(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】アクリル酸を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 51/487 20060101AFI20240711BHJP
C07C 57/05 20060101ALI20240711BHJP
C07C 51/25 20060101ALN20240711BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07C51/487
C07C57/05
C07C51/25
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505152
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022070166
(87)【国際公開番号】W WO2023006503
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ティレ・ギースホフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ハモン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ズロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ライン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・クラウウェルス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC46
4H006AD30
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA21
4H006BS10
4H039CA65
4H039CC30
(57)【要約】
アクリル酸を調製するためのプロセスであって、高温での物質の固体状態において触媒上での分子状酸素による少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化により、アクリル酸、水蒸気及び二次成分を含む生成気体混合物が得られ、次いで、生成気体混合物が、分離内部を備えた凝縮カラムに導かれ、生成気体混合物は、凝縮カラム内でそれ自体の中に上昇させられ、分別凝縮を受け、生成気体混合物を、変換生成物及びアクリル酸よりも高沸点の二次成分を含む底部液、目標生成物として水及び全体として枯渇した二次成分を含む粗アクリル酸、アクリル酸及び二次成分を依然として含む酸性水、並びに水よりも低沸点の二次成分を含む残留気体混合物に分離し、目標生成物は、サイドドローを介して凝縮カラムから導出され、サイドドローは、生成気体混合物の凝縮カラムへの供給点を上回り、生成物と接触する凝縮カラムの部分は、ステンレス鋼製であり、凝縮カラムに供給される物質の流れのうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンのための供給源を含み、ハロゲン化物イオンは、サイドドローの上方の凝縮カラムの分離内部の領域において除去される、プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸を調製するためのプロセスであって、高温での物質の固体状態における触媒上での分子状酸素によるアクリル酸の少なくとも1つのC
3前駆体の不均一触媒気相部分酸化により、アクリル酸、水蒸気及び二次成分を含む生成気体混合物が得られ、次いで、前記生成気体混合物が、分離内部を備えた凝縮カラムに導かれ、前記生成気体混合物は、前記凝縮カラム内でそれ自体で上昇させられ、分別凝縮を受け、前記生成気体混合物を、変換生成物及びアクリル酸よりも高沸点の二次成分を含む底部液、目標生成物として水及び全体として枯渇した二次成分を含む粗アクリル酸、アクリル酸及び二次成分を依然として含む酸性水、並びに水よりも低沸点の二次成分を含む残留気体混合物に分離し、前記目標生成物は、サイドドローを介して前記凝縮カラムから導出され、前記サイドドローは、前記生成気体混合物の前記凝縮カラムへの供給点を上回り、生成物と接触する前記凝縮カラムの部分は、ステンレス鋼製であり、前記凝縮カラムに供給される物質の流れのうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンのための供給源を含み、ハロゲン化物イオンは、前記サイドドローの上方の前記凝縮カラムの前記分離内部の領域において除去される、プロセス。
【請求項2】
前記ハロゲン化物イオンが、フッ化物イオン及び/又は塩化物イオンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アクリル酸のC
3前駆体が、プロペン及び/又はアクロレインである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
ハロゲン化物イオンのための供給源を含む前記物質の流れが、水、プロペン、水酸化ナトリウム溶液、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フタル酸ジエチル及び/又はフェノチアジンである、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
デュアルフロートレイ及びクロスフロートレイが、前記凝縮カラム内の分離内部のために使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
生成物と接触する前記凝縮カラムの前記部分が、16%~21重量%のクロム及び8%~26重量%のニッケルを有するステンレス鋼から作製される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
