(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】新規多重特異性分子
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240711BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240711BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240711BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240711BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240711BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240711BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240711BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240711BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240711BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240711BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240711BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
A61K35/28
A61K35/17
A61K39/395 V
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P37/02
A61P11/00
A61P21/00
A61P1/04
A61P11/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
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A61P31/04
A61P3/10
A61P9/10
A61P17/06
A61P9/10 101
A61P17/00
A61P37/06
A61P35/02
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504950
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022074284
(87)【国際公開番号】W WO2023010098
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/109028
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/103725
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520502972
【氏名又は名称】エルピサイエンス(スーチョウ)・バイオファーマ,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520502983
【氏名又は名称】エルピサイエンス・バイオファーマ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ホンタオ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ダウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゲン,イェナン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ハイシア
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,シャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ヤンシェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AB01
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4C076AA95
4C076BB13
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4C076BB25
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
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4C076CC29
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4C076EE59
4C076FF34
4C084AA19
4C084MA01
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
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4C084ZA68
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB09
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB32
4C084ZB35
4C084ZC35
4C085AA14
4C085AA33
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA57
4C087MA59
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA36
4C087ZA45
4C087ZA59
4C087ZA68
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB32
4C087ZB35
4C087ZC35
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、SIPR-アルファに対して特異的な多重特異性分子及び1つ又は複数の標的抗原、それをコードする単離されたポリヌクレオチド、それを含む医薬組成物、並びにその使用について提示する。本開示は、SIRP-アルファ結合ドメイン、Feドメインを含む活性化受容体結合ドメイン、及び標的抗原結合ドメインを含む多重特異性分子について提示する
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SIRP-アルファ結合ドメインと、
(b)活性化受容体結合ドメインと、
(c)標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞上に発現される標的抗原と結合する、標的抗原結合ドメインと
を含む多重特異性分子であって、
該多重特異性分子が、標的抗原の存在下で、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を選択的に誘発し、並びに該免疫エフェクター細胞がSIRP-アルファ及び活性化受容体を同時発現する、
上記多重特異性分子。
【請求項2】
標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞が、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能により除去される、目的とするがん細胞、感染細胞、又は疾患細胞である、請求項1に記載の多重特異性分子。
【請求項3】
標的抗原の非存在下では、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を最低限度でしか誘発しない、請求項1に記載の多重特異性分子。
【請求項4】
標的抗原の非存在下で多重特異性分子により誘発されるエフェクター機能が、標的抗原の存在下で誘発されるエフェクター機能の10%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項5】
免疫エフェクター細胞が骨髄細胞であり、任意選択で、該免疫エフェクター細胞が、マクロファージ細胞、単球、好中球、好酸球、食細胞、又は好塩基球であり、任意選択で該免疫エフェクター細胞がマクロファージ細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項6】
エフェクター機能が、免疫エフェクター細胞による、抗原及びCD47を同時発現する細胞のファゴサイトーシスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項7】
活性化受容体が、結晶化可能なγ受容体断片(FcγR)、TREM2、レクチン、スカベンジャー受容体A1(SRA1)、MARCO、CD36、CD163、CD68、CD205、CD206、FcDR1、CD207、CD209、RAGE、CD14、CD64、F4/80、CD64、CD32a、CD16a、CD89、CD19、CD28、CSFR、PDGFR、MSR1、SCARA3、COLEC12、SCARA5、SCARB1、SCARB2、デクチン1、RAGE(SR-E1)、LRP1、LRP2、ASGP、SR-PSOX、CXCL16、OLR1、SCARF1、SCARF2、CXCL16、STAB1、STAB2、SRCRB4D、SSC5D、CCR2、CX3CR1、CSF1R、Tie2、HuCRIg(L)、及びCD169受容体又は補体受容体(例えば、CR1及びCR3等)、PI3K、FcγR1、FcγR2A、FcγR2B2、FcγR2C、FcγR3A、BAH.Tyro3、Ax1、Traf6、Syk、MyD88、Zap70、FcεR1、FcαR1、BAFF-R、DAP12、NFAM1、MRC1、ItgB5、MERTK、ELMO、及びCD79bであり、任意選択で、該活性化受容体がFcγRである、請求項1~6のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項8】
活性化受容体結合ドメインがFcドメインを含み、任意選択で、該FcドメインがIgG1又はIgG4に由来する、請求項1~7のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項9】
SIRP-アルファ結合ドメインが、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を実質的にブロックする能力を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項10】
SIRP-アルファ結合ドメインが、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を完全にブロックする能力を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項11】
SIRP-アルファ結合ドメインが、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により媒介されるSHP-1導入を実質的にブロックする能力を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項12】
SIRP-アルファ結合ドメインが、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により媒介されるSHP-1導入を完全にブロックする能力を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項13】
SIRP-アルファ結合ドメインが、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を誘発する最低限度の固有の活性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項14】
SIRP-アルファ結合ドメイン及び活性化受容体結合ドメインが、同一の免疫エフェクター細胞上で同時発現されたSIRP-アルファ及び活性化受容体の両方と多重特異性分子が結合するのを可能にするために近接した位置関係にある、請求項1~13のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項15】
SIRP-アルファ結合ドメイン及び/又は標的抗原結合ドメインが、抗体ドメイン又は抗体模倣ドメインを含み、任意選択で該抗体模倣ドメインが、フィブロネクチンドメイン、プロテインAのZドメイン(アフィボディ(Affibody))、ガンマB結晶性ドメイン、ユビキチンドメイン、シスタチンドメイン、Sac7dドメイン、三重へリックスコイルドコイルドメイン、リポカリンドメイン、膜受容体のAドメイン、アンキリン反復モチーフ、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤のクニッツドメイン、フィブロネクチンのIII型ドメイン(ミニボディ)、炭水化物結合モジュール32-2を含む、請求項1~14のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項16】
抗体ドメインが、Fab、VHH、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)
2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、F(ab)
2、scFvダイマー(2価のダイアボディ)、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、テトラボディ、ドメイン抗体、又は2価ドメイン抗体を含む、請求項15に記載の多重特異性分子。
【請求項17】
標的抗原結合抗体ドメイン、SIRP-a結合抗体ドメイン、及びFcドメインを含む多重特異性抗体を含む、請求項1~16のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項18】
標的抗原結合抗体ドメインがFcドメインのN末端にリンクしている、請求項17に記載の多重特異性分子。
【請求項19】
標的抗原結合抗体ドメインがFabドメインを含み、任意選択で、該FabドメインがFcドメインのN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む、請求項18に記載の多重特異性分子。
【請求項20】
多重特異性分子が2つの標的抗原結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれがFabドメインを含み、任意選択で、該Fabドメインのそれぞれが、Fcドメインの各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む、請求項18に記載の多重特異性分子。
【請求項21】
SIRP-アルファ結合ドメインが、Fcドメイン又は標的抗原結合抗体ドメインにリンクしている、請求項18~20のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項22】
SIRP-アルファ結合ドメインが、FcドメインのC末端にリンクしている、請求項21に記載の多重特異性分子。
【請求項23】
SIRP-アルファ結合ドメインがFcドメインのN末端にリンクしているが、但し、SIRP-アルファ結合ドメイン及び標的抗原結合抗体ドメインが、Fcドメインの同一N末端とリンクしていない、請求項21に記載の多重特異性分子。
【請求項24】
SIRP-アルファ結合ドメインが標的抗原結合Fabドメインの軽鎖のC末端にリンクしている、請求項21に記載の多重特異性分子。
【請求項25】
SIRP-アルファ結合抗体ドメインがFcドメインのN末端にリンクしている、請求項17に記載の多重特異性分子。
【請求項26】
SIRP-アルファ結合抗体ドメインがFabドメインを含み、任意選択で、該Fabドメインが、FcドメインのN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む、請求項25に記載の多重特異性分子。
【請求項27】
前記抗体が2つのSIRP-アルファ結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれがFabドメインを含み、任意選択で、該Fabドメインのそれぞれが、Fcドメインの各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む、請求項25に記載の多重特異性分子。
【請求項28】
標的抗原結合ドメインが、Fcドメイン又はSIRP-アルファ結合抗体ドメインにリンクしている、請求項25~27のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項29】
標的抗原結合ドメインがFcドメインのN末端にリンクしているが、但し標的抗原結合ドメイン及びSIRP-アルファ結合ドメインは、Fcドメインの同一N末端とリンクしていない、請求項28に記載の多重特異性分子。
【請求項30】
標的抗原結合ドメインが、SIRP-アルファ結合Fabドメインの軽鎖のC末端にリンクしている、請求項28に記載の多重特異性分子。
【請求項31】
標的抗原が腫瘍表面抗原を含む、請求項1~30のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項32】
腫瘍表面抗原が、PD-L1、クローディン18.2、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、EGFR、HER2、HER3、CD117、C-Met、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、VEGFR1、VEGFR2、ROR1、PTHR2、B7-H1(PD-L1)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、B7-H7、Trop-2、GPC-3、EPCAM、DLL-3、ネクチン-4、クローディン6、Muc-1、PSMA、GD3、FAP、CEA、又はEphA2である、請求項31に記載の多重特異性分子。
【請求項33】
SIRP-アルファ結合ドメインが、
a)X
1YYMHの配列(配列番号161)を含むHCDR1、RIDPEDX
2EX
3KYAPKFQGの配列(配列番号162)を含むHCDR2、及びGX
15X
4X
5Yの配列(配列番号163)を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSYLYの配列(配列番号26)を含むLCDR1、STSNLASの配列(配列番号27)を含むLCDR2、及びX
6QWSSYPYTの配列(配列番号164)を含むLCDR3、或いは
b)TYGMSの配列(配列番号35)を含むHCDR1、WINTYSGVX
7TX
8ADDFKGの配列(配列番号165)を含むHCDR2、及びDPHX
9YGX
10SPAWFX
11Yの配列(配列番号166)を含むHCDR3、並びに/又はX
12ASQX
13VGIX
14VAの配列(配列番号188)を含むLCDR1、SASNRYTの配列(配列番号39)を含むLCDR2、及びQQYSX
16YPX
17Tの配列(配列番号189)を含むLCDR3、或いは
c)EYVLSの配列(配列番号41)を含むHCDR1、EIYPGTITTYYNEKFKGの配列(配列番号42)を含むHCDR2、及びFYDYDGGWFAYの配列(配列番号43)を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSDLHの配列(配列番号44)を含むLCDR1、GTSNLASの配列(配列番号45)を含むLCDR2、及びQQWSGYPWTの配列(配列番号46)を含むLCDR3
を含み、式中、X
1がA又はDであり、X
2がG又はAであり、X
3がT又はSであり、X
4がL又はYであり、X
5がE又はAであり、X
6がY又はHであり、X
7がS又はPであり、X
8がY又はCであり、X
9がY又はSであり、X
10がN又はSであり、X
11がP又はVであり、X
12がE又はKであり、X
13がN又はIであり、X
14がS又はAであり、X
15がSであるか又は存在せず、X
16がS又はAであり、X
17がF又はLである、
請求項1~32のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項34】
SIRP-アルファ結合ドメインが、
a)配列番号23の配列を含むHCDR1、配列番号24若しくは配列番号198の配列を含むHCDR2、及び配列番号25の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号26の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、及び配列番号28の配列を含むLCDR3、或いは
b)配列番号29の配列を含むHCDR1、配列番号30の配列を含むHCDR2、及び配列番号31の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号32の配列を含むLCDR1、配列番号33の配列を含むLCDR2、及び配列番号34の配列を含むLCDR3、或いは
c)配列番号35の配列を含むHCDR1、配列番号36の配列を含むHCDR2、及び配列番号37の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号38の配列を含むLCDR1、配列番号39の配列を含むLCDR2、及び配列番号40の配列を含むLCDR3、或いは
d)配列番号47の配列を含むHCDR1、配列番号48の配列を含むHCDR2、及び配列番号49の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号50の配列を含むLCDR1、配列番号51の配列を含むLCDR2、及び配列番号52の配列を含むLCDR3
を含む、請求項1~33のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項35】
SIRP-アルファ結合ドメインが、C25、C15、C42、C59、及びC73からなる群から選択される抗SIRP-アルファ抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
a)C25が、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
b)C15が、配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
c)C42が、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
d)C59が、配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
e)C73が、配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項1~34のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項36】
SIRP-アルファ結合ドメインが、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ若しくは複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
i)HFR1が、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX
20SGFNIK(配列番号190)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
j)HFR2が、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
k)HFR3配列が、RVTITADTSTX
21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号192)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
l)HFR4が、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
m)LFR1が、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
n)LFR2が、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
o)LFR3が、GIPARFSGSGSGTDX
22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号196)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
p)LFR4が、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X
20がA又はVであり、X
21がN又はDであり、X
22がY又はFである、
請求項1~35のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項37】
SIRP-アルファ結合ドメインが、
a)配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
b)配列番号3の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号4の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
c)配列番号5の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号6の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
d)配列番号7の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号8の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
e)配列番号9の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
f)配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
g)配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
h)配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
i)配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
j)配列番号159の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号160の配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~36のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項38】
標的抗原結合ドメインが、クローディン18.2結合ドメインを含む、請求項1~37のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項39】
クローディン18.2結合ドメインが、
a)配列番号77の配列を含むHCDR1、配列番号78の配列を含むHCDR2、及び配列番号79の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号80の配列を含むLCDR1、配列番号81の配列を含むLCDR2、及び配列番号82若しくは配列番号225の配列を含むLCDR3、或いは
b)配列番号83の配列を含むHCDR1、配列番号84の配列を含むHCDR2、及び配列番号85の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号86の配列を含むLCDR1、配列番号87の配列を含むLCDR2、及び配列番号88の配列を含むLCDR3、或いは
c)配列番号89の配列を含むHCDR1、配列番号90の配列を含むHCDR2、及び配列番号91の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号92の配列を含むLCDR1、配列番号93の配列を含むLCDR2、及び配列番号94の配列を含むLCDR3、或いは
d)配列番号95の配列を含むHCDR1、配列番号96の配列を含むHCDR2、及び配列番号97の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号98の配列を含むLCDR1、配列番号99の配列を含むLCDR2、及び配列番号100の配列を含むLCDR3、或いは
e)配列番号101の配列を含むHCDR1、配列番号102の配列を含むHCDR2、及び配列番号103の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号104の配列を含むLCDR1、配列番号105の配列を含むLCDR2、及び配列番号106の配列を含むLCDR3
を含む、請求項1~38のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項40】
クローディン18.2結合ドメインが、hu26.H1L1、hu26.H1L2(S92A)、hu28.H1L2、C10、C29、及びC30からなる群から選択される抗クローディン18.2抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
a)hu26.H1L1が、配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
b)hu26.H1L2(S92A)が、配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号224の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
c)hu28.H1L2が、配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
d)C10が、配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
e)C29が、配列番号73の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
f)C30が、配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域を含む、
請求項1~39のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項41】
クローディン18.2結合ドメインが、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1が、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)及びQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号168)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2が、WVRQAPGKGLEWVX
18(配列番号169)及びWVRQAPGQGLEWMG(配列番号170)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列が、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAX
23(配列番号171)及びRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号172)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4が、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1が、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)及びDIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号175)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2が、WYQQKPGX
26X
27PKX
19LIY(配列番号176)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3が、GVPSRFSGSGSGTEX
24TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号178)及びGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYHC(配列番号179)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、並びに
h)LFR4が、FGX
25GTKLEIK(配列番号180)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X
18がS又はAであり、X
19がL又はAであり、X
23がT又はKであり、X
24がY又はFであり、X
25がQ又はGであり、X
26がQ又はKであり、X
27がP又はAである、
請求項1~40のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項42】
クローディン18.2結合ドメインが、
a)配列番号65若しくは68の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66若しくは67若しくは224の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
b)配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
c)配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
d)配列番号73の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
e)配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~41のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項43】
標的抗原結合ドメインがPD-L1結合ドメインを含む、請求項1~42のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項44】
PD-L1結合ドメインが、
a)配列番号119の配列を含むHCDR1、配列番号120の配列を含むHCDR2、及び配列番号121の配列を含むHCDR3、又は
b)配列番号122の配列を含むHCDR1、配列番号123の配列を含むHCDR2、及び配列番号124の配列を含むHCDR3、又は
c)配列番号125の配列を含むHCDR1、配列番号126の配列を含むHCDR2、及び配列番号127の配列を含むHCDR3、又は
d)配列番号128の配列を含むHCDR1、配列番号129の配列を含むHCDR2、及び配列番号130の配列を含むHCDR3、又は
e)配列番号131の配列を含むHCDR1、配列番号132の配列を含むHCDR2、及び配列番号133の配列を含むHCDR3、又は
f)配列番号134の配列を含むHCDR1、配列番号135の配列を含むHCDR2、及び配列番号136の配列を含むHCDR3、又は
g)配列番号137の配列を含むHCDR1、配列番号138の配列を含むHCDR2、及び配列番号139の配列を含むHCDR3、又は
h)配列番号140の配列を含むHCDR1、配列番号141の配列を含むHCDR2、及び配列番号142の配列を含むHCDR3、又は
i)配列番号143の配列を含むHCDR1、配列番号144の配列を含むHCDR2、及び配列番号145の配列を含むHCDR3、又は
j)配列番号146の配列を含むHCDR1、配列番号147の配列を含むHCDR2、及び配列番号148の配列を含むHCDR3、又は
k)配列番号149の配列を含むHCDR1、配列番号150の配列を含むHCDR2、及び配列番号151の配列を含むHCDR3、又は
配列番号152の配列を含むHCDR1、配列番号153の配列を含むHCDR2、及び配列番号154の配列を含むHCDR3
を含む、請求項1~43のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項45】
PD-L1結合ドメインが、C71、C71v38、C239、C492、C570、570h3、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719からなる群から選択される抗PD-L1抗体と同一のHCDRを含み、
a)C71が配列番号107の配列を含む重鎖可変領域を含み、
b)C71v38が配列番号108の配列を含む重鎖可変領域を含み、
c)C239が配列番号109の配列を含む重鎖可変領域を含み、
d)C492が配列番号110の配列を含む重鎖可変領域を含み、
e)C570が配列番号111の配列を含む重鎖可変領域を含み、
f)570h3が配列番号223の配列を含む重鎖可変領域を含み、
g)C446が配列番号112の配列を含む重鎖可変領域を含み、
h)C2811が配列番号113の配列を含む重鎖可変領域を含み、
i)C1778が配列番号114の配列を含む重鎖可変領域を含み、
j)C1793が配列番号115の配列を含む重鎖可変領域を含み、
k)C2855が配列番号116の配列を含む重鎖可変領域を含み、
l)C2713が配列番号117の配列を含む重鎖可変領域を含み、及び
m)C2719が配列番号118の配列を含む重鎖可変領域を含む、
請求項1~44のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項46】
PD-L1結合ドメインが、配列番号107~118、及び223からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1~45のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項47】
a)SIRP-アルファ結合ドメインが、ヒトSIRPαに対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含み、及び/又は
b)クローディン18.2結合ドメインが、クローディン18.2に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含み、及び/又は
c)PD-L1結合ドメインが、PD-L1に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含む、
請求項30~39のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項48】
前記置換又は改変の少なくとも1つが、重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域のCDR配列の1つ若しくは複数の中、及び/又は非CDR配列の1つ若しくは複数の中にある、請求項1~47のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項49】
ヒト化されている、請求項1~48のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項50】
1つ又は複数のコンジュゲート部分にリンクしている、請求項1~49のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項51】
コンジュゲート部分が、クリアランス修飾剤、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素-基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、精製部分、又はその他の抗がん剤を含む、請求項1~50のいずれかに記載の多重特異性分子。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子、及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項53】
請求項1~52のいずれか一項に記載の多重特異性分子をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項54】
請求項53に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項55】
請求項54に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項56】
請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子、及び/又は請求項52に記載の医薬組成物、及び第2の治療剤を含むキット。
【請求項57】
請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子を発現させる方法であって、請求項54に記載のベクターが発現される条件下で、請求項55に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、上記方法。
【請求項58】
対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項59】
対象内の標的抗原に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項60】
対象内のSIRPαに関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項61】
対象内のCD47に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項62】
対象がヒトである、請求項58~61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
対象が、免疫に関連する疾患又は障害、腫瘍及びがん、自己免疫疾患、並びに感染性疾患からなる群から選択される疾患、障害、又は状態を有すると診断を下されたか、或いはそのリスクに晒されている、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
免疫に関連する疾患又は障害が、全身性エリテマトーデス、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、突発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節障害(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患と関連する孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット症候群、未分化脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、及び若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠状動脈症候群、虚血再潅流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、又は炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
腫瘍及びがんが、任意選択で、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、ミエローマ、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及びその他の血液悪性腫瘍、例えば古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性及び陰性PTLD、及びEBV関連のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫等、鼻咽頭癌、及びHHV8関連の原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、例えば原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫等、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝臓及び胆管のがん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、睾丸がん、腎がん、腎盂及び尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸部がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸がん、皮膚がん、前立腺がん、脳下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽頭がん、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、テラトーマ、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T又はB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞癌、及び腺癌、又はそれらの転移からなる群から選択される固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記投与が、口腔、鼻腔、静脈内、皮下、舌下、又は筋肉内投与を経由する、請求項58~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
第2の治療剤の治療有効量を投与するステップを更に含む、請求項58~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
第2の治療剤が、化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛薬、酸化防止剤、金属キレート剤、及びサイトカインからなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置、予防、又は緩和するための医薬の製造における、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子、及び/又は請求項52に記載の医薬組成物の使用。
【請求項70】
対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法であって、対象に対して、標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するのに有効な用量で、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子及び/又は請求項52に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項71】
対象がヒトである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
対象が、免疫に関連する疾患又は障害、腫瘍及びがん、自己免疫疾患、並びに感染性疾患からなる群から選択される疾患、障害、又は状態を有すると診断を下されたか、又はそのリスクに晒されている、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
標的細胞のファゴサイトーシスをin vitroで誘発する方法であって、標的細胞を、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子、及び/又は請求項52に記載の医薬組成物の存在下で、SIRPα陽性貪食性細胞サンプルと接触させ、これによりSIRPα陽性貪食性細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するステップを含む、上記方法。
【請求項74】
標的細胞が、標的抗原を発現する細胞である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ファゴサイトーシスによる、標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞の除去を誘発する方法であって、標的細胞を、貪食性免疫細胞の存在下で、請求項1~51のいずれかに記載の多重特異性分子と接触させるステップを含む、上記方法。
【請求項76】
対象内で標的抗原を発現しない細胞よりも、標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞に対して貪食効果を選択的に誘発する方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項77】
