(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】太陽光による発電のための装置と方法
(51)【国際特許分類】
H02S 40/22 20140101AFI20240711BHJP
H02S 20/32 20140101ALI20240711BHJP
【FI】
H02S40/22
H02S20/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504953
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070257
(87)【国際公開番号】W WO2023006524
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033386
【氏名又は名称】ヴォルティリス ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッキ、ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニック、ブレザー
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251JA13
5F251JA14
5F251JA23
(57)【要約】
本発明は、反射面を有する反射パネル(11)と、エネルギー生成モジュール(12)と、反射パネル(11)およびエネルギー生成モジュール(12)を共に保持する保持構造体(13)とを備え、反射パネル(11)は、入射する太陽光をフィルターすることで前述の太陽光の第1の部分を通過させつつ前述の太陽光の第2の部分を反射するように構成されるエネルギー生成装置(1)に関するものであり、前述の反射面が、互いに異なる向きにされた複数の反射領域(11’、11’’、11’’’)を有し、これらのそれぞれは、入射光の前述の第2の部分を前述のエネルギー生成モジュール(12)の集光面上へ均質に反射するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有する反射パネル(11)と、
エネルギー生成モジュール(12)と、
反射パネル(11)およびエネルギー生成モジュール(12)を共に保持する保持構造体(13)と
を備え、
前記反射パネル(11)は、入射する太陽光をフィルターすることで、前記太陽光の第1の部分を通過させ、かつ前記太陽光の第2の部分を反射するように構成される、エネルギー生成装置(1)において、
前記反射面は、それぞれ互いに異なる向きにされ、かつそれぞれが入射光の前記第2の部分を前記エネルギー生成モジュール(12)の集光面上へ均質に反射するように構成された複数の反射領域(11’、11’’、11’’’)を有すること
を特徴とするエネルギー生成装置。
【請求項2】
前記反射パネル(11)の材料の透過/反射/屈折率が、特定の波長範囲の光を通過させるように調整されて構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー生成装置。
【請求項3】
前記反射パネル(11)の透過/反射/屈折が、特定の材料および/または特定の厚さ範囲および/または特定の表面処理および/または特定の添加剤によってなされることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエネルギー生成装置。
【請求項4】
前記反射パネル(11)の向きを変更するように構成された配向システム(14、15)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項5】
前記配向システム(14、15)は、前記反射パネル(11)の向きを互いに直交する2方向に変更するように構成された傾斜モジュールおよび旋回モジュールを備えることを特徴とする請求項4に記載のエネルギー生成装置。
【請求項6】
太陽の向き/位置、または/および太陽光の方向を決定するように構成された太陽追跡システムをさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項7】
前記太陽追跡システムによって受信されたデータに基づいて、前記配向システム(14、15)を制御するように構成された制御システムを備えることを特徴とする、請求項6に記載のエネルギー生成装置。
【請求項8】
前記複数の反射領域(11’、11’’、11’’’)は、平坦面および/または隣接面であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項9】
前記反射パネルが、少なくとも2つのファセット/ラメラ(11’、11’’、11’’’)からなるダイクロイックミラーであることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項10】
