(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】レンズ要素
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20240711BHJP
G02C 5/00 20060101ALI20240711BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20240711BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C5/00
G02C13/00
G02B3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505413
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022071519
(87)【国際公開番号】W WO2023007028
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006AA00
2H006BD01
2H006DA01
(57)【要約】
眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方において装用されることを意図するレンズ要素を特定するための方法であって、レンズ要素は、- 装用者の眼に対する所定の屈折力Pxに基づく屈折力を有する屈折領域であって、少なくとも中心ゾーンを備える屈折領域と、- 装用者の眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する複数の光学要素と、を備え、方法は、- レンズ要素が取り付けられることを意図する眼鏡フレームを表すフレームデータを取得することと、- 装用者の顔の少なくとも1つのパラメータを表す装用者のデータを取得することと、- フレームデータ及び装用者のデータに基づいて、装用者の顔上に位置決めされる眼鏡を表すフィッティングデータを特定することと、- フィッティングデータに基づいて、光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方において装用されることを意図するレンズ要素を特定するための、例えばコンピュータ手段によって実装される、方法であって、前記レンズ要素は、
- 前記装用者の前記眼に対する所定の屈折力Pxに基づく屈折力を有する屈折領域であって、少なくとも中心ゾーンを備える屈折領域と、
- 前記装用者の前記眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する複数の光学要素と、
を備え、
前記方法は、
- その上に前記レンズ要素が取り付けられることを意図する前記眼鏡フレームを表すフレームデータを取得することと、
- 装用者の顔の少なくとも1つのパラメータを表す前記装用者のデータを取得することと、
- 前記フレームデータ及び前記装用者のデータに基づいて、前記装用者の前記顔上に位置決めされる眼鏡を表すフィッティングデータを特定することと、
- 前記フィッティングデータに基づいて、前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フィッティングデータに基づいて、前記レンズ要素の鼻側の寸法と前記レンズ要素の対向する側頭側の寸法との間の比を定量化する側頭鼻比を特定することを更に含み、前記光学要素の前記少なくとも1つのパラメータは、前記側頭鼻比に基づいて最適化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィッティングデータに基づいて、前記レンズ要素の上側部分の寸法と前記レンズ要素の対向する下側部分の寸法との間の比を定量化する上下比を特定することを更に含み、前記光学要素の前記少なくとも1つのパラメータは、上下比に基づいて最適化される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィッティングデータに基づいて、前記レンズ要素の背面と前記装用者の眼との間のレンズ眼間距離を特定することを更に含み、前記光学要素の前記少なくとも1つの光学パラメータは、前記レンズ眼間距離に基づいて最適化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、前記レンズ要素の第1の部分における前記光学要素の第1の密度を特定することを含み、前記第1の密度は、前記レンズ要素の対向する第2の部分における前記光学要素の密度とは異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、前記レンズ要素の第1の部分における前記光学要素の第1の屈折力を特定することを含み、前記第1の屈折力は、前記レンズ要素の第2の対向する部分における前記光学要素の屈折力とは異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、前記レンズ要素の第1の部分における前記光学要素の第1の大きさを特定することを含み、前記第1の大きさは、前記レンズ要素の第2の対向する部分における前記光学要素の大きさとは異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、前記レンズ要素の第1の部分における前記レンズ要素の第1のプリズム角を特定することを含み、前記第1のプリズム角は、前記レンズ要素の第2の対向する部分における前記光学要素のプリズム角とは異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、前記レンズ要素上の前記光学要素の配置及び前記中心ゾーンの大きさを特定することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フレームデータは、クォーテーションA、及び/又はクォーテーションB、及び/又はブリッジの寸法、及び/又は前記眼鏡フレームの輪郭のうちの少なくとも1つを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フレームデータは、選択された所定のフレームカテゴリに関連する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方において装用されることを意図するレンズ要素であって、
- 前記装用者の眼に対する所定の屈折力Pxに基づく屈折力を有し、かつ、少なくとも中心ゾーンを備える屈折領域と、
- 前記装用者の前記眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する複数の光学要素と、を備え、
前記光学要素は、少なくとも前記所定の屈折力Px及び前記眼鏡フレームの形状に基づいて配置される、レンズ要素。
【請求項13】
前記光学要素の密度、前記光学要素の屈折力、前記光学要素の大きさ、又は前記光学要素のプリズム角のうちの少なくとも1つは、前記レンズ要素の側頭側よりも鼻側において大きい、請求項12に記載のレンズ要素。
【請求項14】
前記光学要素の密度、前記光学要素の屈折力、前記光学要素の大きさ、又は前記光学要素のプリズム角のうちの少なくとも1つは、前記レンズ要素の下側よりも上側において大きい、請求項12又は13に記載のレンズ要素。
【請求項15】
アイウェア機器であって、
- 眼鏡フレームと、
- 請求項12~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのレンズ要素と、
を備え、
前記少なくとも1つのレンズ要素は、前記眼鏡フレームに取り付けられる、アイウェア機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装用者の眼の前方において装用されることを意図し、少なくとも所定の屈折力を有するレンズ要素、及び例えば、本開示によるレンズ要素を特定するためのコンピュータ手段によって実施される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼の近視は、眼が遠方の物体を網膜の前方で集束させる事実により特徴付けられる。近視は通常、凹レンズを用いて矯正され、遠視は通常、凸レンズを用いて矯正される。
【0003】
近視はまた、近視眼とも呼ばれ、世界的に公衆衛生上の重大な問題となっている。したがって、近視の進行を減速させることを目的とした解決策を開発するために、多くの努力が払われてきた。
【0004】
近視及び/又は遠視進行に対する最近の管理戦略の大部分は、光学的焦点ぼけを用いて周辺視野への作用を伴うものであった。このアプローチは、ひよこ及び霊長類における研究により、無傷の窩を伴うことなく、周辺部の光学的焦点ぼけによって窩の屈折異常を操作してもよいことが示されて以来、大きな関心を集めている。かかる周辺部の光学的焦点ぼけを誘発することによって近視の進行を減速させるために、幾つかの方法及び製品が使用されている。これらの解決策の中で、オルソケラトロジーコンタクトレンズ、二焦点ソフトレンズ及び累進ソフトコンタクトレンズ、円形累進眼用レンズ、並びにマイクロレンズのアレイを備えたレンズは、ランダム化比較試験を通して、多かれ少なかれ効果的であることが示されている。
【0005】
特に本出願人により、マイクロレンズのアレイを備える近視抑制解決策が提案されている。このマイクロレンズのアレイの目的は、網膜上以外の、例えば網膜の前方に光学的にぼやけた画像を提供し、良好な視力を可能にしながら、眼の成長を制限する停止信号をトリガすることである。
【0006】
しかし、先行技術のレンズ設計は、それらが取り付けられることを意図する眼鏡フレームに対して最適化されておらず、これにより、装用者の眼の異常屈折の進行を低下させるレンズ要素の効果を低減する可能性がある。
【0007】
したがって、装用者及びレンズ要素が取り付けられることを意図する眼鏡フレームに適合されるレンズ要素を特定及び提供するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本開示は、眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方において装用されることを意図するレンズ要素を提案し、レンズ要素は、
- 装用者の眼に対する所定の屈折力Pxに基づく屈折力を有し、少なくとも前記中心ゾーンを備える屈折領域と、
- 装用者の眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する複数の光学要素と、
を備え、
光学要素は、少なくとも所定の屈折力Px及び眼鏡フレームの形状に基づいて配置される。
【0009】
有利には、装用者の網膜上に画像を集束させないことにより、近視又は遠視等の眼の異常屈折の進行を減速させる抑制信号を作成することを可能にする。その上、眼鏡フレームの形状を考慮することにより、装用者のための良好な視覚性能を維持しながら、近視制御信号の効果を向上させることが可能になる。言い換えれば、本発明により、装用者の眼の異常屈折の進行を減速させることを向上させることと、装用者に対して最良の視力を維持することの両立を可能にする。
【0010】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
