(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240711BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240711BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505224
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2022011277
(87)【国際公開番号】W WO2023014009
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0101536
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035852
【氏名又は名称】インビトロス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Invitros Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】20F, 10 Gukjegeumyung-ro,Yeongdeungpo-gu,Seoul 07326 REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム,ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジャンディ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セリュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンジュ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR90
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法に関するものであって、具体的には、核酸を抽出するための溶液としてRNA分解酵素抑制剤を含む組成物を用いて、特定の温度で加熱するステップを含んで別途の精製過程と溶離過程なしに重合酵素連鎖反応を行って分子診断のための時間を最小化し、抽出に用いられる専用の装置および消耗品を最小化することによって、分子診断の費用を節減することができる細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む、
細胞溶解および核酸抽出用組成物。
【請求項2】
前記RNA分解酵素抑制剤は、RNA分解酵素Aを抑制する抑制剤を含むものである、
請求項1に記載の細胞溶解および核酸抽出用組成物。
【請求項3】
前記RNA分解酵素抑制剤は、タンパク質に由来したものである、
請求項1に記載の細胞溶解および核酸抽出用組成物。
【請求項4】
前記緩衝溶液は、pH6.0以上pH9.0以下のものである、
請求項1に記載の細胞溶解および核酸抽出用組成物。
【請求項5】
前記緩衝溶液は、グリセロール、ハイドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ジチオトレイトール(DTT、dithiothreitol)、塩化カリウムおよびこれらの組合わせから選択されたいずれか一つを含むものである、
請求項1に記載の細胞溶解および核酸抽出用組成物。
【請求項6】
核酸を含む試料を、請求項1に記載の細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造するステップと、
前記混合物を25℃以上45℃以下の温度に維持する1次加熱するステップと、
前記1次加熱された混合物を75℃以上100℃未満の温度に維持する2次加熱するステップと、を含む、
細胞溶解および核酸抽出方法。
【請求項7】
前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップを、それぞれ1分以上30分以下で行う、
請求項6に記載の細胞溶解および核酸抽出方法。
【請求項8】
前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、前記混合物の体積が30μLであることを基準に、7.5Unit/reaction以上60.0Unit/reaction以下である、請求項6に記載の細胞溶解および核酸抽出方法。
【請求項9】
請求項6に記載の細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物に、プライマーおよびプローブが含まれた溶液とプレミックスとを添加するステップと、
前記抽出された核酸を重合酵素連鎖反応で増幅するステップと、を含む、分子診断方法。
【請求項10】
RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む組成物を含む、細胞溶解および核酸抽出用または分子診断用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2021年8月2日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0101536号の出願利益を主張して、その内容全部は本発明に含まれる。
【0002】
本発明は、細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法に関するものであって、具体的には、核酸を抽出するための溶液としてRNA分解酵素抑制剤を含む組成物を用いて、特定の温度で加熱するステップを含んで別途の精製過程と溶離過程なしに重合酵素連鎖反応を行って分子診断のための時間を最小化し、抽出に用いられる専用装置および消耗品を最小化することによって、分子診断の費用を節減することができる細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、人間遺伝体研究結果に基づいて遺伝子水準で疾病の原因を解釈することによって、人間の疾病を治癒するか予防しようとする目的で、生体試料の操作および生化学的分析に対する要求が徐々に増加している。また、疾病の診断外にも、新薬開発、ウイルスやバクテリア感染有無の事前検査および法医学などの多様な分野で生体試料や細胞が含まれた試料から核酸を抽出、分析する技術が要求される。
【0004】
一方、分子診断をするためには、ウイルスや細菌に感染した人の唾液または血液などから遺伝子情報を有しているDNAまたはRNAである核酸を抽出し、これを増幅して疾病の感染有無を確認することが一般的である。
【0005】
図1は、従来技術に係る重合酵素連鎖反応を示したフローチャートである。前記
図1を参考にすると、従来の場合、検体(S10)から遺伝子情報を有している核酸を抽出(Extraction、S30)し、これを重合酵素連鎖反応を行って核酸を増幅(S70、S90)して結果を分析することが一般的である。前記核酸を抽出するためには、溶解(Lysis、S31)、溶離(Elution、S33)および精製(Purification、S50)する過程を必要とした。但し、核酸を抽出するために溶解および精製する過程では、これを行うための専用の抽出装備および抽出のために消耗する用品(プラスチックからなる道具、磁性ビーズまたは溶液など)を必要とした。
【0006】
前述の従来技術で核酸を抽出する場合、純度の高い核酸を抽出することができるが、抽出する過程で長時間がかかり、緊急な状況や応急室で診断または検診するには適していないという問題があり、ウイルスの急激な拡散で国家防疫が必要な状況でこれを適用することと抽出のための専用の器機および消耗品を持続的に使用しなければならないので、診断のために高価な費用を支払わなければならないという問題点があった。
【0007】
