(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】KRAS変異体がんの処置のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K45/06
A61K31/519
A61K31/517
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505416
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022074317
(87)【国際公開番号】W WO2023010121
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマッチ ジョン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロビショー ジャクリーン ピー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA23
4C084MA02
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC45
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC42
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、KRAS変異体がんの処置のための方法および組成物を提供する。本開示の局面は、KRAS阻害剤(例えば、ソトラシブ、アダグラシブ)およびポジオチニブを投与する工程を含む、KRAS変異体非小細胞肺がんを含むKRAS変異体がんの処置のための方法を対象とする。KRAS阻害剤(例えば、ソトラシブ、アダグラシブ)およびポジオチニブを含む薬学的組成物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の(a) KRAS阻害剤および(b)ポジオチニブを、対象に投与する工程を含む、KRAS変異体がんについて対象を処置する方法。
【請求項2】
KRAS阻害剤およびポジオチニブが、実質的に同時に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
KRAS阻害剤およびポジオチニブが、連続的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
KRAS阻害剤が、ポジオチニブを投与する前に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
KRAS阻害剤が、ポジオチニブを投与した後に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
KRAS阻害剤が、KRAS
G12C阻害剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
KRAS
G12C阻害剤が、ソトラシブ(AMG 510)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
KRAS
G12C阻害剤が、アダグラシブ(MRTX849)である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
対象におけるKRAS
G12C変異を検出する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
対象が、がん治療で以前に処置されていた、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
がん治療が、化学療法を含むものであった、請求項10記載の方法。
【請求項12】
がん治療が、KRAS阻害剤を含むものであった、請求項10記載の方法。
【請求項13】
対象が、がん治療に抵抗性であると決定されていた、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象が、KRAS阻害剤で以前に処置されていなかった、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
KRAS変異体がんが、KRAS変異体非小細胞肺がんである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
KRAS変異体がんが、KRAS変異体結腸直腸がんである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
KRAS変異体がんが、KRAS変異体膵がんである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポジオチニブが、0.1 mg~50 mgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ポジオチニブが、1 mg~25 mgの用量で投与される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ポジオチニブが、1 mg~5 mgの用量で投与される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
ポジオチニブが、経口的に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
KRAS阻害剤およびポジオチニブが、1日当たり1回、複数日間投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
KRAS阻害剤およびポジオチニブが、1日当たり2回、複数日間投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
追加のがん治療を対象に施す工程をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
追加のがん治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a) KRAS阻害剤;
(b) ポジオチニブ;および
(c) 薬学的に許容される賦形剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
KRAS阻害剤が、KRAS
G12C阻害剤である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
KRAS
G12C阻害剤が、ソトラシブ(AMG 510)である、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項29】
KRAS
G12C阻害剤が、アダグラシブ(MRTX849)である、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項30】
ポジオチニブが、0.1 mg~50 mgの用量でのものである、請求項26~29のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
ポジオチニブが、1 mg~25 mgの用量でのものである、請求項30記載の薬学的組成物。
【請求項32】
ポジオチニブが、1 mg~5 mgの用量でのものである、請求項30記載の薬学的組成物。
【請求項33】
KRAS
G12C非小細胞肺がんについて対象を処置する方法であって、
有効量の
(a) KRAS
G12C阻害剤;および
(b) ポジオチニブ
を前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項34】
KRAS
G12C阻害剤およびポジオチニブが、実質的に同時に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
KRAS
G12C阻害剤およびポジオチニブが、連続的に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
KRAS
G12C阻害剤が、ポジオチニブを投与する前に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項37】
KRAS
G12C阻害剤が、ポジオチニブを投与した後に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項38】
KRAS
G12C阻害剤が、ソトラシブである、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
KRAS
G12C阻害剤が、アダグラシブである、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
対象が、がん治療で以前に処置されていた、請求項33~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
がん治療が、化学療法を含むものであった、請求項40記載の方法。
【請求項42】
がん治療が、KRAS
G12C阻害剤を含むものであった、請求項40記載の方法。
【請求項43】
対象が、がん治療に抵抗性であると決定されていた、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
対象が、ソトラシブでもアダグラシブでも以前に処置されていなかった、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ポジオチニブが、0.1 mg~50 mgの用量で投与される、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ポジオチニブが、1 mg~25 mgの用量で投与される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ポジオチニブが、1 mg~5 mgの用量で投与される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
ポジオチニブが、経口的に投与される、請求項33~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
KRAS
G12C阻害剤およびポジオチニブが、1日当たり1回、複数日間投与される、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
KRAS
G12C阻害剤およびポジオチニブが、1日当たり2回、複数日間投与される、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
追加のがん治療を対象に施す工程をさらに含む、請求項33~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
追加のがん治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせを含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
KRAS
G12C非小細胞肺がんについて対象を処置する方法であって、
有効量の
(a) KRAS
G12C阻害剤;および
(b) 1 mg~5 mgの用量でのポジオチニブ
を1日2回、複数日間、前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月29日出願の米国仮出願第63/227,237号に対する優先権を主張し、該仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
I. 発明の分野
本発明の局面は、少なくともがん生物学および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
II. 背景
新規のKRASG12C阻害剤(例えば、ソトラシブ、アダグラシブ)を研究している初期の報告は、KRASG12C阻害の数時間以内では、KRAS変異体細胞がHB-EGF、EGFR、およびHER4リガンドを上方制御し、HB-EGF上方制御が、活性KRASG12Cタンパク質の合成と連動して細胞増殖を再活性化したことを示している。別の研究では、KRAS変異体肺がんの前臨床モデルにおいて、EGFRの阻害は、KRAS介在性の腫瘍形成の一過性の減弱をもたらした。しかしながら、ErbB2 (HER2)、ErbB3 (HER3)、およびErbB4 (HER4)を含む他のErbBファミリーメンバーの上方制御が、抗腫瘍効果を弱める下流シグナル伝達を回復させた。したがって、KRASG12C阻害剤への適応は処置効力を制限する。
【0004】
KRAS変異体がんを有する患者の処置を改善するための、KRASG12C阻害剤を含むKRAS阻害剤の効力が制限されることを克服するための方法および組成物に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示の局面は、KRAS変異体がんの処置のための改善された方法および組成物を提供することによってがん医学の領域におけるある特定のニーズに対処する。したがって、いくつかの局面では、KRAS阻害剤およびポジオチニブを対象に投与する工程を含む、KRAS変異体がんについて対象を処置する方法が、本明細書において提供される。KRAS阻害剤およびポジオチニブを含む薬学的組成物も開示される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、ソトラシブまたはアダグラシブなどのKRASG12C阻害剤である。
