(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】HIS低応答者の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240711BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P9/00
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K31/40
A61K31/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024504808
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2022070780
(87)【国際公開番号】W WO2023006657
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517045129
【氏名又は名称】ニューアムステルダム・ファルマ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カステレイン,ヨハンネス・ヤーコプ・ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】ディトマーシュ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン,マイケル・ハービー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC05
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、心血管疾患の治療、より詳細にはHIS治療に対して低応答性である、アテローム動脈硬化性心血管疾患に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の治療に関する。本発明者らは、そのスタチン療法がCETP阻害剤オビセトラピブでの治療と組み合わされる場合、HIS低応答者がその血中脂質プロファイルの顕著な改善を示すことを見出した。したがって、一般的な態様では、本発明は、高強度スタチン(HIS)療法に対して低応答性の対象を治療する方法であって、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む組成物の投与を含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための、構造式:
【化1】
を有する化合物であるオビセトラピブ又はオビセトラピブの薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、前記方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む、医薬組成物。
【請求項2】
HIS療法に対する低応答性は、HIS療法を受けている対象が35%のLDL-C低減に到達しないことを意味する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記対象は、HIS療法を受けており、且つ35%のLDL-C低減に到達しない対象である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
高強度スタチン療法は、正常に応答する対象で≧50%のLDL-C低減を呈するスタチンレジメンを示す、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記方法は、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記方法は、4~25mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与、或いは等効力の用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記方法は、5mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与、或いは等効力の用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記方法は、10mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与、或いは等効力の用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記方法は、オビセトラピブ又はその塩、溶媒和物若しくは水和物の1日1回の投与を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記方法は、70~90mgの範囲内の1日用量でのアトルバスタチンの投与を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記方法は、30~50mgの範囲内の1日用量でのロスバスタチンの投与を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記対象は、継続的なHIS療法の少なくとも3ヵ月後に、少なくとも70mg/dLのLDL-Cの上昇した血漿レベルを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記方法は、ベースラインから少なくとも25mg/dLのLDL-C血漿レベルを低減させるのに有効であり、且つ/又はそれを意図しており、ベースラインは、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療の開始として定義される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
治療される前記対象は、継続的なHIS療法の少なくとも3ヵ月後に、少なくとも70mg/dLのアポBの上昇した血漿レベルを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記方法は、ベースラインから少なくとも25mg/dLのアポB血漿レベルを低減させるのに有効であり、且つ/又はそれを意図しており、ベースラインは、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療の開始として定義される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記方法は、少なくとも6ヵ月間の期間中、オビセトラピブ又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する前記組成物の反復投与を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記対象は、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、過体重/肥満症及び/又はメタボリック症候群に罹患している対象である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法であって、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物の投与を含み、前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、前記方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む、方法。
【請求項19】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための薬物の製造における、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の使用であって、前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、前記方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患の治療、より詳細には高強度スタチン(HIS)療法に対して十分な応答を示さない、アテローム動脈硬化性心血管疾患に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象、特にHIS治療に対して低応答性の対象の治療に関する。本発明は、HISと併せて血漿LDL-C、アポB及び非HDL-Cの主要な改善をもたらし、その結果、関連する症状及びリスクが改善されることが新たに判明したアドオン療法とHISが併用される新規な治療様式を提供する。
【背景技術】
【0002】
アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)は、世界の主な死因の1つである。2015年には、世界的死亡の31%までがASCVDに起因するものであった。ASCVDは、EUにおける主要な死因であり、米国におけるASCVDに起因する疾患の負担は、他の慢性疾患の負担よりも大きい。
【0003】
一般に、低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-C)レベルとASCVDリスクとの間に強い関連があることが認識されている。「スタチン」と通常呼ばれるHMG CoAレダクターゼ阻害剤によるHMG CoAレダクターゼの阻害は、コレステロールの産生を低減し、且つ循環からのコレステロールの肝摂取を促進することにより、血中のLDL-Cレベルを低減することが示されている。血中のこれらのLDL-Cレベルを下げるかかるスタチン療法を適用した結果、その商業的導入以来、ASCVD関連罹患率及び死亡率が顕著に低下している。それ以来、スタチンは、ASCVDの予防及び管理のための脂質低下薬物療法の基礎となっている。臨床治験からの証拠は、スタチンでの低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)低下の程度と、ASCVDイベントのリスクの相対的な低減との間の一貫した線形関係を示している。更に、スタチンのコストが低いことは、低リスク患者(10年間の心血管疾患計算リスクが7.5%である患者など)でもその治療の対費用効果が高いことも意味する。
【0004】
