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特表2024-527061改善された特性を有するシュープレス用のプレススリーブまたはコンベアベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】改善された特性を有するシュープレス用のプレススリーブまたはコンベアベルト
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/02 20060101AFI20240711BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
C08G18/10
C08G18/76 014
C08G18/48
C08G18/44
C08G18/32 003
C08G18/65 011
C08G18/32 071
C08G18/32 025
C08G18/18
C08G18/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505050
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022069220
(87)【国際公開番号】W WO2023006394
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021119361.3
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ デルマ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ マトゥシュツィック
【テーマコード(参考)】
4J034
4L055
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA13
4J034CA15
4J034CA17
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034DF02
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC02
4J034KC07
4J034KC08
4J034KC13
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QC08
4J034RA09
4J034RA11
4L055BD05
4L055CE78
4L055CE79
4L055EA30
4L055EA32
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、プレスロール用の、特に、繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブもしくはパルプウェブを脱水するためのシュープレスのプレスロール用のプレススリーブ、またはコンベアベルト、特に、繊維ウェブを製造もしくは処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機もしくは薄葉紙抄紙機のコンベアベルトであって、プレススリーブまたはコンベアベルトは、ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含み、ポリウレタンは、プレポリマーと架橋剤成分とを反応させることによって形成され、プレポリマーは、1,4-フェニレンジイソシアネート(PPDI)と、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/または少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、架橋剤成分は、C6~14ジオールを含む、プレススリーブまたはコンベアベルトに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスロール用の、特に、繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブもしくはパルプウェブを脱水するためのシュープレスのプレスロール用のプレススリーブ、またはコンベアベルト、特に、繊維ウェブを製造もしくは処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機もしくは薄葉紙抄紙機のコンベアベルトであって、前記プレススリーブまたは前記コンベアベルトは、ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含み、前記ポリウレタンは、プレポリマーと架橋剤成分とを反応させることによって形成され、前記プレポリマーは、1,4-フェニレンジイソシアネート(PPDI)と、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/または少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、前記架橋剤成分は、C6~14ジオールを含む、プレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項2】
前記架橋剤成分が、式(I)
HO-(CH-OH (I)
によるジオールを含み、ここで、Xは、6~14の整数であり、好ましくは6、8、10、12または14である、請求項1記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項3】
前記架橋剤成分が、1,6-ヘキサンジオールを含む、請求項2記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項4】
前記架橋剤成分が、前記ポリウレタンの総重量に対して2~15重量%のC6~14ジオール、好ましくは前記一般式(I)によるジオール、特に好ましくは1,6-ヘキサンジオールを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項5】
