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特表2024-527035チオノラクトン、合成方法、コモノマーとしての並びにポリマーの官能化及び分解のための使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】チオノラクトン、合成方法、コモノマーとしての並びにポリマーの官能化及び分解のための使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 319/08 20060101AFI20240711BHJP
   C08G 75/02 20160101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D319/08 CSP
C08G75/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504877
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022070510
(87)【国際公開番号】W WO2023006580
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21315131.9
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】518185277
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
(71)【出願人】
【識別番号】508242056
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ ルシェルシュ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュフィス, ピエール-エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】プラマー, クリストファー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, デビッド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ギグメ, ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ギラヌフ, ヨハン
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA03
4J030BB01
4J030BC02
4J030BC08
4J030BC38
4J030BD22
4J030BF01
4J030BG34
(57)【要約】
本発明は、ポリマーの分解又は官能化のために弱い結合を導入するためのコモノマーとして有用なチオノラクトン化合物に関する。本発明は、特に対応するラクトンの硫化による前記化合物の調製方法にも関する。本発明は、さらに、コモノマーとしての前記チオノラクトンの使用、これらのコモノマーから製造されるコポリマー、及び前記コポリマーの調製方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのチオノラクトン
【化1】
(式中、
Xは、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子、又はNAlkのいずれかであり、Alkは、1~6個の炭素を含む、好ましくは1~4個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基であり、
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、H、ハロゲン、ヒドロキシル(-OH)、チオ(-SH)、ニトロ基(-NO)、アミン(-NH)、アンモニウム(-NH )、サルフェート(-SO )、スルホネート(-SO )、ホスフェート(-PO 2-)、ホスホネート(-PO 2-)、並びに任意選択的に1つ以上のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい芳香族である若しくは芳香族ではない環を任意選択的に形成していてもよい、1~50個の炭素原子を含むヒドロカルビル(ヘテロ原子はO、N、又はSを意味する)からなる群から独立して選択される)。
【請求項2】
XがOである、請求項1に記載の式Iのチオノラクトン。
【請求項3】
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’が、-H、-F、-Cl、-Br、ヒドロキシル(-OH)、チオ(-SH)、ニトロ基(-NO)、アミン(-NH)、アンモニウム(-NH )、サルフェート(-SO )、スルホネート(-SO )、並びに-OY、-NHY、-NY、-SYから選択される1つ以上のヘテロ原子含有基で置換されている及び/又は-O-、-NY-、-S-から選択される1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれている、1~50個の炭素原子を含むヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、Yは、Hを意味するか、又は1~12個の炭素を含む分岐若しくは直鎖のアルキル、好ましくは1~6個の炭素を含む直鎖アルキルを意味する、請求項1又は2に記載のチオノラクトン。
【請求項4】
、R、R、R、R’、R’、R’、R’、又はR’のうちの1つ、好ましくはR又はR’が、式-(CH-CH-O)-Hのポリエチレングリコール基であり、nは1~25、好ましくは1~18、より好ましくは1~12の範囲で変動する整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトン。
【請求項5】
少なくともR、R’、及びR’がHである、請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトン。
【請求項6】
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’がHである、請求項1~3及び5のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトン。
【請求項7】
式IIの化合物
【化2】
(式中、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、請求項1~6のいずれか一項に定義されている通りである)
を硫化剤と反応させることによる、請求項1~6のいずれか一項に記載のチオノラクトンの調製方法。
【請求項8】
前記硫化剤が、Lawesson’s試薬(2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、Davy’s試薬(2,4-ビス(メチルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン、(CHS)))、Curphey’s試薬(ヘキサメチルジシロキサン(HMDO)/五硫化リン(P10))、Kaushik’s試薬(P10/Al)、Bernthsen試薬(S/I)、Heimgartner’s試薬(2,4-ビス(4-メチルフェニルチオ)-1,3,2λ5,4λ5-ジチアジホスフェタン-2,4-ジチオン)、Jan Bergman試薬、Belleau試薬(2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、Japanese試薬(2,4-ビス(フェニルチオ)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、HS、CS、RPSX、(EtAl)S、NaSH、TMSS、チオ尿素/Ru(III)/Al、テトラチオモリブデン酸ベンジルトリエチルアンモニウム、チオアシル-N-フタルイミド(pthalimide)、単体硫黄、硫化アンモニウム水溶液、SiS、ヘキサメチルジシラチアン(HMDST)、PSCl/HO/EtN、ポリマー担持硫化剤及びin situ硫化剤、P/NaCOからなる群から選択され、好ましくはLawesson’s試薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コポリマーを調製するためのコモノマーとしての、請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトンの使用。