したがって、前述の問題点を解決するために、特定の組成物を用いることによって、精製過程や溶離過程なしに細胞溶解だけで重合酵素連鎖反応を行うことができる技術に対する開発が至急な実情であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が成そうとする技術的課題は、細胞内の核酸を抽出するために細胞を溶解する過程で、特定の成分を含む組成物を用いて、前記溶解された細胞を含む混合物を加熱することによって、別途の細胞が溶解された溶液の精製および溶離過程を省略し、前記溶解された溶液を用いて重合酵素連鎖反応を行うことができる細胞溶解および核酸抽出用組成物、およびこれを用いた分子診断方法を提供することである。
【0009】
但し、本発明が解決しようとする課題は、前記言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む細胞溶解および核酸抽出用組成物を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によると、前記RNA分解酵素抑制剤は、RNA分解酵素Aを抑制する抑制剤を含むものであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によると、前記RNA分解酵素抑制剤は、タンパク質に由来したものであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によると、前記緩衝溶液は、pH6.0以上pH9.0以下のものであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によると、前記緩衝溶液は、グリセロール(glycerol)、ハイドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ジチオトレイトール(DTT、dithiothreitol)、塩化カリウムおよびこれらの組合わせから選択されたいずれか一つを含むものであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態は、核酸を含む試料を前記細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造するステップと、前記混合物を25℃以上45℃以下の温度に維持する1次加熱するステップと、前記1次加熱された混合物を75℃以上100℃未満の温度に維持する2次加熱するステップと、を含む細胞溶解および核酸抽出方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態によると、前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップは、それぞれ1分以上30分以下で行うものであってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、前記混合物の体積が30μLであることを基準に、7.5Unit/reaction以上60.0Unit/reaction以下のものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態は、前記細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物にプライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとを添加するステップと、前記抽出された核酸を重合酵素連鎖反応で増幅するステップと、を含むものである分子診断方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出用組成物は、別途の細胞が溶解された溶液の精製過程および溶離過程を省略し、前記溶解された溶液を用いて重合酵素連鎖反応を行うことによって、核酸を増幅して分子診断する過程でかかる時間を最小化することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出方法は、核酸を抽出する過程で加熱を通じて重合連鎖反応の正確性を阻害する要素を非活性化することによって、分子診断の正確性を向上させることができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る分子診断方法は、抽出に用いられる専用の装置および消耗品を最小化することによって、分子診断の費用を節減させることができる。
【0022】
本発明の効果は、前述の効果に限定されるものではなく、言及されない効果は本願明細書および添付の図面から当業者に明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、従来技術に係る重合酵素連鎖反応を示したフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る分子診断方法の概略図およびチューブ内部の成分の反応を簡略に示した概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る分子診断方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例1に係る分子診断方法の概略図と実施例1-1および1-2のCt値を示したグラフである。
【
図5】
図5は、実施例2に係る分子診断方法の概略図と実施例2-1ないし2-4のCt値を示したグラフである。
【
図6】
図6は、実施例3に係る分子診断方法の概略図と実施例3-1および3-2のCt値を示したグラフである。
【
図7】
図7は、実施例4に係る分子診断方法の概略図と実施例4-1および4-2のCt値を示したグラフである。
【
図8】
図8は、実施例4-3ないし4-6に係る分子診断方法の概略図である。
【
図9】
図9は、従来技術であるRNAの抽出過程および精製過程を含むPCRと製造例のCt値を示したグラフである。
【
図10】
図10は、製造例の1次加熱ステップでRNA分解酵素抑制剤の濃度によるCt値を示したグラフである。
【
図11】
図11は、製造例の1次加熱ステップの温度によるCt値を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性があることを意味する。
【0025】
本願明細書の全体において、「Aおよび/またはB」は「AおよびB、またはAまたはB」を意味する。
【0026】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施形態は、RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む細胞溶解および核酸抽出用組成物を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出用組成物は、別途の細胞が溶解された溶液の精製過程および溶離過程を省略し、前記溶解された溶液を用いて重合酵素連鎖反応を行うことによって、核酸を増幅して分子診断する過程でかかる時間を最小することができる。
【0029】
前記
図1を参考にすると、従来技術に係る分子診断法は、細胞内のDNAまたはRNAなどの核酸を抽出(Extraction、S30)するために試料を検体採取(S10)した以後、溶解(Lysis、S31)、溶離(Elution、S33)および精製(Purification、S50)過程を経て溶離された溶液に追加的なPCR緩衝溶液(buffer)を添加してRT-PCR(Reverse Transciption PCR、S70)およびPCR(重合酵素連鎖反応、S90)を行う。以後、前記PCRによって増幅された核酸を診断に用いることが一般的であった。但し、前記方法は、溶解過程、溶離過程および精製過程に用いられる専用の器機が要求され、前記過程で用いられる溶液またはプラスチックウェア(plasticware)であるプレートおよび/またはチューブなどのような多様な消耗品を持続的に使用しなければならないという問題点があった。
