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特表2024-527078ブルセラ属株を含むワクチン組成物及びそれらの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ブルセラ属株を含むワクチン組成物及びそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/10 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K39/10
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505144
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022074252
(87)【国際公開番号】W WO2023010074
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/226,489
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502334319
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニヴァーシティ システム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・デ・フィゲイレド
(72)【発明者】
【氏名】ジム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】トム・フィクト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・アラニズ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA03
4C085BA17
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
(57)【要約】
本開示は、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)の弱毒生細菌株を含む医薬組成物を提供し、特に、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株は、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である。患者の処置のためのブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を利用する方法もまた提供され、ここで、患者は、癌、自己免疫障害、及び/又は炎症性障害に対する処置を必要としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)の弱毒生細菌株を含む医薬組成物。
【請求項2】
ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株が、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
経口配合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
非経口配合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
第2の治療剤を更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
第2の治療剤が抗癌療法である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項8】
第2の治療剤が自己免疫療法である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
第2の治療剤が抗炎症療法である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
インドールを更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株が、インドールを産生するよう改変されている、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
患者を処置する方法であって、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項13】
ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株が、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
患者が癌に対する処置を必要としている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
患者が自己免疫障害に対する処置を必要としている、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
患者が炎症性障害に対する処置を必要としている、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
患者においてCD8+T細胞応答を誘発する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
患者においてCD4+T細胞応答を誘発する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
患者において制御性T細胞応答を誘発する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
患者においてCD8+T細胞上のPD-1発現を増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の数を増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の活性を増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
患者の腫瘍微小環境を炎症促進性状態へと改変する、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境においてマクロファージを増加させることによって改変する、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境において樹状細胞を増加させることによって改変する、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境においてCD8+PD-1-T細胞を増加させることによって改変する、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
患者においてマクロファージの炎症促進性M1分極を促進する、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
患者におけるマクロファージを、炎症促進性サイトカイン/ケモカインを発現するよう誘導する、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
炎症促進性サイトカイン/ケモカインが、IL-6、IL-1α、IL-12b(IL12p40)、Ccl5(RANTES)、Cxcl10(IP-10)、Ccl2(MCP-1)、及びCcl3(MIP-1α)からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
患者においてVEGFの低減を誘導する、請求項12に記載の方法。
【請求項31】
CD-8+T細胞の炎症能を高める、請求項12に記載の方法。
【請求項32】
高められた炎症能が、CD8+T細胞からのTNFαの産生の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
高められた炎症能が、CD8+T細胞からのIFNγの産生の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
高められた炎症能が、CD8+T細胞からのIL-2の産生の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
高められた炎症能が、CD8+T細胞におけるOX40の発現の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
高められた炎症能が、CD8+T細胞における4-1BBの発現の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
トランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株であって、前記株が、前記株の病原性遺伝子における変異、及びトリプトファナーゼ(tnaA)をコードする核酸を含み、前記変異が、vjbR、asp14、及びmucRからなる群から選択され、前記変異が、病原性遺伝子を不活性化するものである、トランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【請求項38】
変異した病原性遺伝子がvjbRであり、tnaAをコードする核酸が、構成的プロモーターの制御下で発現される、請求項37に記載のトランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【請求項39】
変異した病原性遺伝子がBmΔvjbRであり、tnaAをコードする核酸が、大腸菌(E.coli)tnaAを含む、請求項37に記載のトランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月28日に出願された米国仮出願第63/226,489号に基づく35 USC第119条(e)における利益を主張しており、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、新たな治療剤が絶えず探し求められている。癌並びに炎症性疾患及び自己免疫障害の処置における近年の進歩は前途有望であるが、更なる改善が切に必要とされている。最近の研究により、細菌が癌及び炎症性/自己免疫処置にとって驚くほど効果的な薬剤となり得ることが示唆されている。しかしながら、これらの処置は、患者において重篤な副作用を起こす傾向にあり、それが多くの場合そのアプローチの断念につながっている。
【0003】
これまでに使用されてきた細菌ベクターは全て、固有の有害又は有毒の特徴を有し、最適には至らない安全性プロファイル又は送達経路が、処置におけるそれらの幅広い有用性を大幅に制限する可能性がある。観察される否定的な特徴として、腹腔内送達経路、癌処置に使用された場合の非癌性組織における生存微生物の残留性、相当なエンドトキシン活性、病原性の逆戻りの可能性、及び既存の宿主免疫に起因した制限が挙げられる。
【0004】
ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)は、家畜及び野生動物集団におけるブルセラ症の病原因子である。ブルセラ・メリテンシスはまた、波状熱及び慢性症状を特徴とする疾患であるヒトブルセラ症と関連付けられる主要な物質である。過去30年にわたり、動物をブルセラ症から防御するために、弱毒生ワクチン株が開発されてきた。特に、BmΔvjbRと称されるブルセラ・メリテンシス16MからのvjbR遺伝子座(BMEII1116)の欠失を含む新規種類の弱毒変異体が創出された。重要なことには、この弱毒ワクチン株は、組織培養系、並びに免疫十分及び免疫不全のマウス、ヤギ、ヒツジ及びアカゲザルにおける評価後に非常に優れたレベルの安全性を示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Arenas-Gamboa等、Clin Vaccine Immunol、2012年;19:249~60頁
【非特許文献2】de Figueiredo等、Am J Pathol、2015年;185:1505~17頁
【非特許文献3】Pandey等、Methods Mol Biol、2014年;1197:229~44頁
【非特許文献4】Pandey等、Front Cell Infect Microbiol、2018年;8:103
【非特許文献5】Fernandez-Prada CM等、Infect Immun.、2003年;71(4):2110~9頁
