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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240711BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240711BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505031
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022070934
(87)【国際公開番号】W WO2023006741
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188291.5
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ゴール レイアン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB021
4J038DB061
4J038DB071
4J038JB04
4J038JB05
4J038JB32
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038MA06
4J038MA15
4J038NA04
4J038NA27
4J038PA18
4J038PA19
4J038PB04
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、以下を含むバインダーシステムに関し:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び、
(iv) ホモ重合促進剤、
ここで、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのwt%は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、エポキシ系バインダーのwt%よりも高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むバインダーシステムであって:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び、
(iv) ホモ重合促進剤、
ここで、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの重量%が、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、エポキシ系バインダーの重量%よりも高い、バインダーシステム。
【請求項2】
前記トリメチロールエタントリグリシジルエーテルが、(i)エポキシ系バインダー及び(ii)トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの総乾燥重量に基づいて、50~90重量%の量で存在する、請求項1に記載のバインダーシステム。
【請求項3】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの、エポキシバインダーシステムに対する重量比が1:1~100:1である、請求項1又は2に記載のバインダーシステム。
【請求項4】
前記硬化剤が、少なくとも1つのアミン基、好ましくは脂環式アミン又はポリアミンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダーシステム。
【請求項5】
前記ホモ重合促進剤が、イミダゾール又はホスホニウムイオン液体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバインダーシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバインダーシステムを含む、コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバインダーシステム、又は請求項6に記載のコーティング組成物を生成するための方法であって、以下を混合することを含む方法:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び、
(iv) ホモ重合促進剤。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のバインダーシステム、又は請求項6に記載のコーティング組成物を生成するためのキットであって、以下を含むキット:
(a) エポキシ系バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む、第1容器;及び
(b) 硬化剤及びホモ重合促進剤を含む、第2容器。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバインダーシステム、又は請求項6に記載のコーティング組成物を含む、容器。
【請求項10】
表面上、好ましくは金属表面上にコーティングを提供する方法であって、前記方法が以下を含む、方法:
(i) 請求項6に記載の組成物を適用すること;及び、
(ii) 前記組成物を硬化させて、表面上にコーティングを形成すること。
【請求項11】
請求項10に記載の方法によって得られるコーティング。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバインダーシステム、又は請求項6に記載のコーティング組成物を含む、コーティング。
【請求項13】
基材、又は物品、好ましくはタンクの、少なくとも1つの表面上にコーティングを形成するための、請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項14】
コーティング組成物を形成するための、請求項1~5のいずれか一項に記載のバインダーシステムの使用。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバインダーシステムを形成するための、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ系バインダー(エポキシに基づくバインダー)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、硬化剤、及びホモ重合促進剤を含むバインダーシステム;並びにバインダーシステムを生成するための方法及びキットに関する。本発明はまた、バインダーシステムを含むコーティング組成物;及びコーティング組成物を生成するための方法及びキット;並びにバインダーシステム又はコーティング組成物のいずれかを含む容器に関する。さらに、本発明は、表面上にコーティングを生成する方法;及びコーティング自体に関する。バインダーシステムにおけるトリメチロールエタントリグリシジルエーテルの使用は、本発明の別の態様を形成する。
【背景技術】
【0002】
大量の液体化学物質を貯蔵するために用いられる金属タンクの内部は、一般的には、下地の金属を保護するために化学的耐性コーティングが施されている。これとして、例えば、貨物船上に存在するタンク、並びに陸上に存在するタンク、例えば大量の化学物質が生産される化学的生産施設、及び大量の化学物質が必要とされる大規模製造現場におけるタンクなど、が挙げられる。
【0003】
化学的耐性コーティングは、2つの異なる機能を果たす。それは、下地の金属(通常は鋼鉄)を化学的攻撃(例えば腐食など)から保護し、それは、タンク内容物を汚染から保護する。後者の機能を果たすためには、コーティングが、それが接触する液体の化学物質を吸収しないことが重要である;なぜなら、吸収された化学物質が、その後溶出し、次いでタンク内容物を汚染するからである。
【0004】
また、化学的耐性コーティングは、異なる負荷の間において洗浄が容易である必要があり、かつ、例えばタンク内部など、水平でない表面及び広い表面積を含みうる場所への適用が容易である必要がある。
【0005】
現在、高い化学的耐性を有するタンクライナーコーティングは、典型的には、ノボラックエポキシ系樹脂及びレゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)でできている。これらのコーティングは、化学物質の吸収に対して高い耐性を提供することが分かっている。高い化学的耐性は、RDGE及びノボラックエポキシ樹脂の組み合わせを用いることによって得られる、高い架橋密度によって得られると考えられている。この種のコーティングは、通常、アミン-エポキシ硬化及びエポキシ-ホモ重合の両方を含む、デュアルキュア機構を用いて硬化される。ベンゼン環がRDGE内に存在することは、これのノボラックエポキシ系樹脂との相溶性を向上させ、かつ高性能の化学的耐性コーティングを提供する中で重要な特徴になると、一般的には考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノボラックエポキシ系樹脂及びレゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)でできているコーティングは大きな欠点を有する。RDGEは、動物実験に基づいて発がん性物質であると考えられている。例えば、シグマアルドリッチは、その安全性プロファイルにおいて、RDGEは「実験的な発がん性及び腫瘍形成性のデータにより、発がん性が確認されている。腹腔内経路で毒性を示す。摂取による毒性は中程度である。突然変異のデータが報告されている。」と述べている。「発がん性」の項では、それは、「ジグリシジルレゾルシノールエーテルは、実験動物での研究による発がん性の十分な証拠に基づいて、ヒト発がん性物質であると合理的に予想される」と述べている。RDGEの発がん性が疑われることは、それを含むコーティング組成物の生成及び適用の両方を著しく複雑にする;なぜなら、それに対する曝露を避けるため、追加の安全上の予防措置を講じる必要があるからである。最終的には、そのHSEプロファイルが、それの使用の禁止を引き起こしうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様から見ると、本発明は、以下を含むバインダーシステムを提供し;
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び
(iv) ホモ重合促進剤、
バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのwt%は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、エポキシ系バインダーのwt%よりも高い。
【0008】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステムを生成するための方法であって、以下を混合することを含む方法を提供する:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び
(iv) ホモ重合促進剤。
【0009】
さらなる側面から見ると、本発明は、本明細書で定義されたようなバインダーシステムを生成するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:
(a) エポキシ系バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む第1容器;及び
(b) 硬化剤及びホモ重合促進剤を含む第2容器。
