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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】方向センサを備える真空計組立体
(51)【国際特許分類】
   G01L 21/12 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01L21/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505313
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 GB2022051990
(87)【国際公開番号】W WO2023007170
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2110887.3
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】キー マシュー ガレス
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB08
2F055CC43
2F055DD01
2F055EE40
2F055FF11
2F055GG49
(57)【要約】
本開示は、真空システムのガス圧力を測定するための真空計組立体100に関する。この組立体は、圧力検知要素130と、圧力検知要素130の方向を決定することができる方向センサ160と、圧力検知要素130及び方向センサ160の両方から受け取ったデータを使用してガス圧力を決定するように構成されたマイクロコントローラ155とを備える。また、本開示は、真空計組立体100におけるガス圧力出力値を補正する関連する方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空システム内のガス圧力を測定するための真空計組立体であって、
圧力検知要素と、
前記圧力検知要素の方向を決定するように構成された方向センサと、
前記圧力検知要素と前記方向センサの両方から受け取ったデータを使用してガス圧力を決定するように構成されたマイクロコントローラと、
を備える真空計組立体。
【請求項2】
前記マイクロコントローラは、前記方向センサから受け取ったデータを使用して、前記圧力検知要素から受け取った前記データに適用される補正を決定し、前記圧力検知要素から受け取った前記データに前記補正を適用して前記ガス圧力を決定するように構成されている、請求項1に記載の真空計組立体。
【請求項3】
前記マイクロコントローラは、前記圧力検知要素から受け取った前記データを正規化し、前記正規化されたデータに補正係数の形で前記補正を適用するように構成されている、請求項2に記載の真空計組立体。
【請求項4】
前記マイクロコントローラは、メモリと、前記メモリとの間で電気通信を行うプロセッサとを備え、前記メモリは、参照データ及び前記補正係数のルックアップテーブルを記憶し、前記プロセッサに、伝達関数及び前記補正係数を適用する前に、前記圧力検知要素から受け取ったデータを正規化するように指示する、請求項3に記載の真空計組立体。
【請求項5】
前記方向センサは、前記圧力検知要素が第1の方向又は第2の方向のうちの1つにあるか否かを決定するように構成され、前記マイクロコントローラは、前記第2の方向に応じた補正係数を記憶し、前記方向センサによって前記第1の方向又は前記第2の方向のいずれが決定されるかに従って、前記補正係数を選択的に適用するように構成されている、請求項2、3又は4に記載の真空計組立体。
【請求項6】
前記第1の方向は前記圧力検知要素の垂直方向に対応し、前記第2の方向は前記圧力検知要素の水平方向に対応し、又はその逆もまた同様である、請求項5に記載の真空計組立体。
【請求項7】
前記補正係数は、前記圧力検知要素の異なる方向に対して決定された複数の補正係数の平均である、請求項5又は6に記載の真空計組立体。
【請求項8】
前記方向センサは、前記圧力検知要素が第3又は第4の方向のうちの1つにあるか否かを決定するようにさらに構成され、前記マイクロコントローラは、前記第2、第3及び第4の方向に従ってそれぞれ第1、第2及び第3の補正係数を記憶し、前記方向センサによって前記第1、第2、第3又は第4の方向のいずれかが決定されるかに従って、それぞれ前記第1、第2又は第3の補正係数を選択的に適用するようにさらに構成されている、請求項5又は6に記載の真空計組立体。
【請求項9】
前記第1の方向は、前記圧力検知要素の垂直方向であり、前記第2、第3及び第4の方向は、前記圧力検知要素の異なる水平方向である、請求項8に記載の真空計組立体。
【請求項10】
前記圧力検知要素は、ピラニ真空計のための加熱要素である、請求項1から9のいずれか1項に記載の真空計組立体。
【請求項11】
真空計組立体のガス圧力出力値を補正する方法であって、
圧力検知要素からガス圧力を示すデータを受け取るステップと、
方向センサから前記圧力検知要素の方向を示すデータを受け取るステップと、
前記圧力検知要素及び前記方向センサの両方から受け取ったデータを使用して、補正されたガス圧力出力値を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記方向センサから受け取った前記データに基づいて、前記圧力検知要素から受け取った前記データに適用される補正を決定するステップと、
前記方向センサから受け取った前記データに応答して、前記圧力検知要素から受け取った前記データに前記補正を適用するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方向センサから受け取った前記データは、前記圧力検知要素が第1の方向又は第2の方向のうちの1つであるか否かを決定し、前記方法はさらに、
