化ゾーンの下流で行った。可塑化押出機により、成分A及び成分Bの予備混合を行った。混合物は、INDAG DLS/M 007ダイナミックミキサー5に送られた。ミキサーは500rpmで運転した。得られた溶融混合物は、続いて第1の薄膜蒸発器2に送られた。真空ポンプ9を用いて第1の薄膜蒸発器2を排気した。オフガスを凝縮器8に通し、そこで凝縮性構成要素、特にフェノールが分離された。第1の薄膜蒸発器2から排出させた後、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び未変換オリゴカーボネート及び未変換ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する得られた反応混合物は、ギヤポンプ3により溶融物導管を介して第2の薄膜蒸発器2’に送られた。第2の薄膜蒸発器2’の後、得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、ギヤポンプ3’を用いてダイプレート(図示せず)を通して紡糸し、ペレット化した。第2の薄膜蒸発器2’も真空ポンプ9’を介して排気し、凝縮器8’においてオフガスの凝縮性構成要素、特にフェノールを分離した。
【0155】
2つの薄膜蒸発器2及び2’は各々、0.5mの反応チャンバ内表面積を有していた。2つの薄膜蒸発器2及び2’の反応チャンバ内表面積は各々、周縁に多数のワイパーブレード要素、特に正確に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによってワイピングされた。
【0156】
二軸押出機を用いた実験セットアップ
(比較例3及び比較例4、並びに比較例1及び比較例2に使用する中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のため)
実験セットアップのスキームは、図2から明らかである。
【0157】
図2は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のためのスキームを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、重量フィーダー2を介して二軸押出機1に計量供給した。押出機(Leistritz Extrusionstechnik GmbH、ニュルンベルクのZSE 27 MAXX)は、蒸気の除去のための真空ゾーンを有する共回転二軸押出機1であった。二軸押出機1は、11個のバレルセクション(a~k)からなっていた。図2を参照されたい。オリゴカーボネート(成分A)の添加は、バレルセクションaにおいて差動計量天秤2を介して行い、オリゴカーボネートの溶融は、バレルb及びcにおいて行った。バレルセクションd及びeは、液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B)を組み込むためにも使用した。バレルセクションe、g、i及びjには、縮合生成物、特にフェノールを除去するための脱気口を設けた。バレルセクションeを第1の真空ステージに割り当て、バレルセクションg、i及びjを第2の真空ステージに割り当てた。第1の真空ステージにおける圧力は、特に明記しない限り、45mbara~65mbaraであった。第2の真空ステージにおける圧力は、1mbara未満であった。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B)を初めにタンク3に充填し、計量ポンプ4を介して二軸押出機1に導入した。真空ポンプ5及び6を介して負圧を発生させた。蒸気を二軸押出機1から引き出し、2つの凝縮器7及び8に通し、そこで縮合生成物、特にフェノールが凝縮された。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの溶融ストランドを水浴9に通し、造粒機10によって粉砕した。
【0158】
高粘度反応器を用いた実験セットアップ
(比較例5及び比較例6のため、並びに発明例7~発明例10の予備段階として)
実験セットアップのスキームは、図3から明らかである。
【0159】
図3は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のためのスキームを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、重量供給手段4を介して二軸押出機1に計量供給した。二軸押出機1(Leistritz Extrusionstechnik GmbH、ニュルンベルクのZSE 27 MAXX)は、蒸気の除去のための真空ゾーンを有する共回転二軸押出機であった。二軸押出機1は、11個のバレルセクション(a~k)からなっていた。図3を参照されたい。オリゴカーボネートの添加は、バレルセクションaにおいて行い、このオリゴカーボネートの溶融は、バレルセクションb及びcにおいて行った。液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B)の添加は、バレルセクションdにおいて行った。バレルセクションe及びfは、液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを組み込むために使用した。バレルセクションg、h、i及びjには、縮合生成物を除去するための脱気口を設けた。バレルセクションg及びhを第1の真空ステージに割り当て、バレルセクションi及びjを第2の真空ステージに割り当てた。第1の真空ステージにおける圧力は、特に明記しない限り、250mbara~500mbaraであった。第2の真空ステージにおける圧力は、1mbara未満であった。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを初めにタンク6に充填し、計量ポンプ7を介して二軸押出機1に導入した。2つの真空ポンプ8を介して負圧を発生させた。蒸気を二軸押出機1から引き出し、2つの凝縮器9に回収した。このように脱気され、部分的に凝縮された溶融物を、二軸押出機1のバレルセクションkから導管を介して高粘度反応器2に送った。
【0160】
高粘度反応器2は、水平かつ軸方向に平行に配置された2つの逆回転ローターを有する自浄式装置であった。このセットアップは、欧州特許出願公開第0460466号に記載されており、その図7を参照されたい。用いた高粘度反応器2は、924mmの長さで187mmのバレル直径を有していた。高粘度反応器2の内部は、44.6リットルの全容積を有していた。高粘度反応器2は、同様に真空ポンプ8及び凝縮器9に接続されていた。高粘度反応器2の圧力は、0.1mbara~5mbaraであった。反応の終了後に、得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、排出スクリュー3を介して排出させ、続いて(水浴10及び造粒機11を介して)ペレット化した。
