(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ポリマー組成物及びそれから製造された物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240711BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240711BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08K7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504555
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022069494
(87)【国際公開番号】W WO2023006415
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アニム-ダンソ, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】カーベル, リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF161
4J002CH091
4J002CL001
4J002CL031
4J002CN011
4J002CN031
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD020
4J002FD040
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD116
4J002FD130
4J002FD170
4J002FD200
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
ポリマー組成物、及びそれから製造される物品が提供される。ポリマー組成物は、25~50重量%の熱可塑性ポリマーと、10~45重量%の熱伝導性充填剤と、15~30重量%の導電性炭素繊維と、5重量%未満の添加剤とを含む。ポリマー組成物は、実質的にガラス繊維を含まない。本明細書に記載のポリマー組成物は、驚くべきことに、炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して、大幅に改善された熱伝導率を示す。さらに、炭素繊維はガラス繊維に比べて著しく高い電気伝導性を有するにもかかわらず、ポリマー組成物は、炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して体積抵抗率の目立った損失を有さない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
- 25~50重量%の熱可塑性ポリマーと;
- 10~45重量%の熱伝導性充填剤と;
- 15~30重量%の導電性炭素繊維と;
- 5重量%未満の添加剤と;
を含み、重量%が前記ポリマー組成物の総重量基準であり、
前記ポリマー組成物は実質的にガラス繊維を含まない
ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物中の導電性炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比が1:3.8未満である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性充填剤が無機酸化物又は無機窒化物である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性充填剤が窒化ホウ素である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ASTM D257に従って測定される少なくとも10
9Ω・cmの体積抵抗率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
少なくとも25GPa、好ましくは少なくとも30GPa、より好ましくは少なくとも35GPaの引張弾性率を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
少なくとも25GPa、好ましくは少なくとも30GPa、より好ましくは少なくとも35GPaの曲げ弾性率を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
少なくとも7W/(m・K)、好ましくは少なくとも10W/(m・K)、さらにより好ましくは少なくとも12W/(m・K)、最も好ましくは少なくとも13W/(m・Kの面内熱伝導率を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(アリールスルフィド)、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(アリールエーテルケトン)、液晶ポリマー、及びポリエステルからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーがポリ(アリーレンスルフィド)である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーがポリフェニレンスルフィドである、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーがポリアミドである、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項14】
前記物品が、電子デバイス、自動車、モーター、電池、LED、電子基板、電気自動車充電ステーション、真空若しくは真空システム、又はこれらのいずれかの構成要素からなる群から選択される、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月26日出願の米国仮特許出願第63/225627号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
熱伝導性及び電気抵抗性を有するポリマー組成物が提供される。それから製造された物品も提供される。特に、本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー、及び熱伝導性充填剤と導電性炭素繊維との組み合わせ、を含む。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、モーター、電池、LED、電子回路基板などを含む多くの用途で使用されている。これらの多くでは、ポリマー組成物は、熱を発生する構成要素から熱を放散するのを助けるように機能することが望ましい場合がある。熱伝導性が望まれる場合もあるが、電気伝導性は禁忌であることが多く、そのような用途で使用されるポリマー組成物は、少なくとも1E+8Ω・cmの体積抵抗率を持つことが期待される。
【0004】
これらの環境での使用を目的としたポリマー組成物には、典型的には純粋に熱伝導性である充填剤が使用されてきた。しかしながら、熱伝導性充填剤のみを含むポリマー組成物は、面内及び面直方向の熱伝導率が限定的である。これは、充填剤に固有の熱伝導性の制限、及び/又はポリマー/充填剤界面における熱抵抗に起因すると考えられる。その結果、望まれる導電率を実現するためにポリマー組成物中に純粋に熱伝導性である充填剤を高濃度で使用しても、期待される又は望まれる効果が得られない可能性がある。
【0005】
熱伝導性と電気抵抗性の両方を、望ましくはポリマー組成物の機械的性能を損わずに示すポリマー組成物が求められている。
【発明の概要】
【0006】
ポリマー組成物であって、
- 25~50重量%の熱可塑性ポリマーと;
- 10~45重量%の熱伝導性充填剤と;
- 15~30重量%の導電性炭素繊維と;
- 5重量%未満の添加剤と;
を含み、重量%がポリマー組成物の総重量基準であり、
ポリマー組成物は実質的にガラス繊維を含まない、
ポリマー組成物が提供される。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の導電性炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比は、1:3.8未満である。
【0007】
ポリマー組成物を含む物品も提供され、例えば、i)電子デバイス、ii)自動車、iii)モーター、iv)電池、v)LED、vi)電子基板、vii)電気自動車充電ステーション、viii)真空又は真空システムなどの構造部分又は機能部分からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】様々な比較の(C1~C3)及び本発明の(E1~E3)ポリマー組成物の面内熱伝導率を示す棒グラフである。
【
図2】比較の(C5及びC6)及び本発明の(E1~E4)ポリマー組成物への導電性炭素繊維の添加の効果を示す棒グラフである。
【
図3】様々な比較の(C1~C3)及び本発明の(E1~E3)ポリマー組成物の引張弾性率を示す棒グラフである。
【
図4】様々な比較の(C1~C3)及び本発明の(E1~E3)ポリマー組成物の曲げ弾性率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