前記方向センサからのデータによる前記第1の方向又は前記第2の方向のいずれかの決定に従って、前記圧力検知要素から受け取った前記データに選択的に前記補正を適用するステップをさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記補正を適用する前に、前記圧力検知要素から受け取った前記データを正規化し、参照データのルックアップテーブルを使用して伝達関数を適用するステップと、
前記正規化されたデータに補正係数の形で補正を適用するステップと、
をさらに含む、請求項11、12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、マイクロコントローラを用いて実行される、請求項11から14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空計組立体に関する。また、本開示は、組立体を含む真空計、及び組立体のガス圧力出力値を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、真空計は、真空システム内の圧力を測定するために使用される。圧力測定は、システムがその意図された目的に対して十分に低い圧力の真空を有することを確認するために使用することができる。測定値がシステムの真空圧力が十分に低いことを示す場合、これはシステムの漏れ又は欠陥を示すため及び検出するために使用すること、及び/又は、システムを真空排気する真空ポンプの制御を支援するためのフィードバックを可能にすることができる。
【0003】
通常、真空計は、真空計内のガスの熱的又は電気的特性の変化を検出し、これをガス圧力と相関させることができる圧力検知要素を使用する。
【0004】
この目的に使用される1つのタイプの真空計は、熱伝導真空計である。
【0005】
熱伝導真空計は、圧力測定の目的でガスの熱伝導率を利用し、熱損失真空計としても知られている。一般に、これらの真空計は、圧力測定を行うためにガスの熱伝導率と圧力の関係を利用する。
【0006】
このような熱伝導真空計の1つはピラニ真空計である。
【0007】
ピラニ真空計では、圧力検知要素は、加熱要素(通常はフィラメント又はワイヤ)の形態であり、真空システムの作動ガスと接触するように配置され、さらに電気回路に接続されて電気エネルギーを使って加熱できるようになっている。ガス分子が加熱要素と衝突すると、ガス分子は加熱要素から熱を移動させる(伝導させる)ことになる。ガス圧力が高ければ、加熱要素と衝突する分子が多くなり、それにより加熱要素からより多くの熱が移動する(すなわち、ガスはより高い熱伝導率を有する)ことになる。
【0008】
加熱要素が一定の電流又は電圧に保持される場合、ガス圧力の変化により加熱要素から伝導される熱量が変化すると、それに比例して加熱要素の温度(従って抵抗値)が変化する。この抵抗値の変化を測定することで、ガスの圧力変化を測定することができる。あるいは、加熱要素を一定の温度(従って抵抗値)に保持し、ガス圧力に応じてこの一定の温度を維持するのに必要な電圧の変化を測定することもできる。
【0009】
このようにして、ガス圧力がその熱伝導率の関数として測定される。
【0010】
当業者には理解されるように、これをピラニ真空計に実装する一般的な方法は、加熱要素をホイートストンブリッジ回路のアームとして含めることである。
【0011】
通常、ピラニ真空計は、真空圧(例えば、約10-4mbar-10-3mbar)と大気圧(例えば、約103mbar)との間で動作するように構成されている。残念ながら、比較的高いゲージ圧、例えば100mbarと大気圧との間では、真空計の精度が対流効果によって悪影響を受ける可能性がある。具体的には、加熱要素が対流性流れを発生させ、これにより、その中のガスが加熱されて真空計内で上昇する可能性がある。これにより、真空計内のより冷たいガスが加熱要素上に引き寄せられ、このことは、その温度/抵抗、又はそれを一定温度に維持するために必要な電圧の量に悪影響を及ぼすことになる。
【0012】
従って、この対流効果により、真空計に関する予測されるガス圧力と熱伝導率の相関関係からのずれが生じ、真空計からの圧力出力に不一致及び誤差が生じることになる。
【0013】
さらに、この対流効果が真空計に与える影響の程度は、真空計内の加熱要素の方向に依存する。
【0014】
本明細書は、一般的にピラニ真空計組立体を例示しているが、(加熱要素が使用され、温度補償要素が必要とされる)何らかの他の適切なタイプの熱伝導真空計組立体も本開示から利益を得ることができ、適宜、その範囲内にあることを理解されたい。このような他の熱伝導真空計としては、例えば、サーミスタ真空計組立体又は熱電対真空計組立体を挙げることができる。
【0015】
さらに、キャパシタンスダイアフラム真空計のような他のタイプの真空計も本開示から利益を得ることができる。
【0016】
このような真空計では、一般に、プレートと可動ダイアフラム(圧力検知要素)との間の隙間における相対静電容量を測定することによって、ガス圧力が決定される。
【0017】
プレートに対するダイアフラムの位置は、真空計の方向によって不利になる可能性がある。例えば、ダイアフラムは重力の影響を受けて撓むことがあり、その方向によって、様々な程度で、プレートに向かって又はプレートから離れる方向に移動する場合がある。これは、熱伝導真空計における上述の対流効果と同様に、特定のガス圧力に対する静電容量の測定に不正確さ及び誤差をもたらす可能性がある
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、真空計内の圧力検知要素の方向を考慮し、それに応じて真空計圧力出力に適切な補正を行う一般的必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一態様から、本開示は、請求項1に従って、真空計組立体を提供する。
【0020】