【請求項10】
式IIIの繰り返し単位
【化3】
(式中、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、請求項1~6のいずれか一項に記載の通りである)
と、少なくとももう1種の繰り返し単位とを含むコポリマー。
【請求項11】
前記少なくとももう1種の繰り返し単位が、アクリル酸アルキル、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、スチレン及びスチレン誘導体、好ましくは4-置換スチレン誘導体、アクリロニトリル、及びそれらの混合物からなる群から選択されるコモノマーから誘導され、「アルキル」が1~12個、好ましくは1~6個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基を意味する、請求項10に記載のコポリマー。
【請求項12】
前記少なくとももう1種の繰り返し単位が、以下の式IV、V、VI:
【化4】
及びそれらの混合からなる群から選択される、請求項10又は11に記載のコポリマー。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトンが、請求項11又は12に記載の少なくとも1種の別のコモノマー、好ましくはN,N-ジメチルアクリルアミド、スチレン、及びアクリル酸メチルから選択されるコモノマーと共重合される、請求項10~12のいずれか一項に記載のコポリマーの調製方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトンから部分的に製造されるコポリマーに分解特性を付与するためのコモノマーとしての、前記式Iのチオノラクトンの使用。
【請求項15】
前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させる、請求項10~12のいずれか一項に記載のコポリマーの分解方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iのチオノラクトンから部分的に製造されるコポリマーに官能基を導入するためのコモノマーとしての、前記式Iのチオノラクトンの使用。
【請求項17】
前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させる、請求項10~12のいずれか一項に記載のコポリマーの官能化方法。
【請求項18】
請求項15に記載のコポリマーの分解方法によって、又は請求項17に記載のコポリマーの官能化方法によって得られるオリゴマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分解又は官能化のために弱い結合を導入するためのコモノマーとして有用なチオノラクトン化合物に関する。本発明は、特に対応するラクトンの硫化による前記化合物の調製方法にも関する。本発明は、さらに、コモノマーとしての前記チオノラクトンの使用、これらのコモノマーから製造されるコポリマー、及び前記コポリマーの調製方法に関する。
【0002】
合成ポリマーは、通常、そのままでは分解するには大きすぎるため、その分子量を小さくすることでより分解し易くなると考えられる。分子量を小さくすることは、ポリマー主鎖に弱い結合を導入することによって行うことができる。これらの弱い結合は、通常のモノマーを環状ケテンアセタールやチオノラクトンのような化合物と共重合させることによって導入することができる。合成ポリマーに弱い結合を導入することは、標準モノマーを環状モノマーでラジカル開環重合することによって実現することができる。the Chemical Reviews Chem. Rev.2017,117,3,1319-1406には、rROPで使用可能な多くの種類のモノマーのリストが公開されている。
【0003】
一部のチオノラクトンは、ラジカル開環重合(rROP)に使用できることが知られている。最も研究されているものは、ジベンゾ[c,e]オキセパン-5-チオン(DOT)であり、これは、Bingham,N.M.;Roth,P.J.,Degradable vinyl copolymers through thiocarbonyl addition-ring-opening(TARO)polymerization. Chemical Communications 2019,55(1),55-58、Smith,R.A.;Fu,G.;McAteer,O.;Xu,M.;Gutekunst,W.R.,Radical Approach to Thioester-Containing Polymers. Journal of the American Chemical Society 2019,141(4),1446-1451、及びSpick,M.P.;Bingham,N.M.;Li,Y.;de Jesus,J.;Costa,C.;Bailey,M.J.;Roth,P.J.,Fully Degradable Thioester-Functional Homo- and Alternating Copolymers Prepared through Thiocarbonyl Addition-Ring-Opening RAFT Radical Polymerization. Macromolecules 2020,53(2),539-547;及びBingham N.M.;un Nisa,Qamar;Chua,S.H.L.,Fontugne,L.,Spick,M.P.,Roth,P.J.,Thioester-Functional Polyacrylamides:Rapid Selective Backbine Degradation Triggers Solubility Switch Based on Aqueous Lower Critical Solution Temperature/Upper Critical Solution Temperature. ACS Applied Polymer Materials 2020,2,3400-3449において調査されている。
【0004】
既存のチオノラクトン、特にDOTは、通常のコモノマーと容易には共重合せず、水溶性でもない。
【0005】
本発明は、これらの欠点を克服しようとするものである。
【発明の概要】
【0006】
集中的な研究の枠組みの中で、本発明者らは、その構造のため容易に共重合し、より水溶性になる新規な化合物、特にチオノラクトンを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、これらの新規な化合物、特にチオノラクトン、それらの調製方法、通常のコモノマーとのラジカルプロセスによるそれらの共重合、及び得られたコポリマーの特定の条件下での分解に関する。新規な化合物、特にチオノラクトンは、それから得られるコポリマーに官能性を導入して分解特性を付与するためのコモノマーとしても価値があり、様々な用途に有用である。
【0008】
特に、本発明は、以下の項目にも関する:
【0009】
式Iのチオノラクトン
【化1】
(式中、
Xは、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子、又はNAlkのいずれかであり、Alkは、1~6個の炭素を含む、好ましくは1~4個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基であり、