前記架橋剤成分が、少なくとも1種のアルカノールアミンをさらに含み、前記少なくとも1種のアルカノールアミンが、有利にはC1~6アルキルモノヒドロキシモノアミン、特に好ましくはモノエタノールアミンである、請求項1から4までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項6】
前記架橋剤成分が、少なくとも1種の脂肪族ジアミンをさらに含み、前記脂肪族ジアミンが、好ましくは、エチレンジアミン(EDA)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)およびこれらの混合物からなる群から選択され、特に好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMDA)である、請求項1から5までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項7】
前記架橋剤成分が、少なくとも1種の触媒をさらに含み、前記触媒は、有利には第三級アミン化合物および/または有機金属化合物である、請求項1から6までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項8】
前記架橋剤成分が、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールをさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項9】
前記架橋剤成分が、脂肪族トリオール化合物を含まず、好ましくはトリオール化合物を含まない、請求項1から8までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項10】
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオールとしてポリテトラメチレングリコールを含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項11】
前記ポリテトラメチレングリコールが、100~10,000g/モル、好ましくは500~5,000g/モル、特に好ましくは1,000~3,000g/モル、最も好ましくは1,000~2,500g/モルの重量平均分子量を有する、請求項10記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項12】
前記架橋剤成分が、前記ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%のC6~14ジオール、
- 0.01~2重量%のアルカノールアミン、
- 0.01~2重量%の脂肪族ジアミン、
- 0.001~1重量%の第三級アミン化合物および/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオール
を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項13】
前記架橋剤成分が、前記ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%の1,6-ヘキサンジオール、
- 0.01~2重量%のC1~6アルキルモノヒドロキシモノアミン、
- 0.01~2重量%の、エチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される脂肪族ジアミン、
- 0.001~1重量%の1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタンおよび/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリエーテルポリオール
を含む、請求項12記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項14】
前記架橋剤成分が、前記ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%の1,6-ヘキサンジオール、
- 0.01~2重量%のモノエタノールアミン、
- 0.01~2重量%のヘキサメチレンジアミン、
- 0.001~1重量%の1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタンおよび/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリテトラメチレンエーテルグリコール
を含む、請求項12または13記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項15】
前記ポリオール成分が、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む、請求項1から14までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項16】
前記ポリカーボネートポリオールが、一般式(IV):
-(O-R-O-C(O))n3-O- (IV)
を有し、ここで、
は、直鎖状C~C20アルキレン基および分岐状C~C20アルキレン基から選択され、
は、少なくとも3の整数である、請求項14記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項17】
前記ポリウレタンが、脂肪族トリオール化合物を含まず、好ましくはトリオール化合物を含まない、請求項1から16までのいずれか1項記載のプレススリーブまたはコンベアベルト。
【請求項18】
繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブまたはパルプウェブを脱水するためのシュープレスであって、請求項1から17までのいずれか1項記載のプレススリーブを有するプレスロールを備えた、シュープレス。
【請求項19】
