(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】安定化された眼内薬物送達システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240711BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505112
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022038566
(87)【国際公開番号】W WO2023009654
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522336096
【氏名又は名称】スパイグラス ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPYGLASS PHARMA,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】ケーブル ザ セカンド、クレイグ アラン
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】マース、ショーン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC05
4C097SA05
(57)【要約】
開示される実施形態は、概して対象の眼内への埋め込みのための安定化された眼内薬物送達システムに関する。システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含むことができる。IOLアセンブリは、レンズとハプティックとを含むことができる。ハプティックは、外側端部と、外側端部の反対側の内側端部と、内側端部にある保持タブと、外側端部と内側端部との間に位置決めされ、レンズに隣接する接続タブとを含むことができる。薬物送達構成要素は、少なくとも1つの治療剤と、ハプティックを受容するとともに、薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定するための開口を有する固定部とを含むことができる。薬物送達構成要素の固定部は、保持タブがIOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、ハプティックの接続タブに固定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の眼内への埋め込みのために構成された、安定化された眼内薬物送達システムであって、
眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含み、
前記IOLアセンブリは、レンズと、該レンズから外向きに延びるハプティックとを含み、前記ハプティックは、前記薬物送達構成要素に係合するように構成され、前記ハプティックは、外側端部と、前記外側端部の反対側の内側端部と、前記内側端部における保持タブと、前記外側端部と前記内側端部との間に位置決めされるとともに、前記レンズに隣接する接続タブとを含み、
前記薬物送達構成要素は、治療剤と、前記ハプティックを受容するとともに、前記薬物送達構成要素を前記IOLアセンブリに固定するようなサイズ及び寸法の開口を有する固定部とを含み、
前記薬物送達構成要素の前記固定部は、前記保持タブが前記IOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、前記ハプティックの前記接続タブに固定されるように構成されている、眼内薬物送達システム。
【請求項2】
前記薬物送達構成要素は、1つ以上の治療剤を含む薬物送達パッドをさらに含み、前記固定部は前記薬物送達パッドに隣接している、請求項1に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項3】
前記薬物送達構成要素の前記固定部は、一対の構造体及びバンドを含み、前記一対の構造体は、前記薬物送達パッドから延びており、前記一対の構造体は、前記開口を形成するように前記バンドによって接続されている、請求項2に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項4】
前記薬物送達構成要素が前記ハプティックの前記接続タブに固定される場合、前記一対の構造体のうちの一方は、前記保持タブ、前記接続タブの第1の表面、及び前記レンズの第1の部分と境界をなしている、請求項3に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の眼内薬物送達システムであって、前記接続タブは、前記保持タブに隣接する第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面とを含み、前記第2の表面は、前記ハプティックの一部分に隣接し、
前記ハプティックは、該ハプティックの前記一部分に形成されたガセットをさらに含み、前記ガセットは、前記IOLアセンブリに対する前記薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、前記薬物送達構成要素の少なくとも一部分と相互作用するように構成されている、眼内薬物送達システム。
【請求項6】
前記薬物送達構成要素の前記一部分は、前記固定部の一対の構造体のうちの1つを含む、請求項5に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項7】
前記薬物送達構成要素の前記固定部の前記開口は、略矩形の断面を画定する、請求項1に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項8】
前記接続タブは、前記保持タブに隣接する第1の表面と、該第1の表面の反対側の第2の表面とを含み、前記第2の表面は、前記ハプティックの一部分に隣接し、第1及び第2の表面は湾曲するとともに、ウエスト部を画定している、請求項1に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項9】
前記ウエスト部は、前記接続タブの最も狭い部分である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項10】
前記保持タブは、前記接続タブから張り出している、請求項1に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項11】
前記安定化された眼内薬物送達システムは、前記対象の前記眼の水晶体嚢又は毛様溝に埋め込まれるサイズ及び形状である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項12】
対象の眼内への埋め込みのために構成された、安定化された眼内薬物送達システムであって、
眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含み、
前記IOLアセンブリは、レンズと、該レンズから外向きに延びるハプティックとを含み、前記ハプティックは、前記薬物送達構成要素に係合するように構成され、前記ハプティックは、外側端部と、該外側端部の反対側の内側端部と、前記外側端部と前記内側端部との間に位置決めされるとともに前記レンズに隣接する接続タブとを含み、