【0011】
- レンズ要素は、3つの相補的なゾーン、即ち、中心ゾーン、鼻側、及び側頭側に分割され、及び/又は、
【0012】
- レンズ要素は、3つの相補的なゾーン、即ち、中心ゾーン、上側、及び下側に分割され、及び/又は、
【0013】
- 中心ゾーンが、4mmよりも大きく20mmよりも小さい特性寸法を有し、及び/又は、
【0014】
- 中心ゾーンが、レンズ要素の基準点に中心を有し、及び/又は、
【0015】
- 基準点が、レンズ要素の幾何学的中心、光学的中心、近見視点、又は遠見視点のうちの1つであり、及び/又は、
【0016】
- 屈折領域が、装用者の眼の異常屈折を矯正するための処方に基づく第1の屈折力と、第1の屈折力とは異なる少なくとも第2の屈折力とを有し、及び/又は、
【0017】
- 第1の屈折力と第2の屈折力の間の差が、0.5D以上であり、及び/又は、
【0018】
- 屈折領域が、複数の光学要素によって形成された領域以外の領域として形成されており、及び/又は、
【0019】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、装用者の網膜上に集束させないように構成されており、及び/又は、
【0020】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、装用者の網膜の前方に集束させるように構成されており、及び/又は、
【0021】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、装用者の網膜の後方に集束させるように構成されており、及び/又は、
【0022】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、装用者の眼の網膜の前方に火面を作成するように構成されており、及び/又は、
【0023】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、標準装用状態下で球面光学機能を有し、及び/又は、
【0024】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、標準装用状態下で非球面光学機能を有し、及び/又は、
【0025】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、円柱度数を有し、及び/又は、
【0026】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、多焦点屈折マイクロレンズであり、及び/又は、
【0027】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、非球面マイクロレンズであり、及び/又は、
【0028】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、回転対称性の有無にかかわらず、非球面を含み、及び/又は、
【0029】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、トーリック屈折マイクロレンズであり、及び/又は、
【0030】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、トーリック面を含み、及び/又は、
【0031】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、複屈折材料で作成されており、及び/又は、
【0032】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、回折要素であり、及び/又は、
【0033】
- 回折要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、メタ表面構造を含み、及び/又は、
【0034】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、多焦点二値構成要素であり、及び/又は、
【0035】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、ピクセル化レンズであり、及び/又は、
【0036】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部が、πフレネルレンズであり、及び/又は、
【0037】
- 光学要素の少なくとも2つ、例えば50%超、好ましくは全部が、独立しており、及び/又は、
【0038】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度とは異なり、及び/又は、
【0039】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度よりも大きく、及び/又は、
【0040】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度よりも小さく、及び/又は、
【0041】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の屈折力及び/又は平均屈折力は、レンズ要素の側頭側における光学要素の屈折力及び/又は平均屈折力とは異なり、及び/又は、
【0042】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルは、レンズ要素の側頭側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルよりも大きく、及び/又は、
【0043】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルは、レンズ要素の側頭側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルよりも小さく、及び/又は、
【0044】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の直径は、レンズ要素の側頭側における光学要素の直径とは異なり、及び/又は、
【0045】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の直径は、レンズ要素の側頭側における光学要素の直径よりも大きく、及び/又は、
【0046】
- レンズ要素の鼻側における光学要素の直径は、レンズ要素の側頭側における光学要素の直径よりも小さく、及び/又は、
【0047】
- レンズ要素の鼻側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角とは異なり、及び/又は、
【0048】
- レンズ要素の鼻側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角よりも大きく、及び/又は、
【0049】
- レンズ要素の鼻側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角よりも小さく、及び/又は、
【0050】
- レンズ要素の上側における光学要素の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度とは異なり、及び/又は、
【0051】
- レンズ要素の上側における光学要素の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度よりも大きく、及び/又は、
【0052】
- レンズ要素の上側における光学要素の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度よりも小さく、及び/又は、
【0053】
- レンズ要素の上側における光学要素の屈折力及び/又は平均屈折力は、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルとは異なり、及び/又は、
【0054】
- レンズ要素の上側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルは、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルよりも大きく、及び/又は、
【0055】
- レンズ要素の上側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルは、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力及び/又は平均オプティカルよりも小さく、及び/又は、
【0056】
- レンズ要素の上側における光学要素の直径は、レンズ要素の下側における光学要素の直径とは異なり、及び/又は、
【0057】
- レンズ要素の上側における光学要素の直径は、レンズ要素の下側における光学要素の直径よりも大きく、及び/又は、
【0058】
- レンズ要素の上側における光学要素の直径は、レンズ要素の下側における光学要素の直径よりも小さい、及び/又は、
【0059】
- レンズ要素の上側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角とは異なり、及び/又は、
【0060】
- レンズ要素の上側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角よりも大きく、及び/又は、
【0061】
- レンズ要素の上側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角よりも小さく、及び/又は、
【0062】
- 光学要素が、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数が断面の一点から断面の周辺部に向かって増加するように構成されており、及び/又は、
【0063】
- 光学要素が、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均円柱度数が断面の一点から断面の周辺部に向かって増加するように構成されており、及び/又は、
【0064】
- 光学要素が、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が断面の中心から断面の周辺部に向かって増加するように構成されており、及び/又は、
【0065】
- 屈折領域が、光学的中心を含み、光学要素が、レンズ要素の光学的中心を通過する任意の断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が光学的中心からレンズ要素の周辺部に向かって増加するように構成されており、及び/又は、
【0066】
- 光学要素が、標準装用状態下で少なくとも1つの断面が水平方向断面であるように構成されており、及び/又は、
【0067】
- 屈折領域が、遠見視基準点、近見視基準点、及び遠見視基準点と近見視基準点を結ぶ経線を含み、光学要素が、標準装用状態下でレンズ要素の任意の水平方向断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が水平方向断面の経線との交線からレンズ要素の周辺部に向かって増加するように構成されており、及び/又は、