【0161】
比較例1:
回転ディスク反応器を用いた実験
図2による実験セットアップを、初めに中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用した。この目的で、1.17の相対溶液粘度を有するオリゴカーボネート(成分A)9.5kg/hを二軸押出機1のバレルaに計量供給した(図2を参照されたい)。相溶化剤と、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaとを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を、二軸押出機1のバレルdに0.475kg/hで導入した。二軸押出機1は、400rpmの速度で運転した。
【0162】
押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルfは260℃、バレルg及びhは270℃、バレルiは275℃、バレルjは285℃、バレルkは295℃。40mbaraの圧力をバレルeにかけた。0.6mbaraの圧力をバレルg、i及びjにかけた。中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを323℃の溶融温度で押出し、水浴10に通し、ペレット化した。
【0163】
このように製造した10kgの中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、それぞれ直径800mmの2枚のディスクを有するUhde Inventa Fischer GmbHの回転ディスク反応器において溶融させた。溶融物を回転ディスク反応器において300℃及び1mbaraで87分間、2.5rpmのローター速度で重縮合した。フェノールを連続的に除去した。得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを排出させ、ペレット化した。このように得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、eta rel 1.26の相対溶液粘度を有していた。
【0164】
反応器のディスクは、反応混合物を適用する表面積が2mである。反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、3.4kg/mhである。
【0165】
比較例2:
回転ディスク反応器を用いた実験
比較例1と同様に二軸押出機1を用いて製造した中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー(図2)10kgを、比較例1の回転ディスク反応器において溶融させた。中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを回転ディスク反応器において300℃及び1mbarで110分間、2.5rpmの速度で重縮合した。フェノールを連続的に除去した。得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを排出させ、ペレット化した。このように得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、eta rel 1.33の相対溶液粘度を有する。
【0166】
比較例1及び比較例2のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリシロキサンドメインのサイズを、AFMを用いて更に上で説明したように決定した。比較例1のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして96.8%であることが見出された。比較例2のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいては、12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合は、12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして98.9%である。経験から、特に200nm以上のサイズのポリシロキサンドメインが射出成形品において著しい表面欠陥を引き起こすことが示された。200nm以上のサイズのポリシロキサンドメインは、射出成形品の美的外観の悪化を引き起こす恐れもある。このため、比較例1及び比較例2の製品は、小さなポリシロキサンドメインの高い割合という要件を満たしていない。
【0167】
反応器のディスクは、反応混合物を適用する表面積が2mである。反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、2.7kg/mhである。
【0168】
比較例3:
二軸押出機を用いた実験
図2による実験セットアップを用いて、1.2kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を、重量計量添加手段2を介して二軸押出機1に計量供給した。押出機の速度は、190rpmに設定した。用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaを含有する、相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)0.060kg/hを、ポンプ4を介して二軸押出機1のバレルdに導入した。40mbara~50mbaraの負圧をバレルeにかけ、0.5mbaraの負圧をバレルg、i及びjの各々にかけた。押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルfは260℃、バレルg及びhは270℃、バレルiは275℃、バレルjは285℃、バレルkは295℃。
【0169】
重縮合に使用可能なバレルg~kを備える押出機のセクションにおいては、0.229mの表面積が反応混合物の適用に利用可能である。この表面積は、2本のスクリューシャフト及びバレルボアの表面積から構成される。反応混合物を適用する表面積をベースとした押出機の適用速度は、5.5kg/mhであった。
【0170】