【0006】
本開示の態様には、KRAS変異体がんについて対象を処置するための方法、KRASG12C変異体がんについて対象を処置するための方法、KRASG12C非小細胞肺がんについて対象を処置するための方法、KRASG12C変異を検出するための方法、KRAS変異体がんを有する対象を診断するための方法、ならびにKRAS阻害剤およびポジオチニブを含む薬学的組成物が含まれる。本開示の方法は、下記の工程のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、またはそれより多くを含み得る:KRAS阻害剤を投与する工程、KRASG12C阻害剤を投与する工程、HER2~4選択的阻害剤を投与する工程、ポジオチニブを投与する工程、KRASG12C阻害剤およびポジオチニブを含む組成物を投与する工程、対象におけるKRAS変異を検出する工程、対象におけるKRASG12C変異を検出する工程、対象がKRAS変異体がんを有すると診断する工程、ならびに追加のがん治療を施す工程。前述の工程のうちのいずれか1つまたは複数は、本開示の態様から除外されてもよい。薬学的組成物は、KRAS阻害剤、KRASG12C阻害剤、ソトラシブ、薬学的に許容されるソトラシブ塩、アダグラシブ、薬学的に許容されるアダグラシブ塩、ポジオチニブ、薬学的に許容されるポジオチニブ塩、および薬学的に許容される賦形剤のうちの1つまたは複数を含み得る。前述の構成成分のうちのいずれか1つまたは複数は、本開示の態様から除外されてもよい。
【0007】
いくつかの態様では、有効量の(a) KRAS阻害剤および(b)ポジオチニブを対象に投与する工程を含む、KRAS変異体がんについて対象を処置する方法が、本明細書において開示される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、実質的に同時に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、連続的に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、ポジオチニブを投与する前に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、ポジオチニブを投与した後に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、KRASG12C阻害剤である。いくつかの態様では、KRAS変異体がんは、KRAS変異体非小細胞肺がんである。いくつかの態様では、KRAS変異体がんは、KRAS変異体結腸直腸がんである。いくつかの態様では、KRAS変異体がんは、KRAS変異体膵がんである。
【0008】
いくつかの態様では、KRASG12C非小細胞肺がんについて対象を処置する方法も本明細書において開示され、方法は、有効量の(a) KRASG12C阻害剤および(b)ポジオチニブを対象に投与する工程を含む。いくつかの態様では、KRASG12C阻害剤およびポジオチニブは、実質的に同時に投与される。いくつかの態様では、KRASG12C阻害剤およびポジオチニブは、連続的に投与される。いくつかの態様では、KRASG12C阻害剤は、ポジオチニブを投与する前に投与される。いくつかの態様では、KRASG12C阻害剤は、ポジオチニブを投与した後に投与される。
【0009】
いくつかの態様では、方法は、対象におけるKRAS
G12C変異を検出する工程をさらに含む。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)である。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、アダグラシブ(MRTX849)である。いくつかの態様では、対象は、がん治療で以前に処置されている。いくつかの態様では、がん治療は、化学療法を含むものであった。いくつかの態様では、がん治療は、KRAS阻害剤を含むものであった。いくつかの態様では、対象は、がん治療に抵抗性であると決定されていた。いくつかの態様では、対象は、KRAS阻害剤で以前に処置されていなかった。いくつかの態様では、ポジオチニブは、0.1 mg~50 mgの用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、少なくとも
、多くとも
、約
、または正確に
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~25 mgの用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~5 mgの用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、経口的に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、1日当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、もしくは7回、多くとも1、2、3、4、5、6、もしくは7回、または正確に1、2、3、4、5、6、もしくは7回、複数日間投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、1週間当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21回、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21回、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21回、複数週間投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、1日当たり1回、複数日間投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、1日当たり2回、複数日間投与される。いくつかの態様では、方法は、追加のがん治療を対象に施す工程をさらに含む。いくつかの態様では、追加のがん治療は、化学療法、放射線療法、免疫療法、またはそれらの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの態様では、(a) KRAS阻害剤と、(b)ポジオチニブと、(c)薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物も、本明細書において開示される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、KRAS
G12C阻害剤である。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、ソトラシブ(AMG 510)である。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、アダグラシブ(MRTX849)である。いくつかの態様では、ポジオチニブは、0.1 mg~50 mgの用量でのものである。いくつかの態様では、ポジオチニブは、少なくとも
、多くとも
、約
、または正確に
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量でのものである。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~25 mgの用量でのものである。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~5 mgの用量でのものである。
【0011】
いくつかの態様では、KRAS
G12C非小細胞肺がんについて対象を処置する方法が本明細書においてさらに開示され、方法は、有効量の(a) KRAS
G12C阻害剤;および(b) 1 mg~5 mgの用量でのポジオチニブを、対象に1日2回、複数日間投与する工程を含む。いくつかの態様では、ポジオチニブは、少なくとも
、多くとも
、約
、または正確に
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量でのものである。
【0012】
本出願を通じて、「約」という用語は、測定または定量化方法について固有の誤差の変動を値が含むことを示すために使用される。
【0013】
「a」または「an」という言葉の使用は、「含む」という用語と併せて使用される場合、「1つ」を意味し得るが、それは、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。
【0014】
「および/または」という語句は、「および」あるいは「または」を意味する。例示すると、A、B、および/またはCは、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ、BおよびCの組み合わせ、またはA、B、およびCの組み合わせを含む。換言すれば、「および/または」は、包括的な「または」として機能する。
【0015】
「含む(comprising)」という言葉(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」という言葉(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」という言葉(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形態)、または「含む(containing)」という言葉(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の形態)は包括的または非限定的であり、追加の記載されない要素も方法工程も除外するものではない。
【0016】
組成物およびそれらの使用のための方法は、本明細書を通じて開示される成分または工程のいずれか「を含む」、「から本質的になる」、または「からなる」可能性がある。開示の成分または工程のいずれか「から本質的になる」組成物および方法は、特許請求の範囲に記載される発明の基本または新規の特徴に実質的に影響を与えない特定の物質または工程に請求項を限定する。
【0017】
「個体」、「対象」、および「患者」は互換的に使用され、ヒトまたは非ヒトを指し得る。
【0018】
治療的、診断的、または生理学的な目的または効果の文脈での任意の方法は、記載される治療的、診断的、または生理学的な目的または効果を達成または実施することについて本明細書において論じられる任意の化合物、組成物、または剤「の使用」などの「使用」請求項の文言においても記載され得る。
【0019】
本発明の一態様に関して論じられる任意の限定は、本発明の任意の他の態様に適用され得ることが明確に企図される。さらに、本発明の任意の組成物を本発明の任意の方法において使用してよく、本発明の任意の方法を使用して本発明の任意の組成物を生成または利用してよい。実施例に示される態様の局面は、異なる実施例中の他の箇所、または概要、詳細な説明、特許請求の範囲、および図面の簡単な説明中などの本願における他の箇所において論じられる態様の状況において実施され得る態様でもある。
【0020】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の特定の態様を示す一方で、本発明の趣旨および範囲内のさまざまな変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるであろうから、例示の目的でのみ与えられるものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含められている。本明細書において示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせたこれらの図面のうちの1つまたは複数を参照することによって、本発明の理解が深まるであろう。
【
図1】
図1Aは、示される濃度のソトラシブ(AMG 510)またはDMSO対照でのH23細胞の4時間の処理から得られたウエスタンブロットを示す。
図1Bは、100nMのアファチニブ、100nMのポジオチニブ、またはDMSO対照のいずれかと組み合わせた場合のH358、H1378、H1792、およびH2030細胞でのソトラシブ(AMG 510) IC
50値を示す。
図1Cは、100nMのアファチニブ、100nMのポジオチニブ、またはDMSO対照のいずれかと組み合わせた場合のH358、H1378、H1792、およびH2030細胞でのアダグラシブ(MRTX849) IC
50値を示す。
【
図2】ソトラシブまたはアダグラシブで4時間処理した、KRAS G12C変異を有するNSCLC細胞株におけるpEGFRおよびpHER2レベルを示す。
【
図3】
図3Aは、アダグラシブで72時間処理したHCC44、H2122、およびH358 NSCLC細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有している)におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。