繊維ウェブを製造または処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機または薄葉紙抄紙機であって、請求項1から17までのいずれか1項記載のコンベアベルトを備えた、機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスロール用の、特に、繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブもしくはパルプウェブを脱水するためのシュープレスのプレスロール用のプレススリーブ、またはコンベアベルト、特に、繊維ウェブを製造もしくは処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機もしくは薄葉紙抄紙機のコンベアベルトであって、プレススリーブまたはコンベアベルトが、ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含む、プレススリーブまたはコンベアベルトに関する。さらに、本発明は、該プレススリーブまたはコンベアベルトの製造方法、対応するプレススリーブおよび対応するコンベアベルトに関する。
【0002】
プレスロールは、様々なプレス機で使用され、例えば、特に紙ウェブのような繊維ウェブの脱水に用いられるシュープレスのシューロールの形態で使用されている。この種のシュープレスは、シューロールおよびカウンターロールから構成され、これらの間にプレスニップが形成されている。ここで、シューロールは、固定の、すなわち回転しないプレスエレメント、すなわちシューと、シューを取り囲む可撓性のプレススリーブとからなる。通常、シューは、シューを支えるヨークによって支持され、油圧式プレスエレメントによって、シューを取り囲むプレススリーブに押圧される。ここで、通常は、潤滑のためにシューとプレススリーブとの間に油膜が形成される。シューは、カウンターロールに対向する側で凹型に設計されているため、プレスニップは比較的長くなり、2つの回転ロールからなる従来のプレスの約20倍の長さである。
【0003】
シュープレスの運転中、繊維ウェブは、1枚または2枚のプレスフェルトとともにプレスニップを通って案内され、その際、プレスニップ内で繊維ウェブに作用する圧力により繊維ウェブから出る液体は、水に加えて、例えば繊維、繊維片、フィラーおよび/または添加剤などの溶解および未溶解の化合物を含んでおり、この液体は、プレスフェルトおよびプレススリーブ表面に設けられた凹部に一時的に吸収される。プレスニップから出た後、プレススリーブに吸収された液体はプレススリーブから放出され、その後、プレススリーブは再びプレスニップに入る。また、プレスフェルトに吸収された水は、プレスニップから出た後に吸引エレメントにより除去される。シューの凹型設計によりプレスニップが比較的長いため、このようなシュープレスにより、2つの回転ロールからなるプレスと比較して、繊維ウェブのはるかにより良好な脱水が達成され、その結果、それに応じてその後の熱乾燥が短くなり得る。このようにして、繊維ウェブの特に穏やかな脱水が達成される。
【0004】
理想的には、このようなシュープレスのプレススリーブは、最適な結果を得るために多くの要件を満たさなければならない。一方では、このようなプレススリーブは、シューの周囲での案内が可能となるように十分に柔軟でなければならない。同時に、プレススリーブは、プレスニップでのプレス荷重下で過度に変形およびひずみを生じることのないように、十分に硬く剛性がなければならない。加えて、プレススリーブは、高い耐摩滅性、良好な耐摩耗性、水中での低膨潤性、ならびに他の特性、例えば、高い耐クラック性、良好な耐クラック成長性、ならびに特に水、油、酸、塩基および溶媒などの化学薬品に対する高い耐性を有する必要がある。
【0005】
これらの多様な要求を少なくとも部分的に満たすために、このようなプレススリーブは通常、繊維強化ポリウレタン、すなわち繊維レイドウェブまたは繊維織物が架橋ポリウレタンのマトリックスに埋め込まれた複合材料で構成されている。その際、単層プレススリーブおよび対応する多層プレススリーブの双方が知られている。
【0006】
国際公開第2015/086555号には、ポリウレタンを含むプレススリーブが記載されており、このポリウレタンは、フェニレンジイソシアネートおよびポリテトラメチレングリコールから形成されるプレポリマーの反応によって得られたものである。この反応は、架橋剤成分の存在下で行われ、架橋剤成分は、複数の異なる化合物のうちの1つ以上を含むことができる。
【0007】
欧州特許出願公開第2284314号明細書から、繊維織物に埋め込まれた架橋ポリウレタンの1つ以上の層で構成されているシュープレス用のプレススリーブが知られている。この場合、架橋ポリウレタンは、55~100モル%のp-フェニレンジイソシアネートを含むイソシアネート成分とポリオールとから製造されたプレポリマーと、65~100モル%の1種以上の特定のポリアミンを含む架橋剤成分との反応生成物である。ポリオールは、好ましくはポリテトラメチレングリコールである。
【0008】
欧州特許第2737124号明細書から、シュープレス用プレススリーブまたはコンベアベルトが知られており、プレススリーブまたはコンベアベルトは、架橋ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含み、架橋ポリウレタンは、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むイソシアネート成分とポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であるプレポリマーを、1,000g/モルを超える重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリオールを含む架橋剤成分と反応させるプロセスによって得ることができる。
【0009】