【発明の概要】
【0006】
本開示は、様々な患者集団の処置に利用することができる安全な弱毒生細菌株(BmΔvjbR)を提供する。特に、本開示は、癌、自己免疫及び炎症等の疾患領域において好適な効果を提供するための株の使用について記載している。本明細書に記載されるように、株を含む医薬組成物は、様々な病状における免疫応答を調節するための、及び現存する免疫療法を改善又は補足する好適な戦略を提供するための治療ツールとして使用することができる。
【0007】
本開示の他の目的、特徴及び利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の具体的な実施形態を示しており、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、単に例示として付与されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マウス骨髄発生マクロファージ(BMDM)における免疫関連遺伝子の発現レベルに対する生(Live)及び加熱死(HK)BmΔvjbRの効果を示すヒートマップを示す図である。TaqMan Array, Mouse Immune(Applied Biosystems社)を使用して、遺伝子発現を比較した。BMDM細胞を生又は加熱死(HK)BmΔvjbRのいずれかとともに1時間インキュベートし、続いて1×PBSで3回すすぎ、細胞外細菌を除去した後、新鮮なダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の培地中でインキュベートした。接種の24時間後、遺伝子発現アッセイ用にRNAをBMDMから抽出した。棒は、log2スケールでの相対的な遺伝子発現を示し、アップレギュレーション及びダウンレギュレーションのグレードを、それぞれ紫色及び橙色のグラデーションで示す。矢印は、同様にサイトカインELISA又はフローサイトメーターを使用して分析された遺伝子を強調している。定量的なlog2(倍の変化)データを表に列挙する。
図2A】PBS対照に対して、接種の24時後のBmΔvjbR感染BMDMからの炎症促進性サイトカイン及びケモカインの分泌の増加を示すヒートマップを示す図である。
図2B】CD8+T細胞によって分泌される選択されたサイトカイン及びケモカインの定量化を示す図である。
図2C】生BmΔvjbRが生BmΔvjbRによって誘導されるCD38の発現及び4-1BBL発現を促進することを示す図である。
図2D】感染又は非感染のBMDMでのCD38+及び4-1BBL+集団の定量化を示す図である。データは、2つの独立した実験からの平均値±SEM(平均値の標準誤差)を表す。*、**、***:それぞれ、p<0.05、0.01、及び0.001で有意性。
図3A】CD8+T細胞のフローサイトメトリー評価並びにCD69、TNFα及びIFNγの代表的なドットプロットを示す図である。
図3B】3つの独立した実験から得られたCD69、TNFα、及びIFNγのドットプロットの棒グラフ表示を示す図である。
図3C】BmΔvjbR感染又は非感染のマクロファージとともに3日間共培養したCD8+T細胞の活性化、共刺激、及び炎症性サイトカインのフローサイトメトリー分析並びにヒートマップ表示を示す図である。ヒートマップ分析はまた、再刺激されたCD8+T細胞のフローサイトメトリードットプロットからも行った。
図3D】解糖速度アッセイを測定するSeahorse代謝アッセイによって評価したCD8+T細胞の代謝プロファイルを示す図である。細胞外酸性化速度を右のパネルに示し、glycoPERを左のパネルに示す。****p<0.0001 p<0.001, p<0.01、*、**及び***:それぞれ、p<0.05、0.01及び0.001で有意性。ns:有意でない。
図4A】養子T細胞療法及びBmΔvjbR処置プロトコールを示す模式図を示す図である。マウスにMC32-CEA細胞を皮下移植した後、腫瘍細胞の注射の9日後にBmΔvjbRを注射した。続いて、CAR-CEA形質導入CD8+T細胞を12日目にマウスに養子移入し、28日目にプロトコールの終結まで1日おきに腫瘍サイズを測定した。
図4B】Ctrl及び生BmΔvjbR処置腫瘍試料における比較免疫細胞集団のvi-tsneプロットを示す図である。
図4C】マクロファージ、樹状細胞、B細胞及びCD8+T細胞の種々の免疫細胞集団を示すCtrl及び生BmΔvjbRの近傍結合プロットを示す図である。1~10の数字は、近傍分析及びヒートマップに使用される細胞クラスターを表す。横列は、目的の細胞表現型を表すのに対して、縦列は、ヒートマップにおける近傍の細胞表現型を表す。細胞間相互作用は全て、腫瘍試料から評価され、高度に相互作用する近傍の細胞を赤で示した一方で、回避された相互作用を青で示した。
図4D】腫瘍試料への免疫細胞の浸潤の再構成画像を示す図である。
図4E】腫瘍試料中のマクロファージ、樹状細胞、及びB細胞の定量化を示す図である。種々の免疫細胞集団を表すマーカーは、B220(B細胞)、F4/80(マクロファージ)、CD11c(樹状細胞)、Ki67(増殖性細胞)、CD8+(CD8+T細胞)である。
図5A】マウスの生存率が、マウスの対照未処置群と比較して、18日目以降からBmΔvjbRを付与されたマウスの群において有意に改善されることを示す図である。
図5B】BmΔvjbR免疫化、続く養子T細胞移入が、実験の開始の15日後から腫瘍成長を有意に抑制することを示す図である。
図5C】H&E染色により対照群と比較してBmΔvjbRを付与されたマウスの群において腫瘍の有意な改善が示されることを示す図である。
図5D】浸潤リンパ球(Thy 1.2+CD8+T細胞)のフローサイトメトリー、続くグラフ表示により、養子移入されたCEA CD8+T細胞の有意により高い浸潤が確認されることを示す図である。
図5E】浸潤リンパ球(Thy 1.2+CD8+T細胞)の共焦点顕微鏡法、続くグラフ表示により、養子移入されたCEA CD8+T細胞の有意により高い浸潤が確認されることを示す図である。
図5F】代表的な免疫蛍光顕微鏡法画像により注射の19日後に腫瘍組織においてBmΔvjbRの生存が示されることを示す図である。
図5G】BmΔvjbRが、主に腫瘍においてコロニー形成することを示す図である。
図5H】BmΔvjbRが、接種の1、4、及び24時間後(hpi)に免疫蛍光顕微鏡法でBMDMにおいて観察され得ることを示す図である。
図5I】BmΔvjbRが、1hpi及び4hpiにBMDM、J774A.1、及びRAW 264.7マクロファージから回収され得るが、細菌が24hpiにこれらのマクロファージにおいて生存しなかったことを示す図である。データは、2つの独立した実験からの平均値±SEMを表す。ns:有意でない;*、**、***、****:それぞれ、p<0.05、0.01、0.001、及び0.0001で有意性。
図6】BmΔvjbR::tnaA株を産生するのに適した例示的なプラスミド構築物を示す図であり、ここで、tna遺伝子をpBBR6Y-GFPベクターへクローニングし、続いてBmΔvjbRに形質転換して、BmΔvjbR-tnaを生成した。
図7A】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。CD11b+細胞に対するインドールの効果の代表的なフローサイトメトリードットプロット分析。代表的な実験フローサイトメトリー分析用に0.25、0.5、又は1.0mMのインドールをDMF中に溶解した。
図7B】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。加熱死サルモネラ・チフィリウム(Salmonella Typhimurium)(HKST)群の3つの独立した実験から得られたフローサイトメトリードットプロットのグラフ表示。
図7C】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。Tregのインドール用量依存的分化を表すフローサイトメトリーヒストグラム。実験(N=3)は、Tregスキュー条件下で実施した([TGF-β]=2ng/mL、[IL-2]=100U/mL)。Th0対照は、非Tregスキュー条件を表す。酪酸塩を対照代謝産物として使用した。
図7D】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。Tregの分化に対するインドールの効果のグラフ表示。
図7E】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。マウス(N=5)におけるCIAに対するインドール単独の効果のグラフ表示。
図7F】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。関節炎の誘導の60日後のCIAマウスの膝組織のH&E、サフラニンO(Saf-O)染色組織、及び共焦点顕微鏡法の代表的な画像。
図7G】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。対照(Ctrl)及びインドール処置マウスの共焦点顕微鏡法切片からのH&E、Saf-O及びTreg浸潤の定量分析。
図7H】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。C57BL/6マウスのLN及び脾臓から単離したex vivo活性化CD4+T細胞におけるPD-1及びFoxP3のフローサイトメトリードットプロット分析。インドールへの曝露は、FoxP3発現の増加によってこれらの細胞をより高いTreg表現型へと駆動する。
図7I】インドール処置が炎症を弱め、制御性T細胞(Treg)の増殖及び活性を促進することを実証している。インドールへ曝露されたCD4+T細胞のフローサイトメトリードットプロットから得られたFoxP3のグラフ表示。フローサイトメトリードットプロットからのPD-1+FoxP3+T細胞(%)のグラフ表示。データは、平均値±SDを表す。スチューデントt検定又はテューキーの多重比較検定を統計解析に適用した。*、**、***:p<0.05、0.01、0.001で有意性。
図8A】インドールが免疫細胞の活性化を抑制し、BmΔvjBRがインドールを産生するよう操作されていることを実証している。tnaA発現カセットを保有するプラスミドを有する操作されたBmΔvjbR::tnaAの模式表示。インドール生合成経路を図に表す。TnaAは、トリプトファンからインドールへの変換を触媒する。
図8B】インドールが免疫細胞の活性化を抑制し、BmΔvjBRがインドールを産生するよう操作されていることを実証している。操作されたBmΔvjbR::tnaAによるインドール産生の質量分析。
図8C】インドールが免疫細胞の活性化を抑制し、BmΔvjBRがインドールを産生するよう操作されていることを実証している。操作されたBmΔvjbR::tnaA株と比較した親株におけるtnaAタンパク質の発現のウェスタンブロット分析。BmΔvjBR親細菌株及び操作されたBmΔvjbR::tnaA株によるインドール産生の比較分析のグラフ表示。
図8D】インドールが免疫細胞の活性化を抑制し、BmΔvjBRがインドールを産生するよう操作されていることを実証している。マウスの脾臓、肝臓、腎臓及びリンパ節における操作されたBmΔvjbR::tnaAのコロニー形成。細菌は、接種後3日間、全ての臓器においてコロニー形成し、脾臓においてのみ7日間観察することができた。
図8E】インドールが免疫細胞の活性化を抑制し、BmΔvjBRがインドールを産生するよう操作されていることを実証している。抗ブルセラ属(Brucella)IgG産生の血清ELISA分析。陽性対照及び陰性対照は、製造業者の説明書通りに使用した。
図9A】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。サイトカインアレイを使用して、対照、BmΔvjbR、及びBmΔvjbR::tnaA処置BMDMによって産生された炎症促進性サイトカインを測定した。
図9B】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。BMDMとともに共培養したT細胞のIFN-γ及びTNF-αのフローサイトメトリー分析。BMDMをBmΔvjbR::tnaA又はBmΔvjbRのいずれかで処置し、続いてアッセイのためにC57BL/6マウスのプールされたLN及び脾臓から得られたCD4+T細胞とともに共培養した。
図9C】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。対照(Ctrl);BmΔvjbR;BmΔvjbR::tnaA;BmΔvjbR::tnaA、続くTregのACT(Treg)及びTregのACTのみからのCIA C57BL/6マウスにおける関節炎スコア及び関節炎発生率;(各群においてN=5)。
