(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】バリシチニブによる手湿疹の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240711BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240711BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P37/08
A61P17/04
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505381
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022038744
(87)【国際公開番号】W WO2023009767
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】グロン,スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】リードル,エリザベス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC18
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD63
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZC20
(57)【要約】
製剤及び投与計画を含む、バリシチニブで手湿疹を治療する方法。一定量のバリシチニブは、1つ以上の賦形剤を含む4mgの錠剤又は丸薬として投与され得る。一定量のバリシチニブは、毎日又は何らかの他の頻度で投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手湿疹の治療を必要とする患者を治療する方法であって、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的塩又は製剤を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記一定量のバリシチニブが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バリシチニブ投与前の0日目の前記患者のHECSIスコアを評価することと、
バリシチニブを投与する前記工程の後に、前記患者のHECSIスコアを再評価することと、を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者のHECSIスコアが、バリシチニブの毎日の投与を16週間受けた後に再評価され、16週間後に評価された前記HECSIスコア値が、0日目に評価された前記HECSIスコアより少なくとも75%低い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
0日目に前記患者のEASIスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、前記患者のEASIスコアを再評価することと、を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の検査:
前記患者のNRS痒みスコア、
vIGA-ADスコア、
前記患者のHADSスコア、
前記患者のHRQoLスコア、
前記患者のIGAスコア、
前記患者のmTLSSスコア、
前記患者のWPAIスコアのうちの1つ以上において、0日目の前記患者のスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、これらの検査における前記患者のスコアを再評価することと、を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バリシチニブの1日用量が4mgである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
手湿疹の治療のための医薬の製造におけるバリシチニブの使用。
【請求項9】
手湿疹の治療のための丸薬の製造におけるバリシチニブの使用。
【請求項10】
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
【請求項12】
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又は丸薬形態のバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
【請求項13】
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、請求項11又は12に記載の使用のための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
【請求項14】
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコア、
3以上のIGAスコア、
HEに罹患した1%以上のBSA、及び
7以上のEASIスコアのうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコアを満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、投与前に以下の基準:
3以上のIGAスコアを満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、投与前に以下の基準:
HEに罹患した1%以上のBSAを満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、投与前に以下の基準:
7以上のEASIスコアを満たす、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関する。より詳細には、本発明は、中等度から重度のアトピー性手湿疹(Hand Eczema、HE)を有する患者の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
バリシチニブは、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase、JAK)阻害剤の薬理学的クラスに属する承認された医薬である。ヤヌスキナーゼは、サイトカインシグナル伝達において役割を果たす4種のプロテインチロシンキナーゼ(JAK1、JAK2、JAK3、及びチロシンキナーゼ2[tyrosine kinase 2、TYK2])のファミリーである。バリシチニブは、JAK1及びJAK2に対する選択性及びそれらの阻害を示し、JAK3又はTYK2の阻害に対して、より低い効力を有する(Fridman JS,et al.2010,「Selective inhibition of JAK1 and JAK2 is efficacious in rodent models of arthritis:preclinical characterization of INCB028050,」J Immunol.2010;184(9):5298-5307)。単離された酵素アッセイにおいて、バリシチニブは、それぞれ、5.9、5.7、53nM、及び400nMを超える半数阻害濃度値で、JAK1、JAK2、TYK2、及びJAK3の活性を阻害した(同文献参照)。ヤヌスキナーゼは、造血、炎症、及び免疫機能に関与するいくつかのサイトカイン及び成長因子に対する細胞表面受容体からの細胞内シグナルを伝達する酵素である(例えば、インターロイキン[interleukin、IL]-2、IL-6、IL-12、IL-15、IL-23、インターフェロン、及びJAKファミリーを介した顆粒球マクロファージコロニー刺激因子シグナル)。(O’Shea et al.,「The JAK-STAT pathway:impact on human disease and therapeutic intervention,」Annu Rev Med.2015;66:311-28。)細胞内シグナル伝達経路内で、JAKは、シグナル伝達物質及び転写活性化因子(signal transducers and activators of transcription、STAT)をリン酸化して活性化し、これが細胞内の遺伝子発現を活性化する。バリシチニブは、JAK1及びJAK2酵素活性を部分的に阻害し、STATのリン酸化及び活性化を低減させ、炎症、細胞活性化、及び主要な免疫細胞の増殖を低減させることによって、これらのシグナル伝達経路を調節する。(O’Shea et al.,「JAKs and STATs in immunity,immunodeficiency,and cancer,」N Engl J Med.Review2013 Jan 10;368(2):161-70。)
【0003】
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis、AD)は、アトピー性湿疹としても知られており、一般的に慢性であり、再発性であり、非常に症候性の炎症性皮膚疾患である。ADを有する患者は、滲出性、痂皮性、びらん性の小水疱、丘疹、又は紅斑として存在する急性であり得る皮膚病変を有し得る。患者はまた、厚くかつ表皮剥離した斑点を特徴とする亜急性皮膚変化、又は苔癬化したわずかに色素沈着した表皮剥離した斑点を有する慢性病変を呈する場合がある(Bieber 2010)。疾患重症度は、皮膚炎症の程度に応じて、軽度、中等度、又は重度であり得る。臨床診療において、ADの重症度を評価する場合、皮膚病変の位置、及び痒みが睡眠に及ぼす影響、及び全体的な生活の質(Quality of Life、QoL)などの更なる特徴が考慮される。皮膚病変の位置は、特に手などの露出した機能的に重要な身体領域が罹患している場合に重要であると考えられる。バリシチニブは、複数の適応症にわたる広範な臨床開発プログラムにおいて試験されており、現在、全身療法の候補である成人患者における関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)及び中等度から重度のADの治療のために欧州において承認されている。