【0030】
但し、従来技術に係る分子診断法で核酸を抽出した以後、サンプルを濃縮して濃度が高いサンプルに対してPCRを行うので、Ct値が低い傾向が見られた。これに対して、ダイレクトPCR(d-PCR)は、細胞を検体採取して溶解(Lysis)のための緩衝溶液が添加されて希薄されるため、PCRを行うためのサンプルの濃度が低くなるので、前記従来技術に係る分子診断法に比べてCt値が高くなるしかないという限界があった。したがって、少量の細胞サンプルを検体採取してRNAを抽出しても、RNAの損傷および損失を最小化してPCR効率を極大化し、時間を短縮することができる分子診断方法が要求された。
【0031】
さらに、従来のd-PCRで界面活性剤を用いた化学的溶解過程を行う場合、検体採取した細胞とともに存在するRNA分解酵素が不可欠に含まれているという問題があった。すなわち細胞を検体採取する過程で、RNA分解酵素がともに存在し、界面活性剤を用いて前記細胞を溶解(Lysis)する過程で、前記RNA分解酵素は、前記細胞から出たRNAを分解してPCRの効率が急激に低下するという問題点があった。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記細胞溶解および核酸抽出用組成物は、RNA分解酵素抑制剤を含む。具体的には、加熱しても非活性にならないRNA分解酵素を抑制することができるRNA分解酵素抑制剤を含むことによって、分子診断を単純化して、分子診断にかかる時間を短縮することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記RNA分解酵素抑制剤は、RNA分解酵素Aを抑制する抑制剤を含むものであってもよい。前述のように、前記RNA分解酵素抑制剤を、RNA分解酵素Aを抑制する抑制剤として選択することによって、加熱によって他のRNA分解酵素を抑制するとともに、温度に安定したRNA分解酵素Aを非活性化することによって、分子診断を単純化して、分子診断にかかる時間を短縮することができる。
RNA分解酵素の特性を検討すると、下記の表1の通りである。
【0034】
【0035】
具体的には、RNA分解酵素は、温度によって影響を受ける酵素に該当する。但し、加熱をする場合、RNA分解酵素T2、RNA分解酵素T1、RNA分解酵素H、RNA分解酵素PおよびRNA分解酵素Iは、低い温度で非活性になってRNAを分解する活性を失うことになるが、RNA分解酵素Aは100℃まで加熱しても安定するので、加熱を通じてRNA分解酵素をいずれも非活性にすることができないという問題点があった。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る分子診断方法の概略図およびチューブ内部の成分の反応を簡略に示した概略図である。前記
図2(a)および(b)を参考にすると、細胞またはウイルスを人体から検体を採取する。前記採取した検体を前記細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造し、前記混合物に含まれたRNA分解酵素A抑制剤は、前記検体に含まれたRNA分解酵素Aを非活性化し、前記混合物を加熱してRNA分解酵素A以外のRNA分解酵素をいずれも非活性化して熱非活性化(thermal inactivation)させ、これと同時に細胞を熱溶解(thermal lysis)して細胞内部にある核酸、すなわちRNAまたはDNAを抽出する。以後、前記抽出された核酸にプライマー、プローブおよびプレミックスを混合してRT-PCRおよびPCRを行う場合、核酸の増幅時間を減少させることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記RNA分解酵素抑制剤は、タンパク質に由来したものであってもよい。具体的には、前記RNA分解酵素抑制剤は、分子が大きいものであってもよい。すなわち前記RNA分解酵素抑制剤は、タンパク質に由来したものとして分子が大きいものであってもよく、RNA分解酵素と自ら結合して巨大分子(Large molecule)を形成してPCR反応の阻害を防止するものであってもよい。より具体的には、前記RNA分解酵素抑制剤は、マウスの肺に由来したもの、人間の胎盤に由来したもの、またはこれらの組合わせから選択された一つのものであってもよい。前記マウスの肺に由来したものであるRNA分解酵素抑制剤は、nanohelix RI(Rnase Inhibitor)であってもよい。前記RNA分解酵素抑制剤は、Nanohelix HelixAyme Rnase Inbibitor(RNI2000)、Themo Scientific RiboLock Inhibitor(EO0381)、Invitrogen RNaseOUT Recombinant Ribonuclease Inhibitor(10777019)、Takara Recombinant RNase Inhibitor (2313A)、Invitrogen SUPERase In RNase Inhibitor (AM2694)、Applied Biosystems RNase Inhibitor (N8080119)、Roche Protector RNase Inhibitor (RNAINH-RO/3335399001)、Sigma-Aldrich Ribonuclease inhibitor human (R2520)、Promega RNasin/RNasin Plus Ribonuclease Inhibitor、NEW ENGLAND BioLabs Inc. RNase Inhibitor、Murine (M0314)、NEW ENGLAND BioLabs Inc. RNase Inhibitor、Human Placenta (M0307)、ABclonal Technology RNase Inhibitor、Mammalian (RK21401)、BioVision RNaseOFF ribonuclease Inhibitor (M1238)、PCR Biosystems RiboShield RNase Inhibitor (PB30.23-02)、Blirt RIBOPROTECT Hu RNase Inhibitor (RT35)、highQu GmbH SecurRIN Advanced RNase Inhibitor (RNI0305)、Enzynomics RNase Inhibitor (M007)、Meridian Bioscience RiboSafe RNase Inhibitor (BIO-65027)、QIAGEN RNase Inhibitor (Y9240L)、Lucigen RiboGuard RNase Inhibitor (RG90925)、Jena Bioscience RNase Inhibitor - recombinant (PCR392S)、abm RNaseOFF Ribonuclease Inhibitor (G138)、biotechrabbit RNase Inhibitor (BR0400901)、BioFACT RNase Inhibitor (RI 152-20h)、Canvax RNase Inhibitor (P0269)、ShineGene RNasin(RNase Inhibitor) (ZP00801)、TOYOBO RNase inhibitor (SIN-201)、またはこれらの組合わせから選択された群より一つであってもよい。前述のように、前記RNA分解酵素抑制剤は、タンパク質に由来したものは分子が大きい特徴があり、前記分子が大きいタンパク質由来のRNA分解酵素抑制剤を用いる場合、後述する分子診断過程でのPCR(重合酵素連鎖反応)の阻害を防止することができるが、PVSAのような化学物質に由来したRNA分解酵素抑制剤は分子の大きさが小さいため、分子診断過程でのPCR(重合酵素連鎖反応)を阻害する役目を果たすことがある。