(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】スピロノラクトン及びアシルフルベンの組み合わせによるがんの処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20240711BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240711BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/585
A61K31/17
A61K33/243
A61K31/337
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505197
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022074297
(87)【国際公開番号】W WO2023010107
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400268
【氏名又は名称】ランタン ファルマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ、アディティア
(72)【発明者】
【氏名】バティア、キショー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ジャンリー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086DA13
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA04
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB24
4C206HA28
4C206MA02
4C206MA04
(57)【要約】
がんを処置する方法は、治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩との組み合わせを含む。その組成物及びキットが本明細書に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを処置する方法であって、前記方法が、処置を必要とする対象に、
a.治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、
b.治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と、を含む、活性薬剤の組み合わせを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記イルジン類似体が、アシルフルベンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イルジン類似体が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イルジン類似体が、以下の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【化1】
【請求項5】
前記イルジン類似体が、以下の構造を有する、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項6】
前記イルジン類似体が、イロフルベンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記活性薬剤が、別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記活性薬剤が、毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記活性薬剤が、連続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記活性薬剤が、共製剤として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
イルジン又はその類似体の投与が、スピロノラクトンの投与前、投与中、又は投与後である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記イルジン及び/又は前記スピロノラクトンの投与前、投与中、又は投与後に、前記対象に放射線療法、化学療法を施すこと、手術を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが、結腸直腸がん、膵臓がん、原発性肝臓がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、肉腫、又は脂肪組織がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記対象又は哺乳動物が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンによる処置前、処置後、又は処置中に、前記対象を放射線療法に供することを更に含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項17】
シスプラチン、パクリタキセル、及び他の利用可能な療法からなる群から選択される追加の治療剤を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、固形腫瘍を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記固形腫瘍が、乳房、中枢神経系、結腸、皮膚、肺、卵巣、前立腺、膵臓、又は腎臓の腫瘍である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、リンパ腫、白血病、又は黒色腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と、を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
前記イルジン類似体が、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンである、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記イルジン類似体が、以下の構造を有する、請求項20に記載の薬学的組成物。
【化3】
【請求項24】
前記イルジン類似体が、以下の構造を有する、請求項20に記載の薬学的組成物。
【化4】
【請求項25】
前記イルジン類似体が、イロフルベンである、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
対象におけるがんの処置のためのキットであって、治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、がん処置に関し、より具体的には、本出願は、スピロノラクトンを含む併用療法を使用するがん処置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、人々における最も一般的な死因のうちの1つである。進行がんを有する患者のための治療戦略の開発によって、全生存期間が著しく改善された。しかしながら、抗がん試薬に対する耐性は避けられず、進行がんの予後は不良のままである。薬物輸送体に対する変化、アポトーシスの抑制、ミトコンドリア変化、DNA損傷修復の促進、オートファジー、上皮間葉移行、及びがん幹細胞(cancer stem cell、CSC)を含む、がん薬物耐性のいくつかの潜在源が存在する。メカニズムを考慮する適切な戦略が、がんを治癒するために必要である。