【0010】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステムを含むコーティング組成物を提供する。
【0011】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステム又は本明細書において上記で定義されたようなコーティング組成物を含む容器を提供する。
【0012】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたようなコーティング組成物を生成するための方法であって、以下を混合することを含む方法を提供する:
(i) 本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステム;及び
(ii) 1つ以上の他の成分。
【0013】
さらなる態様から見ると、本発明は、表面上、好ましくは金属表面上にコーティングを提供する方法を提供し、上記方法は、以下を含む:
(i) 本明細書において上記で定義されたような組成物を適用すること;及び
(ii) 上記組成物を硬化させて、表面上にコーティングを形成すること。
【0014】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたような方法によって得られるコーティングを提供する。
【0015】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書で定義されたようなバインダーシステム又は本明細書で定義されたようなコーティング組成物を含むコーティングを提供する。
【0016】
さらなる態様から見ると、本発明は、基材、又は物品、好ましくはタンクの、少なくとも1つの表面上にコーティングを形成するための、本明細書において上記で定義されたような組成物の使用を提供する。
【0017】
さらなる態様から見ると、本発明は、コーティング組成物を形成するための、本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステムの使用を提供する。
【0018】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書において上記で定義されたようなバインダーシステムを形成するための、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
【0020】
本明細書において用いる場合、「コーティング組成物」という用語は、表面に適用する場合、その上にフィルム又はコーティングを形成する組成物を指す。
【0021】
本明細書において用いる場合、「バインダー」という用語は、基材表面上に、これに適用したときに、連続フィルムを形成するポリマーを指す。組成物の他の成分はバインダー全体にわたって分散している。
【0022】
本明細書において用いる場合、「バインダーシステム」という用語は、エポキシ系バインダー、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、硬化剤、及びホモ重合促進剤、並びに例えばシラン、及び反応性希釈剤などを含む、システムを指す。
【0023】
本明細書において用いる場合、「エポキシ系」という用語は、エポキシ基及び/又は改質されたエポキシ基を含むポリマー又はオリゴマーを指す。エポキシ系バインダーという用語は、バインダーであって、従来のエポキシ骨格を有するが、エポキシ末端基が、例えば、エポキシ基と同じ硬化剤で硬化されうるアクリル又はメタクリル官能基などで、改質されているバインダーを包含する。多くの場合、エポキシ樹脂は少なくともいくつかのエポキシ基を含むであろう。エポキシという用語は、エポキシドと互換的に用いられる。
【0024】
本明細書において用いる場合、「エポキシ」という用語は、3原子環状エーテルを指す。
【0025】
本明細書において用いる場合、「エポキシ当量(equivalent epoxy weight)」又は「EEW」という語句は、樹脂1kg中のエポキシド当量数を指す。これはASTM D-1652によって測定される。
【0026】
本明細書において用いる場合、「硬化剤(curing agents)」という用語は、バインダー、例えばエポキシ系バインダーなどと混合される場合、ポリマー内に架橋を生成することによって硬化コーティング(a cured coating)又は硬化コーティング(a hardened coating)を作り出す化合物を指す。硬化剤(curing agents)を硬化剤(a hardeners)と呼ぶこともある。
【0027】
本明細書において用いる場合、ホモ重合促進剤という用語は、硬化反応の際にエポキシ-エポキシのホモ重合速度を増加させて、コーティングを硬化(cure)又は硬化(harden)させる化合物を指す。
【0028】
本明細書において用いる場合、「重量%(wt%)」という用語は、組成物の個々の成分、例えばエポキシ系樹脂などに関連して用いられる場合、特に言及されない限り、成分の実際の重量を指し、すなわち揮発性成分の存在を含まない重量を指す。
【0029】
本明細書において用いる場合、「重量%(wt%)」という用語は、コーティング組成物に関連して用いられる場合、特に言及されない限り、組成物の総重量に対する重量、すなわち不揮発性成分及び揮発性成分を含む重量を指す。
【0030】
本明細書において用いる場合、「揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)」という用語は、101.3kPaで250℃以下の沸点を有する化合物を指す。これはEU指令2004/42/CEにおける定義である。
【0031】
本明細書において用いる場合、「無溶媒」という用語は、10g/L未満のVOCを含む組成物を指す。
【0032】
本明細書において用いる場合、「分子量」という用語は、特に言及されない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。これはゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0033】
発明の詳細な説明
【0034】
本発明は、以下を含むバインダーシステムに関し:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び
(iv) ホモ重合促進剤、
バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのwt%は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づく、エポキシ系バインダーのwt%よりも高い。
【0035】
本発明のバインダーシステムは、強固に架橋した、高密度の、ポリマーネットワークを生成し、これは化学物質の吸収を最小限に抑える。このことは、このバインダーシステムを、有利には、タンク内部用に、例えば船舶上の貨物タンク用及び陸上の生産物貯蔵タンク用などに、設計されたコーティング組成物において用いうることを意味する。レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)を含む、当該技術分野で公知の、バインダーシステムとは対照的に、本発明のバインダーシステムは、発がん性が疑われる又は知られている化合物を含まない。したがって、本発明のバインダーシステムは、RDGEバインダーシステムと比較して、性能を損なうことなく、著しく改善されたHSEプロファイルを有する。
【0036】
エポキシ系バインダーシステム
【0037】
本発明のエポキシ系バインダーシステムは、1つ以上のエポキシ系バインダー、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、1つ以上の硬化剤、ホモ重合促進剤、及び随意にシランの組み合わせを含む。
【0038】
好ましくは、システムは、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルに加えて反応性希釈剤を含まない。追加の反応性希釈剤の存在は、架橋反応を妨害しうるし、つまりポリマーネットワークの密度を低下させうる。
【0039】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテル
【0040】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、下記式Iによって表される低粘度エポキシ化合物である。それは、288.34g/molの分子量、及び68460-21-9のCAS番号を有する。
【0041】
式I トリメチロールエタントリグリシジルエーテル
【0042】
【化1】
【0043】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、例えばSigma Aldrich及びHuntsmanなどから市販されている。
【0044】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、好ましくはバインダーシステムの50~90wt%、より好ましくはバインダーシステムの総乾燥重量の60~80wt%、さらに好ましくは60~70wt%の量で存在する。
【0045】
本発明の好ましいバインダーシステムにおいて、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、(i)エポキシ系バインダー及び(ii)トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの総乾燥重量に基づいて、50~90wt%、より好ましくは70~87wt%、さらに好ましくは75~85wt%の量で存在する。
【0046】
本発明の好ましいバインダーシステムにおいて、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのエポキシ系バインダーに対する重量比は、1:1~100:1、より好ましくは1.1:1~20:1、さらに好ましくは2:1~10:1である。ある好ましいバインダーシステムでは、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのエポキシ系バインダーに対する重量比は、3超:1、好ましくは4超:1である。エポキシ系バインダーシステムに比べて比較的多量のトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを配合することは、高密度ポリマーネットワークを生成するバインダーシステムの能力において重要であると考えられている。
【0047】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、発がん性に関する懸念を有することが証明されておらず、又は疑いもなく、したがって、従来から高い化学的耐性コーティングにおいて用いられるレゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)を用いるよりも、大幅に比較的安全な代替物である。本発明の好ましいバインダーシステムは、RDGEを含まない。本発明のさらに好ましいバインダーシステムは、芳香族グリシジルエーテル、例えばトリグリシジル-p-アミノフェノール、又はトリス(4-ヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル)を含まない。
【0048】
