IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシーの特許一覧

特表2024-527004熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品
<>
  • 特表-熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品 図1
  • 特表-熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品 図2
  • 特表-熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品 図3
  • 特表-熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品 図4
  • 特表-熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】熱伝導性ポリマー組成物及びそれから製造される物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240711BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240711BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08K7/06
C08K3/20
C08K3/28
C08K3/38
C08L87/00
C08L81/02
C08L77/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504511
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022069463
(87)【国際公開番号】W WO2023006409
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,626
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アニム-ダンソ, エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AC062
4J002AC072
4J002BB032
4J002BB052
4J002BB062
4J002BB072
4J002BB082
4J002BB122
4J002BB142
4J002BB152
4J002BB172
4J002BF032
4J002BN152
4J002BN162
4J002BP012
4J002CD192
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF161
4J002CH091
4J002CL001
4J002CL031
4J002CN011
4J002CN031
4J002DA017
4J002DA066
4J002DC006
4J002DD036
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE146
4J002DE236
4J002DF016
4J002DG026
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DK006
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD040
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD170
4J002FD200
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
ポリマー組成物、及びそれらから製造される物品が提供される。本ポリマー組成物は、25~50重量%の熱可塑性ポリマーと;10~45重量%の熱伝導性充填材と;15~30重量%の炭素繊維と;2~8重量%の強化剤と;5重量%未満の添加剤とを含む。本ポリマー組成物は、実質的に、ガラス繊維を含まない。本明細書に記載されるポリマー組成物は、驚くべきことに、本強化剤を含まない及び/又はその中で炭素繊維がガラス繊維で置き換えられている類似のポリマー組成物と比べて大幅に改善された熱伝導性を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25~50重量%の熱可塑性ポリマーと;
10~45%重量%の熱伝導性充填材と;
15~30重量%の炭素繊維と;
2~8重量%の強化剤と;
5重量%未満の添加剤と
を含むポリマー組成物であって、
重量%は、前記ポリマー組成物の総重量を基準とし、
前記ポリマー組成物は、実質的に、ガラス繊維を含まず、
前記ポリマー組成物の面貫通熱伝導率は、少なくとも1.5W/(m・K)である、
ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物の前記面貫通熱伝導率は、少なくとも2W/(m・K)である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物の前記面貫通熱伝導率は、少なくとも2.25W/(m・K)である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物の前記面貫通熱伝導率は、前記強化剤を含まない類似のポリマー組成物よりも少なくとも40%大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性充填材は、無機酸化物又は無機窒化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性充填材は、窒化ホウ素である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールスルフィド)、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(アリールエーテルケトン)、液晶ポリマー、及びポリエステルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーはポリ(アリーレンスルフィド)である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーはポリフェニレンスルフィドである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーはポリアミドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記強化剤は官能化ポリマー骨格から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記強化剤の前記ポリマー骨格は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー骨格から選択される、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記強化剤は、エチレンと、アクリルエステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー;エチレンと、アクリル酸ブチルエステルとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーからなる群から選択される官能化強化剤である、請求項11又は12のポリマー組成物。いくつかの実施形態において、前記強化剤は、エチレンと、アクリルエステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー;及びエチレンと、アクリル酸ブチルエステルとグリシジルメタクリレートとのコポリマーである。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項15】
前記物品は、電子デバイス、自動車、モーター、電池、LED、電子ボード、電気自動車充電スタンド、真空若しくは真空システム又はこれらのいずれかの構成部品からなる群から選択される、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月26日出願の米国仮特許出願第63/225626号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
同様に熱伝導性でありながら、有利な機械的特性を有するポリマー組成物が提供される。それらから製造される物品も提供される。特に、本ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー及び熱伝導性充填材と、炭素繊維と強化剤との組合せを含む。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、モーター、電池、LED、電子回路ボード等などの、多くの用途に使用されている。これらの多くで、ポリマー組成物は、望ましくは、任意の発熱構成部品から熱を消散させるのを助けるために機能する。そのような用途に使用されるポリマー組成物はまた、多数の熱サイクルを通してそれらを一貫して機能させる機械的特性及び/又は寸法安定性を有することが望ましい。
【0004】
純粋に熱伝導性の充填材が、典型的には、これらの環境での使用を意図するポリマー組成物に使用されてきた。しかしながら、熱伝導性充填材のみを含むポリマー組成物は、面内及び面貫通(through-plane)熱伝導性を制限している。これは、充填材に固有の熱伝導性制限及び/又はポリマー/充填材界面における熱抵抗のためであり得る。結果として、所望の伝導性を達成するためにポリマー組成物でのより高濃度の純粋に熱伝導性の充填材の使用は、予期される又は所望の影響を及ばさない可能性がある。