【0003】
がんの併用療法処置は、より一般的になってきており、これは、一部には複数の経路を介して疾患を攻撃するという利点が認識されているからである。多くの有効な併用療法処置が、過去数十年にわたって同定されてきており、がんに起因する毎年の死亡数が引き続き多いことを考慮すると、抗がん処置に使用するための有効な治療レジメンを同定することが引き続き必要とされている。
【0004】
したがって、がんを処置するための改善された方法が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン(acylfulvene))とスピロノラクトンとの組み合わせによる対象におけるがんの処置が、アシルフルベン又はスピロノラクトン処置のいずれか単独によって提供された効果よりも相乗的により大きい効果(すなわち、各々を一緒に添加した効果よりも大きい効果)を有するという発見を開示する。例えば、イルジン又はアシルフルベンとスピロノラクトンとの組み合わせによりがんを処置することからもたらされた細胞毒性は、イルジン又はアシルフルベン又はスピロノラクトン単独によりがんを処置する場合にもたらされた細胞毒性と比較して予想外に大きい(又は両方を一緒に添加した場合の細胞毒性より大きい)。加えて、併用療法は、いずれかの療法を単独で使用した場合に見出されるよりも、がん細胞のより迅速な死滅及びより迅速な腫瘍縮小をもたらすことが発見された。
【0006】
本出願の一態様は、がんを処置するための併用療法を含む。実施形態では、療法は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)及びスピロノラクトンを含む活性薬剤の組み合わせを投与することを含む。
【0007】
本出願の別の態様は、がんを処置又は予防する用量で、薬学的に好適な担体又は賦形剤と混合された、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)及びスピロノラクトン又はその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物を提供する。薬学的組成物はまた、他の治療剤又は治療モダリティと組み合わせて、同時に、連続して、又は交互に投与され得る。
【0008】
本出願の別の態様は、各薬剤単独による単剤療法と比較して、組み合わせて使用される場合により低い、組み合わせて使用される治療有効量の各イルジン又はアシルフルベン、及びスピロノラクトンを含む。このようなより低い治療有効量は、より低い毒性の治療レジメンをもたらし得る。
【0009】
本出願の別の態様は、(+)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンであるアシルフルベンを含む療法を含む。
【0010】
本出願の別の態様は、イロフルベンであるアシルフルベンを含む療法を含む。
【0011】
本出願の別の態様は、固形腫瘍及び血液学的悪性腫瘍を含み得るがんの処置を含む。がん腫、肉腫、又は混合型がん(乳房、結腸、直腸、子宮内膜、胃、前立腺又は脳、中皮腫、卵巣、肺又は膵臓がんを含む)などの過形成疾患又は腫瘍性疾患などであるがこれらに限定されない腫瘍が、療法の標的とされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】LP-184を含む例示的な処置によるU87膠芽腫細胞における細胞成長速度を示す。
【
図1B】LP-184を含む例示的な処置によるCHLA-06非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍細胞における細胞成長速度を示す。
【
図1C】LP-184を含む例示的な処置によるCAKI-2乳頭状腎細胞がん腫細胞株における細胞成長速度を示す。
【
図2A】LP-284を含む例示的な処置によるRPMI 8226ヒト骨髄腫細胞株における細胞成長を示す。
【
図2B】LP-284を含む例示的な処置によるSUDHL6細胞株における細胞成長を示す。
【
図3】LP-184及びスピロノラクトンによるGBM細胞の処置を示す。
【
図4A】LP-184を含む例示的な処置によるM1 123膠芽腫細胞における細胞成長速度を示す。
【
図4B】LP-184を含む例示的な処置によるMayo39 GBMニューロスフェア細胞における細胞成長速度を示す。
【
図4B】LP-184を含む例示的な処置によるU87膠芽腫細胞における細胞成長速度を示す。
【
図5】M1 123細胞株における、より低用量のLP-184及びスピロノラクトンによる細胞成長速度を示す。
【
図6】Mayo39細胞株における、より低用量のLP-184及びスピロノラクトンによる細胞成長速度を示す。
【
図7】U87細胞株における、より低用量のLP-184及びスピロノラクトンによる細胞成長速度を示す。
【
図8】LP-184及びスピロノラクトンの相乗作用を示す。
【
図9A】LP-100を含む例示的な処置によるARTR非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍細胞における細胞成長速度を示す。
【
図9B】LP-100を含む例示的な処置による22RV1前立腺がん細胞における細胞成長速度を示す。
【
図9C】LP-100を含む例示的な処置によるACHN腎臓がん細胞における細胞成長速度を示す。
【
図10】スピロノラクトンが、MDAPCA2b細胞株において、より低用量のLP-100で効果を増強させたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、固形がん及び血液がんを処置するための併用療法を提供する。実施形態では、療法は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)及びスピロノラクトンを含む活性薬剤の組み合わせを投与することを含む。他の実施形態では、療法は、他の療法の組み合わせを施すことを含む。他の実施形態では、併用療法を使用して、固形がん(例えば、肺がん、乳がん、前立腺がん、結腸がん、直腸がん、及び膀胱がん)、膠芽腫及び非定型奇形腫様ラブドイド、並びに腎細胞がん腫)の生化学的発生又は再発を処置し得る。他の実施形態では、療法は、アシルフルベン(例えば、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン)又はその塩及びスピロノラクトンが治療有効量で患者に投与される、血液がんの生化学的発生及び再発を処置するために使用され得る併用療法を含む。ある特定の実施形態では、組み合わせは、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma、MCL)及びダブルヒットリンパ腫(double-hit lymphoma、DHL)などのリンパ腫の処置を提供し得る。多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)において、骨髄における形質細胞の過剰成長は、正常な血液形成細胞を排除し得る。
【0014】
イルジン又はアシルフルベン
一実施形態では、本出願は、イルジン又はイルジン類似体(例えば、アシルフルベン)の使用を含む。アシルフルベンは、ジャックオーランタンキノコ(Omphalotus olearius)から抽出され得る天然物である、イルジンの細胞毒性半合成誘導体の種類である。酸による処置(逆プリンス反応)によってセスキテルペンイルジンSから誘導されたアシルフルベンは、イルジンSよりもチオールに対してはるかに反応性が低い。
【0015】
一例では、アシルフルベンは、光を正にシフトさせる(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(Lantern Pharma Inc.によりLP-184と称される)であり、これは、以下に示される。
【0016】