トリメチロールエタントリグリシジルエーテルは、脂肪族ジグリシジルエーテルであり、これは、一般的には、芳香族ジグリシジルエーテルよりも、芳香族エポキシ樹脂、例えばノボラックエポキシ樹脂などとの、比較的乏しい相溶性を有する。相溶性の欠如は、エポキシ-エポキシホモ重合反応における反応性が比較的低いという問題を引き起こし、その結果、高度に架橋されたネットワークを得ることが困難である。本発明では、驚くべきことに、RDGEを脂肪族トリグリシジルエーテル、具体的にはトリメチロールエタントリグリシジルエーテルに置き換えることが可能であり、これは、RDGEに比べて大幅に改善されたHSEプロファイルを有しつつ、依然として高い架橋密度及び優れた化学的耐性が得られることが見出された。
【0049】
エポキシ系バインダー
【0050】
エポキシ系バインダーは、好ましくは芳香族又は脂肪族エポキシ系バインダーから選択され、これらは好ましくは1分子あたり1つ超のエポキシ基を含む。エポキシ基は、エポキシ系バインダー上の内部若しくは末端位置内にあってよく、又はエポキシ系バインダー内に組み込まれた環状構造上にありうる。好ましくは、エポキシ系バインダーは、少なくとも2つのエポキシ基を含み、それによって、架橋ネットワークが形成されうる。
【0051】
本発明のエポキシ系バインダーは、バインダーであって、従来のエポキシ骨格を有するが、エポキシ末端基が、エポキシ基と同じ硬化剤で硬化されうるアクリル又はメタクリル官能基で、改質されているバインダーも包含することを理解すべきである。
【0052】
適切な脂肪族エポキシ系バインダーとして、脂環式エポキシ、例えば水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAノボラック、水素化ビスフェノールFノボラック、及びジシクロペンタジエン系バインダーなど、グリシジルエーテル、例えば多価アルコールのポリグリシジルエーテルなど、エポキシ官能性アクリル樹脂、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、エポキシバインダー及び改質されたエポキシバインダーが挙げられる。
【0053】
適切な芳香族エポキシ系バインダーとして、ビスフェノール型エポキシ系バインダー、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSなど、ノボラック型エポキシ系バインダー、例えばフェノールノボラック型バインダー(ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、ビスフェノールSノボラック)、及びクレゾールノボラック型バインダーなど、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、エポキシバインダー及び改質されたエポキシバインダーが挙げられる。
【0054】
いくつかの好ましいバインダーシステムでは、エポキシ系バインダーは、芳香族エポキシ系バインダーである。好ましくは、芳香族エポキシ系バインダーは、少なくとも1つのエポキシド官能基を含む化合物の、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む芳香族共反応性物質との組み合わせに由来する。
【0055】
好ましいエポキシ系バインダーは、ノボラック、ビフェノールAエポキシ系バインダー及びビスフェノールFエポキシ系バインダー、又はビスフェノールA/Fエポキシ系バインダーである。
【0056】
特に好ましいエポキシ系バインダーは、ノボラックエポキシバインダーである;なぜなら、これらのバインダーが、一般的に、比較的高い架橋密度を与えるからである。好ましいノボラックエポキシバインダーは、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、ビスフェノールSノボラック、及びクレゾールノボラックである。特に好ましいエポキシ系バインダーは、ビスフェノールFノボラックである。ビスフェノールFノボラックはまた、一般的に、エポキシフェノールホルムアルデヒド樹脂とも記載される。
【0057】
ノボラックエポキシ樹脂は、当該技術分野でよく知られている。ノボラックエポキシ樹脂の一般的な構造を、下記式IIに示す。ここで、nは繰り返し単位の数であり、Rは、H又は置換基である。
【0058】
式II
【0059】
【化2】
【0060】
エポキシ系バインダーは、改質されたエポキシ系バインダーでありうる。好ましくは、エポキシ系バインダーは、脂肪酸、ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシドで改質されている。エポキシ系バインダーはまた、可撓性成分、例えばゴム(例えばクロロプレン及びブタジエン-アクリロニトリルゴム)、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、並びに/又はポリ(メタ)アクリルなどで改質されうる。
【0061】
エポキシ系バインダー中の固形分含有量は、好ましくは70wt%超、より好ましくは80wt%超、好ましくは90wt%超、最も好ましくは99wt%超である。さらに好ましいバインダーシステムでは、エポキシ系バインダーは無溶媒である。
【0062】
市販されている適切なエポキシ系バインダーの例は、以下のとおりである:
・ ノボラックエポキシ系バインダー:OlinからのDEN 425、DEN 431、及びDEN 438、
- ビスフェノールA型エポキシ系バインダー:HexionからのEpikote 828、Huntsman Advanced MaterialsからのAraldite GY 250、
- ビスフェノールFエポキシ系バインダー:HexionからのEpikote 862、KukdoからのYDF-170、HuntsmanからのGY285、DowからのDE 354、CCPからのBFE-170、又はKolonからのKF8100。
- ビスフェノールA及びビスフェノールFの混合物:Dow ChemicalsからのDER 352、HexionからのEpikote 235。
【0063】
エポキシ系バインダーは、120~1000のエポキシ当量(EEW)値を有しうる。EEWが500未満、例えば150~300、特には150~250であると、特に好ましい。
【0064】
エポキシ系バインダーの粘度は、ASTM D-445に従って50℃で測定すると、好ましくは15,000~70,000mPa、より好ましくは20,000~60,000mPaである。
【0065】
エポキシ系バインダーは、好ましくは、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、バインダーシステムの1~30wt%、例えばバインダーシステムの5~25wt%で存在する。より好ましくは、エポキシ系バインダーは、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、7~20wt%、特には8~18wt%、最も特には10~15wt%の量で存在する。エポキシ系バインダーのブレンドを用いる場合、これらのパーセンテージはエポキシ系バインダーの総含有量を指し、すなわちそれぞれのwt%を足す。
【0066】
硬化剤
【0067】
バインダーシステムはまた、少なくとも1つの硬化剤を含む。硬化剤は、エポキシ系バインダーシステム用の硬化剤として一般的に知られている、任意の硬化剤でありうる。好ましくは、それはアミン系である。
【0068】
架橋ネットワークを得るために、硬化剤は、少なくとも2つの「反応性」水素原子を含有する必要がある。「反応性」水素原子とは、開環反応の際に、求核剤からエポキシドの酸素原子に移動する水素原子を指す。硬化剤は、典型的には、少なくとも2つの硬化反応性官能基を含有する。
【0069】
適切な硬化剤の例は、チオール硬化剤、ポリチオール硬化剤、アミン硬化剤、ポリアミン硬化剤、アミン官能性ポリアミド、及び/又はアミノ官能性ポリマー硬化剤である。硬化剤はまた、代替的には、少なくとも1つのアミノ官能性ポリシロキサンも含みうる。
【0070】
適切なポリチオール硬化剤の例は、ペンタエリスリオールテトラメルカプトプロピオネートである。適切な市販されているポリチオール硬化剤の例は、Gabriel performance materialsからのGABEPRO(商標) GPM800が挙げられる。
【0071】
好ましいバインダーシステムの1つは、少なくとも1つのアミン官能性硬化剤を含む。硬化剤は、典型的には、少なくとも2つのアミン基を含有する。アミン基は、第1級又は第2級でありうる。
【0072】
アミン又はアミノ官能性ポリマーを含む適切な硬化剤は、脂肪族アミン及びポリアミン(例えば、脂環式アミン及びポリアミン)、アミン官能性ポリアミド、ポリエーテルアミン、ポリイミダゾール、ポリオキシアルキレンアミン(例えば、ポリオキシアルキレンジアミン)、アルキレンアミン(例えば、アルキレンジアミン)、アラルキルアミン、芳香族アミン、マンニッヒ塩基(例えば、「フェナルカミン」として市販されているもの)、、ベンジルアミン構造を含むポリアミン、アミノ官能性シリコーン、又はシランから選択され、かつそれらのエポキシ付加物及び誘導体を含む。
【0073】
ある好ましいバインダーシステムでは、アミン官能性硬化剤は、脂環式アミン及び脂環式アミンの改質された生成物、好ましくはポリアミンを含む、環状構造を有する。環式という用語には、脂環式、芳香族、及び複素環式ポリアミンが含まれる。
【0074】
ある好ましいバインダーシステムでは、アミン官能性硬化剤は、1つ以上のベンジルアミン構造を有する、ポリアミン硬化剤である。ポリアミンとは、少なくとも2つの繰り返しアミン単位を有する化合物と定義されることを理解されたい。好ましくは、ポリアミンは3つ超のアミン基を含む。
【0075】
ある好ましいバインダーシステムでは、ベンジルアミン基は1つのアミン基のみを含む。
【0076】
ある好ましいバインダーシステムでは、アミン官能性硬化剤は、国際公開第2017/147138号に記載されているようなベンジル化ポリアルキレンポリアミン構造を有しうる。ベンジル化ポリアルキレンポリアミン構造を、例えばマンニッヒ塩基又はエポキシ官能性化合物とさらに反応させて、エポキシ付加物を作り出しうる。
【0077】
本発明のバインダーシステムでは、アミン硬化剤の付加物も用いうる。このような付加物は、アミンの、適切な反応性化合物、例えばエポキシバインダー、エポキシ官能性反応性希釈剤、アクリル酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタクリル酸塩、又は求電子性ビニル化合物(例えばアクリロニトリルなど)など、との反応によって生成されうる。
【0078】
本発明の特に好ましいバインダーシステムでは、硬化剤は、脂環式アミン又はポリアミンである。
【0079】
適切な市販されているアミン官能性硬化剤の例は、以下の通りである:
EvonikからのAncamine 2609、Ancamine 2695、Ancamine 2738、Ancamide 260A、Ancamide 500、Ancamide 506、Ancamide 2386、Ancamine 2759、Ancamine 2760、Ancamine 2712M、Ancamine 1618、Ancamine 2165、Ancamine 2280、Ancamine 2432、Ancamine 2519、Ancamine 2802、Ancamine 2609w、Ancamine 2806、Ancamine 2049、Ancamine 2143、Ancamine 2264、Ancamine 2167、HexionからのEpikure 3140、Kukdo ChemicalからのGX-483、Admark PolycoatsからのAP5050、三菱ガス化学株式会社のMXDA、及びGaskamine 240、Huntsman Advanced MaterialsからのAradur 42 BD、及びAradur 943 CH。