【0005】
望ましくはポリマー組成物の機械的性能を損なうことなく、熱伝導性及び耐熱劣化性の両方を示すポリマー組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
- 25~50重量%の熱可塑性ポリマーと;
- 10~45重量%の熱伝導性充填材と;
- 15~30重量%の導電性炭素繊維と;
- 2~8重量%の強化剤と;
- 5重量%未満の添加剤と
を含む、ポリマー組成物であって、
- 重量%は、ポリマー組成物の総重量を基準とし、
- ポリマー組成物は、実質的に、ガラス繊維を含まず、
- ポリマー組成物の面貫通熱伝導率は、少なくとも1.5W/(m・K)である
ポリマー組成物が提供される。
【0007】
i)電子デバイス、ii)自動車、iii)モーター、iv)電池、v)LED、vi)電子ボード、vii)電気自動車充電スタンド、viii)真空若しくは真空システム等の構造部品又は機能部品からなる群から例えば選択される、本ポリマー組成物を含む物品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】様々な比較(C1~C3)及び発明(E1~E3)ポリマー組成物の面内熱伝導率(W/m・K)を例示する棒グラフである。
図2】様々な比較(C1~C3)及び発明(E1~E3)ポリマー組成物の引張弾性率(GPa)を例示する棒グラフである。
図3】様々な比較(C1~C3)及び発明(E1~E3)ポリマー組成物の曲げ弾性率(GPa)を例示する棒グラフである。
図4】様々な比較(C1~C3)及び発明(E1~E3)ポリマー組成物の、強化剤なしの配合物に対して、強化剤ありの配合物によって示される引張破断歪みのパーセント変化を例示する棒グラフである。
図5】様々な比較(C1~C3)及び発明(E1~E3)ポリマー組成物の、強化剤なしの配合物に対して、強化剤ありの配合物によって示される曲げ破断歪みのパーセント変化を例示する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
熱可塑性ポリマーと、少なくとも1種の熱伝導性充填材と、炭素繊維と強化剤とを含むポリマー組成物が提供される。重要なことに、ポリマー組成物は、実質的に、ガラス繊維を含まない。驚くべきことに、本明細書に記載されるポリマー組成物は、強化剤なしの類似のポリマー組成物及び/又はその中で炭素繊維がガラス繊維で置き換えられている類似のポリマー組成物と比べて大幅に改善された熱伝導性を有することが見いだされた。更に、炭素繊維と強化剤とを含むポリマー組成物の伸び/破断歪みは、ポリマー組成物の引張及び曲げ弾性率が強化剤なしの類似のポリマー組成物と比べて実質的に維持されながら、増加する。
【0010】
本明細書において、示された構成要素(例えばガラス繊維)を「実質的に含まない」ポリマー組成物は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満である示された構成要素の濃度を有する。本明細書において、重量%は、特に明記しない限り、ポリマー組成物の総重量に対するものである。
【0011】
本明細書において、「実質的に維持される」は、強化剤なしの類似のポリマー組成物において測定される特性と比べて、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、又は1%以下、特性が変化していることを示すことを意味する。
【0012】
いかなる記載も、たとえ特定の実施形態に関連して記載されていても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、及び他の実施形態と交換可能である。更に、要素又は構成要素のリストに列挙されたいかなる要素又は構成要素も、そのようなリストから省かれ得る。
【0013】
端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数及びサブ範囲並びに範囲の端点を含む。
【0014】
本明細書において、特定の繰り返し単位のモル%は、特に明記しない限り、示されたポリマーにおける繰り返し単位の総数に対して決定される。
【0015】
固体形態から液体形態への熱可塑性ポリマーの状態の変化をもたらすために要する熱の形態でのエネルギーの量は、融解熱(「ΔH」)であり、状態のこの変化が起こる温度は、融解温度(Tm)と呼ばれる。ΔH及びTmは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0016】
ガラス転移温度(Tg)は、非晶質材料(又は半結晶性材料内の非晶質領域)が、硬質の及び比較的脆い状態から粘性のある又はゴム状の状態に移行する温度である。Tgは、ASTM E1356,「Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperatures by Differential Scanning Calorimetry」に従って測定することができる。
【0017】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0018】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」、並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語には、本明細書において、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分が含まれる。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル及びシクロプロピルである。
【0019】
同様に、特に具体的に述べない限り、用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を指す。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合には、「アルキルアリール」と言われ得る。芳香族基は、例えば、メチル又はエチルなどの、1つ以上のC1~C6アルキル基で置換され得る。
【0020】
アリール基はまた、1つ以上のヘテロ原子、例えば、N、O、又はSを含み得、そのような場合には、適切に「ヘテロアリール」基と言われ得る。そのようなヘテロ芳香環はまた、他の芳香族系に縮合し得る。ヘテロ芳香環の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
特に具体的に記述しない限り、各アルキル、アリール及びヘテロアリール基は、非置換であっても、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ又はC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基は、立体的に適合性であり、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0022】
熱可塑性ポリマー
ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーを含む。一般に、いかなる熱可塑性ポリマーも、本明細書に記載される原理の適用から恩恵を受け得るが、高い熱伝導性及び電気抵抗が望まれる適用での使用を熟慮されるものが、特に興味がある。ポリマー組成物で使用するための好適な熱可塑性ポリマーとしては、ポリ(アリーレンスルフィド)、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(アリールエーテルケトン)、液晶ポリマー、及び/又はポリエステルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、15重量%~60重量%、20重量%~55重量%、又は25重量%50重量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、上で列挙されたものを含むが、それらに限定されない、複数の熱可塑性ポリマーを含むことができる。そのような実施形態において、熱可塑性ポリマーの全濃度は、上で与えられた範囲内である。
【0025】
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、半結晶性である。本明細書において、半結晶性ポリマーは、少なくとも5J/gである融解熱(「ΔH」)を有する。したがって、いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、少なくとも5J/g、少なくとも10J/g、少なくとも20J/g、又は少なくとも25J/gのΔH(20℃/分の加熱速度での)を有する。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、90J/g以下、80J/g以下、70J/g以下又は60J/g以下のΔHを有する。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、5J/g~90J/g、10J/g~80J/g、20J/g~70J/g又は25J/g~60J/gのΔHを有する。
【0026】
ポリ(アリーレンスルフィド)
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)である。本明細書において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、少なくとも50モル%の式(I):
-[-Ar-S-]- (I)
(式中、Arは、アリーレンである)
の繰り返し単位(RPAS)を含む任意のポリマーを指す。
【0027】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位(RPAS)は、以下の群の式:
【化1】
(式中、
- Rは、各場合に、ハロゲン、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基及びC~C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され;
- Tは、結合、-CO-、-SO-、-O-、-C(CH、-C(CF-、フェニル及び-CH-からなる群から選択され;
- iは、各場合に、独立して、0~4の整数であり;
- jは、各場合に、独立して、0~3の整数である)
から選択される式で表される。
【0028】
繰り返し単位(RPAS)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、R以外の部分に対して1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態において、フェニレン部分は、それぞれ独立して、R以外の部分に対して1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくはフェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有する。
【0029】
一実施形態において、式(I)の-Ar-は、フェニル基であり、その結果、繰り返し単位(RPAS)は、式(II)で表される。好ましくは、式(I)の-Ar-は、式(II)で表され、式中、iは0であり、フェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有し、その結果、繰り返し単位(RPAS)は、以下の式(II’):
【化2】
で表される。
【0030】
そのような実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、ポリフェニレンスルフィドである。
【0031】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)における式(II)、(II’)、(III)及び/又は(IV)の繰り返し単位(RPAS)の濃度は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%である。そのような実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、本質的に、繰り返し単位(RPAS)からなる。他の実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)における式(II)、(II’)、(III)及び/又は(IV)の繰り返し単位(RPAS)の濃度は、100モル%であり、これらの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、繰り返し単位(RPAS)からなる。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、少なくとも10,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、少なくとも25,000g/モル、少なくとも30,000g/モル、又は少なくとも35,000g/モルの重量平均分子量(「M」)を有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、150,000g/モル以下、100,000g/モル以下、90,000g/モル以下、85,000g/モル以下、又は80,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、10,000g/モル~150,000g/モル、20,000g/モル~100,000g/モル、25,000g/モル~90,000g/モル、30,000g/モル~85,000g/モル、又は35,000g/モル~80,000g/モルのMを有する。ポリ(アリーレンスルフィド)のMは、4-クロロナフタレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、少なくとも200℃、少なくとも220℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃の融解温度(「T」)を有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、350℃以下、320℃以下、300℃以下、又は285℃以下のTを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、200℃~350℃、220℃~320℃、240℃~300℃、又は250℃~285℃のTを有する。
【0034】
ポリ(フェニレンスルフィド)(式(II’)に従うポリ(アリーレンスルフィド))のメルトフローレイト(ASTM D1238、手順Bに従って5kgの重量下で316℃での)は、50~400g/10分、例えば60~300g/10分又は70~200g/10分であり得る。
【0035】
ポリ(アリーレンスルフィド)及びポリ(フェニレンスルフィド)は、公知の方法によって調製することができる。
【0036】
ポリアミド
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド(PA)である。ポリアミドは、少なくとも1つのアミド結合(-CONH-)を有する少なくとも50モル%の繰り返し単位を含むポリマーを指す。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、式(V):
【化3】
(式中、
- Rは、結合、C~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
- Rは、C~C20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- R及びRは、それぞれ独立して、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N又はS)を任意選択的に含み得、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOH)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換され得る)
の繰り返し単位(RPA)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、式(V)におけるRはフェニルであり、ポリアミドは、式(VI):
【化4】
に従ったポリフタルアミドである。
【0038】
いくつかの実施形態において、ポリアミドは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%の、式(V)及び/又は(VI)に従った繰り返し単位(RPA)を含む。そのような実施形態において、ポリ(アリーレンスルフィド)は、本質的に、式(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位(RPA)からなる。他の実施形態において、ポリアミドは、繰り返し単位の100モル%が、式(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位(RPA)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリアミドは、式(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位(RPA)からなる。
【0039】
いくつかの実施形態において、ポリアミドは、少なくとも15,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、少なくとも25,000g/モル、少なくとも30,000g/モル、又は少なくとも35,000g/モルのMを有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、150,000g/モル以下、100,000g/モル以下、90,000g/モル以下、85,000g/モル以下、又は80,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、15,000g/モル~150,000g/モル、20,000g/モル~100,000g/モル、25,000g/モル~90,000g/モル、30,000g/モル~85,000g/モル、又は35,000g/モル~80,000g/モルのMを有する。ポリアミドのMは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、ポリアミドは、少なくとも200℃、少なくとも220℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、370℃以下、360℃以下、350℃以下、又は340℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリアミドは、200℃~370℃、220℃~360℃、240℃~350℃、又は250℃~340℃のTmを有する。
【0041】
ポリアミド及びポリフタルアミドは、公知の方法によって調製することができる。
【0042】
ポリ(アリールエーテルスルホン)
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。ポリ(アリールエーテルスルホン)には、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン及びポリエーテルスルホンが含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、少なくとも50モル %の式(VII):
