(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】押出し中の同時のデンプン加水分解およびフレーバーカプセル化
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240711BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240711BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L5/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505185
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022070759
(87)【国際公開番号】W WO2023006648
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/110297
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ディン カン
(72)【発明者】
【氏名】ホイ リン グゥオ
(72)【発明者】
【氏名】アイ-クァン ジャオ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE12
4B035LG12
4B035LG21
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4B047LP02
4B047LP05
4B047LP09
4B047LP18
4B047LP20
(57)【要約】
本発明は、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を製造する方法であって、デンプン、水、フレーバーオイル、およびデンプンを加水分解することができる酵素を含む原料組成物を準備する工程と、混合物を押し出して、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を形成する工程と、を含む方法に関する。本発明は、さらに、本発明による方法によって得られる押出粒子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を製造する方法であって、
a.デンプンと、水と、フレーバーオイルと、デンプンを加水分解することができる酵素と、を含む原料組成物を準備する工程と、
b.工程a)において準備された混合物を押し出して、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程b)中に、前記デンプンが、1~40、好ましくは3~30のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)において準備される前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として50~90重量%、好ましくは55~85重量%のデンプンを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記デンプンがトウモロコシデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプンまたはそれらの任意の混合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程a)において準備される前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として7~35重量%、好ましくは10~26重量%の水を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程a)において準備される前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として5~35重量%、好ましくは10~30重量%のフレーバーオイルを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)において準備される前記組成物が、前記組成物の総重量を基準として0.1~5重量%、好ましくは0.5~3重量%、より好ましくは1~2重量%の、デンプンを加水分解することができる前記酵素を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
デンプンを加水分解することができる前記酵素がα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
デンプンを加水分解することができる前記酵素がα-アミラーゼ、好ましくは中温α-アミラーゼまたは高温α-アミラーゼである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程a)において準備された前記組成物を、押出工程b)を行う前に2~8℃の温度、好ましくは4℃で12~24時間貯蔵する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
押出工程b)における押出機が少なくとも4つの異なる温度ゾーンを示す、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程b)における押出機のスクリュー速度が50~120rpm、好ましくは60~100rpmである、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記フレーバーオイルが、オレンジ油、柑橘油、食肉油、リモネンまたはそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程b)において形成される前記押出粒子が、工程a)において前記原料組成物中に存在する前記フレーバーオイルの20~90%、好ましくは25~60%を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