【0080】
ある特に好ましいバインダーシステムでは、硬化剤は、脂肪族及び/又は脂環式ポリアミン、例えばEvonikからのAncamine硬化剤など、である。
【0081】
硬化剤は、ニートで又は溶媒中で供給されうるが、理想的には、硬化剤は無溶媒であることが理解されよう。
【0082】
1つ以上の硬化剤を組み合わせて用いうる。ある好ましいバインダーシステムでは、2つ以上の硬化剤を組み合わせて用いうる。
【0083】
硬化剤は、0~50℃の範囲の温度でエポキシ系バインダーを硬化させるはずである。エポキシ系バインダーシステムが、周囲温度で硬化すると好ましい。
【0084】
硬化剤の当量を「活性水素当量」の観点で示すのが一般的である。1つ以上の硬化剤に関する「活性水素当量」の数は、1つ以上の硬化剤のそれぞれからの寄与の合計である。活性水素当量に対する1つ以上の硬化剤のそれぞれからの寄与は、硬化剤のグラム数を硬化剤の活性水素当量で割ったものとして定義され、硬化剤の活性水素当量は、下記として決定される;活性水素1モルに相当する硬化剤のグラム数。エポキシ樹脂を含む付加物については、付加前の反応物の寄与を、完成したエポキシ系バインダーシステムにおける「活性水素当量」の数の決定に用いる。
【0085】
また、エポキシ系バインダー内の「エポキシ当量」の数を示すことも一般的である。エポキシ当量」とは、1つ以上のエポキシ系バインダーのそれぞれからの寄与、並びにエポキシ、例えばシラン及び反応性希釈剤などを含有する、任意の他の成分からの寄与の合計である。エポキシ当量に対する1つ以上のエポキシ系バインダーのそれぞれからの寄与は、エポキシ系バインダーのグラム数をエポキシ系バインダーのエポキシ当量で割ったものとして定義され、ここでエポキシ系バインダーのエポキシ当量は、下記として決定される;エポキシ基1molに相当するエポキシ樹脂のグラム数。エポキシ系バインダーを含む付加物については、付加前の反応物の寄与を、エポキシ系バインダーシステムにおける「エポキシ当量」の数の決定に用いうる。
【0086】
好ましくは、本発明のエポキシ系バインダーシステムにおける硬化剤の合計の水素当量と、エポキシ当量の合計との比(すなわちモル比)は、0.2~0.7、より好ましくは0.3~0.5の範囲内である。
【0087】
硬化剤は、エポキシ系バインダーとは別に出荷され、適用の直前にエポキシ系バインダーと混合されるだけであることが理解されよう。エポキシ系バインダー及び硬化剤を含む組成物の混合比は、もちろん、存在するエポキシ及び活性水素の相対量によって支配される。好ましくは、混合比(単位wt%)は、1:1~200:1の第1組成物対第2組成物、より好ましくは5:1~15:1の第1組成物対第2組成物、さらに好ましくは10:1の第1組成物対第2組成物である。硬化剤組成物及びエポキシ系バインダー組成物は、基材に適用する直前に混合される。
【0088】
好ましいバインダーシステムでは、硬化剤は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、1~20wt%、例えば5~15wt%の量で存在しうる。
【0089】
促進剤
【0090】
本発明のバインダーシステムは、いわゆるデュアルキュア機構を介して硬化すると考えられている。このことは、バインダーシステムが2つの相補的なキュア機構によって硬化を受けると考えられていることを意味する。これらは下記の通りである:(i)エポキシ樹脂のエポキシ基の、硬化剤中の活性水素を有する官能基との反応;及び(ii)バインダーシステムのエポキシ基の間の反応、すなわちエポキシ系バインダーのエポキシ基と、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルのエポキシ基との間の反応。後者の反応は、ホモ重合又はエポキシホモ重合と呼ばれることもある。デュアルキュア機構が起こることで、高密度のポリマーネットワークが生成され、これは液体の吸収を、それがコーティング中に存在する場合に、抑えることができると考えられている。
【0091】
理論に束縛されることを望まないが、バインダーシステム中に存在する硬化剤、例えばアミンは、S2反応を介して、混合物中に存在するエポキシ基と、初期硬化反応において反応すると考えられる。この反応では、エポキシド環が開環し、水素原子が、硬化剤、例えばアミンから、エポキシド基の酸素原子に移動する。移動した水素は、「活性水素」と呼ばれる。エポキシのホモ重合は、一般的には比較的遅い反応であるが、ホモ重合促進剤の存在により促進される。
【0092】
ホモ重合促進剤は、第3級アミン、アルコール、イミダゾール、有機酸、フェノール、スルホン酸、有機ホスフィン、及び塩から選択されうる。随意に、2つ以上のホモ重合促進剤の組み合わせが用いられうる。イミダゾールが、好ましいホモ重合促進剤である。代替的には、ホモ重合促進剤は、ホスホニウムイオン液体でありうる。
【0093】
適切な第3級アミンの例は、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン、ベンジルジメチルアミン、及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。ある特に好ましいホモ重合促進剤は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、例えばEvonikからのAncamine K54などである。
【0094】
適切なアルコールの例は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、及びその他のアルキルアルコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、及びその他の多価アルコール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、及びその他のβ-ヒドロキシ第3級アミンである。
【0095】
適切な有機酸の例は、酢酸、プロパン酸、酪酸、乳酸、フェニル酢酸、及びその他のアルキルカルボン酸、マロン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、及びその他の二塩基酸、又はそれらのモノエステル、安息香酸、4-t-ブチル安息香酸、サリチル酸、3,5-ジクロロサリチル酸、4-ニトロ安息香酸、及びその他の芳香族酸である。
【0096】
適切なフェノールの例は、アルキルフェノール、例えばノニルフェノールなどである。
【0097】
適切なスルホン酸の例は、メタンスルホン酸、及びその他のアルキルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、及びその他の芳香族スルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ジ-ノニルナフタレンジスルホン酸、及びその他の多価スルホン酸である。
【0098】
適切な有機ホスフィンの例は、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、及びフェニルホスフィンである。
【0099】
適切な塩の例は、硝酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸イミダゾリニウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、臭化リチウム、トリフルオロ酢酸リチウム、塩化カルシウム、トリフタル酸イッテルビウム、過塩素酸リチウム、トリフタル酸亜鉛、硝酸リチウムである。これらの塩の場合、カチオンは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムと置き換えられうる。
【0100】
適切なホスホニウムイオン液体の例は、トリブチル(エチル)ホスホニウムジエチルホスフェートである。
【0101】
好ましくは、ホモ重合促進剤は、ホスホニウムイオン液体又はイミダゾールである。
【0102】
好ましくは、ホモ重合促進剤は、イミダゾールである。好ましいイミダゾールは、下記の式のものである:
【0103】
【化3】
【0104】
ここで、Rは、水素原子、C1-C10アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又はシアノエチル基である;
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C20アルキル基、ヒドロキシ基で置換されたC1~C20アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又はC1~C20アシル基を表し;かつ、
破線は、単結合又は二重結合を表す。
【0105】
適切なイミダゾールの代表例として、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
好ましいイミダゾールとして、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、及び2-ヘプタデシルイミダゾールが挙げられる。
【0107】
特に好ましくは、ホモ重合促進剤は、イミダゾール及び第3級アミンの組み合わせ、例えばイミダゾール及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの組み合わせである。この組み合わせは、穏やかな硬化条件において高密度のポリマーネットワークを生成することがわかっている。
【0108】
特に好ましくは、ホモ重合促進剤は、ホスホニウムイオン液体及び第3級アミンの組み合わせ、例えばホスホニウムイオン液体及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの組み合わせである。この組み合わせも、穏やかな硬化条件において高密度のポリマーネットワークを生成することが分かっている。
【0109】
好ましいバインダーシステムでは、ホモ重合促進剤は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、0.1~10wt%、例えば1~5wt%の量で存在しうる。
【0110】
また、促進剤を、エポキシ樹脂のエポキシ基と、活性水素を有する硬化剤の官能基との反応を速めるために用いうる。上述したホモ重合促進剤も、一般的には、エポキシ樹脂のエポキシ基と、活性水素を有する硬化剤の官能基との反応を速めることに留意すべきである。
【0111】
(メタ)アクリル酸エステルもまた、エポキシ樹脂のエポキシ基と、活性水素を有する硬化剤の官能基との硬化反応を速めることが知られている。
【0112】
適切な(メタ)アクリル酸エステルの例は、下記の式のものである:
【0113】
【化4】
【0114】
ここで、Rは、H又はMeであり;
nは2~5であり;かつ
Lは、ポリオールの残基、例えばヘキサンジオールの残基、サッカリド又は糖アルコールの残基などを表す。したがって、ポリオールの少なくとも2つのOH基は、上式で示されるアクリル酸エステルを運ぶ。
【0115】
Lは、好ましくはC、H、及びO原子のみを含有する。Lの分子量は、好ましくは低く、例えば1000g/mol以下である。
【0116】
好ましいバインダーシステムでは、促進剤の総量は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、0.1~10wt%、例えば1~5wt%の量で存在しうる。