生成物と接触する前記凝縮カラムの前記部分が、更に2%~5重量%のモリブデンを有するステンレス鋼から作製される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
生成物と接触する前記凝縮カラムの前記部分が、更に1.2%~2.0重量%の銅を有するステンレス鋼から作製される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
液体Fが、前記サイドドローの上方の前記凝縮カラムの前記分離内部の前記領域において前記凝縮カラムから抜き取られる、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記サイドドローで抜き取られた前記粗アクリル酸に基づいて、0.0001%~0.5重量%の液体Fを抜き取る、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
ハロゲン化物イオンが前記液体Fから除去され、次いで前記液体Fが前記凝縮カラムにリサイクルされる、請求項9又は10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ハロゲン化物イオンが塩基性イオン交換体によって前記液体Fから除去される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体Fが、前記凝縮カラムから排出された前記底部液と組み合わされる、請求項9又は10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記液体Fが、前記凝縮カラムから排出された前記酸性水と組み合わされる、請求項9又は10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記凝縮カラムからの前記物質の流れ中のハロゲン化物含有量が、前記物質の流れに基づいて、0.002重量%未満である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アクリル酸を調製するためのプロセスであって、高温での物質の固体状態において触媒上での分子状酸素による少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化により、アクリル酸、水蒸気及び二次成分を含む生成気体混合物が得られ、次いで、生成気体混合物が、分離内部を備えた凝縮カラムに導かれ、生成気体混合物は、凝縮カラム内でそれ自体の中に上昇させられ、分別凝縮を受け、生成気体混合物を、変換生成物及びアクリル酸よりも高沸点の二次成分を含む底部液、目標生成物として水及び全体として枯渇した二次成分を含む粗アクリル酸、アクリル酸及び二次成分を依然として含む酸性水、並びに水よりも低沸点の二次成分を含む残留気体混合物に分離し、目標生成物は、サイドドローを介して凝縮カラムから導出され、サイドドローは、生成気体混合物の凝縮カラムへの供給点を上回り、生成物と接触する凝縮カラムの部分は、ステンレス鋼製であり、凝縮カラムに供給される物質の流れのうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンのための供給源を含み、ハロゲン化物イオンは、サイドドローの上方の凝縮カラムの分離内部の領域において除去される、プロセス。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、例えば、ポリマー分散体(おそらくアルカノールとのエステルの形態でも)及び水超吸収性ポリマーの製造に使用される重要な中間体である。
【0003】
アクリル酸は、とりわけ、高温の固体触媒上の分子状酸素で、アクリル酸のC3前駆体(C3前駆体化合物)の不均一触媒気相部分酸化によって得ることができる(この用語は、より具体的には、アクリル酸の還元によって形式的な意味で得ることができる化合物を包含することを意図している。アクリル酸の既知のC3前駆体は、例えばプロパン、プロペン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド及びプロピオン酸である。しかしながら、この用語は、前述の化合物の前駆体化合物、例えばグリセロール(グリセロールから進行して、アクリル酸は、例えば、気相中での不均一触媒酸化脱水によって得ることができる;例えば、欧州特許出願公開第1710227号明細書、国際公開第06/114506号及び国際公開第06/092272号を参照されたい)を包含することも意図している)。
【0004】
これは、言及された出力気体を一般に不活性気体、例えば窒素、CO2、飽和炭化水素及び/又は水蒸気で希釈し、高温及び場合により(例えば遷移金属)混合酸化物触媒上で高圧で分子状酸素との混合物中にそれらを導き、それらを酸化的に、アクリル酸、水及び望ましくない副生成物、例えばフルフラール、ベンズアルデヒド、アセトン、ホルムアルデヒド及び無水マレイン酸などを含む生成気体混合物に変換することを含み、そこからアクリル酸を分離しなければならない(副生成物及び水蒸気以外の不活性希釈剤気体は、本明細書では「二次成分」という用語で総称されるものとする。加えて、この用語は、アクリル酸除去方法において典型的に添加される重合防止剤を含むものとする)。
【0005】
