(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】直列配置された循環極低温冷却器システム
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240711BHJP
F25B 9/14 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
F25B9/00 H
F25B9/00 311
F25B9/14 530Z
F25B9/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505309
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022038473
(87)【国際公開番号】W WO2023009595
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501356112
【氏名又は名称】スミトモ (エスエイチアイ) クライオジェニックス オブ アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sumitomo(SHI)Cryogenics of America,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】ダン,スティーブン,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ガンドラ,サントッシュ,ケイ.
(57)【要約】
遠隔位置に冷凍を移送する循環ループが、ギフォード-マクマホン(GM)又はGM型パルス菅コールドヘッド及び圧縮機の間に直列に接続されている。圧縮機からの高圧ガスは、コールドヘッドに戻る前に遠隔ヒートステーションを通って流れることができ、又は、低圧ガスは、圧縮機に戻る前にコールドヘッドから遠隔ヒートステーションに流れることができる。周囲温度のガスの全てを含むことができるガスの第1部分は、向流熱交換器に入り、コールドヘッドにより冷却され、遠隔負荷に流れ、その後、向流熱交換器を通って流れるにつれて、周囲温度に戻る。高圧又は低圧のラインは、コールドヘッド及び圧縮機間を直接流れるようにガスの第2部分を方向転換する循環制御弁を有することができる。制御装置は、遠隔負荷の冷却を最適化する為に循環制御弁を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔負荷にガスを循環する極低温冷凍システムであって、前記極低温冷凍システムが、
低圧から高圧にガスを圧縮する圧縮機と、
高圧のライン内の前記圧縮機から周囲温度でガスを受領して低圧のライン内に前記ガスを戻してGM又はGM型パルス菅の1以上の低温表面に冷凍を生成する少なくとも1つのギフォード-マクマホン(GM)又はGM型パルス菅コールドヘッドと、
高圧及び低圧の前記ラインの1つ内の前記ガスの全て又は一部が通って流れる循環ループと、
を含み、
前記循環ループは、前記1以上の低温表面から前記遠隔負荷に冷凍を移送することを特徴とする極低温冷凍システム。
【請求項2】
高圧及び低圧の前記ラインの1つが、センサに接続された制御装置により制御された循環制御弁を有することを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項3】
さらに、周囲温度及び前記1以上の低温表面の温度の間に位置する前記循環ループ内に伝熱式熱交換器を含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項4】
さらに、前記遠隔負荷に接続されたラインを前記システムの他の部分から隔離する隔離弁を含むことを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍システム。
【請求項5】
さらに、前記遠隔負荷に接続された前記ライン内のガスを追加又は除去するように構成された1以上のポートを含むことを特徴とする請求項4に記載の極低温冷凍システム。
【請求項6】
前記循環ループがさらに、前記遠隔負荷から前記1以上の低温表面に循環ガスを戻し、その後、また前記遠隔負荷に戻す第2パスを含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項7】
前記コールドヘッドが、異なる温度の2つの低温表面を有することを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項8】
前記ガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、及びアルゴンから成る群から選択される1以上のガスであることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項9】
