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▶ セファロン リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】抗PACAP抗体の組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/26 20060101AFI20240711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240711BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07K16/26 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P17/00
A61P25/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504838
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022074238
(87)【国際公開番号】W WO2023010065
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/226,875
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506343221
【氏名又は名称】セファロン リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ジェラード ドイル
(72)【発明者】
【氏名】アダム クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ダニアル バット
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド レイン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー マクレー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー ボー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア ローゼンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】サチン スラード
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA92X
4B065AC14
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、一般に、抗PACAP抗体、そのような抗体を含む医薬組成物、並びにそのような抗体を産生及び使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体であって、それぞれ配列番号9、2、及び3に記載の重鎖可変領域(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列と、それぞれ配列番号10、5、及び6に記載の軽鎖可変領域(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列とを含む、上記抗体。
【請求項2】
抗PACAP抗体であって、前記抗体又はその抗原結合断片が、
a)それぞれ配列番号1、2、及び3、
b)それぞれ配列番号7、2、及び3、そして
c)1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含むa)~b)の変種、
からなる群から選択されるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列と、
d)それぞれ配列番号4、5、及び6、
e)それぞれ配列番号8、5、及び6、そして
f)1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含むd)~e)の変種、
からなる群から選択されるVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列とを含む、上記抗体。
【請求項3】
抗PACAP抗体であって、前記抗体は、配列番号19に由来するVH配列を含み、ここで、前記VH配列が、Kabat番号付けによる残基32にバリン(V)又はロイシン(L)を含み、そして前記抗体は、配列番号22に由来するVL配列を含み、ここで前記VL配列が、Kabat番号付けによる残基27Eにアラニン(A)、並びにKabat番号付けによる残基50及び残基51にトリプトファン(W)及びアラニン(A)を含む、前記抗体。
【請求項4】
VH中に、Kabat番号付けによる残基92~94にシステイン-アラニン-イソロイシン(CAI)をさらに含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
それぞれヒト遺伝子IGHV1-6901及びIGKV4-101に由来する重鎖及び軽鎖フレームワーク領域(FR)配列、及びその機能的変種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
それぞれ配列番号29~32に記載の重鎖フレームワーク領域(VHFR)-1、VHFR-2、VHFR-3、及びVHFR-4配列と、それぞれ配列番号33~36に記載の軽鎖フレームワーク領域(VLFR)-1、VLFR-2、VLFR-3、及びVLFR-4配列とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号11及び12から選択される配列と約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列と、配列番号20及び21から選択される配列と約90%、約95%、又は約99%同一であるVL配列とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
配列番号11及び12から選択されるVH配列と、配列番号20及び21から選択されるVL配列とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
a)それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6、
b)それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6、
c)それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6、そして
d)それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6、
からなる群から選択される、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む、抗PACAP抗体。
【請求項10】
a)それぞれ配列番号11及び20、
b)それぞれ配列番号12及び21、
c)それぞれ配列番号11及び21、そして
d)それぞれ配列番号12及び20、
からなる群から選択される配列と、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
a)それぞれ配列番号11及び20、
b)それぞれ配列番号12及び21、
c)それぞれ配列番号11及び21、そして
d)それぞれ配列番号12及び20、
からなる群から選択されるVH配列及びVL配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号11又は配列番号12のVH配列を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体であって、前記VH配列が、配列番号11又は12の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する、上記抗体。
【請求項13】
配列番号37~51又は76からなる群から選択される重鎖定常領域配列と、配列番号23及び24から選択される軽鎖定常領域配列とを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
配列番号43に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列とを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体がヒトであるか又はヒト化されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
免疫原性プロフィールが低いか又は免疫原性プロフィールを全く有さない、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
約89%以上のヒトらしさスコア(a humanness score)を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項19】
37℃でSPRにより測定したとき、約5×10-11モル(M)以下のKDを有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の抗体であって、前記抗体又はその抗原結合断片が、37℃でSPRにより測定したとき、約3×10-11モル(M)以下のKDを有する、上記抗体。
【請求項21】
抗原結合断片である、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、細胞内抗体、IgGACH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項23】
全長抗体である、請求項1~22のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項24】
前記定常領域がIgG定常領域である、請求項1~23のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
前記定常領域がIgG1定常領域である、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記定常領域がIgG4定常領域である、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の抗体であって、前記定常領域が、配列番号37に記載のヒトIgG1配列、配列番号38に記載のヒトIgG1 FAB TAG配列、配列番号39に記載のヒトIgG1 KiH Hole配列、配列番号40に記載のヒトIgG1 KiH Knob配列、配列番号41に記載のヒトIgG1(L235A、G237A)配列、配列番号42に記載のヒトIgG1 YTE配列、配列番号76に記載のヒトIgG1(L235A、G237A、YTE)配列、配列番号43に記載のヒトIgG2DASS配列、配列番号44に記載のヒトIgG4配列、配列番号45に記載のヒトIgG4 KiH Hole配列、配列番号46に記載のヒトIgG4 KiH Knob配列、配列番号47に記載のヒトIgG4(L235A、G237A)配列、配列番号48に記載のヒトIgG4(L235E)配列、配列番号49に記載のヒトIgG4 YTE配列、配列番号50に記載のヒトIgG4 YTE KiH Hole配列、及び配列番号51に記載のヒトIgG4 YTE KiH Knob配列からなる群から選択される配列を含む、上記抗体。
【請求項28】
前記重鎖がIgG2重鎖である、請求項1~27のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
前記重鎖が、配列番号43に記載のIgG2DASS配列を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項30】
前記軽鎖がヒトカッパ軽鎖である、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項31】
前記軽鎖がヒトラムダ軽鎖である、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか1項に記載の抗体であって、
a)それぞれ配列番号70及び71、
b)それぞれ配列番号74及び71、
c)それぞれ配列番号75及び71、
d)それぞれ配列番号72及び73、
e)それぞれ配列番号70及び73、そして
f)それぞれ配列番号72及び71、
からなる群から選択される配列と約90%、約95%、又は約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む、上記抗体。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の抗体であって、
a)それぞれ配列番号70及び71、
b)それぞれ配列番号74及び71、
c)それぞれ配列番号75及び71、
d)それぞれ配列番号72及び73、
e)それぞれ配列番号70及び73、そして
f)それぞれ配列番号72及び71。
からなる群から選択される全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む、上記抗体。
【請求項34】
前記重鎖配列が、配列番号70、72、74、及び75の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体がPACAPの拮抗薬である、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体がPACAPに特異的に結合する、請求項1~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項38】
請求項37に記載の核酸を含むベクター。
【請求項39】
請求項38に記載のベクターを含む操作された細胞(an engineered cell)。
【請求項40】
細胞が抗体を産生するのに十分な条件下で、請求項36に記載の操作された細胞を培養することを含む、抗体を産生する方法。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか1項に記載の抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における状態を治療又は予防する方法であって、前記状態が、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)、不安、うつ病、PTSD、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)との併発状態(例えば、不安/うつ病/PTSD)、片頭痛と併発する不安障害、複雑性局所疼痛症候群、及び酒さからなる群から選択される、上記方法。
【請求項43】
前記頭痛が、前兆を伴う片頭痛、前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、反復性片頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張型頭痛からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における片頭痛を治療又は予防する方法。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、前記個体における片頭痛を治療又は予防する方法であって、前記個体が2~4つの適用可能な予防薬に反応しない、上記方法。
【請求項46】
前記個体が、ジバルプロエクス、バルプロ酸ナトリウム、バルプロエート、バルプロ酸、トピラメート、ガバペンチン、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、ビソプロポール、フルナリジン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ドキセピン、フルオキセチン、及びカンデサルタンからなる群から選択される2~4つの適用可能な予防薬に反応しない、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、前記個体における片頭痛を治療又は予防する方法であって、前記個体が2~4つの適用可能な予防薬のクラスに反応しない、上記方法。
【請求項48】
前記予防薬のクラスが、抗てんかん薬、ベータ遮断薬、三環系抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、ボツリヌス毒素、及びCGRP経路モノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記予防薬のクラスが異なるクラスターから選択され、前記クラスターが
クラスターA:抗てんかん薬
クラスターB:ベータ遮断薬
クラスターC:三環系抗うつ薬
クラスターD:カルシウムチャネル遮断薬
クラスターE:アンギオテンシンII受容体拮抗薬
クラスターF、ボツリヌス毒素、及び
クラスターG:カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体、のように定義される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記個体が、2~3、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、2を超える、又は3を超える予防薬又は予防薬のクラスに反応しない、請求項45~49に記載の方法。
【請求項51】
個体における片頭痛を治療又は予防する方法であって、2~4つの適用可能な予防薬又は予防薬のクラスに反応しない個体を選択する工程と、請求項1~50のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を前記個体に投与する工程とを含む、上記方法。
【請求項52】
CGRP経路モノクローナル抗体に反応しない個体における片頭痛を治療又は予防する方法であって、請求項1~51のいずれか1項に記載の抗体又は医薬組成物の治療有効量を前記個体に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項53】
前記CGRP経路モノクローナル抗体が、抗CGRP抗体、抗CGRP-R抗体、又は両方を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗CGRP抗体が、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、エプチネズマブ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記抗CGRP-R抗体がエレヌマブである、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~55のいずれかに記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年7月29日に出願された米国仮特許出願第63/226,875号に対する優先権を主張し、その開示内容は、図面を含めてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
本出願は配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表テキストファイル(標題「035680-502001WO_SequenceListing_ST26.xml」)は、2022年7月26日に作成され、69KBである。
【0003】
発明の分野
本開示は、一般に、抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体、そのような抗体を含む医薬組成物、並びにそのようなモノクローナル抗体を産生及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)は、侵害受容や原発性頭痛などの幅広い機能に関与している神経ペプチドである。PACAPは、セクレチン/血管作動性腸管ペプチド(VIP)/成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)ファミリーのメンバーである。PACAP/VIP受容体であるPAC1、VPAC1、及びVPAC2は、感覚ニューロンに及び三叉神経血管系に関連する血管平滑筋に存在する。PAC1受容体はPACAPに高い親和性で結合するが、VIPに対する親和性ははるかに低い。VPAC1及びVPAC2受容体は、PACAPとVIPを等しく良好に認識する。
【0005】
PACAPは多機能性血管拡張ペプチドであり、2つのα-アミド化活性型で存在し、1つは38個のアミノ酸を有し、他の1つは27個のアミノ酸(amino)を有する。PACAP38はより一般的な活性型であり、哺乳動物組織においてPACAP型の最大90%を占める。
【0006】
今日我々の知る限りでは、PACAPは偏頭痛、群発頭痛、外傷後ストレス障害(PTSD)などの症状に関与しているが、VIPは関与していない。例えば、三叉神経活性化の実験モデルの所見によれば、血漿PACAPレベルの上昇が急性片頭痛発作や群発頭痛において記録されている。これは、三叉神経系の活性化により静脈のPACAPレベルが上昇する可能性があり、この変化は、頭痛を治療すると低減できる可能性があることを示唆している。さらに、これらの症状に苦しむ患者では、PACAPの注射は片頭痛又は群発頭痛を誘発する。さらに、PACAPの血清レベルは、女性患者のPTSD診断及び症状の重症度に関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗PACAP抗体は、片頭痛、群発頭痛、不安、PTSDなどのさまざまな症状の治療に役立つ可能性がある。しかしながら、現在まで、PACAPを標的とする抗体は治療用途として承認されていない。従って、ヒトにおける治療用途に適した抗PACAP抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、前記問題を解決し、現場のニーズを満たす抗PACAP抗体を提供する。
【0009】
要約
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体を提供し、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び3に記載の重鎖可変領域(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列と、それぞれ配列番号10、5、及び6に記載の軽鎖可変領域(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列とを含む。
【0010】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、抗PACAP抗体を提供し、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、a)それぞれ配列番号:1、2、及び3、b)それぞれ配列番号7、2、及び3、そしてc)1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含むa)~b)の変種、からなる群から選択されるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列を含み、そして、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、d)それぞれ列番号4、5、及び6、e)それぞれ配列番号8、5、及び6、そしてf)1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含むd)~e)の変種、からなる群から選択されるVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。
【0011】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、抗PACAP抗体を提供し、ここで、
前記抗体は、配列番号19に由来するVH配列を含み、ここで、前記VH配列は、Kabatの番号付けによる残基32にバリン(V)又はロイシン(L)を含み、並びにここで、前記抗体は、配列番号22に由来するVL配列を含み、ここで、前記VL配列は、Kabatの番号付けによる残基27Eにアラニン(A)を、及びKabatの番号付けによるそれぞれ残基50及び51にトリプトファン(W)及びアラニン(A)を含む。少なくとも1つの実施態様において、前記抗体は、Kabatの番号付けによるVHの残基92~94にシステイン-アラニン-イソロイシン(CAI)をさらに含む。
