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特表2024-527022銅及びその他の黄色金属用腐食防止剤及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】銅及びその他の黄色金属用腐食防止剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/12 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C23F11/12 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504789
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022074127
(87)【国際公開番号】W WO2023009994
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,752
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352199
【氏名又は名称】ソリュゲン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン,ジュン,スー
(72)【発明者】
【氏名】アルセオ,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ガリシア,ダーレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ドナルド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】タン,ルーンジィ
(72)【発明者】
【氏名】ガウトウン,フレデリク
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062BB04
4K062BB06
4K062BB11
4K062BB18
4K062BC02
4K062FA05
4K062FA06
4K062FA16
(57)【要約】
銅又はその合金を含む表面用の腐食防止剤である。腐食防止剤は、バイオキレート剤、一次腐食防止剤、及び溶媒を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又はその合金を含む表面用の腐食防止剤であって、
バイオキレート剤と、
一次腐食防止剤と、
溶媒と、
を含有する、腐食防止剤。
【請求項2】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、天然に存在する分子、又は単糖類若しくは多糖類から誘導された分子である、腐食防止剤。
【請求項3】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、それらの塩、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項4】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、グルコン酸ナトリウム、グルカル酸ナトリウムの酸化生成物、それらの1つ以上の塩、それらの1つ以上の誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項5】
請求項4に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、約50重量%未満の量のn-ケト酸及びC-Cの二酸をさらに含む、腐食防止剤。
【請求項6】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記一次腐食防止剤は、チアゾール、トリアゾール又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項7】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記一次腐食防止剤は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、ブチルベンゾトリアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、(2-ピロールカルボニル)ベンゾトリアゾール、(2-チエニルカルボニル)ベンゾトリアゾール、アミノ-1,2,4-トリアゾール、ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、メルカプト-1H-1,2,4-トリアゾール、メチル-2-フェニルイミダゾール、アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、フェニル-1-H-テトラゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項8】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、グリセロール、2,2-ジメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,4-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項9】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、又はそれらの組み合わせを含む、腐食防止剤。
【請求項10】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、アルダル酸及びウロン酸の混合物である、腐食防止剤。
【請求項11】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、アルダル酸、ウロン酸、及びそれぞれの対カチオンの混合物である、腐食防止剤。