さらに、ガス流脈動を平滑化する為に前記コールドヘッドと連通する1以上のバッファボリュームを含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項10】
さらに、前記遠隔負荷及び前記1以上の低温表面の間にバヨネット接続を含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項11】
さらに、前記遠隔負荷及び前記1以上の低温表面の間に真空ジャケット移送ラインを含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項12】
ガスを遠隔負荷に循環する極低温冷凍システムを使用することにより前記遠隔負荷を冷却する方法であって、前記極低温冷凍システムが、
低圧から高圧にガスを圧縮する圧縮機と、
高圧のライン内の前記圧縮機からガスを受領して低圧のライン内に前記ガスを戻してGM又はGM型パルス菅の少なくとも1つの低温表面に冷凍を生成する少なくとも1つのGM又はGM型パルス菅コールドヘッドと、
を含み、
高圧及び低圧の前記ラインの1つが循環制御弁を有し、前記循環制御弁が、前記ガスの第1部分を方向転換して循環ループを通って流れるようにし、前記低温表面から前記遠隔負荷に冷凍を移送し、
前記方法が、前記遠隔負荷の冷却を制御する為に前記循環制御弁を調整することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ガスの前記第1部分の量が、高圧及び低圧の前記ライン内の測定された圧力、温度、又は、流量の少なくとも1つに基づいて決定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガスの前記第1部分の量が、前記遠隔負荷の温度を最小化する為に決定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ガスの前記第1部分の量が、前記遠隔負荷を冷却する冷却率を最大化する為に決定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年7月29日に出願された米国仮特許出願番号63/226,851の優先権を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon:GM)又はGM型パルス菅コールドヘッド(pulse tube cold head)(エキスパンダ)から遠隔の負荷(load)の冷却に関する。
【背景技術】
【0003】
ギフォード・マクマホン(GM)又はパルス菅極低温冷却器等の弁付再生サイクル極低温冷凍機(極低温冷却器)は、その相対効率、小型の寸法、及び相対的低費用により、1kWより小さい冷凍負荷で極低温冷凍を提供することで有名である。これらの極低温冷却器は、コールドヘッドに高圧ガスを提供してコールドヘッドから低圧ガスを受け取る圧縮機と、再生器を通して温間及び冷間変位容積(warm and cold displaced volumes)でガスを移送する往復移動するディスプレーサにガスを循環する弁を含むコールドヘッドと、を有することにより定義される。この型の極低温冷却器の欠点は、提供される冷凍が、コールドヘッドに位置する低温表面(cold surface)でのみ利用可能であることである。低圧で低温ガスを排出して遠隔負荷(remote load)に循環することができるブレイトン(Brayton)サイクルエキスパンダとは異なり、これらの再生型エキスパンダは、室温で低圧ガスを戻す。この欠点を解消する為に、再生サイクル極低温冷却器と、コールドヘッドの低温表面からの冷却流体をコールドヘッドから遠隔の位置に循環させることにより冷凍を移送する流体含有ループと、を組み合わせたシステムが開発された。幅広い温度範囲にわたる冷却が必要である場合、又は、冷却対象物の性質が液体による冷却又は液体から気体への位相変化による冷却を妨げる場合、そのようなループ内の流体としてガスが使用される。この場合、ループの一部で温度が低下して(冷却されて)ループの他の部分で温度が上昇する(温まる)ガスの顕熱により、冷凍が移送される。
【0004】
循環流体としてガスを使用している循環ループの2つの型が記載されている。低温サーキュレータを有する1つの型は、全て低温の循環ループを有し、ループを通して冷却流体を移動させるメカニズムを含む。温かいサーキュレータを有する他の型は、低温のコールドヘッド及び遠隔負荷を含むループの部分と、(例えば、室温以上の)温かい温度の流体を移動するメカニズムを含む部分と、を有する。ループ内及び2つの部分間に、ループの冷却部分がサーキュレータの温度よりかなり低い温度で動作することを可能にする伝熱式熱交換器が配置される。伝熱式熱交換器が、サーキュレータから来る流体を冷却し、サーキュレータに戻る流体を温める。