【0012】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、それぞれヒト遺伝子IGHV1-6901及びIGKV4-101に由来する重鎖フレームワーク領域(FR)配列と軽鎖フレームワーク領域(FR)配列とを含み、並びにその機能的変種を含む。
【0013】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号29~32に記載の重鎖フレームワーク領域(VHFR)-1、VHFR-2、VHFR-3、及びVHFR-4配列と、それぞれ配列番号33~36に記載の軽鎖フレームワーク領域(VLFR)-1、VLFR-2、VLFR-3、及びVLFR-4配列とを含む。
【0014】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号11及び12から選択される配列と約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列と、配列番号20及び21から選択される配列と約90%、約95%、又は約99%同一であるVL配列とを含む。
【0015】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号11及び12から選択されるVH配列と、配列番号20及び21から選択されるVL配列とを含む。
【0016】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は抗PACAP抗体を提供し、ここで前記抗体は、a)それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6、b)それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6、c)それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6、そしてd)それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6からなる群から選択されるVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列とを含む。
【0017】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、a)それぞれ配列番号11及び20、b)それぞれ配列番号12及び21、c)それぞれ配列番号11及び21、そしてd)それぞれ配列番号12及び20からなる群から選択される配列と、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む:。
【0018】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、a)それぞれ配列番号11及び20、b)それぞれ配列番号12及び21、c)それぞれ配列番号11及び21、そしてd)それぞれ配列番号12及び20からなる群から選択されるVH配列及びVL配列を含む。
【0019】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号11又は配列番号12のVH配列を含み、ここで、前記VH配列は、配列番号11又は12の残基1に、グルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0020】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号37~51又は配列番号76からなる群から選択される重鎖定常領域配列と、配列番号23及び24から選択される軽鎖定常領域配列とを含む。
【0021】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号43に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列とを含む。
【0022】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号43に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列とを含む。
【0023】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号42に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列とを含む。
【0024】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、配列番号76に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列とを含む。
【0025】
少なくとも1つの実施態様において、抗体はヒト抗体又はヒト化抗体である。少なくとも1つの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。
【0026】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は免疫原性プロフィールが低いか又は全くない。
【0027】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は約89%以上のヒトらしさスコア(a humanness score)を有する。
【0028】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、37℃でSPRにより測定される5×10-11モル(M)以下のKDを有する。
【0029】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、37℃でSPRにより測定される3×10-11モル(M)以下のKDを有する。
【0030】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は抗原結合断片である。
【0031】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、細胞内抗体(intrabody)、IgGACH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む。
【0032】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は全長抗体(a full length antibody)である。
【0033】
少なくとも1つの実施態様において、抗体定常領域はIgG定常領域である。
【0034】
少なくとも1つの実施態様において、定常領域はIgG1定常領域である。
【0035】
少なくとも1つの実施態様において、定常領域はIgG4定常領域である。
【0036】
少なくとも1つの実施態様において、定常領域は、配列番号37に記載のヒトIgG1配列、配列番号38に記載のヒトIgG1 FAB TAG配列、配列番号39に記載のヒトIgG1 KiH Hole配列、配列番号40に記載のヒトIgG1 KiH Knob配列、配列番号41に記載のヒトIgG1(L235A、G237A)配列、配列番号42に記載のヒトIgG1 YTE配列、配列番号76に記載のヒトIgG1(L235A、G237A、YTE)配列、配列番号43に記載のヒトIgG2DASS配列、配列番号44に記載のヒトIgG4配列、配列番号45に記載のヒトIgG4 KiH Hole配列、配列番号46に記載のヒトIgG4 KiH Knob配列、配列番号47に記載のヒトIgG4(L235A、G237A)配列、配列番号48に記載のヒトIgG4(L235E)配列、配列番号49に記載のヒトIgG4 YTE配列、配列番号50に記載のヒトIgG4 YTE KiH Hole配列、及び配列番号51に記載のヒトIgG4 YTE KiH Knob配列からなる群から選択される配列を含む。
【0037】
少なくとも1つの実施態様において、抗体重鎖はIgG2重鎖である。少なくとも1つの実施態様において、重鎖は、配列番号43に記載のIgG2DASS配列を含む。
【0038】
少なくとも1つの実施態様において、抗体軽鎖はヒトカッパ軽鎖(a human kappa light chain)である。
【0039】
少なくとも1つの実施態様において、抗体軽鎖はヒトラムダ軽鎖である。
【0040】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、a)それぞれ配列番号70及び71、b)それぞれ配列番号74及び71、c)それぞれ配列番号75及び71、d)それぞれ配列番号72及び73、e)それぞれ配列番号70及び73、そしてf)それぞれ配列番号72及び71からなる群から選択される配列と、約90%、約95%、又は約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0041】
少なくとも1つの実施態様において、抗体は、a)それぞれ配列番号70及び71、b)それぞれ配列番号74及び71、c)それぞれ配列番号75及び71、d)それぞれ配列番号72及び73、e)それぞれ配列番号70及び73、そしてf)それぞれ配列番号72及び71からなる群から選択される全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。少なくとも1つの実施態様において、重鎖配列は、配列番号70、72、74、及び75の残基1に、グルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0042】
少なくとも1つの実施態様において、抗体はPACAPの拮抗薬である。
【0043】
少なくとも1つの実施態様において、抗体はPACAPに特異的に結合する。
【0044】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体をコードする核酸を提供する。
【0045】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸を含むベクターを提供する。
【0046】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本明細書に記載のベクターを含む操作された細胞(an engineered cell)を提供する。
【0047】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示の操作された細胞を、細胞が抗体を産生するのに十分な条件下で培養することを含む、抗体を産生する方法を提供する。
【0048】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0049】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における状態を治療又は予防する方法を提供し、ここで、前記状態は、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)、不安、うつ病、PTSD、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)との併発状態(例えば、不安/うつ病/PTSD)、片頭痛との併発不安障害、複雑性局所痛症候群、酒さからなる群から選択される。少なくとも1つの実施態様において、頭痛は、前兆を伴う片頭痛、前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、反復性片頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張性頭痛からなる群から選択される。
【0050】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における片頭痛を治療又は予防する方法を提供する。
【0051】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における片頭痛を治療又は予防する方法を提供し、ここで、個体は2~4つの適用可能な予防薬に反応しない。少なくとも1つの実施態様において、個体は、以下からなる群から選択される2~4つの適用可能な予防薬に反応しない:ジバルプロエクス、バルプロ酸ナトリウム、バルプロエート、バルプロ酸、トピラメート、ガバペンチン、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、ビソプロポール、フルナリジン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ドキセピン、フルオキセチン、及びカンデサルタン。
【0052】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与することを含む、個体における片頭痛を治療又は予防する方法を提供し、ここで、個体は2~4つの適用可能なクラスの予防薬に反応しない。少なくとも1つの実施態様において、予防薬のクラスは以下からなる群から選択される:抗てんかん薬、ベータ遮断薬、三環系抗うつ薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、ボツリヌス毒素、及びCGRP経路モノクローナル抗体。少なくとも1つの実施態様において、予防薬のクラスは異なるクラスター(Cluster)から選択され、ここで、クラスターは以下のように定義される:クラスターA:抗てんかん薬、クラスターB:ベータ遮断薬、クラスターC:三環系抗うつ薬、クラスターD:カルシウムチャネル遮断薬、クラスターE:アンギオテンシンII受容体拮抗薬、クラスターF、ボツリヌス毒素、及びクラスターG:カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体。
【0053】
少なくとも1つの実施態様において、個体は、2~3、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、2を超える、又は3を超える予防薬又は予防薬のクラスに反応しない。
【0054】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、個体における片頭痛を治療又は予防する方法を提供し、前記方法は、2~4つの適用可能な予防薬又は予防薬のクラスに反応しない個体を選択する工程と、本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を前記個体に投与する工程とを含む。
【0055】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、CGRP経路モノクローナル抗体に反応しない個体に本開示の抗体又は医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記個体における片頭痛を治療又は予防する方法を提供する。少なくとも1つの実施態様において、CGRP経路モノクローナル抗体は、抗CGRP抗体(すなわち、抗CGRPリガンド抗体)、抗CGRP-R抗体(すなわち、抗CGRP受容体抗体)、又は両方を含む。少なくとも1つの実施態様において、抗CGRP抗体は、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、エプチネズマブ、又はこれらの組み合わせから選択される。少なくとも1つの実施態様において、抗CGRP-R抗体はエレヌマブである。
【0056】
少なくとも1つの実施態様において、本開示は、本開示に従って使用するための組成物を提供する。
【0057】
本明細書に記載される態様及び実施態様のそれぞれは、実施態様又は態様の文脈から明示的又は明確に除外されない限り、一緒に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、ヒトPACAP38、PACAP27、及びVIPポリペプチド配列の整列を示す。「」は完全に保存された残基を示す。「.」は弱く類似した特性の残基間の保存を示し、「:」は強く類似した特性の残基の保存を示す。
【0059】
図2図2A~2Bは、本明細書で提供されるいくつかの例示的な抗体のVL(図2A)及びVH(図2B)配列の整列を示す。CDRは、図2BでAbMによって定義される重鎖CDR-1を除いて、Kabat番号付けに従って定義される。
【0060】
図3図3A~3Cは、37℃でSPRによって測定された、PACAP38及びPACAP27及びVIPに対する抗PACAP抗体605Cの結合親和性の例示的な結果を示す。
【0061】
図4】PACAP38、PACAP27、VIP、及び他のグルカゴン-セクレチンファミリーペプチドに対する抗PACAP抗体890Cの結合に関する、例示的SPR実験データを示す。
【0062】
図5】細胞ベースのサイクリックAMP誘導アッセイにおける、PACAP38対VIPに対する抗PACAP抗体890Cの活性の選択性についての例示的実験データを示す。
【0063】
図6】本明細書で提供されるいくつかの例示的な抗PACAP抗体、及び様々なアイソタイプ形式の他の抗PACAP抗体の、見かけの分子量を示す。
【0064】
図7】608C、609C、627C、890C、及び他の抗PACAP抗体の可変領域の予測される免疫原性プロフィールの概要を示す。
【0065】
図8】抗PACAP抗体890Cのアミノ酸配列を示す。CDRには下線が引かれている(AbMによって定義される重鎖CDR-1を除いた、Kabatの定義に従って定義されたすべてのCDR)。定常領域には点線の下線が引かれている。重鎖定常領域上のA330S及びP331S置換(EU Fc番号付け)には二重下線が引かれている。C末端リジンの欠失(Δ447K;EU Fc番号付け)は星印でマークされている。
【0066】
図9】抗PACAP抗体608Cのアミノ酸配列を示す。CDRには下線が引かれている(AbMによって定義される重鎖CDR-1を除いた、Kabatの定義に従って定義されたすべてのCDR)。定常領域には点線の下線が引かれている。重鎖定常領域上のA330S及びP331S置換(EU Fc番号付け)には二重下線が引かれている。C末端リジンの欠失(Δ447K;EU Fc番号付け)は星印でマークされている。
【0067】
図10】抗PACAP抗体627Cのアミノ酸配列を示す。CDRには下線が引かれている(AbMによって定義される重鎖CDR-1を除いた、Kabatの定義に従って定義されたすべてのCDR)。定常領域には点線の下線が引かれている。重鎖定常領域上のA330S及びP331S置換(EU Fc番号付け)には二重下線が引かれている。C末端リジンの欠失(Δ447K;EU Fc番号付け)は星印でマークされている。
【0068】
図11】抗PACAP抗体609Cのアミノ酸配列を示す。CDRには下線が引かれている(AbMによって定義される重鎖CDR-1を除いた、Kabatの定義に従って定義されたすべてのCDR)。定常領域には点線の下線が引かれている。重鎖定常領域上のA330S及びP331S置換(EU Fc番号付け)には二重下線が引かれている。C末端リジンの欠失(Δ447K;EU Fc番号付け)は星印でマークされている。
【発明を実施するための形態】
【0069】
詳細な説明
本開示は、抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体、特にヒトに投与した場合にPACAPに対して高い親和性と低い免疫原性を有する抗体に関する。ヒトでは、PACAPは、ADCYAP1遺伝子によってコードされる176個のアミノ酸の前駆体タンパク質から生成される。PACAPには、38個のアミノ酸のペプチド(PACAP38)と27個のアミノ酸のペプチド(PACAP27)の2つの天然のアイソフォームがある。PACAP38は前駆体タンパク質のアミノ酸132~169に対応し、その配列は、HSDGIFTDSYSRYRKQMAVKKYLAAVLGKRYKQRVKNK(配列番号13)である。PACAP27はPACAP38のアミノ末端断片であり、前駆体タンパク質のアミノ酸132~158に対応する。PACAP27の配列は、HSDGIFTDSYSRYRKQMAVKKYLAAVL(配列番号14)である。PACAP38及びPACAP27は両方とも、血管作動性腸管ペプチド(VIP)に対して高い配列類似性を示し、その配列は、HSDAVFTDNYTRLRKQMAVKKYLNSILN(配列番号15)である。図1を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、PACAP38及びPACAP27の両方に高い親和性で結合することができる。他の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VIPに対する結合が低いか又は全く結合しない。
【0070】
本開示はまた、そのような抗体、それをコードする核酸、その核酸で遺伝的に修飾された細胞を産生するのに有用な組成物と方法、並びに片頭痛、難治性片頭痛などの様々な健康状態の治療又は予防のための方法も提供する。
【0071】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付図面が参照される。図面では、文脈上別段の指示がない限り、同様の記号は一般に同様の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載されている例示的な選択肢は、限定することを意味するものではない。他の選択肢を使用することができ、ここで提示される主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の変更が加えることができる。本明細書で一般的に説明され、図に示される態様は、多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、及び設計することができ、これらのすべては明示的に企図され、本出願の一部をなすことが容易に理解されるであろう。
【0072】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法、及びその他の科学用語又は専門用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語が、明確にするため及び/又は容易に参照できるように本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当技術分野で一般に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び方法の多くはよく理解されており、当業者には従来の方法論を使用して一般に利用されている。
【0073】
「結合親和性」とは一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原/標的)との間の非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。他に明記されない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に、抗原にゆっくり結合し容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に、より速く抗原に結合しより長く結合したままになる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、そのいずれも本開示の目的に使用することができ、その一例は親和性ELISAアッセイである。さらに、親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイ(SPR、例えば、BIAcore(登録商標)ベースのアッセイ)によって決定することができる。この方法を使用すると、結合速度定数(M-1-1でのka)と解離速度定数(s-1でのkd)を測定することができる。平衡解離定数(MでのKD)は、速度定数の比(kd/ka)から計算することができる。結合親和性は、Rathanaswami et al. Analytical Biochemistry, Vol.373:52-60, 2008に記載されているような速度論的排除アッセイ(KinExA)などの速度論的方法によっても測定することができる。KinExAアッセイを使用して、平衡解離定数(MでのKD)及び結合速度定数(M-1-1でのka)を測定することができる。解離速度定数(s-1でのkd)は、これらの値(KD×ka)から計算することができる。結合親和性も平衡/溶液法によって測定することができる
