(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二峰性分子量ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の生成
(51)【国際特許分類】
C08G 63/06 20060101AFI20240711BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20240711BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C08G63/06 ZBP
C08G63/78
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505289
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022038817
(87)【国際公開番号】W WO2023009791
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523348656
【氏名又は名称】ダニマー・アイピーシーオー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バン・トランプ,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AC01
4J029AC03
4J029AC05
4J029AD01
4J029AE02
4J029AE03
4J029EA02
4J029EA05
4J029EG02
4J029HA02
4J029HB02
4J029KB13
4J029KB16
4J200AA02
4J200AA10
4J200BA01
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4J200BA12
4J200CA01
4J200CA06
4J200EA22
(57)【要約】
二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物。組成物は、第1の部分及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。第1の部分は、第1の重量平均分子量を有し、第2の部分は、第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい第2の重量平均分子量を有する。ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、少なくとも10モルパーセントの3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位から構成される。組成物を調製するための方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む組成物であって、
前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、第1の重量平均分子量を有し、前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、前記第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい第2の重量平均分子量を有し、
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を少なくとも10モルパーセント含む、前記組成物。
【請求項2】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化1】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化2】
の第3の反復単位と、
を含むコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2がそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)がコポリマーを含み、R
1がメチルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーが、前記第1の反復単位を10~90モルパーセント含み、前記第2の反復単位を90~10モルパーセント含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)がターポリマーを含み、R
1がメチルであり、
R
2がプロピルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ターポリマーが、前記第1の反復単位を15~75モルパーセント含み、前記第2の反復単位を75~15モルパーセント含み、前記第3の反復単位を1~5モルパーセント含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を90~50重量パーセント含み、前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を50~10重量パーセント含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の重量平均分子量が、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも100,000ダルトンであり、前記第2の重量平均分子量が、ASTM D5296によって決定した場合、25,000ダルトン未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも1.9の多分散度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)と前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)との重量比が1:1~9:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を含む繊維。
【請求項14】
第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を有する組成物を調製するための方法であって、前記方法が、
第1の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第1の重量平均分子量を有する第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
第2の量の前記少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第2の重量平均分子量を有する第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
前記第1の部分と前記第2の部分とを混合して最終的なポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
を含み、
前記少なくとも1つの置換ラクトンがベータ-プロピオラクトンを含み、前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を含み、
前記第2の重量平均分子量が、前記第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい、前記方法。
【請求項15】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化3】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化4】
の第3の反復単位と、
を含むコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2がそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の量が、第1のループ型反応器において重合される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の量が、第2のループ型反応器において重合される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の部分と前記第2の部分とを混合するステップが、前記第1の部分の存在下で前記第2の量を重合させて前記第2の部分を形成させることによって実施される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性ポリマー組成物に関する。より具体的には、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物、及びそのような組成物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、開環重合プロセスによって調製され得る。そのような重合では、ポリマーの物理的特性は、分子量によって規定されることが多い。望ましい物理的特性を得るためには、多くの場合、達成可能な限り分子量が大きなポリマーを生成させることが望ましい。
【0003】
一方で、分子量を増加させるとすべての物理的特性が改善するかと言えば、そうではない。例えば、溶融粘度は分子量によって強く規定され、溶融粘度が高すぎる場合、典型的な変換装置でのポリマーの熱加工は困難であり得る。
【0004】
したがって、高分子量を有し、分子量の上昇と関連する有利な物理的特性の多くを示すと同時に、分子量の低下と典型的には関連する溶融粘度の低下を示すポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を生成させることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
上記及び他のニーズに応えて、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を提供する。換言すれば、組成物におけるポリ(ヒドロキシアルカノエート)の分子量分布は、2つの異なる分子量ピークを示す。