熱可塑性ポリマーと、少なくとも1種の熱伝導性充填剤と、導電性炭素繊維とを含むポリマー組成物が提供される。重要なことに、ポリマー組成物は実質的にガラス繊維を含まない。驚くべきことに、本明細書に記載のポリマー組成物は、炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して、大幅に改善された熱伝導性を有することが見出された。また、驚くべきことに、炭素繊維はガラス繊維に比べて著しく高い電気伝導性を有するにもかかわらず、ポリマー組成物は、炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して体積抵抗率の目立った損失を有さなかったことも見出された。さらに、炭素繊維を含むポリマー組成物の引張弾性率及び曲げ弾性率は、炭素繊維をガラス繊維で置き換えた類似のポリマー組成物と比較して驚くほど増加する。
【0010】
本明細書において、示された成分(例えばガラス繊維)を「実質的に含まない」ポリマー組成物は、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の示された成分の濃度を有する。本明細書において、重量%は、特に明記しない限り、ポリマー組成物の総重量に対するものである。
【0011】
たとえ特定の実施形態に関連して記載されていても、あらゆる記載が、本開示の他の実施形態に適用可能であり、また他の実施形態と交換可能である。さらに、要素又は構成要素のリストに列挙されたいかなる要素又は構成要素もそのようなリストから省かれ得る。
【0012】
端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数及び部分範囲並びに範囲の端点を含む。
【0013】
本明細書において、特定の繰り返し単位のmol%は、別段の明示的な指示がない限り、示されたポリマー中の繰り返し単位の総数に対して決定される。
【0014】
熱可塑性ポリマーの固体形態から液体形態への状態変化を引き起こすのに必要な熱の形でのエネルギー量は融解熱(「ΔHf」)であり、この状態変化が起こる温度は溶融温度(Tm)と呼ばれる。ΔHf及びTmは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0015】
ガラス転移温度(Tg)は、非晶質材料(又は半結晶性材料内の非晶質領域)が、硬くて比較的脆い状態から粘性のある又はゴム様の状態に転移する温度である。Tgは、ASTM E1356「Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperatures by Differential Scanning Calorimetry」に従って測定することができる。
【0016】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が含まれる。
【0017】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」並びに「アルコキシ」、「アシル」、及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で使用される場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖、及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。
【0018】
同様に、特に具体的に限定しない限り、用語「アリール」は、フェニル、インダニル、又はナフチル基を指す。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含んでいてもよく、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれる場合がある。例えば、芳香族基は、メチルやエチルなどの1つ以上のC1~C6アルキル基で置換されていてもよい。
【0019】
アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、N、O、又はSも含んでいてもよく、そのような場合には、適切に「ヘテロアリール」基と呼ばれる場合がある。そのようなヘテロ芳香環は、他の芳香族系に縮合していてもよい。ヘテロ芳香環の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル、及びトリアジニル環構造が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
特に具体的に記述しない限り、各アルキル、アリール、及びヘテロアリール基は、無置換であっても、ハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ、又はC6~C15アリールから選択されるがそれらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基が立体的に適合性も有しており、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0021】
熱可塑性ポリマー
ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーを含む。通常、任意の熱可塑性ポリマーが、本明細書に記載の原理の適用から利益を得ることができるが、高い熱伝導性及び電気抵抗性が望まれる用途での使用が想定されるものが特に注目される。ポリマー組成物における使用に適した熱可塑性ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリ(アリーレンスルフィド)、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(アリールエーテルケトン)、液晶ポリマー、及び/又はポリエステルが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、15重量%~60重量%、20重量%~55重量%、又は25重量%~50重量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、上で列挙したものを含むがそれらに限定されない複数の熱可塑性ポリマーを含むことができる。そのような実施形態では、熱可塑性ポリマーの総濃度は上記の範囲内である。
【0024】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは半結晶性である。本明細書において、半結晶性ポリマーは、少なくとも5J/gの融解熱(「ΔHf」)を有する。そのため、いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、少なくとも5J/g、少なくとも10J/g、少なくとも20J/g、又は少なくとも25J/gのΔHf(20℃/分の加熱速度)を有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、90J/g以下、80J/g以下、70J/g以下、又は60J/g以下のΔHfを有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは、5J/g~90J/g、10J/g~80J/g、20J/g~70J/g、又は25J/g~60J/gのΔHfを有する。
【0025】
ポリ(アリーレンスルフィド)
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)である。本明細書で使用されるポリ(アリーレンスルフィド)は、式(I)の繰り返し単位(RPAS)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す:
-[-Ar-S-]- (I)
(式中、Arはアリーレンである)。
【0026】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(R
PAS)は、以下の式の群から選択される式によって表される:
【化1】
(式中、
- Rは、それぞれの場合において、ハロゲン、C
1~C
12アルキル基、C
7~C
24アルキルアリール基、C
7~C
24アラルキル基、C
6~C
24アリーレン基、C
1~C
12アルコキシ基、及びC
6~C
18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、
- Tは、結合、-CO-、-SO
2-、-O-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、フェニル、及び-CH
2-からなる群から選択され;
- iは、それぞれの場合において、独立して0~4の整数であり;
- jは、それぞれの場合において、独立して0~3の整数である)。
【0027】
繰り返し単位(RPAS)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、R以外の部位への1,2-、1,3-、又は1,4-結合を有していてもよい。いくつかの実施形態では、フェニレン部位は、それぞれ独立して、R以外の部位への1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部位は、R以外の部位への1,4-結合を有する。
【0028】
一実施形態では、式(I)の-Ar-はフェニル基であるため、繰り返し単位(R
PAS)は式(II)で表される。好ましくは、式(I)の-Ar-は式(II)で表され、式中のiは0であり、フェニレン部位はR以外の部位への1,4-結合を有し、したがって繰り返し単位(R
PAS)は次の式(II’)で表される:
【化2】
【0029】
