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特表2024-527052アッセイシステム用デバイス、システム並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】アッセイシステム用デバイス、システム並びに方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20240711BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N27/28 Z
G01N33/553
G01N33/483 F
G01N33/543 541A
G01N35/02 A
G01N27/327 357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504979
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071078
(87)【国際公開番号】W WO2023006817
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21382709.0
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033607
【氏名又は名称】バイオエクロジオン,エセ.エレ.
(71)【出願人】
【識別番号】518170756
【氏名又は名称】ウニヴェルシタット アウトノマ デ バルセロナ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT AUTONOMA DE BARCELONA
【住所又は居所原語表記】Edifici A(Rectorat),Campus universitari s/n,08193 Bellaterra(Cerdanyola del Valles)(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピヴィドリ ガルゴ,マリア イザベル
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
【Fターム(参考)】
2G045BB03
2G045FB05
2G045JA07
2G058AA09
2G058CC08
2G058CC17
2G058GA11
(57)【要約】
アッセイシステムを実行するデバイスが提供されている、このデバイスは、チャンバであって、第1開口部と第2開口部とを含む、チャンバと、液体出口と、チャンバに隣接する液体吸収パッドと、デバイスを閉位置と開位置の間でシフトさせるための開口アセンブリと、封止要素とを含み、
閉位置において、液体がチャンバから流出するのを防止するように、封止要素が液体出口を覆い、
開位置において、液体出口の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、上記デバイスは、液体出口の覆われていない部分を通る、チャンバと液体吸収パッドとの間の流体経路を含む。
さらに、アッセイシステム及びアッセイを実行する方法も提供されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッセイを実行するためのデバイス(10、20、30、40、50、60、71、81、90、101)であって、前記デバイスは、
電極(72,92,102)と、
第1カバー(21,31,41,51)であって、
チャンバ(11,22,411,54,84,91)であって、
磁気粒子及び液体(45,61,82)を前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)内に添加するための第1開口部(111,83.911)と、
前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)に隣接して前記デバイス内に配置された前記電極(72,92,102)に前記磁気粒子及び液体を接触させるための第2開口部(112,512,64,711)とを含むチャンバ(11,22,411,54,84,91)と、
封止要素(12,23,412)とを含む、第1カバー(21,31,41,51)と、
前記第1カバー(21,31,41,51)に適合する第2カバー(24,32,42,52)であって、前記第2カバー(24,32,42,52)は、
前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)に隣接する液体吸収パッド(13,25,421,87)を含む、第2カバー(24,32,42,52)と、
前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)から液体を排出させるための液体出口(15,43,86)と、
前記デバイスを閉位置と開位置との間でシフトさせるための開口アセンブリ(14,26,46)とを含み、前記開口アセンブリ(14,26,46)は、第1協働機構(33,461,511)、及び第2協働機構(34,462,521)を含み、
前記第1カバー(21,31,41,51)が前記第1協働機構(33,461,511)を含み、前記第2カバー(24,32,42,52)が前記第2協働機構(34,462,521)を含み、
前記封止要素(12,23,412)は、前記液体出口(15,43,86)を封止するためのものであり、
前記液体吸収パッド(13,25,421,87)は、前記デバイスの前記開位置において、前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)の前記液体出口(15,43,86)の少なくとも一部に面しており、
前記閉位置において、液体が前記液体出口(15,43,86)を通って前記チャンバ(11,22,411,54,84、91)から流出するのを防止するように、前記封止要素(12,23,412)が前記液体出口(15,43,86)を覆い、前記開位置において、
前記液体出口(15,43,86)の少なくとも一部は、前記封止要素(12,23,412)によって覆われておらず、
前記デバイスは、前記液体出口(15,43,86)の前記覆われていない部分を通る、前記チャンバ(11,22,411,54,84、91)と前記液体吸収パッド(13,25,421,87)との間の流体経路(16,44)を含む、デバイス(10、20、30、40、50、60、71、81、90、101)。
【請求項2】