【0068】
- 断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加関数が、経線に沿って断面の位置に応じて異なり、及び/又は、
【0069】
- 断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加関数が、非対称的であり、及び/又は、
【0070】
- 光学要素が、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が、断面の第1の点から断面の周辺部に向かって増加し、断面の第2の点から断面の周辺部に向かって減少するように構成されており、第2の点が第1の点よりも断面の周辺部に近く、及び/又は、
【0071】
- 少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数変動関数が、ガウス関数であり、及び/又は、
【0072】
- 少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数変動関数が、二次関数であり、及び/又は、
【0073】
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、0.2mm以上、例えば0.4mm以上、例えば0.6mm以上、例えば0.8mm以上であり、且つ2.0mm以下、例えば1.0mm以下の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有し、及び/又は、
【0074】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、隣接しておらず、及び/又は、
【0075】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、隣接しており、及び/又は、
【0076】
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、例えば屈折領域の一部の周囲に環状形状を有し、及び/又は、
【0077】
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、レンズ要素の前面上に配置されており、及び/又は、
【0078】
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、レンズ要素の背面上に配置されており、及び/又は、
【0079】
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、レンズ要素の前面と背面の間に配置されており、及び/又は、
【0080】
- レンズ要素が、屈折領域を有する眼用レンズと、レンズ要素が装用される場合に眼用レンズに取り外し可能に取り付けられるように適合された複数の少なくとも3つの光学要素を有するクリップオンとを含み、及び/又は、
【0081】
- 半径+5mm以上のレンズ要素の光学的中心の距離に位置する幾何学的中心を含む、2~4mmに含まれる半径を有する円形ゾーンごとに、円形ゾーンの内側に位置する光学要素の部分の面積の合計と円形ゾーンの面積との間の比率が、20%~70%に含まれ、及び/又は、
【0082】
- 光学要素が、ネットワーク、例えば構造化されたメッシュ上に配置されており、及び/又は、
【0083】
- 光学要素が、四角形メッシュ、若しくは六角形メッシュ、若しくは三角形メッシュ、若しくは八角形メッシュ上に配置されており、及び/又は、
【0084】
- メッシュ構造が、ランダムなメッシュ、例えばボロノイメッシュであり、及び/又は、
【0085】
- 光学要素が、複数の同心リングに沿って配置されており、及び/又は、
【0086】
- 光学要素が、少なくとも2つの光学要素の群に編成され、光学要素の各群が、同じ中心を有する少なくとも2つの同心リングに編成され、光学要素の各群の同心リングが、群の少なくとも1つの光学要素に接する最小の円に対応する内径と、群の少なくとも1つの光学要素に接する最大の円に対応する外径とによって定義され、及び/又は、
【0087】
- 光学要素の同心リングの少なくとも一部、例えば全部が、光学要素が配置されたレンズ要素の表面の光学的中心に中心を有し、及び/又は、
【0088】
- 光学要素の同心リングが、9.0mm~60mmの直径を有し、及び/又は、
【0089】
- 光学要素の2つの連続する同心リング間の距離が、2.0mm以上、例えば3.0mm、好ましくは5.0mmであり、2つの連続する同心リング間の距離が、第1の同心リングの内径と第2の同心リングの外径との間の差によって定義され、第2の同心リングがレンズ要素の周辺部により近く、及び/又は、
【0090】
- レンズ要素が、2つの同心リング間に放射状に配置された光学要素を更に含み、及び/又は、
【0091】
- 光学要素が、複数の放射状セグメントに編成され、及び/又は、
【0092】
- 複数の放射状セグメントが、レンズ要素の中心ゾーンに中心を有する。
【0093】
本開示は更に、装用者によって装用されることを意図するアイウェア機器であって、
- 眼鏡フレームと、
- 本開示による少なくとも1つのレンズ要素と、を備え、
少なくとも1つのレンズ要素は、眼鏡フレームに取り付けられる、アイウェア機器に関する。
【0094】
本開示は更に、眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方において装用されることを意図するレンズ要素を特定するための、例えばコンピュータ手段によって実装される方法であって、前記レンズ要素は、
- 装用者の眼に対する所定の屈折力Pxに基づく屈折力を有する屈折領域であって、少なくとも中心ゾーンを備える屈折領域と、
- 装用者の眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する複数の光学要素と、を備え、
方法は、
- レンズ要素が取り付けられることを意図する眼鏡フレームを表すフレームデータを取得することと、
- 装用者の顔の少なくとも1つのパラメータを表す装用者のデータを取得することと、
- フレームデータ及び装用者のデータに基づいて、装用者の顔上に位置決めされる眼鏡を表すフィッティングデータを特定することと、
- フィッティングデータに基づいて、光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することと、を含む方法に関する。
【0095】
有利には、本開示による方法は、眼鏡フレームの形状を考慮に入れる異なる光学特性を有する領域を備えるレンズ要素を提供することを可能にする。特に、本プロセスは、装用者に対して最良の視覚能力及び/又は快適性を維持しながら、装用者の異常屈折を減速させる最適な機能を同時に提供する、装用者に対して最適に適合されたレンズ要素を提供することを可能にする。
【0096】
単独で又は組み合わせて検討され得る本開示の更なる実施形態によれば、
【0097】
- 方法は、フィッティングデータに基づいて、レンズ要素の鼻側の寸法とレンズ要素の対向する側頭側の寸法との間の比を定量化する側頭鼻比を特定することを含み、光学要素の少なくとも1つのパラメータは、側頭鼻比に基づいて最適化され、及び/又は、
【0098】
- 方法は、フィッティングデータに基づいて、レンズ要素の上側の寸法とレンズ要素の対向する下側の寸法との間の比を定量化する上下比を特定することを含み、光学要素の少なくとも1つのパラメータは、上下比に基づいて最適化され、及び/又は、
【0099】
- 方法は、フィッティングデータに基づいて、レンズ要素の背面と装用者の眼との間のレンズ眼間距離を特定することを含み、光学要素の少なくとも1つの光学パラメータは、レンズ眼間距離に基づいて最適化され、及び/又は、
【0100】
- 光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の密度を特定することを含み、第1の密度は、レンズ要素の対向する第2の側における光学要素の密度とは異なり、及び/又は、
【0101】
- 光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の屈折力を特定することを含み、第1の屈折力は、レンズ要素の第2の対向する側における光学要素の屈折力とは異なり、及び/又は、
【0102】
- 光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の大きさを特定することを含み、第1の大きさは、レンズ要素の第2の対向する側における光学要素の大きさとは異なり、及び/又は、
【0103】
- 光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側におけるレンズ要素の第1のプリズム角を特定することを含み、第1のプリズム角は、レンズ要素の第2の対向する側における光学要素のプリズム角とは異なり、及び/又は、
【0104】
- 光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素上の光学要素の配置及び中心ゾーンの大きさを特定することを含み、及び/又は、
【0105】
- フレームデータは、クォーテーションA、及び/又はクォーテーションB、及び/又はブリッジの寸法、及び/又はフレームの輪郭のうちの少なくとも1つを備え、及び/又は、
【0106】
- フレームデータは、選択された所定のフレームカテゴリに関連し、及び/又は、
【0107】
- 装用者のデータは、瞳孔間距離及び/又は装用者の眼の位置のうちの少なくとも1つを備え、及び/又は、
【0108】
- 方法は、装用者のデータ及び光学要素の最適化されたパラメータに基づいてレンズ要素を製造することを含み、及び/又は、
【0109】
- 方法は、レンズ要素の表面の一部、例えば屈折領域の一部及び光学要素の一部に少なくとも部分的にコーティング層を適用することを含む。
【0110】
ここで本発明の複数の実施形態について、ほんの一例として以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】本開示の一実施形態によるレンズ要素の正面略図を示す。
【
図2】本開示の一実施形態によるレンズ要素の側面略図を示す。
【
図3】先行技術の取り付けられたレンズ要素の正面図を示す。
【
図4】本開示の一実施形態による取り付けられたレンズ要素の正面図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による取り付けられたレンズ要素の正面図を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による取り付けられたレンズ要素の正面図を示す。
【
図7】本開示の一実施形態による取り付けられたレンズ要素の正面図を示す。
【
図8】本開示の一実施形態による2つのレンズ要素を備えるアイウェア機器の正面図を示す。
【
図9】本開示の一実施形態によるレンズ要素を提供するための方法のチャート-フロー実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図面内の構成要素は、簡略化及び明確化のために示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれてはいない。例えば、図面内の構成要素のうちの幾つかの寸法は、本発明の実施形態の理解を向上させることに役立つよう、他の構成要素と比較して誇張されている可能性がある。