そのような実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)はポリフェニレンスルフィドである。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)中の式(II)、(II’)、(III)、及び/又は(IV)の繰り返し単位(RPAS)の濃度は、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%である。そのような実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は繰り返し単位(RPAS)から本質的になる。別の実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)中の式(II)、(II’)、(III)、及び/又は(IV)の繰り返し単位(RPAS)の濃度は100mol%であり、これらの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は繰り返し単位(RPAS)からなる。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は、少なくとも10,000g/mol、少なくとも20,000g/mol、少なくとも25,000g/mol、少なくとも30,000g/mol、又は少なくとも35,000g/molの重量平均分子量(「Mw」)を有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は、150,000g/mol以下、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、85,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は、10,000g/mol~150,000g/mol、20,000g/mol~100,000g/mol、25,000g/mol~90,000g/mol、30,000g/mol~85,000g/mol、又は35,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。ポリ(アリーレンスルフィド)のMwは、4-クロロナフタレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)は、少なくとも200℃、少なくとも220℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、350℃以下、320℃以下、300℃以下、又は285℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、200℃~350℃、220℃~320℃、240℃~300℃、又は250℃~285℃のTmを有する。
【0033】
ポリ(フェニレンスルフィド)(式(II’)によるポリ(アリーレンスルフィド))のメルトフローレート(316℃、5kgの荷重、ASTM D1238、手順Bに準拠)は、50~400g/10分、60~300g/10分、又は70~200g/10分であってよい。
【0034】
ポリ(アリーレンスルフィド)及びポリ(フェニレンスルフィド)は、公知の方法によって調製することができる。
【0035】
ポリアミド
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリアミド(PA)である。ポリアミドとは、少なくとも1つのアミド結合(-CONH-)を有する繰り返し単位を少なくとも50mol%含むポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、式(V)の繰り返し単位(R
PA)を含む:
【化3】
(式中、
- R
2は、結合、C
1~C
15アルキル、及びC
6~C
30アリールからなる群から選択され;
- R
3は、C
1~C
20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- R
2及びR
3は、それぞれ独立して、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を含んでいてもよく、任意選択的にハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SO
3H)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ、及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(V)のR
3はフェニルであり、ポリアミドは式(VI)に従うポリフタルアミドである:
【化4】
【0037】
いくつかの実施形態では、ポリアミドは、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%のパーセントの式(V)及び/又は(VI)による繰り返し単位RPAを含む。そのような実施形態では、ポリアミドは、式(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位(RPA)から本質的になる。別の実施形態では、ポリアミドは、繰り返し単位の100mol%が式(V)及び/又は(VI)による繰り返し単位(RPA)であるものである。そのような実施形態によれば、ポリアミドは式(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位(RPA)からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポリアミドは、少なくとも15,000g/mol、少なくとも20,000g/mol、少なくとも25,000g/mol、少なくとも30,000g/mol、又は少なくとも35,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、150,000g/mol以下、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、85,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、15,000g/mol~150,000g/mol、20,000g/mol~100,000g/mol、25,000g/mol~90,000g/mol、30,000g/mol~85,000g/mol、又は35,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。ポリアミドのMwは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ポリアミドは、少なくとも200℃、少なくとも220℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、370℃以下、360℃以下、350℃以下、又は340℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミドは、200℃~370℃、220℃~360℃、240℃~350℃、又は250℃~340℃のTmを有する。
【0040】
ポリアミド及びポリフタルアミドは、公知の方法によって調製することができる。
【0041】
ポリ(アリールエーテルスルホン)
一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である。ポリ(アリールエーテルスルホン)としては、限定するものではないが、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、及びポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0042】
ポリ(アリールエーテルスルホン)とは、式(VII):
【化5】
の繰り返し単位(R
PAES)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指し、式(VII)において、
- Rは、それぞれの場合において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各Rのiは、独立して0~4の整数であり;
- Tは、結合、スルホン基[-S(=O)
2-]、及び式(VIII)の基
-C(R
2)(R
2)- (VIII)
からなる群から選択され、式(VIII)において、
- R
2は、それぞれの場合において、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択される。
【0043】
Tは、好ましくは、結合(すなわちポリアリールエーテルスルホンはポリフェニルスルホンである)、スルホン基(すなわちポリアリールエーテルスルホンはポリエーテルスルホンである)、又は各R2がメチル基である式(VIII)による基(すなわちポリアリールエーテルスルホンはポリスルホンである)である。
【0044】
