(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】浸出法
(51)【国際特許分類】
C22B 3/04 20060101AFI20240711BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20240711BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20240711BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20240711BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C22B3/04
C22B15/00 105
C22B11/00 101
C22B3/06
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505322
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 AU2022050800
(87)【国際公開番号】W WO2023004465
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507123202
【氏名又は名称】テクノロジカル リソーシーズ プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タペラ、テンデカイ
(72)【発明者】
【氏名】ハックル、ラルフ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マリーシアク、ニコラ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA09
4K001BA03
4K001BA23
4K001CA26
4K001DB01
4K001DB02
(57)【要約】
金/銅を含有する硫化物採掘材料の浸出法であって、金浸出液を用いて材料から金を浸出させる金浸出段階と、銅浸出液を用いて材料から銅を浸出させる銅浸出段階とを有する、2つの浸出段階を含む、浸出法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金/銅含有硫化物採掘材料の浸出法であって、
金浸出液を用いて前記鉱石から金を浸出させる金浸出段階と、
銅浸出液を用いて前記鉱石から銅を浸出させる銅浸出段階と
を有する、2つの浸出段階を含む、浸出法。
【請求項2】
前記金浸出段階では、実質的に銅が浸出されないように浸出条件が選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項3】
前記銅浸出段階では、実質的に金が浸出されないように浸出条件が選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金浸出段階では実質的に銅が浸出されず、前記銅浸出段階では実質的に金が浸出されないように浸出条件が選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記金浸出段階はヒープリーチング段階である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記銅浸出段階はヒープリーチング段階である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記浸出段階からのそれぞれの金含有溶液および銅含有溶液から金および銅を回収し、回収された金および銅の流れと、回収済みの金含有および銅含有溶液を生成するための別個の回収段階を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回収済みの金含有溶液および銅含有溶液を前記回収段階から再生することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金/銅含有材料は、採掘鉱石または採掘廃棄物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記金浸出液を用いて前記鉱石から金を浸出させ、金含有溶液および金欠乏鉱石を生成することを含む、前記金浸出段階と、
(b)前記銅浸出液を用いて前記金欠乏鉱石から銅を浸出させ、銅含有溶液を生成することを含む、前記銅浸出段階と
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記銅浸出液を用いて前記鉱石から銅を浸出させ、銅含有溶液および銅欠乏鉱石を生成することを含む、前記銅浸出段階と、
(b)前記金浸出液を用いて前記銅欠乏鉱石から金を浸出させ、金含有溶液を生成することを含む、前記金浸出段階と
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記鉱石のヒープを形成し、前記ヒープ内の前記鉱石に対して前記金浸出段階および前記銅浸出段階を連続的に実行することを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記鉱石のヒープを形成し、前記ヒープ内の前記鉱石に対して前記銅浸出段階および前記金浸出段階を連続的に実行することを含む、請求項9または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続する金浸出段階および銅浸出段階の間にヒープ洗浄段階を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
周囲温度条件下で前記金浸出段階を実行することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酸性条件下で前記金浸出段階を実行することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金浸出段階は、チオ尿素(CS(NH
2)
2)が、前記鉱石からの金の浸出を促進する金の錯化/抽出剤として作用する、チオ尿素ベースの浸出である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記金浸出段階において銅が浸出しないように、前記金浸出液中の第二鉄濃度を制御することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記金浸出段階において前記金浸出液のpHをpH1~4の範囲に制御することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金浸出段階において前記金浸出液のEhを350~550mVの範囲に制御することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
酸性条件下で前記銅浸出段階を実行することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記銅浸出段階は、銅浸出触媒としてCu1kg当たりAg2g未満の濃度で銀を提供することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記銅浸出段階は、銀と、銀が銅の浸出を促進するように銀を活性化する活性化剤との存在下で、前記浸出液を用いて前記浸出段階を実施することを含む、請求項1~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記銅浸出段階においてヒープ温度を75℃未満に制御することを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ヒープ温度を少なくとも10℃に制御することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記銅浸出段階の活性浸出フェーズ中の浸出液の酸化電位を700mV未満に制御することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記銅浸出段階において前記浸出液のpHを3.2未満に制御することを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記銅浸出段階において前記浸出液のpHを0.3よりも大きく制御することを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
金/銅含有硫化物採掘材料を浸出させるための浸出操作であって、
(a)金浸出液を用いて前記材料から金を浸出させて金含有溶液を生成し、前記溶液から金を回収する、金浸出ユニット操作と、
(b)銅浸出液を用いて前記材料から銅を浸出させて銅含有溶液を生成し、前記溶液から銅を回収する、銅浸出ユニット操作と、
を含む、浸出操作。
【請求項30】
金/銅含有硫化物採掘材料を浸出させるためのヒープリーチング操作であって、
(a)採掘材料および/または採掘鉱石の凝集した断片のヒープと、
