(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電気可変クラッキング圧力を有する気腹装置安全弁
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505188
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022041170
(87)【国際公開番号】W WO2023043586
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルツ マイケル エル. ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM23
(57)【要約】
外科処置中、外科用ガスをガス源から患者の体腔に送達するための気腹装置が開示され、当該気腹装置は、可変安全弁のクラッキング圧力が超過したときに患者の体腔内の外科用ガスを周囲空気に排出することによって、外科処置中に患者の体腔の過圧を防止するように適合かつ構成される電気可変安全弁を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置中にガス源から患者の体腔に外科用ガスを送達するための気腹装置であって、
可変安全弁のクラッキング圧力が超過したときに前記患者の体腔内の前記外科用ガスを周囲空気に排出することによって、外科処置中に前記患者の体腔の過圧を防止するように適合かつ構成される電気可変安全弁を含む、気腹装置。
【請求項2】
前記可変安全弁が、前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を手術中に調整するための電気モータを含む、請求項1に記載の気腹装置。
【請求項3】
フィードバック信号に基づいて前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を調整するように前記電気モータに命令するためのモータ制御装置をさらに備える、請求項2に記載の気腹装置。
【請求項4】
前記フィードバック信号が、オペレータからの入力信号によって提供される、請求項3に記載の気腹装置。
【請求項5】
前記フィードバック信号が、センサからの信号によって提供される、請求項3に記載の気腹装置。
【請求項6】
前記モータ制御装置が、少なくとも二つの個別のクラッキング圧力設定値のセットから選択されるオペレータが選択したクラッキング圧力に基づいて、前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を調整するように前記電気モータに命令する、請求項4に記載の気腹装置。
【請求項7】
前記モータ制御装置が、流量センサおよび/または圧力センサからのフィードバック信号に基づいて、前記可変安全弁のクラッキング圧力を調整するように前記電気モータに命令する、請求項5に記載の気腹装置。
【請求項8】
前記患者の体腔に送達される前記外科用ガスの流量を監視するための流量センサをさらに備える、請求項7に記載の気腹装置。
【請求項9】
前記患者の体腔に送達される前記外科用ガスの圧力を監視するための圧力センサをさらに備える、請求項7に記載の気腹装置。
【請求項10】
前記気腹装置から前記患者の体腔への外科用ガスの送達を制御するための制御弁をさらに備える、請求項1に記載の気腹装置。
【請求項11】
前記ガス源から前記気腹装置に送達される前記外科用ガスの圧力を制御するための圧力調整器をさらに備える、請求項1に記載の気腹装置。
【請求項12】
前記電気モータが、親ねじによって回転運動を直線運動に変換するステッピングモータである、請求項2に記載の気腹装置。
【請求項13】
前記親ねじが、弁ばねの一端と接触する圧力プレートを駆動し、前記弁ばねの取り付け長さを効果的に変更する、請求項12に記載の気腹装置。
【請求項14】
前記弁ばねの前記取り付け長さの短縮が、前記可変安全弁の前記クラッキング圧力の上昇と直線的に相関し、前記ダイアフラムの前面に作用するガス圧が前記ダイアフラムの背面に加えられるばね力を超えるときにガス流を可能にする、請求項13に記載の気腹装置。
【請求項15】
外科処置中にガス源から患者の体腔に外科用ガスを送達するための気腹装置であって、
a)前記可変安全弁のクラッキング圧力が超過したときに前記患者の体腔内の前記外科用ガスを周囲空気に排出することによって、前記外科処置中に前記患者の体腔の過圧を防止するように適合かつ構成される可変安全弁、
b)前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を手術中に調整するための電気モータ、および