【0005】
低温サーキュレータを有するシステムの例は、米国特許第6347522号、英国特許2433581号、及び極低温冷却器18、キム(Kim)他、「Cryogenic Thermal Studies on Cryocooler-Based Helium Circulation Systems for Gas Cooled Superconducting Power Devices」等の多数の技術論文に記載されている。米国特許第10704809号には、低温サーキュレータ及び遠隔負荷を冷却する又は温める為に低温サーキュレータを使用する手段を有するGMエキスパンダを含むシステムが記載されている。これらのシステムにおいて、循環ループは極低温冷却器から分離しており、それにより、循環ループ及び極低温冷却器は、流体を共有又は交換しない。極低温冷却器と流体を共有又は交換する冷却循環メカニズムを含むシステムの変形は、極低温冷却器16、マドックス(Maddocks)他、「Performance Test of Pulse Tube Cooler with Integrated Circulator」に記載されている。この変形において、循環流体は、極低温冷却器の低温表面の内部を起源とし、低温表面の内部に排出され、逆止弁により直流に整流された極低温冷却器内の圧力スイングにより流体は移動される。
【0006】
温かいサーキュレータを有するシステムの例は、米国特許第5889456号、米国特許第9612062号、及び極低温冷却器17、トローリア(Trollier)他、「Remote Helium Cooling Loops for Laboratory Applications」の技術論文に記載されている。米国特許第7003977号には、温かい又は低温サーキュレータのいずれかを有することができる冷蔵コンポーネントを有する循環システムが記載されている。これらの例において、極低温冷却器及び循環ループは、上述のように分離している。循環ループ及び極低温冷却器が流体を共有及び交換する温かいサーキュレータを有するシステムの例は、米国特許第7474099号及び極低温冷却器15、マイケリアン(Michaelian)他、「Remote Cooling with the HEC COOLER」の技術論文に記載されている。米国特許出願公開第2021/0025624号には、排出器を使用して圧縮機流量の一部を循環させて遠隔負荷の低温流量を増加させることが記載されている。これらの例において、1つの圧縮機は、コールドヘッド及びコールドヘッドと並列に配置された循環ループの両方に使用される。極低温冷却器が消耗用極低温流体により冷却された熱交換器と交換されている温かいサーキュレータを有するシステムの例は、米国特許第6923009号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの先行開示には教示されておらず、本発明には開示されているものは、循環ループ及び極低温冷却器が流体を共有及び交換するシステムであり、循環ループは、極低温冷却器のコールドヘッドの温かい吸気又は排気と直列のフローに配置される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冷凍を遠隔位置に移送する循環ループは、GM又はGM型パルス菅コールドヘッド及び圧縮機間に直列に接続されている。圧縮機及びコールドヘッド間に流れるガスの一部又は全ては、コールドヘッドにより冷却される為に方向転換され、その後、コールドヘッドへ又はから直接流れるガスの部分に再合流する前に遠隔負荷を冷却する。圧縮機からの高圧ガスは、コールドヘッド(エキスパンダ)に戻る前に、遠隔ヒートステーションを通って流れることができ、又は、低圧ガスは、圧縮機に戻る前に、コールドヘッドから遠隔ヒートステーションに流れることができる。循環ガスは、コールドヘッド及び圧縮機に接続された周囲温度のライン間に配置された向流熱交換器、並びに、コールドヘッドの低温表面又は複数の低温表面及び遠隔負荷を通って流れる。圧縮機へ又はから直接流れるガスが通るラインは、循環ループに向かってフローを方向転換して循環ループを通るフローを駆動する圧力低下を制御する循環制御弁を有する。様々なセンサからの入力を有する制御装置は、循環制御弁を調整して負荷の冷却を最適化する。負荷に循環するガスは、第1部分と呼ばれ、圧縮機及びコールドヘッド間を直接流れるガスの残部は、第2部分と呼ばれる。
【0009】
循環ループは、遠隔負荷を極低温に冷却して又室温まで温める機能をサポートする為の隔離弁、吸着剤、投入及び排出口、バヨネット(bayonets)及び真空ジャケット移送ライン、及びヒータ等の要素を含むことができる。
【0010】