【0004】
アトピー性手湿疹(アトピー性手皮膚炎としても知られている)は、ADを有する患者に生じるHEのサブタイプである。他の身体領域におけるADと一致して、アトピー性HEは、軽度、中等度、又は重度として分類することができる。日常の機能的活動において手が果たす中心的な役目を考慮すると、アトピー性HEは、身体的障害及び心理的障害に関連しており、相当な心理社会的影響、労働力的影響、及び経済的影響を有する(Veien et al.2008)。ADの根底にある皮膚障壁の欠陥に起因して、アトピー性HEの経過は、通常、非常に慢性的であり、再発性発赤によって特徴付けられ、多くの場合、治療に対して不応性である。露出した身体部位に起因する二次的な機械的因子は、疾患の経過を更に複雑にする。アトピー性HE患者の治療選択肢は、非常に限定されており、利用可能な全身療法の不十分な有効性及び低い忍容性によって妨げられている。HEのトリガー因子としては、寒い気象条件若しくは乾燥した気象条件及び湿度などの環境曝露、並びに、水仕事、刺激物、及び直接アレルゲン及び機械的刺激への曝露を含む職業因子が挙げられる。したがって、「トリガー回避」は、通常、HEを有する患者に対する最初の治療活動であるが、多くの人々は、環境又は作業関連のトリガー因子を減少させることができないので、それが不可避又は不満足なものであると考える。
【0005】
軽度から中等度のHEを有する患者において、治療選択肢は、局所療法、主に局所コルチコステロイド(topical corticosteroid、TCS)、及び光線療法に限定される。これらの療法は、手の使用が慢性HEによって制限される場合に生じる機能障害を考慮すると、体表面積(body surface area、BSA)の関与とは独立した全身治療を保証する重度の慢性HEを制御するには通常不十分である。慢性HEのための全身治療の選択肢は、非常に限られている。利用可能な全身治療は、不満足な転帰及び副作用を伴い、これは、不十分なベネフィット/リスクプロファイルをもたらす。現在、欧州において慢性HEのために承認されている唯一の全身療法は、アリトレチノインであり、アリトレチノインは、特に長期治療中に既知のレチノイド副作用を伴い、したがって、最後の手段として処方されているにすぎない。更に、同時発生型ADを有する患者において、この医薬は、皮膚障壁及び皮膚微生物叢に対するその影響に起因して、得策ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、HEのための治療選択肢が存在しないか、又は不十分である患者集団の大きなセグメントが依然として存在する。このことは、仕事で手を使う人に特に当てはまる。そのような人々は、(本明細書に記載されるように)HECSIの75%の減少を達成しない場合がある。これらの理由及び他の理由のために、HEの改善された治療に対する満たされていない必要性が存在する。そのような治療は、HEの自己免疫の原因に対処し、好ましくは、HEを引き起こす自己免疫応答を予防又は治療すべきである。加えて、HEのためのそのような治療は、仕事又は環境がHEを誘発する人々を治療し、慢性HEを治療することが可能であるべきである。更に、治療は、HEに関連する痒み(掻痒)及び/又は疼痛に対処すべきである。すべての療法的治療と同様に、安全性及び毒性には限界があり、したがって、任意の改善された治療は、許容できない安全性及び毒性プロファイルに付随するものであってはならず、臨床的利益を提供するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上で認識された課題の1つ以上を克服する、HEの治療のための療法的治療を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、HEの治療を必要とする患者を治療する方法であって、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的に許容される塩又は薬学的製剤を当該患者に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、一定量のバリシチニブは経口投与される。例えば、経口投与は、1つ以上の賦形剤を含む錠剤を患者に与えることを含み得る。更なる実施形態において、上述の丸薬は、4mgのバリシチニブを含むが、他の量のバリシチニブもまた使用され得る。
【0009】
更なる実施形態は、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的製剤を患者に投与することによる、HEの1つの治療を必要とする当該患者を治療する方法であって、患者のHECSIスコアが0日目に評価され、次いで、バリシチニブによる治療が行われ、次いで、患者のHECSIスコアが再評価される(例えば、16週後及び32週後であるが、他の時間を使用してもよい)、方法を含む。いくつかの実施形態において、HECSIスコアが再評価された後、患者のHECSIスコアは、減少している。患者は、患者のHECSIスコアについて、毎週、2週間毎、又は毎月など、評価され得る。更なる実施形態において、HECSIスコアは、バリシチニブによる治療の前、最中、又は16週後に再評価される。いくつかの実施形態の間、この治療は、バリシチニブを1日用量(例えば、4mg、又はいくつかの他の用量)で投与することを伴う。
【0010】
更なる実施形態において、患者のHECSIスコアは、患者が16週又は32週より前に療法を終了すべきであることを示し得る。言い換えれば、医師は、患者を診た後に、特定の期間(例えば、2週間、又は4週間、又は6週間、又は8週間、又は10週間、又は12週間、又は14週間、又は18週間、又は20週間、又は22週間、又は24週間、又は26週間、又は28週間、又は30週間)の後、患者のHE(HECSIスコア又はいくつかの他の測定基準によって測定されるような)が、療法を中断し得るように改善したことを決定し得る。他の実施形態において、患者及び医師は、患者及び/又は患者の医師によって決定されるように、32週後(例えば、更に16週間、及び更に32週間、及び更に48週間若しくは64週間)、又は不確定な期間(若しくはいくつかの他の期間)、治療(バリシチニブ)を受け続けてもよい。
【0011】
実施形態はまた、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的製剤を患者に投与することによる、HEの1つの治療を必要とする当該患者を治療する方法であって、患者のHECSIスコアが0日目に評価され、次いで、バリシチニブによる治療が行われ、次いで、患者のHECSIスコアが再評価される、方法を含み得る。いくつかの実施形態において、HECSIスコアが再評価された後、患者のHECSIは、減少している(例えば、少なくとも75%の減少)。これらの実施形態のいくつかにおいて、HECSIは、バリシチニブによる治療の前、最中、又は後の16週目に再評価される。
【0012】
他の実施形態は、HEの少なくとも1つを治療するための医薬の製造における、バリシチニブ、又はその薬学的製剤の使用を提供する。これらの実施形態の多くにおいて、バリシチニブの量は、4mgである。他の実施形態において、バリシチニブは、丸薬の形態で投与される。
【0013】
更に、本発明は、HEの治療に使用するための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態において、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的製剤は、1つ以上の賦形剤を含む丸薬の形態である。
【0014】
本実施形態は、HEの治療のための医薬の製造におけるバリシチニブの使用に関する。この使用は、1つ以上の賦形剤を含む丸薬の形態のバリシチニブを有し得る。この使用はまた、患者のHECSIスコアが0日目に評価され、バリシチニブの投与後、例えば、16週目に再評価され得る。この使用は更に、バリシチニブが、(例えば、4mgの1日用量で)毎日投与されるようなものであり得る。
【0015】
バリシチニブは、化学名{1-(エチルスルホニル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル)を有するヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(より具体的には、選択的JAK1及びJAK2阻害剤)である。バリシチニブは、以下の構造式を有する。
【0016】
【化1】
化合物を作製する方法を含む、バリシチニブに関する追加情報は、米国特許第8,158,616号及び同第8,420,629号において見出すことができる。バリシチニブを作製するための追加の方法は、米国特許出願公開第2018/0134713号において見出される。
【0017】
バリシチニブは、関節リウマチの治療のために米国及び欧州(及び他の国々)で承認されている既知の医薬であり、OLUMIANT(登録商標)の下で市販されている。欧州医薬品庁(European Medicines Agency)はまた、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療のためにバリシチニブを承認している。
【0018】
いくつかの管轄区域において、OLUMIANT(登録商標)は、丸薬の形態で入手可能であり、丸薬には、指定された量のバリシチニブ並びに以下の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶性セルロース、酸化第二鉄、レシチン(大豆)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、タルク及び二酸化チタン)が含まれる。本発明の好ましい実施形態において、患者を治療するために使用される一定量のバリシチニブは、患者にOLUMIANT(登録商標)の1つ以上の丸薬を与えることによって投与される。もちろん、バリシチニブの他の剤形、薬学的組成物なども使用可能である。
