(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法および試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/532 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01N33/532 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505423
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022070522
(87)【国際公開番号】W WO2023006581
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516125624
【氏名又は名称】ユーロイミューン・メディツィニシェ・ラボルディアグノシュティカ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】テウザー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】コモロフスキ,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ダマーマン,アンティエ
(72)【発明者】
【氏名】バウメルト,カスリン
(72)【発明者】
【氏名】ホルシュテ,マレイケ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンケルアンメルト,マルセル
(57)【要約】
本発明は、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法であって、化学ルミネセンス性化合物を、有効量のエンハンサーの存在下で酸化して、増大された化学ルミネセンスシグナルを得ることを含む方法や、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドの化学ルミネセンス反応における、好ましくは化学ルミネセンス免疫アッセイにおける化学ルミネセンスシグナルを増大させるための式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される化合物の使用、それらに関連する化学ルミネセンス組成物やキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法であって、
前記化学ルミネセンス性化合物を、有効量のエンハンサーの存在下で酸化して、増大された化学ルミネセンスシグナルを得るステップを含み、
前記化学ルミネセンス性化合物が、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドであり、
前記エンハンサーが、1つの化合物または2つ、3つもしくはそれ以上の化合物の混合物であり、
前記1つのエンハンサー化合物または前記複数のエンハンサー化合物のそれぞれが、式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化1】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)
からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
- R
1が、C
5~C
18アルキルもしくはアルケニルであり;
- R
2およびR
3が、互いに独立して、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、好ましくはメチルであり;
- R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8が、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、好ましくは水素、メチルもしくはエチルであり;かつ/または
- X
1-が、塩化物イオンもしくは臭化物イオン、好ましくは塩化物イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンハンサー、前記エンハンサーの少なくとも1つの化合物または前記エンハンサーの各化合物が、
- ベンジルジメチルイコシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルノナデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘプタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルペンタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルトリデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルウンデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルノニルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルオクチルアンモニウムクロリド、
- 塩化ベンザルコニウム、
- ベンジルジメチルヘプチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘキシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルペンチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルトリプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルエチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジエチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルプロピルエチルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジブチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルプロピルエチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルプロピルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルエチルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジエチルブチルアンモニウムクロリド、
- C
12~14-アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウムクロリド、
- ドデシル(エチルベンジル)ジメチルアンモニウムクロリド、
- テトラデシルジメチル(エチルベンジル)アンモニウムクロリド、
- オクタデシルジメチル(ar-エチルベンジル)アンモニウムクロリド、およびクロリドの代わりにブロミドを含むそれぞれの上述の化合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学ルミネセンス反応混合物中の前記エンハンサーの有効量が、各場合の前記化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積当たりの重量で(w/v)0.001%以上、好ましくはw/vで0.01%、より好ましくはw/vで0.1%以上、最も好ましくはw/vで0.2%以上である、請求項1から3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エンハンサーが、前記化学ルミネセンス反応の開始の前に、同時に、または直後に、前記化学ルミネセンス反応混合物中の前記化学ルミネセンス性化合物と合わされる、好ましくは、前記エンハンサーが、前記化学ルミネセンス反応の開始と同時に、前記化学ルミネセンス反応混合物中の前記化学ルミネセンス性化合物と合わされる、請求項1から4の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学ルミネセンス反応により生じた前記化学ルミネセンスシグナルが一定の継続時間検出され、好ましくは、前記化学ルミネセンス反応混合物が形成され、前記化学ルミネセンス反応が開始され、前記シグナルが同時に検出され、より好ましくは、前記検出の継続期間が、0.01から360秒、さらにより好ましくは0.1から30秒、さらにより好ましくは0.3から15秒、最も好ましくは0.5から10秒の範囲であり、各場合において、前記検出の継続期間が前記化学ルミネセンス反応の開始と共に開始する、請求項1から5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学ルミネセンス反応混合物が、さらに、過酸化水素、硝酸および/または水酸化ナトリウムを含む、請求項1から6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学ルミネセンス性化合物が、式(II)によるアクリジニウムエステル
【化2】
(式中、R
1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルであり;
R
3からR
15は、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、スルファモイル、カルボキシアルキル、スクシンイミジルエステルおよびオキソアルキルまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され;
任意に、存在する場合、X
1-はアニオンである);
または、式(III)によるアクリジニウムスルホンアミド
【化3】
(式中、R
1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルからなる群から選択され、および
R
2からR
15は、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、スルファモイル、カルボキシアルキル、スクシンイミジルおよびオキソアルキルまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され;
任意に、存在する場合、X
1-はアニオンである)
である、請求項1から7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドの化学ルミネセンス反応における、好ましくは化学ルミネセンス免疫アッセイにおける化学ルミネセンスシグナルを増大させるための、式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化4】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される化合物の使用。
【請求項10】
- R
1がC
5~C
18アルキルもしくはアルケニルであり;
- R
2およびR
3が、互いに独立して、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、好ましくはメチルであり、
- R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8が、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、好ましくは水素、メチルもしくはエチルであり;かつ/または
- X
1-が、塩化物イオンもしくは臭化物イオン、好ましくは塩化物イオンである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化5】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、
少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物であって、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは請求項の1から10のいずれか1項に記載の式(II)または式(III)によるアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物と