文献である独国特許出願公開第19924533号明細書、独国特許出願公開第19924532号明細書、国際公開第01/77056号、独国特許出願公開第10156016号明細書、独国特許出願公開第10243625号明細書、独国特許出願公開第10223058号明細書、独国特許出願公開第10235847号明細書、国際公開第2004/035514号、国際公開第00/53560号、独国特許出願公開第10332758号明細書及び欧州特許出願公開第2114852号明細書は、不均一触媒気相部分酸化からの生成気体混合物の分別凝縮による粗アクリル酸の基本的除去を行う、冒頭に記載のアクリル酸を調製するためのプロセスを開示している。「粗アクリル酸」という用語は、第1のサイドドローを介して抜き取られるアクリル酸が純粋な生成物ではなく、アクリル酸(一般に、総重量の50%以上若しくは60重量%以上、通常は70%以上若しくは80重量%以上、多くの場合、90%以上、しばしば95重量%以上又はそれ以上)だけでなく、水及び二次成分、例えば低級アルデヒド(例えば、フルフラール、アクロレイン、ベンズアルデヒド)、低級カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ギ酸)なども含む混合物であるという事実を表す。いずれの場合も、粗アクリル酸中の水及び第2の成分の総含有量は、アクリル酸含有量に基づいて、気相部分酸化からの生成気体混合物中よりも低く、したがって、粗アクリル酸は、全体的に枯渇したこれらの成分を含む(対照的に、個々の成分は、粗アクリル酸が比較的濃縮されていてもよい)とも言われている。
【0006】
場合によっては、このようにして除去された粗アクリル酸の純度は、想定されるアクリル酸の最終用途のために(例えば、そのエステル化の目的のために、又はフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーを形成する目的のために)既に十分である。しかしながら、多くの場合、除去された粗アクリル酸は、粗アクリル酸から、それぞれの最終用途に必要な純度レベルを有するより純粋なアクリル酸(粗アクリル酸と比較してより高いアクリル酸含有量(重量%)を有するもの)を得るために、更なる熱分離プロセスに供される。
【0007】
熱分離プロセスは、相間に存在する温度及びモル濃度の勾配の結果として熱及び質量が伝達され、最終的に所望の分離及び抽出をもたらす、(一般に熱)エネルギーの供給又は抜き取りによって物理的に少なくとも二相系が生成されるものを意味すると理解される。
【0008】
しばしば、熱分離プロセスは、前述の少なくとも2つの物理相が一般に互いに向流で行われる分離内部を含む分離カラムで行われる。多くの場合、2つの物理相の一方は気体であり(一般に分離カラム内で上昇相として実行される)、他方は液体である(一般に分離カラム内で下降相として実行される)。原則として、少なくとも2つの物理相は、液体(例えば抽出の場合)又は固体及び液体(例えば結晶化の場合)又は固体及び気体(例えば吸着の場合)であってもよい。
【0009】
少なくとも2つの物理相のうちの1つが液体形態であり、1つが気体形態である熱分離プロセスの場合の例、したがって本明細書で使用される用語「熱分離プロセス」の自然な要素は、精留(分離カラム内で上昇する気相が下降する液相に対して向流で運転される)及び脱着(吸収の逆プロセス;液相に溶解した気体は、液相全体の圧力を低下させることによって、液相の温度を上昇させることによって、及び/又は液相に気相を通過させることによって、液相から抽出される。液相を通る気相の伝導が関与する場合、脱着はストリッピングとも呼ばれる)である。しかし、気体混合物の吸収(一般に、分離カラム内で上昇する気体は、分離カラム内で液体形態で下降する少なくとも1つの吸収剤に向流で流される)及び分別凝縮(気相/液相の例)も、「熱分離プロセス」という用語に包含される。粗アクリル酸の更なる精製のための特に好ましい熱分離プロセスは、結晶化による更なる精製(結晶化)である。
【0010】
不均一触媒気相部分酸化からの生成気体混合物の分別結晶化では、使用される凝縮カラムで腐食が時折予想外に見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1710227号明細書
【特許文献2】国際公開第06/114506号
【特許文献3】国際公開第06/092272号
【特許文献4】独国特許出願公開第19924533号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19924532号明細書
【特許文献6】国際公開第01/77056号
【特許文献7】独国特許出願公開第10156016号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第10243625号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第10223058号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第10235847号明細書
【特許文献11】国際公開第2004/035514号
【特許文献12】国際公開第00/53560号
【特許文献13】独国特許出願公開第10332758号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第2114852号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
