(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二相流体用の流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/86 20060101AFI20240711BHJP
G01F 1/42 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01F1/86
G01F1/42 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505502
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2022068873
(87)【国際公開番号】W WO2023011836
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】パティエ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダライ,アントニー
(72)【発明者】
【氏名】アラテール,ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CC06
2F030CC19
2F030CE04
2F030CF03
2F035AA06
2F035HA03
2F035HB01
2F035JB05
(57)【要約】
【解決手段】 液体/気体極低温二相流体用の流量計(1)であって:流量計内の流量が測定される流体用の入口パイプであって、較正済みオリフィス(8)が設けられている入口パイプと;垂直リザーバ(5)であって、パイプが開口し、リザーバの壁には、リザーバ(5)からリザーバ(5)を取り囲む内部空間(9)へ向けて流体を放出するための複数のスロット(6)が設けられている垂直リザーバ(5)を備えるシステムと;圧力センサであって、以下の圧力差:較正済みオリフィスの上流と下流の間の圧力差(ΔP3)、リザーバ(5)の底部と、内部空間(9)内のリザーバを取り囲む大気との間の圧力差(ΔP1)、内部空間(9)内のリザーバ(5)を取り囲む空間内に位置する2点間に存在する圧力差(ΔP2)を測定する圧力センサと;データ収集・処理システムであって、流入する流体の状態に関する情報を決定することができ、且つ、流体が100%気体若しくは100%液体(過冷却)である場合の圧力差ΔP3、又はリザーバ内の液体の高さ、続いてスロットを通過する流体(7)の流量を推測することを可能にする圧力差ΔP1のいずれかを使用することによって流量を決定することができるデータ収集・処理システムとを備える流量計(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体/気体極低温二相流体用の流量計(1)であって、
- 前記流量計内の流量が測定される流体用の入口パイプ(2)であって、較正済みオリフィス(8)が設けられている入口パイプ(2)と、
- 機器(4)に取り囲まれた垂直リザーバ(5)であって、前記パイプが開口し、前記リザーバの壁には、前記リザーバ(5)から前記リザーバ(5)を取り囲む前記機器内の内部空間(9)へ向かう、「排出路」システムを形成する流体流出用の複数のスロット(6)が設けられている垂直リザーバ(5)と、
- 圧力センサであって、
- 前記較正済みオリフィスの上流と下流の間の圧力差(ΔP3)、
- 前記リザーバ(5)の底部と、前記機器内の前記内部空間(9)内の前記リザーバ(9)を取り囲む大気との間の圧力差(ΔP1)、
- 前記内部空間(9)内の前記リザーバ(5)を取り囲む空間内に位置する2点間に存在する圧力差(ΔP2)であって、前記リザーバの下流の液体の高さを推測し、前記流体の状態(気体、二相、又は過冷却)を決定し、前記リザーバの下流に冠水する液体のレベルを示すことを可能にする圧力差(ΔP2)、
を測定することを可能にする圧力センサと、
- データ収集・処理システムであって、以下の評価:
a.前記圧力差データΔP2からの、流入する流体の状態(気体、二相、又は過冷却)に関する情報の決定、
b.この状態情報に応じた、前記流体が100%気体若しくは100%液体(過冷却)である場合の前記圧力差ΔP3、又は前記リザーバ内の液体の高さ、続いて前記スロットを通過する流体の流量を推測することを可能にする前記圧力差ΔP1のいずれかを使用した、前記流量の決定、
を実行できる、データ収集・処理システムと
を備える流量計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液二相極低温流体用流量計の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液体と気体から構成される二相流体の流量を測定することは、質量流量を測定することが望まれる場合、困難な作業である。具体的には、流量を測定するすべてのセンサは、密度が随時変化する二相液体の存在下に置かれる場合、支障をきたす。これは、液体窒素などの極低温流体の流量を測定する場合に特に当てはまる。
【0003】
文献の中で特定される流量計の中には、流体速度の測定に基づくものがある。それらは例えば以下のものである:
-タービン流量計:移動する流体中にタービンを設置し、タービンの回転速度が流体の速度の像を示す。
-ピトー管式流量計:移動する流体中に2本の管を設置して測定する。1本は流れに垂直に設置され静圧を、もう1本は流れに平行に設置され全動圧を測定する。これら2つの測定値の動圧の差を用いて流量を算出する。
-超音波流量計:ドップラー効果(流体の粒子によって反射される周波数の分析。これは粒子の速度、ひいては流体の速度の像を示す)を利用するものもあれば、超音波の上流から下流への、及び下流から上流への移動時間の差(流体の速度の像)を測定するものもある。
【0004】
いずれの場合も、流体の密度が連続的に変化する場合、体積流量から質量流量への変更を正確に行うことは困難である。
【0005】
他のシステムは、ヘッド損失(圧力損失)の測定値を使用して流量を推測する。これらは例えば較正済みオリフィス流量計であり、移動する流体中に配置された較正済みオリフィスの上流と下流のヘッド損失を測定する。これらの装置の測定値は、流体の密度が一定でない場合、及び液体中の気体含有量が増加した場合、激しく分布する。