(b)前記ヒープ内の材料に対して金浸出段階を実行するために金浸出液を前記ヒープに供給する浸出液供給ユニットと、
(c)前記ヒープ内の材料に対して銅浸出段階を実行するために銅浸出液を前記ヒープに供給する浸出液供給ユニットと、
(d)前記金浸出段階の過程で前記ヒープから排出された金含有溶液から金を回収し、回収された金ストリームと回収済み金含有溶液とを生成する金回収ユニットと、
(e)前記銅浸出段階の過程で前記ヒープから排出された銅含有溶液から銅を回収し、回収された銅ストリームと回収済みの銅含有溶液とを生成するための銅回収ユニットと、
を含む、ヒープリーチング操作。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採掘鉱石および採掘廃棄物を含む採掘材料を含む金属含有材料から、金、銅、および任意選択で銀などの他の有価金属を浸出させる方法(リーチング)に関するものである。
【0002】
「採掘」材料という用語には、鉱山から除去され下流処理のために直接輸送される採掘材料と、貯蔵されていて下流処理のために貯蔵場所内から輸送される採掘材料が含まれる。
【0003】
本発明は、限定的ではないが、特に、採掘鉱石の形態の採掘材料から金および銅、および任意選択で銀などの他の有価金属を浸出させることに関するものである。
【0004】
「採掘」鉱石という用語は、本明細書では、(a)粗鉱の鉱石、および(b)少なくとも一次破砕、または材料が採掘された後で選別される前の同様のまたはさらなるサイズ低減に供された粗鉱の鉱石を含むが、これらに限定されないと理解される。
【0005】
「鉱石」という言葉は、本明細書では、採掘、処理、販売して利益を得ることができる、1つまたは複数の有価鉱物を含む、通常は有価金属を含む天然の岩石または堆積物を意味すると理解される。
【0006】
本発明はまた、限定的ではないが、特に、(a)金/銅含有鉱石(鉱石断片の凝集塊の形態であり得る)、(b)鉱石の精鉱、(c)例えば浮遊選鉱によってまたは鉱石または精鉱の他の下流処理によって生成された鉱石または精鉱の尾鉱のうちの任意の1つまたは複数を浸出させることに関するものである。
【0007】
本発明はまた、限定的ではないが、特に、黄銅鉱(CuFeS2)および/または硫ヒ銅鉱(Cu3AsS4)などの銅鉱物を含む硫化物鉱石などの金/銅含有硫化物鉱石などの金/銅含有硫化物材料を浸出させることに関するものである。硫化物鉱石は、他の銅鉱物を含み得る。硫化鉱石は、金も含む。
【0008】
本発明はまた、廃棄物であるとして、したがって本発明が行われる前に従来の回収オプション(すなわち、本発明が行われる前に商業鉱山で使用されていた処理オプション)を使用して金属を回収するのは「非経済的」であるとして、鉱山経営者によって分類された金属含有材料を浸出させることにも及ぶことに留意されたい。
【0009】
金属含有材料は、採掘鉱石の精鉱を含む、採掘材料の精鉱を含む、材料の精鉱を含み得ることにも留意されたい。
【0010】
「精鉱」という用語は、本明細書では、投入原料の標的(すなわち、望ましい)金属または金属含有鉱物の濃度を増加させた結果を意味すると理解される。
【背景技術】
【0011】
金と銅は、有価金属であり、経済的に実行可能な採掘と、採掘鉱石などの採掘材料を含む金属含有材料からのこれらの金属の回収は、ますます複雑かつ多面的な技術課題となっている。
【0012】
最初に銅に焦点を当てると、鉱石(黄銅鉱および/または硫ヒ銅鉱などの銅含有硫化鉱石または他の銅含有硫化鉱物を含む)の形態の銅含有採掘材料の浸出において、鉱石の粒子サイズは通常、ヒープリーチング、バットリーチング、またはその他のリアクタリーチングオプションによる処理を可能にするために、例えば破砕および粉砕操作によって粗鉱のサイズから低減される。
【0013】
これらの浸出プロセスには、銅を溶液に溶解させるための酸と酸化剤の適用が含まれる。その後、銅は、溶媒抽出および電解採取(SX/EW)、鉄などのより活性な金属へのセメンテーション、水素還元、および直接電解採取を含む様々な回収オプションによって酸性溶液から回収される。酸性溶液は、再生およびリサイクルされ、鉱石からより多くの銅が浸出する。
【0014】
浸出は、微生物の使用によって促進される場合がある。
【0015】
一般的に、銅含有精鉱が生成され、その後製錬されて銅金属が生成される、硫化鉱石から銅を回収するための他のプロセスオプション(例えば、粉砕および浮遊選鉱)よりも、浸出は、金属回収率が低い可能性がある。
【0016】
ヒープリーチングによって黄銅鉱から総銅の20~40重量%を超える量を浸出させることは困難であることが知られている。
【0017】
黄銅鉱からの銅の回収率が低いのは、黄銅鉱の表面に不動態皮膜が形成されることに関連しており、それが溶解反応による分解生成物で構成されていると考えられることが多い。
【0018】
出願人は、金/銅含有硫化物鉱石および硫化物廃棄物などの銅含有硫化物から銅を浸出させる技術を開発した。
【0019】
出願人の技術は、国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)の明細書に記載され特許請求されており、これらの特許出願の明細書における開示は、相互参照により本明細書に援用される。
【0020】
金は、金/銅含有硫化鉱石および硫化廃物質などの銅含有物質中に存在する可能性があることが知られている。
【0021】
これらの鉱石は、本発明の焦点であり、以下では「金/銅含有鉱石」と呼ぶ。
【0022】
このような金/銅含有鉱石から金と銅の両方を浸出させることには、明らかな経済的利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際出願第2017/070747号
【特許文献2】国際出願第2018/184071号
【特許文献3】国際出願第2019/213694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、金/銅含有鉱石から金と銅を浸出させるには技術的な課題があり、これにより効率的かつコスト効率よく行うことが困難である。
【0025】
上記の説明は、オーストラリアまたは他の地域における一般常識を認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
出願人は、金/銅含有採掘鉱石などの金/銅含有材料から一段階で金を浸出させること、および金/銅含有採掘鉱石などの金/銅含有材料からその方法の別の一段階で効率的かつコスト効率よく銅を浸出させることを可能にする条件を特定した。
【0027】
大まかに言えば、本発明は、金/銅含有採掘鉱石および廃棄物などの金/銅含有材料の浸出法であって、金浸出液を用いて材料から金を浸出させる金浸出段階と、銅浸出液を用いて材料から銅を浸出させる銅浸出段階とを有する、2つの浸出段階を含む浸出法を提供する。
【0028】
金/銅含有材料は、採掘鉱石とすることができる。
【0029】
採掘鉱石は、硫化銅含有鉱石とすることができる。
【0030】
採掘鉱石は、黄銅鉱鉱石とすることができる。
【0031】
「黄銅鉱鉱石」という用語は、本明細書では、鉱物黄銅鉱を含む鉱石を意味すると理解される。鉱石には、他の銅含有鉱物も含まれ得る。鉱石には、黄鉄鉱も含まれ得る。
【0032】
金/銅含有材料は、鉱山経営者によって廃棄物として分類され、例えば鉱山で貯蔵されている採掘済み材料であってもよい。
【0033】
金浸出段階では、実質的に銅が浸出されないように、浸出条件を選択することができる。
【0034】
金/銅含有鉱石の場合、金浸出工程において溶液中に銅を取り込むことは、浸出液の下流処理を複雑にする可能性があるため、典型的には銅に対する酸溶解度が低い鉱石が本発明の処理に好ましい。最初に金が浸出され、次に銅浸出が続く場合には、この問題が発生する可能性は低くなる。
【0035】
出願人にとって関心のある銅含有鉱石の精鉱は、典型的には主に酸に溶けない硫化銅鉱物であることに留意されたい(かなり古くなっている場合を除き、表面酸化が起こっているであろう)。
【0036】
銅浸出段階では、実質的に金が浸出されないように、浸出条件を選択することができる。
【0037】
金浸出段階では、実質的に銅が浸出されず、銅浸出段階では、実質的に金が浸出されないように、浸出条件を選択することができる。
【0038】
銅の文脈における「実質的に浸出されない」という用語は、本明細書では、金/銅含有鉱石などの金/銅含有材料中の銅が、5重量%未満、典型的には1重量%未満、より典型的には0.5重量%未満、金浸出段階で浸出されることを意味すると理解される。
【0039】
金の文脈における「実質的に浸出されない」という用語は、本明細書では、金/銅含有鉱石などの金/銅含有材料中の金が、5重量%未満、典型的には1重量%未満、より典型的には0.5重量%未満、銅浸出段階で浸出されることを意味すると理解される。
【0040】
他の金属を実質的に浸出させずに金または銅を浸出させる条件下で少なくとも1回の浸出を実行すると、次の機会を提供するという点で有利である。
(a)浸出段階の条件を最適化して浸出金属の回収を最大化できるようにする。