図3Bは、ソトラシブで72時間処理したHCC44、H2122、およびH358 NSCLC細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有している)におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。
【
図4】
図4Aは、EGFR、EGFR/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4、HER3/HER4、およびHER4を発現するBa/F3細胞のポジオチニブに対する感受性を示す。
図4Bは、EGFR、EGFR/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4、HER3/HER4、およびHER4を発現するBa/F3細胞のアファチニブに対する感受性を示す。
【
図5】さまざまな受容体に対するポジオチニブの選択性を示す。
【
図6】
図6Aは、アダグラシブと外因性のEGFまたはNRG1との組み合わせでの処理に対するH358細胞の抵抗性を示す。
図6Bは、ソトラシブと外因性のEGFまたはNRG1との組み合わせでの処理に対するH358細胞の抵抗性を示す。
【
図7】
図7Aは、単独またはポジオチニブとの組み合わせでのソトラシブでのH23、HCC44、H2122、およびH1792細胞(KRAS G12C変異を保有するNSCLC)の処理時の相乗効果を示す。
図7Bは、単独またはポジオチニブとの組み合わせでのアダグラシブでのH23、HCC44、H2122、およびH1792細胞(KRAS G12C変異を保有するNSCLC)の処理時の相乗効果を示す。
【
図8】
図8Aは、単独で、またはアファチニブもしくはポジオチニブと組み合わせて、ソトラシブで処理したHCC44、H2122、およびH358 NSCLC細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有している)におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。
図8Bは、単独で、またはアファチニブもしくはポジオチニブと組み合わせて、アダグラシブで処理したHCC44、H2122、およびH358 NSCLC細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有している)におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。
【
図9】
図9Aは、KRAS G12C変異体NSCLCのPDXモデルにおける腫瘍体積に対する単独またはポジオチニブ(pozi)もしくはアファチニブ(afat)との組み合わせでのソトラシブ処理の効果を示す。
図9Bは、KRAS G12C変異体NSCLCのPDXモデルにおける無増悪生存に対する単独またはポジオチニブ(pozi)もしくはアファチニブ(afat)との組み合わせでのソトラシブ処理の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本開示は、EGFRを上回ってHER2~4に対する選択性を有することが本明細書において記載されているポジオチニブの投与が、KRAS変異体腫瘍細胞に対するKRASG12C阻害剤の細胞傷害性を相乗的に増強するという驚くべき発見に少なくとも部分的には基づく。したがって、本開示の局面は、KRAS阻害剤(例えば、ソトラシブまたはアダグラシブなどのKRASG12C阻害剤)およびポジオチニブの投与を含む、KRAS変異体がんを有する対象の処置のための方法を対象とする。KRAS阻害剤と、ポジオチニブと、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物も開示される。本開示のさらなる局面および態様は、本明細書においてさらに記載される。
【0023】
I. 治療方法
本開示の局面は、治療有効量の1つまたは複数のがん治療薬を含む組成物、およびそのような組成物をその必要がある対象または患者へ投与することを対象とする。いくつかの態様では、1つまたは複数のがん治療薬は、KRAS阻害剤およびポジオチニブを含む。
【0024】
本開示の組成物は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボでの投与に使用され得る。組成物の投与経路は、例えば、皮内、皮下、静脈内、経口、局所、表面、および腹腔内投与であり得る。
【0025】
本明細書において提供される治療は、KRAS阻害剤およびポジオチニブなどの治療剤の組み合わせの投与を含み得る。治療は、当技術分野において公知の任意の適切な様式で投与され得る。例えば、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、連続的に(異なる時点で)投与されてもよく、または同時的に(同じ時点もしくはほぼ同じ時点で;同様に「実質的に同時に」)投与されてもよい。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、別々の組成物において投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、同じ組成物におけるものである。
【0026】
いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、実質的に同時に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤およびポジオチニブは、連続的に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤、ポジオチニブ、および追加のがん治療は、連続的に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、ポジオチニブが投与される前に投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、ポジオチニブが投与された後に投与される。
【0027】
本開示の態様は、治療組成物を含む組成物および方法に関する。異なる治療が、1つの組成物、または2つの組成物、3つの組成物、もしくは4つの組成物などの1つより多い組成物において投与されてもよい。剤のさまざまな組み合わせが用いられ得る。
【0028】
本開示の治療剤は、同じ投与経路によって、または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの態様では、本開示の治療剤(例えば、KRAS阻害剤、ポジオチニブ)は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮に、腹腔内に、眼窩内に、留置によって、吸入によって、くも膜下腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。適切な投与量は、処置すべき疾患の型、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および処置に対する応答、ならびに担当医師の裁量に基づいて決定され得る。異なる治療薬は、同じ投与経路を介して、または異なる投与経路を介して投与され得る。
【0029】
処置は、さまざまな「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定量の治療組成物を含むものとして定義される。投与すべき量、ならびに特定の経路および製剤は、臨床的な技術分野の当業者の決定の技能に含まれる。静脈内投与の場合では、単位用量は、単回の注射として投与される必要はないが、一定時間にわたる持続注入を含み得る。いくつかの態様では、単位用量は、単一の投与可能な用量を含む。
【0030】
いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、1 mg/kg~5000 mg/kgの用量で投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、少なくとも
、多くとも
、または約
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量で投与される。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、少なくとも
、多くとも
、約
、または正確に
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量で投与される。
【0031】
いくつかの態様では、ポジオチニブの単回用量が投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブの複数回用量が投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、少なくとも
、多くとも
、または約
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、0.1 mg/kg~100 mg/kgの用量で投与される。
【0032】
いくつかの態様では、ポジオチニブは、少なくとも
、多くとも
、約
、または正確に
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲または値の用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、0.1 mg~50 mgの用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~25 mgの用量で投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブは、1 mg~5 mgの用量で投与される。
【0033】
投与すべき量は、処置の数および単位用量の両方に応じて、所望の処置効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するために必要な量を指すことが理解されよう。さらに、そのような用量は、1日の間および/または複数の日、週、もしくは月に複数回投与され得る。いくつかの態様では、本開示の組成物(例えば、ポジオチニブおよびKRAS阻害剤)は、1日当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回、またはそれより多く、複数日間にわたって、対象に投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブおよびKRAS阻害剤は、1日当たり1回、複数日間、対象に投与される。いくつかの態様では、ポジオチニブおよびKRAS阻害剤は、1日当たり2回、複数日間、対象に投与される。いくつかの態様では、本開示の組成物(例えば、ポジオチニブおよびKRAS阻害剤)は、1週間当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21回、またはそれより多く、複数週間にわたって、対象に投与される。
【0034】
ある特定の態様では、薬学的組成物の有効用量は、約1 μM~150 μMの血中レベルを与え得るものである。別の態様では、別の態様では、有効用量は、約4 μM~100 μM;もしくは約1 μM~100 μM;もしくは約1 μM~50 μM;もしくは約1 μM~40 μM;もしくは約1 μM~30 μM;もしくは約1 μM~20 μM;もしくは約1 μM~10 μM;もしくは約10 μM~150 μM;もしくは約10 μM~100 μM;もしくは約10 μM~50 μM;もしくは約25 μM~150 μM;もしくは約25 μM~100 μM;もしくは約25 μM~50 μM;もしくは約50 μM~150 μM;もしくは約50 μM~100 μM (またはその中で導き出せる任意の範囲)の血中レベルを与える。他の態様では、用量は、対象に投与されている治療剤から生じる剤の下記の血中レベルを与え得る:約
、少なくとも約
、または多くとも約
、あるいはその中で導き出せる任意の範囲。ある特定の態様では、対象に投与される治療剤は、体内で代謝されて代謝治療剤になり、この場合、血中レベルは、その剤の量を指し得る。代替的には、治療剤が対象によって代謝されない限りにおいては、本明細書において論じられる血中レベルは、非代謝治療剤を指し得る。
【0035】
いくつかの態様では、ポジオチニブは、0.1 mg~50 mg、またはその中で導き出せる任意の範囲もしくは値の量で対象に投与される。ポジオチニブは、塩化物塩形態で投与され得るものであり、錠剤などにおいて、経口的に投与され得る。ポジオチニブは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25 mg、またはその中で導き出せる任意の範囲もしくは値の用量などの1~25 mgの用量で投与され得る。投薬は、1日2回、毎日、1日置き、3日ごと、または毎週であり得る。いくつかの態様では、投薬は、1日当たり2回である。投薬は、28日サイクルでのものなど、連続的なスケジュールでのものであり得る。
【0036】
治療組成物の正確な量は医療従事者の判断にも依存し、各個体に特有のものである。用量に影響する要因には、患者の身体的および臨床的な状態、投与経路、処置の所期の目的(症状の緩和と治癒との対比)、ならびに特定の治療物質の効力、安定性、および毒性、または対象が受けている可能性のある他の治療が含まれる。