国際公開第2017/129328号では、シュープレス用のプレススリーブが記載されており、プレススリーブは、架橋ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含み、架橋ポリウレタンは、フェニレンジイソシアネートとポリオールとから形成されるプレポリマーから構成されており、プレポリマーは、架橋剤成分との反応により架橋されており、架橋剤成分は、1,4-ブタンジオールまたは1,4-ヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、そしてさらには脂肪族ジアミンおよびアルカノールアミンを含む。
【0010】
最後に挙げた刊行物から公知のプレススリーブは、水および化学薬品に対して比較的高い耐性を有するが、その機械的特性、特にその硬度、弾性率、耐摩滅性、耐摩耗性および水中での膨潤性について改善の余地がある。
【0011】
したがって、本発明の課題は、プレススリーブまたはコンベアベルトを提供することであり、プレススリーブまたはコンベアベルトは、改善された機械的特性、特に、改善された硬度、改善された弾性率、改善された耐摩滅性、改善された耐摩耗性および改善された水中での膨潤性を有する。
【0012】
本発明によれば、この課題は、プレスロール用の、特に、繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブもしくはパルプウェブを脱水するためのシュープレスのプレスロール用のプレススリーブ、またはコンベアベルト、特に、繊維ウェブを製造もしくは処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機もしくは薄葉紙抄紙機のコンベアベルトであって、プレススリーブまたはコンベアベルトは、ポリウレタンを含む少なくとも1つの層を含み、ポリウレタンは、プレポリマーと架橋剤成分とを反応させることによって形成され、プレポリマーは、1,4-フェニレンジイソシアネート(PPDI)と、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/または少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であり、架橋剤成分は、C6~14ジオールを含む、プレススリーブまたはコンベアベルトを提供することにより解決される。
【0013】
驚くべきことに、本発明の範囲において、PPDIと、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/または少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分との反応生成物から形成されるプレポリマーを、少なくとも1種の比較的長鎖のジオール、すなわちC6~14ジオール、例えば特に1,6-ヘキサンジオールを含む架橋剤成分で架橋することにより得られたポリウレタンの層が、1,4-ブタンジオールで架橋された対応する従来のポリウレタンの層と比較して、改善された硬度、改善された弾性率、改善された耐摩滅性、改善された耐摩耗性、ならびに水および過酸化水素中での改善された(すなわちより低い)膨潤性を有することが判明した。また、それにもかかわらず、このようなポリウレタンの層が、優れた耐クラック性、優れた耐クラック成長性、ならびに特に水、油、酸、塩基および溶媒などの化学薬品に対する高い耐性といった、他の要求される特性が良好であることを特徴とすることも驚くべきことであった。確かに、1,4-ブタンジオールおよび他の架橋剤に加えて、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールなどが、例えば4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)をベースとするポリウレタン用の可能な架橋剤として刊行物に目録のように時折挙げられているが、1,4-ブタンジオールと比較した有利な特性、ましてや1,4-ブタンジオールと比較した前述の有利な特性についての指摘は何ら含まれていない。当業者であれば、長鎖架橋剤、すなわち、特に1,6-ヘキサンジオールのようなC6~14ジオールによって、1,4-ブタンジオールと比較してハードセグメントとソフトセグメントとの分離性が悪化し、したがって、ハードセグメントの密度が低くなり、その結果、硬度が低くなり、水中での膨潤性が高くなり、それから製造されるポリウレタンの耐摩滅性が悪化することを想定するはずであるため、前述の利点は特に驚くべきものでもある。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、前述の有利な特性は、1,4-ブタンジオールよりも長鎖のC6~14ジオールによって、ポリウレタン中のハードセグメントの割合が増えることに起因すると考えられる。
【0014】
本発明によれば、プレススリーブまたはコンベアベルトのポリウレタンの架橋剤成分は、C6~14ジオール中の2つのヒドロキシル基の位置に関係なく、C6~14ジオールを含む。よって、C6~14ジオールは、末端ヒドロキシル基のみを有する対応するジオール、内部ヒドロキシル基のみを有する対応するジオール、または1つの末端ヒドロキシル基と1つの内部ヒドロキシル基とを有する対応するジオールとすることができる。
【0015】
しかし、特に、ポリウレタンの架橋剤成分が、末端ヒドロキシル基のみを有する対応するジオール、すなわち式(I)
HO-(CH-OH (I)
によるジオールを含む場合に良好な結果が得られ、ここで、xは、6~14の整数である。有利には、xは、6~12の整数であり、特に好ましくは6~10の整数であり、非常に特に好ましくは6~8の整数である。
【0016】
好ましくは、一般式(I)のxは、2の倍数の整数であり、すなわち、6、8、10、12または14である。最も好ましくは、一般式(I)のxは、6であり、すなわち、ジオールは1,6-ヘキサンジオールである。
【0017】
本発明の上記の効果を特に高レベルで得るために、架橋剤成分が、ポリウレタンの総重量に対して2~15重量%、好ましくは3~11重量%、さらに好ましくは4~10重量%、特に好ましくは5~7重量%のC6~14ジオール、好ましくは一般式(I)によるジオールを含むことが、本発明の概念の発展形態において提案される。特に、架橋剤成分が、ポリウレタンの総重量に対して2~15重量%、好ましくは3~11重量%、さらに好ましくは4~10重量%、特に好ましくは5~7重量%の1,6-ヘキサンジオールを含むことが好ましい。
