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特表2024-527051グラファイト性ナノファイバーおよび一酸化炭素非含有水素の生成ための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】グラファイト性ナノファイバーおよび一酸化炭素非含有水素の生成ための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20240711BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20240711BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240711BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20240711BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20240711BHJP
【FI】
B01J23/755 M
B01J37/18 ZAB
B01J37/08
C01B3/26
C01B32/162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504972
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022038373
(87)【国際公開番号】W WO2023009540
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,733
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033412
【氏名又は名称】パクト ヒューエル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ジャンバワラ,ジュゼール
(72)【発明者】
【氏名】ジン,イーナン
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB01
4G140DC02
4G146AA11
4G146AB06
4G146BA12
4G146BC03
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC42
4G146BC44
4G146DA03
4G146DA26
4G169AA08
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC11A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC18A
4G169BC19A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC68A
4G169BD03A
4G169CB81
4G169CC21
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB17Y
4G169EC11Y
4G169EC12Y
4G169EC13Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169EC16Y
4G169EC17Y
4G169FB30
4G169FB44
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
一酸化炭素非含有水素ガスならびに一貫した構造および寸法を有するグラファイト性ナノファイバーの生成に適した触媒組成物が開示されており、そのような触媒組成物の作製方法、および使用方法も開示されている。触媒組成物は、化学式αNiβOまたはαNiβγO、(式中、αはIUPAC第13族の1つまたは複数の元素であり、βはIUPAC第2族の1つまたは複数の元素であり、γはIUPAC第11族の1つまたは複数の元素である)で通常表される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般化学式αNiβ
(式中、αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
x:yの比率は少なくとも約1.0であり、約6.2以下である)
で表される触媒組成物であって、
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する、触媒組成物。
【請求項2】
αがアルミニウム(Al)である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
βがマグネシウム(Mg)である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
w:xの比率が少なくとも約0.1であり、約0.5以下である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記x:yの比率が少なくとも約1.8であり、約2.8以下である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
一般化学式αNiβγ
(式中、αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
γは、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
x:yの比率は少なくとも約1.3であり、約3.6以下であり、
x:zの比率は少なくとも約1.0であり、約19.0以下である)
で表される触媒組成物であって、
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する、触媒組成物。
【請求項8】
αがアルミニウム(Al)である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
βがマグネシウム(Mg)である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項10】
γが銅(Cu)である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項11】
w:xの比率が少なくとも約0.1であり、約0.5以下である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記x:yの比率が少なくとも約1.8であり、約2.8以下である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記x:zの比率が少なくとも約2.3であり、約9.0以下である、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%が金属状態で存在する、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項17】
触媒組成物の製造方法であって、
(a)wモル部の1つまたは複数のα元素、xモル部のニッケル、およびyモル部の1つまたは複数のβ元素を含有する触媒前駆体組成物を準備するステップであり、
前記1つまたは複数のα元素が、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl)からなる群から選択され、
前記1つまたは複数のβ元素が、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)からなる群から選択され、
x:yの比率が少なくとも約1.0であり、約6.2以下である、ステップと、