真空計組立体の圧力出力精度は、圧力検知要素の方向によって悪影響を受ける可能性があることが分かっている。方向センサを用いて圧力検知要素の方向を検出し、ガス圧力を測定する際にこのデータを使用することにより、真空計組立体内の真のガス圧力をより正確に決定することが可能となる。
【0021】
上記態様の一実施形態では、マイクロコントローラは、方向センサから受け取ったデータを用いて、圧力検知要素から受け取ったデータに適用する補正を決定し、圧力検知要素から受け取ったデータに補正を適用してガス圧力を決定するように構成されている。
【0022】
これにより、真空計組立体が出力するガス圧力値は、特定の方向が検出されたか否かに応じて補正することができる。1つの例では、補正は、圧力出力値に適用される補正係数の形をとる。
【0023】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、マイクロコントローラは、圧力検知要素から受け取ったデータを正規化し、正規化されたデータに補正係数の形で補正を適用するように構成されている。
【0024】
上記のさらなる実施形態では、マイクロコントローラは、メモリと、メモリと電気通信を行うプロセッサとを備える。メモリは、参照データと補正係数のルックアップテーブルを記憶し、プロセッサに、伝達関数及び補正係数を適用する前に、圧力検知要素から受け取ったデータを正規化するよう指示する。
【0025】
データを正規化することで、真空計組立体の出力圧力値をより正確に修正し、同じ真空計組立体の設計における些細な変動(偶発的な製造/構成の違い、汚染、外部環境の違いなど)を考慮することができる。正規化されたデータに補正係数を適用することは、真空計の正規化された出力データに対する不都合な方向効果の影響を低減するので、真空計の精度を向上させるのに役立つ。
【0026】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、方向センサは、圧力検知要素が第1の方向又は第2の方向のうちの1つにあるか否かを決定するように構成されている。マイクロコントローラは、第2の方向に応じた補正係数を記憶し、方向センサによって第1の方向と第2の方向のいずれが決定されるかに応じて、補正係数を選択的に適用するように構成されている。1つの例では、第1の方向は圧力検知要素の垂直方向に対応し、第2の方向は圧力検知要素の水平方向に対応する。別の例では、第1の方向は圧力検知要素の水平方向に対応し、第2の方向は圧力検知要素の垂直方向に対応する。
【0027】
これにより、予想される、又は真空計が製造されたときに元々校正されていた方向と比較して、検出される圧力検知要素の異なる方向に従って補正係数を適用することができる。
【0028】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、補正係数は、圧力検知要素の異なる方向に対して決定された複数の補正係数の平均である。1つの例では、異なる方向は異なる水平方向とすることができる。
【0029】
これにより、複数の圧力検知要素の方向にわたって真空計出力精度を向上させる補正係数を計算し適用する比較的簡単な方法が提供される。
【0030】
上記のいずれかの代替実施形態では、方向センサは、圧力検知要素が第3又は第4の方向のうちの1つにあるか否かを決定するようにさらに構成されている。マイクロコントローラは、第2、第3及び第4の方向に従ってそれぞれ第1、第2及び第3の補正係数を記憶し、方向センサによって第1、第2、第3又は第4の方向のいずれかが決定されるかに従って、それぞれ第1、第2又は第3の補正係数を選択的に適用するようにさらに構成されている。1つの例では、第1の方向は圧力検知要素の垂直方向であり、第2、第3及び第4の方向は圧力検知要素の異なる水平方向である。
【0031】
検出時に各異なる方向に対して異なる補正係数を記憶し適用することにより、各方向からの真空計出力誤差のより完全な処理を提供することができる。これにより、真空計組立体出力データの精度がさらに向上する。
【0032】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、圧力検知要素は、ピラニ真空計のための加熱要素である。
【0033】
別の態様では、本開示は、上記の態様又はそのいずれかの実施形態の組立体を含む真空計を提供する。
【0034】
1つの実施形態では、真空計はピラニ真空計である。
【0035】
別の態様では、本開示は、請求項11に従って、真空計組立体におけるガス圧力出力値を補正する方法を提供する。
【0036】
ガス圧力を決定する際に方向データを受け取って使用することにより、ガス圧力のより正確な決定を行うことができる。
【0037】
上記態様の1つの実施形態では、本方法は、方向センサから受け取ったデータに基づいて、圧力検知要素から受け取ったデータに適用する補正を決定するステップと、方向センサから受け取ったデータに応答して、圧力検知要素から受け取ったデータに補正を適用するステップとをさらに含む。
【0038】
上記いずれかのさらなる実施形態では、方向センサから受け取ったデータは、圧力検知要素が第1の方向又は第2の方向のうちの1つであるか否かを決定し、本方法は、方向センサからのデータによって第1の方向又は第2の方向のいずれかが決定されたかに従って、圧力検知要素から受け取ったデータに選択的に補正を適用するステップをさらに含む。
【0039】
これらの実施形態は、真空計組立体によって出力されるガス圧力値を、特定の方向が検出されるか否かに応じて補正することを可能にする。
【0040】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、本方法は、補正を適用する前に、圧力検知要素から受け取ったデータを正規化し、参照データのルックアップテーブルを使用して伝達関数を適用するステップをさらに含む。補正は、正規化されたデータに補正係数の形で適用される。
【0041】