【0018】
ストイキオメトリH/NCO、すなわち架橋剤成分とプレポリマーとのモル比は、有利には1.15~0.85、特に好ましくは1.1~1.0である。
【0019】
新たに架橋されたポリウレタンの粘度を、プレススリーブまたはコンベアベルトの製造に適した粘度、特にプレススリーブまたはコンベアベルトを形成するための加工性に対して十分に高い粘度に調整するために、架橋剤成分が、C6~14ジオールに加えて少なくとも1種のアルカノールアミンを含むことが、本発明の概念の発展形態において提案される。
【0020】
特に、少なくとも1種のアルカノールアミンがC1~6アルキルモノヒドロキシモノアミンである場合に、良好な結果が得られる。
【0021】
有利には、少なくとも1種のアルカノールアミンは、一般式(II):
HO-(CHn1-NH (II)
による化合物であり、ここで、nは、1~6、好ましくは1~4の整数である。
【0022】
最も好ましくは、少なくとも1種のアルカノールアミンは、モノエタノールアミンである。
【0023】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、架橋剤成分は、ポリウレタンの総重量に対して0.01~2重量%、さらに好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%のアルカノールアミンを含む。
【0024】
有利には、架橋剤成分は、架橋剤成分の総重量に対して0.01~15モル%、好ましくは5~10モル%のアルカノールアミンを含む。
【0025】
新たに架橋されたポリウレタンの粘度を、プレススリーブまたはコンベアベルトの製造に適した粘度、特にプレススリーブまたはコンベアベルトを形成するための加工性に対して十分に高い粘度に調整するために、前述のアルカノールアミンの代わりに、少なくとも1種の脂肪族ジアミンを架橋剤成分に添加することも可能である。また、所望の粘度を調整するために、架橋剤成分が少なくとも1種のアルカノールアミンと少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの双方を含むことも可能である。
【0026】
好適な脂肪族ジアミンの例は、エチレンジアミン(EDA)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ジアミンである。
【0027】
特に、少なくとも1種の脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン(HMDA)である場合に、良好な結果が得られる。
【0028】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、架橋剤成分は、ポリウレタンの総重量に対して0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の脂肪族ジアミンを含む。
【0029】
有利には、架橋剤成分は、架橋剤成分の総重量に対して0.1~10モル%、好ましくは2~8モル%の脂肪族ジアミンを含む。
【0030】
本発明の概念の発展形態において、架橋剤成分がC6~14ジオールに加えて少なくとも1種の触媒を含むことが提案される。少なくとも1種の触媒の添加は、ポリウレタンの十分に迅速な架橋を達成するために好ましく、そのため、ポリウレタンが加工時に過度に長い間液体のままとなることがなく、プレススリーブまたはコンベアベルトの表面に波形が生じることがない。架橋剤成分への触媒の添加は、架橋剤成分が、少なくとも1種のC6~14ジオールに加えて少なくとも1種のアルカノールアミンおよび/または少なくとも1種の脂肪族ジアミンを含むか否かにかかわらず好ましい。
【0031】
有利には、触媒は、少なくとも1種の第三級アミン化合物および/または少なくとも1種の有機金属化合物である。
【0032】
特に、少なくとも1種の触媒が、トリエチレンジアミン(TEDA)とも呼ばれる1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)、トリエチルアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される第三級アミン化合物である場合に、良好な結果が得られる。少なくとも1種の触媒が、ビスマス、水銀、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉛、スズ、チタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属を有する有機金属化合物を含む場合にも、同様に良好な結果が得られる。
【0033】
特に好ましくは、少なくとも1種の触媒は、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および/またはネオデカン酸ビスマスである。
【0034】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、架橋剤成分は、ポリウレタンの総重量に対して0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.5重量%、特に好ましくは0.05~0.2重量%の第三級アミン化合物および/または有機金属化合物を含む。
【0035】
有利には、架橋剤成分は、架橋剤成分の総重量に対して0.01~5モル%、好ましくは1~3モル%の第三級アミン化合物を含む。
【0036】
本発明の概念の発展形態において、架橋剤成分が、少なくとも1種のC6~14ジオールに加えて、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを含むことが提案される。この添加は、架橋剤成分が、少なくとも1種のC6~14ジオールに加えて少なくとも1種のアルカノールアミンおよび/または少なくとも1種の脂肪族ジアミンおよび/または少なくとも1種の触媒を含むか否かにかかわらず好ましい。ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールを添加することによって、ポリウレタンの硬度を微調整することができる。