(b)浸出段階からの溶液からの浸出金属の下流回収を簡素化および最適化する。
【0041】
金浸出段階は、銅浸出段階の前に実行されてもよい。
【0042】
金浸出段階は、銅浸出段階の後に続いてもよい。
【0043】
以下の説明は、金/銅含有採掘鉱石の形態で金/銅含有材料を浸出させるための上記の方法の使用に焦点を当てる。本発明はまた、廃棄物貯蔵場所内などにおける金/銅含有廃棄物の形態の金/銅含有物質を浸出させるための上記方法の使用にも関するものであることを強調する。
【0044】
これに関連して、本発明は、金浸出液を用いて鉱石から金を浸出させる金浸出段階と、銅浸出液を用いて鉱石から銅を浸出させる銅ヒープリーチング段階とを有する、2つの浸出段階を含む、金/銅含有採掘鉱石の浸出法を提供する。
【0045】
採掘鉱石は、硫化銅含有鉱石とすることができる。
【0046】
この方法は、
(a)金浸出液を用いて鉱石から金を浸出させ、金含有溶液および金欠乏鉱石を生成することを含む、金浸出段階と、
(b)銅浸出液を用いて金欠乏鉱石から銅を浸出させ、銅含有溶液を生成することを含む、銅浸出段階と、
を含み得る。
【0047】
この方法は、
(a)銅浸出液を用いて鉱石から銅を浸出させ、銅含有溶液および銅欠乏鉱石を生成することを含む、銅浸出段階と、
(b)金浸出液を用いて銅欠乏鉱石から金を浸出させ、金含有溶液を生成することを含む、金浸出段階と、
を有する逆の浸出段階の順序を含み得る。
【0048】
金浸出段階は、ヒープリーチング段階とすることができる。
【0049】
金浸出段階は、鉱石断片の凝集塊に対して実行することができる。
【0050】
銅浸出段階は、ヒープリーチング段階とすることができる。
【0051】
銅浸出段階は、鉱石断片の凝集塊に対して実行することができる。
【0052】
「断片」という用語は、本明細書では、材料の取り扱いおよび方法を実行するために使用される装置の処理能力を考慮した、任意の適切なサイズの採掘または処理(例えば、粉砕)された材料を意味すると理解される。また、本明細書で使用される場合の「断片」という用語は、「粒子」としてより適切に説明されることが当業者によって理解され得ることにも留意されたい。両方の用語を同義語として使用することが意図される。
【0053】
この方法は、鉱石のヒープを形成し、ヒープ内の鉱石に対して金浸出段階および銅浸出段階を連続的に実行することを含むことができる。
【0054】
あるいはまた、この方法は、鉱石のヒープを形成し、金浸出段階を実行し、その後、金欠乏鉱石の凝集塊を形成し、凝集塊のヒープを形成し、ヒープ内の凝集塊内の金欠乏鉱石に対して銅浸出段階を実行することを含むことができる。
【0055】
あるいはまた、この方法は、鉱石の凝集塊を形成し、ヒープを形成し、ヒープ内の凝集塊の鉱石に対して金浸出段階および銅浸出段階を連続的に実行することを含むことができる。
【0056】
この方法は、連続する浸出段階の間にヒープ洗浄段階を含むことができる。
【0057】
ヒープ洗浄段階は、以下の利点:
(a)ヒープ内またはヒープ内に保持されている浸出液内の残留金の回収、および
(b)ヒープ内での後続の浸出段階の効果に悪影響を及ぼす可能性がある、ヒープ内の成分、またはヒープ内に保持される浸出液の成分に対する希釈効果、
を提供することができる。
【0058】
この方法は、鉱石の凝集塊を形成することと、凝集塊のヒープを形成することと、ヒープ内の凝集塊の鉱石に対して銅浸出段階および金浸出段階を連続的に実行することを含むことができる。
【0059】
あるいはまた、この方法は、鉱石のヒープを形成し、銅浸出段階を実行し、その後、銅欠乏鉱石の凝集塊を形成し、凝集塊のヒープを形成し、ヒープ内の凝集塊内の銅欠乏鉱石に対して金浸出段階を実行することを含むことができる。
【0060】
あるいはまた、この方法は、鉱石のヒープを形成し、ヒープ内の鉱石に対して銅浸出段階および金浸出段階を連続的に実行することを含むことができる。
【0061】
この方法は、連続する浸出段階の間にヒープ洗浄段階を含むことができる。
【0062】
ヒープ洗浄段階は、以下の利点:
(a)ヒープ内またはヒープ内に保持されている浸出液内の残留銅の回収と、
(b)ヒープ内での後続の浸出段階の効果に悪影響を及ぼす可能性がある、ヒープ内の成分、またはヒープ内に保持される浸出液の成分に対する希釈効果と、
を提供することができる。
【0063】
本発明は、鉱石のヒープリーチングに限定されないことに留意されたい。
【0064】
他の多くのオプションのうちの1つは、鉱石のバットリーチングである。別のオプションは、鉱石をダンプリーチングすることである。別のオプションは、鉱石を浸出させる撹拌タンクである。
【0065】
通常、金浸出段階は、酸性条件下で行われる。
【0066】
通常、金浸出段階と銅浸出段階は、酸性条件下で行われる。実際的には、前の浸出が酸性条件下で行われた後、一度の浸出で塩基性条件に変換することは困難であり、またその逆も同様である。
【0067】
金浸出段階は、酸性条件下で実施されるチオ尿素ベースの浸出とすることができる。
【0068】
金浸出段階は、チオ尿素(CS(NH2)2)が、鉱石からの金の浸出を促進する金の錯化/抽出剤として作用する、チオ尿素ベースの浸出とすることができる。
【0069】
本発明は、チオ尿素ベースの浸出に限定されるものではなく、銅の浸出よりも優先的に金の浸出を最適化する任意の適切な浸出条件にまで及ぶ。他のオプションには、例として、臭化物/臭素(または一般的にハロゲン化物)、チオシアン酸塩(SCN-)、およびエチレンチオ尿素が含まれる。
【0070】
金浸出段階は、浸出液中の第二鉄、過酸化物、および過マンガン酸塩などの酸化剤の濃度を制御することを含むことができる。
【0071】
金浸出段階は、銅が浸出しないように、浸出液中の第二鉄濃度を制御することを含むことができる。
【0072】
例えば、いくつかの実施形態では、金浸出段階は、浸出液中の第二鉄濃度が0~5g/Lになるように制御することを含むことができる。
【0073】
浸出液中の第二鉄濃度の選択は、浸出条件に対する第二鉄の影響の観点から重要である。例えば、第二鉄濃度が高すぎる場合、これは、浸出液の酸化電位を例えば440mVの目標電位に制御することに影響を与える可能性がある。また、鉄濃度が高すぎると、(副反応として)鉱石の酸化が始まり、Cuなどの他の元素が意図せず浸出する可能性がある。
【0074】
金浸出段階は、周囲温度条件下で実行することができる。
【0075】
金浸出段階は、ヒープ温度を少なくとも5℃、典型的には少なくとも10℃、より典型的には少なくとも20℃に制御することを含むことができる。
【0076】
金浸出段階は、ヒープ温度を50℃未満、典型的には40℃未満、より典型的には30℃未満に制御することを含むことができる。
【0077】
金浸出段階は、浸出液のpHをpH1~4の範囲に制御することを含むことができる。
【0078】
金浸出段階は、浸出液のpHをpH1~3の範囲に制御することを含むことができる。
【0079】
チオ尿素ベースの金浸出段階(a)の場合にpHが高くなりすぎると、チオ尿素の部分酸化のために存在する第二鉄が溶液から凝集し始めることに留意されたい。
【0080】
金浸出段階は、浸出液のEhを350~550mV、典型的には400~500mVの範囲に制御することを含むことができる。
【0081】
金浸出段階は、金の濃度、および浸出の種類に対する資本コストおよび運転コストなどの要因を考慮して、任意の適切な期間にわたって実行することができる。典型的なヒープリーチングの場合、浸出時間は、少なくとも1か月である。
【0082】
チオ尿素ベースの浸出以外のオプションには、0.75~3.5の範囲のpH、典型的には1.0~3の範囲のpH、より典型的には1.5~2.5の範囲のpH、さらにより典型的には約2.0のpHのチオシアン酸塩浸出が含まれる。チオシアン酸塩浸出は、600~700mVの範囲のEhで実行することができる。他のオプションには、ハロゲン化物、臭化物、ヨウ化物、および塩化物が含まれる。
【0083】
この方法には、鉱石の破砕サイズ、浸出試薬の追加オプション、浸出試薬の濃度、浸出温度、浸出時間、第二鉄イオン濃度、pH、および金浸出段階と銅浸出段階用の浸出液のEhなどが挙げられるが、これらに限定されない採掘および浸出操作条件を選択することが含まれ得る。
【0084】
この方法は、浸出段階からのそれぞれの金含有溶液および銅含有溶液から金および銅を回収し、回収された金および銅の流れと、回収済みの金含有溶液および銅含有溶液を生成するための別個の回収段階を含むことができる。
【0085】
典型的には、このプロセスには、金と銅の別々の浸出段階と、金と銅の別々の回収段階が含まれる。
【0086】
チオ尿素ベースの金浸出段階の場合、この方法は、金回収段階からの回収済み金含有溶液からチオ尿素を除去し、チオ尿素欠乏溶液を銅浸出段階で使用する残留チオ尿素除去段階を含むことができる。
【0087】
金浸出段階からの金/チオ尿素溶液から金を回収するいくつかの方法には、電気化学的、活性炭吸着、イオン交換吸着、金属粉末による凝集、および二酸化硫黄ガスによる還元が含まれる。