前記閉位置と前記開位置との間をシフトするために、前記第1カバー(21,31,41,51)と前記第2カバー(24,32,42,52)が互いに相対的に移動できるように、前記第1協働機構(33,461,511)と前記第2協働機構(34,462,521)とは互いに相対的に移動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2カバー(24,32,42,52)、又は前記第1カバー(21,31,41,51)の一方が、前記第1カバー又は前記第2カバーに螺入され、前記第1カバーから、又は前記第2カバーから螺入解除されて、閉位置と開位置との間をシフトするように、前記第1協働機構(33,461,511)と前記第2協働機構(34,462,521)は、螺入結合を形成する、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記チャンバが液体を含む際、重力の力を受けて、前記液体が前記第2開口部(112,512,64,711)を通って、電極受けスロット(53,62)に向かって流れることを可能にする位置で、前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)に隣接する、前記電極受けスロット(53,62)も更に含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
磁石スロット(63)であって、前記チャンバが磁気粒子を含み、磁石が前記磁石スロット(63)に配置されている際、前記磁石によって生成される磁場下で、前記磁気粒子が前記第2開口部(112,512,64,711)を通って前記磁石に向かって移動可能にする位置で、前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)に隣接する、磁石スロット(63)も更に含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
アッセイシステム(70,80,100)であって、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のデバイス(10、20、30、40、50、60、71、81、90、101)又はカートリッジと、電極(72、92、102)を読み取るように構成された読み取り装置(73、800、103)とを含む、アッセイシステム(70,80,100)。
【請求項7】
磁石(733,801)も更に含む、請求項6に記載のアッセイシステム(70,80,100)。
【請求項8】
デバイスと通信するための通信インターフェイスも更に含む、請求項6又は請求項7のいずれか一項に記載のアッセイシステム(70,80,100)。
【請求項9】
アッセイ又はin vitro試験を実行する方法であって、前記方法は、少なくとも以下のステップとして、
請求項6~請求項8のいずれか一項に記載のアッセイシステム(70,80,100)を提供するステップと、
前記閉位置にある前記デバイス(10,20,30,40,50,60,71,81,90,101)を提供するステップと、
前記第1開口部(111,83,911)を通じて、分析されるべき試料(82)を前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)内に添加するステップであって、前記試料の少なくとも一部が液体状態であるステップと、
前記デバイス(10,20,30,40,50,60,71,81,90,101)を前記開位置にシフトする(85)ステップであって、前記液体出口(15,43,86)の少なくとも一部は、前記封止要素(12,23,412)によって覆われておらず、流体経路(16,44)が、前記液体出口(15,43,86)の前記覆われていない部分を通じて、前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)と前記液体吸収パッド(13,25,421,87)との間で形成される、ステップと、
前記流体経路(16,44)を通じて、前記試料の液体部を流し、前記液体吸収パッド(13,25,421,87)によって少なくとも一部を除去するステップと、
前記デバイス(10,20,30,40,50,60,71,81,90,101)を前記閉位置にシフトする(88)ステップと、
読み出し試薬(88´)を前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)内に添加するステップと、
前記得られた試料を電極読み取り装置(73,800,103)で読み取る(89)ステップとを含む、方法。
【請求項10】
請求項9が請求項7に従属する場合、前記試料は磁気粒子を含み、前記液体吸収パッド(13,25,421,87)によって少なくとも一部が除去されるように、前記流体経路(16,44)を通して、前記試料の前記液体部を流す前記ステップは、前記磁気粒子が磁石(733,801)によって引き寄せられている間に実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
試料を添加した後、且つ前記デバイスを前記開位置にシフトさせる前に、前記チャンバ(11,22,411,54,84,91)内の前記試料を洗浄するための洗浄緩衝剤を添加するステップも更に含む、請求項9又は請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in vitro診断IVDデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、Invitro診断用IVDデバイスは大規模に開発されており、世界の医療技術市場の13.4%を占めている。とりわけ、欧州のIVD市場は2024年までに155億ドル以上に達すると見込まれている。個別化医療の浸透、慢性疾患に対するニーズの増加、新興国の新市場が、主な牽引役である。診断に要する時間が長いと、死亡率、更には、未診断、又は誤診された患者の推定医療費が増加する。疾患の診断の遅れにより、短時間で検査するためのいくつかの解決策の開発が進んでいる。迅速で簡便な検査は感度と予測値が低く、しかも、ゴールドスタンダードとなる方法は、院内で卓上機器を使用して実行しなければならないので、かかる既存の解決策には重要な欠点がある。現行の免疫学的診断検査は以下の3つのカテゴリに分類することができる。第1カテゴリには、ELISAなどの免疫測定法に基づく定量検査があり、これらは専門の臨床検査室で実施され、結果は数日でフィードバックされる。第2カテゴリには定性検査があり、これはイムノクロマト法に基づく迅速診断検査(RDT)で、感度が非常に低く、結果は医師の解釈に左右されやすいため、主観的なものとなる。さらに、定性検査の結果は、定量的な実験室での検査により、確認されなければならない。第3カテゴリには分析臨床検査サービスがあり、これは通常の血液検査から遺伝子検査、分子検査に至るまで、診断検査サービスを専門とする企業である。
【0003】
In vitro診断の時間を短縮し、必要な時点でリソースが制約される状況を避ける必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1態様において、アッセイを実施するためのデバイスが提供され、このデバイスは、
電極と、
第1カバーであって、
チャンバであって、磁気粒子及び液体をチャンバ内に添加するための第1開口部と、