【0017】
別の例では、アシルフルベンは、光を負にシフトさせる(+)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン(Lantern Pharma Inc.によりLP-284と称される)であり、これは、以下に示される。
【0018】
【0019】
(+)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベン及び(-)-ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンは、エナンチオマーであり、現在では公に知られている。
【0020】
別の例では、アシルフルベンは、イロフルベンである。
【0021】
スピロノラクトン
スピロノラクトンの化学名には、7α-アセチルチオスピロラクトン、7α-アセチルチオ-17α-ヒドロキシ-3-オキソプレグン-4-エン-21-カルボン酸γ-ラクトン、7α-アセチルチオ-3-オキソ-17α-プレグン-4-エン-21,17.ベータ.-カルボラクトン、3-(3-オキソ-7α-アセチルチオ-17.ベータ.-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-17α-イル)プロピオン酸ラクトン、7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシエチル)アンドロスト-4-エン-17β-オール-3--オンγ-ラクトン、及び7α-アセチルチオ-17α-(2-カルボキシエチル)テストステロンγ-ラクトン)が含まれる。他の名称には、SC-9420及びNSC-150339が含まれる。
【0022】
スピロノラクトンの類似体及び誘導体の例としては、臨床的に使用される、カンレノン、カンレノ酸カリウム、ドロスピレノン、及びエプレレノンなどの構造的に密接に関連するものが挙げられる。他の例としては、市販されていないスピロラクトンSC-5233(6,7-ジヒドロカンレノン;7α-デスチオアセチルスピロノラクトン)、SC-8109(19-ノル-6,7-ジヒドロカンレノン)、スピロキサゾン、プロレノン(SC-23133)、メクスレノン(SC-25152、ZK-32055)、ジシレノン(SC-26304)、スピロレノン(ZK-35973)、及びメスピレノン(ZK-94679)が挙げられる。
【0023】
スピロノラクトンは、有意なアルドステロン拮抗特性を有するステロイドラクトン化合物である(米国特許第3,257,390号)。スピロノラクトンは、その誘導体、異性体、塩、及び溶媒和物を含み得る。スピロノラクトンは、市販されており、分子式C24H32O4S及び416.574g mol-1のモル質量を有する。スピロノラクトンは、以下の構造を有する。
【0024】
【0025】
一実施形態では、アシルフルベン又はヒドロキシウレアメチルアシルフルベン又はその塩は、スピロノラクトンの投与前、投与と同時、又は投与後のいずれかに投与されてもよい。
【0026】
本出願の一態様は、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法を含む。方法は、有効量のスピロノラクトン及び有効量のアシルフルベンを対象に投与することを伴う。スピロノラクトンは、最適な相乗効果のために、アシルフルベンの前に、又はアシルフルベンと同時に投与されてもよい。スピロノラクトンは、重要なヌクレオチド除去修復(Nucleotide Excision Repair、NER)タンパク質XPB/ERCC3を分解し(参照:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7277409/)、NER欠損をもたらす。NER欠損を有する対象は、イルジンベースの抗がん剤に対してより感受性がある。
【0027】
別の実施形態は、治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と、を有する、薬学的組成物を含む。イルジン類似体は、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンであり得る。
【0028】
別の実施形態では、対象におけるがんの処置のためのキットは、治療有効量のイルジン又はそのイルジン類似体、誘導体、若しくはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のスピロノラクトン又はその類似体、誘導体、若しくは薬学的に許容される塩と、を含む。
【0029】
別の実施形態では、第2の治療剤は、カンプトテシン誘導体、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンB、5-FU、ゲムシタビン、オキサリプラチン、シスプラチナム、カルボプラチン、メルファラン、ダカルバジン、テモゾロミド、ドキソルビシン、イマチニブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、及びRafキナーゼ阻害剤から選択される、1つ以上の化学治療剤である。
【0030】
別の実施形態では、第2の治療剤は、パクリタキセル又はシスプラチナムから選択される1つ以上の化学治療剤である。
【0031】
用語「併用療法」は、他の生物学的に活性な成分及び非薬物療法(例えば、手術又は放射線処置)と更に組み合わせた、上記の治療剤の投与を含み得るか、又は含む。併用療法が非薬物処置を更に含む場合、非薬物処置は、治療剤と非薬物処置との組み合わせの共作用からの有益な効果が達成される限り、任意の好適な時間に行われ得る。例えば、適切な場合では、有益な効果は、非薬物処置が治療剤の投与から一時的に(おそらく日単位又は更に週単位で)除去される場合に依然として達成される。
【0032】
別の態様では、本明細書における組成物若しくは併用療法、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、放射線療法と組み合わせて投与されてもよい。放射線療法はまた、多剤療法の一部として、本発明の組成物及び本明細書に記載されている別の化学治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0033】
併用療法は、2つ以上の薬剤、例えば、アシルフルベン、スピロノラクトン、及び1つ以上の他の治療剤を投与することによって達成され得、これらの各々は、別々に製剤化及び投与されるか、又は単一製剤中の2つ以上の薬剤を投与することによって達成され得る。他の組み合わせもまた、併用療法に包含される。例えば、2つの薬剤が一緒に製剤化され、第3の薬剤を含有する別個の製剤と併せて投与され得る。併用療法における2つ以上の薬剤は同時に投与され得るが、そうである必要はない。例えば、第1の薬剤(又は薬剤の組み合わせ)の投与は、分、時間、日、又は週の単位で、第2の薬剤(又は薬剤の組み合わせ)の投与に先行し得る。したがって、2つ以上の薬剤は、互いに数分以内に、又は互いに1、2、3、6、9、12、15、18、若しくは24時間以内に、又は互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日以内に、又は互いに2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10週間以内に投与され得る。場合によっては、更に長い間隔が可能である。多くの場合、併用療法で使用される2つ以上の薬剤が患者の体内に同時に存在することが望ましいが、そうである必要はない。
【0034】