スタチン治療によってASCVD治療及び予防で進歩を遂げているにも関わらず、耐用性及び安全性の問題のため、スタチンで達成できることには制限がある。特に、高用量では、スタチンは、肝酵素の増加及びミオパシー、ときに横紋筋融解が起こり得、それにより急性腎不全から死に至り得る。更に、最も効果的なスタチンの最大耐用量でも、LDL-Cの目標は、患者、特に高いASCVDリスクの患者の有意な分集団で達成することができない。例えば、アジア、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中東及びアフリカにわたる29か国で登録された35,000名を超える患者(平均年齢60歳)におけるCEPHEUS研究から、高心血管リスクの患者の50%のみ及び非常に高いリスクの患者の20%がガイドライン推奨LDL-C目標レベルに達することが分かった。更に、EUROASPIRE、冠動脈患者のケアの汎ヨーロッパの調査から、スタチン取り込みの改善があったが、患者5名における1名未満が1.8mmol/L未満のLDL-C目標に達したことが分かった。EUROASPIREからの証拠によって示されるように、例えば遺伝的因子による、スタチン治療に対する患者の応答性の変動は、無視できない因子である。実際に、JUPITER研究からの証拠により、スタチン応答性の広い変動性が強調されている。この二次的分析では、LDL-C低下応答中央値が50%であると同時に、半分以上がこれより低い応答を示し;43%が<50%のLDL-C低下を有し、11%が、ロスバスタチン20mgを用いてLDL-Cの低下なし又は更に増加を示した。最初の心血管イベントの発生率が、LDL-Cの少なくとも50%の低下を示す患者と比較して、スタチンに応答しない患者で約2倍高いことから、応答の大きさは、スタチンから得られる臨床的利益の重要な決定因子であった。現実世界の状況からの証拠は、スタチン低応答性の大きさを実証しており、高リスク患者の60%は、スタチン療法を用いてLDL-Cレベルの30%未満の低下を示した。
【0005】
スタチンに対する患者の応答性は、ASCVDの進行に対するその影響を考慮すると一層関連性がある。これは、血管造影的冠動脈疾患を有する患者における血管内超音波で明確に示された。スタチンに対する応答が不適切な患者(すなわち推奨スタチン用量を用いてLDL-Cレベルの15%未満の低下)は、アテローム体積パーセントによって評価される、アテローム性動脈硬化症の進行は、スタチン応答者よりも有意に高かった。ベースライン特性及びプラーク量に対して調節した後でもこの関連性が残った。この研究では、患者の20%がスタチンに対して不適切な応答者であることが示され、したがって進行性ASCVDのリスクがより高いことが示された。
【0006】
上記から理解されるように、(高強度)スタチン療法に対する低応答者の安全及び効果的な薬理学的治療様式の臨床的な実施において、依然として対処されていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる新規な治療様式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、そのスタチン療法がCETP阻害剤オビセトラピブでの治療と組み合わされる場合、HIS低応答者がその血中脂質プロファイルの顕著な改善を示すことを見出した。特に、本明細書の実験パートで説明されるように、高強度スタチン療法に加えて投与されるオビセトラピブは、(HIS療法に加えて)プラシーボと類似の安全性プロファイルを有し、本発明者らの第2b相臨床試験で忍容性がよいことが新たに示された。HIS低応答者のグループでは、オビセトラピブは、LDL-Cレベル中央値を下げ、5mgの用量でベースラインから-41.5%のレベルとなり、10mgの用量で-50.8%となった。アポB、非HDL-C及びHDL-Cレベルの有意な改善も試験で実証された。
【0009】
オビセトラピブ化合物自体は、多数の新規なCETP阻害剤の1つとして、その全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第1730152号明細書及び米国特許第7,872,126号明細書に最初に記載された。
【0010】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/032324号パンフレット及び米国特許第10,300,059号明細書は、オビセトラピブとHMG CoAレダクターゼ阻害剤との組み合わせを用いた、(AS)CVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の治療に関し、有利な安全性プロファイルと併せて、血中のLDL-C濃度の低下に関する相乗効果が報告されている。国際公開第2016/032324号パンフレットに従い、その併用により、HMG CoAレダクターゼ阻害剤の用量を減らすことが可能となり、それにより、ときにHMG CoAレダクターゼ阻害剤と関連する忍容性の問題が克服/軽減される。
【0011】
国際公開第2016/032324号パンフレットに説明されるように、心血管罹患率の低減におけるCETP阻害の可能性を支持する明らかな証拠があるにも関わらず、CETP阻害剤の臨床的開発は、簡単ではなかった。いくつかの有望なCETP阻害剤が既に開発から撤退されている。HMG CoAレダクターゼ阻害剤アトルバスタチンと併せて使用した場合、CETP阻害剤トルセトラピブにより、心血管イベント及び死亡率が予想外に増加する結果となった。LDL-C濃度及び発生に対する影響が最小限であると共に、HDL-Cを30~40%増加させる、生体内で弱い阻害剤であると証明されている別のCETP阻害剤、ダルセトラピブは、薬物が600mgで投与される第3相試験において、無益性の根拠から中止された。130mgの1日用量でエバセトラピブを用いた促進試験では、CVの利点を示すことができなかったが、全死因死亡率に対して名目上有意な利益を示した。100mgの1日用量でアナセトラピブを用いたREVEAL試験の6.4年間の経過観察から、CV保護に対するCETP阻害剤クラスが確認され、LDL-C又はアポBの低下は、確認されたCV利益の要因であることが示唆された。治療的価値があると示されたエバセトラピブ及びアナセトラピブの投薬量は、比較的多い。併用療法でそれらを使用した場合、これは、忍容性の問題を示し得る。
【0012】
国際公開第2016/032324号パンフレットは、(AS)CVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある患者の一般集団において、オビセトラピブがスタチンとの併用でも他のCETP阻害剤よりかなり有利な安全性及び有効性プロファイルを有することを示している。しかしながら、HIS療法に対する非応答者及び/又は低応答者の集団でのオビセトラピブの有利な作用は、国際公開第2016/032324号パンフレットでは開示又は予示されていない。
【0013】
Kasteleinら(“Anacetrapib as lipid-modifying therapy in patients with heterozygous familial hypercholesterolaemia(REALIZE):a randomised,double-blind,placebo-controlled,phase 3 study”.THE LANCET,vol.385,no.9983,1 May 2015(2015-05-01),pages 2153-2161)は、第3相REALIZE試験の結果を考察しており、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)を有する患者は、10~80mgの範囲のアトルバスタチン及び5~40mgの範囲のロスバスタチンの安定したスタチン用量に加えて、CETP阻害剤アナセトラピブで治療された。ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症は、一般的な常染色体優性疾患であり、出生から顕著に高いLDL-Cレベルを生じ、早期発症型CADを引き起こす。heFHは、スタチンで治療可能であると一般に認識されている。例えば、McGowanら(Diagnosis and Treatment of Heterozygous Familial Hypercholesterolemia.J Am Heart Assoc.2019 Dec 17;8(24))は、高強度スタチン治療でLDL-Cを50%~60%下げることができ、FHを有する成人1950名を8.5年間追跡したコホート観察研究では、未治療患者に対してスタチン治療患者で心血管イベントの76%の低減が報告されたことを説明している。heFHに罹患している対象は、HIS非応答者及び/又は低応答者と見なされない。
【0014】
一般的な態様では、本発明は、スタチン療法、特に高強度スタチン(HIS)療法に十分に応答しない対象を治療する方法を提供し、前記方法は、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む組成物の投与を含む。
【0015】
より詳細には、本発明は、以下の態様に関する。
【0016】
本発明の第1の態様は、CVD、特にASCVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法に関し、前記方法は、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物の投与を含み、対象は、HIS療法に対して低応答者であり、その方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む。
【0017】
本発明の更なる態様は、CVD、特にASCVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物に関し、対象は、HIS療法に対して低応答者であり、その方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む。
【0018】
本発明の更なる態様は、CVD、特にASCVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための薬物の製造における、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の使用にも関し、対象は、HIS療法に対して低応答者であり、その方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含む。
【0019】
本発明の他の態様は、好ましくは単位剤形において、任意選択的にHMG CoAレダクターゼ阻害剤と併せて、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物と;複数のかかる薬剤の単位剤形を含むパッケージ並びに前記HIS療法のみに対して応答が不十分である場合、併用オビセトラピブ治療及びスタチン療法、特にHIS療法によってCVD、特にSCVDを治療及び/又は予防するために前記単位剤形を繰り返し自己投与するための印刷説明書含むリーフレットを含むキットとに関する。
【0020】
別段の指定が具体的にない限り、本発明のこれらの態様は、すべて同じ組成物、同じ治療方法、同じ主題等を伴うことが理解されるであろう。上述の方法並びにそこで使用される組成物及び薬剤キットの具体的な詳細及び好ましい実施形態は、以下の詳細な説明及び補足の実験パートに基づいて当業者に明らかになるであろう。
【0021】
医薬組成物
本発明による医薬組成物は、医薬品有効成分(「API」)として、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む。オビセトラピブは、IUPAC名(2R,4S)-4-{[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-[5-(3-カルボキシプロポキシ)ピリミジン-2-イル]アミノ}-2-エチル-6-トリフルオロメチル-3,4-ジヒドロ-2H-キノリン-1-カルボン酸エチルエステル及び以下の構造式:
【化1】
を有する化合物のINNである。
【0022】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、その従来の意味を有し、過剰な毒性、炎症、アレルギー反応がなく、且つ他の問題となる合併症が妥当な利益/リスク比に釣り合う、哺乳動物、特にヒトの組織との接触に適している、健全な医学的判断の範囲内にある化合物、物質、組成物及び/又は剤形を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」は、作用薬の活性を維持し、且つ製薬的使用に許容可能であるいずれの塩も包含する。薬学的に許容される塩は、酸、別の塩又は酸若しくは塩に変換されるプロドラッグの投与の結果として生体内で形成し得る塩も意味する。開示される化合物の薬学的に許容される塩は、当業者によく知られた方法によって調製され得る。合成経路は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第1730152号明細書及び米国特許第7,872,126号明細書;その全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第2007728号明細書及び米国特許第8,084,611号明細書;その全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第3180314号明細書及び米国特許第10,112,904号明細書に記載されている。
【0024】
更に、その組成物は、水(「水和物」)、エタノール等の薬学的に許容される溶媒を含む溶媒和物の状態でオビセトラピブを含み得る。一般に、溶媒和状態は、本発明の目的のために非溶媒和形態と等しいと見なされる。
【0025】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、オビセトラピブ又はその塩若しくは溶媒和物、場合により1種又は複数の追加の非毒性成分を含む組成物であって、いずれかの投与経路を介した(ヒト)対象への投与に適した形態を取り、且つかかる投与に対して生理的に耐容性である組成物を意味する。
【0026】
したがって、本発明の組成物は、1種又は複数の更なる成分を含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、1種又は複数の担体及び/又は賦形剤を含む。当業者に公知のように、賦形剤の適切な選択は、APIの物理化学的特性、好ましい薬剤形態、好ましい投与経路、望ましい放出速度等の複数の因子に依存する。本発明の組成物は、様々な投与経路に対して製剤化され得、経口投与が特に好ましい。その開示全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Meade Publishing Co.,Easton,Pa.,20th Ed.,2000)などの教科書に反映される通常の一般知識及び日常の開発努力に依拠して適切な製剤を考案及び開発することは、当業者の範囲内にある。
【0027】
本発明の様々な態様に従い、組成物は、好ましくは、単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象への単位投与量として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は、いずれかの適切な薬剤担体及び/又は賦形剤と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された活性物質の所定の量を含有する。例示的で非限定的な単位剤形としては、タブレット、カプレット、カプセル(例えば、ハードカプセル又はソフトカプセル)、トローチ、フィルム、ストリップ、ゲルキャップ並びに例えばバイアル、シリンジ、アプリケーター器具、サッシェ、スプレー、マイクロポンプ等に収容され得る溶液、懸濁液、シロップ剤又はエリキシル剤等の定量体積が挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態に従い、単位剤形は、経口投与に適した単位剤形である。最も好ましくは、それは、経口摂取のためのタブレットなどの固形単位剤形である。
【0028】
本発明の様々な態様に従い、組成物は、オビセトラピブを少なくとも1mg、好ましくは少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、少なくとも6mg、少なくとも7mg、少なくとも8mg若しくは少なくとも9mg、例えば約10mgの用量で;又はオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む単位剤形で提供される。本発明の様々な態様に従い、組成物は、通常、オビセトラピブを100mg以下、より好ましくは75mg以下、50mg以下、40mg以下、30mg以下、20mg以下、15mg以下、12.5mg以下、12mg以下若しくは11mgの用量で;又はオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む単位剤形で提供される。本発明の様々な態様に従い、組成物は、好ましくは、オビセトラピブを1~100mg、2~50mg、3~50mg、4~25mg、4.5~15mg若しくは5~10mgの範囲内の用量で;又はオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む単位剤形で提供される。特定の好ましい実施形態では、組成物は、オビセトラピブを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20mgの用量で;又はオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む単位剤形で提供される。特定の好ましい実施形態では、組成物は、オビセトラピブを5、7.5、10、12.5若しくは15mgの用量で;又はオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む単位剤形で提供される。
【0029】
本明細書で使用される「等効力」という用語は、特定の強度の薬理的作用をもたらす能力を等しく有すること又はそれが等しく可能であることを意味する。指定の量の参照化合物と「等しい」所定の化合物の量を意味することも当技術分野で一般的である。例えば、組成物がオビセトラピブの塩を含む場合、投与され、且つ/又は単位用量形態に組み込まれる前記塩の量は、遊離塩基と塩形態との分子量差を考慮に入れるために調整する必要がある。例えば、遊離塩基形態で使用することもできる活性化合物の塩形態を含む認可された医薬品のラベル及び/又は製品情報で投与量を表す際、使用される塩の用量がそれと等しい遊離塩基の用量を指定することは、従来通りの慣例である。これに関連して、「等効力」という用語は、「等価」という用語と同義であると見なされる。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、好ましくはスタチン、特にアトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群から選択され、最も好ましくはアトルバスタチン及びロスバスタチンからなる群から選択されるHMG CoAレダクターゼ阻害剤を更に含む。本発明の教示に基づいて当業者によって理解されるように、本発明は、対象が、オビセトラピブに基づく療法と、スタチン療法、特にHIS療法とを同時に受ける併用治療に関するため、その組成物が、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物と、HMG CoAレダクターゼ阻害剤との両方を含む、一定用量併用製品である実施形態が構想される。したがって、本発明は、前記HMG CoAレダクターゼ阻害剤を、通常、1~80mgの範囲の量で含む単位剤形で提供される、本明細書で定義される組成物を提供する。好ましくは、HMG CoAレダクターゼ阻害剤の用量は、安全であり、且つ(AS)CVDの治療に対して認可された最高(1日)用量の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%及び/又は120%未満、115%未満、110%未満、105%未満、103%未満、102%未満若しくは101%未満である。一部の実施形態では、本発明は、単位剤形で提供される、本明細書で定義される組成物であって、アトルバスタチンを70~90mg、75~85mg、77.5~82.5mg、例えば70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89若しくは90mg、最も好ましくは約40mg若しくは80mgの用量で;又はアトルバスタチンの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、単位剤形で提供される、本明細書で定義される組成物であって、ロスバスタチンを30~50mg、35~45mg、37.5~42.5mg、例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50mg、最も好ましくは約20mg若しくは40mgの用量で;又はロスバスタチンの塩、溶媒和物若しくは水和物を等効力用量で含む組成物を提供する。
【0031】
本発明の更なる実施形態では、本発明による組成物は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、好ましくはオメガ-3多価不飽和脂肪酸、より好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)又はその組み合わせからなる群から選択されるPUFAを含む。PUFA、特にオメガ-3PUFAは、リグリセリドが豊富なリポタンパク質、レムナントコレステロール及び超悪玉コレステロールに対する特異的な能力を有するのに対して、HMG CoAレダクターゼ阻害剤は、レムナントコレステロールに対する全く作用を有さず、トリグリセリドを豊富に含むリポタンパク質に対して有効性がほとんどなく、CETP阻害剤は、トリグリセリドを豊富に含むリポタンパク質及びレムナントコレステロールに対して全く又はほとんど作用を有さない。したがって、医薬組成物においてHMG CoAレダクターゼ阻害剤、CETP阻害剤及びPUFAを合わせることにより、心血管疾患に罹患しているか又はそのリスクが高い対象の治療に対して組成物が特に適切となる。PUFAは、その遊離酸形態で存在し、すなわち、PUFA種は、実質的にエステル化形態で存在し、好ましくはエチルエステル形態で存在する。PUFAがこの形態で使用される場合、HMG CoAレダクターゼ阻害剤は、前記PUFAにおける可溶性が優れている。この点に関して、その文献が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/169797号パンフレットが参照される。
【0032】
治療適応