【0113】
以下の記述において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前」、「後」等の用語又は相対位置を示す他の用語を用いる場合がある。これらの用語は、光学レンズの装用状態において理解されるべきである。
【0114】
本開示は、個人に適合され、眼鏡フレームに取り付けられ、前記個人の眼の前方で装用されることを意図するレンズ要素に関する。
【0115】
本発明に関連して、用語「レンズ要素」とは、光学レンズ、又は特定の眼鏡フレームに合うよう玉形加工済みの眼鏡光学レンズ、又は眼用レンズ、又は眼用レンズ上に位置決めされるよう適合される光学デバイスを指すことができる。光学デバイスは、眼用レンズの前面又は背面上に位置決めされてもよい。光学デバイスは、光学パッチ又は光学フィルムであり得る。光学デバイスは、例えば眼用レンズを備える眼鏡フレーム上にクリップ留めされるよう構成されるクリップ等、眼用レンズ上に取り外し可能に位置決めされるよう適合されてもよい。
【0116】
図1及び2に表すように、本開示によるレンズ要素10は、屈折領域12と複数の光学要素14とを備える。
【0117】
図2に表すように、レンズ要素10は、少なくとも第1の表面と、第2の表面に対向する第2の表面とを備える。例えば、第1の表面は、物体側に向かって凸状の表面として形成される物体側の面F1を備えてもよく、第2の表面は、物体側の面の曲率とは異なる曲率を有する凹状の表面として形成される眼球側の面F2を備えてもよい。レンズ要素10は、例えばポリカーボネートである有機材料で作成されてもよく、又はガラス等の鉱物材料で作成されてもよい。
【0118】
図1に示すように、レンズ要素は、3つの相補的なゾーン、即ち、中心ゾーン16、鼻側ゾーンN、及び対向する側頭ゾーンTに分割されてもよい。鼻側ゾーン及び側頭ゾーンは、前記レンズ要素の光学中心を通過する垂直線によって分離されるレンズ要素の対向する側方ゾーンとして定義される。言い換えれば、標準的な装用状態において真っ直ぐ前方を注視する装用者の瞳孔に面するレンズ要素のフレーミング基準点を通過する垂直線は、鼻側ゾーンと側頭側ゾーンとの間の境界を画成する。
【0119】
同様に、レンズ要素は、3つの相補的なゾーン、即ち、中心ゾーン16、上部ゾーンU、及び対向する下部ゾーンLに分割されてもよい。上部ゾーン及び下部ゾーンは、前記レンズ要素の光学中心を通過する水平線によって分離されるレンズ要素の対向する水平ゾーンとして定義される。言い換えれば、標準的な装用状態において真っ直ぐ前方を注視する装用者の瞳孔に面するレンズ要素のフレーミング基準点を通過する水平線は、上部ゾーンと下部ゾーンとの間の境界を画成する。
【0120】
代替として、レンズ要素は、5つの相補的なゾーン、即ち、中心ゾーン16、上部鼻側ゾーンUN、上部側頭ゾーンUT、下部鼻側ゾーンLN、及び下部側頭ゾーンLTに分割されてもよい。
【0121】
レンズ要素10の表面の少なくとも一部、好ましくは全部は、少なくとも1層のコーティング要素によって覆われてもよい。コーティング要素の少なくとも1層は、抗スクラッチ、抗反射、抗汚れ、抗ダスト、UV30フィルタ、ブルーライトフィルタ、抗摩耗特徴からなる群から選択される特徴を備えてもよい。
【0122】
図1及び2に示すように、レンズ要素10は、屈折領域12を備える。
【0123】
屈折領域12は、レンズ要素が適合されている個人の眼の処方に基づく屈折力Pxを有する。処方は、例えば、装用者の眼の異常屈折を矯正するために適合される。
【0124】
用語「処方」は、例えば、眼の前に位置決めされるレンズによって眼の視覚障害を矯正するために眼科医又は検眼医によって特定される、屈折力、乱視、プリズム偏位の光学特性のセットを意味すると理解するべきである。例えば、近視眼に対する処方は、遠見視力に対する軸との屈折力及び乱視の値を備える。
【0125】
処方には、装用者の眼に欠陥がなく、装用者に屈折力を提供しないことの表示を含んでもよい。かかる場合、屈折領域は、屈折力を提供しないように構成される。
【0126】
屈折領域は、好ましくは、複数の光学要素で形成された複数の領域以外の領域として形成される。言い換えれば、屈折領域は、複数の光学要素で形成された複数の領域を補完する領域である。
【0127】
図1及び2に示すように、屈折領域12は、レンズ要素10の少なくとも中心ゾーン16を備えてもよい。
【0128】
中心ゾーン16は、4mmよりも大きく22mmよりも小さい、例えば20mmよりも小さい特性寸法を有してもよい。
【0129】
中心ゾーン16は、レンズ要素10の基準点に中心を有してもよい。中心ゾーンの中心であってもよい基準点は、レンズ要素の幾何学的中心並びに/又は光学的基準点及び/若しくは近見視基準点及び/若しくは遠見視基準点のいずれか1つである。
【0130】
好ましくは、中心ゾーン16は、標準的な装用状態において真っ直ぐ前方を注視する装用者の瞳孔に面するフレーミング基準点に中心を有するか、又は少なくともそれを備える。
【0131】
装用状態とは、例えば装用時前傾角、巻角、角膜からレンズまでの距離、瞳孔-角膜距離、眼の回転中心(CRE)から瞳孔までの距離、CREからレンズまでの距離、及びにより定義される装用者の眼に対するレンズ要素の位置として理解されたい。
【0132】
角膜からレンズまでの距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常は水平に取られる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば8~16mmの間、好ましくは10~14mmの間に含まれ、より好ましくは12mmに等しい。
【0133】
瞳孔-角膜距離は、瞳孔と角膜との間の眼の視軸に沿った距離であり、通常は1~3mmの間に含まれ、例えば2mmに等しい。
【0134】
CREから瞳孔までの距離は、眼の視軸に沿ったその回旋点(CRE)と角膜との間の距離であり、例えば10~13mmの間、好ましくは11~12mmの間に含まれ、より好ましくは11.5mmに等しい。
【0135】
CREからレンズまでの距離は、眼のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常は水平に取られる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば20~30mmの間、好ましくは22.5~28mmの間に含まれ、より好ましくは25.5mmに等しい。
【0136】
装用時前傾角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向に取られる)における眼の視軸との交点における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸との間の垂直面内の角度であり、例えば-25°~+5°の間、好ましくは-12°~0°の間、より好ましくは-10°~-6°の間に含まれ、例えば-8°、好ましくは0°に等しい。
【0137】
巻角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向に取られる)における眼の視軸との交点における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸との間の水平面内の角度であり、例えば-10°~+25°の間、好ましくは0°~10°の間、より好ましくは0°~+5°の間に含まれ、例えば0°に等しい。
【0138】
標準的な装用状態の一例は、装用時前傾角度が-8°、角膜からレンズまでの距離が12mm、瞳孔-角膜距離が2mm、CREから瞳孔までの距離が11.5mm、CREからレンズまでの距離が25.5mm、及び巻き角0°によって定義されてもよい。
【0139】
標準的な装用状態の別の例は、装用時前傾角度が0°、角膜からレンズまでの距離が12mm、瞳孔-角膜距離が2mm、CREから瞳孔までの距離が11.5mm、CREからレンズまでの距離が25.5mm、及び巻き角が0°によって、より若い装用者に対して適合されてもよい。
【0140】
好ましくは、中心ゾーン16は、レンズの光学的中心を含み、網膜側上の±6°の周辺角度に対応する4mmよりも大きい特性寸法を有し、且つ網膜側上の±44°の周辺角度に対応する22mmよりも小さく、例えば網膜側上の±40°の周辺角度に対応する20mmよりも小さい特性寸法を有する。特性寸法は、直径であってもよく、又は楕円形状の中心ゾーンの長短軸であってもよい。
【0141】
屈折領域12は、更に、所定の屈折力Pxとは異なる少なくとも第2の屈折力Ppを含んでもよい。本発明の意味において、前記屈折力間の差が0.5D以上である場合、2つの屈折力は異なるとみなされる。
【0142】
屈折力Pxが装用者の眼の近視を補償するために処方される場合、第2の屈折力Ppは、屈折力Pxよりも大きくてもよい。
【0143】
屈折力Pxが装用者の眼の遠視を補償するために処方される場合、第2の屈折力Ppは、屈折力Pxよりも小さくてもよい。
【0144】
屈折領域12は、屈折力の連続的な変動を含んでもよい。例えば、屈折領域は、累進加入度設計を有する場合がある。屈折領域の光学設計には、屈折力が負であるフィッティングクロスと、レンズ要素が装用者に装用されているときに屈折領域の側頭側に延在する第1のゾーンとを備えてもよい。第1のゾーンにおいて、屈折力は側頭側に向かって移動するにつれて増加し、レンズの鼻側にわたって、眼用レンズの屈折力はフィッティングクロスと実質的に同じである。かかる光学設計は、国際公開第2016/107919号パンフレットにより詳細に開示されている。
【0145】
代替として、屈折領域12の屈折力は、少なくとも1つの不連続面を含んでもよい。
【0146】
図1及び2に示すように、レンズ要素10は、複数の光学要素14を備える。
【0147】
複数の少なくとも3つの光学要素は、装用者の眼の網膜上に画像を集束させない光学機能を有する。言い換えれば、例えば標準装用状態下で、装用者がレンズ要素を装用する場合、複数の光学要素を通過する光線は、装用者の眼の網膜上に集束しないことになる。言い換えれば、複数の少なくとも3つの光学要素の網膜上に焦点を合わせない光学機能は、乱れた画像、例えば、品質が低下した画像を装用者の網膜上に提供する。
【0148】
網膜に焦点を合わせない光学機能は、例えば、標準的な装用状態においてレンズ要素を装用し、中心視で、好ましくは無限遠に位置する目標物を真っ直ぐ前方を見る装用者について考慮される。装用者の眼は、無限遠に位置する物体を見る場合に非適応状態にあると考えられることが好ましい。しかし、当業者であれば、既知の調節反応モデルを用いて、装用者の眼と彼又は彼女が見ている物体との間の距離に応じて装用者の眼の調節状態を変化させることができるであろう。言い換えれば、装用者がレンズ要素を標準的な装用状態で装用する場合、無限遠に位置する物体からの光線であって、中心視において複数の光学要素を通過する光線は、屈折領域を通過する光線と比較して異なるように偏向され、眼の網膜上に集束しない。
【0149】