得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、明るい色をしており、5.8cm/10分/eta rel 1.318のMVRを有する。
【0171】
比較例4
二軸押出機を用いた実験
図2による実験セットアップを用いて、2.0kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を、重量計量添加手段2を介して二軸押出機1に計量供給した。二軸押出機1の速度は、380rpmに設定した。用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)0.10kg/hを、ポンプ4を介して二軸押出機1のバレルdに導入した。40mbara~50mbaraの負圧をバレルeにかけ、0.5mbaraの負圧をバレルg、i及びjの各々にかけた。押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルfは260℃、バレルg及びhは270℃、バレルiは275℃、バレルjは285℃、バレルkは295℃。
【0172】
得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、色が薄く、1.270のeta relを有していた。
【0173】
重縮合に利用される押出機の領域における反応混合物を適用する表面積は、0.229mである。押出機の反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、9.2kg/mhであった。
【0174】
比較例3及び比較例4においては、二軸押出機を方法工程2に使用した。比較例3では、小さなポリシロキサンドメインの高い割合が達成可能であると実証することができた。比較例3から、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが200nm以上のドメインを含まないことが示される。しかしながら、反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、比較例3においては非常に低い。フェノールを排除した重縮合プロセスは概して、気相への物質移動に利用可能な表面積に応じて拡大するため、このプロセスは、100kg/h~500kg/h超のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを1つの製造ラインで連続的に製造する工業規模には移行することができない。
【0175】
比較例4においてより高い処理量を可能にするために、スクリュー速度を2倍超高め、反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度を約80%高めた。ドメインが大きくなることが表1から明らかである。500nm超のドメインでさえも発生する。粘度も低下する。すなわち、処理量を更に増加させると、粘度及びポリシロキサンドメインサイズの点で製品品質が悪化することが予想される。反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、比較例3よりも高いが、それでも満足のいくものではない。さらに、品質要件は満たされない。特許文献3を考慮すると、最後の方法工程に押出機を使用する場合、工業プロセスへのスケールアップが不可能である/工業プロセスに必要な処理量では製品品質が悪すぎるということは、ここでは特に驚くべきことである。
【0176】
このため、比較例3及び比較例4から、二軸押出機を用いたプロセスが不経済であることが示される。このため、驚くべきことに、特許文献3に記載されているポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのためのプロセスの構成が良好な製品品質をもたらさず、経済的でもないことが示された。
【0177】
比較例5
高粘度反応器を用いた実験
図3による実験セットアップを用いて、オリゴカーボネート(成分A)28.6kg/h、及び相溶化剤と、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaとを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)1.43kg/hを二軸押出機1に計量供給した。二軸押出機1の速度は、850rpmであった。押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルfは260℃、バレルg及びhは270℃、バレルiは275℃、バレルjは285℃、バレルkは295℃。140mbaraの圧力をバレルeにかけ、0.8mbaraの圧力をバレルg、i及びjの各々にかけた。二軸押出機1からの出口温度は、308℃であった。押出ポリマー溶融物を、パイプ導管を介して高粘度反応器2に移した。高粘度反応器2の速度は、30rpmであった。高粘度反応器2のバレル温度は、330℃であった。高粘度反応器2の内部の圧力は、0.5mbaraであった。1.376の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。反応混合物を適用する、重縮合に利用可能な反応器の内表面積は3mである。反応混合物を適用する内表面積をベースとした適用速度は、10kg/mhである。
【0178】
比較例6
高粘度反応器を用いた実験
図3による実験セットアップを用いて、オリゴカーボネート(成分A)23.8kg/h、及び相溶化剤と、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaとを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)1.19kg/hを二軸押出機1に計量供給した。押出機の速度は、700rpmであった。二軸押出機1の押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルfは260℃、バレルg及びhは270℃、バレルiは275℃、バレルjは285℃、バレルkは295℃。バレルe並びにバレルg、i及びjの各々は、標準圧力であった。溶融物を高粘度反応器2に移した。速度は45rpmであった。高粘度反応器2のバレル温度は、310℃であった。高粘度反応器2のバレルに加えた圧力は、1.6mbara未満であった。1.31の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0179】
反応混合物を適用する高粘度反応器の表面積をベースとした適用速度は、8.25kg/mhであった。
【0180】