【0037】
ポリエーテルポリオールの好適な例は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールおよび混合物からなる群から選択されるものである。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)が特に好ましい。
【0038】
特に、架橋剤成分が、一般式(III):
-(O-R-O-C(O))n2-O- (III)
を有する少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む場合に良好な結果が得られ、ここで、
は、直鎖状C~C20アルキレン基および分岐状C~C20アルキレン基から選択され、
は、3~30の整数である。
【0039】
代替的な一実施形態によれば、ポリカーボネートポリオールはまた、異なるアルキレン基、例えば特に2、3または4個の異なるアルキレン基を有していてもよい。例えば、ポリカーボネートポリオールは、第1のC~C20アルキレン基A、例えば直鎖状Cアルキレン基と、第1のアルキレン基とは異なる第2のC~C20アルキレン基B、例えば直鎖状Cアルキレン基とを有することができる。その場合、これら2つの基は、交互に、ブロック状に、またはランダムに、例えばABAB、AAAB、AABB、BBAAまたはBAAAのように配置することができる。
【0040】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、架橋剤成分は、ポリウレタンの総重量に対して0.1~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは1~5重量%のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを含む。
【0041】
有利には、架橋剤成分は、架橋剤成分の総重量に対して0.1~15モル%、好ましくは0.5~10モル%のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを含む。
【0042】
本発明の概念の発展形態において、架橋剤成分が、ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%のC6~14ジオール、
- 0.01~2重量%のアルカノールアミン、
- 0.01~2重量%の脂肪族ジアミン、
- 0.001~1重量%の第三級アミン化合物および/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオール
を含むことが提案される。
【0043】
特に、架橋剤成分が、ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%の1,6-ヘキサンジオール、
- 0.01~2重量%のC1~6アルキルモノヒドロキシモノアミン、
- 0.01~2重量%の、エチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される脂肪族ジアミン、
- 0.001~1重量%の1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリエーテルポリオール
を含む場合に良好な結果が得られる。
【0044】
特に好ましくは、架橋剤成分は、ポリウレタンの総重量に対して
- 2~15重量%の1,6-ヘキサンジオール、
- 0.01~2重量%のモノエタノールアミン、
- 0.01~2重量%のヘキサメチレンジアミン、
- 0.001~1重量%の1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン(DABCO)および/または有機金属化合物、ならびに
- 0.1~15重量%のポリテトラメチレンエーテルグリコール
を含む。
【0045】
本発明のさらに特に好ましい一実施形態によれば、プレススリーブまたはコンベアベルトのポリウレタンの架橋剤成分は、脂肪族トリオール化合物を含まず、好ましくはトリメチレンプロパン(TMP)のようなトリオール化合物を全く含まない。トリオール化合物の添加は、ポリウレタンの弾性率の低下、耐クラック性の低下、引裂伝播抵抗の低下および耐摩耗性の不足を招くが、これはおそらく、これらの化合物がポリウレタン中のハードセグメントの形成を妨害するためである。
【0046】
本発明によれば、プレポリマーのポリオール成分は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールおよび/または少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む。原則的に、ポリオール成分のポリエーテルポリオールは、架橋剤成分の任意のポリエーテルポリオールと同様に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールおよび混合物からなる群から選択することができる。
【0047】
本発明のさらに非常に特に好ましい一実施形態によれば、ポリオール成分は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(PTMEG)を含むか、またはポリオール成分は、完全にPTMEGからなる。PPDI、PTMEGと架橋剤としてのC6~14ジオールとの特定の組み合わせにより、プレススリーブまたはコンベアベルトのポリウレタンの硬度、弾性率、耐摩滅性、耐摩耗性および膨潤性の特に良好な改善およびバランスが得られる。
【0048】