前記薬物送達構成要素は、薬物送達パッドと、該薬物送達パッドに結合された固定部とを含み、前記薬物送達パッドは、1つ以上の治療剤を含み、前記固定部は、前記薬物送達パッドから延びる第1及び第2の構造体と、前記第1及び第2の構造体に結合されたバンドと、前記薬物送達パッド、前記第1及び第2の構造体、並びに前記バンドとの間に形成された開口とを含み、前記開口は、前記ハプティックを受容するとともに、前記薬物送達構成要素を前記IOLアセンブリに固定するようなサイズ及び寸法であり、前記第1及び第2の構造体は、互いに異なる形状であり、
前記薬物送達構成要素の前記固定部は、前記IOLアセンブリに対する前記薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、前記ハプティックの前記接続タブに固定されるように構成されている、眼内薬物送達システム。
【請求項13】
前記ハプティックの前記内側端部は自由であり、前記接続タブから張り出している、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項14】
前記ハプティックの前記内側端部は、前記接続タブから張り出している保持タブを含み、該保持タブは、前記薬物送達構成要素の前記固定部の前記第1及び第2の構造体のうちの1つと相互作用するための湾曲表面を含む、請求項13に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項15】
軸線が、前記第1の構造体から前記バンドを通って前記第2の構造体まで延び、前記第1の構造体は、前記軸線に対して角度を付けられた本体を含む、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項16】
前記第1の構造体の前記本体は楕円形である、請求項15に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項17】
前記固定部の開口は、断面が略矩形である、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項18】
前記固定部は、ポリマーから形成されている、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項19】
前記ハプティックの前記内側端部は、前記接続タブから張り出す保持タブを含み、前記接続タブは、前記保持タブに隣接する第1の表面と、該第1の表面の反対側の第2の表面とを含み、前記第2の表面は、前記ハプティックの一部分に隣接し、第1及び第2の表面は、湾曲するとともにウエスト部を画定する、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項20】
前記ウエスト部は、前記接続タブの最も狭い部分である、請求項19に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項21】
前記薬物送達パッドおよび前記固定部のうちの少なくとも1つが、内部に治療剤を含む、請求項12に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項22】
前記安定化された眼内薬物送達システムは、前記対象の前記眼の水晶体嚢又は毛様溝に埋め込まれるサイズ及び形状である、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項23】
対象の眼内への埋め込みのために構成された、安定化された眼内薬物送達システムであって、
眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含み、
前記IOLアセンブリは、ハプティック及び光学部を含み、前記ハプティックは、光学部-ハプティック接合部において前記光学部から外向きに延び、前記ハプティックは、前記光学部-ハプティック接合部においてウエスト部を画定する一対の窪みを含み、
前記薬物送達構成要素は、治療剤と、前記ハプティックを受容するとともに、前記薬物送達構成要素を前記IOLアセンブリに固定するようなサイズ及び寸法の開口を有する固定部とを含み、前記薬物送達構成要素の前記固定部は、前記IOLアセンブリに対する前記薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、前記ハプティックの前記ウエスト部に固定されるように構成されている、眼内薬物送達システム。
【請求項24】
前記一対の窪みは、互いに反対側の表面上に位置決めされている、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項25】
前記一対の窪みの各々は凹面を含む、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項26】
前記ハプティックは、外側端部と、該外側端部の反対側の内側端部と、該内側端部における保持タブとをさらに含み、前記光学部-ハプティック接合部は、前記内側端部と前記外側端部との間に位置決めされている、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項27】
前記保持タブは、前記一対の窪みのうちの1つを画定するように前記ウエスト部から張り出している、請求項26に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項28】
前記ハプティックは、後面と、該後面の反対側の前面と、第1の側端部と、該第1の側端部の反対側の第2の側端部とを含み、前記第1及び第2の側端部は、前記後面と前記前面との間に延び、前記一対の窪みのうちの第1の窪みは、前記第1の側端部上に画定され、前記一対の窪みのうちの第2の窪みは、前記第2の側端部上に画定されている、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項29】
前記固定部はポリマーから形成されている、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項30】
前記薬物送達構成要素は、薬物送達パッドをさらに含み、前記治療剤は、前記薬物送達パッド及び前記固定部のうちの少なくとも1つに含まれる、請求項23に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項31】
対象の眼内への埋め込みのために構成された、安定化された眼内薬物送達システムであって、
眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含み、
前記IOLアセンブリは、光学部と、光学部-ハプティック接合部において前記光学部から外向きに延びるハプティックとを含み、前記ハプティックは、前面と、該前面の反対側の後面と、前記光学部-ハプティック接合部における前記後面上又は前記前面上の第1の窪みとを含み、
前記薬物送達構成要素は、治療剤と、前記ハプティックを受容するようなサイズ及び形状の開口を有する固定部とを含み、前記薬物送達構成要素の前記固定部は、前記IOLアセンブリに対する前記薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、前記光学部-ハプティック接合部の前記第1の窪みで前記ハプティックに固定されるように構成されている、眼内薬物送達システム。