併用療法の方法は、相乗効果をもたらしてもよいか、又はもたらすべきであり、ここで、化合物又は他の治療剤の組み合わせの効果は、単剤としての化合物又は他の治療剤のいずれかの投与から生じる効果の合計よりも大きい。相乗効果はまた、単剤としての化合物又は他の治療剤のいずれかの投与によって達成され得ない効果であってもよい。相乗効果には、腫瘍サイズを低減させること、腫瘍成長を阻害すること、又は対象の生存を増加させることによってがんを処置する効果が含まれ得るが、これらに限定されない。相乗効果にはまた、がん細胞生存率を低減させること、がん細胞死を誘発すること、及びがん細胞成長を阻害又は遅延させることが含まれ得る。
【0035】
治療有効用量は、当業者によって認識されるように、処置される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の年齢及び全身健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療的処置との併用の可能性、並びに処置する医師の判断に応じて変動し得る。例えば、有効用量を選択するためのガイダンスは、ヒドロキシウレアメチルアシルフルベンの処方情報又はその雑誌の考察を参照することによって決定することができる。
【0036】
用語「有効量」は、本明細書において使用する場合、疾患又は障害の少なくとも1つ以上の症状を軽減するために必要な薬剤の量を指し、所望の効果を提供する薬理学的組成物の十分な量に関する。したがって、用語「治療有効量」は、異常な対象に投与される場合に、特定の効果を提供するのに十分な薬剤の量を指す。様々な状況における有効量はまた、本明細書において使用する場合、疾患の症状の発症を遅延させる、疾患症状の経過を改変させる(例えば、以下に限定されないが、疾患の症状の進行を減速させる)、又は疾患の症状を反転させるのに十分な量も含む。したがって、正確な「有効量」を指定することは一般に現実可能ではない。しかし、任意の所与の場合、適切な「有効量」は、日常的な実験だけを使用して、当業者によって決定することができる。
【0037】
本明細書に記載されている方法に従う薬剤の投与の投与量範囲は、例えば、薬剤の形態、その効力、及び本明細書に記載されている状態の症状、マーカー、又は指標が低減することが望ましい程度、例えば、腫瘍成長に対して望ましい低下率に依存する。投与量は、有害な副作用を引き起こすほど多くあるべきではない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、及び性別に応じて変動し、当業者によって決定することができる。投与量はまた、いずれの合併症の事象においても個々の医師によって調節することができる。
【0038】
用語「治療有効量」は、本明細書において使用する場合、同定された疾患若しくは状態を処置するか、向上させるか、若しくは予防するための、又は検出可能な治療効果若しくは阻害効果を呈するための薬学的薬剤の量を指す。効果は、当技術分野で公知の任意のアッセイ方法によって検出され得る。対象に対する正確な有効量は、対象の体重、サイズ、及び健康;状態の性質及び程度;並びに投与に選択される治療剤又は治療剤の組み合わせに依存する。所与の状況に対する治療有効量は、臨床医の技量及び判断の範囲内にある日常的な実験によって決定することができる。好ましい態様では、処置される疾患又は状態は、がんである。別の態様では、処置される疾患又は状態は、細胞増殖性障害である。
【0039】
例えば、本明細書に記載されている状態の処置における、又は本明細書に記載されている応答(例えば、固形がん又は血液がん)を誘発するための、本明細書に記載されている薬剤の効力は、熟練した臨床医によって決定することができる。しかしながら、本明細書に記載されている状態の兆候又は症状のうちの1つ以上が有益に変化し、他の臨床的に許容される症状が改善するか、若しくは向上さえする場合、又は所望の応答が、例えば、本明細書に記載されている方法に従う処置後に少なくとも10%誘発される場合、処置は、この用語が本明細書で使用される場合、「有効な処置」と考えられる。例えば、効力は、本明細書に記載されている方法に従って処置される状態のマーカー、指標、症状、及び/若しくは出現率、又は任意の他の測定可能な適切なパラメータ、例えば腫瘍サイズ及び/若しくは成長速度を測定することによって評価され得る。効力はまた、入院によって評価される個体が悪化するという不良、又は医学的介入(すなわち、疾患の進行が停止される)の必要性によって測定され得る。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、かつ/又は本明細書に記載されている。処置は、個体又は動物(一部の非限定例としては、ヒト又は動物が挙げられる)における疾患の任意の処置を含み、(1)疾患を阻害すること、例えば、症状(例えば、疼痛又は炎症)の悪化を予防すること、又は(2)疾患の重症度を軽減すること、例えば、症状の後退を引き起こすことを含む。疾患の処置のための有効量は、それを必要とする対象に投与した場合、その用語がその疾患に対して本明細書に定義されるような有効な処置をもたらすのに十分な量であることを意味する。薬剤の効力は、状態の物理的な指標又は所望の応答を評価することによって決定され得る。このようなパラメータのうちのいずれか1つ、又はパラメータの任意の組み合わせを測定することにより、投与及び/又は処置の効力をモニタリングすることは、当業者の能力の範囲内に十分ある。効力は、本明細書に記載されている状態の動物モデルにおいて、例えば、マウスモデルにおける血液がんの処置において評価され得る。実験動物モデルを使用する場合、処置の効力は、マーカーの統計学的に有意な変化、例えば、腫瘍サイズ及び/又は腫瘍成長速度を観察すると立証される。いくつかの実施形態では、ヒドロキシウレアメチル-アシルフルベン、アシルフルベン、若しくはイロフルベン、又はその薬学的に許容される塩の治療有効量は、0.5mg/日、1mg/日、2.5mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、30mg/日、60mg/日、90mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日、及び720mg/日からなる群から選択される。
【0040】
投与用量は、必要とする個体の要件に合わせて調整されるべきである。ヒトでは、心不全の処置にはスピロノラクトンを1日25~50mg投与し、高アルドステロン症の処置には1日100~400mg投与することが知られている。25~400mgの範囲のスピロノラクトンの使用は、潜在的な副作用に関して研究されている。がんの処置では、用量は、1日25~400mgの範囲であり得る。例示のために、使用され得るスピロノラクトン用量濃度は、5~25μM、マウスにおいて25~100mg/kg(腹腔内)であり、ヒトにおいて臨床的に1日20~200mg(経口)の範囲である。
【0041】
用語「処置する」が使用され、治療的処置及び予防的処置(発症の可能性を低減する)の両方を含む。どちらの用語も、疾患の発症若しくは進行(例えば、本明細書において記載されている疾患又は障害)を減少する、抑制する、弱化させる、消滅させる、停止させる、又は安定化させる、疾患の重症度を低下させる、又は疾患に関連する症状を改善することを意味する。
【0042】
薬学的組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサーに含まれ得る。
【0043】
本発明の組成物は、更に塩を形成することができる。本発明の組成物は、1分子当たり2つ以上の塩、例えばモノ-、ジ-、トリ-を形成し得る。これらの形態の全てもまた、特許請求される本発明の範囲内にあると企図される。