腫瘍微小環境内のM1マクロファージのレベルを増加させることを必要とする対象において、それを増加させる方法であって、対象に対して、請求項1~51のいずれか一項に記載の多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、SIRP-α及び腫瘍関連抗原に対して特異的な新規多重特異性分子に一般的に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)は、骨髄細胞及び樹状細胞上で主に発現される阻害受容体である。SIRPαは、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)細胞質ドメインを含む。骨髄細胞上でのSIRPαの免疫調節活性は、そのリガンドCD47(SIRPαのITIM細胞質ドメインのチロシンリン酸化を誘発し、後続するSH2含有チロシンホスファターゼ(SHP-1/2)の導入を伴う)と結合することにより活性化される。SHP-1/2は、次にタンパク質の脱リン酸化を経由して阻害シグナル伝達事象に関与し、最終的にマクロファージにおけるファゴサイトーシスの阻害を引き起こす(Barclay AN,Van den Berg TK.The interaction between signal regulatory protein alpha (SIRPα) and CD47:structure,function,and therapeutic target.Annu Rev Immunol.2014;32:25-50;Oldenborg PA,et al.Role of CD47 as a Marker of self on red blood cells.Science.2000;288(5473):2051-2054)。したがって、SIRPαにCD47が結合すると、「私を食べないで(don’t eat me)」シグナルの送達をもたらし、ファゴサイトーシスを抑制する。
【0003】
[0003]CD47は、正常細胞上で普遍的に発現しており、また多くのがん細胞上で上方制御される。高度のCD47発現はがん細胞により使用される免疫系回避のための機構であり、臨床転帰の不良と相関関係を有する(Willingham SB,et al.The CD47-signal regulatory protein-α(SIRPα) interaction is a therapeutic target for human solid tumors.Proc Natl Acad Sci USA.2012;109(17):6662-6667;Zhao XW,et al.CD47-signal regulatory protein-α(SIRPα)interactions form a barrier for antibody-mediated tumor cell destruction.Proc Natl Acad Sci USA.2011;108(45):18342-18347;Majeti R,et al.CD47 is an adverse prognostic factor and therapeutic antibody target on human acute Myeloid leukemia stem cells.Cell.2009;138(2):286-299)。SIRPα及び第2抗原(例えば、標的抗原)に対して特異的な二重特異性マクロファージ増強性(BiME)抗体が、がん細胞上でのファゴサイトーシス特性の増強を実現するように設計されており、例えば本明細書において参照により組み込まれる国際公開第2015138600A2号を参照されたい。更に、SIRPα抗体の異なる特性及びフォーマットを用いて構築されたより多くのBiME分子について、より深く研究及び比較する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]したがって、SIRPαに対して特異的であり、副作用が抑えられ且つ安全性の高い、改善されたBiME抗体又は多重特異性分子を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本開示の全体を通じて、冠詞「a」、「an」、及び「the」が、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すのに、本明細書において使用される。例として、「an antibody(ある抗体)」とは、1つの抗体又は2以上の抗体を意味する。
【0006】
[0006]本開示は、SIRP-α及び腫瘍関連抗原に対して特異的な新規多重特異性分子、そのアミノ酸及びヌクレオチド配列、及びその使用について提示する。
[0007]1つの態様では、本開示は、
(a)SIRPアルファ結合ドメインと、
(b)活性化受容体結合ドメインと、
(c)標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞上で発現される標的抗原と結合する標的抗原結合ドメインと
を含む多重特異性分子であって、前記多重特異性分子が、標的抗原の存在下で、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を選択的に誘発し、並びに免疫エフェクター細胞がSIRP-アルファ及び活性化受容体を同時発現する多重特異性分子について提示する。
【0007】
[0008]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメイン、本明細書に提示されるFcドメインを含む活性化受容体結合ドメイン、及び本明細書に提示される標的抗原結合ドメインを含む。
【0008】
[0009]これらの実施形態のいずれかにおいて、標的結合ドメインはクローディン18.2結合ドメイン又はPD-L1結合ドメインである。
[00010]ある特定の実施形態では、標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞は、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能により除去される、目的とするがん細胞、感染細胞、又は疾患細胞である。
【0009】
[00011]ある特定の実施形態では、多重特異性分子は、標的抗原の非存在下では、最低限度の免疫エフェクター細胞のエフェクター機能しか誘発しない。
[00012]ある特定の実施形態では、標的抗原の非存在下で多重特異性分子により誘発されるエフェクター機能は、標的抗原の存在下で誘発されるエフェクター機能の10%以下である。
【0010】
[00013]ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は骨髄細胞であり、任意選択で、免疫エフェクター細胞は、マクロファージ細胞、単球、好中球、好酸球、食細胞、又は好塩基球であり、任意選択で免疫エフェクター細胞はマクロファージ細胞である。
【0011】
[00014]ある特定の実施形態では、エフェクター機能は、抗原及びCD47を同時発現する細胞の免疫エフェクター細胞によるファゴサイトーシスを含む。
[00015]ある特定の実施形態では、活性化受容体は、結晶化可能なγ受容体断片(FcγR)、TREM2、レクチン、スカベンジャー受容体A1(SRA1)、MARCO、CD36、CD163、CD68、CD205、CD206、FcDR1、CD207、CD209、RAGE、CD14、CD64、F4/80、CD64、CD32a、CD16a、CD89、CD19、CD28、CSFR、PDGFR、MSR1、SCARA3、COLEC12、SCARA5、SCARB1、SCARB2、デクチン1、RAGE (SR-E1)、LRP1、LRP2、ASGP、SR-PSOX、CXCL16、OLR1、SCARF1、SCARF2、CXCL16、STAB1、STAB2、SRCRB4D、SSC5D、CCR2、CX3CR1、CSF1R、Tie2、HuCRIg(L)、及びCD169受容体又は補体受容体(例えば、CR1及びCR3等)、PI3K、FcγR1、FcγR2A、FcγR2B2、FcγR2C、FcγR3A、BAH.Tyro3、Ax1、Traf6、Syk、MyD88、Zap70、FcεR1、FcαR1、BAFF-R、DAP12、NFAM1、MRC1、ItgB5、MERTK、ELMO、及びCD79bであり、任意選択で、活性化受容体はFcγRである。
【0012】
[00016]ある特定の実施形態では、活性化受容体結合ドメインはFcドメインを含み、任意選択でFcドメインはIgG1又はIgG4に由来する。
[00017]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を実質的にブロックする能力を有する。
【0013】
[00018]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を完全にブロックする能力を有する。
[00019]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により媒介されるSHP-1導入を実質的にブロックする能力を有する。
【0014】
[00020]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により媒介されるSHP-1導入を完全にブロックする能力を有する。
【0015】
[00021]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を誘発する最低限度の固有の活性を有する。
[00022]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメイン及び活性化受容体結合ドメインは、多重特異性分子が同一の免疫エフェクター細胞上で同時発現されたSIRP-アルファ及び活性化受容体の両方と結合するのを可能にするために近接した位置関係にある。
【0016】
[00023]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメイン及び/又は標的抗原結合ドメインは、抗体ドメイン又は抗体模倣ドメインを含み、任意選択で抗体模倣ドメインは、フィブロネクチンドメイン、プロテインAのZドメイン(アフィボディ(Affibody))、ガンマB結晶性ドメイン、ユビキチンドメイン、シスタチンドメイン、Sac7dドメイン、三重ヘリックスコイルドコイルドメイン、リポカリンドメイン、膜受容体のAドメイン、アンキリン反復モチーフ、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤のクニッツドメイン、フィブロネクチンのIII型ドメイン(ミニボディ)、炭水化物結合モジュール32-2を含む。
【0017】
[00024]ある特定の実施形態では、抗体ドメインは、Fab、VHH、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、F(ab)2、scFvダイマー(2価のダイアボディ)、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、テトラボディ、ドメイン抗体、又は2価のドメイン抗体を含む。
【0018】
[00025]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、標的抗原結合抗体ドメイン、SIRP-a結合抗体ドメイン、及びFcドメインを含む多重特異性抗体を含む。
【0019】
[00026]ある特定の実施形態では、標的抗原結合抗体ドメインはFcドメインのN末端にリンクしている。
[00027]ある特定の実施形態では、標的抗原結合抗体ドメインはFabドメインを含み、任意選択で、FabドメインはFcドメインのN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む。
【0020】
[00028]ある特定の実施形態では、多重特異性分子は2つの標的抗原結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインのそれぞれは、Fcドメインの各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む。
【0021】
[00029]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、Fcドメイン又は標的抗原結合抗体ドメインにリンクしている。
[00030]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、FcドメインのC末端にリンクしている。
【0022】
[00031]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインはFcドメインのN末端にリンクしているが、但しSIRP-アルファ結合ドメイン及び標的抗原結合抗体ドメインは、Fcドメインの同一のN末端とリンクしていない。
【0023】
[00032]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは標的抗原結合Fabドメインの軽鎖のC末端にリンクしている。
[00033]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合抗体ドメインはFcドメインのN末端にリンクしている。
【0024】
[00034]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合抗体ドメインはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインは、FcドメインのN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む。
【0025】
[00035]ある特定の実施形態では、抗体は2つのSIRP-アルファ結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインのそれぞれは、Fcドメインの各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む。
【0026】
[00036]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメインはFcドメイン又はSIRP-アルファ結合抗体ドメインにリンクしている。
[00037]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメインはFcドメインのN末端にリンクしているが、但し、標的抗原結合ドメイン及びSIRP-アルファ結合ドメインは、Fcドメインの同一のN末端とリンクしていない。
【0027】
[00038]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメインは、SIRP-アルファ結合Fabドメインの軽鎖のC末端にリンクしている。
[00039]ある特定の実施形態では、標的抗原は腫瘍表面抗原を含む。
【0028】
[00040]ある特定の実施形態では、腫瘍表面抗原は、PD-L1、クローディン18.2、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、EGFR、HER2、HER3、CD117、C-Met、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、VEGFR1、VEGFR2、ROR1、PTHR2、B7-H1(PD-L1)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、B7-H7、Trop-2、GPC-3、EPCAM、DLL-3、ネクチン-4、クローディン6、Muc-1、PSMA、GD3、FAP、CEA、又はEphA2である。
【0029】
[00041]本明細書に提示される多重特異性分子は、任意の適するフォーマットであり得る。例証的事例は以下のように提示される。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む標的抗原結合抗体を含み、軽鎖のそれぞれのC末端は、抗SIRPα scFv(すなわち、SIRPα結合ドメイン)に融合する。標的抗原結合抗体は標的抗原結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Aに示す。
【0030】
[00042]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む標的抗原結合抗体を含み、重鎖のそれぞれのC末端は、抗SIRPα scFv(すなわち、SIRPα結合ドメイン)に融合する。標的抗原結合抗体は標的抗原結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Bに示す。
【0031】
[00043]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、軽鎖のそれぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有するscFv(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体はSIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Cに示す。
【0032】
[00044]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、重鎖のそれぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有するscFv(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体はSIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Dに示す。
【0033】
[00045]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、軽鎖のそれぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体はSIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Aに示す。
【0034】
[00046]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、重鎖のそれぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Bに示す。
【0035】
[00047]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、重鎖のそれぞれのN末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体はSIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Cに示す。
【0036】
[00048]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、軽鎖のそれぞれのN末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体はSIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Dに示す。
【0037】
[00049]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、抗SIRPα結合ドメイン(例えば、Fab)及び単一ドメイン抗体(sdAb)を含み、それぞれ標的抗原に結合する能力を有し、それぞれFcドメインのポリペプチド鎖のN末端に融合する。例証的事例を
図6Eに示す。
【0038】
[00050]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は2本の重鎖を含み、それぞれFcドメインのポリペプチド鎖のN末端に融合した標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)を含み、及びFcドメインのポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に融合した少なくとも1つの抗SIRPα結合ドメインを更に含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、Fcドメインのポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に融合した1つの抗SIRPα結合ドメインを含む。例証的事例を
図6Fに示す。
【0039】
[00051]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2つの抗SIRPα結合ドメインを含み、それぞれFcドメインのポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に融合している。例証的事例を
図6Gに示す。
【0040】
[00052]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
a)X1YYMHの配列(配列番号161)を含むHCDR1、RIDPEDX2EX3KYAPKFQGの配列(配列番号162)を含むHCDR2、及びGX15X4X5Yの配列(配列番号163)を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSYLYの配列(配列番号26)を含むLCDR1、STSNLAS(配列番号27)の配列を含むLCDR2、及びX6QWSSYPYT(配列番号164)の配列を含むLCDR3;或いは
b)TYGMSの配列(配列番号35)を含むHCDR1、WINTYSGVX7TX8ADDFKGの配列(配列番号165)を含むHCDR2、及びDPHX9YGX10SPAWFX11Yの配列(配列番号166)を含むHCDR3、並びに/又はX12ASQX13VGIX14VAの配列(配列番号188)を含むLCDR1、SASNRYTの配列(配列番号39)を含むLCDR2、及びQQYSX16YPX17Tの配列(配列番号189)を含むLCDR3、或いは
c)EYVLSの配列(配列番号41)を含むHCDR1、EIYPGTITTYYNEKFKGの配列(配列番号42)を含むHCDR2、及びFYDYDGGWFAYの配列(配列番号43)を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSDLHの配列(配列番号44)を含むLCDR1、GTSNLASの配列(配列番号45)を含むLCDR2、及びQQWSGYPWTの配列(配列番号46)を含むLCDR3
を含み、式中、
X1はA又はDであり、X2はG又はAであり、X3はT又はSであり、X4はL又はYであり、X5はE又はAであり、X6はY又はHであり、X7はS又はPであり、X8はY又はCであり、X9はY又はSであり、X10はN又はSであり、X11はP又はVであり、X12はE又はKであり、X13はN又はIであり、X14はS又はAであり、X15はSであるか又は存在せず、X16はS又はAであり、X17はF又はLである。
【0041】
[00053]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
a)配列番号23の配列を含むHCDR1、配列番号24若しくは配列番号198の配列を含むHCDR2、及び配列番号25の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号26の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、及び配列番号28の配列を含むLCDR3;或いは
b)配列番号29の配列を含むHCDR1、配列番号30の配列を含むHCDR2、及び配列番号31の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号32の配列を含むLCDR1、配列番号33の配列を含むLCDR2、及び配列番号34の配列を含むLCDR3;或いは
c)配列番号35の配列を含むHCDR1、配列番号36の配列を含むHCDR2、及び配列番号37の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号38の配列を含むLCDR1、配列番号39の配列を含むLCDR2、及び配列番号40の配列を含むLCDR3;或いは
d)配列番号47の配列を含むHCDR1、配列番号48の配列を含むHCDR2、及び配列番号49の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号50の配列を含むLCDR1、配列番号51の配列を含むLCDR2、及び配列番号52の配列を含むLCDR3を含む。
【0042】
[00054]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、C25、C15、C42、C59、及びC73からなる群から選択される抗SIRP-アルファ抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
a)C25は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
b)C15は、配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
c)C42は、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
d)C59は、配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
e)C73は、配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0043】
[00055]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX20SGFNIK(配列番号190)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
b)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
c)HFR3配列は、RVTITADTSTX21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号192)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
e)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
f)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
g)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDX22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号196)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X20はA又はVであり、X21はN又はDであり、X22はY又はFである。
【0044】
[00056]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
f)配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
g)配列番号3の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号4の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
h)配列番号5の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号6の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
i)配列番号7の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号8の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
j)配列番号9の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
k)配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
l)配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
m)配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
n)配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
o)配列番号159の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号160の配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0045】
[00057]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメインはクローディン18.2結合ドメインを含む。
[00058]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、
p)配列番号77の配列を含むHCDR1、配列番号78の配列を含むHCDR2、及び配列番号79の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号80の配列を含むLCDR1、配列番号81の配列を含むLCDR2、及び配列番号82若しくは配列番号225の配列を含むLCDR3、或いは
q)配列番号83の配列を含むHCDR1、配列番号84の配列を含むHCDR2、及び配列番号85の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号86の配列を含むLCDR1、配列番号87の配列を含むLCDR2、及び配列番号88の配列を含むLCDR3、或いは
r)配列番号89の配列を含むHCDR1、配列番号90の配列を含むHCDR2、及び配列番号91の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号92の配列を含むLCDR1、配列番号93の配列を含むLCDR2、及び配列番号94の配列を含むLCDR3、或いは
s)配列番号95の配列を含むHCDR1、配列番号96の配列を含むHCDR2、及び配列番号97の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号98の配列を含むLCDR1、配列番号99の配列を含むLCDR2、及び配列番号100の配列を含むLCDR3、或いは
t)配列番号101の配列を含むHCDR1、配列番号102の配列を含むHCDR2、及び配列番号103の配列を含むHCDR3;並びに/又は配列番号104の配列を含むLCDR1、配列番号105の配列を含むLCDR2、及び配列番号106の配列を含むLCDR3
を含む。
【0046】
[00059]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、hu26.H1L1、hu26.H1L2(S92A)、hu28.H1L2、C10、C29、及びC30からなる群から選択される抗クローディン18.2抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
u)hu26.H1L1は配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
v)hu26.H1L2(S92A)は、配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号224の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
w)hu28.H1L2は、配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
x)C10は、配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
y)C29は、配列番号73の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
z)C30は、配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0047】
[00060]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)及びQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号168)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVX18(配列番号169)及びWVRQAPGQGLEWMG(配列番号170)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAX23(配列番号171)及びRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号172)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)及びDIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号175)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGX26X27PKX19LIY(配列番号176)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEX24TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号178)及びGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYHC(配列番号179)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、並びに
h)LFR4は、FGX25GTKLEIK(配列番号180)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X18はS又はAであり、X19はL又はAであり、X23はT又はKであり、X24はY又はFであり、X25はQ又はGであり、X26はQ又はKであり、X27はP又はAである。
【0048】
[00061]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、
aa)配列番号65若しくは68の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66若しくは67若しくは224の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
bb)配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
cc)配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
dd)配列番号73の配列を含み重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
ee)配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0049】
[00062]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメインはPD-L1結合ドメインを含む。
[00063]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、
ff)配列番号119の配列を含むHCDR1、配列番号120の配列を含むHCDR2、及び配列番号121の配列を含むHCDR3、又は
gg)配列番号122の配列を含むHCDR1、配列番号123の配列を含むHCDR2、及び配列番号124の配列を含むHCDR3、又は
hh)配列番号125の配列を含むHCDR1、配列番号126の配列を含むHCDR2、及び配列番号127の配列を含むHCDR3、又は
ii)配列番号128の配列を含むHCDR1、配列番号129の配列を含むHCDR2、及び配列番号130の配列を含むHCDR3、又は
jj)配列番号131の配列を含むHCDR1、配列番号132の配列を含むHCDR2、及び配列番号133の配列を含むHCDR3、又は
kk)配列番号134の配列を含むHCDR1、配列番号135の配列を含むHCDR2、及び配列番号136の配列を含むHCDR3、又は
ll)配列番号137の配列を含むHCDR1、配列番号138の配列を含むHCDR2、及び配列番号139の配列を含むHCDR3、又は
mm)配列番号140の配列を含むHCDR1、配列番号141の配列を含むHCDR2、及び配列番号142の配列を含むHCDR3、又は
nn)配列番号143の配列を含むHCDR1、配列番号144の配列を含むHCDR2、及び配列番号145の配列を含むHCDR3、又は
oo)配列番号146の配列を含むHCDR1、配列番号147の配列を含むHCDR2、及び配列番号148の配列を含むHCDR3、又は
pp)配列番号149の配列を含むHCDR1、配列番号150の配列を含むHCDR2、及び配列番号151の配列を含むHCDR3、又は
配列番号152の配列を含むHCDR1、配列番号153の配列を含むHCDR2、及び配列番号154の配列を含むHCDR3
を含む。
【0050】
[00064]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、C71、C71v38、C239、C492、C570、570h3、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719からなる群から選択される抗PD-L1抗体と同一のHCDRを含み、
qq)C71は配列番号107の配列を含む重鎖可変領域を含み、
rr)C71v38は配列番号108の配列を含む重鎖可変領域を含み、
ss)C239は配列番号109の配列を含む重鎖可変領域を含み、
tt)C492は配列番号110の配列を含む重鎖可変領域を含み、
uu)C570は配列番号111の配列を含む重鎖可変領域を含み、
vv)570h3は配列番号223の配列を含む重鎖可変領域を含み、
ww)C446は配列番号112の配列を含む重鎖可変領域を含み、
xx)C2811は配列番号113の配列を含む重鎖可変領域を含み、
yy)C1778は配列番号114の配列を含む重鎖可変領域を含み、
zz)C1793は配列番号115の配列を含む重鎖可変領域を含み、
aaa)C2855は配列番号116の配列を含む重鎖可変領域を含み、
bbb)C2713は配列番号117の配列を含む重鎖可変領域を含み、及び
ccc)C2719は配列番号118の配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0051】
[00065]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号107~118、及び223からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。
[00066]ある特定の実施形態では、
ddd)SIRP-アルファ結合ドメインは、ヒトSIRPαに対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含み、及び/又は
eee)クローディン18.2結合ドメインは、クローディン18.2に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含み、及び/又は
fff)PD-L1結合ドメインは、PD-L1に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ若しくは複数のアミノ酸残基の置換若しくは改変を更に含む。
【0052】
[00067]ある特定の実施形態では、置換又は改変の少なくとも1つは、重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域のCDR配列の1つ若しくは複数の中、及び/又は非CDR配列の1つ若しくは複数の中にある。
【0053】
[00068]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子はヒト化されている。
[00069]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、1つ又は複数のコンジュゲート部分とリンクしている。
【0054】
[00070]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、クリアランス修飾剤、化学療法剤、毒素、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、酵素-基質標識、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン結合剤、精製部分、又はその他の抗がん剤を含む。
【0055】
[00071]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子、及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物について提示する。
[00072]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子をコードする単離されたポリヌクレオチドについて提示する。
【0056】
[00073]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される単離されたポリヌクレオチドを含むベクターについて提示する。
[00074]別の態様では、本開示は、本明細書に提示されるベクターを含む宿主細胞について提示する。
【0057】
[00075]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子、及び/又は本明細書に提示される医薬組成物、及び第2の治療剤を含むキットについて提示する。
[00076]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子を発現させる方法であって、本明細書に提示されるベクターが発現される条件下で、本明細書に提示される宿主細胞を培養するステップを含む方法について提示する。
【0058】
[00077]別の態様では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【0059】
[00078]別の態様では、本開示は、対象内の標的抗原に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【0060】
[00079]別の態様では、本開示は、対象内のSIRPαに関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【0061】
[00080]別の態様では、本開示は、対象内のCD47に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【0062】
[00081]ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
[00082]ある特定の実施形態では、対象は、免疫に関連する疾患又は障害、腫瘍及びがん、自己免疫疾患、並びに感染性疾患からなる群から選択される疾患、障害、又は状態を有すると診断を下されたか、或いはそのリスクに晒されている。
【0063】
[00083]ある特定の実施形態では、免疫に関連する疾患又は障害は、全身性エリテマトーデス、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、突発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節障害(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患と関連する孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット症候群、未分化脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、及び若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠状動脈症候群、虚血再潅流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、又は炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される。
【0064】
[00084]ある特定の実施形態では、腫瘍及びがんは、任意選択で非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、ミエローマ、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及びその他の血液悪性腫瘍、例えば古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性及び陰性PTLD、及びEBV関連のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫等、鼻咽頭癌、及びHHV8関連の原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、例えば原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫等、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝臓及び胆管のがん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、睾丸がん、腎がん、腎盂及び尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸部がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸がん、皮膚がん、前立腺がん、脳下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽頭がん、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、テラトーマ、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T又はB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞癌、及び腺癌、又はそれらの転移からなる群から選択される固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
【0065】
[00085]ある特定の実施形態では、投与は、口腔、鼻腔、静脈内、皮下、舌下、又は筋肉内投与を経由する。
[00086]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法は、第2の治療剤の治療有効量を投与するステップを更に含む。
【0066】
[00087]ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、化学療法剤、抗がん薬、放射線療法剤、免疫療法剤、抗血管新生剤、標的療法剤、細胞療法剤、遺伝子療法剤、ホルモン療法剤、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛薬、酸化防止剤、金属キレート剤、及びサイトカインからなる群から選択される。
【0067】
[00088]別の態様では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置、予防、又は緩和するための医薬の製造における、本明細書に提示される多重特異性分子、及び/又は本明細書に提示される医薬組成物の使用について提示する。
【0068】
[00089]別の態様では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法であって、対象に対して、標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するのに有効な用量で、本明細書に提示される多重特異性分子及び/又は本明細書に提示される医薬組成物を投与するステップを含む方法について提示する。
【0069】
[00090]ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
[00091]ある特定の実施形態では、対象は、免疫に関連する疾患又は障害、腫瘍及びがん、自己免疫疾患、並びに感染性疾患からなる群から選択される疾患、障害、又は状態を有すると診断を下されたか、或いはそのリスクに晒されている。
【0070】
[00092]別の態様では、本開示は、標的細胞のファゴサイトーシスをin vitroで誘発する方法であって、標的細胞を、本明細書に提示される多重特異性分子、及び/又は本明細書に提示される医薬組成物の存在下で、SIRPα陽性貪食性細胞サンプルと接触させ、これによりSIRPα陽性貪食性細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するステップを含む方法について提示する。
【0071】
[00093]ある特定の実施形態では、標的細胞は標的抗原を発現する細胞である。
[00094]別の態様では、本開示は、ファゴサイトーシスにより標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞の除去を誘発する方法であって、標的細胞を、貪食性免疫細胞の存在下で、本明細書に提示される多重特異性分子と接触させるステップを含む方法について提示する。
【0072】
[00095]別の態様では、本開示は、対象内で標的抗原を発現しない細胞よりも、標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞に対して、貪食効果を選択的に誘発する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【0073】