図9D】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。CIA誘導の60日後のマウスの膝由来のH&E、Saf-O染色、及び共焦点顕微鏡法の代表的な画像。これらのマウスからのTreg浸潤及び炎症スコアの定量分析も示す。
図9E】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。LN及び脾臓由来の細胞を、CIA誘導マウス群から収集した(Ctrl、BmΔvjbR::tnaA、及びTregのACTと組み合わせたBmΔvjbR::tnaA)。次に、これらの細胞をCD4+T細胞用のマーカーを使用したフローサイトメトリー及びFoxP3(Treg)の細胞内染色によって染色並びに定量化した。
図9F】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。CIA誘導マウスをPBS(Ctrl)、TregのACTのみ(Tregのみ;N=5)、又はTregのACTと組み合わせたBmΔvjbR::tnaA(N=5)で処置した。膝及び足首の関節由来の細胞を21個のマーカーで染色し、CyTEKオーロラフローサイトメトリーによって測定した。ヒートマップは、マウスの種々の処置群における免疫細胞プロファイルを示す(スケールバーは、各細胞型内の各処置群における細胞のパーセントを表す)。
図9G】BmΔvjbR::tnaAが、Tregの養子細胞移入(ACT)によって増強されるマウスCIAモデルにおいて、有意に炎症を弱め、関節炎を低減させることを実証している。viSNEマップは、マウスの処置群において差次的に発現されたB細胞の4つのサブタイプを示す。データは、平均値±SDを表す。スチューデントt検定又はテューキーの多重比較検定を統計解析に適用した。*、**、***:p<0.05、0.01、0.001で有意性。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の様々な実施形態は、下記の通りに本明細書において記載されている。例示的な態様では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物が提案される。別の例示的な態様では、患者を処置する方法が提供される。当該方法は、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む。
【0010】
一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株は、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である。ブルセラ・メリテンシス16Mは、例えばATCC #23456として入手可能である。BmΔvjbRを作製及び入手する方法は、例えば、Arenas-Gamboa等、Clin Vaccine Immunol、2012年;19:249~60頁、de Figueiredo等、Am J Pathol、2015年;185:1505~17頁、Pandey等、Methods Mol Biol、2014年;1197:229~44頁、及びPandey等、Front Cell Infect Microbiol、2018年;8:103においてこれまでに記載されており、それらはそれぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0011】
一実施形態では、医薬組成物は経口配合物である。一実施形態では、経口配合物は、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ、コロイド分散体、分散体、及び発泡性組成物からなる群から選択される。一実施形態では、経口配合物は錠剤である。一実施形態では、経口配合物はカプセルである。一実施形態では、経口配合物は懸濁液である。一実施形態では、経口配合物はエマルジョンである。一実施形態では、経口配合物はシロップである。一実施形態では、経口配合物はコロイド分散体である。一実施形態では、経口配合物は分散体である。一実施形態では、経口配合物は発泡性組成物である。
【0012】
一実施形態では、医薬組成物は非経口配合物である。一実施形態では、非経口配合物は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、皮内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、腫瘍内、筋内及び皮下からなる群から選択される。一実施形態では、非経口配合物は静脈内である。一実施形態では、非経口配合物は動脈内である。一実施形態では、非経口配合物は腹腔内である。一実施形態では、非経口配合物は髄腔内である。一実施形態では、非経口配合物は皮内である。一実施形態では、非経口配合物は硬膜外である。一実施形態では、非経口配合物は脳室内である。一実施形態では、非経口配合物は尿道内である。一実施形態では、非経口配合物は胸骨内である。一実施形態では、非経口配合物は頭蓋内である。一実施形態では、非経口配合物は腫瘍内である。一実施形態では、非経口配合物は筋内である。一実施形態では、非経口配合物は皮下である。
【0013】
一実施形態では、医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む。
【0014】
一実施形態では、医薬組成物は単回用量として配合される。一実施形態では、医薬組成物は、単回単位用量として配合される。本明細書で使用される場合、「単位用量」という用語は、所定量の細菌株を含む医薬組成物の個別の量である。本開示によれば、「単回用量」及び「単回単位用量」という用語は、医薬組成物を単回非経口注射として投与することができるか、又は複数回非経口注射として投与することができる実施形態を含む。1つの実施形態では、医薬組成物の単回用量又は単回単位用量は、患者の身体上の1つの位置にて患者に非経口的に投与することができる。別の実施形態では、医薬組成物の単回用量又は単回単位用量は、患者の身体上の単一の位置にて複数回注射で動物に非経口投与することができる。更に別の実施形態では、医薬組成物の単回用量与又は単回単位用量は、患者の身体上の1つよりも多い位置にて複数回注射で患者に非経口投与することができる。医薬組成物の複数回注射が利用される実施形態では、複数回注射は、合理的な期間にわたって動物に投与することができる。
【0015】
一実施形態では、医薬組成物は、第2の治療剤を更に含む。一実施形態では、第2の治療剤は抗癌療法である。一実施形態では、第2の治療剤は自己免疫療法である。一実施形態では、第2の治療剤は抗炎症療法である。
【0016】
一実施形態では、医薬組成物は、インドールを更に含む。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株は、インドールを産生するよう改変される。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスのインドール産生弱毒株が提供される。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシス株は、病原性遺伝子を不活性化するvjbR、asp14、及びmucR等のその病原性遺伝子における変異を有し、トリプトファナーゼ活性をコードする外因的に導入された遺伝子(例えば、tnaA)を含む。本明細書において使用される場合、トリプトファナーゼという用語は、トリプトファンの加水分解を触媒してインドール、ピルビン酸塩、及びアンモニウム塩を産生する任意のタンパク質を包含する。一実施形態では、病原性遺伝子の変異は、欠失変異である。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒株は、vjbR遺伝子において欠失を有し、酵素トリプトファナーゼ(tnaA)を発現する遺伝子は、構成的プロモーターの制御下にある。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒株はBmrvjbRである。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒株は、トリプトファナーゼをコードする遺伝子でトランスフェクトされ、ここで場合により、トリプトファナーゼコード遺伝子は、大腸菌(E.coli)tnaA遺伝子である。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒株は、構成的プロモーターの制御下にある大腸菌tnaA遺伝子を含むプラスミドでトランスフェクトされたBmΔvjbRであり、ここで場合により、プロモーターはJ23119(SpeI)である。プラスミドは、例えば、緑色蛍光タンパク質コード遺伝子を含む、更なる選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子を含むことができる。本発明のBmΔvjbR::tnaA株を産生するのに適したプラスミド構築物の1つが図6に提供されている。
【0017】
1つの実施形態によれば、弱毒生ブルセラ・メリテンシスを免疫調節因子として使用する方法が提供され、ここで、弱毒ブルセラ・メリテンシスの代謝は、抗自己免疫/炎症活性を増幅するように更に再プログラムされている。1つの実施形態によれば、インドール産生弱毒BmΔvjbR株は、免疫調節を必要とする対象への投与のために提供される。1つの実施形態では、当該方法は、免疫調節を必要とする対象への、vjbR、asp14、及びmucR等のその病原性遺伝子の1つにおける変異を有し、外因的に導入されたトリプトファナーゼ(tnaA)遺伝子を構成的に発現するブルセラ・メリテンシスの弱毒株を含む組成物の投与を含む。1つの実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒株は、vjbRにおいて欠失を有し、構成的プロモーターの制御下でトリプトファナーゼ(tnaA)を発現する。
【0018】
例示的な実施形態では、患者を処置する方法が提供される。当該方法は、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む。一実施形態では、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株は、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である。先述したような医薬品の実施形態のいずれも、患者を処置する方法において利用することができる。
【0019】
一実施形態では、患者は、癌に対する処置を必要としている。一実施形態では、癌は、黒色腫、乳癌、前立腺癌、膵癌、及び結腸直腸癌からなる群から選択される。一実施形態では、癌は黒色腫である。一実施形態では、癌は乳癌である。一実施形態では、癌は前立腺癌である。一実施形態では、癌は膵癌である。一実施形態では、癌は結腸直腸癌である。一実施形態では、癌は、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法に耐性である。
【0020】
一実施形態では、患者は、自己免疫障害に対する処置を必要としている。一実施形態では、自己免疫障害は大腸炎である。一実施形態では、自己免疫障害は炎症性腸疾患である。
【0021】
一実施形態では、患者は、炎症性障害に対する処置を必要としている。一実施形態では、炎症性障害は大腸炎である。一実施形態では、炎症性障害は炎症性腸疾患である。
【0022】
一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約0.001~約1000mgの有効成分の用量で患者に投与される。「有効成分」はこの文脈において、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を指す。一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約0.001~約100mgの有効成分の用量で患者に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約0.01~約100mgの有効成分の用量で患者に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約0.1~約100mgの有効成分の用量で患者に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約0.1~約10mgの有効成分の用量で患者に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1kg当たり約1~約5mgの有効成分の用量で患者に投与される。