【0074】
「特異的に結合する」とは、一般に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及びその結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間に何らかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合する場合、ランダムな無関係なエピトープに結合するよりも容易にエピトープに「特異的に結合する」と言われる。本明細書では「特異性」という用語は、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対的な親和性を適正評価するために使用される。例えば、抗体「A」が抗体「B」よりも特定のエピトープに対して高い特異性を有するとみなされる場合や、抗体「A」が関連するエピトープ「D」よりも高い特異性でエピトープ「C」に結合するとみなされる場合がある。本明細書に記載の抗体を特に参照すると、「特異的に結合する」とは、抗体が、VIPに結合するよりも容易にPACAP27及び/又はPACAP38に結合することを意味する。1つの実施態様において、抗体はヒトPACAPに特異的に結合する。例えば、抗体は、VIPに結合するよりも容易にPACAP27及びPACAP38に結合する。
【0075】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、天然には見出されない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物には、もはや自然界に存在する形態ではない程度まで精製されたものが含まれる。いくつかの実施態様において、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。
【0076】
タンパク質又はポリペプチドに関して本明細書で使用される「に由来する」という用語は、起源又は供給源を指し、供給源又は元のタンパク質若しくはポリペプチドから得られる、又はそれに基づいて得られる、天然に存在する組換え型の未精製の又は精製されたポリペプチドを含み得る。従って、元のタンパク質又はポリペプチドに由来するタンパク質又はポリペプチドは、元のタンパク質又はポリペプチドを部分的又は全体的に含むことができ、そして元のタンパク質又はポリペプチドの断片又は変種であり得る。場合によっては、供給源又は起源に由来するポリペプチド配列又はドメインは、遺伝的又は化学的に修飾することができる。
【0077】
本明細書で使用される用語「投与する」、「投与」、「投与している」などは、限定されるものではないが、静脈内、動脈内、頭蓋内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、又はこれらの組み合わせを含む経路による、組成物、製剤、又は薬物、例えば本明細書に開示される抗PACAP抗体の送達を指す。この用語には、限定されるものではないが、医療専門家による投与及び自己投与が含まれる。
【0078】
本明細書で使用される用語「治療」、「治療している」、及び「治療すること」は、必ずしも改善しない場合でも、少なくとも1つ又はそれ以上の症状が改善することを意味する。例えば、これらの用語は、有益な又は所望の臨床結果を得るアプローチを利用することを指し、このアプローチには、限定されるものではないが、そのような有益な又は所望の臨床結果を達成するアプローチが含まれ、ここで、臨床結果には、病的状態又は障害の症状を改善、治癒、減速、軽減する、及び/又はその進行を停止する治療手段が含まれ得る。治療が必要な人には、すでにその障害を有すると診断されている人、又はその疑いがある人が含まれる。本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、薬剤又は薬物、例えば本明細書に開示の抗PACAP抗体の「治療有効量は、被験体の疾患又は障害の治療又は管理において治療効果を提供するか、又は疾患に関連する1つ又はそれ以上の症状を遅らせるか最小限に抑えるのに十分な量である。化合物、薬剤又は薬物の治療有効量は、単独又は他の治療薬と組み合わせて、疾患の治療又は管理において治療効果をもたらす治療薬の量を意味する。「治療有効量」という用語は、疾患の全体的な治療を改善する量、疾患の症状もしくは原因を低減もしくは回避する量、又は別の治療薬の治療効果を増強する量を包含し得る。「有効量」の一例は、疾患の症状の治療、予防、又は低減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも呼ばれる。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、公知の技術を使用して当業者によって確認可能である。
【0079】
本明細書で使用される「被験体」又は「個体」には、動物、例えばヒト(例えば、ヒト個体)及びヒト以外の動物が含まれる。いくつかの実施態様において、「被験体」又は「個体」は、医師の治療を受けている患者である。従って、被験体は、対象疾患(例えば、片頭痛、難治性片頭痛など)及び/又は疾患の1つ又はそれ以上の症状を有するか、有するリスクがあるか、又は有すると疑われるヒト患者であり得る。被験体はまた、診断時又はその後に、対象の状態のリスクがあると診断された個体であってもよい。例えば、被験体は、本明細書に記載の状態、又はPACAP活性の低下により利益を受けるであろう状態を発症するリスクがあるとしてさらに特徴付けることができる。
【0080】
用語「細胞」、「細胞培養物」、「細胞株」は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株を指すだけでなく、そのような細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫若しくは潜在的な子孫も指し、培養の移植又は継代の回数は関係ない。すべての子孫が親細胞と正確に同一であるわけではないことを理解すべきである。これは、突然変異(例えば、意図的な又は意図しない突然変異)又は環境(例えば、メチル化又は他のエピジェネティックな修飾)の影響により、後続の世代で何らかの修飾が発生し、子孫が実際には親細胞と同一ではない可能性があるためである。しかし、子孫が元の細胞、細胞培養物、又は細胞株と同じ機能を保持している限り、それらも本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0081】
本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、意図された様式で作動することを可能にする2つの要素(例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列)間の物理的又は機能的連結を指す。例えば「作動可能に連結された」という用語は、本明細書に記載の直交DNA標的配列、又は核酸構築物もしくは操作された反応要素(an engineered response element)中のプロモーター配列との関連で使用される場合、直交DNA標的配列及びプロモーターがフレーム内にあり、タンパク質又はRNAをコードする目的のポリヌクレオチドから適切な空間的及び距離にあり、転写因子又はRNAポリメラーゼによるそれぞれの結合が転写に影響を及ぼすことを可能にすることを意味する。
【0082】
単数形「a」、「an」、「the」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の言及が含まれる。例えば、用語「細胞」には、1つ又はそれ以上の細胞(それらの混合物を含む)が含まれる。「A及び/又はB」は、本明細書では、以下の選択肢のすべてを含むために使用される:「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」。
【0083】
値の範囲が提供される場合、文脈により明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限及び下限の間で、下限の単位の10分の1までの各介在する値は、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値は、本開示に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内で特に限界が除外され得ることを条件として、本開示内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除いた範囲も本開示に含まれる。
【0084】
本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びそれらの部分範囲の組み合わせも包含する。列挙された任意の範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一等に分割することを十分に記載し可能にするものとして認識され得る。非限定的な例として、本明細書で議論される各範囲は、下の3分の1、中間の3分の1、上の3分の1などに容易に分割され得る。また、当業者には理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての用語は、列挙された数値を含み、上で説明したようにその後に部分範囲に分割される範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々のメンバーが含まれる。従って、例えば、1~3個の物品を含む群は、1、2、又は3個の物品を含む群を指す。同様に、1~5個の物品を含む群は、1、2、3、4、又は5個の物品を含む群を指す。
【0085】
明確にするために別の実施態様に関連して説明される本開示の特定の特徴もまた、単一の実施態様において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施態様に関連して説明される本開示の様々な特徴は、個別に、又は任意の適切な部分組合わせで提供され得る。本開示に係る実施態様のすべての組み合わせは、特に本開示に包含され、あたかもあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。さらに、様々な実施態様及びその要素のすべての部分組合わせも本開示に具体的に包含され、あたかもそのようなあらゆる部分組合わせが本明細書に個々にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0086】
組成物
本開示は、特に、抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体を提供する。本明細書で提供される抗PACAP抗体は、PACAP受容体(すなわち、PAC1)を介するPACAPシグナル伝達を、並びにVIP受容体であるVPAC1及びVPAC2を介するPACAPシグナル伝達を、ブロックすることができる。特定の実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、ヒト化を介してヒト配列の割合を改善するように操作されている(have been engineered)。さらに、本明細書で提供される抗PACAP抗体のCDR3配列は、親和性、力価、又はその両方を改善するように操作される。いくつかの実施態様において、抗PACAP抗体は、Kabat番号付けによる配列番号3の残基96にグルタミン(Q)を有する重鎖可変領域(VH)-CDR3を含むように操作された。いくつかの実施態様において、抗PACAP抗体には、Kabat番号付けによる配列番号6の残基93にトリプトファン(W)を、及び残基95にアスパラギン酸(D)を有する軽鎖可変領域(VL)-CDR3が含まれる。他の実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、免疫原性を除去し、製造上の負担を低減するように操作することができる。さらに、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、PACAP-38及び/又はPACAP-27誘導性環状アデノシン一リン酸(cAMP)産生の強力な阻害を達成するように操作されており、これは、実施例5に記載されており、Wang, Li et al. 2004によって既に記載されている。
【0087】
以下により詳細に記載されるように、本明細書で提供される抗体は、被験体に投与された場合、免疫原性の潜在的リスクが低いか又は全くない。本明細書で使用される「免疫原性の潜在的リスクが低いか又は全くない」とは、被験体に充分な量で投与された場合に、治療用抗体が抗薬物抗体(ADA)の形成を誘導できないことを指す。ADAは免、疫系によって生成される治療薬に対する抗体であり、これは薬剤の有効性を低下させる可能性がある、さらに重要なことに、ADAは、注射部位の発疹から致死的な全身性の炎症反応に至るまで、さまざまな副作用を引き起こす可能性もある。特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒトに投与された場合、免疫原性の潜在的リスクが低いか又は全くない。ヒトへの投与の場合、例えば、より高いヒトらしさスコアを有するように抗体を操作すること、並びに予測インビトロ技術によって免疫原性の潜在的なリスクが高いことが判明した残基を除去することによって、免疫原性の潜在的なリスクをより低くするか又はなくすことができる。本明細書で使用される「ヒトらしさスコア(humanness score)」とは、ヒト生殖細胞系に対する抗体の配列同一性のパーセントを指す。
【0088】
当業者であれば、抗体とヒト生殖細胞系との間の配列同一性を計算する方法を容易に理解するであろう。例えば抗PACAP抗体は、例えば約89%以上の高いヒトらしさスコアを有する。さらに、抗PACAP抗体はPACAPに対して強い親和性を有する。例えば、本明細書で提供されるいくつかの抗PACAP抗体は、37℃でSPRによって測定された場合、約5×10-11モル(M)未満のKDを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、37℃でSPRによって測定された場合、約3×10-11モル(M)以下のKDを有する。いくつかの実施態様において、抗PACAP抗体は、PACAP-38及びPACAP-27を含むPACAPに優先的に結合する。
【0089】
抗原結合分子
本明細書で使用される抗体は、当該分野でその共通の意味を有し、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原結合ドメインを介して、標的のエピトープを認識し特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。標的はペプチド、例えばPACAPペプチドであり得る。本開示の抗体は、抗体が所望の生物学的活性を示す限り、全長抗体(全長ポリクローナル抗体及び全長モノクローナル抗体を含む)、抗原結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片)、単鎖Fv(scFv)変異体、少なくとも2つの全長抗体から生成される二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子抗体を包含する。抗体は、免疫グロブリンの5つの主要なクラスであるIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のいずれかであってもよく、上記5つのクラスは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれるそれらの重鎖定常ドメインに基づく。いくつかの実施態様において、本開示の抗体はIgG抗体である。より特定の実施態様において、本開示の抗体はIgG2抗体である。より特定の実施態様において、本開示の抗体は、A330P331からS330S331への変異(野生型IgG2配列を参照したアミノ酸番号付け、Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624)を含む修飾IgG2である。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なるよく知られたサブユニット構造と三次元構造を有する。
【0090】
本開示の抗体は、1つ又はそれ以上の可変領域を含み得る。抗体の可変領域とは、単独又は組み合わせの、抗体軽鎖の可変領域(VL)又は抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、それぞれ超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRはFRによって近接して一緒に保持され、他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには少なくとも2つの技術がある:(1)種間の配列変化に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.));及び(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al (1997) J. Molec. Biol. 273:927-948; Chothia & Lesk, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al., 1989, Nature 342:878-883; Oxford Molecular’s AbM antibody modelling software and North numbering convention (North et al., A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations, Journal of Molecular Biology, 406:228-256 (2011))。さらに、これら2つのアプローチの組み合わせは、CDRを決定するために当技術分野で時々使用される。
【0091】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は全長抗体である。全長抗体は、以下により詳細に説明するように、ジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖からなる4つのポリペプチド単位を含むことができる。軽鎖は、一般に短く、重鎖よりも分子量が小さい。各ポリペプチド鎖には定常領域と可変領域がある。可変領域は、それぞれの特定の抗体に特異的である。軽鎖可変領域はVLと呼ばれ、軽鎖定常領域はCLと呼ばれる。同様に、重鎖可変領域はVHと呼ばれ、重鎖定常領域はCHと呼ばれ、CH1、CH2、及びCH3はそれぞれ重鎖の定常領域の異なる部分を示す。いくつかの実施態様において、炭水化物は、通常、重鎖のCH2ドメインに結合することができる。さらに、全長抗体は、結晶化可能な断片(Fc)領域を含むこともできる。Fc領域には、重鎖の定常領域(CH2及びCH3)のみが含まれる。対照的に、抗原結合領域断片(Fab)には、重鎖と軽鎖の両方の定常ドメインと可変ドメイン(VH、VL、CH1、及びCL)が含まれる場合がある。可変領域断片(Fv)には、2つの可変ドメインのみが含まれる。
【0092】
上述したように、本開示の抗体は1つ又はそれ以上の定常領域を含み得る。抗体の「定常領域」は、当技術分野でよく知られた用語であり、異なる分子間でアミノ酸配列が比較的一定である抗体の部分を指す。典型的には、重鎖定常領域は、アミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)の方向に番号が付けられたCH1、CH2、及びCH3と呼ばれる3つの異なる領域で構成される。典型的な軽鎖には、CLと呼ばれる定常領域が1つだけある。抗体の定常領域は、その特定のエフェクター機能を決定する。当業者であれば、抗体の定常領域の用語及び構造的特徴を容易に理解するであろう。
【0093】
さらに、本開示の抗PACAP抗体には、PACAPに特異的に結合する抗原結合断片も含まれる。本明細書で使用される抗原結合断片とは、全長抗体の一部を指す。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書で使用される抗体の抗原結合断片は、全長抗体の抗原決定可変領域を指す。抗原結合断片の例には、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖Fv又はscFv、ジスルフィド結合したFv、V-NARドメイン、IgNar、細胞内抗体、IgGA CH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)2、又はscFv-Fcが含まれる。
【0094】
1つの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、PACAPの生物学的活性を阻害又は低下させるブロッキング拮抗薬抗体である。いくつかの実施態様において、ブロッキング抗体又は拮抗薬抗体は、PACAPの生物学的活性を実質的又は完全に阻害する。PACAPの生物活性は、その天然の生物活性と比較して、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、さらには100%低下している可能性がある。本開示の抗PACAP抗体がPACAPに拮抗する能力は、例えば、細胞ベースのアッセイで、リガンド誘導性の環状アデノシン一リン酸(cAMP)産生をモニターして測定することができる。いくつかの実施態様において、本発明の抗PACAP抗体は、ヒトPAC1、VPAC1、及び/又はVPAC2受容体のPACAP誘導性活性化に拮抗する。PAC1、VPAC1、及び/又はVPAC2受容体の活性化を評価するための様々なアッセイが当技術分野で知られており、リガンド誘導性のカルシウム動員及びcAMP産生を測定する細胞ベースのアッセイが含まれる。例示的な細胞ベースのcAMPアッセイは、実施例5に記載されており、Wang, Li et al. 2004によって既に記載されている。
【0095】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、本明細書では互換的に使用され、特定の抗体によって認識され、特異的に結合することができる抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置された連続アミノ酸と非連続アミノ酸の両方から形成される。連続したアミノ酸から形成されたエピトープは典型的にはタンパク質変性時に保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープは典型的にはタンパク質変性時に失われる。
【0096】
本明細書で提供される抗体はモノクローナル抗体であり得る。「モノクローナル抗体」とは、単一の抗原決定基すなわちエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これは、典型的には、異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、全長モノクローナル抗体の両方、並びに抗原結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を包含する融合タンパク、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を含む。さらに、「モノクローナル抗体」とは、限定されるものではないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物を含む任意の方法で作製された抗体を指す。
【0097】
本開示に包含される抗体は、ヒト、非ヒト、ヒト化、マウス、キメラ、又は再表面化抗体(resurfaced antibody)であり得る。いくつかの実施態様において、本開示の抗体はヒト化抗体であり得る。本明細書で使用される場合、ヒト化抗体は、齧歯動物又はウサギなどの非ヒト動物において最初に産生されたモノクローナル抗体に由来する抗体を指す。このモノクローナル抗体の特定のアミノ酸残基は、典型的には抗体の非抗原認識部分に由来し、対応するアイソタイプのヒト抗体の対応する残基と相同的になるように修飾されている。ヒト化は、例えば、齧歯類又はウサギの可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域の代わりに使用する様々な方法を使用して行うことができる(例えば、米国特許第5,585,089号、及び第5,693,762号;Jones et al, 1986, Nature 321:522-525; Riechmann et al, 1988, Nature 332:323-27;及びVerhoeyen et al, 1988, Science 239: 1534-1536を参照)。