[00096]別の態様では、本開示は、腫瘍微小環境内のM1マクロファージのレベルを増加させることを必要とする対象において、それを増加させる方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】[00097]腫瘍関連の抗原(TAA)を発現するがん細胞に対してマクロファージファゴサイトーシス活性を増強する二重特異性マクロファージエンゲイジャー(BiME)抗体の概略図を示す図である。
【
図2A】[00098]軽鎖(LC)のC末端において2つの抗SIRPα scFvと融合した、クローディン18.2を標的とする抗体を含む、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性分子(ES028-001)の概略図を示す図である。
【
図2B】[00099]重鎖(HC)のC末端において2つの抗SIRPα scFvと融合した、クローディン18.2を標的とする抗体を含む、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性分子(ES028-005)の概略図を示す図である。
【
図2C】[000100]軽鎖(LC)のC末端において2つの抗クローディン18.2scFvと融合したSIRPαを標的とする抗体を含む、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性分子(ES028-009)の概略図を示す図である。
【
図2D】[000101]重鎖(LC)のC末端において2つの抗クローディン18.2scFvと融合したSIRPαを標的とする抗体を含む、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性分子(ES028-013)の概略図を示す図である。
【
図3A】[000102]代表的な二重特異性抗体は、FACS検出によりRaji/hクローディン18.2細胞と結合することができたことを示す図である。抗クローディン18.2抗体をコントロールとして使用した。
【
図3B】[000103]代表的な二重特異性抗体は、FACS検出によりCHO-K1/SIRPα細胞と結合することができたことを示す図である。抗SIRPα抗体をコントロールとして使用した。
【
図4A】[000104]抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、MC38/hCD47/hクローディン18.2細胞に対して、単一又は併用処置よりも良好にマウスBMDMファゴサイトーシスを刺激することを示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図4B】[000105]抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、Cluadin18.2を発現しないMC38/hCD47細胞に対して、マウスBMDMファゴサイトーシスを刺激しないことを示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図5】[000106]いくつかの抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体アイソタイプについて、MC38/hCD47/hクローディン18.2細胞に対するマウスBMDMファゴサイトーシスの比較を示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図6A】[000107]軽鎖(LC)のC末端において2つの抗PDL1 sdAbと融合した、SIRPαを標的とする1つの抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-020)の概略図を示す図である。
【
図6B】[000108]重鎖(HC)のC末端において2つの抗PDL1 sdAbと融合した、SIRPαを標的とする1つの抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-024)の概略図を示す図である。
【
図6C】[000109]重鎖(HC)のN末端において2つの抗PDL1 sdAbと融合した、SIRPαを標的とする1つの抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-025)の概略図を示す図である。
【
図6D】[000110]軽鎖(LC)のN末端において2つの抗PDL1 sdAbと融合した、SIRPαを標的とする1つの抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-026)の概略図を示す図である。
【
図6E】[000111]SIRPαを標的とする一方のFabアームと2つの抗PDL1 sdAbを含有する他方のアームとを有する1つの非対称抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-029)の概略図を示す図であり、ヘテロ二量体は、Fc領域内のノブ-インホール(knob-in hole)突然変異により連結されている。
【
図6F】[000112]2つの抗PDL1 sdAbがFcのN末端に融合し、及び1つの抗SIRPαFabがFcのC末端に融合した、1つ非対称の抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-072)の概略図を示す図であり、ヘテロ二量体はFc領域内のノブ-インホール突然変異により連結されている。
【
図6G】[000113]2つの抗PDL1 sdAbがFcのN末端に融合し、及び2つの抗SIRPα FabがFcのC末端に融合した、1つの非対称抗体を含む、抗PDL1/SIRPα二重特異性分子(ES019-073又はES019-079)の概略図を示す図である。
【
図7A】[000114]代表的な二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、及びES019-026は、FACS検出により、Raji/hPDL1細胞と結合することができたことを示す図である。抗PDL1抗体をコントロールとして使用した。
【
図7B】[000115]代表的な二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、及びES019-026は、FACS検出により、CHO-K1/SIRPα細胞と結合することができたことを示す図である。抗SIRPα抗体をコントロールとして使用した。
【
図8】[000116]代表的な二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、及びES019-026は、Jurat/PD1レポーター細胞アッセイによりジャーカットT細胞を活性化させることができたことを示す図である。抗PDL1抗体をコントロールとして使用した。
【
図9A】[000117]抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、ES019-026、及びES019-029は、単一処置よりも良好に又は併用処置と類似して、K562/hPDL1細胞に対するヒト単球由来マクロファージのファゴサイトーシスを刺激することを示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図9B】[000118]抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、単一又は併用処置と類似して、K562(PDL1陰性)細胞に対するヒト単球由来マクロファージのファゴサイトーシスを刺激しないことを示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図9C】[000119]抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、単一又は併用処置と類似して、ジャーカット細胞(SIRPγ陽性)に対するヒト単球由来マクロファージのファゴサイトーシスを刺激しないことを示す図である。抗CD47抗体をコントロールとして使用する。
【
図10】[000120]MC38/hクローディン18.2/hSIRPαシンジェニックモデルにおけるES028BiME(例えば、ES028-001、ES028-005、及びES028-009)のin vivo抗腫瘍効力を示す図である。
【
図11A】[000121]異なるSIRPα抗体に基づく組合せ又はSIRPα二重特異性抗体は、Raji/hPDL1細胞に対するファゴサイトーシスを誘発したこと示す図である。
【
図11B】[000122]異なるSIRPα抗体に基づく組合せ又はPDL1/SIRPα二重特異性抗体は、Raji(PDL1陰性)細胞に対するファゴサイトーシスを誘発したことを示す図である。
【
図12】[000123]CHOK1-hSIRPα v1及びCHOK1-hSIRPα v2に対する、キメラ抗体C15、C25、C42、C59、C73、及びhu1H9G4の結合親和性を示す図である。
【
図13】[000124]キメラ抗体C15、C25、C42、C59、C73、及びhu1H9G4毎に、ヒトCD47/SIRPα v1相互作用及びヒトCD47/SIRPαv2相互作用のIC50値及びブロッキング率(%)を示す図である。
【
図14】[000125]キメラ抗体C15、C25、C42、C59、C73、及びhu1H9G4毎に、SHP-1導入のIC50値及びブロッキング率(%)を示す図である。
【
図15】[000126]CHOK1-hSIRPα v1及びCHOK1-hSIRPαv2に対する、ヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、及びhu025.060、並びにC25の結合親和性を示す図である。
【
図16】[000127]ヒトSIRPα v1及びヒトSIRPα v2に対する、ヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、及びhu025.060、並びにC25の結合動態を示す図である。
【
図17】[000128]競合ELISAアッセイにより測定した場合の、ヒトCD47/SIRPα v1相互作用及びヒトCD47/SIRPα v2相互作用のIC50値及びブロッキング率(%)を、ヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、及びhu025.060、並びにC25毎に示す図である。
【
図18】[000129]競合FACSアッセイにより測定した場合の、ヒトCD47/SIRPα v1相互作用及びヒトCD47/SIRPα v2相互作用のIC50値及びブロッキング率(%)を、ヒト化抗体hu025.023、hu025.060、及びC25毎に示す図である。
【
図19】[000130]ヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、及びhu025.060、並びにC25毎に、SHP-1導入のIC50値及びブロッキング率(%)を示す図である。
【
図20A】[000131]抗SIRPα抗体025c、015c、042c、059c、若しくは073c単独又はリツキシマブとの併用の存在下での、hSIRPα v1/v2を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図20B】[000132]抗SIRPα抗体025c若しくは042c単独又は濃度の異なる抗PD-L1抗体との併用の存在下での、hSIRPα v1/v1を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図20C】[000133]抗SIRPα抗体025c、042c、若しくは073c単独又は濃度の異なる抗PD-L1抗体との併用の存在下での、hSIRPα v2/v2を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図21A】[000134]抗SIRPα抗体025c、hu025.023、若しくはhu025.060単独又は濃度の異なる抗PD-L1抗体との併用の存在下での、hSIRPα v1/v1を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図21B】[000135]抗SIRPα抗体025c、hu025.023、若しくはhu025.060単独又は濃度の異なるリツキシマブとの併用の存在下での、hSIRPα v1/v1を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図21C】[000136]抗SIRPα抗体025c、hu025.023、若しくはhu025.060単独又は濃度の異なる抗PD-L1抗体との併用の存在下での、hSIRPα v2/v2を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図21D】[000137]抗SIRPα抗体025c、hu025.023、若しくはhu025.060単独又は濃度の異なるリツキシマブとの併用の存在下での、hSIRPα v2/v2を発現するヒトマクロファージによるRaji細胞の貪食指数を示す図である。
【
図22】[000138]SIRPαとCD47との相互作用のブロッキングについて、濃度の異なる抗SIRPα抗体035、050、及び025のブロッキング率(%)(%ブロッキング)を示す図である。
【
図23A】[000139]HDX-MSにより測定した場合の、抗SIRPα抗体025c(
図23A)、042c(
図23B)、073c(
図23C)、hu1H9G4(
図23D)、HEFLB(
図23E)のエピトープについて、その結合可能性を示す図である。すべての抗体は、S228P突然変異を有するヒトIgG4キメラ抗体である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
[000140]本開示の下記の説明は、本開示の様々な実施形態を例証するように意図されているに過ぎない。したがって、議論される特別な改変は、本開示の範囲に対する制限として解釈されないものとする。本開示の範囲から逸脱せずに、様々な等価形態、変化形態、及び改変形態を生み出すことができることは当業者にとって明白であり、そしてそのような等価な実施形態は、本明細書に含まれるものと理解されよう。公開資料、特許、及び特許出願を含む、本明細書で引用されたすべての参考資料は、本明細書において参照によりそのまま組み込まれる。
【0076】
[000141]定義
[000142]用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、2価抗体、1価抗体、単一ドメイン抗体、多重特異性抗体、又は特定の抗原と結合する二重特異性抗体を含む。天然無変のIgG抗体は2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)を含む。哺乳動物の重鎖は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューとして分類され、各重鎖は可変領域(VH)並びに、第1、第2、及び第3の定常領域(それぞれ、CH1、CH2、CH3)から構成され、哺乳動物の軽鎖はλ又はκとして分類される一方、各軽鎖は可変領域(VL)及び定常領域から構成される。抗体は「Y字」形状を有し、Y字の幹の部分は、ジスルフィド結合を介して共に結合した2本の重鎖の第2及び第3の定常領域から構成される。Y字の各腕の部分は、一本鎖軽鎖の可変及び定常領域に結合した一本鎖重鎖の可変領域及び第1の定常領域を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は抗原結合に関与する。両鎖内の可変領域は、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖CDRと、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖CDR)と呼ばれる3つの高度に可変のループを一般的に含有する。本明細書で開示される抗体及び抗原結合ドメインに関するCDRの境界は、Kabat、IMGT、AbM、Chothia、又はAl-Lazikaniの規則より定義又は特定され得る(Al-Lazikani,B.,Chothia,C.,Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,273(4),927(1997);Chothia,C.et al.,JMol Biol.Dec 5;186(3):651-63(1985);Chothia,C.and Lesk,A.M.,J.Mol.Biol.,196,901(1987);N.R.Whitelegg et al,Protein Engineering,v13(12),819-824(2000);Chothia,C.et al.,Nature.Dec 21-28;342(6252):877-83(1989);Kabat E.A.et al.,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Marie-Paule Lefranc et al,Developmental and Comparative Immunology,27:55-77(2003);Marie-Paule Lefranc et al,Immunome Research,1(3),(2005);Marie-Paule Lefranc,Molecular Biology of B cells(second edition),chapter 26,481-514,(2015))。3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知られるフランキングストレッチ間に挿入され、FRはCDRよりも高度に保存され、また高度可変ループを支持するスキャフォールドを形成する。重鎖及び軽鎖の定常領域は抗原結合に関与ないが、しかし様々なエフェクター機能を示す。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づき、いくつかのクラスに割り振られる。抗体の5つの主要なクラス又はアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミュー重鎖の存在によりそれぞれ特徴付けられる。主要な抗体クラスのいくつかは、サブクラス、例えばIgG1(ガンマ1重鎖)、IgG2(ガンマ2重鎖)、IgG3(ガンマ3重鎖)、IgG4(ガンマ4重鎖)、IgA1(アルファ1重鎖)、又はIgA2(アルファ2重鎖)等に分割される。
【0077】
[000143]用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、単一ドメイン抗体、例えば重鎖抗体等も包含し得る。「重鎖抗体」又は「HCAb」とは、2つのVHドメインを備え、軽鎖を有さない抗体を指す(Riechmann L.andMuyldermans S.,J Immunol Methods.Dec 10;231(1-2):25-38(1999);Muyldermans S.,J Biotechnol.Jun;74(4):277-302(2001);国際公開第94/04678号;同第94/25591号;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体は、そもそもラクダ類(ラクダ、ヒトコブラクダ、及びラマ)に由来する。軽鎖を欠損しているものの、ラクダ化抗体は真正な抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.et al.,Nature.Jun 3;363(6428):446-8(1993);Nguyen VK.et al.“Heavy-chain antibodies in Camelidae;a case of evolutionary innovation,”Immunogenetics.Apr;54(1):39-47(2002);Nguyen VK.et al.Immunology.May;109(1):93-101(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応性免疫応答により生成される最小で公知の抗原結合ユニットを代表する(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.Nov;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun 15(2007))。
【0078】
[000144]用語「抗原結合ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、1つ又は複数のCDR又は任意のその他の抗体断片(抗原と結合するが、しかし無変天然の抗体構造を含まない)を含む抗体の一部分から形成された抗体断片を指す。抗原結合ドメインの例として、非限定的に、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(2価のダイアボディ)、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、及び2価ドメイン抗体が挙げられる。抗原結合ドメインは、親抗体が結合する抗原と同一の抗原に結合する能力を有する。ある特定の実施形態では、抗原結合ドメインは、1つ又は複数の異なるヒト抗体から得られたフレームワーク領域にグラフト化された特定のヒト抗体に由来する1つ又は複数のCDRを含み得る。抗原結合ドメインのより多くの詳細なフォーマットについては、Spiess et al,2015(前出)、及びBrinkman et al.,mAbs,9(2),pp.182-212(2017)に記載されており、それらは全体参照として本明細書において組み込まれる。
【0079】
[000145]本明細書で使用される場合、用語「ファゴサイトーシス」とは、原形質膜エンベロープ内での粒子状物質(>0.5Dm)の細胞内取り込みプロセスを指す。ファゴサイトーシスは、異なるバリアント、例えばアポトーシス細胞の取り込みと関係するエフェロサイトーシス、感染症及び炎症に起因する壊死性細胞の取り込みと関係するネクロトーシス及びピロトーシス、並びに外因性粒子の取り込みと関係する異食作用等を含む。
【0080】
[000146]「抗原」とは、本明細書で使用される場合、細胞培養物又は動物において、抗体の産生又は免疫細胞(例えば、T細胞又は骨髄細胞)応答を刺激することができる化合物、組成物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は物質を指し、細胞培養物(例えば、ハイブリドーマ等)に添加されるか、又は動物内に注射若しくは吸収されるか、又は細胞表面上で発現される組成物(例えば、がん特異的タンパク質を含むもの等)を含む。抗原は、特異的体液性又は細胞性免疫の生成物(例えば、抗体等)と反応する。
【0081】
[000147]「Fab」とは、抗体に関する場合、ジスルフィド結合によって一本鎖重鎖の可変領域及び第1の定常領域に結合した一本鎖軽鎖(可変領域及び定常領域の両方)から構成される抗体の部分を指す。「F(ab)2」とは、Fabのダイマーを指す。
【0082】
[000148]「Fab’」とは、ヒンジ領域の部分を含むFab断片を指す。
[000149]「F(ab’)2」とは、Fab’のダイマーを指す。
[000150]抗体に関して「フラグメントディフィカルト(fragment difficult)(Fd)」とは、軽鎖と組み合わされてFabを形成することができる重鎖断片のアミノ末端の半分を指す。例えば、Fd断片はVH及びCH1ドメインから構成され得る。
【0083】
[000151]抗体に関して「Fv」とは、完全な抗原結合部位を担持する抗体の最小断片を指す。Fv断片は、一本鎖重鎖の可変領域に結合した一本鎖軽鎖の可変領域から構成される。2ドメイン間の会合が導入されたジスルフィド結合により強化されたdsFvsを含む、いくつかのFvデザインが提供されているが、またscFvsは、2つのドメインを単一のポリペプチドとして共に結合するペプチドリンカーを使用して形成され得る。対応する免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の可変及び定常ドメインと関連する、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の可変ドメインを含有するFvsコンストラクトも生成された。Fvsもダイアボディ及びトリアボディを形成するために多量体化された(Maynard et al.,Annu Rev Biomed Eng 2 339-376(2000))。
【0084】
[000152]「単鎖Fv抗体」又は「scFv」とは工学操作された抗体を指し、直接又はペプチドリンカー配列を介して相互に結びついた軽鎖可変領域及び重鎖可変領域から構成される(Huston JS et al.Proc Natl Acad Sci USA,85:5879(1988))。ScFvは、多量体構造(二量体:「ダイアボディ」、三量体:「トリアボディ」、四量体:「テトラボディ」)を開発するための基本的モジュールとしての役目を果たし得る。
【0085】
[000153]「ダイアボディ」又は「dAb」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を含み、断片は、同一のポリペプチド鎖内にVLドメインと結びついたVHドメインを含む(VH-VL又はVL-VH)(例えば、Holliger P.et al.,Proc Natl Acad Sci USA.Jul 15;90(14):6444-8(1993);欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号を参照されたい)。同一鎖上の2つのドメイン間で対形成するのを可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成することとなり、これにより2つの抗原結合部位を創出する。抗原結合部位は同一又は異なる抗原(又はエピトープ)を標的とする場合がある。ある特定の実施形態では、「二重特異性dsダイアボディ」は、2つの異なる抗原(又はエピトープ)を標的とするダイアボディである。
【0086】
[000154]「dsFv」とは、一本鎖軽鎖の可変領域と一本鎖重鎖の可変領域との間の結合がジスルフィド結合であるジスルフィド安定化Fv断片を指す。いくつかの実施形態では、「(dsFv)2」又は「(dsFv-dsFv’)」は、ペプチドリンカー(例えば、長い可撓性リンカー)によりにリンクした2つのVH部分が、ジスルフィド架橋を介して2つのVL部分にそれぞれ結合した3つのペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、dsFv-dsFv’は、各ジスルフィドによりペア化した重鎖及び軽鎖が異なる抗原特異性を有し、二重特異性である。
【0087】
[000155]用語「価」とは、本明細書で使用される場合、所与の分子内の特定された数の抗原結合部位の存在を指す。用語「1価」とは、1つの単一抗原結合部位のみを有する抗体又は抗原結合断片を指し、及び用語「多価」とは、複数(すなわち、2以上)の抗原結合部位を有する抗体又は抗原結合断片を指す。したがって、用語「2価」、「4価」、及び「6価」は、抗原結合分子内の2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在をそれぞれ表す。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は2価である。
【0088】
[000156]「ナノボディ」とは、重鎖抗体に由来するVHHドメイン、及び2つの定常ドメインCH2及びCH3から構成される抗体断片を指す。
[000157]「ドメイン抗体」又は「単一ドメイン抗体」又は「sdAb」とは、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含有する抗体断片を指す。特定の事例では、2つ以上のVHドメインがペプチドリンカーと共有結合的に結びついて2価又は多価ドメイン抗体を創出する。2価ドメイン抗体の2つのVHドメインは、同一又は異なる抗原を標的とし得る。
【0089】
[000158]抗体に関して「Fc」とは、ジスルフィド結合を介して、第2の重鎖の第2の及び第3の定常領域に結合した第1の重鎖の第2及び第3の定常領域から構成される抗体の部分を指す。抗体のFc部分は、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(CDC)、及びファゴサイトーシス等に関与する。
【0090】
[000159]用語「キメラ」とは、本明細書で使用される場合、1つの種に由来する重鎖及び/又は軽鎖の部分、並びに異なる種に由来する重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分を有する抗体又は抗原結合ドメインを意味する。例証的事例において、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域、及び非ヒト動物由来、例えばマウス由来等の可変領域を含み得る。別の例証的事例において、キメラ抗体は、ヒトに由来するFR領域、及び非ヒト動物由来、例えばマウス由来等のCDR領域を含み得る。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、又はハムスターである。
【0091】
[000160]用語「ヒト化」とは、本明細書で使用される場合、抗体又は抗原結合ドメインが、非ヒト動物に由来するCDR、ヒトに由来するFR領域、及び該当する場合には、ヒトに由来する定常領域を含むことを意味する。
【0092】
[000161]用語「作動可能にリンクしている」又は「作動可能にリンクした」とは、スペーサー又はリンカー又は中間に位置する配列の有無に関わらず、目的とする2つ以上の生物学的配列が、意図された方式でそれらが機能するのを可能にする関係にあるように並列配置されることを指す。ポリペプチドに関して使用されるとき、リンクした生成物が意図された生物学的機能を有するのを可能にする方式でポリペプチド配列がリンクしていることを意味するように意図されている。例えば、抗体可変領域は、抗原結合活性を有する安定な生成物を提供するために、定常領域と作動可能にリンクし得る。別の例では、抗原結合ドメインは、別の抗原結合ドメインと、それらの中間に位置する配列によって作動可能にリンクし得るが、そのような中間に位置する配列はスペーサーあり得るか、又はかなり長めの配列、例えば抗体の定常領域等を含み得る。該用語はポリヌクレオチドに関しても使用され得る。1つの事例では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー配列等)と作動可能にリンクしているとき、ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチドからのポリペプチドの制御された発現を可能にするようにリンクされることを意味するように意図される。
【0093】
[000162]用語「融合」又は「融合した」とは、アミノ酸配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質)に関して使用されるとき、例えば化学結合又は組換え手段により、2つ以上のアミノ酸配列を組み合わせて一本のアミノ酸配列にすることを指す。融合アミノ酸配列は、2つのコーディングポリヌクレオチド配列の遺伝的組換えにより生成され得るが、また組換えポリヌクレオチドを含有するコンストラクトを宿主細胞内に導入する方法により発現可能である。
【0094】
[000163]「SIRPα」は、「SIRPアルファ」又は「SIRP-アルファ」と交換可能に使用され、本明細書で使用される場合、骨髄細胞(例えば、マクロファージ、果粒球、骨髄樹状細胞、マスト細胞、及びその前駆体、例えば造血幹細胞(HSC)等)、樹状細胞により主に発現され、並びに幹細胞又はニューロンによっても発現されるシグナル調節タンパク質(SIRP)ファミリーに由来する制御性膜糖タンパク質を指す。SIRPαの構造は細胞外ドメイン及び細胞質ドメインを含む。SIRPαの細胞外ドメインは、膜遠位Ig可変様(IgV)フォールド、及び2つの膜近位Ig定常様(IgC)フォールドから構成される。SIRPαのIgVドメインは、CD47の細胞外Igドメインの結合に関与する。ある特定の実施形態では、SIRPαはヒトSIRPαである。ヒトSIRPαをコードする遺伝子は多型性遺伝子であり、またいくつかのバリアントがヒト集団において記載された。最も一般的なタンパク質バリアントはSIRPα v1及びSIRPα v2である(受託番号NP_542970(P78324)及びCAA71403)。SIRPαは、本明細書で使用される場合、その他の動物種由来、例えばとりわけマウス及びカニクイザル由来等であり得る。Mus Musculus(マウス)SIRPαタンパク質の例示的配列は、NCBI Ref Seq No.NP_031573、又はBAA20376.1、又はBAA13521.1に開示されている。Cynomolgus(サル)SIRPαタンパク質の例示的配列は、NCBI Ref Seq No.NP_001271679に開示されている。
【0095】
[000164]「PD-L1」とは、本明細書で使用される場合、プログラム細胞死リガンド1を指す(PD-L1、例えば、Freeman et al.(2000)J.Exp.Med.192:1027を参照されたい)。ヒトPD-L1の代表的なアミノ酸配列が、NCBI受託番号:NP_054862.1として開示され、またヒトPD-L1をコードする代表的な核酸配列が、NCBI受託番号:NM_014143.3として示される。PD-L1は、胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺、心臓、胎児肝臓において発現され、また多くの腫瘍又はがん細胞上にも見出される。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞、及び骨髄細胞上で発現されるその受容体PD-1又はB7-1と結合する。PD-L1とその受容体とが結合すると、シグナル伝達を誘発し、サイトカイン産生及びT細胞増殖のTCR媒介式の活性化を抑制する。したがって、PD-L1は、特定の事象、例えば妊娠、自己免疫疾患、組織同種異系移植等の期間中に免疫系を抑制する際に重要な役割を演じており、また腫瘍又はがん細胞が免疫チェックポイントを迂回し、また免疫応答を回避するのを可能にすると考えられている。
【0096】
[000165]「CLDN18」は、本明細書で使用される場合、クローディン18を指し、また任意のそのバリアントを含む(CLDN18.1及びCLDN18.2、細胞により天然に発現されるか又はCLDN18遺伝子をトランスフェクトされた細胞により発現される、CLDN18のコンフォメーション、アイソフォーム、及び種間相同体を含む)。ある特定の実施形態では、CLDN18はヒトCLDN18である。CLDN18は、本明細書で使用される場合、その他の動物種由来、例えばとりわけヒト、マウス、及びカニクイザル由来等であり得る。用語「CLDN18」、「CLDN-18」、「CLDN 18」、「クローディン18」、「クローディン-18」、又は「クローディン18」は、本開示において交換可能に使用され得る。別途規定されない限り、本明細書で使用されるCLDN18とは、CLDN18タンパク質を指す。
【0097】
[000166]「CLDN18.1」は、CLDN18のスプライスバリアントであり、そして細胞により天然に発現されるか又はCLDN18.1遺伝子をトランスフェクトされた細胞上で発現される、CLDN18.1の翻訳後修飾されたバリアント、アイソフォーム、及び種間相同体を含む。用語「CLDN18.1」、「CLDN-18.1」、「CLDN 18.1」、「クローディン18.1」、「クローディン-18.1」、又は「クローディン18.1」は、本開示において交換可能に使用され得る。別途規定されない限り、本明細書で使用されるCLDN18.1とは、CLDN18.1タンパク質を指す。ヒトCLDN18.1タンパク質の例示的配列は、NCBI Ref Seq No.NP_057453.1に開示されている。
【0098】
[000167]「CLDN18.2」はCLDN18のスプライスバリアントであり、そして細胞により天然に発現されるか又はCLDN18.2遺伝子をトランスフェクトされた細胞上で発現される、CLDN18.2の翻訳後修飾されたバリアント、アイソフォーム、及び種間相同体を含む。用語「CLDN18.2」、「CLDN-18.2」、「CLDN 18.2」、「クローディン18.2」、「クローディン-18.2」、又は「クローディン18.2」は、本開示において交換可能に使用され得る。別途規定されない限り、本明細書で使用されるCLDN18.2とは、CLDN18.2タンパク質を指す。ヒトCLDN18.2タンパク質の例示的配列は、NCBI Ref Seq No.NP_001002026.1に開示されている。
【0099】
[000168]用語「特異的結合」又は「~に特異的に結合する」とは、本明細書で使用される場合、2つの分子間、例えば抗体又はその抗原結合ドメインと抗原との間等の非ランダム結合反応を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される抗体分子又は抗原結合ドメインは、≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦4×10-9M)の結合親和性(KD)を有しながら、ヒトSIRPα、ヒトクローディン18.2、及び/又はヒトPD-L1に特異的に結合する。本明細書で使用されるKDとは、会合速度に対する解離速度の比(koff/kon)を指し、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケールサーモフォレシス法、HPLC-MS法、及びフローサイトメトリー(例えば、FACS等)法を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の任意の従来法を使用することにより決定され得る。ある特定の実施形態では、KD値は、フローサイトメトリーを使用することにより適切に決定され得る。
【0100】
[000169]用語「エピトープ」とは、本明細書で使用される場合、抗体が結合する抗原上の特定の原子又はアミノ酸の群を指す。エピトープは、連続アミノ酸(線形又は連続性エピトープとも呼ばれる)、又はタンパク質の三次フォールディングにより並置された不連続アミノ酸(コンフィギュレーション又はコンフォメーショナルエピトープとも呼ばれる)の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、タンパク質上の一次アミノ酸残基に沿って一般的に直線的に配置構成され、そして連続するアミノ酸の小さなセグメントは、主要組織適合複合体(MHC)分子により抗原結合部から消化され得るか又は変性溶媒に曝露されても保持される一方、三次フォールディングにより形成されたエピトープは、変性溶媒を用いて処理すると一般的に失われる。エピトープは、一般的に少なくとも3個、そしてより通例では少なくとも5個、約7個、又は約8~10個のアミノ酸を、固有の空間的コンフォメーションにおいて含む。2つの抗体がある抗原に対して競合的結合性を示す場合には、それらは当該抗原内の同一のエピトープ、又は密接に関連するエピトープに結合することができる。例えば、抗体又は抗原結合ドメインが抗原に対する参照抗体の結合を少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%ブロックする場合には、抗体又は抗原結合ドメインは、参照抗体と同一のエピトープ/密接に関連するエピトープに結合すると考えられ得る。
【0101】
[000170]用語「アミノ酸」とは、本明細書で使用される場合、各アミノ酸に固有の側鎖と共に、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)官能基を備える有機化合物を指す。本開示においては、アミノ酸の名称は、標準的な1文字又は3文字コードとしても表され、以下のように要約する。
【0102】
【0103】
[000171]「保存的置換」とは、アミノ酸配列と関連する場合、アミノ酸残基を、類似した物理化学特性を有する側鎖を有する異なるアミノ酸残基と置換することを指す。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖(例えば、Met、Ala、Val、Leu、及びIle)を有するアミノ酸残基の間、中性の親水性側鎖(例えば、Cys、Ser、Thr、Asn、及びGln)を有する残基の間、酸性側鎖を有する残基(例えば、Asp、Glu)の間、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Lys、及びArg)の間、又は芳香族側鎖を有する残基(例えば、Trp、Tyr、及びPhe)の間で生じ得る。当技術分野において公知なように、保存的置換は、タンパク質のコンフォメーション構造に有意な変化を通常引き起こさず、したがってタンパク質の生物学的活性を保持し得る。
【0104】
[000172]用語「相同体」及び「相同的」は、本明細書で使用される場合、交換可能であり、そして最適にアライメントされたとき、別の配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(若しくはその相補鎖)又はアミノ酸配列を指す。
【0105】
[000173]「パーセント(%)配列同一性」は、アミノ酸配列(又は核酸配列)に関する場合、配列のアライメントを実施し、そして最大数の同一アミノ酸(又は核酸)を実現するために、必要な場合にはギャップを導入した後、参照配列内のアミノ酸(又は核酸)残基と同一である候補配列内のアミノ酸(又は核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基とみなされる場合もあれば、またみなされない場合もある。アミノ酸(又は核酸)配列同一性のパーセントの決定を目的とするアライメントは、例えば公的に利用可能なツール、例えばBLASTN、BLASTp(米国国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイト上で利用可能、Altschul S.F.et al,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990);Stephen F.et al,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997)も参照)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所のウェブサイト上で利用可能、Higgins D.G.et al,Methods in Enzymology,266:383-402(1996);Larkin M.A.et al,Bioinformatics(Oxford,England),23(21):2947-8 (2007)も参照)、及びALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等を使用して実現可能である。当業者はツールにより提供されるデフォルトパラメーターを使用してもよく、また例えば適するアルゴリズムを選択することなどによって、アライメントするためのパラメーターを適宜カスタマイズすることができる。
【0106】
[000174]本明細書で使用される場合、用語「骨髄細胞」とは、血液、骨髄、身体のその他の造血又はその他の非造血コンパートメント中に見出される正常又は新生細胞を指す。特に、用語「骨髄細胞」は、単球(マクロファージ及び樹状細胞を誘発する)、多形核好中球、好酸球、好塩基球、及びマスト細胞、並びに単球/マクロファージ系統、及び異なる樹状細胞系統を含む、骨髄に由来する細胞系列を意味するのに、本明細書において使用される。該用語は、その分化のすべての段階において見出される骨髄細胞系列の細胞を指し、したがって、造血芽細胞、すなわち骨髄細胞系列に決定づけられているが、しかしまだ分化の初期段階にある造血細胞を含む。例として、特に骨髄芽球が挙げられる。用語「骨髄細胞」は、骨髄前駆細胞、すなわち、骨髄単球前駆細胞、前赤芽球、又は未成熟の核芽球等の細胞に分化する能力を有する、例えば骨髄内の細胞系列も含む。状態「を処置すること」又はその「処置」は、本明細書で使用される場合、状態を予防若しくは緩和すること、状態の発現若しくは状態の発症速度を低速化させること、状態を発症するリスクを低下させること、状態と関連する症状の発症を予防若しくは遅延させること、状態と関連する症状を低下若しくは終焉させること、状態の完全若しくは部分的退化を創出すること、状態を治癒させること、又はそのいくつかの組合せを含む。
【0107】
[000175]用語「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」とは、本明細書で使用される場合、疾患又は障害の診断、予測、良化、予防、及び/又は処置を必要とする、哺乳動物又は霊長類を含むヒト又は非ヒト動物を指す。哺乳動物対象として、ヒト、飼育動物、家畜、及び動物園動物、競技動物、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ブタ、ウシ、クマ等が挙げられる。
【0108】
[000176]用語「ベクター」とは、本明細書で使用される場合、ある媒体を指し、その中に、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが当該タンパク質の発現を引き起こすために作動可能に挿入され得る。ベクターは、宿主細胞を変換し、それに形質導入されるか、又はトランスフェクトするのに使用され得、宿主細胞内でそれが担持する遺伝要素の発現を引き起こす。ベクターの例として、プラスミド、ファージミド、コスミド、及び人工染色体、例えば酵母菌人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来の人工染色体(PAC)等、バクテリオファージ、例えばラムダファージ又はM13ファージ等、及び動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用される動物ウイルスの分類は、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例えば、SV40)を含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能なエレメント、及びレポーター遺伝子を含む、発現をコントロールするための様々なエレメントを含有し得る。それに加えて、ベクターは複製開始点を含有し得る。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、又はタンパク質コーティングを含むが、これらに限定されない、細胞内へのその進入を補助する物質も含み得る。ベクターは、発現ベクター又はクローニングベクターであり得る。
【0109】
[000177]慣用句「宿主細胞」とは、本明細書で使用される場合、外因性ポリヌクレオチド及び/又はベクターが導入された細胞を指す。
[000178]「がん」は、本明細書において「腫瘍」と交換可能に使用され、悪性細胞増殖又は新生物、異常な増殖、浸潤、又は転移により特徴付けられる任意の医学的状態を指し、また固形腫瘍及び非固形がん(血液悪性腫瘍)、例えば白血病等の両方を含む。本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」とは、新生細胞及び/又は悪性細胞の固体腫瘤を指す。がん又は腫瘍の例として、造血器悪性腫瘍、口腔癌(例えば、口唇、舌、又は咽頭の癌)、消化器官(例えば、食道、胃、小腸、結腸、大腸、又は直腸)、腹膜、肝臓、及び胆汁道、膵臓、呼吸器系、例えば喉頭又は肺(小細胞及び非小細胞)等、骨、結合組織、皮膚(例えば、黒色腫)、乳房、生殖器官(卵管、子宮、子宮頸部、睾丸、卵巣、又は前立腺)、尿道(例えば、膀胱又は腎臓)、脳、及び内分泌腺、例えば甲状腺等が挙げられる。ある特定の実施形態では、がんは、卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、腎臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、及び結腸直腸がんから選択される。ある特定の実施形態では、がんは、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及びB細胞リンパ腫から選択される。
【0110】
[000179]用語「薬学的に許容される」とは、指定された担体、媒体、稀釈剤、賦形剤(複数可)、及び/又は塩が、一般的に、製剤を含むその他成分と化学的及び/又は物理的に適合すること、並びにそのレシピエントと生理学的に適合することを表す。
【0111】
[000180]A.多重特異性分子
[000181]1つの態様では、本開示は、SIRP-アルファ結合ドメイン、活性化受容体結合ドメイン、及び標的抗原結合ドメインを含む多重特異性分子について提示する。本明細書に提示される多重特異性分子は、1)活性化受容体(例えば、貪食性細胞上で発現されるFcγR)、2)標的細胞上で発現される標的抗原、及び3)免疫エフェクター細胞(例えば、貪食性細胞、例えば単球又はマクロファージ等)上で発現されるSIRPアルファと結合することができるように構成される。標的抗原は、例えば、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、又は感染性微生物の抗原であり得る。
【0112】
[000182]いかなる理論にも拘泥するつもりもないが、SIRP-アルファ結合ドメイン及び活性化受容体結合ドメインは、免疫エフェクター細胞(例えば、貪食性細胞)上のSIRP-アルファ及び活性化受容体と架橋し、次に標的細胞上での標的抗原結合ドメインと標的抗原との間の相互作用を介して標的細胞と架橋することにより、複数の活性化シグナルに関与し、そしてそれを提供し得るものと考えられている。そのような設計は、免疫エフェクター細胞が活性化し、そして活性化した免疫エフェクター細胞が標的微環境に関与し、それに導入されるのを可能にし、標的細胞(例えば、がん細胞、感染細胞、又は損傷を受けた細胞若しくは疾患細胞)のファゴサイトーシス及び殺滅を惹起する。したがって、本開示の多重特異性分子は、多重特異性マクロファージエンゲイジャーとも呼ばれる。本明細書に提示されるエンゲイジャーは、特に、望まれない細胞(例えば、がん細胞等)を選択的に除去する際に有利である一方、正常細胞は、CD47を発現する細胞であっても、マクロファージのファゴサイトーシスによる標的の対象にはならない。したがって、本明細書に提示される多重特異性分子は、正常細胞から異常な細胞を除去する際に高度の選択性を示し、したがって例えばがん処置において、それが有する副作用が抑えられ、毒性はより低く、及び安全性も高い。