c)オペレータが選択したクラッキング圧力に基づいて、前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を調整するように前記電気モータに命令するためのモータ制御装置を備える、気腹装置。
【請求項16】
前記オペレータが選択したクラッキング圧力が、少なくとも二つの個別のクラッキング圧力設定値のセットから選択される、請求項15に記載の気腹装置。
【請求項17】
外科処置中にガス源から患者の体腔に外科用ガスを送達するための気腹装置であって、
a)前記可変安全弁のクラッキング圧力が超過したときに前記患者の体腔内の前記外科用ガスを周囲空気に排出することによって、前記外科処置中に前記患者の体腔の過圧を防止するように適合かつ構成される可変安全弁、
b)前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を手術中に調整するための電気モータ、および
c)センサからのフィードバック信号に基づいて、前記可変安全弁の前記クラッキング圧力を調整するように前記電気モータに命令するためのモータ制御装置を備える、気腹装置。
【請求項18】
前記フィードバック信号が、流量センサおよび/または圧力センサによって生成される、請求項17に記載の気腹装置。
【請求項19】
前記患者の体腔に送達される前記外科用ガスの流量を監視するための流量センサをさらに備える、請求項18に記載の気腹装置。
【請求項20】
前記患者の体腔に送達される前記外科用ガスの圧力を監視するための圧力センサをさらに備える、請求項18に記載の気腹装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本対象出願は、2021年9月20日に出願された米国仮特許出願第63/246,018号の優先権の利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野
本出願は、内視鏡手術に関し、より具体的には、電気可変クラッキング圧力を有する安全弁を含む、患者の体腔に外科用ガスを送達するための気腹装置を対象とする。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
腹腔鏡下又は「低侵襲性」外科的手術技術は、胆嚢摘出、虫垂切除術、ヘルニア修復及び腎摘出などの手術の実施において普及している。このような処置は、一般に、二酸化炭素などの加圧流体で腹腔の充填又は腹腔に「送気」して、気腹と称される手術空間を作り出すことを含む。
【0004】
腹腔鏡手術に関連する送気は、腹腔の過圧に関連する固有の患者リスクを呈する。過圧は、成人および小児の患者両方に多数の傷害を引き起こしている。今日使用されているほとんどの気腹装置は、ガス送気ネットワークの中間圧力ノードに配管された機械的安全弁のみが内蔵されている。安全弁は、圧力による気腹制御設定値の超過をもたらす可能性のある、機械的、電気的、およびソフトウェア障害から保護する最終手段として機能する。
【0005】
先行技術において公知の気腹装置安全弁は調整可能であるが、一般的に、製造時またはその後の使用時にのみ、規定値またはクラッキング圧力に固定される。弁のこのユーザ調整不可能な性質により、外科手術使用中に弁が断続的に漏れるのを防止するために、通常予想される最大圧力レベルを超えて設定することが必要となる。これらの漏出防止圧力設定値は、一般的に、患者の大多数で使用される場合、ほとんどの用途において過圧を軽減するための閾値を上回る。
【0006】
弁のクラッキング圧力または設定値が動作中に調整され得る気腹装置安全弁を提供することが有益であろう。この調整機能により、頻繁に弁を開放することなく、先行技術に記載される安全弁よりもはるかに低くクラッキング圧力を設定することが可能となる。さらに、より少ないガス流を必要とする手術、または小児などのより小さな腹膜容積を有する患者に対してクラッキング圧力を低下することができる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、外科処置中にガス源から患者の体腔に外科用ガスを送達するための新規の有用な気腹装置を対象とする。気腹装置は、可変安全弁のクラッキング圧力が超過したときに患者の体腔内の外科用ガスを周囲空気に排出することによって、外科処置中に患者の体腔の過圧を防止するように適合かつ構成される電気可変安全弁を含む。使用時に、弁にかかる圧力差がクラッキング圧力を超えると、弁は「啓開(cracked open)」し、ガスが流れるようになる。
【0008】