このチャンバに隣接してデバイス内に配置された電極に磁気粒子及び液体を接触させるための第2開口部とを含むチャンバと、
封止要素とを含む、第1カバーと、
第1カバーに適合する第2カバーであって、この第2カバーは、チャンバに隣接する液体吸収パッドを含む、第2カバーと、
チャンバから液体を排出させるための液体出口と、
デバイスを閉位置と開位置との間でシフトさせるための開口アセンブリとを含み、この開口アセンブリは、
第1協働機構、及び第2協働機構を含み、第1カバーが第1協働機構を含み、第2カバーが第2協働機構を含み、
封止要素は、液体出口を封止するためのものであり、液体吸収パッドは、デバイスの開位置において、チャンバの液体出口の少なくとも一部に面しており、
閉位置において、液体が液体出口を通ってチャンバから流出するのを防止するように、封止要素が液体出口を覆い、開位置において、
液体出口の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、
デバイスは、液体出口の覆われていない部分を通る、チャンバと液体吸収パッドとの間の流体経路を含む。
【0005】
本開示に係るデバイス又はカートリッジは、アッセイ又はin vitro試験の実施に適している。カートリッジとも称されるこのデバイスは、試料を収容するためのチャンバを含み、試料は、血液、血清、血漿、又は食品、飲料、汚染物質を含有する環境試料を含む、液体形態の他の試料などの、疾患又は状態のバイオマーカを含有する流体臨床試料を、含み得る。とりわけ、マラリア、セリアック病、マイコバクテリウム、AIDSなどのバイオマーカの検出を含む臨床用途だけでなく、微小汚染物質(殺虫剤、抗生物質、添加物、アレルギー誘発物質)と病原体を含む、食品安全において、あらゆる用途が活用され得る。かかる試料は、所望の分子、又は生物学的受容体、すなわち、ペプチド、抗体、DNA、オリゴヌクレオチド、又は試料中のバイオマーカ、あるいは標的と特異的に反応、若しくは付着可能な他の分子に結合した磁気粒子も、更に含むことができる。本開示のデバイスの利点の1つは、開口アセンブリによって、開口アセンブリの位置に応じて、液体が反応用に滞留可能であるか、あるいは、例えば、洗浄用の吸収パッドによって毛細管現象により除去可能とする、容器として、チャンバを使用できるということである。閉位置において、耐水Oリング、あるいはメンブレン又はガスケットを含み得るシーリングガスケットを含められる、封止要素が、液体出口を封止、若しくは密閉し、それにより、チャンバからの液体の流れを防止する。液体出口は、オリフィス又はスロットとして、あるいはチャンバ内の液体が吸収パッドに向かって流れるのに適した浸透表面として、理解することができる。開位置において、封止要素が液体出口の少なくとも一部を露出させることにより、チャンバと液体吸収パッドとの間に流体経路が形成され、液体吸収パッドが毛細管現象によりチャンバ内の液体を除去、又は排出する。かかる吸収パッドは、所定の孔径で構成されていてもよく、あるいは市販の任意の種類の吸収紙、又はスポンジであってもよい。吸収パッドのサイズは、液体試料、及び/又は洗浄緩衝剤を含められる、任意の所定量の液体を吸収するのに適し得る。吸収パッドはチャンバに隣接して配置されるが、これは、流体経路を形成できるように、吸収パッドがチャンバに近接していてもよいということである。幾つかの実施例において、吸収パッドは液体出口の少なくとも一部を取り囲むか、又は覆い、幾つかの実施例では、吸収パッドは液体出口に面しており、幾つかの実施例では、吸収パッドは液体出口にわたって配置される。
【0006】
本開示のデバイスの利点は、例えば、ELISAシステム、又はマイクロプレート免疫測定法と比較して、過剰な液体を除去するためのピペッティングが不要であることである。
【0007】
このデバイスは、第1協働機構と第2協働機構から形成される開口アセンブリにより、互いに相対的に移動する2つの協働部品から構成される。
【0008】
幾つかの実施例において、閉位置と開位置との間をシフトするために、第2カバーが第1カバーに向かって、更に、この第1カバーから移動できるように、第1協働機構と第2協働機構は互いに相対的に移動可能である。協働機構は、例えば、レール及びこのレールにわたって回転する車輪でもよく、もしくは、溝及びこの溝を通るか、あるいはこれに沿って摺動する突起でよく、あるいは、デバイスを開閉するためのヒンジを含む機構でよい。
【0009】
幾つかの実施例において、第2カバーが第1カバーに螺入され、第1カバーから螺入解除されて、閉位置と開位置との間でシフトするように、第1協働機構は第2協働機構と螺入結合を形成することができる。
【0010】
協働機構の構成は、使用上の要件に依存することがあり、各構成は、最終ユーザに様々な利点を提供し、さらに、製造中に利点を提供し得る。この実施例では、第1カバーに螺入されるように構成された第2カバーを提供する。螺入結合は、螺旋溝及び突起を含み得る。更なる実施例は、例えば、溝を通って、あるいは溝に沿って摺動するフランジ、又は突起を含む場合があり、これらは、螺入結合よりも製造が簡単な場合がある。例えば、ネジ山によって、最終ユーザは、突起・溝機構と比較して、デバイスの開閉を制御することができるので、チャンバ内に収容された試料の不所望な動きを回避することができる。
【0011】
幾つかの実施例において、このデバイスは、チャンバが試料又は液体を含む際、重力の力を受けて、試料又は液体が第2開口部を通って、電極受けスロットに向かって流れることを可能にする位置で、チャンバに隣接させて電極受けスロットを含むことができる。幾つかの実施例において、チャンバが試料又は液体を含む際、重力の力を受けて、試料又は液体が第2開口部を通って、電極受けスロットに向かって流れることを可能にする位置は、デバイスが直立位置又は垂直位置にある際、チャンバの下方の位置とすることができる。かかる実施例において、直立位置又は垂直位置は、デバイスを配置するための基準面XZを考慮すると、平面XZに垂直な軸Yにおいて、第1開口部が第2開口部よりも高い位置にあり、平面XZに垂直な軸Yにおいて、第2開口部が電極受けスロットよりも高い位置にある位置と理解することが可能であり、かかる位置において、電極受けスロットはチャンバの下方にあり、これにより、使用時、デバイスが直立位置で配置され、試料又は液体がチャンバに挿入されると、重力の力を受けて、試料又は液体が電極受けスロットに向かって、落下するか、又は排出される。
【0012】
電極受けスロットは、分析されるべき試料を電極に接触させることができるように、デバイス内に電極を固定配置することができる。したがって、電極受けスロットにより、本開示のデバイス又はカートリッジを使用するための電極の正しい位置決めが可能となる。電極受けスロットには、電極に安定性を与えるために、フラップ又は接着剤などの固定手段を設けてもよい。このことは、電極を読み取り装置に挿入したり、読み取り装置から取り外したりする際、電極がデバイスから外れるのを避ける上で都合がよい。イムノクロマト法に基づく、定性検査又は迅速診断検査(RDT)と比較した場合の利点は、電極が定量結果を提供可能とする読み取り装置に挿入されることにより、視覚によらない解釈が得られるということである。