【請求項32】
前記第1の窪みは前記後面上にあり、前記ハプティックは前記前面上にある第2の窪みをさらに含む、請求項31に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項33】
前記ハプティックは、前記前面と前記後面との間に延びる第1の側端部と、前記第1の側端部の反対側にあり、前記前面と前記後面との間に延びる第2の側端部とをさらに含み、前記第1の側端部は、前記光学部-ハプティック接合部に第2の窪みを含み、前記第2の側端部は、前記光学部-ハプティック接合部に第3の窪みを含む、請求項31に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項34】
前記第2及び第3の窪みの各々は凹面を含む、請求項33に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項35】
前記ハプティックは、外側端部と、該外側端部の反対側の内側端部と、該内側端部における保持タブとをさらに含み、前記光学部-ハプティック接合部は、前記内側端部と前記外側端部との間に位置決めされている、請求項31に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項36】
前記固定部はポリマーから形成されている、請求項31に記載の眼内薬物送達システム。
【請求項37】
前記薬物送達構成要素は、薬物送達パッドをさらに含み、前記治療剤は、前記薬物送達パッド及び前記固定部のうちの少なくとも1つに含まれる、請求項31に記載の眼内薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内薬物送達システム、眼内薬物送達システムの埋め込み及び安定化、並びに使用方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズ(IOL:Intraocular Lens)は、生来の水晶体が除去された後に患者の眼の生来の水晶体を置換するために埋め込むことができる眼用の人工レンズである。例として、患者の生来の水晶体は、白内障に冒されているために除去される可能性があり、患者に鮮明な視力及びある程度の焦点合わせを提供するためにIOLを埋め込むことができる。また、眼内レンズは、極端な近視又は遠視を矯正するために、生来の水晶体(有水晶体眼内レンズ又はPIOL)を除去することなく患者に埋め込むことができる。
【0003】
例えば、IOLの埋め込みと同時に眼に治療剤を投与して、IOLの種々の副作用を軽減するか、又は例えば白内障及び緑内障をもたらす状態と同時に存在し得る眼の他の状態を処置することが有利であり得る。既存の状態又はIOLの導入の副作用(例えば、感染及び炎症)は、IOL又はIOLに固定され得る他のデバイスに組み込まれた治療剤で処置され得る。IOLに加えて、レンズを含まない眼用インプラントが、様々な状態に対処するために埋め込まれ得る。
【0004】
以前の試みは、IOLのハプティック上への薬物送達構成要素の配置を含む、IOLと併せて使用される薬物送達構成要素の様々な構成を開示している。以下に説明されるデバイス及び方法は、薬物送達構成要素をIOLに固定するためのより効率的かつ/又は堅牢なアプローチ、並びに関連する薬物送達システムを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本開示のある態様は、対象の眼内に埋め込むことができる安定化された眼内薬物送達システムを含む。これらの態様によれば、システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含むことができる。IOLアセンブリは、レンズと、レンズから外向きに延びるハプティックとを含むことができる。ハプティックは、薬物送達構成要素に係合することができ、ハプティックは、外側端部と、外側端部の反対側の内側端部と、内側端部にある保持タブと、外側端部と内側端部との間に位置決めされ、レンズに隣接する接続タブとを含むことができる。保持タブは、接続タブから張り出すことができる。薬物送達構成要素は、治療剤と、ハプティックを受容し、薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定するようなサイズ及び寸法の開口を有する固定部とを含むことができる。薬物送達構成要素の固定部は、保持タブがIOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動き又は移動を抑制すべく、ハプティックの接続タブに固定することができる。
【0006】
一実施形態では、薬物送達構成要素は、1つ以上の治療剤を含む薬物送達パッド又は薬物パッドをさらに含むことができる。固定部は、薬物送達パッドに隣接することができる。
【0007】
一実施形態では、薬物送達構成要素の固定部は、一対の構造体及びバンドを含む。一対の構造体は、薬物送達パッドから延びることができる。一対の構造体は、バンドによって接続されて開口を形成することができる。
【0008】
一実施形態では、薬物送達構成要素がハプティックの接続タブに固定される場合、一対の構造体のうちの一方は、保持タブ、接続タブの第1の表面、及びレンズの第1の部分と境界をなしている。
【0009】
一実施形態では、接続タブは、保持タブに隣接する第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを含む。第2の表面は、ハプティックの一部分に隣接することができる。ハプティックは、ハプティックの一部分に形成されたガセットをさらに含むことができる。ガセットは、IOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動き又は移動を抑制すべく、薬物送達構成要素の少なくとも一部分と相互作用することができる。
【0010】
一実施形態では、薬物送達構成要素の一部分は、固定部の一対の構造体のうちの1つを含むことができる。
一実施形態では、薬物送達構成要素の固定部の開口は、略矩形の断面を画定する。
【0011】
一実施形態では、接続タブは、保持タブに隣接する第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを含む。第2の表面は、ハプティックの一部分に隣接することができる。第1及び第2の表面は湾曲していてもよく、ウエスト部を画定してもよい。他の実施形態では、ウエスト部は、接続タブの最も狭い部分である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ハプティックは、第1のハプティック及び第2のハプティックを含む。
一実施形態では、安定化された眼内薬物送達システムは、眼の水晶体嚢又は毛様溝に埋め込まれるサイズ及び形状であり得る。
【0013】