有利には、装用者の網膜上に画像を集束させないことにより、レンズ要素を装用する人の眼の近視又は遠視等の異常屈折の進行を抑制、軽減、又は少なくとも減速させる抑制信号を作成することを可能にする。
【0150】
装用者の眼の網膜上に画像を集束させない光学機能は、透過光学機能であってもよい。例えば、眼の網膜上に画像を集束させない光学機能は、眼の網膜の前方及び/又は後方に集束又は脱焦させた光量を生成する屈折光学機能であってもよい。
【0151】
少なくとも1つ、好ましくは50%超、より好ましくは全部の光学要素14は、例えば標準装用状態下で、装用者の網膜上以外の場所に集束させるように構成されてもよい。言い換えれば、複数の光学要素は、装用者の眼の網膜の前方及び/又は後方に集束させるよう構成されてもよい。
【0152】
光学要素14の少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、人の眼の網膜の前方に火面を作成するように構成された形状を有する。言い換えれば、かかる光学要素は、人がレンズ要素を標準視認状態で装用する場合に、もしあれば、光束が集中される全ての断面平面が人の眼の網膜の前方に位置するよう構成されている。
【0153】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、標準装用状態下で球面光学機能を有してもよい。
【0154】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、標準装用状態下で非球面光学機能を有してもよい。「非球面光学機能」とは、単一の集束点を有しないものとして理解されるべきである。例えば、非球面光学機能を有する光学要素を通過する光線は、集束されない光の量を提供することになる。
【0155】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、円柱度数を含んでもよい。
【0156】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、多焦点屈折マイクロレンズであってもよい。本発明の意味において、「多焦点屈折マイクロレンズ」には、二焦点(2つの焦点屈折力を有する)、三焦点(3つの焦点屈折力を有する)、連続変化する焦点屈折力を有する累進付加レンズ、例えば非球面レンズを含む。
【0157】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、非球面マイクロレンズであってもよい。本発明の意味において、非球面マイクロレンズは、例えば幾何学的又は光学的中心からマイクロレンズの周辺部まで、それらの表面にわたって連続的な度数展開を有する。
【0158】
非球面マイクロレンズは、絶対値で0.1D~10Dの間、好ましくは0.1D~3Dの間を含むマイクロレンズの中心において測定される平均屈折力とマイクロレンズの周辺において測定される平均屈折力との差を有してもよい。マイクロレンズの中心は、マイクロレンズの幾何学的中心に中心を有し、0.1mm~0.5mmに含まれる、好ましくは0.2mmに等しい直径を有する円形領域によって定義されてもよい。マイクロレンズの周辺部は、マイクロレンズの幾何学的中心に中心を有し、0.5mm~0.7mmに含まれる内径と、0.70mm~0.80mmに含まれる外径を有する環状領域によって定義されてもよい。本発明の一実施形態によれば、非球面マイクロレンズは、それらの幾何学的中心部の屈折力が、絶対値で2.0D~7.0Dに含まれ、それらの周辺部の屈折力が、絶対値で1.5D~6.0Dに含まれる。光学要素及びマイクロレンズに対して測定される屈折力の値は、前記光学要素又はマイクロレンズが配設される屈折領域の屈折力Pxに対する相対的な加算に関して考慮されるべきである。
【0159】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、回転対称性の有無にかかわらず、非球面を含んでもよい。
【0160】
光学要素の少なくとも1つ、例えば50%超、好ましくは全部は、トーリック面を含んでもよい。トーリック面は、その曲率中心を通過しない回転軸の周りで円又は弧を回転させることにより形成可能な(最終的に無限遠に配置される)回転面である。トーリック面レンズは、互いに直交する2つの異なる半径方向プロファイルを有するため、2つの異なる焦点屈折力を生成する。トーリックレンズのトーリック及び球面表面要素は、単一点焦点とは逆に非点収差光ビームを生成する。
【0161】
光学要素の少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、複屈折材料で作成される。言い換えれば、光学要素は、偏光及び光の伝播方向に依存する屈折率を有する材料で作成される。複屈折は、材料が示す屈折率間の最大差として定量化してもよい。
【0162】
装用者の眼の網膜に集束しない光学機能は、装用者の網膜以外に光を向け直し、集束させる回折機能であってもよい。光学要素の少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、回折マイクロレンズで作成される。回折マイクロレンズの少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、国際公開第2017/176921号パンフレットに開示されているようなメタ表面構造を備えてもよい。回折マイクロレンズは、位相関数ψ(r)が公称波長においてπ位相跳躍を有するフレネルレンズであってもよい。位相跳躍が2πの倍数である単焦点フレネルレンズと対照的に、明確にするために、これらの構造を「πフレネルレンズ」と呼ぶ可能性がある。その位相関数が
図5に示されているπフレネルレンズは、ジオプタ度数0δ及び正の1つのP、例えば3δに関連付けられた主に2つの回折次数で光を回折する。
【0163】
光学要素の少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、多焦点二値構成要素である。二値構造は、主に2つのジオプタ度数を同時に表示し、例えば-P/2及びP/2と表記される。
【0164】
光学要素の少なくとも1つ、好ましくは50%超、例えば全部は、ピクセル化レンズである。多焦点ピクセル化レンズの例は、Eyal Ben-Eliezer et al,APPLIED OPTICS,Vol.44,No.14,10 May 2005に開示されている。
【0165】
装用者の眼の網膜に集束しない光学機能は、装用者の網膜の前方及び/又は後方に散乱光を生成する散乱機能であってもよい。
【0166】
光学要素の少なくとも2つ、好ましくは50%超、例えば全部は、独立している。本発明での意味において、独立画像を生成する場合、2つの光学要素は独立しているとみなされる。具体的には、平行なビームにより「中心視で」照射された場合、各々の「独立した隣接光学要素」は自身に関連付けられたスポットを画像空間内の平面に形成する。言い換えれば、「光学要素」の1つが隠された場合、たとえこの光学要素が別の光学要素に隣接していてもスポットは消失する。
【0167】
光学要素14は、少なくとも屈折領域12の所定の屈折力Px、及び眼鏡フレームの形状に基づいて編成される。
【0168】
光学要素は、眼の網膜上に集束しない光学機能を有する。光学要素は、装用者の眼の網膜の前又は後ろに集束又は脱焦させた光量を生成し、それによって、装用者の眼の異常屈折の進行を遅らせる停止信号を生成する。本発明者らは、これらの停止信号の効率が、眼の網膜と比較したこれらの光量の配分に依存することを見出した。
【0169】
レンズ要素の鼻側部分がレンズ要素の側頭部分よりも大きい場合、集束又は脱焦させた光量のボリューム量は、装用者の網膜の鼻側部分よりも装用者の網膜の側頭部分の前方及び/又は後方において大きくなる。かかる差は、鼻側領域に対して網膜の側頭領域においてより強い停止信号をもたらし、したがって、眼の伸長の不均一な制御をもたらす。
【0170】
光学要素の編成において屈折領域の屈折力及び眼鏡フレームの形状を考慮することにより、網膜軸の両側に同様の光量を生成することが可能になる。言い換えれば、光量によって生成される停止信号は、眼において均一化され、それによって、眼の異常屈折の進行の減速を改善する。更に、屈折領域の屈折力及び眼鏡フレームの形状を考慮することにより、装用者にとって良好な視機能を維持することが可能になる。言い換えれば、本発明により、装用者の眼の異常屈折の進行を減速させることを向上させることと、装用者に対して最良の視力を維持することの両立を可能にする。
【0171】
図3に示すように、先行技術のレンズ設計は、光学要素が取り付けられる眼鏡フレームの形状に基づいて編成されていない光学要素を含む。したがって、先行技術の例において、レンズ要素の側頭部分は、眼の領域内により多くの集束又は非集束光量を生成するより多くの光学要素を備える。停止信号は、したがって、眼の領域において、対向する領域と比較してより強くなる。言い換えれば、眼の異常屈折の減速は、あまり効果的ではない。
【0172】
レンズ要素は、少なくとも1つの基準点、例えば幾何学的中心、及び/又は光学的中心、及び/又はレンズ要素が標準的な装用状態において装用される場合に真っ直ぐ前を見る装用者の眼の中心に面するフィッティング点を備えてもよい。レンズ要素の前記少なくとも1つの基準点を通過する垂直線は、レンズ要素を側頭側と鼻側とに分離し、鼻側は、レンズ要素が装用者によって装用される場合に装用者の鼻により近い。レンズ要素の前記少なくとも1つの基準点を通過する水平線は、レンズ要素を上側と下側とに分離する。
【0173】
レンズ要素が適合される装用者がレンズ要素を標準的な装用状態において装用する場合、側頭鼻比値及び上下比値が定義されてもよい。側頭鼻比値は、レンズ要素の鼻側の寸法とレンズ要素の対向する側頭側の寸法との間の比を定量化する。上下比値は、レンズ要素の上側の寸法とレンズ要素の対向する下側の寸法との間の比を定量化する。例えば、寸法は、側面の幅及び/若しくは高さ、並びに/又は側面の面積であってもよい。
【0174】
図4及び5に示すように、レンズ要素の鼻側における光学要素14の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度とは異なっていてもよい。鼻側及び側頭側における光学要素の密度の比は、側頭鼻比値に比例してもよい。例えば、鼻側及び側頭側における光学要素の密度の比は、側頭鼻比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0175】
例えば、レンズ要素の鼻側における光学要素の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度よりも大きい。代替として、レンズ要素の鼻側における光学要素の密度は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度よりも小さい。
【0176】
図3に示すように、眼鏡レンズは、鼻側よりも大きい面積を有する側頭側を備える。レンズ要素の側頭側と比較して鼻側における光学要素の密度を増加させることによって、同様の停止信号が鼻側及び側頭側における光学要素によって生成される。
【0177】