【0006】
一般に、組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。第1の部分及び第2の部分はそれぞれ、独自の異なる重量平均分子量を有する。したがって、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は第1の重量平均分子量を有し、第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は第2の重量平均分子量を有する。本開示によれば、第2の重量平均分子量は、第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい。
【0007】
より具体的には、第1の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、典型的には、少なくとも100,000ダルトンである。好ましくは、第1の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも200,000ダルトンである。さらにより好ましくは、第1の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも300,000ダルトンである。
【0008】
対照的に、第2の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、好ましくは、約25,000ダルトン未満である。
【0009】
この分子量差に伴って、組成物は、ASTM D5296によって決定した場合、典型的には、少なくとも1.9の多分散度を有する。より好ましくは、組成物は、ASTM D5296によって決定した場合、典型的には、約1.9~約3.5の多分散度を有する。
【0010】
典型的には、組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約90~約50重量パーセント含み、第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約50~約
10重量パーセント含む。より好ましくは、組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約85~約60重量パーセント含み、第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約40~約15重量パーセント含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)と第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)との重量比は約1:1~約9:1である。
【0012】
本組成物のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を少なくとも10モルパーセント含む。ある特定の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を少なくとも25、少なくとも50、または少なくとも75モルパーセント含み得る。
【0013】
大まかには、組成物のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーであり得る。したがって、ある特定の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を含む。
【0014】
他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化1】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化2】
の第3の反復単位と、
を含むコポリマーまたはターポリマーを含み、
式中、R
1及びR
2はそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、このポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、より好ましくは、コポリマーであり、R1は、メチルである。そのような実施形態ではポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーは、好ましくは、第1の反復単位を約10~約90モルパー
セント含み、第2の反復単位を約90~約10モルパーセント含む。
【0016】
他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、より好ましくは、ターポリマーであり、R1は、メチルであり、R2は、プロピルである。そのような実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ターポリマーは、好ましくは、第1の反復単位を約15~約75モルパーセント含み、第2の反復単位を約75~約15モルパーセント含み、第3の反復単位を約1~約5モルパーセント含む。
【0017】
有利なことに、この二峰性ポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物は、分子量の上昇と関連する良好な物理的特性が得られると同時に溶融粘度が低下したものでもあることが明らかになっている。
【0018】
本開示は、前述のポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を含むさまざまな物品も提供する。一実施形態では、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物から構成されるフィルムを提供する。別の実施形態では、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物から構成される繊維を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を有する組成物を調製するための方法を提供する。一実施形態によれば、方法は、第1の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第1の重量平均分子量を有する第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップを含む。方法は、第2の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第2の重量平均分子量を有する第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップも含む。第2の重量平均分子量は、第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい。
【0020】
方法は、第1の部分と第2の部分とを混合して最終的なポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップをさらに含む。
【0021】
本開示によれば、少なくとも1つの置換ラクトンは、ベータ-プロピオラクトンを含み、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を含む。
【0022】
方法のある特定の実施形態によれば、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)である。
【0023】
方法の他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化3】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化4】
の第3の反復単位と、
から構成されるコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2はそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される。
【0024】
方法のいくつかの実施形態では、第1の量は、好ましくは、第1のループ型反応器において重合される。場合によっては、第2の量もまた、好ましくは、第2のループ型反応器において重合される。
【0025】
方法のいくつかの実施形態によれば、第1の部分と第2の部分とを混合するステップは、第1の部分の存在下で第2の量を重合させて第2の部分を形成させることによって実施される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を提供する。このポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物は、ASTM D6400によって決定した場合、産業的に堆肥化可能であり、かつ/または自宅で堆肥化可能である。
【0027】
一実施形態によれば、組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)から構成される。第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、第1の重量平均分子量を有し、第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい第2の重量平均分子量を有する。さらに、本開示によれば、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、少なくとも10モルパーセントの3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位から構成される。
【0028】
一般に、組成物のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、コポリマー、またはターポリマーであり得る。したがって、ある特定の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)である。
【0029】