を含む化学ルミネセンス組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物であって、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは請求項1から11のいずれか1項に記載の式(II)または式(III)によるアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物と、
式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化6】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物と
を含む、好ましくは化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスを増大させるためのキット。
【請求項13】
液体溶液中の抗原、抗体または自己抗体を捕捉するための手段と、前記担体に結合した前記抗原、前記抗体または前記自己抗体を検出するための手段とを含む、診断上有用な担体、好ましくは固体担体を含み、
前記担体に結合した前記抗原、抗体または自己抗体を検出するための前記手段が、前記少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物により標識されている、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
疾患の診断に使用するための、請求項11に記載の化学ルミネセンス組成物または請求項12もしくは13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法であって、化学ルミネセンス性化合物を、有効量のエンハンサーの存在下で酸化して、増大された化学ルミネセンスシグナルを得ることを含む方法や、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドの化学ルミネセンス反応における、好ましくは化学ルミネセンス免疫アッセイにおける化学ルミネセンスシグナルを増大させるための式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される化合物の使用、および関連する化学ルミネセンス組成物やキットに関する。
【背景技術】
【0002】
非放射性の免疫アッセイ技術として、化学ルミネセンス免疫アッセイは、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ、および蛍光免疫アッセイ技術の後に、世界中で非常に急速に発展した。化学ルミネセンス免疫アッセイは、高い感度、広い検出範囲、簡単で速い操作、安定な標識、および低い夾雑物を有する技術であり、それらにより望ましい定量的な免疫アッセイ方法となっている(Cinquanta et al.,“Chemiluminescent immunoassay technology:what does it change in autoantibody detection?,”Auto Immun Highlights,8:9,24 June 2017)。
【0003】
現在では、化学ルミネセンス免疫アッセイは、小分子、核酸、ホルモン、抗体などの種々の生物学的物質の定量化のためのラジオイムノアッセイなどの従来の検出方法より好ましいことが多い。それは、化学的または酵素的トリガー物質による外部刺激による、化学ルミネセンス性物質による光の発生を特徴とする。化学ルミネセンス性物質の有名な例は、ルミノール、1,2-ジオキセタンアリールホスフェート、トリス-(ビピリジル)ルテニウム(II)錯体またはアクリジニウム系プローブである。典型的には、化学ルミネセンス反応は、化学ルミネセンス性基質の性質、添加されるトリガー物質および光出力の得られるタイプによって、フラッシュタイプおよびグロータイプ化学ルミネセンスに分けることができる。Tannousら(Tannous et al.,“Combined flash and glow-type chemiluminescent reactions for high-throughput genotyping of biallelic polymorphisms,”Analytical Biochemistry,Volume 320,Issue 2,Pages 266-272,15 September 2003)に記載されている通り、フラッシュタイプ反応は数秒から数分の範囲で明るい化学ルミネセンスシグナルをもたらし、グロータイプ反応における光出力はそれほど明るくないが、それは数時間まで持続できる。最適な方法によって、フラッシュタイプおよびグロータイプ免疫アッセイはそれに応じて設計できる。
【0004】
フラッシュタイプアクリジニウム系プローブは、試料のハイスループットが要求される場合、速く超高感度なシグナル生成のために化学ルミネセンス免疫アッセイにおいてしばしば使用される。有名な例は、10-メチル-2,6-ジメチル-アクリジニウム-NHSエステル(Me-DMAE-NHS)、N-スルホプロピル-ジメチル-アクリジニウム-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NSP-DMAE-NHS)、N-スルホプロピル-アクリジニウム-スルホンアミド-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NSP-SA-NHS)および10-メチル-2,6-ジメチル-アクリジニウム-(ポリエチレンオキシド)4-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MeAE-PEO4-NHS)であり、これらの分子およびその変形体は、例えば、欧州特許第1273917号、欧州特許第1539702号などに記載されている。これらの分子の全ては、アルカリ性過酸化水素による外部刺激時に光を発生させる。典型的には、これらの試薬は、トリガー溶液AおよびBに段階的に加えられる。過酸化水素は、通常、硝酸などの酸と組み合わせたトリガーAの一部である。水酸化ナトリウムは、その後に、トリガーBに注入される。
【0005】
最適なシグナル生成のために、トリガーBは、さらに、水溶液中でミセル構造を形成する可能性がある洗剤分子を要するとされている。ChangおよびMillerは、米国特許第4927769号において、四級アミンに基づくカチオン性洗剤が特に好都合であると記載している。非イオン性またはアニオン性洗剤も可能ではあるが、カチオン性洗剤の頭部基中の正電荷が、大部分疎水性のアクリジニウム系プローブと負電荷を帯びた過酸化水素アニオンをミセル界面で空間的に近づけて、そのため、Natrajanら(Natrajan et al.,“Effect of surfactants on the chemiluminescence of acridinium dimethylphenyl ester labels and their conjugates,”Org.Biomol.Chem.,9,pp.5092-5103,13 April 2011)にも記載の通り化学ルミネセンスシグナル出力を促進するとされている。米国特許第4927769号に含まれるそのようなカチオン性洗剤の有名な例はセチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)である。
【0006】
しかしながら、超低濃度の分析物の定量化を可能にし、シグナルとノイズ全般の間の区別を容易にするには、化学ルミネセンス免疫アッセイ技術のさらなる改善が必要である。これらの改善は、おそらくは、最適化されたエンハンサー物質による化学ルミネセンスの増大を必要とする。
【0007】
本発明の基礎となる問題は、特に超低濃度の分析物の改善された定量化に使用でき、シグナルとノイズ全般の間の区別をより容易にするために使用できる、化学ルミネセンス免疫アッセイ技術における方法および関連試薬および使用を提供することである。
【0008】
本発明の基礎となる別の問題は、化学ルミネセンス免疫アッセイにおいて、化学ルミネセンス性化合物、好ましくは、例えばアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドとしてのアクリジニウム化合物の化学ルミネセンスシグナルを増大させることが可能な物質を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、本発明の基礎にある問題は、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法であって、化学ルミネセンス性化合物を、有効量のエンハンサーの存在下で酸化して、増大された化学ルミネセンスシグナルを得るステップを含み、化学ルミネセンス性化合物が、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドであり、前記エンハンサーが、1つの化合物または2つ、3つもしくはそれ以上の化合物の混合物であり、前記1つのエンハンサー化合物または複数のエンハンサー化合物のそれぞれが、式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化1】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される、方法により解決される。
【0010】
有効量の本発明に係るエンハンサーは、1つ、2つまたはそれ以上のエンハンサー化合物により提供され、ここで、それらのそれぞれは、本明細書に開示される式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される。
【0011】
本発明に係る各エンハンサー化合物は芳香族頭部基を有する。本発明に係るエンハンサー化合物のカチオン性部分の可能なアニオン性対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオンおよび水酸化物イオンがあるが、これらに限定されない。
【0012】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、エンハンサーを、化学ルミネセンス性化合物、すなわちアクリジニウム化合物、例えば、アクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドを含む化学ルミネセンス反応混合物に加える工程を含む。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明に係る1つのエンハンサー化合物または複数のエンハンサー化合物のそれぞれは、R1が、C3~C18アルキルもしくはアルケニル、好ましくはC5~C18アルキルもしくはアルケニル;より好ましくはC8~C16アルキルもしくはアルケニル;最も好ましくはC12~C14アルキルもしくはアルケニルであり;R2およびR3が、互いに独立して、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル、好ましくはメチルであり;R4、R5、R6、R7およびR8が、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、好ましくは水素、メチルもしくはエチルであり;かつ/またはX1-は、塩化物イオンもしくは臭化物イオン、好ましくは塩化物イオンである、本明細書に開示される式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明に係る1つのエンハンサー化合物、エンハンサーの少なくとも1つの化合物またはエンハンサーの各化合物は、
- ベンジルジメチルイコシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルノナデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘプタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルペンタデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルトリデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルウンデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルデシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルノニルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルオクチルアンモニウムクロリド、
- 塩化ベンザルコニウム、
- ベンジルジメチルヘプチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルヘキシルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルペンチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジメチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルトリプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルエチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジエチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルプロピルエチルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジブチルプロピルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジプロピルブチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルプロピルエチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルプロピルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルブチルエチルメチルアンモニウムクロリド、
- ベンジルジエチルブチルアンモニウムクロリド、
- C12~14-アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウムクロリド、
- ドデシル(エチルベンジル)ジメチルアンモニウムクロリド、
- テトラデシルジメチル(エチルベンジル)アンモニウムクロリド、
- オクタデシルジメチル(ar-エチルベンジル)アンモニウムクロリドおよびクロリドの代わりにブロミドを含むそれぞれの上述の化合物
からなる群から選択される。
【0015】
本発明に係る分子構造を含む例示的なエンハンサー化合物(化学ルミネセンスエンハンサーとして好適な芳香族頭部基を有するカチオン性物質)のリストは表1に表される。化学命名法において起こり得る曖昧さにもかかわらず列記された物質の正体を明らかにするために、Chemical Abstracts Service(CAS)登録番号および/または化合物レコード(CID)が、この情報を見出すことができ一般に利用可能であれば、表1に列記される。Division of the American Chemical SocietyによるCAS登録番号は、https://www.cas.orgまたはhttps://commonchemistry.cas.orgによりアクセス可能である。CIDレコードは、National Institutes of HealthのPubChemデータベース中に、https://pubchem.ncbi.nlm.nih.govにより見出すことができる。CASおよび/もしくはCIDが化合物に割り当てられていないか、または情報が一般に利用可能でない場合、それぞれの化合物は「n.d.」と定義された。
【0016】
【0017】
本発明に係るエンハンサーは、2つ、3つまたはそれ以上の表1中の上述の化合物の混合物で構成され得て、この混合物はまた個別の物品として市販されることもある。個別の物品として市販されている、2つ、3つまたはそれ以上の表1中の上述の化合物の混合物の一例は、例えば、塩化ベンザルコニウムまたは臭化ベンザルコニウムである。塩化ベンザルコニウムは、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(ABDAC)の混合物であり、そのアルキル部分はC8からC18鎖からなる。混合物の組成に応じて、多数の市販物品およびCAS番号が、それぞれ、塩化ベンザルコニウムに見出され得る。
【0018】
本発明に係るエンハンサー化合物がキラルC原子を含む場合、エンハンサー化合物は、前記化合物の全異性体形態を開示して、それらを含む。
【0019】
好ましい実施形態において、化学ルミネセンス反応混合物中の前記エンハンサーの有効量は、各場合で化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積当たりの重量で(w/v)0.001%以上、好ましくはw/vで0.01%、より好ましくはw/vで0.1%以上、最も好ましくはw/vで0.2%以上である。一般に、化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスシグナルを増大させるのに必要なエンハンサーの有効量は、選択されるエンハンサーにより変わり、経験的に決定され得る。一般的規則として、化学ルミネセンス反応混合物中のエンハンサーの有効量は、各場合で化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積当たりの重量で0.005%超、好ましくはw/vで0.01%超である。好ましい実施形態において、化学ルミネセンス反応混合物に含まれる増大された化学ルミネセンスシグナルをもたらすエンハンサーの量は、各場合で化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、w/vで0.005%からw/vで3%の範囲、好ましくはw/vで0.01%からw/vで2%の範囲、また好ましくはw/vで0.05%からw/vで1%の範囲、より好ましくはw/vで0.08%からw/vで0.8%の範囲、さらにより好ましくはw/vで0.1%からw/vで0.6%の範囲、最も好ましくはw/vで0.2%からw/vで0.5%の範囲である。特に好ましい実施形態において、化学ルミネセンス反応混合物に含まれる増大された化学ルミネセンスシグナルをもたらすエンハンサーの量は、各場合で化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、w/vで0.08%からw/vで0.4%の範囲である。
【0020】
好ましくは、本発明の方法または使用による化学ルミネセンス反応は、20℃から37℃の温度で、および10から13.5の範囲のpHで実施されるべきである。本発明に係るエンハンサーは、好ましくは、本発明の方法での使用前に希釈される。好適な希釈剤としては、水、水性酸溶液または水性塩基溶液がある。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明に係るエンハンサーは化学ルミネセンス反応混合物に可溶性である。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は免疫アッセイにより実施されるか、または免疫アッセイの一部であり、免疫アッセイは、好ましくは、抗原、抗体または自己抗体の存在または不存在を検出する工程を含む。免疫アッセイは、好ましくは、競合アッセイ、キャプチャブリッジアッセイ(capture bridge assay)、免疫測定アッセイ、直接または間接クラスキャプチャアッセイ(class capture assay)を含む群から選択できる。これらのフォーマットのそれぞれの原理は、The Immunoassay Handbook,3rd edition,edited by David Wild,Elsevier,2005に詳述されている。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス反応はフラッシュタイプ化学ルミネセンス反応である。フラッシュタイプ化学ルミネセンス反応は、数秒から数分の範囲の明るい化学ルミネセンスシグナルをもたらす。
【0024】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンスシグナルを増大させる方法は、化学ルミネセンス反応としてフラッシュタイプ化学ルミネセンス反応を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明に係るエンハンサーは、化学ルミネセンス反応の開始の前、同時に、または直後に、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物と合わされ、好ましくは、エンハンサーは、化学ルミネセンス反応の開始と同時に、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物と合わされる。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス反応により生じる化学ルミネセンスシグナルは一定の継続時間検出され、好ましくは、化学ルミネセンス反応混合物が形成され、化学ルミネセンス反応が開始され、シグナルが同時に検出され、より好ましくは、検出の持続期間は0.01から360秒、さらにより好ましくは0.1から30秒、さらにより好ましくは0.3から15秒、および最も好ましくは0.5から10秒の範囲であり、ここで、各場合で、検出の持続期間は、化学ルミネセンス反応の開始と共に開始する。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、本発明に係るエンハンサーを、化学ルミネセンス反応混合物中の化学ルミネセンス性化合物と、化学ルミネセンス反応の開始と同時に合わせる工程および/または化学ルミネセンス反応の開始と共に開始して0.1から10秒の一定の継続時間、本発明に係る化学ルミネセンス反応により生じる化学ルミネセンスシグナルを検出する工程を含む。
【0028】
本発明によると、化学ルミネセンス反応は、好ましくは、化学ルミネセンス性化合物の酸化を開始することにより開始される。好ましくは、化学ルミネセンス性化合物の酸化の開始工程は、酸化性化合物、好ましくは過酸化水素を加えることにより実施される。
【0029】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス反応混合物は、さらに、過酸化水素、酸、好ましくは硝酸、および/またはアルカリ水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0030】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス反応混合物はトリガー溶液Aおよびトリガー溶液Bを含む。好ましくは、トリガー溶液Aは、酸、好ましくは硝酸、および過酸化水素を含み、トリガー溶液Bは、アルカリ水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウム、および本発明に係るエンハンサーを含む。
【0031】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス反応混合物は、好ましくは硝酸および過酸化水素を含むトリガー溶液A、ならびに好ましくは水酸化ナトリウムおよび本発明に係るエンハンサーを含むトリガー溶液Bを、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである化学ルミネセンス性化合物と混合することにより提供される。
【0032】
本発明に係る化学ルミネセンス性化合物は、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである。
【0033】
アクリジニウム化合物が、事実上全ての免疫アッセイが実施される水性媒体中で、アクリジニウム形態と擬塩基形態との間の平衡状態で存在することは当技術分野に周知である。アクリジニウム化合物の擬塩基形態は過酸化水素と反応できず、そのため化学ルミネセンスを生み出すことができない。化学発光性のアクリジニウム形態と非化学発光性の擬塩基形態との間の平衡は、媒体のpHにより強く影響される。酸性pHはアクリジニウム形態の形成を促進し、塩基性pHは擬塩基形態の形成を促進する。
【0034】
不均一アッセイフォーマットにおいて、アクリジニウム化合物またはトレーサーもしくはコンジュゲートと称されるアクリジニウム化合物により標識された生物活性のある分子からの化学ルミネセンスは、通常、2種の試薬の連続的な添加により引き起こされる。過酸化物を含有する強酸によるアクリジニウム化合物の最初の処理は、アクリジニウム化合物の擬塩基形態をアクリジニウム形態に転化するために必要である。次いで、アルカリ溶液によるその後の処理は酸を中和し、過酸化水素のイオン化により発光が起こることを可能にするために反応媒体のpHを上昇させる。
【0035】
好ましくは、本発明に使用される化学ルミネセンス性化合物は、式(II)によるアクリジニウムエステル:
【化2】
(式中、R
1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルであり;R