【0023】
一実施形態では、当該方法は、患者においてCD8+T細胞応答を誘発する。一実施形態では、当該方法は、患者においてCD4+T細胞応答を誘発する。一実施形態では、当該方法は、患者において制御性T細胞応答を誘発する。一実施形態では、当該方法は、患者においてCD8+T細胞上のPD-1発現を増加させる。
【0024】
一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の数を増加させる。一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の活性を増加させる。一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境を炎症促進性状態へと改変させる。
【0025】
一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境においてマクロファージを増加させることによって改変する。一実施形態では、マクロファージは、増殖性マクロファージである。一実施形態では、マクロファージは、非増殖性マクロファージである。一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境において樹状細胞を増加させることによって改変する。
【0026】
一実施形態では、当該方法は、患者の腫瘍微小環境を、腫瘍微小環境においてCD8+PD-1-T細胞を増加させることによって改変する。一実施形態では、当該方法は、患者においてマクロファージの炎症促進性M1分極を促進する。
【0027】
一実施形態では、当該方法は、患者におけるマクロファージを、炎症促進性サイトカイン/ケモカインを発現するよう誘導する。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインは、IL-6、IL-1α、IL-12b(IL12p40)、Ccl5(RANTES)、Cxcl10(IP-10)、Ccl2(MCP-1)、及びCcl3(MIP-1α)からなる群から選択される。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはIL-6である。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはIL-1αである。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはIL-12b(IL12p40)である。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはCcl5(RANTES)である。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインは、Cxcl10(IP-10)である。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはCcl2(MCP-1)である。一実施形態では、炎症促進性サイトカイン/ケモカインはCcl3(MIP-1α)である。一実施形態では、当該方法は、患者においてVEGFの低減を誘導する。
【0028】
一実施形態では、当該方法は、CD-8+T細胞の炎症能を高める。一実施形態では、高められた炎症能は、CD8+T細胞からのTNFαの産生の増加である。一実施形態では、高められた炎症能は、CD8+T細胞からのIFNγ産生の増加である。一実施形態では、高められた炎症能は、CD8+T細胞からのIL-2の産生の増加である。一実施形態では、高められた炎症能は、CD8+T細胞におけるOX40の発現の増加である。一実施形態では、高められた炎症能は、CD8+T細胞における4-1BBの発現の増加である。
【0029】
例示的な態様では、トランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株が提供される。株は、前記株の病原性遺伝子における変異、並びにトリプトファナーゼ(tnaA)をコードする核酸を含み、前記変異は、vjbR、asp14、及びmucRからなる群から選択され、前記変異は、病原性遺伝子を不活性化するものである。一実施形態では、変異された病原性遺伝子はvjbRであり、tnaAをコードする核酸は、構成的プロモーターの制御下で発現される。一実施形態では、変異された病原性遺伝子はBmΔvjbRであり、tnaAをコードする核酸は、大腸菌tnaAを含む。
【0030】
下記の番号を付した実施形態が意図され、それらは非限定的である。
【0031】
1.ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物。
【0032】
2.ブルセラ・メリテンシスの前記弱毒生細菌株が、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0033】
3.経口配合物である、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0034】
4.前記経口配合物が、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルジョン、シロップ、コロイド分散体、分散体、及び発泡性組成物からなる群から選択される、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0035】
5.前記経口配合物が錠剤である、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0036】
6.前記経口配合物がカプセルである、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0037】
7.前記経口配合物が懸濁液である、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0038】
8.前記経口配合物がエマルジョンである、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0039】
9.前記経口配合物がシロップである、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0040】
10.前記経口配合物がコロイド分散体である、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0041】
11.前記経口配合物が分散体である、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0042】
12.前記経口配合物が発泡性組成物である、項3、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0043】
13.非経口配合物である、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0044】
14.前記非経口配合物が、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、皮内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、腫瘍内、筋内及び皮下からなる群から選択される、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0045】
15.前記非経口配合物が静脈内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0046】
16.前記非経口配合物が動脈内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0047】
17.前記非経口配合物が腹腔内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0048】
18.前記非経口配合物が髄腔内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0049】
19.前記非経口配合物が皮内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0050】
20.前記非経口配合物が硬膜外である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0051】
21.前記非経口配合物が脳室内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0052】
22.前記非経口配合物が尿道内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0053】
23.前記非経口配合物が胸骨内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0054】
24.前記非経口配合物が頭蓋内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0055】
25.前記非経口配合物が腫瘍内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0056】
26.前記非経口配合物が筋内である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0057】
27.前記非経口配合物が皮下である、項13、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0058】
28.1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含む、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0059】
29.単回用量として配合されている、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0060】
30.単回単位用量として配合されている、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0061】
31.第2の治療剤を更に含む、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0062】
32.前記第2の治療剤が抗癌療法である、項31、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0063】
33.前記第2の治療剤が自己免疫療法である、項31、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0064】
34.前記第2の治療剤が抗炎症療法である、項31、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0065】
35.インドールを更に含む、項1、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0066】
36.ブルセラ・メリテンシスの前記弱毒生細菌株が、インドールを産生するよう改変されている、項35、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの医薬組成物。
【0067】
37.患者を処置する方法であって、ブルセラ・メリテンシスの弱毒生細菌株を含む医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0068】
38.ブルセラ・メリテンシスの前記弱毒生細菌株が、ブルセラ・メリテンシス16MΔvjbR(BmΔvjbR)である、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0069】
39.前記患者が癌に対する処置を必要としている、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0070】
40.前記癌が、黒色腫、乳癌、前立腺癌、膵癌、及び結腸直腸癌からなる群から選択される、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0071】
41.前記癌が黒色腫である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0072】