ファセット/ラメラ(11’、11’’、11’’’)が、前記保持構造体(13)を介して共に組み立てられているか、または単一ピースを構成することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項11】
前記保持構造体(13)は、前記反射パネル(11)の端部を前記エネルギー生成モジュール(12)の端部に接続するように構成されて、前記モジュールが前記反射パネル(11)に対して中心から外れるようにされていることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項12】
エネルギー生成モジュール(12)が、光起電セルを使用する発電モジュール、熱生成モジュール、および水素生産モジュールのうちの1つを含むグループから選択されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項13】
エネルギー生成モジュール(12)の裏面が、反射面、光散乱体を有し、また蛍光材料および/またはエネルギー生成面を含むことを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のエネルギー生成装置。
【請求項14】
底部から複数の装置(1)をそれぞれ保持する1つまたは複数の梁体(20)、および/または頂部から前記エネルギー生成装置(1)を吊り下げるケーブル(21)を備えることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の複数のエネルギー生成装置を備えるエネルギー生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光による発電の分野に関し、より詳細には、農業における太陽光による発電の分野に関する。本発明は、発電と農業成長の最適化の両方のための手段を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
今日、光起電(PV)発電は、グリーンで低コストのエネルギー源として世界中で注目されており、これは化石エネルギーフリーな未来への道を開く重要な要素でもある。しかし、PV用地を開発することにより、耕作可能地を無駄にしたり、生物多様性を損なったりする可能性があるため、大規模なPVプロジェクトのためのスペースを確保することは依然として厳しいものがある。このため、一般に「アグロボルタイクス」と呼ばれる最新のプロジェクトは、利用可能な土地の二重利用を促進することを目的としており、これによれば耕作可能地を発電と農作物の生産に同時に使用することができる。
【0003】
アグロボルタイクスにはこれまで、部分遮光と分光フィルタリングと呼ばれる2つの異なるアプローチが検討されてきた。
【0004】
部分遮光アプローチでは、半透明で波長選択性が特にない、あるいは不透明な光起電セルが、植物の生育している田畑の上方に設置され、植物に到達する光の一部を吸収することで植物に部分的な日陰を作りながら発電する。こうした遮光は光強度の減少で特徴付けられるが、太陽光のスペクトル成分を変化させることはない。
【0005】
冬の半年間において太陽光が乏しい北緯地方では、例えば特許文献1に記載されているような部分遮光アプローチは、すべての植物種に適用できるわけではない。冬半期の低照度条件下では、植物に到達する太陽光の量を減らすと、光を好む特定の植物品種の生育に悪影響を及ぼすことがある。例えば特許文献2のように、パネルの透過率を調整することで、より多くの光が植物に届くようにする設計もある。しかし、透過率が100%になると、植物の成長を妨げることなく発電を行うことはできなくなる。そのため、発電量と植物の生育の均衡をとるのは非常に難しい。
【0006】
一方、分光フィルタリングアプローチは、前述のアプローチとは根本的に異なり、特殊なPVパネルを使用し、選択された波長のみが植物に届くようにするものである。この解決策では、着色フィルター(ダイクロイックフィルター)または波長選択型PVセルを使用して、植物の成長に有益な光成分をその他の太陽光スペクトルから分離する。そして、植物の生育に役立たない波長は、エネルギー生成(PVまたは集熱)に利用される。分光フィルタリングアプローチの利点は、光条件と独立して、植物が自身の成長に必要な光量を、分光フィルタリングがない場合と同じように受け取れることである。その結果、PVシステムは、日射量が少ない月間でも、より日照量の多い月間と同様の効率で発電する。
【0007】
分光フィルタリングのアプローチでは、波長選択性の半透過型太陽電池の使用が検討されている(例えば特許文献3)。しかし、これらの太陽電池の光透過率は、現在までのところ、薄膜フィルターほどの透過率には達しておらず、そのため、植物の生育に有害な部分遮光も生じ、光電子効率はかなり低いままであった。
【0008】