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR5’は、H、ハロゲン、ヒドロキシル(-OH)、チオ(-SH)、ニトロ基(-NO)、アミン(-NH)、アンモニウム(-NH )、サルフェート(-SO )、スルホネート(-SO )、ホスフェート(-PO 2-)、ホスホネート(-PO 2-)、並びに任意選択的に1つ以上のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、及び/又は任意選択的に芳香族である若しくは芳香族ではない環を形成していてもよい、1~50個の炭素原子を含むヒドロカルビル(ヘテロ原子はO、N、又はSを意味する)からなる群から独立して選択される)。
【0010】
式IIの化合物を硫化剤と反応させることによる、本明細書で定義される式Iのチオノラクトンの調製方法
【化2】
(式中、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、式Iについて定義した通りである)。
【0011】
コポリマーを調製するためのコモノマーとしての、本明細書で定義される式Iのチオノラクトンの使用。
【0012】
式IIIの繰り返し単位
【化3】
(式中、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、式Iについて定義した通りである)。
と、少なくとももう1種の繰り返し単位とを含むコポリマー。
【0013】
本明細書で定義されるコポリマーの調製方法であって、式Iのチオノラクトンが、アクリル酸アルキル、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、スチレン及びスチレン誘導体、好ましくは4-置換スチレン誘導体、アクリロニトリル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の別のコモノマーと共重合され、「アルキル」が、1~12個、好ましくは1~6個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基を意味し、少なくとも1種の別のコモノマーが、好ましくはN,N-ジメチルアクリルアミド、スチレン、及びアクリル酸メチルから選択される、方法。
【0014】
本明細書で定義される式Iのチオノラクトンから少なくとも部分的に製造されたコポリマーに分解特性を付与するためのコモノマーとしての、本明細書で定義される式Iのチオノラクトンの使用。
【0015】
前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させる、本明細書で定義されるコポリマーの分解方法。
【0016】
本明細書で定義される式Iのチオノラクトンから部分的に製造されるコポリマーに官能基を導入するためのコモノマーとしての、本明細書で定義される式Iのチオノラクトンの使用。
【0017】
前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させる、本明細書で定義されるコポリマーの官能化方法。
【0018】
本明細書で定義されるコポリマーの分解方法によって、又は本明細書で定義されるコポリマーの官能化方法によって得られるオリゴマー。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の化合物
本発明は、以下の式Iのチオノラクトン化合物
【化4】
に関する。
【0020】
式Iの化合物において、残基X、R~R、及びR’~R’は以下の意味を有する:
【0021】
Xは、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子、又はNAlkのいずれかである。
【0022】
基「NAlk」における略語「Alk」は、1~6個の炭素、好ましくは1~4個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基を意味する。本発明の化合物において「Alk」として使用するための例示的なアルキル基としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシルが挙げられ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルが好ましい。
【0023】
式Iの化合物の好ましい実施形態では、XはOである。
【0024】
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、H、ハロゲン、ヒドロキシル(-OH)、チオ(-SH)、ニトロ基(-NO)、アミン(-NH)、アンモニウム(-NH )、サルフェート(-SO )、スルホネート(-SO )、ホスフェート(-PO 2-)、ホスホネート(-PO 2-)、及び1~50個の炭素原子を含むヒドロカルビルからなる群から独立して選択される)。
【0025】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル」という用語は、アリール基、並びに1~50個の炭素原子、好ましくは1~36個の炭素原子、より好ましくは1~24個の炭素原子、さらに好ましくは1~12個の炭素原子、特に好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖及び分岐の脂肪族基を意味し、これらは任意選択的には1つ以上のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよく、及び/又は任意選択的に芳香族である若しくは芳香族ではない環を形成していてもよい。
【0026】
、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’として有用な例示的な直鎖及び分岐の脂肪族基としては、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどのアルキル基が挙げられる。
【0027】
ヒドロカルビル基との関係における「ヘテロ原子」は、O、N、又はSを意味する。ヒドロカルビル基との関係における「ヘテロ原子含有基」には、第一級、第二級、及び第三級アミンなどの窒素含有基、並びにカルボキシ基、ヒドロキシ基、及びエーテル基などの酸素含有基、並びにチオ基及びチオエーテル基などの硫黄含有基が含まれる。
【0028】
ヒドロカルビル基は、任意選択的に環を形成することができ、前記環は芳香族であっても芳香族でなくても(すなわち非芳香族)よい。環には、上述した1つ以上のヘテロ原子又はヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい。その場合、環は芳香族であっても芳香族でなくてもよいヘテロ環である。
【0029】
非芳香族環の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0030】
芳香族環の例はフェニルであり、これは、任意選択的には以下のものなどの1つ以上の官能基でさらに置換されていてもよい:
・水素、又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有するC~C24の直鎖若しくは分岐の炭化水素基、
・ハロゲン、
・ヒドロキシ(-OH)又はアルコキシ基(-OR)(式中のRは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素基である)、
・アミノ基(-NRR’)(式中、R及びR’は、独立して、水素を表すか、又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素基を表す)、
・アシル基(-(C=O)-R)(式中、Rは、水素を表すか、又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有するC~C24の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す)、