他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化5】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化6】
の第3の反復単位と、
から構成されるコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2はそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、より好ましくは、コポリマーであり、R1は、メチルである。そのような実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーは、一般に、約10~約90モルパーセントの第1の反復単位及び約90~約10モルパーセントの第2の反復単位から構成される。
【0031】
他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、より好ましくは、ターポリマーであり、R1は、メチルであり、R2は、プロピルである。そのような実施形態ではポリ(ヒドロキシアルカノエート)ターポリマーは、一般に、約15~約75モルパーセントの第1の反復単位、約75~約15モルパーセントの第2の反復単位、及び約1~約5モルパーセントの第3の反復単位から構成される。
【0032】
ある特定の実施形態によれば、組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約90~約50重量パーセント含み、第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約50~約10重量パーセント含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)と第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)との重量比は約1:1~約9:1である。
【0034】
場合によっては、第1の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも100,000ダルトンであり、第2の重量平均分子量は、ASTM D5296によって決定した場合、約25,000ダルトン未満である。
【0035】
ある特定の実施形態では、組成物は、ASTM D5296によって決定した場合、少
なくとも1.9の多分散度を有する。
【0036】
本開示による二峰性ポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物は、分子量の上昇と関連する良好な物理的特性を有すると同時に溶融粘度が低下したものでもある。
【0037】
本開示は、前述のポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を含むさまざまな物品も提供する。
【0038】
例えば、一実施形態では、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物から構成されるフィルムを提供する。フィルム構造は、ブローフィルム押出、キャストフィルム押出、またはキャストフィルム押出、次いで二軸延伸を行うことによって形成され得る。そのようなフィルムは、袋、ポーチ、食品包装、農業用マルチフィルム、及び保護包装などの最終用途で使用され得る。
【0039】
別の実施形態では、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物から構成される繊維を提供する。こうした繊維は、ステープル繊維、モノフィラメント、または不織布として押出によって形成され得る。繊維は、布地、ワイプス、おむつ、衛生用品、糸、またはジオテキスタイルなどの最終用途で使用され得る。
【0040】
別の態様では、本開示は、二峰性の分子量分布を有するポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物を調製するための方法も提供する。上記にように、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)組成物は、第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含み、各部は、独自の異なる重量平均分子量を有し、第2の重量平均分子量(すなわち、第2の部分のもの)は、第1の重量平均分子量(すなわち、第1の部分のもの)よりも実質的に小さい。
【0041】
一般に、方法によれば、第1の部分及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は共に、置換ラクトンの開環重合によって形成される。
【0042】
したがって、方法は、第1の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第1の重量平均分子量を有する第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させる第1のステップを含む。
【0043】
方法は、第2の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第2の重量平均分子量を有する第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップも含む。
【0044】
方法は、第1の部分と第2の部分とを混合して最終的なポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップも含む。
【0045】
二峰性の分子量分布を有するさまざまな異なる形態のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を、本開示の方法に従って調製することができる。ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の性質は、出発物質として使用される少なくとも1つの置換ラクトンによって決定される。
【0046】
一般に、少なくとも1つの置換ラクトンは、少なくともベータ-プロピオラクトンを含み、得られるポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ベータ-プロピオラクトンの開環から形成される3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を含む。
【0047】
場合によっては、ベータ-プロピオラクトンは、唯一の置換ラクトン出発物質であり、
得られるポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、ホモポリマー、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)である。
【0048】
方法の他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化7】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化8】
の第3の反復単位と、
から構成されるコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2はそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、好ましくは、コポリマーであり、R1は、メチルである。そのような実施形態では、置換ラクトン出発物質は、ベータ-プロピオラクトン及びベータ-ブチロラクトンである。そのようなポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーについては、コポリマーは、好ましくは、第1の反復単位を約10~約90モルパーセント含み、第2の反復単位を約90~約10モルパーセント含む。
【0050】
他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、さらには、ターポリマーであり、R1は、メチルであり、R2は、プロピルである。そのような実施形態では、置換ラクトン出発物質は、ベータ-プロピオラクトン、ベータ-ブチロラクトン、及びベータ-バレロラクトンである。そのようなポリ(ヒドロキシアルカノエート)ターポリマーについては、ターポリマーは、好ましくは、第1の反復単位を約15~約75モルパーセント含み、第2の反復単位を約75~約15モルパーセント含み、第3の反復単位を約1~約5モルパーセント含む。
【0051】
第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるための第1の量の重合、及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるための第2の量の重合
は共に、バッチベースまたは連続ベースのいずれかで実施され得る。
【0052】
例えば、第1のバッチ式反応器において第1の部分のバッチを重合させることができ、第2のバッチ式反応器において第2の部分のバッチを重合させることができる。その後、第1の部分及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を、例えば、押出機または他の溶融混合デバイスにおいて溶解混合することができる。
【0053】
一方で、より好ましくは、第1の部分及び第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は共に、連続ベースで生成され得る。この連続重合プロセスに好ましい反応器は、反応物が配管のループを通過及び再循環するループ型反応器である。ある場所においてモノマー、触媒、及び新たな溶媒がこのループに供給され、ループの異なる場所において反応ポリマーが連続様式で取り出される。
【0054】