【請求項12】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、グルカル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルコース酸化生成物、及びグルコン酸酸化生成物を含む、腐食防止剤。
【請求項13】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は糖酸化生成物を含有し
前記糖酸化生成物は、二糖、酸化二糖、ウロン酸及びアルダル酸を含む、腐食防止剤。
【請求項14】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、n-ケト酸及びC-Cの二酸を含む、腐食防止剤。
【請求項15】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は対カチオンを更に含み、
前記対カチオンは第1族及び第2族のアルカリ土類金属を含む、腐食防止剤。
【請求項16】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は対カチオンを更に含み、
前記対カチオンは希土類金属を含む、腐食防止剤。
【請求項17】
請求項1に記載の腐食防止剤であって、
前記バイオキレート剤は対カチオンを更に含み、
前記対カチオンはアンモニウムを含む、腐食防止剤。
【請求項18】
銅、黄銅、他の黄色金属、それらの合金、又はそれらの組み合わせを含むシステムにおける腐食を低減する方法であって、
請求項1に記載の腐食防止剤を含有する水溶液を導入することを含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記システムは工業用水又は源水を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記工業用水又は前記源水は、可溶性銅、ハロゲン化物、又はその両方を含み、
前記工業用水又は前記源水の前記可溶性銅含有量が0.05mg/Lより大きい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、ジュン,スー,アン(June Su An)らにより2021年7月26日に出願された「銅及びその他の黄色金属用腐食防止剤及びその使用方法(Corrosion Inhibitors for Copper and Other Yellow Metals and Methodsof Using Same)」の名称の米国仮特許出願第63/225,752号に基づく優先権を主張し、当該出願の全てがあらゆる目的のために参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
分野
本開示は一般に、腐食防止に使用するための材料及び組成物に関する。より詳細には、本開示は、銅、黄銅、その他の黄色金属又はそれらの組み合わせからなる表面の完全な状態を保護するための組成物に関する。
【0003】
背景
赤みがかったオレンジ色の銅は、地殻の中で5番目に多い金属である。しかしながら、銅は純粋な形でも合金の形でも非常に有用である。黄銅、銅-ニッケル、青銅は、いずれも特に重要な銅合金である。銅とその合金は、優れた耐食性、高い電気・熱伝導性、機械的加工性、可鍛性などの望ましい特性を有するため、産業界で広く使用されている。
【0004】
銅とその合金は、電子産業、海洋産業、発電所、熱交換器、ボイラー、及び冷却塔におけるワイヤー、シート、及びパイプラインの製造に幅広く使用されているため、高く評価されている。また、バルブやインペラなど、プロセス流体や工業用水に接触する様々な部品にも使用されている。
【0005】
銅は貴金属であり、その表面に腐食生成物による保護不動態(酸化物)皮膜や非導電性層が形成されるため、大気条件下や一部の化学環境ではある程度の耐食性を発揮する。しかし、環境条件によっては、酸素と、塩化物イオンや硫酸イオンなどの強力な陰イオンとの存在下で、銅の表面に腐食層の孔食が生じることがある。銅の腐食やその表面における腐食生成物の形成は、銅製のシステムや部品の性能に悪影響を及ぼし、その効率を低下させる可能性がある。さらに遊離銅は、銅が炭素鋼に析出すると、局部的なガルバニック腐食につながる可能性がある。
【0006】
このように、銅がさまざまな産業で広く使われ、重要な役割を果たしていることを考えると、表面の腐食の抑制は重要である。
【発明の概要】
【0007】
ある態様では、銅又はその合金を含む表面用の腐食防止剤は、バイオキレート剤、一次腐食防止剤(primary corrosion inhibitor)、及び溶媒からなる。バイオキレート剤は天然に存在する分子であっても、単糖類や多糖類から誘導されたものであってもよい。例えば、バイオキレート剤は、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、それらの塩、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。バイオキレート剤は、グルコン酸ナトリウム、グルカル酸ナトリウムの酸化生成物、それらの1つ以上の塩、それらの1つ以上の誘導体、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。バイオキレート剤は、約50wt%未満の量のn-ケト酸及びC-Cの二酸をさらに含んでもよい。