42.前記癌が乳癌である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0073】
43.前記癌が前立腺癌である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0074】
44.前記癌が膵癌である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0075】
45.前記癌が結腸直腸癌である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0076】
46.前記癌がキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法に耐性である、項39、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0077】
47.前記患者が自己免疫障害に対する処置を必要としている、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0078】
48.前記自己免疫障害が大腸炎である、項47、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0079】
49.前記自己免疫障害が炎症性腸疾患である、項47、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0080】
50.前記患者が炎症性障害に対する処置を必要としている、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0081】
51.前記炎症性障害が大腸炎である、項50、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0082】
52.前記炎症性障害が炎症性腸疾患である、項50、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0083】
53.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約0.001~約1000mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0084】
54.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約0.001~約100mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0085】
55.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約0.01~約100mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0086】
56.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約0.1~約100mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0087】
57.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約0.1~約10mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0088】
58.前記医薬組成物が、患者の体重1kg当たり約1~約5mgの有効成分の用量で前記患者に投与される、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0089】
59.前記患者においてCD8+T細胞応答を誘発する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0090】
60.前記患者においてCD4+T細胞応答を誘発する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0091】
61.前記患者において制御性T細胞応答を誘発する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0092】
62.前記患者においてCD8+T細胞上のPD-1を増加させる、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0093】
63.前記患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の数を増加させる、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0094】
64.前記患者の腫瘍微小環境においてCAR-T細胞の活性を増加させる、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0095】
65.前記患者の腫瘍微小環境を炎症促進性状態へと改変する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0096】
66.前記患者の腫瘍微小環境を、前記腫瘍微小環境におけるマクロファージを増加させることによって改変する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0097】
67.前記マクロファージが増殖性マクロファージである、項66、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0098】
68.前記マクロファージが非増殖性マクロファージである、項66、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0099】
69.前記患者の腫瘍微小環境を、前記腫瘍微小環境における樹状細胞を増加させることによって改変する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0100】
70.前記患者の腫瘍微小環境を、前記腫瘍微小環境におけるCD8+PD-1-T細胞を増加させることによって改変する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0101】
71.前記患者においてマクロファージの炎症促進性M1分極を促進する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0102】
72.前記患者におけるマクロファージを、炎症促進性サイトカイン/ケモカインを発現するよう誘導する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0103】
73.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインが、IL-6、IL-1α、IL-12b(IL12p40)、Ccl5(RANTES)、Cxcl10(IP-10)、Ccl2(MCP-1)、及びCcl3(MIP-1α)からなる群から選択される、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0104】
74.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがIL-6である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0105】
75.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがIL-1αである、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0106】
76.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがIL-12b(IL12p40)である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0107】
77.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがCcl5(RANTES)である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0108】
78.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがCxcl10(IP-10)である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0109】
79.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがCcl2(MCP-1)である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0110】
80.前記炎症促進性サイトカイン/ケモカインがCcl3(MIP-1α)である、項72、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0111】
81.前記患者においてVEGFの低減を誘導する、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0112】
82.CD-8+T細胞の炎症能を高める、項37、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0113】
83.前記高められた炎症能が、CD8+T細胞からのTNFαの産生の増加である、項82、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0114】
84.前記高められた炎症能が、CD8+T細胞からのIFNγの産生の増加である、項82、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0115】
85.前記高められた炎症能が、CD8+T細胞からのIL-2の産生の増加である、項82、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0116】
86.前記高められた炎症能が、CD8+T細胞におけるOX40の発現の増加である、項82、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0117】
87.前記高められた炎症能が、CD8+T細胞における4-1BBの発現の増加である、項82、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せの方法。
【0118】
88.トランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株であって、前記株が、前記株の病原性遺伝子における変異、及びトリプトファナーゼ(tnaA)をコードする核酸を含み、前記変異が、vjbR、asp14、及びmucRからなる群から選択され、前記変異が、前記病原性遺伝子を不活性化するものである、トランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【0119】
89.前記変異された病原性遺伝子がvjbRであり、tnaAをコードする前記核酸が、構成的プロモーターの制御下で発現される、項88、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意のトランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【0120】
90.前記変異された病原性遺伝子がBmΔvjbRであり、tnaAをコードする前記核酸が、大腸菌tnaAを含む、項88、任意の他の適切な項、又は適切な項の任意の組合せのトランスジェニック弱毒ブルセラ・メリテンシス株。
【0121】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、別の選択肢のみを指すように明示されていない限り、或いは別の選択肢が相互排他的でない限り、「及び/又は」を意味するのに使用されるが、本開示は、別の選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0122】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含んでいる」(並びに「含む」及び「含む(三人称単数形)」等の、含んでいるの任意の形態)、「有している」(並びに「有する」及び「有する(三人称単数形)」等の、有するの任意の形態)、「包含している」(並びに「包含する(三人称単数形)」及び「包含する」等の、包含しているの任意の形態)又は「含有している」(並びに「含有する(三人称単数形)」及び「含有する」等の、含有しているの任意の形態)の語句は、包括的である又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。