同様に、レンズ要素の上側における光学要素14の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度とは異なっていてもよい。上側及び下側における光学要素の密度の比は、上下比値に比例してもよい。例えば、上側及び下側における光学要素の密度の比は、上下比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0178】
例えば、レンズ要素の上側における光学要素の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度よりも大きい。代替として、レンズ要素の上側における光学要素の密度は、レンズ要素の下側における光学要素の密度よりも小さい。
【0179】
図3に示すように、眼鏡レンズは、上側よりも大きい面積を有する下側を備える。レンズ要素の下側と比較して上側における光学要素の密度を増加させることによって、同様の停止信号が上側及び下側における光学要素によって生成される。
【0180】
図6に示すように、レンズ要素の鼻側における光学要素14の屈折力及び/又は平均屈折力は、レンズ要素の側頭側における光学要素の密度とは異なっていてもよい。説明を明確にするために、本開示の以下の実施形態は、用語「屈折力」を用いて説明する。しかし、当業者にとって、光学要素が球状ではない場合、「屈折力」を「平均屈折力」に置き換えることは明らかであろう。鼻側及び側頭側における光学要素の屈折力の比は、側頭鼻比値に比例してもよい。例えば、鼻側及び側頭側における光学要素の屈折力の比は、側頭鼻比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0181】
例えば、レンズ要素の鼻側における光学要素の屈折力は、レンズ要素の側頭側における光学要素の屈折力よりも大きい。代替として、レンズ要素の鼻側における光学要素の屈折力は、レンズ要素の側頭側における光学要素の屈折力よりも小さい。
【0182】
図3に示すように、眼鏡レンズは、鼻側よりも大きい面積を有する側頭側を備える。レンズ要素の側頭側と比較して鼻側における光学要素の屈折力を増加させることによって、同様の停止信号が鼻側及び側頭側における光学要素によって生成される。
【0183】
同様に、レンズ要素の上側における光学要素14の屈折力は、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力とは異なっていてもよい。上側及び下側における光学要素の屈折力の比は、上下比値に比例してもよい。例えば、上側及び下側における光学要素の屈折力の比は、上下比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0184】
例えば、レンズ要素の上側における光学要素の屈折力は、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力よりも大きい。代替として、レンズ要素の上側における光学要素の屈折力は、レンズ要素の下側における光学要素の屈折力よりも小さい。
【0185】
図3に示すように、眼鏡レンズは、上側よりも大きい面積を有する下側を備える。レンズ要素の下側と比較して上側における光学要素の屈折力を増加させることによって、同様の停止信号が上側及び下側における光学要素によって生成される。
【0186】
図7に示すように、レンズ要素の鼻側における光学要素14の屈折力の大きさ、例えば直径は、レンズ要素の側頭側における光学要素の大きさとは異なっていてもよい。鼻側及び側頭側における光学要素の大きさの比は、側頭鼻比値に比例してもよい。例えば、鼻側及び側頭側における光学要素の大きさの比は、側頭鼻比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0187】
例えば、レンズ要素の鼻側における光学要素の大きさは、レンズ要素の側頭側における光学要素の大きさよりも大きい。代替として、レンズ要素の鼻側における光学要素の大きさは、レンズ要素の側頭側における光学要素の大きさよりも小さい。
【0188】
図3に示すように、眼鏡レンズは、鼻側よりも大きい面積を有する側頭側を備える。レンズ要素の側頭側と比較して鼻側における光学要素の大きさを大きくすることによって、同様の停止信号が鼻側及び側頭側における光学要素によって生成される。
【0189】
同様に、レンズ要素の上側における光学要素14の大きさは、レンズ要素の下側における光学要素の大きさとは異なっていてもよい。上側及び下側における光学要素の大きさの比は、上下比値に比例してもよい。例えば、上側及び下側における光学要素の大きさの比は、上下比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0190】
例えば、レンズ要素の上側における光学要素の大きさは、レンズ要素の下側における光学要素の大きさよりも大きい。代替として、レンズ要素の上側における光学要素の大きさは、レンズ要素の下側における光学要素の大きさよりも小さい。
【0191】
図3に示すように、眼鏡レンズは、上側よりも大きい面積を有する下側を備える。レンズ要素の下側と比較して上側における光学要素の大きさを大きくすることによって、同様の停止信号が上側及び下側における光学要素によって生成される。
【0192】
レンズ要素の鼻側における光学要素14の屈折力のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角とは異なっていてもよい。鼻側及び側頭側における光学要素のプリズム角間の差は、側頭鼻比値に比例してもよい。例えば、鼻側及び側頭側における光学要素のプリズム角の差は、側頭鼻比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。光学要素の屈折力の値と同様に、光学要素に対して測定されるプリズム角は、前記光学要素が配設されるレンズ要素のベース曲率に対して相対的であると考えられるべきである。
【0193】
例えば、レンズ要素の鼻側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角よりも大きい。代替として、レンズ要素の鼻側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の側頭側における光学要素のプリズム角よりも小さい。
【0194】
図3に示すように、眼鏡レンズは、鼻側よりも大きい面積を有する側頭側を備える。レンズ要素の側頭側と比較して鼻側における光学要素のプリズム角を増加させることによって、同様の停止信号が鼻側及び側頭側における光学要素によって生成される。
【0195】
同様に、レンズ要素の上側における光学要素14のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角とは異なっていてもよい。上側及び下側の光学要素のプリズム角間の差は、上下比値に比例してもよい。例えば、上側及び下側における光学要素のプリズム角の差は、上下比の0.5~2倍の間、好ましくは0.5~1.5倍の間に含まれる。
【0196】
例えば、レンズ要素の上側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角よりも大きい。代替として、レンズ要素の上側における光学要素のプリズム角は、レンズ要素の下側における光学要素のプリズム角よりも小さい。
【0197】
図3に示すように、眼鏡レンズは、上側よりも大きい面積を有する下側を備える。レンズ要素の下側と比較して上側における光学要素のプリズム角を増加させることによって、同様の停止信号が上側及び下側における光学要素によって生成される。
【0198】
光学要素14は、レンズ要素の少なくとも1つの断面、例えば複数の断面に沿って、光学要素の平均円柱度数が、前記断面の一点から前記断面の周辺部に向かって変化する、例えば増加又は減少するように構成されてもよい。
【0199】
周知のように、最小曲率CURV
minは次式により非球面表面上の任意の点で定義される。
【数1】
式中、R
maxはメートル単位で表される局所最大曲率半径であり、CURV
minはジオプタ単位で表される。
【0200】
同様に、最大曲率CURV
maxは次式により非球面表面上の任意の点で定義され得る。
【数2】
式中、R
minはメートル単位で表される局所最小曲率半径であり、CURV
maxはジオプタ単位で表される。
【0201】
表面が局所的に球面である場合、局所最小曲率半径Rminと局所最大曲率半径Rmaxは等しく、したがって最小及び最大曲率CURVminとCURVmaxも同一であることに留意され得る。表面が非球面の場合、局所最小曲率半径Rminと局所最大曲率半径Rmaxは異なる。
【0202】
最小及び最大曲率CURVmin、CURVmaxのこれらの式から、SPHmin及びSPHmaxとラベル付けされた最小及び最大球面は考慮される面の種類から推論できる。
【0203】
考慮される面が物体側の面(前面とも呼ばれる)である場合、式は以下の通りである。
【数3】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0204】
考慮される面が眼球側の面(背面とも呼ばれる)である場合、式は以下の通りである。
【数4】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0205】
周知のように、非球面表面上の任意の点における平均球面度数SPHmeanも次式により定義され得る。
【数5】
【0206】
したがって、平均球面度数の式は、考慮される表面に依存し、
表面が物体側の面であれば、
【数6】
であり、
表面が眼球側の面であれば、
【数7】
である。
【0207】
円柱CYLもまた、次式:
CYL=|SPHmax-SPHmin|
によって定義される。
【0208】
光学要素14は、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均円柱度数が前記断面の一点から前記断面の周辺部に向かって変化する、例えば増加又は減少するように構成されてもよい。
【0209】
レンズ要素の断面に沿って光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数を変化させることにより、眼の異常屈折の進行をより良好に抑制することにつながる、近視抑制信号の強度の拡大による焦点ぼけの変化を可能にする。
【0210】
光学要素14は、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が前記断面の中心から前記断面の周辺部に向かって増加するように構成されてもよい。
【0211】
光学要素は、標準装用状態下で少なくとも1つの断面が水平方向断面であるように構成されてもよい。
【0212】
屈折領域12は、光学的中心を含んでもよく、光学要素14は、レンズ要素の光学的中心を通過する任意の断面に沿って、光学要素の平均球度数及び/又は平均円柱度数が変化する、例えばレンズ要素の光学的中心から周辺部に向かって増加するように構成されてもよい。
【0213】
屈折領域12は、遠見視基準点、近見視基準点、及び遠見視基準点と近見視基準点とを結ぶ経線を備えてもよく、光学要素14は、標準装用状態下でレンズ要素の任意の水平方向断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が変化するように、例えば、前記水平方向断面と経線との交線からレンズ要素の周辺部に向かって増加するように構成されてもよい。