【0019】
当業者はまた、他の実施形態において、バリシチニブの薬学的に許容される塩が使用され得ることを理解する。薬学的に許容される塩は公知である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書の化合物がその酸性塩又は塩基塩を作製することによって修飾されている、本明細書の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩及びそれを作製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen編集,22ndEdition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい)。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性無機酸又は有機酸から形成される、本明細書に記載の化合物の従来の非毒性塩又は四級アンモニウム塩が含まれる。そのような従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来する塩、及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製された塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、妥当なベネフィット/リスク比に相応して、過度な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触させた使用に適している形態の本明細書の化合物である。本明細書中の化合物の薬学的に許容される塩形態は、従来の化学的方法によって塩基性部分又は酸性部分を含むように合成され得る。一般に、かかる塩は、例えば、その化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、水中若しくは有機溶媒中、又はこれらの2つの混合物中で、好適な塩基又は酸の化学量論的量と反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい(例えば、Stahl et al.,「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」(Wiley-VCH 2nd ed.2011)を参照されたい)。
【0020】
本明細書で言及されているように、また当該分野で一般的に知られているように、「用量」という用語は、対象に投与されるバリシチニブの量を指す。当該技術分野で一般に知られており、本明細書で互換的に言及され得る「用量計画」又は「投薬計画」は、ある期間にわたって患者に投与される用量のセット(すなわち、シリーズ又はシーケンス)を投与するための治療スケジュールを含む。本発明は、本発明のHE治療の用量計画を含む。具体的には、患者がバリシチニブによる治療を受ける日より前に(「0日目」と呼ばれる)、患者の状態が評価される。患者のHE状態のこの評価は、0日目の5週間前、又は他の実施形態において、治療の8~35日前に行われ得る。いくつかの実施形態において、患者のHE状態は、0日目の2、又は3、又は4週間前に評価され、次いで、0日目の1週間前に再び評価されてもよい。患者のHE状態の評価が行われる他の時間も使用可能である。次いで、0日目に評価が繰り返されてもよく、このデータは、更なる比較のための「ベースライン」である。患者(及び患者のHE及びAD状態)のそのような評価は、以下のスコア又は測定(これらのスコアの各々が本明細書に記載される)のうちの1つ以上を決定することを伴い得る。
患者のHECSIスコア、
患者のEASIスコア、
患者の痒み及び皮膚疼痛NRSスコア、
vIGA-ADスコア、
患者のHADSスコア、
患者のDLQIスコア、
患者のQOLHEQスコア、
患者のmTLSSスコア、
患者のWPAIスコア、
ADSSスコア、
慢性HEの重症度を評価するための写真ガイドに基づくスコア、及び/又は
任意の追加の患者関連アウトカム及び/又はHEに関連する患者提供情報。
【0021】
治療前及び0日目に行われる患者のHE状態の評価(上で概説した方法で)に加えて、0日目より後、例えば、患者がバリシチニブを受けた後に、同様の評価を行ってもよい。そのような評価は、所望な場合、毎週、又は2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に行われてもよい。いくつかの実施形態において、バリシチニブによる治療は、16週間又は32週間続き、当業者は、患者がバリシチニブを受けている間に患者のHE状態を評価すべき頻度を理解するであろう。多くの実施形態において、評価は、16週以降及び/又は32週以降に、患者が様々なスコアにおいてどのように改善したかを追跡する。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者は、0日目より約4週間前に、HEのために使用される任意の全身治療の使用を停止する。そのような治療には、シクロスポリン又は全身性ステロイド(例えば、プレドニゾン)が含まれ得る。患者はまた、0日目より1週間前に、任意のTCS治療を受けることを停止し得る。いくつかの実施形態において、患者は、0日目に開始して、バリシチニブによる治療中にTCSを受けてもよい。
【0023】
0日目に、患者は、バリシチニブを用いる治療を受け始める。いくつかの実施形態によれば、バリシチニブのこの投与は、毎日(又はいくつかの他の特定の投薬期間で)行われてもよく、4mgのバリシチニブの用量であってもよい(例えば、4mgのバリシチニブの丸薬を投与するように患者に指示することによる)。現時点で好ましい実施形態のいくつかにおいて、16週間の期間を通して毎日、患者は、バリシチニブの1日用量を服用するように指示される。バリシチニブの量は異なる場合がある。いくつかの実施形態において、患者は1日当たり4mgを服用するが、他の実施形態において、患者及び/又は患者の医師によって決定されるように、異なる用量のバリシチニブ(例えば、2mg、8mg、12mg、16mg、20mgなど)が与えられる。バリシチニブは、必要に応じて、1日1回、又は1日2回、1日3回、1日4回などで投与され得る。当業者は、選択された投薬計画が1日の間に1回より多い用量を投与することを含む場合、必要に応じて適切な投薬間隔を決定する方法を理解するであろう。
【0024】
患者の状態を決定するために評価される重要な測定値の1つは、HECSI(Hand Eczema Severity Index、手湿疹重症度指数)スコアである。本明細書に示されるように、ベースラインHECSIスコアは、患者がバリシチニブを受ける前の0日目に得てもよい。また、0日目の数日前又は数週間前に、患者のHECSIスコアが得られてもよく、これは追加の情報を提供し得るためである。患者のHECSIは、本明細書に示される時点で系統的に測定される。いくつかの実施形態において、患者は、16週目で患者のHECSIスコアの少なくとも75%の改善をみとめる(又は患者の大部分がみとめる)。ベースラインHECSIスコアからのこの75%の改善は、HECSI75と呼ばれることもある。他の実施形態において、患者は、32週目で患者のHECSIスコアの少なくとも75%の改善をみとめる(又は患者の大部分がみとめる)。もちろん、HECSIスコアにおける他の改善、例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、又は95%より大きいことも可能である。
【0025】
HECSIスコアは、臨床徴候に基づいて手湿疹の疾患重症度を評価する客観的な検証された臨床スケールである。これは、観察者間信頼性及び観察者内信頼性の両方について優れた一致を有する検証されたスコアリングシステムである。皮膚炎症の定性的評価及び定量的評価によってADにおける全体的な疾患重症度を評価するために使用されるEASIスケール(以下で論じる)と同様に、HECSIは、手及び手首の皮膚炎症を定性的及び定量的に見る。他の身体領域におけるADの典型的な形態学的皮膚変化(紅班、滲出、小水疱形成、乾燥、丘疹形成/浸潤、及びスケーリング)を反映して、HECSIは、HEの高負荷に寄与する亀裂、線形深部及び有痛性潰瘍形成を除き、EASIによって評価されるようなAD病変の典型的な変化と重複する紅班(赤み)、浸潤/丘疹形成、小水疱、亀裂、スケーリング、及び浮腫のHEの6つの徴候を評価する。これらの徴候は、指先、指(指先を除く)、手のひら、手の甲、及び手首といった手の5つの位置で評価される。病変の程度は、HECSIスコアを計算する際に考慮される。総HECSIスコアは、0~360の範囲であり、各位置について与えられたスコアに各臨床像の強度の総和を掛け算することによって計算される。このスコアは、重症度指数(0なし、1軽度、2中等度、及び3重度として格付けされる)に罹患領域の表面積を掛け算して複合スコアを得ることによって計算される。
【0026】