【0044】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の誘導体を指し、ここで、親化合物は、その酸性塩又は塩基性塩を作製することによって改変される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩又は四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の非毒性塩には、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、炭酸水素塩、炭酸塩、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル(glycollyarsanilic)酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、セバスチン酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び一般に生じるアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される、無機酸及び有機酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
薬学的に許容される塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-l-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ムコン酸などが挙げられる。本発明はまた、親化合物中の酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオン)によって置き換えられる場合、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合する場合のいずれかに形成される塩を包含する。
【0046】
薬学的に許容される塩への全ての言及は、同じ塩の溶媒付加形態(溶媒和物)を含むことが理解されるべきである。
【0047】
本明細書において使用する場合、用語「選択的に」とは、一方の集団において別の集団よりも高い頻度で生じる傾向があることを意味する。比較される集団は、細胞集団であり得る。好ましくは、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、がん又は前がん細胞に選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。好ましくは、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1つの分子標的(例えば、ヌクレオチド除去修復(NER)プレーヤーERCC3)を調節するように選択的に作用する。本発明はまた、酵素(例えば、NERタンパク質)の活性を選択的に阻害するための方法を提供する。好ましくは、事象は、集団Bと比較して集団Aにおいて2倍よりも高い頻度で生じる場合、集団Bに対して集団Aにおいて選択的に生じる。事象は、集団Aにおいて5倍よりも高い頻度で生じる場合、選択的に生じる。事象は、集団Bと比較して集団Aにおいて10倍よりも高い頻度、より好ましくは、50倍よりも高い頻度、更により好ましくは、100倍よりも高い頻度、及び最も好ましくは集団Aにおいて1000倍よりも高い頻度で生じる場合、選択的に生じる。例えば、細胞死は、正常細胞と比較して、がん細胞において2倍よりも高い頻度で生じる場合、がん細胞において選択的に生じると言われるだろう。
【0048】
組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、経口、経鼻、経皮、肺、吸入、口腔、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸膜内、髄腔内、及び非経口で投与される。一実施形態では、化合物は、経口投与される。当業者は、ある特定の投与経路の利点を認識するであろう。
【0049】
化合物を利用する投与量レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、及び医学的状態;処置される状態の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;並びに用いられる特定の化合物又はその塩を含む、種々の因子に従って選択される。通常の熟練した医師又は獣医は、状態の進行を予防、対抗、又は停止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0050】
本発明の開示された化合物の製剤及び投与のための技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19.sup.th edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1995)に見出され得る。ある実施形態では、本明細書に記載されている化合物及びその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて薬学的調製物に使用される。好適な薬学的に許容される担体には、不活性固体充填剤又は希釈剤及び滅菌水溶液又は有機溶液が含まれる。化合物は、このような薬学的組成物中に、本明細書に記載されている範囲内の所望の投与量を提供するのに十分な量で存在する。
【0051】
本明細書で使用される全ての百分率及び比率は、別段の指示がない限り、重量による。本発明の他の特徴及び利点は、異なる実施例から明らかである。提供される実施例は、本発明を実施するのに有用な異なる構成成分及び方法論を例示する。実施例は、特許請求される本発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の構成成分及び方法論を同定し、用いることができる。
【0052】
本明細書において使用する場合、「それを必要とする対象」は、前がん状態を有する対象である。好ましくは、それを必要とする対象は、がんを有する。「対象」には、哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、鳥類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、又はブタであり得る。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。本発明の対象には、がん若しくは前がん状態と診断されたか、がん若しくは前がん状態の症状を有するか、又はがん若しくは前がん状態を発症するリスクがある任意のヒト対象が含まれる。
【0053】
それを必要とする対象は、難治性又は耐性がんを有し得る。「難治性又は耐性がん」とは、処置に応答しないがんを意味する。がんは、処置の開始時に耐性であり得るか、又は処置中に耐性になり得る。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、直近の療法での寛解後にがん再発を有する。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、がん処置のための全ての公知の有効な療法を受け、失敗した。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、少なくとも1つの前療法を受けた。ある特定の実施形態では、前療法は、単剤療法である。ある特定の実施形態では、前療法は、併用療法である。
【0054】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、以前の療法の結果として二次がんを有し得る。「二次がん」とは、化学療法などの以前の発がん療法に起因して、又はその結果として生じるがんを意味する。
【0055】
がんは、ほとんどあらゆる兆候又は症状を引き起こし得る疾患群である。兆候及び症状は、がんのある場所、がんのサイズ、及びがんがどの程度近くの器官又は構造に影響を及ぼすかに依存する。がんが広がる(転移する)場合、症状は、身体の異なる部分に現れ得る。
【0056】