【0214】
断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加又は減少関数は、経線に沿って前記断面の位置に応じて異なってもよい。
【0215】
断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数増加若しくは減少関数は、非対称であってもよい。
【0216】
光学要素14は、レンズ要素の少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が、前記断面の第1の点から前記断面の周辺部に向かって増加し、前記断面の第2の点から前記断面の周辺部に向かって減少するように構成されてもよく、第2の点は第1の点よりも前記断面の周辺部に近い。
【0217】
有利には、装用者の眼の異常屈折の進行の減速を改善することを可能にする。
【0218】
少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数変動関数は、ガウス関数又は二次関数であってもよい。
【0219】
光学要素14の少なくとも一部、例えば50%超、好ましくは全部は、0.2mm以上、例えば0.4mm以上、例えば0.6mm以上、例えば0.8mm以上であり、且つ2.0mm以下、例えば1.0mm以下の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有するマイクロレンズであってもよい。
【0220】
図5に表されるように、光学要素14の少なくとも1つ、例えば全部は、非連続であってもよい。
【0221】
図4に表されるように、光学要素の少なくとも1つ、好ましくは全部は、連続している。
【0222】
本開示での意味において、レンズ基面の表面上に配置された2つの光学要素が隣接するのは、2つの光学要素をリンクする前記表面により支持された経路が存在する場合、及び光学要素が配置された基面に前記経路に沿って到達しない場合である。
【0223】
少なくとも2つの光学要素が配置された表面が球面である場合、基面は、前記球面に対応する。言い換えれば、球面上に配置された2つの光学要素が隣接するのは、前記球面により支持されていて当該光学要素を接続している経路が存在する場合、且つ前記経路に沿って球面に到達できない場合である。
【0224】
少なくとも2つの光学要素が配置された表面が非球面である場合、基面は前記非球面表面に最も良く適合する局所球面に対応する。言い換えれば、非球面表面上に配置された2つの光学要素が隣接するのは、前記非球面表面により支持されていて当該光学要素を接続している経路が存在する場合、且つ前記経路に沿って非球面表面に最も良く適合する球面に到達できない場合である。
【0225】
有利には、隣接する光学要素を有することは、レンズ要素の美観を向上させるのに役立ち、且つ製造がより容易である。
【0226】
光学要素14の少なくとも1つ、例えば全部は、例えば屈折領域の一部の周囲に環状形状又は半環状形状を有する。有利には、それにより、屈折領域及び光学要素の良好な分配を提供することにより、装用者の眼の屈折異常の進行を減少又は少なくとも遅延させる光学要素の効果的関数を維持しながら、前記屈折異常をより良好に矯正できるようにする。
【0227】
光学要素14の少なくとも一部、例えば全部は、レンズ要素の前面上に配置されてもよい。レンズ要素の前面は、物体に向かって面するレンズ要素の物体側F1に対応する。
【0228】
光学要素14の少なくとも一部、例えば全部は、レンズ要素の背面上に配置されてもよい。レンズ要素の背面は、眼に向かって面するレンズ要素の眼球側F2に対応する。
【0229】
光学要素14の少なくとも一部、例えば全部は、例えばレンズ要素が2枚のレンズ基面の間に封入されている場合、レンズ要素の前面と背面との間に配置されてもよい。有利には、光学要素に対するより良好な保護を提供する。
【0230】
本発明の一実施形態によれば、光学要素14の第1の部分、例えば光学要素の少なくとも25%、好ましくは光学要素の少なくとも50%は、レンズ要素10の背面F2上に位置し、光学要素の残りは、レンズ要素の前面F1及び/又は前面と後面との間の少なくとも一方に位置する。
【0231】
代替として、レンズ要素は、屈折領域12を有する眼用レンズと、複数の光学要素14を有し、且つレンズ要素が装用される場合に眼用レンズに取り外し可能に取り付けられるように適合されたクリップオンとを備えてもよい。有利には、眼球の異常屈折を減速させる機能がいつ存在すべきかを管理することを可能にする。
【0232】
半径+5mm以上のレンズ要素の光学的中心の距離に位置する幾何学的中心を含む、2~4mmに含まれる前記半径を有する円形ゾーンごとに、前記円形ゾーンの内側に位置する光学要素14の面積の合計と前記円形ゾーンの面積との間の比率は、20%~70%に含まれる。
【0233】
光学要素は、レンズ要素上にランダムに分配されてもよい。代替として、光学要素は、ネットワーク、例えば構造化されたメッシュ上のレンズ要素上に位置決めされる。構造化されたメッシュは、四角形メッシュ、又は六角形メッシュ、又は三角形メッシュ、又は八角形メッシュであってもよい。代替として、メッシュ構造は、ランダムなメッシュ、例えばボロノイメッシュであってもよい。
【0234】
図2~6に示すように、光学要素14は、複数の同心リングに沿って編成されてもよい。光学要素の同心リングは、環状リングであってもよい。
【0235】
有利には、かかる構成は、装用者の眼の異常屈折の減速と、装用者の視覚能力又は快適性との間に優れたバランスを提供する。
【0236】
特に、光学要素は、光学要素の少なくとも2つの群に編成することができ、光学要素の各群は、同じ中心を有する少なくとも2つの同心リングに編成される。各群の光学要素の同心リングは、内径及び外径によって定義される。
【0237】
光学要素の各群の同心リングの内径は、光学要素の前記群の少なくとも1つの光学要素に接する最小の円に対応する。光学要素の同心リングの外径は、前記群の少なくとも1つの光学要素に接する最大の円に対応する。
【0238】
例えば、レンズ要素は、光学要素のn個のリングを含んでもよく、finner 1は、レンズ要素の光学的中心に最も近い同心リングの内径を指し、fouter 1は、レンズ要素の光学的中心に最も近い同心リングの外径を指す。
【0239】
光学要素の2つの連続する同心リングiとi+1間の距離Diは次式で表してもよく、
Di=|finner i+1-fouter i|
ここで、fouter iは光学要素iで第1のリングの外径を指し、finner i+1は第1のリングに連続していてレンズ要素の周縁により近い光学要素i+1の第2のリングの内径を指す。
【0240】
光学要素は、レンズ要素の表面の光学的中心に中心を有する同心リングに編成されてもよい。言い換えれば、レンズ要素の光学的中心及び光学要素の同心リングの中心は、一致してもよい。例えば、レンズ要素の幾何学的中心、レンズ要素の光学的中心、及び光学要素の同心リングの中心は一致する。本開示での意味において、一致するという用語は、実際に互いに近接する、例えば1.0mm未満の距離があることと理解されたい。
【0241】
2つの連続する同心リング間の距離Diは、iに応じて変化してもよい。例えば、2つの連続する同心リング間の距離Diは、1.0mm~5.0mmの間で変化してもよい。
【0242】
光学要素の2つの連続する同心リング間の距離Diは、1.00mmよりも大きくてもよく、好ましくは2.0mm、より好ましくは4.0mm、更により好ましくは5.0mmである。有利には、光学要素の2つの連続する同心リング間の距離Diを1.00mmよりも大きくすることにより、光学要素のこれらのリング間の屈折領域をより大きく管理することを可能にし、その結果、より良好な視力を提供する。
【0243】
本開示の一実施形態によれば、2つの連続する同心リングiとi+1間の距離Diは、iがレンズ要素の周辺部に向かって増加する場合に増加してもよい。
【0244】
光学要素の同心リングは、9mm~60mmに含まれる直径を有してもよい。
【0245】
レンズ要素は、少なくとも2つの同心リング、好ましくは5つ超、より好ましくは10個超の同心リングに配置された光学要素を備えてもよい。例えば、光学要素は、レンズの光学的中心に中心を有する11個の同心リングに配設されてもよい。
【0246】
レンズ要素の同心リング上の全ての光学要素の直径diは、同一であってもよい。例えば、レンズ要素上の全ての光学要素は、同一の直径を有する。
【0247】
代替として、光学要素14は、複数の放射状セグメントに沿って編成されてもよい。放射状セグメントは、レンズ要素の基準点、例えばレンズ要素の光学的又は幾何学的中心に中心を有してもよい。
【0248】
本発明者らは、斜め方向にわたって送達される近視抑制信号のレベルが、枢軸方向にわたって提示される近視抑制信号のレベルよりも顕著に高く、それによって、視覚知覚の点で副作用のない、グローバルに良好な近視抑制治療がもたらされることを観察した。言い換えれば、かかる構成により、装用者の最適な視覚能力又は快適性を維持しながら、装用者の眼の異常屈折の減速を改善する。
【0249】
光学要素は、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の大きさ又は直径が、前記断面の一点から前記断面の周辺部に向かって変化する、例えば増加又は減少するように構成されてもよい。
【0250】
光学要素は、光学要素の大きさ又は直径が、レンズ要素の前記断面の第1の点から前記断面の周辺部に向かって増加し、前記断面の第2の点から前記断面の周辺部に向かって減少するように構成されてもよく、第2の点は第1の点よりも前記断面の周辺部に近い。
【0251】
レンズ要素は、更に、2つの同心リングの間に放射状に配置された光学要素を備えてもよい。
【0252】
異なる形状を有する眼鏡フレームの異なるモデル又はブランドは、標準的な装用状態下における一般的なモデル装用者に対して定義される側頭鼻比及び/又は上下比に従って分類されてもよい。これらの眼鏡フレームカテゴリのそれぞれについて、光学要素の配置が適合されるレンズ要素のセットが定義されてもよい。
【0253】
本開示は更に、装用者によって装用されるよう適合されるアイウェア機器に関する。アイウェア機器は、装用者に適合される少なくとも1つ、例えば2つのレンズ要素を備える。
【0254】
図8に示すように、アイウェア機器30は、当業者に周知の、眼鏡フレーム32と、ブリッジ34と、テンプル36とを備える従来のアイウェア機器である。明確にするために、テンプル36は
図8に示されている。レンズ要素20は、眼鏡フレームに取り付けられる。
【0255】
本開示は更に、例えばコンピュータ手段によって実装され、本開示に従って、眼鏡フレームに取り付けられ、装用者の眼の前方に装用されることを意図するレンズ要素10を特定及び/又は最適化及び/又は提供するための方法に関する。
【0256】
図9に示すように、本方法は、フレームデータが取得されるステップS2を含む。フレームデータは、レンズ要素が取り付けられることを意図する眼鏡フレームを表すデータを少なくとも備える。
【0257】