HECSIは、2005年にHeldらによって最初に検証された(Held E,Skoet R,Johansen JD,Agner T.The hand eczema severity index(HECSI):a scoring system for clinical assessment of hand eczema.A study of inter-and intraobserver reliability.Br J Dermatol.2005;152(2):302-307)。HECSI評価は、EASIの評価に匹敵し、このことは、2001年に同様の研究設計において検証された(Hanifin JM,Thurston M,Omoto M,et al.;EASI Evaluator Group.The eczema area and severity index(EASI):assessment of reliability in atopic dermatitis.Exp Dermatol.2001;10(1):11-18)。2005年のHECSI検証のために、HEに罹患している合計15人の患者が、観察者としての12人の皮膚科医とともに研究に登録された。観察者間信頼性及び観察者内信頼性を評価すると、総HECSIスコア及び評価における別個の項目について、全体的に良好から優れた観察者間信頼性があることが示された。観察者内信頼性も許容可能であることが分かった。
【0027】
HECSIスコアは、検証されて以来、HEを有する患者に対して実施されたいくつかの研究に用いられてきた。
・Lerbaek A,Kyvik KO,Ravn H,et al.Clinical characteristics and consequences of hand eczema-an 8-year follow-up study of a population-based twin cohort.Contact Dermatitis 2008;58(4):210-216、
・Bauer A,Lange N,Matterne U,et al.Efficacy of pimecrolimus 1% cream in the long term management of atopic hand dermatitis.A double-blind RCT.J Dtsch Dermatol Ges.2012;10(6):426-433、
・van Gils RF,Boot CR,Knol DL,et al.The effectiveness of integrated care for patients with hand eczema:results of a randomized,controlled trial.Contact Dermatitis.2012;66(4):197-204、
・Charan UP,Peter CVD,Pulimood SA.Impact of hand eczema severity on quality of life.Indian Dermatol Online J.2013;4(2):102-105、
・Oosterhaven JAF,Voorberg AN,Romeijn GL,et al.Effect of dupilumab on hand eczema in patients with atopic dermatitis: an observational study.J Dermatol.2019;46(8):680-685、及び
・Worm M,Bauer A,Elsner P,et al.Efficacy and safety of topical delgocitinib in patients with chronic hand eczema: data from a randomized,double-blind,vehicle-controlled phase II a study.Br J Dermatol.2020;182(5):1103-1110。
最近、HECSIスコアの応答性及び解釈可能性が試験された(Oosterhaven JAF,Schuttelaar MLA.Responsiveness and interpretability of the Hand Eczema Severity Index.Br J Dermatol.2020;182(4),932-939)。ベースライン時、及び再び4~12週間後にHEを有する合計294人の患者をスコア化することによって、HECSIスコアの良好な応答性が確認された。アンカーとして「慢性手皮膚炎の重篤度を評価するための写真ガイド(photographic guide for assessing severity of chronic hand dermatitis)」を使用して、Oosterhaven及びSchuttelaar(2020)は、重篤度の格付けを以下のように定義した。
クリア、0
ほぼクリア、1~16
中等度、17~37
重度、38~116
非常に重度、117以上。
(Oosterhaven JAF,Schuttelaar MLA.Responsiveness and interpretability of the Hand Eczema Severity Index.Br J Dermatol.2020;182(4),932-939。)
【0028】
HECSI75は、手の面積及び重症度における75%以上の改善に対応する。このスコアは、臨床試験において、ADの重症度及び程度における臨床的に有意な改善を表すと一般に考えられているEASI75に匹敵する(Schram ME,Spuls PI,Leeflang MM,et al.EASI,(objective)SCORAD and POEM for atopic eczema:responsiveness and minimal clinically important difference.Allergy.2012;67(1):99-106)。最近、HECSIの応答性及び解釈可能性を調べているが、Oosterhaven and Schuttelaar(Oosterhaven JAF,Schuttelaar MLA.Responsiveness and interpretability of the Hand Eczema Severity Index.Br J Dermatol.2020;182(4),932-939)は、HECSI75が患者の真の臨床的改善を反映するために必要であることを示唆した。HECSI75はまた、HEに対するデュピルマブの効果を調べた最近の研究において、主要なカットオフポイントとして選択された(Oosterhaven JAF,Voorberg AN,Romeijn GL,et al.Effect of dupilumab on hand eczema in patients with atopic dermatitis: an observational study.J Dermatol.2019;46(8):680-685)。
【0029】
HECSIスコアに加えて、他のスコアが、アトピー性HEの評価において得られてもよい。いくつかの実施形態において、mTLSSスコアは、HE状態の評価の一部として得られる(0日目より前、0日目、試験全体、16週目及び/又は32週目に行われてもよい)。mTLSSは、「修正総病変症状スコア(Modified Total Lesion Symptom Score)」を指す。mTLSSは、HE病変重症度(紅班、浮腫、落屑、亀裂、過角化/苔癬化、小水疱)の評価を、掻痒/疼痛の強度と組み合わせたものである。(Bissonnette R,Diepgen TL,Elsner P,et al.Redefining treatment options in chronic hand eczema(CHE).J Eur Aca Dermatol Venereol.2010;24(suppl 3):1-20を参照されたい。)この複合スコアは、各構成要素に0(軽度)~3(重度)を割り当て、21の最大疾患重症度を与える。mTLSSスコアは、HEにおけるアリトレチノインを調査する研究において二次エンドポイントとして使用されている(Fowler JF,Graff O,Hamedani AG.A phase 3,randomized,double-blind,placebo-controlled study evaluating the efficacy and safety of alitretinoin(BAL4079)in the treatment of severe chronic hand eczema refractory to potent topical corticosteroid therapy.J Drugs Dermatol.2014;13(10):1198-1204)。
【0030】
いくつかの実施形態において、mTLSSスコアの平均変化は、ベースラインに対して評価される。いくつかの実施形態において、これは、mTLSSスコアにおける2~20の間の変化を含む。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~15であってもよい。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~12であってもよい。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~10であってもよい。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~8であってもよい。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~6であってもよい。他の実施形態において、mTLSSスコアにおける変化は、2~4であってもよい。
【0031】
慢性手皮膚炎の重症度を評価するための写真ガイドに基づくスコアは、本明細書に概説されるように、患者のHE状態の評価の一部として得られ得る。写真ガイドは、重症度カテゴリーを表す写真を使用する、HEの形態学的重症度を5点スケールで測定する、検証されたグローバルな機器である(0=クリア、1=ほぼクリア、2=中等度、3=重度、4=非常に重度)。写真ガイドは、高レベルの評価者間信頼性及び試験-再試験再現性を有することが示されている(Coenraads PJ,Van Der Walle H,Thestrup-Pedersen K,et al.Construction and validation of a photographic guide for assessing severity of chronic hand dermatitis.Br J Dermatol.2005;152(2):296-301)。写真ガイドはまた、HECSIの最小限に重要な変化及びHECSI重症度カテゴリーを定義するためのアンカーとして使用された(Oosterhaven JAF,Schuttelaar MLA.Responsiveness and interpretability of the Hand Eczema Severity Index.Br J Dermatol.2020;182(4),932-939)。