さらに、近年、薄膜ダイクロイックフィルターは、アグロボルタイクスの領域内の様々なセットアップで既に使用されており、例えば、特許文献4は、集光光学系と分光分離を有するシステムを提示している。しかし、光学素子をシステムに追加することで、システムは洗浄しにくくなり、光路に追加の界面が生じるため、全体的な効率が低下する。
【0009】
薄膜フィルターは、その帯域幅が光の入射角に本質的に依存するため、特許文献5、特許文献6、特許文献7または特許文献8のように、外部要因(例えば温室の向き、屋根のような構造物の向きの選択、緯度など)によって固定された向きを持つシステムでは、セットアップの構造に応じてフィルターの再設計が必要になる。
【0010】
特許文献9は、もう1つの従来のシステムを提示しており、これはカセグレンシステムで、植物の成長に有用な光が主ミラーと副ミラーで反射されて植物に到達するものである。このようなシステムには有限の開口部があり、作物にはほとんど直接光しか届かない。曇りの日には、植物に届く光の強度は著しく低下する。さらに、大型の放物面鏡を製造するには多大なコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/126172号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3798688号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/198763号明細書
【特許文献4】国際公開第2016/093397号
【特許文献5】国際公開第2021/012003号
【特許文献6】中国特許出願公開第106538294号明細書
【特許文献7】仏国特許出願公開第3019885号明細書
【特許文献8】国際公開第2015/158968号
【特許文献9】国際公開第2017/024974号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、上記の先行技術の問題点を解決するようなシステムが必要とされている。
【0013】
この点に関して、本発明の主目的は、上述の問題を解決することであり、より詳細には、改善されたエネルギーまたは電力の生成を可能にすると同時に、対象の土地の植物に適切かつ最大の光量を供給するシステムを提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、1日のどの時間帯でも、そしてどの季節でも、エネルギーまたは電力の生成の最適化を可能にするシステムを提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、植物の品種および/または密度に応じて、対象の土地の植物に到達する光量の最適化を可能にするシステムを提供することである。
【0016】
本発明の目的の1つは、エネルギー生成のために集光しながら、可能な限り影を少なくして植物への最高の光透過率を得るために、反射/集光構造を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の問題は、本発明によって解決され、本発明は、軽量で、光フィルタリングを行う軸外し反射鏡の設計を導入し、これは、いくつかのファセットを有し、かつエネルギー生成モジュール上の均質な照明を確保し、低集光のエネルギーまたは電力の生成システムにおいて、高いエネルギー収率または電力収率を最適化する。例えば、エネルギー生成モジュールがPVシステムである場合、均質な照明は、低集光PVシステムにおけるPV収率を最適化する。分光フィルタリングモジュールは、必要な太陽光成分、すなわち波長を反射鏡の後ろに位置する植物に到達させる。また、軽量な構造により、シンプルな太陽追尾システムを実現する。
【0018】
本発明の第1の態様は、エネルギー生成装置であって、少なくとも部分的な反射面を有する反射パネルと、エネルギー生成モジュールと、前記反射パネルおよび前記エネルギー生成モジュールを共に保持する保持構造体と、を備え、前記反射パネルは、入射する太陽光をフィルターすることで、前記太陽光の第1の部分を通過させ、かつ前記太陽光の第2の部分を反射するように構成され、前記反射面は、お互いに対して異なる向きにされ、かつそれぞれが入射光の前記第2の部分を前記エネルギー生成モジュールの集光面上へ均質に反射するように構成された複数の反射領域を有することを特徴とする。これにより、本装置は、エネルギー発電を向上させると同時に、対象の土地の植物に適切かつ最大の光量を供給することができる。さらに、本装置は、より良い植物成長のために、光スペクトルの可能な変更を提供することを可能にする。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、反射パネルの材料の透過/反射/屈折率が、特定の波長範囲の光を通過させるように調整されて構成される。このようにすると、植物へと透過する光と、エネルギーを生成するために使用される光との比率が最適化される。
【0020】