本明細書において上記で説明されるように、本発明は、スタチン療法、特に高強度スタチン(HIS)療法に十分に又は全く応答しない対象の治療的及び/又は予防的治療の方法を提供する。特に、本発明は、本明細書で定義される組成物を用いた、かかる対象における心血管疾患、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患の治療及び/又は予防の方法も提供する。本発明は、本明細書で定義される組成物を用いた、かかる対象における(アテローム硬化性)心血管疾患に伴う1つ又は複数の症状の治療及び/又は予防の方法を更に提供する。本発明は、本明細書で定義される組成物を用いた、かかる対象における(アテローム硬化性)心血管疾患に伴う且つ/又は(アテローム硬化性)心血管疾患によって起こる1つ又は複数の病状の治療及び/又は予防の方法を更に提供する。本発明は、本明細書で定義される組成物を用いた、かかる対象における高LDL-Cレベル及び/又は高アポBレベルなどの(アテローム硬化性)心血管疾患に伴う1つ又は複数の病原学的因子の治療及び/又は予防の方法を更に提供する。本発明は、本明細書で定義される組成物を用いた、かかる対象におけるスタチン療法、特に高強度スタチン療法に対する抵抗性又は低応答性を緩和及び/又は改善する方法を更に提供する。
【0033】
特異的な疾患又は症状と組み合わせて使用される場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語(例えば、「...疾患を治療する方法」)は、前記疾患及び/又は付随する症状を治癒、軽減又は抑止すること、症状の程度を減らすこと、疾患の状態を安定させること(すなわち悪化させない)、増悪を遅らせるか又は遅くすること、疾患状態の改善、生存期間の延長(治療なしの予想生存期間と比較して)等を意味する。本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」又は「予防」という用語は、疾患及び/又は付随する症状を対象が獲得するリスクを低減すること、対象が疾患を獲得する時期を遅らせること等を意味する。患者又は対象に関して使用される場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語(例えば、「疾患を治療する方法」)は、一般に、治療的目的及び/又は予防的目的に関わらず、前記患者又は対象に治療化合物を投与する行為を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「心血管疾患」という用語は、対象の循環器系の機能が損なわれるようになる疾患又は病状に言及するその従来の意味を有する。心血管疾患の例としては、血栓塞栓性障害(例えば、動脈心血管血栓塞栓性障害、静脈心血管血栓塞栓性障害又は心臓の房室における血栓塞栓性障害);アテローム性動脈硬化症;高血圧性心疾患;冠動脈疾患;頚動脈疾患;脳卒中;アテローム性動脈硬化症を含む末梢性動脈疾患;再狭窄;動脈炎;心筋炎;心血管炎症;血管炎症;冠動脈心疾患(CHD);不安定狭心症(UA);難治性不安定狭心症;安定狭心症(SA);慢性安定狭心症;急性冠症候群(ACS);心筋梗塞(初回又は再発性);急性心筋梗塞(AMI);心筋梗塞;虚血性心疾患;心臓虚血;虚血;虚血性突然死;一過性虚血性発作;脳卒中;末梢閉塞性動脈疾患;静脈血栓症;深部静脈血栓;血栓性静脈炎;動脈塞栓症;冠動脈血栓症;大脳動脈血栓症、脳塞栓;腎塞栓;肺塞栓等が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される「アテローム動脈硬化性心血管疾患」という用語は、心血管疾患の特定のタイプに対する構成要素又は前駆体としてアテローム性動脈硬化症を含む心血管疾患の具体的なサブセットを意味する。アテローム性動脈硬化症は、LDL-Cの滞留に伴う、動脈血管壁に生じる慢性炎症反応である。それは、動脈の狭小(「狭窄」)を引き起こし得、最終的に動脈開口部の部分的若しくは完全な閉鎖及び/又はプラーク破綻を引き起こし得るアテローム性プラークの形成を伴う。したがって、アテローム動脈硬化性疾患又は障害は、アテローム性プラークの形成及び破綻の結果を含み、限定されないが、動脈の狭窄又は狭小、心不全、動脈瘤形成、例えば大動脈瘤、動脈解離及び心筋梗塞若しくは脳卒中などの虚血性イベントが挙げられる。
【0036】
特に好ましい実施形態では、本発明に従って有利に治療及び/又は予防され得る、アテローム動脈硬化性心血管疾患及び/又はアテローム動脈硬化性心血管疾患に伴う病態は、動脈硬化症、末梢血管疾患、高脂質血症、混合型脂質代謝異常βリポタンパク血症、低αリポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再潅流障害、血管形成後の再狭窄、高血圧症、脳梗塞及び脳卒中からなる群から選択される。
【0037】
本発明の教示から明らかであるように、本発明の方法は、HIS療法に対して低応答性である対象でもLDL-C血漿レベルの低減及び/若しくは正常化に有効であり、且つ/又はそれを意図される。より詳細には、その方法は、LDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%である。更なる実施形態では、その方法は、LDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5mg/dL、より好ましくは少なくとも10mg/dL、少なくとも15mg/dL、少なくとも20mg/dL、少なくとも25mg/dL、少なくとも30mg/dL、少なくとも35mg/dL又は少なくとも40mg/dLである。更なる実施形態では、その方法は、レベル85mg/dL、好ましくはレベル80mg/dL未満、75mg/dL未満、70mg/dL未満、65mg/dL未満、60mg/dL未満、55mg/dL未満又は50mg/dL未満へのLDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は、アポB血漿レベルの低減及び/若しくは正常化に有効であり、且つ/又はそれを意図される。より詳細には、その方法は、アポB血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも22.5%、少なくとも25%又は少なくとも27.5%である。更なる実施形態では、その方法は、アポB血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5mg/dL、より好ましくは少なくとも5mg/dL、少なくとも10mg/dL、少なくとも15mg/dL、少なくとも20mg/dL、少なくとも22.5mg/dL、少なくとも25mg/dL又は少なくとも27.5mg/dLである。更なる実施形態では、その方法は、レベル80mg/dL未満、好ましくは75mg/dL未満、70mg/dL未満、65mg/dL未満、60mg/dL未満、57.5mg/dL未満又は55mg/dL未満へのアポB血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は、非HDL-C血漿レベルの低減及び/若しくは正常化に有効であり、且つ/又はそれを意図される。より詳細には、その方法は、非HDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%又は少なくとも42.5%である。更なる実施形態では、その方法は、非HDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも5mg/dL、より好ましくは少なくとも10mg/dL、少なくとも15mg/dL、少なくとも20mg/dL、少なくとも25mg/dL、少なくとも30mg/dL、少なくとも35mg/dL又は少なくとも40mg/dLである。更なる実施形態では、その方法は、レベル110mg/dL未満、好ましくは100mg/dL未満、90mg/dL未満、80mg/dL未満、75mg/dL未満、70mg/dL未満又は65mg/dL未満への非HDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は、HDL-C血漿レベルの上昇に有効であり、且つ/又はそれを意図される。より詳細には、その方法は、HDL-C血漿レベルの上昇に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%又は少なくとも140%である。更なる実施形態では、その方法は、非HDL-C血漿レベルの上昇に有効であり、且つ/又はそれを意図され、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療開始として定義されるベースラインから少なくとも25mg/dL、より好ましくは少なくとも40mg/dL、少なくとも50mg/dL、少なくとも55mg/dL、少なくとも60mg/dL、少なくとも65mg/dL又は少なくとも70mg/dLである。更なる実施形態では、その方法は、50mg/dLを超える、好ましくは60mg/dLを超える、70mg/dLを超える、80mg/dLを超える、90mg/dLを超える、100mg/dLを超える又は110mg/dLを超えるレベルへのHDL-C血漿レベルの低減に有効であり、且つ/又はそれを意図される。
【0041】
本発明の更なる実施形態では、その方法は、スタチン療法、特に高強度スタチン療法に対する抵抗性若しくは応答性の緩和及び/若しくは改善に有効であり、且つ/又はそれを意図される。高強度スタチン療法は、LDL-Cの低減に最も高い有効性を有するスタチンの最高許容投薬量に基づくレジメン、特に正常に応答する対象で一般に≧50%のLDL-C低減を呈するレジメンを示すために当技術分野で従来から使用される用語である。臨床的な実施で現在使用されているスタチンの中で、ロスバスタチン20mg(1日量)又は40mg(1日量)及びアトルバスタチン40mg(1日量)又は80mg(1日量)のみが基準を満たす。本発明に関連して、HIS療法に対する低応答性は、HIS療法を受けている患者が35%のLDL-C低減に到達しないことを意味し、好ましくはHIS療法を受けている患者が30%のLDL-C低減、25%のLDL-C低減、20%のLDL-C低減、15%のLDL-C低減又は10%のLDL-C低減に到達しないことを意味する。HIS療法に対する低応答性の緩和及び/又は改善とは、対象の応答(LDL-C低減)と、正常応答性対象の(平均)応答との差が低減されることを意味する。本発明の更なる実施形態では、その方法は、スタチン療法に対する応答性の正常化に有効であり、且つ/又はそれを意図される。
【0042】
治療される対象
本明細書において上記で説明されるように、本発明の方法は、CVD、特にASCVDに罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の治療及び/又は予防に関する。
【0043】
「対象」という用語は、本明細書に提供される組成物を使用することによって治療することができる疾患又は病状に罹患しているか又は罹患する傾向がある生物、一般に哺乳動物、特にヒトの対象を意味する。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態では、対象は、CVD、特にASCVDと診断されている対象である。
【0045】