【0013】
幾つかの実施例において、このデバイスは、チャンバが磁気粒子を含み、磁石が磁石スロットに配置されている際、磁石によって生成される磁場下で、磁気粒子が第2開口部を通って磁石に向かって移動可能にする位置で、チャンバに隣接させて磁石スロットを含むことができる。磁石スロットにより、本開示のデバイス又はカートリッジを使用するための磁石の正しい位置決めが可能となる。したがって、本開示のデバイス又はカートリッジは、磁気駆動アッセイ用に使用することができる。デバイスが、例えば、電極スロットに配置された電極と併用され、さらに、磁石スロットに配置された磁石と併用される一部の実施例では、磁気粒子が磁石の方に引き寄せられながら電極に接し、電極に固定されるように、電極は磁石と磁気粒子との間に存在し得る。引き続き平面XZを参照すると、磁石スロットは、平面XZに垂直な軸Yにおいて電極受けスロットの下方に存在してもよく、これにより、使用時に、重力の力を受けて、液体が電極受けスロットに向かって落下又は流出し、次いで、液体内の粒子が磁石受けスロットに設けられた磁石に向かって引き寄せられる。この構成によって、試料の液体部がデバイスの開位置で液体吸収パッドに吸収されても、電極受けスロットに設けられた電極上に粒子が保持されるという、利点が得られる。
【0014】
磁気駆動アッセイは、磁気粒子を試料に添加することによって、実行することができる。したがって、本開示のデバイス又はカートリッジは、特定の分子又は生物学的受容体、すなわち、ペプチド、抗体、DNA、オリゴヌクレオチド、あるいは、バイオマーカ又は標的と特異的に反応又は付着させることが可能な他の分子が磁気粒子で固定化されると、試料中のあらゆる種類の標的又はバイオマーカを検出する方法における使用で適切である。例えば、ウイルス、又は細菌を検出する簡単で迅速な方法は、細菌又はウイルスに特異的な抗体を磁気粒子又は磁気ナノ粒子に固定化することを、含み得る。抗体を固定化した磁気粒子は、デバイス又はカートリッジのチャンバに添加することができる。検体又は標的を含む試料、例えば、血液試料も、粒子に付着した分子又は生物学的受容体が親和性反応によって、検体又は標的と相互作用できるように、チャンバ内に添加することができる。デバイス又はカートリッジ内、あるいはデバイス又はカートリッジに隣接する磁石は、第2開口部を通して、検体又は関心標的に付着した磁気粒子を電極に向けて引き寄せることができる。かかる位置において、磁気粒子が電極の少なくとも表面に接触して保持、又は固定されている間、試料の余分な液体を排出し、これにより、吸収パッドに吸収できるように、デバイス又はカートリッジを開位置にシフトさせることができる。過剰な液体が吸収されたら、カートリッジが開位置にある間、洗浄ステップを含めることもできる。いずれの場合も、液体が吸着されると、デバイス又はカートリッジを閉位置にシフトさせ、読み出し試薬を閉位置で引き寄せられた磁気粒子と結合させることができる。電極は、測定を実行可能とする、トランスデューサ又は読み取り装置に挿入することができる。
【0015】
従って、本開示のデバイス又はカートリッジは、電極又は磁気デバイスが試料の定量的読み出しを実行可能にする一方、試料及び想定試薬の余剰液体は、毛細管現象により液体吸収パッドで除去され得る。
【0016】
専門家ユーザは、電極の無い本開示のデバイス又はカートリッジを入手することができるので、専門家ユーザは、実現の見込みのある分析に応じて、必要な電極をデバイス又はカートリッジに挿入することができる。非専門家ユーザは、本開示のデバイス又はカートリッジと電極とを含む、本開示のシステムを入手することができる。かかる場合、非専門家ユーザは、実施され得る分析に適した特定の電極に関する専門知識を必要とすることなく、試料をデバイス又はカートリッジに加えるだけでよい。
【0017】
本開示の第2態様では、本発明の第1態様に係るデバイス又はカートリッジと、読み取り装置とを含むアッセイシステムが提供されている。読み取り装置は、電極又は電極セルの信号変化を読み取り値として提供することができる。
【0018】
幾つかの実施例において、本開示のアッセイシステムは磁石も更に含む。磁石は、デバイス又はカートリッジが読み取り装置に結合する際、チャンバが磁気粒子を含む試料を備える場合、磁石で生成される磁場下で、磁気粒子が第2開口部を通じて磁石に向かって移動可能となる位置で、磁石がチャンバに隣接して配置されるように、配置される。かかる実施例では、デバイス又はカートリッジのいずれかが磁石を含むか、あるいは、読み取り装置が磁石を含んでもよい。
【0019】
幾つかの実施例では、カートリッジ又はデバイスは、ポータブルデバイスと通信するための通信インターフェイスを含んでもよい。ポータブルデバイスは、タブレット、又はポータブル電子デバイス、あるいは、読み取り装置、又はトランスデューサからの測定値を受信するように構成されたスマートフォン若しくは携帯電話であってもよい。
【0020】
本開示のデバイス又はカートリッジ、及びシステムは、USBケーブル又は無線インターフェイスなどのインターフェイスを通じた接続により、磁気粒子が持つ能力を標準的なタブレット又はスマートフォンと組み合わせることができるin vitro診断(IVD)用ツールとして、理解され得る。
【0021】
本開示のデバイス又はカートリッジは、単回使用であってもよく、更に、疾患を検出する場合、デバイスは、全血、血清又は血漿中の疾患のバイオマーカを検出する定量的読み出しを提供し得る。本開示のデバイスは、医療専門家が疾患の迅速診断のために使用することができる。
【0022】
本開示の第3態様において、アッセイ又はin vitro試験を実行する方法が提供され、この方法は、少なくとも以下のステップとして、
本開示の第2態様に係るアッセイシステムを提供するステップと、
閉位置にあるデバイス又はカートリッジを提供するステップと、
第1開口部を通じて、分析されるべき試料をチャンバ内に添加するステップであって、この試料の少なくとも一部が液体状態であるステップと、
デバイス又はカートリッジを開位置にシフトするステップであって、液体出口の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、流体経路は、液体出口の覆われていない部分を通じて、チャンバと液体吸収パッドとの間で形成されるステップと、
流体経路を通じて、試料の液体部を流し、液体吸収パッドによって少なくとも一部を除去するステップと、
デバイスを閉位置にシフトするステップと、
読み出し試薬をチャンバ内に添加するステップと、
得られた試料を電極読み取り装置で読み取るステップとを、含む。
【0023】
本開示の方法では、本開示のカートリッジの開位置と閉位置とを切り替えて、その後の読み取り装置による分析のために、試料と試薬をチャンバに添加することができる。使用者が分析されるべき試料から余分な液体を除去可能とする簡易な使用法が得られるので、本開示の方法は有利である。