一次腐食防止剤は、チアゾール、トリアゾール、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、一次腐食防止剤は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,4-オキサジアゾール1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、ブチルベンゾトリアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、(2-ピロールカルボニル)ベンゾトリアゾール、(2-チエニルカルボニル)ベンゾトリアゾール、アミノ-1,2,4-トリアゾール、ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、メルカプト-1H-1,2,4-トリアゾール、メチル-2-フェニルイミダゾール、アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、フェニル-1-H-テトラゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、グリセロール、2,2-ジメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,4-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はそれらの組み合わせを含む。溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、シクロヘキサノールなど、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。バイオキレート剤は、アルダル酸及びウロン酸の混合物であってもよい。バイオキレート剤は、アルダル酸、ウロン酸、及びそれぞれの対カチオンの混合物であってもよい。例えば、バイオキレート剤は、グルカル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルコース酸化生成物、及びグルコン酸酸化生成物を含んでもよい。更に又は或いは、バイオキレート剤は、二糖、酸化二糖、ウロン酸、及びアルダル酸を含む糖酸化生成物を含んでもよい。例えば、バイオキレート剤は、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、n-ケト酸及びC2-C6の二酸を含んでもよい。対カチオンは、第1族及び第2族のアルカリ土類金属を含む。例えば、対カチオンは希土類金属を含んでもよい。更に又は或いは、対カチオンはアンモニウムを含む。
【0008】
更に又は或いは、ある態様において、銅、黄銅、他の黄色金属、それらの合金、又はそれらの組み合わせを含むシステムにおける腐食を低減するための方法である。本方法は、腐食防止剤を含有する水溶液を導入することを含んでもよい。システムは工業用水を含んでもよい。工業用水は、可溶性銅、ハロゲン化物、又はその両方をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示する方法およびシステムの態様の詳細な説明のために、添付図面を参照されたい。
【0010】
図1図1は、実施例1のサンプルの試料組成に対する伝導性のグラフである。
【0011】
図2図2は、実施例2のサンプルの試料組成に対する伝導性のグラフである。
【0012】
図3図3は、実施例3のサンプルの試料組成に対する伝導性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されるのは、例えば水系システムに曝される銅、より詳細には銅とその合金、例えば黄銅や青銅のような「黄色」金属又はその組み合わせからなる表面の腐食を低減するための組成物及び方法である。以下では簡略化のため、銅、黄銅、その他の黄色金属、それらの合金、又はそれらの組み合わせを総称して銅及び銅に似た金属と呼び、CULと記す。
【0014】
ある態様において、本明細書に開示する組成物は、構成要素(例えば、機器)及び/又は構成要素を利用する方法に有害な可能性がある、構成要素表面への物質の堆積を減少させること及び/又は表面を化学的に変化させることに有効である。ある態様では、機器の表面は銅及びその合金、例えば黄色金属(黄銅、青銅)からなる。
【0015】
ある態様では、CULが適用される水系システムは工業用水を含む。ここで、「工業用水」とは、製品の製造、加工、洗浄、希釈、冷却、若しくは輸送、製品への水の組み込み、又は衛生上の必要性などの工業的作業で使用される水を指す。ある態様では、工業用水は給水である。ここで、給水とは、ボイラー及び/又は冷却塔で使用され、効率を確保又は向上させ、ボイラー及びシステムの寿命を最大化し、メンテナンスコストを削減し、運転性能のレベルを維持するなどのために使用される水を指す。1つ又は複数の態様において、工業用水は、貫流冷却システム、閉鎖循環冷却システム、若しくは乾式冷却塔などの冷却システム、又は湿式冷却塔や蒸発冷却塔などの開放循環システムに存在する。別の態様では、工業用水は内燃機関の冷却を促進する。
【0016】
ある態様において、本明細書に開示する組成物は、別の腐食防止剤、例えば従来の腐食防止剤の一種又は従来の腐食防止剤の組み合わせの機能を改善する可能性がある。そのため、本開示の組成物は、成分として一次腐食防止剤を含んでもよい。一般に、本明細書に開示する組成物は、例えば一次腐食防止剤単独と比較して高い腐食防止効果を示すことを理解されたい。以下では、このような組成物を一般にCUL表面腐食防止剤又はCULSCIと呼ぶ。
【0017】
ある態様において、本開示のCULSCIは通常、バイオキレート剤、溶媒、及び一次腐食防止剤を含む。
【0018】
ある態様において、本開示のCULSCIは、キレート剤、例えばバイオキレート剤を含む。ここで、キレート剤とは封鎖剤又はキレート薬とも呼ばれ、金属に結合可能な分子を指す。キレート剤は、2つ以上の電子供与性基を有する配位子であり、配位子上の各原子と金属との間に1つより多くの結合が形成される。この結合は、各電子陰性原子の電子が金属中心との結合を形成するために両方の電子を提供することを意味する供与結合又は配位共有結合であってもよい。ある態様では、キレート剤はバイオキレート剤である。本明細書で使用される接頭辞「バイオ」は、酵素触媒を使用するなどの生物学的方法による生成を示す。
【0019】
ある態様において、バイオキレート剤は、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、又はそれらの組み合わせと、対カチオンとを含む。対カチオンは、アルカリ金属(第1族)、アルカリ土類金属(第2族)、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。ある態様において、対カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、セシウム、又はそれらの組み合わせである。別の態様では、対カチオンはアルミニウム、シリカ、チタン、又はホウ素を含む。