対処された問題は、この予想外の腐食を防止することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この問題は、アクリル酸を調製するためのプロセスであって、高温での物質の固体状態において触媒上での分子状酸素による少なくとも1つのアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化により、アクリル酸、水蒸気及び二次成分を含む生成気体混合物が得られ、次いで、生成気体混合物が、分離内部を備えた凝縮カラムに導かれ、生成気体混合物は、凝縮カラム内でそれ自体の中に上昇させられ、分別凝縮を受け、生成気体混合物を、変換生成物及びアクリル酸よりも高沸点の二次成分を含む底部液、目標生成物として水及び全体として枯渇した二次成分を含む粗アクリル酸、アクリル酸及び二次成分を依然として含む酸性水、並びに水よりも低沸点の二次成分を含む残留気体混合物に分離し、目標生成物は、サイドドローを介して凝縮カラムから導出され、サイドドローは、生成気体混合物の凝縮カラムへの供給点を上回り、生成物と接触する凝縮カラムの部分は、ステンレス鋼製であり、凝縮カラムに供給される物質の流れのうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンのための供給源を含み、ハロゲン化物イオンは、サイドドローの上方の凝縮カラムの分離内部の領域において除去される、プロセスによって解決される。
【0014】
本発明は、サイドドローの上方の凝縮カラムにハロゲン化物イオンが蓄積し得るという知見に基づいている。これらのハロゲン化物イオンは、予期せぬ腐食の原因である。ハロゲン化物イオンの濃度が最も高い場合にも、最大の腐食が見られる。ハロゲン化物イオンが制御された方法で除去される場合、腐食を回避することができる。
【0015】
アクリル酸のC3前駆体は、好ましくはプロペン及び/又はアクロレインである。
【0016】
ハロゲン化物イオンを含む物質の流れは、例えば、水、プロペン、水酸化ナトリウム溶液、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フタル酸ジエチル及び/又はフェノチアジンであり得る。ハロゲン化物イオンは、プロセスに供給されるこれら又は他の物質の流れ中に不純物として存在し得る。
【0017】
典型的には、フッ化物イオン及び塩化物イオンは、見出されるハロゲン化物イオンである。
【0018】
凝縮カラムは、好ましくは、分離内部として、デュアルフロートレイ及びクロスフロートレイを含む。
【0019】
生成物と接触する凝縮カラムの部分は、ステンレス鋼から作られる。本発明の文脈におけるステンレス鋼は、少なくとも10.5重量%のクロムを有する鋼である。
【0020】
好ましいステンレス鋼は、好ましくは16.0%~21.0重量%、より好ましくは17.0%~20.5重量%、最も好ましくは18.0%~20.0重量%のクロム、より好ましくは更に好ましくは8.0%~26.0重量%、より好ましくは10.0%~25.0重量%、最も好ましくは12.0%~24.0重量%のニッケル、及び/又は更に好ましくは2.0%~5.0重量%、より好ましくは2.5%~4.5重量%、最も好ましくは3.0%~4.0重量%のモリブデンを含む。
【0021】
更に、ステンレス鋼は、有利には、好ましくは1.2%~2.0重量%、より好ましくは1.3%~1.9重量%、最も好ましくは1.4%~1.8重量%の銅を含むことができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、液体Fは、サイドドローの上方の凝縮カラムの分離内部の領域において凝縮カラムから抜き取られる。抜き取られる液体Fの量は、各場合においてサイドドローで抜き取られる粗アクリル酸に基づいて、好ましくは0.0001%~0.5重量%、より好ましくは0.001%~0.4重量%、最も好ましくは0.01%~0.3重量%である。
【0023】
ハロゲン化物イオンは、塩基性イオン交換体によって、抜き取られた液体F、例えば塩化物イオンから除去することができる。その後、ハロゲン化物イオンが除去された液体Fは、凝縮カラムにリサイクルすることができる。
【0024】
また、ハロゲン化物イオン、例えばフッ化物イオンを、その目的のために凝縮カラムに導入されたガラスとの反応によって凝縮カラム内で直接除去することも可能である。
【0025】
あるいは、抜き取られた液体Fは、凝縮カラムから排出された底部液と組み合わせて一緒に後処理することもできる。
【0026】
あるいは、抜き取られた液体Fは、凝縮カラムから排出された酸性水と合わせて一緒に後処理することもできる。
【0027】
凝縮カラムから除去されるハロゲン化物イオンの量は、凝縮カラムからの物質の流れにおけるハロゲン化物イオン含有量が、それぞれの場合において物質の流れに基づいて、好ましくは0.005重量%未満、より好ましくは0.002重量%未満、最も好ましくは0.001重量%未満であるように選択されるべきである。これは、凝縮カラムのすべての部分で濃度が上記よりも低くなければならないことを意味する。
【0028】
アクリル酸の調製を以下に記載する。
【0029】
典型的には、固体状態の触媒上での分子状酸素によるアクリル酸のC3前駆体の不均一触媒気相部分酸化からのアクリル酸含有生成気体混合物は、例えば、以下の含有量を有し得る(特に使用されるC3前駆体がプロペンである場合):
1%~30重量%のアクリル酸、
0.05%~10重量%の分子状酸素、
1%~30重量%の水、
0%~5重量%超の酢酸、
0%~3重量%超のプロピオン酸、
0%~1重量%超のマレイン酸及び/又は無水マレイン酸、
0%~2重量%のアクロレイン、
0%~1重量%のホルムアルデヒド、
0%~1重量%の超のフルフラール、
0%~0.5重量%超のベンズアルデヒド、
0%~1重量%のプロペン、及び残りの量として、本質的に不活性な気体、例えば、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン及び/又はプロパン。
【0030】
典型的には、生成気体混合物は、存在するアクリル酸に基づいて、0.005モル%以上、しばしば0.03モル%以上のフルフラールを含む。しかしながら、一般に、この基準でのフルフラール含有量は3モル%以下である。
【0031】