【0113】
[000183]いかなる理論にも拘泥するつもりもないが、がん処置において、SIRP-アルファ及び/又は活性化受容体(例えば、FcγR)が活性化することで、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を腫瘍亢進状態から抗腫瘍状態にリダイレクトする。したがって、本明細書に提示される多重特異性分子又はエンゲイジャーの設計は、腫瘍微環境内にこれまでに存在し、及び/又は新規に導入された腫瘍関連マクロファージ(TAM)のリダイレクトも可能にし、がん殺滅を増強する。換言すれば、本明細書に提示される多重特異性分子/多重特異性マクロファージエンゲイジャーは、免疫抑制性のマクロファージ及びTAMとなるのではなく、がん細胞を効果的且つ特異的に殺滅することができる単球又はマクロファージを促進するか又はそれを維持することができる。したがって、本開示は、TAMを抗腫瘍マクロファージにリダイレクトしてがん細胞のファゴサイトーシスを増強する方法についても提示する。
【0114】
[000184]がん内には、免疫抑制的環境の確立に寄与する腫瘍微小環境が存在する。腫瘍微小環境は、悪性腫瘍に移行する期間中に、腫瘍細胞と共に発生し、それに対する支援を提供する細胞からなる複雑な自然環境である(Noy et al.,Tumor-associated macrophages:from mechanisms to therapy,Immunity.2014 July 17;41(1):49-61)。IL-10、グルココルチコイドホルモン、アポトーシス細胞、及び免疫複合体等の因子は、自然免疫細胞機能を妨害し得る。
【0115】
[000185]成熟したマクロファージを誘発する単球は、非常に多くの因子により誘引され、そして腫瘍微小環境中に移動し得るが、このような単球の大部分はTAMに分化し得る(Zhou et al.,(2020)Tumor-Associated Macrophages:Recent Insights and Therapies.Front.Oncol.10:188)。腫瘍微小環境内に存在するマクロファージは、このようなマクロファージが腫瘍促進性のTAMに分化した状態となるように、腫瘍微小環境内の様々な因子により再分極することもある。
【0116】
[000186]TAMは、主に代替活性化マクロファージ(M2表現型)及び古典的活性化マクロファージ(M1表現型)の小分画を含む(Zhou et al.,(2020)Tumor-Associated Macrophages:Recent Insights and Therapies.Front.Oncol.10:188)。M1表現型を有するマクロファージは強力であり、また病原体又はがん細胞を殺滅する能力を有する。M2表現型を有するマクロファージは腫瘍細胞を貪食する機能を欠き、そしてそのような腫瘍細胞が殺滅から逃れる手助けもし、またその他の組織及び臓器に拡散する手助けもする(Zhou et al.,(2020)Tumor-Associated Macrophages:Recent Insights and Therapies.Front.Oncol.10:188)。
【0117】
[000187]本明細書に提示されるエンゲイジャーのSIRP-アルファ結合ドメインは、CD47-SIRPアルファ軸シグナル伝達により媒介されるマクロファージのファゴサイトーシスの下方制御を阻害し得る。がん細胞はCD47を一般的に過剰発現し、CD47は、免疫細胞(例えば、単球又はマクロファージ)上で発現されるSIRPアルファと結合して、がん細胞が免疫細胞(例えば、単球又はマクロファージ)により除去されるのを妨げる「私を食べないで」シグナルを誘発する。CD47-SIRPアルファ軸の阻害は、がん細胞媒介式の抗貪食活性を相殺することができる。
【0118】
[000188]本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメインは、CD47-SIRPアルファ相互作用をブロックすること、及び/又はCD47-SIRPアルファ相互作用により媒介される下流シグナル伝達(例えば、SHP-1シグナル伝達)をブロックすることにより、CD47-SIRPアルファ軸シグナル伝達を阻害し得る。ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、SIRPアルファブロッカー、例えばSIRPアルファを認識し、それと結合するCD47の細胞外ドメイン(ECD)、又はSIRPアルファを認識し、それと結合する抗体若しくはその抗原結合ドメイン等を含み得る。
【0119】
[000189]より好ましい実施形態では、SIRPアルファを認識し、それと結合する抗体又はその抗原結合ドメインは、下記の特性のうちの1つ又は複数を有する:1)SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を実質的又は完全にブロックする能力を有する;2)SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により媒介されるSHP-1導入を実質的又は完全にブロックする能力を有する;3)単球又はマクロファージのファゴサイトーシスを誘発する固有の活性について最低限度の活性を有する;及び4)SIRPαのIgVドメイン外部のエピトープに結合する能力を有する。
【0120】
[000190]本明細書に提示される多重特異性分子は、標的抗原結合ドメインを更に含む。したがって、用語「標的抗原結合ドメイン」は、本明細書で使用される場合、標的抗原に対する任意の結合ドメインを包含する。用語「標的抗原」とは、標的抗原を発現する細胞をその他の細胞から区別することができる任意の細胞表面マーカーを指し、腫瘍抗原、又は感染細胞上に提示される抗原を含むが、これらに限定されない。
【0121】
[000191]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、標的抗原の存在下で、免疫エフェクター細胞(SIRP-アルファ及び活性化受容体を同時発現する)のエフェクター機能を選択的に誘発する。
【0122】
[000192]本明細書に提示される多重特異性分子は、免疫エフェクター細胞に結合し、それを活性化させて、非標的細胞よりも標的細胞に対する選択的応答を開始する能力を有する。
【0123】
[000193]ある特定の実施形態では、標的細胞は標的抗原を発現する。ある特定の実施形態では、標的細胞は標的抗原及びCD47を同時発現する。
[000194]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、標的抗原の非存在下では、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能について最低限度の機能しか誘発しない。本明細書で使用される場合、用語「最低限度の」とは、エフェクター機能に関する場合、アイソタイプコントロールにより誘発されるレベルに匹敵するエフェクター機能のレベルを指す。ある特定の実施形態では、標的抗原の非存在下で本明細書に提示される多重特異性分子により誘発されるエフェクター機能は、標的抗原の存在下で誘発されるエフェクター機能の10%、20%、30%、40%、50%以下である。
【0124】
[000195]本開示の多重特異性分子又はエンゲイジャーは、エンゲイジャーが複数の標的とモジュール式に、そして同時に関与するのを支援するための追加の構造も含む。追加の構造は、2つ以上の結合ドメインがリンクしたり、また空間的な近接性及び可撓性を実現するために分離したりするための、例えば連結エレメント、例えばリンカー、コグネートペプチド等、又は化学結合である。
【0125】
[000196]上記した追加の構造を本明細書に提示されるより高次の多重特異性マクロファージエンゲイジャー内に組み込むことで、エンゲイジャーの生成、フォールディング、安定性、機能、及び組織利用能に役立つ。
【0126】
[000197]i.SIRPα結合ドメイン
[000198]本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPα結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を実質的にブロックする能力を有する。
【0127】
[000199]2つの相互作用性分子の間の「相互作用を実質的にブロックする」とは、抗体が2つの相互作用性分子の間の結合性を少なくとも50%阻害する能力を有するか、又は2つの分子の相互作用により誘発されたシグナル伝達について少なくとも40%を阻害する能力を有することを意味する。SIRP-アルファとCD47との間の相互作用により誘発されたシグナル伝達は、SIRP-アルファの細胞内部分(例えば、C末端尾部)に対するSHP1導入により特徴付けられ得る。
【0128】
[000200]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPα結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を完全にブロックする能力を有する。慣用句「~を完全にブロックする」とは、2つの相互作用性分子に関する場合、2つの相互作用性分子の間の結合性についてその少なくとも80%の阻害、又は2つの分子の相互作用により誘発されたシグナル伝達について、その少なくとも50%の阻害を意味する。
【0129】
[000201]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPα結合ドメインは、SIRPα-CD47相互作用を完全にブロックすること、又はそれがSIRPα-CD47相互作用に対する効果をブロックする/しないに関わらず、SIRPα-CD47相互作用媒介式の下流シグナル伝達(例えば、SHP-1導入)を完全にブロックすることのいずれかによって、CD47がSIRPα(ファゴサイトーシスを抑制する)に結合することにより送達される「私を食べないで」シグナルを完全にブロックすることができる。SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を完全にブロックする能力を有するSIRP-アルファ抗体は、本明細書において完全ブロッカーとも呼ばれる。
【0130】
[000202]SIRP-アルファとCD47との間の結合相互作用のブロックは、任意の適するアッセイ、例えば競合ELISA又は競合FACSアッセイにより決定可能である。手短に述べると、競合ELISAの場合、SIRP-アルファの可溶性細胞外ドメイン(ECD)が基材上に固定することができ、テスト品SIRP-アルファ抗体は、CD47のある濃度の可溶性ECDがSIRP-アルファの固定化されたECDに結合するのをブロックするその能力について、異なる濃度でテストすることができる。SIRP-アルファの固定化されたECDに対するCD47のECDの結合性は、テスト品SIRP-アルファ結合ドメインの非存在下及び存在下で、それぞれ決定可能である。テスト品SIRP-アルファ結合ドメインの存在下でのCD47及びSIPR-アルファの結合性低下が決定可能であり、したがってブロッキングのパーセンテージを決定することができる。
【0131】
[000203]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるある特定の抗SIRPα結合ドメインは、競合ELISAアッセイにより測定した場合、90%を超える最大ブロッキング率(%)を有する。アッセイ条件は、本開示の実施例12に提示される条件に類似し得る(CD47の可溶性ECDの濃度は25nMであり、またSIRPαの可溶性ECDの濃度は20nMである)。本明細書に提示されるような例示的完全ブロッカーは、C15、C25、C42、C59、C73、及びそのヒト化抗体に由来する抗SIRPα結合ドメインである。
【0132】
[000204]用語「最大ブロッキング率(%)」は「最高ブロッキング率(%)」と交換可能に使用され、ブロッカー(例えば、SIRPα結合ドメイン)の存在下で、濃度を漸増させたときに、2つのタンパク質(例えば、SIRP-アルファとCD47)間の相互作用のブロッキング率(%)の頭打ちを指す。一般的に、ブロックキングのパーセンテージは、SIRP-アルファ結合ドメインの濃度増加と共に上昇する可能性があるが、しかしながらSIRP-アルファ結合ドメインの濃度を更に増加させたにも関わらず、これ以上のブロッキングは実現不可能である頭打ちに達する。最大ブロッキング率(%)は、異なるアッセイ、例えば競合ELISAアッセイ及び競合FACSアッセイ等に応じて変化し得る。
【0133】
[000205]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるある特定の抗SIRPα結合ドメインは、競合ELISAアッセイにより測定したときの最大ブロッキング率(%)の10%以下の最大ブロッキング率(%)を有する。アッセイ条件は、本開示の実施例12に提示する条件に類似し得る(CD47の可溶性ECDの濃度は25nMであり、またSIRPαの可溶性ECDの濃度は20nMである)。本明細書に提示されるような例示的非ブロッカーはC50及びそのヒト化抗体である。そのようなSIRP-アルファ抗体は、本明細書において非ブロッカーとも呼ばれる。
【0134】
[000206]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるある特定の抗SIRPα抗体は、競合ELISAアッセイにより測定したときの最大ブロッキング率(%)の50%以下の最大ブロッキング率(%)を有する。アッセイ条件は、本開示の実施例12に提示する条件に類似する。そのようなSIRP-アルファ抗体は、本明細書において部分的ブロッカーとも呼ばれる。本明細書に提示されるような例示的部分的ブロッカーはC35及びそのヒト化抗体である。
【0135】
[000207]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPα結合ドメインは、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を標的細胞に対して誘発するという固有の活性について最低限度の活性しか有さない。ある特定の実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞、又はがん性細胞、感染細胞、又はSIRP-アルファ媒介式のエフェクター機能、例えばファゴサイトーシス等により除去される必要がある特定の疾患細胞型である。本明細書で使用される場合、用語「固有の活性」とは、SIRPα結合ドメインに関する場合、標的抗原結合ドメインの非存在下において、ある特定の標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞上で、免疫エフェクター細胞のファゴサイトーシスを誘発するSIRPα結合ドメインの能力を指す。ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、標的細胞に対して、20%以下、15%以下、10%以下のファゴサイトーシスを誘発する。本明細書で使用される場合、用語「最低限度の」とは、ファゴサイトーシスを誘発する固有の活性に関する場合、SIRP-アルファ結合ドメインの固有の活性により誘発されるファゴサイトーシスのレベル(アイソタイプコントロールにより誘発されるレベルに匹敵する)を指す。ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメイン単独、又はSIRP-アルファ結合ドメインを含む分子単独により誘発されるファゴサイトーシスは、本明細書に提示されるエンゲイジャーにより誘発されるファゴサイトーシスの10%、20%、30%、40%、50%以下である。
【0136】
[000208]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPα結合ドメインは、抗体ドメイン又は抗体模倣ドメインを含む。
[000209]本明細書で使用される場合、用語「抗体ドメイン」とは、抗体に由来する抗原結合ドメインを指し、少なくとも1つの抗体断片を含む(例えば、CDR及び/又は可変領域配列等)。抗体ドメインは、例えば、モノクローナル抗体、抗体断片又はドメイン、抗体断片又はドメインを含む融合タンパク質、抗体断片又はドメインを含むポリペプチド複合体等を含む。ある特定の実施形態では、抗体ドメインは、Fab、VHH、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、F(ab)2、scFvダイマー(2価のダイアボディ)、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、テトラボディ、ドメイン抗体、又は2価ドメイン抗体を含む。
【0137】
[000210]本明細書で使用される場合、用語「抗体模倣ドメイン」とは、抗体と同様にふるまう(例えば、抗体と同様に抗原に特異的に結合することができる)が、しかし免疫系により生成されることはなく、また抗体とも構造的に関連しない人工的ペプチド又は化合物を指す。用語「抗体模倣ドメイン」とは、特定の標的と結合することができ、タンパク質エンジニアリング戦略を通じて新規結合部位を組み込むように設計され得る、α-へリックス、β-シート、又はランダムコイルを含む無関係のタンパク質スキャフォールドも指す場合がある。
【0138】
[000211]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、イントラボディ(例えば、フィブロネクチンドメイン)、モノボディ、直鎖ペプチド、プロテインAのZドメイン(アフィボディ)、ガンマB結晶性ドメイン、ユビキチンドメイン、シスタチンドメイン、Sac7dドメイン、三重へリックスコイルドコイルドメイン、リポカリンドメイン、膜受容体のAドメイン、アンキリン反復モチーフ、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤のクニッツドメイン、フィブロネクチンのIII型ドメイン(ミニボディ)、DARPinドメイン、又は炭水化物結合モジュール32-2を含む抗体模倣ドメインである。
【0139】
[000212]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、C25、hu025.021、hu025.033、hu025.023、hu025.059、hu025.060、C15、C42、C59、及びC73からなる群から選択される抗SIRPα抗体の1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のCDR配列を含む。
【0140】
[000213]「C25」又は「025c」とは、本明細書で使用される場合、配列番号1の重鎖可変領域、及び配列番号2の軽鎖可変領域を有するマウス抗体を指す。
[000214]「hu025.021」とは、本明細書で使用される場合、配列番号3の重鎖可変領域、及び配列番号4の軽鎖可変領域を含む、C25に基づくヒト化抗体を指す。
【0141】
[000215]「hu025.023」とは、本明細書で使用される場合、配列番号5の重鎖可変領域、及び配列番号6の軽鎖可変領域を含む、C25に基づくヒト化抗体を指す。
[000216]「hu025.033」とは、本明細書で使用される場合、配列番号159の重鎖可変領域、及び配列番号160の軽鎖可変領域を含む、C25に基づくヒト化抗体を指す。
【0142】
[000217]「hu025.059」とは、本明細書で使用される場合、配列番号7の重鎖可変領域、及び配列番号8の軽鎖可変領域を含む、C25に基づくヒト化抗体を指す。
[000218]「hu025.060」とは、本明細書で使用される場合、配列番号9の重鎖可変領域、及び配列番号10の軽鎖可変領域を含む、C25に基づくヒト化抗体を指す。
【0143】
[000219]「C15」又は「015c」とは、本明細書で使用される場合、配列番号11の重鎖可変領域、及び配列番号12の軽鎖可変領域を有するマウス抗体を指す。
[000220]「C42」又は「042c」とは、本明細書で使用される場合、配列番号13の重鎖可変領域、及び配列番号14の軽鎖可変領域を有するマウス抗体を指す。
【0144】
[000221]「C59」又は「059c」とは、本明細書で使用される場合、配列番号15の重鎖可変領域、及び配列番号16の軽鎖可変領域を有するマウス抗体を指す。
[000222]「C73」又は「073c」とは、本明細書で使用される場合、配列番号17の重鎖可変領域、及び配列番号18の軽鎖可変領域を有するマウス抗体を指す。
【0145】
[000223]本明細書に提示される多重特異性分子のSIRPアルファ結合ドメインは、抗SIRPアルファ抗体から取得可能であり、その可変領域及びCDRのアミノ酸配列を下記の表1~2に示す。
【0146】
[000224]
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
[000225]
【0151】
【0152】
【0153】
[000226]X1はA又はDであり、X2はG又はAであり、X3はT又はSであり、X4はL又はYであり、X5はE又はAであり、X6はY又はHであり、X7はS又はPであり、X8はY又はCであり、X9はY又はSであり、X10はN又はSであり、X11はP又はVであり、X12はE又はKであり、X13はN又はIであり、X14はS又はAであり、X15はSであるか又は存在せず、X16はS又はAであり、X17はF又はLである。
【0154】
[000227]CDRは抗原結合に関与することが公知であるが、しかしながら6個のCDRすべてが必須又は変更不可能というわけではないことが判明した。換言すれば、SIRPα結合ドメインについて、SIRPαに対する特異的結合親和性を実質的になおも保持しつつ、本明細書に提示される1つ又は複数のCDRを置換、又は変更、又は改変することが可能である。
【0155】
[000228]重鎖CDR3領域は、抗原結合部位の中央部に位置し、したがって抗原と最も強い接触を実現し、そして抗原に対する抗体の親和性に対して最も高い自由エネルギーを提供するものと考えられている。また重鎖CDR3は、複数の多様化機構により、長さ、アミノ酸組成、及びコンフォメーションに関して、抗原結合部位のCDRにおいてその多様性は最も高く際立っていると、やはり考えられている(Tonegawa S.Nature.302:575-81)。重鎖CDR3における多様性は、抗体特異性の大部分(Xu JL,Davis MM.Immunity.13:37-45)、並びに望ましい抗原結合親和性(Schier R,etc.J Mol Biol.263:551-67)を生成するのに十分である。
【0156】
[000229]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
a)X1YYMH(配列番号161)の配列を含むHCDR1、RIDPEDX2EX3KYAPKFQG(配列番号162)の配列を含むHCDR2、及びGX15X4X5Y(配列番号163)の配列を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSYLY(配列番号26)の配列を含むLCDR1、STSNLAS(配列番号27)の配列を含むLCDR2、及びX6QWSSYPYT(配列番号164)の配列を含むLCDR3、或いは
b)TYGMS(配列番号35)の配列を含むHCDR1、WINTYSGVX7TX8ADDFKG(配列番号165)の配列を含むHCDR2、及びDPHX9YGX10SPAWFX11Y(配列番号166)の配列を含むHCDR3、並びに/又はX12ASQX13VGIX14VA(配列番号188)の配列を含むLCDR1、SASNRYT(配列番号39)の配列を含むLCDR2、及びQQYSX16YPX17T(配列番号189)の配列を含むLCDR3、或いは
c)EYVLS(配列番号41)の配列を含むHCDR1、EIYPGTITTYYNEKFKG(配列番号42)の配列を含むHCDR2、及びFYDYDGGWFAY(配列番号43)の配列を含むHCDR3、並びに/又はSASSSVSSSDLH(配列番号44)の配列を含むLCDR1、GTSNLAS(配列番号45)の配列を含むLCDR2、及びQQWSGYPWT(配列番号46)の配列を含むLCDR3、
を含み、式中、X1はA又はDであり、X2はG又はAであり、X3はT又はSであり、X4はL又はYであり、X5はE又はAであり、X6はY又はHであり、X7はS又はPであり、X8はY又はCであり、X9はY又はSであり、X10はN又はSであり、X11はP又はVであり、X12はE又はKであり、X13はN又はIであり、X14はS又はAであり、X15はSであるか又は存在せず、X16はS又はAであり、X17はF又はLである。
【0157】
[000230]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
a)配列番号23の配列を含むHCDR1、配列番号24若しくは配列番号198の配列を含むHCDR2、及び配列番号25の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号26の配列を含むLCDR1、配列番号27の配列を含むLCDR2、及び配列番号28の配列を含むLCDR3、或いは
b)配列番号29の配列を含むHCDR1、配列番号30の配列を含むHCDR2、及び配列番号31の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号32の配列を含むLCDR1、配列番号33の配列を含むLCDR2、及び配列番号34の配列を含むLCDR3、或いは
c)配列番号35の配列を含むHCDR1、配列番号36の配列を含むHCDR2、及び配列番号37の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号38の配列を含むLCDR1、配列番号39の配列を含むLCDR2、及び配列番号40の配列を含むLCDR3、或いは
d)配列番号47の配列を含むHCDR1、配列番号48の配列を含むHCDR2、及び配列番号49の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号50の配列を含むLCDR1、配列番号51の配列を含むLCDR2、及び配列番号52の配列を含むLCDR3
を含む。
【0158】
[000231]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、C25、C15、C42、C59、及びC73からなる群から選択される抗SIRP-アルファ抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
a)C25は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
b)C15は、配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
c)C42は、配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
d)C59は、配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
e)C73は、配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0159】
[000232]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインは、抗原結合ドメインがSIRPαに特異的に結合することができる限り、任意の適するフレームワーク領域(FR)配列を含む。ある特定の実施形態では、hu025.021、hu025.033、hu025.023、hu025.059、及びhu025.060のCDR配列は、マウス抗体C25から得られるが、しかしそれらは、当技術分野において公知の適する方法、例えば組換え技術等を使用しながら、任意の適する種、例えばとりわけ、マウス、ヒト、ラット、ウサギ等の任意の適するFR配列にグラフトされ得る。
【0160】
[000233]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインはヒト化されている。ヒト化された抗原結合ドメインは、ヒトにおいてその免疫原性が低下している点で望ましい。ヒト化された抗原結合ドメインは、非ヒトCDR配列がヒト又は実質的にヒトのFR配列にグラフトされていることから、その可変領域においてキメラである。抗原結合ドメインのヒト化は、ヒト免疫グロブリン遺伝子において、非ヒト(例えば、マウス等)CDR遺伝子を、対応するヒトCDR遺伝子に置換することにより実質的に実施され得る(例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536を参照されたい)。
【0161】
[000234]適するヒト重鎖及び軽鎖可変ドメインが、当技術分野において公知の方法を使用してこの目的を実現するために選択され得る。例証的事例では、非ヒト(例えば、齧歯類)抗体可変ドメイン配列が、既知のヒト可変ドメイン配列のデータベースに対してスクリーニング又はBLAST処理され、そして非ヒトクエリー配列に最も近いヒト配列が識別され、そして非ヒトCDR配列をグラフトするためのヒトスキャフォールドとして使用される場合、「最良適合」アプローチが使用可能である(例えば、Sims et al,(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mot.Biol.196:901を参照されたい)。或いは、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワークが非ヒトCDRをグラフトするのに使用され得る(例えば、Carter et at.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623を参照されたい)。
【0162】
[000235]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるヒト化抗原結合ドメインは、非ヒトであるCDR配列を除き、実質的にすべてのヒト配列から構成される。いくつかの実施形態では、可変領域FR、及び定常領域(存在する場合)は、ヒト免疫グロブリン配列に完全又は実質的に由来する。ヒトFR配列及びヒト定常領域配列は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子に由来し、例えばFR配列が一方のヒト抗体に由来し、及び定常領域は他方のヒト抗体に由来し得る。いくつかの実施形態では、ヒト化抗原結合ドメインはヒトFR1~4を含む。
【0163】
[000236]いくつかの実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、その由来とするヒト免疫グロブリンと同一のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトFRの1つ又は複数のアミノ酸残基が、非ヒト親抗体由来の対応する残基と置換する。これは、ヒト化抗体又はその断片を非ヒト親抗体構造に密接に近似させるために、ある特定の実施形態において望ましい場合もある。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるヒト化されたSIRPα結合ドメインは、ヒトFR配列のそれぞれにおいて、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、若しくは1個のアミノ酸残基置換、又は重鎖若しくは軽鎖可変ドメインのすべてのFRにおいて、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、若しくは1個のアミノ酸残基置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基内のそのような変化は、重鎖FR領域内にのみ、軽鎖FR領域内にのみ、又は両鎖内に存在し得る。表2.1は、ヒト化抗体hu025.021、hu025.023、hu025.033、hu025.059、及びhu025.060のFR配列を示す。
【0164】
[000237]
【0165】
【0166】
【0167】
式中、X20はA又はVであり、X21はN又はDであり、X22はY又はFである。
[000238]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKX20SGFNIK(配列番号190)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
b)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
c)HFR3配列は、RVTITADTSTX21TAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号192)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
e)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
f)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
g)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDX22TLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号196)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X20はA又はVであり、X21はN又はDであり、X22はY又はFである。
【0168】
[000239]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
i)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIK(配列番号207)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
j)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
k)HFR3配列は、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号208)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
l)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
m)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
n)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
o)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号209)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
p)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0169】
[000240]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
q)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIK(配列番号207)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
r)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
s)HFR3配列は、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号208)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
t)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
u)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
v)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
w)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号212)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
x)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0170】
[000241]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
y)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGFNIK(配列番号207)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
z)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
aa)HFR3配列は、RVTITADTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号210)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
bb)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
cc)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
dd)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
ee)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号209)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
ff)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0171】
[000242]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
gg)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKASGFNIK(配列番号211)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
hh)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
ii)HFR3配列は、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号208)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
jj)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
kk)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
ll)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
mm)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号209)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
nn)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0172】
[000243]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
oo)HFR1は、EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKASGFNIK(配列番号211)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
pp)HFR2は、WVQQAPGKGLEWIG(配列番号191)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
qq)HFR3配列は、RVTITADTSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCDR(配列番号208)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
rr)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号193)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
ss)LFR1は、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号194)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
tt)LFR2は、WYQQKPGQAPKLWIY(配列番号195)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
uu)LFR3は、GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号212)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び/又は
vv)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号197)、若しくはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0173】
[000244]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、及び159からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインは、配列番号2、4、6、8、10、12、16、18、及び160からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0174】
[000245]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、
f)配列番号1の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
g)配列番号3の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号4の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
h)配列番号5の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号6の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
i)配列番号7の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号8の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
j)配列番号9の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
k)配列番号11の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号12の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
l)配列番号13の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
m)配列番号15の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号16の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
n)配列番号17の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号18の配列を含む軽鎖可変領域、並びに/或いは
o)配列番号159の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号160の配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0175】
[000246]いくつかの実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインは、重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、及び/又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む。1つの実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメインは、本明細書に提示される重鎖可変ドメインの全部又は一部から構成される単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体のより多くの情報が当技術分野において入手可能である(例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0176】
[000247]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、SIRPαに対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ又は複数のアミノ酸残基置換又は改変を更に含む。ある特定の実施形態では、置換又は改変の少なくとも1つは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の、CDR配列のうちの1つ若しくは複数内、及び/又は非CDR配列のうちの1つ若しくは複数内にある。
【0177】
[000248]ii.標的抗原結合ドメイン
[000249]本明細書で使用される場合、用語「標的抗原結合ドメイン」とは、抗原及びCD47を同時発現する細胞を標的とする抗原結合ドメインを指す。本明細書に提示される多重特異性分子の標的抗原結合ドメインは、腫瘍抗原結合ドメインであり得る。ある特定の実施形態では、標的抗原は腫瘍表面抗原を含む。本明細書で使用される場合、用語「腫瘍表面抗原」とは、非悪性組織と区別するための、腫瘍細胞により主として提示される抗原を指し、また好ましくは腫瘍細胞の細胞膜上に位置する。腫瘍表面抗原は、様々な形態、例えば、ポリペプチド(特にグリコシル化されたタンパク質)、若しくはポリペプチドのグリコシル化パターン、糖脂質(例えば、ガングリオシド、例えばGM2等)を取り得るか、又はがん細胞に特徴的であり得る細胞膜の脂質の組成が変化したものでありさえし得る。腫瘍表面抗原は、がん細胞上で特異的に発現される抗原(免疫応答を誘発し、及び/又はT細胞受容体(例えば、MHC分子により提示されるとき)若しくは抗体と結合する)であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍表面抗原は体液性応答を誘発する(例えば、抗原特異的抗体の生成を含む)。いくつかの実施形態では、腫瘍表面抗原は、細胞応答(例えば、T細胞(その受容体は腫瘍表面抗原と特異的に相互作用する)を伴う)を誘発する。いくつかの実施形態では、腫瘍表面抗原は抗体と結合し、そして生物内で特定の生理学的応答を誘発する場合もあれば、また誘発しない場合もある。
【0178】
[000250]ある特定の実施形態では、腫瘍表面抗原は、例えば、PD-L1、クローディン18.2、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD30、CD33、CD38、CD44、CD52、CD56、CD70、CD96、CD97、CD99、CD123、EGFR、HER2、HER3、CD117、C-Met、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、VEGFR1、VEGFR2、PTHR2、B7-H1(PD-L1)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、B7-H7、Trop-2、GPC-3、EPCAM、DLL-3、ネクチン-4、クローディン6、クローディン18.2、Muc-1、PSMA、GD3、FAP、CEA、又はEphA2である。
【0179】
[000251]クローディン18.2結合ドメイン
[000252]ある特定の実施形態では、腫瘍表面抗原はクローディン18.2である。ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、クローディン18.2(例えば、ヒトクローディン18.2等)に特異的に結合する能力を有する。
【0180】
[000253]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、hu26.H1L1、hu26.H1L2、hu26.H1L2(S92A)、hu26.H3L1、hu26.H3L2、hu28.H1L2、C10、C29、及びC30からなる群から選択される抗クローディン18.2抗体の1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のCDR配列を含む。
【0181】
[000254]「hu26.H1L1」とは、本明細書で使用される場合、配列番号65の重鎖可変領域、及び配列番号66の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0182】