担体材料としての加水分解デンプンによってカプセル化されたフレーバーオイルを含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法によって得られる押出粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を製造する方法であって、デンプン、水、フレーバーオイル、およびデンプンを加水分解することができる酵素を含む原料組成物を準備する工程と、混合物を押し出して、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を形成する工程と、を含む方法に関する。本発明は、さらに、本発明による方法によって得られる押出粒子に関する。
【0002】
発明の背景
消費者製品の風味は、消費者の満足度において重要な役割を果たす。
【0003】
特に消費者製品等の要求の厳しい環境においてフレーバーオイルの安定性を高めるための一般的なアプローチの一つに、フレーバーオイルを消費者製品に添加する前にカプセル化することがある。これにより、加工および貯蔵中の芳香性化合物の分解または喪失を低減することができる。
【0004】
フレーバーオイルのカプセル化は、さらに、消費者製品におけるフレーバーオイルの要求に応じた放出を可能にし、それにより、消費者製品が消費者により実際に使用される前のフレーバーオイルの早期喪失、例えばフレーバーオイルの香りの印象の早期喪失を防ぐ。
【0005】
カプセル化プロセス中に、フレーバーオイルは担体材料内に閉じ込められる。フレーバーオイルのカプセル化については、様々な担体材料が知られている。
【0006】
デンプンおよびデンプンベースの成分(加工デンプン、マルトデキストリン、β-シクロデキストリン)は、揮発性化合物を保持および保護するために食品産業で広く使用されている。特に、マルトデキストリンは、フレーバーオイルをカプセル化するための一般的な担体材料である。マルトデキストリンは、デンプンを酸または酵素で部分的に加水分解することによって得られ、デキストロース当量(DE)として供給される。DE値はデンプンポリマー加水分解の程度の尺度である。マルトデキストリンは無味であり、高固体比で低い粘度を有し、様々な平均分子量で入手可能であるため、コストと有効性との良好な妥協点である。さらに、マルトデキストリン等の加水分解デンプンは、水溶性であることが多いため、粉末飲料等の多くの消費者製品用途にとって興味深い。
【0007】
上に示したように、マルトデキストリンは、デンプンの部分加水分解によって製造され、これは液体媒体中でのデンプンの酸および/または酵素加水分解を伴う。しかしながら、かかるプロセスには時間およびコストがかかる。特に、後続の蒸発および噴霧乾燥工程中に加水分解工程後の水を除去するために多量のエネルギーが必要とされる。さらに、加水分解パラメータが設定された後に、加水分解手順によって得ることができるマルトデキストリンの種類(DE値によって特徴付けられる)についての柔軟性は殆どない。
【0008】
さらに、フレーバーオイルのカプセル化には、現在、最初の工程におけるマルトデキストリンの製造と、その後のマルトデキストリンを担体として用いたフレーバーオイルのカプセル化工程との少なくとも2つの別々の方法工程が必要とされる。このため、マルトデキストリンを担体材料としたフレーバーオイルのカプセル化には、労力およびコストがかかる。
【0009】
上記を考慮すると、マルトデキストリン等のデンプン加水分解物のより効率的な製造、およびかかる担体材料を用いたフレーバーオイルのカプセル化を可能にする方法が所望されている。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を製造する方法であって、
a.デンプン、水、フレーバーオイル、およびデンプンを加水分解することができる酵素を含む原料組成物を準備する工程と、
b.工程a)において準備された混合物を押し出して、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を形成する工程と、
を含む、方法に関する。
【0011】
本発明は、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子、すなわち押出しによって得られた粒子を製造する方法に関する。
【0012】
本発明による方法の工程a)では、デンプン、水、フレーバーオイル、およびデンプンを加水分解することができる酵素を含む原料組成物を準備する。
【0013】
「原料」とは、未だ押出プロセスに供していない材料と理解される。
【0014】
原料は、特にデンプンを含む。デンプンは、グリコシド結合によって結合した多数のグルコース単位からなる高分子炭水化物(多糖)である。この多糖は、殆どの緑色植物によってエネルギー貯蔵のために産生される。デンプンは、ヒトの食生活において最も一般的な炭水化物であり、ジャガイモ、トウモロコシ、米または小麦のような主食に大量に含まれる。純粋なデンプンは、白色で無味無臭の粉末であり、冷水またはアルコールに不溶である。デンプンは、直鎖状でらせん状のアミロースおよび分岐状のアミロペクチンの2種類の分子からなる。デンプンは、植物により、一般に20~25重量%のアミロースおよび75~80重量%のアミロペクチンを含有する。
【0015】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として50~90重量%、好ましくは55~85重量%のデンプンを含む。
【0016】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として50~60重量%のデンプンを含む。
【0017】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として75~85重量%のデンプンを含む。
【0018】
特定の実施形態では、デンプンはトウモロコシデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ソルガムデンプン、カラスムギデンプン、コムギデンプン、オオムギデンプンまたはそれらの任意の混合物である。好ましくは、デンプンはトウモロコシデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプンまたはそれらの任意の混合物である。より好ましくは、デンプンはトウモロコシデンプンまたはコメデンプンである。
【0019】