繰り返し単位(RPAES)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、R以外の部位への1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態では、フェニレン部位は、それぞれ独立して、R以外の部位への1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部位は、R以外の部位への1,4-結合を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)中の繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%が繰り返し単位(RPAES)である。そのような実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰り返し単位(RPAES)から本質的になる。別の実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、繰り返し単位の100mol%が繰り返し単位(RPAES)であるものである。そのような実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)は繰り返し単位(RPAES)からなる。
【0046】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、30,000g/mol~80,000g/mol、例えば35,000g/mol~75,000g/mol、又は40,000g/mol~70,000g/molのMwを有し得る。ポリ(アリールエーテルスルホン)のMwは、ポリスチレン標準を用いて、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Agilent Technologies製の2×5μ混合Dカラム(ガードカラム付き);流量:1.5mL/分、注入量:20μLの0.2w/v%試料溶液)によって決定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)は、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0048】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、公知の方法によって調製することができる。
【0049】
ポリスルホン
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)はポリスルホン(PSU)である。本明細書において、ポリスルホンとは、式(VII-A)の繰り返し単位(R
PSU)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す:
【化6】
(式中、
- Rは、それぞれの場合において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各Rのiは、独立して0~4の整数である)。
【0050】
一実施形態では、式(VII-A)の各Rについて、iは0である。この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PSU)は、式(VII-B)の単位である:
【化7】
【0051】
繰り返し単位(RPSU)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、R以外の部位への1,2-、1,3-又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態では、フェニレン部位は、それぞれ独立して、R以外の部位への1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部位は、R以外の部位への1,4-結合を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリスルホン中の繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%が、式(VII-A)及び/又は式(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)である。そのような実施形態では、ポリスルホンは式(VII-A)及び/又は式(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)から本質的になる。別の実施形態では、ポリスルホンは、繰り返し単位の100mol%が式(VII-A)及び/又は式(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)であるものである。そのような実施形態によれば、ポリスルホンは、式(VII-A)及び/又は式(VII-B)の繰り返し単位(RPSU)からなる。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリスルホンのMwは、30,000~80,000g/mol、例えば35,000~75,000g/mol、又は40,000~70,000g/molである。ポリスルホンのMwは、ポリスチレン標準を用いて、移動相として塩化メチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Agilent Technologies製の2×5μ混合Dカラム(ガードカラム付き);流量:1.5mL/分、注入量:20μLの0.2w/v%試料溶液)によって決定することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ポリスルホンは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0055】
ポリスルホンは、公知の方法によって製造することができる。
【0056】
ポリフェニルスルホン
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)はポリフェニルスルホン(PPSU)である。本明細書において、ポリフェニルスルホンとは、式(VII-C)の繰り返し単位(R
PPSU)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す:
【化8】
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホン中の全繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%が繰り返し単位(RPPSU)である。そのような実施形態では、ポリフェニルスルホンは繰り返し単位(RPPSU)から本質的になる。別の実施形態では、ポリフェニルスルホンは、繰り返し単位の100mol%が繰り返し単位(RPPSU)であるものである。そのような実施形態によれば、ポリフェニルスルホンは繰り返し単位(RPPSU)からなる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、少なくとも20,000g/mol、少なくとも30,000g/mol、又は少なくとも40,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、20,000g/mol~100,000g/mol、又は30,000g/mol~90,000g/mol、又は40,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。ポリフェニルスルホンのMwは、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリフェニルスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0060】
ポリフェニルスルホンは、公知の方法によって製造することができる。
【0061】
ポリエーテルスルホン
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリ(アリールエーテルスルホン)であり、ポリ(アリールエーテルスルホン)はポリエーテルスルホン(PES)である。本明細書において、ポリエーテルスルホンとは、式(VII-D)の繰り返し単位(R
PES)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す:
【化9】
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホン中の繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は99.9mol%が繰り返し単位(RPES)である。そのような実施形態では、ポリエーテルスルホンは繰り返し単位(RPES)から本質的になる。
【0063】
別の実施形態では、ポリエーテルスルホンは、繰り返し単位の100mol%が繰り返し単位(RPES)である。そのような実施形態によれば、ポリエーテルスルホンは繰り返し単位(RPES)からなる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、少なくとも20,000g/mol、少なくとも30,000g/mol、又は少なくとも40,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、20,000g/mol~100,000g/mol、30,000g/mol~90,000g/mol、又は40,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。ポリエーテルスルホンのMwは、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、又は少なくとも180℃のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、270℃以下、260℃以下、250℃以下、又は240℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリエーテルスルホンは、150℃~270℃、160℃~260℃、170℃~250℃、又は170℃~240℃のTgを有する。