(b)少なくとも約500℃であり、約1000℃以下の温度で前記触媒前駆体組成物を焼成して焼成物を形成するステップと、
(c)少なくとも約600℃であり、約1000℃以下の温度で水素ガスを含む雰囲気下で前記焼成物を還元することで触媒組成物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
1つまたは複数のα元素がアルミニウム(Al)を含む、またはアルミニウム(Al)からなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つまたは複数のβ元素がマグネシウム(Mg)を含む、またはマグネシウム(Mg)からなる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
w:xの比率が少なくとも約0.1であり、約0.5以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記x:yの比率が少なくとも約1.8であり、約2.8以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(c)の後、前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒前駆体組成物が、zモル部の1つまたは複数のγ元素をさらに含み、前記1つまたは複数のγ元素が銅(Cu)、銀(Ag)、および金(Au)からなる群から選択され、
前記x:yの比率が少なくとも約1.3であり、約3.6以下であり、
x:zの比率が少なくとも約1.0であり、約19.0以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数のγ元素が銅(Cu)を含む、または銅(Cu)からなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記x:zの比率が少なくとも約2.3であり、約9.0以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(c)の後、前記触媒組成物中の前記1つまたは複数のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%が金属状態で存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(c)の後、前記触媒組成物中の前記1つまたは複数のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(b)の温度が少なくとも約600℃であり、約900℃以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(b)の温度が少なくとも約750℃であり、約850℃以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(c)の雰囲気がアルゴンをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(c)の温度が少なくとも約850℃であり、約950℃以下である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
水素ガスを含む元素炭素の固体および生成物流を生成するためのメタンの触媒的分解の方法であって、
(a)一般化学式αNiβOまたはαNiβγ
(式中、αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
γは、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
x:yの比率は、少なくとも約1.0であり、約6.2以下であり、
x:zの比率は、γが存在する場合、少なくとも約1.0であり、約19.0以下である。)
で表される触媒組成物を準備するステップであって、
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する、ステップと、
(b)少なくとも約500℃であり、約800℃以下の温度で、前記触媒組成物を、メタンガスを含む反応性ガス流と接触させるステップと
を含む、方法。
【請求項33】
αがアルミニウム(Al)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
βがマグネシウム(Mg)である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
γが銅(Cu)である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
w:xの比率が少なくとも約0.1であり、約0.5以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記x:yの比率が少なくとも約1.8であり、約2.8以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記x:zの比率が、γが存在する場合、少なくとも約2.3であり、約9.0以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%が金属状態で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%が金属状態で存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記炭素固体の少なくとも約85質量%が、繊維軸に対して垂直に配列したプレートレットを含むグラファイト性ナノファイバーとして形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記生成物流が一酸化炭素を含有しない、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記反応性ガス流が少なくとも約99.9体積%のメタンを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記反応性ガス流が少なくとも約5体積%であり、約50体積%以下の水素ガスをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記反応性ガス流が二酸化炭素をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記反応性ガス流がバイオガスまたは精製されたバイオガスの流である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(b)の温度が少なくとも約600℃であり、約750℃以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(b)の温度が少なくとも約650℃であり、約725℃以下である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(b)が懸濁床反応器内で実施される、請求項32に記載の方法。
【請求項51】