・カルボキシル(-COOH)又はアルコキシカルボニル基(-(C=O)-OR)(式中、Rは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有するC~C24の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す)、
・カルバモイル基(-(C=O)-NRR’)(式中、R及びR’は、独立して、水素を表すか、又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素基を表す)、
・アルキルスルホニル基(-SO-R)又はアルキルスルフィニル基(-SO-R)又はアルキルチオ基(-S-R)(式中、Rは、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい及び/又は1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~24個の炭素原子を有するC~C24の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す)。
【0031】
ヘテロ芳香族環の例としては、ピリジル、フラニル、ピロリル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、ピリミジニル、チアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、及びトリアゾリルが挙げられ、これらは任意選択的にフェニルについて上述した1つ以上の官能基でさらに置換されていてもよい。
【0032】
非芳香族ヘテロ環の例としては、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ヘキサメチレンイミニル、ヘキサメチレンオキシジル、ヘキシメチレンスルフィジルが挙げられ、これらは任意選択的にフェニルについて上述した1つ以上の官能基でさらに置換されていてもよい。
【0033】
好ましくは、式Iの化合物中のR、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、-H、-F、-Cl、-Br、ヒドロキシル(-OH)、チオ(-SH)、ニトロ基(-NO)、アミン(-NH)、アンモニウム(-NH )、サルフェート(-SO )、スルホネート(-SO )、並びに-OY、-NHY、-NY、-SYから選択される1つ以上のヘテロ原子含有基で置換されていてもよる及び/又は-O-、-NY、-S-から選択される1つ以上のヘテロ原子若しくはヘテロ原子含有基が挟まれていてもよい、1~50個の炭素原子、好ましくは1~36個の炭素原子、より好ましくは1~24個の炭素原子、さらに好ましくは1~12個の炭素原子、さらに好ましくは1~6個の炭素原子を含むヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、Yは、Hを意味するか、又は1~12個の炭素を含む分岐若しくは直鎖のアルキル、好ましくは1~6個の炭素を含む直鎖アルキルを意味する。
【0034】
好ましい実施形態では、R、R、R、R、R’、R’、R’、R’、又はR’、好ましくはR又はR’は、例えば式-(CH-CH-O)-Hのポリエチレングリコール基を表し、nは1~25、好ましくは1~18、より好ましくは1~12で変動する整数である。この実施形態は、好ましくはX=Oである実施形態と組み合わせられる。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、式Iの化合物において、少なくともR、R’、及びR’はHである。この実施形態は、好ましくはX=Oである実施形態と組み合わせられる。
【0036】
より好ましくは、式Iの化合物において、少なくともR、R、R’、及びR’はHである。この実施形態は、好ましくはX=Oである実施形態と組み合わせられる。
【0037】
さらに好ましくは、式Iの化合物において、少なくともR、R、R、R’、R’、及びR’、又は少なくともR、R、R、R’、R’、R’、及びR’はHである。この実施形態は、好ましくはX=Oである実施形態と組み合わせられる。
【0038】
特に好ましくは、式Iの化合物において、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’はHである。この実施形態は、好ましくはX=Oである実施形態と組み合わせられる。
【0039】
非常に好ましい実施形態では、式Iの化合物において、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’はHであり、XはOである。前記化合物は、2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオンである。
【0040】
式Iのチオノラクトン化合物は、コポリマーを得るためのコモノマーとして使用に適している。これらのコポリマーは、式Iの化合物のチオノラクトン部位に由来する弱いチオエステル結合を含み、そのため得られるコポリマーは分解及び官能化の目的に有用である。
【0041】
式Iの化合物の調製方法
本発明は、さらに、式Iのチオノラクトンの調製方法に関する。前記方法は硫化反応であり、以下の式IIの化合物
【化5】
が硫化剤と反応する。
【0042】
式IIの化合物において、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、式Iの化合物について本明細書の上で詳述した通りに定義される。
【0043】
式Iの化合物を調製するための本発明の方法において使用される硫化剤は、典型的には、Lawesson’s試薬(2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、Davy’s試薬(2,4-ビス(メチルチオ)-2,4-ジチオキソ-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン、(CHS)))、Curphey’s試薬(ヘキサメチルジシロキサン(HMDO)/五硫化リン(P10)、Kaushik’s試薬(P10/Al)、Bernthsen試薬(S/I)、Heimgartner’s試薬(2,4-ビス(4-メチルフェニルチオ)-1,3,2λ5,4λ5-ジチアジホスフェタン-2,4-ジチオン)、Jan Bergman試薬(http://vironovamedical.com/wp-content/uploads/2019/04/Vironova-Medical-Thionation-181029.pdfを参照)、Belleau試薬(2,4-ビス(4-フェノキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、Japanese試薬(2,4-ビス(フェニルチオ)-1,3,2,4-ジチアジアジホスフェタン2,4-ジスルフィド)、HS、CS、RPSX、(EtAl)S、NaSH、TMSS、チオ尿素/Ru(III)/Al、テトラチオモリブデン酸ベンジルトリエチルアンモニウム、チオアシル-N-フタルイミド(pthalimide)、単体硫黄、硫化アンモニウム水溶液、SiS、ヘキサメチルジシラチアン(HMDST)、PSCl/HO/EtN、ポリマー担持硫化剤及びin situ硫化剤、例えばP/NaCOからなる群から選択される。
【0044】
式Iの化合物を調製するための本発明の方法において使用するための硫化剤として好ましいものは、Lawesson’s試薬である。
【0045】
式Iの化合物の調製のための本発明の方法は、典型的には有機溶媒中で行われ、有機溶媒は、好ましくは、トルエン、n-ヘキサン、ベンゼン、ペンタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、四塩化炭素、及び塩化メチレン(ジクロロメタン)からなる群から選択される非極性有機溶媒である。
【0046】
その際、反応は、大気圧での溶媒還流温度以下の温度、好ましくは周囲温度(20~30℃)から溶媒還流温度までの範囲の温度、好ましくは50℃から大気圧での溶媒還流温度までの範囲の温度で行われる。
【0047】