正規化されたデータに補正係数を適用することは、真空計の正規化された出力データに対する不都合な方向効果の影響を低減できるため、真空計の精度を向上させることを助ける。
【0042】
上記のいずれかのさらなる実施形態では、本方法はマイクロコントローラを使用して実行される。
【0043】
マイクロコントローラは、真空計組立体のガス圧力出力データに補正及び/又は正規化プロセスを適用するために必要なデータ及び命令を記憶するためのメモリ及びプロセッサを含む。
【0044】
実施形態では、上記方法は、上記態様の組立体又はその実施形態のいずれかの特徴を含む真空計組立体を利用する。
【0045】
上記では、特定の利点について特定の特徴に関連して説明したが、特定の特徴の他の利点は、本開示に従って当業者に明らかになるであろう。
【0046】
以下、1又は2以上の非限定的な実施例を、例示的に添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本開示の一実施形態による真空計組立体の外側等角図を示す。
図2】線A-Aに沿って見た図1の組立体の断面を示す。
図3A図1及び図2の実施形態による圧力検知要素を垂直方向で示す。
図3B図1及び図2の実施形態の圧力検知要素を第1の水平方向で示す。
図3C図1及び図2の実施形態の圧力検知要素を第2の水平方向で示す。
図3D図1及び図2の実施形態の圧力検知要素を第3の水平方向で示す。
図4図3A-3Dに従って異なる方向に組み立てられた圧力検知要素を有する真空計の実施形態についての生の入力電圧及び圧力出力値の例示的なグラフを示す。
図5図4からの生のデータ値を、それらのデータ値での参照データのルックアップテーブルに基づく伝達関数に従って正規化した例示的なグラフを示す。
図6図3B-3Dの方向による真空計の実施形態に関して真の圧力値と比較した正規化された圧力出力値のパーセント誤差の例示的なグラフを示す。
図7図6に示されたパーセント誤差に従って、図3B-3Dの方向による真空計の実施形態に関して計算された補正係数の例示的なグラフを示し、さらに平均補正係数のプロットを含む。
図8】方向B-Dを有する真空計からの正規化出力データに対して図7の平均補正係数を適用した場合の真空計出力データのパーセント誤差への影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1を参照すると、真空計組立体100が示されている。組立体100は熱伝導真空計であり、基部114と頂部116との間で長手方向軸Xに沿って軸方向に延びる側壁112を有する本体110を含む。
【0049】
図示の実施形態では、本体110は略環状であるが、円周の一部の周りに面取りセクション111を備える。後述するように、この面取りセクション111は、熱伝導真空計の他の構成要素(例えば、ハウジング又はカバー(図示せず))との組立体の取り付けを助けることができる。
【0050】
本体110の特定の形状が示されているが、本開示の範囲内で、本体110の何らかの他の適切な形状を使用できることを理解されたい(例えば、方形又は矩形断面)。
【0051】
基部114は、該基部114から長手方向軸Xの周りに半径方向に延びるフランジ115を含む。一例では、フランジ115はNW25仕様であるが、本開示の範囲内で何らかの適切なサイズ及び形状のフランジを使用することができる。
【0052】
頂部116は、エンドキャップ118を含み、電気コネクタ132及び圧力検知要素130のための支持特徴部136は、エンドキャップ118を通って突出し、そこに固定される(図2を参照して後述する)。
【0053】
エンドキャップ118は、頂部116に画定された開口部117内に固定される。
【0054】
いくつかの実施形態では、エンドキャップ118は、例えば、開口部117の中に溶接することで又はその中に圧入することで頂部116に固定的に取り付けることができる。他の実施形態では、エンドキャップ118は、ねじ係合によって頂部116に取り外し可能に固定することができる。このような取り外し可能な固定方法は、加熱要素130及び接続部及び支持特徴部の修理及び交換を容易にすることができる。さらに別の実施形態では、エンドキャップ118は省くことができ、本体110の壁122は、その中に開口部117なしで頂部116を横切って半径方向に延びることができる。そのような実施形態では、接続部及び支持特徴部は、頂部116自体の壁122を貫通して延びることができる。
【0055】
図2は、長手方向軸Xに沿った(矢印A-Aによって規定される線に沿った)、矢印A-Aの方向に見た組立体100の断面を示す。図2は、後述するように、本体110内の内部構造及び構成要素を示す図である。
【0056】
本体110は、内部チャンバ120を画定しており、この内部チャンバ120は、組立体100の使用時に(例えば真空システムからの)作動ガス又はプロセスガスを受け入れるように構成されている。「作動ガス又はプロセスガス」とは、組立体が圧力を測定しようとするガス(複数可)を意味する。「作動ガス」は、通常、真空システムによって「作動」される(すなわち、排気される)ガス(複数可)である。このガスの圧力は、システムにおける一般的な真空圧力の指標をもたらすことができる。
【0057】
図示の例では、本体110は略管状であり、「本体管」として知られる場合もある。それに基づいて、内部チャンバ120は、本体110内の長手方向軸Xの周りで略円筒形である。
【0058】
本体110は、壁122によって画定又は形成される。壁122は、外側に向く壁面122aと、反対側の内側に向く壁面122bとの間に画定される。壁面122a及び122bは、本体110の示されている形状に一致して略環状である。外側に向く壁面122aは、内側に向く壁面122bの半径方向外側にあり、組立体100の外側に向いている。内側に向く壁面122bは、組立体100の内側に向いており、内部チャンバ120を画定する(又は取り囲む)。
【0059】