グアニジニウムイソチオシアネート(Guanidinium isothiocyanate、GITC)のような化学由来の物質も、RNA分解酵素を抑制させるものの、PCR反応の阻害が行われるものと知られている。また、ベータ-メルカプトエタノール(beta-mercaptoethanol)のような還元剤もRNA分解酵素抑制剤として用いることができるが、還元剤は長期間の保管性および安全性の面でデメリットがある。したがって、前述のように、前記RNA分解酵素抑制剤をタンパク質に由来したものから選択することによって、分子診断過程でのPCR(重合酵素連鎖反応)の阻害を防止し、分子診断過程にかかる時間を減少させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、細胞溶解および核酸抽出用組成物は緩衝溶液を含む。前述のように、前記細胞溶解および核酸抽出用組成物が緩衝溶液を含むことによって、分子診断過程でのPCR(重合酵素連鎖反応)の反応性を向上させ、分子診断過程にかかる時間を減少させることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記緩衝溶液は、pH6.0以上pH9.0以下のものであってもよい。具体的には、前記緩衝溶液は、pH6.1以上pH8.9以下、pH6.2以上pH8.7以下、pH6.3以上pH8.6以下、pH6.4以上pH8.5以下、pH6.5以上pH8.4以下、pH6.6以上pH8.3以下、pH6.7以上pH8.2以下、pH6.8以上pH8.1以下、pH6.9以上pH8.0以下、pH7.0以上pH7.9以下、pH7.1以上pH7.8以下、pH7.2以上pH7.7以下、pH7.3以上pH7.6以下またはpH7.4以上pH7.5以下であってもよい。前述の範囲で前記緩衝溶液のpHを調節することによって、前記細胞溶解過程での効率を向上させることができ、前記RNA分解酵素抑制剤とRNA分解酵素との反応を促進させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記緩衝溶液は、グリセロール、ハイドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ジチオトレイトール(DTT、dithiothreitol)、塩化カリウムおよびこれらの組合わせから選択されたいずれか一つを含むものであってもよい。前述したことから前記緩衝溶液に含まれた成分を調節することによって、前記細胞溶解過程での効率を向上させることができ、前記RNA分解酵素抑制剤とRNA分解酵素との反応を促進させ、分子診断過程でのPCR(重合酵素連鎖反応)の反応性を向上させ、分子診断過程にかかる時間を減少させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態は、核酸を含む試料を前記細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造するステップと、前記混合物を25℃以上45℃以下の温度に維持する1次加熱するステップと、前記1次加熱された混合物を75℃以上100℃未満の温度に維持する2次加熱するステップと、を含む細胞溶解および核酸抽出方法を提供する。
【0042】
本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出方法は、核酸を抽出する過程で加熱を通じて重合連鎖反応の正確性を阻害する要素を非活性化することによって、分子診断の正確性を向上させることができる。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態に係る分子診断方法のフローチャートである。人間から生物学的な検体を採取する検体採取ステップと、前記採取された検体を前記細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造するステップ(S110)と、前記混合物を1次加熱(インキュベイティング、incubating)するステップ(S130)と、前記インキュベイティングされた混合物を2次加熱(熱溶解、thermal lysis)するステップ(S150)と、を含んでもよい。
【0044】
本発明の一実施形態によると、核酸を含む試料を細胞溶解および核酸抽出用組成物に添加して混合物を製造するステップ(S110)を含む。具体的には、前記細胞溶解および核酸抽出用組成物に核酸を含む試料、すなわち人間から採取された生物学的な検体を含むことによってRNA分解酵素が含まれているので、前記組成物に含まれたRNA分解酵素抑制剤を用いてRNA分解酵素を非活性化して、後述する2次加熱(熱溶解)ステップを行う前に細胞から溶出するRNAなどをRNA分解酵素から保護することができる。さらに、特定のRNA分解酵素抑制剤を用いることによって、不要な成分を最小化してPCR感度を向上させることができ、分子診断にかかる時間を最小化することができる。
【0045】
本明細書の細胞溶解および核酸抽出方法で細胞溶解および核酸抽出用組成物と重複される内容は省略する。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記混合物製造ステップ(S110)以前に人間から生物学的な検体を採取するステップをさらに含んでもよい。具体的には、前記人間からの生物学的な検体は、血液、体液、唾液など核酸、すなわちDNAおよび/またはRNAを含む細胞などの検体として制限されることなく採取することができる。前述のように、前記混合物製造ステップ(S110)以前に人間から生物学的な検体を採取することによって、分子診断対象、すなわち新型コロナウイルス感染症(COVID19)の原因となるSAR-CoV-2遺伝子などを増幅して分子診断を容易に行うことができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記混合物を25℃以上45℃以下の温度に維持する1次加熱するステップ(S130)を含む。具体的には、前記1次加熱ステップは、インキュベイティングするステップであって、前記混合物に含まれたRNA分解酵素とRNA分解酵素抑制剤が充分に結合して前記RNA分解酵素を非活性化するステップであってもよい。より具体的には、1次加熱するステップの温度は、26℃以上44℃以下、27℃以上43℃以下、28℃以上42℃以下、29℃以上41℃以下、30℃以上40℃以下、31℃以上39℃以下、32℃以上38℃以下、33℃以上37℃以下または34℃以上37℃以下であってもよい。最も好ましくは、1次加熱するステップの温度を37℃に維持することである。前述の範囲で前記1次加熱(インキュベイティング)するステップの温度を調節することによって、RNA分解酵素とRNA分解酵素抑制剤の反応を促進させ、RNA分解酵素を非活性化することができ、細胞の熱溶解前にRNA分解酵素を非活性化することによって、細胞から放出されるRNAの分解を防止することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記1次加熱された混合物を75℃以上100℃未満の温度に維持する2次加熱するステップ(S150)を含む。具体的には、前記2次加熱するステップは、細胞の熱溶解(thermal lysis)ステップであって、前記混合物に含まれ、核酸を含む試料、すなわち人間からの生物学的な検体である細胞を含む試料で前記細胞を溶解して細胞内に含まれた、すなわちDNAおよび/またはRNAを細胞の外に露出させるステップであってもよい。さらに、前記細胞の熱溶解とともにRNA分解酵素を非活性化する熱非活性化(thermal inactivation)を同時に具現するものであって、追加的にPCRを阻害する細胞内の成分を非活性化することを同時に具現するものであってもよい。