これらの利点及び他の利点は、例えば、遠隔負荷にガスを循環する極低温冷凍システムにより達成される。極低温冷凍システムは、低圧から高圧にガスを圧縮する圧縮機と、高圧のライン内の前記圧縮機から周囲温度でガスを受領して低圧のライン内にガスを戻してGM又はGM型パルス菅の1以上の低温表面に冷凍を生成する少なくとも1つのギフォード-マクマホン(GM)又はGM型パルス菅コールドヘッドと、高圧及び低圧の前記ラインの1つ内の前記ガスの全て又は一部が通って流れる循環ループと、を含む。循環ループは、前記1以上の低温表面から遠隔負荷に冷凍を移送する。これらの利点及び他の利点は、例えば、遠隔負荷の冷却を制御する為に循環制御弁を調整する方法により達成される。
【0011】
図面は、限定の意図はなく、例示のみを目的として、本発明に基づく1つ以上の実施態様を描いている。図において、同様の参照符号は、同一又は類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】コールドヘッドから出た後で圧縮機に戻る前に遠隔負荷を冷却する為に低圧でガスの一部又は全てを循環する実施形態である極低温冷凍システムの概略図である。
【
図2】圧縮機から出た後でコールドヘッドに戻る前に遠隔負荷を冷却する為に高圧でガスの全てを循環する実施形態である極低温冷凍システムの概略図である。
【
図3】1パスループの為の熱交換器効率及び循環流量の関数として遠隔負荷で利用可能な冷却の例のグラフを示す図である。
【
図4】圧縮機から出た後でコールドヘッドに戻る前に遠隔負荷を冷却する為に高圧でガスの一部又は全てを循環する実施形態である極低温冷凍システムの概略図である。循環ガスは、熱交換器に戻る前に、コールドヘッド及び負荷間を2回流れる。
【
図5】2パスループの為の熱交換器効率及び循環流量の関数として遠隔負荷で利用可能な冷却の例のグラフを示す図である。
【
図6】遠隔負荷を冷却する及び温める為に適応することができる任意の実施形態のいくつかの異なる方法を示す極低温冷凍システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本節では、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態についてより詳細に説明する。但し、本発明は、多くの異なる形態で具現化でき、本明細書に開示する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。すなわち、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全なものとなるように、当業者に本発明の範囲を伝えることを目的として提供する。図面において同一又は類似する部品には、同じ符号を付し、説明は通常繰り返さない。
【0014】
実施形態は、ヘリウムを循環させることにより、ギフォード-マクマホン(GM)又はGM型パルス菅コールドヘッド(エキスパンダ)から遠隔に配置されて極低温で動作する負荷を冷却するシステムを提供する。
図1を参照すると、コールドヘッド40と直列に循環ループを配置することにより、遠隔負荷80に冷凍を提供する極低温冷凍システム100が図示されている。特に、圧縮機20は、周囲温度(室温)で高圧のヘリウム流を提供し、ヘリウム流は直接ライン10を通ってコールドヘッド(エキスパンダ)40のウォームエンド内に流れる。コールドヘッド40は、高圧のヘリウムガスを受け入れるように動作し、ガスを膨張させて低温表面42に冷凍を提供し、第1の低圧P1’及び周囲温度(室温)に近い温度でガスをライン13内に排気する。コールドヘッド40から排気されるヘリウム流の一部又は全ては、ライン14を通して循環ループ内に流れ、残りのヘリウム流は、循環制御弁90及び戻り圧力P1のライン12を通って圧縮機20に戻る。コールドヘッドと直列に配置された循環ループは、ライン14に入りライン16から出るフローを含むシステムの一部である。
【0015】
ライン14を通って循環ループに入るヘリウムは、伝熱式熱交換器60の供給側を通って流れ、対向ヘリウム流により循環ループの低温動作温度に近い温度に冷却される。ヘリウムは、伝熱式熱交換器60の供給側から熱交換器44へ流れ、コールドヘッド40の低温表面42で提供される冷凍によりさらに冷却される。その後、循環ヘリウムは、ライン15を通って熱交換器72に流れ、遠隔負荷80を冷却する。ヘリウムは、そこから熱交換器60を通って戻り、供給側ヘリウムを冷却し、その後、ライン16を通ってライン12に合流し、圧力P1で圧縮機20に戻る。ライン14及び16は温かいフランジ21を通過し、温かいフランジ21は、室温で動作するコンポーネントと、真空22により遮断された低温コンポーネントを分離する。ほとんどのGM及びGM型パルス菅極低温冷凍機は、10℃から40℃間の周囲温度で動作するように設計されるが、一部は上記範囲外で動作するように設計されることができる。