好適には、反射パネルの透過/反射/屈折は、特定の材料および/または特定の厚さ範囲および/または特定の表面処理および/または特定の添加剤によってなされる。したがって、反射パネルは、あらゆるタイプの植物および/またはエネルギー生成収率に適合させることができる。
【0021】
好ましくは、エネルギー生成装置は、反射パネルおよびエネルギー生成モジュールの向きを変更するように構成された配向システムを備える。したがって、入射する太陽光に姿勢を合わせることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、配向システムは、反射パネルの向きを互いに直交する2方向に変更するように構成された傾斜モジュールおよび旋回を備える。このようにすると、反射パネルは、入射する太陽光に対して最適な向きに配置され得る。
【0023】
好適には、エネルギー生成装置は、太陽の向き/位置、または/および太陽光の方向を決定するように構成された太陽追跡システムを備える。これにより、使用者は、入射する太陽光に対する反射パネルの最適な向きを継続的に知ることができる。
【0024】
好ましくは、エネルギー生成装置は、太陽追跡システムによって受信されたデータに基づいて、配向システムを制御するように構成された制御システムを備える。したがって、反射パネルが入射する太陽光に対して常に最適な方向に向くため、効率が向上する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の反射領域は、平坦面および/または隣接面である。したがって、反射光の均質性がさらに向上する。
【0026】
好ましくは、反射パネルは、少なくとも2つのファセット/ラメラからなるダイクロイックミラーである。このようにすると、反射光の均質性がさらに改善される。
【0027】
好適には、ファセット/ラメラは、保持構造体を介して共に組み立てられるか、または単一ピースを構成する。これにより、これらはよりモジュール化され、あるいは強固で製造が容易である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、保持構造体は、反射パネルの端部をエネルギー生成モジュールの端部に接続するように構成されて、モジュールが反射パネルに対して中心から外れるようにされる。このようにすると、エネルギー生成モジュールは、反射パネル上に影を投影しないことにより、その効率をさらに高めることができる。
【0029】
好適には、エネルギー生成モジュールは、光起電セルの少なくとも1つを使用する発電モジュール、熱生成モジュール、および水素生産モジュールのうちの少なくとも1つを含むグループから選択される。したがって、複数の種類のエネルギーを同時に生産することもできる。
【0030】
好ましくは、エネルギー生成モジュールの裏面が、反射面、光散乱体を有し、また蛍光材料および/またはエネルギー生成面を含む。このようにすると、入射光はさらにエネルギーを生成するために使用されるか、または植物に反射される。
【0031】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による複数のエネルギー生成装置を備えるエネルギー生成システムであって、底部から複数の装置をそれぞれ保持する1つまたは複数の梁体、および/または頂部からエネルギー生成装置を吊り下げるケーブルを備えることを特徴とする。これにより、用地全体が有利かつ容易に本発明のエネルギー生成装置を備えることができる。
【0032】
本発明の装置のさらなる利点を以下に簡単に説明する。
【0033】
薄膜ダイクロイックミラーはコストがゼロではない。放物面/円筒面ミラーを用いた設計では、PVパネルがダイクロイックミラー領域の一部を遮光するため、資源を浪費することになる。また、PVパネルは太陽光に対して垂直であるため、植物に若干の陰影を作る。本発明では、軸外しミラーを使用することで、PVパネルの背面に反射する太陽光に非垂直入射を生じさせ、問題を解決している。これにより、太陽高度が低い場合、太陽光がPVパネルの背面で反射して植物に照射されるという調整メカニズムが生まれる。
【0034】
本発明のシステムは、幾何学構造的な制約がある場合でも、ソリューションの配向性を可能にする軽量構造を有する。したがって、はめ込み式のソリューションの使用が単純化される。この構造はまた、植物に対する遮光が最小になるように最適化されている。
【0035】
単純な1つの光学的インターフェイス構造により、間接日光の場合でも、植物への最大限の光透過が可能である。
【0036】
本発明のさらなる特定の利点および特徴は、添付図面を参照する本発明の少なくとも1つの実施形態に関する以下の非限定的な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2A】本発明の第1の実施形態を模式的に表す図。
【
図2B】本発明の第1の実施形態を模式的に表す図。
【
図3A】代替の円形保持構造体を有する本発明の実施形態を模式的に表す図。
【