【0098】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、以下に示されるように、それぞれヒト遺伝子VH:IGHV1-6901/VK:IGKV4-101の産物であるか又はそれに由来する重鎖/軽鎖可変フレームワーク領域を含むように操作される。
【表1】
【0099】
上記のヒト生殖細胞系に由来する変種の例は、対応する非ヒト抗体の対応する重鎖及び/又は軽鎖可変フレームワーク領域からの少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む重鎖及び/又は軽鎖可変フレームワーク領域を有することができる(例えば、Kabat番号付けによる残基92~94に「CAI」モチーフを有する重鎖変種)。
【0100】
例として、抗PACAP抗体の配列を以下の表に示す。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、表2に提供されるVH及びVL CDR配列の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、AbMによって定義される、VH-CDR1を除く、すべてのCDRはKabat番号付けに従って定義される。
【表2】
【0101】
いくつかの実施態様において、XaはV又はLを含み、及び、XbはA又はSを含む。
【0102】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号9、2、及び3に記載の重鎖可変領域(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列を含み;並びに、それぞれ配列番号10、5、及び6に記載の軽鎖可変領域(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。
【0103】
いくつかの実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載のVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列を有する抗PACAP抗体と、1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを提供する。他の実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号7、2、及び3に記載のVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列を有する抗PACAP抗体と、7、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを提供する。
【0104】
いくつかの実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号4、5、及び6に記載のVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体又はその抗原結合断片と、4、5、又は6個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを提供する。他の実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号8、5、及び6に記載のVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体と、8、5、又は6個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを提供する。
【0105】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6に記載の、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体を提供する。
【0106】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図8に示される、それぞれ配列番号1、2、3、及び配列番号4、5、6に記載の、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。例えば、前記CDRは図8において下線が引かれている(重鎖CDR-1がAbMによって定義されることを除き、すべてのCDRはKabatの定義に従って定義される)。
【0107】
他の例示的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6に記載の、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体を提供する。
【0108】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図9に示される、それぞれ配列番号7、2、3、及び配列番号8、5、6に記載の、(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びに(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。例えば、前記CDRは図9において下線が引かれている(重鎖CDR-1がAbMによって定義されることを除き、すべてのCDRはKabatの定義に従って定義される)。
【0109】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号1、2、及び3、並びに配列番号8、5、及び6に記載の、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体を提供する。
【0110】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図10に示される、それぞれ配列番号1、2、3、及び配列番号8、5、6に記載の、(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びに(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。例えば、前記CDRは図10において下線が引かれている(重鎖CDR-1がAbMによって定義されることを除き、すべてのCDRはKabatの定義に従って定義される)。
【0111】
さらに他の例示的な実施態様において、本開示は、それぞれ配列番号7、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6に記載の、VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を有する抗PACAP抗体を提供する。
【0112】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図11に示される、それぞれ配列番号7、2、3、及び配列番号4、5、6に記載の、(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びに(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列を含む。例えば、前記CDRは図11において下線が引かれている(重鎖CDR-1がAbMによって定義されることを除き、すべてのCDRはKabatの定義に従って定義される)。
【0113】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、以下の表3~5に提供されるVH、VL、及びFR配列の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、表3に提供されるVH配列を含み、ここで、前記VH配列は、配列番号11、12、18、及び19の残基1においてグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【表3】
【表4】
【表5】
【0114】
さらに、いくつかの例示的な抗PACAP抗体の重鎖及び軽鎖定常領域配列が以下の表6~7に提供される。本開示の抗PACAP抗体の重鎖は、表6に記載される定常領域などの定常領域を含み得る。いくつかの実施態様において、免疫学的に不活性な定常領域は修飾され、例えば、いくつかの修飾された定常領域が表6に記載される。例えば、修飾された定常領域は、IgG1配列(すなわち、配列番号37)に基づくEU番号付けを使用して、本明細書において表6に列挙される残基内にあり得る。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体の重鎖定常領域は、表6に記載のIgG1の修飾定常領域を有するヒト重鎖であり得る。例えば、IgG1の修飾定常領域は、以下のいずれかであり得る:ヒトIgG1 FAB TAG、ヒトIgG1 KiH Hole、ヒトIgG1 KiH Knob、ヒトIgG1(L235A、G237A)、ヒトIgG1 YTE、ヒトIgG1(L235A、G237A、YTE)、及びこれらの変種。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体の重鎖定常領域は、表6に記載されるようなIgG2の修飾された定常領域を有するヒト重鎖であり得る。例えば、修飾された定常領域重鎖は、以下の変異を含むヒト重鎖IgG2定常領域であり得る:表6に記載されているようなA330P331~S330S331(野生型IgG2配列を参照するアミノ酸番号付け、Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624)、配列番号:ヒトIgG2DASS;配列番号43。いくつかの実施態様において、本発明の抗PACAP抗体の重鎖定常領域は、表6に記載されるようなIgG4の修飾された定常領域を有するヒト重鎖であり得る。例えば、IgG4の修飾された定常領域は以下のいずれかであり得る:ヒトIgG4 KiH Hole、ヒトIgG4 KiH Knob、ヒトIgG4(L235A、G237A)、ヒトIgG4(L235E)、ヒトIgG4 YTE、ヒトIgG4 YTE KiH ホール、ヒトIgG4 YTE KiH Knob、及びこれらの変種。
【0115】
さらに他の実施態様において、定常領域は、N結合型グリコシル化のために非グリコシル化され得る。いくつかの実施態様において、定常領域は、定常領域におけるN-グリコシル化認識配列の一部であるオリゴ糖結合残基(例えば、Asn297)及び/又は隣接残基を変異させることによって、N-結合型グリコシル化のために非グリコシル化され得る。いくつかの実施態様において、定常領域は、N結合型グリコシル化のために非グリコシル化され得る。定常領域は、N結合グリコシル化のために、酵素的に又はグリコシル化欠損宿主細胞での発現によって、非グリコシル化することができる。
【0116】
さらに他の実施態様において、本開示の抗体は、表6に記載の定常領域などの上記定常領域のいずれかを含み、ここで、定常領域配列は、EUFC番号付けによると447位にC末端リジン(K)をさらに含み得る。
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
【0117】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号29~32に記載の重鎖フレームワーク領域(VHFR)-1、VHFR-2、VHFR-3、及びVHFR-4配列;及び、それぞれ配列番号33~36に記載の軽鎖フレームワーク領域(VLFR)-1、VLFR-2、VLFR-3、及びVLFR-4配列を含む。
【0118】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号11及び12から選択される配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列と、配列番号20及び21から選択される配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVL配列とを含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号11及び12から選択されるVH配列と、配列番号20及び21から選択されるVL配列とを含む。
【0119】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び20に記載の配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む。他の実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び21に記載の配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び21に記載の配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む。他の実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び20に記載の配列と約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%同一であるVH配列及びVL配列を含む。
【0120】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び20に記載のVH配列及びVL配列を含む。いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び20に記載のVH配列及びVL配列を含み、ここで、VH配列は、配列番号11の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0121】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図8に提供される、それぞれ配列番号11及び配列番号20に提供されるVH及びVLアミノ酸配列を含む。例えば、前記VH及びVLは、図8において太字で示されている。
【0122】
他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び21に記載のVH配列及びVL配列を含む。他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び21に記載のVH配列及びVL配列を含み、ここで、前記VH配列は、配列番号12の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0123】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図9に提供される、それぞれ配列番号12及び配列番号21に記載のVH及びVLアミノ酸配列を含む。例えば、前記VH及びVLは、図9おいて太字で示されている。
【0124】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び21に記載のVH配列及びVL配列を含む。いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号11及び21に記載のVH配列及びVL配列を含み、ここで、前記VH配列は、配列番号11の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0125】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図10に提供される、それぞれ配列番号11及び配列番号21に記載のVH及びVLアミノ酸配列を含む。例えば、前記VH及びVLは、図10において太字で示されている。
【0126】
他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び20に記載のVH配列及びVL配列を含む。他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号12及び20に記載のVH配列及びVL配列を含み、ここで、前記VH配列は、配列番号12の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0127】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図11に提供される、それぞれ配列番号12及び配列番号20に記載のVH及びVLアミノ酸配列を含む。例えば、前記VH及びVLは、図11おいて太字で示されている。
【0128】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号37~51からなる群から選択される重鎖定常領域配列と、配列番号23及び24から選択される軽鎖定常領域配列とを含む。特定の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号43に記載の重鎖定常領域配列と、配列番号23に記載の軽鎖定常領域配列を含む。
【0129】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変領域内の残基(ほぼ、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を参照する場合に使用される(例えば、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。Kabatのようなアミノ酸位置の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)中の抗体の編集物の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に使用される番号付けシステムを指す。このシステムによれば、重鎖可変領域は、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(例えば、Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82後の挿入残基(例えば、残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。所定の抗体についての残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付けされた配列の相同領域での整列によって決定することができる。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。Kabatの番号付け規則を使用して番号付けされた場合、Chothia VH-CDR1ループの末端は、ループの長さに応じて32位と34位の間のVHで変化する(これは、Kabatの番号付けスキームが35位A位と35B位のVHに挿入物を配置するためである;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了する;35Aのみが存在する場合は、ループは33で終了する;35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループの間の妥協点を表しており、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。
【0130】
VH CDR1の32位(Kabat番号付け)の残基は、予測される低い免疫原性プロフィールを有するために重要である。従って、いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VH CDR1の32位(Kabat番号付け)にバリン(V)又はロイシン(L)を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VH CDR1の32位(Kabat番号付け)にセリン(S)を有さない。
【0131】
さらに、いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VHFR-3のそれぞれ93位及び94位(Kabat番号付け)にアラニン-イソロイシン(AI)を有する。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VHFR-3のそれぞれ93及び94位(Kabat番号付け)にアラニン-アルギニン(AR)を有さない。
【0132】
さらに、VL CDR2の50位及び51位(Kabat番号付け)もまた、本明細書で提供される抗体の低い免疫原性プロフィールにとって重要である。従って、いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗体は、VL CDR2のそれぞれ50位及び51位(Kabat番号付け)にトリプトファン-アラニン(WA)を含む。
【0133】
いくつかの実施態様において、本開示はまた、配列番号19に由来するVH配列と配列番号22に由来するVL配列とを含む抗PACAPも包含する。いくつかの実施態様において、抗PACAP抗体は、Kabat番号付けによる配列番号19の残基32にバリン(V)又はロイシン(L)を有するVH配列と、並びにKabat番号付けによる配列番号22の残基27Eにアラニン(A)を有し、及びKabat番号付けによる配列番号22のそれぞれ残基50及び51にトリプトファン(W)及びアラニン(A)を有するVL配列とを含む。特定の実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、VH中のKabat番号付けによる残基92~94にシステイン-アラニン-イソロイシン(CAI)モチーフをさらに含む。図2A~2Bを参照されたい。
【0134】
本明細書で提供されるすべての抗体について、定常領域及び/又は可変領域の番号付けは、IMGT(登録商標)に従うことができる(IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information System(登録商標); Lefranc M P et al., Nucleic Acids Res, 27(1):209-12 (1999); Ruiz M et al., Nucleic Acids Res, 28(1):219-21 (2000); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 29(1):207-9 (2001); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 31(1):307-10 (2003); Lefranc M P et al., Dev Comp Immunol, 29(3):185-203 (2005); Kaas Q et al., Briefings in Functional Genomics & Proteomics, 6(4):253-64 (2007))。
【0135】
例えば、いくつかの実施態様において、本開示は、以下の表8に提供されるVH CDR配列とVL CDR配列の組み合わせを含む抗PACAP抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、CDR配列はIMGT番号付けに基づく。
【表8】
【0136】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される抗PACAP抗体は、表8に提供されるVH CDR配列とVL CDR配列の組み合わせを含み、ここで、各CDR配列は、1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0137】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号61、52、及び55に記載の重鎖可変領域(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列と、それぞれ配列番号62、53、及び57に記載の軽鎖可変領域(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列と、1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを含む。