本開示によれば、可変安全弁は、可変安全弁のクラッキング圧力を手術中に調整するための電気モータと、フィードバック信号に基づいて可変安全弁のクラッキング圧力を調整するように電気モータに命令するためのモータ制御装置と、を含む。本開示の一実施形態では、フィードバック信号は、オペレータからの入力信号によって提供される。別の実施形態では、フィードバック信号は、センサからの信号によって提供される。
【0009】
入力信号がオペレータによって提供されると、モータ制御装置は、少なくとも二つの個別のクラッキング圧力設定値のセットから選択されるオペレータが選択したクラッキング圧力に基づいて、可変安全弁のクラッキング圧力を調整するように電気モータに命令する。信号がセンサによって提供されると、モータ制御装置は、流量センサおよび/または圧力センサからのフィードバック信号に基づいて、可変安全弁のクラッキング圧力を調整するように電気モータに命令する。
【0010】
気腹装置は、患者の体腔に送達される外科用ガスの流量を監視するための流量センサと、患者の体腔に送達される外科用ガスの圧力を監視するための圧力センサと、気腹装置から患者の体腔への外科用ガスの送達を制御するための制御弁と、ガス源から気腹装置に送達される外科用ガスの圧力を制御するための圧力調整器と、をさらに含む。
【0011】
本開示によると、電気モータは、親ねじによって回転運動を直線運動に変換するリードナットを駆動するステッピングモータである。親ねじは、弁ばねの一端と接触する圧力プレートを駆動し、弁ばねの取り付け長さを効果的に変更する。弁ばねの取り付け長さの短縮は、可変安全弁のクラッキング圧力の上昇と直線的に相関し、ダイアフラムの前面に作用するガス圧がダイアフラムの背面に加えられるばね力を超えるときにガス流を可能にする。
【0012】
本開示の電気的に可変な気腹装置安全弁のこれらの特徴および他の特徴は、図面と組み合わせてとられた好ましい実施形態の以下の説明からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
当業者が過度な実験を行うことなく、本開示の気腹装置安全弁の製造方法および使用方法を容易に理解できるように、その実施形態を図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0014】
【
図1】
図1は、本開示に従って構築された気腹装置の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す気腹装置に内蔵される、本開示の電気可変安全弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、同様の参照番号が、本開示の同様の特徴または構成要素を示す図面を参照すると、
図1に、本開示の可変安全弁100を内蔵する気腹装置コンソール10の概略図が図示される。気腹装置コンソール10は、ガス供給源12から加圧外科用ガスを受け取り、弁密閉アクセスポートまたはトロカール16と連通する管セット14を介して、圧力調節された外科用ガスを患者の体腔に送達する。
【0016】
気腹装置10は、グラフィカルユーザインターフェース18またはGUI、ならびに、GUI18を通したユーザ入力と、流量センサ24および/または圧力センサ26からのフィードバック信号に基づいて、可変安全弁100および別個の流量制御弁22を制御するためのマイクロプロセッサまたはモータ制御装置20を含む。
【0017】
使用時、ガス供給源12から気腹装置コンソール10に入る外科用ガスは、最初に圧力調整器28を通過し、次いで中間圧力調整器30を通過する。次いで、ガス流は、制御弁22に流れる前に、流量センサ24および圧力センサ26と相互作用するが、これらは気腹装置コンソール10から管セット14へのガスの送達を調節またはその他の方法で制御し、弁密閉アクセスポート16に取り付けられる。
【0018】
本開示の可変安全弁100は、中間圧力調整器30の下流かつ流量センサ24の上流に位置付けられる。作動時に、患者の腹腔からガスを、気腹装置コンソール10外へ、および周囲空気に導出または排出するように適合かつ構成され、結果として、有利には患者の腹腔の過圧を防止する。以下でより詳細に説明するように、可変安全弁100は、弁にわたる圧力差が弁のクラッキング圧力または気腹制御設定値を超えると作動する。
【0019】
本開示の可変安全弁100は、同一出願人による米国特許出願公開第2022/0233791号に開示されている“Low pressure insufflation manifold assembly for surgical gas delivery system”に組み込まれ得、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
ここで