【0066】
ポリエーテルスルホンは、公知の方法によって製造することができる。
【0067】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)である。
【0068】
ポリ(アリールエーテルケトン)とは、Ar’C(=O)Ar*基(式中、Ar’とAr*は同じであるか又は異なり、芳香族基である)を含む繰り返し単位(RPAEK)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す。
【0069】
本明細書において、繰り返し単位(R
PAEK)は、式(VIII)~(XI)の繰り返し単位である:
【化10】
(式中、
- 各Rは、独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、置換可能なそれぞれの基は置換又は無置換であってよく、置換されている場合には、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、並びにアミン及び第四級アンモニウム基を含んでいてもよいことが理解され;
- iは、独立して0~4の整数である)。
【0070】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、繰り返し単位(RPAEK)においてRとは異なる他の部位への1,2-、1,4-、又は1,3-結合を有し得る。いくつかの実施形態では、フェニレン部位は、それぞれ独立して、R以外の部位への1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部位は、R以外の部位への1,4-結合を有する。
【0071】
繰り返し単位(R
PAEK)のいくつかの実施形態では、式(VIII)~(XI)の各Rについて、iは0である。この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PAEK)は式(VIII-A)~(XI-A)で表される:
【化11】
【0072】
繰り返し単位の少なくとも50%が式(VIII)、(XI)、(VIII-A)、及び/又は(XI-A)の繰り返し単位(RPAEK)であるポリマーも、当業者にはポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)属に属すると理解される。
【0073】
一実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルケトン)中の繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%が、式(VIII)、式(IX)、式(X)、及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)である。そのような実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、式(VIII)、式(IX)、式(X)、及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)から本質的になる。
【0074】
別の実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、繰り返し単位の100 mol%が式(VIII)、式(IX)、式(X)、及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)である。そのような実施形態によれば、ポリ(アリールエーテルケトン)は、式(VIII)、式(IX)、式(X)、及び/又は式(XI)の繰り返し単位(RPAEK)からなる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、少なくとも30,000g/mol、少なくとも40,000g/mol、又は少なくとも50,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、200,000g/mol以下、175,000g/mol以下、又は150,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、30,000g/mol~200,000g/mol、40,000g/mol~175,000g/mol、50,000g/mol~150,000g/molのMwを有する。ポリ(アリールエーテルケトン)のMwは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、少なくとも270℃、少なくとも280℃、少なくとも290℃、又は少なくとも300℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、400℃以下、390℃以下、380℃以下、又は370℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、270℃~400℃、280℃~390℃、290℃~380℃、又は280℃~370℃のTmを有する。
【0077】
ポリ(アリールエーテルケトン)及びポリ(エーテルエーテルケトン)は、公知の方法によって調製することができる。
【0078】
液晶ポリマー
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーは液晶ポリマーである。液晶ポリマーは、テレフタル酸、芳香族ジオール、テレフタル酸と異なる第1の芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシカルボン酸の重縮合から形成される。
【0079】
いくつかの実施形態では、芳香族ジオールは、式(XII)及び(XIII)から選択される式によって表される:
HO-Ar1-OH (XII)
HO-Ar2-T1-Ar3-OH (XIII)
(式中、
- Ar1~Ar3は、ハロゲン、C1~C15アルキル、及びC6~C15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい独立して選択されるC6~C30アリール基であり;
- T1は、結合、O、S、-SO2-、-C(=O)-、及びC1~C15アキル(akyl)からなる群から選択される)。
【0080】
いくつかの実施形態では、芳香族ジオールは、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,4-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェノール、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(エタン-1,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4’-オキシジフェノール、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-チオジフェノール、ナフタレン-2,6-ジオール、及びナフタレン-1,5-ジオールからなる群から選択される。好ましくは、芳香族ジオールは4,4’-ビフェノールである。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の芳香族ジカルボン酸は、独立して、式(XIV)及び(XV)から選択される式によって表される:
HOOC-Ar1-COOH (XIV)
HOOC-Ar2-T2-Ar3-COOH (XV)
(式中、Ar1~Ar3は上で定義した通りであり、独立して選択され、T2は、結合、O、及びSからなる群から選択される)。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、4,4’-(エチレンジオキシ)二安息香酸、4,4’-スルファンジイル二安息香酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、及びナフタレン-2,3-ジカルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、第1の芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、及びナフタレン-2,3-ジカルボン酸からなる群から選択される。最も好ましくは、第1の芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸である。
【0083】
いくつかの実施形態では、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、式(XVI)及び(XVII)から選択される式で表される:
HO-Ar1-COOH (XVI)
HO-Ar2-Ar3- COOH (XVII)
(式中、Ar1~Ar3は、上で定義されており、独立して選択される)。
【0084】