具体的には、2次加熱するステップ(S150)は、細胞の熱溶解(thermal lysis)、RNA分解酵素の熱非活性化(thermal inactivation)および細胞内の成分の非活性化を同時に具現するものであってもよい。具体的には、前記2次加熱するステップは、前記1次加熱された混合物を、76℃以上99℃以下、77℃以上98℃以下、76℃以上97℃以下、77℃以上96℃以下、78℃以上95℃以下、79℃以上94℃以下、80℃以上93℃以下、81℃以上92℃以下、82℃以上91℃以下、83℃以上90℃以下、84℃以上89℃以下、85℃以上88℃以下、86℃以上87℃以下に維持するものであってもよい。好ましくは、前記2次加熱するステップは、前記1次加熱された混合物を94.5℃以上95.5℃以下または95℃に維持するものであってもよい。前述の範囲で前記2次加熱(熱溶解)するステップの温度を調節することによって、別途のRNA分解酵素を抑制するための添加物を省略し、核酸以外の物質の濃度を低く維持して最大限阻害要素を除くことができ、別途のRNA分解酵素を抑制するための添加物を含まないため、前記添加物によるPCR阻害を防止することができる。また、RNA分解酵素A以外のRNA分解酵素を非活性化すると同時に、細胞内物質を非活性化し、細胞を熱溶解して細胞内の核酸(DNAおよび/またはRNA)を露出して分子診断にかかる時間を減少させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記核酸を含む試料を用いて核酸を抽出した以後、別途に溶離ステップおよび精製ステップを含まない。前述のように、核酸抽出した以後、別途に溶離ステップおよび精製ステップを含まないことによって、分子診断にかかる時間を減少させることができ、核酸抽出のための消耗品や専用の装置を用いないため、費用を節減させることができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップは、それぞれ1分以上30分以下で行うものであってもよい。具体的には、前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップは、それぞれ2分以上29分以下、3分以上28分以下、4分以上27分以下、5分以上26分以下、6分以上25分以下、7分以上24分以下、8分以上23分以下、9分以上22分以下、10分以上21分以下、11分以上20分以下、12分以上19分以下、13分以上18分以下、14分以上17分以下または15分以上16分以下で行うものであってもよい。より具体的には、前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップは、それぞれ4.5分以上5.5分以下または5分間行われるものであってもよい。前述の範囲で前記1次加熱するステップおよび2次加熱するステップのそれぞれが行われる時間を調節することによって、RNA分解酵素の非活性化を極大化することができ、細胞の熱溶解効果を向上させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、前記混合物の体積が30μLであることを基準に、7.5Unit/reaction以上60.0Unit/reaction以下のものであってもよい。前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、全体体積の増加または減少によって変化することができる。具体的には、前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、7.5Unit/reaction以上60.0Unit/reaction以下、8.0Unit/reaction以上59.0Unit/reaction以下、9.0Unit/reaction以上58.0Unit/reaction以下、10.0Unit/reaction以上57.0Unit/reaction以下、15.0Unit/reaction以上55.0Unit/reaction以下、20.0Unit/reaction以上50.0Unit/reaction以下、25.0Unit/reaction以上45.0Unit/reaction以下、30.0Unit/reaction以上40.0Unit/reaction以下であってもよい。より具体的には、前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度は、7.5Unit/reaction以上52.5Unit/reaction以下、30.0Unit/reaction以上52.5Unit/reaction以下または30.0Unit/reaction以上45.0Unit/reaction以下であってもよい。前述の範囲で前記混合物におけるRNA分解酵素抑制剤の濃度を調節することによって、前記細胞の熱溶解以前にRNA分解酵素の非活性化を極大化することができ、前記細胞の熱溶解以後に、前記細胞から露出されるRNAの分解を防止することができ、以後にPCRを阻害する要素を最小化して分子診断にかかる時間を減少させることができる。
【0052】
本明細書において、単位「Unit/reaction(U/rxn)」は、1回の反応当たり5ngのRNA分解酵素Aの活性を50%阻害するために要求されるRNA分解酵素抑制剤の量を意味する。
【0053】
本発明の一実施形態は、前記細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物にプライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとを添加するステップと、前記抽出された核酸を重合酵素連鎖反応で増幅するステップと、を含むものである分子診断方法を提供する。
【0054】
本発明の一実施形態に係る分子診断方法は、抽出に用いられる専用の装置および消耗品を最小化することによって、分子診断の費用を節減させることができる。
【0055】
前記
図3を参考にすると、本発明の一実施形態によると、前記細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物にプライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとを添加するステップ(S170)を含む。本明細書において、プライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとを含む組成物は、「PCR試料」を意味する。具体的には、プライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとを含むPCR試料を、前記細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物に添加することによって、核酸の増幅に用いられる成分を完備して容易に核酸を増幅することができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、PCR試料は、プライマーを含み、前記プライマーの塩基配列は特別に限定されるものではないが、前記プライマーは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプライマー配列(N1)を用いることができる。前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものであってもよく、PCR反応が行われるものであれば、制限されることなく用いることができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、PCR試料はプローブを含み、前記プローブの塩基配列は特別に限定されるものではないが、前記プローブは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプローブ配列(N1)を用いることができる。