【0016】
圧縮機におけるライン10及び12内のヘリウムの圧力は通常、それぞれ2~3MPa及び0.5~1MPaの範囲内である。システムが動作温度である場合、循環制御弁90にわたる圧力差は通常、約0.1MPaであるが、冷却時又は加熱時にはより高くなる。循環制御弁90は、圧縮機20におけるライン12内の圧力P1及びコールドヘッドの出口におけるライン13内の圧力P1’(P1+dP)間の圧力低下dPを調整する。圧力低下が増加すると、循環ループを通る流量が多くなり、コールドヘッド40の冷却率が減少する。能動制御の利点は、遠隔負荷を室温から冷却する為に極低温冷凍システムを使用する時に分かる。遠隔負荷80が温かい(室温に近い)場合、循環ループ内の圧力損失は比較的高くなる。なぜなら、ガスは低温時よりも低い密度及び高い粘性を有するからである。冷凍効率も比較的高くなる。なぜなら、コールドヘッド40内の熱損失が低いからである。循環制御弁90を通る流量を減少することにより、循環ループを通る流量が増加し、温度T1の低温表面42及び温度T1+dTの遠隔負荷80間の温度差dTが最小化される。循環ガスの第1部分が低温表面42で冷却され、遠隔負荷80に冷凍を移送して温かくなる。温度センサ42a及び80aはそれぞれ、これらの2つの位置で温度を測る。
【0017】
循環制御弁90を使用して能動的に循環を制御することにより、循環ループを通る流量及びコールドヘッド40を通る流量が、定められた1組の動作条件に最適化される。流量、温度、圧力、差圧、又はこれらの組み合わせの測定値は、循環制御弁90の流量制御決定を知らせる為に使用される。
【0018】
好ましい方法は、センサ42a及び80a間の温度差を最小化するように循環制御弁90を調整する(不図示の)制御装置を使用することである。センサの位置及び型は、
図1に図示されている温度センサ42a及び80aには限定されず、循環ループ内のガスの圧力、温度、及び/又は、流量を効果的に検出する任意の位置及び型のセンサであることができる。循環ループを通って流れる一部のガスの量は、遠隔負荷80の温度を最小化する、又は、遠隔負荷80が冷却される冷却率を最大化するように決定される。
【0019】
図2には、コールドヘッド40に入る前に高圧のガスを圧縮機20から遠隔負荷80に循環する点で極低温冷凍システム100とは異なる極低温冷凍システム200が図示されている。低圧のガスがライン12を通ってコールドヘッド40から圧縮機20に直接戻る。極低温冷凍システム200は
図1に図示されている循環制御弁90を有することもできるが、
図2には、圧縮機20からの流量の全てを循環することが図示されている。高圧又は低圧のどちらでガスを循環しても、極低温冷凍システムは、極低温冷凍システム100に示されているように循環制御弁90を有することができ(
図4も参照)、又は、極低温冷凍システム200に示されているように循環制御弁90を含まないことができる。ガスは圧力Phで圧縮機20からライン10を通って出て、圧力Ph’でライン11を通ってコールドヘッド40に戻り、圧力差dPが循環ループ内の圧力低下である。循環ループは通常、Ph-P1の約10%よりも少ない圧力低下dPを有するように設計される。
【0020】
80Kで600Wの冷却を生成するGM冷凍機を使用して80Kで負荷を冷却する例が挙げられているが、低温表面42で2.0/0.8MPaの圧力と10g/sの流量を有する80K以下では約10W/K少なく生成される。循環ループは、例えば、0.1MPaより低い圧力低下及び高い熱交換器効率を有するように設計されることが好ましい。
【0021】
図3には、98.5%及び99%の熱交換器効率における循環率の関数として、遠隔負荷80において80Kで利用可能な冷却のグラフが図示されている。80Kで遠隔負荷80を冷却する為にガスを循環することは、ガスが80K以下に冷却されることを必要とする。
図3には、ガスがその温度まで冷却されたと仮定して、低温表面42の温度も図示されている。6g/sの循環流量及び98.5%の熱交換器60効率において、熱交換器60以外で損失が無いと仮定して、遠隔負荷80で最大375Wの冷却が利用可能である。損失の2つの主要な原因は、熱交換器における105W、及び冷却能力の120W減少である。なぜなら、エキスパンダ40は68Kで動作しているからである。99%の熱交換器効率において、最適循環流量は約8g/sである。熱交換器損失は94Wであり、エキスパンダ40は70.2Kで動作し、冷却能力の98W減少により、遠隔負荷80の冷却に利用可能な408Wが残る。循環制御弁90が閉じており、流量の全てが循環ループを通る場合、遠隔負荷80で利用可能な冷却は404Wである。設計者は、循環制御弁90を無くして流量の全てを循環させることを選択することもできる。
【0022】