非常に好ましい実施形態では、2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオンの合成は、最初にベンズアルデヒド(2)を硫酸と反応させてジアセテート(3)を生成し、これを続いて酸性条件下でサリチル酸(1)と縮合して、式IIの化合物に相当する化合物(4)を生成することを含み、式中のR、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’はHであり、XはOである。対応するチオノラクトン(5)(2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン、すなわちR、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’がHでありXがOである式Iの化合物)は、式(4)の化合物をLawesson試薬と反応させることによって得られる。この非常に好ましい実施形態の例示的な合成経路は、実施例1で2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオンを合成するために適用した手順を反映する以下のスキーム1で表される。
【化6】
【0048】
コモノマーとしての式Iの化合物の使用
本発明は、さらに、コポリマーを調製するためのコモノマーとしての式Iのチオノラクトンの使用に関する。これらのコポリマーには、以下に記載する本発明のコポリマーが含まれる。
【0049】
本発明のコポリマー
本発明は、さらに、式IIIの繰り返し単位
【化7】
と、少なくとももう1種の繰り返し単位とを含むコポリマーに関する。
【0050】
式IIIの化合物において、X、R、R、R、及びR、並びにR’、R’、R’、R’、及びR’は、式Iの化合物について本明細書の上で記載した通りに定義される。
【0051】
通常、本発明のコポリマーの少なくとももう1種の繰り返し単位は、式Iの化合物とのラジカル共重合反応におけるコモノマーとして有用であるという意味で「より活性化された」コモノマーから誘導される。
【0052】
特に、少なくとももう1種の繰り返し単位は、アクリル酸アルキル、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、スチレン及びスチレン誘導体、並びにアクリロニトリル、又はそれらの混合物からなる群から選択されるコモノマーから誘導される。
【0053】
これらのコモノマーとの関係における「アルキル」は、1~12個の炭素を含む直鎖又は分岐のアルキル基を意味する。例示的なアルキル基としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデカニル、n-ドデシルが挙げられる。好ましくは、直鎖又は分岐のアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、すなわちメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルを含み、メチルが特に好ましい。
【0054】
したがって、本発明のコポリマーを提供するためのコモノマーとして有用なアクリル酸アルキルの例としては、限定するものではないが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチルが挙げられる。
【0055】
したがって、本発明のコポリマーを提供するためのコモノマーとして有用なN-アルキルアクリルアミドの例としては、限定するものではないが、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-イソブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミドが挙げられる。
【0056】
したがって、本発明のコポリマーを提供するためのコモノマーとして有用なN,N-ジアルキルアクリルアミドの例としては、限定するものではないが、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、N,N-ジイソブチルアクリルアミド、N,N-ジ-tert-ブチルアクリルアミドが挙げられる。
【0057】
本明細書でいう「スチレン誘導体」とは、ベンゼン部位が1つ以上の官能基で置換されたスチレンを意味する。本発明のコポリマーを提供するために好ましいスチレン誘導体は、ベンゼン部位の4位が官能基によって置換されているスチレン誘導体(すなわち4-置換スチレン誘導体)である。置換スチレン誘導体で使用される官能基には次のものが挙げられるが、これらに限定されない:
・1~4個の炭素を含む直鎖及び分岐アルキル、すなわちメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル;
・1~4個の炭素を含むアルコキシ、すなわちメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ(例えば4-メトキシスチレン);
・フェノキシ及び1つ以上の官能基で置換されたフェノキシ;
・F、Cl、Br、Iを含むハロゲン;
・例えばCFを含むパーフルオロアルキル;
・スルホネート(例えばナトリウム-4-ビニルベンゼンスルホネート)。
【0058】
好ましくは、少なくとももう1種の繰り返し単位は、以下の式IV、V、VI及びそれらの混合:
【化8】
からなる群から選択され、これらは、N,N-ジメチルアクリルアミド(式IV)、スチレン(式V)、及びアクリル酸メチル(式VI)から誘導される。
【0059】
酢酸ビニル及びそのエステル誘導体、カルバゾール、N-ビニルピロリドン、エチレン、アリルなどのコモノマーは「活性が低い」ため、本発明のコポリマーを提供するためのコモノマーとしての使用には適さない。同様の評価が、メタクリル酸エステル及びメタクリルアミドに適用され、メチル基はラジカル重合中に安定化効果をもたらし、式Iの化合物との共重合を防止する。
【0060】
式IIIの繰り返し単位、特に繰り返し単位IIIの一部を形成するチオエステル結合は、コポリマーに弱い結合を導入し、コポリマーを分解及び官能化に適したものにする。
【0061】
本発明のコポリマーの調製方法
本発明は、さらに、上述した本発明のコポリマーの調製方法に関する。本発明の方法において、本明細書に記載の式Iのチオノラクトンは、本発明のコポリマーに関連して本明細書の上で記載した少なくとも1種の別のコモノマーと共重合される。機構の観点からは、本発明の共重合プロセスは、ポリマー主鎖内に式IIIで反映されるチオエステル結合を導入するラジカル開環共重合プロセスである。
【0062】
本発明のコポリマーについての上に示した説明によれば、本発明の共重合プロセスで使用されるコモノマーは、アクリル酸アルキル、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、スチレン及びスチレン誘導体、並びにアクリロニトリル、又はそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のコポリマーに関連して上述したコモノマーの例示的且つ好ましい実施形態は、本発明のコポリマーの調製方法にも適用される。したがって、N,N-ジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、及びそれらの混合物は、本発明のコポリマーの調製方法で使用するための好ましいコモノマーである。
【0063】
酢酸ビニル及びそのエステル誘導体、カルバゾール、N-ビニルピロリドン、エチレン、アリルなどのコモノマーは「活性が低い」ため、本発明のコポリマーの調製方法におけるコモノマーとしての使用には適さない。同様の評価がメタクリル酸エステル及びメタクリルアミドにも適用され、メチル基はラジカル重合中に安定化効果をもたらして式Iの化合物との共重合を防止する。
【0064】