[000255]「hu26.H1L2」とは、本明細書で使用される場合、配列番号65の重鎖可変領域、及び配列番号67の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0183】
[000256]「hu26.H1L2(S92A)」とは、本明細書で使用される場合、抗体配列番号65の重鎖可変領域、及び配列番号224の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0184】
[000257]「hu26.H3L1」とは、本明細書で使用される場合、配列番号68の重鎖可変領域、及び配列番号66の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0185】
[000258]「hu26.H3L2」とは、本明細書で使用される場合、配列番号68の重鎖可変領域、及び配列番号67の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0186】
[000259]「hu28.H1L2」とは、本明細書で使用される場合、配列番号69の重鎖可変領域、及び配列番号70の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0187】
[000260]「C10」とは、本明細書で使用される場合、配列番号71の重鎖可変領域、及び配列番号72の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
[000261]「C29」とは、本明細書で使用される場合、配列番号73の重鎖可変領域、及び配列番号74の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
【0188】
[000262]「C30」とは、本明細書で使用される場合、配列番号75の重鎖可変領域、及び配列番号76の軽鎖可変領域を有するヒト化モノクローナル抗体を指す。
[000263]表3は抗クローディン18.2抗体のCDR配列を示す。重鎖及び軽鎖可変領域配列も下記の表4及び表5に提示する。
【0189】
[000264]
【0190】
【0191】
【0192】
[000265]
【0193】
【0194】
【0195】
[000266]CDRは抗原結合に関与することが公知であるが、しかしながら6個のCDRすべてが必須又は変更不可能というわけではないことが判明した。換言すれば、クローディン18.2結合ドメインについて、PD-1(例えば、ヒトクローディン18.2)に対する特異的結合親和性をなおも実質的に保持しつつ、本明細書に提示される1つ又は複数のCDRを、置換、又は変更、又は改変することが可能である。
【0196】
[000267]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、
a)配列番号77の配列を含むHCDR1、配列番号78の配列を含むHCDR2、及び配列番号79の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号80の配列を含むLCDR1、配列番号81の配列を含むLCDR2、及び配列番号82若しくは配列番号225の配列を含むLCDR3、或いは
b)配列番号83の配列を含むHCDR1、配列番号84の配列を含むHCDR2、及び配列番号85の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号86の配列を含むLCDR1、配列番号87の配列を含むLCDR2、及び配列番号88の配列を含むLCDR3、或いは
c)配列番号89の配列を含むHCDR1、配列番号90の配列を含むHCDR2、及び配列番号91の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号92の配列を含むLCDR1、配列番号93の配列を含むLCDR2、及び配列番号94の配列を含むLCDR3、或いは
d)配列番号95の配列を含むHCDR1、配列番号96の配列を含むHCDR2、及び配列番号97の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号98の配列を含むLCDR1、配列番号99の配列を含むLCDR2、及び配列番号100の配列を含むLCDR3、或いは
e)配列番号101の配列を含むHCDR1、配列番号102の配列を含むHCDR2、及び配列番号103の配列を含むHCDR3、並びに/又は配列番号104の配列を含むLCDR1、配列番号105の配列を含むLCDR2、及び配列番号106の配列を含むLCDR3
を含む。
【0197】
[000268]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、hu26.H1L1、hu26.H1L2(S92A)、hu28.H1L2、C10、C29、及びC30からなる群から選択される抗クローディン18.2抗体と同一のHCDR及びLCDRを含み、
a)hu26.H1L1は、配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
b)hu26.H1L2(S92A)は、配列番号65の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号224の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
c)hu28.H1L2は、配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
d)C10は、配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域を含み、
e)C29は、配列番号73の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域を含み、並びに
f)C30は、配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0198】
[000269]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のクローディン18.2結合ドメインは、抗原結合ドメインがクローディン18.2に特異的に結合することができる限り、任意の適するフレームワーク領域(FR)配列を含む。
【0199】
[000270]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子のクローディン18.2結合ドメインはヒト化されている。ヒト化された抗原結合ドメインは、ヒトにおいてその免疫原性が低下している点で望ましい。ヒト化された抗原結合ドメインは、非ヒトCDR配列がヒト又は実質的にヒトのFR配列にグラフトされていることから、その可変領域においてキメラである。抗原結合ドメインのヒト化は、ヒト免疫グロブリン遺伝子において、非ヒト(例えば、マウス等)CDR遺伝子を、対応するヒトCDR遺伝子に置換することにより実質的に実施され得る(例えば、Jones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536を参照されたい)。上記したように、適するヒト重鎖及び軽鎖可変ドメインが、当技術分野において公知の方法を使用しながら、この目的を実現するために選択され得る。
【0200】
[000271]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるヒト化された抗原結合ドメインは、CDR配列(非ヒトである)を除き、実質的にすべてヒト配列から構成される。いくつかの実施形態では、可変領域FR及び定常領域(存在する場合)は、完全又は実質的にヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒトFR配列及びヒト定常領域配列は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子に由来し、例えばFR配列が一方のヒト抗体に由来し、及び定常領域は他方のヒト抗体に由来し得る。いくつかの実施形態では、ヒト化された抗原結合ドメインはヒトFR1~4を含む。
【0201】
[000272]いくつかの実施形態では、ヒトに由来するFR領域は、その由来とするヒト免疫グロブリンと同一のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトFRの1つ又は複数のアミノ酸残基が、非ヒト親抗体由来の対応する残基と置換する。これは、ヒト化抗体又はその断片を非ヒト親抗体構造に密接に近似させるために、ある特定の実施形態において望ましい場合もある。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるヒト化されたクローディン18.2結合ドメインは、ヒトFR配列のそれぞれにおいて、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、若しくは1個のアミノ酸残基置換、又は重鎖若しくは軽鎖可変ドメインのすべてのFRにおいて、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、若しくは1個のアミノ酸残基置換を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基内のそのような変化は、重鎖FR領域内にのみ、軽鎖FR領域内にのみ、又は両鎖内に存在し得る。表4.1は、ヒト化抗体hu26.H1L1、hu26.H1L2、hu26.H3L1、hu26.H3L2、hu28.H1L2のFR配列を示す。
【0202】
[000273]
【0203】
【0204】
【0205】
式中、X18はS又はAであり、X19はL又はAであり、X23はT又はKであり、X24はY又はFであり、X25はQ又はGであり、X26はQ又はKであり、X27はP又はAである。
【0206】
[000274]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)及びQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号168)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVX18(配列番号169)及びWVRQAPGQGLEWMG(配列番号170)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAX23(配列番号171)及びRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号172)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)及びDIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号175)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGX26X27PKX19LIY(配列番号176)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEX24TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号178)及びGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYHC(配列番号179)からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、並びに
h)LFR4は、FGX25GTKLEIK(配列番号180)又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X18はS又はAであり、X19はL又はAであり、X23はT又はKであり、X24はY又はFであり、X25はQ又はGであり、X26はQ又はKであり、X27はP又はAである。
【0207】
[000275]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVX18(配列番号169)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAX23(配列番号171)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKAPKX19LIY(配列番号206)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEX24TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号178)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号181)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
式中、X18はS又はAであり、X19はL又はAであり、X23はT又はKであり、X24はY又はFである。
【0208】
[000276]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVS(配列番号199)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAK(配列番号200)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号201)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号202)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号181)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0209】
[000277]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVS(配列番号199)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAK(配列番号200)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKAPKALIY(配列番号203)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号204)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号181)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0210】
[000278]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVA(配列番号213)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAT(配列番号205)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号201)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号202)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号181)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0211】
[000279]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLS(配列番号167)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGKGLEWVA(配列番号213)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAT(配列番号205)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITC(配列番号174)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGKAPKALIY(配列番号203)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPSRFSGSGSGTEYTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号204)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号181)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0212】
[000280]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、重鎖HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4のうちの1つ又は複数、並びに/或いは軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4のうちの1つ又は複数を更に含み、
a)HFR1は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号168)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
b)HFR2は、WVRQAPGQGLEWMG(配列番号170)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
c)HFR3配列は、RVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号172)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号173)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
e)LFR1は、DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号175)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号177)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、
g)LFR3は、GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYHC(配列番号179)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含み、及び
h)LFR4は、FGGGTKLEIK(配列番号182)、又はそれと少なくとも80%の配列同一性を有する相同的配列を含む。
【0213】
[000281]いくつかの実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、
a)配列番号65又は68の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号66若しくは67若しくは224の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
b)配列番号69の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号70の配列を含む軽鎖可変領域は、或いは
c)配列番号71の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号72の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
d)配列番号73の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号74の配列を含む軽鎖可変領域、或いは
e)配列番号75の配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号76の配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0214】
[000282]いくつかの実施形態では、本明細書に提示されるクローディン18.2結合ドメインは、重鎖可変ドメインの全部又は一部、及び/又は軽鎖可変ドメインの全部又は一部を含む。1つの実施形態では、本明細書に提示されるクローディン18.2結合ドメインは、本明細書に提示される重鎖可変ドメインの全部又は一部から構成される単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体のより多くの情報が当技術分野において入手可能である(例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0215】
[000283]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、クローディン18.2に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ又は複数のアミノ酸残基の置換又は改変を更に含む。ある特定の実施形態では、置換又は改変の少なくとも1つは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の、CDR配列のうちの1つ若しくは複数内、及び/又は非CDR配列のうちの1つ若しくは複数内にある。ある特定の実施形態では、置換又は改変の少なくとも1つは、例えばhu26.H1L2(S92A)のCDR配列のうちの1つ又は複数内にある。
【0216】
[000284]PD-L1結合ドメイン
[000285]ある特定の実施形態では、腫瘍表面抗原はPD-L1である。ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、PD-L1(例えば、ヒトPD-L1等)に特異的に結合する能力を有する。
【0217】
[000286]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、C71、C71v38、C239、C492、C570、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719からなる群から選択される抗PD-L1抗体の1つ又は複数(例えば、1、2、又は3個)のCDR配列を含む。
【0218】
[000287]「C71」とは、本明細書で使用される場合、配列番号107の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000288]「C71v38」とは、本明細書で使用される場合、配列番号108の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0219】
[000289]「C239」とは、本明細書で使用される場合、配列番号109の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000290]「C492」とは、本明細書で使用される場合、配列番号110の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0220】
[000291]「C570」とは、本明細書で使用される場合、配列番号111の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000292]「570h3」とは、本明細書で使用される場合、配列番号223の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0221】
[000293]「C446」とは、本明細書で使用される場合、配列番号112の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000294]「C2811」とは、本明細書で使用される場合、配列番号113の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0222】
[000295]「C1778」とは、本明細書で使用される場合、配列番号114の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000296]「C1793」とは、本明細書で使用される場合、配列番号115の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0223】
[000297]「C2855」とは、本明細書で使用される場合、配列番号116の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000298]「C2713」とは、本明細書で使用される場合、配列番号117の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
【0224】
[000299]「C2719」とは、本明細書で使用される場合、配列番号118の重鎖可変領域を有するヒト化された重鎖抗体を指す。
[000300]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号119の配列を含む重鎖CDR1、配列番号120の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号121の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0225】
[000301]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号122の配列を含む重鎖CDR1、配列番号123の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号124の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0226】
[000302]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号125の配列を含む重鎖CDR1、配列番号126の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号127の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0227】
[000303]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号128の配列を含む重鎖CDR1、配列番号129の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号130の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0228】
[000304]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号131の配列を含む重鎖CDR1、配列番号132の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号133の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0229】
[000305]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号134の配列を含む重鎖CDR1、配列番号135の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号136の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0230】
[000306]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号137の配列を含む重鎖CDR1、配列番号138の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号139の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0231】
[000307]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号140の配列を含む重鎖CDR1、配列番号141の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号142の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0232】
[000308]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号143の配列を含む重鎖CDR1、配列番号144の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号145の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0233】
[000309]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号146の配列を含む重鎖CDR1、配列番号147の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号148の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0234】
[000310]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号149の配列を含む重鎖CDR1、配列番号150の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号151の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0235】
[000311]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号152の配列を含む重鎖CDR1、配列番号153の配列を含む重鎖CDR2、及び配列番号154の配列を含む重鎖CDR3を含む。
【0236】
[000312]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、C71、C71v38、C239、C492、C570、570h3、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719からなる群から選択される抗PD-L1抗体と同一のHCDRを含む。
【0237】
[000313]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号107~118及び223からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。
[000314]表5は、抗PD-L1抗体の重鎖可変領域配列を示す。CDR配列も下記の表6に提示する。
【0238】
[000315]
【0239】
【0240】
【0241】
[000316]
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
[000317]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号107~118及び223からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。
[000318]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、PD-L1に対する特異的結合性をなおも保持しつつ、1つ又は複数のアミノ酸残基の置換又は改変を更に含む。ある特定の実施形態では、置換又は改変の少なくとも1つは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の、CDR配列のうちの1つ若しくは複数内、及び/又は非CDR配列のうちの1つ若しくは複数内にある。
【0246】
[000319]iv.活性化受容体結合ドメイン
[000320]多重特異性分子は活性化受容体結合ドメインを更に含む。本明細書で使用される場合、用語「活性化受容体」とは、免疫エフェクター細胞(例えば、貪食性細胞、例えばマクロファージ等)上で発現され、例えばFcドメインに結合することにより活性化することで、免疫エフェクター細胞(例えば、貪食性細胞、例えばマクロファージ等)の少なくとも1つのエフェクター機能、又は炎症促進性の応答に関与する受容体(例えば、FcγR)を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される免疫エフェクター細胞は、SIRP-アルファ及び活性化受容体を同時発現する。
【0247】
[000321]ある特定の実施形態では、活性化受容体はFcγRであり、また活性化受容体結合ドメインはFcドメインである。Fcドメインは、マクロファージ上のFc受容体(FcR)を活性化させ、受容体の免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)により伝播されたリン酸化カスケードを推進することができる。ITAMは、免疫エフェクター細胞上のいくつかの活性化受容体、例えばFcR、T細胞受容体、及び免疫グロブリン(Ig)等の細胞質尾部中に存在する保存された配列である。ITAMは、保存されたアミノ酸配列モチーフ(ペア化したYXXL/Iモチーフ(式中、Y、L、及びIは、チロシン、リジン、及びイソロイシンをそれぞれ指す)から構成され、6~8個のアミノ酸の定義された間隔で隔てられる)を特徴とし得る。ITAM内のいくつかの残基がリン酸化すると、ファゴサイトーシス活性化のためのいくつかのシグナル伝達分子が導入される。したがって、活性化受容体は免疫エフェクター細胞上で発現する任意の受容体であり得、結合及び活性化し、それはITAMを含む細胞内ファゴサイトーシスシグナル伝達ドメインを介してファゴサイトーシスを誘発することができる。
【0248】
[000322]その他の実施形態では、活性化受容体は、異なる食細胞性シグナル伝達又は機構、例えばAkt媒介式のシグナルカスケード(CD19、CD28、CSFR、又はPDGFR受容体を介する)、ファゴサイトーシス(例えば、インテグリン又はセレクチンを介する)又は抗原媒介式の細胞毒性(FcDR1(CD89)受容体又はCD206を介する)を増強する免疫エフェクター細胞(例えば、マクロファージ)上での受容体群のクラスタリング等に関与する受容体である。
【0249】
[000323]例えば、エフェクター機能、例えばファゴサイトーシス等に関連する活性化受容体は、結晶化可能なγ受容体断片(FcγR)、TREM2、レクチン、スカベンジャー受容体A1(SRA1)、MARCO、CD36、CD163、CD68、CD205、CD206、FcDR1、CD207、CD209、RAGE、CD14、CD64、F4/80、CD64、CD32a、CD16a、CD89、CD19、CD28、CSFR、PDGFR、MSR1、SCARA3、COLEC12、SCARA5、SCARB1、SCARB2、デクチン1、RAGE(SR-E1)、LRP1、LRP2、ASGP、SR-PSOX、CXCL16、OLR1、SCARF1、SCARF2、CXCL16、STAB1、STAB2、SRCRB4D、SSC5D、CCR2、CX3CR1、CSF1R、Tie2、HuCRIg(L)、及びCD169受容体、又は補体受容体、例えばCR1及びCR3等であり得る。ある特定の実施形態では、活性化受容体はFcγRである。
【0250】
[000324]ある特定の実施形態では、活性化すると炎症促進性のシグナルを生成可能である活性化受容体として、非限定的に、PI3K、FcγR1、FcγR2A、FcγR2B2、FcγR2C、FcγR3A、BAH.Tyro3、Ax1、Traf6、Syk、MyD88、Zap70、FcεR1、FcαR1、BAFF-R、DAP12、NFAM1、MRC1、ItgB5、MERTK、ELMO、及びCD79bが挙げられる。
【0251】
[000325]用語「活性化受容体結合ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、免疫エフェクター細胞上の活性化受容体に特異的に結合する能力を有するドメイン(例えば、抗体の一部分)を指し、そのような結合が、受容体の活性化、並びに下流におけるそのシグナル伝達(例えば、免疫細胞のエフェクター機能又は炎症促進性の応答)を引き起こす。例えば、活性化受容体結合ドメインは、抗体のFcドメイン又はそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、FcドメインはIgG1又はIgG4に由来し得る。
【0252】
[000326]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子の活性化受容体結合ドメインは、結晶化可能なγ受容体断片(FcγR)、TREM2、レクチン、スカベンジャー受容体A1(SRA1)、MARCO、CD36、CD163、CD68、CD205、CD206、FcDR1、CD207、CD209、RAGE、CD14、CD64、F4/80、CD64、CD32a、CD16a、CD89、CD19、CD28、CSFR、PDGFR、MSR1、SCARA3、COLEC12、SCARA5、SCARB1、SCARB2、デクチン1、RAGE(SR-E1)、LRP1、LRP2、ASGP、SR-PSOX、CXCL16、OLR1、SCARF1、SCARF2、CXCL16、STAB1、STAB2、SRCRB4D、SSC5D、CCR2、CX3CR1、CSF1R、Tie2、HuCRIg(L)、及びCD169受容体、又は補体受容体(例えば、CR1及びCR3等)、PI3K、FcγR1、FcγR2A、FcγR2B2、FcγR2C、FcγR3A、BAH.Tyro3、Ax1、Traf6、Syk、MyD88、Zap70、FcεR1、FcαR1、BAFF-R、DAP12、NFAM1、MRC1、ItgB5、MERTK、ELMO、及びCD79bからなる群から選択される活性化受容体に結合し、そしてそれらを活性化させる。
【0253】
[000327]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子の活性化受容体結合ドメインは、Fcドメイン又はそのバリアント(マクロファージ上のFc受容体(FcR)、例えばFcγRII等を活性化させる)を含む。
【0254】
[000328]ある特定の実施形態では、活性化受容体結合ドメインは、ヒトIgG1(hIgG1)、又はヒトIgG4(hIgG4)のFcドメインを含み、その重鎖定常領域を下記にそれぞれ示す:
a)重鎖定常領域(hIgG4.S228P)、配列番号155(CH1領域の配列(配列番号228)を太字・波線の下線付きで表し、ヒンジ領域の配列(配列番号229)をイタリック体で表し、そしてFc領域の配列(配列番号230)に下線を付す):
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
b)重鎖定常領域(hIgG1)、配列番号156(CH1領域の配列(配列番号231)を太字・波線の下線付きで表し、ヒンジ領域の配列(配列番号232)をイタリック体で表し、そしてFc領域の配列(配列番号233)に下線を付す):
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
[000329]本明細書に提示される多重特異性分子は、ヒト軽鎖定常領域(CL)、例えばカッパ鎖及びラムダ鎖等も含むことができ、そのアミノ酸配列を下記に提示する:
[000330]軽鎖定常領域(カッパ)、配列番号157:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[000331]軽鎖定常領域(ラムダ)、配列番号158:
GQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
[000332]v.多重特異性分子のコンフィギュレーション
[000333]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるエンゲイジャーは、本明細書全体を通じて記載される複数の結合ドメインを含む組換えタンパク質であり、複数の結合ドメインのそれぞれは、SIRPアルファ、活性化受容体、又は標的抗原に対して特異的結合親和性を有し、そして1つ又は複数のリンカーにより相互に接続する。1つ又は複数のリンカーは、相互に結合する相補的結合性を示すコグネートペプチドを有し得る。例えば、本明細書に提示されるエンゲイジャーのSIRP-アルファ結合ドメインは、コグネートペプチドの対の第1と融合し、本明細書に提示されるエンゲイジャーの標的抗原結合ドメインはコグネートペプチドの対の第2と融合し;したがって、SIRP-アルファ結合ドメイン及び標的抗原結合ドメインは、コグネートペプチドの対それぞれとの間に形成される相補的結合を通じて、コグネートペプチドの対により連結されていてもよい。
【0255】
[000334]ある特定の実施形態では、コグネートペプチドの対は、抗体の2本の重鎖又はその任意の相補的部分、抗体の相互に相補的な軽鎖及び重鎖の対又はその任意の相補的部分、相互に結合する相補的結合性を示すロイシンジッパードメイン(例えば、c-Fos及びc-Juneタンパク質の結合領域内のジッパー配列)、又は合成コネクターを介して相互に特異的に結合するように設計された合成ペプチドを含む。
【0256】
[000335]本明細書に提示されるエンゲイジャーのSIRP-アルファ結合ドメイン、活性化受容体結合ドメイン、及び標的抗原結合ドメインは、化学結合、例えば架橋等(例えば、BS2G架橋剤(ビス[スルホスクシンイミジル]グルタレート)、BS3架橋剤(ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート)、スルホ-DSS、DST架橋剤(ジスクシンイミジルタルタレート)、BMPS(N-(B-マレイミドプロピロキシ)スクシンイミドエステル;MBS架橋剤(mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);又はPDPH架橋剤(3-[2-ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド))を介して、やはり連結されていてもよい。
【0257】
[000336]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、SIRP-アルファ結合ドメイン及び活性化受容体結合ドメインが近接した位置関係にあって、本明細書に提示される多重特異性分子が同一の免疫エフェクター細胞上で同時発現されたSIRP-アルファ及び活性化受容体の両方に結合可能となるように構成される。本明細書で使用される場合、SIRP-アルファ結合ドメインと活性化受容体結合ドメインとの間で「近接した位置関係にある」という用語は、三次元透視図から認められる2つのドメイン間の相対的位置関係を指し、同一の免疫エフェクター細胞上で2つのドメインが免疫エフェクター細胞上で同時発現されたSIRP-アルファ及び活性化受容体にそれぞれ結合するのを可能にする。SIRP-アルファ及び活性化受容体(同一の免疫エフェクター細胞上で同時発現される)に対するSIRP-アルファ結合ドメイン及び活性化受容体結合ドメインのそれぞれの特異的結合性は、例えば、共焦点顕微鏡検査、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)又は単一分子超高解像度顕微鏡検査により検出可能である。
【0258】
[000337]本明細書に提示される多重特異性分子の標的抗原結合ドメインは、標的抗原と結合する抗体ドメイン又は抗体模倣ドメインを含み得る。用語「抗体ドメイン」及び用語「抗体模倣ドメイン」は上記で定義される。
【0259】
[000338]ある特定の実施形態では、標的抗原結合抗体ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合抗体ドメイン)は、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のN末端にリンクしている。ある特定の実施形態では、標的抗原結合抗体ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合抗体ドメイン)は、Fabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2つの標的抗原結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインのそれぞれは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)の各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む。
【0260】
[000339]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)、又は標的抗原結合抗体ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合抗体ドメイン)にリンクしている。
【0261】
[000340]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のC末端にリンクしている。そのような実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は標的抗原結合抗体を含み、その場合、SIRP-アルファ結合ドメインは、標的抗原結合抗体のFc領域のC末端にリンクしている。例証的実施形態が、例えば
図2B、
図6F、及び
図6Gに見出される。
【0262】
[000341]ある特定の実施形態では、標的抗原結合抗体ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合抗体ドメイン)及びSIRP-アルファ結合ドメインの両方が、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のN末端とリンクしているが、但しSIRP-アルファ結合ドメイン及び標的抗原結合抗体ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合抗体ドメイン)は、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)の同一のN末端にリンクしていない。例証的実施形態が、例えば
図6Eに見出される。
【0263】
[000342]ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合ドメインは、標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合Fabドメイン)の軽鎖のC末端にリンクしている。例証的実施形態が、例えば
図2Aに見出される。
【0264】
[000343]本明細書に提示される多重特異性分子が2つの標的抗原結合抗体ドメインを含む場合、SIRP-アルファ結合ドメインは、2つの標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合Fabドメイン)のうちの一方の軽鎖のC末端とリンクしていてもよく、またSIRP-アルファ結合ドメインは、2つの標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合Fabドメイン)の両方の軽鎖のC末端とやはりリンクしていてもよい。
【0265】
[000344]ある特定のその他の実施形態では、SIRP-アルファ結合抗体ドメインは活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のN末端にリンクしている。ある特定の実施形態では、SIRP-アルファ結合抗体ドメインはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)のN末端のうちの1つとリンクした重鎖を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は2つのSIRP-アルファ結合抗体ドメインを含み、そのそれぞれはFabドメインを含み、任意選択で、Fabドメインのそれぞれは、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)の各N末端とそれぞれリンクした重鎖を含む。そのような実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、SIRP-アルファ結合抗体を含む。これらの実施形態のいずれかにおいて、標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合ドメイン)は、活性化受容体結合ドメイン(例えば、Fcドメイン)、又はSIRP-アルファ結合抗体ドメインにリンクしている。
【0266】
[000345]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、SIRP-アルファ結合抗体を含み、その場合標的抗原結合ドメインは、SIRP-アルファ結合抗体のFc領域のC末端にリンクしているか(例えば、
図2D、
図6Bを参照されたい)、又はSIRP-アルファ結合抗体の軽鎖のC末端とリンクしている(例えば、
図2C及び
図6Aを参照されたい)。
【0267】
[000346]ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合ドメイン)は、SIRP-アルファ結合Fabドメインの軽鎖のC末端にリンクしている。例証的実施形態が、例えば
図6Aに見出される。ある特定の実施形態では、標的抗原結合ドメイン(例えば、腫瘍抗原結合ドメイン)は、SIRP-アルファ結合Fabドメインの重鎖又は軽鎖のN末端にリンクしている。例証的実施形態が、例えば