【0032】
いくつかの実施形態において、写真ガイドは、16週目に0又は1のスケールを患者に与え得る。いくつかの実施形態において、写真ガイドは、32週目に0又は1のスケールを患者に与え得る。いくつかの実施形態において、写真ガイドは、4、8、又は12週目に0又は1のスケールを患者に与え得る。いくつかの実施形態において、写真ガイドは、20、24、又は28週目に0又は1のスケールを患者に与え得る。いくつかの実施形態において、写真ガイドは、16週より長い時間で、又は32週より長い時間で、0又は1のスケールを患者に与え得る。
【0033】
EASIスコア(Eczema Area and Severity Index、湿疹面積及び重症度指数)も、AD評価の一部として得られ得る。EASIは、4つの身体領域における疾患の程度を評価し、紅斑、硬結/丘疹形成、表皮剥離、及び苔癬化を含む4つの臨床徴候をそれぞれ0~3のスケールで測定する。EASIは、72の最大スコアを与える。EASIは、疾患の程度及び臨床徴候といったADの2つの次元を評価する(Hanifin JM,Thurston M,Omoto M,et al.;EASI Evaluator Group.The eczema area and severity index (EASI):assessment of reliability in atopic dermatitis.Exp Dermatol.2001;10(1):11-18)。当該技術分野で知られているように、EASIスコアは、相応の体表面積を4つの領域に割り当て(頭部/頸部に対して10%、胴部に対して30%、上肢に対して20%、及び下肢に対して40%)、0なし、1軽度、2中等度、及び3重度のスコアに割り当てる。次いで、体表面に関連する上述のパーセンテージと重症度との乗算を使用して、数値スコアが得られる。
【0034】
いくつかの実施形態において、EASIスコアの平均変化は、ベースラインに対して評価される。いくつかの実施形態において、これは、EASIスコアにおける2~20の間の変化を含む。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~15であってもよい。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~12であってもよい。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~10であってもよい。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~8であってもよい。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~6であってもよい。他の実施形態において、EASIスコアにおける変化は、2~4であってもよい。
【0035】
vIGA-AD(Validated Investigator’s Global Assessment of Atopic Dermatitis、アトピー性皮膚炎の検証された治験責任医師の全体的な評価)スコアも、AD評価の一部として得られ得る。vIGA-ADは、0(クリアな皮膚)から4(重度の疾患)までの静的な数値5点スケールに基づいて、患者のADの全体的な重症度の治験責任医師による全体的な評価を測定する。スコアは、紅班、丘疹形成/硬結、滲出/痂皮形成、及び苔癬化の程度の全体的な評価に基づく(Simpson E,Bissonnette R,Eichenfield LF,et al.The validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitis(vIGA-AD(商標)):the development and reliability testing of a novel clinical outcome measurement instrument for the severity of atopic dermatitis.J Am Acad Dermatol 2020;83(3):839-846)。
【0036】
いくつかの実施形態において、vIGA-ADスコアの平均変化は、ベースラインに対して評価される。いくつかの実施形態において、これは、vIGA-ADスコアにおける2~20の間の変化を含む。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~15であってもよい。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~12であってもよい。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~10であってもよい。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~8であってもよい。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~6であってもよい。他の実施形態において、vIGA-ADスコアにおける変化は、2~4であってもよい。
【0037】
掻痒、睡眠障害、皮膚疼痛、及び活動の妨害などのAD及びHEの重要な症状は、本疾患の重要な態様を含み、健康に関連する生活の質(health related quality of life、HRQoL)に関する臨床改善の意義は、患者によってのみ評価され得る。したがって、これと一致して、Germany’s Institute for Quality and Efficiency in Health Care(IQWiG)及びUK’s National Institute for Health and Care Excellence(NICE)などの欧州機関は、患者にとっての治療効果を評価する場合に、患者報告アウトカム(patient reported outcome、PRO)の尺度によって評価されるHRQoLデータにますます焦点を当てている。したがって、痒み、皮膚疼痛、睡眠障害、及び生活の質における臨床的に関連する改善、並びにHEを有する患者に固有の社会的課題及び治療上の課題を引き起こす、本疾患の機能的態様及び心理的態様に対する利益を評価することを含め、以下の評価はまた、本明細書に記載される評価の一部として行われてもよい。
【0038】
そのようなPRO測定としては、HRQoLのHE特異的障害を評価するQuality of Life in Hand Eczema Questionnaire(QOLHEQ)が挙げられる(Ofenloch R,Diepgen T,Weisshaar E,Apfelbacher C.The Quality of Life in hand eczema questionnaire:validation of a new assessment instrument.Das Gesundheitswesen.2013;75(08/09):A233)。それは、症状、感情、機能、治療、及び予防に関する30の質問から構成される、患者が管理する手段である。それは、日本における国内使用(Minamoto K,Diepgen TL,Sato K,et al.Quality of Life in Hand Eczema Questionnaire:Validation of the Japanese version of a disease-specific measure of quality of life for hand eczema patients.J Dermatol.2018;45(11):1301-1305)、ドイツにおける国内使用((Ofenloch R、Diepgen T、Weisshaar E、Apfelbacher C.The Quality of Life in hand eczema questionnaire:validation of a new assessment instrument.Das Gesundheitswesen.2013;75(08/09):A233)、及びオランダ及びにおける国内使用(Oosterhaven JAF、Ofenloch RF、Schuttelaar MLA.Validation of the Dutch quality of life in hand eczema questionnaire(QOLHEQ).Br J Dermatol.2020b;183(1):86-95)について検証されており、HEを有する患者におけるHRQoLの有効であり、信頼性があり、応答性のある尺度であることを示しており、更に、異文化間の検証を受けている(Ofenloch RF,Oosterhaven JA,Susitaival P,et al.Cross-cultural validation of the Quality of Life in Hand Eczema Questionnaire(QOLHEQ).J Invest Dermatol.2017;137(7):1454-1460)。最近の解釈可能性研究は、最小限に重要な変化として22ポイント以上を定義しており、QOLHEQをHEのコアアウトカムセットに組み込むことを提案している(Ofenloch RF,Weisshaar E,Apfelbacher C.New evidence for construct validity and interpretability of the German Quality of Life in Hand Eczema Questionnaire(QOLHEQ)Contact Dermatitis.2020;83(3):189-195、Oosterhaven JAF,Ofenloch RF,Schuttelaar MLA.Interpretability of the Quality Of Life in Hand Eczema Questionnaire.J Invest Dermatol.2020a;140(4):785-790.et al.2020a)。