【0117】
シラン
【0118】
本発明のバインダーシステムは、随意に少なくとも1つのシランを含む。存在する場合、シランは、バインダーシステムの一部であり、硬化の際にバインダーシステムの他の成分と反応する。シランは、接着促進剤として機能する。
【0119】
好ましくは、シランは、バインダーシステム、例えばアミン基及び/又はエポキシ基などと反応しうる官能基を有する、官能性シランである。本発明で用いるシランは、一般的には、低いMwのもの、例えば400g/mol未満のものである。適切なシランは一般式(I)又は(II)のものであり:
(I) Y-R(4-z)SiX
ここで、zは、1~3の整数であり、
(II) Y-R(3-y)SiX
ここで、yは、1~2の整数であり、
それぞれのRは、随意にエーテル又はアミノリンカーを含有する、1~12個のC原子を有するヒドロカルビル基であり、
は、1~12個のC原子を有するヒドロカルビル基であり;
それぞれのXは、独立してハロゲン基又はアルコキシ基を表し;かつ
Yは、エポキシ系バインダー及び/又は硬化剤と反応しうる、Rに結合している官能基である。
【0120】
好ましくは、Yは、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、アクリレート基、又はメタクリレート基であり、より好ましくはエポキシ基、アミノ基、アクリレート基、又はメタクリレート基であり、最も好ましくはエポキシ基又はアミノ基である。Yがエポキシ基であると特に好ましい。Y基は、鎖Rの任意の部分に結合しうる。Yがエポキシ基を表す場合、次いでRはエポキシド環システムの形成を可能にするために少なくとも2個の炭素原子を有することが、理解されよう。
【0121】
ある特に好ましいシランでは、Yは、アミノ基又はエポキシ基である。アミノ基は好ましくはNHである。好ましくは、Yはエポキシ基である。
【0122】
Y基がエポキシ系バインダーと反応しうるアミノ基である場合、シランが硬化剤と一緒に、エポキシ系バインダーとは別に提供されると、好ましい。
【0123】
それぞれのXは、独立してハロゲン基又はアルコキシ基を表す。Xがアルコキシ基、例えばC1-6アルコキシ基、特にはメトキシ基又はエトキシ基などであると特に好ましい。また、2又は3個のアルコキシ基が存在する場合も特に好ましい。したがって、zは、理想的には2又は3、特には3である。
【0124】
添え字yは、好ましくは2である。
【0125】
は、好ましくはC1-4アルキル、例えばメチルなどである。
【0126】
Rは、12個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である。ヒドロカルビルとは、C原子及びH原子のみを含む基を意味する。これは、アルキレン鎖を含みうるし、又はアルキレン鎖と、環、例えばフェニル環若しくはシクロヘキシル環などとの組み合わせを含みうる。「随意にエーテル又はアミノリンカーを含有する」という用語は、炭素鎖が鎖中において-O-又はNH-基によって割り込まれうることを意味し、それによって、例えばシラン(例えば[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシランなど)を形成する:
COCHCHOCHCHCHSi(OCH
【0127】
Rは、好ましくは、非置換(Yは明らかに除く)の、2~8個のC原子を有する非分岐アルキル鎖である。
【0128】
したがって、好ましいシラン一般式は、構造(III)のものである。
(III) Y’-R’(4-z’)SiX’z
ここで、z’は、2~3の整数であり、
R’は、非置換の、2~8個のC原子を有する非分岐アルキル鎖であり、これは、随意にエーテル又はアミノリンカーを含有し、
Y’は、R’基に結合したアミノ基又はエポキシ官能基であり、かつ、
X’は、アルコキシ基を表す。
【0129】
このようなシランの例は、ラインフェルデンにあるDegussaによって製造され、Dynasylan(登録商標)Dの商品名で販売されている、多くの代表的な製品、Momentiveによって製造されるSilquest(登録商標)シラン、及びWackerによって製造されるGENOSIL(商標)シランである。
【0130】
具体例として、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A-174NT)、3-メルカプトプロピルトリ(m)エトキシシラン(Dynasylan MTMO又は3201;Silquest A-189)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A-187)、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Silquest Y-11597)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-189)、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A-186)、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 35、Genosil GF40)、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 33)、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 43)、アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A-l 110)、アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A-l 120)又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノ-官能性トリメトキシシラン(Silquest A-1130)、ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A-l 170)、N-エチル-γ-アミノイソビチルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 15)、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y-9669)、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest Y-l 1637)、(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン(Genosil XL 926)、(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 973)、Deolink Epoxy TE及びDeolink Amino TE(D.O.G Deutsche Oelfabrik)、並びにそれらの混合物である。
【0131】
重要な他の特定のシランとして、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン HNCHCHNHCHCHSi(OCH、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、(HNCHCHNHCHCHSiCH(OCH)、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン(HCOCHCHOCHCHCHSi(OCHCH)、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン(HCOCHCHOCHCHSi(OCH)が挙げられる。
【0132】
シラン3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの使用が、特に好ましい。シランの混合物も用いうる。
【0133】
バインダーシステム中に存在するシランの量は、バインダーシステムの総乾燥重量に基づいて、0.1~10wt%、好ましくは0.5~5wt%、より好ましくは1~3wt%でありうる。シランのブレンドを用いる場合、これらのパーセンテージは、総シラン含有量を意味し、すなわちそれぞれのwt%を足す。
【0134】
シランが、エポキシ系バインダーと反応しうる官能基を有する場合、それは、コーティング組成物を形成するために用いるキット内で、エポキシ系バインダーとは別に保管される必要があることが理解されよう。
【0135】
反応性希釈剤
【0136】
本発明のバインダーシステムは、好ましくは、反応性希釈剤、特にはエポキシ官能性反応性希釈剤を含まない。
【0137】
反応性希釈剤はエポキシバインダーとは異なる。一般的に、エポキシ官能性反応性希釈剤は、低分子量のもの、例えば500g/mol未満のものである。通常、反応性希釈剤の粘度は、100cp(0.1Pa・s)未満、好ましくは50cP(0.05Pa・s)未満、好ましくは35cp(0.035Pa・s)未満である。したがって、それは、23℃かつ大気圧において液体である。
【0138】
典型的なエポキシ官能性反応性希釈剤の例は、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基中の炭素原子数:1~16)、ネオデカン酸のグリシジルエステル(RC-COO-Gly、ここで、Rは、アルキル基、例えばC8~C10アルキルなどであり、Glyは、グリシジル基である)、オレフィンエポキシド(CH-(CH)n-Gly、ここでn=11~13であり、Gly:グリシジル基)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH-O-Gly)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH-O-Gly)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-CH-C(CH-CH-O-Gly)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(CH-CH-C(CH-O-Gly))、及びC1~20-アルキルフェニルグリシジルエーテル(好ましくはC1~5アルキルフェニルグリシジルエーテル)、例えばメチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、及びパラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル(p-TBPGE)、エピクロルヒドリンとカシューナッツの殻から得られる油との反応生成物である。
【0139】
好ましくは、バインダーシステムは、反応性希釈剤を含まない。これは、なぜなら、反応性希釈剤が存在すると、反応性希釈剤は、硬化プロセスの際に、バインダーシステムの一部を形成し、バインダーシステムの他の成分と反応するからである。これは、そうでなければ本発明のバインダーシステムによって形成される、高密度ポリマーネットワークを破壊すると考えられる。
【0140】
その他のバインダーシステム成分
【0141】
好ましくは、本発明のバインダーシステムは、共バインダーを含まない。共バインダーの存在は、ポリマーネットワークの密度を低下させ、したがってバインダーを含むコーティングの吸収能力を高めると考えられる。典型的な共バインダーの例は、飽和ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル;酢酸ビニル、ビニルイソブチルエーテルのコポリマー;塩化ビニル及びビニルイソブチルエーテルのコポリマー;スチレンコポリマー、例えばスチレン/ブタジエンコポリマーなど;アクリル樹脂、ポリシロキサン、ヒドロキシ-アクリレートコポリマー、脂肪酸、及び環化ゴムである。