前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものであってもよく、PCR反応が行われるものであれば、制限されることなく用いることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、PCR試料はプレミックスを含み、前記プレミックスは特別に限定されるものではないが、Nanohelix社のRealHelixTM qRT-PCR Kit [v6] (UDG System)を用いることが好ましく、PCR反応が行われるものであれば、制限されることなく用いることができる。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記添加するステップは、前記細胞溶解および核酸抽出方法で抽出された核酸を含む混合物が含まれたwell(またはチューブ)にプライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックス、すなわちPCR試料を添加するものであってもよい。前述のように、前記混合物から試料を採取して別途のチューブに置き、前記PCR試料を添加しないことによって、前記抽出された核酸を全て核酸の増幅に用いるようにしてターゲット遺伝子の損失を最小化してPCR性能を極大化することができる。また、別途の溶液移動過程が不要であるため、PCR準備時間を減少させることができる。さらに、前記細胞の熱溶解によって露出した核酸を最大限用いて、添加されるPCR試料による濃度の希薄を防止し、分子診断にかかる時間と添加物によるPCR阻害を防止することができる。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記分子診断方法は、前記抽出された核酸を重合酵素連鎖反応で増幅するステップ(S190)を含む。具体的には、前記重合酵素連鎖反応で増幅するステップは、RT-PCR(S191)とPCR(S193)とが順次に行われるものであってもよい。前述のように、前記抽出された核酸を重合酵素連鎖反応で増幅することによって、分子診断のための核酸を確保することができ、分子診断のためにかかる時間を最小化することができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記分子診断方法は、前記プライマーおよびプローブが含まれた溶液と、プレミックスとが添加されたwell(またはチューブ)を、別途の精製(purification)なしに重合酵素連鎖反応で核酸を増幅するものであってもよい。前述のように、PCR試料が添加されたwellに別途の精製を行わずに重合酵素連鎖反応で核酸を増幅することによって、分子診断にかかる時間を最小化することができる。
【0062】
本発明の一実施形態は、RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む組成物の細胞溶解および核酸抽出の用途を提供する。
【0063】
本発明の一実施形態は、RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む組成物を含む、細胞溶解および核酸抽出用または分子診断用キットを提供する。
【0064】
本発明の一実施形態は、RNA分解酵素抑制剤と、緩衝溶液とを含む組成物の、細胞溶解および核酸抽出用または分子診断用キットの製造のための用途を提供する。
【0065】
本発明の一実施形態では、RNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液を含む組成物を用いて溶液の精製過程および溶離過程を省略し、前記溶解された溶液を用いて重合酵素連鎖反応を行うことによって、核酸を増幅して分子診断する過程でかかる時間を最小することができるので、細胞溶解および核酸抽出の用途、細胞溶解および核酸抽出用または分子診断用キットおよびこれの製造のための用途として活用することができる。
【0066】
本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出の用途、キット、キットの製造のための用途について、細胞溶解および核酸抽出用組成物、分子診断法、RNA分解酵素抑制剤、緩衝溶液については前記説明した通りである。
【0067】
[実施例]
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することにする。しかし、本発明に係る実施例は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記で記述する実施例に限定されるものと解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有した者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0068】
<実施例1ないし4で用いられる化合物およびPCR実行条件>
下記の実施例1ないし4で採取された検体は、クリニカル(臨床)スワブ(clinical swab)を用いて採取した後、ウイルス輸送培地(virus transport media)に保管した検体に該当し、追加的に添加するRNA試料は精製されたターゲットRNAを用いた。
【0069】
さらに、下記の実施例1ないし4で用いられたRNA分解酵素抑制剤は、マウスの肺に由来したRNA分解酵素抑制剤(nanohelix社のRnase Inhibitor)を用い、緩衝溶液は、グリセロール、ハイドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ジチオトレイトール(DTT、dithiothreitol)および塩化カリウムを混合したものを用いた。
【0070】
また、下記の実施例1ないし4でPCRを行うために添加されるPCR試料のプローブは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプローブ配列(N1)を用い、前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものであり、プライマーは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプライマー配列(N1)を用い、前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものを用いた。さらに、プレミックスは、Nanohelix社のRealHelixTM qRT-PCR Kit [v6] (UDG System)を用いた。
【0071】
下記の実施例1ないし4でRT-PCRおよびPCRを行った条件は、(1)50℃で10分間行い、(2)95℃で5分間行った後、(3)95℃で10秒間/58℃で30秒間行うことである(3)のみを40回繰り返し、この過程で、前記核酸を増幅して結果が確認できる最小限の閾値回数であるCt(Threshold Cycle)を測定した。
【0072】
実施例1(熱溶解による効果確認)
図4は、実施例1に係る分子診断方法の概略図と実施例1-1および1-2のCt値を示したグラフである。
【0073】
具体的には、
図4(a)は、実施例1に係る分子診断方法の概略図である。前記
図4(a)を参考にすると、実施例1-1では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体に蒸溜水を添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、別途に培養したRNA試料をRT-PCRを行う前に添加し、以後RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0074】
実施例1-2は、前記実施例1-1で熱溶解(thermal lysis)を行わないことを除いては、前記実施例1-1と同様に行った。