前記元素炭素の固体の少なくとも一部が前記触媒組成物の粒子の表面上に形成される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月26日に出願された米国仮特許出願第63/225,733号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、メタンの工業的スケールの触媒的分解に有用である、固体炭素生成物および水素ガスを生成するための触媒組成物、ならびにそのような触媒組成物の作製方法、および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メタンの炭素および水素ガスへの熱分解は、下記反応スキーム(1)により図示されているが、適度な吸熱性プロセスであるものの、生成された炭素1モルあたりのそのエネルギー所要量(75.6kJ/molC)は、水蒸気メタン改質(SMR)プロセスにより要求されるエネルギー所要量(約190kJ/molC)よりも大幅に低い。このように、SMRプロセスは、理論上、メタン1モルあたり、熱分解(2モル)に比べて2倍モル量(4モル)もの水素ガスを生成するが、上記プロセスに関連するエネルギーは不釣り合いに高く(熱分解では37.8kJ/molH、対するSMRでは約47.5kJ/molH)、不純物および反応副生成物に起因し、SMRプロセスは、より典型的には、メタン1モルあたりわずか約3.5モルHに終止し、依然エネルギー所要量を約54.3kJ/molHにさらに上昇させる。さらには、SMRプロセスとは異なり、メタンの熱分解により生成された水素は、酸素非含有環境において生成することができ、水-ガスシフト反応が関与しないため、上記反応は、高純度の炭素および一酸化炭素を含有しない水素ガス流の両方を生成させ得る。
CH(g)+75.6kJ/mol→C(s)+2H(g) -(1)
【0004】
天然ガスの熱分解は、上記プロセスの補助的な燃料として用いられる、得られる水素ガスと共に、カーボンブラックを生産するために長く使用されてきた。これらのプロセスは、通常は、高い稼働温度(典型的には、約1,400℃)で2つのタンデム反応器を用いて半連続的に実施されるが、当業者らは、触媒作用を介してこれらの稼働温度を低下させようと試みてきた。コバルト系触媒、クロム系触媒、鉄系触媒、ニッケル系触媒、白金系触媒、パラジウム系触媒、およびロジウム系触媒を用いるメタンの触媒的分解に関するデータは、下記文献において報告されている。例えば、Marina A. Ermakova et al., “Decomposition of methane over iron catalysts at the range of moderate temperatures: the influence of structure of the catalytic systems and the reaction conditions on the yield of carbon and morphology of carbon filaments,” 201(2) Journal of Catalysis 183 (July 2001)を参照のこと。その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
メタンの直接的に触媒された分解は、熱分解を超える2つの大きな利点を提示する:(i)稼働温度が、約1,400℃から少なくとも約550℃(典型的には約550℃から約725℃の間)の低温に劇的に低下され得ることにより、プロセスのエネルギー入力要件を著しく低下させる、および(ii)設計された各種高付加価値カーボンナノ構造体もまた、慎重に選択された触媒の使用により生成され得ることにより、プロセスの工業的価値を上昇させる。天然ガスが大容量で広く入手可能であるため、産業スケールで水素ガスおよび高付加価値カーボンナノ構造体を生産するためのメタンの触媒的分解は、技術的に実現可能である。しかし、この分解プロセスを実用化、すなわち、工業的かつ金銭的なものにするには、これまで取得できていない、意義のある、効果の高い触媒が必要とされる。そのような触媒は、長時間高い活性を示し、高濃度の蓄積炭素の存在下で機能し続ける必要がある。
【0006】
さらには、メタンの触媒的分解は、金属粒子径に対する厳しい要求および反応条件が触媒形態に不利な影響を及ぼす傾向があることから、ばらつきのあるプロセスであり得る。過去の研究は、触媒の平均粒子径が約30から40nmである場合に固体炭素の最も高い収率が得られるが、触媒がメタンと接触するとすぐにニッケル触媒粒子が凝集してしまい得ることも示している。例えば、M. A. Ermakova et al., “XRD studies of evolution of catalytic nickel nanoparticles during synthesis of filamentous carbon from methane,” 62(2) Catalysis Letters 93 (Oct. 1999)を参照のこと。その全体は参照により本明細書に組み込まれる。この粒子の焼結挙動は、触媒活性の低下に繋がるが、30から40nmのように小さい粒子を用いて工業的スケールで触媒的メタン分解プロセスを稼働させることは非常に難しい、または不可能である。産業用として実用化させるためには、上記触媒粒子は、少なくとも1桁分大きい必要があるとされる。
【0007】
このように、メタンの触媒された分解により炭素および水素を生成するとの概念が強い関心を引き寄せ、技術的な実現可能性を実証してきた一方で、工業的スケールでの所望の高品質の炭素質生成物の一貫した生産は、達成が困難であるとされてきた。特に、上述の触媒粒子径の制限に加え、多くの当技術における過去のアプローチは、生産されたカーボンナノ材料のタイプを任意の程度で制御することに失敗しており、結果としてこれらのアプローチの炭素質生成物は、通常、困難であり、高価であり、および/または時間を要する、化学的プロセスおよび物理的プロセスにより精製されなければならず、それらを工業用に非実用的にしている。例えば、カーボンナノファイバーを生成するためのNiMgOおよびNiMgCuO触媒の使用は、当技術において長く知られていたが、(例えば、Wangらに帰属する、米国特許第6,995,115号明細書および米国特許第7,001,586号明細書を参照のこと。その両方の全体は参照により本明細書に組み込まれる。)これらの触媒は、ナノ材料の不統一な混合物と共に、非晶質の炭素粉末を生成する。前者は、分離/精製が困難であり、後者は工業的価値が非常に限定されている。
【0008】
従って、当技術において、高品質および/または高純度の選択されたカーボンナノ材料の生産を可能とすることにより、これらのプロセスの性能を向上させるメタン分解プロセスに使用するための、触媒組成物の需要が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様において、触媒組成物は、一般化学式αNiβO(式中、αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、x:yの比率は少なくとも約1.0であり、約6.2以下である)で表され、上記触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する。
【0010】
実施形態において、αは、アルミニウム(Al)であってもよい。
【0011】
実施形態において、βは、マグネシウム(Mg)であってもよい。
【0012】
実施形態において、w:xの比率は、少なくとも約0.1であり、約0.5以下であってもよい。
【0013】
実施形態において、x:yの比率は、少なくとも約1.8であり、約2.8以下であってもよい。
【0014】
実施形態において、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%は、金属状態で存在し得る。
【0015】
本開示の別の態様において、触媒組成物は、一般化学式αNiβγO(式中、αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、γは、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、x:yの比率は少なくとも約1.3であり、約3.6以下であり、x:zの比率は少なくとも約1.0であり、約19.0以下である)で表され、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する。