3からR
15は、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、スルファモイル、カルボキシアルキル、スクシンイミジルエステルおよびオキソアルキルまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され;任意に、存在する場合、X
1-はアニオンである);
または式(III)によるアクリジニウムスルホンアミド
【化3】
(式中、R
1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、スルホアルキル、カルボキシアルキルおよびオキソアルキルからなる群から選択され、R
2からR
15は、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキル、アミノ、アミド、アシル、アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、ハロゲン化物、ニトロ、シアノ、スルホ、スルホアルキル、スルファモイル、カルボキシアルキル、スクシンイミジルエステルおよびオキソアルキルまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され;任意に、存在する場合、X
1-はアニオンである)である。
【0036】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス性化合物は、さらに、R
12およびR
14が、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アルコキシル、ニトロ、またはハロゲン化物からなる群から選択され;R
11およびR
15が、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシル、アミノ、アミド、スルホンアミドまたはスルフィドからなる群から選択され;R
13が、以下の置換基
R
13=L-R
16-R
17
(式中、Lはスルファモイルであるか、または省略され、R
16は省略されるか、または、アルキル、アリール、アラルキル、z=1~10、好ましくはz=1もしくは2である(アミド)
z、もしくはx=1~10、好ましくはx=4である(ポリエチレンオキシド)
xであり;R
17は、
【化4】
SO
2Clまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され、
式中、Rは、アルキル、アリール、またはアラルキルであり;Xは、CH
3SO
4、OSO
2F、ハロゲン化物、OSO
2CF
3、OSO
2C
4F
9、または
【化5】
である)を表し、
R
12、R
13およびR
14置換基位置が交換可能である、本明細書に開示される式(II)によるアクリジニウムエステルである。
【0037】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス性化合物は、さらに、R
12、R
13およびR
14が、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アルコキシル、ニトロ、またはハロゲン化物からなる群から選択され;R
11およびR
15が、それぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシル、アミノ、アミド、スルホンアミドまたはスルフィドからなる群から選択され;R
2が、以下の置換基
R
2=L-R
16-R
17
(式中、Lは、スルファモイルであるか、または省略され、R
16は省略されるか、またはアルキル、アリール、アラルキル、z=1~10、好ましくはz=1もしくは2である(アミド)
z、もしくはx=1~10、好ましくはx=4である(ポリエチレンオキシド)
xであり;R
17は
【化6】
ハライド
SO
2Clまたは任意の他の脱離基からなる群から選択され、
式中、Rは、アルキル、アリール、またはアラルキルであり;Xは、CH
3SO
4、OSO
2F、ハロゲン化物、OSO
2CF
3、OSO
2C
4F
9、または
【化7】
である)を表し、
R
11からR
15置換基位置が交換可能である、本明細書に開示される式(III)によるアクリジニウムスルホンアミドである。
【0038】
本発明において有用であるアクリジニウム化合物は、1986年10月6日に出願された米国特許出願番号第915,527号およびNatrajan et al.,“A comparison of chemiluminescent acridinium dimethylphenyl ester labels with different conjugation sites”,Org Biomol Chem,13(9):2622-337,March 2015にさらに記載されている。
【0039】
好ましい実施形態において、好ましくは前述の実施形態の少なくとも1つによると、化学ルミネセンス性化合物は、
- x=1~10であるN-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウム-(ポリエチレンオキシド)x-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NSP-DMAE-PEOx-NHS)、好ましくはN-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウム-(ポリエチレンオキシド)4-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NSP-DMAE-PEO4-NHS);
- 2,6-(ジメチル)-3-クロロスルホニルフェニル-N-(3-スルホプロピル)-アクリジニウム-9-カルボキシレート(SPAE);
- 2,6-(ジメチル)-3-スルファモイルフェニル-N-(3-スルホプロピル)-アクリジニウム-9-カルボキシレート-(ポリエチレンオキシド)4-ペンタフルオロフェニルエステル(SPAE-PEO4-PFP);
- 2,6-(ジメチル)-3-クロロスルホニルフェニル-N-メチル-アクリジニウム-9-カルボキシレートトリフレート(MeAE);
- 2,6-(ジメチル)-3-スルファモイルフェニル-N-メチル-アクリジニウム-9-カルボキシレートトリフレート-(ポリエチレンオキシド)4-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MeAE-PEO4-NHS)、
- 2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニルオキシ-1-カルボニル-4,7,10,13-テトラオキサペンタデシル-(15-アミノ)-3’-スルホニル-2’,6’-ジメチルフェニル-N-(3-スルホプロピル)-アクリジニウム-9-カルボキシレート、
- 10-メチル-2,6-ジメチル-アクリジニウム-NHSエステルメチルスルフェート(Me-DMAE-NHS)
- N-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウム-N-ヒドロキシスクシンイミド(NSP-DMAE-NHS);および
- N-スルホプロピル-アクリジニウム-スルホンアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド(NSP-SA-NHS)
からなる群から選択される。
【0040】
本発明に係る化学ルミネセンス性化合物として好適な、本明細書に定義される式(II)または(III)による例示的なアクリジニウム化合物のリストは表2に表される。化学命名法において起こり得る曖昧さにもかかわらず列記された物質の正体を明らかにするために、Chemical Abstracts Service(CAS)登録番号および/または化合物レコード(CID)が、この情報を見出すことができ一般に利用可能であれば、表2に列記される。Division of the American Chemical SocietyによるCAS登録番号は、https://www.cas.orgまたはhttps://commonchemistry.cas.orgによりアクセス可能である。CIDレコードは、National Institutes of HealthのPubChemデータベース中に、https://pubchem.ncbi.nlm.nih.govにより見出すことができる。CASおよび/もしくはCIDが化合物に割り当てられていないか、または情報が一般に利用可能でない場合、それぞれの化合物は「n.d.」と定義された。
【0041】
【0042】
本発明に係るアクリジニウム化合物は、その化合物と反応して、化合物が化学ルミネセンス反応において光を発するように化合物の励起を起こす任意のオキシダントにより酸化され得る。好ましいオキシダントは、希アルカリ中の過酸化水素である。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス反応混合物は、オキシダントを、化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積で0.01%から1%の量で、好ましくは化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積で0.05%から0.5%の量で、最も好ましくは化学ルミネセンス反応混合物の総体積に基づいて、体積で0.1%から0.3%の量で含む。
【0044】
発せられる光は、LB 960 Centro Microplate Luminometer(Berthold Technologies GmbH & Co.KG,Germany)、Model 810 Luminometer(Ciba-Corning Diagnostics Corp.,Medfield,MA)またはRA Analyzer 10(Euroimmun,PerkinElmer子会社,Germany)などの標準的な測定装置を使用して定量化できる。
【0045】
好ましい実施形態において、化学ルミネセンスの発光が可能である化学ルミネセンス性化合物は、400nm以上、好ましくは400nmから690nm、より好ましくは400nmから550nm、より好ましくは405nmから500nm、最も好ましくは410から490nmの波長を有するルミネセンスを発する。
【0046】
第2の態様において、本発明の基礎にある問題は、化学ルミネセンス反応における、好ましくは化学ルミネセンス免疫アッセイにおける、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは本発明に係るそれらの化学ルミネセンスシグナルを増大させるための、式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化8】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される化合物の使用により解決される。
【0047】
好ましい実施形態において、化合物は、R1が、C3~C18アルキルまたはアルケニル、好ましくはC5~C18アルキルまたはアルケニル;より好ましくはC8~C16アルキルまたはアルケニル;最も好ましくはC12~C14アルキルまたはアルケニルであり;R2およびR3が、互いに独立して、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、好ましくはメチルであり、R4、R5、R6、R7およびR8が、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり;かつ/またはX1-が、塩化物イオンまたは臭化物イオン、好ましくは塩化物イオンである、本明細書に定義される式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される。
【0048】
好ましくは、上記で開示された式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物は、化学ルミネセンス反応における、好ましくは化学ルミネセンス免疫アッセイにおける、化学ルミネセンス性化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、好ましくは本発明に係るそれらの化学ルミネセンスシグナルを増大させるために使用される。
【0049】
本発明によると、化合物は、芳香族頭部基を有する本発明に係るエンハンサー化合物である。
【0050】
第3の態様において、本発明の基礎にある問題は、式(I)の四級アミンカチオン性物質
【化9】
(式中、R
1は、C
3~C