前述の例における低温表面42及び遠隔負荷80間の温度差を最小化する流量は、循環制御弁90を使用して循環する流量を調整する(不図示の)制御装置を使用して得ることができる。
【0023】
図4には、循環制御弁90並びに低温表面42及び遠隔負荷80間に2パス循環ループを有する極低温冷凍システム250が図示されており、極低温冷凍システム250は、ライン15aにより接続された第1パス熱交換器44a及び72aと、ライン15b及び戻りライン17により接続された第2パス熱交換器44b及び72bと、を有する。
図5には、
図3と同じ仮定で99%の効率を有する熱交換機60の為のシステム250から利用可能な冷却のグラフが図示されている。最適循環流量は6g/s近くであり、熱交換機損失は71Wであり、エキスパンダが72.7Kであるから冷却能力の減少は73Wであり、残りの457Wが遠隔負荷80の冷却に利用可能である。
【0024】
図6には、基本的な循環システムがどのように異なる応用に適応できるかを示している極低温冷凍システム300の概略図が図示されている。循環ループは、システム200のように、高圧として図示されているが、同様に、上記適応は低圧でガスを循環するシステム100に適用することもできる。
【0025】
多くの応用は、メンテナンス又はプロセスの一部として負荷を温める必要がある。いくつかのGM及びGM型パルス菅は、「逆走」することができ、冷却ではなくむしろ加熱を生成することができる。これらにおいては、システム100及び200に変更は必要ない。逆走できないコールドヘッドにおいて、ライン15内のガス、そして、その後遠隔負荷80を加熱するヒータ54は、ガスが循環されてコールドヘッドを迂回することを必要とする。バイパス弁94は、コールドヘッド40が遮断されている間も、ガスを循環することを可能にする。
【0026】
極低温冷凍機の低温コンポーネントが独自の真空ハウジング62内に収容され、そして、真空遮断(又はジャケット)移送ライン74a及び74bを通して遠隔負荷80にガスを循環させることが一般的である。移送ラインは、バヨネット70a及び70bを使用して取り外し可能に接続されることができ、又は、冷凍機と共通の真空22を共有することができる。遠隔負荷80は、遠隔負荷を通るガスを流すことにより、又は、熱交換器72により冷却することができる。遠隔負荷を通って流れるガスを循環させることにより遠隔負荷80を冷却することの1つの懸念は、ガスを清潔に保持することである。隔離弁68a及び68bは、閉じている時、遠隔負荷80に接続しながら冷凍機内のガスを清潔に保持することを可能にする。遠隔負荷に接続された後、回路を洗浄する必要がある。このことは通常、弁64a及び64bを通してラインを充填及び排気することにより達成される。ガスを清潔に保つことを補助する為に吸着器52をライン15に追加することができる。システムが冷却されると、ガスが弁64a又は64bを通して追加される。
【0027】
システム300は、循環制御弁90及びコールドヘッド40間にバッファボリューム(buffer volume)96を含む。バッファボリューム96は、コールドヘッドに入るフローを平滑化する機能を果たす。システム200の場合、ライン11に追加される。前述されていない、又は、図示されていないオプションは、1以上のコールドヘッドを使用し、並列に配置された1以上の圧縮機を動作させ、2以上の低温表面を有する多段コールドヘッドを使用して異なる温度でガスを遠隔負荷に循環させ、コールドヘッドを異なる速度で動作させ、システムにガスを追加するかシステムからガスを除去することを可能にするガス貯蔵システムを追加し、又は、ネオン、アルゴン、又は窒素等の他のガスを使用することを含む。
【0028】
本明細書で使用する用語及び説明は、例示のみを目的とし、発明を限定する意図はない。本発明及び本明細書に記載された実施形態の思想及び範囲内で、多くの変形が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0029】
10 ライン
11 ライン
12 ライン
13 ライン
14 ライン
15 ライン
15a ライン
15b ライン
16 ライン
17 戻りライン
20 圧縮機
21 フランジ
22 真空
40 コールドヘッド、エキスパンダ
42 低温表面
44 熱交換器
44a 熱交換器
44b 熱交換器
52 吸着器
54 ヒータ
60 熱交換器
62 真空ハウジング
64a 弁
64b 弁
68a 隔離弁
68b 隔離弁
70a バヨネット
70b バヨネット
72 熱交換器
72a 熱交換器
72b 熱交換器
74a 移送ライン
74b 移送ライン
80 遠隔負荷
90 循環制御弁
94 バイパス弁
96 バッファボリューム
100 極低温冷凍システム
200 極低温冷凍システム
250 極低温冷凍システム
300 極低温冷凍システム