【0075】
図4(b)は、実施例1-1および1-2のCt値を示したグラフである。前記
図4(b)を参考にすると、実施例1-1のCt値が実施例1-2に比べて0.5低いことを確認し、これは熱溶解(thermal lysis)過程で、前記検体とともに存在するPCR阻害物質(RNA分解酵素Aを除いたRNA分解酵素)が非活性化になって現われたものであることを確認した。
【0076】
実施例2(RNA分解酵素抑制剤の種類による効果確認)
図5は、実施例2に係る分子診断方法の概略図と実施例2-1ないし2-4のCt値を示したグラフである。
【0077】
具体的には、
図5(a)は、実施例2に係る分子診断方法の概略図である。前記
図5(a)を参考にすると、実施例2-1では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体に蒸溜水を添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、別途に培養したRNA試料をRT-PCRを行う前に添加し、以後RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0078】
実施例2-2は、前記実施例2-1で前記RNA試料を蒸溜水に検体とともに添加したことを除いては、前記実施例2-1と同様に行った。
【0079】
実施例2-3は、前記実施例2-2で蒸溜水の代わりに前記RNA分解酵素抑制剤を添加した蒸溜水を用いることを除いては、前記実施例2-2と同様に行った。
【0080】
実施例2-4は、前記実施例2-2で蒸溜水の代わりに前記化学物質に由来したRNA分解酵素抑制剤であるPVSA(polyvinylsulfonic acid)を添加した蒸溜水を用いることを除いては、前記実施例2-2と同様に行った。
【0081】
図5(b)は、実施例2-1ないし2-4のCt値を示したグラフである。前記
図5(b)を参考にすると、実施例2-1は検体に含まれたRNA分解酵素が熱溶解によって大部分非活性化し、残りのRNA分解酵素Aだけが一部影響を与えるので、RT-PCR直前に添加されたRNA試料が増幅され、低いCt値を有することを確認した。これに比べて、実施例2-2は検体に含まれたRNA分解酵素が熱溶解以前に一部影響を与えるので、Ct値が増加し、実施例2-1に比べて同一の条件で順序だけを変更してもおおよそ4.8ないし8程度の高いCt値を有することを確認した。さらに、実施例2-3の場合、検体とともにRNA分解酵素抑制剤を添加するので、前記RNA分解酵素Aは非活性化して、実施例2-2に比べて2.6程度の低いCt値が具現されることを確認した。但し、実施例2-4は、タンパク質由来のRNA分解酵素抑制剤ではなく、化学物質由来のRNA分解酵素抑制剤を用いるので、PCRを阻害する効果によってCt値が、実施例2-2に比べてCt値が0.02高く具現されることを確認した。
【0082】
実施例3(緩衝溶液による効果確認)
図6は、実施例3に係る分子診断方法の概略図と実施例3-1および3-2のCt値を示したグラフである。
【0083】
図6(a)は、実施例3に係る分子診断方法の概略図である。
図6(a)を参考にすると、実施例3-1では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体に蒸溜水と別途に培養したRNA試料を添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0084】
実施例3-2は、前記実施例3-1で蒸溜水の代わりに緩衝溶液を用いることを除いては、前記実施例3-1と同様に行った。
【0085】
図6(b)は、実施例3-1および3-2のCt値を示したグラフである。前記
図6(b)を参考にすると、前記実施例3-2のCt値が、前記実施例3-1に比べて1.8低く具現されることから、緩衝溶液のみを変化させてもPCR増幅効果を向上させることを確認した。
【0086】
実施例4(熱溶解、緩衝溶液およびRNA分解酵素抑制剤の種類による効果確認)
図7は、実施例4に係る分子診断方法の概略図と実施例4-1および4-2のCt値を示したグラフである。
【0087】
具体的には、
図7(a)は、実施例4に係る分子診断方法の概略図である。前記
図7(a)を参考にすると、実施例4-1では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体を蒸溜水と別途に培養したRNA試料に添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0088】
実施例4-2では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体を蒸溜水に添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、別途に培養したRNA試料をRT-PCRを行う前に添加し、以後RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0089】
図7(b)は、実施例4-1および4-2のCt値を示したグラフである。前記
図7(b)を参考にすると、実施例4-1は検体とともに存在するRNA分解酵素によってRNA試料が分解され、核酸の増幅のためのRNAの濃度が低くなるので、Ct値が高く具現されることを確認することができ、これに比べて、実施例4-2は、核酸の増幅のためのRT-PCR直前にRNA試料を添加するので、前記RNAの非活性化が極めて少量進行されるため、高い濃度のRNAが含まれ、Ct値が4.7と低く具現されることを確認した。
【0090】
図8は、実施例4-3ないし4-6に係る分子診断方法の概略図である。前記
図8を参考にすると、実施例4-3は、前記実施例4-1で熱溶解過程を追加したことを除いては、前記実施例4-1と同様に行った。
【0091】
実施例4-4は、前記実施例4-3の蒸溜水にRNA分解酵素抑制剤を添加したことを除いては、前記実施例4-3と同様に行った。
【0092】
実施例4-5は、前記実施例4-3の蒸溜水に緩衝溶液を添加したことを除いては、前記実施例4-3と同様に行った。
【0093】
実施例4-6は、前記実施例4-3の蒸溜水にRNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液を添加したことを除いては、前記実施例4-3と同様に行った。
【0094】
前記実施例4-3は、前記実施例4-1に比べてCt値が0.5低く具現されたことを確認し、これは検体に含まれたRNA分解酵素が熱溶解過程で熱非活性化して具現されたものであることを確認した。
【0095】
さらに、実施例4-4は、前記実施例4-1に比べてCt値が3.1低く具現されたことを確認し、これは実施例4-3で確認した熱非活性化効果とRNA分解酵素抑制剤がRNA分解酵素Aを除去して分解されるRNAを最小化することによって具現されたものであることを確認した。
【0096】
また、実施例4-5は、前記実施例4-1に比べてCt値が1.8低く具現されたことを確認し、これは緩衝溶液がPCR増幅効果を向上させることを確認した。
【0097】
なお、実施例4-6は、前記実施例4-1に比べてCt値が4.9低く具現されたことを確認し、これは実施例4-3で確認した熱非活性化効果と、実施例4-4で確認したRNA分解酵素抑制剤のRNA分解酵素Aを非活性化効果が具現されるとともに、実施例4-5で確認した緩衝溶液のPCRで阻害する要素を防止する効果をいずれも具現することによって、実施例4-2と同等の水準のCt値を具現できることを確認した。
【0098】
<製造例>
下記の製造例で採取された検体は、クリニカル(臨床)スワブ(clinical swab)を用いて採取した後、ウイルス輸送培地(virus transport media)に保管した検体を用いた。
【0099】