図2を参照すると、可変安全弁100は、基部102およびハウジング104を含む。ハウジングは、ねじ部品105によって基部102に接続される。弁100の基部102は、
図1に示すように、中間圧力調整器30の下流かつ流量センサ24の上流で、気腹装置10のガス送達流路と連通する内部圧力空洞106を有する。基部102はまた、圧力空洞106および周囲空気と連通する通気口108を有する。
【0021】
安全弁100の流量制御要素は、圧力空洞106と通気口108との間に位置し、ロックリング125によって定位置に固定される弁座120と関連付けられる、ポペット弁部材118である。ポペット弁部材118は、内部圧力空洞106を横切って延在し、基部102と弁ハウジング104との間にその外周部がしっかりと固定された可撓性ダイアフラム126と動作可能に関連付けられる。ダイアフラム126の前面は、圧力空洞106の上部境界を画定し、その中の圧力変化に反応する。
【0022】
ダイアフラム126の後面または背面は、弁100のハウジング104の内部チャンバ115に支持されたコイル状弁ばね116と動作可能に関連付けられる。コイル状弁ばね116は、上部圧力プレート122と下部圧力プレート124との間に挟まれる。下部圧力プレート124は、ダイアフラム126の背面と動作可能に関連付けられ、上部圧力プレート122が電気モータ(例えば、ステッピングモータ)112に動作可能に接続される。上部圧力プレート122は、親ねじ114の形態のトルク/力倍増駆動機構によって電気モータ112に接続される。
【0023】
当業者であれば、モータ112がステッピングモータである必要はなく、位置フィードバックを有する任意の電気モータで代用できるということを容易に理解するであろう。しかしながら、ステッピングモータは、位置がステップ入力によって制御され得、位置フィードバックループが不要となるために望ましい。当業者はまた、駆動機構が直接的である必要はなく、または直線運動に変換する必要はないことも理解するであろう。ギア、回転作動、および非線形ばねを組み込む代替案も想定され、本開示の範囲内である。
【0024】
使用時、弁100のクラッキング圧力が手術中に調整されると、ステッピングモータ112は、親ねじ114によって回転運動を直線運動に変換するリードナット(図示せず)を駆動する。親ねじの動きは、弁ばね116の上端と接触する上部圧力プレート122を駆動し、弁ハウジング104内の弁ばね116の取り付け長さを効果的に変更する。弁ばね116の取り付け長さの短縮は、安全弁100のクラッキング圧力の上昇と直線的に相関し、圧力チャンバ106内でダイアフラム126の前面に作用するガス圧が、弁ばね116によってダイアフラム126の背面に加えられるばね力を超えるときにガス流を可能にする。
【0025】
本開示の一実施形態では、ユーザまたはオペレータは、気腹装置10のグラフィカルユーザインターフェース18によって、少なくとも二つの別個のクラッキング圧力設定値から、弁100のクラッキング圧力を選択することができる。本開示の別の実施形態では、オペレータは、クラッキング圧力範囲全体を通して選択可能な設定値の群から連続的に選択することができる。本開示のさらに別の実施形態では、弁100のクラッキング圧力は、流量センサ24および/または圧力センサ26からのフィードバック信号に基づいて、プロセッサ/モータ制御装置20によって連続的かつ自動的に設定される。プロセッサ20によって促進されるこの自動制御は、関連するソフトウェアの有無にかかわらず、適切な電気回路によって実施され得る。
【0026】
本開示は、ユーザベースの設定値決定プロセスを排除し、気腹システムが、圧力、流量、またはそれらの組み合わせを監視することによって、下流構成(例えば、管、弁、アクセスポートなど)および患者の変化に能動的に適合することを可能にする。例えば、気腹システムは、初期クラッキング圧力を5mmHgの低いクラッキング圧力に設定して、高レベルの過圧安全性を維持し、流量センサ24で測定されたガス送達速度が増加するか、または圧力センサ26で測定された中間ノード圧力が増加するにつれて、クラッキング圧力設定値を自動的に増加させ得るが、設定値が最大80mmHgレベルまたはより低いユーザ選択/設定可能な値を超えることは決して許容しない。
【0027】
このシナリオでは、過圧の危険につながる故障が発生した場合、設定値またはクラッキング圧力は80mmHg閾値を超えることはなく、経時的な変動値とみなされる場合、故障時のクラッキング圧力は、80mmHgの上限値ではなく気腹設定値に近い可能性が高い。
【0028】
対象開示が好ましい実施形態を参照して示され、記述されてきたが、当業者であれば、変更および/または修正が、対象開示の範囲から逸脱することなく作成され得ることを容易に理解するであろう。
【国際調査報告】