【0088】
回収段階からの回収済みの金含有溶液および銅含有溶液は、再生され、浸出液の一部としてヒープにリサイクルすることができる。
【0089】
銅浸出段階は、ヒープ温度を75℃未満、典型的には65℃未満、典型的には60℃未満、典型的には55℃未満、典型的には50℃未満、より典型的には45℃未満に制御することを含むことができる。
【0090】
銅浸出段階は、ヒープ温度を少なくとも10℃、典型的には少なくとも20℃、典型的には少なくとも30℃、より典型的には少なくとも40℃に制御することを含むことができる。
【0091】
典型的には、銅浸出段階は、様々な気候の周囲温度に対応するために、ヒープ温度を55~65℃の範囲に制御することを含む。現在、目標ヒープ温度は、60℃である。
【0092】
銅浸出段階は、工程の活性浸出フェーズ中の浸出液の酸化電位を700mV未満、典型的には660mV未満、典型的には600~660mV、より典型的には630~660mVの範囲に制御することを含むことができ、すべての電位は、標準水素電極に対するものである。酸化電位は、浸出工程中に変化し、多くの銅が浸出すると酸化電位が高くなる可能性が高く、「活性浸出フェーズ」への言及はこの電位の変化を認識することを目的としていることに留意されたい。
【0093】
通常、銅浸出段階は、酸性条件下で行われる。
【0094】
銅浸出段階は、浸出液のpHを3.2未満、典型的には3.0未満、典型的には2.0未満、典型的には1.8未満、典型的には1.5未満、典型的には1.2未満、典型的には1.0未満に制御することを含むことができる。
【0095】
銅浸出段階は、浸出液のpHを0.3より大きく、典型的には0.5より大きく、典型的には1より大きくなるように制御することを含むことができる。
【0096】
典型的には、銅浸出段階は、浸出液のpHを0~2、より典型的には1~1.4、好ましくはpH1.2に制御することを含む。
【0097】
どのような状況においても、最適なpH範囲は、鉱物学、ヒープ温度、浸出組成などを含む様々な要因によって異なる。
【0098】
銅浸出段階には、任意の適切な浸出時間を含めることができる。
【0099】
銅浸出段階は、鉱石からの銅の浸出を首尾よく触媒する、形態および規定の濃度範囲内で、銀を提供することを含むことができる。
【0100】
上述のPCT/AU2016/051024(特許文献1)は、銀の添加を開示している。
【0101】
銅浸出段階は、銅の浸出を触媒するために、Cu1kg当たりAg2g未満の濃度で銀を提供することを含むことができる。
【0102】
通常、銀濃度は、Cu1kg当たりAg1.5g未満である。
【0103】
より典型的には、銀濃度は、Cu1kg当たりAg1g未満である。
【0104】
さらにより典型的には、銀濃度は、Cu1kg当たりAg0.5g未満である。
【0105】
またさらにより典型的には、銀濃度は、Cu1kg当たりAg0.4g未満である。
【0106】
金/銅含有鉱石は、天然に存在する銀を有する状況があり得る。
【0107】
金/銅含有鉱石中の天然に存在する銀は、銅の浸出に対して触媒特性を有している可能性がある。天然に存在する銀は、自然銀、アージェンタイト(Ag2S)、クロラーギライト(AgCl)を、銅鉱物および黄鉄鉱中の天然に存在する銀の包有物として、および銀硫黄塩(例えば、テトラヘドライト(Cu,Fe,Zn,Ag12Sb4S13)、パイラギライト(Ag3SbS3)、プルースタイト(Ag3AsS3))として含むが、これらに限定されない、金/銅含有鉱石中の多くの形態のうちの1つまたは複数であり得る。
【0108】
銅の浸出に対して触媒特性を有する天然に存在する銀が存在する場合、オペレータはこれを考慮して、そうでない場合よりも低い濃度の添加銀を選択する場合がある。
【0109】
例として、銀を添加する必要がない場合がある。
【0110】
この方法は、
(a)鉱石の断片と銀の凝集塊を形成することと、
(b)銅浸出段階において浸出液を用いて、例えば凝集塊のヒープ中において、凝集塊を浸出することと、
を含むことができる。
【0111】
凝集工程(a)は、凝集工程において鉱石断片と銀を共に混合することによって凝集塊を形成することを含むことができる。
【0112】
凝集工程(a)は、鉱石断片に銀を添加し、次に凝集工程で鉱石断片を共に混合することによって凝集塊を形成することを含むことができる。
【0113】
凝集工程(a)は、凝集工程において鉱石断片の凝集塊を形成することと、その後、凝集塊に銀を添加することとを含むことができる。
【0114】
凝集工程(a)で形成された凝集塊は、総銀濃度が低い場合がある。
【0115】
上述したように、凝集塊中の断片は、凝集工程(a)で銀を添加する前にすでに天然に存在する低い銀濃度を有している可能性があり、天然に存在する銀の一部またはすべてが銅浸出の触媒特性を有する可能性がある。実際には、これは、全体の活性銀濃度が必要な濃度範囲内に留まるように、凝集工程(a)中に添加する銀の量を決定する際に考慮すべき要素である。黄銅鉱鉱石などの鉱石中に天然に存在する銀濃度と、凝集工程中に添加される銀とを区別するために、添加された銀を以下「添加銀」または同様の用語と呼ぶ。
【0116】
添加銀および凝集塊中の総銀濃度は、本明細書では凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たりの銀のg数で表される。選択された凝集塊銀濃度(天然に存在する銀および添加銀)を達成するために凝集工程において添加される銀の必要な濃度は、当業者であれば容易に決定することができる。また、特許文献と非特許文献では銀濃度の異なる尺度があり、文献に開示されている異なる範囲を比較するのは困難な場合があることが認識されている。
【0117】
凝集塊中の添加銀濃度は、凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀2g未満、典型的には凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀1.5g未満、より典型的には凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀1g未満と、より典型的にはさらに凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀0.5g未満、さらにより典型的には、凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀0.4g未満とすることができる。
【0118】
凝集工程(a)は、任意の適切な手段および任意の適切な形態によって鉱石断片に銀を添加することを含むことができる。
【0119】
添加銀は、固体の形態とすることができる。例えば、添加銀は、凝集工程で鉱石に添加される黄鉄鉱精鉱中に存在し得る。
【0120】
添加銀は、溶液中に存在していてもよい。
【0121】
添加銀は、浸出液で溶解すると移動可能になる固体の形態であってもよい。鉱石の表面に凝集し得るか、またはさもなければ堆積され得る。
【0122】
典型的には、添加銀は、鉱石断片が混合されている間に、鉱石断片に添加される。
【0123】
凝集工程(a)は、鉱石断片中の銅含有鉱物の粒子の表面上に添加された銀を分散させることを含むことができる。
【0124】
凝集工程(a)は、鉱石断片内に添加された銀を分散させることを含むことができる。
【0125】
凝集工程(a)は、エアロゾルの形態で鉱石断片に銀を添加することを含むことができ、ここで、「エアロゾル」という用語は、空気または気体中の、典型的には粉末の形態の、粒子のコロイド懸濁液を意味すると理解される。
【0126】
凝集工程(a)は、溶液中の銀をミストまたはスプレーの形態で鉱石断片に添加することを含むことができ、「ミスト」および「スプレー」という用語は、空気中に浮遊する銀溶液の小さな液滴を意味すると理解される。
【0127】
銀溶液を鉱石断片に添加するための媒体としてミスト/スプレー/エアロゾルを選択すると、鉱石断片の実質的に大きな質量(および大きな表面積)への低濃度の銀の供給を最大化することが可能になる。ミスト/スプレー/エアロゾルのアプローチにより、鉱石断片のかなりの部分に銀を供給することが可能になる。
【0128】
典型的には、凝集工程(a)は、鉱石断片が混合されている間にミスト、スプレー、またはエアロゾルの形態で鉱石断片に銀を添加することを含むことができる。
【0129】
典型的には、凝集工程(a)は、銅含有鉱石断片の量と比較して低濃度の銀を使用することを含む。
【0130】
凝集工程(a)は、また酸(典型的には硫酸)を鉱石断片および銀と混合することによって凝集塊を形成することを含むことができる。酸は、銀溶液と同時に、またはその前、または後に添加することができる。添加される酸濃度は、乾燥した鉱石1t当たりH2SO4が50kg未満、典型的には乾燥した鉱石1t当たりH2SO4が30kg未満とすることができ、乾燥した鉱石1t当たりH2SO4が10kg未満、または乾燥した鉱石1t当たりH2SO4が5kg未満とすることができる。典型的には、酸濃度は、乾燥した鉱石1t当たりH2SO4が0.5~10kgである。