【0037】
体重あたりμg/kgまたはmg/kgの投与量単位は、4 μM~100 μMなどのμg/mlまたはmMの同等の濃度単位(血中レベル)に変換され、それにて表現され得ることが当業者によって理解され、認識されるであろう。取り込みは種および臓器/組織依存的であることも理解されよう。取り込みおよび濃度測定値に関して考慮すべき適用可能な変換係数および生理学的想定は周知であり、当業者が、ある濃度測定値を別のものに変換し、本明細書において記載される用量、効力、および結果に関して合理的な比較および結論を導くことを可能にするであろう。
【0038】
ある特定の実例では、組成物の複数回の投与、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれより多い投与を行うことが望ましいであろう。投与は、1、2、3、4、5、6、7、8から5、6、7、8、9、10、11、または12週の間隔(その間にあるすべての範囲を含む)でのものであり得る。
【0039】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与された場合に有害な反応も、アレルギー性の反応も、他の不都合な反応も生じさせない分子実体および組成物を指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と不適合でない限り、免疫原性および治療組成物におけるその使用が企図される。他の抗感染剤およびワクチンなどの補助的な活性成分もまた、組成物に含めることができる。
【0040】
活性化合物は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内経路を介する注射用に製剤化することができる。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ;注射の前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体形態を調製することもでき;調製物を乳化することもできる。
【0041】
注射可能な使用に適した薬学的形態には、滅菌された水性の溶液または分散液;例えば、水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。すべての場合において、形態は滅菌されていなくてはならず、それを容易に注射し得る程度にまで流動性でなくてはならない。製造および保管の条件の下で安定であるべきでもあり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗して保存することも欠かせない。
【0042】
薬学的組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、ならびに同様のもの)、それらの適切な混合物、ならびに植物油を含む、溶媒または分散媒体を含み得る。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の阻止は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様のものによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的な吸収は、組成物における吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0043】
滅菌された注射可能な溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙されるさまざまな他の成分と共に、適切な溶媒に組み入れて、その後のろ過滅菌または同等の手順によって調製される。一般に、分散液は、基礎分散媒体および上に列挙されるものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルにさまざまな滅菌活性成分を組み入れることによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は真空乾燥およびフリーズドライ手法であり、これにより、任意の追加の望ましい成分が加わった活性成分の粉末が、その事前滅菌ろ過溶液から得られる。
【0044】
組成物の投与は、典型的には、任意の一般的な経路を介する。これには、経口投与およびまたは静脈内投与が含まれるが、それに限定されるわけではない。代替的には、投与は、同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または鼻腔内投与によるものであり得る。そのような組成物は、生理学的に許容される担体、緩衝剤、または他の賦形剤を含む薬学的に許容される組成物として通常は投与されることになる。
【0045】
製剤化時点で、溶液は、投与量製剤と適合する様式、および治療的または予防的に有効となる量で投与される。
【0046】
A. がん治療
いくつかの態様では、方法は、がん治療を患者に施す工程を含む。がん治療は、単独で、または患者ごとに計算される臨床的なリスクスコアと組み合わせて、発現レベル測定に基づいて選択され得る。いくつかの態様では、がん治療は、局所的ながん治療を含む。いくつかの態様では、がん治療は、全身性のがん治療を除外する。いくつかの態様では、がん治療は、局所的な治療を除外する。いくつかの態様では、がん治療は、全身がん治療の投与を行わない局所的ながん治療を含む。いくつかの態様では、がん治療は、免疫療法を含み、これは、免疫チェックポイント治療であり得る。いくつかの態様では、がん治療は、KRAS阻害剤である。いくつかの態様では、がん治療は、ポジオチニブである。これらのがん治療のいずれかは、除外されることもあり得る。これらの治療の組み合わせも投与され得る。例えば、本明細書において開示されるように、KRAS阻害剤とポジオチニブとの組み合わせは、KRAS変異体がんを処置する上で相乗的に有効であり;したがって、本開示の局面は、KRAS阻害剤(例えば、ソトラシブまたはアダグラシブ)とポジオチニブとの組み合わせを含むがん治療を対象とする。
【0047】
「がん」という用語は、本明細書において使用される場合、固形腫瘍、転移性がん、または非転移性がんを説明するために使用され得る。ある特定の態様では、がんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮で発生し得る。いくつかの態様では、がんは、再発がんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIIIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIVのがんである。
【0048】
がんは、具体的には、下記の組織型のものであり得るが、それはこれらに限定されない:新生物、悪性;癌;癌、未分類;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌および胆管癌の混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞上皮腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;塩基好性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭および濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫瘍、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス腫瘍;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞性肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ならびにヘアリー細胞白血病。いくつかの態様では、がんは、非小細胞肺がんである。いくつかの態様では、がんは、結腸直腸がんである。いくつかの態様では、がんは、膵がんである。いくつかの態様では、がんは、KRAS変異体がんである。いくつかの態様では、KRAS変異体がんは、KRAS G12C変異体がんである。
【0049】
いくつかの態様では、本開示の方法は、治療有効量のKRAS阻害剤およびポジオチニブを投与することによって、がん(例えば、KRAS変異体がん)を患う対象を処置する工程を含む。本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、「有効量」、「治療有効用量」、および/または「有効用量」と同義であり、所望の結果を得る上で、または処置されている特定の状態に対して所望の影響を与える上で十分な剤(または剤の組み合わせ)の量を指す。いくつかの態様では、治療有効量は、病理学的な、異常な、もしくはその他の形で望ましくない状態と関連する少なくとも1つの症状、挙動、もしくは事象を改善する上で十分な量、またはそのような状態が発生もしくは再発する確率を抑えるもしくは減らす上で十分な量、またはそのような状態が悪化することを遅延させる上で十分な量である。例えば、いくつかの態様では、有効量は、対象におけるがんを処置または阻止し得る、組み合わせでのKRAS阻害剤およびポジオチニブの量を指す。有効量は、処置される生物または個体に応じて異なり得る。本開示の方法の特定の用途向けに投与すべき適切な有効量は、本明細書において提供される指針を使用して、当業者によって決定することができる。本明細書において使用される場合、「処置」、「処置する」、または「処置すること」という用語は、処置されている対象の自然経過を変えようと試みる介入を指し、予防のため、または疾患もしくは状態の病態の経過の間、のいずれかで実施され得る。処置は、例えば、疾患の発生または再発を阻止すること、症状の重症度の緩和または低減、および疾患のいずれかの直接的または間接的な病理学的結果の軽減、疾患拡大を阻止すること、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態の改善または寛解、ならびに軽快または予後改善を含むさまざまな所望の転帰のうちの1つまたは複数を達成する上で役立ち得る。
【0050】
1. KRAS変異体がん
本開示の局面は、KRAS変異体がんの処置のための方法を対象とする。本明細書において使用される場合、「KRAS変異体がん」は、1つまたは複数のKRAS変異を保有するがんを説明するものである。したがって、KRAS変異体がんを有する対象は、がんを有する対象を説明するものであり、ここで、対象由来のがん細胞は、KRAS変異を有することが特定されている。KRAS変異には、例えば、G12変異(例えば、G12A、G12C、G12D、G12R、G12V)、G13変異(例えば、G13D)、およびQ61変異(例えば、Q61K、Q61L、Q61H)が含まれる。いくつかの態様では、本開示の対象は、KRAS G12C変異体非小細胞肺がん(NSCLC)を有する。いくつかの態様では、本開示の対象は、KRAS G12C変異体結腸直腸がんを有する。いくつかの態様では、本開示の対象は、KRAS G12C変異体膵がんを有する。
【0051】
B. KRAS阻害剤
本開示の局面は、KRAS阻害剤およびその使用方法を含む。本明細書において使用される場合、「KRAS阻害剤」は、GTPase KRas (「KRAS」または「K-Ras」)タンパク質の活性を阻害すること、および/またはその発現を低減することが可能な任意の分子を説明するものである。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、細胞におけるKRASタンパク質の発現を低減することが可能なオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、KRAS酵素活性の阻害剤である。いくつかの態様では、KRAS阻害剤は、KRASをGDP結合状態で捕捉することによってKRASを不活化することが可能な分子である。いくつかの態様では、本開示のKRAS阻害剤によって標的とされるKRASタンパク質は、変異体KRASタンパク質である。変異体KRASタンパク質には、例えば、G12A、G12C、G12D、G12R、またはG12VなどのG12変異を有するKRASタンパク質が含まれる。いくつかの態様では、変異体KRASタンパク質は、G12C変異を有するKRASタンパク質(「KRASG12C」)である。
【0052】
いくつかの態様では、本開示のKRAS阻害剤は、KRAS
G12C阻害剤である。本明細書において使用される場合、「KRAS
G12C阻害剤」は、KRAS
G12Cの活性を阻害すること、および/またはその発現を低減することが可能な任意の分子を説明するものである。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、KRAS
G12CをGDP結合状態で捕捉し、それによってタンパク質の酵素活性を阻害することが可能な化合物である。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、野生型KRASタンパク質と比較してKRAS
G12Cタンパク質を優先的に阻害する。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、野生型KRASタンパク質を阻害しない。KRAS