【0039】
いくつかの実施形態において、QOLHEQスコアの平均変化は、16、32週目、又は他の期間で、ベースラインに対して評価される。いくつかの実施形態において、これは、QOLHEQスコアにおける2~20の間の変化を含む。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~15であってもよい。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~12であってもよい。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~10であってもよい。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~8であってもよい。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~6であってもよい。他の実施形態において、QOLHEQスコアにおける変化は、2~4であってもよい。
【0040】
そのようなPRO測定値はまた、皮膚科の生活の質指数(Dermatology Life Quality Index、DLQI)スコアを含み得る。それは、症状及び感情、日常活動、娯楽、仕事及び学校、人間関係、並びに治療を含む6つの領域をカバーする10項目の検証された生活の質のアンケートである。スコアの範囲は0~30であり、スコアが高いほど、QoLの障害が大きいことを示す。0~1のDLQI総スコアは、患者の健康に関連するQoLに影響を及ぼさないと考えられ(Hongbo Y,Thomas CL,Harrison MA,et al.Translating the science of quality of life into practice:what do dermatology life quality index scores mean? J Invest Dermatol.2005;125(4):659-664)、ベースラインからの4ポイントの変化を、最小の臨床的に重要な差閾値と考える(Khilji F.Clinical meaning of change in Dermatology Life Quality Index scores[abstract].Br J Dermatol.2002;147(suppl 62):50.Abstract P-59、Basra M,Salek M,Camilleri L,et al.Determining the minimal clinically important difference and responsiveness of the Dermatology Life Quality Index (DLQI):further data.Dermatology.2015;230(1):27-33)。DLQIスコアは、観察研究において他の尺度と相関することが見出されており、416人のHEを有する患者の欧州研究において臨床医が評価したHECSIによって測定される疾患重症度との有意な相関(p<0.001)を含む、HEにおけるその構築妥当性を更に確立している(Agner T,Andersen KE,Brandao FM,et al.Hand eczema severity and quality of life:a cross-sectional,multicentre study of hand eczema patients.Contact dermatitis.2008;59(1):43-47)。
【0041】
そのようなPRO測定値はまた、痒み数値格付けスケール(Numeric Rating Scale、NRS)を含み得る。痒みNRSは、患者に行われた0~10に固定された11ポイントの水平スケールであり、0は「痒みなし」を表し、10は「想像でき得る最悪の痒み」を表す。患者の痒みの全体的な重症度は、過去24時間における最悪レベルの痒みを最もよく表す数を選択することによって示される(Naegeli AN,Flood E,Tucker J,et al.The Worst Itch Numeric Rating Scale for patients with moderate to severe plaque psoriasis or psoriatic arthritis.Int J Dermatol.2015;54(6):715-722、Kimball AB,Naegeli AN,Edson-Heredia E,et al.Psychometric properties of the Itch Numeric Rating Scale in patients with moderate-to-severe plaque psoriasis.Br J Dermatol.2016;175(1):157-162)。
【0042】
いくつかの実施形態において、バリシチニブによる治療は、2週目、4週目、16週目、32週目、又はいくつかの他の期間において、患者が痒み数値格付けスケールで少なくとも2ポイントの改善を有することを提供する。他の実施形態において、バリシチニブによる治療は、2週目、4週目、16週目、32週目、又はいくつかの他の期間において、患者が痒み数値格付けスケールで少なくとも4ポイントの改善を有することを提供する。他の実施形態において、バリシチニブによる治療は、2週目、4週目、16週目、32週目、又はいくつかの他の期間において、患者が痒み数値格付けスケールで少なくとも8ポイントの改善を有することを提供する。
【0043】
そのようなPRO測定値はまた、皮膚疼痛NRSスコアを含み得る。皮膚疼痛NRSは、患者に行われた0~10に固定された11ポイントの水平スケールであり、0は「疼痛なし」を表し、10は「想像でき得る最悪の疼痛」を表す。患者の皮膚疼痛の全体的な重症度は、過去24時間における最悪レベルの皮膚疼痛を最もよく表す数を選択することによって示される。
【0044】
いくつかの実施形態では、バリシチニブによる治療は、1つ以上の特定の時点で測定した場合に、皮膚疼痛NRSスケールで少なくとも2ポイント、少なくとも4ポイント、少なくとも6ポイント又は少なくとも8ポイントの改善をもたらし得る。これらの時点は、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、12週目、14週目、16週目、18週目、20週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、若しくは32週目、又は何らかの他の時点であり得る。
【0045】
そのようなPRO測定値はまた、病院不安抑うつスケール(Hospital Anxiety Depression Scale、HADS)スコアを含み得る。HADSは、患者が前の週に経験した不安及び抑うつのレベルを決定する14項目の自己評価スケールである。HADSは、各質問について4点のリッカートスケール(例えば、0~3)を利用し、12~65歳を対象とする(Zigmond AS,Snaith RP.The hospital anxiety and depression scale.Acta Psychiatr Scand.1983;67(6):361-370、White D,Leach C,Sims R,et al.Validation of the Hospital Anxiety and Depression Scale for use with adolescents.Br J Psychiatry.1999;175(5):452-454)。各領域(不安及び抑うつ)についてのスコアは、0~21の範囲であってもよく、スコアが高いほど、不安又は抑圧が大きいことを示している(Zigmond AS,Snaith RP.The hospital anxiety and depression scale.Acta Psychiatr Scand.1983;67(6):361-370、Snaith RP.The hospital anxiety and depression scale.Health Quality Life Outcomes.2003;1:29)。
【0046】
いくつかの実施形態において、バリシチニブによる治療は、1つ以上の特定の時点でHADSスコアのベースラインからの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%の改善をもたらし得る。これらの時点は、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、12週目、14週目、16週目、18週目、20週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、若しくは32週目、又は何らかの他の時点であり得る。
【0047】
そのようなPRO測定値は、作業生産性及び活動障害のアンケートーアトピー性皮膚炎(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire-Atopic Dermatitis、WPAI-AD)スコアも含み得る。WPAI-ADは、過去7日間のADに起因する障害を記録する。WPAI-ADは、4つの領域に分類される以下の6つの項目からなる。欠勤(作業時間が失われた)、疾病就業(作業時の障害/仕事上の有効性の減少)、作業生産性の損失(全体的な作業障害/欠勤及び疾病就業)、並びに活動障害。スコアは、障害パーセンテージとして計算され(Reilly MC,Zbrozek AS,Dukes EM.The validity and reproducibility of a work productivity and activity impairment instrument.Pharmacoeconomics.1993;4(5):353-365)、スコアが高いほど、障害が大きく、かつ生産性が低いことを示している。