本体110は、何らかの適切な材料、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金、又はプラスチック材料(動作条件及び温度が許す場合)で作ることができる。また、本体110は、成型/鋳造、固体ブロックからの機械加工、3D印刷など、何らかの適切な製造方法で作ることができる。
【0060】
基部114は、内部チャンバ120のための入口通路124を画定する。
【0061】
入口通路124は、基部114から軸方向に延び、チャンバ120内に入る。入口通路124は、チャンバ120と流体連通しており、使用時に作動ガス(例えば真空システムからの)がチャンバ120に出入りするのを可能にする。
【0062】
濾過要素126は、作動ガスをチャンバ120に入る前に濾過するために、入口通路124を横切って配置されている。濾過要素126は、長手方向軸Xに対して半径方向に入口通路124を横切って通過する。濾過要素126は、チャンバ120に汚染物質が入らないことを保証するために使用される。そのような汚染物質は、組立体100に損傷を与える場合がある(例えば、チャンバ120内の加熱要素130、壁面122b又は電気接続部を腐食させる又はその上に堆積することによって)、及び/又は圧力測定プロセスを妨げ、そこに不正確さをもたらす場合がある。1つの実施例では、濾過要素126は、ステンレス鋼(例えば316L)30-2メッシュであるが、本開示の範囲内で濾過要素126の何らかの他の適切なタイプ(例えば膜)、材料及び仕様を使用することができる。
【0063】
基部114のフランジ115は、その中に画定された凹部又は溝128を含む。凹部128は、長手方向軸Xの周りに環状であり、Oリングシールがその中に着座することを可能にする。これは、使用時に組立体100と真空システムとの間でより良好なシールを形成することができ、さらにフランジ115を介して基部114の所定の位置に固定することができる。
【0064】
図示の実施形態では(これは熱伝導率真空計である)、圧力検知要素130は、チャンバ120内に配置される加熱要素130である。図示の例では、加熱要素130は、頂部116から基部114に向かってチャンバ120の中に概して軸方向に延びる。
【0065】
図示の実施形態の加熱要素130は、電源によって加熱されるフィラメントである。フィラメントは、タングステン又は白金など、何らかの適切な材料から作ることができる。特に、白金は、より腐食性の強い化学薬品及び/又は作動ガスを含むことが知られている真空システム環境又は用途で使用することができる。
【0066】
図3A-3Dからも明らかなように、電気コネクタ又はピン132a、132b、132cは、エンドキャップ118を通って突出し、そこに固定されている。加熱要素130は、加熱要素130の制御のための電気通信を可能にするために、特定の電気コネクタ132a、132b、132cに接続されている。
【0067】
図示の例では、コネクタ132a、132cは加熱組立体130の2つの反対側の端部に接続されているが、コネクタ132bは接地目的に使用されている。
【0068】
次に、コネクタ132a、132b、132cは、組立体100の使用時に加熱組立体130を加熱及び制御するための電力を供給することができる電子モジュール150(以下でより詳細に説明する)内の電気制御回路(図示せず)に接続されている。
【0069】
加熱要素130は、コネクタ132a、132cに何らかの適切な方法で接続することができ、例えば、コネクタの基部に巻き付ける又はそれに溶接する又ははんだ付けすることで接続することができる。
【0070】
加熱要素130は、支持構造物によってチャンバ120内に支持される。図示の例では、支持構造物は、ばねアーム134及びとバー136の形態である。
【0071】
バー136はエンドキャップ118を通って突出し、そこに固定されている。バー136は、頂部116から基部114に向かって、加熱要素130と実質的に平行にチャンバ120内で軸方向に延びる。図示の実施形態では、バー136は円筒形のロッドである。
【0072】
ばねアーム134は、バー136の基部114に最も近い端部に固定され、加熱要素130を支持するために(長手方向軸Xに対して)半径方向に延びる。
【0073】
ばねアーム134は、その周りを加熱要素130が通過するフック135を特徴とする。ばねアーム134及びバー136は、使用時に加熱要素130をコネクタ132a、132cの間で教示及び支持し続ける張力を提供するために使用される。
【0074】
理解されるように、図示の実施形態では、加熱組立体130は、フック135を介してコネクタ132a、132cの間に掛けられると、実質的にV字形状又はU字形状をもたらす。
【0075】
加熱要素130、電気コネクタ132a、132b、132c、及びそれらの支持構造物の1つの特定の配置が示されているが、本開示の範囲内において、何らかの他の適切な配置を使用できることを理解されたい。例えば、異なる数及びタイプの電気コネクタ132a、132b、132c、異なるタイプの加熱要素130(例えば、サーミスタ)、及び、バー136及びばねアーム134に関する異なる数又はタイプの構成要素を使用することができる。
【0076】
図示の実施形態では、電子モジュール150は、エンドキャップ118に取り付けられ、圧力検知要素130の電気コネクタ132a、132b、132c及び支持特徴部136を受け入れる。電子モジュール150は、例えば、ファスナー、ねじ係合、又は接着剤を用いて、何らかの適切な取り外し可能又は取り外し不可能な方法でエンドキャップ118に取り付けることができる。
【0077】
電子モジュール150は、極めて概略的な形で示されており、何らかの適切な形状を有すること及び真空計100上の何らかの他の適切な位置に取り付けることができる。
【0078】