本発明の更なる好ましい実施形態では、その対象は、例えば、ヘルスケア専門家によって判断され得る、CVD、特にASCVDを発症するリスクがある、一般に上記の平均を上回るリスクがあると見なされる対象である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、対象は、体重/肥満症、メタボリック症候群等を含む、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症など、(AS)CVDの出現と因果的及び/又は疫学的相関性を有する1つ又は複数の病状に罹患している対象である。本発明の更なる好ましい実施形態では、対象は、(AS)CVDを発症する遺伝的素因のある対象である。本発明の更なる好ましい実施形態では、対象は、不健康な食事、運動不足、アルコール摂取、喫煙など、ライフスタイル/生活習慣因子の結果として(AS)CVDを発症する傾向がある対象である。
【0047】
更に、上述から明らかなように、本発明に従って治療される対象は、通常、スタチン療法、特にHIS療法を既に受けている。更に、本発明に従って治療される対象は、通常、スタチン療法、特にHIS療法に対して低応答性を示す。本明細書で他に記載のように、高強度スタチン療法は、LDL-Cの低減に最も高い有効性を有するスタチンの最高許容投薬量に基づくレジメン、特に正常に応答する対象で一般に≧50%のLDL-C低減を呈するレジメンを示すために当技術分野で従来から使用される用語である。臨床的な実施では、ロスバスタチン20mg/日、又は40mg/日、又はアトルバスタチン40mg/日、又は80mg/日のみがHIS療法と見なされる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、その対象は、HIS療法を受けており、且つ35%のLDL-C低減に到達しない対象、好ましくは30%のLDL-C低減、25%のLDL-C低減、20%のLDL-C低減、15%のLDL-C低減又は10%のLDL-C低減に到達しない、HIS療法を受けている対象である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態に従い、治療される対象は、HIS療法を受けているにも関わらず、LDL-Cの上昇した血漿レベル、一般に少なくとも70mg/dL、より好ましくは少なくとも75mg/dL、少なくとも80mg/dL、少なくとも85mg/dL、少なくとも90mg/dL、少なくとも95mg/dL又は少なくとも100mg/dLのLDL-C血漿レベルを有する。更に、本発明の好ましい実施形態に従い、対象は、健康な対象における平均LDL-C血漿レベルの少なくとも125%、例えば少なくとも150%、少なくとも175%又は少なくとも200%であるLDL-C血漿レベルを有する。正常なLDL-C(参照)値は、通常、性別及び年齢に応じて異なる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態に従い、治療される対象は、HIS療法を受けているにも関わらず、アポBの上昇した血漿レベル、通常、少なくとも70mg/dL、より好ましくは少なくとも75mg/dL、少なくとも80mg/dL、少なくとも85mg/dL、少なくとも90mg/dL、少なくとも95mg/dL又は少なくとも100mg/dLのアポB血漿レベルを有する。更に、本発明の好ましい実施形態に従い、対象は、健康な対象における平均アポB血漿レベルの少なくとも125%、例えば少なくとも150%、少なくとも175%又は少なくとも200%であるアポB血漿レベルを有する。正常なアポB(参照)値は、通常、性別及び年齢に応じて異なる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態に従い、治療される対象は、HIS療法を受けているにも関わらず、非HDL-Cの上昇した血漿レベル、通常、少なくとも100mg/dL、より好ましくは少なくとも105mg/dL、少なくとも110mg/dL、少なくとも115mg/dL、少なくとも120mg/dL、少なくとも125mg/dL又は少なくとも130mg/dLの非HDL-C血漿レベルを有する。更に、本発明の好ましい実施形態に従い、対象は、健康な対象における平均非HDL-C血漿レベルの少なくとも125%、例えば少なくとも150%、少なくとも175%又は少なくとも200%である非HDL-C血漿レベルを有する。正常な非HDL-C(参照)値は、通常、性別及び年齢に応じて異なる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、スタチン療法、特にHIS療法に対する対象の低応答性は、(継続的な)HIS療法の少なくとも1ヵ月後、より好ましくは少なくとも2ヵ月後、少なくとも3ヵ月後、少なくとも4ヵ月後、少なくとも5ヵ月後又は少なくとも6ヵ月後に確立される。
【0053】
本発明の一実施形態では、対象は、ヒトの男性である。本発明の別の実施形態では、対象は、ヒトの女性である。
【0054】
本発明の更なる好ましい実施形態では、対象は、本明細書に定義される1つ又は複数の他の因子と一般に併せて、対象が年齢35歳を超える、年齢40歳を超える、年齢45歳を超える、年齢50歳を超える、年齢55歳を超える、年齢60歳を超える、年齢65歳を超える又は年齢70歳を超えるなどの年齢に基づくリスクの上昇がある。
【0055】
治療レジメン
本明細書に定義される様々な態様のすべては、オビセトラピブ又はその塩若しくは溶媒和物/水和物を含む組成物、好ましくは本明細書に上記で定義されるいずれかの組成物の投与、一般に反復投与を含む治療方法に関する。
【0056】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、この方法は、少なくとも1mg、好ましくは少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、少なくとも6mg、少なくとも7mg、少なくとも8mg若しくは少なくとも9mg、例えば約10mgの用量でのオビセトラピブ;又は等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物の投与を含む。本発明の種々の態様に従い、この方法は、100mg以下、より好ましくは75mg以下、50mg以下、40mg以下、30mg以下、20mg以下、15mg以下、12.5mg以下、12mg以下若しくは11mgの用量でのオビセトラピブ;又は等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物の投与を含む。本発明の種々の態様に従い、この方法は、1~100mg、2~50mg、3~50mg、4~25mg、4.5~15mg若しくは5~10mgの範囲内の用量でのオビセトラピブ;又は等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物の投与を含む。特定の好ましい実施形態では、この方法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20mgの用量でのオビセトラピブ;又は等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物の投与を含む。特定の特に好ましい実施形態では、この方法は、5、7.5、10、12.5若しくは15mgの用量でのオビセトラピブ;又は等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物の投与を含む。
【0057】
本発明の特に好ましい実施形態では、その治療は、好ましくは、本明細書において上記で定義される範囲内の用量における、オビセトラピブ又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する組成物の反復投与を含む。本発明の特に好ましい実施形態では、その治療は、少なくとも2日に1回又は少なくとも1日1回の頻度において、好ましくは本明細書において上記で定義される範囲内の用量で組成物を反復投与することを含む。本発明の特に好ましい実施形態では、この治療は、1日1回~4回の頻度において、好ましくは本明細書において上記で定義される用量で組成物を反復投与することを含む。本発明の特に好ましい実施形態では、その方法は、最も好ましくは1日2回、上記で定義される範囲内の用量において、オビセトラピブ又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する組成物を1日1回又は2回投与することを含む。
【0058】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、その方法は、少なくとも1mg、好ましくは少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、少なくとも6mg、少なくとも7mg、少なくとも8mg若しくは少なくとも9mg、例えば約10mgの1日用量でオビセトラピブを;又は等効力投薬量でオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。本発明の種々の態様に従い、その方法は、100mg以下、より好ましくは75mg以下、50mg以下、40mg以下、30mg以下、20mg以下、15mg以下、12.5mg以下、12mg以下若しくは11mgの1日用量でオビセトラピブを;又は等効力投薬量でオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。本発明の種々の態様に従い、その方法は、1~100mg、2~50mg、3~50mg、4~25mg、4.5~15mg若しくは5~10mgの範囲内の1日用量でオビセトラピブを;又は等効力用量でオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。特定の好ましい実施形態では、その方法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20mgの1日用量でオビセトラピブを;又は等効力用量でオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。特定の特に好ましい実施形態では、その方法は、4、5、7.5、10、12.5若しくは15mgの1日用量でオビセトラピブを;又は等効力用量でオビセトラピブの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。
【0059】
本発明の教示に基づいて当業者に明らかであるように、本明細書に示される1日用量は、単一の単位剤形及び複数の単位剤形に含有され得る。本発明の最も好ましい実施形態では、この方法は、本明細書に記載の投薬量で1日1回オビセトラピブを投与することを含む。しかしながら、この方法は、その日の間に予め決定された特定の時点において、例えば対象が起床した直後などの朝に1回及び対象が夕食を取るか又は就寝する時間帯付近などの晩に1回、それぞれ上記で示す1日用量のおよそ半分を含む2つの単位剤形形態の投与を含むことも考えられる。本明細書に示す1日用量よりも高い用量のオビセトラピブを含む単位剤形が使用される実施形態も企図される。これは、例えば、十分に長い時間にわたって体内にとどまり、有効成分の放出を維持する徐放性剤形の使用を含む。
【0060】