本開示の態様は、対象の眼に埋め込むことができる安定化された眼内薬物送達システムを含むことができる。システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含むことができる。IOLアセンブリは、レンズと、レンズから外向きに延びるハプティックとを含むことができる。ハプティックは、薬物送達構成要素に係合することができ、ハプティックは、外側端部と、外側端部の反対側の内側端部と、外側端部と内側端部との間に位置決めされ、かつレンズに隣接する接続タブとを含むことができる。薬物送達構成要素は、薬物送達パッドと、薬物送達パッドに結合された固定部とを含むことができる。薬物送達パッドは、1つ以上の治療剤を含むことができる。固定部は、薬物送達パッドから延びる第1及び第2の構造体と、第1及び第2の構造体に結合されたバンドと、薬物送達パッド、第1及び第2の構造体、及びバンドとの間に形成された開口とを含むことができる。開口は、ハプティックを受容し、薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定するようなサイズ及び寸法であり得る。第1及び第2の構造体は、互いに異なる形状であり得る。薬物送達構成要素の固定部は、IOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動き又は移動を抑制すべく、ハプティックの接続タブに固定することができる。
【0014】
一実施形態では、ハプティックの内側端部は自由であり、接続タブから張り出している。
一実施形態では、ハプティックの内側端部は、接続タブから張り出している保持タブを含む。保持タブは、薬物送達構成要素の固定部の第1及び第2の構造体のうちの少なくとも1つと相互作用するための湾曲表面を含むことができる。
【0015】
一実施形態では、軸線は、第1の構造体から、バンドを通って、第2の構造体まで延びる。第1の構造体は、軸線に対して角度を付けられた本体を含む。
一実施形態では、第1の構造体の本体は楕円形である。
【0016】
一実施形態では、固定部の開口は、断面が略矩形である。
一実施形態では、固定部は、ポリマーから形成され得るか、又はポリマーであり得る。
一実施形態では、ハプティックの内側端部は、接続タブから張り出している保持タブを含み、接続タブは、保持タブに隣接する第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを含む。第2の表面は、ハプティックの一部分に隣接することができる。第1及び第2の表面は湾曲していてもよく、ウエスト部を画定してもよい。一実施形態では、ウエスト部は、接続タブの最も狭い部分である。
【0017】
一実施形態では、ハプティックは、第1のハプティック及び第2のハプティックを含む。
一実施形態では、安定化された眼内薬物送達システムは、対象の眼の水晶体嚢又は毛様溝に埋め込まれるようなサイズ及び形状であり得る。
【0018】
一実施形態では、本開示は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素を含む眼内薬物送達システムに関し、眼用インプラント及び薬物送達構成要素は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素の相対的な動きを安定化させる構成で接続される。一実施形態では、眼用インプラントは、眼内レンズアセンブリであり得る。
【0019】
本開示の態様は、安定化された眼内薬物送達システムを含むことができる。これらの態様によれば、眼内薬物送達システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含む。IOLアセンブリは、レンズと、レンズの平面から外向きに延び、薬物送達構成要素に係合するように構成されたハプティックとを含み、IOLアセンブリは対象の眼の中への埋め込みのために構成されている。薬物送達構成要素は、治療剤と、ハプティックを受容し、薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定するようなサイズ及び形状の開口を有する固定部とを含む。一実施形態では、ハプティックは、ハプティック上に保持タブを含み、保持タブは、レンズへのハプティックの接合部に内側部分を提供するために、外側表面及び内側表面を有する。ハプティックは、ハプティックの光学部/レンズへの接合部において、内側部分の反対側の表面上にガセットをさらに含む。いくつかの実施形態では、薬物送達構成要素の固定部、並びにハプティックの保持タブ、内側部分、及びガセットは、眼用インプラント及び薬物送達構成要素の相対的な動きを安定化させるやり方で、薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、眼内レンズアセンブリ又は他の眼内インプラントへの薬物送達構成要素の取付けは、解放可能又は解放不可能な手段によって達成することができ、IOLアセンブリの製造時に、埋め込みの直前もしくは直後に周術期に、又はIOLアセンブリが埋め込まれるときと同じ手順で術中に達成することができる。
【0021】
一実施形態では、薬物送達構成要素は、第1及び第2の薬物送達構成要素を含むことができ、第1の薬物送達構成要素内への第2の薬物送達構成要素の配置を可能にするように構成することができる。第1の薬物送達構成要素内への第2の薬物送達構成要素の配置は、IOLアセンブリの製造時に、埋め込みの直前又は直後に周術期に、術中に、又はIOLアセンブリが埋め込まれるのと同じ手順で達成され得る。第1及び/又は第2の薬物送達構成要素は消耗されやすく、消耗したときにはIOLアセンブリが最初に挿入される手術のかなり後に達成され得る手術において除去及び交換され得る。
【0022】
本開示の態様は、対象の眼への埋め込みのために構成された、安定化された眼内薬物送達システムを含む。システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含むことができる。IOLアセンブリは、ハプティック及び光学部を含むことができる。ハプティックは、光学部-ハプティック接合部において光学部から外向きに延びることができる。ハプティックは、光学部-ハプティック接合部においてウエスト部を画定する一対の窪みを含むことができる。薬物送達構成要素は、1つ以上の治療剤と、薬物送達構成要素を通してハプティックを受容するようなサイズ及び形状の開口を有する固定部とを含むことができる。薬物送達構成要素の固定部は、IOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、ハプティックのウエスト部に固定されるように構成されている。
【0023】
一実施形態では、一対の窪みは、互いに反対側の表面上に位置決めされることができる。一実施形態では、一対の窪みの各々は、凹面を含む。
一実施形態では、ハプティックは、外側端部と、外側端部の反対側の内側端部と、内側端部における保持タブとをさらに含む。光学部-ハプティック接合部は、内側端部と外側端部との間に位置決めされることができる。
【0024】
一実施形態では、保持タブは、窪みの対のうちの1つを画定するようにウエスト部から張り出す。
一実施形態では、ハプティックは、後面と、後面の反対側の前面と、第1の側端部と、第1の側端部の反対側の第2の側端部とを含む。第1及び第2の側端部は、後面と前面との間に延びることができ、一対の窪みのうちの第1の窪みは、第1の側端部上に画定され、一対の窪みのうちの第2の窪みは、第2の側端部上に画定される。
【0025】
一実施形態では、固定部は、ポリマー又は他の好適な材料から形成される。
一実施形態では、薬物送達構成要素は、薬物送達パッドをさらに含む。他の実施形態では、1つ以上の治療剤が、薬物送達パッド及び固定部のうちの少なくとも1つに含まれる。いくつかの実施形態では、薬物送達パッド及び固定部は、同じ又は異なる治療剤である1つ以上の治療剤を含むことができる。