【0131】
凝集工程(a)は、また銅の浸出を助けることができる微生物を鉱石断片および銀と混合することによって凝集塊を形成することを含むことができる。微生物は、銀溶液と同時に、またはその前、または後に添加することができる。微生物は、中温性または好熱性(中等度または極度の)細菌または古細菌のうちの1種または複数とすることができる。微生物は、細菌または古細菌とすることができる。微生物は、中温性好酸性菌または好熱性好酸性菌とすることができる。
【0132】
凝集工程(a)は、断片を同時に混合および凝集させることを含むことができる。
【0133】
凝集工程(a)は、1つの工程で断片を混合し、その後、次の工程で混合された断片を凝集させることを含んでもよい。混合工程と凝集工程の間には重複があってもよい。
【0134】
鉱石断片には、銀溶液が破片と共に分散するのを促進するための亀裂が含まれていてもよい。
【0135】
添加銀は、水溶液中に存在していてもよい。
【0136】
添加銀は、硝酸銀などの可溶性の形態であってもよい。
【0137】
添加銀は、不溶性の形態であってもよく、または硫酸銀、塩化銀、硫化銀などの難溶性の形態であってもよい。「難溶性」という用語は、本明細書では、0.01モル/リットル未満の溶解度を有する塩を意味すると理解される。
【0138】
添加銀は、凝集工程で鉱石に添加される黄鉄鉱精鉱中に存在し得る。
【0139】
銅浸出段階は、銀以外の添加剤(例えば、上述のPCT/AU2019/050383(特許文献3)に記載されている添加剤)を銅浸出段階に提供することを含んでもよい。
【0140】
PCT/AU2019/050383(特許文献3)は、銅含有鉱石または鉱石の精鉱、または鉱石または精鉱の尾鉱の浸出が、(a)鉱石中の銅鉱物に由来する硫黄と、(b)溶解速度の増加をもたらす添加剤との間で錯体の形成を介して強化され得るという認識に基づいている。
【0141】
例として、硫黄は、銅鉱物上の不動態化層に存在する可能性があり、錯体は、不動態化層内の添加剤と硫黄の錯体である可能性があり、不動態化層を破壊するか、層の形成を減少させるため、銅鉱物から銅を浸出させるためのより大きなアクセスが可能になる。
【0142】
PCT/AU2019/050383(特許文献3)は、以下の分子足場を含む化合物、またはポリマーを通して繰り返される分子足場を含むポリマーを含む、有効な添加剤である窒素含有錯化剤の特定の群を開示している。
【化1】
ここで、
2つの窒素原子は、各々が独立して置換されているか、または非置換であり、各々の窒素原子は、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基からなる群から選択され、
炭素原子は、各々が置換されていても置換されていなくてもよく、
足場内の窒素原子と炭素原子の間の結合は、単結合であっても多重結合であってもよく、
足場内の2つの炭素原子間の結合は、単結合であっても多重結合であってもよい。
【0143】
窒素含有錯化剤添加剤の濃度は、浸出液中に、最大10g/L、典型的には最大5g/L、典型的には最大2.5g/L、典型的には最大1.5g/L、典型的には最大1.25g/L、より典型的には最大1g/Lとすることができる。
【0144】
この方法は、方法中に必要な濃度を維持するために、方法中に窒素含有錯化剤添加剤を浸出液に連続的または定期的に添加することを含んでもよい。
【0145】
添加方法は、浸出前の鉱石に添加してもよい。
【0146】
添加方法は、浸出前に鉱石断片の凝集塊に添加してもよい。
【0147】
例えば、鉱石断片の凝集塊を形成しながら、添加剤を添加してもよい。
【0148】
銅浸出段階(b)は、凝集工程(a)からの凝集塊のヒープに浸出液を供給し、浸出液をヒープに流し、凝集塊から銅を浸出させることと、ヒープから浸出液を収集し、浸出液を処理し、浸出液から銅を回収することを含むことができる。
【0149】
浸出液は、銅の浸出を助ける微生物を含むことができる。
【0150】
微生物は、中温性または好熱性の(中等度または極度の)細菌または古細菌のうちの1種または複数とすることができる。微生物は、細菌または古細菌とすることができる。微生物は、中温性または好熱性の好酸性菌とすることができる。
【0151】
銅浸出段階は、銀と、銀が銅浸出を促進するように銀を活性化する活性化剤との存在下で、浸出液を用いて浸出段階を実施することを含むことができる。
【0152】
活性化剤は、銀が銅の抽出を促進するように銀を活性化できる任意の適切な試薬とすることができる。
【0153】
活性化剤は、塩化物、ヨウ化物、臭化物、およびチオ尿素などの銀錯形成配位子のいずれか1つまたは複数とすることができる。
【0154】
活性化剤は、凝集が実施される場合には凝集前、凝集中、または凝集後を含む、鉱石断片または鉱石精鉱上に液体または固体の形態で噴霧または別の方法で分散させることによって、または浸出液の成分として、方法中に存在することができる。
【0155】
活性化剤が浸出液の成分として方法中に存在する場合、この方法は、浸出液中に活性化剤の選択された濃度または濃度範囲を提供することを含むことができる。
【0156】
浸出液中の活性化剤の選択された濃度または濃度範囲は、以下のいずれか1つまたは複数の積極的な工程:
(a)浸出液への活性化剤の添加、
(b)浸出液からの活性化剤の除去、
(c)凝集工程における活性化剤の添加、
(d)鉱石中の可溶性活性化剤を考慮した異なる鉱石種類の混合、
(e)鉱石中の活性化剤の濃度に関する水源/水の種類の選択および配合/混合(例えば、海水の使用)、
(f)浸出プロセスにおける可溶性活性化剤の濃度に影響を与える可能性のある、浸出プロセスへの1つまたは複数の投入物へのその他の人為介入
の結果であり得る。
【0157】
活性化剤の選択された濃度または濃度範囲は、浸出液、鉱石、または精鉱中の活性化剤のバックグラウンド濃度と異なっていてもよい。本発明は、所与の鉱石または精鉱に対する活性化剤の必要な濃度または濃度範囲の評価を行うこと、および利用可能な水源(複数可)および関連条件を評価し、活性化剤の必要な濃度または濃度範囲が存在するように、例えば上記の工程(a)~(e)を考慮して、プロセスを制御することを必要とする。
【0158】
この方法は、塩化物、ヨウ化物、臭化物、およびチオ尿素などの任意の1つまたは複数の銀錯体形成配位子の濃度を監視することを含むことができる。
【0159】
銅浸出段階は、塩化物、ヨウ化物、臭化物、およびチオ尿素などの任意の1つまたは複数の銀錯形成配位子から選択される低濃度または濃度範囲の活性化剤の存在下で実施することができる。
【0160】
塩化物、ヨウ化物、臭化物、チオ尿素、その他の銀錯体配位子に関する「低濃度」という用語の意味は、鉱石の鉱物学、鉱石断片の物理的特性(例えば、断片サイズおよび粒子サイズ分布)、凝集塊の特性(例えば、サイズおよび空孔率)、鉱石中の銅濃度、(鉱石断片中に天然に存在し、凝集塊の一部として添加される)銀濃度、浸出液の組成、およびヒープリーチングの場合、ヒープの多孔性を含むヒープの特性を含む多くの要因によって、どのような状況においても異なる。
【0161】
低濃度の塩化物は、浸出液中において、最大5g/L、典型的には最大4g/L、典型的には最大2.5g/L、典型的には最大1.5g/L、典型的には最大1.25g/Lの塩化物、より典型的には最大1g/Lであり得る。
【0162】
低濃度の塩化物は、0.2g/Lより大きく、典型的には0.5g/Lより大きく、より典型的には0.8g/Lより大きくてもよい。
【0163】
低濃度のヨウ化物および臭化物は、塩化物の場合と同じであり得る。
【0164】
低濃度のチオ尿素は、浸出液中において、10g/L未満であり得る。
【0165】
典型的には、塩化銀、ヨウ化銀、または臭化銀の沈殿を抑制するために、浸出液がチオ硫酸塩または他の添加剤を含有する必要はない。
【0166】
この方法は、浸出段階の前に、採掘鉱石のサイズを低減することを含んでもよい。
【0167】
例として、この方法は、浸出段階の前に採掘鉱石を粉砕することを含んでもよい。採掘鉱石は、任意の適切な手段を使用して粉砕することができる。
【0168】
この方法は、浸出段階の前の一次破砕工程で採掘鉱石を破砕することを含んでもよい。
【0169】
「一次粉砕」という用語は、本明細書では、銅が硫化物の形態である銅含有鉱石の場合、最大寸法250~150mmまで鉱石を粉砕することを意味すると理解される。異なる貴金属を含む鉱石では、最大寸法が異なる場合があることに留意されたい。
【0170】
この方法は、採掘鉱石を一次破砕工程で破砕し、次に凝集工程(a)の前に二次、場合によっては三次、場合によっては四次破砕工程で破砕することを含むことができる。
【0171】
本発明はまた、金/銅含有材料を浸出させるための浸出操作であって、
(a)金浸出液を用いて材料から金を浸出させて金含有溶液を生成し、溶液から金を回収する、金浸出ユニット操作と、
(b)銅浸出液を用いて材料から銅を浸出させて銅含有溶液を生成し、溶液から銅を回収する、銅浸出ユニット操作と、