本発明の共重合プロセスは、典型的にはラジカル開始剤の存在下で行われる。本発明のコポリマーの調製方法では、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などのアゾ化合物;例えばジベンゾイルペルオキシド(DBPO)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、及びメチルエチルケトンペルオキシドなどの有機過酸化物;例えばペルオキシ二硫酸塩、例えばNa、K、及び(NHを含む無機過酸化物;などの様々な周知のラジカル開始剤を使用することができる。しかしながら、典型的には及び好ましくは、周知のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が本明細書で使用される。
【0065】
本発明の共重合プロセスは、バルク重合として(すなわち溶媒の不存在下で)行うことができる。
【0066】
或いは、本発明の共重合プロセスは有機溶媒中で行うこともでき、有機溶媒は、典型的には非極性溶媒、例えば炭化水素系溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びエーテル系溶媒、例えば1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール;又は極性非プロトン性溶媒、例えばジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)であり;アニソールは、本発明の共重合プロセスにおいて使用するための1つの好ましい有機溶媒である。
【0067】
或いは、本発明の共重合プロセスは、水アルコール溶媒混合物中で行うこともできる。前記水アルコール溶媒混合物は、少なくとも1種のアルコールと水とを含み、アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、本発明の共重合プロセスにおける水アルコール混合物としてエタノール/水混合物が使用される。
【0068】
水アルコール溶媒混合物中の少なくとも1種のアルコールと水の比(すなわちアルコール成分:水)は、50:50~99:1vol/vol、好ましくは60:40~95:5vol/vol、より好ましくは70:30~90:10vol/vol、特に好ましくは80:20vol/volの範囲である。したがって、例えばエタノール/水混合物が水アルコール溶媒混合物として使用される場合、前記混合物中のエタノールと水の比は、特に好ましくは80:20vol/volである。
【0069】
本発明の共重合プロセスが有機溶媒混合物中で行われるか、又は水アルコール溶媒混合物中で行われるかは、例えばそれぞれの溶媒混合物中でのチオノラクトンの溶解度に基づいて決定することができる。
【0070】
本発明の共重合プロセスにおいて使用されるコモノマーの量は、典型的には、使用される式Iの化合物のモル量を基準として1~10モル当量の範囲である。好ましくは、コモノマーの量は、使用する式Iの化合物のモル量を基準として1.5~15当量、より好ましくは2~12モル当量、さらに好ましくは3~9モル当量の範囲である。チオノラクトンとコモノマーとの混合物中のチオノラクトンの相対モル量が高いほど、共重合中に形成されるチオエステル結合のパーセント割合が増加する。
【0071】
本発明の共重合プロセスにおいて使用される触媒の量は、典型的には、共重合反応において使用される式Iの化合物のモル量を基準として0.1モル%~15モル%、好ましくは0.2モル%~10モル%、さらに好ましくは0.5モル%~5モル%の範囲、例えば1モル%、2モル%、3モル%、及び4モル%である。
【0072】
本発明の共重合プロセスは、典型的には、周囲温度から120℃、好ましくは40℃~110℃、さらに好ましくは60℃~100℃、さらに好ましくは70℃~90℃の範囲の温度、例えば80℃で行われる。
【0073】
式Iの化合物から部分的に製造されるコポリマーに分解特性を付与するためのコモノマーとしての、式Iの化合物の使用
本発明は、さらに、本明細書に記載の式Iのチオノラクトンから部分的に製造されるコポリマーに分解特性を付与するためのコモノマーとしての、本明細書に記載の式Iのチオノラクトンの使用に関する。それから部分的に製造されるコポリマーは、好ましくは、本明細書において上述した本発明のコポリマーである。
【0074】
コポリマーの分解プロセス
本発明は、さらに、上述した本発明のコポリマーの分解プロセスに関する。本発明の分解プロセスは、前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させることによって行われる。
【0075】
したがって、分解試薬に応じて、本発明の分解プロセスは、加水分解(分解試薬として塩基を使用)、アミノ分解(分解試薬としてアミンを使用)、又は酸化的加水分解(分解試薬として酸化剤を使用)として行うことができる。本明細書に記載の方法による本発明のコポリマーの分解により、より小さいオリゴマーが形成される。
【0076】
本発明の分解プロセスは、有機溶媒又は有機溶媒の混合物を含む有機媒体中で行うことができる。本発明の分解プロセスにおける使用に適した有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール類;例えばジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;例えばジクロロメタン(DCM)及びクロロホルムなどの塩素化溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);酢酸エチル;アセトン;及びそれらの混合物などの一般的な有機溶媒が挙げられる。
【0077】
或いは、本発明の分解プロセスは、任意選択的に有機溶媒又は有機溶媒混合物をさらに含んでいてもよい水性媒体中で行うこともでき、有機溶媒は、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びそれらの混合物の群から選択されるアルコールであり、エタノールが特に好ましい。そのような水アルコール媒体(すなわち、少なくとも1種のアルコールと水との混合物)中では、水アルコール媒体中のアルコールの量は、典型的には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%である。
【0078】
本発明の分解プロセスを行うために、分解試薬(有機媒体又は水性媒体に含まれるもの、好ましくは溶解したもの)にコポリマーを添加することが可能であるが、このプロセスは、典型的には、コポリマーを含む有機媒体又は水性媒体に分解試薬を添加することによって行われる。その際、媒体中のコポリマーの濃度は、典型的には0.01g/mL~0.5g/mLの範囲内である。分解試薬は無希釈で添加することができ、或いは有機溶液又は水溶液として添加することもできる。
【0079】
本発明のアミノ分解プロセスでは、アンモニア、イソプロピルアミン、又はジメチルアミンなどのアミンを分解試薬として使用することができる。その後、このプロセスは、好ましくは、例えばメタノール、テトラヒドロフラン(THF)、又はジクロロメタン(DCM)などの有機媒体中で行われる。当業者は、技術常識を考慮して、必要に応じてコポリマーに関する分解プロセスで使用されるアミンの量を選択することができる。反応混合物は、典型的には、周囲温度で3~24時間、好ましくは6~18時間、さらに好ましくは12~15時間撹拌される。
【0080】
本発明の酸化的加水分解プロセスでは、オキソン(KHSO・1/2KHSO・1/2KSO)などの酸化剤を分解試薬として使用することができる。その際、このプロセスは、好ましくは水性媒体中で行われる。当業者は、技術常識を考慮して、必要に応じてコポリマーに関する分解プロセスで使用される酸化剤の量を選択することができる。反応混合物は、典型的には、周囲温度で3~24時間、好ましくは6~18時間、さらに好ましくは12~15時間撹拌される。
【0081】
本明細書で好ましく使用される本発明の加水分解プロセスでは、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)などの一般的な塩基を使用することができ、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが好ましい。