【0016】
実施形態において、αは、アルミニウム(Al)であってもよい。
【0017】
実施形態において、βは、マグネシウム(Mg)であってもよい。
【0018】
実施形態において、γは、銅(Cu)であってもよい。
【0019】
実施形態において、w:xの比率は、少なくとも約0.1であり、約0.5以下であってもよい。
【0020】
実施形態において、x:yの比率は、少なくとも約1.8であり、約2.8以下であってもよい。
【0021】
実施形態において、x:zの比率は、少なくとも約2.3であり、約9.0以下であってもよい。
【0022】
実施形態において、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%は、金属状態で存在し得る。
【0023】
実施形態において、触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在し得る。触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%は、その必要はないが、金属状態で存在し得る。
【0024】
本開示の別の態様において、触媒組成物の製造方法は、(a)wモル部の1つまたは複数のα元素、xモル部のニッケル、およびyモル部の1つまたは複数のβ元素を含む触媒前駆体組成物を準備するステップであって、上記1つまたは複数のα元素が、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl)からなる群から選択され、上記1つまたは複数のβ元素が、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)からなる群から選択され、x:yの比率が少なくとも約1.0であり、約6.2以下である、ステップと、(b)少なくとも約500℃であり、約1,000℃以下の温度で上記触媒前駆体組成物を焼成して焼成物を形成するステップと、(c)少なくとも約600℃であり、約1,000℃以下の温度で水素ガスを含む雰囲気下で上記焼成物を還元することで触媒組成物を形成するステップとを含む。
【0025】
実施形態において、1つまたは複数のα元素は、アルミニウム(Al)を含み得る、またはアルミニウム(Al)からなり得る。
【0026】
実施形態において、1つまたは複数のβ元素は、マグネシウム(Mg)を含み得る、またはマグネシウム(Mg)からなり得る。
【0027】
実施形態において、w:xの比率は、少なくとも約0.1であり、約0.5以下であってもよい。
【0028】
実施形態において、x:yの比率は、少なくとも約1.8であり、約2.8以下であってもよい。
【0029】
実施形態において、ステップ(c)の後、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%は、金属状態で存在し得る。
【0030】
実施形態において、触媒前駆体組成物は、zモル部の1つまたは複数のγ元素をさらに含むことができ、上記1つまたは複数のγ元素が銅(Cu)、銀(Ag)、および金(Au)からなる群から選択され、x:yの比率が少なくとも約1.3であり、約3.6以下であり、x:zの比率が少なくとも約1.0であり、約19.0以下である。
【0031】
実施形態において、1つまたは複数のγ元素は、銅(Cu)を含み得る、または銅(Cu)からなり得る。
【0032】
実施形態において、x:zの比率は、少なくとも約2.3であり、約9.0以下であってもよい。
【0033】
実施形態において、ステップ(c)の後、触媒組成物中の1つまたは複数のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在し得る。ステップ(c)の後、触媒組成物中の1つまたは複数のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%は、その必要はないが、金属状態で存在し得る。
【0034】
実施形態において、ステップ(b)の温度は、少なくとも約600℃であり、約900℃以下であってもよい。ステップ(b)の温度は、その必要はないが、少なくとも約750℃であり、約850℃以下であってもよい。
【0035】
実施形態において、ステップ(c)の雰囲気は、アルゴンをさらに含んでもよい。
【0036】
実施形態において、ステップ(c)の温度は、少なくとも約850℃であり、約950℃以下であってもよい。
【0037】
本開示の別の態様において、元素炭素の固体および水素ガスを含む生成物流を生成するためのメタンの触媒的分解の方法は、(a)一般化学式αNiβOまたはαNiβγO(式中αは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、βは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、γは、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、x:yの比率は、少なくとも約1.0であり、約6.2以下であり、x:zの比率は、γが存在する場合、少なくとも約1.0であり、約19.0以下である。)で表される触媒組成物を準備するステップであって、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する、ステップと、(b)少なくとも約500℃であり、約800℃以下の温度で、上記触媒組成物を、メタンガスを含む反応性ガス流と接触させるステップとを含む。
【0038】
実施形態において、αは、アルミニウム(Al)であってもよい。
【0039】
実施形態において、βは、マグネシウム(Mg)であってもよい。
【0040】
実施形態において、γは、銅(Cu)であってもよい。
【0041】
実施形態において、w:xの比率は、少なくとも約0.1であり、約0.5以下であってもよい。
【0042】
実施形態において、x:yの比率は、少なくとも約1.8であり、約2.8以下であってもよい。
【0043】
実施形態において、x:zの比率は、γが存在する場合、少なくとも約2.3であり、約9.0以下であってもよい。
【0044】
実施形態において、触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約50%は、金属状態で存在し得る。
【0045】
実施形態において、触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約25%は、金属状態で存在する。触媒組成物中のγ元素の活性サイトの少なくとも約50%は、その必要はないが、金属状態で存在し得る。
【0046】
実施形態において、炭素固体の少なくとも約85質量%は、繊維軸に対して垂直に配列したプレートレットを含むグラファイト性ナノファイバーとして形成され得る。
【0047】
実施形態において、生成物流は、一酸化炭素を含まないものであってもよい。
【0048】
実施形態において、反応性ガス流は、少なくとも約99.9体積%のメタンを含んでもよい。
【0049】
実施形態において、反応性ガス流は、少なくとも約5体積%であり、約50体積%以下の水素ガスをさらに含んでもよい。
【0050】
実施形態において、反応性ガス流は、二酸化炭素をさらに含んでもよい。上記反応性ガス流は、その必要はないが、バイオガスまたは精製されたバイオガスの流であってもよい。
【0051】
実施形態において、ステップ(b)の温度は、少なくとも約600℃であり、約750℃以下であってもよい。ステップ(b)の温度は、その必要はないが、少なくとも約650℃であり、約725℃以下であってもよい。
【0052】
実施形態において、ステップ(b)は、懸濁床反応器内で実施されてもよい。
【0053】