比較例5及び比較例6は、高粘度反応器を用いて行った。比較例5は、小さなポリシロキサンドメインの高い割合を達成することができたが、過度に高い粘度を代償としていた。表1から明らかなように、粘度を低下させることができたが、それにより大きなポリシロキサンドメインの割合が著しく増加した。このことは、このタイプの反応器が、所望の特徴を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造には適さないことを示している。加えて、反応混合物を適用する表面積をベースとした適用速度は、本実施例によるプロセスを、100kg/h~500kg/h超のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを1つの製造ラインで連続的に製造する工業規模に変換する場合、非常に大きな反応器の使用を必要する。したがって、このプロセスは不経済である。
【0181】
図4による正確に1つの薄膜蒸発器を用いた実施例7(本発明)
図2による実験セットアップにおいて、初めに1.17の相対粘度を有するオリゴカーボネート(成分A)21kg/hを、二軸押出機1のバレルaに計量供給し、相溶化剤と、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaとを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を二軸押出機1のバレルdに1.05kg/hで導入した。二軸押出機1は、500rpmの速度で運転した。二軸押出機1の押出機バレルを以下のスキームに従って加熱した:バレルaは非加熱、バレルbは170℃、バレルc及びdは240℃、バレルeは250℃、バレルf~kは260℃。負圧はかけない。負圧がないこということは、例えばフェノールのような形成された任意の反応生成物が、排出されるとしても、ごく僅かしか排出されないことを意味するため、本質的に、反応性結合を有しないオリゴカーボネートとポリシロキサンとの物理的混合物(ブレンド)が形成される。
【0182】
このようにして形成されるオリゴカーボネートとポリシロキサンとのブレンドを可塑化押出機1内で溶融させ、ギヤポンプ(図示せず)を用いて図4による薄膜蒸発器2に搬送する。ブレンドを約265℃の溶融温度及び20kg/hの適用速度で薄膜蒸発器2に導入し、334℃のバレル温度で凝縮させる。薄膜蒸発器2における圧力は、0.4mbaraであった。1.30の相対溶液粘度を有する薄い色のペレット材料が得られた。
【0183】
薄膜蒸発器2は、反応混合物を適用する内表面積が0.5mであった。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2の内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって500rpmの速度でワイピングされた。
【0184】
反応混合物を適用する薄膜蒸発器の反応チャンバの内表面積をベースとした適用速度は、40kg/mhであった。
【0185】
図4による正確に1つの薄膜蒸発器を用いた実施例8(本発明)
実施例7に記載したのと全く同じように、初めにオリゴカーボネート(成分A)、及び相溶化剤と、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5.22×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして1.2ppmのNaとを含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)のブレンドを製造した。これを可塑化押出機1内で溶融させ、ギヤポンプ(図示せず)を用いて図4による薄膜蒸発器2に搬送する。ブレンドを薄膜蒸発器2に18kg/hの処理量及び約265℃の溶融温度で供給し、334℃のバレル温度で凝縮させる。薄膜蒸発器2における圧力は、0.4mbarであった。薄膜蒸発器2は、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積が0.5mであった。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2の反応チャンバの内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって450rpmの速度でワイピングされた。
【0186】
1.285の相対溶液粘度を有する薄い色のペレット材料が得られた。
【0187】
反応混合物を適用する薄膜蒸発器の反応チャンバの内表面積をベースとした適用速度は、36kg/mhであった。
【0188】
発明例7及び発明例8の2つから、反応混合物を適用する内表面積をベースとして高い適用速度を有する特殊縮合反応器により、本発明によるプロセスパラメーターが観察される一方で、本発明の範囲内の溶液粘度を有するブロックコポリマーを製造することが可能となることが示される。上記コポリマーは、同時に小さなポリシロキサンドメインの高い割合を有する。
【0189】
比較例と比較して著しく高く、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積をベースとした適用速度から、より低い反応チャンバ内表面積で、したがって、より経済的な工業規模のプロセスを実現することが可能であることが示される。
【0190】
図1による正確に2つの薄膜蒸発器を用いた実施例9(本発明)
36.9kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を可塑化押出機1内で可塑化し、相溶化剤を含まないが、用いた反応混合物1kg当たり3.92×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして0.9ppmのNaを含むヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)2kg/hを可塑化押出機1内で溶融物に組み込み、予備混合物を製造した。更なる均質化のために、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの予備混合物を、500rpmの速度で運転するINDAG MaschinenbauのDLM/S 007ダイナミックミキサー5に通した。284℃の温度で、予備混合物は続いて、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積が0.5mであり、上半分が310℃、下半分が300℃のバレル温度及び1mbaraの圧力で運転する第1の薄膜蒸発器2に入った。得られた溶融物を排出させ、ギヤポンプ3を用いて、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積が0.5mである第2の薄膜蒸発器2’に搬送した。