20アルキルまたはアルケニルであり;R
2およびR
3は、互いに独立して、C
1~C
4アルキルまたはアルケニルであり;R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニルであり;X
1-は、ハロゲン化物イオンまたはヒドロキシルイオン、好ましくは塩化物イオンまたは臭化物イオンである)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物であって、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは本明細書に開示される式(II)または式(III)のアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物を含む化学ルミネセンス組成物により解決される。
【0051】
本発明によると、本発明に係る化学ルミネセンス組成物中の少なくとも1つの化合物は、芳香族頭部基を有する本発明に係るエンハンサー化合物である。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス組成物は蛍光剤をさらに含む。
【0053】
本発明に係る化学ルミネセンス組成物は、1つまたは複数の蛍光剤、例えば、フルオレセインナトリウム、ローダミンBおよび/またはローダミン6Gをさらに含み得る。蛍光剤は、化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスシグナルから光エネルギーを受け取った後、1つの蛍光を発するだろう。フルオレセインの量子収量が、化学ルミネセンス性化合物のものよりはるかに高くなり得るという可能性があり、そのため化学ルミネセンス性化合物の量子収量は間接的に改善し得る。例えば、フルオレセインナトリウム(9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-3H-キサンテン-3-ケトン二ナトリウム)は水溶性蛍光剤であり、それぞれ494nmおよび518nmの励起波長および発光波長を有する。フルオレセインナトリウムの量子収量は最大0.97である。同様に、ローダミン系列の蛍光剤も非常に高い蛍光量子収量を有する。蛍光剤は、好ましくは、本発明に係る化学ルミネセンス組成物中で約0.1mg/Lから約1g/Lの濃度で使用される。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス組成物は、本発明に係る方法による化学ルミネセンス反応混合物である。好ましくは、本発明に係る化学ルミネセンス組成物は、硝酸、過酸化水素および/または水酸化ナトリウムをさらに含む。
【0055】
好ましくは開示された実施形態による、本発明の化学ルミネセンス組成物は、化学ルミネセンス組成物の成分をマルチパッケージシステム(multi-package system)に個別に包装することによりキットに含まれ得る。本発明に係る他の実施形態において、数種の成分は1つの容器中で合わされ得るが、その他の成分は別々な容器中に保存されて、マルチパッケージシステムを形成する。代替的に、成分は混合されて、次いで単一の混合物として包装され得る。
【0056】
第4の態様において、本発明の基礎にある問題は、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物であって、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは上記で開示された式(II)または式(III)のアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物および上記で開示された式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物を含む、好ましくは化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスを増大させるためのキットにより解決される。問題は、化学ルミネセンス性化合物が、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは上記で開示された式(II)または式(III)のアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドであり、および上記で開示された式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物も含まれる、化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスの増大に使用するためのキットにより好ましくは解決される。
【0057】
好ましくは、式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物は、上述の本発明に係るエンハンサーである。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明に係るキットの成分は、個別に、または1、2もしくはそれ以上の混合物の形態で保存される。
【0059】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物、好ましくは本明細書に開示される式(II)または式(III)の化合物、および本明細書に開示される式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物は、共に本発明に係るキット中の1つの混合物中で、任意に、さらに水酸化ナトリウムと共に保存される。好ましくは硝酸および過酸化水素を含むトリガー溶液Aは、好ましくは、本発明に係るキット中に個別に保存される。
【0060】
好ましい実施形態において、好ましくは開示される好ましい実施形態の少なくとも1つによる本発明に係るキットは、診断上有用な担体、好ましくは固体担体であって、液体溶液中で抗原、抗体または自己抗体を捕捉する手段および担体に結合した抗原、抗体または自己抗体を検出する手段を含む、診断上有用な担体、好ましくは固体担体を含み、担体に結合した抗原、抗体または自己抗体を検出する手段は、少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物、すなわちアクリジニウム化合物、好ましくは本発明に係る式(II)のアクリジニウムエステルまたは式(III)のアクリジニウムスルホンアミドにより標識されている。本発明によると、診断上有用な担体が、ビーズ、好ましくは常磁性ビーズ、試験紙、マイクロタイタープレート、好ましくはウェスタンブロット、ラインブロットおよびドットブロットを含む群からのメンブレン、ラテラルフローデバイス、ガラス表面、顕微鏡法のためのスライド、マイクロアレイおよびバイオチップを含む群から選択されることがさらに好ましい。さらに好ましい実施形態において、診断上有用な担体は、ラインブロット、バイオチップまたはビーズ、最も好ましくはビーズである。好ましくは、診断上有用な担体はビーズにより提供される。少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物であって、アクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミド、より好ましくは本発明に係る式(II)または式(III)のアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである少なくとも1つの化学ルミネセンス性化合物がビーズに結合していることが、本発明によるとさらに好ましい。結合は、タンパク質-タンパク質相互作用により架橋した非共有結合性のタンパク質-タンパク質相互作用により存在し得るか、または共有結合性の結合により存在し得る。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明に係るキットは、上述の診断上有用な担体、トリガー溶液Aおよびトリガー溶液Bをさらに含み、ここで、トリガー溶液Aは硝酸および過酸化水素を含み、トリガー溶液Bは水酸化ナトリウムおよび上記で定義された式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択される1、2またはそれ以上の化合物を含み、少なくともトリガー溶液Aおよびトリガー溶液Bは個別に保存される。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明に係るキットは、担体に結合した抗原、抗体または自己抗体を検出する手段であって、担体に結合した抗原、抗体または自己抗体を検出する手段が二次抗体であり得る手段をさらに含む。好ましくは、二次抗体は、抗体クラス、好ましくは哺乳動物の抗体クラス、より好ましくはIgGなどのヒト抗体クラスの全ての抗体に特異的に結合する抗体である。二次抗体は、典型的には、前記クラスの定常ドメインを認識するが、対象とするクラスの抗体により共有される他のエピトープ、例えば3次元構造にわたる立体配座エピトープも認識し得る。広範囲のそれらは、例えばThermo Fisherから市販されている。それは、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体であり得る。好ましい実施形態において、本明細書で使用される用語「認識された」は、二次抗体が、検出されるべき抗原、抗体/複数の抗体または自己抗体/複数の自己抗体に特異的に結合することを意味する。二次抗体は、抗体クラスの全アイソタイプに特異的に結合し得る。例えば、IgGクラス抗体に対する二次抗体は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4アイソタイプに結合し得る。これは、そのクラスに対する、好ましくはIgGクラス抗体に対する二次抗体として、各IgGアイソタイプに特異的に結合する抗体を含む混合物または対象とする全アイソタイプと反応する単一の抗体を使用することにより達成され得る。二次抗体の使用は、Kruger,N.J.,Detection of Polypeptides on Blots Using Secondary Antibodies,in The Protein Protocols Handbook(ed.J.M.Walker),page 967,volume 1996,Springerに説明されている。簡単に言うと、そのような二次抗体は、実験動物を、認識されるべき抗体または認識されるべき抗体の混合物により免疫することにより生成され得る。
【0063】
好ましい実施形態において、本明細書で使用される用語「特異的に結合する」は、好ましくは、その結合反応が、Biacore装置を使用して25℃でpH 7のPBS緩衝液中で表面プラズモン共鳴により測定される1×10-5M、より好ましくは1×10-7M、より好ましくは1×10-8M、より好ましくは1×10-9M、より好ましくは1×10-10M、より好ましくは1×10-11M、より好ましくは1×10-12Mの解離定数を特徴とする結合反応より強いことを意味する。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明に係る化学ルミネセンス組成物、化学ルミネセンス反応混合物および/またはキットは、安定剤、好ましくは1セットの安定剤、洗浄緩衝剤、劣化防止剤を含む群からの1つまたは複数の、好ましくは全ての試薬をさらに含む。
【0065】
本発明に係る化学ルミネセンス組成物、化学ルミネセンス反応混合物および/またはキットは、反応系のpHを維持するための緩衝剤をさらに含み得る。適切な緩衝剤としては、炭酸塩緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどがある。緩衝剤は、約10から約500mMの濃度で使用され得る。
【0066】
本発明に係る化学ルミネセンス組成物、化学ルミネセンス反応混合物および/またはキットは、試薬の保存および長期貯蔵を促進する保存剤をさらに含み得る。保存剤の種類には制限がなく、Proclin300、アジ化ナトリウム、Kathon、およびゲンタマイシンなどの市販の保存剤が使用され得る。保存剤は、化学ルミネセンス反応に影響しない任意の濃度で使用され得る。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明に係るキットは、キャリブレーター、好ましくは1セットのキャリブレーター、陽性対照および陰性対照を含む群からの1つまたは複数の、好ましくは全ての試薬をさらに含む。
【0068】
さらなる異なる検出用途によると、本発明に係るキットは、対応する酵素試薬、標識された酵素試薬、固相抗体および/または操作者に指示するマニュアルをさらに含み得る。
【0069】