実施形態において、元素炭素の固体の少なくとも一部は、触媒組成物の粒子の表面上に形成され得る。
【0054】
具体的な実施形態および用途が図示および説明されているが、本開示は、本明細書に記載されたまさにその構成および構成要素に限定されない。当業者には明らかであり得る各種改変、変更、および変形は、本開示全体の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法およびシステムの配置、動作、および詳細において行うことができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、特に指定がない限り、「約(about)」、「およそ(approximately)」等の用語は、数値限定または数値範囲に関連して用いられる場合、記載された限定または範囲が最大10%まで変動し得ることを意味する。非限定的な例として、「約(about)750」は、675のような低い値もしくは825のような高い値、またはそれらの間の任意の値を意味し得る。2つ以上の数値限定または数値範囲の間の比率または関係に関連して用いられる場合、用語「約(about)」、「およそ(approximately)」等は、限定または範囲のそれぞれが最大10%まで変動し得ることを意味する。非限定的な例として、2つの量が「ほぼ等しい(approximately equal)」という記述は、2つの量の間の比率が0.9:1.1のような低い比率もしくは1.1:0.9のような高い比率(またはそれらの間の任意の値)であることを意味し得、四元比率が「約(about)5:3:1:1」であるという記述は、比率の最初の数値が少なくとも4.5であり、5.5以下の任意の値であること、比率の2番目の数値が少なくとも2.7であり、3.3以下の任意の値であること等を意味し得る。
【0056】
本明細書中に記載されている実施形態および構成は、完全形でも網羅的でもない。理解されるように、他の実施形態は、上記に説明された、または以下で詳細に記載される1つまたは複数の特徴を、単独で、または組み合わせて利用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
別段の定義がない限り、本明細書中で用いられている全ての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で参照されている全ての特許、出願、公開出願、およびその他の刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書中に用語の定義が複数存在する場合、特に断りのない限り、発明の概要で提供される定義が優先される。
【0058】
本明細書において使用されている場合、特に指定のない限り、用語「バイオガス」は、嫌気性微生物および/またはメタン生成微生物による有機基質の嫌気性消化により生成される、少なくともメタンおよび二酸化炭素を含むガスの混合物を指す。バイオガスは、本明細書中に用いられる用語であるが、典型的には、(但し常時ではない)最初に生成したものは硫化水素、シロキサン、または他の硫黄化合物をさらに含む。本明細書中で用いられる用語「精製されたバイオガス、」は、特に指定のない限り、処理されて、それから硫黄化合物の少なくとも一部を除去したバイオガスを指す。
【0059】
触媒組成物
本開示は、メタンの固体炭素構造体および水素ガスへの分解を触媒するために有用であり、さらにより具体的には、選択された寸法、形態、および/または構造(例えば、グラファイト性ナノファイバー)を有する高選択性および/または高純度の炭素固体ならびに一酸化炭素非含有水素ガス生成物を生成するための触媒組成物を提供する。少し別の言い方をすれば、本開示による触媒組成物は、触媒的メタン分解を経由して、結晶性黒鉛(例えば、ナノファイバーが、ナノファイバーの主軸に対して垂直に配列しているプレートレットを含むプレートレット型カーボンナノファイバー)から主にまたは全体的になる特定のタイプのカーボンナノファイバーの大量(工業的スケール)生産のための経路を提供するものであるが、それはこれまで達成されてこなかった。
【0060】
本開示による触媒組成物は、一般化学式αNiβOまたはαNiβγOで表すことができ、式中、αはIUPAC第13族の1つまたは複数の元素であり(すなわち、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、および/またはタリウム)、βはIUPAC第2族の1つまたは複数の元素であり(すなわち、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、および/またはバリウム)、γはIUPAC第11族の1つまたは複数の元素である(すなわち、銅、銀、および/または金)。より典型的には、これらに限定されないが、αは主にまたは全体的にアルミニウムからなり、βは主にまたは全体的にマグネシウムからなり、γは(存在する場合)主にまたは全体的に銅からなる。α、β、またはγのいずれか1つまたは複数が2つ以上の元素からなる本開示による任意の組成において、上記で与えられた一般化学式中の対応する化学量論的添字は、2つ以上の元素の組み合わせ量を表すことが明確に理解され得る。非限定的な例示として、式AlNiMgCaOで表される組成中の化学量論的添字yは、組成の各モルがβとして2モルの第2族元素(1モルのマグネシウムおよび1モルのカルシウム)を含有するため2に等しく、式AlNiMgCuAgOで表される組成中の化学量論的添字zは、組成の各モルがyとして2モルの第11族元素(1モルの銅および1モルの銀)を含有するため2に等しい。
【0061】
過去の研究において、メタンの触媒的分解に使用するために調査された全ての触媒の間で、ニッケル系触媒は、最も高い活性を提供することが見受けられ、最も頻繁に用いられる触媒であった。ニッケル系触媒が金属(すなわち、非イオン化された)状態である場合、ニッケルは、面心立方(FCC)結晶系を形成する。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、本開示の触媒組成物が、分解反応が起こるFCCニッケル結晶の(100)面および/または(111)面上にメタンガス分子を化学吸着させることにより、メタンの固体炭素および水素ガスへの分解を触媒すると仮説を立てている。このように、メタン分子の化学吸着および分解に利用可能なFCCニッケル結晶面の数を増加させるためには、本開示の触媒組成物中の活性ニッケルサイトの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が金属状態であることが好ましい。
【0062】
再度、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、本開示の触媒組成物中のα元素(例えば、アルミニウム等)、β元素(例えば、マグネシウム等)、および(存在する場合)γ元素(例えば、銅等)は、触媒組成物の製造または使用に有利な効果を発揮する活性剤、促進剤、または他の種として作用すると仮説を立てている。第一の非限定的な例示として、本発明者らは、α元素(例えば、アルミニウム等)は、メタンの分解に起因する固体カーボンナノ構造体の形成および成長を少なくとも部分的に制御し得ること、ならびに、結果として、当業者らは、本開示の教示内容に基づき、高い純度および/または特異性を有する炭素固体(例えば、ナノファイバー、ナノチューブ等)の寸法、形態、および/または構造を制御、最適化、選択、および/または調節するために、組成物中のα元素の所望の相対量を選択することを可能とし得ると仮説を立てている。第二の非限定的な例示として、本発明者らは、β元素(例えば、マグネシウム等)は、FCCニッケル結晶を安定化させるために作用し得る、またはそうでなければニッケルを金属状態で維持することで、触媒組成物の製造中に要求される焼成の度合いを低減する、および/もしくは金属状態(すなわち、FCC結晶として)で存在する活性ニッケルサイトの割合を上昇させることにより触媒組成物の触媒活性を向上させると仮説を立てている。第三の非限定的な例示として、本発明者らは、γ元素(例えば、銅等)は、存在する場合、メタン分解プロセスの稼働温度を少なくとも約50℃も低下させ得ると仮説を立てており、例えばニッケルのように、安定な第11族元素(銅、銀、および金)は金属状態である場合にFCC結晶を形成するため、いくつかの実施形態において、γ元素の活性サイトの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が金属状態で存在することが好ましいとされ得る。