【実施例1】
【0123】
例示的な実験手順
本実施例は、本明細書に記載される実施例2~6において利用される例示的な材料及び方法を提供する。
【0124】
細菌培養及び接種。in vitro接種及びin vivo注射用のBmΔvjbRを調製するために、BmΔvjbRをトリプトンダイズ寒天(TSA)プレート上にストリークし、単一の単離コロニーが得られるまで37℃で3日間インキュベートした。実験に先立ち、TSAプレートからのBmΔvjbRの単一コロニーを2mlのトリプトンダイズブロス(TSB)培養チューブに接種し、37℃で振盪(250rpm)しながら24時間インキュベートした。マウスにおける接種前に、細菌を(10,000×g、1分)で遠心分離し、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、別記しない限り)で2回洗浄した。細菌ペレットを、OD600が1.0(およそ5×109個のCFU/ml)になるように1×PBSに再懸濁した。in vitro接種について、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Thermo Fisher Scientific社)中にMOI(感染多重度)20で、マクロファージ単層を有する24ウェルプレートの各ウェルに細菌を添加し、プレートを500×gで5分間遠心分離して、細菌とマクロファージとの相互作用を増強した。接種後、マクロファージを37℃で30分間インキュベートし、細菌の取り込みを可能にした。インキュベーションの30分後、内部移行されていない細菌を、細胞単層を温PBSで2回洗浄することによって取り出して、続いて50μg/mLのゲンタマイシンを含有する新鮮なDMEM培地を各ウェルに添加して、アッセイまで培養を続けた。in vivo動物実験では、マウスにおける腫瘍細胞の接種の9日後に、1×PBS 100μL中の5×107個のCFUのBmΔvjbRを、各マウスに静脈内注射した。
【0125】
マクロファージ培養。マウスBMDMの生成について、骨髄細胞を、滅菌条件下で6~8週齢のC57BL/6マウスの脛骨及び大腿骨から収集した。滅菌赤血球溶解緩衝液(0.8%NH4Cl)を使用することによって、赤血球を骨髄から除去した。次に、骨髄細胞(1×107個の細胞/プレート)を、15cmペトリ皿で10%FBS、10ng/mlのマウスM-CSF(PeproTech社)を含有し、且つペニシリン-ストレプトマイシン(100IU/ml及び100μg/ml)(Sigma社)を補充したDMEM中に播種した。3日目に、新鮮な培地と交換することによって、非接着細胞を除去し、接着マクロファージを新鮮な培地中で更に4日間培養し、使用前に5日目及び6日目に培地の半分を新鮮な培地と交換した。BMDM増殖について、細胞を5日目に激しくピペット操作することによって冷1×PBS中に回収した後、使用の更に2日前に成長させるために追加の培養プレートに再播種することができる。マウスRAW264.7(ATCC TIB-71)及びJ774A.1(ATCC TIB-67)マクロファージ細胞系はともに、ATCCの推奨に従って10%FBS及びペニシリン-ストレプトマイシン(100IU/ml及び100μg/ml)を含有するDMEM培地中で培養した。
【0126】
サイトカイン応答。BMDMを、抗生物質なしでDMEM 1.0mL中に2.0×105個の細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートのウェルに播種した。一晩の培養後、細胞に、MOI 20で加熱死細菌又は生BmΔvjbR細菌を接種した。処置の24時間後、細胞上清を回収し、遠心分離により細胞破片を除去し、Multiplex Mouse Cytokine/Chemokine Array 31-Plex技術(MD31、Eve Technologies社)を使用することによって、GM-CSF、IFNγ、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-5、IL-6、IL-9、IL-17、IP-10/CCL10、KC/CXCLl1、MCP-1/CCL2、M-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MIP-2/CXCL2、RANTES/CCL5、TNFα、及びVEGFのようなサイトカイン/ケモカインの存在について分析した。
【0127】
フローサイトメトリー分析。マウスCD8+T細胞単離キット(BioLegend社)を使用することによって単離されたCD8+T細胞を、BmΔvjbR処置マクロファージとともにin vitroで共培養した。次に、CD8+マーカーの特異的ゲーティング及びAqua Zombie NIR染色色素(BioLegend社)を使用することによる死滅細胞の排除後に、CD8+T細胞をフローサイトメトリーによって分析した。PD-1、CD69、4-1BB、CD27、CD62L及びOX40のCD8+T細胞マーカーは、感染BMDMとの共培養直後又は抗CD3/CD28抗体による再刺激の3日後のいずれかに評価した。細胞内サイトカイン染色は、モネンシン及びブレフェルディン(BioLegend社)を使用することによって実施し、細胞をIL-2、TNFα及びIFNγの産生について評価した。同様に、BMDMは、M1マクロファージの4-1BBL及びCD38のような共刺激リガンドの発現について個別に分析した。フローサイトメトリーデータは全て、Fortessa X 20(BD Biosciences社、CA)で取得し、FlowJo(Treestar社、OR)を使用することによって分析した。
【0128】
CAR-T細胞調製。MSGV1γレトロウイルスベクター骨格を、本発明者等のこれまでの研究において記載されるように、CEA特異的scFvを発現するよう改変した。改変されたMSGV1形質導入PLAT-E細胞系を発現するCEAから産生されたレトロウイルス上清を収集した。簡潔に述べると、B6 Thy 1.2マウスから単離されたCD8+T細胞を、先述したようなプロトコールに従って、5μg/mlのポリブレン(Sigma Aldrich社、USA)の存在下でCEAを含有するウイルス上清で形質導入した。形質導入された細胞は、c-mycの発現によって陽性と同定された。
【0129】
動物実験。6~8週齢の野生型(WT)C57BL/6(B6)Thy 1.1マウス(Jackson Laboratories社)に、0日目に右側腹部において1×106個のMC32 CEA癌細胞を皮下注射した。続いて、マウスを3つの異なる群に分割し(n=5)、各群に腫瘍細胞の接種の9日後に、1×PBS(Ctrl)、加熱死細菌(HK)又は弱毒生細菌(Live)のいずれかを付与した。腫瘍の誘導の12日後に、マウスの群全てに6~8週齢のWT C57BL/6(B6)Thy 1.2マウス(6~8週齢、雄;Jackson Laboratories社)から単離及び調製したCEA CAR-T細胞を付与した。
【0130】
マクロファージにおけるBmΔvjbRの蛍光イメージング。BMDMを24ウェルプレートにおいてカバースリップガラスに播種し、BmΔvjbRを接種した。接種の1、4、及び24時間後に、細胞を1×PBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(1×PBS中)で室温にて15分間固定した。次に、固定した細胞を1×PBSで3回洗浄し、1%Triton X-100で15分間透過処理し、1×PBS中の5%ウシ血清アルブミンで30分間ブロックした。続いて、細胞をウサギ抗ブルセラ抗体(1:500希釈、Bioss Inc.社)で1時間、二次ロバ抗ウサギIgG-CF568抗体(1:1,000希釈、Biotium,Inc.社)で1時間染色した。次に、細胞に、NucBlue(商標)Stainを有するProLong Glass Antifade Mountant(Thermo Fisher Scientific社)を載せた。腫瘍組織中の細菌を染色するために、MC32腫瘍組織のホルマリン固定したパラフィン包埋切片を4μmで切片にし、帯電したスライドガラス上に配置した。切片をキシレン中で脱パラフィンし、段階的なアルコールで再水和した。抗原回収は、クエン酸緩衝液を使用して圧力窯(Decloaking Chamber、Biocare Medical社、パチェーコ、CA)中で実施した。組織は、細胞染色と同様の手順を採択することによって染色した。画像は全て、Nikon Eclipse Ti2蛍光顕微鏡を使用して取得した。
【0131】
細菌定量化。マクロファージにおけるBmΔvjbR生存を検出するために、BMDM、J774A.1、又はRAW 264.7を、抗生物質なしでDMEM 1.0mL中の2.0×105個の細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートのウェルに播種した。一晩の培養後、細胞に、MOI 20で生BmΔvjbR細菌を接種した。細菌接種に続き、上述の手順を行った。接種の1、4、及び24時間後に、細胞を1×PBSで3回洗浄し、0.5%のTriton X-100中に30分間溶解し、細胞溶解物の段階希釈物を、1×PBSへの連続的な10倍希釈に付し、希釈した細胞溶解物10μlをTSAプレートにストリークした。また、接種した細菌のCFUを、TSAプレート上の段階希釈スポッティングによってアッセイした。プレートを37℃で3日間インキュベートした後、CFUを計数した。癌保有マウスの種々の組織におけるBmΔvjbRのCFUアッセイのため、マウスを注射の19日後に屠殺し、肺、脾臓、腎臓、肝臓及び腫瘍組織を収集して、別個に均質化した。上記のように、ホモジネートを段階希釈して、CFU計数のためにTSAプレート上にスポッティングした。
【0132】
比較代謝分析。CD8+T細胞の解糖状態の差は、先述のプロトコールを使用して細胞外フラックス(XF)アナライザー(Agilient社)を使用して分析した。簡潔に述べると、懸濁液中のT細胞を、共培養した培地から取り出して、96ウェルのseahorseプレートに播種した。それらの細胞外フラックス及び補償的な解糖を、解糖活性化剤及び阻害剤を使用して評価した。
【0133】
腫瘍切片のイメージング及び免疫組織化学。パラフィン包埋した固形腫瘍試料を、ミクロトームを用いて5μm切片にスライスした。これらの切片から調製したスライドを、蛍光顕微鏡法、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色、及びマスサイトメトリー分析用に加工処理した。
【0134】
イメージングマスサイトメトリー分析。BmΔvjbR処置マウス又は対照から得られた腫瘍試料のマスサイトメトリー分析を、それぞれDNA、Ki67抗原、CD8+T細胞、B220(B細胞)、CD11b(樹状細胞)及びF4/80(マクロファージ)の定量化、イメージング、及び分析用に加工処理した。次元削減技法を採択して、マウスの処置群又は未処置群のヒートマップからt分布型確率的近傍埋め込み(t-SNE)プロットを構築した。近傍分析は、基本的な統計的手法を使用して、強化された細胞間相互作用の蓋然性を見出すために構築された。
【0135】
RNA単離、cDNA調製、及びqPCR分析。BMDMの処置の24時間後、細胞を冷DPBSで2回洗浄し、トリゾール試薬中に溶解した。Direct-zol RNA Miniprep Kits(Zymo Research社)を使用して製造業者のプロトコールに従って、RNAを抽出した。cDNA調製について、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific社)を使用して製造業者のプロトコールに従って、cDNAを単離RNA(1μg/反応)から合成した。マウスサイトカインの定量化は、TaqMan Fast Advanced Master Mixを有するTaqMan Array 96-Well Fast Platesを使用して実施した。PCR反応は、StepOnePlus Real-Time PCR System(Applied Biosystems社)において実行した。遺伝子発現は、ΔΔCT法を使用することによって分析した。