【0048】
いくつかの実施形態において、バリシチニブによる治療は、1つ以上の特定の時点でWPAI-ADスコアのベースラインからの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%の改善をもたらし得る。これらの時点は、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、12週目、14週目、16週目、18週目、20週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、若しくは32週目、又は何らかの他の時点であり得る。
【0049】
そのようなPRO測定値は、アトピー性皮膚炎睡眠スケール(Atopic Dermatitis Sleep Scale、ADSS)も含み得る。ADSSは、痒みが睡眠に及ぼす影響を評価するために開発された、入眠困難、深夜に目覚める頻度、及び睡眠状態に戻る困難さを含む3項目の患者が管理するアンケートである。患者は、自身の入眠困難、及び睡眠状態に戻る困難さ(項目1及び3)を、0「全くない」から4「非常に困難」までの範囲の応答選択肢を有する5点のリッカート型スケールを使用して、それぞれ格付けする。患者は、0~29回の範囲で毎晩起きた回数を選択することによって、自身の目覚める頻度(項目2)を報告する。ADSSは、毎日完成するように設計されており、応答者は「深夜の」睡眠について考えている。各項目を個別にスコア化する。
【0050】
いくつかの実施形態において、バリシチニブによる治療は、1つ以上の特定の時点でADSSスコアのベースラインからの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%の改善をもたらし得る。これらの時点は、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、12週目、14週目、16週目、18週目、20週目、22週目、24週目、26週目、28週目、30週目、若しくは32週目、又は何らかの他の時点であり得る。
【0051】
現在のHE治療に関連するレチノイド副作用の多くは、PROスケールの1つ以上(例えば、乾燥肌、日光に対する感受性、赤み、皮膚の痒み)によって測定され、これらはバリシチニブによる治療によって防がれると考えられている。したがって、本療法は、現在の標準治療を超える改善を提供する。
【0052】
更なる評価は、手に特有の検証されたスケールが現在利用可能ではないため、視覚的に類似のスケールを使用して、特に手における痒み及び皮膚疼痛を分析又は評価することを含み得る。
【0053】
本明細書で言及される場合、本明細書で互換的に使用される「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、HEに罹患しているヒトを指す。特定の実施形態において、対象は、JAK1又はJAK2の生体活性の減少から恩恵を受ける疾患、障害、又は状態を更に特徴とする。
【0054】
本明細書で互換的に使用される場合、「治療」及び/又は「治療すること」及び/又は「治療する」は、本明細書に記載の障害の進行を遅らせること、妨害すること、抑止すること、制御すること、停止させること、又は逆行させることであってもよいすべてのプロセスを指すことが意図されるが、すべての障害の症状の完全な排除を必ずしも示すものではない。治療には、HEの治療のためのバリシチニブの投与が含まれ、これには、(a)HEの進行を更に阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること、(b)HEを軽減すること、すなわち、HEの退縮をもたらすこと、又はその症状若しくは合併症を軽減することが含まれる。治療には、HEの発病を予防すること、HEの発病の可能性を予防すること、及び/又はHEの重症度を減少させることも含まれる。治療には、HEのエピソード若しくは「攻撃」を予防すること、及び/又はそのような「攻撃」が発生する可能性を減少させることも含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態において、バリシチニブを受ける患者(例えば、HEを有する患者は、関節リウマチ、ループス又はアトピー性皮膚炎を有しない。
【0056】
いくつかの実施形態において、HEFの治療のためにバリシチニブを受けている患者のための組み入れ基準及び/又は除外基準を有することが有利な場合があり、又は例えば、いくつかの実施形態において、患者は、以下の特徴のうちの1つ以上を有していてもよい。
【0057】
年齢が18歳以上の男性又は女性;
中等度HEを定義する17以上のHECSIを有する中等度から重度の慢性(6ヶ月を超える)アトピー性HEを有する患者(Oosterhaven and Schuttelaar 2020,Responsiveness and interpretability of the Hand Eczema Severity Index.Br J Dermatol.2020;182(4),932-939);
アトピー性HEについては、スクリーニングの前の6ヶ月未満に1以上の高効力TCSに対する不十分な応答又は不耐性;
3以上のIGAによって定義される、12ヶ月以上にわたる中等度から重度のAD;
1%以上のBSA;並びに
EASI>7。
追加の実施形態において、重要な組み入れ基準は、以下の通りであってもよい。
患者は、3又は4の検証されたIGAスコアによって定義される中等度から重度のADを有し、かつ全身治療の候補であることが必要とされる。アトピー性HEの現在の診断を規定する組み入れ基準が追加される。重要なことに、手の接触皮膚炎が既知の外因性トリガーの結果である患者は、本治療から十分に利益を得ることができず、したがって、治療を行われない場合がある。このことは、治療を、HEが慢性的な経過をとった場合、及びトリガー単独の回避が湿疹の解消をもたらさない場合に限定する。加えて、以下の組み入れ基準を使用することもできる。試験集団の最大約40%が、10%以下のBSAに罹患していることを許容し、ベースラインEASIカットオフスコアを16から7未満に低下させる。
【0058】
特定の実施形態において、重要な除外基準は、以下の通りであってもよい。
治験責任医師による評価において、臨床的に関連する手のアレルギー性接触皮膚炎を有する患者、
現在のHEの主な原因であると考えられる刺激物への曝露が確認された患者、
治験期間中に潜在的にその根底にある状態に影響を及ぼす可能性がある、今後の職業又はライフスタイルの変化を知っている患者。
2人のHEを有する患者が、バリシチニブ(4mg錠剤を1日1回)による治療に成功したことが報告されている(F.M.Rosenberg,et al.,Baricitinib Treatment of Severe Chronic Hand Eczema:Two Case Reports-2022-Contact Dermatitis-Wiley Online Library)。
【0059】
第1の症例では、建築者として働く52歳の男性が、6年間にわたって重度の角化性HEを有すると診断された。彼は、小児期に喘息の病歴、アレルギー性鼻結膜炎を有し、ADの病歴はない。この患者は、治療開始時に「重度」のHE及び55(重度)の手湿疹重症度指数(HECSI)スコアを有していた。治療の16週間後、HEは「ほぼクリア」まで改善され、HECSIスコアは4まで改善された。患者の生活の質は、Quality of Life in Hand Eczema Questionnaire(QOLHEQ)に基づいて、「強く損なわれた」から「全く損なわれていない」に改善した。バリシチニブ治療の間、皮膚軟化剤を継続した。バリシチニブは、副作用が生じなかったので、十分に忍容性であった。
【0060】
第2の症例では、管理者として働く55歳の女性が、5年間にわたって重度のアトピー性HEを伴う重度のADを有していた。彼女は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻結膜炎、食物アレルギー、及び角結膜炎の病歴を有する。彼女は、刺激物への関連する曝露はなく、手に対する臨床的関連性を有する接触アレルギーはなかった。この患者は、治療開始時に「重度」のHE及び47(重度)の手湿疹重症度指数(HECSI)スコアを有していた。
【0061】
バリシチニブ投薬量は、良好な効果に起因して、患者の要求に応じて12週目に1日当たり2mgに漸減した。治療の16週間後、HEは「ほぼクリア」まで改善され、HECSIスコアは8まで改善された。彼女の生活の質は、QOLHEQに基づいて、「中程度に損なわれている」から「全く損なわれていない」に改善した。しかしながら、彼女は16週目に細菌性角膜潰瘍のためバリシチニブを中止した。
【実施例】
【0062】
実施例1-予測的インビボ研究
患者を、二重盲検プラセボ群及びバリシチニブ療法群からなる治療群に分ける。バリシチニブ療法群には、一定量のバリシチニブ(例えば、本明細書に概説される様式での4mgの丸薬又は錠剤)が投与され、一方、プラセボ群には、プラセボのみを有する丸薬(例えば、プラセボの4mgの丸薬又は錠剤)が投与される。
【0063】
研究には、一般に、例えば、「スクリーニング期間」、「治療期間」及び「フォローアップ期間」の3つの期間が存在する。すべての患者は、これらの各期間を経ている。
【0064】
治療が開始される前に行われるスクリーニング期間において、患者は、以下の1つ以上について評価される。
患者のHECSIスコア、
患者のEASIスコア、
患者のNRS痒みスコア、
vIGA-ADスコア、