【0138】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号28、52、及び55に記載の重鎖可変領域(VH)-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列と、それぞれ配列番号62、53、及び57に記載の軽鎖可変領域(VL)-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列と、1、2、又は3個の保存的アミノ酸置換を含む変種とを含む。
【0139】
さらに、本開示の抗PACAP抗体はまた、本明細書の表9に提供されるFR配列と、以下にさらに詳細に記載される変種も含み得る。
【表9】
【0140】
本明細書で提供されるすべての抗体について、定常ドメイン及び/又は可変ドメインの番号付けは、「EU番号付けシステム」に従うこともできる(Edelman G M et al., Proc Natl Acad Sci USA, 63(1):78-85 (1969))。IGHG1のヒトCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3定常領域の完全な対応は、IMGT(登録商標)データベース中に見いだすことができる(IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information System(登録商標); Lefranc M P et al., Nucleic Acids Rev, 27(1):209-12 (1999); Ruiz M et al., Nucleic Acids Res, 28(1):219-21 (2000); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 29(1):207-9 (2001); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 31(1):307-10 (2003); Lefranc M P et al., Dev Comp Immunol, 29(3):185-203 (2005)); Kaas Q et al., Briefings in Functional Genomics & Proteomics, 6(4):253-64 (2007))。
【0141】
例えば、ヒトのカッパ免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(IGKC)の番号付けは、「EU番号付けシステム」に従うことができる(Edelman G M et al., Proc Natl Acad Sci USA, 63(1):78-85 (1969))。ヒトCKドメインの完全な対応は、IMGTデータベース中に見いだすことができる(IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information System(登録商標); Lefranc M P et al, Nucleic Acids Rev, 27(1):209-12 (1999); Ruiz M et al., Nucleic Acids Res, 28(1); 219-21 (2000); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 29(1):207-9 (2001); Lefranc M P, Nucleic Acids Res, 31(1):307-10 (2003); Lefranc M P et al., Dev Comp Immunol, 29(3):185-203 (2005)); Kaas Q et al., Briefings in Functional Genomics & Proteomics, 6(4):253-64 (2007))。
【0142】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、以下の表10に提供される重鎖及び軽鎖の全長配列の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、表10に提供される重鎖全長配列を含み、ここで、重鎖配列は、配列番号の残基70、72、74、及び75の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。さらに他の実施態様において、本開示の抗体は、表10に提供される重鎖全長配列を含み、ここで、定常領域配列は、EU Fc番号付けによる447位にC末端リジン(K)をさらに含み得る。
【表10-1】
【表10-2】
【0143】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号70、72、74、及び75に記載の配列と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、配列番号71及び73に記載の配列と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長軽鎖配列を含む。
【0144】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号70及び71と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0145】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号74及び71と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0146】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号75及び71と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0147】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号72及び73と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0148】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号70及び73と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0149】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号72及び71と、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約99%同一である全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。
【0150】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号70及び71に記載の全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図8でそれぞれ配列番号70及び配列番号71に提供される重鎖及び軽鎖の全長アミノ酸配列を含む。例えば、図8では定常領域に点線の下線が引かれている。
【0151】
他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号72及び73に記載の全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図9でそれぞれ配列番号72及び配列番号73に提供される重鎖及び軽鎖の全長アミノ酸配列を含む。例えば、図9では定常領域に点線の下線が引かれている。
【0152】
いくつかの例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号70及び73に記載の全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図10でそれぞれ配列番号70及び配列番号73に提供される重鎖及び軽鎖の全長アミノ酸配列を含む。例えば、図10では定常領域に点線の下線が引かれている。
【0153】
さらに他の例示的な実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、それぞれ配列番号72及び71に記載の全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を含む。いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、図11でそれぞれ配列番号71及び配列番号72に提供される重鎖及び軽鎖の全長アミノ酸配列を含む。例えば、図11では定常領域に点線の下線が引かれている。
【0154】
いくつかの実施態様において、本開示の抗PACAP抗体は、本明細書において上記で提供される重鎖全長配列を含み、ここで、前記重鎖配列は、配列番号70、72、74、及び75の残基1にグルタミン酸(E)の代わりにグルタミン(Q)を有する。
【0155】
上で論じたように、本開示は、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかの変種を包含する。免疫グロブリン鎖(例えば、VH、VL、HC、又はLC)などのポリペプチドの「変種」とは、本明細書に示される参照アミノ酸配列と、少なくとも約80~99.9%(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%)同一であるか又は類似しているアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。比較がBLASTアルゴリズムによって実行される場合、アルゴリズムのパラメータは、それぞれの基準配列の全長にわたってそれぞれの配列間に最大の一致を与えるように選択される。
【0156】
2つ以上の核酸又はタンパク質との関連で本明細書において使用される用語「同一性パーセント」は、以下に記載されるデフォルトパラメータを使用するBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して測定するか、用手法的な整列及び目視検査によって測定したとき、同じであるか、又は同じヌクレオチド若しくはアミノ酸の特定の割合(比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって最大の一致を求めて比較及び整列された場合、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%以上の同一性)を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。例えば、NCBIWebサイト(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)を参照。従って、このような配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、配列の相補体にも言及するか又は適用される可能性がある。この定義にはまた、欠失及び/又は付加を含む配列も、並びに置換を含む配列も含む。配列同一性は、アミノ酸のある範囲にわたって計算することができる。例えば、配列同一性は、長さが少なくとも約20個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって、又は長さが10~100個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって、又は所定の配列の全長にわたって計算することができる。配列同一性は、公開された技術及び広く利用可能なコンピュータプログラム、例えばGCSプログラムパッケージ(Devereux et al, Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J Mol Biol 215:403, 1990)などを使用して計算することができる。配列同一性は、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)の遺伝学コンピューターグループ(Genetics Computer Group)の配列分析ソフトウェアパッケージなどの配列分析ソフトウェアを、そのデフォルトパラメータを用いて使用して測定することができる。
【0157】
「同一性」自体は、技術分野で認められた意味を有し、公開されている技術を使用して計算することができる。例えば、COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, (1988); BIOCOMPUTING: INFORMATICS AND GENOME PROJECTS, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, (1993); COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA, PART I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, (1994); SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY, von Heinje, G., Academic Press, (1987); 及びSEQUENCE ANALYSIS PRIMER, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, (1991)を参照。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列間の同一性を測定する方法は多数あり、用語「同一性」は当業者にはよく知られている(Carillo, H., and Lipton, D., SIAM J. Applied Math. 48:1073 (1988))。2つの配列間の同一性又は類似性を決定するために一般的に使用される方法には、限定されるものではないが、“Guide to Huge Computers,” Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, (1994), 及びCarillo, H., and Lipton, D., SIAM J. Applied Math. 48:1073 (1988)に開示されている方法が含まれる。ポリヌクレオチド又はポリペプチドを整列させるための方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul, S. F. et al., J. Mol. Biol. 215:403 (1990))、Bestfitプログラム (Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711 (Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482 489 (1981)のローカル相同性アルゴリズムを使用する)を含むコンピュータプログラムで成文化されている。
【0158】
本開示の照会(query)アミノ酸配列と、例えば少なくとも95%「同一」のアミノ酸配列を有するポリペプチドとは、対象ポリペプチド配列が、照会アミノ酸配列の各100個のアミノ酸当たり最大5つのアミノ酸改変を含み得ることを除いて、対象ポリペプチドのアミノ酸配列が照会配列と同一であることを意図する。換言すれば、照会アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るには、基準配列中のアミノ酸残基の最大5%が挿入、欠失、又は別のアミノ酸で置換され得る。基準配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端位置又はカルボキシ末端位置、又はこれらの末端位置間の任意の位置で、基準配列内の残基間に個別に、又は基準配列内の1つ又はそれ以上の連続するグループに散在して起こり得る。実際問題として、特定のポリペプチドが、本開示のポリペプチド配列(例えば、本明細書で提供される抗PACAP抗体)と、少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラムを使用して決定することができる。
【0159】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、例えば表1~10のいずれかに示されるアミノ酸配列と、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラムを使用して従来のように決定することができる。照会配列(本開示の配列)と基準配列との間の最良の全体的一致を決定するための好ましい方法(グローバル配列整列とも呼ばれる)もまた、上述のFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定することができる。配列整列では、照会配列と基準配列は両方ともアミノ酸配列である。前記の全体的な配列整列の結果は、同一性パーセントで表される。本開示の1つの実施態様において、同一性パーセントを計算するためにアミノ酸配列のFASTDB整列で使用されるパラメータは、行列=PAM0、k-タプル=2、不一致ペナルティ=1、結合ペナルティ=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長さ、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500、又は対象アミノ酸配列の長さのいずれか短い方である。
【0160】
内部欠失ではなくN末端又はC末端の欠失により、基準配列が照会配列より短い場合は、結果を用手的に修正する必要がある。これは、FASTDBプログラムが全体的同一性パーセントを計算する際に、基準配列のN末端及びC末端の切断を考慮していないためである。N末端とC末端が切断された基準配列の場合、照会配列と比較して、同一性パーセントは、基準配列のN末端とC末端である照会配列の残基の数を計算することによって補正され、これらは、照会配列の全塩基のパーセントとして、対応する対象残基と一致/整列したものではない。残基が一致/整列しているかどうかは、FASTDBの配列整列の結果によって決定される。このパーセントは、指定されたパラメータを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算された同一性パーセントから減算され、最終的な同一性パーセントスコアが得られる。この最終的な同一性パーセントスコアは、本開示の目的に使用されるものである。同一性パーセントスコアを用手法で調整する目的で、照会配列と一致/整列していない基準配列のN末端及びC末端の残基のみが考慮される。すなわち、基準配列の最も遠いN末端残基及びC末端残基の外側の照会残基位置のみである。
【0161】
例えば、90個のアミノ酸残基の基準配列を100残基の照会配列と整列させて、同一性パーセントを決定する。欠失は基準配列のN末端で発生するため、FASTDB整列ではN末端の最初の10残基の一致/整列が示されない。10個の不対残基は配列の10%(一致しないN末端及びC末端の残基数/照会配列内の総残基数)に相当するため、FASTDBプログラムによって計算される同一性パーセントスコアから10%が減算される。残りの90残基が完全に一致した場合、最終的な同一性パーセントは90%になる。別の例では、90残基の基準配列が100残基の照会配列と比較される。今回の欠失は内部欠失であるため、基準配列のN末端又はC末端には照会配列と一致/整列しない残基はない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは用手法では修正されない。再度、FASTDB整列で表示される、基準配列のN末端及びC末端の外側にある、照会配列と一致/整列していない残基位置のみが用手法で修正される。
【0162】
開示された同一性パーセントの範囲内で、本開示は、本開示の開示されたポリペプチドの置換変種にも関する。置換変種には、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が除去され、別の残基で置換されたポリペプチドが含まれる。1つの態様において、上記で開示された同一性パーセントは、同定された特定の配列の全体の配列に関するが、一定のままで変化を受けないアミノ酸残基はCDRのアミノ酸残基であり、フレームワークのアミノ酸残基は変化を受けるであろう。例えば、1つの特定の実施態様において、本開示の抗PACAP抗体が、配列番号11のアミノ酸配列と、少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%同一であるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのVHを含む場合、配列番号11の全体的な同一性パーセントが実施態様の範囲内に収まる限り、そのVHのCDR領域は一定のままで、フレームワーク領域は可変であることが許容される。1つの態様において、変化は本質的に保存的な置換である。しかし、本開示は非保存的である置換も包含する。本開示の目的のための保存的置換は、以下の表11~13に示されるように定義され得る。アミノ酸は、物理的特性とタンパク質の二次及び三次構造への寄与に従って分類することができる。保存的置換は、あるアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸に置換することとして当該技術分野で認識されている。例示的な保存的置換を以下に示す。
【表11】
【0163】
あるいは、保存的アミノ酸は、Lehninger (1975) Biochemistry, Second Edition; Worth Publishers, pp.71-77に記載されているようにグループ化することができる。
【表12】
【0164】
さらに他の代替的、例示的な保存的置換を以下に示す。
【表13】
【0165】
核酸
上で論じたように、本開示の1つの態様は、本開示の抗体をコードする核酸配列を含む組換え核酸に関する。いくつかの実施態様において、本開示の組換え核酸は、例えば、宿主細胞内での抗体のインビボ発現を可能にする調節配列などの異種核酸配列に作動可能に連結されたこれらの核酸分子を含む発現カセット又はベクターとして構成することができる。
【0166】
本開示の核酸分子は、任意の長さであり得、例えば、約1Kb~約50Kb、例えば、約1.2Kb~約10Kb、約2Kb~約15Kb、約5Kb~約20Kb、約10Kb~約20Kb、約5Kb~約40Kb、約5Kb~約30Kb、約5Kb~約20Kb、又は約10Kb~約50Kb、約15Kb~約30Kb、約20Kb~約50Kb、約20Kb~約40Kb、約5Kb~約25Kb、又は約30Kb~約50Kbを含む。
【0167】
従って、いくつかの実施態様において、本開示の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が本明細書に提供される。特定の実施態様において、本明細書で提供される核酸分子は、例えば表1~10に記載のものを含む本明細書で開示されるポリペプチド配列のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施態様において、ヌクレオチド配列は発現カセット又は発現ベクターに組み込まれる。発現カセットが一般に、抗体又はその抗原結合断片のコード配列と、受容体細胞、インビボ及び/又はエクスビボでのコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を指示するのに十分な調節情報を含む遺伝物質の構築物を含むことは、当業者には理解されるであろう。一般に、発現カセットは、所望の宿主細胞及び/又は個体を標的とするベクターに挿入することができる。従って、いくつかの実施態様において、本開示の発現カセットは、プロモーター、及び任意選択的にコード配列の転写又は翻訳に影響を与える他の核酸配列のいずれか又は組み合わせなどの発現制御要素に作動可能に連結された、本開示の抗体又はその抗原結合断片のコード配列を含む。