【0063】
本開示の多くの実施形態において、αは、主にまたは全体的にアルミニウムからなり得る。しかし、周期表の同じ列、すなわち、IUPAC第13族(「ホウ素族」としても知られることがある)の任意の1つまたは複数の他の元素、例えばホウ素、ガリウム、インジウム、および/またはタリウムは、本開示による触媒組成物のα元素の少なくとも一部、そしていくつかの実施形態においてはその全体を構成し得ることが明確に理解され得る。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、他のIUPAC第13族元素、例えば、ホウ素、ガリウム、インジウム、および/またはタリウムが、本開示の触媒組成物中のアルミニウムと同等または同様の機能をもたらし得る、例えば、メタンの分解に起因する固体カーボンナノ構造体の形成および成長を少なくとも部分的に制御すると仮説を立てている。
【0064】
本開示の多くの実施形態において、βは、主にまたは全体的にマグネシウムからなり得る。しかし、周期表の同じ列、すなわち、IUPAC第2族(アルカリ土類金属)の任意の1つまたは複数の他の元素、例えばベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、および/またはバリウムは、本開示による触媒組成物のβ元素の少なくとも一部、そしていくつかの実施形態においてはその全体を構成し得ることが明確に理解され得る。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、他のIUPAC第2族元素、例えば、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、および/またはタリウムが、本開示の触媒組成物中のマグネシウムと同等または同様の機能をもたらし得る、例えば、FCCニッケル結晶を安定化させるために作用する、またはそうでなければニッケルを金属状態で維持すると仮説を立てている。
【0065】
本開示の多くの実施形態において、γは、存在する場合、主にまたは全体的に銅からなり得る。しかし、周期表の同じ列、すなわち、IUPAC第11族の任意の1つまたは複数の他の元素、例えば銀および/または金は、本開示による触媒組成物のγ元素の少なくとも一部、そしていくつかの実施形態においてはその全体を構成し得ることが明確に理解され得る。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、他のIUPAC第11族元素、例えば銀および/または金は、本開示の触媒組成物中の銅と同等または同様の機能をもたらし得る、例えば、メタン分解プロセスの稼働温度を少なくとも約50℃も低下させ得ると仮説を立てている。
【0066】
本発明者らは、概して、本開示の触媒組成物を用いたメタン分解により形成される炭素構造体のタイプを制御するための1つの重要なパラメーターが、α元素のニッケルに対するモル比、すなわち、一般化学式αNiβOまたはαNiβγOにおけるw:xの比率であることを発見した。最も好ましくは、この比率(または、言い換えると、触媒組成物中のニッケル原子1モルあたりのα元素原子のモル数)は少なくとも約0.1であり、約0.5以下である。非限定的な例示として、この比率は約0.10、約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、約0.20、約0.21、約0.22、約0.23、約0.24、約0.25、約0.26、約0.27、約0.28、約0.29、約0.30、約0.31、約0.32、約0.33、約0.34、約0.35、約0.36、約0.37、約0.38、約0.39、約0.40、約0.41、約0.42、約0.43、約0.44、約0.45、約0.46、約0.47、約0.48、約0.49、もしくは約0.50であってもよく、またはこれとは別に、これらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値であってもよい。
【0067】
本発明者らは、概して、触媒組成物の触媒活性を最大化させて触媒を利用するメタン分解プロセス中の固体炭素生成物および水素ガスの収率を最大化させる別の重要なパラメーターがニッケルのβ元素に対するモル比、すなわち一般化学式αNiβOまたはαNiβγOにおけるx:yの比率であることを発見した。最も好ましくは、この比率(または、言い換えると、触媒組成物中のβ元素原子1モルあたりのニッケル原子のモル数)は少なくとも約1.0であり、約6.2以下である。非限定的な例示として、この比率は約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、もしくは約6.2であってもよく、またはこれとは別に、これらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値であってもよい。概して、そしていかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、x:yの比率が約1.0から約6.2の範囲内である場合、上記触媒を利用するメタン分解プロセス中の固体炭素生成物および水素ガスの収率は、上記プロセスが工業的実現可能性を有するには十分に高いことを発見した。より具体的には、いくつかの実施形態において、x:yの比率が少なくとも約1.8であり、約2.8以下である、またはこれとは別に、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、もしくはこれらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値である場合に、固体炭素生成物および水素ガスの収率は最大化され得る。さらに、またはあるいは、γ元素が含まれる、すなわち、触媒組成が一般化学式αNiβγOで表される実施形態において、x:yの比率は、好ましくは少なくとも約1.3であり、約3.6以下であってもよい。非限定的な例示として、この比率は、実施形態において、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、もしくは約3.6であってもよく、またはこれとは別に、これらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値であってもよい。
【0068】