特に好ましい実施形態では、本開示の方法は、直列で操作される2つのループ型反応器を使用して実施され得る。第1の量のラクトンが触媒及び溶媒と共に第1のループ型反応器に添加され、そこで重合して、第1の(より大きな)重量平均分子量を有する第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させる。重合時点で、次いで第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)が第2のループ型反応器に移される。第2の量のラクトンが触媒及び溶媒と共に第2のループ型反応器に添加され、そこで重合して、第2の(より小さな)重量平均分子量を有する第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させる。
【0055】
したがって、この実施形態によれば、第2の量は、第1の部分の存在下で重合して第2の部分を形成する。この実施形態によれば、第1の部分と第2の部分とを混合するステップは、第1の部分の存在下で第2の量を重合させて第2の部分を形成させることによって実施されることが分かるであろう。
【0056】
重合ステップの両方について、反応を実施する上で適した溶媒には、テトラヒドロフラン及びメチル(t-ブチルエーテル)が含まれる。触媒または開始剤もまた、好ましくは、使用される。適切な触媒または開始剤には、第四級アンモニウム塩が含まれる。触媒または開始剤の量は、第1の量の重合と第2の量の重合とで異なり得る。第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるための第1の量の重合については、触媒または開始剤の量は、好ましくは、約5000部の第1の量に対して約1部の触媒または開始剤である。第2の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるための第2の量の重合については、触媒または開始剤の量は、好ましくは、約500部の第2の量に対して約1部の触媒または開始剤である。
【0057】
本開示は、下記の実施形態によってもさらに例示される。
【0058】
実施形態1
第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む組成物であって、
前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、第1の重量平均分子量を有し、前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、前記第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい第2の重量平均分子量を有し、
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を少なくとも10モルパーセント含む、前記組成物。
【0059】
実施形態2
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を
含む、実施形態1に記載の組成物。
【0060】
実施形態3
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化9】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化10】
の第3の反復単位と、
を含むコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2がそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される、実施形態1に記載の組成物。
【0061】
実施形態4
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)がコポリマーを含み、R1がメチルである、実施形態3に記載の組成物。
【0062】
実施形態5
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)コポリマーが、前記第1の反復単位を約10~約90モルパーセント含み、前記第2の反復単位を約90~約10モルパーセント含む、実施形態4に記載の組成物。
【0063】
実施形態6
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)がターポリマーを含み、R1がメチルであり、R2がプロピルである、実施形態3に記載の組成物。
【0064】
実施形態7
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)ターポリマーが、前記第1の反復単位を約15~約75モルパーセント含み、前記第2の反復単位を約75~約15モルパーセント含み、前記第3の反復単位を約1~約5モルパーセント含む、実施形態6に記載の組成物。
【0065】
実施形態8
前記組成物が、前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約90~約50重量パーセント含み、前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約50~約10重量パーセント含む、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0066】
実施形態9
前記第1の重量平均分子量が、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも100,000ダルトンであり、前記第2の重量平均分子量が、ASTM D5296によって決定した場合、約25,000ダルトン未満である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0067】
実施形態10
前記組成物が、ASTM D5296によって決定した場合、少なくとも1.9の多分散度を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0068】
実施形態11
前記第1の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)と前記第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)との重量比が約1:1~約9:1である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0069】
実施形態12
先行実施形態のいずれかに記載の組成物を含むフィルム。
【0070】
実施形態13
先行実施形態のいずれかに記載の組成物を含む繊維。
【0071】
実施形態14
第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)及び第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を有する組成物を調製するための方法であって、前記方法が、
第1の量の少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第1の重量平均分子量を有する第1の部分のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
第2の量の前記少なくとも1つの置換ラクトンを重合させて、第2の重量平均分子量を有する第2の部分の前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
前記第1の部分と前記第2の部分とを混合して最終的なポリ(ヒドロキシアルカノエート)を生成させるステップと、
を含み、
前記少なくとも1つの置換ラクトンがベータ-プロピオラクトンを含み、前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が3-ヒドロキシプロピオネートのモノマー反復単位を含み、
前記第2の重量平均分子量が、前記第1の重量平均分子量よりも少なくとも50パーセント小さい、前記方法。
【0072】
実施形態15
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を含む、実施形態14に記載の方法。
【0073】
実施形態16
前記ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、
(3-ヒドロキシプロピオネート)である第1の反復単位と、
式I
【化11】
の第2の反復単位と、
任意選択で、式II
【化12】
の第3の反復単位と、
を含むコポリマーまたはターポリマーであり、
式中、R
1及びR
2がそれぞれ、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基からなる群から独立して選択される、実施形態14に記載の方法。
【0074】
実施形態17
前記第1の量が、第1のループ型反応器において重合される、実施形態14~16のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態18
前記第2の量が、第2のループ型反応器において重合される、実施形態14~17のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施形態19
前記第1の部分と前記第2の部分とを混合するステップが、前記第1の部分の存在下で前記第2の量を重合させて前記第2の部分を形成させることによって実施される、実施形態14~18のいずれかに記載の方法。
【0077】
本発明に好ましい実施形態についての前述の説明は、例示及び説明を目的として示されている。それらは、包括的であること、または本発明を開示の詳細形態に限定することを意図するものではない。上記の教示を踏まえれば、自明の改変または変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途の最良な例示を提供し、それによって当業者がさまざまな実施形態において本発明を利用できるようにするための努力の中で選択及び説明されており、企図される具体的な使用に適するようにさまざまな改変が施される。そのような改変及び変形はすべて、それらが公平に、法的に、かつ公正に権利が付与される広がりに従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲に含まれる。
【国際調査報告】