【0020】
ある態様において、バイオキレート剤は、グルコース酸化生成物、グルコン酸酸化生成物、グルコネート(gluconate)、グルカル酸、又はそれらの組み合わせを含む。グルコース酸化生成物、グルコン酸酸化生成物、又はそれらの組み合わせは、適切なpHに緩衝化される。緩衝化は、バイオキレート剤の総重量に対して約1重量%(wt%)~約10重量%、約1重量%~約3重量%、更に又は或いは約5重量%~約9重量%の量のpH調整物質を使用するなど、任意の適切な方法により実施することができる。ある態様では、バイオキレート剤は、20重量%のグルコネート溶液中に約1重量%から約8重量%の苛性溶液を含む。
【0021】
更に又は或いは、ある態様において、バイオキレート剤は緩衝化グルコース酸化生成物、緩衝化グルコン酸酸化生成物、又はそれらの組み合わせを含む。これらの態様において、緩衝化グルコース酸化生成物、緩衝化グルコン酸酸化生成物、又はそれらの組み合わせは、水酸化ナトリウムなどの任意の適切な酸又は塩基を用いて、約6から約7のような適切なpHに緩衝化される。このような態様において、バイオキレート剤はグルコン酸とグルカル酸の混合物を含み、n-ケト酸、C-Cの二酸、又はそれらの組み合わせからなる副成分をさらに含む。ある態様では、バイオキレート剤は、テキサス州ヒューストンのソリュゲン(Solugen)社から市販されているBIOCHELATE(商標)金属キレート製品からなる。
【0022】
更に又は或いは、バイオキレート剤は、銅、カルシウム、マグネシウム、バリウム、カリウム、ストロンチウム、ホウ素、セシウム、ベリリウム、及びナトリウムなどの工業用水によく見られる他の一価及び二価の陽イオンをキレート化又は封鎖することもできる。
【0023】
ある態様において、バイオキレート剤は、組成物の総重量に対して約0.1重量%(wt%)から約70重量%、約0.1重量%から約15重量%、更に又は或いは約0.1重量%から約2.5重量%の量でCULSCI中に存在する。ここで重量%は、特に指定しない限り、示された組成物の総重量に基づく。
【0024】
ある態様において、本開示のCULSCIは一次腐食防止剤を含む。例えば、一次腐食防止剤は、チアゾール、トリアゾール、又はそれらの組み合わせを含む。チアゾール及びトリアゾールは、環構造の一部として窒素原子と少なくとも1つの別の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子とを含む5原子の芳香族環分子である。アゾール系化合物は、窒素含有(N含有)、窒素・酸素含有(N&O含有)、及び窒素・硫黄含有(N&S含有)の3つの大きなクラスに分けられる。
【0025】
ある態様において、一次腐食防止剤は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、ブチルベンゾトリアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、(2-ピロールカルボニル)ベンゾトリアゾール、(2-チエニルカルボニル)ベンゾトリアゾール、アミノ-1,2,4-トリアゾール、ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、メルカプト-1H-1,2,4-トリアゾール、メチル-2-フェニルイミダゾール、アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、フェニル-1-H-テトラゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
【0026】
ある態様では、一次腐食防止剤は、CULSCI中に約0.001重量%~約50重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.1重量%~約0.3重量%、更に又は或いは約5重量%~約50重量%の量で存在する。
【0027】
ある態様において、本開示のCULSCIはさらに溶媒を含む。一般に、CULSCI及び/又は実施される活性に適合する任意の溶媒を利用することができる。ある態様では、溶媒は水、アルコール、又はポリオールを含む。ある態様では、ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、グリセロール、2,2-ジメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,4-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はそれらの組み合わせなどの脂肪族ポリオールであってもよい。溶媒として利用可能な好適なアルコールの非限定的な例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、シクロヘキサノールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ある態様において、溶媒は、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0028】
ある態様では、溶媒は組成物の総体積に対して約10%から約100%の量で存在してもよい。別の態様では、他の全ての成分が判明している場合、溶媒は組成物の残りを構成する量でCULSCI中に存在してもよい。
【0029】
一つ又は複数の態様において、本明細書に開示するタイプのCULSCIは、任意の適切な方法により調製することができる。例えば、バイオキレート剤、一次腐食防止剤、及び溶媒は、適切な器(例えば、容器、ブレンダーなど)中でブレンド又は混合してもよい。ある態様において、CULSCIの成分は、スケール(scale)抑制及び/又は腐食抑制の効果を発揮するためにシステムに導入される均質な混合物を形成するように混合可能である。