【0142】
好ましくは、本発明のバインダーシステムは、ウロン系硬化剤を含まない。特に好ましくは、本発明のバインダーシステムは、1,3-ジフェニル尿素、ベンジル尿素、1,1-ジメチル-3-フェニル尿素、N-エチル尿素、N-(2-クロロ-4-ピリジル)-N’-フェニル尿素、Ν,Ν’-ジベンジル尿素、N-(4-クロロフェニル)Ν,Ν-ジメチル尿素、N-(4-クロロフェニル)n,n-ジメチル尿素、N-フェニル-N,N-ジメチル尿素、2,4-トルエンビスジメチル尿素、2,4-トルエンビスジメチル尿素、脂環式ビジュア、トルエンビスジメチル尿素、4,4’メチレンビス(フェニルジメチル尿素)、N,N-ジメチル-N’-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、及びそれらの組み合わせから選択されるウロンを含まない。
【0143】
好ましくは、本発明のバインダーシステムは、ヒドラジド硬化剤、例えば芳香族ヒドラジド、又は脂肪族ヒドラジドを含まない。特に好ましくは、本発明のバインダーシステムは、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、3,4-ジアミノベンズヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、4-アミノ安息香酸ヒドラジド、(+)-ビオチンアミドヘキサン酸ヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,4-シクロヘキシルジヒドラジド、4,4’-(プロパン-1,3-ジイルビスオキシ)ジ安息香酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、及びそれらの組み合わせを含まない。
【0144】
好ましくは、本発明のバインダーシステムは、ポリフェノール樹脂を含まない。
【0145】
コーティング組成物
【0146】
本発明のバインダーシステムは、好ましくはコーティング組成物中に存在する。コーティング組成物は、本明細書において前述したようなバインダーシステムからなりうる。代替的には、コーティング組成物は、さらなる成分を含みうる。好ましいさらなる成分を、以下に記載する。
【0147】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、20~80wt%のバインダーシステム、より好ましくは30~70wt%のバインダーシステム、さらに好ましくは40~60wt%のバインダーシステムを含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、20~80wt%のバインダーシステム、より好ましくは30~70wt%のバインダーシステム、さらに好ましくは40~60wt%のバインダーシステムを含む。
【0148】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、15~60wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、より好ましくは20~50wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、さらに好ましくは25~40wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、15~60wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、より好ましくは20~50wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル、さらに好ましくは25~40wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む。
【0149】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、1~30wt%の硬化剤、より好ましくは2~15wt%の硬化剤、さらに好ましくは3~10wt%の硬化剤を含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、1~30wt%の硬化剤、より好ましくは2~15wt%の硬化剤、さらに好ましくは3~10wt%の硬化剤を含む。
【0150】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~10wt%のホモ重合促進剤、より好ましくは0.5~7wt%のホモ重合促進剤、さらに好ましくは1~5wt%のホモ重合促進剤を含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.1~10wt%のホモ重合促進剤、より好ましくは0.5~7wt%のホモ重合促進剤、さらに好ましくは1~5wt%のホモ重合促進剤を含む。
【0151】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1~10wt%のシラン、より好ましくは0.2~5wt%のシラン、さらに好ましくは0.5~2.5wt%のシランを含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.1~10wt%のシラン、より好ましくは0.2~5wt%のシラン、さらに好ましくは0.5~2.5wt%のシランを含む。
【0152】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~15wt%の反応性希釈剤、より好ましくは0.1~10wt%の反応性希釈剤、さらに好ましくは0.5~5wt%の反応性希釈剤を含む。好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0~15wt%の反応性希釈剤、より好ましくは0.5~10wt%の反応性希釈剤、さらに好ましくは1~5wt%の反応性希釈剤を含む。
【0153】
好ましくは、コーティング組成物は、0~5wt%の溶媒、より好ましくは0~4wt%の溶媒、さらに好ましくは0~2.5wt%の溶媒を含む。
【0154】
フィラー(充填剤)
【0155】
本発明のコーティング組成物は、1つ以上のフィラーを含みうる。多種多様なフィラーを用いうる。適切なフィラーの例は、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸塩、ホウ酸塩、シリカ、ケイ酸塩、例えば長石、カオリン、及び珪灰石など、重金属酸化物、例えば酸化セリウム、酸化ランタン及び酸化ジルコニウムなど、マイカ、珪藻土、並びにベントナイト粘土である。
【0156】
特に好ましいフィラーは、二酸化チタン、二酸化アルミニウム、長石、カオリン、珪灰石、及び硫酸バリウムである。1種類超のフィラーが、本発明のコーティング組成物中に用いられると好ましい。
【0157】
ラメラ状又はプレート状構造を有するフレーク状フィラー、例えばマイカ、タルク、及びガラスフレークなどを、本発明のコーティング組成物中に用いうる。
【0158】
好ましくは、フレーク状フィラーのアスペクト比は、3超、例えば6超、好ましくは10超である。アスペクト比は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることによって、測定されうる。
【0159】
フレーク状フィラーの厚さは、好ましくは0.1~15μm、より好ましくは0.5~10μm、さらに好ましくは1.0~8.0μmである。フレーク状フィラーの厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定されうる。
【0160】
本明細書において言及されるフレーク状フィラーの粒子サイズ及び厚さは、それらが組成物に添加されるときのフレークのサイズであり、任意の押出成形又は粉砕プロセスの前のものである。
【0161】
好ましいフレーク状フィラーは、タルク、マイカ、及びガラスフレークである。
【0162】
球状フィラー粒子も、本発明のコーティング組成物中に用いうる。
【0163】
球状フィラー粒子は、有機又は無機の球状フィラー粒子でありうる。好ましくは、球状フィラー粒子は、無機球状フィラー微粒子である。
【0164】
球状フィラー粒子は、中空でありうるし、又は非中空でありうる。いくつかの好ましい組成物において、球状フィラー粒子は中空である。このことは、粒子がそれらの中心において空隙(ヴォイド)又は空洞(キャビティ)を有することを意味する。この空隙又は空洞は、気体、好ましくは空気で充填されている。
【0165】
適切な中空無機球状フィラー粒子は市販されている。適切な市販の中空無機球状フィラー粒子の例として、FilliteCenosphere、Poraver(膨張ガラス)、Thermospheres、Omega spheres(例えば3M、Trelleborg、Potters、SMC mineralsなどから入手可能)、及びHolloliteが挙げられる。
【0166】
好ましくは、中空無機球状フィラー粒子は、低密度を有し、例えば中空無機球状フィラー粒子の密度は、0.1~1gcm、より好ましくは0.2~0.8gcm、さらに好ましくは0.25~0.5gcmであってよく、例えばサプライヤーによって提供される技術仕様書に明記されている通りでありうる。
【0167】
無機球状フィラー粒子は、下記を含みうるし、より好ましくは下記からなりうる :ガラス、セラミック、カルシウムアルミニウムセメント、又は金属酸化物、好ましくはガラス。
【0168】
随意に、無機球状フィラー粒子は、表面処理されうる。
【0169】
好ましくは、無機球状フィラー微粒子は、Malvern Mastersizer 2000を用いてISO 22412:2017により決定される場合、1.0~100μm、より好ましくは1.0~80μm、さらに好ましくは10~50μmのZ平均直径を有する。
【0170】
フィラーは、好ましくは、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~70wt%、好ましくは10~60wt%、より好ましくは20~50wt%の量で、本発明のコーティング組成物中に存在する。フィラーは、好ましくは、コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0~70wt%、好ましくは10~60wt%、より好ましくは20~50wt%の量で、本発明のコーティング組成物中に存在する。
【0171】
添加剤
【0172】
本発明のコーティング組成物は、随意に多種多様な添加剤を含む。コーティング組成物中に随意に存在する添加剤の例として、着色顔料、レオロジー改質剤(たれ防止剤/沈降防止剤)、増粘剤、防錆剤、乾燥剤、分散剤、表面改質剤、可塑剤、及び接着促進剤が挙げられる。任意の従来の添加剤が存在しうる。
【0173】
追加の添加剤は、好ましくは、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~50wt%、より好ましくは0.1~30wt%、さらに好ましくは0.1~20wt%、特に好ましくは0.5~10wt%の量で、コーティング組成物中に存在する。
【0174】
着色顔料の例として、チタン白、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、カーボンブラック、及び有機着色顔料が挙げられる。
