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特表2024-527027タイヤに挿入される無線周波数識別(RFID)デバイス
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  • 特表-タイヤに挿入される無線周波数識別(RFID)デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】タイヤに挿入される無線周波数識別(RFID)デバイス
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504827
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022070826
(87)【国際公開番号】W WO2023006680
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021000019853
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ロンバルディ
(72)【発明者】
【氏名】マリア セシリア パランビ
(72)【発明者】
【氏名】グイード リッピエロ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン キャパルディ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA18
3D131BC36
3D131LA20
(57)【要約】
本発明は、トレッドと、内部空洞を画定するカーカスと、内部空洞の中に収容された空気が加圧された状態を確実に維持するように設計されたインナーライナー層と、及び前記インナーライナー層の自由表面上に固定される無線周波数識別デバイスと、を備えるタイヤに関する。無線周波数識別デバイスは、少なくともRFIDチップ(2)及びRFIDチップ(2)に接続されるアンテナ(3)を有する送信アセンブリ(1)と、並びに送信アセンブリ(1)をカバーし、またインナーライナー層の自由表面上に固定されるゴム被覆構造と、を含む。ゴム被覆構造は、インナーライナー層の応力緩和率(G(0))iよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドと、内部空洞を画定するカーカスと、内部空洞の中に収容された空気が加圧された状態を確実に維持するように設計されたインナーライナー層と、及び前記インナーライナー層の自由表面上に固定される無線周波数識別デバイスと、を備えるタイヤであって、前記無線周波数識別デバイスは、少なくともRFIDチップ(2)及び前記RFIDチップ(2)に接続されるアンテナ(3)を有する送信アセンブリ(1)と、並びに前記送信アセンブリ(1)をカバーし、また前記インナーライナー層の自由表面上に固定されるゴム被覆構造と、を含み、前記ゴム被覆構造は、前記インナーライナー層の応力緩和率(G(0))iよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤにおいて、(G(0))cs<0.7×(G(0))iであることを特徴とする、タイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤにおいて、前記被覆構造は、6MPaより小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、40~100mmの長さ(L)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、40~60mmの長さ(L)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、10Mpa以上の弾性率(E)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項7】
請求項6に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、10~25MPaの弾性率(E)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項8】
タイヤのインナーライナー層の自由面上に固定されるように設計された無線周波数識別デバイスであって、前記デバイスは、少なくともRFIDチップ(2)及び前記RFIDチップ(2)に接続されるアンテナ(3)を含む送信アセンブリ(1)と、前記送信アセンブリ(1)を覆うゴム被覆構造と、を備え、前記デバイスは、前記ゴム被覆構造が、6MPaよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、40~100mmの長さ(L)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、40~60mmの長さ(L)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、10Mpa以上の弾性率(E)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、10~25MPaの弾性率(E)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに挿入される無線周波数識別(radio-frequency identification:RFID)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ産業では、製造業者が、製造中、使用中及び処分中のタイヤを自動的且つ明確に識別することが可能な解決策の必要性を表明している。
【0003】