デンプンは、純粋なデンプンの添加またはデンプンを含有する組成物、例えば粉(flour)の添加によって供給することができる。例えば、デンプンは米粉の添加によって供給することができる。粉は、組成物の総重量を基準として60~80重量%、好ましくは70~80重量%の量で原料組成物中に存在し得る。原料は、特に水を含む。
【0020】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として7~35重量%、好ましくは10~26重量%の水を含む。
【0021】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として10~15重量%の水を含む。
【0022】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として21~26重量%の水を含む。
【0023】
原料は、特にフレーバーオイルを含む。フレーバーオイルは約20℃で液体である。「フレーバーオイル」とは、本明細書では、組成物(例えば消費者製品)に添加して、その官能特性、特にその風味および/または味を付与、改善または修飾することを意図した、任意に溶媒または補助剤をさらに含む、風味付与成分または風味付与成分の混合物を意味する。味調節剤も上記定義に包含される。風味付与成分は、当業者にはよく知られており、その性質は、本明細書での詳細な説明を必要とするものではなく、いずれの場合にも包括的ではなく、熟練したフレーバリストは、一般的な知識に基づき、使用目的または用途、および達成が望まれる感覚刺激効果に応じてそれらを選択することができる。これらの風味付与成分の多くは、参照文献、例えばS. Arctanderによる書籍であるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N.J., USAもしくはそのより最新版、または同種の他の論文、例えばFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients, 1975, CRC PressもしくはSynthetic Food Adjuncts, 1947, by M.B. Jacobs, van Nostrand Co., Inc.に記載されている。好適な溶媒および補助剤も当該技術分野でよく知られている。
【0024】
「フレーバー」という表現には、食品の匂いを付与または修飾するフレーバーが含まれるだけでなく、味を付与または修飾する成分も含まれる。後者は、必ずしもそれ自体が味または匂いを有する訳ではないが、例えば塩味を強める成分、甘みを強める成分、旨味を強める成分、苦味を抑える成分等の他の成分がもたらす味を修飾することができる。
【0025】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、甘味成分をさらに含む。甘味成分は、砂糖(例えば、限定されるものではないが、スクロース)、ステビア成分(限定されるものではないが、ステビオシドまたはレバウジオシドA等)、シクラミン酸ナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンナトリウム、アセスルファムKまたはそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0026】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として5~35重量%、好ましくは10~30重量%のフレーバーオイルを含む。
【0027】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として25~30重量%のフレーバーオイルを含む。
【0028】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として10重量%のフレーバーオイルを含む。
【0029】
特定の実施形態では、フレーバーオイルは、オレンジ油、柑橘油、食肉油(meat oil)、リモネンまたはそれらの任意の混合物からなる群から選択される。好ましくは、フレーバーオイルは、オレンジ油またはリモネンである。
【0030】
原料は、特にデンプンを加水分解することができる酵素を含む。
【0031】
デンプンを加水分解することができる酵素は、デンプン中のα-1,4グリコシド結合および/またはα-1,6グリコシド結合を切断することができる酵素である。
【0032】
特定の実施形態では、デンプンを加水分解することができる酵素は、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。好ましくは、デンプンを加水分解することができる酵素は、α-アミラーゼである。
【0033】
アルファアミラーゼ(α-アミラーゼ)は、デンプン分子中のα-1,4グリコシド結合の加水分解を触媒する酵素である。
【0034】
特定の実施形態では、α-アミラーゼは低温α-アミラーゼ、中温α-アミラーゼ、高温α-アミラーゼまたはそれらの混合物である。低温α-アミラーゼは、40~59℃の温度範囲で最大の酵素活性を示すα-アミラーゼである。中温α-アミラーゼは、60~70℃の温度範囲で最大の酵素活性を示すα-アミラーゼである。高温α-アミラーゼは、80~110℃の温度範囲で最大の酵素活性を示すα-アミラーゼである。好ましくは、α-アミラーゼは、低温または高温α-アミラーゼである。
【0035】
特定の実施形態では、2つ以上のα-アミラーゼが、工程a)において準備される組成物中に存在する。
【0036】
特定の実施形態では、2つのα-アミラーゼが、工程a)において準備される組成物中に存在し、ここで2つのα-アミラーゼの一方が高温α-アミラーゼであり、もう一方のα-アミラーゼが低温α-アミラーゼである。
【0037】
特定の実施形態では、デンプンを加水分解することができる酵素の混合物が、工程a)において準備される組成物中に存在する。好ましくは、酵素の混合物は、1つ以上のα-アミラーゼおよびプルラナーゼを含む。好ましい実施形態では、酵素の混合物は低温α-アミラーゼ、高温α-アミラーゼおよびプルラナーゼを含む。
【0038】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として0.1~5重量%、好ましくは0.5~3重量%、より好ましくは1~2重量%の、デンプンを加水分解することができる酵素を含む。