【0191】
第2の薄膜蒸発器2’は、1mbaraの圧力で運転した。薄膜蒸発器2’の反応チャンバの上半分を320℃、下半分を317℃に加熱した。溶融物をこのように更に凝縮させ、ギヤポンプ3’を介して361℃で排出させた。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2の反応チャンバの内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって330rpmの速度でワイピングされた。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2’の反応チャンバの内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって220rpmの速度でワイピングされた。
【0192】
反応混合物を適用する両方の薄膜蒸発器の反応チャンバの総内表面積をベースとした適用速度は、38.9kg/mhであった。
【0193】
1.324の相対溶液粘度を有する明るいポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0194】
図1による正確に2つの薄膜蒸発器を用いた実施例10(本発明)
41kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を可塑化押出機1内で可塑化し、相溶化剤を含まず、用いた反応混合物1kg当たり3.92×10-5molのNaに相当する、用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして0.9ppmのNaを添加し、19.2mg KOH/gのOH価を有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)2.32kg/hを可塑化押出機1内で溶融物に組み込み、予備混合物を製造した。更なる均質化のために、オリゴカーボネートと、相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの予備混合物を、500rpmの速度で運転するINDAG MaschinenbauのDLM/S 007ダイナミックミキサー5に通した。275℃の温度で、予備混合物は続いて、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積が0.5mであり、均一に290℃のバレル温度及び1mbaraの圧力で運転する第1の薄膜蒸発器2に入った。得られた溶融物を排出させ、ギヤポンプ3を用いて、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積が0.5mである第2の薄膜蒸発器2’に搬送した。
【0195】
第2の薄膜蒸発器2’は、1mbaraの圧力で運転した。第2の薄膜蒸発器2’は、均一に310℃に加熱した。溶融物をこのように更に凝縮させ、ギヤポンプ3’を介して325℃で排出させた。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2の反応チャンバの内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって189rpmの速度でワイピングされた。反応混合物を適用する薄膜蒸発器2’の反応チャンバの内表面積は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって202rpmの速度でワイピングされた。
【0196】
1.315の相対溶液粘度を有する明るいポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0197】
反応混合物を適用する両方の薄膜蒸発器の反応チャンバの総内表面積をベースとした適用速度は、43.3kg/mhであった。
【0198】
本発明の実験9及び10により、反応混合物を適用する反応チャンバの内表面積をベースとして高い適用速度を有する2つの直列に配置された特殊縮合反応器を用いても目的が達成されることが実証される。所望の溶液粘度と小さなポリシロキサンドメインの高い割合との有利な組合せもここで達成される。さらに、助触媒の用量を他の例と比較して25%低減することが可能であった。2つの直列に配置された特殊縮合反応器を使用する場合、結果として所望の溶液粘度と小さなポリシロキサンドメインの高い割合との有利な組合せを失うことなく、相溶化剤を避けることも可能であった。
【0199】
【表1】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確に1つの特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からの前記オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を、前記正確に1つの特殊縮合反応器に導入する方法工程、
なお、前記特殊縮合反応器は、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、前記反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記特殊縮合反応器の入口から前記特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、前記正確に1つの特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの前記反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での前記少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【請求項2】
直列に配置された多数の特殊縮合反応器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを提供する方法工程、
(2)工程(1)からの前記オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを混合して、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(3)オリゴカーボネートとヒドロキシルアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を、直列に配置された多数の特殊縮合反応器の最初の反応器に導入する方法工程、