いくつかの実施形態では、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、及び4’-ヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及び5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸からなる群から選択される。最も好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸は4-ヒドロキシ安息香酸である。
【0085】
本明細書において、LCPとは、前述のモノマーから形成され、式(XVIII)~(XI)の繰り返し単位(R
LCP)を少なくとも50%有する任意のポリマーを指す:
【化12】
-[-O-Ar
1-O-]- (XIX)
-[-O-Ar
2-T
1-Ar
3-O-]- (XX)
-[-OC-Ar
1-CO-]- (XXI)
-[-OC-Ar
2-T
2-Ar
3-CO-]- (XXII)
-[-O-Ar
1-CO-]- (XXIII)
-[-O-Ar
2-Ar
3-CO-]- (XXIV)
(式中、Ar
1~Ar
3、T
1、及びT
2は、上で定義されており、独立して選択される)。
【0086】
当業者であれば、式(XVIII)によるRLCPがテレフタル酸から形成され;式(XIX)及び(XX)によるRLCPがそれぞれ式(XII)及び(XIII)によるモノマーから形成され;式(XXI)及び(XXII)によるRLCPがそれぞれ式(XIV)及び(XV)によるモノマーから形成され;式(XXIII)及び(XXIV)によるRLCPが式(XVI)及び(XVII)によるモノマーから形成されることを認識するであろう。そのため、式(XII)~(XVII)におけるモノマーについてのAr1~Ar3、T1、及びT2の選択は、式(XIX)~(XIXV)による繰り返し単位RLCPについてのAr1~Ar3、T1、及びT2も選択する。好ましくは、式(XVIII)による繰り返し単位RLCPはテレフタル酸の重縮合によって形成され、式(XIX)及び(XX)による繰り返し単位RLCPは4,4’-ビフェノールの重縮合によって形成され、式(XXI)及び(XXII)による繰り返し単位RLCPはイソフタル酸の重縮合によって形成され、式(XXIII)及び(XXIV)による繰り返し単位RLCPは4-ヒドロキシ安息香酸の重縮合によって形成される。
【0087】
いくつかの実施形態では、式(XVIII)~(XXIV)による繰り返し単位RLCPの総濃度は、少なくとも50mol%、少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%である。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(XVIII)による繰り返し単位RLCPの濃度は、5mol%~30mol%、好ましくは10mol%~20mol%である。いくつかの実施形態では、式(XIX)及び/又は(XX)による繰り返し単位RLCPの濃度は、10mol%~30mol%、好ましくは15mol%~25mol%である。いくつかの実施形態では、式(XXI)及び(XXII)による繰り返し単位RLCPの濃度は、1mol%~20mol%、好ましくは1mol%~10mol%である。いくつかの実施形態では、式(XXIII)及び(XXIV)による繰り返し単位RLCPの濃度は、35mol%~80mol%、好ましくは45mol%~75mol%、最も好ましくは50mol%~70mol%である。
【0089】
いくつかの実施形態では、LCPは、少なくとも20,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、LCPは、80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、LCPは、20,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。Mwは、ASTM D5296に従って及びヘキサフルオロプロパノール溶媒及びポリ(メチルメタクリレート)標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、LCPは、少なくとも220℃、少なくとも250℃、又は少なくとも280℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、LCPは、420℃以下、390℃以下、又は360℃以下のTmを有する。いくつかの実施形態では、LCPは、220℃~420℃、250℃~390℃、又は280℃~360℃のTmを有する。
【0091】
液晶ポリマーは、公知の方法によって製造することができる。
【0092】
ポリエステル
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリエステルである。本明細書において、ポリエステルとは、エステル基(-C(=O)-O-)を含む繰り返し単位(R
PE)を少なくとも50mol%含む任意のポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ポリエステルは、式(XXV)の繰り返し単位(R
PE)を含む:
【化13】
(式中、
- R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- Tは、結合であるか、又は一価のアルキル基と一価の脂環式基とを含む置換脂環式基であり;
- iは0~4の整数であり;
- jは0~2の整数であり;
- nは1~12の整数である)。
【0093】
繰り返し単位(RPE)において、それぞれのフェニレン部位は、独立して、R以外の部位への1,2-、1,3-、又は1,4-結合を有し得る。いくつかの実施形態では、フェニレン部位は、それぞれ独立して、R以外の部位への1,3-又は1,4-結合を有する。好ましくは、フェニレン部位は、R以外の部位への1,4-結合を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、i及びjはそれぞれ0であり、Tは結合であり、並びに/又はnは1、2、若しくは4である。いくつかのそのような実施形態では、ポリエステルポリマーはポリトリメチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは1である);ポリエチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは2である);又はポリブチレンテレフタレート(i及びjは0であり、Tは結合であり、nは4である)である。
【0095】
いくつかの実施形態では、ポリエステル中の繰り返し単位の少なくとも60mol%、少なくとも70mol%、少なくとも80mol%、少なくとも90mol%、少なくとも95mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、又は少なくとも99.9mol%が繰り返し単位(RPE)である。そのような実施形態では、ポリエステルは繰り返し単位(RPE)から本質的になる。別の実施形態では、ポリエステルは、繰り返し単位の100mol%が繰り返し単位(RPE)であるものである。そのような実施形態によれば、ポリエステルは繰り返し単位(RPE)からなる。
【0096】
いくつかの実施形態では、ポリエステルは、少なくとも10,000g/mol、少なくとも20,000g/mol、又は少なくとも30,000g/molのMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリエステルは、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下のMwを有する。いくつかの実施形態では、ポリエステルは、10,000g/mol~100,000g/mol、20,000g/mol~90,000g/mol、30,000g/mol~80,000g/molのMwを有する。ポリエステルのMwは、ポリメチルメタクリレート標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)を用いて測定することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ポリエステルは、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、より好ましくは少なくとも270℃、最も好ましくは少なくとも280℃のTmを有する。いくつかの実施形態では、ポリエステルポリマーは、最大350℃、好ましくは最大340℃、より好ましくは最大330℃、最も好ましくは最大320℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、ポリエステルは、250℃~350℃、260℃~340℃、270℃~330℃、又は280℃~320℃のTmを有する。
【0098】
ポリエステルは、公知の方法によって製造することができる。
【0099】
熱伝導性充填剤
ポリマー組成物は、熱伝導性充填剤を含む。本明細書において、熱伝導性充填剤は、ASTM E1461-13によって測定したときに、少なくとも0.5W/(m・K)、少なくとも2W/(m・K)、又は少なくとも4W/(m・K)の熱伝導率を有する。有用な熱伝導性充填剤としては、限定するものではないが、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び二酸化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素を含むがこれらに限定されない無機酸化物及び窒化物;金属及び金属合金;炭化ケイ素粉末;硫化亜鉛、炭酸マグネシウム、及びフッ化カルシウム粉末;などが挙げられる。