患者のHADSスコア、
患者のHRQoLスコア、
患者のIGA(治験責任医師の全体的な評価)スコア、
患者のmTLSSスコア、
患者のWPAIスコア、及び
通常は0日目から約4週間前であるこのスクリーニング期間の間、患者は、HEの治療を受けることを停止する(以前の治療を「ウォッシュアウト」する方法として)。しかしながら、患者は、0日目の約1週間前に開始して、TCSを使用することができる。
【0065】
0日目に、患者は、割り当てられた群に応じて、バリシチニブ又はプラセボの患者の最初の治療を受ける。しかしながら、バリシチニブ又はプラセボを投与する前に、上に引用したスコア(最も特定的にはHECSIスコア)の測定値が得られる。
【0066】
治療期間の間、患者にはプラセボ又はバリシチニブのいずれかが与えられる(患者がどの研究の群にいるかに依存する)。状況によっては、無作為化された患者がクリニックで治験薬の初回用量を服用し、薬物動態(pharmacokinetic、PK)サンプルが投与の15分後及び1時間後に採取される。バリシチニブは、16週間にわたって毎日投与されてもよい。追加のPKサンプリングを含む臨床評価及び検査サンプルは、治療期間の間の予定された訪問時に得られる。治療期間中、無作為化された治療に加えて、患者はまた、TCSを維持する。患者の測定値(上記の測定値など)の再評価は、治療期間の間いつでも行うことができる。
【0067】
治療期間(例えば、16週間続く場合がある)の後、患者は、フォローアップ期間に入る。この期間の間に、上述のスコアを含め、患者の測定値が再評価される(又は更に再評価される)。この追加の治療は、更に16週間(合計32週間)継続してもよい。この追加の16週間の間に、プラセボを受けている患者をバリシチニブ治療に切り替えてもよい。
【0068】
実施例2
Davos Biosciences GmbHと協力して、4mgの1日用量でHEを治療するためにバリシチニブを使用して臨床研究が行われてきた。写真画像及び追加の臨床データは、バリシチニブがこの適応症に有効であったことを実証する。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手湿疹の治療を必要とする患者を治療する方法
において用いるための薬学的製剤であって、
前記方法は、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的塩又は
薬学的製剤を前記患者に投与することを含
み、
前記薬学的製剤は、バリシチニブ、又はその薬学的塩を含む、薬学的製剤。
【請求項2】
前記一定量のバリシチニブが経口投与される、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【請求項3】
前記方法が、
バリシチニブ投与前の0日目の前記患者のHECSIスコアを評価することと、
バリシチニブを投与する前記工程の後に、前記患者のHECSIスコアを再評価することと、を更に含む、請求項
1に記載の
薬学的製剤。
【請求項4】
前記患者のHECSIスコアが、バリシチニブの毎日の投与を16週間受けた後に再評価され、16週間後に評価された前記HECSIスコア値が、0日目に評価された前記HECSIスコアより少なくとも75%低い、請求項3に記載の
薬学的製剤。
【請求項5】
前記方法が、
0日目に前記患者のEASIスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、前記患者のEASIスコアを再評価することと、を更に含む、請求項
1に記載の
薬学的製剤。
【請求項6】
前記方法が、
以下の検査:
前記患者のNRS痒みスコア、
vIGA-ADスコア、
前記患者のHADSスコア、
前記患者のHRQoLスコア、
前記患者のIGAスコア、
前記患者のmTLSSスコア、
前記患者のWPAIスコアのうちの1つ以上において、0日目の前記患者のスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、これらの検査における前記患者のスコアを再評価することと、を更に含む、請求項
1に記載の
薬学的製剤。
【請求項7】
バリシチニブの1日用量が4mgである、請求項
1に記載の
薬学的製剤。
【請求項8】
手湿疹の治療のための医薬の製造におけるバリシチニブの使用。
【請求項9】
手湿疹の治療のための丸薬の製造におけるバリシチニブの使用。
【請求項10】
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは
薬学的製剤。
【請求項12】
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又は丸薬形態のバリシチニブを含む薬学的塩若しくは
薬学的製剤。
【請求項13】
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、請求項11又は12に記載の使用のための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは
薬学的製剤。
【請求項14】
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコア、
3以上のIGAスコア、
HEに罹患した1%以上のBSA、及び
7以上のEASIスコアのうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【請求項15】
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコアを満たす、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【請求項16】
前記患者が、投与前に以下の基準:
3以上のIGAスコアを満たす、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【請求項17】
前記患者が、投与前に以下の基準:
HEに罹患した1%以上のBSAを満たす、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【請求項18】
前記患者が、投与前に以下の基準:
7以上のEASIスコアを満たす、請求項1に記載の
薬学的製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
実施例2
Davos Biosciences GmbHと協力して、4mgの1日用量でHEを治療するためにバリシチニブを使用して臨床研究が行われてきた。写真画像及び追加の臨床データは、バリシチニブがこの適応症に有効であったことを実証する。
本発明は、以下の態様を含む。
<1>
手湿疹の治療を必要とする患者を治療する方法であって、一定量のバリシチニブ、又はその薬学的塩又は製剤を前記患者に投与することを含む、方法。
<2>
前記一定量のバリシチニブが経口投与される、<1>に記載の方法。
<3>
バリシチニブ投与前の0日目の前記患者のHECSIスコアを評価することと、
バリシチニブを投与する前記工程の後に、前記患者のHECSIスコアを再評価することと、を更に含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<4>
前記患者のHECSIスコアが、バリシチニブの毎日の投与を16週間受けた後に再評価され、16週間後に評価された前記HECSIスコア値が、0日目に評価された前記HECSIスコアより少なくとも75%低い、<3>に記載の方法。
<5>
0日目に前記患者のEASIスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、前記患者のEASIスコアを再評価することと、を更に含む、<1>~<4>のいずれかに記載の方法。
<6>
以下の検査:
前記患者のNRS痒みスコア、
vIGA-ADスコア、
前記患者のHADSスコア、
前記患者のHRQoLスコア、
前記患者のIGAスコア、
前記患者のmTLSSスコア、
前記患者のWPAIスコアのうちの1つ以上において、0日目の前記患者のスコアを評価することと、
バリシチニブを毎日16週間投与する前記工程の後に、これらの検査における前記患者のスコアを再評価することと、を更に含む、<1>~<5>のいずれかに記載の方法。
<7>
バリシチニブの1日用量が4mgである、<1>~<6>のいずれかに記載の方法。
<8>
手湿疹の治療のための医薬の製造におけるバリシチニブの使用。
<9>
手湿疹の治療のための丸薬の製造におけるバリシチニブの使用。
<10>
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、<8>又は<9>に記載の使用。
<11>
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
<12>
手湿疹の治療に使用するための、バリシチニブ、又は丸薬形態のバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
<13>
前記バリシチニブが、1つ以上の賦形剤を含む4mgの丸薬の形態である、<11>又は<12>に記載の使用のための、バリシチニブ、又はバリシチニブを含む薬学的塩若しくは製剤。
<14>
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコア、
3以上のIGAスコア、
HEに罹患した1%以上のBSA、及び
7以上のEASIスコアのうちの1つ以上を満たす、<1>に記載の方法。
<15>
前記患者が、投与前に以下の基準:
17以上のHECSIスコアを満たす、<1>に記載の方法。
<16>
前記患者が、投与前に以下の基準:
3以上のIGAスコアを満たす、<1>に記載の方法。
<17>
前記患者が、投与前に以下の基準:
HEに罹患した1%以上のBSAを満たす、<1>に記載の方法。
<18>
前記患者が、投与前に以下の基準:
7以上のEASIスコアを満たす、<1>に記載の方法。
【国際調査報告】