電子モジュール150は、電気コネクタ132a、132b、132cと電気通信するマイクロコントローラ155及び他の一般的な電子回路及び演算要素(図示せず)を含むハウジングであり、これらは、圧力検知要素130の加熱を制御し、その結果生じる圧力出力値を計算するように構成されている。
【0079】
圧力検知要素130及び電子モジュール150(マイクロコントローラ155、関連回路及び演算要素を含む)は、何らかの適切な方法で給電することができる。
【0080】
例えば、これらは、本体110を貫通して設けられるインターフェースコネクタ(図示せず)(例えば、D-sub、RJ45又はUSBコネクタ)を経由して外部電源に接続可能とすることができる。外部電源は、商用電源とすることができ、又は、真空計100は、圧力を測定しているより広い真空システム(例えば、真空ポンプ)から電力を受けるように接続することができる。
【0081】
別の例では、代替的に/追加的に、真空計100はバッテリ(図示せず)などの内部電源を含むことができる。バッテリは本体110から取り外し可能及び交換可能とすることができ、リチウムイオンバッテリのような充電式バッテリとすることもできる。
【0082】
また、真空計100は、マイクロコントローラ155と電気通信する方向センサ160(図2には単に概略的に示されている)を含む。
【0083】
方向センサ160は、圧力検知要素130の特定の方向を示すデータ信号をマイクロコントローラ155に出力するように構成されている。以下に詳細に説明するように、これにより、マイクロコントローラ155は、圧力検知要素130からの圧力出力値を計算する際に、圧力検知要素130の方向を考慮することができる。
【0084】
方向センサ160は、真空計100の電子モジュール150内に含まれるように概略的に示されているが、本開示の範囲内で、そのような配置に限定されるものではない。
【0085】
例えば、方向センサ160は、圧力検知要素130の相対的な方向を効果的に認識して(すなわち、圧力検知要素130の様々な方向を区別して)、マイクロコントローラ155と通信できる真空計100内の何らかの他の場所に配置することができる。
【0086】
1つのそのような例では、方向センサ160は、圧力要素130に固定することができる。別のそのような例では、方向センサ160は、真空計100の本体110に固定すること、又は本体110に組み込むことができる。
【0087】
方向センサ160は、様々な圧力検知要素の方向を示す信号を供給することができる何らかのセンサ又は複数のセンサの組み合わせとすることができる。例えば、方向センサ160は、加速度計、ジャイロスコープ、磁気計、及び傾斜スイッチのうちの1つ又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0088】
図3A-3Dは、真空計100からの圧力出力に変動(すなわち、より高い真空計圧力(100mbarから1,000mbar)での対流効果による)を引き起こすことが分かっている圧力検知要素130の様々な可能性のある方向を示す。
【0089】
図3Aでは、圧力検知要素130は垂直方向に位置合わせされている。
【0090】
図3Bでは、圧力検知要素130は水平方向に位置合わせされているが、V字型フィラメントは垂直面に位置合わせされている(すなわち、支持バー136と垂直方向に一致する)。
【0091】
図3Cでは、圧力検知要素130は水平方向に位置合わせされているが、V字型フィラメントは水平面内で下向きに位置合わせされている(すなわち、垂直方向で支持バー136の下方に位置する)。
【0092】
図3Dでは、圧力検知要素130は水平方向に位置合わせされているが、V字型フィラメントは水平面内で上向きに位置合わせされている(すなわち、垂直方向で支持バー136の上方に位置する)。
【0093】
図3A-3Dでは明瞭化のために示されていないが、使用時には、圧力検知要素130は、図1及び2に示されるように、その周りに残りの真空計構成要素(例えば、真空計本体110、エンドキャップ118、電子モジュール150及びセンサ160など)を備えることになることを理解されたい。
【0094】
当業者であれば理解できるように、異なる真空ポンプの設計及び空間配置に対応するために、真空計100及び圧力検知要素130は、異なる方向に位置付ける必要がある場合がある。従って、これらの(又はそれ以上の)異なる方向を考慮することができる真空計100が有利である。
【0095】
図4は、図3A-3Dに従って圧力検知要素130が異なる方向で使用される場合に、圧力検知要素130から見られる真空計出力の変動を示すグラフである。グラフは概略的であり、例示のみを目的としている。
【0096】
各真空計出力のラインは、図3A-3Dに示される圧力検知要素130のそれぞれの方向に従ってA-Dのラベルが付けられている。換言すれば、
方向A=圧力検知要素130が垂直方向に位置合わせされている。
方向B=圧力検知要素130が垂直面内で水平方向に位置合わせされている。
方向C=圧力検知要素130が水平面内で下向きに水平方向に位置合わせされている。
向きD=圧力検知要素130が水平面内で上向きに水平方向に位置合わせされている。
【0097】
図示の例では、圧力検知要素130は、一定の温度を維持するように動作する加熱要素である。
【0098】
従って、X軸は真空計100から示された圧力を示し、Y軸はその圧力出力値に対して加熱要素を一定温度に維持するのに必要な相関的な電圧を示す。
【0099】
Pの特定の値はx軸に沿ってmbarで指定され、Vの特定の値はy軸に沿ってボルトで指定されるが、これらは、本発明のより良い理解をもたらすために使用される、特定の例示的な真空計100である。
【0100】
本開示の範囲内で、真空計100は、より高い又はより低い範囲の圧力出力値で動作する場合があり、これらは、示されるものとは異なる電圧値と相関する場合があることを理解されたい。実際、異なる真空計の実装、適用、及び制御回路は、異なる電圧対圧力出力値特性を提示する(例えば、小さい/大きい固有電気抵抗に起因して)。