気相部分酸化自体は、従来技術に記載されているように行うことができる。プロペンから進行して、気相部分酸化は、例えば、欧州特許第0700714号明細書及び欧州特許第0700893号明細書に記載されているように、2つの連続する酸化段階で行うことができる。もちろん、独国特許出願公開第19740253号明細書及び独国特許出願公開第19740252号明細書に引用されている気相部分酸化を使用することも可能である。
【0032】
形成される少量の二次成分の目的のために、プロペン気相部分酸化は、好ましくは独国特許出願公開第10148566号明細書に記載されているように行われる。この目的のために使用されるプロペン供給源は、独国特許出願公開第10232748号明細書によるポリマーグレードのプロペン又は化学グレードのプロペンであり得る。使用されるC3前駆体がプロパンである場合、部分酸化は、独国特許出願公開第10245585号明細書に記載されているように行うことができる。
【0033】
原則として、気相部分酸化は、文献である米国特許出願公開第2006/0161019号明細書、国際公開第2006/092410号、国際公開第2006/002703号、国際公開第2006/002713号、国際公開第2005/113127号、独国特許出願公開第102004021763号明細書、欧州特許出願公開第1611076号明細書、国際公開第2005/108342号、欧州特許出願公開第1656335号明細書、欧州特許出願公開第1682478号明細書、欧州特許出願公開第1682477号明細書、独国特許出願公開第102006054214号明細書、独国特許出願公開第102006024901号明細書、欧州特許出願公開第1611080号明細書、欧州特許出願公開第1734030号明細書、独国特許出願公開第102006000996号明細書、独国特許出願公開第102005062026号明細書、独国特許出願公開第102005062010号明細書、国際公開第2007/060036号、国際公開第2007/051750号及び国際公開第2007/042457号に記載されているように行うこともできる。
【0034】
しばしば、気相部分酸化をもたらす生成気体混合物の温度は、150~350℃、多くの場合200~300℃、時には500℃までである。
【0035】
適切には適用目的のために、次いで、高温生成気体混合物は、好ましくは分別凝縮の目的のために使用されるクエンチ液1と共に適用目的のために、好ましくは分離内部とを含む凝縮カラムの下部(好ましくは最下部、例えば底部空間)に送られる前に、一般に100~180℃の温度まで直接冷却することによってクエンチ装置1内で冷却される。
【0036】
有用な凝縮カラム内部は、原則として、すべての標準的な内部、特にトレイ、構造物充填物及び/又はランダム充填物を含む。トレイのうち、気泡キャップトレイ、ふるいトレイ、バルブトレイ及び/又はデュアルフロートレイが好ましい。典型的には、トレイカラムにおいて、分離トレイの総数は20~100、しばしば20~80、好ましくは50~80である。
【0037】
好ましくは、本発明によれば、凝縮カラムは、分離内部として、独国特許出願公開第10243625号明細書、独国特許出願公開第19924532号明細書及び独国特許出願公開第10243625号明細書によって推奨されるように、底部から上方に、最初にデュアルフロートレイを備え、続いて油圧的にシールされたクロスフロートレイ(例えば、Thormannトレイ)を備えるものである。デュアルフロートレイの数は5~60、多くの場合25~45であってもよく、油圧的にシールされたクロスフロートレイの数も同様に5~60、多くの場合30~50であってもよい。酸性水形成の領域(底部から上方に見た還流液のアクリル酸含有量は、一般に15重量%以下、場合によっては10重量%以下)では、有用な分離内部は、好ましくは、独国特許出願公開第19924532号明細書及び独国特許出願公開第10243625号明細書に記載されているようなバルブトレイである。原理的には、他の標準的な分離内部を使用することも可能である(凝縮カラム内の個々の領域は、当然ながら、対応するより小さいカラムの直列接続として、(カラム内の互いの上部にあるのではなく)完全に同等の方法で構成されてもよい)。
【0038】
使用されるクエンチ装置1は、従来技術におけるこの目的から知られている装置(例えば、スプレースクラバー、ベンチュリスクラバー、気泡塔、又は液体が滴下する表面を有する他の装置)のいずれかであってもよく、ベンチュリスクラバー又はスプレー冷却器を使用することが好ましい。
【0039】
特に始動時のクエンチ液1の間接的な冷却又は加熱のために、必ずしもそうとは限らないが、熱伝達装置又は熱交換器を通って導かれることが好ましい。この点に関して、すべての標準的な熱伝達装置又は熱交換器が適している。シェルアンドチューブ熱交換器、プレート熱交換器、及び空気冷却器が好ましい。適切な冷却媒体は、対応する空気冷却器の場合は空気であり、他の冷却装置の場合は冷却液、特に水である。
【0040】
使用されるクエンチ液1は、例えば、凝縮カラムの底部から抜き取られた底部液(任意選択的に、クエンチ回路0から導出された凝縮物と組み合わされる)、又は底部に近いサイドドローを介した高ボイラ留分、又はそのような底部液と高ボイラ留分との混合物(特に、底部空間と最下部理論段(最下部分離内部)が煙突トレイによって分離される場合)であってもよい。凝縮カラムの底部から抜き取られるクエンチ液1の割合のみが上記の熱交換器を通って導かれる場合がある。クエンチ装置1に流入するクエンチ液1の温度は、通常、90℃~120℃程度である。
【0041】