第5の態様において、本発明の基礎にある問題は、キット、医療機器、好ましくは疾患の診断のための診断機器の製造のための、本発明に係る化学ルミネセンス組成物または化学ルミネセンス反応混合物の使用により解決される。本発明によると、医療機器は、好ましくは顕微鏡法のためのガラススライド、バイオチップ、マイクロタイタープレート、ラテラルフローデバイス、試験紙、メンブレン、好ましくはラインブロット、クロマトグラフィーカラムおよびビーズ、好ましくは磁気または蛍光ビーズを含む群から好ましくは選択される。
【0070】
別の態様において、本発明は、試験試料中の対象とする分析物を検出する免疫アッセイおよび/または方法であって、
(a)対象とする分析物を含むと疑われる試験試料を、対象とする分析物上の少なくとも1つのエピトープに結合する第1抗体と接触させて、第1抗体-分析物複合体を形成する工程であって、第1抗体が固相に固定化されており、さらに、試験試料中の少なくとも1つの自己抗体が、対象とする分析物上の少なくとも1つのエピトープに結合して、自己抗体-分析物複合体を形成し、前記自己抗体が固相に結合する工程;
(b)第1抗体-分析物複合体および自己抗体-分析物複合体を含む前記混合物を、検出可能な標識にコンジュゲートされた第2抗体と接触させて、第1抗体-分析物-第2抗体複合体および自己抗体-分析物-第2抗体複合体を形成する工程であって、第2抗体が対象とする分析物上の少なくとも1つのエピトープに結合し、さらに、検出可能な標識が少なくとも1つのアクリジニウム化合物、より好ましくは本発明に係る上述の式(II)によるアクリジニウムエステルまたは式(III)のアクリジニウムスルホンアミドである工程;
(c)過酸化水素の源および本発明に係る上述の式(I)によるエンハンサーを、工程(b)の混合物に生成させるか、または提供する工程;
(d)塩基性溶液を、工程(c)の混合物に加えて、光シグナルを生成させる工程;および
(e)工程(d)で生じたか、または発せられた光シグナルを測定して、試験試料中の対象とする分析物を検出する工程
を含む免疫アッセイおよび/または方法に関する。
【0071】
上記免疫アッセイまたは方法において、試験試料は、全血、血清、または血漿であり得る。
【0072】
さらなる態様において、本発明の基礎にある問題は、疾患の診断に使用するための本発明の化学ルミネセンス組成物または本発明のキットにより解決される。
【0073】
本発明は、本明細書に開示される式(I)の四級アミンカチオン性物質からなる群から選択されるエンハンサー(化合物)を使用することにより、化学ルミネセンス反応における化学ルミネセンス反応混合物中のアクリジニウム化合物、好ましくはアクリジニウムエステルまたはアクリジニウムスルホンアミドである化学ルミネセンス性化合物の増大された化学ルミネセンスシグナルを提供できるという、発明者らの驚くべき発見に基づいている。
【0074】
発明者らは、驚くべきことに、四級アミンカチオン性物質の正電荷を帯びた頭部基中の芳香族部分の付加が、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)などの従来の物質と比べて化学ルミネセンスシグナル出力をさらに増大させることを見出した。さらに、発明者らは、驚くべきことに、そのような四級アミンカチオン性物質の疎水性尾部中の少なくとも3炭素原子の長さが、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)などの従来の物質と比べて、および正電荷を帯びた頭部基中に芳香族部分を有するが疎水性尾部中に少なくとも3炭素原子の長さを欠く四級アミンカチオン性物質と比べて化学ルミネセンスシグナル出力の増大のために追加的に重要であることを見出した。
【0075】
したがって、本発明による記載される新たな方法(および関連する使用、組成物、混合物および/または物質)は、超低濃度の分析物のさらにより高感度の定量化を可能にするが、化学ルミネセンス免疫アッセイ全般におけるシグナル区別にも好都合である。
【0076】
本発明に係る化学ルミネセンスエンハンサー化合物は、化学ルミネセンス性化合物、具体的には本発明に係る式(II)および/または式(III)の化学ルミネセンス性化合物の化学ルミネセンスのための望ましい増大効果を有する単純な成分を含む。本発明の化学ルミネセンス組成物は、安定で、長時間続き、非常に増大された化学ルミネセンスシグナルを与え、化学ルミネセンス免疫アッセイ、DNAプローブ検出、および生体膜タンパク質ブロッティングの化学ルミネセンス分析に使用され得る。本発明の化学ルミネセンス組成物は、臨床診断、科学的研究、環境および衛生検出、ならびに法医学鑑定の分野に広く使用され得る。一般に、本発明に係る化学ルミネセンスエンハンサー化合物は市販されており、低廉である。さらに、それらは、大規模での化学ルミネセンス組成物の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
別途示されない限り、本明細書で使用される用語は以下の意味を有する:
【0078】
本明細書で使用される用語「増大させること」は、化学ルミネセンス反応の総発光および/または化学ルミネセンス反応のシグナル対バックグラウンドノイズ比が、本発明に係るエンハンサーを使用する場合には、本発明に係るエンハンサーがない場合より、および/または本発明まで使用されてきたいわゆるエンハンサー(すなわちヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド;CTAC)と比較して、より高いことを意味する。
【0079】
個別または他の基と組み合わせて本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~12、1~8、および1~6個の炭素原子などの1~20個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基を指す。「n-プロピル」などの単一の直鎖アルキルへの言及は直鎖アルキル基を具体的に意味し、「イソプロピル」などの単一の分岐鎖アルキルへの言及は分岐鎖アルキル基を具体的に意味する。例えば、「C1~6アルキル」は、C1~4アルキル、C1~3アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよびtert-ブチルを含む。同じ規則が、本明細書全体で使用される他の基に当てはまる。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、secブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルがあるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子により親分子部分に付加された、本明細書に定義されるアルキル基を意味する。アルコキシの代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシがあるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される用語「アリール」は、フェニル基、または二環式もしくは三環式縮合環系であって1つもしくは複数の縮合環がフェニル基である二環式もしくは三環式縮合環系を指す。二環式縮合環系は、シクロアルケニル基、シクロアルキル基、または別のフェニル基に縮合したフェニル基により例示される。三環式縮合環系は、本明細書に定義されるシクロアルケニル基、シクロアルキル基または別のフェニル基に縮合した二環式縮合環系により例示される。アリールの代表例としては、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、およびテトラヒドロナフチルがあるが、これらに限定されない。本開示のアリール基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基により任意に置換され得る。
【0082】
本明細書で使用される用語「アシル」は、Raが、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである-C(O)Ra基を指す。アシルの代表例としては、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどがあるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、2から20個の炭素を含み、2つの水素の除去により形成された少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素を指す。アルケニルの代表例としては、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、および3-デセニルがあるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、2から20個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。アルキニルの代表例としては、アセチレニル、1-プロピニル、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ペンチニル、および1-ブチニルがあるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用される用語「アミド」は、カルボニル基により親分子部分に結合したアミノ基を指す(ここで、用語「カルボニル基」は-C(O)-基を指す)。
【0086】
本明細書で使用される用語「アミノ」は、RbおよびRcが、水素、アルキルおよびアルキルカルボニルからなる群から独立に選択される-NRbRcを意味する。
【0087】
本明細書で使用される用語「アラルキル」は、本明細書に定義されるアルキル基により親分子部分に付加されたアリール基を意味する。アリールアルキルの代表例としては、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、および2-ナフタ-2-イルエチルがあるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書で使用される通り、用語「カルボキシ」または「カルボキシル」は-CO2Hまたは-CO2を指す。
【0089】
本明細書で使用される通り、用語「カルボキシアルキル」は、nが1から20である-(CH2)nCO2Hまたは-(CH2)nCO2-基を指す。
【0090】
本明細書で使用される通り、用語「シアノ」は-CN基を意味する。
【0091】
本明細書で使用される通り、用語「シクロアルケニル」は、3から10個の炭素原子および1から3個の環を有する非芳香族環式または二環式環系であって、各5員環が1つの二重結合を有し、各6員環が1または2つの二重結合を有し、各7および8員環が1から3つの二重結合を有し、各9から10員が1から4つの二重結合を有する非芳香族環式または二環式環系を指す。シクロアルケニル基の代表例としては、シクロヘキセニル、オクタヒドロナフタレニル、ノルボルニレニルなどがある。シクロアルケニル基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基により任意に置換され得る。
【0092】
本明細書で使用される通り、用語「シクロアルキル」は、3から12個の炭素原子を有する飽和単環式、二環式、または三環式炭化水素環系を指す。シクロアルキル基の代表例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、アダマンチルなどがある。本開示のシクロアルキル基は、アルコキシ、アルキル、カルボキシル、ハロ、およびヒドロキシルからなる群から独立に選択される1、2、3、4または5つの置換基により任意に置換され得る。
【0093】
本明細書で使用される通り、用語「シクロアルキルアルキル」は、Rdがアルキレン基であり、Reがシクロアルキル基である-RdRe基を意味する。シクロアルキルアルキル基の代表例はシクロヘキシルメチルなどである。
【0094】
本明細書で使用される用語「ハロゲン化物」は、フルオリド、クロリド、ブロミド、およびヨージドを含む。
【0095】
本明細書で使用される通り、用語「ヒドロキシル」は-OH基を意味する。
【0096】
本明細書で使用される通り、用語「ニトロ」は-NO2基を意味する。
【0097】
本明細書で使用される通り、用語「オキソアルキル」は、Raが、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルであり、nが1から20である-(CH2)nC(O)Raを指す。
【0098】