【0168】
発現カセットは、任意の供給源に由来する、ゲノム組み込み又は自律複製が可能な線状又は環状、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAポリヌクレオチド分子として、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポリヌクレオチド分子、ファージに挿入することができ、1つ又はそれ以上の核酸配列が機能的に作動する様式で、例えば作動可能に連結されている核酸分子を含む。
【0169】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸分子は発現ベクターに取り込まれる。「ベクター」という用語は、一般に、宿主細胞間での転移のために設計された組換えポリヌクレオチド構築物を指し、形質転換の目的のために、例えば宿主細胞への異種DNAの導入のために使用することができることは、当業者には理解されるであろう。従って、いくつかの実施態様において、ベクターは、挿入されたセグメントの複製を引き起こすために別のDNAセグメントが挿入され得る、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコンであり得る。いくつかの実施態様において、発現ベクターは組み込みベクターであり得る。
【0170】
いくつかの実施態様において、発現ベクターはウイルスベクターであり得る。当業者には理解されるように、「ウイルスベクター」という用語は、典型的には、細胞のゲノムへの核酸分子の転移又は組み込みを促進するウイルス由来の核酸要素を含む核酸分子(例えば、転移プラスミド)を指すか、又は核酸の転移を媒介するウイルス粒子を指すのに広く使用されている。ウイルス粒子には典型的には、核酸に加えて、さまざまなウイルス成分が含まれ、場合によっては宿主細胞成分も含まれる。ウイルスベクターという用語は、核酸を細胞に転移することができるウイルス又はウイルス粒子、又は転移された核酸自体を指すことができる。ウイルスベクター及び転移プラスミドには、主にウイルスに由来する構造的及び/又は機能的遺伝要素が含まれる。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的及び機能的遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、レトロウイルス属であるレンチウイルスに主に由来するLTRを含む、構造的及び機能的遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。
【0171】
本明細書に開示の抗体及び抗原結合断片をコードする核酸配列は、目的の宿主細胞における発現のために最適化することができる。例えば、配列のGC含有量は、宿主細胞内で発現される既知の遺伝子を参照して算出される、所定の細胞宿主の平均レベルに調整することができる。コドン使用の最適化のための方法は当技術分野で知られている。本明細書に開示される抗体及び抗原結合断片のコード配列内のコドン使用は、宿主細胞における発現を増強するように最適化して、コード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、又は最大100%が、特定の宿主細胞での発現用に最適化されているようにすることができる。
【0172】
また本明細書では、本明細書に開示される任意の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸分子の1つ又はそれ以上を含むベクター、プラスミド、又はウイルスも提供される。核酸分子は、例えばベクターで形質転換/形質導入された細胞内での発現を指示することができるベクター内に含めることができる。真核細胞及び原核細胞での使用に適したベクターは当技術分野で知られており、市販されているか、又は当業者によって容易に調製される。例えば、以下を参照されたい:Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012), Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory and Sambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (まとめて“Sambrook”と呼ぶ); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (2014年までの増補を含む); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferree, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley, (2014年までの増補を含む); 及び Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.(これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0173】
DNAベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術を介して、細胞、例えば真核細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrook et al.(2012,前出)及び他の標準的な分子生物学実験マニュアル中に見出され、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、微量注入法、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、スクレープローディング、衝撃導入、ヌクレオポレーション、流体力学的衝撃、及び感染が含まれる。
【0174】
本開示において使用することができるウイルスベクターには、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、及びウシパピローマウイルスベクターが含まれる(例えば、Gluzman (Ed.), Eukaryotic Viral Vectors, CSH Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)。
【0175】
例えば、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、真核宿主、例えば哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH3T3細胞、又はHeLa細胞)で産生され得る。これらの細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(Manassas, VA))を含む多くの供給元から入手できる。発現系を選択する場合、構成要素が相互に適合性があることだけが重要である。技術者や当業者であれば、そのような判断は可能である。さらに、発現系の選択に指導が必要な場合、当業者は、P. Jones, “Vectors: Cloning Applications”, John Wiley and Sons, New York, N.Y., 2009)を参考にすることができる。
【0176】
提供される核酸分子は、天然に存在する配列、又は天然に存在するものとは異なる配列を含み得るが、遺伝暗号の縮重により、同じポリペプチド、例えば抗体をコードする場合がある。これらの核酸分子は、RNA又はDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、又はホスホルアミダイトベースの合成によって生成されるような合成DNA)、又はこれらの種類の核酸内のヌクレオチドの組み合わせ若しくは修飾から構成され得る。さらに、核酸分子は二本鎖であっても一本鎖であってもよい(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)。
【0177】
核酸分子は、ポリペプチド(例えば、抗体)をコードする配列に限定されず、コード配列(例えば、抗体のコード配列)の上流又は下流にある非コード配列の一部又はすべても含まれ得る。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための日常的な手順に精通している。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合、分子は、例えばインビトロ転写によって生成され得る。
【0178】
組換え細胞及び細胞培養物
本開示の核酸を、宿主細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に導入して、核酸分子を含む操作細胞又は組換え細胞を産生することができる。本開示の核酸分子(例えば、DNA又はmRNAを含むRNA)又はベクターの細胞への導入は、当業者に知られている方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入法、ナノ粒子媒介核酸送達によって達成することができる。例えば、異種核酸分子を哺乳動物細胞に導入する方法は当技術分野で公知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソームへの核酸分子の封入、脂質ナノ粒子技術、微粒子銃注入、及び核へのDNAの直接微量注入法が含まれる。さらに、核酸分子は、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入することができる。以下により詳細に論じられるように、いくつかの実施態様において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、被験体に核酸形態(例えば、DNA又はmRNAを含むRNA)で導入することができ、こうして、被験体自身の細胞が抗体を生成する。本開示はさらに、本明細書に記載の抗CoV-S抗体をコードするヌクレオチド配列に対する修飾を提供し、その結果、抗体発現の増加、抗体安定性の上昇、核酸(例えば、mRNA)安定性の上昇、又はCoVスパイクタンパク質に対する抗体の親和性若しくは特異性の改善がもたらされる。
【0179】
従って、いくつかの実施態様において、核酸分子は、当技術分野で知られているウイルス又は非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。例えば、核酸分子は、宿主ゲノムに安定して組み込まれるか、エピソーム的に複製するか、又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在することができる。従って、いくつかの実施態様において、核酸分子は、エピソーム単位として組換え宿主細胞内で維持及び複製される。いくつかの実施態様において、核酸分子は、組換え細胞のゲノムに安定して組み込まれる。安定した組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術を使用するか、又はより正確な技術、例えばガイドRNA指令CRISPR/Casゲノム編集、又はNgAgo(ナトロノバクテリウム・グレゴリイアルゴノート(Natronobacterium gregoryi Argonaute))を使用するDNA誘導エンドヌクレアーゼゲノム編集、又はTALENゲノム編集(転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ)を使用して達成することができる。いくつかの実施態様において、核酸分子は、一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在する。
【0180】
核酸分子は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子にカプセル化することができ、又は電気穿孔法などの当技術分野で知られているウイルス又は非ウイルス送達手段及び方法によって送達することができる。例えば、細胞への核酸の導入は、ウイルス形質導入によって達成することができる。非限定的な例では、アデノ随伴ウイルス(AAV)を操作して、ウイルス形質導入を介して標的細胞に核酸が送達される。いくつかのAAV血清型が報告されており、既知の血清型はすべて、複数の多様な組織型の細胞に感染する可能性がある。AAVは、毒性を示すことなく、インビボで広範な種及び組織に形質導入することができ、比較的穏やかな自然免疫反応及び適応免疫反応を生成する。
【0181】
レンチウイルス由来のベクター系もまた、ウイルス形質導入による核酸送達や遺伝子治療に有用である。レンチウイルスベクターは、遺伝子送達ビヒクルとして以下のようないくつかの魅力的な特性を提供する:(i)宿主ゲノムへの安定したベクターの組み込みによる持続的な遺伝子送達;(ii)分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染する能力;(iii)重要な遺伝子治療及び細胞治療の標的細胞タイプを含む広範な組織指向性;(iv)ベクター形質導入後にウイルスタンパク質が発現しない;(v)ポリシストロニック配列又はイントロン含有配列などの複雑な遺伝要素を送達する能力;(vi)潜在的に安全な組み込み部位のプロフィール;及び(vii)ベクターの操作と生産のための比較的簡単なシステム。
【0182】
いくつかの実施態様において、宿主細胞は、例えば本願のベクター構築物、例えば相同組換え用のウイルスベクター若しくはベクターを用いて遺伝子操作(例えば、形質導入又は形質転換又はトランスフェクト)することができ、前記ベクターは、宿主細胞のゲノムの一部に相同な核酸配列を含むか、又は目的のポリペプチドの発現のための発現ベクターであり得る。本発明の抗体は、既知の方法を使用して調製及び精製することができる。例えば、HC(例えば、配列番号70によって与えられるアミノ酸配列)及びLC(例えば、配列番号71によって与えられるアミノ酸配列)をコードするcDNA配列をクローニングし、公知の方法を使用して発現ベクターに操作することができる。次に、操作された免疫グロブリン発現ベクターは、操作された細胞に安定してトランスフェクトされ得る。
【0183】
いくつかの実施態様において、操作された細胞は真核細胞である。いくつかの実施態様において、操作された細胞は動物細胞である。いくつかの実施態様において、動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施態様において、動物細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様において、動物細胞はヒト細胞である。いくつかの実施態様において、動物細胞は非ヒト動物細胞である。いくつかの実施態様において、操作された細胞は非ヒト霊長類細胞である。いくつかの実施態様において、操作された細胞は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHEK-293細胞、ヒトHeLa細胞、ヒトHepG2細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋肉細胞、マウス3T3細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋肉細胞、及びウサギ腎臓細胞からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、操作された細胞はピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞又はサッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)細胞であり、それらはすべて本発明に記載される抗体の産生にも適している。
【0184】
別の態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞及び培地を含む細胞培養物が本明細書に提供される。一般に、培地は本明細書に記載の細胞を培養するための任意の適切な培地であり得る。上述の多種多様な宿主細胞及び種を形質転換するための技術は当技術分野で知られており、技術文献及び科学文献に記載されている。従って、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物もまた、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するのに適した方法及びシステムは、当技術分野で知られている。
【0185】
いくつかの実施態様において、本開示は、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片を産生する方法を提供する。この方法は、細胞が抗体又はその抗原結合断片を産生するのに十分な条件下で、本明細書に記載の操作された細胞又は組換え細胞を培養することを含むことができる。
【0186】
別の態様において、本明細書に開示される組換え核酸又はベクターを含む動物も提供される。いくつかの実施態様において、本開示は、非ヒト動物であるトランスジェニック動物を提供する。いくつかの実施態様において、トランスジェニック動物は、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片を産生する。
【0187】
本開示のトランスジェニック非ヒト宿主動物は、非ヒト動物のゲノムに外因性核酸を導入するための当技術分野で知られている標準的な方法を使用して調製される。いくつかの実施態様において、本開示の非ヒト動物はマウスである。本開示の組成物及び方法に適した他の動物種には、(i)遺伝子導入に適し、(ii)免疫グロブリン遺伝子セグメントを再構成して抗体反応を生じさせることができる、動物が含まれる。そのような種の例には、限定されるものではないが、ラット、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、及びウシが含まれる。トランスジェニック非ヒト動物を作製するためのアプローチ及び方法は、当技術分野で知られている。例示的な方法には、前核微量注入法、DNA微量注入法、レンチウイルスベクターを介した初期胚へのDNA転移、及び精子を介した遺伝子導入、動物精子(例えばブタ)へのアデノウイルスを介したDNAの導入、レトロウイルスベクター(例えば鳥類)、体細胞核転移(例えば、ヤギ)が含まれる。トランスジェニック家畜の作製における最先端技術は、Niemann, H. et al. (2005) Rev. Sci. Tech. 24:285-298に概説されている。
【0188】
いくつかの実施態様において、動物は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施態様において、動物は哺乳動物被験体である。いくつかの実施態様において、哺乳類動物は非ヒト動物である。いくつかの実施態様において、本開示のトランスジェニック動物は、古典的なランダムゲノム組換え技術を使用して、又はガイドRNA誘導型CRISPR/Casゲノム編集、又はNgAgo(ナトロノバクテリウム・グレゴリイアルゴノート)を用いるDNA誘導型エンドヌクレアーゼゲノム編集、又はTALENゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などのより精密な技術を使用して作製することができる。いくつかの実施態様において、本開示のトランスジェニック動物は、トランスジェニック微量注入法技術を使用して作製することができ、相同組換え技術の使用を必要とせず、従って、相同組換えを使用するアプローチよりも調製及び選択が容易であると考えられる。
【0189】
別の態様において、抗体又はその抗原結合断片を産生するための方法が本明細書に提供され、ここで、この方法は、(i)本明細書に開示されるトランスジェニック動物、又は(ii)本明細書に開示される組換え細胞を、抗体又は抗原結合断片が産生されるするような条件下で、増殖させることを含む。
【0190】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片を産生する方法は、産生された抗体又は抗原結合断片を、(i)トランスジェニック動物、又は(ii)組換え細胞及び/又は組換え細胞が培養された培地から、単離することをさらに含む。いくつかの実施態様において、哺乳動物は非ヒト霊長類である。従って、本明細書に開示される方法によって産生される抗体又は抗原結合断片もまた、本開示の範囲内である。
【0191】
医薬組成物
本開示の抗PACAP抗体、核酸は、医薬組成物を含む組成物に組み込むことができる。
【0192】
別の態様において、本開示の抗体、核酸は、様々な下流用途に適した組成物、例えば医薬組成物に組み込むことができる。本開示の例示的な組成物には、一般に、1つ又はそれ以上の抗体、核酸、及び医薬的に許容し得る賦形剤、例えば担体を含む医薬組成物が含まれる。いくつかの実施態様において、組成物は無菌組成物である。いくつかの実施態様において、組成物はワクチンとして製剤化される。いくつかの実施態様において、組成物は補助剤をさらに含む。
【0193】
本明細書で提供される医薬組成物は、組成物を個体に投与できる任意の形態とすることができる。いくつかの特定の実施態様において、医薬組成物はヒトへの投与に適している。本開示の範囲には、抗CoV-S抗原結合ポリペプチド、例えば抗体もしくはその抗原結合断片(例えば表1の)を含む乾燥、例えば凍結乾燥された組成物、又は医薬的に許容し得る担体を含むが実質的に水を含まないその医薬組成物が含まれる。本明細書で使用される「医薬的に許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用が、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されているか、又米国薬局方若しくはその他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。担体は、医薬組成物と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルであり得る。生理食塩水、ブドウ糖水溶液及びグリセロール水溶液も、注射用溶液を含む液体担体として使用することができる。適切な賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinによる “Remington’s Pharmaceutical Sciences” に記載されている。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、個体又は動物(いくつかの非限定的な例には、ヒト又は哺乳動物が含まれる)への投与のために無菌的に製剤化される。いくつかの実施態様において、個体はヒトである。
【0194】
いくつかの実施態様において、本開示の医薬組成物は、個体への意図された投与経路に適するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口、腹腔内、結腸直腸、腹腔内、及び腫瘍内投与に適するように製剤化することができる。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、経口、経直腸、経粘膜、経腸、非経口用;筋肉内、皮下、皮内、髄内、くも膜下腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、注入、局所、皮膚、経皮、又は動脈内投与用に製剤化され得る。当業者であれば、製剤が投与様式に適合すべきであることを理解するであろう。
【0195】
例えば、注射用途に適した医薬組成物には、無菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための、滅菌水溶液又は分散液及び無菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。いくつかの実施態様において、組成物は無菌であるべきであり、容易に注射できる程度に流体であるべきである。これは、製造及び保管の条件下で安定化することができ、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合に必要な粒子サイズの維持により、及び界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムの使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、及び/又は塩化ナトリウムを含めることが一般的である。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0196】