を含む、浸出操作を提供する。
【0172】
採掘された物質は、硫化銅含有鉱石とすることができる。
【0173】
本発明はまた、金/銅含有材料を浸出させるためのヒープリーチング操作であって、
(a)採掘材料および/または採掘材料の凝集した断片のヒープと、
(b)ヒープ内の材料に対して金浸出段階を実行するために金浸出液をヒープに供給する浸出液供給ユニットと、
(c)金浸出段階の前または後のいずれかに、ヒープ内の材料に対して銅浸出段階を実行するために銅浸出液をヒープに供給する浸出液供給ユニットと、
(d)金浸出段階の過程でヒープから排出された金含有溶液から金を回収し、回収された金ストリームと回収済み金含有溶液とを生成する金回収ユニットと、
(e)銅浸出段階の過程でヒープから排出された銅含有溶液から銅を回収し、回収された銅ストリームと回収済みの銅含有溶液とを生成するための銅回収ユニットと、
を含む、ヒープリーチング操作を提供する。
【0174】
ヒープリーチング操作は、回収済みの金含有溶液を再生するための再生ユニットを含むことができる。
【0175】
ヒープリーチング操作は、回収済みの銅含有溶液を再生するための再生ユニットを含むことができる。
【0176】
ヒープは、複数のリフトを含むことができる。
【0177】
採掘された物質は、金/硫化銅含有鉱石とすることができる。
【0178】
採掘された材料は、金/硫化銅含有廃棄物とすることができる。
【0179】
本発明は、添付の図面を参照しながら、単なる例として以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【
図1】本発明に係る、採掘材料から金および銅を浸出させる方法の一実施形態のフローシートである。
【
図2】本発明に係る、採掘材料から金および銅を浸出させる方法の一実施形態のフローシートである。
【
図3】本発明に係る、採掘材料から金および銅を浸出させる方法の一実施形態のフローシートである。
【
図4】本発明の方法の実施例1における金抽出対時間のグラフである。
【
図5】本発明の方法の実施例2~4における銅抽出対時間のグラフである。
【
図6】本発明の方法の実施例5~7における銅抽出対時間のグラフである。
【
図7】本発明の方法の実施例8における金抽出対時間のグラフである。
【
図8】本発明の方法の実施例8における銅抽出対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0181】
本発明により、金/銅含有採掘鉱石などの金/銅含有材料から一段階で金を浸出させ、金/銅含有採掘鉱石などの金/銅含有材料から本方法の別の一段階で効率的かつコスト効率よく銅を浸出させることが可能になる。
【0182】
一部の銅鉱床には大量の金が含まれている。しかしながら、そのような鉱床の金グレードは、シアン化物を使用する従来の金浸出プロセスを導入できるほど高くない可能性がある。たとえシアン化物を使用して金を抽出したとしても、残留物を酸浸出による銅の安全な抽出に適したものにするためには、高価な中和プロセスが必要となる。
【0183】
本発明の実施形態は、残留物の中間中和を必要とせずに、緩やかな条件を使用して金を回収し、続いて銅を抽出する。さらなる利点は、金の浸出に使用される試薬が銅の浸出にも有益であり得ることである。「緩やかな条件」という用語には、例として、周囲温度(25℃)で実行されるチオ尿素ベースの浸出が含まれる。
【0184】
実験は、周囲温度(25℃)で実行されるチオ尿素ベースの浸出など、穏やかな条件下で金の最大60%を溶液に浸出させることが可能であることを示している。
【0185】
これらの実験は、銅が鉱石中に残り、その後の浸出工程で銅を回収する機会を提供することも示している。各々の浸出段階で他の不要な要素が共抽出されないというこの特徴は、重要な特徴である。
【0186】
本発明は、一部の銅堆積物に含まれる金を溶液中に抽出することを可能にする。金の回収は、上述の国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)の特許明細書に記載され特許請求されている出願人の技術などの技術を使用する銅浸出作業に付加価値を与える。
【0187】
図1~
図3は、本発明に係る、金/銅含有鉱石から金および銅を浸出させる方法の3つの実施形態のフローシートである。これらは、本発明の唯一の実施形態ではない。
【0188】
図1のフローシート
図1のフローシートは、
(a)図の左側のボックス内で、概して符号3で識別される金浸出操作と、
(b)図の右側のボックス内で、概して符号5で識別される銅浸出操作と、
を含む。
【0189】
図を参照すると、金/銅含有採掘材料、この実施形態では、鉱石の破砕および粉砕された断片が、ヒープに形成され、浸出液35が、ヒープリーチング段階7でヒープの上面に供給され、ヒープに浸透させる。
【0190】
金は、金/銅含有採掘鉱石から浸出され、浸出段階7で溶液に取り込まれる。
【0191】
金ヒープリーチング段階7の終わりに、金欠乏鉱石41は、以下にさらに説明されるように、銅浸出操作5に移送されて処理される。金浸出段階7の終了は、浸出時間、または閾値濃度である残りの金、または任意の他の適切な要因によって決定することができる。
【0192】
浸出段階7から排出された金含有溶液37(図中「Au“PLS”」と称する)は、金回収段階11に移送される。
【0193】
金は、金回収段階11において金含有溶液37から回収され、排出され、さらに処理されて金生成物13が生成される。
【0194】
回収済み溶液39は、金回収段階11から排出され、浸出段階7に移送され、浸出段階7への供給浸出液の一部となる。
【0195】
金浸出段階7は、他の適切な容器の撹拌バット/タンク内での浸出など、ヒープリーチング以外の任意の適切な段階であってよい。
【0196】
図1に示される実施形態では、金浸出段階7は、周囲温度(25℃)で実行されるチオ尿素ベースの浸出であり、この段階に供給される浸出液は、pH1.5、チオ尿素濃度5g/L、および鉄濃度0.3g/Lを有する。
【0197】
どのような状況においても、ヒープリーチング時間は、様々な要因によって異なるが、典型的には、少なくとも数日、最大で数か月となるであろう。
【0198】
上述のpH、チオ尿素濃度、および鉄濃度は、周囲温度でマイナス2mmの粒子に対して実施された撹拌反応器試験の条件であることに留意されたい。
【0199】
また、周囲温度は、場所および季節によって大きく異なり、ヒープ内の温度が氷点以上である限り、金は浸出するが、ヒープ温度が20℃または25℃の場合よりもゆっくりと浸出することにも留意されたい。チオ尿素の浸出は、典型的には、ほとんど熱が発生しない。
【0200】
銅浸出操作5では、金欠乏鉱石41は、凝集ユニット15に移送され、以下の供給材料:
(b)銀17(この実施形態では銀溶液として(しかしながら、固体の形態も可能)、典型的には凝集塊中の鉱石中の銅1kg当たり銀5g未満の銀の添加濃度)と、
(c)任意の適切な濃度の硫酸19と、
(d)任意の適切な種類および任意の適切な濃度の微生物21と、
(e)活性化剤23(例えば、塩化物、ヨウ化物、臭化物、およびチオ尿素を含む銀錯体配位子)と、
を用いて凝集される。
【0201】
凝集ユニット15は、凝集塊用の供給材料を混合し、供給材料を凝集させるためのドラム、コンベヤ(または他の装置)を含む任意の適切な構造とすることができる。凝集塊用の供給材料の混合および凝集は、同時に行われてもよい。あるいはまた、供給材料の混合を最初に実行し、必要な程度まで混合が完了した後に、(例えば、酸の添加によって開始される)凝集を実行してもよい。さらに、供給材料を添加し、次いで混合し、凝集させるタイミングは、凝集塊の最終用途要件を満たすように選択することができる。例えば、状況によっては、鉱石断片の混合を開始し、その後、凝集工程内の異なる開始時間と終了時間に、溶液中の銀または固体形態の銀、酸、および微生物をこの順序で徐々に添加することが好ましい場合がある。特定の例として、状況によっては、鉱石断片の混合を開始し、次に溶液または固体の形態の銀と酸を共に添加し、次に凝集工程の異なる開始時間と終了時間に微生物を添加することが好ましい場合がある。
【0202】
出願人は、ドラムミキサーなどの適切なミキサーで鉱石断片を混合しているときに、銀を細かい霧またはスプレーの溶液として、またはエアロゾルの固体粒子として鉱石断片に添加することが、鉱石断片上に銀を望ましい分散状態で実現する特に適切な方法であることを発見した。
【0203】
出願人の名による上述の国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)の特許明細書は、適切な凝集条件、銀に加えて添加剤の使用、および銅浸出操作5の他の段階に関する情報を提供することに留意されたい。
【0204】
凝集ユニット15で生成された凝集塊は、続いてヒープ25の構築に使用される。
【0205】
続いて、適切な浸出液43をヒープに供給することにより、ヒープ25内の凝集塊中の金欠乏鉱石から銅が浸出される。銅浸出段階は、適切な時間の間、稼働する。典型的には、銅浸出段階は、少なくとも数か月間、稼働する。