フレームデータは、眼鏡フレームの水平ボックス幅に対応する寸法であるクォーテーションA、及び/又は垂直ボックス長に対応する寸法であるクォーテーションB、及び/又はブリッジの寸法、及び/又は眼鏡フレームの輪郭、及び/又は眼鏡フレームの2D正面投影、及び/又は眼鏡フレームの3D表現のうちの少なくとも1つを備える。
【0258】
フレームデータは、眼鏡フレームの選択された所定のカテゴリに関連してもよい。異なるブランドからの最も多い眼鏡フレーム設計は、同様の寸法を有する眼鏡フレームのセットに分類されてもよい。したがって、眼鏡フレーム設計は、例えば、寸法A、及び/又は寸法B、及び/又はブリッジの寸法等の特定の寸法に基づいて分類されてもよい。更に、眼鏡フレームのカテゴリは、瞳孔間距離に基づいてもよい。
【0259】
図9に示すように、本方法は、着用者のデータが取得されるステップS4を含む。装用者のデータは、装用者の顔の少なくとも1つのパラメータを表す。
【0260】
装用者のデータは、瞳孔間距離、及び/又は装用者の眼の位置、及び/又は装用者の顔の2D正面投影、及び/又は装用者の顔の3D表現のうちの少なくとも1つを備える。
【0261】
装用者のデータは、更に、眼の回転中心ERC、瞳孔、角膜等の眼の一般的な形態に関するデータ、及び/又は網膜の形状に関するデータを備えてもよい。眼の形態及び網膜の形状に関するデータは、所定の眼モデルに基づいてもよいか、又は装用者に関して測定されてもよい。
【0262】
本方法は、更に、フレームデータ及び装用者のデータに基づいてフィッティングデータを特定するステップS6を含む。フィッティングデータは、装用者の顔に位置決めされる眼鏡フレームを表す。
【0263】
フィッティングデータは、眼鏡フレーム内側の瞳孔高さの値及び/又は眼鏡フレームに取り付けられるレンズ内側の眼の位置を備えてもよい。
【0264】
フィッティングデータは、装用者に適合されるレンズ要素10の装用状態に関連する装用状態データを備えてもよい。例えば、装用状態データは、標準的な装用状態に対応してもよい。代替として、装用状態データは、装用者に対して測定され、及び/又は例えば、装用者から取得された形態学的又は姿勢的情報に基づいてカスタマイズされてもよい。
【0265】
フィッティングデータは、装用者の眼とレンズ要素の背面との間の距離を備えてもよい。
【0266】
本開示による方法は、更に、フィッティングデータに基づいて光学要素の少なくとも1つのパラメータを特定及び/又は最適化するステップS10を含む。好ましくは、レンズ要素の特定の側、例えば鼻側、側頭側、上側、又は下側における光学要素の少なくとも1つのパラメータは最適化される。
【0267】
有利には、フィッティングデータに基づいて光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することにより、眼鏡フレームの形状を考慮する異なる光学特性を有する領域を備えるレンズ要素を提供することが可能になる。特に、本プロセスは、装用者に対して最良の視覚能力及び/又は快適性を維持しながら、装用者の異常屈折を減速させる最適な機能を同時に提供する、装用者に対して最適に適合されたレンズ要素を提供することを可能にする。
【0268】
光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側、例えば、鼻側、側頭側、上側、又は下側のうちの1つにおける光学要素の第1の密度を特定することを含んでもよい。レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の密度は、レンズ要素の対向する第2の側における光学要素の密度とは異なる。
【0269】
光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側、例えば、鼻側、側頭側、上側、又は下側のうちの1つにおける光学要素の第1の屈折力を特定することを含んでもよい。レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の屈折力は、レンズ要素の対向する第2の側における光学要素の屈折力とは異なる。
【0270】
光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側、例えば鼻側、側頭側、上側、又は下側のうちの1つにおける光学要素の第1の大きさ、例えば直径を特定することを含んでもよい。レンズ要素の第1の側における光学要素の第1の大きさは、レンズ要素の対向する第2の側における光学要素の大きさとは異なる。
【0271】
光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、レンズ要素の第1の側、例えば、鼻側、側頭側、上側、又は下側のうちの1つにおける光学要素の第1のプリズム角を特定することを含んでもよい。レンズ要素の第1の側における光学要素の第1のプリズム角は、レンズ要素の対向する第2の側における光学要素のプリズム角とは異なる。
【0272】
光学要素の少なくとも1つのパラメータを最適化することは、光学要素の配置及びレンズ要素の中心ゾーンの大きさを特定することを含んでもよい。
【0273】
図9に示すように、本方法は、更に、フィッティングデータに基づいて側頭鼻比を特定するステップS8Aを含んでもよい。側頭鼻比は、レンズ要素の鼻側の寸法とレンズ要素の対向する側頭側の寸法との間の比を定量化する。例えば、寸法は、側面の幅及び/若しくは高さ、並びに/又は側面の面積であってもよい。
【0274】
光学要素の少なくとも1つのパラメータは、更に、側頭鼻比に基づいて最適化されてもよい。
【0275】
図9に示すように、本方法は、更に、フィッティングデータに基づいて上下比を特定するステップS8Bを含んでもよい。上下比は、レンズ要素の上側の寸法とレンズ要素の対向する下側の寸法との間の比を定量化する。例えば、寸法は、側面の幅及び/若しくは高さ、並びに/又は側面の面積であってもよい。
【0276】
光学要素の少なくとも1つのパラメータは、更に、上下比に基づいて最適化されてもよい。
【0277】
図9に示すように、本方法は、更に、フィッティングデータに基づいてレンズ眼間距離を特定するステップS8Cを含んでもよい。レンズ眼間距離は、眼鏡フレームに取り付けられるレンズの背面と装用者の眼との間の距離に相当する。
【0278】
光学要素の少なくとも1つのパラメータは、更に、レンズ眼間距離に基づいて最適化されてもよい。
【0279】
本方法は、更に、装用者のデータ及び光学要素の最適化されたパラメータに基づいてレンズ要素を製造するステップS12を含んでもよい。
【0280】
本方法は、更に、光学要素の屈折及び部分の少なくとも一部の上方に少なくとも1層のコーティング要素を適用するステップS14を含んでもよい。
【0281】
本開示は、プロセッサにとってアクセス可能であり、且つプロセッサによって実行される場合に、プロセッサに本開示による方法のステップを実行させる1つ以上の記憶された命令のシーケンスを含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0282】
本開示は更に、本開示によるコンピュータプログラム製品の1つ以上の命令シーケンスを担持するコンピュータ可読媒体に関する。
【0283】
更に、本開示は、本開示の方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0284】
本開示はまた、その上に記録されるプログラムを有するコンピュータ可読記憶媒体に関し、ここで、プログラムはコンピュータに本開示の方法を実行させる。
【0285】
本開示は更に、1つ以上の命令のシーケンスを記憶し、本開示による方法のステップの少なくとも1つを実行するように適合されたプロセッサを備えるデバイスに関する。
【0286】
本開示は更に、コンピュータによって読み取り可能であり、本開示の方法を実行するためにコンピュータにより実行可能な命令のプログラムを有形に具体化する、非一時的プログラム記憶装置に関する。
【0287】
以下の検討により明らかなように、特に明記のない限り、本明細書を通じて、「コンピューティング」、「計算」、又は「生成」等の用語を用いる検討は、コンピューティングシステムのレジスタ及び/又はメモリ内部の電子的等の物理的数量として表されるデータを、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、又は他のかかる情報記憶装置、転送、或いは表示デバイス内部の物理的数量として同様に表される他のデータに操作及び/又は変換するコンピュータ又はコンピューティングシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイスの動作及び/又は処理を指すことは正しく理解される。
【0288】
本発明の実施形態は、本明細書中の操作を行うための装置を含んでいてもよい。この装置は、所望の目的のために特別に構築されてもよく、又は、コンピュータ内に記憶されるコンピュータプログラムによって選択的に起動されるか又は再構成される汎用コンピュータ又はデジタル信号プロセッサ(「DSP」)を含んでもよい。かかるコンピュータプログラムは、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能及びプログラム可能読出し専用メモリ(EEPROM)、磁気又は光カードを含む任意の種類のディスク、又は電子的命令を格納するために適しており且つコンピュータシステムバスに結合することが可能なその他の種類の媒体等であるが、これらに限定されないコンピュータ可読記憶媒体内に格納されてもよい。
【0289】
本明細書中に提示する処理及び表示は、本質的に、いずれか特定のコンピュータ又は他の装置に関係しない。様々な汎用システムが本明細書中の教示に従うプログラムと共に使用される場合があり、又は、所望の方法を行うためにより特化した装置を構築することが便利であることが判明する場合がある。様々なこれらのシステムに対する所望の構造は以下の説明から出現することになる。加えて、本発明の実施形態は任意の特定のプログラミング言語を参照して説明しない。様々なプログラミング言語が本明細書中で説明するような本発明の教示を実施するために用いられてもよいことは、正しく理解されるであろう。
【0290】
上述の例示的実施形態を参照することで当業者には多くの更なる変更及び変形が明らかになるが、これらは例示目的で提供されるにすぎず、添付の請求項によってのみ特定される本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0291】
請求項において、単語「含む」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を除外しない。互いに異なる従属請求項で異なる特徴が引用されていたとしても、これらの特徴の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。請求項におけるいかなる参照符号も本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0292】
10 レンズ要素
12 屈折領域
14 光学要素
16 中心ゾーン
20 レンズ要素
30 アイウェア機器
32 眼鏡フレーム
34 ブリッジ
36 テンプル
【国際調査報告】