がんの処置は、腫瘍のサイズの低減をもたらし得る。腫瘍のサイズの低減はまた、「腫瘍退縮」とも称されることがある。好ましくは、処置後、腫瘍サイズは、処置前のそのサイズに対して5%以上低減し、より好ましくは、腫瘍サイズは、10%以上低減し、より好ましくは、20%以上低減し、より好ましくは、30%以上低減し、より好ましくは、40%以上低減し、更により好ましくは、50%以上低減し、最も好ましくは、75%以上を超えて低減する。腫瘍のサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定されてもよい。
【0057】
がんの処置は、腫瘍の数及びサイズの減少をもたらす。好ましくは、処置後、腫瘍の数又はサイズは、処置前の数に対して5%以上低減し、より好ましくは、腫瘍の数又はサイズは、10%以上低減し、より好ましくは、20%以上低減し、より好ましくは、30%以上低減し、より好ましくは、40%以上低減し、更により好ましくは、50%以上低減し、最も好ましくは、75%を超えて低減する。腫瘍の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍の数は、裸眼に目視可能な、又は特定の倍率で、腫瘍を計数することによって測定されてもよい。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
【0058】
がんの処置は、原発性腫瘍部位から離れた他の組織又は器官における転移性病変の数の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、転移性病変の数は、処置前の数に対して5%以上低減し、より好ましくは、転移性病変の数は、10%以上低減し、より好ましくは、20%以上低減し、より好ましくは、30%以上低減し、より好ましくは、40%以上低減し、更により好ましくは、50%以上低減し、最も好ましくは、75%を超えて低減する。転移性病変の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。転移性病変の数は、裸眼に目視可能な、又は特定の倍率で、転移性病変を計数することによって測定されてもよい。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又は50倍である。
【0059】
がんの処置は、担体を単独で受ける集団と比べて、処置対象の集団の平均生存期間の増加をもたらし得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて増加し、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存期間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性化合物による処置の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加はまた、例えば、活性化合物による処置の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。
【0060】
がんの処置は、未処置対象の集団と比べて、処置対象の集団の平均生存期間の増加をもたらし得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて増加し、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存期間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性化合物による処置の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加はまた、例えば、活性化合物による処置の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。
【0061】
がんの処置は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物ではない薬物による単剤療法を受けている集団に比べて、処置対象の集団の平均生存期間の増加をもたらし得る。好ましくは、平均生存期間は、30日を超えて増加し、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存期間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性化合物による処置の開始後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。集団の平均生存期間の増加はまた、例えば、活性化合物による処置の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、生存平均長さを計算することによって測定されてもよい。
【0062】
がんの処置は、担体を単独で投与を受ける集団と比べて、処置対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。がんの処置は、未処置集団と比べて、処置対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。がんの処置は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物ではない薬物による単剤療法を受けている集団に比べて、処置対象の集団の死亡率の低下をもたらし得る。好ましくは、死亡率は、2%を超えて低下し、より好ましくは、5%を超えて、より好ましくは、10%を超えて、最も好ましくは、25%を超えて低下する。処置対象の集団の死亡率の低下は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団の死亡率の低下は、例えば、活性化合物による処置の開始後に、集団に関して、単位時間当たりの疾患関連死の数平均を計算することによって測定されてもよい。集団の死亡率の低下はまた、例えば、活性化合物による処置の第1のラウンドの完了後に、集団に関して、単位時間当たりの疾患関連死の数平均を計算することによって測定されてもよい。
【0063】
がんの処置は、腫瘍成長速度の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、腫瘍成長速度は、処置前の数に対して少なくとも5%低減し、より好ましくは、腫瘍成長速度は、少なくとも10%低減し、より好ましくは、少なくとも20%低減し、より好ましくは、少なくとも30%低減し、より好ましくは、少なくとも40%低減し、より好ましくは、少なくとも50%低減し、更により好ましくは、少なくとも50%低減し、最も好ましくは、少なくとも75%低減する。腫瘍成長速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍成長速度は、単位時間当たりの腫瘍の直径の変化に従って測定され得る。
【0064】
がんの処置は、腫瘍の再成長の減少をもたらし得る。処置後、腫瘍の再成長は、5%未満であり得、より好ましくは、腫瘍の再成長は、10%未満であり得、より好ましくは、20%未満、より好ましくは、30%未満、より好ましくは、40%未満、より好ましくは、50%未満、更により好ましくは、50%未満、最も好ましくは、75%未満であり得る。腫瘍の再成長は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。腫瘍の再成長は、例えば、処置の後に続く以前の腫瘍縮小後の腫瘍の直径の増加を測定することによって測定される。腫瘍の再成長の減少は、処置が停止された後に腫瘍が再発生しないことによって示される。
【0065】