(本発明によれば、記載されているように、好ましくは直接冷却に使用されるクエンチ液1との混合物中で)クエンチされた(又は何らかの他の方法で冷却された、又は冷却されていない)気相部分酸化から凝縮カラムへの生成気体混合物の導入部位は、有利にはそのカラムの底部空間内にあり、これは有利には一体化された形態の遠心液滴分離器を備え、一般に第1の煙突トレイによって最下部の分離内部から分離される(適切には適用上の観点から、その場合、高いボイラ留分は常に、接続導管を介して、又はオーバーフローを介して凝縮カラムの底部に導かれる)。例示的かつ好ましい実行変形例(一般的な実施可能性を制限することなく以下に排他的に説明する)では、これは、等距離に適切に配置された第1の一連のデュアルフロートレイの第1のデュアルフロートレイである。煙突トレイは収集トレイとして同時に機能し、そこから凝縮物(高ボイラ留分)が連続的に抜き取られ、クエンチ液体1の一部としてクエンチ装置1内又は底部空間内に流れる。第1の一連のデュアルフロートレイは、第2の煙突トレイ(収集トレイ)によって終了する。この第2の煙突トレイから、第1のサイドドローにおいて、粗アクリル酸は、好ましくは90重量%以上又は95重量%以上の純度を有する中間ボイラ留分として連続的に抜き取られる。
【0042】
適切には、この粗アクリル酸は、更なる蒸留(精留)及び/又は結晶化の更なる精製段階に送られ、この蒸留(精留)及び/又は結晶化で得られた底部液及び/又は母液の少なくとも一部は、第1のサイドドローの下であるが第1の収集トレイの上の凝縮カラムにリサイクルされる。このリサイクルは、好ましくは、熱的に統合された方法で行われる。換言すれば、リサイクルされるべき冷たい母液は、凝縮カラムから抜き取られ、熱交換器内の反対側で結晶化による更なる精製に供されるべき粗アクリル酸をその中で冷却するために、1つ以上の直列接続された間接熱交換器(例えば、螺旋状熱交換器)を通過する。同時に、これにより母液が加熱される。好ましくは、この目的のために、直列接続された2つのプレート熱交換器が使用される。
【0043】
適切には、(中間ボイラ留分として)抜き取られた粗アクリル酸は、更なる精製の目的で結晶化に送られるだろう。使用される結晶化方法は、原則として制限を受けない。結晶化は、連続的又はバッチ式で、1つ以上の段階で、任意の純度まで行うことができる。
【0044】
必要に応じて、結晶化によって精製される粗アクリル酸は、水(一般に、それは次いで、存在するアクリル酸の量に基づいて、最大20重量%又は最大10重量%、通常は最大5重量%の水を含む)と有利に混合することができる。アルデヒド又は他の二次成分含有量が高い場合、この場合のアルデヒドは水の機能を担うことができるので、水を添加する必要がない場合がある。非常に特に有利には、本発明によれば、水は酸性水の形態で添加される。これは、氷アクリル酸の収率の増加をもたらす。
【0045】
驚くべきことに、粗アクリル酸に酸性水を事前に添加した場合であっても(この手段は同様にアクリル酸収率の増加をもたらす)、最も高い要求を満たし、エステル化グレードの(例えば、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートの調製のための)アクリル酸(純度が98重量%以上)を、単一の結晶化段階によって既に達成することができる。適切には、この結晶化段階は、独国特許出願公開第19924532号明細書の第10欄又は独国特許出願公開第10223058号明細書の実施例1に記載されているように(例えば、国際公開第2006/111565号に記載されているような冷却ディスク結晶化装置において)、懸濁結晶化として実行される。懸濁結晶化で形成されたアクリル酸結晶は、立方体から直方体の外観を有する。長さ(L)対厚さ(D)の比は、典型的には、L:D=1:1~L:D=6:1の範囲、好ましくは1:1~4:1の範囲、より好ましくは1.5:1~3.5:1の範囲である。結晶の厚さDは、典型的には20~600μm、多くの場合50~300μmの範囲である。結晶の長さLは、典型的には50~1500μm、多くの場合200~800μmの範囲である。懸濁結晶は、遠心分離機(例えば、2段階又は3段階プッシャー遠心分離機)内でエステル化グレードのアクリル酸の場合、残りの母液から分離することができ、その場合、除去された結晶は、溶融した純粋な結晶によって遠心分離機で有利に洗浄される。懸濁結晶がスクラバーカラム、例えば溶融スクラバーカラム(例えば、国際公開第01/77056号、又は独国特許出願公開第10156016号明細書号、若しくは独国特許出願公開第10223058号明細書号によるもの、又は国際公開第2006/111565号、国際公開第04/35514号、国際公開第03/41833号、国際公開第02/09839号、国際公開第03/41832号、独国特許出願公開第10036881号明細書号、国際公開第02/55469号及び国際公開第03/78378号に記載されているような)によって残りの母液から分離される場合、単一の結晶化段階によって、超吸収性グレードのアクリル酸(純度が99.7重量%以上又は99.9重量%以上)、すなわち、水超吸収性又は他のポリアクリレートの製造に適したアクリル酸を達成することさえ可能である。この場合、適切な方法で、分離された母液の全量が凝縮カラムにリサイクルされる。
【0046】
しかし、結晶化は、欧州特許出願公開第0616998号明細書によって推奨されているように、分別流下薄膜結晶化として行うこともできる。これは、例えば、2つ、3つ又はそれ以上(例えば2~4)の精製段階(これに関して適切な流下薄膜結晶器は、例えば、長さ10~15 m及び外径50~100 mmの1000~1400の結晶化チューブを含むことができる。)を含み得る。より高い精製段階で分離除去された母液は、先行する精製段階のうちの1つにリサイクルされ得る。第1の精製段階で分離除去された母液は、有利には凝縮カラムに完全にリサイクルされる。先行する精製段階の1つへのリサイクルの代替として、個々の精製段階からの母液は、それらの全体が凝縮カラムにリサイクルされてもよい。最後から2番目の精製段階からの純粋な生成物は、最後の精製段階に完全に又は部分的にのみ送られてもよい。それが部分的にのみ送られる場合、残りの残留量は、一般に、最終精製段階からの純粋な生成物とブレンドされて、使用に適した最終生成物を与える。