【0024】
幾つかの実施例において、この方法は、磁石を備えたシステムを提供するステップと、磁気粒子を含む試料を添加するステップと、さらに、粒子が磁石によって引き寄せられている間、液体吸収パッドによって少なくとも一部が除去されるように、流体経路を通して、試料の液体部を流すステップとを含む。試料は吸収パッドによって排出されると言われる。こうした実施例において、この方法は、洗浄液又は緩衝剤を含み得る、液体を除去するための簡易な方法を提供する。余剰液体が吸収されている間、標的又は関心検体は、磁石と電極の方に引き寄せられ、吸収パッドに向かうのを防ぐ。かかる実施例において、分子又は生物学的受容体が磁気粒子に固定化されているため、電極は、それらを含まない可能性がある。
【0025】
この方法の幾つかの実施例において、試料を添加した後、且つデバイス又はカートリッジを開位置にシフトさせる前に、試料を洗浄するための洗浄緩衝剤がチャンバ内に添加される。例えば、吸収パッドが毛細管現象によって吸収するのに適切でない濃度の試料がある場合、洗浄緩衝剤によってかかる試料の洗浄を改善することができる。
【0026】
開位置において、洗浄ステップも追加してもよく、洗浄液の液体部を排出させて、流体経路を流れさせ、液体吸収パッドによって少なくとも一部を除去させる。例えば、洗浄液は、デバイス又はカートリッジを閉位置にシフトさせる前、ひいては、読み出し試薬をチャンバに添加する前に、チャンバに添加することができる。
【0027】
以下で、添付図面を参照しながら、本開示の非限定的な実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明に係る、デバイス又はカートリッジの一例示を表す図である。
図1B】閉位置にある、本発明に係るデバイス又はカートリッジの一部の一例示の表記を示す図である。
図1C】開位置にある、本発明に係るデバイス又はカートリッジの一部の一例示の表記を示す図である。
図2】分解されたカートリッジチャンバを表す図である。
図3A】閉位置と開位置にある、一例示のカートリッジチャンバを示す図である。
図3B】閉位置と開位置にある、一例示のカートリッジチャンバを示す図である。
図4A】閉位置と開位置にある、更なる例示のカートリッジチャンバをそれぞれ示す図である。
図4B】閉位置と開位置にある、更なる例示のカートリッジチャンバをそれぞれ示す図である。
図5】カートリッジの一例を示す図である。
図6】チャンバ内に保持された液体を含む、閉位置にあるデバイス又はチャンバを示す図である。
図7A】一例示のアッセイシステムを示す図である。
図7B】アッセイシステムの平面図と、線AA´で切断したアッセイシステムの側面図である。
図8】本開示の方法の一例を示す図である。
図9】一例示のデバイス又はカートリッジ90を示す図である。
図10】一例示のアッセイシステム100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を十分に理解するために、以下の説明で具体的な詳細について説明する。
【0030】
図1Aは、本発明に係る、デバイス又はカートリッジ10、10の一例示の表記である。図1Aは、第1開口部111と第2開口部112を含む、チャンバ11を示す。
【0031】
図1Bは、閉位置にある、本発明に係るデバイス10又はカートリッジ10の一部の一例示の表記である。図1Bは、空洞11としてチャンバ11を含むデバイス10を示しており、この空洞11は、高さのある第1開口部111と、高さのない第2開口部112とを含む。更に図1Bは、封止要素、シーリングガスケット、又はOリング12、吸収パッド13、及び閉位置にある開口アセンブリ14も示す。
【0032】
図1Cは、平面XZの開位置にある、本発明に係るデバイス又はカートリッジの一部の一例示の表記を示す図である。図1Cは、第1開口部111と第2開口部112とを含む、チャンバ11を備えるデバイス10を示している。さらに、図1Cは、封止要素12、吸収パッド13、開位置にある開口アセンブリ14、及び液体出口15も示している。液体出口15は、チャンバ11を含む、カバー又はケーシング17と、デバイスの基部との間に形成される開口部である。デバイス又はカートリッジ10は、基準面XZを考慮すると、平面XZに垂直な軸Yにおいて、第1開口部111が第2開口部112よりも高い位置にある、直立位置又は垂直位置で示されている。使用時には、直立位置にすることで、第1開口部111を通して、液体を入れたり、挿入したりすることができ、液体は重力によってチャンバ内に落下し、チャンバの基部に静止する。閉位置において、液体出口15は封止要素12によって閉じられて、封止され、これにより、封止要素12は液体がチャンバ11から出るのを防ぎ、開位置では、液体出口15は開いて、流体経路16が形成されて、液体は流体経路16に沿って液体吸収パッド13に向かって、チャンバ11から出る。
【0033】
様々な図1A図1B及び図1Cによって示されるように、デバイス、又はカートリッジ10は、アッセイシステム用に使用することができ、デバイス又はカートリッジは、チャンバ11を含み、チャンバ11は、磁気粒子及び液体をチャンバ内に添加するための第1開口部111と、磁気粒子及び液体をチャンバに隣接する電極に接触させる第2開口部112とを、含む。このデバイス又はカートリッジは、液体を吸収パッド13に向けてチャンバから除去するのに適した液体出口15を含む。シーリングガスケット12は、閉位置において液体出口を通る液体の流れを防止するように、チャンバ11の少なくとも液体出口15を覆うように構成されている。液体吸収パッド13はチャンバに隣接して配置される。開口アセンブリ14は、閉位置と開位置との間でデバイスをシフトするのに役立ち、図1Bで見られるように、閉位置では、封止要素12が液体出口を覆い、これにより、図1Bでは、液体出口15が閉じられるか、又はロックされるか、あるいは封止される。こうして、閉位置にあるチャンバ11から液体が流出することが防止される。図1Cで見られるように、開位置において、液体出口の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、とりわけ、図1Cでは、完全に覆われていない液体出口15を示しており、流体経路16は、液体出口15の覆われていない部分を通じて、チャンバ11と液体吸収パッド13との間で形成される。図1A図1B図1Cでは、吸収パッド13が特定の幅を有するように示されているが、吸収能力を向上させるために、吸収パッド13は、図1Bで示される空きスペース18を完全に占有してもよい。吸収パッドの幅、又はサイズを変更することで、様々な量の液体を吸収パッドに吸収させることができる。
【0034】