特に、PTMEGが100~10,000g/モル、好ましくは500~5,000g/モル、特に好ましくは1,000~3,000g/モル、最も好ましくは1,000~2,500g/モルの重量平均分子量を有する場合に良好な結果が得られる。分子量は、ポリスチレン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。しかし、本発明によれば、構造単位の重量平均分子量を、水酸基価により、すなわち、1gの物質をアセチル化する際に結合した酢酸の量に相当するミリグラム単位の水酸化カリウムの量により決定することが好ましい。水酸基価は、DIN 53240に準拠した逆滴定によって決定することができ、mg KOH/g単位で与えられる。重量平均分子量は、112,200を水酸基価で割って求めることができる。
【0049】
ポリオール成分がポリエーテルポリオール、好ましくはポリテトラメチレングリコールとポリカーボネートポリオールとの混合物を含む場合にも良好な結果が得られ、特に好ましいのは、ポリエーテルポリオール、好ましくはポリテトラメチレングリコールとポリカーボネートポリオールとの混合物である。
【0050】
有利には、ポリオール成分のポリカーボネートポリオールは、それが単独で使用されるかポリエーテルポリオールと混合して使用されるかにかかわらず、一般式(IV):
-(O-R-O-C(O))n3-O- (IV)
のものであり、ここで、
は、直鎖状C~C20アルキレン基および分岐状C~C20アルキレン基から選択され、
は、少なくとも3の整数である。
【0051】
代替的な一実施形態によれば、ポリカーボネートポリオールはまた、異なるアルキレン基、例えば特に2、3または4個の異なるアルキレン基を有していてもよい。例えば、ポリカーボネートポリオールは、第1のC~C20アルキレン基A、例えば直鎖状Cアルキレン基と、第1のアルキレン基とは異なる第2のC~C20アルキレン基B、例えば直鎖状Cアルキレン基とを有することができる。その場合、これら2つの基は、交互に、ブロック状に、またはランダムに、例えばABAB、AAAB、AABB、BBAAまたはBAAAのように配置することができる。
【0052】
有利には、ポリウレタンのH/NCO比は、1.1~1.0である。
【0053】
耐摩耗性をさらに高めるために、添加物質としてのシリコーン油を、ポリウレタンの総重量に対して0.1~3重量%、好ましくは0.5~1.5重量%の量でポリウレタンに添加することもできる。
【0054】
上記の理由から、架橋剤成分だけでなくポリウレタン自体も脂肪族トリオール化合物を含まず、好ましくはトリオール化合物を含まないことが好ましい。
【0055】
さらに、プレススリーブまたはコンベアベルトのポリウレタン層、および複数のポリウレタン層が存在する場合にはすべてのポリウレタン層が、1種のみのポリウレタンを含み、すなわち、プレポリマーから該プレポリマーと架橋剤成分との反応によって形成されたポリウレタンのみを含むことが好ましい。
【0056】
本発明によるプレススリーブまたは本発明によるコンベアベルトは、単層または二層に設計されていてよい。二層構成の場合、少なくとも外層は前述のポリウレタンで構成される。
【0057】
本発明の概念の発展形態において、プレススリーブまたはコンベアベルトを二層で構成し、その際、外層が、前述のポリウレタンで構成され、内層が、別のポリウレタンで構成され、内層のポリウレタンが、マトリックスを形成し、このマトリックスに繊維レイドウェブまたは繊維織物が埋め込まれていることが提案される。
【0058】
本発明のさらなる主題は、繊維ウェブ、特に紙ウェブ、板紙ウェブ、薄葉紙ウェブまたはパルプウェブを脱水するためのシュープレスであって、前述のプレススリーブを備えたシュープレスである。
【0059】
さらに、本発明は、繊維ウェブを製造または処理するための機械、特に抄紙機、板紙抄紙機または薄葉紙抄紙機であって、前述のコンベアベルトを備えた機械に関する。
【0060】
最後に、本発明は、前述のプレススリーブまたはコンベアベルトの製造方法であって、以下:
a)少なくとも1つの、回転可能に取り付けられた巻取りマンドレルを提供する工程と、
b)前述の架橋剤成分を提供する工程と、
c)PPDIと前述のポリオール成分との反応生成物としてのプレポリマーを提供する工程と、
d)プレポリマーと架橋剤成分とを混合してポリウレタンを製造する工程と、
e)プレポリマーと架橋剤との混合物を巻取りマンドレルの表面に広げて、プレススリーブまたはコンベアベルトの少なくとも1つのポリマー層を形成する工程と、
f)少なくとも1つのポリマー層を硬化させる工程と、
g)このようにして製造されたプレススリーブまたはコンベアベルトを巻取りマンドレルから取り外す工程と
を含む方法に関する。
【0061】
以下に、有利な実施形態をもとに添付の図面を参照して、本発明を単に例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明の一実施形態例によるプレススリーブを備えたシュープレスの概略図である。
図2】本発明の一実施形態例によるシュープレスとコンベアベルトとを備えた抄紙機のプレスセクションの概略図である。
【0063】
図1にシュープレス10を示すが、ここで、シュープレス10は、シューロール12とカウンターロール14とを備えている。カウンターロール14が回転する円筒ロールからなるのに対し、シューロール12は、シュー16と、シュー16を支持する静止ヨーク18と、プレススリーブ20とで構成されている。ここで、シュー16は、ヨーク18によって支持され、油圧式プレスエレメント(図示せず)によって、シュー16を取り囲むプレススリーブ20に押圧される。シュー16は、カウンターロール14に対向する側で凹型に設計されているため、プレスニップ22は、比較的長くなる。
【0064】
シュープレス10は、特に紙ウェブのような繊維ウェブ24の脱水に適している。シュープレスの運転中、繊維ウェブ24は、1枚または2枚のプレスフェルト26,26’とともにプレスニップ22を通って案内され、その際、プレスニップ22内で繊維ウェブ24に作用する圧力により繊維ウェブ24から出る液体は、水に加えて、例えば繊維、繊維片、フィラーおよび/または添加剤などの溶解および未溶解の化合物を含んでおり、この液体は、プレスフェルト26,26’や、プレススリーブ表面に設けられた凹部(図示せず)に一時的に吸収される。プレスニップ22から出た後、プレススリーブ20に吸収された液体はプレススリーブ20から放出され、その後、プレススリーブ20は再びプレスニップ22に入る。また、プレスフェルト26,26’に吸収された水は、プレスニップ22から出た後に吸引エレメントにより除去される。