本明細書で使用される通り、用語「フェニルアルキル」は、フェニル基により置換されたアルキル基を意味する。
【0099】
本明細書で使用される通り、用語「スルホ」は-SO3Hまたは-SO3
-基を意味する。
【0100】
本明細書で使用される通り、用語「スルホアルキル」は、nが1から20である-(CH2)nSO3Hまたは-(CH2)nSO3
-基を指す。
【0101】
本明細書で使用される用語「可溶性」は沈殿物がないことを指す。
【0102】
本明細書で使用される通り、用語「スルファモイル」は、R1が、水素、アルキル、アリールおよびアルキルカルボニルからなる群から選択される-SO2-NR1-を指す。
【0103】
本明細書で使用される通り、用語「スルホンアミド」はスルホン酸の任意のアミドを指す。
【0104】
本明細書で使用される用語「化学ルミネセンス」は、化学物質の特定の反応で生じる光である。高エネルギー中間体が化学反応中で分解する際に一重項分子は励起されて形成され、次いで励起された一重項分子は基底状態に戻り、エネルギーの一部がルミネセンスの形態で発せられる。したがって、化学ルミネセンス反応は、2つのプロセス、励起プロセスおよびルミネセンスプロセスを含む。いくらかの分子エネルギーは、また、項間および項内交差(intrasystem crossing)のため励起状態で消散されるだろう。
【0105】
好ましい実施形態において、本明細書で使用される用語「診断」は、その最も広い可能な意味で使用されるものとし、疾患がどのように進行しているかもしくは将来進行する可能性があるかを見出すため、または特定の治療、例えば免疫抑制薬の投与に対する患者もしくは患者全般の反応性を評価するため、または試料がそのような患者由来であるかを見出すために、知られているまたはコホートからの匿名対象である患者が、過去に、診断の時点でもしくは将来に、特定の疾患または障害を患うか、または患う可能性があるか、または平均もしくは好ましくは類似の症状を有する同等な対象よりも患う可能性がより高いかの評価に役立つ情報を得ることを目指すあらゆる種類の手順を指し得る。そのような情報は臨床診断に使用され得るが、例えば患者コホート中または集団中の疾患を患っている対象の比率を決定するための一般的研究の目的で、実験および/または研究試験所によっても得られ得る。換言すると、用語「診断」は、診断することだけではなく、1人または複数人の患者の薬物または候補薬物の投与に対する反応をモニターして例えば薬物の効能を決定することを含む、疾患または障害の経過を予想することおよび/またはモニターすることも含む。結果は臨床診断用途のために特定の患者に割り当てられ得て、前記患者を治療する医師または施設に伝えられ得るが、これは、他の用途には、例えば研究目的の診断には必ずしも当てはまらず、その場合、結果を匿名化された患者由来の試料に割り当てることが充分であり得る。
【0106】
好ましい実施形態において、用語「診断」は、患者にとって最も見込みがある治療レジメンを選択するのに使用される方法または薬剤も指し得る。換言すると、方法または薬剤は、対象のために治療レジメンを選択することに関連し得る。例えば、自己抗体の検出は、患者に1つまたは複数の免疫抑制薬を投与することを含み得る免疫抑制療法が選択されるべきであることを示し得る。
【0107】
本発明に係る方法は、好ましくはインビトロ方法である。
【0108】
本発明によると、キットは、本発明に係る方法をどのように実施するかの説明書を含み得る。
【0109】
好ましい実施形態において、本発明に係るあらゆる方法または使用は、非診断用の使用向け、例えば、患者を診断する以外の使用のために自己抗体の存在を決定することであり得る。例えば、方法または使用は、患者の血液から自己抗体を除去するように設計された医療機器の効率をインビトロで試験するためであり得て、この場合、試験は患者の血液以外の液体に対して実施される。
【0110】
別の好ましい実施形態において、方法は、診断用アッセイの信頼性を確認するためであり得て、ポリペプチドに対する抗体を検出することを含み得る。
【0111】
好ましい実施形態において、本発明に係るあらゆる方法または使用は、疾患および/もしくは腫瘍を患うか、または発症するリスクがある対象を特定するためであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基を有する3種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くカチオン性化合物CTACの存在下での1nM NSP-DMAE-NHSの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図2】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基を有する3種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くカチオン性洗剤CTACの存在下での1nM NSP-SA-NHSの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図3】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基を有する3種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くカチオン性洗剤CTACの存在下での0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAEの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図4】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基を有する3種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くカチオン性洗剤CTACの存在下での0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SAの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図5】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基および少なくとも3炭素原子を有する長い疎水性尾部を有する4種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド;化合物4:ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を含むが長い疎水性尾部を欠くベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BTEAC)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くが長い疎水性尾部を含むCTACの存在下での1nM NSP-DMAE-NHSの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図6】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基および少なくとも3炭素原子を有する長い疎水性尾部を有する4種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド;化合物4:ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を含むが長い疎水性尾部を欠くBTEACの存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くが長い疎水性尾部を含むCTACの存在下での1nM NSP-SA-NHSの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図7】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基および少なくとも3炭素原子を有する長い疎水性尾部を有する4種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド;化合物4:ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド)の存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を含むが長い疎水性尾部を欠くBTEACの存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くが長い疎水性尾部を含むCTACの存在下での0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAEの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【
図8】0.5%(w/v)のそれぞれ芳香族頭部基および少なくとも3炭素原子を有する長い疎水性尾部を有する4種の異なるカチオン性化合物(化合物1:ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド;化合物2:塩化ベンザルコニウム;化合物3:アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド;化合物4:ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド)または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を含むが長い疎水性尾部を欠くBTEACの存在下、または0.5%(w/v)の芳香族頭部基を欠くが長い疎水性尾部を含むCTACの存在下での0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SAの化学ルミネセンス反応速度を示す。
【実施例】
【0113】
本発明は、本発明のさらなる特徴、実施形態、態様および利点がそこから理解され得る以下の非限定的な例によりさらに説明される。
【0114】
アクリジニウム標識およびコンジュゲート溶液の調製:
N-スルホプロピル-ジメチル-アクリジニウム-N-ヒドロキシスクシンイミド(NSP-DMAE-NHS;PerkinElmer Inc.,Finnland)およびN-スルホプロピル-アクリジニウム-スルホンアミド-N-ヒドロキシスクシンイミド(NSP-SA-NHS;BOC Sciences,USA)の1mg/mL標識ストック溶液を、それぞれ100%(v/v)のN,N-ジメチルホルムアミド(Th.Geyer Hamburg GmbH & Co.Kg,Germany)中に調製した。AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的(抗ヒトIgG-Fcγ;Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.,UK)をリン酸(phoshate)緩衝食塩水、pH7.6で0.33mg/mLの最終濃度に希釈し、その後に10倍モル過剰のNSP-DMAE-NHSと共に、または2.5倍モル過剰のNSP-SA-NHSと共に、2時間室温で、Intelli-Mixer、RM-2M型(Hassa GmbH,Germany)内で、10rpmでインキュベートした。標識反応を、17.4mM L-リジン(VWR International GmbH,Germany)の添加により30分間室温で、10rpmでの回転の間停止させた。過剰な遊離標識を、4℃で、Vivaspin 20、分子量カットオフ10kDaコンセントレーター(VWR International GmbH,Germany)を使用して、Heraeus Megafuge 40R遠心分離機(Fisher Scientific GmbH,Germany)内で3,800gでの限外濾過の間、抗体コンジュゲートから除去し、緩衝液を、0.045%(w/v)アジ化ナトリウム(Merck KgaA,Gemany)を含むリン酸緩衝食塩水、pH7.4に替えた。精製された抗体コンジュゲートを、0.045%(w/v)アジ化ナトリウム、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(Th.Geyer Hamburg GmbH & Co.Kg,Germany)、0.3%(w/v)Kolliphor(登録商標)P 188(Th.Geyer Hamburg GmbH & Co.Kg,Germany)および0.5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(Gerbu Biotechnik GmbH,Germany)を含むリン酸緩衝食塩水中で保存した。