【0039】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、組成物の総重量を基準として0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の、デンプンを加水分解することができる酵素を含む。
【0040】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物は、滑沢剤(滑剤)をさらに含む。滑沢剤は、組成物の総重量を基準として0.5~3重量%、好ましくは1~2重量%の量で組成物中に存在することができる。好ましくは、滑沢剤は、好ましくは1:1の比率での、レシチンと中鎖トリアシルグリセリドとの混合物である。
【0041】
特定の実施形態では、工程a)において準備される組成物を、方法工程b)を行う前に2~8℃の温度、好ましくは4℃で12~24時間貯蔵する。
【0042】
方法工程b)では、工程a)において準備された混合物を押し出して、カプセル化されたフレーバーオイルを含む押出粒子を形成し、すなわち、工程a)において準備された混合物を押出工程に供する。
【0043】
押出しは、当業者によく知られている食品加工に使用される手法である。押出しでは、混合された成分を、必要な形状を作り出すように設計された多孔板またはダイの開口を通して押し出す。押し出された食品は、続いてブレードによって特定のサイズに切断される。成分の混合物をダイを通して押し出す機械は、押出機と称され、押し出された成分の混合物は、押出物としても知られる。押出機は、通例、固定バレル内にしっかりと収まった大きな回転スクリューであり、その先端にダイがある。
【0044】
押出しは、最終製品の均一性を保証する連続的で効率的なシステムにより、食品の大量生産を可能にする。押出しを用いて製造された食品製品は、高いデンプン含有量を有することができる。
【0045】
原料組成物中のデンプンを加水分解することができる酵素の存在を考慮すると、デンプンは、押出工程(方法工程b)中にデンプン加水分解物へと加水分解される。したがって、原料組成物中に存在するデンプンは、押出工程中に形成されるデンプン加水分解物の形成のための基質を示す。その場で形成されたデンプン加水分解物は、続いてフレーバーオイルの担体材料として機能し、すなわち、デンプンから押出工程中にその場で形成されたデンプン加水分解物は、フレーバーオイルの担体材料として機能することにより、フレーバーオイルをカプセル化する。カプセル化されたフレーバーオイルとは、フレーバーオイルがデンプン加水分解物マトリックス内に閉じ込められていることを意味する。
【0046】
したがって、本発明による方法は、デンプン加水分解物のin situでの製造を可能にし、次いで、このデンプン加水分解物は、1回の押出工程でフレーバーオイルをカプセル化するための担体材料として働くことができる。したがって、本発明による方法によって、デンプンからのデンプン加水分解物の形成と、デンプン加水分解物マトリックス内へのフレーバーオイルのカプセル化とが同時に可能となる。
【0047】
原料組成物の組成および方法工程b)で選択された押出パラメータに応じて、より多いまたはより少ないデンプンの加水分解が起こり、異なるDE値のデンプン加水分解物がもたらされる。したがって、本発明による方法は、フレーバーオイルをカプセル化するための担体材料として働くことができる様々なDE値のデンプン加水分解物の製造に高い柔軟性をもたらす。
【0048】
DE値(デキストロース当量)は、デンプン加水分解物の重合度、すなわちデンプン加水分解物中の単糖単位の数を示す。DE値は、
DE={製品中の還元糖(グルコースとして表す)/デンプン加水分解物の全固形分}×100
として算出される。
【0049】
DE値が高いほど、単糖(グルコース)および短鎖ポリマーのレベルが高くなる。グルコース(デキストロース)は、DE値100を有し、未処理(天然)デンプンのDE値は、ほぼゼロである。デンプン加水分解物は、異なる長さのポリマーの混合物からなるため、DE値は平均値である。DE値を決定する標準的な方法は、当業者によく知られているレイン-エイノン滴定法に基づく。
【0050】
特定の実施形態では、デンプンは、押出工程b)中に1~40のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。好ましくは、デンプンは、3~30のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。
【0051】
特定の実施形態では、デンプンは、マルトデキストリン、すなわち3~20のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。好ましくは、マルトデキストリンは3~8、より好ましくは4~7.5のDE値を有する。
【0052】
特定の実施形態では、デンプンは、マルトデキストリン、すなわち7~13のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。
【0053】
特定の実施形態では、デンプンは、マルトデキストリン、すなわち20未満、好ましくは1~19、より好ましくは5~19のDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。
【0054】
特定の実施形態では、デンプンは、グルコースシロップ、すなわち20より高いDE値を有するデンプン加水分解物へと加水分解される。好ましくは、グルコースシロップは25~30のDE値を有する。
【0055】
特定の実施形態では、押出工程b)は、二軸押出機を用いて行われる。
【0056】
特定の実施形態では、原料組成物は、工程b)において0.2~2kg/h、好ましくは0.3~1.5kg/hの供給速度で押出機に供給される。
【0057】
特定の実施形態では、原料組成物は、工程b)において1.5kg/hの供給速度で押出機に供給される。
【0058】
特定の実施形態では、原料組成物は、工程b)において0.35~0.45kg/hの供給速度で押出機に供給される。
【0059】
特定の実施形態では、工程b)における押出機のスクリュー速度は、50~120rpm、好ましくは60~100rpmである。
【0060】