G12C阻害剤の例としては、ARS-1620、ARS-853、ソトラシブ(AMG 510)、およびアダグラシブ(MRTX849)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、式Iによって表される構造を有する6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロパ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン、すなわちソトラシブ、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、KRAS
G12C阻害剤は、式IIIによって表される構造を有する{(2S)-4-[7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-{[(2S)-1メチルピロリジン-2-イル]メトキシ}-5,6,7,8テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-1-(2-フルオロプロパ2-エノイル)ピペラジン-2-イル}アセトニトリル、すなわちアダグラシブ、またはその薬学的に許容される塩である。
【0053】
C. ポジオチニブ
1-[4-[4-(3,4-ジクロロ-2-フルオロアニリノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル]オキシピペリジン-1-イル]プロパ-2-エン-1-オン、すなわちポジオチニブ(「HM781-36」または「HM781-36B」とも呼ばれる)は、式III:
によって表される構造を有する化合物である。
【0054】
ポジオチニブは、ErbB1 (EGFR)、ErbB2 (HER2)、ErbB3 (HER3)、およびErbB4 (HER4)の活性を阻害することが可能な汎HER阻害剤である。ポジオチニブについては、例えば、PCT出願公開第WO 2020/005932号およびCha MY,. et al,. Int J Cancer. 2012 May 15;130(10):2445-54に記載されており、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ポジオチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物が本明細書において開示される。KRAS変異体がんの処置のための、場合によっては1つまたは複数のKRAS阻害剤との組み合わせでの、ポジオチニブの使用のための方法も開示される。本明細書において使用される場合、「ポジオチニブ」を含む組成物および方法は、式IIIによって表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物および方法を説明するものである。
【0055】
D. がん免疫療法
いくつかの態様では、方法は、治療剤としてのがん免疫療法の投与を含む。がん免疫療法(がん免疫学と呼ばれることもあり、IOと略される)は、がんを処置するための免疫系の使用である。免疫療法は、能動、受動、またはハイブリッド(能動および受動)として分類され得る。これらのアプローチは、腫瘍関連抗原(TAA)として公知の、免疫系によって検出され得る分子をがん細胞がその表面上に有することが多いという事実を利用するものであり;それらは、多くの場合、タンパク質または他の巨大分子(例えば、糖質)である。能動免疫療法は、TAAを標的とすることによって免疫系が腫瘍細胞を攻撃するように導くものである。受動免疫療法は、現存する抗腫瘍応答を増強するものであり、モノクローナル抗体、リンパ球、およびサイトカインの使用を含む。さまざまな免疫療法が当技術分野において公知であり、例は以下に示される。
【0056】
1. チェックポイント阻害剤および併用処置
本開示の態様は、免疫チェックポイント阻害剤の投与を含み得、その例は、以下にさらに記載される。本明細書において開示される場合、「チェックポイント阻害剤治療」(「免疫チェックポイント遮断治療」、「免疫チェックポイント治療」、「ICT」、「チェックポイント遮断免疫療法」、または「CBI」とも)は、がんを患う対象またはがんを有することが疑われる対象に1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤を与える工程を含むがん治療を指す。
【0057】
PD-1は、T細胞が感染または腫瘍に遭遇する腫瘍微小環境において働き得る。活性化T細胞はPD-1を上方制御し、末梢組織においてそれを継続的に発現する。IFN-ガンマなどのサイトカインは、上皮細胞および腫瘍細胞上でのPDL1の発現を誘導する。PDL2はマクロファージおよび樹状細胞上に発現する。PD-1の主な役割は、末梢でのエフェクターT細胞の活性を制限し、免疫応答の間の組織への過剰な損傷を阻止することである。本開示の阻害剤は、PD-1および/またはPDL1活性の1つまたは複数を遮断し得る。
【0058】
「PD-1」の代替名には、CD279およびSLEB2が含まれる。「PDL1」の代替名には、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hが含まれる。「PDL2」の代替名には、B7-DC、Btdc、およびCD273が含まれる。いくつかの態様では、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトPD-1、PDL1、およびPDL2である。
【0059】
いくつかの態様では、PD-1阻害剤は、PD-1がそのリガンド結合パートナーに結合することを阻害する分子である。特定の局面では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の態様では、PDL1阻害剤は、PDL1がその結合パートナーに結合することを阻害する分子である。特定の局面では、PDL1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PDL2阻害剤は、PDL2がその結合パートナーに結合することを阻害する分子である。特定の局面では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。阻害剤は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されており、すべて、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法および組成物における使用のための他のPD-1阻害剤は、米国特許出願第US2014/0294898号、同第US2014/022021号、および同第US2011/0008369号に記載のものなど、当技術分野において公知であり、すべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0060】
いくつかの態様では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピジリズマブからなる群より選択される。いくつかの態様では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)と融合したPDL1またはPDL2の細胞外部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシンである。いくつかの態様では、PDL1阻害剤はAMP-224を含む。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO (登録商標)としても公知のニボルマブは、WO2006/121168に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA (登録商標)、およびSCH-900475としても公知のペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。CT-011、hBAT、またはhBAT-1としても公知のピジリズマブは、WO2009/101611に記載の抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても公知のAMP-224は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。追加のPD-1阻害剤には、AMP-514としても公知のMEDI0680、およびREGN2810が含まれる。
【0061】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI4736としても公知のデュルバルマブ、MPDL3280Aとしても公知のアテゾリズマブ、MSB00010118Cとしても公知のアベルマブ、MDX-1105、BMS-936559、またはそれらの組み合わせなどのPDL1阻害剤である。ある特定の局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、rHIgM12B7などのPDL2阻害剤である。
【0062】
いくつかの態様では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピジリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピジリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピジリズマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、を含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体のものと同じPD-1、PDL1、またはPDL2上エピトープと結合することについて競合し、および/またはそれに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導き出せる任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0063】
本明細書において提供される方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても公知の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4 (CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、GenBankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見られ、抗原提示細胞の表面上のB7-1 (CD80)またはB7-2 (CD86)に結合すると「オフ」スイッチとして働く。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現しかつ抑制シグナルをT細胞に伝える、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28と類似しており、どちらの分子も抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2に結合する。CTLA-4は抑制シグナルをT細胞に伝え、一方、CD28は刺激シグナルを伝える。細胞内CTLA-4は、制御性T細胞においても見られ、それらの機能にとって重要であり得る。T細胞受容体およびCD28を介するT細胞活性化は、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現を増加させる。本開示の阻害剤は、CTLA-4、B7-1、および/またはB7-2活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。いくつかの態様では、阻害剤は、CTLA-4とB7-1との相互作用を遮断する。いくつかの態様では、阻害剤は、CTLA-4とB7-2との相互作用を遮断する。
【0064】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0065】
本方法における使用に適した抗ヒトCTLA-4 抗体(またはそれらに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。代替的には、当技術分野において認知されている抗CTLA-4 抗体が使用され得る。例えば、US 8,119,129、WO 01/14424、WO 98/42752;WO 00/37504 (トレメリムマブとしても公知のCP675,206;以前はチシリムマブ(ticilimumab))、米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al., 1998に開示の抗CTLA-4抗体が、本明細書において開示される方法において使用され得る。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4に結合することについてこれらの当技術分野で認知されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用され得る。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願第WO2001/014424号、同第WO2000/037504号、および米国特許第8,017,114号に記載されており;すべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【0066】