例えば、特にタイヤの製造に関して言及すると、タイヤの自動的且つ明確な識別により、製造業者が、製造プロセス及び物流業務を最適化し、自動制御システムの使用を支援し、タイヤの効率的な位置特定/追跡を実行し、したがって、スマートタイヤ(smart tyre)の工場を建設することを可能にすることができる。
【0004】
この点に関して、インナーライナー(innerliner)層の外面に被着される無線周波数識別(RFID)デバイスの使用が知られている。このデバイスは、ゴム被覆構造と、少なくともRFIDチップ及びチップに接続されたアンテナを備える送信アセンブリとから構成され、送信アセンブリは、被覆構造の内側に配置される。
【0005】
被覆構造は、1つの単層又はいくつかの層を含む場合がある。例えば、被覆構造は、内部に送信アセンブリが組み込まれた円筒形の構造を有する1つの単一層から構成される場合があり、又は送信アセンブリを収容するようにサンドイッチ状に配置された1対の層から構成される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のデバイスは、タイヤの使用中にアンテナが受ける応力によって引き起こされる障害による影響を受ける。これらの応力は、タイヤが回転によってデバイスの領域内の地面に押し付けられるたびに、デバイス全体、したがってアンテナが受ける変形に起因する。これらの連続的且つ繰り返しの応力は、アンテナの劣化又は被覆構造からのアンテナの分離を引き起こす可能性がある。
【0007】
本発明の発明者らは、アンテナに及ぼされる応力が、アンテナ及びゴム被覆構造の機械的特性にどのように関連するかについて研究した。
【0008】
これらの研究に続いて、本発明の発明者らは、タイヤの回転中にアンテナが受ける応力を最小限にするような技術的特徴を有する無線周波数識別(RFID)デバイスを設計した。
【0009】
特に、本発明者らは、ゴム被覆構造の粘弾性特性に着目した。実際、応力は、インナーライナーからゴム被覆構造を介してアンテナに伝達される。
【0010】
次式は、変形が加えられた瞬間におけるアンテナの座標xに沿った応力(σ)の分布を提供する式である。座標xは、アンテナの中心を始点とするアンテナ上の点の距離を表す。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、Eはアンテナの剛性であり、rはアンテナの半径を示し、εは時間0における変形の程度を示す。様々な量に続く下付き文字「」は、時間0、すなわち、変形が生じた瞬間に関する量を示す。
【0013】
ζ及びβは、以下に示すように定義される。
ζ=L/2r
β=2G(0)/Eln(R/r
【0014】
ここで、Lはアンテナの長さ、G(0)はゴム被覆層の応力緩和率、Rは被覆層の半径である。
【0015】
以下の説明は、アンテナの剛性が10MPaを超える弾性率で表されるとの仮定から始まる。しかしながら、一般的に言えば、本発明によるデバイスに適していると考えられるアンテナは、15~25MPaの範囲内における弾性率を有する。
【0016】
以下に示す式の助けを借りて、本発明の発明者らは、デバイス全体の機能性を損なわない、アンテナにかかる応力のレベルを確保するようなゴム被覆層の条件を特定した。この点に関して、本発明者らは、本発明の目的のために、ゴム被覆層の応力緩和率と、正に無線周波数識別デバイスが固定されているインナーライナーとの間の関係を評価することが関連することを見出した。実際、上述のように、応力は、インナーライナーからゴム被覆層を介してアンテナに伝達される。したがって、タイヤの使用中にアンテナに及ぼされる応力のレベルを低くすることを確保するために、ゴム被覆構造の応力緩和率を、インナーライナーの応力緩和率よりも小さくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の要旨は、トレッドと、内部空洞を画定するカーカスと、内部空洞の中に収容された空気が加圧された状態を確実に維持するように設計されたインナーライナー層と、及びインナーライナー層の自由表面上に固定される無線周波数識別デバイスと、を備えるタイヤであり、無線周波数識別デバイスは、少なくともRFIDチップ及びRFIDチップに接続されるアンテナを有する送信アセンブリと、送信アセンブリを覆い、インナーライナー層の自由表面上に固定されるゴム被覆構造と、を含み、被覆構造は、インナーライナー層の応力緩和率(G(0))iよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする。
【0018】
好ましくは、(G(0))cs<0.7×(G(0))iである。
【0019】
被覆体は、好ましくは、6MPaよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有する。
【0020】
アンテナは、好ましくは40~100mm、より好ましくは40~60mmの長さを有する。
【0021】
アンテナは、好ましくは10MPa以上、より好ましくは10~25MPaの弾性率を有する。
【0022】
本発明のさらなる主題は、タイヤのインナーライナー層の自由表面上に固定されるように設計された無線周波数識別デバイスであり、デバイスは、少なくともRFIDチップ及びRFIDチップに接続されるアンテナを含む送信アセンブリと、送信アセンブリを覆うゴム被覆構造と、を備え、デバイスは、被覆構造が、6MPaよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする。
【0023】
アンテナの条件(長さ及び弾性率)は、タイヤの使用後、したがって、デバイスが繰り返しの変形を受けた後でさえアンテナの機能性を維持することが可能な無線周波数識別デバイスを獲得するのに役立つ。
【0024】
本発明による送信アセンブリが概略的な形態で示されている添付の図面を用いて、本発明の実施形態を説明的かつ非限定的な目的で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による送信アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面には、本発明による送信アセンブリ1が示されている。送信アセンブリ1は、RFIDチップ2及びRFIDチップ2に接続されるアンテナ3を備える。