特定の実施形態では、押出工程b)における押出機は、少なくとも4つの異なる温度ゾーンを示す。1つの温度ゾーンは、20~60℃の温度を有することができ、別の温度ゾーンは、25~80℃の温度を有することができ、さらに別の温度ゾーンは、30~80℃の温度を有することができ、さらに別の温度ゾーンは、90℃以上の温度を有することができる。好ましくは、各温度ゾーンは異なる温度を有する。好ましくは、異なる温度ゾーンにおける温度は、それぞれ押出機出口またはダイに向かって上昇する。
【0061】
特定の実施形態では、押出工程b)における押出機は、4~8つの温度ゾーンを示す。好ましくは、各温度ゾーンは異なる温度を有する。好ましくは、異なる温度ゾーンにおける温度は、それぞれ押出機出口またはダイに向かって上昇する。
【0062】
特定の実施形態では、押出工程b)における押出機は、4つの温度ゾーンを示す。好ましくは、第1の温度ゾーンは20~60℃の温度を有し、第2の温度ゾーンは25~80℃の温度を有し、第3の温度ゾーンは30~80℃の温度を有し、第4の温度ゾーンは90℃以上の温度を有する。好ましくは、4つの温度ゾーンにおける温度は、それぞれ押出機出口またはダイに向かって上昇する。
【0063】
特定の実施形態では、押出工程b)における押出機は、デンプンを加水分解することができる酵素を失活させる温度を有する温度ゾーンを示し、すなわち、上記温度ゾーンに到達すると、デンプンを加水分解することができる酵素は、それ以上酵素活性を発揮しなくなり、これにより、更なるプロセス制御が可能となる。好ましくは、上記温度ゾーンは120~150℃の温度を有する。
【0064】
特定の実施形態では、押出工程b)において、20~90%、好ましくは25~60%のフレーバーオイル保持率が達成される。フレーバーオイル保持率は、原料組成物中の元のフレーバーオイル含有量と、押出後に押出粒子中で決定されたフレーバーオイル含有量とに基づいて算出され、すなわち、フレーバーオイル保持率は、(押出し後に押出粒子中で決定されたフレーバーオイル含有量/原料組成物中のフレーバーオイル含有量)×100のように算出される。
【0065】
したがって、特定の実施形態では、工程b)において形成される押出粒子は、工程a)において原料組成物中に存在するフレーバーオイル量の20~90%、好ましくは25~60%を含む。
【0066】
本発明による方法は、良好なフレーバーオイル保持率を可能にし、これは同様に、フレーバーオイルが方法工程b)中にその場で形成された加水分解デンプンによって効果的にカプセル化され得ることを示す。
【0067】
特定の実施形態では、押出工程b)において、25%超、好ましくは30%超、より好ましくは40%超、さらにより好ましくは50%超のフレーバーオイル保持率が達成される。
【0068】
押出粒子中の油含有量は、例えばLF-NMR(Bruker Biospin GmbH)ハーンスピンエコー分析によって決定することができる。
【0069】
特定の実施形態では、工程b)において、押出機ダイはダイフェースペレタイザーである。
【0070】
特定の実施形態では、押出粒子を押出工程b)後に乾燥させる。押出粒子は噴霧乾燥、オーブン乾燥、タンブラー乾燥、トレイ乾燥または流動床乾燥によって乾燥させることができる。本発明による方法では、押出工程b)中に含水量を低くすることができるため、残留水分を除去するための後続の乾燥工程において、必要とされるエネルギーをより少なくすることができる。
【0071】
特定の実施形態では、押出粒子を押出工程b)後に噴霧乾燥させる。
【0072】
本発明の別の態様は、担体材料としての加水分解デンプンによってカプセル化されたフレーバーオイルを含む、本発明による方法によって得られる押出粒子に関する。それにより、フレーバーオイルは、加水分解デンプンマトリックス内に閉じ込められる。
【0073】
特定の実施形態では、フレーバーオイルをカプセル化する加水分解デンプンは1~30、好ましくは3~30のDE値を有する。
【0074】
特定の実施形態では、フレーバーオイルをカプセル化する加水分解デンプンは20未満、好ましくは1~19、より好ましくは5~19のDE値を有する。
【0075】
特定の実施形態では、押出粒子は、押出粒子の総重量を基準として50~90重量%、好ましくは55~85重量%の量の加水分解デンプンを含む。
【0076】
特定の実施形態では、押出粒子は天然デンプン、すなわち加水分解されていないデンプンを含まない。
【0077】
特定の実施形態では、押出粒子は、押出粒子の総重量を基準として7~35重量%、好ましくは10~26重量%の含水量を有する。
【0078】
特定の実施形態では、加水分解デンプンによってカプセル化されるフレーバーオイルは、オレンジ油、柑橘油、食肉油、リモネンまたはそれらの任意の混合物からなる群から選択される。好ましくは、フレーバーオイルはオレンジ油またはリモネンである。
【0079】
特定の実施形態では、押出粒子はペレット状である。
【0080】
特定の実施形態では、押出粒子は乾燥しており、すなわち、例えば噴霧乾燥または流動床乾燥によって水分が除去されている。
【0081】
代替的な実施形態では、押出粒子は噴霧乾燥させられていない。上に示したように、本発明による方法では、初期原料組成物中の含水量を低くすることができるため、必要とされるエネルギー集約的な乾燥工程をより少なくすることができる。
【0082】
特定の実施形態では、押出粒子は乾燥しており、すなわち、オーブン乾燥または流動床乾燥によって水分が除去されている。
【0083】
特定の実施形態では、押出粒子は50~90%、好ましくは60~80%の水溶解度を有する。溶解度は、乾燥重量基準でサンプル100グラム当たりの可溶性固体の重量として算出され、表される。水溶解度を決定する具体的な方法は、当業者に知られている。高い水溶解度は、粉末清涼飲料等の多くの消費者製品用途における押出粒子の使用に有利である。
【0084】
特定の実施形態では、押出粒子は5~60℃、好ましくは40~50℃のTg値(ガラス転移温度)を有する。室温(20~25℃)を超えるTg値は、安定性の問題なしに室温での押出粒子の貯蔵を可能にするため特に有用である。当業者は、Tg値をどのように決定することができるかを知っており、例えば、TA Instruments Differential Scanning Calorimeter Q2000(TA Instruments,New Castle,DE)を使用することができる。
【0085】
特定の実施形態では、押出粒子は、押出粒子の総重量を基準として3~30重量%、好ましくは4~14重量%の油含有量を有する。
【0086】