本開示の方法および組成物におけるチェックポイント阻害剤として有用なさらなる抗CTLA-4抗体はイピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy (登録商標)としても公知である)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO 01/14424を参照のこと)。
【0067】
いくつかの態様では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、トレメリムマブまたはイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、を含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体のものと同じPD-1、B7-1、またはB7-2上エピトープと結合することについて競合し、および/またはそれに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導き出せる任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0068】
本明細書において提供される方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、CD223およびリンパ球活性化3としても公知のリンパ球活性化遺伝子3 (LAG3)である。ヒトLAG3の完全なmRNA配列はGenBankアクセッション番号NM_002286を有する。LAG3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞の表面上に見られる免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。LAG3の主なリガンドはMHCクラスIIであり、それは、CTLA-4およびPD-1と同様の様式でT細胞の細胞増殖、活性化、およびホメオスタシスを負に調節し、Treg抑制機能において役割を担うことが報告されている。LAG3はまた、CD8+T細胞を免疫寛容原性状態に維持すること助け、かつ、PD-1と共に働いて慢性ウイルス感染の間のCD8疲弊を維持することを助ける。LAG3は、樹状細胞の成熟および活性化に関与することも公知である。本開示の阻害剤は、LAG3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0069】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗LAG3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0070】
本方法における使用に適した抗ヒトLAG3抗体(またはそれらに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。代替的には、当技術分野で認知されている抗LAG3抗体が使用され得る。例えば、抗LAG3抗体には、GSK2837781、IMP321、FS-118、Sym022、TSR-033、MGD013、BI754111、AVA-017、またはGSK2831781が含まれ得る。US 9,505,839 (レラトリマブとしても公知のBMS-986016);US 10,711,060 (LAG525としても公知のIMP-701);US 9,244,059 (H5L7BWとしても公知のIMP731);US 10,344,089 (LAG3.1としても公知の25F7);WO 2016/028672 (28G-10としても公知のMK-4280);WO 2017/019894 (BAP050);Burova E., et al., J. ImmunoTherapy Cancer, 2016; 4(Supp. 1): P195 (REGN3767);Yu, X., et al., mAbs, 2019; 11:6 (LBL-007)に開示の抗LAG3抗体が、本明細書に開示される方法において使用され得る。特許請求の範囲に記載される開示において有用なこれらおよび他の抗LAG-3抗体は、例えば、WO 2016/028672、WO 2017/106129、WO 2017062888、WO 2009/044273、WO 2018/069500、WO 2016/126858、WO 2014/179664、WO 2016/200782、WO 2015/200119、WO 2017/019846、WO 2017/198741、WO 2017/220555、WO 2017/220569、WO 2018/071500、WO 2017/015560;WO 2017/025498、WO 2017/087589、WO 2017/087901、WO 2018/083087、WO 2017/149143、WO 2017/219995、US 2017/0260271、WO 2017/086367、WO 2017/086419、WO 2018/034227、およびWO 2014/140180において見出すことができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。LAG3 に結合することについてこれらの当技術分野で認知されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用され得る。
【0071】
いくつかの態様では、阻害剤は、抗LAG3抗体の重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害剤は、抗LAG3抗体のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、抗LAG3抗体のVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、を含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導き出せる任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0072】
本明細書に提供する方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、A型肝炎ウイルス細胞受容体2 (HAVCR2)およびCD366としても公知のT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3 (TIM-3)である。ヒトTIM-3の完全なmRNA配列は、GenBankアクセッション番号NM_032782を有する。TIM-3は、表面IFNγ産生CD4+ Th1およびCD8+ Tc1細胞上に見られる。TIM-3の細胞外領域は、膜から遠位の単一の可変免疫グロブリンドメイン(IgV)と、膜のより近くに位置する可変長のグリコシル化ムチンドメインと、からなる。TIM-3は免疫チェックポイントであり、PD-1およびLAG3を含む他の抑制性受容体と一緒にT細胞疲弊を媒介する。TIM-3は、マクロファージ活性化を調節するCD4+ Th1特異的細胞表面タンパク質であることも示されている。本開示の阻害剤は、TIM-3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0073】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIM-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0074】
本方法における使用に適した抗ヒトTIM-3抗体(またはそれらに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。代替的には、当技術分野で認知されている抗TIM-3抗体が使用され得る。例えば、MBG453、TSR-022 (コボリマブとしても公知である)、およびLY3321367を含む抗TIM-3抗体が、本明細書に開示される方法において使用され得る。特許請求の範囲に記載される開示において有用なこれらおよび他の抗TIM-3抗体は、例えば、US 9,605,070、US 8,841,418、US2015/0218274、およびUS 2016/0200815において見出すことができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。LAG3に結合することについてこれらの当技術分野で認知されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用され得る。
【0075】
いくつかの態様では、阻害剤は、抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、阻害剤は、抗TIM-3抗体のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、抗TIM-3抗体のVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、を含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導き出せる任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0076】
E. 腫瘍溶解性ウイルス
いくつかの態様では、本開示のがん治療は、腫瘍溶解性ウイルスを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染し、それを死滅させるウイルスである。感染したがん細胞が腫瘍崩壊によって破壊されるにつれ、それらが新たな感染性ウイルス粒子またはビリオンを放出して残存腫瘍を破壊する助けとなる。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の直接的な破壊を引き起こすだけでなく、長期免疫療法のための宿主抗腫瘍免疫応答も刺激すると考えられている。
【0077】
F. 化学療法
いくつかの態様では、本開示のがん治療は化学療法を含む。化学療法剤の適切なクラスには、(a)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、クロロゾチシン(chlorozoticin)、ストレプトゾシン)、ならびにトリアジン(例えば、ジカルバジン(dicarbazine))などのアルキル化剤、(b)葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、アザウリジン)、ならびにプリン類似体および関連物質(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン)などの代謝拮抗剤、(c)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびミトキサントロン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、ならびに生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン-α)などの天然物、ならびに(d)白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒジアジン(methylhydiazine)誘導体(例えば、プロカルバジン)、ならびに副腎皮質抑制剤(例えば、taxolおよびミトタン)などのさまざまな剤が含まれる。いくつかの態様では、シスプラチンは、特に適した化学療法剤である。
【0078】
シスプラチンは、例えば、転移性の精巣癌もしくは卵巣癌、進行膀胱がん、頭部もしくは頸部がん、子宮頸がん、肺がん、または他の腫瘍などのがんを処置するために広く使用されている。シスプラチンは経口的には吸収されず、それ故に、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、または腹腔内注射などの他の経路を介して送達しなくてはならない。シスプラチンは、ある特定の態様において企図されている合計3つの過程向けの3週間ごと、5日間の約15 mg/m2~約20 mg/m2を含む、臨床用途で使用される効果的な用量を用いて、単独で、または他の剤と組み合わせて使用され得る。
【0079】
他の適切な化学療法剤には、微小管阻害剤、例えば、パクリタキセル(「Taxol」)およびドキソルビシン塩酸塩(「ドキソルビシン」)が含まれる。ドキソルビシンは吸収されにくいため、好ましくは、静脈内に投与される。ある特定の態様では、成人に適した静脈内用量には、約21日間隔での約60 mg/m2~約75 mg/m2、または約3週~約4週の間隔で繰り返す、2日もしくは3日の連続日のそれぞれでの約25 mg/m2~約30 mg/m2、または週1回の約20 mg/m2が含まれる。以前の化学療法もしくは新生物骨髄浸潤によって引き起こされた以前の骨髄抑制が存在する場合、または薬物が他の骨髄造血抑制薬と組み合わせられる場合、高齢患者においては最低用量を使用すべきである。