【0175】
レオロジー改質剤として、チキソトロピー剤、例えばポリアミドワックス、珪藻土、ポリエチレンワックス、ヒュームドシリカ、又はベントナイト系チキソトロピー剤などを採用しうる。このようなたれ防止/沈降防止剤の例として、ArkemaからのCrayvallac Ultra、Crayvallac LVのいずれか、ElementisからのThixatrol ST及びThixatrol Maxのいずれか、Kusumoto ChemicalsからのDisparlon 6650、並びにImerysからのCeliteが挙げられる。
【0176】
コーティング組成物中に防食成分を含めることも有用でありうる。適切な防錆成分の例は、リン酸亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛ダスト、亜鉛フレーク、及びアルミニウムフレークである。
【0177】
組成物
【0178】
本発明の好ましいコーティング組成物は、以下を含み:
(i) 20~80wt%、好ましくは40~60wt%のエポキシ系バインダー;
(ii) 15~60wt%、好ましくは25~40wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 1~30wt%、好ましくは3~10wt%の硬化剤;及び
(iv) 0.1~10wt%、好ましくは1~5wt%のホモ重合促進剤、
ここで、wt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0179】
本発明の特に好ましいコーティング組成物は、以下を含み:
(i) 20~80wt%、好ましくは40~60wt%のエポキシ系バインダー;
(ii) 15~60wt%、好ましくは25~40wt%のトリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 1~30wt%、好ましくは3~10wt%の硬化剤;
(iv) 0.1~10wt%、好ましくは1~5wt%のホモ重合促進剤;及び
(v) 0.1~10wt%、好ましくは0.5~2.5wt%のシラン、
ここで、wt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0180】
本発明のさらに特に好ましいコーティング組成物は、0.05~5wt%、好ましくは0.1~2wt%のチキソトロピー剤を含み、ここでwt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0181】
本発明のさらに特に好ましいコーティング組成物は、1~10wt%、好ましくは2~6wt%の着色顔料を含み、ここでwt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0182】
本発明のさらに特に好ましいコーティング組成物は、0~70wt%、好ましくは5~50wt%のフィラーを含み、ここでwt%は組成物の総乾燥重量に基づく。
【0183】
本発明の好ましいコーティング組成物は、少なくとも98wt%、より好ましくは少なくとも99wt%の固形分含有量を有する。特に好ましくは、本発明のコーティング組成物の固形分含有量は100wt%である。
【0184】
本発明の好ましいコーティング組成物は、非常に低い溶媒含有量、例えば5.0wt%未満の溶媒、特には2.0wt%未満の溶媒、より特には1.0wt%未満の溶媒、例えば0.5wt%以下の溶媒など、を含有する。理想的には、コーティング組成物は、実質的に溶媒を含まない(例えば、無溶媒である)。
【0185】
高い固形分体積、及び低い溶剤含有量は、比較的低いVOC含有量につながる。コーティング組成物のVOC含有量は、好ましくは250g/L未満、より好ましくは100g/L未満、最も好ましくは50g/L未満であり、例えば、VOC含有量は、25g/L以下、例えば10g/L以下でありうる。これは、コーティング組成物が、実質的にVOCを含まないことを意味する。
【0186】
本発明のコーティング組成物のポットライフは、好ましくは少なくとも1時間、例えば1~3時間、例えば1.5~2.5時間など、である。ポットライフとは、第1成分及び第2成分を混合した後、コーティング組成物を基材に適用できる状態である時間を意味する。30分未満のポットライフは、大きな対象物をコーティングするのにかかる時間を考慮すると、商業的に困難である。
【0187】
本発明の好ましいコーティング組成物は噴霧(スプレー)可能である。特に好ましくは、本発明のコーティング組成物はチキソトロピー性である。したがって、コーティング組成物は、せん断を噴霧装置内で適用すると流動するが、表面に適用すると流動しない。
【0188】
本発明のコーティング組成物は、基材、及びその基材上のプライマー層の両方によく接着し、耐吸収性及び迅速な硬度を提供する。コーティング組成物はまた、望ましくないHSEプロファイルを有する、RDGEを含まない。
【0189】
本発明の好ましいコーティング組成物は、周囲温度で硬化可能なコーティングを提供する。特に好ましいコーティング組成物は、150℃未満、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満の温度で、それぞれ50%RHにおいて、硬化可能なコーティングを提供する。
【0190】
本発明の好ましいコーティング組成物は、少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらに好ましくは少なくとも150℃の、Tg、例えば実施例に記載の方法によって決定されるTgを有する。
【0191】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物は、0.5wt%未満、好ましくは0.3wt%未満の、1日後のキシレン吸収量、例えば実施例に記載の方法によって決定される1日後のキシレン吸収量を有する。
【0192】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物は、1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の、1日後の1,2-ジクロロエタン(EDC)吸収量、例えば実施例に記載の方法によって決定される1日後の1,2-ジクロロエタン(EDC)吸収量を有する。
【0193】
容器とキット
【0194】
本発明はまた、本明細書において前述したような、バインダーシステム、又はコーティング組成物を含む容器に関する。適切な容器として、プラスチックバッグを裏につけた段ボール箱、及びプラスチックバッグ(いわゆる「大きなバッグ」)が挙げられる。
【0195】
代替的には、本発明のバインダーシステム及びコーティング組成物のそれぞれを、キットの形態で提供しうる。
【0196】
本発明のバインダーシステムは、好ましくは第1組成物(A)と第2組成物(B)との組み合わせから形成される。早期硬化を防止するために、本発明のバインダーシステムは、好ましくは、下記の2つの部分で供給される;エポキシ系バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む第1組成物(A)、並びに硬化剤及びホモ重合促進剤を含む第2組成物(B)。
【0197】
同様に、本発明のコーティング組成物は、好ましくは第1組成物(A)と第2組成物(B)との組み合わせから形成される。早期硬化を防止するために、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、下記の2つの部分で供給される;エポキシ系バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む第1組成物(A)、並びに硬化剤及びホモ重合促進剤を含む第2組成物(B)。コーティング組成物の他の成分は、成分(A)中に存在する任意の成分が、成分(A)内の任意の他の成分と反応せず、かつ成分(B)中に存在する任意の成分が、成分(B)内の任意の他の成分と反応しない限り、成分(A)又は(B)中のいずれかにおいて存在しうる。
【0198】
したがって、本発明のバインダーシステム及びコーティング組成物を生成するためのキットは、以下を含む:
(i) エポキシ系バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを含む第1容器;並びに、
(ii) 硬化剤及びホモ重合促進剤を含む第2容器。
【0199】
好ましいキットは、さらにシランを含み、特に好ましくは第1容器中に含む。
【0200】
好ましいキットは、さらにチキソトロピー剤を含み、特に好ましくは第1容器中に含む。
【0201】
好ましいキットは、さらに着色顔料を含み、特に好ましくは第1容器中に含む。
【0202】
好ましいキットは、さらにフィラー及び/又はエクステンダー(増量剤)を含み、特に好ましくは第1容器中に含む。
【0203】
製造
【0204】
本発明はまた、本明細書において前述されるようなバインダーシステム及び/又はコーティング組成物を生成するためのプロセスに関し、これは以下を混合することを含む:
(i) エポキシ系バインダー;
(ii) トリメチロールエタントリグリシジルエーテル;
(iii) 硬化剤;及び、
(iv) ホモ重合促進剤。
【0205】
本発明の好ましい方法では、バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルを予め混合し、別に硬化剤及びホモ重合促進剤を予め混合する。そして、得られた2つの混合物を、組み合わせ、混合する。
【0206】
さらなる成分を含むコーティング組成物を生成する場合、これらの成分は、好ましくは、バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルと予め混合される。シランは、存在する場合、好ましくはバインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルと予め混合される。チキソトロピー剤は、存在する場合、好ましくは、バインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルと予め混合される。着色顔料は、存在する場合、好ましくはバインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルと予め混合される。フィラー/エクステンダーは、存在する場合、好ましくはバインダー及びトリメチロールエタントリグリシジルエーテルと予め混合される。
【0207】
任意の従来の混合装置を用いうる。例えば、様々な成分を、高速分散機、ボールミル、パールミル、3本ロールミル、インラインミキサーなどを用いて、一緒に混合しうる。
【0208】
便利には、バインダーシステム及び/又はコーティング組成物は、本明細書で前述したようにキットとして供給される。キットの任意の部分内のそれぞれの成分の相対量は、コーティング組成物中の最終wt%値及び相対混合比によって決定されるであろうことが理解されよう。
【0209】
表面、コーティング、及びコーティングシステムへの適用
【0210】
本発明はまた、表面、好ましくは金属表面をコーティングするための方法に関し、上記方法は、以下を含む:
(i) 本明細書において前述したような組成物を適用すること;及び、
(ii) 上記組成物を硬化させて、表面上にコーティングを形成すること。
【0211】
随意に、表面は、本発明のコーティング組成物を適用する前に予め処理される。随意に、本発明のコーティング組成物を適用する前に、表面をプライマー組成物でコーティングする。このように、本発明のコーティング組成物は、コーティングシステムの一部でありうる。しかしながら、コーティング組成物が、表面上に直接適用されると好ましい。