【0030】
ある態様では、CULSCI又はその2つ以上の成分は、システムに添加する前にあらかじめ混合されてもよい。例えば、バイオキレート剤と従来型の腐食防止剤は、溶媒の有無にかかわらず、前処理の工程において別々に添加することができる。
【0031】
1つ又は複数の態様において、限定はしないが、CULSCIは冷却塔、ボイラー、蒸発器、熱交換器、冷凍機、逆浸透/ろ過システム、及び蒸留/分離プロセスなどの工業用水を利用するシステムに導入される。別の態様では、CULSCIは工業用水処理、自動車用流体、金属加工用流体、除氷剤、潤滑剤、洗浄剤、直接処理、回路基板、インク及びコーティング製品などの用途に適用することができる。ある態様では、CULSCIは工業用冷却システム又はエンジン冷却システムに導入される。
【0032】
CULSCIは、使用者及び/又は方法が目的とする活性(例えば、腐食抑制)を発揮するのに有効な量を水系システムに導入することができる。例えば、腐食を効果的に抑制するためには、CULSCIはある濃度以上で存在する必要がある。スケールの沈着を防止するために必要な防止剤の最小濃度は、一般に「最小阻止濃度」(MIC)又は「最小有効濃度」(MEC)と呼ばれる。1つ又は複数の態様において、CULSCIを導入したシステムは、CULSCIの量がその特定のシステムにおけるMIC又はMECを保持するように監視される。
【0033】
CULSCIが導入された水系システムは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、又はその両方をさらに含んでもよい。1つ又は複数の態様において、可溶性銅は工業用水中に約0.01mg/L~約10mg/Lであってもよく、例えば、少なくとも約0.01mg/L、少なくとも約0.05mg/L、少なくとも約0.1mg/L、少なくとも約0.5mg/L、少なくとも約1.0mg/L、又は少なくとも約5.0mg/Lである。別の態様では、工業用水はハロゲン化物をさらに含む。
【0034】
ある態様では、CULSCIは、CULSCIが水系システムに接触して腐食を抑制できるように、ポートやバルブなどのシステムの適切な導入部に注入されるなど任意の適切な方法によりシステムに導入される。ある態様において、本開示の方法は、CULSCIレベルを監視し、使用者及び/又は方法が求める範囲の機能レベルを維持するように調整することをさらに含む。ある態様では、本明細書に開示するタイプのCULSCIは、手動でシステムに導入することができる。別の態様では、CULSCIの導入は自動化されてもよい。システム中のCULSCIの濃度をモニターする方法を開発してもよい。システム中のCULSCI投与量の監視は、連続的、半連続的、不連続的、自動、手動、又はそれらの組み合わせで行うことができる。
【0035】
ある態様において、本方法はポンプなどの装置にプログラムして、特定のシステムにおいて少なくともMIC又はMECとなる所定量のCULSCIを供給することができる。この方法は、プログラム可能なポンプなどの材料供給装置や材料供給ポンプのような任意の適切な供給装置を用いて自動化することができる。ポンプなどの装置は、処理中の水に維持量のasciを添加するために、特定の実行時間間隔で所定回数作動するようにプログラムすることができる。
【0036】
ある態様において、本開示のCULSCIは驚くべきことに、一次腐食防止剤(例えば、トリアゾール)単独の使用と比較してCULの腐食抑制効果を向上させる。例えば、CULSCIは一次腐食防止剤単独で観察される腐食抑制効果と比較して、約10%~約100%、約70%~約90%、更に又は或いは約90%~約99%の予想外に有益な腐食抑制効果を向上させる。
【0037】
ある態様では、CULSCIを一次腐食防止剤(例えば、トリアゾール)と併用することで、相乗効果が得られる。その結果、腐食の問題に効果的に対処するために必要な一次腐食防止剤の最小濃度を低下できる。言い換えれば、本明細書で開示するタイプのCULSCIを添加することで、同じレベルの腐食抑制効果を得るのに必要な一次腐食防止剤の量は、約10%以上、約15%以上、又は約20%以上減少する可能性がある。その結果、一次腐食防止剤の使用量が削減され、それに伴ってコストと環境への影響も低減される。
【0038】
実施例
本開示の主題を一般的に説明したが、以下の実施例は主題の特定の態様として提示されており、その実施及び利点を示している。実施例は説明のために提供されたものであり、いかなる方法によっても本明細書又は特許請求の範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。
【0039】
実施例1
本明細書で開示するタイプのCULSCIを調製し、腐食防止剤として評価した。表1に実験で使用した試験条件を示す。
【表1】
【0040】
TTAはトリトリアゾールであり、組成物に8ppm添加した。結果を図1に示す。図1を参照すると、3ppmの遊離銅を添加すると、腐食速度は0.83MPYから4MPYに増加した。さらに10ppmのHOBrを添加すると、腐食速度は4.66MPYに増加した。しかし、図1に示すように、20ppmのBiochelate(商標)を少量添加すると、腐食速度は基準値よりも低くなった。更に図1に示すように、クエン酸とBiochelate(商標)の組み合わせでは性能の向上は見られず、代わりに腐食速度がわずかに高くなった。クエン酸とBiochelate(商標)の組み合わせの結果はカルボン酸の合計濃度が性能の重要な指標ではないことを示しており、より詳細なその理由は、クエン酸とBiochelate(商標)の組み合わせは、同様に20ppmのカルボン酸の合計濃度を有するためである。むしろ、Biochelate(商標)の濃度がCULSCIの腐食速度低減効果における重要な要素である。
【0041】
実施例2
TTAの量を減らして、従来のCUL阻害剤の性能を高めるBiochelate(商標)の効果を調べた。試験条件を表2に示す。
【表2】
【0042】