【0101】
図4に示すように、真空計100の動作範囲の大部分(すなわち、10-4mbarから102mbar)において、印加される電圧と対応する圧力出力値は、異なる圧力検知要素130の方向A-Dで実質的に同じである。しかしながら、図4で強調表示されているように、大気圧に向かう、より高い圧力(すなわち、102mbarから103mbar)では、異なる方向A-Dは、同じ圧力出力値をもたらすために圧力検知要素130に印加される電圧の変動を生じさせることが分かる。
【0102】
上述したように、熱伝導真空計100の場合、この変動は圧力検知要素130の加熱による対流効果によって引き起こされる。例えば、ある方向は他の方向よりも大きな対流効果を発生させるので、特定の出力圧力値に関して、圧力検知要素130の温度を維持するために他の方向よりも大きな電圧を必要とするようである。
【0103】
例えば、図4に示されるように、方向Bの所与の圧力値に対する電圧出力は、方向Cの電圧出力よりも高く、方向Cの電圧出力は方向Dの電圧出力よりも高く、方向Dの電圧出力は方向Aの電圧出力よりも高いことが分かっている。
【0104】
図示の実施形態とは異なり、公知の真空計は、圧力検知要素の方向が真空計出力データに及ぼす影響を考慮するように構成された方向センサ160及びマイクロコントローラ155を備えていない。従って、公知の真空計は、圧力検知要素130の相対的な方向を決定することができず、圧力検知要素130の異なる方向による電圧及び圧力出力データの変動を考慮することができない。その際、公知の真空計は、対流効果の影響及び異なる圧力検知要素130の方向にわたるその関係を無視する。図示の実施形態は、この問題に対処する。
【0105】
当業者には理解されるように、公知の真空計100及びマイクロコントローラ155は、真空計100が、同じ真空計設計の異なる例で見られる電圧対圧力出力値の変化(例えば、圧力検知要素130/真空計100のわずかな製造又は構成上の変動、圧力検知要素130/真空計100上の異なる汚染度、及び局所環境(例えば、外気温)の変動に起因する)を考慮できるようにプログラムされている。これを実現するために、マイクロコントローラ155は、これらの変動を考慮した補正された圧力出力値を提供するために、圧力検知要素130から受け取ったデータを正規化し、伝達関数を適用するように構成されることが一般的に知られている。
【0106】
例示的な正規化プロセスでは、マイクロコントローラ155は、プロセッサと、それと通信するメモリとを備える。メモリは、参照データ値のルックアップテーブルと、命令とを含み、命令は、プロセッサに、予め設定されたオフセット及びスパン調整(例えば、x軸及びy軸出力値において)に従って圧力検知要素130から受け取った生の出力データを正規化し、参照データ値との比較に従ってその上で伝達関数を実行するようにさせる。このプロセスは、真空計のためのより一貫性のある正確な出力値のセットを提供するために、マイクロコントローラ155が生の出力データ値をシフトして再マッピングすることにつながる。
【0107】
この公知の正規化プロセスは、高い圧力値での上述の方向依存性の対流効果による真空計出力値の変動を考慮することができない。従って、図4に示した方向依存性の出力データの変動は、正規化された出力値に偏差をもたらし、これは真空計出力の不正確さ及び矛盾につながる。
【0108】
図5は、このような正規化処理を、図4の方向A-Dの異なる出力データ結果に対して実行した結果を示す。
【0109】
図5に示すように、この結果は、比較的高い圧力(~102から~103mbar)(対流効果がより顕著な場合)において、異なる方向A-D間の正規化出力値に大きな変動が生じるだけでなく、低い圧力(~10-3から~102mbar)においても、各方向A-Dの正規化出力値に悪影響を及ぼす(程度は低いものの)。従って、正規化処理後に、上述の方向変動分を考慮する必要もある。
【0110】
図6では、図4からの方向B-Dの出力データは、垂直方向Aを有する圧力検知要素130について集められた参照データに従って正規化されている。真の圧力Ptrueと比較した、真空計Pindicatedによって示される結果として得られる正規化された圧力出力値のパーセント誤差が示されている。
【0111】
パーセント誤差は、
パーセント誤差=100×((Pindicated-Ptrue))/Ptrue
で計算される。
【0112】
垂直方向Aと比較した水平方向B-Dの出力変動により、低い作動圧力(~10-3から~102mbar)では真空計圧出力値に約-5%の誤差が生じ、高い作動圧力(~101から~103mbar)では-%誤差が増加し、特定の方向B-Dに応じて約-55%の誤差から約-75%の誤差(500-600mbarの間)でピークに達することが分かる。
【0113】
従って、理解されるように、ユーザが垂直方向(すなわち、方向A)ではなく、水平方向(方向B-Dなど)でこのような真空計を使用した場合、これらの誤差は真空計の圧力測定値を不正確にすることになる。上述したように、ユーザーは、特定の真空計の用途及び空間要件に適合するために、圧力要素130のこのような異なる方向を使用する必要がある場合がある。
【0114】
この問題を解決するために、本発明は補正係数CFを利用し、補正係数CFは、真空計100が、参照データが取られ、正規化プロセスが実行された方向とは異なる方向にあることを方向センサ160が示す場合に、正規化された真空計出力データに適用される。
【0115】
補正係数CFは、真空計100が使用される前に、上述のパーセント誤差に従って、以下の式に従って計算される。
CF=100/((パーセント誤差+100))
【0116】
計算された補正係数CFは、マイクロコントローラ155のメモリに記憶され、方向センサ160が、これが必要であることを示す場合に、マイクロコントローラ155によって正規化出力データPindicatedに適用される。
【0117】