【0212】
本発明のコーティング組成物は、任意の従来のコーティング方法、例えば噴霧、圧延、浸漬などによって基材に適用されうる。好ましくは、コーティング組成物は、噴霧によって、より好ましくはエアレススプレーによって適用される。噴霧が好ましく、なぜなら、それが、広い表面積が均一な様式においてコーティングされることを可能にするからである。さらに、噴霧は、水平でない表面をコーティングするために用いられうる。好ましくは、基材は、金属、特には鋼鉄である。
【0213】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、単一層として適用される。随意に、この層は、単一工程において、又は複数の工程であって、それぞれの工程の間に乾燥及び硬化を含む工程において、適用されうる。
【0214】
本発明はまた、本明細書において前述したようなコーティング組成物を含むコーティングに関する。随意に、コーティングはいくつかの工程において適用され、ここで、コーティングの第1層が、適用され、乾燥され、硬化され、次いでコーティングの後続の層が適用される。好ましくは、適用工程の数は最小化される。好ましくは、単一工程において適用されるコーティングの層は50~1000mm、より好ましくは100~500mmである。
【0215】
本発明のコーティング組成物は、単一層コーティング又は多層コーティング(すなわちコーティングシステム)を形成するために用いられうる。
【0216】
硬化剤
【0217】
好ましくは、本発明のコーティングは硬化される。したがって、一旦基材が、本発明のコーティング組成物でコーティングされると、コーティングは好ましくは硬化される。好ましくは、硬化は2段階において行われる。第1段階では、硬化は好ましくは周囲温度(すなわち20℃)で行われる。第2段階では、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃、さらに好ましくは70~85℃で硬化する。第2段階における「高温硬化」は、高密度ポリマーネットワークを達成するのに重要であると考えられている、エポキシのホモ重合反応を促進すると考えられている。
【0218】
基板と物品
【0219】
本発明はまた、本明細書において前述したようなコーティング組成物又は本明細書において前述したようなコーティングで、コーティングされた基材に関する。本発明のコーティング組成物は、任意の基材に適用されうる。基材の代表例として、金属基材(鋼鉄、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、銅)、ガラス、セラミック、及び高分子材料(例えばプラスチック)が挙げられる。好ましい基材は金属基材である。本発明のコーティングは、このような基材上に、保護コーティング、特には化学的耐性コーティングを提供する。
【0220】
好ましくは本発明のコーティングでコーティングされる、金属基材のタイプは、化学物質、例えば大量の液体化学物質と接触するものである。金属基材の例として、貯蔵タンク(例えば、貨物船、製品貯蔵所)、プロセス器、圧力器、反応器タンク、2次格納容器、格納容器防液堤、防液堤壁、化学的に侵食性の高い施設における構造物、及び深刻な化学物質の流出にさらされるリスクのある領域が挙げられる。特に好ましい基材は、金属タンクであり、特には金属タンクの内部表面、例えば貨物船上にある金属タンクの内部表面、又は陸上の製品貯蔵施設にある金属タンクの内部表面である。
【0221】
基材は、本発明のコーティング組成物又はコーティングで、部分的に、又は完全にコーティングされうる。しかしながら、好ましくは、基材の全てが、本発明のコーティング組成物又はコーティングでコーティングされる。タンクの場合、好ましくは内部壁が、本発明のコーティング組成物でコーティングされる。
【0222】
好ましくは、コーティングは、50~1000mm、より好ましくは100~500mmの総乾燥厚さを有する。
【0223】
本発明の好ましいコーティングは、少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも140℃、さらに好ましくは少なくとも150℃の、Tg、例えば実施例に記載の方法によって決定されるようなTgを有する。
【0224】
本発明のさらに好ましいコーティングは、0.5wt%未満、好ましくは0.3wt%未満の、1日後のキシレン吸収量、例えば実施例に記載の方法によって決定されるような1日後のキシレン吸収量を有する。
【0225】
本発明のさらに好ましいコーティングは、1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の、1日後のEDC吸収量、例えば実施例に記載の方法によって決定されるような1日後のEDC吸収量を有する。
【0226】
使用
【0227】
本発明はまた、基材又は物品、好ましくはタンクの、少なくとも1つの表面上にコーティングを形成するための、本明細書において前述したような組成物の使用を提供する。好ましくは、その表面は、本明細書において前述したような金属表面である。
【0228】
本発明はまた、コーティング組成物を形成するための、本明細書において前述したようなバインダーシステムの使用、を提供する。
【0229】
本発明はまた、本明細書に前述したようなバインダーシステムを形成するための、トリメチロールエタントリグリシジルエーテルの使用、を提供する。
【0230】
次に、下記の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例
【0231】
材料
【0232】
実施例において用いた化合物及びポリマーは、すべて市販されていたものである。用いられた化合物及びポリマーを下記の表にまとめている。EEWはエポキシ当量、AHEWはアミン水素当量である。
【0233】
【表1】
【0234】
本発明のバインダーシステムを含むコーティング組成物の生成
【0235】
コーティング組成物の成分を、下記の表に示す割合で混合した。組成物の成分は、表中ではwt%で示されている。
【0236】
成分Aの全量を、ディゾルバーにおいて混合した。成分Bは、液体のみの成分を機械的に攪拌して(かき混ぜて)混合した。
【0237】
試験用サンプルの生成
【0238】
・ DMAによるTg測定用:
試験サンプルを、成分A及び成分Bを混合し、かつ遊離したコーティングフィルムを容易に除去できるように混合物をMylar(登録商標)ポリエステルシート上に適用することによって、生成した。コーティングの厚さ(乾燥フィルム)は、200~400μmの範囲内であった。コーティングを、21℃で7日にわたって、かつ80℃で1日にわたって、硬化させた。コーティングの硬化後、それを、TA Q800 DMA装置上のテンションフィルムクランプで用いるために、適切なサイズのストリップ(長方形のストリップ、60mm x 5mm)に切断した。方法の詳細は後述する。タンジェントデルタ曲線のピークをTg値とした。
【0239】
・ 吸収試験:成分A及び成分Bを混合し、Mylar(登録商標)ポリエステルシート上に適用した。コーティングの厚さ(乾燥フィルム)は、200~400μmの範囲内であった。コーティングを、21℃で7日にわたって、かつ80℃で1日にわたって、硬化させた。コーティングの硬化後、それを、適切なサイズ(約2cm×2cm)の正方形に切断した。
【0240】
試験方法
【0241】
・ Tgを、下記のパラメーターを用いて動的機械分析(DMA)により測定した:
1. Instrument DMA Q800 V21.3 Build 96
2. Module DMA Multi-Frequency-Strain
3. クランプテンション:フィルム
4. 幾何学的長方形(長さ、幅、厚さ)
5. 静荷重 0.0100N
6. 方法:
(1) -20.00℃で平衡にすること、
(2) 3.00分にわたって等温にさせること、
(3) 250.00℃まで4.00℃/分で昇温すること、
(4) 30.00℃で平衡にすること。
タンジェントデルタ曲線のピークをTg値とした。
【0242】
・ キシレン吸収量を、サンプルをキシレン中に1日にわたって浸漬することによって試験した。サンプルを取り出し、直ちに重量を測定した。キシレン吸収量は、wt%で示され、キシレン中の浸漬前後のサンプル重量の差として測定される。
【0243】
・ 1,2-ジクロロエタン吸収量を、サンプルを1,2-ジクロロエタン中に1日にわたって浸漬することによって試験した。サンプルを取り出し、直ちに重量を測定した。1,2-ジクロロエタン吸収量は、wt%で示され、1,2-ジクロロエタン中に浸漬する前後のサンプルの重量の差として測定される。
【0244】
試験結果はまた、下記の表にも示されており、CEは比較例を意味する。比較例1~3は、異なるジ-グリシジルエーテル及びトリ-グリシジルエーテルを含む。比較例4は市販品であり、これはレゾルシノールジグリシジルエーテルを含む。比較例5は、低分子量エポキシ化合物を含まない。
【0245】
【表2】
【0246】
【表3】
【0247】
【表4】
【0248】
【表5】
【0249】
CE4:レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)及びエポキシ系バインダー(Interline 9001)に基づく市販のタンクコーティング。
【0250】
CE5:低分子量のジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテルを含まないNovolacエポキシ系バインダーに基づく市販のタンクコーティング。
【0251】
その結果、本発明のバインダーシステムを含むコーティング(実施例1、2及び3)は、異なるジ-グリシジルエーテル及びトリ-グリシジルエーテルを含むCE(CE1~CE3、Tgsは91~124℃)と比較して、著しく高いTg(155、164及び138℃)を有することが示された。本発明のバインダーシステムを含むコーティングのTgはまた、市販の参照用タンクコーティング(CE5)のTgよりも有意に高い。
【0252】
この結果はまた、エポキシ系バインダーとTMETGEとの組み合わせが、高いTg、したがって高い密度を有するコーティングをもたらすことを示している。低分子量のジグリシジルエーテル化合物を含まないCE5は、大幅に比較的低い117℃のTgを有する。
【0253】
吸収量試験の結果は、DMA試験の際に得られた結果を裏付けるものである。本発明の実施例は、異なるジ-グリシジルエーテル及びトリ-グリシジルエーテルを含むCE(CE1~CE3)、並びに比較的低分子量のジグリシジルエーテル又はトリグリシジルエーテルを含まないCE5におけるコーティングと比較して、キシレン及びEDCの吸収が大幅に少ない。これは特にEDC試験において顕著である。
【0254】
CE4におけるコーティングは、レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)とエポキシ系バインダーとの組み合わせに基づいている。このコーティングは、本発明の実施例よりもキシレン及びEDCの吸収量がわずかに少ないが、本発明のコーティングは、これががん及び遺伝子異常を引き起こす疑いがあると分類されているRDGEを含まないため、著しく改善された健康及び安全性のプロファイルを有するであろう。これにより、本発明のコーティングは、当該技術分野で知られているものよりも高い架橋密度及び低い化学吸収量を有するコーティングを得る、比較的安全な方法を提示する。
【国際調査報告】