図6C及び
図6Dに見出される。
【0268】
[000347]本明細書で使用される場合、用語「~とリンクしている」とは、2コンポーネント間の共有結合相互作用又は非共有結合相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、及び疎水結合)を指す。
【0269】
[000348]本明細書に提示される多重特異性分子のコンフィギュレーションを、下記の表7に要約する。
[000349]
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
[000350]B.多重特異性分子
[000351]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメイン、Fcドメインを含む本明細書に提示される活性化受容体結合ドメイン、及び本明細書に提示される標的抗原結合ドメインを含む。
【0274】
[000352]本明細書に提示される多重特異性分子は、任意の適するフォーマットを取り得る。例証的事例は以下のように提示される。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む標的抗原結合抗体を含み、その場合、軽鎖それぞれのC末端は、抗SIRPα scFv(すなわち、SIRPα結合ドメイン)に融合する。標的抗原結合抗体は標的抗原結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Aに示す。
【0275】
[000353]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む標的抗原結合抗体を含み、その場合、重鎖それぞれのC末端は抗SIRPα scFv(すなわち、SIRPα結合ドメイン)に融合する。標的抗原結合抗体は、標的抗原結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Bに示す。
【0276】
[000354]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、軽鎖それぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有するscFv(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Cに示す。
【0277】
[000355]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、重鎖それぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有するscFv(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図2Dに示す。
【0278】
[000356]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、軽鎖それぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Aに示す。
【0279】
[000357]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、重鎖それぞれのC末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Bに示す。
【0280】
[000358]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、重鎖それぞれのN末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Cに示す。
【0281】
[000359]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗SIRPα抗体を含み、その場合、軽鎖それぞれのN末端は、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、標的抗原結合ドメイン)に融合する。抗SIRPα抗体は、SIRPα結合ドメイン及びFcドメインを含む。例証的事例を
図6Dに示す。
【0282】
[000360]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、抗SIRPα結合ドメイン(例えば、Fab)及び標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)をそれぞれ含み、それぞれFcドメインのポリペプチド鎖のN末端に融合する。例証的事例を
図6Eに示す。
【0283】
[000361]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2本の重鎖を含み、それぞれ、Fcドメインのポリペプチド鎖のN末端に融合した、標的抗原に結合する能力を有する単一ドメイン抗体(sdAb)を含み、及びFcドメインのポリペプチド鎖うちの1つのC末端に融合した少なくとも1つの抗SIRPα結合ドメインを更に含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、Fcドメインのポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に融合した、1つの抗SIRPα結合ドメインを含む。例証的事例を
図6Fに示す。
【0284】
[000362]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、2つの抗SIRPα結合ドメインを含み、それぞれFcドメインのポリペプチド鎖のうちの1つのC末端に融合する。例証的事例を
図6Gに示す。
【0285】
[000363]これらの実施形態のいずれかにおいて、標的結合ドメインは、クローディン18.2結合ドメイン又はPD-L1結合ドメインである。
[000364]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、配列番号23~64の1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のCDR配列(C25、hu025.021、hu025.033、hu025.023、hu025.059、hu025.060、C15、C42、C59、及びC73に由来する)を含むSIRPα結合ドメイン、配列番号77~106及び225の1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のCDR配列(hu26.H1L1、hu26.H1L2、hu26.H1L2(S92A)、hu26.H3L1、hu26.H3L2、hu28.H1L2、C10、C29、及びC30に由来する)を含むクローディン18.2結合ドメイン、並びに/或いは配列番号119~154及び223の1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のCDR配列(C71、C71v38、C239、C492、C570、570h3、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719に由来する)を含むPD-L1結合ドメインを含む。
【0286】
[000365]ある特定の実施形態では、SIRPα/クローディン18.2/PD-L1結合ドメインは、抗体ドメイン又は抗体模倣ドメインを含む。ある特定の実施形態では、抗体ドメインは、Fab、VHH、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、F(ab)2、scFvダイマー(2価のダイアボディ)、ラクダ化単一ドメイン抗体(adAb)、ナノボディ、テトラボディ、ドメイン抗体、又は2価ドメイン抗体からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗体模倣ドメインは、イントラボディ(例えば、フィブロネクチンドメイン)、モノボディ、直鎖ペプチド、プロテインAのZドメイン(アフィボディ)、ガンマB結晶性ドメイン、ユビキチンドメイン、シスタチンドメイン、Sac7dドメイン、三重へリックスコイルドコイルドメイン、リポカリンドメイン、膜受容体のAドメイン、アンキリン反復モチーフ、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤のクニッツドメイン、フィブロネクチンのIII型ドメイン(ミニボディ)、DARPinドメイン、炭水化物結合モジュール32-2からなる群から選択される。
【0287】
[000366]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、
a)配列番号23の配列を含む重鎖CDR1、配列番号24の配列を含む重鎖CDR2、配列番号25の配列を含む重鎖CDR3、及び/又は配列番号26の配列を含む軽鎖CDR1、配列番号27の配列を含む軽鎖CDR2、配列番号28の配列を含む軽鎖CDR3を含むSIRPα結合ドメイン、
b)
i)配列番号83の配列を含む重鎖CDR1、配列番号84の配列を含む重鎖CDR2、配列番号85の配列を含む重鎖CDR3、及び/又は配列番号86の配列を含む軽鎖CDR1、配列番号87の配列を含む軽鎖CDR2、配列番号88の配列を含む軽鎖CDR3、或いは
ii)配列番号77の配列を含む重鎖CDR1、配列番号78の配列を含む重鎖CDR2、配列番号79の配列を含む重鎖CDR3、及び/又は配列番号80の配列を含む軽鎖CDR1、配列番号81の配列を含む軽鎖CDR2、配列番号223の配列を含む軽鎖CDR3
を含むクローディン18.2結合ドメイン、並びに/或いは
c)
i)配列番号119の配列を含む重鎖CDR1、配列番号120の配列を含む重鎖CDR2、配列番号121の配列を含む重鎖CDR3、又は
ii)配列番号131の配列を含む重鎖CDR1、配列番号132の配列を含む重鎖CDR2、配列番号133の配列を含む重鎖CDR3
を含むPD-L1結合ドメイン
を含む。
【0288】
[000367]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、及び21、又はSIRPα(例えば、ヒトSIRPα)に対する特異的結合親和性をなおも保持しつつ、少なくとも80%の配列同一性を有するその相同的配列からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域、並びに/或いは配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、及び22からなる群から選択される配列、又はSIRPα(例えば、ヒトSIRPα)に対する特異的結合親和性をなおも保持しつつ、少なくとも80%の配列同一性を有するその相同的配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0289】
[000368]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、抗SIRPα scFvを含む。ある特定の実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)を介して、軽鎖可変領域とリンクした重鎖可変領域を含む。或いは、ある特定の実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)を介して、重鎖可変領域とリンクした軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、抗SIRPα scFvは配列番号226のアミノ酸配列を含む。
【0290】
[000369]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、配列番号65、68、69、71、73、及び75からなる群から選択される配列、又はクローディン18.2(例えば、ヒトクローディン18.2)に対する特異的結合親和性をなおも保持しつつ、少なくとも80%の配列同一性を有するその相同的配列を含む重鎖可変領域、並びに/或いは配列番号66、67、70、72、74、76、及び224からなる群から選択される配列、又はクローディン18.2(例えば、ヒトクローディン18.2)に対する特異的結合親和性をなおも保持しつつ、少なくとも80%の配列同一性を有するその相同的配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0291】
[000370]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは抗クローディン18.2scFvを含む。ある特定の実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)を介して、軽鎖可変領域とリンクした重鎖可変領域を含む。或いは、ある特定の実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)を介して、重鎖可変領域とリンクした軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、抗クローディン18.2scFvは配列番号227のアミノ酸配列を含む。
【0292】
[000371]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、配列番号107~118、及び223からなる群から選択される配列、又はPD-L1(例えば、ヒトPD-L1)に対する特異的結合親和性をなおも保持しつつ、少なくとも80%の配列同一性を有するその相同的配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0293】
[000372]様々な技術が、そのような抗原結合ドメインの生成に使用可能である。例証的方法として、無変抗体の酵素消化(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992);and Brennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)等による組換え発現(例えば、Fab、Fv、及びScFv抗体断片について)、及び上記で議論したようなファージディスプレイライブラリーからのスクリーニング(例えば、ScFvについて)が挙げられる。抗体断片を生成するためのその他の技術は当業者にとって明白である。
【0294】
[000373]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメイン及び/又はクローディン18.2結合ドメインは、scFv又はFabであるか又はそれを含む。scFvの生成は、例えば、国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、及び同第5,587,458号に記載されている。scFvは、アミノ末端又はカルボキシル末端のいずれかにおいてエフェクタータンパク質に融合して融合タンパク質を提供し得る(例えば、Antibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい)。scFvは、直接又はペプチドリンカーを介してVLにリンクしたVHを含み得る。ある特定の実施形態では、VHはscFvのN末端に位置し得、及びVLはC末端に位置し得る。ある特定の実施形態では、VLがscFvのN末端に位置し得、及びVHがC末端に位置し得る。
【0295】
[000374]ある特定の実施形態では、SIRPアルファ結合ドメイン、標的抗原結合ドメイン(例えば、クローディン18.2結合ドメイン/PD-L1結合ドメイン)、及び活性化受容体結合ドメインは、ペプチドリンカーを介して接続される。ペプチドリンカーは、トレオニン/セリン及びグリシンから構成される、単一の配列又は反復した配列、例えばTGGGG(配列番号183)、GGGGS(配列番号184)、GGGGSGGGGS(配列番号185)、(Gly4Ser)3(配列番号186)、若しくはSGGGG(配列番号187)、又はそのタンデムリピート(例えば、2、3、4、又はより多数の反復)等を含み得る。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号34)を含む。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、(Gly4Ser)3(配列番号186)を含か又はそれである。
【0296】
[000375]C.多重特異性分子の特徴付け
[000376]いくつかの実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、ヒトSIRPアルファ及びCD47発現細胞表面マーカー(例えば、CD47発現細胞の表面上で発現されるヒトクローディン18.2又はPD-L1)の両方に特異的に結合する能力を有する。本明細書に提示される多重特異性分子は、ヒトSIRPアルファ及びヒトクローディン18.2/ヒトPD-L1の両方に対する特異的結合親和性を保持し、ある特定の実施形態では、そのような側面において親抗体に少なくとも匹敵するか、又はそれより良好でさえある。
【0297】
[000377]多重特異性分子の結合性は、「50%効果濃度」(EC50)値(その最大効果(例えば、結合性又は阻害等)の50%が観察される抗体の濃度を指す)により表すことができる。EC50値は、当技術分野において公知の方法、例えば、サンドイッチアッセイ法、例えばELISA等、ウェスタンブロット法、フローサイトメトリーアッセイ法、及びその他の結合アッセイ法により測定可能である。
【0298】
[000378]本明細書に提示される抗原結合ドメインの結合親和性は、KD値(抗原と抗原結合分子との間の結合が平衡に到達したときの会合速度に対する解離速度の比(koff/kon)を表す)により表すことも可能である。抗原結合親和性(例えば、KD)は、例えばフローサイトメトリーアッセイ法を含む、当技術分野において公知の適する方法を使用して適切に決定され得る。いくつかの実施形態では、異なる濃度の抗原に対する抗原結合ドメインの結合性がフローサイトメトリーにより決定可能であり、決定された平均蛍光強度(MFI)が抗原結合ドメインの濃度に対して最初にプロットされ得、次にPrismバージョン5(GraphPad Software社、San Diego、CA)を使用しながら、特異的結合蛍光強度(Y)及び抗体の濃度(X)の依存性を一部位飽和方程式(one site saturation equation):Y=Bmax*X/(KD+X)に近似させることにより、KD値を計算することが可能であり、ここで、Bmaxは抗原に対するテスト対象の抗原結合ドメインの最大特異結合を表す。
【0299】
[000379]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、Octetアッセイ法により測定した場合、25×10-8M、20×10-8M、15×10-8M、12×10-8M、10×10-8M、9×10-8M、8×10-8M、7×10-8M、6×10-8M、5×10-8M、4×10-8M、3×10-8M、2×10-8M、又は1×10-8M以下の結合親和性(KD)を有してヒトSIRPアルファに特異的に結合する。
【0300】
[000380]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、Octetアッセイ法により測定した場合、1×10-12M以下の結合親和性(KD)を有してヒトクローディン18.2に特異的に結合する。
【0301】
[000381]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、Octetアッセイ法により測定した場合、70×10-8M、65×10-8M、60×10-8M、55×10-8M、50×10-8M、45×10-8M、40×10-8M、35×10-8M、30×10-8M、25×10-8M、20×10-8M、15×10-8M、12×10-8M、10×10-8M、9×10-8M、8×10-8M、7×10-8M、6×10-8M、5×10-8M、4×10-8M、3×10-8M、2×10-8M、又は1×10-8M以下の結合親和性(KD)を有してヒトPD-L1に特異的に結合する。
【0302】
[000382]CD47とSIRPアルファとの相互作用、又はPD-1とPD-L1との相互作用に対する、本明細書に提示される多重特異性分子のブロッキング効果は、様々な技術、例えばルシフェラーゼレポーターアッセイ法、競合ELISAアッセイ法、及び競合FACSアッセイ法等により測定可能であり、IC50として表され得る。CD47とSIRPアルファとの相互作用をブロックする場合のIC50は、SIRPアルファに対するCD47の結合性が本開示の多重特異性分子の存在下で50%減少するときの、本明細書に提示される多重特異性分子の濃度を表す。PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする場合のIC50は、PD-L1に対するPD-1の結合性が本開示の多重特異性分子の存在下で50%減少するときの、本明細書に提示される多重特異性分子の濃度を表す。ある特定の実施形態では、PD-1とPD-L1との相互作用をブロックする場合の本明細書に提示される多重特異性分子のIC50は、抗PD-1 C71のIC50に匹敵する。
【0303】
[000383]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメインは、SIRP-アルファとCD47との相互作用のブロッキングについて、競合ELISAアッセイ法又は競合FACSアッセイ法により測定した場合、6.0nM、5.0nM、4.0nM、3.80nM、3.60nM、3.0nM、2.90nM、2.88nM、2.86nM、2.80nM、2.78nM、2.76nM、2.74nM、2.70nM、2.64nM、2.40nM、2.20nM、2.0nM、1.0nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.18nM、0.16nM、0.14nM、0.12nM以下のIC50値を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメインは、SHP-1導入のブロッキングについて、競合ELISAアッセイ法又は競合FACSアッセイ法により測定した場合、6.0nM以下、5.0nM以下、4.0nM以下、3.80nM以下、3.60nM以下、3.0nM以下、2.90nM以下、2.88nM以下、2.86nM以下、2.80nM以下、2.78nM以下、2.76nM以下、2.74nM以下、2.70nM以下、2.64nM以下、2.40nM以下、2.20nM以下、2.0nM以下、1.0nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、0.18nM以下、0.16nM以下、0.14nM以下、0.12nM以下、0.10nM以下、0.09nM以下、0.08nM、又は0.07nM以下のIC50値を有する。
【0304】
[000384]D.バリアント
[000385]本明細書に提示される多重特異性分子は、様々なそのバリアントも包含する。ある特定の実施形態では、バリアントは、表2、表4、及び表6に提示されるような1つ又は複数のCDR配列内、表1、表3、及び表5に提示される1つ又は複数の可変領域配列内(但し、CDR配列のいずれにも含まれない)、並びに/或いは定常領域(例えば、Fc領域)内に、1つ又は複数の改変又は置換を含む。そのようなバリアントは、その親抗体のようなSIRPα、クローディン18.2、及び/又はPD-L1に対する特異的結合親和性を保持するが、しかし改変(複数可)又は置換(複数可)により付与される1つ又は複数の望ましい特性を有する。例えば、バリアントは、抗原結合親和性の改善、生産性の向上、安定性の改善、グリコシル化パターンの改善、グリコシル化のリスク低下、脱アミノ化の低下、エフェクター機能(複数可)の低下又は枯渇、FcRn受容体結合性の改善、薬物動態学的半減期、pH感受性、及び/又はコンジュゲーションに対する適合性の増加(例えば、1つ又は複数の導入されたシステイン残基)を有し得る。
【0305】
[000386]親抗体配列は、当技術分野において公知の方法、例えば「アラニン走査式突然変異誘発」を使用して、どの残基が改変又は置換するのに適するか又は好ましいか特定するためにスクリーニングされ得る、(例えば、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085を参照されたい)。手短に述べると、標的残基(例えば、荷電残基、例えばArg、Asp、His、Lys、及びGlu等)が特定され、そして中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)に置換され得、そして改変された抗体が生成され、そして興味深い特性についてスクリーニングされる。特定のアミノ酸の箇所における置換が興味深い機能的変化を示す場合には、次にその位置は、改変又は置換のための有望な残基として特定され得る。有望な残基は、異なる種類の残基(例えば、システイン残基、正に荷電した残基等)に置換することにより更に評価され得る。
【0306】
[000387]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるSIRPα結合ドメイン、クローディン18.2結合ドメイン、及び/又はPD-L1結合ドメインは、1つ若しくは複数のCDR配列内、及び/又は1つ若しくは複数のFR配列内、及び/又は1つ若しくは複数の可変領域配列内に、1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。ある特定の実施形態では、バリアントは、CDR配列内、及び/又はFR配列内、及び/又は1つ又は複数の可変領域配列内に、全部で10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下、又は1個の置換を含む。
【0307】
[000388]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、SIRPαに対する結合親和性を、その親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号23~64及び198から選択される1、2、3、4、5、又は6個の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1、2、3、4、5、又は6個のCDR配列を含む。
【0308】
[000389]ある特定の実施形態では、SIRPα結合ドメインは、SIRPαに対する結合親和性を、その親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号1~22から選択される1つ又は複数の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つ又は複数の可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号1~22から選択される可変領域配列において、合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入、又は削除された。いくつかの実施形態では、置換、挿入、又は欠損は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)で生ずる。
【0309】
[000390]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、SIRPαに対する結合親和性をその親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号77~106及び225から選択される1、2、3、4、5、又は6個の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1、2、3、4、5、又は6個のCDR配列を含む。
【0310】
[000391]ある特定の実施形態では、クローディン18.2結合ドメインは、クローディン18.2に対する結合親和性をその親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号65~76及び224から選択される1つ又は複数の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つ又は複数の可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号65~76及び224から選択される可変領域配列において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入、又は削除された。いくつかの実施形態では、置換、挿入、又は欠損は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)で生ずる。
【0311】
[000392]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、PD-L1に対する結合親和性をその親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号119~154から選択される1、2、又は3個の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1、2、又は3個のCDR配列を含む。
【0312】
[000393]ある特定の実施形態では、PD-L1結合ドメインは、PD-L1に対する結合親和性をその親抗体と類似したレベル又はそれを凌駕するほどのレベルで保持しながら、配列番号107~118及び223から選択される1つ又は複数の配列に対して、少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する1つ又は複数の可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号107~118及び223から選択される可変領域配列において、合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入、又は削除された。いくつかの実施形態では、置換、挿入、又は欠損は、CDRの外側の領域内(例えば、FR内)で生ずる。
【0313】
[000394]i.グリコシル化バリアント
[000395]本明細書に提示される多重特異性分子は、グリコシル化バリアントも包含し、そのようなバリアントは、多重特異性分子の抗原結合ドメイン又は活性化受容体ドメインについて、そのグリコシル化の範囲を増加又は減少させることで取得され得る。
【0314】
[000396]本明細書に提示される多重特異性分子は、炭水化物部分(例えば、オリゴ糖構造)に連結し得る側鎖を有する1つ又は複数のアミノ酸残基を含み得る。抗体の抗原結合ドメインのグリコシル化は、一般的にN結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基、例えば、トリペプチド配列、例えばアスパラギン-X-セリンやアスパラギン-X-トレオニン(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)等内のアスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物部分の連結を指す。O結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンに対する糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つの連結を指す。天然グリコシル化部位の除去は、例えば、配列中に存在する上記トリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位の場合)、又はセリン若しくはトレオニン残基(O結合型グリコシル化部位の場合)のうちの1つが置換されるように、アミノ酸配列を変化させることにより好都合に実現可能である。新規グリコシル化部位は、類似した方法で、そのようなトリペプチド配列、又はセリン若しくはトレオニン残基を導入することにより創出され得る。
【0315】
[000397]ii.システイン工学操作バリアント
[000398]本明細書に提示される多重特異性分子は、1つ又は複数の導入された遊離システインアミノ酸残基を含むシステイン工学操作バリアントも包含する。
【0316】
[000399]遊離システイン残基とは、ジスルフィド架橋の一部をなさない残基である。システイン工学操作バリアントは、例えば、工学操作システインの部位において、例えばマレイミド又はハロアセチルを通じて、細胞毒性及び/又はイメージング化合物、ラベル、又はとりわけ放射性同位体とコンジュゲーションするのに有用である。抗体ポリペプチドを工学操作して遊離システイン残基を導入する方法は、当技術分野において公知であり、例えば国際公開第2006/034488号を参照されたい。
【0317】
[000400]iii.Fcバリアント
[000401]本明細書に提示される多重特異性分子はFcバリアントも包含し、そのようなバリアントは、そのFc領域及び/又はヒンジ領域において1つ又は複数のアミノ酸残基の改変又は置換を含み、例えばエフェクター機能、例えばADCC、ADCP、及びCDC等に変化をもたらす。抗体エンジニアリングによりADCC活性を変化させる方法は当技術分野に記載されており、例えば、Shields RL.et al.,J Biol Chem.2001.276(9):6591-604;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2000.164(8):4178-84;Steurer W.et al.,J Immunol.1995,155(3):1165-74;Idusogie EE.et al.,J Immunol.2001,166(4):2571-5;Lazar GA.et al.,PNAS,2006,103(11):4005-4010;Ryan MC.et al.,Mol.Cancer Ther.,2007,6:3009-3018;Richards JO,.et al.,Mol Cancer Ther.2008,7(8):2517-27;Shields R.L.et al,J.Biol.Chem,2002,277:26733-26740;Shinkawa T.et al,J.Biol.Chem,2003,278:3466-3473を参照されたい。
【0318】
[000402]本明細書に提示される抗体のCDC活性は、例えば、C1q結合性及び/又はCDCを改善するか又は減じることにより変化させることも可能である(例えば、国際公開第99/51642号;Duncan & Winter Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号を参照されたい);及びFc領域バリアントのその他の例に関する国際公開第94/29351号。Fc領域のアミノ酸残基329、331、及び322から選択される1つ又は複数のアミノ酸は、Clq結合性を変化させ、及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を低下させるか若しくは無効化するために異なるアミノ酸残基と置換可能である(Idusogieらの米国特許第6,194,551号を参照されたい)。1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)は、抗体が相補体を固定する能力を変化させるために導入することも可能である(BodmerらのPCT出願国際公開広報第94/29351号を参照されたい)。
【0319】
[000403]用語「抗体依存性細胞ファゴサイトーシス」及び「ADCP」とは、抗体がコーティングされた細胞又は粒子が、免疫グロブリンFc領域と結合する貪食細胞性免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞)により、全体的又は部分的に内部移行するプロセスを指す。抗体エンジニアリングにより抗体のADCP活性を変化させる方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Kellner C et al.,Transfus Med Hemother,(2017)44:327-336 and Chung AW et al.,AIDS,(2014)28:2523-2530を参照されたい。Fcバリアントの例は当技術分野において公知であり、例えば本明細書においてその全体が組み込まれるWang et al.,Protein Cell 2018,9(1): 63-73 and Kang et al.,Exp & Mol.,Med.(2019)51:138を参照されたい。
【0320】
[000404]i)エフェクター機能が増強したFcバリアント
[000405]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるFcバリアントは、野生型Fc(例えば、IgG1のFc)と比較して、それよりも増加したADCC、並びに/或いはFcγ受容体(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及び/又はFcγRIII(CD16))に対して増加した親和性を有する。ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、Fc領域の下記の位置:
234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、246、247、248、249、252、254、255、256、258、260、262、263、264、265、267、268、269、270、272、274、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、300、301、303、304、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、345、360、373、376、378、382、388、389、396、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438、439、及び440のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含み(本明細書においてその全体が組み込まれるPrestaによる国際公開第00/42072号、Lazarによる国際公開第2006/019447号、及び国際公開第2016/196228号を参照されたい)、ここで、Fc領域内の残基のナンバリングは、Kabatに準ずるEUインデックスのそれである(Kabat E.A.et al.,Sequences of Proteins of immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。エフェクター機能増加に関する例示的置換として、非限定的に、234Y、235Q、236A、236W、239D、239E、239M、243L、247I、268D、267E、268D、268E、268F、270E、280H、290S、292P、298A、298D、298V、300L、305I、324T、326A、326D、326W、330L、330M、333S、332D、332E、298A、333A、334A、334E、326A、247I、339D、339Q、345R、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305I、396L、430G、440Y、又は任意のこれらの組合せ(例えば、239D/332E、239D/332E/330L、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、及び267E/268F/324T等)が挙げられる(国際公開第2016/196228号;Richards et al.(2008)Mol.Cancer Therap.7:2517;Moore et al.(2010)mAbs 2:181;and Strohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 20:685-691を参照されたい)。
【0321】
[000406]位置256、290、298、333、334、及び339における特異的突然変異は、FcγRIIIに対する結合性を改善することが明らかとなった。それに付加して、下記の複合的突然変異体は、FcγRIIIの結合性を改善することが明らかとなった:一方の重鎖内のT256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、S298A/E333A/K334A、及びL234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A、並びに対向する重鎖内のD270E/K326D/A330M/K334E(FcγRIII結合性及びADCC活性が増強する)。FcγRIIIaに対する結合性がきわめて増強したその他のFcバリアントとして、S239D/I332E及びS239D/I332E/A330L突然変異を有するバリアント(FcγRIIIaに対する親和性において最大の増加、FcγRIIb結合性の減少、及び強い細胞毒性活性を示した)、並びにL235V、F243L、R292P、Y300L、V305I、及びP396L突然変異を有するバリアント(FcγRIIIa結合性の増強、同時にADCC活性の増強を示した)が挙げられる(Lazar et al.(2006)Proc.Nat’l Acad Sci.(USA)103:4005;Awan et al.(2010)Blood 115:1204;Desjarlais & Lazar(2011)Exp.Cell Res,Stavenhagen et al.(2007)Cancer Res 67:8882を参照されたい)。Clqに対する結合性を増加させる改変は、CDC活性を増強するために導入され得る。例示的改変として、IgG2におけるK326(例えば、K326W)及び/又はE333改変、或いはIgG1における、単独又は任意の組合せでのS267E/H268F/S324T改変が挙げられる(Idusogie et al.(2001)J.Immunol.166:2571,Moore et al.(2010)mAbs 2:181を参照されたい)。その他の例示的改変として、K326W/E333S、S267E/H268F/S324T、及びE345R/E430G/S440Yが挙げられる。
【0322】
[000407]ii)エフェクター機能が低下したFc
[000408]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるFcバリアントは、野生型Fc(例えば、IgG1のFc)と比較して低下したエフェクター機能を有し、またFc領域の220、226、229、233、234、235、236、237、238、267、268、269、270、297、309、318、320、322、325、328、329、330、及び331からなる群から選択される位置において1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含み(国際公開第2016/196228号;Richards et al.(2008)Mol.Cancer Therap.7:2517;Moore et al.(2010)mAbs 2:181;and Strohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 20:685-691を参照されたい)、ここで、Fc領域内の残基のナンバリングは、Kabatに準ずるEUインデックスのそれである。エフェクター機能を低下させるための例示的置換として、非限定的に、220S、226S、228P、229S、233P、234V、234G、234A、234F、234A、235A、235G、235E、236E、236R、237A、237K、238S、267R、268A、268Q、269R、297A、297Q、297G、309L、318A、322A、325L、328R、330S、331S、又は任意のこれらの組合せが挙げられる(国際公開第2016/196228号、及びStrohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 20:685-691を参照されたい)。
【0323】
[000409]ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるFcバリアントは、IgG1アイソタイプのそれであり、そしてL234A、L234F、L234V、F234A、V234A、L235A、L235E、G237A、P238S、H268Q、H268A、N297A、N297Q、N297G、V309L、A330S、及びP331S、又は任意のこれらの組合せ(例えば、L234A/L235A等)からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるFcバリアントは、IgG2アイソタイプのそれであり、そしてH268Q、V309L、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268A、及び任意のこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提示されるFcバリアントは、IgG4アイソタイプのそれであり、そしてS228P、F234A、L235E、L235A、G237A、E318A、N297A、N297Q、N297G、及び任意のこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。
【0324】
[000410]iii)FcRnに対する結合性が変化したFc
[000411]ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、pH6.0において新生児型Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を改善する一方、pH7.4においては最低限度の結合性を保持する1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。そのようなバリアントは、それがリソゾーム内での分解から免れ、次に位置の移動がなされ、そして細胞の外部に放出されるのを可能にする酸性pHにおいてFcRnに結合するので、延長した薬物動態学的半減期を有し得る。FcRnとの結合親和性を改善するために抗体及びその抗原結合断片を工学操作する方法は当技術分野において周知されており、例えば、Vaughn,D.et al,Structure,6(1):63-73,1998;Kontermann,R.et al,Antibody Engineering,Volume1,Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK,published by Springer,2010;Yeung,Y.et al,Cancer Research,70:3269-3277(2010);Hinton,P.et al,J.Immunology,176:346-356(2006);Petkova et al.(2006)Int.Immunol.18:1759,Ball Acqua et al.Journal of Immunology 2002,169:5171-5180,Dall’Acqua WF.et al.,J Biol Chem.281:23514-23524(2006);Zalevsky J,et al,Nat Biotechnol.;28:157-159(2010);国際公開第2009/086320号;米国特許第6,277,375号;米国特許第6,821,505号;国際公開第97/34631号;及び国際公開第2002/060919号を参照されたい。
【0325】
[000412]投与されたときに、抗体の血清半減期の増加を引き起こす可能性があるFc改変の非限定的な例として、例えば、234(例えば、Fとの)、235(例えば、Qとの)、238(例えば、Dとの)、250(例えば、E又はQとの)、252(例えば、L/Y/F/W、又はTとの)、254(例えば、S又はTとの)、256(例えば、S/R/Q/E/D、又はTとの);259(例えば、Iとの);272(例えば、Aとの)、305(例えば、Aとの)、307(例えば、A又はPとの)、308(例えば、F、C、又はPとの)、311(例えば、A又はRとの)、312(例えば、Aとの)、322(例えば、Q)、328(例えば、E)、331(例えば、Aとの)、378(例えば、Aとの)、380(例えば、Aとの)、382(例えば、Aとの)、428(例えば、L又はFとの)、432(例えば、Cとの)、433(例えば、H/L/R/S/P/Q又はKとの)、434(例えば、H/F又はY又はS又はA又はWとの)、435(例えば、Hとの)、436(例えば、Lとの)、及び437(例えば、Cとの)から選択される1つ又は複数の位置における置換(複数可)が挙げられる(すべての位置はEUナンバリングによる)(国際公開第2016049000A2号;国際公開第2020052692号;国際公開第2016196228号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、Fcバリアントは、234F、235Q、238D、250Q、252T、252Y、254T、256E、259I、272A、305A、307A、308F、311A、322Q、328E、331S、380A、428L、432C、433K、433S、434S、434Y、434F、434W、434A、435H、436L、437C及び任意のこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、Fc改変は、a)428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)置換;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)置換;b)433K(例えば、H433K)及び434(例えば、N434Y又はN434F)置換;c)252Y、254T、及び256E(例えば、M252Y、S254T、及びT256E)置換;d)250Q及び428L置換(例えば、T250Q及びM428L);e)307A、380A、及び434A置換(例えば、T307A、E380A、及びN434A);f)P238D及びL328E置換;g)L234F、L235Q、K322Q、M252T、S254T、及びT256E置換;並びにh)L432C、H433S、N434W、Y436L、及びT437C置換から選択される改変の1つ又は対又は群を含む。