【化5】
[式中、
- Rは、各場合に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- iは、各Rについて、独立して、0~4の整数であり、
- Tは、結合、スルホン基[-S(=O)-]、及び式(VIII)
- C(R)(R)- (VIII)
(式中、
- Rは、各場合に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択される)
の基からなる群から選択される]
の繰り返し単位(RPAES)を含む任意のポリマーを指す。
【0044】
Tは、好ましくは、結合(すなわち、ポリアリールエーテルスルホンは、ポリフェニルスルホンである)、スルホン基(すなわち、ポリアリーレンエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホンである)又は式(VIII)(式中、各Rは、メチル基である)に従った基(すなわち、ポリアリールエーテルスルホンは、ポリスルホンである)である。
【0045】
繰り返し単位(RPAES)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、R以外の部分に対して1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態において、フェニレン部分は、それぞれ独立して、R以外の部分に対して1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)における繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%は、繰り返し単位(RPAES)である。そのような実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、本質的に、繰り返し単位(RPAES)からなる。他の実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰り返し単位の100モル%が繰り返し単位(RPAES)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰り返し単位(RPAES)からなる。
【0047】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、30,000g/モル~80,000g/モル、例えば35,000g/モル~75,000g/モル又は40,000g/モル~70,000g/モルのMwを有し得る。ポリ(アリールエーテルスルホン)のMwは、ポリスチレン標準を使って、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Agilent Technologies製の2×5μ混合Dカラム(ガードカラム付き);流量:1.5mL/分、注入量:20μLの0.2w/v%試料溶液)によって測定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0049】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、公知の方法によって調製することができる。
【0050】
ポリスルホン
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリスルホン(PSU)である。本明細書において、ポリスルホンは、少なくとも50モル%の式(VII-A):
【化6】
(式中、
- Rは、各場合に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- iは、各Rについて、独立して、0~4の整数である)
の繰り返し単位(RPSU)を含む任意のポリマーを指す。
【0051】
一実施形態において、iは、式(VII-A)における各Rについて0である。この実施形態によれば、繰り返し単位(RPSU)は、式(VII-B):
【化7】
の単位である。
【0052】
繰り返し単位(RPSU)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、R以外の部分に対して1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態において、フェニレン部分は、それぞれ独立して、R以外の部分に対して1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有する。
【0053】
いくつかの実施形態において、ポリスルホンにおける繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%は、式(VII-A)及び/又は(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)である。そのような実施形態において、ポリスルホンは、本質的に、式(VII-A)及び/又は(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)からなる。他の実施形態において、ポリスルホンは、繰り返し単位の100モル%が、式(VII-A)及び/又は(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリスルホンは、式(VII-A)及び/又は(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)からなる。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリスルホンのMwは、30,000~80,000g/モル、例えば35,000~75,000g/モル又は40,000~70,000g/モルである。ポリスルホンのMwは、ポリスチレン標準を使って、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Agilent Technologies製の2×5μ混合Dカラム(ガードカラム付き);流量:1.5mL/分、注入量:20μLの0.2w/v%試料溶液)によって測定することができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、ポリスルホンは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0056】
ポリスルホンは、当技術分野において周知の方法によって調製することができる。
【0057】
ポリフェニルスルホン
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)である。本明細書において、ポリフェニルスルホンは、少なくとも50モル%の式(VII-C):
【化8】
の繰り返し単位(RPPSU)を含む任意のポリマーを指す。
【0058】
いくつかの実施形態においては、ポリフェニルスルホンにおける繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、又は全ての少なくとも99.9モル%は、繰り返し単位(RPPSU)である。そのような実施形態において、ポリフェニルスルホンは、本質的に、繰り返し単位(RPPSU)からなる。他の実施形態において、ポリフェニルスルホンは、繰り返し単位の100モル %が、繰り返し単位(RPPSU)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリフェニルスルホンは、繰り返し単位(RPPSU)からなる。
【0059】
いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホンは、少なくとも20,000g/モル、少なくとも30,000g/モル、又は少なくとも40,000g/モルのMを有する。いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホンは、約100,000g/モル以下、又は約90,000g/モル以下、又は約80,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホンは、20,000g/モル~100,000g/モル、30,000g/モル~90,000g/モル、又は40,000g/モル~80,000g/モルのMを有する。ポリフェニルスルホンのMは、ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホン、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリフェニルスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0061】
ポリフェニルスルホンは、公知の方法によって調製することができる。
【0062】
ポリエーテルスルホン
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリエーテルスルホン(PES)である。本明細書において、ポリエーテルスルホンは、少なくとも50モル%の式(VII-D):
【化9】
の繰り返し単位(RPES)を含む任意のポリマーを指す。
【0063】
いくつかの実施形態においては、ポリエーテルスルホンにおける繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は99.9モル%は、繰り返し単位(RPES)である。そのような実施形態において、ポリエーテルスルホンは、本質的に、繰り返し単位(RPES)からなる。
【0064】
他の実施形態において、ポリエーテルスルホンは、繰り返し単位の100モル%が繰り返し単位(RPES)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリエーテルスルホンは、繰り返し単位(RPES)からなる。