【0206】
ヒープ25は、任意の適切なヒープとすることができる。
【0207】
例として、ヒープは、出願人の名による国際出願PCT/AU2011/001144(WO2012/031317)の特許明細書に記載されているタイプのものとすることができ、国際出願公開におけるヒープの構築およびヒープの浸出プロセスの開示は、相互参照により本明細書に援用される。
【0208】
凝集ユニット15で生成された凝集塊は、ヒープ構築現場に直接移送することができる。あるいはまた、凝集塊を貯蔵し、必要に応じてヒープとして使用することもできる。凝集ユニット15とヒープ25は、近接していてもよい。しかしながら、同様に、凝集ユニット15とヒープ25は近接していなくてもよい。
【0209】
銅含有溶液45は、ヒープ25から排出され、銅回収ユニット27に移送される。
【0210】
銅は、銅含有溶液45から回収され、下流の処理ユニットで処理されて銅生成物29が形成される。
【0211】
回収済みの銅溶液47は、銅回収ユニット27から排出され、再生ユニット31に移送されて再生され、ヒープ25に再循環される浸出液43を生成する。必要に応じて、補給浸出液を添加してもよい。
【0212】
図2のフローシート
図2のフローシートは、
概して符号3で識別される金浸出操作と、
概して符号5で識別される銅浸出操作と、
を含む。
【0213】
図2のフローシートには、
図1のフローシートの単位操作がすべて含まれており、同じ構成を説明するために同じ符号が使用されている。
【0214】
図2のフローシートはまた、回収済み金溶液39の一部49をチオ尿素除去段階31に移送すること、溶液からチオ尿素を除去すること、およびチオ尿素欠乏溶液51を固体液体ユニット9から銅浸出操作5へ移送される金欠乏鉱石ストリーム41に移送することを含む。
【0215】
チオ尿素欠乏溶液51は、銅浸出操作5の補給溶液として必要となる場合がある。
【0216】
チオ尿素除去オプションの1つは、活性炭吸着であり、その後チオ尿素は、炭素から脱着され、プロセスで再利用される。
【0217】
図3のフローシート
図3のフローシートは、銅浸出操作5が金浸出操作3に先行するという点で、
図1および
図2のフローシートとは逆の順序である。
【0218】
同じ符号が、同じ構成を説明するために使用される。
【0219】
この実施形態では、ヒープリーチング段階25の終わりに、金浸出操作3の金浸出段階7が既存のヒープで実行される。
【0220】
具体的には、銅浸出からの銅欠乏固体は、(破線53で示されるように)物理的に移動しない。
【0221】
チオ尿素ベースの金浸出溶液が、浸出段階の間に洗浄工程を挟んで、ヒープに導入されるだけである。
【0222】
ヒープリーチング操作は、銅浸出が完了した後に既存のリフトに新しいリフトを追加する複数のリフト操作であり得る。
【実施例】
【0223】
<実施例1>
チオ尿素を使用した金浸出段階、固体/液体分離段階、および国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)に記載されている出願人の技術の上述の特許明細書に基づく銅浸出段階用の供給原料として使用されるように移送された金欠乏固体による、実験室規模の試験作業が、出願人によって
図1のフローシートに従って実施された。
【0224】
試験作業の結果は次の通りである。
(a)金浸出段階では、約45.5%の金の回収、つまり鉱石からの金の抽出が達成された。
(b)48時間後の金浸出段階からの金含有溶液中に銅は検出されなかった。
【0225】
図4は、試験作業における金の抽出対時間のグラフである。
【0226】
試験作業の結果は、
図1および
図2に示されるように、最初に周囲温度に近い温度(細菌なし)で金が抽出され、続いて高温で、細菌を使用して、金浸出段階よりも酸化性の高い条件下で、銅が浸出される、2段階のヒープリーチングプロセスの実行可能性を示している。
【0227】
<実施例2~8>
以下の実施例は、以下の鉱石サンプルに対して実行された浸出試験を説明する。
【表1】
【表2】
【表3】
【0228】
実施例2~8は次のように要約される。
・実施例2~4は、鉱石タイプAに対する金浸出とその後の銅浸出のシーケンスである。
・実施例5~7は、鉱石タイプAに対する銅浸出とその後の金浸出のシーケンスである。
・実施例8は、鉱石タイプBの金浸出とその後の銅浸出のシーケンスである。
【0229】
<実施例2>
金浸出工程
実施例2は、
図1のフローシートに従って実施された。
【0230】
約2mmの大きさに段階粉砕された鉱石タイプAの300gを、以下の組成:3g/Lの硫酸第二鉄および5g/Lのチオ尿素を有するpH1.5の溶液700gと、空気を反応器内に1L/分でバブリングしながら混合した。反応器の内容物は、オーバーヘッドインペラを使用して撹拌され、試験中、温度は、水浴中で25℃に維持された。浸出は、10日間維持され、事前に設定された時間に液体のサブサンプルが収集された。10日間浸出させた後、残留物を溶液から濾過した。固体残留物を、500mLロットのpH1.5溶液を2回使用して連続的に洗浄した。続いて、各々の洗浄工程で、十分に混合し、続いて10分間濾過した。酸洗浄後、浸出残留物を1Lの脱イオン水を使用して10分間洗浄した。次いで、スラリーを濾過して、洗浄ケーキを生成し、次いで、すべての水分が除去されるまで、これを40℃で乾燥させた。
【0231】
銅浸出工程
上記の金浸出工程からの残留物は、続いて銅浸出工程に供された。銅浸出工程では、20%のスラリー密度を目標にした。金の浸出工程から回収されたすべての残留物は、前処理を行わずに浸出された。
【0232】
【0233】
試験は、pH1.2目標および700mVのEh目標で、水浴を使用して60℃に維持された。30日間の運転後に細菌接種材料を導入した。Cuの抽出速度を追跡するために、所定の時間にサンプルが採取され、元素組成が分析された。試験の終了時に、残留物を溶液から濾過した。固体残留物を、500mLロットのpH1.2溶液を2回使用して連続的に洗浄した。続いて、各々の洗浄工程で、十分に混合し、続いて10分間濾過した。酸洗浄後、浸出残留物を1Lの脱イオン水を使用して10分間洗浄した。次いで、スラリーを濾過して、洗浄ケーキを生成し、次いで、すべての水分が除去されるまで、これを40℃で乾燥させた。
【0234】
最終的な固体残留物は、金およびその他の元素について分析された。金の分析は、残留物中に依然として存在するすべての金の指標を与える耐火試験によって行われた。また、シアン化物浸出を使用して残留物を分析して、浸出残留物中に依然として存在するシアン化物可溶性金を測定した。
【0235】
<実施例3>
金浸出工程
実施例3は、チオ尿素濃度を2.5g/Lに減少させたことを除いて、鉱石タイプAについて実施例2と同様に実施された。他のすべての工程は、同様であった。
【0236】
銅浸出工程
銅浸出段階は、実施例2と同様の方法で実施された。
【0237】
<実施例4>
金浸出工程
実施例3は、チオ尿素濃度を1.25g/Lに減少させたことを除いて、鉱石タイプAについて実施例2と同様に実施された。他のすべての工程は、同様であった。
【0238】
銅浸出工程
銅浸出段階は、実施例2と同様の方法で実施された。
【0239】
<実施例5>
実施例5は、
図3のフローシートに従って実施された。
【0240】
銅浸出工程
鉱石タイプAが、バルク銅浸出工程に供された。鉱石は、約2mmの大きさまで粉砕されていた。銅浸出工程では、20%のスラリー密度を目標にした。浸出溶液の組成は、次の通りである。
【表5】
【0241】
試験はホットプレートを使用し、pH1.2目標、700mVのEh目標で60℃に維持された。23日間の運転後に細菌接種材料を導入した。Cuの抽出速度を追跡するために、サンプルは、所定の時間に採取された。浸出期間の終わりに、残留物を液体から分離し、pH1.2の酸性溶液で徹底的に洗浄した。次いで、洗浄された固体を、脱イオン水を使用してすすぎ、続いて固液分離した。洗浄された固体を40℃で乾燥させた。乾燥固体を混合し、この実施例および実施例6および7における後続の金浸出工程のために、代表的には300gの断片に分割した。
【0242】
金浸出工程
上記の銅浸出工程で説明した銅浸出残留物の一部を、以下の組成:3g/Lの硫酸第二鉄および5g/Lのチオ尿素を有するpH1.5の溶液700gと混合し、空気を1L/分で反応器にバブリングした。反応器の内容物は、オーバーヘッドインペラを使用して混合され、試験中、温度は、水浴中で25℃に維持された。浸出は、10日間維持され、事前に設定された時間に液体のサブサンプルが収集された。10日間浸出させた後、残留物を溶液から濾過した。固体残留物を、500mLのpH1.5の水を使用して、十分に混合し、続いて各々の洗浄段階で10分間濾過することによって連続的に洗浄した。酸洗浄後、浸出残留物を1Lの脱イオン水を使用して10分間洗浄した。次いで、スラリーを濾過して、洗浄ケーキを生成し、次いで、すべての水分が除去されるまで、これを40℃で乾燥させた。