【0027】
被覆層の製造のために、3つのゴムコンパウンドを考慮に入れた。各被覆層を、アンテナ3の長さ(L)及び弾性率(E)が互いに異なるような異なる送信アセンブリに被着した。
【0028】
特に、以下に記載される3つのコンパウンドのうちの2つ(A及びB)は比較コンパウンドであり、3つのコンパウンドのうちの1つ(C)は本発明によるコンパウンドである。2つの比較コンパウンドのうちの1つ(A)は、インナーライナー層に属する。このことは、デバイスの送信アセンブリをインナーライナー層の内部に直接組み込むことはできないことを証明している。
【0029】
表I([表1])は、3種のコンパウンドのphr組成と、及び各コンパウンドに対する応力緩和率G(0)の計算値とを示す。応力緩和率G(0)は、ISO6914規格に従って計算した。
【0030】
【表1】
【0031】
アンテナが受ける応力(σ)を、被覆層に使用されるコンパウンドに応じて、また使用されるアンテナのタイプに応じて計算した。特に、異なる送信アセンブリのアンテナは、長さ(L)及び弾性率(E)が互いに異なる。
【0032】
被覆層は、円筒の軸線に沿うようにアンテナが配置される円筒であると仮定した。
【0033】
は1mmに等しいと仮定し、Rは2mmに等しいと仮定し、εは15%に等しいと仮定する。
【0034】
表II([表2])は、被覆層のコンパウンド及びアンテナのタイプに応じたσの値を示す。σの値は、アンテナ端部の近傍、具体的には、端部からの距離がアンテナの長さ(L)の5%に等しい場所で計算した。
【0035】
【表2】
【0036】
表IIに示される値は、本発明による応力緩和モジュールを有するコンパウンドを用いて被覆層が製造された場合、同じ変形が与えられると、アンテナが受ける応力が著しく小さくなることを明確に示している。
【0037】
当業者であれば明確に分かるように、本発明によるカバー層について示されている応力値は、アンテナの完全性及びゴム被覆層へのアンテナの結合の安定性、並びにその結果として、デバイス全体の機能性を確保するものである。
【0038】
反対に、被覆層に対するコンパウンドA及びBを考慮して計算された応力は、あまりに高く、タイヤの使用中にデバイスの機能性を確保できないことがわかる。特に、インナーライナーコンパウンド(A)を用いて製造された被覆構造で検出された応力値は、送信アセンブリをインナーライナーに直接挿入できないことを示している。
【0039】
最後に、上述したものとは対照的に、デバイスは、円筒状のゴム層から構成されるのではなく、サンドイッチ状に配置された2つのゴム層から構成され、2つのゴム層の間に送信アセンブリを収容する被覆構造を備えてもよい。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドと、内部空洞を画定するカーカスと、内部空洞の中に収容された空気が加圧された状態を確実に維持するように設計されたインナーライナー層と、及び前記インナーライナー層の自由表面上に固定される無線周波数識別デバイスと、を備えるタイヤであって、前記無線周波数識別デバイスは、少なくともRFIDチップ(2)及び前記RFIDチップ(2)に接続されるアンテナ(3)を有する送信アセンブリ(1)と、並びに前記送信アセンブリ(1)をカバーし、また前記インナーライナー層の自由表面上に固定されるゴム被覆構造と、を含み、前記ゴム被覆構造は、前記インナーライナー層の応力緩和率(G(0))iよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤにおいて、(G(0))cs<0.7×(G(0))iであることを特徴とする、タイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤにおいて、前記被覆構造は、6MPaより小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、40~100mmの長さ(L)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、40~60mmの長さ(L)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、10Mpa以上の弾性率(E)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項7】
請求項6に記載のタイヤにおいて、前記アンテナ(3)は、10~25MPaの弾性率(E)を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項8】
タイヤのインナーライナー層の自由面上に固定されるように設計された無線周波数識別デバイスであって、前記デバイスは、少なくともRFIDチップ(2)及び前記RFIDチップ(2)に接続されるアンテナ(3)を含む送信アセンブリ(1)と、前記送信アセンブリ(1)を覆うゴム被覆構造と、を備え、前記デバイスは、前記ゴム被覆構造が、6MPaよりも小さい応力緩和率(G(0))csを有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、40~100mmの長さ(L)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、40~60mmの長さ(L)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、10Mpa以上の弾性率(E)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の無線周波数識別デバイスにおいて、前記アンテナ(3)は、10~25MPaの弾性率(E)を有することを特徴とする、無線周波数識別デバイス。
【国際調査報告】