図2は、分解されたカートリッジ又はデバイス20を示し、第1カバー21がチャンバ22を含み、図2では、封止要素23は第1カバーから切り離されて示されている。カートリッジ20が分解されていない場合、第1カバー21は第2カバー24に適合し、第2カバーは液体吸収パッド25を含む。分解されていない場合、液体吸収パッド25は、液体出口の少なくとも一部に面しており、図2の実施例では、液体出口は、第1カバーを第2カバーから分離することによって、開位置に形成されるオリフィス、又はスロットである。閉位置において、封止要素23は、チャンバ22と液体吸収パッド25との間の流体経路を遮断し、液体がチャンバから出るのを防ぐ。開口アセンブリ26は、第1協働機構と第2協働機構(図示せず)とを含み、第1カバー21が第1協働機構を含み、第2カバー24が第2協働機構を含む。
【0035】
図3A及び図3Bは、閉位置と開位置にある、一例示のカートリッジ、又はデバイス30を示す。閉位置において、第1カバー31と第2カバー32は接近し、開位置よりもコンパクトなチャンバ30を形成する。図3は、第1カバー31と第2カバー32とが接近又は離間した際、カートリッジチャンバ30が閉位置と開位置との間でシフトするように、第1協働機構33と第2協働機構34とが互いに相対的に移動可能であることを示している。さらに、第2カバー32又は第1カバー31の一方が第1カバー31又は第2カバー32に螺入され、第1カバー31から、又は第2カバー32から螺入解除されて、閉位置と開位置との間をシフトするように、カートリッジ30の第1協働機構33と第2協働機構34は、螺入接続又は結合を形成する。とりわけ、閉位置と開位置との間をシフトするために、第1カバー31が第2カバー32に向かって、さらに、この第2カバーから移動できるように、カートリッジ、又はデバイス30の第1協働機構33と第2協働機構34とは互いに相対的に移動可能である。例示のカートリッジ30において、第1カバー31が第2カバー32に螺入され、第2カバー32から螺入解除されて、閉位置と開位置との間でシフトするように、第1協働機構33は第2協働機構34との螺入を形成することができる。図3において、第1協働機構33は溝33であり、第2協働機構34は溝33に沿って走るか、又は摺動する突起34である。図3の協働機構は、バイオネット結合も含められる。
【0036】
図4A及び図4Bは、閉位置と開位置にある、更なる例示のカートリッジチャンバ40をそれぞれ示す。カートリッジ40は、チャンバ411と封止要素412とを含む、第1カバー41を備える。第1カバー41は第2カバー42に適合する。第2カバー42は液体吸収パッド421を含み、液体吸収パッド421は液体出口43に面している(図4Bでは封止されていない状態で示されている)。この例では、液体出口43は、開位置において第1カバー41と第2カバー42との間で形成される、孔又は空洞43である。液体出口43は、閉位置では封止要素412によって覆われ、開位置では、チャンバと吸収パッド421との間の流体経路44を残して、露出する。その他、閉位置において、封止要素412は、チャンバ411と液体吸収パッド421との間の流体経路44を遮断し、液体がチャンバから出るのを防ぐ。図示のように、図4Aの閉位置では、液体45はチャンバ411内に保持され、図4Bの開位置では、液体45は流体経路44に沿って流れ、吸収パッド421によって吸収される。さらに、開口アセンブリ46は、第1協働機構461と第2協働機構462とを含み、第1カバー41が第1協働機構461を含み、第2カバー42が第2協働機構462を含む。閉位置と開位置との間をシフトするために、第1カバー41と第2カバー42が互いに相対的に移動できるように、カートリッジ、又はデバイス40の第1協働機構461と第2協働機構462とは互いに相対的に移動可能である。とりわけ、カートリッジ又はデバイス40の協働機構は、第1ロッキングタブ461、及び第2ロッキングタブ462である。ユーザは、第1カバー41を第2カバー42から持ち上げ、地点47で第1ロッキングタブ461を第2ロッキングタブ462に位置決めして、第1カバー41を開位置に固定することができ、さらに、ユーザは、第1カバー41を第2カバー42に向かって下ろし、地点48で第1ロッキングタブ461を第2ロッキングタブ462の下に位置決めして、第1カバー41を閉位置に固定することができる。
【0037】
図5は、カートリッジ50の一例示の実施形態を示す図である。カートリッジ又はデバイス50は、第1カバー51、及び第2カバー52を含む。図5は、取り外された第1カバー、及び第2カバーを示している。第1カバー51は、これまでの実施例と同様、第1開口部(図示せず)及び第2開口部512によって区画されたファネルの内側空洞内で画定された、チャンバ54を含む。図5で示すとおり、第1カバー51を第2カバー52へと螺入できるよう、第1協働機構511、及び第2協働機構521は、螺入接続又は結合を形成する。第1協働機構511と第2協働機構521は、2つの螺旋型突起である。カートリッジ50は、第1カバー51と第2カバー52が取り付けられるか、あるいは螺入する際、最終的に、チャンバ54に隣接する電極受けスロット53を含む。電極受けスロット53は、第2カバー52が基部として機能する際の動作において、閉位置でチャンバ54が液体を含む場合、重力の力を受けて、液体が閉位置で電極受けスロットに向かって、第2開口部を流れることを可能にする位置にある。電極が電極受けスロット53に配置されている場合、電極は液体と相互作用することができ、さらに、液体の組成を決定するために、あるいはその成分を検出するために、電極を読み取ることができる。電極が分析されると、カートリッジ又はデバイス50は、カートリッジ50内に含まれる液体吸収パッド(図5で図示せず)によって、液体が吸収されるように、開位置にシフトすることができる。
【0038】
図5の特定実施例で見られるように、チャンバが試料又は液体を含む際、重力の力を受けて、試料又は液体が第2開口部を通って、電極受けスロットに向かって流れることを可能にする位置は、デバイスが直立位置又は垂直位置にある際、チャンバ54下方にある位置である。かかる実施例において、直立位置又は垂直位置は、デバイスを配置するための基準面XZを考慮すると、平面XZに垂直な軸Yにおいて、第1開口部が第2開口部512よりも高い位置にあり、平面XZに垂直な軸Yにおいて、第2開口部512が電極受けスロット53よりも高い位置にある位置であり、かかる位置において、電極受けスロット53はチャンバ54の下方にあり、使用時、デバイスが直立位置内に配置され、試料又は液体がチャンバ54に挿入されると、重力の力を受けて、試料又は液体が電極受けスロット53に向かって、落下するようになっている。
【0039】