【0243】
<実施例6>
実施例6は、
図3のフローシートに従って実施された。
【0244】
銅浸出工程
銅浸出工程は、実施例5で説明したバルク銅浸出の一部として実施した。次に、浸出残留物の一部を金浸出工程に使用した。
【0245】
金浸出工程
銅浸出工程からの残留物は、実施例5の金浸出工程と同様に実施された。しかしながら、チオ尿素濃度は、2.5g/Lであった。他のすべての試験条件は、実施例5に記載の通りである。
【0246】
<実施例7>
実施例7は、
図3のフローシートに従って実施された。
【0247】
銅浸出工程
銅浸出工程は、実施例5で説明したバルク銅浸出の一部として実施した。次に、浸出残留物の一部を金浸出工程に使用した。
【0248】
金浸出工程
銅浸出工程からの残留物は、実施例5の金浸出工程と同様に実施された。しかしながら、チオ尿素濃度は、1.25g/Lであった。他のすべての試験条件は、実施例5に記載の通りである。
【0249】
<実施例8>
金浸出工程
実施例8は、鉱石が粉砕された鉱石タイプBであり、浸出期間もわずか6日であったことを除いて、実施例2と同様に実施された。酸洗浄工程の前に、pH1.5の酸性溶液中のチオ尿素で洗浄することを含む1つの追加の洗浄工程を除いて、他のすべての工程は同様であった。
【0250】
銅浸出工程
金浸出工程からの残留物100gを分割し、銅浸出工程に使用した。この場合、10%のスラリー密度を目標とした。次の組成の低硫酸塩浸出溶液を使用した。
【表6】
【0251】
試験は、ホットプレートを使用し、pH1.2目標で60℃に維持された。試験は、ジャケット付き反応容器を使用し、pH1.2目標で、Ehは目標なしで60℃に維持された。細菌接種材料も銅浸出工程の開始時に導入された。他の実施例と同様に、Cuの抽出速度を追跡するために、サンプルは、所定の時間に採取された。
【0252】
<結果>
鉱石タイプA試験-最初に金の浸出、続いて銅の浸出
金の浸出結果
【表7】
【0253】
金抽出量は、チオ尿素浸出によって抽出された可溶性金(すなわち、シアン化物可溶性金)の割合として計算された。
【0254】
金の浸出結果は、5g/Lのチオ尿素の存在下で、64%で最大のAu抽出が起こったことを示している(実施例2)。2.5g/L(実施例3)および1.25g/L(実施例4)のチオ尿素では、金の抽出はそれぞれ、27%および35%であった。
【0255】
銅の浸出結果
実施例2~4の銅の浸出結果を
図5にまとめる。
【0256】
図は、銅の抽出対時間のグラフである。
【0257】
グラフには、30日目の線が含まれており、これは第一鉄酸化微生物および硫黄酸化微生物が各々の実施例の浸出に添加されたときであることを示している。
【0258】
グラフは、試験された条件下での実施例2~4のCu浸出工程において供給原料中のCuの65%~70%が浸出したことを示している。
【0259】
これらの結果は、Cu浸出前のAu浸出工程がCu抽出を妨げず、良好なCu抽出が達成できることを示している。
【0260】
銅抽出工程は、国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)の上述の特許明細書において出願人によって以前に示されたように、さらに最適化することができる。
【0261】
鉱石タイプA試験-最初に銅の浸出、続いて金の浸出
銅の浸出結果
実施例5、6、および7に関して記載したように、バルク銅浸出を実施し、次いでバルク浸出残留物を実施例5~7に記載したAu浸出試験に使用した。
【0262】
【0263】
グラフには23日目の線が含まれており、これは各々の実施例の浸出に細菌が添加されたときであることを示している。
【0264】
グラフは、試験された条件下で37日間のバルクCu浸出工程で供給原料中のCuの65%が浸出したことを示している。
【0265】
銅抽出プロセスは、国際出願PCT/AU2016/051024(特許文献1)、PCT/AU2018/050316(特許文献2)、およびPCT/AU2019/050383(特許文献3)の上述の特許明細書において出願人によって以前に示されたように、最適化することができる。
【0266】
金の浸出結果
実施例5~7の銅浸出工程からの残留物の浸出は、金が依然として残留物から有意に抽出することができることを示した。
【0267】
例えば、浸出溶液のデータに基づくと、48時間以内に最高の抽出が得られることがわかった。
【0268】
浸出結果は、銅が最初に浸出されるときに、高い金の抽出が得られたことを示している。これは、実施例2、3、および4(上の表を参照)と比較して、実施例5、6、および7(下の表を参照)の金抽出値が高いことによって示される。
【0269】
以下の表を参照すると、実施例5では、5g/Lのチオ尿素の存在下で86%の可溶性金が抽出された。同様に、実施例6(2.5g/Lチオ尿素)および実施例7(1.25g/Lチオ尿素)では、それぞれ90%および73%の金が抽出された。
【0270】
高い抽出量は、おそらく黄銅鉱および/または黄鉄鉱の結晶格子に存在する金の一部によるものと考えられる。このような金は一般的に、耐火性金、または「不可視金(invisible gold)」と呼ばれる。銅浸出工程を最初に実行すると、黄銅鉱/黄鉄鉱結晶格子の歪みが発生する。これにより、金の浸出剤が残された金に到達してその溶解を引き起こすための空隙(または経路)が作り出される。黄銅鉱および/または黄鉄鉱の格子がまだ無傷である場合、このプロセスは不可能である。このような場合、鉱石が多孔質であるか、または金が浸出剤にさらされるほど鉱石が十分に細かく粉砕されている場合、通常、金のごく一部のみが浸出に利用できる。重要なことは、金を保持している硫化鉱物を完全に破壊することは、その後の金浸出剤による溶解のために金の大部分を解放するために必ずしも必要ではないことである。
【0271】
銅の浸出残留物を浸出させる前に、その残留物を徹底的に洗浄するとよい。これは、溶液中に存在する銅がチオ尿素試薬を消費してしまうためである。銅は、銅-チオ尿素錯体を形成し、これは、金の浸出に利用可能であるチオ尿素が少なくなる可能性があることを意味する。出願人は、金の浸出に対する銅の干渉を防ぐために、銅を何とか徹底的に洗浄した。このような徹底的な洗浄/すすぎは、ヒープリーチングでは実際には実用的ではなく、溶解した銅の一部は、常にヒープ内に残ることに留意されたい。したがって、実際には、ヒープリーチングの場合、実際に行うことができる場合は、ある程度のすすぎを行うことが好ましい。
【表8】
【0272】
鉱石タイプB試験-最初にAu浸出、続いてCu浸出-実施例8
図7は、実施例8における鉱石タイプBの金抽出対時間のグラフである。
【0273】
グラフは、金の30%近くが3日以内に抽出されたことを示している。
【0274】
Au浸出試験の残留物は、前述したように銅浸出に供された。
【0275】
【0276】
グラフは、60日以内に100%近くの銅が抽出されたことを示している。
【0277】
これらの結果は、最初に金を浸出させ、続いて銅を浸出させることによって、鉱石から追加の価値を抽出できることを示している。
【0278】
銅の浸出工程は、金の抽出工程の影響を受けなかった。
【0279】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記の本発明の実施形態に対して多くの修正を加えることができる。
【0280】
例として、
図1および
図2に関連して説明した実施形態は、鉱石断片に対する金ヒープリーチング操作3と、その後の金欠乏鉱石41の凝集塊に対する銅浸出操作5を含むが、本発明は、それに限定されず、鉱石断片または鉱石断片の凝集塊の単一のヒープを形成し、その材料に対して金浸出段階および銅浸出段階を、段階の間に洗浄段階を挟んで連続して実行することにまで及ぶ。
【0281】
例として、
図1~
図3に関連して説明した実施形態は、金/銅含有鉱石に関するものであるが、本発明は、それに限定されず、一般的に、廃棄物として分類された材料を含む金/銅含有材料にまで及ぶ。
【0282】
例として、本発明は、金/銅含有鉱石の精鉱、および例えば浮遊選鉱、または鉱石または精鉱の他の下流処理によって生成される鉱石または精鉱の尾鉱のうちの任意の1つまたは複数の浸出にまで及ぶ。
【0283】
例として、本発明は、金/銅含有材料の断片の凝集塊の浸出にまで及ぶ。
【0284】
例として、
図1~
図3に関連して説明した実施形態は、金および銅の浸出に関するものであるが、本発明は、それに限定されず、採掘材料からの金、銅、および他の有価金属(例えば、銀)の浸出にまで及ぶ。
【0285】
例として、
図1~
図3および実施例に関連して説明した実施形態には特定の添加剤の使用が含まれるが、本発明は、それに限定されない。例えば、凝集塊に加えられた黄鉄鉱精鉱に耐火性の金が含まれている(つまり、金は黄鉄鉱に閉じ込められており、精鉱に含まれる硫化銅鉱物にはあまり含まれていない)場合、最初に銅を浸出させることにより、黄鉄鉱を酸化して金を遊離させ、その後の金浸出工程で回収するという利点も得られる。
【国際調査報告】