本発明者らは、概して、触媒組成が一般化学式αNiβγOで表される実施形態において、メタン分解が起こる稼働温度をさらに低下させるための別の重要なパラメーターは、ニッケルのγ元素に対するモル比、すなわち、一般化学式αNiβγOにおけるx:zの比率であることを発見した。最も好ましくは、この比率(または、言い換えると、触媒組成物中のγ元素原子1モルあたりのニッケル原子のモル数)は少なくとも約1.0であり、約19.0以下である。非限定的な例示として、この比率は約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0、約10.5、約11.0、約11.5、約12.0、約12.5、約13.0、約13.5、約14.0、約14.5、約15.0、約15.5、約16.0、約16.5、約17.0、約17.5、約18.0、約18.5、もしくは約19.0であってもよく、またはこれとは別に、これらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値であってもよい。概して、そしていかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、x:zの比率が約1.0から約19.0の範囲内である場合、メタンの分解を誘発するために要する稼働温度が少なくとも約50℃も低下し得ることを発見した。より具体的には、いくつかの実施形態において、稼働温度は、x:zの比率が少なくとも約2.3であり、約9.0以下である、またはこれとは別に、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、もしくは約9.0である、またはこれとは別に、これらの値の任意の2つの間に位置する任意のサブレンジ内の任意の値であり得る場合に最適化され得る。
【0069】
触媒の化学的な組成および物理的な構造に関連するパラメーターは、本開示に全体を通して極めて詳細に記載されているとおり、触媒組成物が用いられるメタン分解プロセスの所望の特性を提供するために制御、設計、最適化、選択、および/または調節され得る。本開示の方法およびシステムにおける使用に適した触媒組成物の1つの重要なパラメーターは、触媒の効果的な表面積、すなわち、メタンと直接的に接触する、または接触し得る触媒の総表面積である。固体触媒粒子の総表面積は反応速度に重要な効果を及ぼし、概して、所定の質量を有する触媒に関し、触媒粒子径が小さいほど、有効表面積が大きい。
【0070】
本開示の方法およびシステムにおける使用に適した触媒組成物の別の重要なパラメーターは、触媒組成物の拡散プロファイルである。上記拡散プロファイルの方は、通常、反応物分子(すなわち、メタン分子)が触媒粒子内部および内部を通って拡散し得る度合いに影響する、触媒粒子自体の総間隙率および孔径により制御される。実施形態において、触媒粒子の孔径は、わずか約4Å(0.4nm)から約1,500μmにも及び、またはこれとは別に、4Åから1,500μmの任意の整数のオングストロームの下限、および、4Åから1,500μmの任意の他の整数のオングストロームの上限を有する任意の範囲内であってもよい。
【0071】
当業者は、上記検討の観点で、触媒組成物の適切な材料および幾何学を選択し、最適化し得る。この選択は、本開示の観点で当業者が理解し得るとおり、メタン分解反応の所望のカイネティクスにより動機付けられる。
【0072】
触媒組成物の作製方法
本開示の態様は、メタン分解プロセスに有用な触媒組成物の生成方法である。本開示の触媒組成物の1つの利点および利益は、容易に入手可能である反応物を用いて比較的容易に、安価で、そして素早く製造され得ることである。本開示の実施形態において、本明細書中に開示されているとおりの触媒組成物の製造方法は、β元素の水酸化物の溶液またはスラリーを準備するステップから開始する。非限定的な例示として、βがマグネシウムである場合、水酸化マグネシウムスラリーは、自治体や産業廃水処理システムにおけるそれらの普及のため、大容量で広く入手可能である。次に、触媒組成物の酸素でない他の元素、すなわち、ニッケル、α元素(例えば、アルミニウム等)、そしていくつかの実施形態においてはγ元素(例えば、銅等)の塩において、バルク/固体状または好適な溶媒(当業者であればどのように選択するかを理解し、認識し得る)の溶液のいずれかがこのスラリーに添加、混合、または溶解され得る。好適な塩は、所望の元素の塩化物、硝酸塩、および硫酸塩を含み、多くの実施形態において、最も好ましい塩は、後続の加熱の際にアニオンが容易に蒸発し得る塩(例えば、塩化アルミニウム)であってもよい。このように、1つの非限定的な例示的な実施形態において、ニッケルの塩(例えば、塩化ニッケルおよび/または硝酸ニッケル)、アルミニウム(例えば、硫酸アルミニウムおよび/または塩化アルミニウム)、および銅(例えば、塩化銅および/または硝酸銅)は、水酸化マグネシウムスラリー中に混合され、触媒前駆体を形成する。当業者らが理解し得るとおり、完成した触媒組成物におけるw、x、y、およびzの任意の2つまたはそれ以上の間の適切な比率を供するためのニッケル、α元素、β元素、および(存在する場合)γ元素の塩の相対化学量論量は、この段階で、容易に選択され得る。本開示の全体を通して別の場所に記載されているとおり、上記触媒前駆体の溶液、スラリー、および/または混合物は、その後、存在するアニオンの全てを実質的に蒸発させるのに十分である、適切な温度(いくつかの実施形態において、約500℃から約1,000℃の間、典型的には、約600℃から約900℃の間、より典型的には、約750℃から約850℃の間)で、適切な環境下で(例えば、空気、水素ガス、窒素ガス、アルゴン、二酸化硫黄、一酸化窒素、二酸化窒素、またはそれらの組み合わせ)、一定時間(いくつかの実施形態において、約1時間から約30時間の間、最も典型的には約24時間)焼成され、ニッケルの少なくとも一部、およびいくつかの実施形態においてはα元素、β元素、および(存在する場合)γ元素のいずれか1つまたは複数の少なくとも一部を金属状態に転化させる。焼成の完了に際し、触媒組成物の金属は、空気に暴露された場合に容易に酸化し得る。このように、最終ステップとして、上記焼成物は、ニッケル、α元素、β元素、および(存在する場合)γ元素の単一相中への溶け込みが発生し、一般化学式αNiβOまたはαNiβγOで表される組成物を形成するのに十分である還元性雰囲気下(典型的には、水素ガス、または不活性ガス、例えば、アルゴンを含有する水素ガスの混合物)、適切な温度(典型的には、約600℃から約1,000℃の間、そして最も典型的には、約850℃から約950℃の間)で一定時間、還元される。還元性環境が水素ガスを含有するいくつかの実施形態において、この水素ガスの少なくとも一部は、前に生成された触媒組成物が使用される下流プロセスユニットから再生されてメタンを固体炭素生成物および一酸化炭素非含有水素ガス流に分解され得る。
【0073】
触媒的メタン分解の方法
本開示の別の態様は、メタンの触媒された分解による、固体炭素生成物(特に、多くの実施形態において、高い選択性/純度を有する、規定または選択された寸法、形態、および/または構造を有する固体炭素生成物、例えば、カーボンナノファイバーまたはナノチューブ)および水素ガス(特に、多くの実施形態において、一酸化炭素非含有水素ガス流)の製造方法であり、本明細書中に開示されている触媒組成物を利用するものである。この方法の実施形態において、一般化学式αNiβOまたはαNiβγOで表される触媒組成物が提供される。この触媒組成物はその後、メタンガスと接触するとすぐにメタンガスの少なくとも一部が分解して固体炭素生成物および水素ガスを形成する。いくつかの実施形態において、上記固体炭素生成物は、触媒組成物の粒子との直接的な接触により形成(例えば、粒子の表面上に成長)され得る。いくつかの実施形態において、固体炭素生成物および水素ガスの片方または両方の少なくとも一部は、さらに反応して下流で対象の生成物を形成し得る。さらに、またはあるいは、前述のように、水素ガスの少なくとも一部は、触媒組成物の合成において還元性雰囲気の成分として使用するために再生され得る。
【0074】
最も典型的には、本開示による方法で用いられるメタンは、天然ガスの流の成分として提供され得るが、メタンは、メタンのあらゆる天然または人工の源に由来し得ることは明確に理解され得る。上記メタンガス流は、1つまたは複数の他のガス、例えば、水素ガス、二酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、または他の炭化水素(例えば、エタン、プロパン、ブタン等)を含有し得る。いくつかの実施形態において、上記メタン流はバイオガスまたは精製されたバイオガス流であってもよい。上記触媒組成物は、メタンを選択的に分解し、ガス流中で他のガスと反応しない。