【0065】
いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、少なくとも20,000g/モル、少なくとも30,000g/モル、又は少なくとも40,000g/モルのMを有する。いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、100,000g/モル以下、90,000g/モル以下、又は80,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、20,000g/モル~100,000g/モル、30,000g/モル~90,000g/モル、又は40,000g/モル~80,000g/モルのMを有する。ポリエーテルスルホンのMは、ポリスチレン標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態において、ポリエーテルスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0067】
ポリエーテルスルホンは、公知の方法によって調製することができる。
【0068】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)である。
【0069】
ポリ(アリールエーテルケトン)は、Ar’-C(=O)-Ar*基(ここで、Ar’及びAr*は、同じ、又は異なる芳香族基である)を含む少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを指す。
【0070】
本明細書において、繰り返し単位(RPAEK)は、式(VIII)~(XI):
【化10】
(式中、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;置換できる各基が置換されている又は非置換であり得、置換されている場合、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、並びにアミン及び第四級アンモニウム基を含み得ることが理解され;
- iは、独立して、0~4の整数である)
の繰り返し単位である。
【0071】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、繰り返し単位(RPAEK)においてRとは異なる他の部分に対して1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態において、フェニレン部分は、それぞれ独立して、R以外の部分に対して1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有する。
【0072】
繰り返し単位(RPAEK)のいくつかの実施形態において、iは、式(VIII)~(XI)において各Rについて0である。この実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)は、式(VIII-A)~(XI-A):
【化11】
で表される。
【0073】
繰り返し単位の少なくとも50%が式(VIII)、(XI)、(VIII-A)及び/又は(XI-A)の繰り返し単位(RPAEK)であるポリマーはまた、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)の属に属することが当業者によって理解される。
【0074】
ある実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルケトン)における繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%は、式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)である。そのような実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、本質的に、式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)からなる。
【0075】
他の実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、繰り返し単位の100モル%が、式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルケトン)は、式(VIII)、式(IX)、式(X)及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)からなる。
【0076】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、少なくとも30,000g/モル、少なくとも40,000g/モル、又は少なくとも50,000g/モルのMを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、200,000g/モル以下、175,000g/モル以下、又は150,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、30,000g/モル~200,000g/モルの、40,000g/モル~175,000g/モル、50,000g/モル~150,000g/モルのMを有する。
【0077】
ポリ(アリールエーテルケトン)のMは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、少なくとも270℃、少なくとも280℃、少なくとも290℃、又は少なくとも300℃のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、400℃以下、390℃以下、380℃以下、又は370℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリ(アリールエーテルケトン)は、270℃~400℃、280℃~390℃、290℃~380℃、又は280℃~370℃のTmを有する。
ポリ(アリールエーテルケトン)及びポリ(エーテルエーテルケトン)は、公知の方法によって調製することができる。
【0079】
液晶ポリマー
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、液晶ポリマーである。液晶ポリマーは、以下のモノマー:テレフタル酸、芳香族ジオール、テレフタル酸とは異なる第1の芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシカルボン酸の重縮合から形成される。
【0080】
いくつかの実施形態において、芳香族ジオールは、式(XII)及び(XIII):
HO-Ar-OH (XII)
HO-Ar-T-Ar-OH (XIII)
(式中、
- Ar~Arは、ハロゲン、C~C15アルキル、及びC~C15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、C~C30アリール基から独立して選択され;
- Tは、結合、O、S、-SO-、-C(=O)-、及びC~C15アルキルからなる群から選択される)
から選択される式で表される。
【0081】
いくつかの実施形態において、芳香族ジオールは、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,4-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェノール、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(エタン-1,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4’-オキシジフェノール、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-チオジフェノール、ナフタレン-2,6-ジオール、及びナフタレン-1,5-ジオールからなる群から選択される。好ましくは、芳香族ジオールは4,4’-ビフェノールである。
【0082】
いくつかの実施形態において、第1の芳香族ジカルボン酸は、独立して、式(XIV)及び(XV):
HOOC-Ar-COOH (XIV)
HOOC-Ar-T-Ar-COOH (XV)
(式中、Ar~Arは、上で定義された通りであり、独立して選択され;Tは、結合、O及びSからなる群から選択される)
から選択される式で表される。
【0083】
いくつかの実施形態において、第1の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、4,4’-(エチレンジオキシ)二安息香酸、4,4’-スルファンジイル二安息香酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、及びナフタレン-2,3-ジカルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、第1の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、及びナフタレン-2,3-ジカルボン酸からなる群から選択される。最も好ましくは、第1の芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸である。
【0084】
いくつかの実施形態において、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、式(XVI)及び(XVII):
HO-Ar-COOH (XVI)
HO-Ar-Ar-COOH (XVII)