【0047】
本発明に適切によれば、第1のサイドドローを介して抜き取られた粗アクリル酸の一部は、それに属する収集トレイの下のデュアルフロートレイに供給される。このトレイには、一般に、凝縮カラムにリサイクルされる母液も供給される。供給前に、母液は、一般に、既に記載したように、熱統合によって粗アクリル酸の抜き取られる温度にほぼ対応する温度まで加熱される。
【0048】
第一サイドドローによって抜き取られた粗アクリル酸の別の部分は、有利には、間接的な熱交換によって10~15℃加熱され、供給点の上方、好ましくは最初の後続のデュアルフロートレイの直下の凝縮カラムにリサイクルされる。この手段は、抜き取られる粗アクリル酸の酢酸含有量に好ましい効果を有する。
【0049】
第2の収集トレイの上には、第2の一連の適切に等距離のデュアルフロートレイが最初に存在し、次いで、これらのトレイの後に、同様に適切に等距離に配置された油圧的にシールされたクロスフロー質量移送トレイ(例えば、ドイツ特許出願公開第10243625号明細書によるThormannトレイ又は改造Thormannトレイ)が続く。最上部のデュアルフロートレイは、分配器トレイとして変更されてもよい。すなわち、例えば、ジグザグ状のオーバーフローを有するオーバーフロー溝を有する。
【0050】
適切には適用目的のために、底部から1番目のThormannレイは、トレイから流れる液体がパイプの形態の6つの立下り管を介して流出するトレイである。これらの管は、その下のデュアルフロートレイの気体空間に対して油圧的にシールされている。6つの立下り管のウェヤー高さは、適切には適用目的のために、クロスフロートレイのフロー方向に減少する。有利には、油圧シールは、デフレクタプレートを備えた排出オリフィスを有する。立下り管は、好ましくはトレイ断面の後半、より好ましくは最後の3分の1(トレイへの供給の反対側)に均一に分布している。
【0051】
油圧シールは、斜めのオーバーフローウェヤー(45°)を有するカップ内に形成されている。
【0052】
クロスフロー質量移送トレイは、第3の煙突トレイ(収集トレイ)によって終了する。
【0053】
第3の収集トレイの上方には、バルブトレイ、好ましくはデュアルフローバルブトレイがある。本発明に従って使用可能なバルブトレイ及びバルブトレイの原理は、例えば、Technische Fortschrittsberichte[Industrial Progress Reports]、volume 61,Grundlagen der Dimensionierung von Kolonnenboden[Fundamentals of the Dimensioning of the Tray Columns]、96~138ページに見出すことができる。それらは、広い負荷範囲にわたって流れる蒸気に対するそれぞれの負荷に対応する通路開口部を提供することを本質的に特徴とする。好ましくは、本発明によれば、バラストトレイが使用される。言い換えると、トレイの開口部には、重りによって閉鎖された開口部を有するケージがある。本発明によれば、ドイツ、ViernheimのStahl製のVV12バルブが特に好ましい。バルブトレイ空間内で凝縮する成分は、本質的に水であり、水よりも揮発性の低い成分である。得られた凝縮物は酸性水である。
【0054】
酸性水は、第2のサイドドローにおいて第1の収集トレイから連続的に抜き取られる。抜き取られた酸性水の一部は、クロスフロー質量移送トレイの最上部の凝縮カラムにリサイクルされる。抜き取られた酸性水の別の部分は、間接的な熱交換によって冷却され、適切に分割され、同様に凝縮カラムにリサイクルされる。ここで冷却された部分は、最上部のバルブトレイ(15~25℃、好ましくは20~25℃の温度で)にリサイクルされ、他の冷却された部分は、第3の収集トレイと最上部のバルブトレイとの間のほぼ中間に配置されたバルブトレイ(20~35℃、好ましくは25~30℃の温度で)にリサイクルされる。存在するアクリル酸の量は、本発明によれば、抜き取られた酸性水の残留量から分離することができる。
【0055】
冷却(1つ以上の直列接続された間接熱交換器によって行うことができる)の一部は、液体形態で貯蔵されたC3前駆体、例えばプロペンを不均一触媒気相酸化のために気相に変換するために、酸性水の適切な部分がC3前駆体の蒸発器(例えば、プロペン蒸発器)を通って導かれることでもたらされる。
【0056】
水よりも揮発性の高い成分は、凝縮カラムの頂部で残留気体(残留気体混合物)として気体形態で引き出され、通常、希釈気体(サイクル気体)として気相部分酸化にリサイクルされる。サイクル気体圧縮機における凝縮を回避するために、残留気体混合物は、間接熱交換によって事前に過熱される。循環されなかった残留気体混合物の部分は、通常、焼却に送られる。既に説明したように、(好ましくは圧縮された)残留気体混合物の一部は、抽出物から及び凝縮カラムからの底部液からアクリル酸を分離するためのストリッピング気体として有利に使用される。有利には、気相部分酸化は、残留気体混合物がそのようなストリッピング気体として使用される場合、残留気体混合物、したがって第1及び第2のストリッピング気体が分子状酸素を含むように、過剰の分子状酸素で行われる。
【0057】
重合を抑制する目的で、油圧的にシールされたクロスフロー質量移送トレイの最上部に、アクリル酸中のヒドロキノンモノメチルエーテル(=MEHQ)の溶液、又は(好ましくは本発明による)MEHQ溶融物、及び(いずれの場合も)場合により更にアクリル酸中のフェノチアジンの溶液が供給される。ここで使用されるアクリル酸は、好ましくは、抜き取られた粗アクリル酸の更なる精製で生成される純粋なアクリル酸である。例えば、結晶性の更なる精製で製造された氷アクリル酸(純粋な生成物)を使用することが可能である。溶液は、純粋な生成物の安定化にも適切に使用される。
【0058】