【0075】
本開示によるメタンの触媒的分解の方法は、約500℃から約800℃の間、典型的には約600℃から750℃の間、より典型的には、約650℃から約725℃の間の温度で実施される。これらの稼働温度は、メタンの純粋な熱分解(約1,400℃)に要求される温度からの顕著な低下を表すため、著しく低いエネルギー入力しか要さないことから有利である。本開示の触媒的メタン分解方法は、常圧および/または大気圧を含む範囲である約0.05kPaから約500kPaの間の稼働圧力で実施され得る。いくつかの実施形態において、これらの稼働圧力は、全圧(絶対圧)であってもよく、一方で他の実施形態において、それらはガス流内に存在する(ガス流がメタンに加えて他のガスを含有する場合に)メタンの分圧であってもよい。上記触媒組成物は、通常、構造化されていない形態で(すなわち、任意の構造または基材に固定されていない「バルク」または「遊離」材料として)提供される。メタン分解は、メタンガス流が触媒の懸濁床上を流通する、および/またはその内部を流通する懸濁床反応器を含む任意の好適なタイプの反応器内で実施され得るが、それに必ずしも限定されない。
【0076】
本開示による触媒的メタン分解方法の1つの利点は、それらが温室ガス捕捉および/または温室ガス排出量の削減に有用であり得ることである。特に、メタン排出量の捕捉または削減、および、それに続くメタンの炭素固体および水素ガスへの分解の過去のアプローチが、高コストおよび/または安全性もしくは純度への懸念(例えば、水素ガス流中の一酸化炭素または他の危険物種の存在および/または得られる炭素固体の構造における制御の不足)に苦戦していた一方で、本開示のメタン分解方法は、安全性や毒性への懸念がより少なく、高付加価値、高純度の生成物、すなわち、所望の高特異性の/高純度の固体炭素構造体および一酸化炭素非含有水素ガス流を提供する。本明細書中に開示されている触媒的分解方法は、過去に当技術において知られているよりも、このようにしてメタン排出量を捕捉し、削減し、および/または軽減する、より金銭的かつ環境的に魅力的な手段を表し得る。
【0077】
本発明は、以下の非限定的実施例によりさらに詳しく説明される。
【実施例
【0078】
[実施例1]
カーボンナノファイバーの収率および形態に対する触媒組成物の効果
アルミニウム、ニッケル、およびマグネシウムの塩化物および/または硝酸塩を組み合わせて前駆体混合物を形成し、この前駆体混合物を空気中で500℃で焼成することによりプレ触媒焼成物を作製した。いくつかの実験ラン(run)のそれぞれについて、ニッケル塩とマグネシウム塩との相対量を選択して、プレ触媒焼成物中、つまり完成した触媒組成物中のニッケルのマグネシウムに対するモル比(すなわち、x:yの所望の比率)を変動させた。
【0079】
実験ランのそれぞれについて、このようにして生成したプレ触媒焼成物の1つをLindberg横型管状炉により加熱した石英フロー反応器内に配置した。具体的には、炉内の反応管の中心のアルミナ繊維製のセラミック「スポンジ」中に50mgサンプルの粉末状の焼成物を配置した。上記システムに30分間アルゴンを流した後、10体積%H/90体積%アルゴンの環境下で850℃で焼成物を還元することにより最終物AlNiMgO触媒を作製した後、システムに再度アルゴンを流した。その後、反応器内にメタンを導入し、550から750℃の稼働温度および常圧(大気圧)で、触媒の存在下で反応させた。メタンガスの流速を正確にモニターし、MKSマスフローコントローラの使用により調節し(60mL/分)、一定した組成の供給ガスの輸送を可能とした。高温の供給ガスはこのようにしてアルミナ「スポンジ」内を流通し、触媒を流体化状態に「引き上げた」。反応の進捗は、規則的な間隔での入口ガスおよび出口ガスのサンプリング、およびガスクロマトグラフィーによる反応物および生成物を分析することによりモニターした。触媒の完全な不活性化が観測される(すなわち、ガスクロマトグラフィーが出口ガス内のHを示さなくなる)までメタンのフローおよび550から750℃の稼働温度を維持させた。上記反応は、炭素固体の析出をもたらし、その収率は、システムが室温に冷却された後に重量測定法で測定された。上記固体炭素生成物もまた、特にカーボンナノ構造体の所望のタイプであるプレートレット型ナノファイバーとして生成した固体の割合(質量で)を測定するために評価された。各実験ランについて、上記ニッケル/マグネシウムのモル比(すなわち、一般化学式AlNiMgOにおけるx:yの比率)、固体炭素の収率(プレ還元焼成物の質量当たり)、水素ガスの収率(プレ還元焼成物の質量当たり)、およびプレートレット型ナノファイバーとして生成した炭素固体の割合は表1に示されている。
【0080】
【表1】
【0081】
[実施例2]
触媒性能に対する還元温度の効果
x:yの比率を2.4で一定に保持し、水素/アルゴン還元ステップの温度を600℃から1,000℃の間で変動させた以外は、実施例1の手順を繰り返した。(出口ガスのガスクロマトグラフィーにより測定される)メタンの転化率が4%未満に減少するまでメタンのフローおよび550から750℃の反応器温度を維持させた。上記触媒はまた、金属(すなわち、非イオン化された、またはNi)状態のニッケル原子の割合を測定するために、X線結晶学により評価された。還元温度、転化されたメタン(1時間後)のパーセンテージ、触媒寿命、水素ガスおよび固体炭素(プレ還元焼成物の質量当たり)の収率、およびプレートレット型ナノファイバーとして生成した炭素固体の割合は、各実験ランについて、表2に示されている。
【0082】
【表2】
【0083】
本明細書に例示的に開示された概念は、本明細書に具体的に開示されていない構成要素がない場合にも好適に実施することができる。しかしながら、本開示の多くの変更、変形、改変、他の用途、および適用が可能であることは当業者には明らかであり、本開示の精神および範囲から逸脱しない変更、変形、改変、他の用途、および適用は、本開示によって包含されるものとみなされる。
【0084】
前述の議論は、例示と説明の目的で提示されたものである。前述は、本明細書に開示された形態または形態に本開示を限定することを意図するものではない。前述の詳細な説明において、例えば、各種特徴は、本開示を簡潔にする目的で、1つまたは複数の実施形態にまとめられている。実施形態の特徴は、上述した以外の代替の実施形態に組み合わされてもよい。本開示の方法は、特許請求の範囲が各請求項に明示的に記載されている以上の特徴を必要とする意図を反映していると解釈されるものではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的側面は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴にある。従って、以下の特許請求の範囲は、詳細の記載に組み込まれ、各請求の範囲は、それ自体で別個の実施形態として成立する。
【0085】
さらに、本開示は、1つまたは複数の実施形態、ならびに特定の変形例および変更例についての説明を含んでいるが、他の変形例、組み合わせ、および変更例は、例えば、本開示を理解した後に、当業者の技術および知識の範囲内にあり得るように、本開示の範囲内にある。そのような代替、交換可能、および/または同等の構造、機能、範囲、またはステップが本明細書に開示されているか否かに関わらず、クレームされるものに対する代替、交換可能、および/または同等の構造、機能、範囲、またはステップを含む、許容される範囲内の代替実施形態を含む権利を取得することを意図しており、特許可能な主題を公に捧げる意図はない。
【国際調査報告】