【0026】
本開示の態様は、対象の眼に埋め込まれるために構成された、安定化された眼内薬物送達システムを含むことができる。システムは、眼内レンズ(IOL)アセンブリ及び薬物送達構成要素を含むことができる。IOLアセンブリは、光学部と、光学部-ハプティック接合部において光学部から外向きに延びるハプティックとを含むことができる。ハプティックは、前面と、前面の反対側の後面と、光学部-ハプティック接合部における後面上又は前面上の第1の窪みとを含むことができる。薬物送達構成要素は、1つ以上の治療剤と、薬物送達構成要素を通してハプティックを受容するようなサイズ及び形状の開口を有する固定部とを含むことができる。薬物送達構成要素の固定部は、IOLアセンブリに対する薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、光学部-ハプティック接合部の第1の窪みでハプティックに固定されるように構成されている。
【0027】
一実施形態では、第1の窪みは後面上にあり、ハプティックは前面上に第2の窪みをさらに含む。
一実施形態では、ハプティックは、前面と後面との間に延びる第1の側端部と、第1の側端部の反対側にあり、前面と後面との間に延びる第2の側端部とをさらに含む。第1の側端部は、光学部-ハプティック接合部に第2の窪みを含むことができ、第2の側端部は、光学部-ハプティック接合部に第3の窪みを含むことができる。
【0028】
一実施形態では、第2及び第3の窪みの各々は凹面を含む。
一実施形態では、ハプティックは、外側端部と、外側端部の反対側の内側端部と、内側端部における保持タブとをさらに含む。光学部-ハプティック接合部は、内側端部と外側端部との間に位置決めされることができる。
【0029】
一実施形態では、固定部は、ポリマー又は他の好適な材料から形成される。
一実施形態では、薬物送達構成要素は、薬物送達パッドをさらに含み、1つ以上の治療剤が、薬物送達パッド及び固定部のうちの少なくとも1つに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の眼内薬物送達システムの使用環境を示す。
【
図2】本開示の眼内薬物送達システムの使用環境を示す。
【
図3A】本開示の実施形態による、眼内薬物送達システムの上面図を示す。
図3Aは、IOLアセンブリに取り付けられた、より小さい薬物送達構成要素を示す。
【
図3B】本開示の実施形態による、眼内薬物送達システムの上面図を示す。
図3Bは、IOLアセンブリに取り付けられた、より大きい薬物送達構成要素を示す。
【
図3C】IOLアセンブリに取り付けられた、より大きい薬物送達構成要素を有する
図3Bの眼内薬物送達システムの斜視図を示す。
【
図3D】IOLアセンブリに取り付けられた、より大きい薬物送達構成要素を有する
図3Bの眼内薬物送達システムの底面図を示す。
【
図4A】本開示の実施形態による、IOLアセンブリの図を示す。
図4Aは、本開示の改善されたハプティック構成を有するIOLアセンブリの斜視図を示す。
【
図4B】本開示の実施形態による、IOLアセンブリの図を示す。
図4Bは、本開示の改善されたハプティック構成を有するIOLアセンブリの上面図を示す。
【
図4C】本開示の実施形態による、IOLアセンブリの図を示す。
図4Cは、IOLアセンブリのハプティック-光学部接合におけるレリーフカットアウトの底面図を示す。
【
図4D】本開示の実施形態による、IOLアセンブリの図を示す。
図4Dは、
図4Bのレリーフカットの断面図を示す。
【
図5A】本開示の実施形態による、薬物送達構成要素の斜視図を示す。
【
図5B】本開示の実施形態による、薬物送達構成要素の底面図を示す。
【
図5C】本開示の実施形態による、薬物送達構成要素の側面図を示す。
【
図5D】本開示の実施形態による、送達パッドが図から除去された、薬物送達構成要素の固定部の上面図を示す。
【
図6A】本開示の実施形態による眼内薬物送達システムの図を示す。
図6Aは、例示的な眼内薬物送達システムの上面図を示し、
図6C及び
図6Dの断面カットを示す。
【
図6B】本開示の実施形態による眼内薬物送達システムの図を示す。
図6Bは、
図6Aのシステムの部分側面図を示す。
【
図6C】本開示の実施形態による眼内薬物送達システムの図を示す。
図6Cは、示されるように、
図6Aのシステムの部分断面である。
【
図6D】本開示の実施形態による眼内薬物送達システムの図を示す。
図6Dは、示されるように、
図6Aのシステムの部分断面である。
【
図6E】本開示の実施形態による眼内薬物送達システムの図を示す。
図6Eは、光学部/レンズの平面に平行な平面におけるシステムの部分断面である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び
図2は、患者の眼内の眼内薬物送達システムの配置及び使用を示す。眼1は、水晶体2(眼の生来の水晶体)及び水晶体嚢3と、角膜5及び虹彩6並びに角膜と虹彩との間の空間を満たす房水を含む前房4と、虹彩と水晶体嚢との間の後房7とを含む。後腔/硝子体8は、水晶体2と網膜9との間の大きな空間である。眼1の生来の水晶体2は、光軸10によって特徴付けられる。(眼内薬物送達システムの以下の説明において、後方及び前方という用語は、眼の解剖学的構造に関連して使用され、角膜は前方であり、網膜は後方である。)
図2は、眼用インプラント12と、対象の水晶体嚢内に埋め込まれた薬物送達構成要素30とを含む眼内薬物送達システム20の眼内の配置を示す(本明細書でより詳細に説明される)。水晶体嚢は、生来の水晶体、人工水晶体を含むことができ、又は水晶体を全く含まなくてもよい。
【0032】
本開示のある態様は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素を含む眼内薬物送達システムに関し、眼用インプラント及び薬物送達構成要素は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素の相対的な動きを安定化させる構成で接続される。一実施形態では、眼用インプラント12は、眼内レンズ(IOL)アセンブリであり得、これは、中心に光学部/レンズ24と、そこから外向きに延びる1つ以上のハプティック28とを含むことができる。光学部/レンズ24は、前側24A及び後側24Pを含む。しかしながら、本開示はそのように限定されず、眼用インプラントは、本明細書に記載される薬物送達構成要素を安定化させ、かつ保持する特徴部を含むように構成された任意の好適な眼科用インプラントであり得る。
【0033】