本発明の実施形態では、本発明に従って使用される組成物の投与を含む方法であって、本明細書の他に記載の範囲内において、対象のLDL-C血漿レベル、対象のアポB血漿レベル及び/又は対象の総非HDL-C血漿レベルの低減に有効である、より好ましくは対象のLDL-C血漿レベル、対象のアポB血漿レベル及び/又は対象の非HDL-C血漿レベルの1つ又は複数の低減を達成するのに有効である用量及び頻度で対象に組成物を投与する、好ましくは反復投与することを含む方法が提供される。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態では、その治療は、少なくとも1ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年、少なくとも30年の期間中、好ましくは上記で定義されるレジメンに従い、オビセトラピブ又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する組成物を反復投与することを含む。特に上限はなく、対象の健康全般及びウェルビーイング(適切に資格を備えたヘルスケア専門家によって決定される)に有益であると考えられる限り、例えば対象の残りの人生にわたって治療を続け得る。
【0062】
本発明の教示に基づいて当業者に明らかであるように、本発明の方法は、HMG CoAレダクターゼ阻害剤を用いた併用治療、好ましくは併用HIS療法を更に含む。このために、HMG CoAレダクターゼ阻害剤及びオビセトラピブ(又はその許容可能な塩、溶媒和物若しくは水和物)は、同時若しくはほぼ同時に、逐次又は並行して投与され得るか或いは異なる時点で投与され得る。本発明の好ましい実施形態では、オビセトラピブ及びHMG CoAレダクターゼ阻害剤の頻度及び投与間隔は、等しく、より好ましくは、それぞれ1日1回、またより好ましくはその日の同じ時点において、逐次又は並行して2つの別個の単位剤形として又は一定用量併用製品の形態で投与される。好ましい実施形態では、本発明の方法は、20~30mg、30~50mg、35~45mg、37.5~42.5mg、例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50mg、最も好ましくは約20mg若しくは40mgの1日用量でロスバスタチンを;又は等効力用量でロスバスタチンの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。好ましい実施形態では、その方法は、40~70mg、70~90mg、75~85mg、77.5~82.5mg、例えば70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89若しくは90mg、最も好ましくは約40mg若しくは80mgの1日用量でアトルバスタチンを;又は等効力投薬量でアトルバスタチンの塩、溶媒和物若しくは水和物を投与することを含む。
【0063】
薬剤キット
本発明の別の態様は、複数の単位剤形と、リーフレットとを含むパッケージを含む薬剤キットであって、前記単位剤形は、本発明による医薬組成物を含有し、前記リーフレットは、本明細書に定義される心臓疾患若しくは機能不全を治療及び/又は予防するためなど、本明細書に定義される治療目標のいずれかを達成するために前記単位剤形を繰り返し自己投与するための印刷された説明書を含む、薬剤キットに関する。
【0064】
本発明の実施形態に従い、薬剤キットは、1つ又は複数のブリスター包装を収容する、厚紙の箱などの容器を含み、前記1つ又は複数のブリスター包装は、本明細書において上記で定義される複数の固形単位剤形、好ましくは本明細書において上記で定義される複数のタブレットを含む。本発明の特に好ましい実施形態では、薬剤キットは、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12又は少なくとも15個の前記単位剤形、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の前記単位剤形を含む。本発明の一実施形態では、薬剤キットは、単一の有効成分としてオビセトラピブを含有する、本明細書で定義される単位剤形のみを含む。本発明の一実施形態では、薬剤キットは、単に、一般に本明細書で他に記載の用量において、単一有効成分としてオビセトラピブを含有する、本明細書で定義される複数の単位剤形と、単一有効成分としてHMG CoAレダクターゼ阻害剤、好ましくはアトルバスタチン又はロスバスタチンを含有する、複数の、好ましくは等しい数の単位剤形とを含む。本発明の一実施形態では、薬剤キットは、単に、定義される複数の単位剤形を含み、各単位剤形は、オビセトラピブ及びHMG CoAレダクターゼ阻害剤を含む。
【0065】
本発明に従い、薬剤キットは、容器内に挿入されるリーフレット、通常、印刷された情報を収めた患者情報リーフレットを含み、その情報は、キットに収容される単位剤形の形態及び組成の説明、製品が意図する治療適応の適応症、製品の使用法に関する説明書、使用に伴う有害作用及び禁忌に関する情報及び警告を含み得る。本明細書に示す情報に基づき、本発明によるキットの一部であるリーフレットは、通常、本発明の治療方法に関して上述の治療適応、使用、治療レジメン等に関する情報を含むことが当業者によって理解されるであろう。本発明の特に好ましい実施形態では、リーフレットは、前記HIS療法単独に対して不十分な応答の場合、併用されたオビセトラピブ治療とHIS療法とによってCVD、特にASCVDを治療及び/又は予防するために単位剤形を繰り返し(自己)投与するための印刷された説明書を含む。
【0066】
その他
本明細書に定義される組成物に含有される薬理学的及び/又は生理活性成分の多く又は大部分は、薬学的に許容される塩又は溶媒和物の形態で存在し得ると理解されたい。かかる形態は、通常、本発明での使用に等しく適しているであろう。
【0067】
特に定義されない限り、技術的及び科学的用語を含む、本発明の開示で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。更なるガイダンスにより、用語の定義は、本発明の教示をよりよく理解するために含まれる。
【0068】
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈で明確に他に指定されない限り、単数形と複数形との両方を意味する。一例として、「区画」とは、1つ又は複数の区画を意味する。
【0069】
パラメータ、量、期間などの測定可能な値に言及する、本明細書で使用される「約」は、その変動が、開示される本発明における実施に適切である限り、指定の値から+/-10%以下、より好ましくは+/-5%以下、またより好ましくは+/-1%以下の変動を包含することを意味する。しかしながら、「約」という修飾語が意味する値は、それ自体も具体的に開示されると理解されたい。
【0070】
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含んでいる」、「含む(comprises)」及び「構成される」は、「包含する(include)」、「包含している」、「包含する(includes)」又は「含有する(contain)」、「含有している」、「含有する(contains)」と同義であり、且つ例えば成分の存在を指定する包括的又はオープンエンドな用語であり、当技術分野で公知であるか又はそこで開示されている追加の記載されていない成分、特徴、要素、メンバー、工程の存在を排除又は除外しない。
【0071】
終点による数値範囲の詳述は、その範囲内に包含されるすべての数及び分数並びに記載の終点を含む。本発明は、上述の多くの具体的な特徴を組込み得ることが当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】患者のフローチャート。
1AEは、中等度の関節痛であった。
28週目の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)評価(プラシーボ及びオビセトラピブ5mg群のそれぞれでn=1)がないため、又は8週目のLDL-C評価(オビセトラピブ10mg群でn=1)がオビセトラピブ投与から5日を超えた後に行われたため、対象は、PP集団から除外された。略語:AE、有害事象;ITT、治療企図;mITT、修正治療企図;PK、薬物動態;PP、プロトコル遵守。
【
図2a】リポタンパク質脂質濃度中央値。Friedewald式によって測定されたLDL-C濃度、ベースラインで高強度スタチンのバックグラウンドで投与されたプラシーボ(●)、オビセトラピブ5mg(■)及びオビセトラピブ10mg(▲)群(各n=40)に関する、且つ治療から4週及び8週後(Lp(a)については治療の8週後のみ)のアポB(
図2b)並びにHDL-C(
図2c)。略語:Apo、アポリポタンパク質;HDL-C、高密度リポタンパク質コレステロール;LDL-C、低密度リポタンパク質コレステロール。
【
図2b】リポタンパク質脂質濃度中央値。Friedewald式によって測定されたLDL-C濃度、ベースラインで高強度スタチンのバックグラウンドで投与されたプラシーボ(●)、オビセトラピブ5mg(■)及びオビセトラピブ10mg(▲)群(各n=40)に関する、且つ治療から4週及び8週後(Lp(a)については治療の8週後のみ)のアポB(
図2b)並びにHDL-C(
図2c)。略語:Apo、アポリポタンパク質;HDL-C、高密度リポタンパク質コレステロール;LDL-C、低密度リポタンパク質コレステロール。
【
図2c】リポタンパク質脂質濃度中央値。Friedewald式によって測定されたLDL-C濃度、ベースラインで高強度スタチンのバックグラウンドで投与されたプラシーボ(●)、オビセトラピブ5mg(■)及びオビセトラピブ10mg(▲)群(各n=40)に関する、且つ治療から4週及び8週後(Lp(a)については治療の8週後のみ)のアポB(
図2b)並びにHDL-C(
図2c)。略語:Apo、アポリポタンパク質;HDL-C、高密度リポタンパク質コレステロール;LDL-C、低密度リポタンパク質コレステロール。
【発明を実施するための形態】
【0073】
実施例1:HIS療法に対する補助剤としてのオビセトラピブのプラシーボ対照、二重盲検、無作為化、第2相試験
高強度スタチン療法に対する補助剤としてのオビセトラピブの有効性、安全性及び忍容性を評価するために、プラシーボ対照、二重盲検、無作為化、第2相試験を実施した。
【0074】
高LDL-Cは、CVDを発症する主要な変更可能な危険因子である。LDL-Cを下げることは、CVイベントのリスクを下げることが分かっており、リスクの低下は、絶対的なLDL-C低下に線形に比例する。LDL-Cの低下は、ASCVD及びHeFH患者における主要な治療的脂質標的である。公開された患者レベルのメタ解析から、LDL-Cの1mmol/L低下は、それぞれ主要なCVイベントの5年発生率の22%低減と関連することが分かった。適度な低減に対して強いLDL-C低下により、高CVリスクの患者に大きい利益が付与される。
【0075】
スタチンは、一般に、脂質代謝異常の治療における第一選択の薬物である。スタチンは、LDL-Cレベルを低減するのに最も強力であり、最も有効であり且つ最良の耐容性の薬物と考えられる。しかしながら、患者の3分の2は、スタチン単独では、高強度スタチン療法(HIS)でもLDL-Cの許容可能なレベルに達しない。したがって、高強度スタチン療法に補助的に使用される場合、高LDL-Cレベルを確実に低減する長期療法が必要とされる。