【0080】
ナイトロジェンマスタードは、本開示の方法において有用な別の適した化学療法剤である。ナイトロジェンマスタードには、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、ならびにクロラムブシルが含まれ得るが、それに限定されるわけではない。シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))はMead Johnsonから入手可能であり、NEOSTAR (登録商標)はAdriaから入手可能である)は、別の適した化学療法剤である。成人に適した経口用量には、例えば、約1 mg/kg/日~約5 mg/kg/日が含まれ、静脈内用量には、例えば、約2日~約5日の期間にわたる分割用量での最初の約40 mg/kg~約50 mg/kg、または約7日~約10日ごとの約10 mg/kg~約15 mg/kg、または週2回の約3 mg/kg~約5 mg/kg、または約1.5 mg/kg/日~約3 mg/kg/日が含まれる。胃腸への有害な影響のため、静脈内経路が好ましい。薬物は筋肉内に、浸透によって、または体腔へと、投与されることもある。
【0081】
追加の適した化学療法剤には、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5-フルオロウラシル(フルオロウラシル;5-FU)、およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)などのピリミジン類似体が含まれる。5-FUは、約7.5~約1000 mg/m2の間のどこかの投与量で対象に投与され得る。さらに、5-FUの投薬スケジュールは、さまざまな期間、例えば、最大で6週間にわたるか、または本開示が属する技術分野の当業者によって決定されるものであり得る。
【0082】
ゲムシタビン二リン酸(GEMZAR(登録商標), Eli Lilly & Co., 「gemcitabine」)は、別の適した化学療法剤であり、進行性および転移性の膵がんの処置に推奨され、それ故に、これらのがんに対しては本開示のある特定の態様においても有用であろう。
【0083】
患者に送達される化学療法剤の量は変動し得る。1つの適した態様では、化学療法剤は、化学療法がコンストラクトと共に投与される場合、宿主におけるがんの抑止または退縮を引き起こす上で有効な量で投与され得る。他の態様では、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的な有効用量に対して1/10,000~1/2の間のいずれかである量で投与され得る。例えば、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的な有効用量に対して約1/20、約1/500、またはさらには約1/5000である量で投与され得る。本開示の化学療法薬は、コンストラクトとの組み合わせにおける所望の治療活性について、ならびに有効投与量の決定のために、インビボで試験され得る。例えば、そのような化合物は、ヒトにおいて試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、雌ウシ、サル、ウサギなどを含むが、それに限定されるわけではない適した動物モデル系において試験され得る。インビトロで試験することは、実施例に記載されるように、適した組み合わせおよび投与量を決定するためにも使用され得る。
【0084】
G. 放射線療法
いくつかの態様では、本開示のがん治療は、電離放射線などの放射線を含む。本明細書において使用される場合、「電離放射線」は、電離(電子の獲得もしくは喪失)を生じさせる上で十分なエネルギーを有するかまたは核相互作用を介して十分なエネルギーを生成することができる粒子または光子を含む、放射線を意味する。例示的かつ好ましい電離放射線はx線である。x線を標的組織または細胞に送達するための手段は、当技術分野において周知である。
【0085】
いくつかの態様では、電離放射線の量は20Gy超であり、1回の線量で投与される。いくつかの態様では、電離放射線の量は18Gyであり、3回の線量で投与される。いくつかの態様では、電離放射線の量は、少なくとも2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40Gy、多くとも2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40Gy、または正確に2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40Gy (あるいはその中で導き出せる任意の範囲)である。いくつかの態様では、電離放射線は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回の線量、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回の線量、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回の線量(あるいはその中で導き出せる任意の範囲)で投与される。1回超の線量が投与される場合、線量は、約1、4、8、12、もしくは24時間、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、もしくは16週、あるいはその中で導き出せる任意の範囲の間隔を空けたものであり得る。
【0086】
いくつかの態様では、IRの量はIRの総線量として示され得るものであり、これは、ひいては、分割線量で投与される。例えば、いくつかの態様では、総線量は、各5Gyの10回の分割線量で投与される50Gyである。いくつかの態様では、総線量は、各2~3Gyの20~60回の分割線量で投与される50~90Gyである。いくつかの態様では、IRの総線量は、少なくとも
、多くとも
、または約
(あるいはその中で導き出せる任意の範囲)である。いくつかの態様では、総線量は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy (あるいはその中で導き出せる任意のもの)の分割用量で投与される。いくつかの態様では、少なくとも
回、多くとも
回、または正確に
回(あるいはその中で導き出せる任意の範囲)の分割線量が投与される。いくつかの態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回(あるいはその中で導き出せる任意の範囲)の分割線量が1日当たりに投与される。いくつかの態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回、または正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回(あるいはその中で導き出せる任意の範囲)の分割線量が1週間当たりに投与される。
【0087】
H. 手術
がんを有する人のおよそ60%は何らかの種類の手術を受け、これには、予防的、診断的またはステージ診断的、根治的、および姑息的な手術が含まれる。根治的手術は、がん性組織のすべてまたは一部を物理的に除去、切除、および/または破壊する切除術を含み、本態様の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替療法などの他の治療と併用され得る。腫瘍切除術は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除術に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(モース手術)が含まれる。
【0088】
がん性の細胞、組織、または腫瘍の一部またはすべての切除に際しては、体内に腔が形成され得る。処置は、該領域への追加の抗がん治療の灌流、直接注射、または局所適用によって達成され得る。そのような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごと、または1、2、3、4、および5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月ごとに繰り返され得る。こうした処置は、さまざまな投与量のものでもあり得る。
【0089】
II. 一般的な薬学的組成物
いくつかの態様では、薬学的組成物が対象に投与される。さまざまな局面が、有効量の組成物を対象に投与することを伴い得る。そのような組成物は、一般に、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散される。
【0090】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与された場合に、有害な反応も、アレルギー性の反応も、他の不都合な反応も生じさせない分子実体および組成物を指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と不適合でない限り、治療組成物におけるその使用が企図される。他の抗感染剤およびワクチンなどの補助的な活性成分もまた、組成物に含めることができる。
【0091】
活性化合物は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内経路を介する注射用に製剤化することができる。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ;注射の前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するための使用に適した固体形態を調製することもでき;調製物を乳化することもできる。
【0092】
注射可能な使用に適した薬学的形態には、滅菌された水性の溶液または分散液;例えば、水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。すべての場合において、形態は滅菌されていなくてはならず、それを容易に注射し得る程度にまで流動性でなくてはならない。製造および保管の条件の下で安定であるべきでもあり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗して保存することも欠かせない。
【0093】
本発明の化合物は、溶質(例えば、ポジオチニブまたはその塩)および溶媒によって形成される可変化学量論の複合体であると理解される溶媒和物を形成し得る。本発明の目的のためのそのような溶媒は、溶質の生物学的活性に干渉しないものであり得る。適切な溶媒の例としては、水、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、および酢酸が挙げられるが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、溶媒は、薬学的に許容される溶媒である。いくつかの態様では、溶媒は、水である。
【0094】
薬学的組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、ならびに同様のもの)、それらの適した混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体を含み得る。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の阻止は、さまざまな抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様のものによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的な吸収は、組成物における吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0095】
滅菌された注射可能な溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙されるさまざまな他の成分と共に、適切な溶媒に組み入れて、その後のろ過滅菌または同等の手順によって調製される。一般に、分散液は、基礎分散媒体および上に列挙されるものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルにさまざまな滅菌活性成分を組み入れることによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は真空乾燥およびフリーズドライ手法であり、これにより、任意の追加の望ましい成分が加わった活性成分の粉末が、その事前滅菌ろ過溶液から得られる。
【0096】
組成物の投与は、典型的には、任意の一般的な経路を介する。これには、経口または静脈内投与が含まれるが、それに限定されるわけではない。代替的には、投与は、同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または鼻腔内投与によるものであり得る。そのような組成物は、生理学的に許容される担体、緩衝剤、または他の賦形剤を含む薬学的に許容される組成物として通常は投与されることになる。
【0097】
製剤化時点で、溶液は、投与量製剤と適合する様式、および治療的または予防的に有効となる量で投与される。製剤は、上記の種類の注射可能な溶液などのさまざまな剤形において容易に投与される。