特定の実施形態では、押出粒子は、押出粒子の総重量を基準として4~6重量%の油含有量を有する。
【0087】
特定の実施形態では、押出粒子は、押出粒子の総重量を基準として6~14重量%の油含有量を有する。
【0088】
本発明の別の態様は、本発明による押出粒子を含む消費者製品に関する。
【0089】
特定の実施形態では、消費者製品は食品、ペットフードまたは飼料製品である。
【0090】
本発明の粒子は、再水和を起こしやすい乾燥食品製品、例えばインスタント飲料(PSD、チョコレート、コーヒー)、チューインガムのような菓子、インスタント麺または固形スープの素に特に有利である。
【0091】
本発明の粒子は、水分活性が比較的高い食品製品、例えばレトルト食品(ready to use meal)、肉類似物、電子レンジ食品、パスタボックスに特に有利である。
【0092】
本発明の粒子は、ベジタリアン用の肉類似物または肉代替物、ベジタリアンバーガー、ソーセージ、パティ、鶏肉模倣ナゲット、肉製品(例えば加工肉、家禽、牛肉、豚肉、ハム、生ソーセージまたは生肉調製物、スパイスまたはマリネした生肉または塩漬肉製品、共押出しされるか、またはテクスチャー化植物性タンパク質と動物性タンパク質との混合であることが多い、動物性および植物性タンパク質の組合せを様々な比率で使用した再成形肉または拡張肉製品)に使用することができる。本発明の目的のための食肉は、赤身肉、例えば牛肉、豚肉、羊肉、ラム肉、狩猟肉および家禽肉、例えば鶏肉、七面鳥肉、ガチョウ肉および鴨肉を包含する。好ましくは、食肉は牛肉、家禽または豚肉から選択される。
【0093】
しかしながら、本発明の粒子は、以下の食品および飲料製品の例においても特に関心を持たれ得る:
・ ベイクド品(例えばパン、ドライビスケット、ケーキ、他のベイクド品)、
・ 非アルコール飲料(例えば炭酸清涼飲料、ボトル入り飲料水、スポーツ/栄養ドリンク、ジュース飲料、野菜ジュース、野菜ジュース調製物)、
・ アルコール飲料(例えばビールおよび麦芽飲料、スピリッツ飲料)、
・ インスタント飲料(例えばインスタント野菜飲料、粉末清涼飲料、インスタントコーヒーおよび茶)、
・ 穀物製品(例えば朝食用シリアル、調理済み既製米製品、米粉製品、キビおよびソルガム製品、生または調理済みの麺およびパスタ製品)、
・ 乳製品(例えばフレッシュチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、乳飲料、乳清、バター、部分的または完全に加水分解された乳タンパク質を含有する製品、発酵乳製品、コンデンスミルクおよび類似物)、
・ 乳製品ベースの製品(例えばフルーツまたは風味付きヨーグルト、アイスクリーム、フルーツアイス)、
・ 菓子製品(例えばチューインガム、ハードおよびソフトキャンディ)、
・ チョコレートおよびコンパウンドコーティング、
・ 油脂またはそのエマルションをベースとする製品(例えばマヨネーズ、スプレッド、マーガリン、ショートニング、レムラード、ドレッシング、香辛料調製物)、
・ スパイス、マリネまたは加工した魚製品(例えば魚肉ソーセージ、すり身)、
・ 卵または卵製品(乾燥卵、卵白、卵黄、カスタード)、
・ デザート(例えばゼラチンおよびプディング)、
・ ダイズタンパク質または他の大豆画分から作られる製品(例えば豆乳およびそれから作られる製品、ダイズレシチンを含有する調製物、豆腐もしくはテンペ等の発酵製品、またはそれから製造される製品、醤油)、
・ 野菜調製物(例えばケチャップ、ソース、加工および再構成野菜、乾燥野菜、急速冷凍野菜、調理済み野菜、酢漬けの野菜、野菜の濃縮物またはペースト、調理野菜、ジャガイモ調製物)、
・ ベジタリアン用の肉代替物、ベジタリアンバーガー、
・ 香辛料または香辛料調製物(例えばカラシ調製物、セイヨウワサビ調製物)、香辛料混合物、特に、例えばスナックの分野で使用される調味料、
・ スナック物品(例えば、焼いたまたは揚げたポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、トウモロコシ、コメまたはラッカセイをベースとした押出物)、
・ 肉製品(例えば加工肉、家禽肉、牛肉、豚肉、ハム、生ソーセージまたは生肉調製物、スパイスまたはマリネした生肉または塩漬肉製品、再成形肉)、
・ レディーディッシュ(例えばインスタント麺、米、パスタ、ピザ、トルティーヤ、ラップ)、ならびにスープおよびブロス(例えばストック、セイボリーキューブ(savory cube)、乾燥スープ、インスタントスープ、調理済みスープ、レトルトスープ)、ソース(インスタントソース、乾燥ソース、既製ソース、グレイビー、甘味ソース)。
【0094】
特定の実施形態では、消費者製品は、ベイクド品、インスタント飲料、穀物製品、乳製品、乳製品ベースの製品、油脂またはそのエマルションをベースとする製品、デザート、野菜調製物、ベジタリアン用の肉代替物、香辛料および調味料、スナック、肉製品、レディーディッシュ、スープおよびブロス、ならびにソースからなる群から選択される。
【0095】
特定の実施形態では、消費者製品は、肉および/または魚ベースの食品または類似物、ストック、セイボリーキューブ、粉末ミックス、牛肉または豚肉ベースの製品、シーフード、すり身、インスタント麺、米、スープ、ソース、調理済み食品、冷凍または冷蔵ピザ、パスタ、ポテトフレークまたはフライ、麺、ポテト/トルティーヤチップス、電子レンジ用ポップコーン、ナッツ、プレッツェル、餅、煎餅、発酵乳類似飲料、酸性乳類似飲料、非発酵乳類似飲料、チーズまたはチーズ類似物、ヨーグルトまたはヨーグルト類似物、栄養補助食品、栄養バー、シリアル、アイスクリーム、乳製品不使用のアイスクリーム、菓子製品、チューインガム、ハードボイルドキャンディーおよび粉末飲料からなる群から選択される。
【0096】
特定の実施形態では、消費者製品は食品、ペットフードまたは飼料製品であり、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%の本発明による押出粒子を含む。典型的には、食品、ペットフードまたは飼料製品は、タンパク質、特に植物性タンパク質または動物性タンパク質、およびそれらの混合物をさらに含む。有利には、植物性タンパク質は、好ましくはダイズタンパク質、トウモロコシ、エンドウマメ、キャノーラ、ヒマワリ、ソルガム、コメ、アマランス、ジャガイモ、タピオカ、アロールート、ヒヨコマメ、ルピナス、キャノーラ、コムギ、カラスムギ、ライムギ、オオムギおよびそれらの混合物の中から選択される。