細胞増殖性障害の処置又は予防は、細胞増殖の速度の低減をもたらし得る。好ましくは、処置後、細胞増殖の速度は、少なくとも5%低減し、より好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも75%低減する。細胞増殖の速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。細胞増殖の速度は、例えば、単位時間当たりの組織試料中の分裂細胞の数を測定することによって測定される。
【0066】
細胞増殖性障害の処置又は予防は、増殖細胞の割合の低減をもたらし得る。好ましくは、処置後、増殖細胞の割合は、少なくとも5%低減し、より好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも75%低減する。増殖細胞の割合は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。好ましくは、増殖細胞の割合は、例えば、組織試料中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量化することによって測定される。増殖細胞の割合は、分裂指数と同等であり得る。
【0067】
細胞増殖性障害の処置又は予防は、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズの減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、処置前のそのサイズに対して少なくとも5%低減し、より好ましくは、少なくとも10%低減し、より好ましくは、少なくとも20%低減し、より好ましくは、少なくとも30%低減し、より好ましくは、少なくとも40%低減し、より好ましくは、少なくとも50%低減し、更により好ましくは、少なくとも50%低減し、最も好ましくは、少なくとも75%低減する。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。細胞増殖の領域又はゾーンのサイズは、細胞増殖の領域又はゾーンの直径又は幅として測定されてもよい。
【0068】
細胞増殖性障害の処置又は予防は、異常な外観又は幾何形状を有する細胞の数又は割合の減少をもたらし得る。好ましくは、処置後、異常な幾何形状を有する細胞数は、処置前のそのサイズに対して少なくとも5%低減し、より好ましくは、少なくとも10%低減し、より好ましくは、少なくとも20%低減し、より好ましくは、少なくとも30%低減し、より好ましくは、少なくとも40%低減し、より好ましくは、少なくとも50%低減し、更により好ましくは、少なくとも50%低減し、最も好ましくは、少なくとも75%低減する。異常細胞の外観又は幾何形状は、任意の再現可能な測定手段によって測定されてもよい。異常細胞の幾何形状は、例えば、倒立組織培養顕微鏡を使用することによって測定することができる。異常細胞の幾何形状は、核多形成の形態をとり得る。
【0069】
本発明の組成物を、それを必要とする細胞又は対象に投与することは、目的のタンパク質メチルトランスフェラーゼの活性の調節(すなわち、刺激又は阻害)をもたらし得る。
【0070】
がん又は細胞増殖性障害の処置は、細胞死をもたらし得、好ましくは、細胞死は、集団における細胞数において少なくとも10%の減少をもたらす。より好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少を意味し、より好ましくは、少なくとも30%の減少、より好ましくは、少なくとも40%の減少、より好ましくは、少なくとも50%の減少、最も好ましくは、少なくとも75%の減少を意味する。集団における細胞数は、任意の再現可能な手段によって測定されてもよい。集団におけるいくつかの細胞は、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting、FACS)、免疫蛍光顕微鏡法、及び光学顕微鏡法によって測定することができる。細胞死を測定する方法は、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.100(5):2674-8,2003に示される。ある態様では、細胞死は、アポトーシスによって生じる。
【0071】
好ましくは、有効量の本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、正常細胞に対して有意に細胞毒性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が正常細胞の10%を超える細胞死を誘発しない場合、正常細胞に対して有意に細胞毒性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量での化合物の投与が正常細胞の10%を超える細胞死を誘発しない場合、正常細胞の生存率に有意に影響しない。ある態様では、細胞死は、アポトーシスによって生じる。
【0072】
細胞を本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に接触させることにより、がん細胞において、選択的に細胞死が誘発又は活性化され得る。本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することにより、がん細胞において、選択的に細胞死が誘発又は活性化され得る。細胞を、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に接触させることにより、細胞増殖性障害によって影響を受けた1つ以上の細胞において、選択的に細胞死が誘発され得る。好ましくは、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することにより、細胞増殖性障害によって影響を受けた1つ以上の細胞において、選択的に細胞死が誘発される。
【0073】
本出願は、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することによってがんを処置又は予防する方法であって、本発明の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞周期の1つ以上の期(例えば、G1、G1/S、G2/M)における細胞の蓄積によるがん細胞増殖の予防、又は細胞老化の誘発、又は腫瘍細胞分化の促進;正常細胞における有意な量の細胞死を伴わない、細胞毒性、壊死、若しくはアポトーシスを介するがん細胞における細胞死の促進、少なくとも2の治療指数を有する動物における抗腫瘍活性のうちの1つ以上をもたらす、方法に関する。本明細書において使用する場合、「治療指数」は、最大耐性用量を有効用量で割ったものである。
【0074】
用語「キット」は、上記で定義された組み合わせパートナーが、独立して、又は識別された量の組み合わせパートナーとの異なる固定された組み合わせの使用によって、すなわち、同時に又は異なる時点で投与され得ることを意味する。次いで、部分のキットの部分は、例えば、部分のキットの任意の部分について、同時に、又は経時的にずらして、すなわち、異なる時点で、等しい又は異なる時間間隔で投与され得る。組み合わせた調製物において投与される組み合わせパートナーの総量の比率は、変動し得る。組み合わせパートナーは、同じ経路又は異なる経路によって投与され得る。
【0075】
当業者は、本明細書で考察される公知の技法又は同等の技法の詳細な説明について一般的な参照テキストを参照してもよい。これらのテキストは、当然ながら、本発明の態様を作製又は使用する際にも参照することができる。
【実施例】
【0076】
本明細書において開示されている本開示をより効率的に理解し得るために、実施例を以下に提供する。これらの実施例は、例示目的に過ぎず、本開示を制限するものと決して解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0077】