【0100】
好ましくは、熱伝導性充填剤は、無機酸化物又は窒化物からなる群から選択され、より好ましくは、熱伝導性充填剤は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、窒化ホウ素が特に好ましい。
【0101】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の熱伝導性充填剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下の熱伝導性充填剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、5重量%~50重量%、又は10重量%~45重量%、又は15重量%~40重量%の熱伝導性充填剤を含む。
【0102】
導電性炭素繊維
ポリマー組成物は、導電性炭素繊維を含む。本明細書において、導電性炭素繊維は、20μΩ・m未満、10μΩ・m未満、5μΩ・m未満、又は3μΩ・m未満の抵抗率を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の導電性炭素繊維を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下の導電性炭素繊維を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、5重量%~40重量%、又は10重量%~35重量%、又は15重量%~30重量%の導電性炭素繊維を含む。
【0104】
炭素繊維は概して円筒形であり、(炭素繊維の長軸に沿った)長さと、長軸に垂直な断面直径(単に直径と呼ぶ)とによって特徴付けられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、炭素繊維は、少なくとも5μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも150μm、又は少なくとも175μmの平均長さを有する。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、又は225μm以下の平均長さを有する。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、5μm~400μm、50μm~350μm、100μm~300μm、150μm~250μm、又は175μm~225μmの平均長さを有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、炭素繊維は、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも7μm、又は少なくとも8μmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、20μm以下、15μm以下、13μm以下、又は12μm以下の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、1μm~20μm、5μm~15μm、7μm~13μm、又は8μm~12μmの平均直径を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、炭素繊維の長さは、その直径よりも大幅に大きい。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、長さ(「L」)と最大直径(「D」)との平均比(L/D)として定義される、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30、又は少なくとも50のアスペクト比を有する。
【0108】
添加剤
ポリマー組成物は、可塑剤、着色剤、顔料(例えばカーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、及び酸化防止剤などの、当技術分野において一般に使用される1種以上の従来の添加剤も含み得る。本明細書においては、熱伝導性充填剤及び導電性炭素繊維は添加剤から除外される。
【0109】
添加剤を含む実施形態では、添加剤の総濃度は5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満である。
【0110】
ポリマー組成物
本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱伝導性充填剤と、導電性炭素繊維とを含む。また、前述したように、ポリマー組成物は実質的にガラス繊維を含まない。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の導電性炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の重量比は、1:3.8以下、又は1:3.7以下、又は1:3.6以下、又は1:3.5以下、又は1:3.4以下、又は1:3.3以下、又は1:3.2以下、又は1:3.1以下、又は1:3.0以下である。
【0112】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の導電性炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比は、少なくとも1:1、又は少なくとも1:1.1、又は少なくとも1:1.2、又は少なくとも1:1.3、又は少なくとも1:1.4、又は少なくとも1:1.5、又は少なくとも1:1.6、又は少なくとも1:1.7、又は少なくとも1:1.8である。
【0113】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物中の導電性炭素繊維の総重量対全ての非熱可塑性ポリマー成分の総重量の比は、1:1.0~1:3.8、又は1:1.1~1:3.7、又は1:1.2~1:3.6、又は1:1.3~1:3.5、又は1:1.4~1:3.4、又は1:1.5~1:3.3、又は1:1.6~1:3.2、又は1:1.7~1:3.1、又は1:1.8~1:3.0である。
【0114】
上述したように、導電性炭素繊維の使用により、純粋に熱伝導性である充填剤のみを使用してそのような改善を達成しようとする場合の固有の制約に遭遇することなしに、ポリマー組成物の熱伝導特性を改善することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも7W/(m・K)、又は少なくとも8W/(m・K)、又は少なくとも9W/(m・K)、又は少なくとも10W/(m・K)、又は少なくとも11W/(m・K)、又は少なくとも12W/(m・K)、又は少なくとも13W/(m・K)の面内熱伝導率を示す。言い換えると、ポリマー組成物は、導電性炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物の熱伝導率の少なくとも1.5倍、又は少なくとも2倍、又は少なくとも2.5倍、又は少なくとも3倍の熱伝導率を示す。面内熱伝導率は、ASTM E1461-13「Standard Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method」に従ってフラッシュ法により測定することができる。
【0115】
熱伝導率の向上は、ポリマー組成物の電気抵抗率を犠牲にするものではない。そうではなく、本発明のポリマー組成物の抵抗率は、驚くべきことに、そして予想外にも、導電性炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して、実質的に維持される。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも109Ω・cm、又は少なくとも1010Ω・cm、又は少なくとも1011Ω・cm、又は少なくとも1012Ω・cm、又は少なくとも1013Ω・cm、又は少なくとも1014Ω・cm、又は少なくとも1015Ω・cm、又は少なくとも1016Ω・cmの体積抵抗率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、1018Ω・cm以下の体積抵抗率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、109Ω・cm~1018Ω・cm、1010Ω・cm~1018Ω・cm、1011Ω・cm~1018Ω・cm、1012Ω・cm~1018Ω・cm、1013Ω・cm~1018Ω・cm、1014Ω・cm~1018Ω・cm、1015Ω・cm~1018Ω・cm、又は1016Ω・cm~1018Ω・cmの体積抵抗率を有する。体積抵抗率は、ASTM D257に従って測定することができる。
【0116】