【0097】
本発明の粒子は、より具体的には動物性および/または植物性タンパク質を含む、押出および/または焼いた食品、ペットフードまたは飼料製品に特に適している。典型的には、上記の押出および/または焼いた食品、ペットフードまたは飼料製品は、肉および/または魚ベースの食品または類似物、ならびにそれらの混合物(言い換えると、肉ベースの食品および/もしくは魚ベースの食品、または肉類似物もしくは魚類似物、ならびにそれらの混合物)の中から選択することができ、押出および/もしくは焼いた肉類似物または押出および/もしくは焼いた魚類似物が好ましい。押出および/または焼いた食品、ペットフードまたは飼料製品の非限定的な例は、肉類似物(例えばハンバーガー)が調製されるタンパク質をテクスチャー化することを目的とした、スナック製品または押し出した植物性タンパク質である。粉末組成物は、押出し前または押出し後に、押し出していない植物性タンパク質単離物/濃縮物、またはハンバーガーもしくはナゲット(等)が形成されるテクスチャー化植物性タンパク質のいずれかに添加することができる。
【0098】
特定の実施形態では、消費者製品は食品製品または飲料である。好ましくは、消費者製品は粉末清涼飲料(PDS)、茶、ティーバッグまたはコーヒーである。より好ましくは、消費者製品は粉末清涼飲料(PDS)である。
【実施例】
【0099】
[実施例1:押出粒子の調製]
押出粒子を共回転二軸スクリュー押出機(FMHE36-24、Fumake Co.,Hunan,China)で調製した。バッチサイズは、各押出実験について10kgであった。トウモロコシデンプン、高温α-アミラーゼ、オレンジ油および水の5つのブレンド(ブレンド1~5)を表1に従って調製し、4℃で16時間保持した。各ブレンドをロスインウェイトフィーダーによって1.5kg/hの供給速度で押出機に供給した。押出機の4つのバレルは、供給から出口ゾーンまで60℃~90℃の設定点で独立して温度制御した。バレル温度は、押出プロセス中一定に保持した。スクリュー速度は、100rpmで一定に保持した。
【0100】
【0101】
押出し後に、押出粒子1~5をそれらの油含有量およびそれらのDE値(デキストロース当量)について評価した。結果を下記表2に示す。
【0102】
押出粒子の油含有量は、LF-NMR(Bruker Biospin GmbH)ハーンスピンエコー分析によって決定した。NMRは23MHzで作動し、油含有量の測定を可能にするために遅延時間8μsの20mmプローブを備えていた。サンプル緩和遅延は20秒に設定し、ノイズ低減のために4回のスキャンを累積した。油保持率は、ブレンドの元の油含有量と測定された油含有量とに基づいて算出した。押出粒子1~5の油含有量およびそれぞれの油保持率(%)を表2に示す。
【0103】
DE値はレイン-エイノン滴定法に基づいて決定した。希釈後に溶液が約0.6%の還元糖を含有するような量のサンプル(押出粒子)を量り取った。サンプルを続いて熱水での500mL容量フラッシュに定量的に移した。サンプルを続いて室温まで冷却した。次いで、サンプルを目盛線まで水で希釈し、十分に混合した。25.0mLの標準化混合フェーリング溶液を200mL三角フラスコにピペットで移し、数個のガラスビーズを加えた。サンプルを続いてビュレットによって予想終点(予備滴定により決定)から0.5mL以内に添加した。次いで、フラスコを即座に滴定装置の金網の上に置き、およそ2分で沸点に達するようにバーナーを調整した。混合物をさらに2分間沸騰させた。沸騰の間に2滴のメチレンブルー指示薬を添加し、1分以内に滴定を完了した。青色が消えた時点で終点に達した。サンプル1~5の測定DE値を表2に示す。
【0104】
【0105】
3.0~7.2のDE値によって示されるように、トウモロコシデンプンは、5つ全てのブレンドにおいて押出プロセス中に効果的にマルトデキストリンへと加水分解された。同時に、25.2~52.4%の良好な油保持量によって示されるように、オレンジ油は、形成されたマルトデキストリンによって効果的にカプセル化された。これは、記載のプロセスにおいてデンプンの加水分解とオレンジ油のカプセル化とが同時に、すなわち1回の押出工程のうちに起こったことを示している。さらに、サンプルブレンドにおいてデンプンが押出プロセス中に効果的に加水分解されるには、10重量%または15重量%のそれぞれの低含水量で十分であった。
【0106】
より多量のα-アミラーゼを示したサンプルは、押出し後のより高いDE値も示した。この点で、サンプル1および2はそれぞれ、サンプル5よりも高いDE値を示したが、サンプル3は、サンプル1および2のそれぞれよりも高いDE値を示した。同様に、サンプル4はサンプル3よりも高いDE値を示した。
【0107】
[実施例2:押出粒子の調製]
押出粒子をスクリュー直径12mmの共回転二軸スクリュー押出機(EuroLab、L/D 25、Thermo Scientific)で調製した。ダイホールの直径は3mmであった。バッチサイズは、各押出実験について2kgであった。
【0108】
コメデンプン、高温α-アミラーゼ、リモネン、滑沢剤(1:1の比率でのレシチンと中鎖トリアシルグリセリドとの混合物)および水の4つのブレンド(ブレンド6~9)を表3に従って調製し、4℃で16時間保持した。
【0109】
各ブレンドをロスインウェイトフィーダーによって0.35~0.45kg/h(ブレンド6:0.35kg/h;ブレンド7:0.45kg/h;ブレンド8:0.35kg/h;ブレンド9:0.45kg/h)の供給速度で押出機に供給した。6つの押出機バレルは、供給から出口ゾーンまで25℃~135℃の設定点で独立して温度制御した。バレル温度は、押出プロセス中同じに保持した。スクリュー速度は、60rpmで一定に保持した。
【0110】
【0111】
各押出粒子のDE値、水溶解度、Tg値(ガラス転移温度)および油含有量を決定した。油含有量により、油保持率(%)も算出することができた。結果を下記表4に示す。
【0112】
各サンプルのDE値は、上記実施例1に記載したようにレイン-エイノン滴定法によって決定した。
【0113】