更に、油圧的にシールされたクロスフロー質量移送トレイを含むカラムセクションのほぼ中央において、純粋な生成物中のフェノチアジン(=PTZ)の溶液を供給することが可能である。
【0059】
原則として、酸性水形成は、例えば、第1の凝縮カラムの下流で実施することもできる(ドイツ特許出願公開第10235847号明細書を参照されたい)。この場合、本質的に水は、内部を含まないか又は内部を含む下流空間(第2のカラム)での直接冷却によって、クエンチ液2によって、第1の凝縮カラムを頂部に残す低ボイラ気体流から凝縮されるだろう。得られた凝縮物は、やはり酸性水である。次いで、その頂部での分離性能を高めるために、酸性水の一部を第1の凝縮カラムにリサイクルすることが望ましい。酸性水の更なる部分は、外部熱交換器で間接的に冷却され、クエンチ液2として使用され、次いでアクリル酸は、本発明に従って酸性水の残留量から抽出することができる。水よりも揮発性の低いボイラ流の成分は残留気体を形成し、残留気体は通常、少なくとも部分的に、サイクル気体として気相部分酸化にリサイクルされるか、又はストリッピング気体として使用される。
【0060】
適切には、本発明のプロセスの好ましい変形例におけるデュアルフロートレイは、カラムの断面付近まで凝縮カラム内に延在し、そこからカラムに向かう還流液のアクリル酸含有量は、還流液(reflex liquid)の重量に基づいて、90重量%以下である。
【0061】
既に述べたように、分別凝縮の記載された好ましい変形例のためのデュアルフロートレイの数は、一般に25~45である。開口率は12%~25%程度が適当である。通路として、デュアルフロートレイは、均一な円直径を有する円形穴を有することが好ましい。後者は、10~20 mm程度である。必要に応じて、凝縮カラムの穴の直径は、上部から下方に向かって狭くなったり大きくなったりする可能性があり、及び/又は穴の数は減少したり大きくなったりする可能性がある(例えば、穴径を一律14 mmとし、上から下に向かって開口率を17.4%~18.3%まで大きくしてもよい。)。しかしながら、穴の数はまた、すべてのデュアルフロートレイにわたって一定であってもよい。更に、円形穴は、個々のデュアルフロートレイにわたって均一に、好ましくは厳密な三角形ピッチで配置される(ドイツ特許出願公開第10230219号明細書を参照されたい)。
【0062】
更に、デュアルフロートレイ内に打ち抜かれた通路内のパンチバリは、好ましくは凝縮カラム内を下方に向く(これにより、望ましくないポリマー形成が減少する)。
【0063】
本発明によれば、凝縮カラムで使用されるデュアルフロートレイの数が約10~15の理論段に対応する場合が望ましい。
【0064】
既に述べたように、本発明による好ましい凝縮カラム内のデュアルフロートレイに続く油圧的にシールされたクロスフロー質量移送トレイの数は、一般に30~50である。開口率は、適宜5%~25%、好ましくは10%~20%とする(開口率は、全体的な断面における通路の断面の割合を極めて一般的に反映する。優先的に使用されるべきクロスフロー質量移送トレイでは、極めて一般的に上述の範囲内である)。
【0065】
本発明によれば、シングルフロークロスフロー質量移送トレイが好ましく使用される。
【0066】
一般に、分別生成気体混合物凝縮の好ましい変形例のための油圧的にシールされたクロスフロートレイの数は、約10~30、しばしば25の理論段に対応するような数である。
【0067】
油圧的にシールされたクロスフロートレイと、同じく使用される任意のバルブトレイの両方が、少なくとも1つの立下り管を有する。それらは、シングルフロー構成又はマルチフロー構成、例えばデュアルフロー構成のいずれかを有することができる。シングルフロー構成の場合でも、それらは2つ以上の立下り管を有することができる。一般に、バルブトレイの立下り管も油圧的にシールされる。
【0068】
部分気相酸化からの生成気体混合物のための現在のシステム1における重合の抑制は、(凝縮カラムからの)クエンチに使用される底部液を介して存在する重合抑制剤によって、又は(凝縮カラムからの)クエンチに使用される高ボイラ留分を介して存在する重合抑制剤によって達成することができる。
【0069】
本発明のプロセスが有利である別の理由は、本質的に同じ純度を有する粗アクリル酸の高い収率を可能にすることである。本書でなされたすべての記述は、プロペンのアクリル酸への(好ましくは二段階の)不均一部分酸化によって得られた生成気体混合物に特に適用可能である。本発明のプロセスの上記の好ましい実行変形例は、一般的な実施可能性を決して制限しない。
【0070】
最後に、第1のストリッピング気体及び第2のストリッピング気体が分子状酸素を有利に含むことが強調されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
実施例
実施例1(比較例)
手順は、欧州特許出願公開第2114852号明細書の実施例1と同様であった。導入された塩化物は、Thormannトレイの領域に蓄積した。塩化物含有量は、最大115ppmであった。Thormannトレイはステンレス鋼(DIN EN 10088に準拠した1.4571材料:16.5%~18.5重量%のクロム、10.5%~13.5重量%のニッケル、2.0%~2.5重量%のモリブデン、0.7重量%までのチタン)でから作製された。Thormannトレイ5~7(最下部のThormannトレイから数えて)で腐食が観察された。
【0072】
実施例2
手順は実施例1.と同様であり、Thormannトレイ6(最下部のThormannトレイから数えて)から80~205 kg/hの液体を抜き取った。液体の量は、塩化物含有量が10 ppm未満のままであるように制御される。排出された液体は、酸性水抽出又は第2のストリッピングカラムにリサイクルすることができる。
【国際調査報告】