【0326】
[000413]いくつかの実施形態では、ハイブリッドIgGアイソタイプが、FcRn結合性及び抗体の半減期を増加させるのに使用され得る。ハイブリッドIgは、2つ以上のアイソタイプから生成可能である。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッドバリアントが、CH2及び/又はCH3領域内のIgG1位置を、2つのアイソタイプで異なる位置においてIgG3由来のアミノ酸と置換することにより構築され得る。いくつかの実施形態では、ハイブリッドIgは、ここで開示される1つ又は複数の改変(例えば、置換)を含み得る。
【0327】
[000414]E.コンジュゲート
[000415]いくつかの実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子はコンジュゲート部分を更に含む。コンジュゲート部分は多重特異性分子とリンクし得る。コンジュゲート部分は、多重特異性分子に連結可能である非タンパク質部分である。様々なコンジュゲート部分が、本明細書に提示される多重特異性分子とリンクし得るものと考えられる(例えば、“Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr.(eds.),Carger Press,New York,(1989)を参照されたい)。このようなコンジュゲート部分は、いくつかの方法の中でもとりわけ、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体形成、会合、混合、又は付加により多重特異性分子とリンクし得る。
【0328】
[000416]ある特定の実施形態では、本明細書で開示される多重特異性分子は、エピトープ結合部分の外側にある特定部位(1つ又は複数のコンジュゲートに結合するのに利用され得る)を含有するように工学操作され得る。例えば、そのような部位は、コンジュゲートとの共有結合を円滑化するための1つ又は複数の反応性アミノ酸残基、例えばシステイン又はヒスチジン残基等を含み得る。
【0329】
[000417]ある特定の実施形態では、多重特異性分子は、コンジュゲート部分と間接的に、又は別のコンジュゲート部分を通じてリンクし得る。例えば、多重特異性分子はビオチンにコンジュゲートし、次にアビジンにコンジュゲートしている第2のコンジュゲート部分に間接的にコンジュゲートし得る。コンジュゲート部分は、クリアランス修飾剤、毒素(例えば、化学療法剤)、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、ランタニド、発光標識、蛍光標識、又は酵素-基質標識)、又は精製部分であり得る。
【0330】
[000418]「毒素」は、細胞にとって有害であるか、又は細胞に障害若しくは死をもたらし得る任意の薬剤であり得る。毒素の例として、非限定的に、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DM1、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン及びそのアナログ、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害剤、及びチューブリン結合剤が挙げられる。
【0331】
[000419]検出可能な標識の例として、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、又はテキサスレッド)、酵素-基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ又はβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位体(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、及び32P、その他のランタニド類)、発光標識、発色部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、検出用のDNA分子又は金を挙げることができる。
【0332】
[000420]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、多重特異性分子の半減期を増加させるのに役立つクリアランス修飾剤であり得る。例証的事例として、水溶性ポリマー、例えばPEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー等が挙げられる。ポリマーは任意の分子量のそれであり得、また分岐状又は非分岐状であり得る。多重特異性分子に連結するポリマーの数は可変であり得、また2以上のポリマーに連結する場合には、それらは同一又は異なる分子であり得る。
【0333】
[000421]ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、精製部分、例えば磁気ビーズ等であり得る。
[000422]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、コンジュゲートのための基材用として使用される。
【0334】
[000423]F.ポリヌクレオチド及び組換え方法
[000424]本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子をコードする単離されたポリヌクレオチドについて提示する。
【0335】
[000425]用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用される場合、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、及び単鎖又は二本鎖のいずれかの形態にあるそのポリマーを指す。特別に限定されない限り、該用語は、参照核酸と類似した結合特性を有し、また天然に存在するヌクレオチドと類似した方式で代謝される天然ヌクレオチドの公知アナログを含有するポリヌクレオチドを包含する。別途表示されない限り、特定のポリヌクレオチド配列は、保存的に改変されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、並びに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ又は複数の選択された(又はすべての)コドンの第3の位置が混合基及び/又はデオキシイノシン残基と置換された配列を生成することにより達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);and Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)を参照されたい)。
【0336】
[000426]多くのベクターが利用可能である。ベクターコンポーネントとして、下記事項:シグナル配列、複製開始点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数が一般的に挙げられるが、これらに限定されない。
【0337】
[000427]本開示は、多重特異性分子をコードする本明細書に提示の核酸配列、該核酸配列と作動可能にリンクした少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、及び少なくとも1つの選択マーカーを含有するベクター(例えば、発現ベクター)について提示する。ベクターの例として、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ラムダファージ、及びM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bos等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0338】
[000428]多重特異性分子をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターが、クローニング又は遺伝子発現のために宿主細胞に導入可能である。本明細書のベクター内でDNAをクローニングするか又は発現させるための適する宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は上記記載のより高度の真核細胞である。これを目的とした適する原核生物として、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物等、例えば腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば大腸菌属(Escherichia)等、例えば大腸菌、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウイニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えばサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラシア属(Serratia)、例えば、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、及びシゲラ属(Shigella)、並びに桿菌(Bacilli)、例えばB.サブチリス(B.subtilis)やB.リケニフォルミス(B.licheniformis)等、シュードモナス属(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)等、及びストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。
【0339】
[000429]原核生物に付加して、真核生物病原菌、例えば糸状菌又は酵母菌等が、提示のベクターに対する適するクローニング又は発現宿主である。下等真核生物宿主微生物の中でもとりわけ、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母が最も一般的に使用される。しかしながら、いくつかのその他の属、種、及び系統、例えばシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等;クルイベロミセス属(Kluyveromyces)宿主、例えばK.ラクティス(K.lactis)、K.フラギリス(K.fragilis)(ATCC12,424)、K.ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC16,045)、K.ウィッカハミ(K.wickeramii)(ATCC24,178)、K.ワルティ(K.waltii)(ATCC56,500)、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC36,906)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、及びK.マルキシアヌス(K.marxianus)等;ヤロウイア属(yarrowia)(欧州特許第402,226号);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183,070号);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244,234号);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばシュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)等;及び糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)等、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えばA.ニデュランス(A.nidulans)やA.ニガー(niger)等が一般的に入手可能であり、また本明細書において有用である。
【0340】
[000430]本明細書に提示されるグリコシル化された多重特異性分子を発現させるための適する宿主細胞は多細胞生物に由来する。無脊椎細胞の例として、植物及び昆虫細胞が挙げられる。非常に多くのバキュロウイルス系統及びバリアント、並びに例えばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(ケムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila Melanogaster)(ミバエ)、及びカイコガ(BombyxMori)等の宿主に由来する、対応する許容される昆虫宿主細胞が識別されている。トランスフェクション用の様々なウイルス系統、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1バリアントや、カイコガ(Bombyx Mori)NPVのBm-5系統が公的に利用可能であり、またそのようなウイルスは、特にヨトウガ細胞にトランスフェクトするために、本発明に基づき、本明細書におけるウイルスとして使用され得る。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養物も、宿主として利用され得る。
【0341】
[000431]しかしながら、脊椎動物細胞に対する関心が最も高まっており、また培養物(組織培養物)内での脊椎動物細胞の増殖はルーチン手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞系統の例は、SV40(COS-7、ATCC CRL1651)により変換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胚腎臓系統(懸濁培養物内で増殖させるためにサブクローン化された293又は293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒトヘパトーマ系統(Hep G2)である。いくつかの好ましい実施形態では、宿主細胞は293F細胞である。
【0342】
[000432]宿主細胞は、本明細書に提示される多重特異性分子を生成するために、上記の発現又はクローニングベクターを用いて変換され、そしてプロモーターを誘発し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜改変された従来型の栄養培地内で培養される。別の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、当技術分野において公知の相同的組換え法により生成され得る。
【0343】
[000433]本明細書に提示される多重特異性分子を生成するのに使用される宿主細胞は、様々な培地内で培養され得る。市販の培地、例えばHamのF10(Sigma社)、最小必須培地(MEM)(Sigma社)、RPMI-1640(Sigma社)、及びDulbecco変法イーグル培地(DMEM)(Sigma社)等が、宿主細胞を培養するのに適する。それに加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;又は同第5,122,469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許Re.30,985号に記載されている培地のいずれかが、宿主細胞用の培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/又はその他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子等)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩等)、バッファー(例えば、HEPES等)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬物等)、微量元素(マイクロモルの範囲内の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は等価なエネルギー源が補充され得る。任意のその他必要なサプリメントも、当業者にとって公知の適する濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH等は、発現用に選択された宿主細胞と共にこれまでに使用された条件であり、また当業者にとって明白である。
【0344】
[000434]組換え技術を使用するとき、多重特異性分子は、細胞内、細胞膜周辺腔内に生成可能、又は培地中に直接分泌可能である。抗体が細胞内に生成される場合、第1のステップとして、粒子状デブリ、すなわち宿主細胞又は溶解した断片のいずれかが、例えば、遠心分離又は限外濾過により除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に対して分泌される抗体を単離するための手順について記載する。手短に述べると、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分間解凍される。細胞デブリは遠心分離によりは除去可能である。多重特異性分子が培地中に分泌される場合、そのような発現系に由来する上清は、一般的に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して最初に濃縮される。タンパク質分解を阻害するために、プロテアーゼ阻害剤、例えばPMSF等が上記ステップのいずれかに含まれ得るが、また外来汚染物質の増殖を阻止するために、抗生物質が含まれ得る。
【0345】
[000435]細胞から調製された多重特異性分子は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得るが、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。
【0346】
[000436]ある特定の実施形態では、固相上に固定されたプロテインAが、多重特異性分子の免疫親和性精製で使用される。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、種及び多重特異性分子内に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインのアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトガンマ1、ガンマ2、又はガンマ4重鎖に基づく抗体を精製するのに使用可能である(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。すべてのマウスアイソタイプ及びヒトガンマ3に対してタンパク質Gが推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:1567 1575(1986))。親和性リガンドが連結するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、しかしその他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば孔径制御型ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の方が、アガロースを用いて実現可能である場合よりも高速流速及び短時間処理を可能にする。多重特異性分子がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のためのその他の技術、例えばイオン交換カラム、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂を用いたヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム等)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿による分画等も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0347】
[000437]任意の予備的精製ステップ(複数可)に後続して、目的とする抗体分子及び汚染物質を含む混合物は、pH約2.5~4.5の溶出バッファーを使用する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィー(好ましくは低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)において実施される)に供される。
【0348】
[000438]G.医薬組成物
[000439]本開示は、多重特異性分子及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物について更に提示する。
【0349】
[000440]本明細書に開示される医薬組成物で使用される薬学的に許容される担体として、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル、又は固体担体、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張化剤、バッファー、酸化防止剤、麻酔薬、懸濁化/ディスペンディング剤、封鎖又はキレート剤、稀釈剤、アジュバント、賦形剤、又は無毒性補助物質剤、当技術分野において公知のその他のコンポーネント、或いは様々なその組合せを挙げることができる。
【0350】
[000441]適するコンポーネントとして、例えば、酸化防止剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、バッファー、防腐剤、潤滑剤、着香料、増粘剤、着色剤、乳化剤、又は安定剤、例えば糖やシクロデキストリン等を挙げることができる。適する酸化防止剤として、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、及び/又は没食子酸プロピルを挙げることができる。本明細書に開示されるように、本明細書に提示されるような多重特異性分子及びコンジュゲートを含む組成物内に1つ又は複数の酸化防止剤、例えばメチオニン等を含めることで、多重特異性分子の酸化が減少する。このように酸化が抑えられることで、結合親和性の喪失が阻止又は抑制され、これにより抗体安定性が改善し、有効期間が最大化する。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるような1つ又は複数の多重特異性分子、及び1つ又は複数の酸化防止剤、例えばメチオニン等を含む組成物が提示される。多重特異性分子を1つ又は複数の酸化防止剤、例えばメチオニン等と混合することにより、本明細書に提示されるような多重特異性分子の酸化を防止し、有効期間を延長し、及び/又は有効性を改善するための方法が更に提示される。
【0351】
[000442]更に例証すると、薬学的許容される担体として、例えば水性媒体、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、又はデキストロース及び乳酸リンゲル注射液等、非水性媒体、例えば野菜起源の不揮発性油、綿実油、コーンオイル、ゴマ油、又はピーナッツ油等、静菌又は静真菌濃度の抗菌剤、等張化剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース等、バッファー、例えばリン酸又はクエン酸バッファー等、酸化防止剤、例えば硫酸水素ナトリウム等、局所麻酔薬、例えばプロカインヒドロクロリド等、懸濁化及び分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリビニルピロリドン等、乳化剤、例えばポリソルベート80(ツイーン-80)等、封鎖又はキレート剤、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はEGTA(エチレングリコール四酢酸)等、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、又は乳酸を挙げることができる。担体として利用される抗菌剤が複数用量コンテナー内の医薬組成物に添加され場合があり、フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、並びに塩化ベンゼトニウムが挙げられる。適する賦形剤として、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、又はエタノールを挙げることができる。適する無毒性補助物質として、例えば、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解度増強剤、又は酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、若しくはシクロデキストリン等の薬剤を挙げることができる。
【0352】
[000443]医薬組成物は、液体溶液、懸濁物、エマルジョン、ピル、カプセル、錠剤、持続放出型製剤、又は粉末であり得る。経口製剤として、標準的な担体、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0353】
[000444]ある特定の実施形態では、医薬組成物は、注射可能な組成物内に製剤化される。注射可能な医薬組成物は、任意の従来形態、例えば液体溶液、懸濁物、エマルジョン等、又は液体溶液、懸濁物、若しくはエマルジョンを生成するのに適する固体形態で調製され得る。注射用の調製物として、即時注射用の滅菌及び/又は非発熱性溶液、滅菌乾燥可溶性製品、例えば使用直前に溶媒と直ちに混合される真空凍結乾燥された粉末(皮下注射用錠剤を含む)等、即時注射用の滅菌懸濁物、使用直前に媒体と直ちに混合される滅菌乾燥不溶性製品、並びに滅菌及び/又は非発熱性エマルジョンを挙げることができる。溶液は水性又は非水性のいずれかであり得る。
【0354】
[000445]ある特定の実施形態では、単位用量の非経口調製物が、アンプル、バイアル、又はシリンジ内に、針と共にパッケージングされる。非経口投与用のすべての調製物は、当技術分野において公知でありまた実践されるように、滅菌性であるべきであり且つ発熱性であってはならない。
【0355】
[000446]ある特定の実施形態では、滅菌真空凍結乾燥粉末は、本明細書に開示されるような多重特異性分子を適する溶媒中に溶解することにより調製される。溶媒は、安定性を改善する賦形剤、又は粉末のその他の薬理学的コンポーネント、又は粉末から調製される再構成された溶液を含有し得る。使用され得る賦形剤として、水、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又はその他の適する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、バッファー、例えばクエン酸塩、リン酸ナトリウム若しくはカリウム等、又は当業者にとって公知であり、1つの実施形態では中性pH付近のその他のそのようなバッファーを含有し得る。後続する溶液の滅菌濾過、それに続いて当業者にとって公知の標準的条件下で真空凍結乾燥を行うことにより、望ましい製剤が得られる。1つの実施形態では、得られた溶液は、真空凍結乾燥のためにバイアル中に小分けされる。各バイアルは、単回投薬量又は複数投薬量の多重特異性分子又はその組成物を含有し得る。1回用量又はセット用量に必要とされる量を上回る(例えば、約10%)少量を用いてバイアルに過剰充填することは、正確なサンプルの取り出し及び正確な投与を円滑化するために許容される。真空凍結乾燥された粉末は、適切な条件下、例えば約4℃~室温等において保管され得る。
【0356】
[000447]注射用水を用いて真空凍結乾燥粉末を再構成すれば、非経口投与で使用するための製剤が得られる。1つの実施形態では、再構成する場合、滅菌性及び/又は非発熱性の水、或いはその他の適する液状担体が、真空凍結乾燥粉末に添加される。正確な量は、実施される選択された療法に依存し、また実験的に決定され得る。
【0357】
[000448]H.使用方法
[000449]別の態様では、本開示は、本明細書に提示される多重特異性分子についてその使用方法を提示する。本明細書に提示される多重特異性分子は、本明細書に提示されるSIRP-アルファ結合ドメイン、本明細書に提示される活性化受容体結合ドメイン、及び本明細書に提示される標的抗原結合ドメインを含む。標的抗原結合ドメインは、標的抗原及びCD47を同時発現する標的細胞上で発現される標的抗原と結合する。本明細書に提示され多重特異性分子は、標的抗原の存在下で、免疫エフェクター細胞のエフェクター機能を選択的に誘発する能力を有し、また免疫エフェクター細胞はSIRP-アルファ及び活性化受容体を同時発現する。
【0358】
[000450]1つの態様では、本開示は、ファゴサイトーシスをin vitroで誘発する方法であって、標的細胞を、本明細書に提示される多重特異性分子の存在下で、SIRPα陽性貪食性細胞サンプルと接触させ、これによりSIRPα陽性貪食性細胞による標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するステップを含む方法について提示する。
【0359】
[000451]1つの態様では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発する方法であって、対象に対して、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発するのに有効な用量で、本明細書に提示される多重特異性分子を投与するステップを含む方法について提示する。
【0360】
[000452]1つの態様では、本開示は、がん細胞のファゴサイトーシスを増強するために、それを必要としている対象において、腫瘍関連の単球又はマクロファージ(TAM)を抗腫瘍マクロファージにリダイレクトする方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子又はエンゲイジャーの治療有効量を投与するステップを含む方法について提示する。それに加えて、本明細書に提示されるエンゲイジャーは、マクロファージを活性化させ、そして活性化したマクロファージを腫瘍微小環境に関与させて、がん細胞に対するファゴサイトーシス効果を発揮させることもできる。
【0361】
[000453]別の態様では、本開示は、腫瘍微小環境内のM1マクロファージのレベルを増加させることを必要とする対象において、それを増加させる方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子又はエンゲイジャーの治療有効量を投与するステップを含む方法についても提示する。本明細書で使用される場合、用語「腫瘍微小環境」とは、組織(複数可)、細胞、及びがん細胞又は腫瘍細胞を取り巻く環境を指す。腫瘍微小環境は、間質細胞、例えば線維芽細胞、周細胞、内皮細胞、脂肪細胞、及び骨髄間葉間質細胞(MSC)等を含み得る。腫瘍微小環境は、がん細胞と関連するか又はがん細胞を取り巻く間質細胞と関連する細胞外マトリックスも含み得る。細胞外マトリックスは、細胞間物質(プロテオグリカン凝集物から主になる多孔性の水和したゲル)、及び結合組織線維から主に構成される。実験的には、特定の腫瘍に関する腫瘍微小環境は、例えば特定の腫瘍を担持する組織を切り取り、そして単離することにより取得可能である。
【0362】
[000454]M1マクロファージのレベルに関する場合、用語「~を増加させる」又は「~を増加させること」とは、本明細書に提示される場合、本明細書に提示される多重特異性分子又はエンゲイジャーが存在しない腫瘍微小環境と比較して、本明細書に提示される多重特異性分子又はエンゲイジャーが存在する腫瘍微小環境において、M1マクロファージカウント(総マクロファージカウントに対して標準化される)が上昇していることを指す。腫瘍微小環境内のM1マクロファージのレベル又はM1マクロファージカウントは、M1表現型の表面マーカープロファイルを有するマクロファージの量について、当技術分野において公知の従来技術、例えばFACSアッセイ法等により測定可能である(CD80high及びCD206midプロファイル、Zhang M et al.,Anti-CD47 Treatment Stimulates Phagocytosis of Glioblastoma by M1 and M2 Polarized Macrophages and Promotes M1 Polarized Macrophages In Vivo.PloS one 11,e0153550,10.1371/journal.pone.0153550(2016)を参照されたい)。M1マクロファージのレベル又はM1マクロファージカウントは、誘導型一酸化窒素合成酵素1(Nos1)のmRNA発現レベル(総mRNA発現レベルに標準化される-M1マクロファージ内で上昇することが公知)のqPCR分析法によっても測定可能である(Zhang M et al.,Anti-CD47 Treatment Stimulates Phagocytosis of Glioblastoma by M1 and M2 Polarized Macrophages and Promotes M1 Polarized Macrophages In Vivo.PloS one 11,e0153550,10.1371/journal.pone.0153550(2016))。M1表現型を有するマクロファージの数を計測することができる、又はM1マクロファージについて1つ又は複数の特徴的なマーカーの発現レベルを決定することができるその他の方法、例えば共焦点蛍光顕微鏡検査法又はウェスタンブロット法等は、本開示の検討範囲内にある。別の態様では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法についても提示する。
【0363】
[000455]ある特定の実施形態では、標的細胞は標的抗原及びCD47を同時発現する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、がん細胞、炎症細胞、及び/又は慢性的に感染した細胞を含む。いくつかの実施形態では、標的抗原は、腫瘍表面抗原、炎症性抗原、又は感染性微生物の抗原である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異抗原(TSA)、例えば新生抗原等)、又は感染細胞上に提示される抗原(例えば、B型肝炎表面抗原(HBsAg))であり得る。
【0364】
[000456]ある特定の実施形態では、標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る障害又は状態として、例えば、がん(例えば、固形腫瘍、血液学的悪性腫瘍)、炎症性疾患、感染性疾患(例えば、慢性感染症)、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)、神経学的疾患、脳損傷、神経傷害、赤血球増多症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植機能障害、及び関節炎を挙げることができる。
【0365】
[000457]別の態様では、本開示は、対象における標的抗原に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法についても提示する。例えば、標的抗原が腫瘍抗原を含む場合、標的抗原関連疾患として腫瘍又はがんを挙げることができる。例えば、標的抗原が感染細胞上で提示される抗原を含む場合、標的抗原関連疾患として関連する感染性疾患を挙げることができる。ある特定の実施形態では、標的抗原はPD-L1を含む。ある特定の実施形態では、標的抗原はクローディン18.2を含む。
【0366】
[000458]別の態様では、本開示は、対象におけるSIRPαに関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法についても提示する。
【0367】
[000459]別の態様では、本開示は、対象におけるCD47に関連する疾患、障害、又は状態を処置する方法であって、対象に対して、本明細書に提示される多重特異性分子の治療有効量を投与するステップを含む方法についても提示する。
【0368】
[000460]いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象はSIRPαv1についてホモ接合性である。いくつかの実施形態では、対象はSIRPαv2についてホモ接合性である。
【0369】
[000461]いくつかの実施形態では、対象は、がん(例えば、固形腫瘍、血液学的悪性腫瘍)、炎症性疾患、感染性疾患(例えば、慢性感染症)、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症)、神経学的疾患、脳損傷、神経傷害、赤血球増多症、ヘモクロマトーシス、外傷、敗血症性ショック、線維症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、移植機能障害、及び関節炎からなる群から選択される疾患、障害、又は状態を有すると診断を下されたか又はそのリスクに晒されている。好ましい実施形態では、対象は、1つ又は複数の固形腫瘍を有すると診断を下されたか又はそのリスクに晒されている。
【0370】
[000462]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害は、免疫に関連する疾患又は障害、腫瘍、及びがん、自己免疫疾患、又は感染性疾患であり得る。ある特定の実施形態では、免疫に関連する疾患又は障害は、全身性エリテマトーデス、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脈管炎、重症筋無力症、突発性肺線維症、クローン病、喘息、リウマチ性関節炎、移植片対宿主病、脊椎関節障害(例えば、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患と関連する孤発性急性腸炎性関節炎、反応性関節炎、ベーチェット症候群、未分化脊椎関節症、前部ブドウ膜炎、及び若年性特発性関節炎)、多発性硬化症、子宮内膜症、糸球体腎炎、敗血症、糖尿病、急性冠状動脈症候群、虚血再潅流、乾癬、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、又は炎症性自己免疫性筋炎からなる群から選択される。
【0371】
[000463]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害として、腫瘍及びがんが挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害として、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍が挙げられる。がん及び腫瘍の例として、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、膵がん、胃癌、膀胱がん、食道がん、中皮腫、黒色腫、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、ミエローマ、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及びその他の血液悪性腫瘍、例えば古典的ホジキンリンパ腫(CHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型B細胞リンパ腫、EBV陽性及び陰性PTLD、及びEBV関連のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、形質芽球性リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫等、鼻咽頭癌、及びHHV8関連の原発性滲出性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、中枢神経系(CNS)の新生物、例えば原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫等、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、基底細胞癌、胆嚢がん、胃がん、肺がん、気管支がん、骨がん、肝臓及び胆管のがん、膵がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、睾丸がん、腎がん、腎盂及び尿管がん、唾液腺がん、小腸がん、尿道がん、膀胱がん、頭頸部がん、脊椎がん、脳がん、子宮頸部がん、子宮がん、子宮内膜がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胃腸がん、皮膚がん、前立腺がん、脳下垂体がん、膣がん、甲状腺がん、咽頭がん、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄異形成症候群、肉腫、テラトーマ、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T又はB細胞リンパ腫、消化管間質腫瘍、軟部組織腫瘍、肝細胞癌、及び腺癌、又はそれらの転移が挙げられる。好ましい実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害は、1つ又は複数の固形腫瘍を含む。
【0372】
[000464]いくつかの実施形態では、がんはCD47陽性がんである。いくつかの実施形態では、がんはCD47陽性及び標的抗原陽性がんある。いくつかの実施形態では、処置される対象は、CD47陽性がん、又はCD47陽性及び標的抗原陽性がんを有するものと識別された。「CD47陽性」がんとは、本明細書で使用される場合、がん細胞内でCD47を発現するか、又はがん細胞内でCD47を、正常な細胞において予想されるレベルよりも有意に高いレベルで発現することを特徴とするがんを指す。「標的抗原陽性」がんとは、本明細書で使用される場合、がん細胞内で標的抗原を発現するか、又はがん細胞内で標的抗原を、正常な細胞において予想されるレベルよりも有意に高いレベルで発現することを特徴とするがんを指す。
【0373】
[000465]目的とする生物学的サンプル内のCD47及び標的抗原の存在及び/又は量は、様々な適する方法を使用しながら、対象に由来する生物学的テストサンプル内で決定可能である。例えば、生物学的テストサンプルは、発現したCD47タンパク質又は標的抗原タンパク質と結合し、それを検出する抗CD47抗体若しくは抗標的抗原抗体、又はその抗原結合断片に曝露され得る。或いは、CD47又は標的抗原タンパク質は、qPCR法、逆転写酵素PCR法、マイクロアレイ法、SAGE法、FISH法等の方法を使用して、核酸発現レベルにおいてもやはり検出可能である。いくつかの実施形態では、テストサンプルは、がん細胞又は組織又は腫瘍浸潤性免疫細胞に由来する。ある特定の実施形態では、生物学的テストサンプル内のCD47又は標的抗原タンパク質の存在又は上方制御されたレベルは、応答の可能性を示唆する。用語「上方制御された」とは、本明細書で使用される場合、CD47又は標的抗原の参照発現レベルと比較して、テストサンプルに含まれるCD47又は標的抗原タンパク質の発現レベルにおいて、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上、又はそれ超、全体的に増加することを表す。参照レベルは、同一組織型の正常細胞に見出されるCD47又は標的抗原の発現レベルであり得、任意選択で別の遺伝子(例えば、ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルに対して標準化され得る。或いは、参照レベルは、健康な対象に見出されるCD47又は標的抗原の発現レベルであり得る。参照サンプルは、健康若しくは非疾患性の個体から取得されたコントロールサンプル、又はテストサンプルが取得される個体と同一の個体から取得された健康若しくは非疾患性のサンプルであり得る。例えば、参照サンプルは、テストサンプル(例えば、腫瘍)に隣接するか又はその近傍に位置する非疾患性のサンプルであり得る。いくつかの実施形態では、参照物質が、目的とするテスト又は決定工程と実質的に同時にテスト及び/又は決定される。いくつかの実施形態では、参照物質は、任意選択で有形的表現媒体において具体化される参照物質の履歴である。一般的に、当業者により理解されるように、参照物質は、アセスメントの対象とされる条件又は状況に匹敵する条件又は状況下で決定又は特徴付けられる。
【0374】
[000466]ある特定の実施形態では、腫瘍及びがんは転移性腫瘍、特にCD47を発現する転移性腫瘍である。
[000467]ある特定の実施形態では、腫瘍及びがんはPD-L1陽性がんである。ある特定の実施形態では、PD-L1陽性がんは、NSCLC、SCLC、黒色腫、頭頸部がん、肝細胞癌、MSI-H、又はdMMRがん、子宮頸がん、乳がん、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫、膵がん、尿路上皮がんからなる群から選択される。
【0375】
[000468]ある特定の実施形態では、腫瘍及びがんはクローディン18.2陽性がんである。いくつかの実施形態では、クローディン18.2陽性がんは上皮細胞由来のがんである。いくつかの実施形態では、がんは、胃がん、膵がん、肺がん、食道がん、卵巣がん、及びその転移である。
【0376】
[000469]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害として、自己免疫疾患が挙げられる。自己免疫疾患として、後天性免疫不全症候群(AIDS、自己免疫コンポーネントを伴うウイルス疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アディソン病、自己免疫性糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、腹腔のスプルー・ヘルペス状皮膚炎;慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、皮膚筋炎-若年性、円盤状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎障害、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スチル病)、若年性リウマチ性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られている)、シェーグレン症候群、スティフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、及びヴェグナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0377】
[000470]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される方法により処置可能な状態又は障害として、感染性疾患が挙げられる。感染性疾患として、例えば、慢性ウイルス感染症、例えば、菌類感染症、寄生虫/原生動物感染症、又は慢性ウイルス感染症、例えば、マラリア、コクシジオイドマイコシス・イミティス症(coccidioidomycosis immitis)、ヒストプラスマ症、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ・アルビカンス(candidiasis albicans)症、パラコクシジオイデス症、微胞子虫症、アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症、シャガス病、肝吸虫症、コクリオミイヤ症、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコックス症、象皮病、腸蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポーラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、睡眠病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫病、鞭虫症、トリパノソーマ病、蠕虫感染症、下記ウイルス:B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、HIV-1、HIV-2、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、カポジウエスト肉腫関連ヘルペスウイルス流行、シンリングウイルス(thin ring virus)(トルクテノウイルス)、ヒトT細胞リンパ指向性ウイルスI、ヒトT細胞リンパ指向性ウイルスII、水痘帯状疱疹(Varicella Zoster)、JCウイルス、又はBKウイルスの感染症が挙げられる。
【0378】
[000471]本明細書に提示されるような多重特異性分子の治療有効量は、当技術分野において公知の様々な要因、例えば、体重、年齢、既往歴、現在の薬物治療、対象の健康状態と交差反応の可能性、アレルギー、感受性及び有害な副作用、並びに投与経路及び疾患発症の範囲等に依存する。投薬量は、このような及びその他の状況又は要求事項が示すところに従い、当業者(例えば、医師又は獣医師)により比例的に減量又は増量され得る。
【0379】
[000472]ある特定の実施形態では、本明細書に提示される多重特異性分子は、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療上有効な用量で投与され得る。これらの実施形態のいずれかにおいて、多重特異性分子は約50mg/kg以下の投薬量で投与され、またこれらの実施形態のいずれかにおいては、投薬量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下、又は0.1mg/kg以下である。ある特定の実施形態では、投与投薬量は処置の経過に従い変化し得る。例えば、ある特定の実施形態では、初回投与投薬量は、後続する投与投薬量よりも多量であり得る。ある特定の実施形態では、投与投薬量は、対象の反応に応じて、処置の経過に従い変化し得る。