さらに、下記の製造例で用いられたRNA分解酵素抑制剤は、マウスの肺に由来したRNA分解酵素抑制剤(nanohelix社のRnase Inhibitor)を用い、緩衝溶液は、グリセロール、ハイドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ジチオトレイトール(DTT、dithiothreitol)および塩化カリウムを混合したものを用いた。また、前記採取された検体、RNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液を混合した混合物を製造した。
【0100】
また、下記の製造例でPCRを行うために添加されるPCR試料のプローブは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプローブ配列(N1)を用い、前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものであり、プライマーは、CDC(米国疾病管理予防センター)で公開した2019-COVIDプライマー配列(N1)を用い、前記配列は、http://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/downloads/rt-pcr-pane;-primer-probes.pdfで公開するものを用いた。さらに、プレミックスは、Nanohelix社のRealHelixTM qRT-PCR Kit [v6] (UDG System)を用いた。
【0101】
下記の製造例でRT-PCRおよびPCRを行った条件は、(1)50℃で10分間行い、(2)95℃で5分間行った後、(3)95℃で10秒間/58℃で30秒間行うことである(3)のみを40回繰り返し、この過程で、前記核酸を増幅して結果が確認できる最小限の閾値回数であるCt(Threshold Cycle)を測定した。
【0102】
実験例1(従来の抽出過程が含まれたPCRと比較)
図9は、従来技術であるRNAの抽出過程および精製過程を含むPCRと製造例のCt値を示したグラフである。
【0103】
製造例では、核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体に蒸溜水、RNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液を添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、RT-PCRおよびPCRを順次に行った。
【0104】
前記
図9を参考にすると、前記
図1のように、従来技術でPCRを行ったことを前記製造例と比較した結果である。検体にRNA分解酵素抑制剤を含む緩衝溶液を添加して熱溶解を通じて行う場合、既存のPCR方法に比べて同等の水準でCt値が具現されることを確認した。
【0105】
実験例2(1次加熱ステップの混合物内のRNA分解酵素抑制剤の濃度による効果確認)
図10は、製造例の1次加熱ステップ(インキュベイティング)でRNA分解酵素抑制剤の濃度によるCt値を示したグラフである。
【0106】
具体的には、製造例でRT-PCRおよびPCRを行う以前に、前記製造例の混合物の濃度を異ならせて前記混合物を37℃で5分間1次加熱ステップ(インキュベイティング)を行い、前記濃度によってCt値を測定した。より具体的には、製造例では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体を蒸溜水、RNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液に添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、前記製造例の混合物の濃度を異ならせて前記混合物を37℃で5分間1次加熱ステップ(インキュベイティング)を行い、次にRT-PCRおよびPCRを順次に行った。前記変化された濃度は、0Unit/Reaction(U/rxn)、7.5U/rxn、15U/rxn、22.5U/rxn、30U/rxn、37.5U/rxn、45U/rxnおよび52.5U/rxnであり、それぞれの濃度に対してCt値を測定した。
【0107】
前記
図10を参考にすると、0U/rxnでは、RNA分解酵素抑制剤が含まれないため、Ct値が高く具現されることを確認した。以後7.5U/rxnないし45U/rxnの濃度では、RNA分解酵素抑制剤の濃度増加によってCt値が増々減少することを確認した。但し、52.5U/rxnの場合、RNA分解酵素抑制剤の濃度が増加してもCt値が増加することを確認できるが、7.5U/rxnの濃度に比べてCt値が低いことを確認した。
【0108】
実験例3(1次加熱ステップの温度による効果確認)
図11は、製造例の1次加熱ステップの温度によるCt値を示したグラフである。
【0109】
具体的には、製造例でRT-PCRおよびPCRを行う以前に、前記製造例の混合物でRNA分解酵素抑制剤の濃度を30U/rxnに固定し、前記混合物を5分間1次加熱ステップ(インキュベイティング)の温度を変化させながら行い、前記温度によってCt値を測定した。より具体的には、製造例では核酸を含む検体を採取し、前記採取された検体を蒸溜水、RNA分解酵素抑制剤および緩衝溶液に添加して熱溶解(thermal lysis)を95℃で5分間行った。以後、前記製造例の混合物の濃度を30U/rxnに固定し、前記混合物の温度を変化させながら5分間1次加熱ステップ(インキュベイティング)を行い、次にRT-PCRおよびPCRを順次に行った。前記変化させた温度は、25℃、37℃、45℃および60℃であり、それぞれの温度に対してCt値を測定した。
【0110】
前記
図11を参考にすると、25℃ないし37℃の温度では、Ct値が一定に具現されることを確認した。以後、45℃を以上の温度に対してCt値が増加することから温度が45℃以上に具現される場合、RNA分解酵素抑制剤が阻害されることを確認した。
【0111】
したがって、本発明の一実施形態に係る細胞溶解および核酸抽出用組成物、これを用いた核酸抽出方法およびこれを用いた分子診断方法は、核酸を抽出するための組成物としてRNA分解酵素抑制剤を含むとともに加熱してRNA分解酵素を非活性にすることによって、別途の核酸精製過程を省略し、全体実験時間を短縮することができ、RNA損傷を最小化してPCR性能を改善させることができる。
【0112】
以上より、本発明は限定された実施例によって説明されているが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者によって本発明の技術思想と下記に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正および変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の細胞溶解および核酸抽出用組成物は、別途の細胞が溶解された溶液の精製過程および溶離過程を省略し、前記溶解された溶液を用いて重合酵素連鎖反応を行うことによって、核酸を増幅して分子診断する過程でかかる時間を最小することができ、核酸を抽出する過程で加熱を通じて重合連鎖反応の正確性を阻害する要素を非活性化することによって、分子診断の正確性を向上させることができるので、産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0114】
S10:検体採取ステップ
S30:抽出ステップ
S31:溶解ステップ
S33:溶離ステップ
S50:精製ステップ
S70:RT-PCR
S90:PCR
S110:検体を含む混合物製造ステップ
S130:1次加熱(インキュベイティング)ステップ
S150:2次加熱(熱溶解)ステップ
S170:PCR試料添加ステップ
S190:核酸の増幅ステップ
S191:RT-PCR
S193:PCR
【国際調査報告】