図7は、図6の正規化後に発生する異なるパーセンテージ誤差を考慮するために、異なる水平方向B-Dの各々について計算された補正係数CFの例を示す。
【0118】
図7から分かるように、補正係数CFは、水平方向B-Dと垂直方向Aとの間のパーセント誤差が比較的一定である真空計組立体の主な意図された動作圧力範囲(~10-3から~101mbar)では比較的一定である。補正係数CFは、対流効果とそれによって引き起こされる方向間の変動がより一般的になる、より高い圧力範囲(~101から~103mbar)でより実質的になり、変化する。
【0119】
一実施形態では、図7に示すように、正規化及びルックアップ参照データは垂直方向Aに従って計算され、3つの異なる水平方向B-Dの各々に対する補正係数の平均に対応する単一の平均補正係数CFavgが計算される。
【0120】
補正係数CFは、以下の一般式に従ってマイクロコントローラ155によって真空計100の使用中に適用される。
true=Pindicated×CF
【0121】
図8は、この平均補正係数CFavgを、方向Aに従って正規化された方向B-Dの各々の真空計出力データに適用した場合に分かっているパーセンテージ誤差の比較低減を示す。
【0122】
図8から明らかなように、この補正係数CFavgを適用することで、圧力出力値のパーセント誤差は、真空計100の動作範囲にわたって、特に真空計組立体の主たる動作圧力範囲である~10-3から~101mbarにわたって減少している。
【0123】
ある程度の誤差は依然として存在するが、それでもこの結果は、正規化された真空計出力に対する対流効果の変動をより正確に考慮する簡単な手段を提供する。例えば、真空計使用前に1つの補正係数を計算し、保存するだけでよく、方向センサ160は、補正係数を正しく適用するために、単に垂直方向と一般的な水平方向を区別することができるだけでよい。
【0124】
別の実施形態では、方向センサ160は、それぞれ異なる水平方向B-Dを区別するように構成され、各方向B-Dに対する個別の補正係数CFは、マイクロコントローラ155によって記憶される。次に、各方向B-Dに対する個別の補正係数CFは、特定の方向B-Dが方向センサ160によって検出され示された場合に、マイクロコントローラ155によって正規化された真空計出力データに適用することができる。
【0125】
本発明は、垂直及び水平方向を参照して説明されているが、本開示の範囲内で、任意の数の圧力検知要素130の方向(例えば、垂直方向と水平方向の間)に対する補正係数CFは、同じ方法でマイクロコントローラ155によって計算し、記憶し、適用することができることを理解されたい。もちろん、これは、方向センサ160が各異なる方向の間を効果的に区別するように構成されていることを条件とする。
【0126】
理解されるように、このような実施形態は、図8及び図9に示すCFavgを利用する実施形態よりも、複数の方向センサ/より高度な方向センサの使用、並びに、より多くの参照データ及び補正係数CFの計算、記憶、及び適用を必要とする場合がある。しかしながら、これらの実施形態は、各個別の方向からの誤差のより「完全な」処理を提供することができるので、真空計出力の精度をさらに向上させることができる。
【0127】
さらに、説明した実施形態では、垂直方向Aに関する参照データに従って正規化処理を適用したが、他の実施形態では、代わりに何らかの他の方向(例えば、水平方向B-Dのいずれか)に関する参照データに従って正規化処理を適用し、それを参照してパーセント誤差及び補正係数を計算することができる。
【0128】
上述したように、本開示は、対流効果が存在/関連しないが、それにもかかわらず出力圧力値がその中の圧力検知要素の方向によって悪影響を受ける可能性がある他のタイプの真空計(例えば、例示したピラニ真空計又は熱伝導真空計以外)にも適用できることを理解されたい。
【0129】
このような代替の真空計の用途では、上述した同じ正規化プロセス及び補正係数を適用する必要はないかもしれないが、それでも方向センサによって検出された方向に応じて適切な補正を計算し、真空計出力値に適用することができることを理解されたい。
【0130】
そのような1つの例は(上述した)キャパシタンスダイアフラム真空計があり、生成された指示真空計圧力出力値は、ダイアフラムとプレートとの間の間隔に依存する。真空計の方向が変わるとダイアフラムの幾何形状が変わり、圧力が変化しなくても間隔が変わるため、結果として圧力出力値の不正確さが生じる場合がある。
【0131】
本開示をこのような例に適用する場合、ダイアフラムの特定の方向について見出された間隔の変化に従って、圧力出力値の補正を計算し、適用することができる。方向センサが特定の方向を示すと、適切な補正を適用することができる。従って、補正は、決定された特定の方向について公知又は予想される間隔の変化量に応じた大きさの、示された出力値に対する補正オフセットの形をとることができる。
【0132】
添付の図1から3で使用されている符号のリストは、参照を容易にするために以下に提示される。
【符号の説明】
【0133】
100 真空計組立体
110 本体
111 面取りセクション
112 側壁
114 基部
115 フランジ
116 頂部
117 (頂部116の)開口部
118 エンドキャップ
119 マーキングエリア
120 内部チャンバ
122 壁
122a 外側に向かう壁面
122b 内側に向かう壁面
124 入口通路
126 濾過要素
128 凹部(又は溝)
130 圧力検知要素(加熱要素/フィラメント)
132a 電気コネクタ(又はピン)
132b 電気コネクタ(又はピン)
132c 電気コネクタ(又はピン)
134 ばねアーム
135 フック
136 バー
150 電子モジュール
155 マイクロコントローラ
160 方向センサ
X 長手方向軸
A 断面視線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】