結果を図2に示す。図2を参照すると、TTA濃度が1/4である一方で、腐食速度は約半分に減少している。アゾール類の安定化におけるBiochelate(商標)の効果は明らかである。
【0043】
実施例3
完全に調合された生成物が混合され、調合生成物の効果が評価された。調合生成物の組成は、TTAが20%、Biochelate(商標)が15%であった。
【0044】
試験条件は表2の条件と同じである。結果を図3に示す。図3を参照すると、配合されたBiochelate(商標)-アゾール生成物は、(アゾールとして)活性を有する腐食防止剤の存在量が少ないにもかかわらず、高い性能を示した。
【0045】
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義を提供する。特に断らない限り、以下の定義は本開示に適用される。用語が本開示で使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示又は定義に抵触しない限り、又はその定義が適用される請求項を不明確又は非有効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd Ed (1997)の定義を適用することができる。
【0046】
周期表の元素群は、Chemical and Engineering News, 63(5), 27, 1985に掲載された元素周期表のバージョンに示された番号の付け方を用いて示されている。例えば元素群は、第1族元素はアルカリ金属、第2族元素はアルカリ土類金属、第3~12族元素は遷移金属、第17族元素はハロゲンなどの、各群に付けられた一般的な名称を用いて示される。
【0047】
請求項の移行の用語又は語句について、「含む」、「含有する」、「備える」、又は「~を特徴とする」と同義である移行句「有する」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素又は方法の工程を除外するものではない。移行句「~のみからなる(consisting of)」は、請求項で特定されていない要素、工程、又は成分を除外する。移行句「基本的に~からなる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、特定された材料又は工程、及び請求項に記載された発明の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を与えないものに限定する。「基本的に~からなる」の請求項は、「~のみからなる」形式で記載された閉じた請求項と、「有する」形式で作成された完全に開いた請求項の中間を占める。反対の指定がない限り、化合物又は組成物を記載する場合、「基本的に~からなる」は「有する」と解釈されるものではなく、その用語が適用される組成物又は方法を著しく変更しない材料を含む記載成分を指すことを意図している。組成物および方法が様々な成分またはステップを「有する」という用語で記載されている場合、組成物および方法は様々な成分またはステップから「基本的になる」または「なる」こともできる。
【0048】
追加の開示
本開示の以下の列挙された態様は、非限定的な例として提供される。
【0049】
第1の態様は、銅、黄銅、その他の黄色金属、それらの合金、又はそれらの組み合わせからなる表面用の腐食防止剤であって、バイオキレート剤、一次腐食防止剤、及び溶剤を含む。
【0050】
第2の態様は第1の態様の腐食防止剤であって、バイオキレート剤が天然に存在する分子、又は単糖若しくは多糖から誘導されたものである。
【0051】
第3の態様は第1又は第2の態様の腐食防止剤であって、バイオキレート剤がアルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、それらの塩、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
【0052】
第4の態様は第1から第3のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が、グルコン酸ナトリウム、グルカル酸ナトリウムの酸化生成物、それらの1つ以上の塩、それらの1つ以上の誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
【0053】
第5の態様は第4の態様の腐食防止剤であって、バイオキレート剤が、約50重量%未満の量のn-ケト酸及びC-Cの二酸をさらに含む。
【0054】
第6の態様は第1から第5の態様のいずれかの腐食防止剤であって、一次腐食防止剤は、チアゾール、トリアゾール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0055】
第7の態様は第1から第6の態様のいずれかの腐食防止剤であって、第1の腐食防止剤は、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、チアゾール、1,2,4-チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、ブチルベンゾトリアゾール、1,3,4-チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、(2-ピロールカルボニル)ベンゾトリアゾール、(2-チエニルカルボニル)ベンゾトリアゾール、アミノ-1,2,4-トリアゾール、ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、メルカプト-1H-1,2,4-トリアゾール、メチル-2-フェニルイミダゾール、アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、フェニル-1-H-テトラゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
【0056】
第8の態様は第1の態様の腐食防止剤であって、溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、グリセロール、2,2-ジメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,4-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0057】