【0065】
シュー16のカウンターロール14に対向する側での凹型設計によりプレスニップ22が比較的長いため、このようなシュープレス10により、2つの回転ロールからなるプレスと比較して、繊維ウェブ24の著しくより良好な脱水が達成され、その結果、それに応じてその後の熱乾燥が短くなり得る。このようにして、繊維ウェブ24の特に穏やかな脱水が達成される。
【0066】
図2に、シュープレス10を備えた抄紙機のプレスセクションの断面を示す。ここで、図1に示す実施形態と同様に、シュープレス10は、プレススリーブ20およびプレスエレメントまたはシュー16を有するシューロール12と、カウンターロール14とを備え、シュー16とカウンターロール14との間にプレスニップが形成されている。さらに、抄紙機のこの部分は、2つの吸引ロール28,28’および2つの偏向ロール30、30’を備えている。抄紙機の運転中、吸引ロール28,28’によって案内されるフェルト26は、吸引ロール28で繊維ウェブ24をピックアップし、プレスニップを通って案内される。さらに、繊維ウェブ24を案内するフェルト26の下方で、偏向ロール30,30’によって案内されるコンベアベルトまたは搬送ベルト32がプレスニップを通って案内され、その際、搬送ベルト32は、プレスニップにおいてフェルト26から繊維ウェブ24を引き継ぎ、偏向ロール30’によりプレスニップから除去する。プレスニップ内で繊維ウェブ24に作用する圧力により、繊維ウェブから液体が排出され、この液体は、水に加えて、例えば繊維、繊維片、フィラーおよび/または添加剤などの溶解および未溶解の化合物を含んでおり、この液体は、フェルト26およびプレススリーブ表面に設けられた凹部に一時的に吸収される。プレスニップから出た後、プレススリーブ20に吸収された液体はプレススリーブ20から放出され、その後、プレススリーブ20は再びプレスニップに入る。また、フェルト26に吸収された水は、プレスニップから出た後に吸引ロール28’に設けられた吸引エレメントにより除去される。シュー16の凹型設計によりプレスニップが比較的長いため、このようなシュープレスにより、2つの回転ロールからなるプレスと比較して、繊維ウェブ24の著しく良好な脱水が達成され、その結果、それに応じてその後の熱乾燥が短くなり得る。このようにして、繊維ウェブ24の特に穏やかな脱水が達成される。
【0067】
以下に、有利な実施形態をもとに以下の単なる説明のための非限定的な実施例を参照して、本発明を単に例示的に説明する。
【0068】
実施例1
プレポリマーとして、NCO含量が5.6%であるPPDIとPTMEGとのプレポリマーであるLanxess AG(ドイツ、ケルン)社製の市販品LFP E560を使用した。
【0069】
さらに、架橋剤成分を以下の組成で製造した:
84.9モル%の1,6-ヘキサンジオール(架橋剤成分の72.3重量%に相当)、
1.3モル%のPTMEG、2000g/モル(架橋剤成分の19.4重量%に相当)、
1.6モル%のDABCO(架橋剤成分の1.3重量%に相当)、
8.0モル%のモノエタノールアミン(架橋剤成分の3.5重量%に相当)、
4.2モル%のヘキサメチレンジアミン(架橋剤成分の3.5重量%に相当)。
【0070】
公知であり、例えば独国特許出願公開第102017115084号明細書に記載されているように、プレススリーブを、回転可能な巻取りマンドレルによって製造し、この巻取りマンドレルにおいて、プレポリマーおよび架橋剤成分を、混合チャンバおよびその下流にキャスティングノズルを備えたキャスティング装置に互いに別々に供給し、プレポリマーおよび架橋剤成分を、混合チャンバにおいて連続的に互いに混合し、このようにして製造した混合物を、次いでキャスティングノズルにより、回転する巻取りマンドレルに連続的に施与した。ここで、プレポリマーおよび架橋剤成分を、プレポリマー100g当たり9.89gの架橋剤成分の比で互いに混合した。
【0071】
さらに、ポリウレタンの特性を測定するために、プレポリマーおよび架橋剤成分を互いに混合し、このようにして製造した混合物を、次いでキャスティングしてシート状にすることによってポリウレタンシートを製造した。ショアA硬さ(DIN 53505-Aに準拠して測定)、加水分解後のショアA硬さ、mm単位での摩耗値(DIN 53516に準拠して測定)、mm単位での加水分解後の摩耗値、%単位での水中での重量増加、過酸化水素中での重量増加、N/mm単位での弾性率(E-Modul)(DIN 53504に準拠して測定)およびN/mm単位でのF(10%)(DIN 53504に準拠して測定)を測定した。測定結果を以下の表にまとめる。
【0072】
比較例1
以下の架橋剤成分を使用したこと以外は、実施例1と同じ手順で行った:
84.9モル%の1,2-エチレングリコール、
1.3モル%のPTMEG、2000g/モル、
1.6モル%のDABCO、
8.0モル%のモノエタノールアミン、
4.2モル%のヘキサメチレンジアミン。
【0073】
測定結果を以下の表にまとめる。
【0074】
比較例2
以下の架橋剤成分を使用したこと以外は、実施例1と同じ手順で行った:
84.9モル%の1,4-ブタンジオール、
1.3モル%のPTMEG、2000g/モル、
1.6モル%のDABCO、
8.0モル%のモノエタノールアミン、
4.2モル%のヘキサメチレンジアミン。
【0075】
測定結果を以下の表にまとめる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【符号の説明】
【0078】
10 シュープレス
12 シューロール
14 カウンターロール
16 シュー
18 静止ヨーク
20 プレススリーブ
22 プレスニップ
24 繊維ウェブ
26,26’ プレスフェルト
28,28’ 吸引ロール
30,30’ 偏向ロール
32 コンベアベルト/搬送ベルト
図1
図2
【国際調査報告】