【0380】
[000473]投与レジメンが、望ましい最適な応答(例えば、治療応答)を提供するように調整され得る。例えば、単一の用量が投与され得るか、又はいくつかの分割された用量が長期的に投与され得る。
【0381】
[000474]本明細書で開示される多重特異性分子は、当技術分野において公知の任意の経路、例えば非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内(静脈内輸液を含む)、筋肉内、又は皮内への注射)、又は非経口以外(例えば、口腔、鼻腔内、眼内、舌下、直腸、又は局所)の経路等により投与され得る。
【0382】
[000475]いくつかの実施形態では、本明細書で開示される多重特異性分子は、単独で又は1つ若しくは複数の追加の治療手段又は治療剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書で開示される多重特異性分子は、別の治療剤、例えば化学療法剤又は抗がん薬と組み合わせて投与され得る。
【0383】
[000476]これらの実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与される、本明細書に開示されるような多重特異性分子は、1つ又は複数の追加の治療剤と同時に投与され得るが、またこれらの実施形態のいずれかにおいては、多重特異性分子及び追加の治療剤(複数可)は、同一の医薬組成物の一部として投与され得る。しかしながら、別の治療剤と「組み合わせて」投与される多重特異性分子は、薬剤と同時に投与される必要はなく、又は薬剤と同一の組成物中にある必要もない。別の薬剤の前又は後に投与される多重特異性分子は、多重特異性分子及び第2の薬剤が異なる経路を介して投与されるとしても、当該慣用句が本明細書において使用される通り、当該薬剤と「組み合わせて」投与されるものとみなされる。可能な場合には、本明細書で開示される多重特異性分子と組み合わせて投与される追加の治療剤は、追加の治療剤の製品情報シートに掲載されているスケジュールに従うか、又は米医薬品便覧(Physicians’ Desk Reference)2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002))、若しくは当技術分野において周知のプロトコールに従い投与される。
【0384】
[000477]本開示は、多重特異性分子を使用する方法を更に提示する。
[000478]いくつかの実施形態では、本開示は、対象内で標的細胞のファゴサイトーシスを誘発することから利益を享受し得る疾患、障害、又は状態を処置するための医薬の製造における、本明細書に提示される多重特異性分子の使用についても提示する。
【0385】
[000479]本開示は、例えば、SIRP-アルファとCD47との間の相互作用を実質的若しくは完全にブロックし;SIRP-アルファとCD47との相互作用の下流に位置するSHP-1導入を実質的若しくは完全にブロックし;単独で使用したときに、特定の標的細胞のファゴサイトーシスを誘発せず、及び/又はSIRPαのIgVドメインの外側にあるエピトープに結合する能力を有するといった特別な特性を有する抗SIRP-アルファ抗体又はその抗原結合断片からなる多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体)の驚くべき発見に基づく。そのような多重特異性分子は、上記したように特別なコンフィギュレーションにあり得るが、その上に、得られた多重特異性分子は、望ましくない細胞に対して免疫応答(例えば、ファゴサイトーシス)を誘発して望ましくない細胞(例えば、がん性細胞や感染細胞)を除去することについて想定外の高い選択性を示す。
【0386】
[000480]したがって、本開示は、CD47関連の状態及び障害を処置するための医薬の製造における本明細書に提示されるそのような多重特異性分子の使用についても提示する。
【0387】
[000481]下記の実施例は、請求項に係る発明をより深く例証するために提示され、また本発明の範囲を限定するものと解釈されないものとする。以下に記載するすべての特別な組成物、材料、及び方法は、全部/一部を問わず、本発明の範囲に該当する。これらの特別な組成物、材料、及び方法は本発明に制限を設けるようには意図されず、むしろ本発明の範囲内に該当する特定の実施形態を例証するに過ぎない。当業者は、発明能力を発揮せずとも、本発明の範囲から逸脱せずに、等価な組成物、材料、及び方法を開発し得る。本発明の境界内になおも留まりつつ、多くの変化形態が、本明細書に記載される手順において作成され得るものと理解される。そのような変化形態は本発明の範囲に含まれるというのが本発明者らの意図である。
【0388】
[000482]
【実施例】
【0389】
[000483]
実施例1:抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体の構築及び発現
[000484]SIRPαに基づく二重特異性マクロファージエンゲイジャー(BiME)抗体の原理を
図1に示す。BiMEは、マクロファージをがん細胞と物理的に架橋することで、特異的に殺滅し、CD47-SIRPα相互作用をブロックし、SHP-1/2阻害を除去し、及びFc受容体をマクロファージと関与させてファゴサイトーシスを活性化することができる。
【0390】
[000485]抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、重鎖又は軽鎖のC末端において抗SIRPα C25単鎖可変断片(scFv)と融合した抗クローディン18.2抗体hu28.H1L2として構築される(
図2A~
図2B)。可撓性の(Gly
4Ser)
3リンカーを、抗SIRPα scFvのN末端に遺伝学的にリンクさせた。抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、重鎖又は軽鎖のC末端において抗クローディン18.2単鎖可変断片(scFv)と融合した抗SIRPα抗体として構築される(
図2C~
図2D)。可撓性の(Gly
4Ser)3リンカーを、抗クローディン18.2scFvのN末端に遺伝学的にリンクさせた。
【0391】
[000486]1つの抗クローディン18.2抗体、及びその軽鎖のC末端において2つの抗SIRPα scFvを含む二重特異性タンパク質ES028-001(
図2A、表7も参照)。
【0392】
[000487]1つの抗クローディン18.2抗体、及びその重鎖のC末端において2つの抗SIRPα scFvを含む二重特異性タンパク質ES028-005(
図2B、表7も参照)。
【0393】
[000488]1つの抗SIRPα抗体、及びその軽鎖のC末端において2つの抗クローディン18.2scFvを含む二重特異性タンパク質ES028-009(
図2C、表7も参照)。
【0394】
[000489]1つの抗SIRPα抗体、及びその重鎖のC末端において2つの抗クローディン18.2scFvを含む二重特異性タンパク質ES028-013(
図2D、表7も参照)。
【0395】
[000490]発現では、HEK293細胞にトランスフェクトするために、同一の発現ベクター又は別個の発現ベクター内で軽鎖及び重鎖をコードするDNAをトランスフェクション用として使用した。培養培地を採取し、そして融合タンパク質をプロテインAセファロースカラムにより精製した。
【0396】
[000491]
実施例2 抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体の結合親和性
[000492]抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性タンパク質を、Octetアッセイ法(ForeBio社)を使用しながら、製造業者のマニュアルに従い、ヒトクローディン18.2又はSIRPαに対する結合親和性について個別に特徴付けた。手短に述べると、抗体をセンサー上にカップリングさせ、次にセンサーをクローディン18.2又はSIRPαタンパク質グラジエント中に浸漬した(200nMから開始し、2倍稀釈しながら、合計8用量)。その結合応答をリアルタイムで測定し、そして結果を全体的に近似させた。テストした抗体の親和性データを表8及び表9に要約する。
【0397】
[000493]
【0398】
【0399】
[000494]
【0400】
【0401】
[000495]
実施例3 FACSによるクローディン18.2及びSIRPαに対する抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体の結合性
[000496]ヒトクローディン18.2を過剰発現するRajiリンパ腫細胞、およそ100,000個を洗浄バッファーで洗浄し、そしてクローディン18.2/SIRPα二重特異性タンパク質の連続稀釈物、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そして抗ヒトFc-PE、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そしてFACS Canto IIアナライザー(BD Biosciences社)上で分析した。
図3Aに示すように、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、用量依存性の様式でRaji/hクローディン18.2細胞に結合した。二重特異性抗体ES028-001、ES028-005、ES028-013は、抗クローディン18.2モノクローナル抗体hu28H1L2と類似して、Raji/hクローディン18.2に結合した一方、ES028-009はRaji/hクローディン18.2に結合したが、その程度は抗クローディン18.2,hu28H1L2と比較してそれより低かった。
【0402】
[000497]ヒトSIRPαを過剰発現するCHO-K1細胞を洗浄バッファーで洗浄し、そしてクローディン18.2/SIRPα二重特異性タンパク質の連続稀釈物、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そして抗ヒトFc-PE、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そしてFACS Canto IIアナライザー(BD Biosciences社)上で分析した。
図3Bに示すように、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、用量依存性の様式でCHO-K1/SIRPα細胞に結合した。ES028-001及びES028-005はCHO-K1/hSIRPαに結合したが、その程度は抗SIRPα,C25と比較してそれより低かった。
【0403】
[000498]
実施例4 抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、クローディン18.2+がん細胞のin vitroでのマクロファージファゴサイトーシスを増強する
[000499]ヒトCD47及びヒトクローディン18.2を発現するマウスMC38結腸腫瘍細胞を蛍光色素CFSEで標識し、そしてアイソタイプコントロール、抗クローディン18.2抗体、抗SIRPα抗体、抗クローディン18.2と抗SIRPα抗体との組合せ、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体のいずれかと共存させながら、C57BL6/hCD47/hSIRPαノックインマウスから調製されたマウス骨髄由来のマクロファージ(BMDM)と共にインキュベートした。2時間後、マクロファージを採取し、蛍光標識した抗マウスマクロファージ抗体を用いて染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。CD11b+CFSE+二重陽性事象が、CFSE標識された腫瘍細胞を貪食したマクロファージを特定する。各サンプルは異なる色により表される。3つの異なるサンプルについて貪食指数を示す。
【0404】
[000500]
図4Aに示すように、抗クローディン18.2抗体hu28H1L2は、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)により約25%のファゴサイトーシスを誘発したが、また抗SIRPα抗体C25はファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗クローディン18.2と抗SIRPα抗体C25との組合せは、ファゴサイトーシスを有意に改善する。抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体ES028-001、ES028-005、ES028-009は、組み合わせた場合と比較してそれより強力なファゴサイトーシスを用量依存様式で誘発し、またES028-005が最良のファゴサイトーシス効果を示す一方、ES028-013は相乗的ファゴサイトーシス効果を示さなかった。クローディン18.2を発現しないMC38細胞の場合、抗クローディン18.2と抗SIRPα抗体C25とを組み合わせても、クローディン18.2非発現細胞に対するファゴサイトーシスを有意に改善しない(
図4B)。抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体、又は抗クローディン18.2抗体と抗SIRPアルファ抗体との組合せは、いずれもクローディン18.2を発現しない細胞上ではファゴサイトーシスの改善を誘発しない(
図4B)。
【0405】
[000501]
実施例5 抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体の活性なIgG1 Fcは、FcγR依存性ADCPを活性化させ、そしてIgG4又はIgG1LALAアイソタイプよりも強い効力をもたらす。
【0406】
[000502]MC38/hCD47/hクローディン18.2の別のマウスBMDMファゴサイトーシスアッセイにおいて、IgG1、IgG4及びIgG1LALAの異なるアイソタイプを含む抗クローディン18.2抗体を、単剤処置で又は抗SIRPα抗体と組み合わせてテストした。同様に、IgG1、IgG4、及びIgG1LALAを含む抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体ES028-001、ES028-005、及びES028-009も、ファゴサイトーシスについてテストした。
【0407】
[000503]同時培養を2時間行った後に、マクロファージを採取し、蛍光標識した抗ヒトマクロファージ抗体を用いて染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。CD11b+CFSE+二重陽性事象が、CFSE標識された腫瘍細胞を貪食したマクロファージを特定する。各サンプルは異なる色により表される。3つの異なるサンプルについて貪食指数を示す。
【0408】
[000504]
図5に示すように、抗クローディン18.2IgG1が、抗クローディン18.2 IgG4及び抗クローディン18.2 IgG1 LALA突然変異体(いずれも単剤処置又は抗SIRPα抗体との併用)と比較して、最良のファゴサイトーシスを示した。抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体ES028-001 IgG1、ES028-005 IgG1、及びES028-009 IgG1は、ES028-001 IgG4、ES028-005 IgG4、及びES028-009 IgG4と比較してそれより強いファゴサイトーシス効果を誘発する一方、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体ES028-001 IgG1 LALA、ES028-005 IgG1 LALA、及びES028-009 IgG 1LALAについては、ファゴサイトーシス有効性は認められない。データは、抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体IgG1がFcγR依存性ADCPを活性化させ、そしてIgG4又はIgG1 LALAアイソタイプより強い効力をもたらすことを示した。
【0409】
[000505]
実施例6 抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体の構築及び発現
[000506]抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体を、重鎖又は軽鎖のN末端又はC末端において抗PDL1単一ドメイン抗体(sdAb)C71又はC570と融合した抗SIRPα抗体C25として構築した(
図6A~
図6D、表7も参照)。抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、Fc領域内でノブ-インホール(KiH)によりリンクした、一方のアーム内の抗SIRPα Fab、及び他方のアーム内の2つのコピーされた抗PDL1 sdAbとしても構築可能である(
図6E、表7も参照)。抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、FcのN末端における抗PDL1 sdAb、及びFcのC末端に融合した抗SIRPα Fabとしても構築可能である(
図6F~
図6G、表7も参照)。可撓性の(Gly4Ser)3リンカーを、抗SIRPα FabのN末端と遺伝学的にリンクさせた。
【0410】
[000507]1つの抗SIRPα抗体、及びその軽鎖のC末端において2つの抗PDL1 sdAbを含む二重特異性タンパク質ES019-020(
図6A、表7も参照)。
[000508]1つの抗SIRPα抗体、及びその重鎖のC末端において2つの抗PDL1 sdAbを含む二重特異性タンパク質ES019-024(
図6B、表7も参照)。
【0411】
[000509]1つの抗SIRPα抗体、及びその重鎖のN末端において2つの抗PDL1 sdAbを含む二重特異性タンパク質ES019-025(
図6C、表7も参照)。
[000510]1つの抗SIRPα抗体、及びその軽鎖のN末端において2つの抗PDL1 sdAbを含む二重特異性タンパク質ES019-026(
図6D、表7も参照)。
【0412】
[000511]Fc領域内のノブ-インホール突然変異により形成された、1つの抗SIRPα Fabアーム、及び2つの抗PDL1 sdAbアームのヘテロ二量体を含む二重特異性タンパク質ES019-029(
図6E、表7も参照)。
【0413】
[000512]FcのN末端において2つの抗PDL1 sdAb、及びFc領域のC末端において1コピーの抗SIRPα Fabを含む二重特異性タンパク質ES019-072。非対称ヘテロ二量体はFc領域内のノブ-インホール突然変異により形成される(
図6F、表7も参照)。
【0414】
[000513]FcのN末端において2つの抗PDL1 sdAb、及びFc領域のC末端において2つの抗SIRPα Fabを含む二重特異性タンパク質ES019-073又はES019-079(
図6G、表7も参照)。
【0415】
[000514]
実施例7:抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体の結合親和性
[000515]抗PDL1/SIRPα二重特異性タンパク質を、Octetアッセイ法(ForeBio社)を使用しながら、製造業者のマニュアルに従い、ヒトPDL1に対する結合親和性について個別に特徴付けた。手短に述べると、抗体をセンサー上にカップリングさせ、次にセンサーをPDL1タンパク質グラジエント中に浸漬した(200nMから開始し、2倍稀釈しながら、合計8用量)。その結合応答をリアルタイムで測定し、そして結果を全体的に近似させた。テストした抗体の親和性データを表9.1に要約する。
【0416】
【0417】
[000516]
実施例8:FACSによるPDL1及びSIRPαに対する抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体の結合性
[000517]ヒトPDL1を過剰発現するRaji細胞、およそ100,000個を洗浄バッファーで洗浄し、そしてPDL1/SIRPα二重特異性タンパク質の連続稀釈物、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そして抗ヒトFc-PE、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そしてFACS Canto IIアナライザー(BD Biosciences社)上で分析した。
図7Aに示すように、抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、用量依存性の様式でRaji/hPDL1細胞に結合した。二重特異性抗体ES019-025、ES019-026は、抗PDL1モノクローナル抗体C71と同様にRaji/hPDL1に結合した一方、ES019-020、ES019-024はRaji/hPDL1に結合したが、その程度は抗PDL1,C71と比較してそれより低かった。
【0418】
[000518]ヒトSIRPαを過剰発現するCHO-K1細胞を、洗浄バッファーで洗浄し、そしてPDL1/SIRPα二重特異性タンパク質の連続稀釈物、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そして抗ヒトFc-PE、100μlと共に氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、そしてFACS Canto IIアナライザー(BD Biosciences社)上で分析した。
図7Bに示すように、抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、用量依存性の様式でCHO-K1/SIRPα細胞に結合した。ES019-020、ES019-024、ES019-025、及びES019-026は、抗SIRPα,C25と類似してCHO-K1/hSIRPαに結合した。
【0419】
[000519]
実施例9:ジャーカット/PD1レポーター細胞アッセイ法による抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体のPDL1ブロックキング活性
[000520]PD1-PDL1ブロッケードレポーターアッセイ法を、GenScript社により開発されたPD1ブロッケードレポーターアッセイ法(PDL1及び抗CD3scFvを発現したCHO細胞、並びにPD1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞系統に基づく2細胞系を使用する)を使用しながら実施した。対数増殖期において増殖する細胞を採取し、そして1%の熱失活させたFBSを含有するRPMI1640 20中に、CHOにつき細胞2×106個/ml、及びジャーカット/PD1 NFAT-RE細胞につき細胞4×106個/mlの濃度で再懸濁した。次に、アッセイ培地(1%のFBSを含有するRPMI1640)内のテスト抗体を連続稀釈して各ウェルに添加した。プレートを37℃、5%のCO2、95%相対湿度において6時間インキュベートした。ルシフェラーゼ(Bio-Gloルシフェラーゼアッセイシステム)、40μlを翌日添加し、そしてルシフェラーゼ活性の量を、BioTekマルチ-モードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0420】
[000521]
図8に示すように、二重特異性抗体ES019-024、ES019-025、ES019-026は、抗PDL1モノクローナル抗体C71と類似してジャーカット/PD1レポーター細胞を活性化させる一方、ES019-020はジャーカット/PD1レポーター細胞を活性化させるが、その程度は抗PDL1,C71と比較してそれより低い。
【0421】
[000522]
実施例10:抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体は、PDL1+がん細胞のin vitroでのマクロファージファゴサイトーシスを増強する
[000523]ヒトPDL1の発現を欠くヒトK562白血病腫瘍細胞又はヒトPDL1を発現するK562を蛍光色素CFSEで標識し、そしてアイソタイプコントロール、抗PDL1抗体、抗SIRPα抗体、抗PDL1と抗SIRPα抗体との組合せ、抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体のいずれかと共存させながら、ヒトマクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)処置済みの単球由来マクロファージと共にインキュベートした。2時間後、マクロファージを採取し、蛍光標識した抗ヒトマクロファージ抗体を用いて染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。CD11b+CFSE+二重陽性事象が、CFSE標識された腫瘍細胞を貪食したマクロファージを特定する。各サンプルは異なる色により表される。3つの異なるサンプルについて貪食指数を示す。
【0422】
[000524]
図9Aに示すように、抗PDL1抗体C71は、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)により約20%のファゴサイトーシスを誘発したが、抗SIRPα抗体C25はファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗PDL1と抗SIRPα抗体C25との組合せはファゴサイトーシスを有意に改善する。抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体ES019-020、ES019-029は、組み合わせた場合と同様に、用量依存様式で強力なファゴサイトーシスを誘発する一方、ES019-024、ES019-025、及びES019-026は、相乗的ファゴサイトーシス効果を示さなかった。
【0423】
[000525]
図9Bに示すように、抗PDL1抗体C71単剤療法又は抗SIRPα抗体C25との組合せは、PDL1発現を欠くK562親細胞に対してファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、ES019-026、ES019-029は、K562細胞(PDL1陰性)に対してファゴサイトーシス効果を示さなかった。
【0424】
[000526]
図9Cに示すように、抗PDL1抗体C71単剤療法又は抗SIRPα抗体C25との組合せは、ヒトSIRPγを発現するヒトジャーカットT細胞系に対してファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体ES019-020、ES019-024、ES019-025、ES019-026、ES019-029は、ジャーカットT細胞(SIRPγ陽性)に対してファゴサイトーシス効果を示さなかった。
【0425】
[000527]
実施例11:抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体は、PDL1+がん細胞のin vitroでのマクロファージファゴサイトーシスを増強する
[000528]ヒトSIRPa/CD47二重KIマウスを、hCD47/hCLDN18.2過剰発現MC38細胞でイノキュレーションした。平均腫瘍容積が約70~100mm3に達したときに、マウスを腫瘍容積に基づき7群にグループ化した。マウスに、同一モル濃度の10mpkのアイソタイプ抗体、10mpkのCLDN18.2 mAb、10mpkのSIRPa mAb、10mpkのCLDN18.2 mAb+10mpkのSIRPa mAb、又は14mpkのES028-001、ES028-005、ES009をi.p.投与した。投与スケジュールは、BIW、5回投与であった。腫瘍容積を1週間当たり2回測定した。5回目の投薬後3日経過してマウスを屠殺し、そして腫瘍を秤量した。統計処理を、異なる処置群の平均腫瘍容積をアイソタイプコントロール群のそれと比較する2元配置分散分析により実施した。
【0426】
[000529]相対的な腫瘍阻害率TGI(%)を下記のように計算した:
TGI%=(1-T/C)×100%(T及びCは、それぞれ、所定の時点における処置群及びコントロール群の相対的腫瘍容積(RTV)又は腫瘍重量(TW)である)。
T/C%=TRTV/CRTV×100%(TRTV:処置群の平均RTV;CRTV:媒体コントロール群の平均RTV;
RTV=Vt/V0、V0は、グルーピング時点の動物の腫瘍容積であり、Vtは処置後の動物の腫瘍容積である);
T/Cは、下記のように腫瘍重量に基づき計算可能である:
T/C%=TTW/CTW×100%(TTW:最終時点の処置群の平均腫瘍重量;CTW:最終時点の媒体コントロール群の平均腫瘍重量)。
【0427】
[000530]
図10に示すように、抗クローディン18.2抗体hu28H1L2及び抗SIRPα抗体C25単剤療法は、アイソタイプ処置と同様に腫瘍増殖を阻害しない。抗クローディン18.2と抗SIRPα抗体C25との組合せは、腫瘍の増殖を有意に低下させる。抗クローディン18.2/SIRPα二重特異性抗体ES028-005は、組み合わせた場合と類似して強力な腫瘍増殖阻害を誘発する;ES028-001はより弱い腫瘍阻害を示し、またES028-009は腫瘍増殖を阻害しなかった。
【0428】
[000531]
実施例12:抗SIRPα完全ブロッキング抗体に基づくBiMEは、腫瘍細胞に対して選択性を有しつつ、最良の相乗的ファゴサイトーシス効果をもたらす
[000532]キメラ抗体の特徴付け
[000533]1.1 結合特異性の検出
[000534]ヒトSIRPαバリアントに対する精製済みキメラ抗体の結合活性を、ヒトSIRPα v1を安定的に発現するCHOK1細胞又は293F細胞、及びヒトSIRPα v2を安定的に発現するCHOK1細胞を使用して、FACSアッセイにより検出した。
図12に示すように、テストしたすべての抗体は、細胞表面ヒトSIRPα v1及び細胞表面ヒトSIRPα v2と強く結合する。EC
50及び最高シグナルを、GraphPad Prism9.0を使用して計算した。
【0429】
[000535]1.2 CD47/SIRPα相互作用ブロッキング活性の検出
[000536]競合ELISAアッセイ法を、精製されたキメラ抗体がCD47とSIRPαとの相互作用をブロックすることができるかどうか判定するのに使用した。手短に述べると、抗体及びmFcタグ化ヒトCD47 ECD組換えタンパク質を、ELISAマイクロプレートにコーティングされたヒトSIRPα v1 ECD又はヒトSIRPα v2 ECD組換えタンパク質と共に同時インキュベートした。CD47の可溶性ECDの濃度は25nMであり、またSIRPαの可溶性ECDの濃度は20nMである。洗浄後に、HRP標識された抗マウスFc第2抗体(Sigma社)を添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。次に、TMB溶液(Biotechnology社)を100μl/ウェルで添加した。室温で15分間インキュベートした後、1NのHCl、50μlを添加して反応を停止した。OD450nmを読み取った。ブロッキング比を、ELISAマイクロプレートにコーティングされたヒトCD47ECD組換えタンパク質に対するヒトSIRPα ECD組換えタンパク質の結合の遮断率により決定した。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC
50及び最高ブロッキング率(%)を
図13に要約する。テストしたすべての抗体は、ヒトCD47と異なるヒトSIRPαバリアントとの間の相互作用をブロックすることができる。
【0430】
[000537]1.2.1 エピトープ分析
[000538]競合ELISAアッセイ法を、精製されたキメラ抗体のエピトープビニングに対して使用した。手短に述べると、過剰の競合抗体及びmFcタグ化ヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質を、ELISAマイクロプレートにコーティングされた抗体と共に同時インキュベートした。洗浄後、HRP標識抗マウスFc第2抗体(Sigma社)を添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。次に、TMB溶液(Biotechnology社)を100μl/ウェルで添加した。室温で15分間インキュベートした後、1NのHCl、50μlを添加して反応を停止した。OD450nmを読み取った。競合比を計算した。SIRPαに対する結合について相互に競合し得る抗体は、関連する結合エピトープを有し得る。表Bに示すように、025cは、ヒトSIRPαに対する結合について、042c、073c、及びhu1H9G4との競合を示すことはなく、異なるエピトープと結合し得ることを示唆する。042c、073c、及びhu1H9G4間の競合は二方向性ではなく、それらの結合エピトープは関連し得るがしかし完全に同一ではないことを示唆する。
【0431】
[000539]025c、042c、073c、HEFLB、及びhu1H9G4のエピトープマッピングを、水素重水素交換マススペクトロメトリー(HDX-MS)を使用して更に実施した。
図23Aに示すように、025cの結合性は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのYNQKEGHFPRVTTVSDL(配列番号218)の領域においてより低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸は、025cが結合するのにきわめて重要であり得ることを示唆する。
図23Bに示すように、042cの結合性は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのSGAGTEL(配列番号219)及びTNVDPVGESVS(配列番号220)の2領域においてより低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸は、042cが結合するのにきわめて重要であり得ることを示唆する。
図23Cに示すように、073cの結合性は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのTNVDPVGESVSY(配列番号221)の領域においてより低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸は、073cが結合するのにきわめて重要であり得ることを示唆する。特に、これら3領域は、CD47が結合するSIRPα ECDのIgVドメインに位置せず、042c及び073cはアロステリック抗体としての働きを有し、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックし得ること、又は042c及び073cのブロッキング活性は立体障害効果であることを示唆する。
図23Dに示すように、hu1H9G4の結合性は、Hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのYNQKEGHFPRVTTVSDL(配列番号218)の領域においてより低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸は、hu1H9G4が結合するのにきわめて重要であり得ることを示唆する。
図23Eに示すように、HEFLBの結合性は、hisタグ化ヒトSIRPα v1 ECDのVGPIQW(配列番号222)の領域においてより低い水素重水素交換比をもたらし、これらのアミノ酸は、HEFLBが結合するのにきわめて重要であり得ることを示唆する。
【0432】
[000540]競合ELISAデータ及びHDX-MSデータを共に考慮すれば、025c、042c、及び073cは、異なる結合エピトープ(hu1H9G4及びHEFLBの参照抗体とも異なる)を有し得ると結論される。それに加えて、結果は、025c、042c、及び073cのエピトープはIgVドメインの外部にあり得ることを示す。IgVドメインはCD47の細胞外Igドメインの結合性に関与する。参照抗体の配列情報を下記の表Aに示す。
【0433】
[000541]
【0434】
【0435】
[000542]
【0436】
【0437】
[000543]1.3 SHP-1導入アッセイ
[000544]精製されたキメラ抗体がCD47/SIRPα媒介式の「私を食べないで」シグナル伝達をブロックすることの有効性を、細胞に基づくSHP-1導入アッセイにより評価した。完全長ヒトSIRPα v1を、そのC末端に融合した小型のβ-gal断片(ED)を用いて工学的に作出し、そしてSHP-1のSH2-ドメインを補完性のβ-gal断片(EA)を用いて工学的に作出した。これらのコンストラクトは、K562細胞内で安定的に発現された。ヒトCD47発現細胞との同時培養を通じてリガンドを関与させると、その結果SIRPα-ED融合タンパク質がリン酸化され、活性なβ-gal酵素を生じさせるSHP-1-EAの導入を引き起こす。この活性な酵素は基質を加水分解して、レポーター活性の指標として化学発光を生成する。IC
50及び最高ブロッキング率(%)を、GraphPad Prism9.0を使用して計算した。
図14に要約するように、テストしたすべての抗体は、CD47/SIRPα媒介式の「私を食べないで」シグナル伝達を異なるレベルにおいて破綻させることができる。
【0438】
[000545]1.4 In vitroファゴサイトーシスアッセイ
[000546]精製されたキメラ抗体の機能有効性を、フローサイトメトリーに基づくファゴサイトーシスアッセイにより評価した。手短に述べると、異なるSIRPA遺伝子型を有するM0非極性化又はM1極性化ヒト単球由来マクロファージを、テスト対象の抗体の存在下で、CellTrace Violet(Life technologies社)標識されたCD47発現がん細胞と共に同時培養した。ファゴサイトーシスを、CellTrace Violet色素について陽性のマクロファージの割合(%)を決定することによりアッセイした。非極性化マクロファージの場合、末梢血単核球を、10%のFBS及び50ng/mlのM-CSFが補充された1640培地内、10cm組織培養プレート中に7~9日間播種した。接着細胞をM0非極性化マクロファージとして採取した。M1極性化マクロファージの場合、末梢血単核球を、10%のFBS及び50ng/mlのGM-CSFが補充された1640培地内、10cm組織培養プレート中に5日間播種した。50μg/mlのIFNγ及び100μg/mlのLPSを、追加の2~4日間、培養物に添加した。接着細胞をM1極性化マクロファージとして採取した。
【0439】
[000547]
図20Aに示すように、015c、025c、042c、059c、及び073cは、SIRPAヘテロ接合性v1/v2個体から取得されたM0マクロファージによるRaji細胞の腫瘍細胞取り込みを増強するという単剤活性を示さなかった。しかしながら、リツキシマブ(抗CD20抗体)の存在下では、ヒトCD47とヒトSIRPα v2との間の相互作用をブロックする活性としてより弱い活性を有する059c以外、テストしたすべてのその他の精製されたキメラ抗体は、Raji細胞のマクロファージ媒介式の抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を増強した。
【0440】
[000548]SIRPα抗体及びPD-L1抗体の組合せを、SIRPAホモ接合性v1/v1(
図20B)及びv2/v2(
図20C)の個体から取得されたM0マクロファージを使用しながら、ファゴサイトーシスアッセイにおいてテストした。PD-L1抗体の存在下では、025c、042c、及び073cは、PD-L1を安定的に発現するRaji細胞のマクロファージ媒介式のADCPを効果的に増強した。
【0441】
[000549]ヒト化抗体の特徴付け
[000550]1.5 結合特異性の検出
[000551]テストしたすべてのヒト化抗体は、C25の親抗体と類似した活性を保持し、SIRPファミリーメンバーと結合することが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したEC
50及び最大シグナルを
図15に要約する。したがって、本明細書に提示されるすべてのヒト化抗体(例えば、hu025.021、hu025.033、hu025.023、hu025.059、hu025.060、hu26.H1L1、hu26.H1L2、hu26.H1L2(S92A)、C71、C71v38、C239、C492、C570、570h3、C446、C2811、C1778、C1793、C2855、C2713、及びC2719)は、対応する親の抗体と類似した活性をそれぞれ有することが予測され得る。
【0442】
[000552]1.5.1 親和性の検出
[000553]ヒト化抗体を、表面プラズモン共鳴技術(Biacore system社)を使用しながら、ヒトSIRPα v1、ヒトSIRPα v2に対する結合親和性について特徴付けを行った。会合及び解離曲線を1:1結合モデルに当て嵌め、そして各抗体に対するKa/Kd/KD値を計算した。各抗体に対するKa/Kd/KD値の親和性データを
図16に要約する。
【0443】
[000554]1.7 CD47/SIRPα相互作用ブロッキング活性の検出
[000555]ヒト化抗体を、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックする能力について、競合ELISAアッセイ法を用いてテストした(上記した方法を参照されたい)。
図17に示すように、テストしたすべてのヒト化抗体はC25の親抗体と類似した活性を保持し、ヒトCD47と異なるいくつかのヒトSIRPαバリアントとの間の相互作用をブロックすることが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC
50及び最高ブロックキング率(%)を
図17に要約する。
【0444】
[000556]ヒト化抗体及びいくつかの公知抗SIRPα抗体のブロッキング活性を更に比較するために、競合FACSアッセイも実施した。手短に述べると、抗体及びmFcタグ化ヒトCD47ECD組換えタンパク質を、ヒトSIRPα v1又はヒトSIRP αv2を安定的に発現するCHOK1細胞と共に同時インキュベートした。洗浄後に、色素標識された抗マウスFc第2抗体(Sigma社)を添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。蛍光強度を検出した。ブロッキング比を、CHOK1細胞により発現されたSIRPαに対するヒトCD47ECD組換えタンパク質の結合の遮断率により決定した。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC
50及び最高ブロッキング率(%)を
図18に要約する。
【0445】
[000557]1.8 SHP-1導入アッセイ
[000558]CD47/SIRPα媒介式の「私を食べないで」シグナル伝達をブロックするヒト化抗体の有効性を、細胞に基づくSHP-1導入アッセイ法により評価した(上記した方法を参照されたい)。テストしたすべてのヒト化抗体はC25の親抗体と類似する活性を保持し、CD47が関与することでもたらされる、SIRPα細胞内尾部に対するSHP-1導入をブロックすることが確認された。GraphPad Prism9.0を使用して計算したIC
50及び最高ブロックキング率(%)を
図19に要約する。
【0446】
[000559]1.9 In vitroファゴサイトーシスアッセイ
[000560]In vitroでの機能バリデーションでは、SIRPα抗体とPD-L1抗体又はリツキシマブとの組合せを、SIRPAホモ接合v1/v1(
図21A及び
図21B)及びv2/v2(
図21C及び
図21D)の個体から取得したM0マクロファージを使用するファゴサイトーシスアッセイにおいてテストした。テストしたすべてのヒト化抗体は025cの親抗体と類似する活性を保持し、PD-L1抗体又はリツキシマブの存在下で、PD-L1を安定的に発現するRaji細胞のマクロファージ媒介式のADCPを増強することが確認された。
【0447】
[000561]2.抗SIRPα抗体の完全ブロッカー、部分的ブロッカー、及び非ブロッカーへのカテゴリー分類
[000562]精製されたキメラ抗体がCD47とSIRPαとの相互作用をブロックすることができるかどうか判定するために、競合ELISAアッセイを使用した。手短に述べると、抗体及びmFcタグ化ヒトCD47 ECD組換えタンパク質を、ELISAマイクロプレートにコーティングされたヒトSIRPα v1 ECD組換えタンパク質と共に同時インキュベートした。洗浄後に、HRP標識された抗マウスFc第2抗体(Sigma社)を添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。次に、TMB溶液(Biotechnology社)を、100μl/ウェルで添加した。室温で15分間インキュベートした後、1NのHCl、50μlを添加して反応を停止した。OD450nmを読み取った。ブロッキング比を、ELISAマイクロプレートにコーティングされたヒトCD47ECD組換えタンパク質に対するヒトSIRPαECD組換えタンパク質の結合の遮断率により決定した。
図22は、025又はC25は90%を超える最大ブロッキング率(%)を有し、完全ブロッカーとして定義されること、050又はC50はゼロに近い最大ブロッキング率(%)を有し、非ブロッカーとして定義されること、及び035又はC35は中間の最大ブロッキング率(%)を有し、部分的ブロッカーとして定義されることを示す(表10)。
【0448】
[000563]
【0449】
【0450】
[000564]3.完全ブロッカーC25、C15、C42、C59、及びC73、部分的ブロッカーC35、並びに非ブロッカーC50を使用する併用療法及び二重特異性分子
[000565]異なるCD47及びSIRPαブロッキング抗体を、蛍光色素CFSEを用いて標識され、アイソタイプコントロール、抗PDL1抗体、抗SIRPα抗体C25、C35、C50、抗PDL1とSIRPα抗体との組合せ、又はC25、C35、C50に基づく抗PDL1/SIRPα二重特異性抗体のいずれかの存在下、ヒトマクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)で処置した単球由来マクロファージと共にインキュベートした、ヒトPDL1発現を欠くヒトRajiリンパ腫細胞又はヒトPDL1を発現するRajiにおいてテストした。2時間後、マクロファージを採取し、蛍光標識された抗ヒトマクロファージ抗体を用いて染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。CD11b+CFSE+二重陽性事象が、CFSE標識された腫瘍細胞を貪食したマクロファージを特定する。各サンプルは異なる色により表される。3つの異なるサンプルについて貪食指数を示す。
【0451】
[000566]
図11Aに示すように、抗SIRPα部分的ブロッキング抗体C35及び非ブロッキング抗体C50は、単剤処置により、Raji/PDL1細胞対して約40%のファゴサイトーシスを誘発した;抗SIRPα完全抗体C25による単剤処置はファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗PDL1と抗SIRPα抗体C25又はC25との組合せに基づくBiMEは、ファゴサイトーシスを有意に改善する。抗PDL1と抗SIRPα抗体C35、C50との組合せ、又はそれに基づくBiMEは、相乗的ファゴサイトーシス効果を示さなかった。
【0452】
[000567]Raji(PDL1陰性)細胞に対するファゴサイトーシスアッセイにおいて(
図11B)、抗SIRPα部分的ブロッキング抗体C35及び非ブロッキング抗体C50による単剤処置は、Raji(PDL1陰性)細胞に対してファゴサイトーシスをなおも誘発することができる;抗SIRPα完全抗体C25による単剤処置はファゴサイトーシスをごくわずかしか誘発しない。抗PDL1と抗SIRPα抗体C25又はC25との組合せに基づくPDL1/SIRPα二重特異性抗体は、腫瘍細胞上でのPDL1発現を欠くことから、ファゴサイトーシスを誘発しなかった。抗PDL1と抗SIRPα抗体C35又はC50との組合せに基づくBiMEは、C35又はC50抗体による単剤処置と類似したファゴサイトーシス効果を示した。
【0453】
[000568]結果は、抗SIRPα抗体C35又はC50による単剤処置、併用処置、又は二重特異性抗体は、C25抗体と比較して、標的抗原の発現とは独立して腫瘍細胞ファゴサイトーシスを誘発することができることを明らかにした。抗SIRPα抗体C25に基づく二重特異性抗体の特性は、より特異的な特性及び安全特性を提供する。
【0454】
[000569]実験データを下記の表11に要約する。
[000570]
【0455】
【0456】
【0457】
[000571]実施例4に示すように、抗クローディン18.2と抗SIRPα抗体C25又はC25との組合せに基づくBiMEは、クローディン18.2発現細胞に対するファゴサイトーシスについても、非クローディン18.2発現細胞よりも有意選択的に改善する。
【0458】
[000572]それに加えて、
図20A及び
図21Aに示すように、C15、C42、C59、又はC73と標的抗原(例えば、PD-L1、クローディン18.2)を標的とする抗体との組合せは、標的抗原非発現細胞よりも、標的抗原(例えば、PD-L1、クローディン18.2)を発現する細胞に対して、選択的ファゴサイトーシスを有するものと予想される。完全ブロッカーC15、C42、C59、及びC73は、例えば、ES028-001、ES028-005、ES028-009、ES028-013、ES019-020、ES019-024、ES019-025、ES019-026、ES019-029、ES019-072、ES019-073、及びES019-079等の形態で提供される多重特異性分子を作製するのにも使用可能であり、また標的抗原非発現細胞よりも、標的抗原(例えば、PD-L1、クローディン18.2)を発現する細胞に対して、類似した選択的ファゴサイトーシスを有するものと予想され得る。
【0459】
[0004]マクロファージが本明細書全体を通じて例示されるが、ここに記載される多重特異性分子、組成物、及び方法は、骨髄細胞系列の細胞、例えば樹状細胞等に適用可能である。軽微な最適化及び変更は、当業者にとって公知のように、細胞毎のそれぞれの基準に基づき想定され、また本開示の範囲内にあるものとみなされる。
【配列表】
【国際調査報告】