【0076】
オビセトラピブは、LDL-Cと主要心血管イベント発生率との両方の低減するための、臨床開発を受けている選択的CETP阻害剤である。軽度脂質代謝異常(TULIP)を有する患者におけるオビセトラピブによるCETP阻害、デンマーク及びオランダで行われた対象364名の研究から、中度~強度スタチン(アトルバスタチン20mg又はロスバスタチン10mg)と12週間併用したオビセトラピブ10mgの1日用量により、スタチン単独療法と比較して最大で50%の増加性LDL-C低減が生じることが判明した。
【0077】
TULIPで確認された結果と対照的に、メンデル無作為化解析の結果から、CETP阻害剤とスタチンの標的をコードする遺伝子におけるバリアントへの併用曝露は、LDL-C及びアポBレベルの逆向性の低減と関連することと、対応するリスク低下は、アポBに比例するが、LDL-Cに対してあまり比例しないことが示唆された。したがって、特に強度スタチンと併せて使用した場合、オビセトラピブの潜在的な臨床上の利点が弱まり得るという懸念があった。別の懸念は、一部のデータから、CETP阻害剤によるLDL-Cの低下がFriedewald式によって確実に評価することができないが、代わりに分取超遠心分離が必要であることが示唆されるという事実に関係する。
【0078】
したがって、HIS療法に対して十分な応答を示さない対象でLDL-C及びアポBを低減するために、高強度スタチン療法に対する補助として、プラシーボと比較されるオビセトラピブ5mg及び10mgの8週間投与の有効性を試験するために、この研究がセットアップされた。この研究は、3つのアーム:1)補助的療法として5mgオビセトラピブ;2)補助的療法としてオビセトラピブ10mg、及び3)プラシーボのアームからなった。第2の目標は、治療中及び経過観察の数週間、他のリポタンパク質脂質及びアポリポタンパク質応答、安全性及び忍容性プロファイル及びオビセトラピブの血漿中濃度を評価することであった。最後に、この研究は、LDL-Cレベルの異なる定量的測定がCETP阻害の治療効果の差をもたらすか否かを決定することを目的とした。
【0079】
試験参加者
高強度スタチン療法で治療され、DL-Cレベル>70mg/DL及びTGレベル<400mg/dLを有する男性及び女性患者(年齢18~75歳)でこの無作為化、二重盲検、プラシーボ対照、並行群間第2相試験を行った。主要な除外基準は、BMI>40kg/m;著しい心血管疾患;HbA1c>10%;コントロールされていない高血圧;能動的な筋疾患;GFR<60ml/分;肝機能不全;貧血;悪性疾患の病歴;アルコール中毒;治験薬製品での治療;PCSK9阻害剤での治療;臨床上有意な症状;及び/又はCETP阻害剤への以前の曝露を有する患者であった。米国の19か所で患者を集めた。試験は、Independent Ethics Committeesによって承認され、各患者は、書面でインフォームドコンセントを提出した。ヘルシンキ宣言の原則及び臨床試験実施基準に従って実施し、プロトコルは、ClinicalTrials.gov(NCT04753606)で登録された。
【0080】
試験デザイン
この試験のスクリーニング期間を2週間まで取った。その後、プラシーボ、オビセトラピブ5mg又はオビセトラピブ10mgに患者を8週の治療期間にわたって無作為化した。その治療期間後、患者は、4週の安全性経過観察及び15週のPK経過観察を続けた。
【0081】
3つの治療研究治療の1つを受けるように患者をランダムに割り付けた。すべての治療が8週間、食事と共に1日1回摂取された。安全性は、有害事象及び併用薬の使用、12誘導心電図(ECG)、バイタルサイン、実験室安全性評価及び身体的検査をモニターすることによって試験全体を通して評価された。他の評価は、唾液中コルチゾール、血漿アルドステロン、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)及びエンドセリン1を含んだ。
【0082】
有効性の評価は、総コレステロール(TC)、HDL-C、LDL-C、トリグリセリド、アポリポタンパク質B(アポB)及び派生パラメータなどの空腹時脂質プロファイルを含んだ。
【0083】
オビセトラピブの安全性及び忍容性プロファイルは、臨床実験室値及び有害事象(AE)の発生率によって評価される。
【0084】
解析方法
モジュラーアナライザー(コレステロールオキシターゼペルオキシダーゼ-ペルオキシダーゼアミノフェナゾンフェノール[CHOP-PAP])法及びグリセロールリン酸オキシターゼ[GPO-PAP]法をそれぞれ用いて、均一系酵素アッセイによって総コレステロール及びトリグリセリドを測定した。Rolf Greiner Biochemica(独国)から市販の試薬及びSiemens(独国)から市販のNアポ蛋白標準血清を使用して、免疫比濁法によってアポリポタンパク質Bを測定した。勾配ゲル電気泳動によりLDL粒径を決定した。超遠心分離-沈殿法を合わせて用いて、HDL画分を分離した(β定量化)。次いで、更に超遠心分離することによってHDL-2及びHDL-3画分を分離した。HDL、HDL2及びHLD-3画分中の総コレステロール、HDL画分中の遊離コレステロール、HDL画分中のトリグリセリド並びに血漿及びHDL画分中のリン脂質は、酵素的方法及びDiasys Diagnostics(独国)から市販の試薬を使用して測定された。Olympus AU600自動分析器で測定を実施し、Roche Diagnostics(総コレステロール、トリグリセリド)及びDiasys Diagnostics(遊離コレステロール、リン脂質)のそれぞれからの二次標準物質を用いて較正した。
【0085】
統計的解析
主要評価項目基準は、LDL-C(変化パーセント)であった。副次的評価項目基準は、アポB、非HDL-C及びHDL-C(変化パーセント)を含んだ。治療企図(ITT)集団は、試験に無作為化されたすべての参加者を含んだ。修正ITT(mITT)集団は、いずれかの治験薬の少なくとも1回投与を受け、且つLDL-C評価のためのベースライン値を有するITT集団におけるすべての参加者を含んだ。安全性の集団は、いずれかの治験薬の少なくとも1回投与を受けるすべての参加者を含んだ。mITT集団は、有効性分析のための一次集団であった。LDL-Cの変化パーセントの主要有効性解析は、反復測定(MMRM)アプローチのための混合モデルを使用して実施された。全体のタイプIエラー率を維持するために、予め指定された階層順序に従って副次的有効性エンドポイントを逐次、有意性レベル0.05で試験した。すべての安全性評価項目を説明的にまとめた。安全性評価項目に統計上の推論は、適用されなかった。PK集団に基づく記述統計と共に血漿オビセトラピブ濃度をまとめた。
【0086】
結果
臨床試験のトップライン結果を以下の表1~8にまとめる。表9及び10並びに
図1及び2は、他の特定の詳細を示す。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
無作為化された対象120名の中で、119名(99.2%)が治療を完了し;修正治療企図(mITT)集団は、120名の対象すべてを含んだ(
図1)。対象は、平均年齢61.8歳、男性55.8%、白人76.7%であり、且つ平均ボディマス指数(BMI)31.1kg/m
2を有した(表9)。すべての患者が高強度スタチンで治療された。大部分がアトルバスタチン40mgを投与されたのに対して(54.2%)、対象の24.2%、8.3%及び13.3%は、それぞれアトルバスタチン80mg、ロスバスタチン20mg及びロスバスタチン40mgが投与された。
【0096】
ベースラインでの且つ治療から4週及び8週後のLDL-C、アポB及びHDL-C濃度を
図2に示し、ベースラインでのリポタンパク質、脂質、アポリポタンパク質及びリポタンパク質(a)[Lp(a)]濃度並びにベースラインから治療終了までの変化パーセンテージを表9に示す。オビセトラピブ5mg及び10mgは、それぞれプラシーボと比較してLDL-Cを有意に低減した(p<0.0001)。Friedewald式を用いてLDL-Cを計算した主要解析では、LDL-Cは、プラシーボの0.0%と比較して、オビセトラピブ5mg及び10mgそれぞれに関してベースラインから42.9%及び45.7%低減された。LDL-Cを決定するこの「ゴールドスタンダード」法を用いて、可能性のある不一致結果を評価するために行われた、分取超遠心分離(β定量化とも呼ばれる)により測定されるLDL-Cに関する結果は、Friedewald式からの結果に匹敵した:プラシーボの-6.50%と比較して、オビセトラピブ5mg及び10mgそれぞれに関して-41.5%及び-50.8%であった。更に、本発明者らは、Friedewald式18に代わり、最近公開されたMartin-Hopkins式を用いて、用量5mg及び10mgのオビセトラピブに対するLDL-C低減を計算し、それらは、再びβ定量化の結果に匹敵し;それぞれ42.5%及び-49.2%であった。補完法及び共分散分析法(ANCOVA)を用いた、混合モデル反復測定(MMRM)を含む他の感度分析により、プロトコル遵守(PP)集団(n=117)の分析と類似の結果が生じた。
【0097】
オビセトラピブ5mg及び10mgはまた、それぞれプラシーボと比較してアポBを24.4%及び29.8%、非HDL-Cを38.9%及び44.4%並びにLp(a)を33.8%及び56.5%有意に低減し(p<0.0001)、HDL-Cを135%及び165%並びにアポA1を44.6%及び47.8%を有意に増加させた(p<0.0001)。TG及びVLDL-C(分取超遠心分離によって測定された)のいずれも、プラシーボと比較してオビセトラピブ5mgにより、穏やかではあるが、有意に低減したが(それぞれ-11.0%及び-11.5%)(p<0.05)、プラシーボ及びオビセトラピブ10mgの比較に有意な差はなかった(表9)。事後解析から、アポB>100mg/dLのベースラインを有する個人では、ビセトラピブ10mgによってベースラインから39%のアポB低減の中央値が得られることが示された。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
治療下で発現した有害事象は、安全性集団における対象120名のうちの合計42名(35.0%)によって報告された:オビセトラピブ5mg群及び10mg群それぞれにおける対象15名(37.5%)及び対象8名(20.0%)がプラシーボ群における対象19名(47.5%)と比較される。処置群における少なくとも2名の対象によって報告される有害事象を表10に示す。最もよく見られた有害事象は、胃腸障害(主に悪心)及び神経系障害(主に頭痛)であった。事象の大部分は、重症度において軽度又は中等度として分類され;プラシーボ群の対象1名(2.5%)が重症有害事象(Covid-19肺炎)を有した。プラシーボ群における対象4名(10.0%)によって報告された6つの事象、オビセトラピブ5mg群における対象2名(5.0%)によって報告された2つの事象及びオビセトラピブ10mgにおける対象1名(2.5%)によって報告された1つの事象は、治験薬関連であると考えられた。プラシーボ群の対象2名(5.0%)は、いずれも重篤有害事象を有した(1名は、Covid-19肺炎[上記]を有し、且つ他の1名は、一過性虚血性発作を有した)。いずれも治験薬に関連しないと見なされた。プラシーボ群における対象1名(2.5%)は、中等度の関節痛を有し、それによって治験薬を中断したが、治験薬に関連すると見なされなかった。いずれの実験室パラメータにもシグナルはなく、すなわちプラシーボと比較してオビセトラピブ処置群で化学、血液学又は尿検査パラメータに臨床的に有意なシフトはなく、バイタルサインの変化はなかった。