【0098】
III. キット
本開示のある特定の局面は、本開示の組成物または本開示の方法を実施するための組成物を含むキットにも関する。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーを評価するために使用され得る。ある特定の態様では、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000、もしくはそれより多い、またはその中で導き出せる任意の値もしくは範囲および組み合わせのプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子、または阻害剤を含むか、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000、もしくはそれより多い、またはその中で導き出せる任意の値もしくは範囲および組み合わせのプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子、または阻害剤を含むか、あるいは多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000、もしくはそれより多い、またはその中で導き出せる任意の値もしくは範囲および組み合わせのプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子、または阻害剤を含む。いくつかの態様では、細胞におけるバイオマーカー活性を評価するためのキットが存在する。
【0099】
キットは構成成分を含み得、これらは、チューブ、ボトル、バイアル、シリンジ、または他の適した容器手段などの容器中に個別に包装または配置され得る。
【0100】
個々の構成成分は、濃縮量でキット中に提供されてもよい;いくつかの態様では、構成成分は、それが他の構成成分と共に溶液中にある場合と同じ濃度で個別に提供される。構成成分の濃度は、1×、2×、5×、10×、もしくは20×、またはそれより高いものとして提供され得る。
【0101】
予後診断または診断用途向けの本開示のプローブ、合成核酸、非合成核酸、および/または阻害剤を使用するためのキットが本開示の一部として含まれる。具体的には、本明細書において特定される任意のバイオマーカー(例えば、KRASG12C)に対応する任意のそのような分子が企図され、これには、バイオマーカーの非コード配列ならびにバイオマーカーのコード配列を含み得る、バイオマーカーのすべてまたは一部と同一または相補的な核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブが含まれる。
【0102】
ある特定の局面では、陰性および/または陽性対照の核酸、プローブ、および阻害剤がいくつかのキット態様に含められる。さらに、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーに対する陰性または陽性対照である試料を含み得る。
【0103】
名称によって特定のバイオマーカーを含む本開示の任意の態様は、配列が特定の核酸の成熟配列と少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるバイオマーカーを含む態様も包含することが企図される。
【実施例】
【0104】
下記の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含められている。実施例に開示の手法は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された代表的な手法に従うものであり、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するものと見なせることが当業者によって理解されよう。一方で、当業者なら、本開示を踏まえれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく開示の特定の態様に多くの変更を施し、類似または同様の結果を依然として得ることが可能であることを理解するであろう。
【0105】
実施例1-ポジオチニブは、KRAS変異体がんのモデルにおいてKRAS G12C阻害の活性を相乗的に増強する
KRAS変異体肺がん細胞株H23におけるAMG 510 (ソトラシブ)によるKRAS
G12Cの阻害は、4時間後にpEGFR、pErbB3、およびpErbB4の上方制御をもたらした(
図1A)。ポジオチニブ単独では、10,000nM未満の濃度ではKRAS変異体細胞株生存率に対する効果はほとんどなかった一方で、100nMのポジオチニブの添加は、KRAS変異体NSCLC細胞株におけるKRAS
G12C阻害剤AMG 510およびMRTX849のIC
50値を減少させた。H358細胞では、AMG 510およびMRTX849のIC
50値は、それぞれ8nMおよび28nMから、0.20nMおよび0.19nMへと減少した。H1373細胞では、AMG 510およびMRTX849のIC
50値は、それぞれ1,420nMおよび632nMから、15.0nMおよび22.9nMへと減少した。H1792細胞では、AMG 510およびMRTX849のIC
50値は、それぞれ>10,000nMおよび1,330nMから、453nMおよび16.4nMへと減少した。H2030細胞では、AMG 510およびMRTX849のIC
50値は、それぞれ>10,000nMおよび1,360nMから、472nMおよび3.67nMへと減少した。これらの結果は(AMG 510については)
図1B、(MRTX849については)
図1Cに示される。
【0106】
実施例2-KRAS G12C阻害剤は、EGFR/HER2のリン酸化を増加させる
KRAS G12C変異を有するNSCLC細胞株をソトラシブまたはアダグラシブで4時間処理した。pEGFRおよびpHER2レベルをRPPAによって評価した。KRAS G12C阻害剤処理は、pEGFRおよびpHER2の有意なレベル上昇をもたらした。これらの結果は
図2に示される。
【0107】
実施例3 - KRAS G12C阻害剤処理は、すべてのEGFR/HERファミリーメンバーのリン酸化を増加させる
HCC44、H2122、およびH358 NSCLC細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有する)をアダグラシブまたはソトラシブで72時間処理した。ERBBファミリーメンバーのリン酸化をELISAアッセイによって評価した。アダグラシブ処理後の結果は
図3Aに示される。ソトラシブ処理後の結果は
図3Bに示される。すべての細胞株において、KRAS G12C阻害剤処理はpEGFR、pHER2、pHER3、およびpHER4の誘導を引き起こした。
【0108】
実施例4-ポジオチニブは、HER4を含むHERファミリーメンバーに対する活性を有する
EGFR、EGFR/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4、HER3/HER4、およびHER4を発現するBa/F3細胞を作製し、ポジオチニブおよびアファチニブに対する感受性について試験して、各受容体に対するこれらのTKIの活性を評価した。ポジオチニブ処理後の結果は
図4Aに示される。アファチニブ処理後の結果は
図4Bに示される。ポジオチニブは、HER2/HER3、HER2/HER4、HER3/HER4、およびHER4を発現する細胞に対して強力な活性を有した。対照的に、アファチニブは、HER3/HER4およびHER4を発現する細胞に対して活性を有さなかった。
【0109】
実施例5-ポジオチニブは、他のTKIと比較して、EGFRを上回ってHER2~4に選択的である
図5には、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ツカチニブ、TAS0728、アファチニブ、ポジオチニブ、ダコミチニブ、ネラチニブ、BDTX-189、モボセルチニブ、ラゼルチニブ、およびオシメルチニブを含むさまざまなTKIのIC
50値が示される。データは、EGFR、EGFR/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4、HER3/HER4、および/またはHER4受容体を発現するBa/F3細胞に基づいて決定したものであり、値は、Ba/F3野生型EGFR IC
50に対して正規化したIC
50値である。
【0110】
実施例6-外因性のEGFまたはNRG1は、KRAS G12C阻害剤に対する抵抗性を促進し得る
単独で、またはEGFRもしくはNRG1を活性化して他のHERファミリーメンバーを活性化させるためにEGFと組み合わせて、アダグラシブまたはソトラシブでH358細胞(KRAS G12C陽性NSCLC)を処理した。
図6Aは、アダグラシブと外因性のEGFまたはNRG1との組み合わせでの処理に対するH358細胞の抵抗性を示す。
図6Bは、ソトラシブと外因性のEGFまたはNRG1との組み合わせでの処理に対するH358細胞の抵抗性を示す。EGFまたはNRG1処理は、アダグラシブおよびソトラシブに対する感受性を減少させた。これらの発見は、この経路の活性化がKRAS G12C阻害剤に対する抵抗性を促進し得るという概念を裏付けるものである。
【0111】
実施例7-G12C阻害剤とポジオチニブとの組み合わせは、EGFR特異的阻害剤よりも相乗的である
単独で、またはアファチニブもしくはポジオチニブと組み合わせて、ソトラシブまたはアダグラシブでH23、HCC44、H2122、およびH1792細胞(KRAS G12C変異を保有するNSCLC)を処理した。
図7Aは、単独またはポジオチニブとの組み合わせでのソトラシブでのKRAS G12C変異保有NSCLC細胞の処理時の相乗効果を示す。
図7Bは、単独またはポジオチニブとの組み合わせでのアダグラシブでのKRAS G12C変異保有NSCLC細胞の処理時の相乗効果を示す。汎HER阻害剤かつEGFR阻害剤として働くポジオチニブは、EGFR/HER2のみを阻害するアファチニブよりも大きな相乗効果を生み出した。
【0112】
実施例8-ポジオチニブは、アファチニブよりも大きな程度にまでG12C阻害剤誘導性のHERのリン酸化を阻止する
単独で、またはポジオチニブもしくはアファチニブと共に、ソトラシブまたはアダグラシブでHCC44、H2122、およびH358細胞(すべて、KRAS G12C変異を保有するNSCLC)を処理した。ERBBファミリーメンバーであるpEGFR、pHER2、pHER3、およびpHER4のリン酸化をELISAアッセイによって評価した。
図8Aは、単独で、またはアファチニブもしくはポジオチニブと組み合わせて、ソトラシブで処理したKRAS G12C変異保有NSCLC細胞におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。
図8Bは、単独で、またはアファチニブもしくはポジオチニブと組み合わせて、アダグラシブで処理したKRAS G12C変異保有NSCLC細胞におけるERBBファミリーメンバーのリン酸化を示す。KRAS G12C阻害剤は、EGFRおよびHERファミリー受容体のリン酸化を誘導した。この効果は、アファチニブの添加によるものよりも大きな程度にまでポジオチニブの添加で阻害された。
【0113】
実施例9-低用量ポジオチニブは、KRAS G12C阻害剤のインビボ活性を増強する
単独で、またはポジオチニブ(pozi)もしくはアファチニブ(afat)と組み合わせて、ソトラシブでKRAS G12C変異体NSCLCのPDXモデルを処理した。
図9Aは、KRAS G12C変異体NSCLCのPDXモデルにおける腫瘍体積に対する、単独またはポジオチニブ(pozi)もしくはアファチニブ(afat)との組み合わせでのソトラシブ処理の効果を示す。
図9Bは、KRAS G12C変異体NSCLCのPDXモデルにおける無増悪生存に対する、単独またはポジオチニブ(pozi)もしくはアファチニブ(afat)との組み合わせでのソトラシブ処理の効果を示す。ポジオチニブの添加は、ソトラシブの抗腫瘍活性を増強し、動物の生存を延長した。
【0114】
本明細書において開示および特許請求される方法はすべて、本開示を踏まえれば、過度の実験を伴うことなく実施および実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関して説明されているが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載される方法に対して、および該方法の工程において、または該方法の工程の順序において、変形を適用できることが当業者には明らかであろう。より具体的には、同じまたは同様の結果が達成されるであろうことを想定しつつ、化学的にも生理学的にも関連するある特定の剤を、本明細書において記載される剤の代わりにできることが明らかであろう。当業者に明らかなそのような同様の置き換えおよび改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念に含まれるものと見なされる。
【0115】
参考文献
下記の参考文献は、それらが例示的な手順、または本明細書において示されるものへの補足となる他の詳細を提供する程度にまで、参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【国際調査報告】