なお、直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の各々が、周縁に少なくとも1つのスプレッダーを有するシャフトを有する反応チャンバを備え、該スプレッダーは外縁を有し、該少なくとも1つのスプレッダーの外縁は、前記反応チャンバの外壁から規定の距離で回転する;
(4)工程(3)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、最初の特殊縮合反応器の入口から直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の最後の特殊縮合反応器の出口まで搬送される;
(5)工程(4)から得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記最後の特殊縮合反応器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(4)において、直列に配置された前記多数の特殊縮合反応器の最後の反応器で以下の方法条件:
(4.a)0.01mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.b)280℃~380℃、好ましくは290℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.c)1m/s~5m/sの前記反応器の軸方向に延びる回転対称の反応チャンバ内表面積の周縁での前記少なくとも1つのスプレッダーの周速度、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が20kg/mh~100kg/mhであり、
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(2)で提供された前記反応混合物を工程(3)に従って導入する前に、この反応混合物に、前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量をベースとして、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-7mol~1×10-3molの量の助触媒、
好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-6mol~5×10-4molの量の助触媒、
特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり5×10-6mol~2×10-4molの量の助触媒、
非常に特に好ましくは、
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン1kg当たり1×10-5mol~1×10-4molの量の助触媒、
を混入し、
この助触媒が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする1つ以上の助触媒から選択される、方法。
【請求項3】
前記助触媒を工程(2)の前に既に前記ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに指定の量で添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(4)において、前記単一の特殊縮合反応器又は直列に配置された多数の特殊縮合反応器の前記最後の特殊縮合反応器で以下の方法条件:
(4.a)特殊反応反応器の前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
本発明による方法の第1の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方のポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有し、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有し、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する前記反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の工程(4)において、好ましくは以下の方法条件:
前記最初の特殊縮合反応器では、
(4.1.a)1mbara~10mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.1.b)270℃~350℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.1.c)10Hz~30Hzの前記反応混合物の表面更新周波数、
前記最後の特殊縮合反応器では、
(4.2.a)0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraの前記反応チャンバ内の圧力、
(4.2.b)280℃~370℃の前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度、
(4.2.c)10Hz~30Hzの前記反応混合物の表面更新周波数、
が観察され、
前記反応チャンバへの反応混合物の適用速度が30kg/mh~60kg/mhである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
以下の特徴:
ポリシロキサン含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%であること、
12nm以上かつ200nm未満のポリシロキサンドメインの数的割合が、いずれの場合も12nm以上のポリシロキサンドメインの総数をベースとして99.0%超、好ましくは99.2%超、特に好ましくは99.5%超、非常に特に好ましくは99.9%超であること、
1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.325の相対溶液粘度、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項11】
成形体の製造への請求項1に記載のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用。
【国際調査報告】