眼内薬物送達システムは、眼の様々な状態及び障害、又は眼内薬物送達システムによって処置することができる他の障害を処置するために、様々な治療剤を送達するように構成された薬物送達構成要素を含むことができる。一実施形態では、薬物送達構成要素は、眼の状態又は障害を処置するための1つ以上の治療剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、緑内障の処置に有用な治療剤としては、ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミド及び他の治療薬;例えば、β遮断薬、αアゴニスト、ROCK阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、アドレナリン作動性受容体活性化剤及びコリン作動性受容体活性化剤、プロスタグランジン類似体、並びにそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、滲出型黄斑変性症緑内障の処置に有用な治療剤としては、限定されないが、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド、アプタマー、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。さらに他の実施形態では、萎縮型黄斑変性症の処置に有用な治療剤としては、補体因子、抗酸化剤、抗炎症剤、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。他の実施形態では、治療剤は、ブドウ膜炎の処置において有用であり得、例えば、メトトレキサート、抗体、デキサメタゾン、トリアムシノロン、及び他のステロイド剤などがある。また、治療剤は、1つ以上の抗増殖剤、抗有糸分裂剤、抗炎症剤、及び水晶体上皮細胞の移動を阻害又は防止する、例えば、後嚢混濁を処置するための他の薬剤を含み得る。他の実施形態では、白内障又は他の眼の手術後の術後管理のために、フルオロキノロンなどの抗生物質、ケトロラクなどの非ステロイド剤、及びプレドニゾロンなどのステロイドなどを薬物送達構成要素に組み込むことができる。
【0034】
図3A及び
図3Bは、IOLアセンブリ22及び1つ以上の薬物送達構成要素30を含むことができる例示的な眼内薬物送達システム20を示す。
図3C及び
図3Dは、それぞれ、
図3Bのシステム20の前側を示す斜視図、並びに
図3Bのシステム20の後側を示す底面図を示す。
図3Aにおいて、システム20は、一対の相対的により小さい薬物送達構成要素30を含む。
図3B~
図3Dにおいて、システム20は、一対のより大きな薬物送達構成要素30を含む。より大きい薬物送達構成要素30は、例えば、より小さい薬物送達構成要素30と比較して、より長い持続時間又はより高い速度で治療剤を溶出することができる。薬物送達構成要素30は、異なる特性、例えば、改変され得る他の態様の中でも、異なる溶出速度、異なる治療剤を含むことができる。本開示は、
図3B~
図3Dに図示される相対的により大きい薬物送達構成要素30を示す。しかしながら、本開示はそれほど限定されず、本明細書に記載されるシステム及び方法は、
図3Aに図示される相対的により小さい薬物送達構成要素30にも適用可能である。
【0035】
システム20のIOLアセンブリ22は、中心の光学部/レンズ24と、光学部/レンズ24の平面又は平行平面から外向きに延びる1つ以上のハプティック28とを含む。図に見られるように、IOLアセンブリ22は、光学部/レンズ24の両側から外側に延びる一対のハプティック28を含む。光学部/レンズ24は、視力矯正を伴う光学部を含むことができるか、又は単に構造的支持を提供するためのスキャフォールドであることができる。薬物送達構成要素30は、IOLアセンブリ22のハプティック28への取り付け(好ましくは解放可能な取り付け)のために構成されている。眼内薬物送達システム20は、埋め込み対象の眼に対して、前側及び後側を含む。他の実施形態では、眼内薬物送達システム20は、任意選択で、使用中にシステムを定位置に保持するための水晶体嚢テンションリング又は水晶体嚢スキャフォールドなどの他のデバイスを含むことができる。
【0036】
ハプティック28の外側範囲は、システム20が埋め込まれたときに対象の眼の水晶体嚢に当たるのに十分な長さであり、一方、薬物送達構成要素30の半径方向外側範囲は、埋め込まれたIOLアセンブリ22上に設置されたときに、対象の眼の水晶体嚢の赤道領域における水晶体嚢上に薬物送達構成要素30が当たるのを回避するように、好ましくはハプティック28の半径方向外側範囲よりも短い。示されるように、
図3Aは、薬物送達構成要素30が光学部-ハプティック接合領域のサイズ及び形状に寸法的に対応するように構成される実施形態を示し、
図3B~
図3Dは、薬物送達構成要素30が光学部-ハプティック接合領域よりも寸法的に大きくなるように構成される実施形態を示す。しかしながら、本開示はそれほど限定されず、薬物送達構成要素30は、意図された使用に好適な任意のやり方で形成されるようにサイズ決めされ得、例えば、光学部の周囲の1/4、光学部の周囲の1/3、光学部の周囲の1/2などである。
【0037】
図4A~
図4Dは、本開示の例示的なIOLアセンブリ22を示す。
図4A及び
図4Bに示されるように、ハプティック28の各々は、IOLアセンブリ22に結合されたときに薬物送達構成要素(図示せず)を保持し、かつ安定化させるための特徴部を含む。そのために、ハプティック28の各々は、保持タブ40及びガセット44を含み、これらは共に、固定ループがウエスト部52(
図3DにおいてIOLアセンブリ22のウエスト部52上に受容されて示される薬物送達構成要素30の固定部50)に受容されるときに、薬物送達構成要素の固定部(図示せず)を保持し、かつ安定化させるためのウエスト部又はインカット部52を形成する。ウエスト部52は、光学部/レンズ24に向かって広くなり、ガセット44及び保持タブ40に向かってもまた広くなる狭い部分を画定する。このようにして、ウエスト部52から離れる動きを抑制するように、かつIOLアセンブリ22に対する薬物送達構成要素の回転も抑制するように、薬物送達構成要素はウエスト部52に保持される。
【0038】
さらに
図4A~
図4Bを参照すると、ハプティックは、外側自由端部41及び内側自由端部45を有し、その両方が自由である(すなわち、構造体に結合されていない)。外側自由端部41は、丸みを帯びた突起又は先端で終端する。また、内側自由端部45は、保持タブ40を画定する丸みを帯びた突起又は先端で終端し、保持タブ40はウエスト部52から張り出す。ハプティック28は、ハプティック28の長手方向の長さに沿って、2つの端部41,45の間の一点又は一部分で光学部/レンズ24に接続される。別の言い方をすれば、ハプティック28は、ハプティック28の終端部41,45において光学部/レンズ24に接続されず、代わりに、端部41,45は自由であり、ハプティック28は、端部41,45の間の一点又は一部分で光学部/レンズに接続される。ハプティック28は、ハプティック28の半径方向に延びる部材又は接続タブ49(以下、「半径方向に延びる部材」と呼ぶ)を介して、光学部-ハプティック接合部又はレンズ-ハプティック接合部48で光学部/レンズ24に接続される。半径方向に延びる部材49は、保持タブ40を画定する内側自由端部45の近くにある。半径方向に延びる部材49は、光学部/レンズ24の縁部25の円弧又は一部分から延びる。半径方向に延びる部材49は、ウエスト部52を画定する一対の表面、すなわち第1の表面43及び第2の表面42によって画定される。ハプティック28の半径方向に延びる部材49及び光学部-ハプティック接合部48は、
図4Cにおいてクロスハッチングで図示され、一般に、ハプティック28が光学部/レンズ24につながる場所又は位置を指す。
【0039】
さらに
図4A~
図4Bを参照すると、保持タブ40によって形成された第1の表面43の反対側に、ハプティック28は、使用中にハプティック28の屈曲及び湾曲を容易にする第2の表面42を有する曲線ノッチ又はガセット44を含む。より具体的には、ガセット44は、端部41,45の間でハプティック28の湾曲を可能にするハプティック28の相対的に狭い断面積51を画定する。ウエスト部52は、ハプティック28の第2の表面42と第1の表面43との間に画定されることに加えて、前面46と後面47との間にもまた画定される(