【実施例2】
【0136】
BmΔvjbRは骨髄由来マクロファージ(BMDM)の抗癌表現型を誘導する
本実施例は、BmΔvjbRの抗癌能を特徴付けるための幾つかの実験を提供する。第一に、BmΔvjbRが免疫細胞から抗癌炎症促進性表現型を誘発するという仮説を検証するために、マウスBMDMと弱毒生株を24時間インキュベートし、続いて、TaqMan qRT-PCRアレイを使用して、免疫関連遺伝子の遺伝子発現を調べた。生BmΔvjbRは、IL6、IL1α、IL12b(IL12p40)、Ccl5(RANTES)、Cxcl10(IP-10)、Ccl2(MCP-1)、及びCcl3(MIP-1α)を含む炎症促進性サイトカイン及びケモカインを発現するようにBMDMを誘導するが、加熱死(HK)対照では誘導しないことがわかった(図1)。
【0137】
第二に、サイトカイン発現プロファイルがこの系における遺伝子発現プロファイルと同じ傾向を辿るという仮説を検証するために、サイトカインアレイ及び定量的ELISA技術を使用して、生BmΔvjbRでの処置の24時間後にBMDM培養培地中のサイトカイン産生を測定した。サイトカイン産生プロファイルは、HK又は処置なし(Ctrl)とは対照的に、生BmΔvjbRで処置されたBMDMにおける炎症促進性サイトカイン及びケモカインの分泌の誘導を伴って、遺伝子発現プロファイルを裏付けることがわかった(図2A図2B)。具体的には、T細胞化学誘引物質Cxcl10(IP-10)、Ccl5(RANTES)、及びMCP-1、並びにIL6及びTNFαを含む活性化マクロファージによって産生されることが知られているサイトカイン及びケモカインの有意な増加が観察された。興味深いことに、BMDMを生BmΔvjbRとともにインキュベートした後に、血管内皮増殖因子(VEGF)のレベルの有意な減少が観察された。このタンパク質は、癌における血管新生の重要なメディエーターであり、腫瘍発達及び転移と関連付けられることが多い。まとめると、いかなる理論によっても縛られるものではないが、これらのデータにより、BmΔvjbRがそれぞれT細胞の活性化因子及び誘引因子である炎症促進性サイトカイン及びT細胞介在性化学誘引物質の産生を引き起こし得ることが示唆され得る。
【0138】
第三に、BmΔvjbRが、免疫細胞を炎症促進性状態へと分極させるという仮説を検証するために、フローサイトメトリーを使用して、BMDM極性化及び共刺激分子発現をモニタリングした。ほとんどのBMDMは、生BmΔvjbRとのインキュベーション後、それらの表面にM1排他的マーカー(exclusive marker)であるCD38を発現するM1マクロファージに分極されていることがわかった(図2C図2D)。タンパク質発現データによれば、CD38遺伝子転写レベルもまた、生細菌株とのインキュベーション後に劇的に増加した(が、HK対照では増加しなかった)(図1)。
【実施例3】
【0139】
BmΔvjbRはCD8+T細胞において抗癌表現型を誘導する
本実施例は、BmΔvjbRがCD8+T細胞の抗癌炎症能を高めることができるかどうかを検査するための実施例を提供する。弱毒生BmΔvjbR株がマクロファージの分極を通じてCD8+T細胞を活性化するという仮説を検証するために(図2C図2D)、生又はHK細菌のいずれかで前処置されたBMDMとの共培養CD8+T細胞を利用した。BmΔvjbRに曝露されたBMDMは、活性化マーカーCD69のアップレギュレーションを通じて、対照と比較してより効率的にCD8+ T細胞を活性化し、CD8+T細胞からのTNFα、IFNγ及びIL-2の有意により高い産生を誘導することがわかった(図3A図3C)。更に、OX40及び4-1BBを含む共刺激マーカー発現は、BmΔvjbR処置BMDMと共培養したCD8+T細胞においてより高かった(図3C)。CD8+T細胞のリコール応答は、それらの抗腫瘍有効性にとって極めて重要である。活性化されたCD8+T細胞がそれらの機能的リコール能を保持したという仮説を検証するために、抗CD3/抗CD28抗体を使用して、活性化の3日後にCD8+T細胞を再刺激した。CD8+T細胞のリコール応答は、再刺激の3日後に高められ、より低いPD-1発現並びにTNFα及びIFNγを含む炎症促進性サイトカインのより高い発現を示すことがわかった(図3C)。CD8+T細胞はまた、有意に高い細胞外酸性化速度(ECAR)を有し、生又はHK BmΔvjbRで処置されたBMDMで活性化した場合に、より高い解糖活性を示し、高度に活性化されたCD8+T細胞表現型を示した(図3D)。いかなる理論によっても縛られることなくまとめると、結果により、CD8+T細胞の活性及び代謝は、BmΔvjbR処置マクロファージの存在下で非常に高められることが示唆され得る。
【実施例4】
【0140】
BmΔvjbRは多様な細胞応答を誘導する
BMDM及びCD8+T細胞の機能及び抗癌能を高めるためにBmΔvjbRを利用することができることを示す実験を追求して、本実施例は、BmΔvjbR処置を利用して、in-vivoマウス固形腫瘍モデル系において腫瘍微小環境(TME)を変更させることができるかどうかを実証するための実験を提供する。外植した固形腫瘍切片由来のB細胞並びに増殖性及び非増殖性免疫細胞の存在量を定量化するためのイメージングマスサイトメトリー(IMC)分析を実施した。これらの研究に関する実験スキームには、Thy 1.1 C57BL/6マウスの右側腹部におけるMC32 CEA結腸癌細胞の皮下接種を含まれた(図4A)。腫瘍の誘導の7日後に、CD8+T細胞をThy 1.2 C57BL/6マウスから単離し、形質導入して癌胎児Ag(CEA)CAR-T細胞を生成した。マウスの実験群(n=5)を、生又はHK BmΔvjbRのいずれかで処置した一方で、対照群は、PBSで偽処置した(n=5)(図4A)。生BmΔvjbR処置マウスは、対照と比較してTMEにおける免疫細胞のより高い複雑性を有することがわかった(図4B図4C)。TMEにおける細胞表現型間又は内の有意に強化された相互作用を決定するために、CyTOFデータから近傍結合プロットを構築した。tSNEプロット(図4B)及び近傍結合分析(図4C)により、自然免疫細胞が活性化され、処置を付与されたマウスのTMEにおいて量的により高いことが示された。マスサイトメトリー分析から再構成された画像は、CAR-T細胞の養子移入を受けたBmΔvjbR処置マウスのTMEにおいて、より多くの免疫細胞、特にF4/80+マクロファージを示した(図4D)。したがって、特定の自然免疫細胞がTMEから定量化され、Ki67-F4/80+(非増殖性マクロファージ)、Ki67+F4/80+(増殖性マクロファージ)、及びCD11c+(樹状細胞)の数が、CAR-T細胞の養子移入を受けたBmΔvjbR処置マウスにおいて有意に増加していることがわかった(図4E)。更に、CD8+PD-1-T細胞はまた、対照と比較してBmΔvjbRを付与されたマウスのTMEにおいても高かった。全体として、いかなる理論によっても縛られることなく、これらの結果は、マクロファージ及び樹状細胞の数がCAR-T細胞の養子移入を受けた処置マウスのTMEにおいて有意に増加したことを示すことができ、これらの免疫細胞がCAR-T腫瘍浸潤を促進し、これらの動物において腫瘍退縮を駆動し得るという仮説と一致していた。
【実施例5】
【0141】
BmΔvjbR処置は抗腫瘍有効性を高める
本実施例は、BmΔvjbR処置がCAR-T細胞療法の抗腫瘍有効性を高めることができるかどうかを実証するための実験を提供する。BmΔvjbR処置マウスは、有意により高い生存率を示し(図5A)、対照よりも劇的に低い腫瘍量を有している(図5B)ことがわかった。更に、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色により、これらのマウスにおいて有意に低い腫瘍量が確認された(図5C)。BmΔvjbR処置動物におけるCD8+T細胞の組織分布を研究するために、分離された腫瘍内部のThy 1.2 CD8+T細胞の存在量を、フローサイトメトリー及び共焦点顕微鏡法を使用して測定した。対照と比較して、処置されたマウス生BmΔvjbRの固形腫瘍に浸潤するCD8+T細胞の数の有意な増加が見られることがわかった(図5D~5E)。
【実施例6】
【0142】
BmΔvjbRは腫瘍組織を選択的にコロニー形成する
本実施例は、処置マウスからのBmΔvjbRクリアランスを測定するための実験を提供する。静脈内注射の19日後、腫瘍及び他の臓器由来の組織をコロニー形成単位(CFU)アッセイ用に均質化した。また、腫瘍組織を免疫蛍光顕微鏡法分析のために固定した。腫瘍組織においてBmΔvjbRは見出された(図5F)が、他の臓器では見られなかった(図5G)。in vitroでのマクロファージにおけるBmΔvjbRの生存率もまた、免疫蛍光染色及びCFU計数を使用してモニタリングした。免疫蛍光顕微鏡法を使用して、BMDM中の多数の細菌細胞が接種後1時間及び4時間後に見出された。しかしながら、24時間では観察されたものは少なかった(図5H)。重要なことに、生細菌のみが感染の1時間後にBMDMから回収され、細菌は、BMDM、J774A.1、及びRAW 264.7では接種後24時間よりも長く生存しなかった(図5I)。いかなる理論によっても縛られることなく、これらの結果により、BmΔvjbR株は腫瘍を選択的に標的とし、マクロファージでは短期間しか生存せず、処置後に非腫瘍組織から迅速に排除されたことが示され得る。
【0143】
本実施例は、BmΔvjbRがCD8+T細胞及びマクロファージを活性化し、サイトカイン産生(TNFα及びIFNγ)の増加を特徴とする再活性化された免疫環境を支持してTMEを崩壊させることを報告している。TMEは、癌の発生及び進行に寄与する腫瘍細胞と周囲の細胞との間の相互作用を有する。重要なことに、癌細胞は、TMEにおける免疫監視及び癌クリアランスを抑制する因子を発現し、それにより癌細胞の制御不能な増殖に対して寛容な環境を作り出す。本実施例では、新規且つ安全な弱毒生細菌株BmΔvjbRを利用して、TMEを炎症促進性状態にリモデリングし、それにより癌の進行及び腫瘍形成を制限することができる。更に、BmΔvjbR処置は、抗原特異的CD8+T細胞の養子移入と組み合わせると、劇的に損なわれた腫瘍成長及び増殖をもたらし得る。したがって、この弱毒生細菌株は、癌の免疫監視及び制御を増強するのに利用することができる。
【0144】
これまでの研究により、弱毒生細菌による処置が様々なメカニズムを使用して腫瘍形成を制限することができることが実証されており、これらの細菌アプローチの幾つかは、臨床試験に進んでいる。例えば、リステリア属(Listeria)、サルモネラ属(Salmonella)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)等の細菌ベクターは、直接的な癌細胞の細胞傷害性、癌特異的免疫の増強、及び一般的な免疫調節効果を介した全体的な抗腫瘍免疫の促進において様々なレベルの成功を伴って研究されてきた。更に、多数のこれらの細菌ベクターは、抗癌免疫を促進し得る増強されたエフェクター特性を発現するよう操作されている。これまでに使用された細菌ベクターは全て、固有の有害又は有毒の特徴を有し、最適には至らない安全性プロファイル又は送達経路が、癌療法/処置におけるそれらの幅広い有用性を大幅に制限する可能性がある。観察された否定的な特徴の中には、腹腔内送達経路、非癌性組織における生存可能な微生物の残留性、相当なエンドトキシン活性、病原性の逆戻りの可能性、及び既存の宿主免疫に起因した制限が見られる。これまでのところ、BmΔvjbRが、以前に研究された細菌ベクターの多くに共有される共通有害特性を保有することを示唆する証拠はない。更に、この研究は、CAR-T療法の状況で弱毒生細菌処置を組み合わせることの最初の説明を提供し、それによりこれらのアプローチを用いて達成することできる相乗効果を実証する。
【0145】
これらの進歩にもかかわらず、TMEの本発明者らの知識の高まり及び標的とされ得る様々なメカニズムに基づいて、弱毒生細菌処置戦略におけるより選択的で頑強な向上が想定され得る。抗腫瘍T細胞のPD-1又はCTLA4介在性チェックポイント陰性調節を防止する幾つかの新規癌免疫療法の強力な臨床有効性を考えると、生物製剤/抗体介在性免疫療法を必要とせずに同じチェックポイント阻害を達成する細菌抗癌ベクターが非常に望ましい。具体的には、免疫細胞の表面上に低レベルのチェックポイントタンパク質を誘導する細菌株は、TMEの免疫抑制の特徴に対処するための魅力的なツールとなり得る。この目的で、本出願は、BmΔvjbRが腫瘍形成を制限する重要な分子メカニズムが、CD8+T細胞上でのPD-1の発現を抑制していることを示した。
【実施例7】
【0146】