無菌注射液は、必要に応じて、上に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに、必要量の活性化合物を適切な溶媒に取り込み、その後濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒体及び上に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製される。
【0197】
方法
本開示はさらに、特に、個体において本明細書に記載されるような状態を治療又は予防する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、PACAP関連症状の任意の側面、例えば、頭痛、片頭痛、群発頭痛、及び/又は難治性片頭痛、不安、うつ病、PTSD、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)との併発状態(例えば、不安/うつ病/PTSD)、片頭痛との併発不安障害、複合局所疼痛症候群、及び酒さを治療又は予防する方法を含むことができる。例えば、頭痛又は片頭痛の治療の文脈では、これには、重症度の軽減、痛み(例えば、頭痛、すなわち頭の痛み)の強さ及び他の関連症状の緩和、再発頻度の低減、頭痛に苦しむ患者のクオリティオブライフの向上、及び頭痛の治療に必要な他の薬の用量の低下が含まれる。片頭痛の場合、その他の関連症状には、限定されるものではないが、吐き気、嘔吐、並びに光、音、及び/又は動きに対する過敏症が含まれる。群発頭痛の場合、その他の関連症状には、限定されるものではないが、目の下又は周囲の腫れ、過剰な涙、目の充血、鼻漏又は鼻づまり、顔の赤みなどが含まれる。
【0198】
さらに本明細書に提供されるものには、個体における状態、例えば本明細書に記載されるような状態の症状を低減するための方法が含まれる。症状の「低減」とは、症状の重症度若しくは頻度の低減、又は症状の排除を意味する。従って、本明細書で使用される「発症率の低減」、「予防(prophylaxis)」、又は「予防(prevention)」という用語は、特定の疾患、状態、症状、又は障害の重症度の低減のいずれかを意味する(疾患、状態、及び障害という用語は、本出願全体を通じて互換的に使用される)。重症度の低減には、例えば、薬物又は療法の必要性、量、及び/又は曝露を低減することによって、その状態に一般的に使用される薬物及び/又は療法を低減することが含まれる。重症度の低減には、特定の状態、症状、又は障害の期間及び/又は頻度を低減することも含まれる(例えば、個体における次のエピソード発作までの時間を遅らせたり延長したりすることを含む)。
【0199】
さらに、本開示は、個体における本明細書に記載のような状態を緩和する方法を提供する。頭痛又は片頭痛、又は本明細書に記載の他のPACAP関連状態の1つ又はそれ以上の症状を改善することは、抗PACAP拮抗薬抗体を投与しない場合と比較して、状態、例えば頭痛又は片頭痛の1つ又はそれ以上の症状の軽減又は改善を意味する。改善には、症状の持続期間の短縮又は低減も含まれる。
【0200】
いくつかの実施態様において、本開示は、個体における本明細書に記載のような状態を制御する方法をさらに提供する。本明細書で使用される「頭痛を制御する」又は「片頭痛を制御する」又は別のPACAP関連状態を「制御する」とは、個体における状態の1つ又はそれ以上の症状、例えば、頭痛、片頭痛の重症度若しくは持続期間、又は頭痛若しくは片頭痛発作の頻度を維持又は低減する(治療前のレベルと比較して)ことを指す。例えば、頭痛の持続期間もしくは重症度又は発作の頻度は、治療前のレベルと比較して個体において、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%低減される。頭痛の持続期間若しくは重症度、又は発作の頻度の低減は、例えば2週間、4週間(1ヶ月)、8週間(2ヶ月)、12週間(3ヶ月)、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月などの任意の期間、持続する可能性がある。
【0201】
本明細書で使用される場合、状態、例えば片頭痛又は頭痛のPACAP関連状態の発症を「遅延させる」とは、状態又は疾患の進行を遅らせる、妨げる、遅くする、遅延させる、安定化させる、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、状態や病気及び/又は治療を受ける個人の病歴に応じて、さまざまな期間になる可能性がある。当業者には明らかなように、十分な又は大きな遅延は、個人が頭痛(例えば、片頭痛)を発症しないという点で、事実上、予防を包含し得る。症状の発症を「遅らせる」方法とは、その方法を使用しない場合と比較した場合に、所定の時間枠内で症状が発症する確率を低減、及び/又は所定の時間枠内で症状の程度を低減する方法である。このような比較は典型的には、統計的に有意な数の被験体を使用する臨床研究に基づいている。
【0202】
状態、例えば本明細書に記載のPACAP関連状態の「発症」又は「進行」は、羞明又は光嫌悪などの障害の又は症状若しくは副作用の初期症状及び/又はその後の進行を意味する。頭痛又は片頭痛の発症は、当技術分野で公知の標準的な臨床技術を使用して検出及び評価することができる。ただし発症は、検出できない可能性のある進行も指す。本開示の目的において、発症又は進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発生、再発、発病が含まれる。本明細書で使用される場合、頭痛又は片頭痛などの状態の「発病」又は「発生」には、最初の発病及び/又は再発が含まれる。この状態は、例えば、原発性頭痛又は続発性頭痛であり得る。原発性頭痛には、例えば、前兆を伴う片頭痛、前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、反復性片頭痛、慢性片頭痛、腹性片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛、全身性頭痛、発作性片頭痛、及び持続性片頭痛が含まれる。続発性頭痛には、例えば、自律神経反射異常に起因する頭痛、片頭痛と併発する不安障害、及び複雑性局所疼痛症候群などの恒常性の障害による頭痛が含まれる。さらに、前記被験体は、群発頭痛及び/又は難治性片頭痛、不安、うつ病、PTSD、頭痛(例えば、片頭痛、群発頭痛、難治性片頭痛)を伴う併発状態(例えば、不安/うつ病/PTSD)、片頭痛と併発する不安障害、複合局所痛症候群、及び酒さなどの疾患又は状態に関連する片頭痛、頭痛、及び疼痛からなる群から選択される状態を有し得る。いくつかの実施態様において、頭痛は、前兆を伴う片頭痛、前兆のない片頭痛、片麻痺性片頭痛、群発頭痛、片頭痛性神経痛、慢性頭痛、反復性片頭痛、慢性片頭痛、薬物乱用頭痛、及び緊張型頭痛からなる群から選択され得る。
【0203】
他の実施態様において、個体は、ここに列挙されていない状態を患っている可能性があるが、本明細書に記載の抗体又は医薬組成物による治療が必要であるとみなされる。
【0204】
片頭痛は、中等度又は重度の頭痛の発作と、可逆的な神経症状及び全身症状を特徴とする慢性発作性神経障害である。片頭痛に関連する最も特徴的な症状には、限定されるものではないが、羞明、音声恐怖症、及び吐き気や嘔吐などの消化器症状が含まれる。対照的に、頭痛は一般に頭のあらゆる領域の痛みを指す。頭痛は頭の片側又は両側で発生することもあれば、特定の場所に限局して発生することもあれば、1点から頭全体に放射状に広がることもあり、締め付けるような性質を有することもある。頭痛は、鋭い痛み、ズキズキする感覚、鈍い痛みなどであり得る。頭痛は徐々に又は突然現れることがあり、1時間未満のことも又は数日間続くこともある。
【0205】
国際頭痛協会(International Headache Society:IHS)は、片頭痛は、4~72時間続く発作で現れる再発性の頭痛疾患と定義している。頭痛の典型的な特徴は、片側性の場所、脈動の質、中程度又は重度の強度、日常的な身体活動による悪化、吐き気及び/又は羞明及び音声恐怖症との関連である。(Headache Classification Subcommittee of the International Headache Society (2018). The international classification of headache disorders 3rd edition. Cephalalgia 38:1-211)。IHSの頭痛分類委員会(Headache Classification Committee of the IHS)によると、片頭痛には主に2つのタイプがある:1)前兆のない片頭痛。これは、特異的な特徴と関連症状を伴う頭痛を特徴とする臨床症候群である;及び、2)前兆を伴う片頭痛。これは主に、通常は頭痛に先行するか又は場合によって頭痛に伴う一過性の限局性神経学的症状を特徴とする。
【0206】
前兆を伴う片頭痛(古典的片頭痛とも呼ばれる)には、片側性の完全に可逆的な視覚、感覚、又はその他の中枢神経系症状の反復発作などの症状が含まれており、これらは通常は徐々に発症し、その後に頭痛及び関連する片頭痛症状が続く。通常、これらの発作は数分間続く。片頭痛は慢性化する場合がある。さらに、慢性片頭痛には、片頭痛の一時的なサブタイプも含まれる場合がある。慢性片頭痛は月に15日以上発生し、それが3か月以上続くもので、少なくとも月に8日以上の片頭痛の特徴を有する。
【0207】
さらに、本明細書で提供される方法は、群発頭痛を患う個体を治療するために使用することができる。群発頭痛の症状には、限定されるものではないが、眼窩、眼窩上、側頭、又はこれらの部位の任意の組み合わせにおける、厳密に片側性の激しい痛みの発作が含まれ、これは、15~180分間続き、隔日1回から1日8回発生する。この痛みは、同側結膜注射、流涙、鼻詰まり、鼻漏、額及び顔面の発汗、縮瞳、眼瞼下垂、及び/又は眼瞼浮腫、及び/又は落ち着きのなさや興奮に関連している。
【0208】
群発頭痛は、発作性の場合と慢性的な場合がある。反復性群発頭痛は、7日から1年(少なくとも3か月続く無痛期間を挟んで)続く発作である。例えば、反復性群発頭痛は、少なくとも3か月続く無痛期間を挟んで、7日から1年(少なくとも3か月続く無痛期間を挟んで)続く発作として現れることがある。さらに、頭痛障害の国際分類第3版によれば、反復性群発頭痛は、3か月以上の無痛寛解期間を挟んで、7日から1年(未治療の場合)続く少なくとも2回の群発期間として現れることもある。対照的に、慢性群発頭痛は、寛解せずに1年以上発生する発作又は寛解期間が3か月未満である場合がある。
【0209】
難治性片頭痛又は抵抗性片頭痛という用語は、治療が難しいか、又は標準的及び/若しくは積極的な治療に反応しない持続性の頭痛を記載するのに使用されてきた。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される難治性片頭痛は、2~4種類の適用可能な予防薬又は予防薬のクラスによる事前の治療の不成功が必要とされる。特定の実施態様において、本明細書で使用される難治性片頭痛は、2~3、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、2を超える、又は3を超える種類の適用可能な予防薬又は予防薬のクラスの事前の治療の不成功が必要とされる。
【0210】
本明細書で使用される「反応しない」又は「治療の不成功」とは、薬剤の標準的な治療後、又は有害事象により患者が耐えられなくなったために、又は薬剤が禁忌であるか筋肉患者に適していないために、治療(予防薬又は予防薬のクラスによる)を中断しなければならない場合、患者における片頭痛の頻度、持続期間、及び/又は重症度を低減する際の予防薬又は予防薬の種類の有効性が欠如していることを指す。
【0211】
予防薬はいくつかのクラスに分類することができる。例えば、これらのクラスには以下のクラスターが含まれる:クラスターA、抗てんかん薬;クラスターB、ベータ遮断薬;クラスターC、三環系抗うつ薬;クラスターD、カルシウムチャネル遮断薬;クラスターE、アンギオテンシンII受容体拮抗薬;クラスターF、ボツリヌス毒素;及びクラスターG、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される難治性片頭痛は、上記のクラスターのいずれか2~4個に対する事前の治療の不成功を必要とする。特定の実施態様において、本明細書で使用される難治性片頭痛は、上記のクラスターのいずれかのうちの2~3個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、2個を超える、又は3個を超える事前の治療の不成功を必要とする。
【0212】
抗てんかん薬の例には、ジバルプロエクス、バルプロ酸ナトリウム、バルプロエート、バルプロ酸、トピラメート、及びガバペンチンが含まれる。β遮断薬の例には、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、及びビソプロポールが含まれる。三環系抗うつ薬の例には、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ドキセピン、及びフルオキセチンが含まれる。カルシウムチャネル遮断薬の例には、フルナリジンが含まれる。アンギオテンシンII受容体拮抗薬の例には、カンデサルタンが含まれる。抗CGRP経路モノクローナル抗体については後述する。例えば、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体は、抗CGRP抗体、抗CGRP受容体(CGRP-R)抗体、又は両方を含むことができる。例示的な実施態様において、抗CGRP抗体はフレマネズマブである。他の実施態様において、抗CGRP抗体はガルカネズマブである。1つの実施態様において、抗CGRP抗体はエプチネズマブである。抗CGRP-R抗体の例にはエレヌマブが含まれる。
【0213】
特定の実施態様において、偏頭痛に適用可能な予防薬は急性治療は含まない。他の実施態様において、本開示に包含される難治性片頭痛は、米国頭痛学会(American Headache Society (AHS))の難治性頭痛特別関心セクション(Refractory Headache Special Interest Section:RHSIS)によって定義されるように、2~4、3~4、少なくとも2、又は少なくとも3クラスの予防薬による治療の不成功を必要とする。この定義の下では、場合によっては、個体は3つのクラスの予防的治療に成功していないを必要とする。
【0214】
さらに、薬理学的に難治性の頭痛の定義が、Silberstein SD, et al. (2010)によって提案されている。(Defining the pharmacologically intractable headache for clinical trials and clinical practice. Headache 50(9):1499-1506)。この定義は、AHS基準に基づいて構築されており、急性治療及び予防的治療に対する難治性の段階的分類スキーム、並びに頭痛に関連する障害の評価を提案している。具体的には、この定義は、クラスI(軽度)難治性頭痛を、2つの異なるクラスの非特異的急性治療(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤の併用)に対する適切な反応の不成功として;クラスII(中等度)難治性頭痛はクラスIに加え、トリプタン又は麦角誘導体(ジヒドロエルゴタミン(DHE)など)への反応の不成功として;及び、クラスIII(重度)難治性頭痛を、クラスI及びIIに加えて、適切な用量及び適切な製剤の経口又は非経口オピオイド若しくはコルチコステロイド、又は非経口ドーパミン拮抗薬に対する反応の不成功として、提案している。
【0215】
さらに、欧州頭痛連盟(European Headache Federation:EHF)は、2014年に慢性片頭痛(CM)の定義に関する合意声明を発表している。これらの基準はCMに限定されており、3つのクラスの予防的治療の不成功が必要とされている。また、可能であれば、学際的なチームによる精神科疾患やその他の併発疾患の適切な治療も必要となる。いくつかの態様において、これらの基準に急性治療及び障害の程度は含まれていない。従って、難治性又は抵抗性の片頭痛に言及する場合、本開示は上記の定義のすべてを含むことを意図する。
【0216】
他の実施態様において、本開示は、個体における頭痛を治療又は予防する方法をさらに提供する。いくつかの実施態様において、頭痛は片頭痛である。いくつかの実施態様において、本開示は、個体における片頭痛を治療又は予防する方法をさらに提供する。いくつかの実施態様において、本開示は、反復性片頭痛を治療又は予防する方法をさらに提供する。いくつかの実施態様において、本開示は、慢性片頭痛を治療又は予防する方法をさらに提供する。いくつかの実施態様において、頭痛は群発頭痛である。いくつかの実施態様において、頭痛は反復性群発頭痛である。いくつかの実施態様において、頭痛は慢性群発頭痛である。さらなる実施態様において、本開示は、個体における難治性又は抵抗性の片頭痛を治療又は予防する方法をさらに提供する。追加の実施態様において、本開示は、片頭痛(すなわち、難治性片頭痛)に対する、少なくとも2個、少なくとも3個、2~3、2~4個、2個を超える、3個を超える、又は最大4個までの事前の予防的治療法に反応しない片頭痛を有すると診断された個体を治療する方法を提供する。
【0217】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される治療又は予防方法は、個体に本明細書に記載の抗PACAP抗体又は医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0218】
特定の実施態様において、治療又は予防される状態は、片頭痛又は難治性片頭痛である。他の実施態様において、治療又は予防される症状は、反復性片頭痛である。他の実施態様において、治療又は予防される症状は慢性片頭痛である。他の実施態様において、この方法はまた、個体に、第2の薬剤を抗PACAP抗体と同時に又は逐次的に投与することを含むこともできる。第2の薬剤は、例えば、片頭痛の急性治療薬であり得る。さらに他の実施態様において、第2の薬剤は、片頭痛及び/又は難治性片頭痛の予防的治療薬であり得る。
【0219】
片頭痛の急性治療法は当技術分野で公知であり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及び/又は麦角アルカロイド及び/又はトリプタン及び/又は5ヒドロキシトリプタミン1F受容体アゴニスト(すなわち、ジタン類)、及びゲパント(すなわち、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬)が含まれる。
【0220】
抗PACAP抗体と組み合わせて使用できるNSAIDの非限定的な例には、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナール、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチンもしくはゾメピラック、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、JTE-522、L-745、337、NS398、又はこれらの医薬的に許容し得る塩が含まれる。
【0221】
本明細書に記載の抗PACAP抗体と組み合わせて使用できるトリプタン類の非限定的な例には、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、及びアフロバトリプタンが含まれる。
【0222】
本開示の抗PACAP抗体と組み合わせて使用することができるジタンの非限定的な例には、ラスミジタンが含まれる。
【0223】
本開示の抗PACAP抗体と組み合わせて使用することができるゲパント類の非限定的な例には、ウブロゲパント、リメゲパント、アトゲパント、及びバゼゲパントが含まれる。
【0224】
片頭痛及び難治性片頭痛の予防的治療薬は当該分野で知られている。1つの実施態様において、予防的治療薬はトピラメートを含む。他の実施態様において、予防的治療薬はオナボツナムトキシンAを含む。1つの実施態様において、予防的治療薬はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体を含む。例えば、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路モノクローナル抗体は、抗CGRP抗体、抗CGRP受容体(CGRP-R)抗体、又は両方を含むことができる。例示的な実施態様において、抗CGRP抗体はフレマネズマブである。他の実施態様において、抗CGRP抗体はガルカネズマブである。1つの実施態様において、抗CGRP抗体はエプチネズマブである。例示的な抗CGRP-R抗体にはエレヌマブが含まれる。
【0225】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、オナボツナムトキシンAと組み合わせて投与される。
【0226】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、上記のCGRP経路モノクローナル抗体のいずれかと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、フレマネズマブと組み合わせて投与される。
【0227】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、ガルカネズマブと組み合わせて投与される。
【0228】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、エプチネズマブと組み合わせて投与される。
【0229】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、エレヌマブと組み合わせて投与される。
【0230】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、当技術分野で公知の他の抗PACAP抗体、例えばWO2017181031、WO2017181039、WO2017106578、及びWO2019067293に記載のものなどと組み合わせて使用することができる。
【0231】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、WO2019140216及びWO2014144632に記載の抗PAC1抗体と組み合わせて使用することができる。
【0232】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体は、自律神経機能の生理学的測定によって特定される部分集団における片頭痛患者に使用され得る。例えば、部分集団は、(i)ベースラインの発作時又は発作間欠時のPACAPレベル、血漿、涙液、唾液、又は他の生物学的試料;(ii)瞳孔対光反射や電気皮膚反応などの自律機能のベースライン生理学的測定;及び(iii)PACAP注入に対するベースラインの発作時又は発作間欠時の自律神経反応、によって特定することができる。
【0233】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体又は医薬組成物の治療有効量の投与は、本明細書に記載の状態の発症の遅延、状態の期間の短縮、又は状態の重症度の低減をもたらし得る。
【0234】