図4C~
図4Dに示す)。いくつかの実施形態では、保持タブ40の第1の表面43は、半径方向面又は凹状表面を含み、ガセット44における保持タブ40の第2の表面42は、レンズ24に対するハプティック28の光学部-ハプティック接合部48において、湾曲面又は凹状内側部分を提供するように、半径方向面又は凹状表面を含む。保持タブ40とガセット44との間のハプティック28の前面46は、薬物送達構成要素(図示せず)の少なくとも一部分と相互作用して、使用中にその向きを安定化させることができる。いくつかの実施形態では、前面46は、薬物送達構成要素のサイズ及び形状に適合するようなサイズ及び形状であり得る(例えば、薬物送達構成要素全体又は実質的に薬物送達構成要素全体と相互作用することができる)。
【0040】
IOLアセンブリ22の後面図である
図4Cに示されるように、光学部-ハプティック接合部48及び半径方向に延びる部材49は、クロスハッチングで示されている。光学部-ハプティック接合部48を画定する半径方向に延びる部材49は、ハプティック28の終端部41,45の間のハプティック28の長さに沿って、ハプティック28を光学部/レンズ24に接続する。IOLアセンブリ22の拡大断面図を示す
図4Dに示されるように、半径方向に延びる部材49の後面47は、使用中に薬物送達構成要素に追加の安定性をもたらし、かつ/又はPCOバリアを維持するためのレリーフカット84を含む。レリーフカット84は、一対の面取りされた縁部85と、光学部/レンズ24よりもさらに前方にある平面内に位置する凹面86とによって画定される。より具体的には、
図4Dに見られるように、凹面86は、光学部/レンズ24を取り囲む縁88よりもさらに前方にある。一実施形態では、凹面86及び前面46は、互いに概ね平行であり得る。
【0041】
図4A及び
図4Bから理解され得るように、とりわけ、ハプティック28のウエスト部52は、ハプティック-光学部接合部48において、凹面42,43を有する一対の窪みによって画定される。凹面42,43は、光学部/レンズ24の平面内にある。加えて、ハプティック28は、
図4Dに見られるように、後面47に窪みを画定するレリーフカット84を含む。したがって、光学部-ハプティック接合部48において、ハプティック28は、その上に薬物送達構成要素を受容するためにハプティック28の外周上に窪みを画定する。ハプティックの前面46は、
図4Dに見られるように、窪み又はレリーフカットを含むことができることに留意されたい。一実施形態では、ハプティック28は、その外周上全体に窪みを含むことができる。
【0042】
図5A~
図5Cは、眼内薬物送達システムの例示的な薬物送達構成要素30を示す。薬物送達構成要素30は、治療剤を含むことができ、この治療剤は、薬物送達パッド70の全体又はその一部分(内部薬物送達パッド、ゲル、又は薬物溶出マトリックスなど)を含むことができる。薬物送達パッド70は、薬物デポーから1つ以上の治療剤を溶出するか、治療剤を放出するために経時的に溶解又は生分解するか、又は当該技術分野で公知の任意の他の好適な薬物送達構成で調剤することができる。薬物送達構成要素30は、薬物送達パッド70の後側に取り付けられた固定部50をさらに含むことができる。固定部50は、薬物送達パッド70の後側から垂直に延び、かつ水平に延びるバンド60によって接続されて開口65(例えば、スロット、アパーチャ、又はコンパートメント)を形成する支柱などの構造体55を含むことができる。固定部50は、概して、薬物送達構成要素30保持ループとして機能することができ、意図された使用のための任意の好適な材料から形成することができる。非限定的な例として、固定部50は、意図される治療剤と適合性のある眼科用途のためのFDA承認ポリマー、例えば、医療用グレードシリコーンから形成することができる。さらに、固定部50は、そのような目的に適した当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、医療グレードの接着剤、熱接着などによって薬物送達パッド70に取り付けることができる。薬物送達構成要素30は、1つ以上の治療剤を含むことができる薬物送達パッド70を含むものとして説明されるが、薬物送達パッド70及び固定部50を含む薬物送達構成要素30の全体は、全体にわたって分散された治療剤を含むことができる。薬物送達パッド70及び固定部50は、その中に同じ又は異なる治療剤を含むことができる。
【0043】
固定部50(すなわち、保持ループ)又はその一部分は、ハプティック(図示せず)を越えて拡張し、次いでIOLアセンブリ(図示せず)のウエスト部上に収縮することを可能にするように、可撓性であり得る。一実施形態では、バンド60は拡張し、かつ収縮するように可撓性であり得る。一実施形態では、バンド60及び支柱55は拡張し、かつ収縮するように可撓性であり得る。一実施形態では、バンド60、支柱55、及び薬物送達パッド70は拡張し、かつ収縮するように可撓性であり得る。
図5A~
図5Cは、IOLアセンブリと結合される前に存在し得るような非拡張状態の薬物送達構成要素30を示す。
図6B~
図6Dは、バンド60がわずかに拡張されてIOLアセンブリの後側のレリーフカットを越えて伸張する状態にある薬物送達構成要素30を示す。
【0044】
さらに
図5A~5Cを参照すると、開口65は、ハプティックが開口65を通過することができるように、IOLアセンブリのハプティックをその中に受容されるようなサイズ決及び形状である。
図5Cに最もよく見られるように、開口65は、概して、薬物送達パッド70の後面72、支柱55の内面56、及びバンド60の内面62によって形成される矩形断面を形成する。開口65を画定する表面は、ハプティックのウエスト部の形状に概ね一致するか、又は相当する。
【0045】
薬物送達構成要素の固定部50の支柱55の断面形状が
図5Dに示されており、
図5Dは、送達パッドが図から除去された固定部50の上面図である。図に見られるように、開口65は、断面が略矩形であり、該開口65を通してハプティックを受容するようなサイズであるが、支柱55の外側部分は、IOLアセンブリ(図示せず)に対する薬物送達構成要素の動きを抑制すべく、ハプティック(図示せず)のガセット及び保持タブとそれぞれ相互作用するようなサイズ及び形状である。左側の支柱55は、長円形状又はピル形状であり、ガセットと相互作用するようにサイズ決めされ、概して、固定部50の軸AXfと支柱55の軸AXpとの間の角度ANで配向される。一実施形態では、角度ANは約125度であり得る。一実施形態では、角度ANは、約90度~約135度であり得る。
【0046】
図6Aは、眼内薬物送達システム20の上面図を示し、
図6C及び
図6Dの切断カットがその上に示されている。
図6Aと同様に、
図6Eは、光学系/レンズ24の平面に平行な平面におけるシステム20の部分断面を示す。
図6Aでは、薬物送達パッド70は、ハプティック28の保持タブ40及びガセット44に対して支柱55を見るために透明に描かれているが、