【0082】
塩基は、典型的には、水溶液、水アルコール溶液、又はアルコール溶液中で、コポリマーを含む媒体に添加される。溶液中の塩基の濃度は、典型的には1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~10重量%の範囲内、例えば5重量%である。当業者は、技術常識を考慮して、必要に応じてコポリマーに関する分解プロセスで使用される塩基の量を選択することができる。得られる混合物は、典型的には、周囲温度で3~24時間、好ましくは6~18時間、さらに好ましくは12~15時間撹拌される。
【0083】
分解試薬として塩基を使用する加水分解プロセスで使用される好ましい有機媒体は、THF又はTHFとメタノールとの混合物であり、前記THFとメタノールとの混合物において、THF:メタノールの比は典型的には少なくとも60:40vol/vol、好ましくは少なくとも70:30vol/vol、より好ましくは少なくとも80:20vol/vol、例えば、90:10vol/volである。
【0084】
本発明の加水分解プロセスは、例えばコポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、塩基、例えばメタノール中のKOHの溶液をコポリマー溶液に添加することによって行われる。
【0085】
分解試薬として塩基を使用する加水分解プロセスで使用される好ましい水アルコール媒体は、エタノールと水との混合物であり、エタノール:水の比は、典型的には少なくとも60:40wt/wt、好ましくは少なくとも70:30wt/wt、より好ましくは少なくとも80:20wt/wt、例えば80:20wt/wt、90:10wt/wt、及び95:5wt/wtである。
【0086】
その際、本発明の加水分解プロセスは、例えばコポリマーをエタノール/水混合物(例えば80:20wt/wt)に溶解し、塩基、例えばメタノール中のKOHの溶液をコポリマー水溶液に添加することによって行われる。
【0087】
式Iの化合物から部分的に製造されるコポリマーに官能基を導入するためのコモノマーとしての、式Iの化合物の使用
本発明は、さらに、式Iのチオノラクトンから部分的に製造されるコポリマーに官能基を導入するためのコモノマーとしての、式Iのチオノラクトンの使用に関する。部分的にそれから製造されるコポリマーは、好ましくは、本明細書で上述した本発明のコポリマーである。
【0088】
コモノマーとして使用される式Iの化合物によって、それから部分的に製造されるコポリマーにチオエステル結合の形態で官能基が導入されると、例えば上述した塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬で処理された場合に、コポリマーは官能化に適したものになる。そのような処理から得られるより小さいオリゴマーは、チオエステルの開裂により、オリゴマーの各末端が-SH及び-COOHで官能化される。
【0089】
コポリマーの官能化プロセス
本発明は、さらに、上述した本発明のコポリマーの官能化プロセスに関する。本発明の官能化プロセスは、前記コポリマーを、有機媒体又は水性媒体中で、塩基、アミン、及び酸化剤からなる群から選択される分解試薬、好ましくは塩基と反応させることによって行われる。
【0090】
本発明の官能化プロセスについてのプロセスの詳細は、本発明の分解プロセスについて上述したものと同じである。
【0091】
本発明の官能化プロセスにより、チオエステルの開裂によりオリゴマーの各末端が-SH及び-COOHで官能化された、そのような処理から得られるより小さいオリゴマーが得られる。
【0092】
オリゴマー
本発明は、さらに、上述したコポリマーの分解プロセスによって、又は上述したコポリマーの官能化プロセスによって得られるオリゴマーに関する。
【0093】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的とするものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0094】
実施例1:チオノラクトン2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(式I)の合成。
1.1 フェニルメチレンジアセテートの合成
無水酢酸(100mL)中のベンズアルデヒド(10.6g)の溶液に、無水酢酸(20mL)中のHSO(160mg)の溶液を滴下した。次いで、撹拌を1時間継続し、その後混合物を氷-HO混合物の中に注ぎ入れた。混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出し、次いで合わせた有機相をHO(×2)及び飽和 NaHCOで洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーション(60℃)により除去した。その後、残留無水酢酸を高真空下で55℃で除去することで、フェニルメチレンジアセテート(17.4g、84%)を無色の固体として得た。
H NMR(CDCl,400MHz):δ 2.12(s,6H),7.38-7.43(m,3H),7.49-7.54(m,2H),7.68(s,1H).
13C NMR:(CDCl,100MHz):δ 20.5,89.4,126.4,128.3,129.4,135.3,168.4.
【0095】
1.2 2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-オン(式II)の合成
サリチル酸(4.8g)と、上述した通りに得たフェニルメチレンジアセテート(7.25g)と、酢酸(3mL)と、HSO(0.01mL)との混合物を蒸留装置に入れ、次いで27mbarに保ち、70℃まで加熱した。酢酸の蒸留が停止した後、温度を2時間かけて110℃までゆっくりと上げた。次いで、反応を冷却し、続いて残留固体をEtOの中に取り込ませ、飽和 NaHCO及び飽和 NaHSOで洗浄した。その後、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去することで、2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-オン(6.3g、80%)を黄褐色の固体として得た。
H NMR(CDCl,400MHz):δ 6.53(s,1H),7.07-7.14(m,1H),7.17-7.25(m,1H),7.43-7.51(m,3H),7.55-7.69(m,3H),8.01-8.06(m,1H).
13C NMR:(CDCl,100MHz):δ 100.5,114.6,116.9,123.6,126.6,128.7,130.3,130.4,134.1,136.5,158.2,161.9.
【0096】
1.3 2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(式I)の合成
トルエン(400mL)中の上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-オン(8g)とLawesson’s試薬(5.7g、0.4当量)との溶液を24時間還流した。次いで、反応を冷却し、過剰のトルエンを使用してシリカプラグに通した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションによって除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ペンタン中20%のEtOAc)によって精製した。その後、残渣をDCM/ペンタンから再結晶させることで、2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(3.6g、収率42%)をオレンジ色の固体として得た。
H NMR(CDCl,400MHz):δ 6.44(s,1H),7.05-7.20(m,2H),7.46-7.52(m,3H),7.55-7.63(m,1H),7.66-7.73(m,2H),8.29-8.36(m,1H).