LP-100(イロフルベン)、LP-184、及びLP-284は、転写共役ヌクレオチド除去修復(Transcription-Coupled Nucleotide Excision Repair、TC-NER)経路によって修復されたDNA病変を誘発することが知られているアシルフルベン化合物群に属する。TC-NER経路が損なわれる場合、DNA損傷は、もはや修復され得ず、細胞死が生じる。
【0078】
スピロノラクトンは、選択的に細胞死を誘発し、がん細胞の成長を阻害する。以下に示すように、わずか10μMのスピロノラクトン単独では、細胞生存の低減を引き起こさなかった。アシルフルベンと組み合わせると、細胞又は腫瘍は、死滅又は低減した。
【0079】
実施例1
図1A、
図1B、及び
図1Cは、U87(膠芽腫細胞株)、CHLA-06(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍細胞株)、及びCAKI-2(乳頭状腎細胞がん腫細胞株)を処置する際に10μMスピロノラクトンをLP-184と組み合わせると、LP-184単独で使用した場合よりも細胞生存率が有意に低下したことを示す。見られるように、スピロノラクトン単独では、成長速度を実質的に変化させなかった。
【0080】
実施例2
図2A及び
図2Bは、10μMスピロノラクトン処置単独では、多発性骨髄腫細胞株RPMI 8226ヒト骨髄腫細胞株に対する細胞毒性を引き起こさなかったが、LP-284のIC50を2.4倍低減させたことを示す。更に、SUDHL6ダブルヒットリンパ腫細胞株を450nMのLP-284+10uMスピロノラクトンで処置した場合、450nMのLP-284単独と比較して、細胞生存率が有意に低減した。
【0081】
実施例3
図3は、LP-184及び5μMスピロノラクトンによるGBM細胞の処置が、インビトロでのU87、M1123、及びMayo39膠芽腫培養物におけるLP-184のIC50の3~6倍の減少をもたらしたことを示す。
図3は、標準誤差を伴う相対IC50データ/細胞生存率を示し、表1は平均IC50値を列挙する。
【0082】
【0083】
実施例3
図4A、
図4B、及び
図4Cは、M1123(膠芽腫細胞株)、Mayo39(膠芽腫細胞株)、及びU87(膠芽腫細胞株)に対する10μMスピロノラクトン処置が、ウエスタンブロット分析によって測定されるように、タンパク質レベルでTC-NER構成成分ERCC3の時間依存的枯渇をもたらすことを示す。代表的な画像は、異なる膠芽腫細胞株における24~72時間にわたる有意なスピロノラクトン媒介ERCC3ダウンレギュレーションによるERCC3ウエスタンブロット強度の定量化を示す。
【0084】
実施例4
図5、
図6、及び
図7はそれぞれ、スピロノラクトンが、M1123、Mayo39、及びU87細胞株において、より低用量のLP-184で効果を増強させたことを示す。これは、スピロノラクトンを含むLP-184の治療有効量が、LP-184が単剤療法として単独で使用される場合よりも低いことを示す。
【0085】
実施例5
図8は、LP-184及びスピロノラクトンの相乗作用を示す。予め確立された皮下U87異種移植片腫瘍を有するSCIDマウスを、スピロノラクトン単独、LP-184単独、又はそれらの組み合わせで処置した。スピロノラクトン処置を移植後8日目に25mg/kgで週5日腹腔内に開始し、LP-184を9日目に4mg/kgで4回の用量について1日おきに静脈内に開始した。スピロノラクトン単剤療法は、未処置対照と比較して、腫瘍成長に効果をもたらさなかった。
図2に示すように、LP-184単独及びスピロノラクトンと組み合わせたものは、完全又はほぼ完全な腫瘍退縮を誘発した。25日目に開始して、LP-184単独で処置した5/5の動物において腫瘍成長が再出現したのに対して、LP-184+スピロノラクトンで処置した1/5の動物のみにおいて腫瘍再成長が見られた(4/5の腫瘍において持続的完全応答)。腫瘍体積は、8日目に開始して、LP-184単独に対してLP-184及びスピロノラクトンにおいて有意に低減し、平均差の大きさは、42日目の観察の最終日まで増加し続け、ここで、平均体積は、LP-184+スピロノラクトン処置マウスにおいて10倍低かった(p値0.048)。
【0086】
実施例6
図9A、
図9B、及び
図9Cは、CHLA 06(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍細胞株)、22RV1(前立腺細胞株)、及びACHN(腎細胞がん腫細胞株)に対する10μMスピロノラクトンの添加によって、細胞成長速度が変化しなかったことを示す。更に、細胞生存率データは、細胞処置において10uMスピロノラクトンをLP-100と組み合わせると、LP-100単独を使用した場合よりも細胞生存率が有意に低下したことを示す。
【0087】
実施例7
図10は、スピロノラクトンが、MDAPCA2b細胞株において、より低用量のLP-100で効果を増強させたことを示す。イロフルベンのスピロノラクトン(又はTC-NER経路に関与するDNA修復タンパク質の機能を阻害する他の薬剤)との組み合わせを使用して、腫瘍細胞死滅を強化する。
【0088】
実施例8-相乗作用スコア
MacSynergy IIソフトウェアを使用して、LP-184とスピロノラクトンとの組み合わせをスコア化した。このプログラムは、ブリス独立モデルを用いた2つの阻害剤のチェッカーボード組み合わせから生成された全てのデータポイントの薬物相互作用の三次元試験を可能にする。信頼限界は、反復データから決定される。95%信頼限界(confidence limit、CL)が理論上の相加的表面と重複しない場合、2つの薬物間の相互作用は、相加的とは有意に異なる。相乗作用又は拮抗作用の体積を決定し、三次元でグラフで示し、2つの薬物濃度の変化当たりの相乗作用又は拮抗作用の相対量を表すことができる。相乗作用及び拮抗作用体積は、両方の化合物が異なる標的に独立して作用すると仮定するブリス独立モデルに基づく。ブリス独立モデル下で予測される分別応答faABのセットは、faAB=faA+faB-faA faBとして計算され、faA及びfaBは、それぞれ、量dA及びdBでの化合物A及びBの可能な応答の割合、例えばパーセント(%)阻害を表し、量(dA+dB)での化合物A及びBの組み合わせのパーセント阻害を説明する。95%相乗作用/拮抗作用体積は、ブリス独立モデル下でのfaABの予測における観察された阻害と95%信頼限界との間の差の合計である。MacSynergy IIをデータ分析に使用した。
【0089】
LP-184とスピロノラクトンとの組み合わせは、14.10~15.52μMの相乗作用体積を有した(相加的相乗作用)。インビトロ膵臓がん細胞生存率データからブリス相乗作用スコアを計算した(表2)。10を超えるスコアは、相乗作用を示し、0未満は拮抗作用を示すと考えられた。Capan-1(BRCA2欠失)、Hs766t(ATR変異体)、及びPanc03.27細胞株におけるLP-184+スピロノラクトンについて、それぞれ14.08、16.47、及び15.52の総合ブリス相乗作用スコアが達成された。スピロノラクトンは、試験した3つの細胞株全てにおいてLP-184との高い相乗作用を示した。表2は、膵臓細胞におけるそれらの結果を示す。
【0090】
【0091】
いくつかの例示的な態様及び実施形態が上記で考察されたが、当業者は、ある特定の修正、置換、追加、及びそれらの部分組み合わせを認識するであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲及び以降の特許請求の範囲は、それらの真の趣旨及び範囲内にあるような全てのそのような修正、置換、追加、及び部分組み合わせを含むように解釈されることが意図される。
【国際調査報告】