図3B】代替の円形保持構造体を有する本発明の実施形態を模式的に表す図。
【
図4】反射鏡の1次元アレイを形成する金属プロファイル上の反射鏡を有する本発明の実施形態を表す図。
【
図5】ケーブルを使用した配向機構を有する本発明の別の実施形態を示す図。
【
図6A】複数の反射鏡を使用する配置を備えた本発明の実施形態を表す図であり、ここではケーブルを使用して複数の反射鏡の配向を一度に実行するものである。
【
図6B】複数の反射鏡を使用する配置を備えた本発明の実施形態を表す図であり、ここではケーブルを使用して複数の反射鏡の配向を一度に実行するものである。
【
図7】本発明による反射鏡設計のスケッチと変数定義を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この詳細な説明は、1つの実施形態の任意の特徴を、異なる実施形態の任意の他の特徴と好適な形で組み合わせることができるので、非限定的な形で本発明を説明することを意図している。
【0039】
図1は、太陽光Aが対象の土地Dに向けられ、この土地の上方に本発明によるエネルギー生成装置1が設けられている、本発明の全体的な構想を示している。用語「上方」は自然的意味を持つこともあるが、垂直庭園の場合、同じ用語は「前方」と理解されるべきであり、つまりこの用語の意味は要するに「植物と光源の間」と理解されるべきである。エネルギー生成装置1は、太陽光を少なくとも部分的に遮断するように構成されて、反射パネル11を備えており、反射パネルは、植物に届くように一部の光(矢印C)を通過させると共に、残りの光、すなわち植物が必要としない光(矢印E)を、反射させることによって停止させて方向転換し、そして反射光によってエネルギーを生産するように構成されたエネルギー生成モジュール12へ均質に集光させるように構成されている。好ましい実施形態によれば、生産されるエネルギーは、光起電セルによる電気であるが、代わりに熱エネルギーや水素の生産であってもよい。
【0040】
より詳細には、エネルギー生成装置1は、植物の成長に必要な光(矢印C)が、エネルギー生成装置1の後方(または下方)に位置する植物Dへとほぼ完全に透過するように構成されている。通過基準は、好ましくは光の波長である。
【0041】
次に、本発明のエネルギー生成装置1の第1の実施形態を、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明する。基本的に、エネルギー生成装置1は、反射パネル11と、保持構造体13と、エネルギー生成モジュール12とを備える。
【0042】
この第1の実施形態によれば、反射パネル11は好ましくはダイクロイックミラーを含み、ダイクロイックミラーは好ましくは少なくとも2つの、図では3つが示されているファセット/ラメラ11’、11’’、11’’’で作られており、太陽光が好ましくは少なくとも部分的に反射パネル11の前述のファセット11’、11’’、11’’’から反射するようになっているとよい。ファセット/ラメラ11’、11’’、11’’’は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、保持構造体13’を介してまとめて取り付けられてもよいし、あるいは、太陽エネルギー生成モジュール上で均質な日射が得られるように、反射光を特定の領域、好ましくはエネルギー生成モジュール12の集光面に対応する領域へ均質に集中するように、異なる向きにされた少なくとも2つの平面で作られた内面を有する単一ピース(図示せず)で構成されてもよい。
【0043】
複数の反射領域(11’、11’’、11’’’)は、好ましくは平坦であり、隣接して設けられるとよい。あるいは、第2の実施形態によれば、反射領域を提供するラメラ(11’、11’’、11’’’、11’’’’、11’’’’’、11’’’’’’)の各々は、
図8に示すように、V字形状を有するように2つの部分に分割されてもよい。V字形状とは、1つ(または複数)の反射領域が垂直方向に歪み、互いに対して角度を持つ2つの面を有することを意味する。これにより、光路上に障害物がある場合の影の問題を解決することができ、障害物の影が歪みに対応するようにされる。垂直方向の歪みの場合、これは光を相互反射することを可能にする(左の反射面は光をエネルギー生成モジュールの右の部分に反射し、右の反射面は光をエネルギー生成モジュールの左の部分に反射する)。言い換えれば、
図8の実施形態は、反射光が垂直方向に3倍、水平方向に2倍集中するように配向された6枚のラメラを含む反射パネルを示している。集光率を高めることで、発電モジュールの出力は反射パネルの部分的な遮光に左右されにくくなる。
【0044】