【0102】
【0103】
治療終了後のPK評価から、治療後4~8週間で循環から薬物がほぼ完全に浄化された。血漿オビセトラピブレベルは、オビセトラピブ5mg群では治療終了後4、8及び15週時点でそれぞれ92%、98%及び99%(中央値)低減し、オビセトラピブ10mg群ではそれぞれ93%、98%及び99%低減した。
【0104】
考察
高強度スタチン療法(アトルバスタチン40mg若しくは80mg又はロスバスタチン20mg若しくは40mg)を受けた脂質代謝異常(LDL-C>70mg/dL)を有する対象のこの試験では、オビセトラピブ5mg及び10mgのアドオン治療の8週間によってLDL-C、アポB、非HDL-C及びLp(a)が有意に低下し、HDL-C及びアポA1が有意に上昇した。最大のLDL-C低下は、既に治療から4週後に存在した。TULIP研究では、オビセトラピブ1、2.5、5又は10mgを12週間投与された軽度脂質代謝異常を有する患者は、それぞれ27%、33%、45%及び45%のLDL-C低下を有し、オビセトラピブ10mg+アトルバスタチン20mg又は+ロスバスタチン10mgを投与された患者は、それぞれ68%及び63%のLDL-C低下を有した。しかしながら、その試験デザインでは、スタチンに加えてオビセトラピブの所定用量で達成され得る、更なるLDL-C低下を計算することが不可能となり、加えてオビセトラピブと高強度スタチンとの組み合わせを調べなかった。したがって、本発明の結果は、単独療法として且つ中度~強度スタチンと併せて投与されたオビセトラピブの先の所見を超え、高強度スタチンと併用される5mg及び10mg用量の両方でのその脂質改変有効性が実証された。
【0105】
脂質改変療法の無作為化臨床試験及びメンデル無作為化研究からの証拠により、LDL-C低下とASCVDリスクの減少との因果関係が示される。更なるメンデル無作為化分析により、CETP遺伝子におけるバリアントのみに且つ3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ(HMGCR)遺伝子におけるバリアントと併せて関連する、リポタンパク質の変化と主要な心血管イベントのリスクとの関係を更に調べた。この分析から、単独で評価した場合、CETPスコアは、より高いHDL-C並びにより低いLDL-C、それと一致してより低いアポB及びそれに応じて主要な心血管イベントのより低いリスクと関連し、HMGCRスコアと、LDL-C(及びアポB)変化単位当たりの主要な心血管イベントのリスクとの間の関係と大きさがほぼ同等であることが実証された。しかしながら、CETPスコア及びHMGCRスコアを合わせた場合、CETPスコアは、同じLDL-C低減と関連したが、減弱されたアポB応答及び対応する減弱された非有意な心血管リスクと関連した。これらの結果から、CETP及びHMG CoAレダクターゼのいずれも低減する遺伝子バリアントへの併用曝露は、一致しないLDL-C及びアポB低減と関連することと、心血管イベントのリスク低減は、アポBに対する効果に比例し、LDL-Cについてそれほどでもないこととが示唆された。この研究の結果は、中度及び高強度スタチンとオビセトラピブとの組み合わせがアポB低下を有意に減弱し得るという仮説と矛盾する。
【0106】
結論
示されるデータから分かるように、高強度スタチン療法に加えたオビセトラピブ5mg及び10mgは、忍容性がよく、プラシーボと類似の安全性プロファイルを有した。高強度スタチン療法に加えたオビセトラピブ5mg及び10mgは、LDL-Cレベル中央値をそれぞれPUCでのベースラインから-41.5%及び-50.8%に低減した。
【0107】
この研究から、プラシーボと比較したLDL-C、アポB、非HDL-C及びLp(a)の確実な低減並びにHDL-C及びアポA1の増加に対して、高強度スタチンへの補助剤としてのオビセトラピブ5mg及び10mgの有効性が実証され、したがって高強度スタチンと併せて使用した場合、かかる阻害剤誘導効果が減弱されるという理論が反証される。高い心血管リスクのある患者で実質的にLDL-Cを低減する更なる療法の満たされていない医療上のニーズを考慮に入れると、ROSEからの結果は、有望である。
【0108】
オビセトラピブは、高強度用量スタチン療法の使用にも関わらず、その標的LDL-Cガイドライン目標に達しない高リスクASCVD患者にとって価値ある付加物である。特に、オビセトラピブは、HIS療法に低応答性のASCVD患者にとって価値ある付加物である。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための、構造式:
【化1】
を有する化合物であるオビセトラピブ又はオビセトラピブの薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、
前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、
HIS療法に対する低応答性は、HIS療法を受けている対象が、(継続的な)HIS療法の少なくとも1ヵ月後に確立される35%のLDL-C低減に到達しないことを意味し、
高強度スタチン療法は、1日20mgのロスバスタチン;1日40mgのロスバスタチン;1日40mgのアトルバスタチン;及び1日80mgのアトルバスタチンからなる群から選択されるスタチンレジメンを示し、
前記方法は、付随するスタチン療法を更に含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記対象は、HIS療法を受けており、且つ35%のLDL-C低減に到達しない対象である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記方法は、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記方法は、4~25mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与、或いは等効力の用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記方法は、5mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与、或いは等効力の用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記方法は、10mgの用量でのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の経口投与或いは等効力用量でのオビセトラピブの塩、溶媒和物又は水和物の経口投与を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記方法は、オビセトラピブ又はその塩、溶媒和物若しくは水和物の1日1回の投与を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記方法は、70~90mgの範囲内の1日用量でのアトルバスタチンの投与を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記方法は、30~50mgの範囲内の1日用量でのロスバスタチンの投与を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記対象は、継続的なHIS療法の少なくとも3ヵ月後に、少なくとも70mg/dLのLDL-Cの上昇した血漿レベルを有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記方法は、ベースラインから少なくとも25mg/dLのLDL-C血漿レベルを低減させるのに有効であり、且つ/又はそれを意図しており、ベースラインは、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療の開始として定義される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
治療される前記対象は、継続的なHIS療法の少なくとも3ヵ月後に、少なくとも70mg/dLのアポBの上昇した血漿レベルを有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記方法は、ベースラインから少なくとも25mg/dLのアポB血漿レベルを低減させるのに有効であり、且つ/又はそれを意図しており、ベースラインは、HIS療法に対するアドオンとしてのオビセトラピブでの治療の開始として定義される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記方法は、少なくとも6ヵ月間の期間中、オビセトラピブ又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する前記組成物の反復投与を含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記対象は、糖尿病、高血圧症、高コレステロール血症、過体重/肥満症及び/又はメタボリック症候群に罹患している対象である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法であって、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物の投与を含み、
前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、
前記方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含み、
HIS療法に対する低応答性は、HIS療法を受けている対象が35%のLDL-C低減に到達しないことを意味し、
高強度スタチン療法は、正常に応答する対象で≧50%のLDL-C低減を呈するスタチンレジメンを示す、方法。
【請求項17】
心血管疾患(CVD)、特にアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に罹患しているか又は罹患するリスクのある対象の予防的及び/又は治療的処置の方法で使用するための薬物の製造における、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の使用であって、
前記対象は、高強度スタチン(HIS)療法に対する低応答者であり、
前記方法は、付随するスタチン療法、特にHIS療法を更に含み、
HIS療法に対する低応答性は、HIS療法を受けている対象が35%のLDL-C低減に到達しないことを意味し、
高強度スタチン療法は、正常に応答する対象で≧50%のLDL-C低減を呈するスタチンレジメンを示す、使用。
【国際調査報告】