13C NMR:(CDCl,100MHz):δ 101.0,117.0,123.1,123.8,126.9,128.7,130.6,133.0,133.6,136.2,153.3,202.7.
【0097】
実施例2:2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(式I)と異なるコモノマーとの共重合
2.1 バルクでの共重合
2.1.1 ジメチルアクリルアミド
21A - 10mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとN,N-ジメチルアクリルアミドとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(100mg)、N,N-ジメチルアクリルアミド(368mg、9当量)、及びAIBN(6.8mg、1mol%)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。24時間後、固体をCHCl(3mL)に取り込ませ、次いでペンタン(50mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):16.2%のチオエステル結合
【0098】
2.1.2 スチレン
21B - 10mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとスチレンとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(100mg)、スチレン(387mg、9当量)、AIBN(6.8mg、1mol%)、及びアニソール(3mL)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。72時間後、混合物をEtO(50mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):10.4%のチオエステル結合
GPC(THF、PS標準により校正):Mn=12700、PDI=2.4
【0099】
2.1.3 アクリル酸メチル
21C - 10mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとアクリル酸メチルとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(100mg)、アクリル酸メチル(320mg、9当量)、AIBN(6.8mg、1モル%)、及びアニソール(3mL)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。72時間後、混合物をペンタン(50mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):16.9%のチオエステル結合
【0100】
バルク共重合では、スチレンとバルク共重合を行う場合を除き、チオエステル結合は理論値(チオノラクトンとコモノマーとの初期比率に基づく計算値を意味する)よりも高い。
【0101】
2.2 有機溶媒中でのDMAAとの共重合
22A - 8.7mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとN,N-ジメチルアクリルアミドとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(200mg)、N,N-ジメチルアクリルアミド(858mg、10.48当量)、AIBN(47mg、3mol%)、及びアニソール(5mL)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。20時間後、混合物をEtO(100mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):7.5%のチオエステル結合
GPC(THF、PS標準により校正):Mn=5300、PDI=1.8
【0102】
22B - 10mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとN,N-ジメチルアクリルアミドとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(100mg)、N,N-ジメチルアクリルアミド(368mg、9当量)、AIBN(6.8mg、1mol%)、及びアニソール(2.5mL)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。3時間後、混合物をペンタン(50mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):8.7%のチオエステル結合
GPC(THF、PS標準により校正):Mn=7200、PDI=2.1
【0103】
22C - 25mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとN,N-ジメチルアクリルアミドとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(300mg)、N,N-ジメチルアクリルアミド(368mg、3当量)、AIBN(24mg、3mol%)、及びアニソール(4mL)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。24時間後、混合物をEtO(100mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):22%のチオエステル結合
GPC(THF、PS標準により校正):Mn=6400、PDI=1.7
【0104】
溶媒重合におけるチオノラクトンとコポリマーのモル比の影響に関する結論:コポリマー中のチオエステル結合と、コモノマーとの混合物中のチオノラクトンの初期量との間に良好な相関関係を観察することができ、これはコモノマーが同じ速度で反応することを示唆している。
【0105】
2.3 水及び水/エタノール混合物中でのDMAAとの共重合
23A - 10mol%のチオノラクトン(チオノラクトンとN,N-ジメチルアクリルアミドとの混合物に対して)
上述した通りに得た2-フェニル-4H-ベンゾ[d][1,3]ジオキシン-4-チオン(150mg)、N,N-ジメチルアクリルアミド(552mg、9当量)、AIBN(5.1mg、0.5mol%)、及びエタノール/HOの80/20vol/vol混合物(1053mg)(約40重量%の固形分を得るため)を、磁気撹拌子を備えたヘッドスペースバイアルに入れた。次いで、バイアルを密閉し、アルゴンを使用して30分間脱気した。その後、80℃に保持した予熱したオイルバスにバイアルを沈めた。20時間後、混合物をペンタン(50mL)中に析出させ、続いて遠心分離した。その後、単離した固体を高真空下で室温で乾燥した。
H NMR(CDCl,400MHz):12%のチオエステル結合
GPC(THF、PS標準):Mn=5500、PDI=1.9
【0106】
実施例3:塩基性条件下でのコポリマーの分解
3.1有機溶媒中で製造したコポリマーの分解
コポリマー22Aのサンプル(200mg)をTHF(9mL)及びMeOH中5重量%のKOH(1mL)に溶解し、一晩撹拌した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。
GPC(THF、PS標準):Mn=900、PDI=2.5
【0107】
コポリマー22Bのサンプル(150mg)をTHF(9mL)及びMeOH中5重量%のKOH(1mL)に溶解し、一晩撹拌した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。
GPC(THF、PS標準):Mn=700、PDI=2.6
【0108】
コポリマー22Cのサンプル(150mg)をTHF(9mL)及びMeOH中5重量%のKOH(1mL)に溶解し、一晩撹拌した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。
GPC(THF、PS標準):Mn=300、PDI=3.2
【0109】
有機溶媒中で生成したコポリマーの分解によって得られるPDMA(ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド)の分子量は、チオエステル結合の量と共に直線的に増加し、予想される理論質量とかなりよく一致する。
【0110】
3.2エタノール/水混合物中で製造したコポリマーの分解
コポリマー23Aのサンプル(100mg)をエタノール/水混合物(80/20wt/wt)(9mL)及びMeOH中5重量%のKOH(1mL)に溶解し、一晩撹拌した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。
GPC(THF、PS標準):Mn=400、PDI=2.6
【国際調査報告】