(式中、Ar~Arは、上で定義された通りであり、独立して選択される)
から選択される式で表される。
【0085】
いくつかの実施形態において、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、及び4’-ヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及び5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸からなる群から選択される。最も好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸である。
【0086】
本明細書において、LCPは、前述のモノマーから形成され、少なくとも50%の式(XVIII)~(XI):
【化12】
(式中、Ar~Ar、T及びTは、上で定義された通りであり、独立して選択される)
の繰り返し単位(RLCP)を有する任意のポリマーを指す。
【0087】
当業者は、式(XVIII)に従うRLCPがテレフタル酸から形成され;式(XIX)及び(XX)に従うRLCPが、それぞれ、式(XII)及び(XIII)に従うモノマーから形成され;式(XXI)及び(XXII)に従うRLCPが、それぞれ、式(XIV)及び(XV)に従うモノマーから形成され;式(XXIII)及び(XXIV)に従うRLCPが、式(XVI)及び(XVII)に従うモノマーから形成されることを認めるであろう。したがって、式(XII)~(XVII)のモノマーについてのAr~Ar、T及びTの選択は、また、式(XIX)~(XIXV)に従う繰り返し単位RLCPについてのAr~Ar、T及びTを選択する。好ましくは、式(XVIII)に従う繰り返し単位RLCPは、テレフタル酸の重縮合によって形成され、式(XIX)及び(XX)に従う繰り返し単位RLCPは、4,4’-ビフェノールの重縮合によって形成され、式(XXI)及び(XXII)に従う繰り返し単位RLCPは、イソフタル酸の重縮合によって形成され、式(XXIII)及び(XXIV)に従う繰り返し単位RLCPは、4-ヒドロキシ安息香酸の重縮合によって形成される。
【0088】
いくつかの実施形態において、式(XVIII)~(XXIV)に従う繰り返し単位RLCPの合計濃度は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.9モル%である。
【0089】
いくつかの実施形態において、式(XVIII)に従う繰り返し単位RLCPの濃度は、5モル%~30モル%、好ましくは10モル%~20モル%である。いくつかの実施形態において、式(XIX)及び/又は(XX)に従う繰り返し単位RLCPの濃度は、10モル%~30モル%、好ましくは15モル%~25モル%である。いくつかの実施形態において、式(XXI)及び(XXII)に従う繰り返し単位RLCPの濃度は、1モル%~20モル%、好ましくは1モル%~10モル%である。いくつかの実施形態において、式(XXIII)及び(XXIV)に従う繰り返し単位RLCPの濃度は、35モル%~80モル%、好ましくは45モル%~75モル%、最も好ましくは50モル%~70ル%である。
【0090】
いくつかの実施形態において、LCPは、少なくとも20,000g/モルのMwを有する。いくつかの実施形態において、LCPは、80,000g/モル以下のMwを有する。いくつかの実施形態において、LCPは、20,000g/モル~80,000g/モルのMwを有する。Mwは、ASTM D5296に従って、及びヘキサフルオロイソプロパノール溶媒及びポリ(メチルメタクリレート)標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、LCPは、少なくとも220℃、少なくとも250℃、又は少なくとも280℃のTmを有する。いくつかの実施形態において、LCPは、420℃以下、390℃以下、又は360℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態において、LCPは、220℃~420℃、250℃~390℃、又は280℃~360℃のTmを有する。
【0092】
液晶ポリマーは、公知の方法によって調製することができる。
【0093】
ポリエステル
いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリエステルである。本明細書において、ポリエステルは、エステル基(-C(=O)-O-)を含有する少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPE)を含む任意のポリマーを指す。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、式(XXV):
【化13】
(式中、
- R1及びR2は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択され;
- Tは、結合、又は一価のアルキル基と一価の脂環式基とを含有する置換脂環式基であり;
- iは、0~4の整数であり;
- jは、0~2の整数であり;
- nは、1~12の整数である)
の繰り返し単位(RPE)を含む。
【0094】
繰り返し単位(RPE)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、R以外の部分に対して1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態において、フェニレン部分は、それぞれ独立して、R以外の部分に対して1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部分は、R以外の部分に対して1,4-結合を有する。
【0095】
いくつかの実施形態において、i及びjは、それぞれ、ゼロであり、Tは、結合であり、及び/又はnは、2若しくは4である。いくつかのそのような実施形態において、ポリエステルポリマーは、ポリトリメチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは1である);ポリエチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは2である)又はポリブチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは4である)である。
【0096】
いくつかの実施形態において、ポリエステルにおける繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%は、繰り返し単位(RPE)である。そのような実施形態において、ポリエステルは、本質的に、繰り返し単位(RPE)からなる。他の実施形態において、ポリエステルは、繰り返し単位の100モル %が、繰り返し単位(RPE)であるようなものである。そのような実施形態によれば、ポリエステルは、繰り返し単位(RPE)からなる。
【0097】
いくつかの実施形態において、ポリエステルは、少なくとも10,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、又は少なくとも30,000g/モルのMを有する。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、100,000g/モル以下、90,000g/モル以下、又は80,000g/モル以下のMを有する。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、10,000g/モル~100,000g/モル、20,000g/モル~90,000g/モル、又は30,000g/モル~80,000g/モルのMを有する。ポリエステルのMは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)で測定することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、ポリエステルは、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、より好ましくは少なくとも270℃、最も好ましくは少なくとも280℃のTmを有する。いくつかの実施形態において、ポリエステルポリマーは、最高でも350℃、好ましくは最高でも340℃、より好ましくは最高でも330℃、最も好ましくは最高でも320℃の融点を有する。いくつかの実施形態において、ポリエステルは、250℃~350℃、260℃~340℃、270℃~330℃、又は280℃~320℃のTmを有する。
【0099】
ポリエステルは、公知の方法によって調製することができる。
【0100】
熱伝導性充填材
ポリマー組成物は、熱伝導性充填材を含む。本明細書において、熱伝導性充填材は、ASTM E1461-13によって測定されるように、少なくとも0.5W/(m・K)、少なくとも2W/(m・K)、又は少なくとも4W/(m・K)の熱伝導率を有する。有用な熱伝導性充填材としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び二酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素;金属及び金属合金;炭化ケイ素粉末;硫化亜鉛、炭酸マグネシウム及びフッ化カルシウム粉末等を含むが、それらに限定されない、無機酸化物及び窒化物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0101】
好ましくは、熱伝導性充填材は、無機酸化物又は窒化物からなる群から選択され、より好ましくは、熱伝導性充填材は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素及びこれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、窒化ホウ素が特に好ましい。