さらに驚くべきことは、炭素繊維を含むポリマー組成物の引張弾性率及び曲げ弾性率が、導電性炭素繊維をガラス繊維に置き換えた類似のポリマー組成物と比較して増加するという事実である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも25GPa、少なくとも30GPa、又は少なくとも35GPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、55GPa以下、50GPa以下、又は45GPa以下の曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、25GPa~55GPa、30GPa~50GPa、又は35GPa~45GPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも25GPa、少なくとも30GPa、又は少なくとも35GPaの引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、55GPa以下、50GPa以下、又は45GPa以下の引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、25GPa~55GPa、30GPa~50GPa、又は35GPa~45GPaの引張弾性率を有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、単一の熱可塑性ポリマー及び/又は単一の熱伝導性充填剤のみを有する。いくつかのそのような実施形態では、熱可塑性ポリマーはポリフェニルスルフィド若しくはポリフタルアミドのいずれかである、及び/又は熱伝導性充填剤は窒化ホウ素である。
【0118】
ポリマー組成物の製造方法
ポリマー組成物の製造方法も提供される。
【0119】
ポリマー組成物は、当業者に周知の方法によって作製され得る。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、ポリマー成分を熱可塑性ポリマーのガラス転移温度又は溶融温度より上に加熱することによって行われる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸押出機、及び二軸押出機である。好ましくは、所望の成分の全てを押出機に、押出機のスロート又はバレルのいずれかに供給するための手段を備えた押出機が使用される。成分は、同時に、すなわち1種以上の粉末顆粒の乾燥ブレンドとして供給されてもよく、或いは別々に供給されてもよい。
【0120】
溶融混合中に成分を混ぜ合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、所望量の各成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。別の実施形態では、最初のサブセットの成分が、最初に一緒に混合され得、1種以上の残りの成分が、さらなる混合のために混合物に添加され得る。明確にするために、それぞれの成分の全所望量は、単一量として混合される必要はない。例えば、1種以上の成分について、部分量が最初に添加及び混合され得、その後に、残りの一部又は全てが添加及び混合され得る。
【0121】
造形品及び製造方法
本発明のポリマー組成物を含むフィラメント及び造形品、並びにフィラメント及び造形品を製造する方法も提供される。
【0122】
ポリマー組成物は、多様な用途に有用な物品の製造によく適している。例えば、本発明のポリマー組成物は、i)電子デバイス、ii)自動車、iii)モーター、iv)電池、v)LED、vi)電子基板、vii)電気自動車充電ステーション、viii)真空又は真空システムなどの機能部分又は構造部分としての使用に特に適すると考えられる。
【0123】
造形品は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、又はブロー成形などの、任意の適切な溶融加工方法を使用してポリマー組成物から製造することができる。
【0124】
造形品は付加製造によって製造することもでき、この場合、造形品はポリマー組成物から印刷される。
【0125】
付加製造システムは、1つ以上の付加製造技術によって造形体のデジタル表現から造形体を印刷するか又は他の方法で構築するために使用される。商業的に利用可能な付加製造技術の例としては、押出ベースの技術、選択的レーザー焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム融解及びステレオリソグラフィプロセスが挙げられる。これらの技術のそれぞれについて、造形体のデジタル表現が最初に水平多層にスライスされる。それぞれの層について、工具経路が次にもたらされ、それが、所与の層を印刷するように特定の付加製造システムに命令を与える。
【0126】
例えば、押出ベースの付加製造システムにおいて、造形品は、ポリマー組成物のストリップを押し出し、隣接させることによって層ごとに造形品のデジタル表現から印刷され得る。ポリマー組成物は、システムの印刷ヘッドにより運ばれる押出先端部を通して押し出され、x-y面での圧盤上に一連の道として堆積される。押し出された材料は、前に堆積された材料と融合し、冷えるにつれて固化する。基材に対する印刷ヘッドの位置は、z軸(x-y面に垂直の)に沿って次に増分され、このプロセスが繰り返されて、デジタル表現に類似する造形品を形成する。押出ベースの付加製造システムの例は、溶融フィラメント製造(「FFF」)である。
【0127】
別の例として、粉末ベースの付加製造システムにおいて、レーザーが、粉末を局部的に焼結させて固体部品にするために用いられる。造形品は、粉末の層を順次堆積し、引き続き画像をその層上へ焼結させるためのレーザパターンによってもたらされる。粉末ベースの付加製造システムの例は、選択的レーザー焼結(「SLS」)である。
【0128】
別の例として、造形品は、連続繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)印刷方法を用いて製造することができる。この方法は、熱溶解積層法に基づいており、繊維と樹脂との組み合わせを印刷する。
【0129】
したがって、いくつかの実施形態は、押出ベースの付加製造システム(例えばFFF)、粉末ベースの付加製造システム(例えばSLS)、又はFRTP印刷法によって造形品を形成するためにポリマー組成物の層を印刷することを含む、造形品の製造方法を含む。
【0130】
いくつかの実施形態は、ポリマー組成物を含むフィラメントを含む。好ましくは、フィラメントは、FFFなどの、上記のような付加製造法での使用に好適である。
【0131】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0132】
ここで、以下の非限定的な実施例において例示的な実施形態を説明する。
【実施例】
【0133】
抵抗率、熱伝導率、及び機械的特性を、様々な実施形態について評価した。
【0134】
出発原料
Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製のRYTON(登録商標)PPS。
Momentive Performance Materials Inc.製の窒化ホウ素。
DreyTek,Inc.製の酸化亜鉛(ZnO)。
Ube Material Industries,Ltd.製の酸化マグネシウム(MgO)。
3B-the fiberglass company製のガラス繊維。
Solvay Cytec製の炭素繊維。
Nexeo Plastics製の離型剤、HDPE6007G。
【0135】
ポリマー組成物の混錬
各配合物を、48:1のL/D比を有する26mm直径Coperion(登録商標)ZSK-26同方向回転部分噛合二軸押出機を用いて溶融混錬した。バレルセクション2~12及びダイを、以下の通りの設定点温度に加熱した:バレル2~6:300℃;バレル7~12:300℃;ダイ:300℃。
【0136】
各場合において、熱可塑性ポリマーは、30~35ポンド/時の範囲のスループット速度で重量測定フィーダーを使用してバレルセクション1で供給した。押出機は、およそ200RPMのスクリュー速度で作動した。約27インチの水銀の真空レベルを用いてバレルゾーン10に真空を適用した。単一孔ダイをポリマー組成物の全てに対して用いて、直径およそ2.6~2.7mmのフィラメントを生じさせ、ダイから出てくるポリマーフィラメントを水中で冷却し、ペレタイザーに供給して長さおよそ2.7mmのペレットを生成した。ペレットは、射出成形してサンプルにする前に、サンプルに適用される試験手順に従って乾燥した。
【0137】
電気的特性の評価
体積抵抗率は、ASTM D257に従って測定した。
【0138】
機械的特性の評価
下記のISO試験方法を、配合物の機械的特性を評価する際に用いた:
引張特性:ISO 527
曲げ特性ISO 178
サンプルは、ISO手順に従って製造した。
【0139】
熱特性の評価
面内及び面直方向の熱伝導率は、ASTM E1461-13「Standard Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method」に従ってフラッシュ法により測定した。
【0140】
実験結果
【0141】
【0142】
表1は、調製された配合物及びそれに関して得られたデータを示す。驚くべきことに、また予想外にも、
図1にも示されているように、ガラス繊維が炭素繊維で置き換えられたポリマー組成物(本発明の実施例E1~E4)は、ガラス繊維を用いた同じ組成物(比較例C1~C4)よりも少なくとも2倍大きい面内熱伝導率を示した。面直伝導率、引張弾性率、及び曲げ弾性率の増加も観察された。
【0143】
さらに、表1及び
図2に示されているように、炭素繊維と少なくとも1種の熱伝導性充填剤とからなるがガラス繊維を実質的に含まないポリマー組成物(本発明の実施例E1~E3)は、熱伝導性充填剤を含まない組成物(比較例C5~C7)又はガラス繊維を含まない組成物(比較例C1~C4)と比較して、体積抵抗率を実質的に又は全く損なうことなしに、これらの驚くべき結果を示した。この結果も驚くべきものであり、また予想外である。
【国際調査報告】