図6Eでは、薬物送達パッドは、断面を介して図から除去されている。両方の図において、角度を付けられた又は「内側」支柱55aは、ガセット44に遷移する際に、ガセット44と光学部/レンズ24の縁部25との間に保持されるが、「外側」支柱55oは、保持タブ40と光学部/レンズ24の縁部25との間に保持される。眼用インプラントの保持かつ安定化特徴部と薬物送達構成要素の固定部との協働は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素の相対的な動きを安定化させる構成の眼内薬物送達システムをもたらす。
【0047】
より具体的には、
図6Bは、本開示の実施形態のIOLアセンブリ22のハプティック28上に嵌合された薬物送達構成要素30の側面図を示し、保持タブ40の内側又は凹状部分が支柱55oの周りに延び、かつ薬物送達パッド70の後面72の少なくとも一部分がハプティック28の前面46上に位置決めされて、IOLアセンブリ22に対する薬物送達構成要素30の位置及び向きの安定化をもたらす。固定部50のバンド60は、伸長状態にあり、後面47上のレリーフカット84を越えて拡張される。
【0048】
図6Cは、
図6Aに示された切断線に沿ったシステム20の部分断面像である。特に、
図6Cは、
図6Aのシステム20の左上部分の切断線に沿ったシステム20の部分断面像である。
図6Cは、本開示の実施形態のIOLアセンブリ22のハプティック28上に嵌合された薬物送達構成要素30の側断面図を示し、保持タブ40内に位置決めされた支柱55oの底面57は、薬物送達構成要素30のさらなる安定化をもたらし、かつ/又はPCOバリアを維持する保持タブ40の底部53よりも高いか又はより前方(破線によって示される平面PL)にある。眼用インプラントの保持かつ安定化特徴部に対する薬物送達構成要素30の固定部50の輪郭は、眼用インプラント及び薬物送達構成要素30の相対的な動きの安定化をさらに提供する。
【0049】
図6Dは、
図6Aに示された切断線に沿ったシステム20の部分断面像である。
図6Dは、同様に、本開示の実施形態のIOLアセンブリ22のハプティック28の半径方向に延びる部材49上に嵌合された薬物送達構成要素30の断面図を示し、固定部50並びに眼用インプラントの保持かつ安定化特徴部の相対的な位置決めを示す。この断面は、両方の支柱55o,55a、バンド60、及び光学部-ハプティック接合部48における半径方向に延びる部材49を切断している。水平バンド60は、薬物送達構成要素30をIOLアセンブリ22に固定するために、ハプティック28の半径方向に延びる部材49の周りに下方に伸張する。水平バンド60の底部は、光学部-ハプティック接合部における後嚢混濁(PCO)バリアの上方にある(PCOバリアは破線DL1によって図示される)。支柱55o,55aの底部53は、保持タブ40の底部61よりも高い(破線DL2によって示される平面)。ハプティック28に対する薬物送達構成要素30の回転を含む移動又は動きは、半径方向に延びる部材49の略矩形の断面形状及び薬物送達構成要素30の固定部50の対応する形状によって、少なくとも部分的に抑制される。
【0050】
前述したように、
図6Eは、光学系/レンズ24の平面に平行な平面におけるシステム20の部分断面を示す。特に、薬物送達構成要素(図示せず)の薬物送達パッドは、支柱55o,55aを含む固定部50のみが見えるように、断面を介して除去されている。図に見られるように、外側支柱55oは、保持タブ40及び光学部/レンズ24の縁部25と境界をなし、角度を付けられた支柱55aは、ガセット44及び光学部/レンズ24の縁部25と境界をなしている。したがって、固定部50の回転(すなわち、
図6Eの図において時計回り、反時計回り)が抑制される。また、半径方向に延びる部材49のウエスト部52は、一方の側の保持タブ40及びガセット44並びに光学部/レンズ24側から外向きに延びる縁部25の相対的に広い部分よりも狭いので、薬物送達構成要素の固定部50は、ウエスト部52において安定化させられ、位置的に維持させられる。したがって、薬物送達構成要素が半径方向に延びる部材49のウエスト部52の上方に位置決めされた状態から取り外されるためには、保持タブ40を越えて固定部50をかなり伸張させる必要がある。
【0051】
一実施形態では、薬物送達構成要素は、第1及び第2の薬物送達構成要素を含むことができ、第1の薬物送達構成要素内への第2の薬物送達構成要素の配置を可能にするように構成することができる。第1の薬物送達構成要素内への第2の薬物送達構成要素の配置は、薬物送達構成要素の製造時に、埋め込みの直前又は直後に周術期に、術中に、又はIOLアセンブリが埋め込まれるのと同じ手順で達成され得る。第1及び/又は第2の薬物送達構成要素は消耗されやすく、消耗したときにはIOLアセンブリが最初に挿入される手術のかなり後に達成され得る手術において除去及び交換され得る。
【0052】
眼内薬物送達システムは、角膜の縁部の小さな切開を通して患者の眼内に、そして患者の水晶体嚢に導入することができる。眼内薬物送達システムの初期設置のために、薬物送達構成要素は、両方を眼の中に挿入する前に、IOLアセンブリに固定されることができ、組み立てられたシステムは、折り畳まれ、切開を通過させられ、次いで、水晶体嚢又は毛様溝の中に解放されることができる。あるいは、眼内薬物送達システムの初期設置のために、最初に切開を通してIOLを挿入し、それを水晶体嚢又は毛様溝内に解放し、次に切開を通して薬物送達構成要素を挿入し、薬物送達構成要素を操作して固定部をハプティックの上方で滑らせ、それによって薬物送達構成要素をハプティック及びIOLアセンブリに固定することによって、眼内へのIOLの挿入後に薬物送達構成要素をIOLアセンブリに固定することができる。
【0053】
一実施形態では、最初に埋め込まれた薬物送達構成要素が溶出又は生物侵食のいずれかによって消耗した場合、外科医が最初の薬物送達構成要素を除去し、角膜の境界に別の切開を行って、把持ツールを使用して新しい薬物送達構成要素をハプティック及びIOLアセンブリに挿入及び固定する、後続の外科的手順を行うことができる。元の薬物送達構成要素の除去及び新しい薬物送達構成要素との交換は、例えば、元の薬物送達構成要素がなくなるかもしくは消耗した後に、又は元の薬物送達構成要素を、補充されたもしくは異なる治療剤を含有する新しい薬物送達構成要素と交換することが所望されるときはいつでも行うことができ、元の薬物送達構成要素を埋め込むために行われた切開が治癒し、したがって新しい切開を行う必要がある後に行うことができる。外科的手順中に、必要であれば、外科医は、把持ツールを挿入して、元の薬物送達構成要素をハプティック及びIOLアセンブリから取り外して眼から取り出し、新しい薬物送達構成要素を挿入し、把持ツールを使用して、新しい薬物送達構成要素を操作して、ハプティックの上方で滑らせ、それによってIOLアセンブリに固定することができる。
【0054】
装置及び方法の好ましい実施形態を、それらが開発された環境を参照して説明してきたが、それらは本発明の原理の単なる例示である。様々な実施形態の要素は、他の種のそれぞれに組み込まれて、そのような他の種と組み合わせてそれらの要素の利益を得ることができ、様々な有益な特徴は、実施形態において単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。本発明の精神及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び構成を考案することができる。
【国際調査報告】