【0102】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の熱伝導性充填材を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、50重量%以下、45重量%以下又は40重量%以下の熱伝導性充填材を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、5重量%~50重量%、10重量%~45重量%、又は15重量%~40重量%の熱伝導性充填材を含む。
【0103】
炭素繊維
ポリマー組成物は、炭素繊維を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の炭素繊維を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下の炭素繊維を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、5重量%~40重量%、又は10重量%~35重量%、又は15重量%~30重量%の炭素繊維を含む。
【0104】
炭素繊維は、一般に、円筒形であり、長さ(「L」、炭素繊維の長い軸に沿った)及び炭素繊維の長さに垂直である断面直径(「D」、簡単に直径と言われる)で特徴付けられる。
【0105】
いくつかの実施形態において、炭素繊維は、少なくとも5μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも150μm又は少なくとも175μmの平均長さを有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下又は225μm以下の平均長さを有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、5μm~400μm、50μm~350μm、100μm~300μm、150μm~250μm又は175μm~225μmの平均長さを有する。
【0106】
いくつかの実施形態において、炭素繊維は、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも7μm又は少なくとも8μmの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、20μm以下、15μm以下、13μm以下又は12μm以下の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、1μm~20μm、5μm~15μm、7μm~13μm又は8μm~12μmの平均直径を有する。
【0107】
いくつかの実施形態において、炭素繊維の長さは、その直径よりも著しく大きい。いくつかの実施形態において、炭素繊維は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30又は少なくとも50の、長さと最長直径との平均比(L/D)として定義される、アスペクト比を有する。
【0108】
強化剤
ポリマー組成物は強化剤を含む。強化剤は、Tgが、例えば室温未満、0℃未満又は-25℃未満でさえある、低いTgを一般に有する、非晶質ポリマーである。その低いTgの結果として、強化剤は、典型的には、室温でエラストメリックである。強化剤は、官能化されたポリマー骨格であることができる。
【0109】
強化剤のポリマー骨格は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン、エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー骨格から選択することができる。
【0110】
強化剤が官能化されている場合、骨格の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合によって又は更なる成分でのポリマー骨格のグラフト化によって生じることができる。
【0111】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリルエステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー;エチレンと、アクリル酸ブチルエステルとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。いくつかの実施形態において、強化剤は、エチレンと、アクリルエステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマーレート;又はエチレンと、アクリル酸ブチルエステルとグリシジルメタクリレートとのコポリマーである。
【0112】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の強化剤の濃度は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも2.5重量%である。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の強化剤濃度は、10重量%以下、9.5重量%以下、9重量%以下、8.5重量%以下、又は8重量%以下である。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の強化剤濃度は、0.1重量%~10重量%、0.5重量%~9.5重量%、1重量%~9重量%、1.5重量%~8.5重量%、又は2重量%~8重量%である。
【0113】
添加剤
ポリマー組成物はまた、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤並びに酸化防止剤などの、当技術分野において一般に使用される1種以上の添加剤を含み得る。本明細書において、添加剤は、熱伝導性充填材、炭素繊維及び強化剤を除く。
【0114】
添加剤を含む実施形態において、全添加剤濃度は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満である。
【0115】
ポリマー組成物
本ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱伝導性充填材と、炭素繊維と強化剤とを含む。また、前に述べられたように、ポリマー組成物は、実質的にガラス繊維を含まない。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の炭素繊維及び強化剤の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の重量比は、1:3.5以下、1:3.4以下、1:3.3以下、又は1:3.2以下である。
【0117】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比は、少なくとも1:1、少なくとも1:1.1、少なくとも1:1.2、又は少なくとも1:1.3である。
【0118】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物中の炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比は、1:1.0~1:3.5、1:1.1~1:3.4、1:1.2~1:3.3、又は1:1.3~1:3.2である。
【0119】
上で述べられたように、炭素繊維と強化剤との組合せは、強化剤なしの及び/又はその中で炭素繊維がガラス繊維で置き換えられている類似のポリマー組成物と比べてポリマー組成物の面貫通熱伝導性に驚くべき向上を提供する。この結果は、強化剤が非晶質であり、そして熱伝導性を低下させると当業者によって理解されているので、特に驚くべきである。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、少なくとも1.5W/(m・K)、少なくとも1.75W/(m・K)、少なくとも2W/(m・K)、少なくとも2.25W/(m・K)、少なくとも2.5W/(m・K)、少なくとも2.75W/(m・K)、少なくとも3W/(m・K)、少なくとも3.25W/(m・K)、又は少なくとも3.5W/(m・K)の面貫通熱伝導率を示す。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、炭素繊維を含むが強化剤を含まない類似のポリマー組成物の熱伝導率よりも、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、又は少なくとも70%超の面貫通熱伝導率の増加を示す。面貫通熱伝導率は、ASTM E1461-13,「Standard Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method」に従ったフラッシュ法によって測定することができる。
【0120】
熱伝導率向上は、ポリマー組成物の伸びを犠牲にして生じるわけではなく、それは、炭素繊維を含むが強化剤を含まない類似のポリマー組成物と比べて驚くべきことに及び予想外にも増加する。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物の、引張破断歪みか、又は曲げ破断歪みかのどちらかとして測定される、伸びは、炭素繊維を含むが強化剤を含まない類似のポリマー組成物と比べて少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%だけ、又は100%さえも増加する。いくつかの実施形態において、炭素繊維と強化剤とを含むポリマー組成物の伸びは、炭素繊維を含むが、強化剤を含まない類似のポリマー組成物の伸びと比べて、100%超、又は2倍超増加する。
【0121】