水溶解度は、10%の固形分(乾燥基準)を含有する水溶液を作製することによって決定した。各サンプルについて二連サンプルを調製した。これらの溶液を卓上遠心分離機(Cole Parmer Niles,IL)に投入し、6000rpmで10分間回転させた。上清を捨て、沈殿物をアルミパンに移し、100℃のオーブンで一定重量まで乾燥させた。溶解度は、乾燥重量基準でサンプル100グラム当たりの可溶性固体の重量として算出し、表した。
【0114】
ガラス転移温度(Tg)の測定は、TA Instruments Differential Scanning Calorimeter Q2000(TA Instruments,New Castle,DE)で行った。少量のサンプル(約10mg)をTzero密封パンに封入した。プログラムは以下の工程からなっていた:-20℃で5分間平衡化、10℃/分で100℃まで昇温、-20℃まで冷却、-20℃で5分間定温保持、および10℃/分で100℃まで昇温。ガラス転移温度は、2回目の加熱昇温(再スキャン)の変曲点とみなした。各サンプルについて二連で行い、平均を報告した。
【0115】
サンプル中の油含有量は、20MHzプローブアセンブリ(H20-18-25AM1)を備えるLF-NMR(Bruker Biospin GmbH)によって決定した。較正はニート油で行った。押出粒子を三連で分析し、平均を報告した。
【0116】
【0117】
27.4~30のDE値によって示されるように、コメデンプンは、4つ全てのブレンドにおいて押出プロセス中に効果的に加水分解された。同時に、49~60%の良好な油保持量によって示されるように、リモネンは、加水分解されたデンプン材料によって効果的にカプセル化された。これは、記載のプロセスにおいてデンプンの加水分解とリモネンのカプセル化とが同時に、すなわち1回の押出工程のうちに起こったことを示している。さらに、サンプルブレンドにおいてデンプンが押出プロセス中に効果的に加水分解されるには、21重量%または26重量%のそれぞれの低含水量で十分であった。
【0118】
21重量%の水分量しか存在しないサンプル6、8および9は、室温での貯蔵中の押出粒子の物理的安定性を保証する高いTg値を示した。したがって、低い含水量は、押出工程中にデンプンを加水分解し、貯蔵安定性のある押出粒子を製造するのに十分であった。
【0119】
[実施例3:押出粒子の調製]
押出粒子をスクリュー直径12mmの共回転二軸スクリュー押出機(EuroLab、L/D 25、Thermo Scientific)で調製した。ダイホールの直径は3mmであった。バッチサイズは、各押出実験について2kgであった。
【0120】
コメデンプン、高温α-アミラーゼ、低温α-アミラーゼ、プルラナーゼ、リモネン、滑沢剤(1:1の比率でのレシチンと中鎖トリアシルグリセリドとの混合物)および水の2つのブレンド(ブレンド10および11)を表5に従って調製し、4℃で16時間保持した。
【0121】
各ブレンドをロスインウェイトフィーダーによって0.5~0.6kg/h(ブレンド10:0.5kg/h;ブレンド11:0.6kg/h)の供給速度で押出機に供給した。6つの押出機バレルは、供給から出口ゾーンまで25℃~110℃の設定点で独立して温度制御した。バレル温度は、押出プロセス中同じに保持した。スクリュー速度は、180rpm(ブレンド10)および250rpm(ブレンド11)でそれぞれ一定に保持した。
【0122】
【0123】
各押出粒子のDE値、水溶解度、Tg値(ガラス転移温度)および油含有量は、上記実施例2に記載したように決定した。油含有量により、油保持率(%)も算出することができた。結果を下記表6に示す。
【0124】
【0125】
7.2および10.5のDE値によって示されるように、コメデンプンは、2つのブレンドにおいて押出プロセス中に効果的に加水分解された。同時に、62%および69%の良好な油保持量によって示されるように、リモネンは、加水分解されたデンプン材料によって効果的にカプセル化された。これは、記載のプロセスにおいてデンプンの加水分解とリモネンのカプセル化とが同時に、すなわち1回の押出工程のうちに起こったことを示している。さらに、サンプルブレンドにおいてデンプンが押出プロセス中に効果的に加水分解されるには、14重量%および15重量%のそれぞれの低含水量で十分であった。
【0126】
サンプル10および11は、室温での貯蔵中の押出粒子の物理的安定性を保証する、それぞれ40℃および31℃のTg値を示した。したがって、押出プロセスは、例えば噴霧乾燥などの更なる乾燥工程を必要とせずに、貯蔵安定性のある押出粒子をもたらす。
【0127】
[実施例4:押出粒子の調製]
押出粒子をスクリュー直径12mmの共回転二軸スクリュー押出機(EuroLab、L/D 25、Thermo Scientific)で調製した。ダイホールの直径は3mmであった。バッチサイズは、各押出実験について2kgであった。
【0128】
米粉;高温α-アミラーゼ、低温α-アミラーゼおよびプルラナーゼの1つ以上;リモネン;滑沢剤(1:1の比率でのレシチンと中鎖トリアシルグリセリドとの混合物);ならびに水の4つのブレンド(ブレンド12~15)を表7に従って調製し、4℃で16時間保持した。
【0129】
各ブレンドをロスインウェイトフィーダーによって0.6kg/hの供給速度で押出機に供給した。6つの押出機バレルは、供給から出口ゾーンまで20℃~110℃の設定点で独立して温度制御した。バレル温度は、押出プロセス中同じに保持した。スクリュー速度は、250rpmで一定に保持した。
【0130】
【0131】
各押出粒子のDE値、水溶解度、Tg値(ガラス転移温度)および油含有量は、上記実施例2に記載したように決定した。油含有量により、油保持率(%)も算出することができた。結果を下記表8に示す。
【0132】
【0133】
8.1~11.5のDE値によって示されるように、米粉中のコメデンプンは、4つのブレンドにおいて押出プロセス中に効果的に加水分解された。同時に、66~80%の良好な油保持量によって示されるように、リモネンは、加水分解されたデンプン材料によって効果的にカプセル化された。これは、記載のプロセスにおいてデンプンの加水分解とリモネンのカプセル化とが同時に、すなわち1回の押出工程のうちに起こったことを示している。さらに、サンプルブレンドにおいてデンプンが押出プロセス中に効果的に加水分解されるには、10重量%の低含水量で十分であった。
【0134】
サンプル12は、室温での貯蔵中の押出粒子の物理的安定性を保証する、34℃のTg値を示した。さらに、室温での貯蔵中に、調製したサンプルの亀裂は観察されなかった。
【国際調査報告】