例示的な実験手順
本実施例は、本明細書に記載されるような実施例8~実施例10で利用される例示的な材料及び方法を提供する。
【0147】
コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルの誘導。CIAは、雄C57BL/6マウスに、完全フロイントアジュバント(CFA;Chondrex社)中のトリII型コラーゲン(Chondrex社;100μg)のエマルジョン100μlを26ゲージの針を備えたガラス製のツベルクリンシリンジを使用して注射した。次に、マウスを、関節炎症の発症及び臨床的関節炎スコアについて60日目まで評価した。
【0148】
細菌培養。BmΔvjbR又はBmΔvjbR::tnaAを、先述したように培養し、実験用に調製した。
【0149】
インドール産生BmΔvjbR::tnaA株の操作。インドール産生弱毒BmΔvjbR株を生成するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているFernandez-Prada CM等、Infect Immun.、2003年;71(4):2110~9頁に記載されているように、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(大腸菌)tnaA遺伝子を広域の細菌発現プラスミド(pBBR1MCS6Y)にクローニングした。続いて、プラスミドをBmΔvjbRに移入した。
【0150】
インドール検出及び定量化。BmΔvjbR::tnaAによるインドール産生は、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)によって検出された。トリプシンダイズブロス(TSB)培地中での37℃で24時間の培養後、代謝産物をLC-MSアッセイ用に氷冷メタノールを使用して抽出した。液体クロマトグラフィタンデム質量分析は、バイナリーポンプHPLC(Vanquish、Thermo Scientific社)と連結されたTSQ Altisトリプル四重極質量分析計(Thermo Scientific社、ウォルサム、MA)で実施した。インドール濃度は、インドールアッセイキット(Sigma-Aldrich社)を使用して測定した。
【0151】
BmΔvjbR::tnaA処置及びTregのACT。CIAを雄C57BL/6マウスにおいて誘導した。CIA誘導の7日後に、マウスに5.0×107個の生BmΔvjbR::tnaA又はPBS対照を静脈内(i.v.)注射した。BmΔvjbR::tnaA+Tregコンビナトリアル処置群では、マウス(n=5)に、BmΔvjbR::tnaA投与の1週後に、ナイーブC57BL/6マウスのドナーリンパ節(LN)及び脾臓から得られた2.5×106個のCD4+CD25+Tregを養子移入した。
【0152】
CIAマウスから回収されたBmΔvjbR::tnaAの計数。BmΔvjbR::tnaA(5.0×107個)をC57BL/6マウスに静脈内注射し、細菌分布及び生存率をコロニー形成単位(CFU)アッセイによって分析した。マウスを、細菌の1、3、7、14、及び21dpiに屠殺した。脾臓、肝臓、LN及び関節を均質化し、クロラムフェニコール抗生物質を補充したトリプシンダイズ寒天(TSA)プレートに蒔いた。CFUは、細菌の培養の3日後に計数した。
【0153】
BmΔvjbR特異的IgG抗体の検出のための血清ELISA。CIA誘導C57BL/6マウスを、BmΔvjbR及び/又はBmΔvjbR::tnaA細菌の1、3、7、14、及び21dpiに屠殺した。血液試料をマウスから採取し、室温での血液の凝固、続く2,000×gで20分間の遠心分離によって、血清を単離した。血清試料は、マウスブルセラ属抗体IgG ELISAキット(AFG Scientific社)を使用することによって、抗BmΔvjbR IgG抗体についてアッセイした。
【0154】
サイトカイン応答。BMDMを、抗生物質なしでDMEM中に2.0×105個の細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートに播種した。一晩の培養後、細胞に感染多重度20でBmΔvjbR又はBmΔvjbR::tnaA細菌を接種した。処置の24時間後に、細胞上清を収集し、Proteome Profiler Mouse Cytokine Array Kit(R&D Systems,Inc.社)を使用することによって、サイトカイン/ケモカインの存在について分析した。
【0155】
フローサイトメトリー分析。細胞染色及びフローサイトメトリー分析は、記載される標識試薬を使用して実施した。簡潔に述べると、表面又は細胞内染色を、単一細胞懸濁液で実施し、LSR Fortessa細胞アナライザー(BD社)を使用して分析した。関節も加工処理し、表S2に列挙された抗体で同様に染色し、データはCyTEKオーロラフローサイトメーター(Cytek Biosciences社)で取得した。マルチパラメトリック分析について、データをFlowJo v10で分析し、ヒートマップ及びtSNEプロットとして表した。
【0156】
組織学及び免疫蛍光法。マウスをCIA誘導の60日後に人道的に屠殺し、組織切片を分析した。簡潔に述べると、後足の足及び膝を取り出し、10%ホルマリンで固定し、Formical-4(Decal chemical社、トールマン、NY)で脱灰した。次に、固定した組織切片をH&E及び/又はサフラニンOファストグリーン(Saf-O)染色で染色した。続いて、H&E及びSaf-O染色した切片を、0~4の半定量システムによって評価した。核染色としてTreg用のFITC抗マウスFoxP3抗体(Ab)及びDAPIを使用することによって、免疫蛍光染色及び顕微鏡法を脱パラフィン切片で実施した。
【実施例8】
【0157】
インドール及び免疫介在性炎症
ブルセラ・メリテンシスの弱毒株を、病原性の主要制御因子であるvjbRの欠失を有する細菌ベクター用に選択した(BmΔvjbR)。他のグラム陰性生物と同様に、ブルセラ属株は、エンドトキシン活性を欠如したリポ多糖類(LPS)を発現する。重要なことに、BmΔvjbRは、免疫適格及び免疫不全のマウス、ヤギ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類において安全であることが知られている。本実施例では、トリプトファナーゼ(tnaA)を発現するよう操作されたBmΔvjbR、即ち、BmΔvjbR::tnaAは、Tregの運命及び機能を調節する分子であるトリプトファン代謝産物インドールを産生する。
【0158】
インドールは、免疫細胞及び非免疫細胞における幾つかの炎症特性を抑制することが可能であり、Treg分化を増強する。図7A及び図7Bに示されるように、インドールは、大腸菌LPS(eLPS)及び熱失活サルモネラ・チフィリウム[HKST]刺激後のCD11b+脾臓細胞におけるTNF-α産生を抑制した。更に、インドールは、微生物アゴニスト(eLPS及びHKST)に応答して、Akt及びERKシグナル伝達経路を抑制することによってそれらの活性化を弱めた。更に、インドールは、in vitroで用量依存的様式にてFoxP3によって測定される誘導Treg(iTreg)へのナイーブCD4+CD25-T細胞の分化を増強した(図7C及び図7D)。いかなる理論によっても縛られることなく、インドールは、自己免疫疾患及び炎症促進性疾患における免疫介在性炎症を改善すると考えられる。
【実施例9】
【0159】
インドールはコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて自己免疫応答を低減させる
本実施例は、インドールがマウスコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて自己免疫応答を低減させることを実証している。第一に、CIAの重症度は、インドール処置マウスにおいて有意に減衰し、これは、対照における1.6±0.5と比較して、(50日)目の臨床的スコア0.8±0.2(平均値±SEM)を示した(図7E)。しかしながら、インドールの単回用量は、炎症においてわずかな減少を示したに過ぎなかった。
【0160】
同様に、単回用量の処置は、共焦点顕微鏡法によって評価された場合のTregの浸潤において有意な変化を誘導しなかった(図7F及び図7G)。これらの見解は、マウスのリンパ節(LN)及び脾臓から得られた細胞において、インドールが対照と対比して(p<0.001)、CD4+FoxP3+Tregの増殖を有意に促進し、免疫抑制分子であるPD-1の発現の増加によってそれらの活性化を増強したことを示すex vivo実験の見解と対比している(図7F及び図7I)。
【実施例10】
【0161】
BmΔvjbR::tnaAを介したインドールの送達
本実施例は、細菌ベクターにおけるインドールの持続的な送達が分子の免疫調節効果の持続性に影響を及ぼし、CIAにおける自己免疫及び炎症の減衰をもたらすかどうかを評価した。安全な弱毒生細菌株(即ち、BmΔvjbR::tnaA)は、インドールを構成的に産生するよう操作された(図8A図8C)。第一に、操作された細菌株は、主に脾臓において接種後7日(dpi)間、並びに肝臓及び腎臓において3日間生存することが観察された(図8D)。細菌は、マウスの関節には浸透しなかった(図8D)。第二に、細菌の3~21dpiからの抗ブルセラ属IgG抗体の検出を介して、低レベルの免疫原性が観察された(図8E)。更に、7dpiにコラーゲン誘導関節炎(CIA)が負荷されたマウスから回収されたBmΔvjbR::tnaA細菌株は依然として、インドール(50~70μM)を産生することができることが決定された。更に、サイトカインアレイプロファイリング分析により、BmΔvjbR::tnaAは、IL-10の発現を誘導し(図9A)、これがTregの活性を促進し、自己免疫及び炎症を低減させることが示された。
【0162】
驚くほどに、BmΔvjbR::tnaAはまた、BmΔvjbR親株と比較して、マクロファージ(Mφ)におけるIL-6、IL-1β、及びTNF-α等の更なる炎症促進性サイトカインの発現を有意に(p<0.01)低減させた(図9A)。更に、BmΔvjbR::tnaAは、骨髄由来Mφ(BMDM)と共培養した場合、BmΔvjbR親株と比較して、総CD4+T細胞を有意に低減させた(p<0.001)だけでなく、TNF-α及びIFN-γなどの炎症促進性サイトカインの産生も低減させた(p<0.001)(図9B)。また、BmΔvjbR::tnaAは、Tregの増殖を促進し、IL-10産生(p<0.001)及びPD-1発現(p<0.01)によって評価された場合に、その活性を有意に増強した。第三に、CIAモデルでは、関節炎スコア及び発生率における有意な低減が、BmΔvjbR::tnaAによる処置後に観察された。自己免疫及び炎症のこの改善は、BmΔvjbR::tnaA処置をTregのACTと組み合わせた場合に更に増強された(図9C)。
【0163】
BmΔvjbR::tnaAで処置したマウスの関節への浸潤性炎症細胞の有意に低減された数(p<0.01)が観察された。この効果は、対照群と比較して、BmΔvjbR::tnaA処置、続くTregのACTによって更に増強された(p<0.001)(図9D)。最終的に、BmΔvjbR::tnaAで処置したマウスは、膝断面のH&E分析及びサフラニンO(Saf-O)染色(コラーゲン投与の60日後)によって明らかであるように、関節への低減された浸潤物を示した。驚くほどに、これらの所見は、TregのACTの付加によって更に減衰された(図9D)。また、対照と比較して、BmΔvjbR::tnaAで処置したマウスでは、総CD4+T細胞の比率における有意な低減及びTregの比率における劇的な増加(p<0.001)が見られた(図9E)。
【0164】
BmΔvjbR::tnaAの作用機序を同定するために、マルチパラメトリックCyTEK分析を、対照、Tregを用いたACTのみ、又はTregを用いたACT及びBmΔvjbR::tnaA群の関節から単離した細胞から行った。BmΔvjbR::tnaAは、Treg増殖を促進することに加えて、B細胞の比率を低減させることが観察された(図9F及び9G)。全体として、BmΔvjbR::tnaAは、炎症促進性微小環境をリモデリングし、Tregの増殖及び抑制機能を促進し、またCIAモデルにおいてB細胞介在性免疫を調節することができる。
図1
図2A
図2B
図2CD
図3AB
図3CD
図4ABC
図4DE
図5ABC
図5DE
図5FG
図5HI
図6
図7ABC
図7DEF
図7GHI
図8ABC
図8DE
図9AB
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
【国際調査報告】