一実施形態において、カートリッジ又はデバイスは、チャンバが磁気粒子を含み、磁石が磁石スロットに配置されている際、磁石によって生成される磁場下で、磁気粒子が第2開口部を通って磁石に向かって移動可能にする位置で、チャンバに隣接させて磁石スロットを含むことができる。上記実施例で、カートリッジ又はデバイス10において、磁石は、例えば、チャンバが液体中に磁気粒子を含み、磁石が磁石スロットに配置されている際、磁石によって生成される磁場下で、磁気粒子が第2開口部112を通って磁石に向かって移動可能にする位置において、第2開口部112の下方で、チャンバ11に隣接するか、あるいは近接する磁石スロット(図示せず)内に含めることができる。カートリッジ又はデバイス20において、磁石スロットは第2カバー24にある場合もある。カートリッジ又はデバイス30において、第2カバー32の基部には、チャンバに面する側とは反対側に、磁石スロットを備えることができる。カートリッジ又はデバイス40において、磁石スロットは、チャンバに面する表面の下で第2カバー42に含まれる場合もある。カートリッジ又はデバイス50において、磁石が磁石スロットに備えられ、チャンバ54が閉位置で液体を含む際、液体中の磁気粒子が磁石に引き寄せられて、電極受けスロットに備えられた電極が、磁気粒子に付着した検体、あるいは関心標的に接触させられるよう、電極受けスロット53の下の第2カバー52に存在し得る。図6は、チャンバ内に保持された液体61を含む、閉位置にあるカートリッジ、又はデバイス60を示す。カートリッジ又はデバイス60は、磁石スロット63を含む。液体61が磁気粒子を含み、磁石スロットが磁石を含む場合、粒子は磁石によって生み出される磁場下で引き寄せられ、第2開口部と磁石との間の表面に接触する。カートリッジ又はデバイスが電極受けスロット62に電極を備えている場合、電極は第2開口部64を通して磁気粒子に接触させられ、電極は粒子に付着した検体又は標的を読み取るために使用することができる。
【0040】
図7Aは、本開示に記載される例示的特徴のすべて又はいずれかを含む、デバイス又はカートリッジ71を備えるアッセイシステム70を示す。アッセイシステムは、電極72と、電極72を読み取るように構成された読み取り装置73と、読み取り装置内に備えられる磁石733とを含む。カートリッジ又はデバイス71は、電極72が挿入されているように見える、電極受けスロット(図示せず)を含む。図示のとおり、カートリッジ又はデバイスの第1開口部を通して、液体をチャンバ内で垂直方向に入れると、液体が第2開口部を通して電極の一部721に接触するような方法で、電極72の接点を含む電極の一部721を第2開口部711の下に挿入し、固定することができる。一例を挙げると、電極はスクリーン印刷電極でもよく、これは微小体積の処理、又は溶液への浸漬に適している。こうした電極は、分散型アッセイ、又は電気化学的読み出し式バイオセンサの開発に上手く機能し得る。電気化学セルは作用電極及び補助電極を含められ、作用電極は炭素製、さらに、補助電極は銀又は塩化銀製とすることができる。電極はセラミック又はプラスチック基板上に構築することができる。電極は、とりわけ、光学的、電子的、圧電的、重量分析的、焦電的、磁気的など、電気化学的以外の他のトランスデューサ機構を含み得る。カートリッジ又はデバイス71は使い捨てでもよい。カートリッジ又はデバイス71には、磁石スロットも磁石も含まれないため、使い捨てカートリッジ又はデバイス71の重量とコストが削減される。読み取り装置73は、例えば、測定電位、測定中に得られた電流範囲、取得時間、安定化時間を表示する、スクリーン又はディスプレイを備えることができる。読み取り装置73は、デバイスとの通信インターフェイス、例えば、スマートフォンとの通信用の無線インターフェイスも、更に含むことができる。さらに、読み取り装置73は、以下の機能の少なくとも1つとして、カートリッジ、又はデバイス受けスロット731、制御ボタン732、並びに磁石733を備える磁石スロットを、含み得る。読み取り装置は、デバイスと通信するための通信インターフェイス(図示せず)を含むことができる。図7Bは、アッセイシステム70の平面図と、線AA´で切断したアッセイシステム70の側面図である。
【0041】
アッセイ又はin vitro試験を実施する方法は、本開示に記載のカートリッジ又はデバイスのいずれかを使用して実行することができる。図8は、方法の一例を示す図であり、図8では、以下のステップが左から右に異なる図で表されている。
この方法は、
アッセイシステム80を提供するステップと、
閉位置にあるデバイス又はカートリッジ81を提供するステップと、
第1開口部83を通じて、分析されるべき試料82をチャンバ84内に添加するステップであって、この試料の少なくとも一部が液体状態であるステップと、
デバイス又はカートリッジ81を開位置にシフトする85ステップであって、液体出口86の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、流体経路は、液体出口の覆われていない部分を通じて、チャンバと液体吸収パッド87との間で形成されるステップと、
流体経路を通じて、試料の液体部を流し、液体吸収パッドによって少なくとも一部を除去するステップと、
デバイスを閉位置にシフトする88ステップと、
読み出し試薬88´をチャンバ内に添加するステップと、
得られた試料を電極読み取り装置で読み取る89ステップとを、含む。
【0042】
実施例において、試料は磁気粒子を含み、液体吸収パッドによって少なくとも一部が除去されるように、流体経路を通して、試料の液体部を流すステップは、磁気粒子が磁石801によって引き寄せられている間に実行される。幾つかの実施例において、試料82を添加した後、デバイス又はカートリッジを開位置にシフトさせる85前に、チャンバ内の試料を洗浄するための洗浄緩衝剤が添加される。
【0043】
図9は、本開示に記載される例示的特徴のすべて又はいずれかを含む、一例示のデバイス又はカートリッジ90を示す。この図は、電極92が電極受けスロットに挿入された状態のカートリッジ90を示している。電極の挿入部は、チャンバ91の第2開口部912を通して見ることができる。第1開口部911を通じて液体をチャンバ91内に挿入し、重力により、垂直位置で第2開口部912まで落下させ、そこで液体を電極92に接触させることができる。液体が吸収パッド(図示せず)に吸収されるように、電極の下に配置された磁石(図示せず)は、磁気粒子を引き寄せ、磁気粒子を開位置に保持することができる。
【0044】
図10は、電極102を含むデバイス又はカートリッジ101を備える、一例示のアッセイシステム100を示し、このアッセイシステムは、電極102を読み取るように構成された読み取り装置103を含み、この読み取り装置は、読み取り装置103に設けられた電極スロット104へと挿入することができる。
【0045】
幾つかの実施例において、電極は、チャンバに隣接した位置で、デバイス又はカートリッジ内で恒久的に組み込むことができ、これにより、使用時、試料又は液体がチャンバに挿入されると、重力の力を受けて、試料又は液体は電極に向かって落下する。例えば、電極を接着剤などで付着させたり、あるいはスクリーン印刷電極を使用することもできる。こうした場合、デバイス又はカートリッジは使い捨てでもよい。
【0046】