【0115】
化学ルミネセンストリガー溶液の調製:
100mM硝酸(VWR International GmbH,Germany)および0.2%(v/v)過酸化水素(Roth GmbH & Co.KG,Germany)を含む化学ルミネセンストリガー溶液Aならびに0.5M水酸化ナトリウム(Gerbu Biotechnik GmbH,Germany)を含むトリガー溶液Bを調製した。トリガー溶液Bは、洗剤なしで、または0.05、0.1、0.25もしくは0.5%(w/v)の全て芳香族頭部基を欠くカチオン性化合物であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(Merck KgaA,Gemany)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Merck KgaA,Gemany)またはテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド(Merck KgaA,Gemany)を補って使用した。代替的に、トリガー溶液Bに、0.05、0.1、0.25または0.5%(w/v)の全て芳香族頭部基を含むカチオン性化合物であるヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(Merck KgaA,Gemany;CAS122-18-9)、塩化ベンザルコニウム(Merck KgaA,Gemany;CAS63449-41-2)、アルキル(C12~C14)ジメチルエチルベンジル-アンモニウムクロリド(Alfa Chemistry,USA;CAS85409-23-0)もしくはベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド(VWR International GmbH,Germany;CAS139-07-1)、または芳香族頭部基を含むが少なくとも3炭素原子の長い疎水性尾部を欠くベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(Merck KgaA,Gemany)を補った。
【0116】
化学ルミネセンスシグナル強度の測定:
NSP-DMAE-NHSおよびNSP-SA-NHS標識ストック溶液を1nMの最終濃度に希釈し、抗体コンジュゲートをリン酸緩衝食塩水、pH7.4で0.1μg/mLの最終濃度に希釈した。それぞれ10μLのこれらの希釈液を、96ウェルLumiNunc(商標)プレート(VWR International GmbH,Germany)のウェルに移し、化学ルミネセンスシグナル強度をLB 960 Centro Microplate Luminometer(Berthold Technologies GmbH & Co.KG,Germany)で、それぞれ100μLの化学ルミネセンストリガーA溶液ならびにカチオン性化合物の正体および濃度が様々である異なるトリガーB溶液の存在下で測定した。中間スピードでのトリガーAの注入後、混合物を、二重軌道モード(double orbit mode)で、通常スピードでの混合の間1秒間インキュベートした。相対発光単位(RLU)での化学ルミネセンス強度を、低注入スピードによる種々のトリガーB溶液の添加と同時に1.5秒の総時間にわたり50msごとに記録した。試料の全てを、4つの技術的反復で測定した。対照実験において、全ての異なるトリガーB溶液を、トリガーAと組み合わせて、96ウェルプレートの空のウェルに注入した。後者の実験は、異なるトリガー溶液により生じるシグナルバックグラウンドを反映する。
【0117】
データ分析:
観察された化学ルミネセンス反応速度の図式的表示のために、代表的なデータセットを4つの技術的反復から選択し、RLUでのシグナル強度を時間に対してプロットした。さらに、総シグナル強度を、1.5秒の時間枠中に観察された全RLU値の加法により計算した。異なるトリガーB溶液のバックグラウンドシグナル強度を、総シグナル強度から減算し、全てのバックグラウンド補正された総シグナル強度を比較した。
【0118】
[実施例1]
本発明に係る3種の代表的なエンハンサー化合物(化合物1~3)を分析のために選択した。これらの分子は、全て、四級アンモニウムに隣接する芳香族部分を含むカチオン性四級アンモニウム化合物に基づいている。本発明に係るエンハンサー化合物を通常のエンハンサー物質CTAC(例えば米国特許第4927769号において提案される)に対して試験した。対照的に、CTACは四級アンモニウムに隣接する芳香族部分を含まない。
【0119】
4種の代表的な分析物を選択して、従来技術において既に公知である通常のエンハンサー物質と比較した、これらの分析物により生じる化学ルミネセンスシグナルに対する本発明に係るエンハンサー化合物の効果を調査した(
図1~4)。選択された分析物としては、遊離形態(
図1~2)および抗体結合形態(
図3~4)のアクリジニウム化合物NSP-DMAE-NHSおよびNSP-SA-NHSがある。ヤギ由来のポリクローナル抗ヒトIgG-Fcγ抗体を、両種類のアクリジニウム標識とのコンジュゲーションに選択した。
【0120】
アクリジニウム標識、コンジュゲート溶液および化学ルミネセンストリガー溶液は、上記に開示した方法により得た。化学ルミネセンスシグナル強度の測定を実施し、データを上述の通り分析した。
【0121】
結果:
ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(化合物1)を分析物NSP-DMAE-NHSと共に使用するシグナル出力の43%増加(
図1、表3)が、同じ分析物に関してエンハンサー物質CTACと比較して観察された。
【0122】
塩化ベンザルコニウム(化合物2)およびアルキル(C12~C14)ジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(化合物3)も、分析物としてNSP-DMAE-NHSと一緒のCTACと比較して、それぞれ19%および15%シグナル増加をもたらした。
【0123】
分析物をNSP-SA-NHSに変えた場合、類似の結果を得た(
図2、表3)。
【0124】
化合物1(ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド)は、物質CTACと比較して67%増加したシグナルをもたらした。さらに、化合物2および3による58%および40%シグナル増加が、それぞれCTACと比較してこの分析物に関して観察された。
【0125】
さらに、遊離型のアクリジニウム系プローブの両例に観察されるシグナル出力の増大が、典型的には免疫アッセイに要求される、プローブが抗体に共有結合的に結合している場合でも観察できたことが見出された。
【0126】
このシナリオにおいて、化合物1(ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド)は、分析物抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAE(
図3、表3)および抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SA(
図4、表3)に関して、CTACの存在下でのそれらの分析物のシグナル生成と比較すると、それぞれ45%および66%シグナル増加をもたらした。化合物2(塩化ベンザルコニウム)も、これらの2種の抗体コンジュゲートのシグナルを、それぞれ、40%および52%増加させた。さらに、2種の分析物に関して、化合物3(アルキル(C
12~C
14)ジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド)の存在下での25%および35%シグナル増加が、CTACの存在下でのシグナル生成と比較して観察された。
【0127】
【0128】
[実施例2]
説明:
化学ルミネセンス増大に対する、物質の疎水性尾部内の鎖長の影響を試験するために、さらなる実験を、化合物1~3(実施例1に記載の通り)により、通常のエンハンサーCTACにより、本発明に係る追加のカチオン性エンハンサー(化合物4;ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロリド)により、および疎水性尾部中に3未満の炭素原子の鎖長を含む追加の物質BTEAC(ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド)により実施した(
図5~8)。これらの追加の実験は、それぞれ上述の通り、および実施例1に記載の通り実施した。
【0129】
結果:
化合物1~3と同様に、化合物4は、通常のエンハンサーCTACと比べて、1nM NSP-DMAE-NHS(
図5)の、1nM NSP-SA-NHS(
図6)の、0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAE(
図7)の、および0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SA(
図8)の化学ルミネセンスを増大させた。この実験において、化合物1~3は、通常のエンハンサーCTACと比べて、1nM NSP-DMAE-NHSの化学ルミネセンスを45~79%、1nM NSP-SA-NHSの化学ルミネセンスを62~102%、0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAEの化学ルミネセンスを46~63%、および0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SAの化学ルミネセンスを47~50%増加させた(表4)。同様に、化合物4は、通常のエンハンサーCTACと比べて、1nM NSP-DMAE-NHSの化学ルミネセンスを50%、1nM NSP-SA-NHSの化学ルミネセンスを47%、0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-DMAEの化学ルミネセンスを50%、および0.1μg/mL抗ヒトIgG-Fcγ-NSP-SAの化学ルミネセンスを40%増加させた(表4)。
【0130】
BTEACに関して、通常のエンハンサーCTACと比べて、全4種の分析物により化学ルミネセンスの減少が観察された(
図5~8および表4)。この物質は芳香族頭部基を含むが、おそらく、かつどのような理論にも拘束されないが、疎水性尾部の鎖長が短すぎてミセル構造を形成できないという理由で、この物質は同等な化学ルミネセンスエンハンサーとして機能しない。
【0131】
【0132】
全体として、記載された実施例において得られたデータは、本発明により提示されるエンハンサーの例を表す全4種の試験された化合物が、全ての試験されたアクリジニウム系分析物により生じたシグナルを、CTACとしての通常のエンハンサーの存在下での同じアクリジニウム系分析物によるシグナル生成と比較して増加させることが可能であったことを示す。
【0133】
さらに、これらの新たな化学ルミネセンスエンハンサーは、全て、芳香族部分、すなわち芳香族頭部基に連結したカチオン性四級アンモニウム化合物およびエンハンサーの疎水性尾部中に少なくとも3炭素原子の最低鎖長を含む分子構造を共有する。これらの分子部分、すなわち芳香族頭部基および疎水性尾部中の少なくとも3炭素原子の最低鎖長を含む全物質が、これらの分子部分、すなわち芳香族頭部基および疎水性尾部中の少なくとも3炭素原子の最低鎖長を欠くエンハンサー物質と比較して、同様に、アクリジニウム系分析物により生じる化学ルミネセンスを増大させるだろうことがあり得る。疎水性尾部中により短い鎖長を有する物質は、おそらくは、それらが化学ルミネセンス増大に有利になるとされるミセル構造を形成しないために、同様には化学ルミネセンスを増大させない。理論には拘束されないが、本発明による新たに提示されたカチオン性化学ルミネセンスエンハンサーが、いわゆる疎水性π-πスタッキング相互作用を形成するアクリジニウム環との直接的な相互作用により化学ルミネセンス反応プロセスを有利にすることがさらに考えられる。このようにして、アクリジニウム標識は、隣接するカチオン性アンモニウムイオンの正電荷により引き寄せられる過酸化水素アニオンとの反応のために効率よく動員および配置され得る。
【0134】
本明細書のデータ、図、装置、試薬および工程は、限定的ではなく、例示的であると理解されるべきである。本開示は上記の具体的な実施形態を参照して記載されたが、多くの改変体および変形体が当業者には明らかだろう。全ての改変体および変形体も本開示の趣旨および範囲の中にある。
【国際調査報告】