炭素繊維と強化剤とを含むポリマー組成物の引張及び曲げ弾性率が、炭素繊維を含むが、強化剤を含まない類似のポリマー組成物と比べて実質的に維持されるという事実は、更に驚くべきである。いくつかの実施形態において、ポリマー組成物の引張及び曲げ弾性率は、炭素繊維を含むが、強化剤なしの類似のポリマー組成物において測定されるその特性の、30%以内、20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、又は1%以内である。
【0122】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、ただ1つの熱可塑性ポリマー及び/又はただ1つの熱伝導性充填材を有するにすぎない。いくつかのそのような実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリフェニルスルフィドか、若しくはポリフタルアミドかのどちらかであり、及び/又は熱伝導性充填材は、窒化ホウ素である。
【0123】
ポリマー組成物の製造方法
ポリマー組成物の製造方法も提供される。
【0124】
ポリマー組成物は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられるが、それらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、ポリマー成分を、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度又は融解温度よりも上に加熱することによって実施される。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口にか、又はバレルにかのいずれかに投入するための手段を備えた押出機が使用される。成分は、同時に、すなわち、1種以上の粉末顆粒の乾燥ブレンドとして供給されてもよいし、又は別々に供給されてもよい。
【0125】
溶融混合中の成分の組合せの順序は、特に限定されない。一実施形態において、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、その後に混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態において、第1のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1種以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするためには、各成分の全所望量が、単一量として混合される必要はない。例えば、1種以上の成分について、部分量を最初に添加し、混合することができ、その後に、残りの一部又は全てを添加し、混合することができる。
【0126】
造形品及び製造方法
本ポリマー組成物を含むフィラメント及び造形品並びにフィラメント及び造形品の製造方法がまた提供される。
【0127】
ポリマー組成物は、多種多様な用途に有用な物品の製造に好適である。例えば、本ポリマー組成物は、i)電子デバイス、ii)自動車、iii)モーター、iv)電池、v)LED、vi)電子ボード、vii)電気自動車充電スタンド、viii)真空若しくは真空システム等の機能部品又は構造部品としての使用にとりわけ好適であり得る。
【0128】
造形品は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形又はブロー成形などの、任意の好適な溶融加工方法を用いてポリマー組成物から製造され得る。
【0129】
造形品はまた、造形品がポリマー組成物から印刷される、付加製造によって製造され得る。
【0130】
付加製造システムは、1つ以上の付加製造技術によって造形体のデジタル表現から造形体を印刷するか又は他の方法で構築するために用いられる。商業的に利用可能な付加製造技術の例としては、押出ベースの技術、選択的レーザー焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム融解、及びステレオリソグラフィプロセスが挙げられる。これらの技術のそれぞれについて、造形体のデジタル表現が最初に多数の水平層へスライスされる。各層について、工具経路が次いで生み出され、それが、所与の層を印刷するために特定の付加製造システムに命令を与える。
【0131】
例えば、押出ベースの付加製造システムにおいて、造形品は、ポリマー組成物のストリップを押し出し、隣接させることによって層ごとに造形品のデジタル表現から印刷され得る。ポリマー組成物は、システムの印刷ヘッドによって運ばれる押出先端部を通して押し出され、x-y面での圧盤上に一連の道として堆積される。押し出された材料は、前に堆積された材料と融合し、それが冷えるにつれて固化する。基材に対する印刷ヘッドの位置は、次いで、z軸(x-y面に垂直の)に沿って増やされ、このプロセスが繰り返されて、デジタル表現に類似する造形品を形成する。押出ベースの付加製造システムの例は、溶融フィラメント製造(「FFF」)である。
【0132】
別の例として、粉末ベースの付加製造システムにおいて、レーザーが、粉末を局部的に焼結させて固体部品にするために用いられる。造形品は、粉末の層を順次堆積し、引き続き画像をその層上へ焼結させるためのレーザパターンによって生み出される。粉末ベースの付加製造システムの例は、選択的レーザー焼結(「SLS」)である。
【0133】
別の例として、造形品は、連続繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)印刷方法を用いて調製することができる。この方法は、熱積層モデリングに基づいており、繊維と樹脂との組合せを印刷する。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態は、押出ベースの付加製造システム(例えば、FFF)、粉末ベースの付加製造システム(例えば、SLS)、又は連続FRTP印刷法によって造形品を形成するためにポリマー組成物の層を印刷することを含む、造形品の製造方法を含む。
【0135】
いくつかの実施形態は、ポリマー組成物を含むフィラメントを含む。好ましくは、フィラメントは、FFFなどの、上記のような付加製造法での使用に好適である。
【0136】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0137】
例示的な実施形態が、これから、以下の非限定的な実施例において説明される。
【実施例
【0138】
熱伝導性及び機械的特性を、様々な実施形態について評価した。
【0139】
出発原料
Solvay Specialty Polymers USA,LLC.製のRYTON(登録商標)PPS。
Momentive Performance Materials Inc.製の、窒化ホウ素。
DreyTek,Inc.製の酸化亜鉛(ZnO)。
宇部マテリアルズ株式会社製の酸化マグネシウム(MgO)。
3B-the fiberglass company製のガラス繊維。
Solvay Cytec製の炭素繊維。
住友化学株式会社製の強化剤。
Nexeo Plastics製の離型剤、HDPE 6007G。
【0140】
ポリマー組成物の配合
各配合物を、48:1のL/D比を有する26mm直径Coperion(登録商標)ZSK-26共回転部分噛合二軸スクリュー押出機を用いて溶融配合した。バレルセクション2~12及びダイを、以下の通りの設定点温度に加熱した:バレル2~6:300℃;バレル7~12:300℃;ダイ:300℃。
【0141】
各場合に、熱可塑性ポリマーを、30~35ポンド/時の範囲のスループット速度で重量測定フィーダーを使用してバレルセクション1において供給した。押出機を、およそ200RPMのスクリュー速度で運転した。真空を、約27インチの水銀の真空レベルでバレルゾーン10において適用した。単一孔ダイを、ポリマー組成物の全てについて用いて直径およそ2.6~2.7mmのフィラメントを生じさせ、ダイから出てくるポリマーフィラメントを水中で冷却し、ペレタイザーに供給して長さおよそ2.7mmのペレットを生み出した。ペレットを乾燥させ、その後射出成形し、試料に適用される試験手順に従った試料にした。
【0142】
機械的特性の評価
以下のISO試験方法を、配合物の機械的特性を評価する際に用いた:
引張特性:ISO 527
曲げ特性:ISO 178
【0143】
試料は、ISO手順に従って調製した。
【0144】
熱特性の評価
面貫通熱伝導率は、ASTM E1461-13,「Standard Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method」に従ったフラッシュ法によって測定した。
【0145】
実験結果
【0146】
【表1】
【0147】
表1は、調製された配合物及びそれらに関して得られたデータを示す。驚くべきことに及び予想外にも、並びに図1にも示されるように、強化剤を含む、及びその中でガラス繊維が炭素繊維で置き換えられたポリマー組成物(発明実施例E1~E4)が、ガラス繊維ありの同じ組成物(比較例C1~C4)と比べて増加した面貫通熱伝導率を示した。図2及び3に示されるように、引張及び曲げ弾性率は、実質的に維持された。
【0148】
更に、本発明のポリマー組成物(E1~E4)は、強化剤なしの同じ組成物(それぞれ、C3、C6、C9及びC11)と比べて伸び(引張及び曲げ破断歪み%)の増加をまた示しながら、これらの驚くべき結果を示した。更に驚くべきことに、並びに図4及び5に示されるように、これらの伸びの増加は、類似の比較試料間、すなわち、ガラス繊維を有し、強化剤を有さない試料(C1、C4及びC7)並びに強化剤と共にガラス繊維を有する試料(C2、C5及びC8)間で見られる伸びの増加よりも実質的に大きかった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】