上記で説明したように、反射パネル11は、植物に到達するために通過できる光と、エネルギー生成モジュールへ反射される光をフィルターする。フィルターされるパラメータは、好ましくは光の波長である。照射される植物/作物の種類に応じて、反射パネル11の透過/反射/屈折率、より正確には反射パネル11を構成する材料の透過/反射/屈折率は、特定の波長範囲を通過させ、他の特定の波長範囲を反射するように調整される。例えば、470~530nmより低い(植物の葉/果実中のカロテノイド、アントシアニン等の含有量に依存する)の波長範囲を許容し、630~780nmの波長域を植物へ透過させるフィルターは、代表的な感光性植物成分(クロロフィル、クリプトクロム、フォトトロピン、カロテノイド、フィトクロム…)が最も吸収する領域をカバーすることになる。
【0045】
反射パネル11の透過/反射/屈折を調整するために、特定の材料および/または特定の厚さ範囲および/または特定の表面処理および/または特定の添加剤を使用することができる。ダイクロイックフィルターは、例えば、ガラス基板上に数百ナノメートルの厚さの金属酸化物層を蒸着して作ることができる。より安価な代替案としては、多層ポリマーフィルターを例えばガラス、ポリカーボネート、アクリル、その他のUV安定ポリマーなどの基板に貼り付ける方法がある。プラズモニックフィルターなどの他の選択肢も考えられる。他の実施形態によれば、反射パネルの裏面、すなわち表面処理が施されていない側は、すりガラスまたは拡散ガラスで作ることができ、かつ/または反射防止(AR)コーティングを施すことができる。
【0046】
エネルギー生成モジュール12は、好ましくは1つまたは複数の光起電セルであるが、熱生成用モジュール、および/または水素生産用モジュールといったものであってもよい。反射パネル11およびエネルギー生成モジュール12は、好ましくは、最大の光量(直接光および間接光)が植物に到達するように考慮された軽量保持構造体13、13’によって保持され、したがって、植物に影ができないように最適化され、すなわち、可能な限り最小の遮光面を有する。
【0047】
さらに、植物に透過される光量を最大化するために、エネルギー生成モジュール12の裏面(反射パネル11に背を向ける側)は、光の一部を植物へ反射させるように(
図1の矢印H)構成させることができる(例えば、ミラーおよび/または特定の傾斜方向を用意する)。この面はまた、拡散光を植物に到達させるための光散乱体であったり、非光合成有効光量子の光合成有効光量子へのアップ/ダウン変換を確実にするための蛍光物質を含むものであったり、エネルギー発生面であったりすることもできる。しかし、最適化されたエネルギー生産が必要であれば、エネルギー生成モジュールは二面体であってもよい。エネルギー生成モジュールは、ヒートシンクと結合してもよい。
【0048】
エネルギー生成装置の保持構造体13、13’も、モジュールの向きを単純化するように設計されている。反射パネル11とエネルギー生成モジュール12とを共に保持する保持構造体13のフレームは、
図2Aに示すような矩形形状、または
図3Aに示すような多角形状もしくは円形形状を有することができる。好ましくは、保持構造体13の中央に空所を設けた中空構造体であり、この構造では、当該構造体によって遮られる光を最小にするように、最も薄い表面となる。保持構造体13は、単一の機械ピースから作ることもできるし、互いに取り付けられた複数の要素から作ることもできる。保持構造体は軽くて丈夫であることが望ましい。鉄、チタン、アルミニウムなどの金属を使用することができる。炭素強化複合材料やガラス繊維複合材料などの複合材料の使用も便利である。小さな部品にはUV耐性ポリマーを使用することもできる。保持構造体13の空所は、間接光の高い光透過率を補助するだけでなく、強風の場合に風の抵抗を下げるために構造体の向きを合わせるのにも役立つ。
【0049】
好ましくは、保持構造体は、モジュールが反射パネルに対して中心から外れる(または軸から外れる)ように、反射パネルの端部をエネルギー生成モジュールの端部に接続するように構成される。さらに好ましくは、保持構造体は、反射パネルの下端をエネルギー生成モジュールの上端に接続する。ここでの端部という用語は、縁部(下縁部および上縁部)として理解されるべきである。
【0050】
使用時には、
図2に示すような複数のエネルギー生成装置1が同時に使用され、対象となる土地の種類や作物の種類に応じてエネルギーの生成を最適化する。これらの装置を保持するために、システム全体は、
図4に示すように、複数の装置1をそれぞれ保持する1つまたは複数の梁体20を設けるように設計されている。ここでは、エネルギー生成装置1を底部から保持する1つの選択肢を示している。あるいは、
図5に示すように、例えばいくつかのケーブル21を用いてエネルギー生成装置1を頂部から吊り下げることも可能であろう。
【0051】
最後に、複数の装置1をそれぞれ底部から保持する1つまたは複数の梁体20と、エネルギー生成装置1を頂部から吊り下げるケーブル21とを組み合わせた配置を設けることもできる。
【0052】