本明細書に記載の任意の1つ又はそれ以上の組成物、例えば抗PACAP抗体の投与は、本明細書に記載の治療又は予防方法に使用するための治療用組成物又は併用療法計画に取り込むことができる。例えば、抗PACAP抗体と上記のCGRP経路モノクローナル抗体(例えば、フレマネズマブ)のいずれかとの併用療法は、PACAP関連の状態、例えば頭痛、片頭痛、又は上記の状態のいずれかの治療又は予防方法に使用するために、1つの治療用組成物に組み込むこともできるし、2つの別個の治療用組成物として組み込むこともできる。本開示の抗PACAP抗体又は医薬組成物は、典型的には注射又は注入によって溶液又は懸濁液製剤として投与される。例示的な実施態様において、抗PACAP抗体は、個体に直接注射によって投与することができる。他の例示的な実施態様において、抗PACAP抗体は全身注入によって投与することができる。本開示のいくつかの抗PACAP抗体(例えば、890C)は、細胞ベースのアッセイにおいて約300ピコモル(pM)に相当する濃度で有効である。細胞ベースのアッセイは、抗PACAP抗体の存在下で環状アデノシン一リン酸(cAMP)生成を追跡するアッセイであってもよい(Wang, T., et al. (2004). Measurement of cAMP for G(αs)- and G(αi) Protein-Coupled Receptors (GPCRs). Assay Guidance Manual. S. Markossian, G. S. Sittampalam, A. Grossman et al. Bethesda (MD), Eli Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences)。cAMPは、GPCRシグナル伝達における重要な細胞内第二メッセンジャーである。G(αs)タンパク質に結合するGPCRのアゴニスト活性化は細胞内cAMPレベルの産生の増加をもたらすが、G(αi)タンパク質に結合するGPCRの活性化は細胞内cAMPレベルの産生の低下をもたらす。これらの細胞内cAMP変化はどちらも、アデニル酸シクラーゼ活性の調節によって媒介される。cAMPは、さまざまな下流の細胞プロセスで重要な役割を果たすcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)の活性を調節する。細胞内cAMPレベルの測定に使用できる多数の試薬キットが利用可能である。これらには、CisbioのHTRF cAMPキット、PerkinElmerのLANCE cAMPキット、DiscoverXのHitHunter cAMPキット、及びAbcam and BioVisionのcAMP Direct Immunoassayキットが含まれる。これらのアッセイはすべて、細胞内cAMPと競合物質として機能する外因性標識cAMP複合体との両方を特異的に認識する抗体の使用に基づいており、その後、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)又は酵素反応を含むさまざまな検出技術によって標識cAMP結合体が検出される。さらに、Promegaの抗体非依存性GloSensor cAMPアッセイでは、cAMPに結合すると再集合するセミスプリットルシフェラーゼが使用されている。本明細書で提供される他の抗PACAP抗体は、PACAPに対する結合親和性及び個体におけるPACAPの発現の程度に応じて、より高い濃度又はより低い濃度で最も効果的であり得る。いくつかの実施態様において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、細胞ベースのアッセイにおいて約30~約90pMに相当する濃度で有効である。いくつかの実施態様において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、細胞ベースのアッセイにおいて約40~約80pMに相当する濃度で有効である。いくつかの実施態様において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、細胞ベースのアッセイにおいて約50~約70pMに相当する濃度で有効である。いくつかの実施態様において、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、細胞ベースのアッセイにおいて約60、65、67、69、又は70pMに相当する濃度で有効である。
【0235】
システムとキット
また、本明細書では、本明細書で提供及び記載される抗PACAP抗体、組換え核酸、組換え細胞、又は医薬組成物、並びにこれらを作製及び使用するための説明書を含むシステムとキットが提供される。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗PACAP抗体、本明細書に記載の組換え核酸、本明細書に記載の組換え細胞、又は本明細書に記載の組成物のうちの1つ又はそれ以上を含むシステム及び/又はキットが本明細書に提供される。いくつかの実施態様において、本開示のシステム及び/又はキットは、提供される抗PACAP抗体、組換え核酸、組換え細胞、又は医薬組成物のいずれか1つを個体に投与するために使用される、1つ又はそれ以上の注射器(充填済み注射器を含む)及び/又はカテーテルをさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、所望の目的、例えばそれを必要とする個体の細胞の活性の調節、標的癌細胞の阻害、又は疾患の治療のために、他のキット構成要素と同時に又は連続して投与できる、1つ又はそれ以上の追加の治療薬を有することができる。
【0236】
上述のシステム及びキットのいずれも、1つ又はそれ以上の追加の試薬をさらに含むことができ、そのような追加の試薬は以下から選択することができる:希釈緩衝液、復元用溶液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクター、陰性対照ポリペプチド、陽性対照ポリペプチド、二重特異性結合剤又は操作された膜貫通タンパク質(engineered transmembrane protein)のインビトロ産生用試薬。
【0237】
いくつかの実施態様において、システム又はキットは、方法を実施のためにキットの構成要素を使用するための説明書をさらに含むことができる。この方法を実施するための説明書は、通常、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙やプラスチックなどの基材に印刷することができる。説明書は、キットの添付文書として、キットの容器又はその構成要素のラベル(すなわち、パッケージング又はサブパッケージングについてくる)などとしてキット内に存在することができる。説明書は、例えばCD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどの適切なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。場合によっては、実際の説明書がキットに含まれていない場合もあるが、リモートソース(例えば、インターネット経由)から説明書を取得する手段を提供され得る。この実施態様の一例は、説明書を閲覧できる及び/又は説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を取得するためのこの手段は、適切な基剤に記録することができる。
【0238】
本開示で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
本明細書で引用されるいかなる参考文献も先行技術を構成するものであるということは認めるものではない。参考文献の議論には、その著者が主張している内容が記載されており、本発明者らは引用文献の正確性と適切性について異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文書、及び教科書を含む多くの情報源が本明細書で参照されているが、この参照が、これらの文書のいずれかが当該技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することを認めるものではないことは、明らかに理解されるであろう。
【0240】
本明細書に記載される一般的方法の議論は、説明のみを目的としている。他の代替的方法及び代替案は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、それらは本出願の精神及び範囲内に含まれるものとする。
【実施例
【0241】
本開示の実施には、他に明記されない限り、当業者に周知の分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術を使用するであろう。このような技術は、上で引用した文献で詳しく説明されている。以下の実施例において追加の実施態様がさらに詳細に開示されるが、これらは例示として提供されるものであり、決して本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0242】
実施例1:抗PACAP抗体の生成
本実施例は、本開示で提供される抗体の生成手順を簡単に説明する。
【0243】
抗PACAPモノクローナル抗体を免疫化マウスから単離された。PACAPに対する選択性に基づいてマウスから、形質細胞が単離された。単一のB細胞を、PACAP-38とVIPに対して、例えば以下のような文献に記載されている公知の技術を使用してスクリーニングした:Winters et al. Rapid single B cell antibody discovery using nanopens and structured light. mAbs Volume 11, 2019 - Issue 6; Asensio et al. Antibody repertoire analysis of mouse immunization protocols using microfluidics and molecular genomics. mAbs Volume 11, 2019 - Issue 5; Seah et al. Microfluidic single-cell technology in immunology and antibody screening. Mol Aspects Med. 2018;59:47-61; Proserpio et al. Single-cell technologies are revolutionizing the approach to rare cells. Immunol Cell Biol. 2016;94(3):225-229; El Debs et al. Functional single-cell hybridoma screening using droplet-based microfluidics. Proc Natl Acad Sci USA. 2012;109(29):11570-11575; 及び Theberge et al. Microdroplets in microfluidics: an evolving platform for discoveries in chemistry and biology. Angew Chem Int Ed Engl. 2010;49(34):5846-5868。61,000個を超えるB細胞がスクリーニングされた。抗原特異的抗体を分泌する陽性B細胞が単離され、配列決定された。
【0244】
免疫グロブリン重鎖及び軽鎖をコードする201個の抗体の配列決定とクローニングが実行された。PACAP選択的結合を用いて39個の抗体が同定された。さらなる最適化のために2つのクローンが選択された。これらの抗体は、高いPACAP結合親和性を示したが、VIP結合親和性は低いか又はまったくなかった。さらに、両方ともPACAPに対しては高い力価を示したが、VIPに対する力価は低いか又は全くなかった。
【0245】
両方の抗体は、37℃でのSPRと、ヒトPAC1発現細胞株を使用するPACAP27/PACAP38媒介cAMP蓄積を測定する機能的細胞ベースのアッセイとによって測定すると、PACAP38及びPACAP27に対して高い親和性と力価を示した。最適化プロセスでは660を超えるヒト化変種が生成され、高親和性で高力価の抗体候補が生成され、同時に、ProImmune REVEAL(登録商標)(ペプチドMHCクラスII安定性)アッセイと高いヒトらしさスコアとによって測定すると、潜在的な免疫原性のリスクが低い抗体が生成された。
【0246】
力価を保持するヒト化変種は、1億(10)個を超える変種のコンビナトリアルライブラリーの生成を含む、インビトロ親和性成熟を通じてさらに最適化された。さらに約950個の変種がスクリーニングされ、力価プロフィールを維持しながら、潜在的な製造可能性と免疫原性を検討した。
【0247】
以下の表14は、結合親和性、力価、及び予測される免疫原性についてスクリーニングされた例示的なヒト化変種を示す。
【表14-1】
【表14-2】
4つのヒト化抗体(890C、608C、627C、及び609C)は、高い親和性、高い力価、及びより低い予測される免疫原性を示した。
【0248】
実施例7に記載したような抗体発展性基準を使用して、最良の発展性プロフィールを有する変種を同定した。
【0249】
表14からわかるように、最も高い結合親和性が、必ずしも予測される免疫原性と容易に相関するわけではない。例えば変種524Cは、変種890C、608C、627C、及び609Cよりも高い結合親和性を示したが、高い予測される免疫原性プロフィールも示したのに対し、890C、608C、627C、及び609Cは予測される免疫原性プロフィールをまったく示さなかった。さらに、PACAPに対する力価も、免疫原性と発展性の好ましい性質を予測するものではない。一例として、変種519Cは、変種890C、608C、627C、及び609Cよりも高い力価を示したが、高い予測される免疫原性プロフィールも示したのに対し、890C、608C、627C、及び609Cは予測される免疫原性プロフィールをまったく示さなかった。一例として、予測される免疫原性プロフィールは、実施例3に記載のアッセイによって測定された。
【0250】
実施例2:抗PACAP抗体のヒトらしさ
本実施例は、本開示で提供される抗体のヒトらしさを説明する。
【0251】
潜在的な治療薬候補であるモノクローナル抗体の可変領域配列のヒトらしさを高めることは、潜在的な免疫原性を最小限に抑えるための重要なアプローチである。本開示の抗PACAP抗体は、本明細書に記載される高い親和性及び高い力価を損なうことなく、高いヒトらしさスコアを得るように操作された。ヒトらしさスコア、すなわちヒト生殖細胞系配列との類似性は、IMGT及びAbGenesisを含む様々な抗体分析プラットフォームを使用して得られた。単一の入力可変領域抗体配列から開始して、その配列に最も近いヒト生殖細胞系が同定され、AbGenesisソフトウェア(リリース4.1)を使用して可変重鎖及び可変軽鎖のヒトらしさのパーセントが計算された。抗体の全体的なヒトらしさは、重鎖と軽鎖の平均配列同一性パーセント値に基づいて計算された。
【0252】
本開示のいくつかの例示的な抗PACAP抗体及びいくつかの既知の抗PACAP抗体のヒトらしさスコアを表15に示す。
【表15】
【0253】
上記に示されるように、抗PACAP抗体(例えば、608C、627C、609C、604C、605C、及び890C)はすべて、少なくとも89%のヒトらしさを有し、これは、WO2017181031に記載の既知の抗PACAP抗体Ab1h及びWO2017181039に記載の抗体Ab10.H3よりも高い。抗PACAP抗体AbC及びDは、WO2019067293に記載されている。以下の例で説明するように、生殖系列と同一ではない配列は、さらなる免疫原性予測分析において特に関心のあるものである。
【0254】
実施例3:抗PACAP抗体の予測される免疫原性
本例は、本開示で提供される抗体の予測される免疫原性を説明する。
【0255】
本明細書に記載の抗体を生成するプロセス中に、ペプチド-MHCクラスII安定性分析によって予測されたエピトープを有する抗体を除いて、免疫原性が低いと予測された抗体の最適化をさらに進めた。
【0256】
すべての非生殖系列残基をカバーする、本明細書に提供される抗PACAP抗体、例えば実施例2(表15)に記載の抗体の重鎖及び軽鎖可変領域から合成されたペプチドを、組換えMHCクラスIIタンパク質とともにインキュベートした。ProImmune REVEAL(登録商標)アッセイを使用して、MHCクラスII分子へのペプチド結合の安定性を評価した。例えば、すべての非生殖系列残基をカバーする重鎖及び軽鎖配列からの15残基長の合成ペプチドを、試験した抗体について評価した。
【0257】
分析されたMHCクラスII対立遺伝子には、世界人口の少なくとも3%の頻度を有するすべての対立遺伝子が含まれていた。MHCクラスIIへのペプチドの結合はELISAによって検出された。これらの分析により、608C、609C、627C、及び890Cなどの予測される免疫原性が低い抗体が同定され、これらについて、試験したすべてのペプチドはMHCIIクラスタンパク質との相互作用を示さないか又は安定性の低い相互作用が示された(図7)。対照的に、Ab1H、Ab10.H3、Ab B、Ab C、又はAb Dなどの以前に記載された抗PACAP抗体の分析では、すべて予測された免疫原性エピトープが示された。
【0258】
実施例4:抗PACAP抗体の動態
本例は、本開示で提供される抗体の動態を説明する。
【0259】
簡単に説明すると、抗体とペプチドの相互作用が、既に記載された方法(Andreu and Gomes 2002)によりBiacore S200(GE Healthcare)を用いて測定された。抗ヒトIgG Fc捕捉抗体が、標準的なアミンカップリングを介してCM5バイオセンサーチップに固定化された。抗PACAP抗体が注入され、200~400反応単位(RU)まで捕捉された。PACAP38、PACAP27、及びVIPを、0.1%w/v BSA(Bovostar、カタログ番号BSAS1.0)及び0.15M NaCl(Sigma-Aldrichカタログ番号S7653)を含有するHBS-EP+緩衝液、pH7.4で希釈した。抗体の結合動態は、ランニング緩衝液中のPACAP(12nM~0nM)及びVIP(1200nM~0nM)の2倍連続希釈液を37℃、流速40uL/分で2分間注入し、次に10分間解離させることによって決定した。以降のサイクルでは、0.85%リン酸を使用してチップを再生した。データは、Biacore S200評価ソフトウェア(バージョン1.0)で分析された。結合速度(ka)及び解離速度(kd)定数は、単純な1対1ラングミュア結合モデルを使用して決定され、これを使用して平衡解離定数(K)を計算した。
【0260】
同じアッセイ形式を使用して上清から抗体を捕捉し、33.3nMのPACAPの単回分析物注入を抗体変種のオフレートのランク付けに使用した。例示的なBiacoreベースのオフレートランク付けアッセイは、表16に示される単一濃度のPACAP38を含む。
【表16】
【0261】
図3A、3B、3Cは、SPRによるPACAP38、PACAP27、及びVIPに対する抗PACAP抗体605Cの結合親和性解析の例を示す。さらに、表17は、抗PACAP抗体605Cが、高い親和性と高い選択性でPACAP38及びPACAP27に結合することを示す。VIPではオンレートとオフレートが非常に速いため、定常状態での結合親和性が使用された。
【表17】
【0262】
実施例5:抗PACAP抗体の力価
本例は、本開示で提供される抗体の力価を説明する。
【0263】
既に記載された方法(Wang, Li et al. 2004)に従って、PACAP誘導性cAMP蓄積を測定するための細胞ベースのアッセイを実施した。具体的には、PAC1、VPAC1、及びVPAC2受容体を介するPACAP38又はPACAP27誘導性シグナル伝達の阻害には、ヒトPAC1、VPAC1、又はVPAC2受容体のいずれかを安定発現するCHO-K1細胞株(Eurofins/DiscoverX)を利用し、エンドポイントはPromega cAMP-Glo(商標)を使用して決定された。以下の表18は、本明細書で提供されるいくつかの例示的な抗PACAP抗体のIC50を要約する。
【表18】
【0264】
実施例6:抗PACAP抗体の選択性
本実施例は、本開示で提供される抗体の選択性を説明する。
【0265】
オフターゲット結合の存在及び程度を決定するために、抗PACAP抗体、例えば890Cをセクレチングルカゴンファミリー(表19)の関連ペプチドに対して試験した。グルカゴンスーパーファミリーの9つの生理活性ペプチドは以下のとおりである:PACAP、VIP、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1、GLP-2)、成長ホルモン放出因子(GRF又はGHRF)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM)、セクレチン、及び胃抑制ポリペプチド(GIP)。実施例4に記載したように抗体を捕捉した後、37℃の緩衝液で希釈した37.5nMの各ペプチドを流速50mL/分で2分間注入し、続いて4~5分間の解離相によって、抗体とペプチドの相互作用を測定した。0.85%リン酸を流速30μL/分で2回注入して捕捉表面を再生することにより、試料を、新たに捕捉した抗PACAP抗体上にマルチサイクル方式で注入した。
【表19】
【0266】
図4に示されるように、Biacoreによって測定された安定性レベル(15秒解離後の相対的結合)では、抗体890CはPACAPに対して高度に選択的であり、他のグルカゴン-セクレチンファミリーペプチドには結合しないか又は最小限しか結合しない。SPRによって測定され、pMで表される890CのPACAP38、PACAP27、及びVIPに対する親和性は、それぞれ54,218、及び390,000である。抗体890Cの選択性は、細胞ベースの機能アッセイを測定するサイクリックAMP(cAMP)におけるPACAP38シグナル伝達の阻害とVIPシグナル伝達の阻害を比較することによって評価された。図5に示されるように、抗体890Cは、PAC1受容体を安定的に発現するCHO-K1細胞におけるPACAP38誘導性cAMP産生を阻害すると、VPAC1受容体を安定的に発現するCHO-K1細胞におけるVIP誘導性cAMP産生の阻害に対して、>1000倍の選択性を示した。
【0267】
実施例7:HPLC-SEC分析を使用する発展性評価
抗体分子の発展性は、抗体分子の非特異的相互作用を測定する生物物理学的手法を使用して評価することができる。シリカベースのカラム又はデキストランベースのサイズ排除カラムを使用する抗体の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析では、抗体試料の保持時間がそのコロイド安定性に関連することが示されており、おそらく抗体とカラムマトリックスとの非特異的相互作用により、沈殿又は凝集しやすい抗体がカラム上に長く保持される(Kohli et al., (2015) mAbs, 7:4, 752-758, DOI: 10.1080/19420862.2015.1048410)。抗体の見かけの分子量は、分子量標準物質を使用して計算することができる。保持時間が長いほど、配列に基づいて計算されたものよりも小さい見かけの分子量として表示される。
【0268】
図6に示されるように、許容し得るIgGを有する抗体の典型的な分子量は約155kDaである。抗体609C及び890Cは、155kDa~165kDaの見かけの分子量ウィンドウで正常に溶出したが、Ab C及びAb Dは、IgGアイソフォームに応じて約95~105kDaの見かけの分子量で大幅に上昇した保持時間を示した。これらのデータは、抗体609C及び890Cが、カラム上の保持時間に反映される適切なコロイド安定性を備えているため、より良好な発展性を有すると期待されることを示している。
【0269】
実施例8:カニクイザルにおける抗PACAPモノクローナル抗体の単回投与試験
生物学的製剤を投与されていない雄カニクイザル4匹に、以下のCDR(配列番号1、2、及び3、並びに配列番号4、5、及び6に記載の、それぞれVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3配列、並びにVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列)を有する抗PACAP抗体を、10mg/kgで単回皮下投与した。薬物動態及び薬物動力学分析、血液学、及び臨床化学評価のためのサンプリングを実施した。薬物動力学分析は、エクスビボアッセイによって、例えば、注射された動物の血清試料を同じ動物の投与前試料と比較することにより実施した。永続的な抗体関連の血液学、臨床化学、体重の変化は観察されなかった。抗体の血清濃度の時間プロフィールは、カニクイザルにおける典型的なモノクローナル抗体プロフィールと同等である。
【0270】
本開示の具体的な代替例が開示されているが、様々な修正及び組み合わせが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内で企図されることを理解されたい。従って、ここに提示された正確な要約及び開示を制限する意図はない。
【表20-1】
【表20-2】
【表20-3】
【表20-4】
【表20-5】
【表20-6】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】