かかる場合において、電極は、何らかの固定化分子、又は生物学的受容体、すなわち、ペプチド、抗体、DNA、オリゴヌクレオチド、又は試料中のバイオマーカ、あるいは標的と特異的に反応、若しくは付着可能な他の分子を、含むことができる。かかる場合において、チャンバ内への試料の添加は、デバイス又はカートリッジが閉位置にある状態で実行される。所定時間後、電極の分子受容体又は生物学的受容体は、検体又は標的に付着するか、又は反応し、関心化合物が吸収パッドに向かって流れ、そこに吸収される恐れがなく、余剰な試薬を洗浄、除去するために、デバイス又はカートリッジを開放することが可能となる。
【0047】
万全を期して、本開示の様々な態様は、以下の一連の番号付けされた項に記載される。
第1項。
アッセイを実行するデバイス(10、20、30、40、50、60、71、81)であって、このデバイスは、
チャンバ(11,22,411,54,84)であって、
磁気粒子及び液体(45、61、82)をチャンバ内に添加するための第1開口部(111、83)と、
磁気粒子及び液体をチャンバに隣接する電極に接触させるための第2開口部(112、512、64、711)とを、備えるチャンバ(11、22、411、54、84)と、
液体をチャンバから出すための液体出口(15、43、86)と、
チャンバに隣接する液体吸収パッド(13、25、421、87)と、
閉位置と開位置との間でデバイスをシフトさせるための開口アセンブリ(14、26、46)と、
液体出口(15、43、86)を封止するための封止要素(12、23、412)とを、含み、
閉位置において、液体が液体出口(15,43,86)を通ってチャンバ(11,22,411,54,84)から流出するのを防止するように、封止要素(12,23,412)が液体出口(15,43,86)を覆い、
開位置において、
液体出口の少なくとも一部は、封止要素(12,23,412)によって覆われておらず、
デバイスは、液体出口(15,43,86)の覆われていない部分を通る、チャンバ(11,22,411,54,84)と液体吸収パッド(13,25,421,87)との間の流体経路(16,44)を含む、デバイス(10、20、30、40、50、60、71、81)。
第2項。
第1カバー(21、31、41、51)がチャンバ(11、22、411、54、84)及び封止要素(12、23、412)を含み、
第1カバーは第2カバー(24、32、42、52)に適合し、
第2カバーは液体吸収パッド(13、25、421、87)を含み、
液体吸収パッドは開位置においてチャンバの液体出口(15、43、86)の少なくとも一部に面し、
開口アセンブリ(14、26、46)は、第1協働機構(33、461、511)及び第2協働機構(34、452、521)を含み、
第1カバー(21、31、41、51)は第1協働機構(33)を含み、第2カバー(18、32)は第2協働機構(34)を含む、第1項に記載のデバイス(10、20、30、40、50、60、71、81)。
第3項。
閉位置と開位置との間をシフトするために、第1カバーと第2カバーが互いに相対的に移動できるように、第1協働機構(33,461,511)と第2協働機構(34,452,521)とは互いに相対的に移動可能である、第2項に記載のデバイス。
第4項。
第2カバー又は第1カバーの一方が第1カバー又は第2カバーに螺入され、第1カバーから、又は第2カバーから螺入解除されて、閉位置と開位置との間をシフトするように、第1協働機構(33,461,511)と第2協働機構(34,452,521)は、螺入結合を形成する、第2項又は第3項のいずれか一項に記載のデバイス。
第5項。
電極受けスロット(53,62)であって、チャンバが液体を含む際、重力の力を受けて、液体が第2開口部を通って、電極受けスロットに向かって流れることを可能にする位置で、チャンバに隣接する、電極受けスロット(53,62)も更に含む、第1項~第4項のいずれか一項に記載のデバイス。
第6項。
磁石スロット(63)であって、チャンバが磁気粒子を含み、磁石が磁石スロット(63)に配置されている際、磁石によって生成される磁場下で、磁気粒子が第2開口部を通って磁石に向かって移動可能にする位置で、チャンバに隣接する、磁石スロット(63)も更に含む、第1項~第5項のいずれか一項に記載のデバイス。
第7項。
アッセイシステム(70,80)であって、
第1項~第6項のいずれか一項に記載のデバイス又はカートリッジと、
電極(72)とを含む、
アッセイシステム(70,80)。
第8項。
磁石(733)も更に含む、第7項に記載のアッセイシステム(70,80)。
第9項。
電極を読み取るように構成された読み取り装置(73,801)も更に含む、第7項又は第8項のいずれか一項に記載のアッセイシステム(70,80)。
第10項。
デバイスと通信するための通信インターフェイスも更に含む、第7項~第9項のいずれか一項に記載のアッセイシステム(70,80)。
第11項。
アッセイ又はin vitro試験を実行する方法であって、この方法は、少なくとも以下のステップとして、
第7項~第10項のいずれか一項に記載のアッセイシステム(70,80)を提供するステップと、
閉位置にあるデバイス(10,20,30,40,50,60,71,81)を提供するステップと、
第1開口部を通じて、分析されるべき試料をチャンバ内に添加するステップであって、この試料の少なくとも一部が液体状態であるステップと、
デバイスを開位置にシフトするステップであって、液体出口の少なくとも一部は、封止要素によって覆われておらず、流体経路は、液体出口の覆われていない部分を通じて、チャンバと液体吸収パッドとの間で形成されるステップと、
流体経路を通じて、試料の液体部を流し、液体吸収パッドによって少なくとも一部を除去するステップと、
デバイスを閉位置にシフトするステップと
読み出し試薬をチャンバ内に添加するステップと、
得られた試料を電極読み取り装置で読み取るステップとを含む、方法。
第12項。
第11項が第8項に従属する場合、試料は磁気粒子を含み、液体吸収パッドによって少なくとも一部が除去されるように、流体経路を通して、試料の液体部を流すステップは、磁気粒子が磁石によって引き寄せられている間に実行される、第11項に記載の方法。
第13項。
試料を添加した後、且つデバイスを開位置にシフトさせる前に、チャンバ内の試料を洗浄するための洗浄緩衝剤を添加するステップも更に含む、第10項又は第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
本明細書では幾つかの例を開示しただけであるが、他の代替物、変更形態、使用及び/又はその同等物もあり得る。更に、説明した例について想定されるあらゆる組み合わせも、網羅している。したがって、本開示の範囲は特定実施例によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲の正しい解釈によってのみ決定されるものとする。図面に関連する参照符号が請求項の括弧内に記載されている場合、それは請求項の理解を助けるためだけに過ぎず、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
【国際調査報告】