1つのエネルギー生成装置1ごとの発電量を向上させるためには、パネルによって反射された光が発電モジュールの全面をカバーすることが好ましい。さらに、発電モジュールに到達する反射光の量を最大化/最適化するように、太陽光に臨む向きの反射面を提示する。一日中、そして一年中これを達成するために、好ましくは、太陽の動きを追跡するために装置1の向きを電動化できるような太陽方位追跡システム(図示せず)と電動化システムを含むとよい。例えば、各装置1は、
図2Aおよび
図2Bに示す一組のアクチュエータ14、15を備えているとよく、これらのアクチュエータは、エネルギー生成装置1を傾斜させ、または旋回させることができる。
図2Aおよび
図2Bの例では、モジュールの傾斜は、好ましくは、非キャプティブ型ステッピングモータを使用して得られる。
【0053】
太陽追跡を行う機構の別の実施形態は、
図3Aおよび
図3Bに示されており、スライダー17が装置1を支える矩形の保持構造体18を動かすリング構造体16を備える。第2軸の動き(傾斜)は、中央フレーム13の回転軸(M)によって確保される。
【0054】
図2A、
図2B、
図3Aおよび
図3Bに描かれているような配向機構は、好ましくは経緯台に基づいている。赤道儀式架台を再現するジンバルを使用したシステムも同じ目的に使用できる。
【0055】
前述したように、反射パネル11は単一の反射鏡で構成することもできるが、反射鏡の1次元または2次元アレイで構成することもできる。
図6Aおよび
図6Bは、複数のエネルギー生成装置1を金属プロファイル(梁体20)に取り付けるための第1の実施形態を示している。ここでは、各エネルギー発生装置1に一組のアクチュエータ14、15を設けるのを避けるために、プロファイルの端部にモータを備えたタイミングベルト18を使用して、反射鏡の全体ラインの方位角運動を行う。
図6Bのように、プロファイルに埋め込まれた1本のケーブルを備えた機構を使用して、偏差を使用して太陽の偏角を追跡することができるが、代わりに同じ役割を実行する複数のケーブルを備えたシステムを使用することもできる。
【0056】
反射パネル11の幾何学的形状は、エネルギー生成モジュール12に均質な照明が当たるように最適化される。好ましくは、前述の形状は、ラメラの端点を計算するための数式に従うべきである。
【0057】
図7を参照して、座標系の原点に反射パネル11の底部(点X1=(0,0))があり、座標(L,0)にエネルギー生成モジュール12の底部(点PV
b)がある、N-1個のラメラ11’、11’、…で作られた(またはN-1個の異なる面を有する)反射パネル11を考える。エネルギー生成モジュール12は長さPV
hを有し、エネルギー生成モジュール12の頂部の座標がPV
t=(L+PV
h*sin(δ),PV
h*cos(δ))となるように、y軸に対して角度δだけ傾いている。
【0058】
エネルギー生成モジュール12の影がX1に投影される太陽の仰角は、α=atan(PVh*cos(δ)/(L+PVh*sin(δ)))である。nIは、原点から太陽の方向を指す単位ベクトルであり、nI=[cos(α);sin(α)]である。
【0059】
前の段落で説明した変数から、ラメラ11、11’、…の極限点を繰り返し計算することができる。ラメラ11の下極限点Xiがわかれば、上極限点Xi+1は次のように計算できる:
【0060】
反射光の方向(ラメラの底部はPVパネルの底部に向かう)を示す単位ベクトルはnX=(PVb-Xi)/|PVb-Xi|である。ラメラに垂直な単位ベクトルは反射と太陽光の中間にある:nM=(nI+nX)/|nI+nX|。nMベクトルは座標nM,xとnM,yを持つ。ミラーラメラに対する接線の上向きの単位ベクトルnMpは座標(-nM,y;nM,x)を持つ。ラメラの長さを求めるには、以下の一次方程式系Xi+a*nMp=PVt+b*nXを解いてaとbを求める。この方程式は、反射光線がPVモジュールの頂部に到達する、nMで定義される表面を持つラメラ上の点を見つける。方程式を解くaの値はラメラの長さである。ラメラの上極限点はXi+1=Xi+a*nMpとなる。次のラメラの極限も同様に計算でき、Xi+1から始めてXi+2を計算する。N-1個のラメラを有する反射鏡の場合、極限はXNまで計算されなければならない。
【0061】
反射光のパネルへの入射角を小さくするために、エネルギー生成モジュール12の傾きδが調整されるとよい。同時に、傾斜により、太陽高度が小さい場合にパネル背面に当たる太陽光を植物へ反射させることができる。
【0062】
本実施形態を多数の実施形態と関連付けて説明してきたが、多くの代替案、修正案、および変形例が、適用される技術分野における通常の知識を有する者にとって明白であるか、または明らかである。従って、本開示は、本開示の範囲内にあるそのような代替案、修正案、均等物および変形例をすべて包含することを意図している。例えば、使用可能な異なる装置、材料、角度に関して特にそうである。さらに、本発明のシステムおよび装置は、屋外すなわち野原、あるいは屋内、例えば温室で使用するように構成されることが意図されるべきである。
【国際調査報告】