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔負荷にガスを循環する極低温冷凍システムであって、前記極低温冷凍システムが、
低圧から高圧にガスを圧縮する圧縮機と、
高圧の
第1のライン内の前記圧縮機から周囲温度でガス
の全てを受領して低圧の
第2のライン内に
周囲温度に近い温度で前記ガス
の全てを戻してGM又はGM型パルス菅の1以上の低温表面に冷凍を生成する少なくとも1つのギフォード-マクマホン(GM)又はGM型パルス菅コールドヘッドと、
前記
第1及び第2のラインの1つ
から流れて又戻る前記ガスの全て又は一部が通
る循環ループと、
を含み、
前記循環ループ
内の前記ガスは、前記1以上の低温表面から前記遠隔負荷に冷凍を移送することを特徴とする極低温冷凍システム。
【請求項2】
前記
第1及び第2のラインの1つが、センサに接続された制御装置により制御された循環制御弁を有することを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項3】
さらに、周囲温度及び前記1以上の低温表面の温度の間に位置する前記循環ループ内に伝熱式熱交換器を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項4】
さらに、前記遠隔負荷に接続されたラインを前記システムの他の部分から隔離する隔離弁を含むことを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍システム。
【請求項5】
さらに、前記遠隔負荷に接続された前記ライン内のガスを追加又は除去するように構成された1以上のポートを含むことを特徴とする請求項4に記載の極低温冷凍システム。
【請求項6】
前記循環ループがさらに、前記遠隔負荷から前記1以上の低温表面に循環ガスを戻し、その後、また前記遠隔負荷に戻す第2パスを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項7】
前記コールドヘッドが、異なる温度の2つの低温表面を有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項8】
前記ガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、及びアルゴンから成る群から選択される1以上のガスであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項9】
さらに、ガス流脈動を平滑化する為に前記コールドヘッドと連通する1以上のバッファボリュームを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項10】
さらに、前記遠隔負荷及び前記1以上の低温表面の間にバヨネット接続を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項11】
さらに、前記遠隔負荷及び前記1以上の低温表面の間に真空ジャケット移送ラインを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項12】
ガスを遠隔負荷に循環する極低温冷凍システムを使用することにより前記遠隔負荷を冷却する方法であって、前記極低温冷凍システムが、
低圧から高圧にガスを圧縮する圧縮機と、
高圧の
第1のライン内の前記圧縮機から
周囲温度でガス
の全てを受領して低圧の
第2のライン内に
周囲温度に近い温度で前記ガス
の全てを戻してGM又はGM型パルス菅の
1以上の低温表面に冷凍を生成する少なくとも1つのGM又はGM型パルス菅コールドヘッドと、
前記第1及び第2のラインの1つから流れて又戻る前記ガスの全て又は一部が通る循環ループと、
を含み、
前記
第1及び第2のラインの1つが循環制御弁を有し、前記循環制御弁が、前記ガスの第1部分を方向転換して
前記循環ループを通って流れるようにし、前記
1以上の低温表面から前記遠隔負荷に冷凍を移送し、
前記方法が、前記遠隔負荷の冷却を制御する為に前記循環制御弁を調整することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ガスの前記第1部分の量が、高圧及び低圧の前記ライン内の測定された圧力、温度、又は、流量の少なくとも1つに基づいて決定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガスの前記第1部分の量が、前記遠隔負荷の温度を最小化する為に決定されることを特徴とする請求項12
又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガスの前記第1部分の量が、前記遠隔負荷を冷却する冷却率を最大化する為に決定されることを特徴とする請求項12
又は13に記載の方法。
【国際調査報告】