第9の態様は第1から第8の態様のいずれかの腐食防止剤であって、溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、シクロヘキサノールなど、又はそれらの組み合わせを含む。
【0058】
第10の態様は第1から第9の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤がアルダル酸及びウロン酸の混合物である。
【0059】
第11の態様は第1から第10の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤は、アルダル酸、ウロン酸、及びそれぞれの対カチオンの混合物である。
【0060】
第12の態様は第1から第11の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が、グルカル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルコース酸化生成物、及びグルコン酸酸化生成物を含む。
【0061】
第13の態様は第1から第12の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が、二糖、酸化二糖、ウロン酸、及びアルダル酸を含む糖酸化生成物を含有する。
【0062】
第14の態様は第1から第13の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、n-ケト酸、及びC-Cの二酸を含む。
【0063】
第15の態様は第1から第14の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤は対カチオンをさらに含み、対カチオンは、第1族及び第2族のアルカリ土類金属を含む。
【0064】
第16の態様は第1から第15の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が対カチオンをさらに含み、対カチオンが希土類金属を含む。
【0065】
第17の態様は第1から第16の態様のいずれかの腐食防止剤であって、バイオキレート剤が対カチオンをさらに含み、対カチオンがアンモニウムを含む。
【0066】
第18の態様は、銅、黄銅、その他の黄色金属、それらの合金、又はそれらの組み合わせを含むシステムにおいて腐食を低減する方法であって、下記を有する。
【0067】
請求項1に記載の腐食防止剤を含む水溶液を導入する。
【0068】
第19の態様は第18の態様の方法であって、システムが工業用水又は源水を含む。
【0069】
第20の態様は第18又は第19の態様の方法であって、工業用水又は源水が、可溶性銅、ハロゲン化物又はその両方をさらに含む。
【0070】
第21の態様は第18から第20の態様のいずれかの方法であって、防止剤の投与量は、工業用水又は源水の遊離又は錯体化した残留可溶性銅の手動又は自動での化学分析に基づき、手動又は自動化された手段によって調整可能である。
【0071】
第22の態様は第18から第21の態様のいずれかの方法であって、工業用水又は源水の可溶性銅含有量が0.05mg/Lより大きい。
【0072】
第23の態様は第18から第22の態様のいずれかの方法であって、工業用水又は原水の可溶性銅含有量が0.1mg/Lより大きい。
【0073】
第24の態様は第18から第23の態様のいずれかの方法であって、工業用水又は原水の可溶性銅含有量が0.5mg/Lより大きい。
【0074】
第25の態様は第18から第24の態様のいずれかの方法であって、工業用水又は原水の可溶性銅含有量が1.0mg/Lより大きい。
【0075】
本開示の主題の態様を示して説明したが、当業者であれば、本主題の精神および教示から逸脱することなく、その改変が可能である。本明細書に記載された態様は例示的なものであり、限定することを意図するものではない。本明細書に開示された主題の多くの変更および改変が可能であり、それらは開示された主題の範囲内である。数値範囲または数値限定が明示的に記載されている場合、そのような明示的な範囲または限定は、明示的に記載された範囲または限定に該当する同様の大きさの反復的な範囲または限定を含む(例えば、約1から約10までには2,3,4などが含まれ、0.10より大きいには0.11、0.12、0.13などが含まれる)と理解されなければならない。請求項の構成要素に関する「任意に」という用語の使用は、対象の要素が必須であること、または必須でないことを意味することを意図している。いずれの選択肢も請求の範囲に含まれることが意図されている。含有する(comprises)、含む(includes)、有する(having)等のより広い用語の使用は、のみからなる(consisting of)、基本的に~からなる(consisting essentially of)、ほぼ~からなる(consisting substantially of)等のより狭い用語のサポートを提供するものと理解されなければならない。
【0076】
従って、保護範囲は上記の説明によって限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の主題の全ての均等物を含む。各請求項は、本開示の態様として明細書に組み込まれる。つまり、特許請求の範囲は更なる説明であり、本発明の態様の追加である。本明細書における参考文献、特に、本出願の優先日以降の公開日を有する参考文献の記述は、それが本開示の主題に対する先行技術であることを認めるものではない。本明細書において引用される全ての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、それらが本明細書における記載を補足する例示的、手順的、または他の詳細を提供する範囲において、参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】