【0006】
電磁流量計は、十分な電気伝導性を有する流体にのみ適用可能で、電磁誘導の原理を利用する。電磁界を流体に印加し、発生する起電力(流体の流量に比例する力)を測定する。液体窒素などの(非導電性)極低温流体の流量を測定する場合、この原理は適用できない。
【0007】
渦流量計は、移動する流体中に配置された固定型渦発生体の背後で観察される渦の発生現象(カルマン効果)に基づく。これらの渦によって発生する圧力変動を測定することで、渦の周波数が得られ、これは、流体が一定の特性を保持する場合、流体の速度に比例する。流体の密度が変化すると、測定値は歪曲される。
【0008】
熱式流量計は、一定のエネルギーの供給によって生じる温度上昇の測定に基づくものである。2つの温度プローブを備えたシステムが、流量計に流入する流れと流出する流れの温度差を測定する。これら2つのプローブの間に、抵抗器が既知のエネルギー量を供給する。移動する流体の熱容量が分かれば、これらの測定値から流量を計算することができる。しかしながら、この原理は、熱挙動(液体の気化)が単相液体とは全く異なる二相液体には適用できない。
【0009】
コリオリ型質量流量計だけが、流体の質量流量の正確な測定を実現する。この流量計は、流体が循環するU字形又はΩ形又は湾曲した管で構成される。U字管は横方向の振動にさらされ、U字管の2本の脚の間の振動の位相のずれの測定値が、質量流量の像を示す。しかしながら、これはかなり高価であり、非常に低い温度(例えば、-196℃の液体窒素)や、密度が著しく変化し、気相を多く含む流体で使用する場合は、システムを高度に断熱(例えば真空断熱などの高性能断熱)する必要があるが、それにもかかわらず、気体含有量が数質量%を超えると測定値は歪曲される。また、流体速度が低いかゼロの場合(測定範囲の前半において)、測定がしばしば不可能になることにも留意されたい。
【0010】
観察できるように、二相液体の流量、特に極低温流体の流量を許容できる精度で測定することは、現在市販されている機器では容易ではない。
【0011】
それにもかかわらず、システムが現在販売されていることに留意されたい。
【0012】
例えば、流路内を流れる液体のレベルを、流れの断面の制限の直前に測定する原理に基づくシステムについて記載することができる。このシステムは、文献米国特許第5,679,905号明細書に記載されており、基本的に次のように動作する:二相流体はまず、測定されない気相と、流量が測定される液相に分離される。この液体は、出口で断面が制限された流路を通過する。流量が多ければ多いほど、流路内の液体のレベルは高くなり、この流路内のレベル測定値を用いて瞬時流量を推測することができる。観察できるように、このシステムは気体の流量を考慮していない。気体の流量は特定の用途において無視できるものである。対照的に、このシステムは、気体含有量に影響されることなく、比較的良好な精度で液体流量を測定することができ、これは望ましい目標である。
【0013】
通過の際、このシステムが適切に動作するために、断熱された液体の一部を気化させ、レベル測定を妨害する可能性のある熱の侵入を十分に遮断する必要があることに留意すべきである。このため、このシステムでは真空断熱が用いられる。
【0014】
また、このシステムが動作するために、流量計の中に2つの相が存在しなければならず、過冷却液体(気相のない純粋な液体)では動作しないことに留意すべきである。
【0015】
また、本書ではV字形スロットを実装しているが、これは高い精度で製造することが難しいという欠点があることに留意すべきである。スリットの幅に5%の変動があると、その分だけ測定が不正確になるため、非常に深刻な結果を招く。
【0016】
相分離器流量計についても記載することができる。
【0017】
具体的には、液体と気体の両方の流量を測定する必要がある場合、流量を測定する前に相分離の同じ原理を採用するシステムが使用されることがある。
【0018】
したがって、市販されている機器は次のような装置を有する:
-二相の液体はまず、気相から液相を分離する相分離器を通過する;
-気相は、温度補償付きの体積流量計(例えばタービン型のもの)に仕向けられる;
-液相も体積流量計(例えばタービン型のもの)に仕向けられる;
-これら2つの流量測定値は、質量測定値に変換され、加算される。
【0019】
先験的に、この装置は以前のものよりも高価であるが、非常に正確であると考えられる。実用においては、液体の流量測定は、流量計に流入する液体の圧力と温度条件によって変動する誤差の影響を受けることが観察される。これらの測定誤差は、流量計を通過する液相中に気体が存在することに起因する。具体的には、液体が相分離器を出て流量計に向かう際、熱の侵入、或いは液体の上昇による圧力低下、或いは流量計自体によって生じるヘッド損失に起因する圧力低下によって、液体の一部が気化する。
【0020】
最後に、極低温液体の流量を測定するために、平衡圧力(沸点範囲)とは異なる圧力及び温度条件を作り出すことによって、上述の問題を回避することも可能である。この分野で最も一般的に使用されている方法は、例えば極低温ポンプの出口(高圧側)に流量計を設置する方法である。この場合、例えば液体は平衡状態にあるタンクに圧送され、その圧力はポンプによって増大され、これはほとんど温度の上昇なしに行われる。その後に続く配管と流量計によってヘッド損失が生じるが、ヘッド損失がポンプによって生じる圧力上昇よりもはるかに小さければ、液体が気化することはない。
【0021】
この場合、低温に耐えられるものであれば、従来型の渦流量計、タービン流量計、又は別のタイプの流量計を使用することが可能である。
【0022】
この技術は、例えば窒素配送トラックの流量測定に最適である。この技術は、極低温ポンプが他の理由で必要な場合、信頼性が高く、価格も許容できる。
【0023】
対照的に、極低温ポンプがない場所で液体窒素の流量を測定する必要がある場合、この技術はもはや有利ではない。
【0024】
液相と気相を同時又は交互に測定するための解決策も知られており、本出願人名義の文書FR-3 013 446号に記載されており、これは以下の原理に基づいている:
-流体は、相分離器として機能するタンクに到達する;
-気相は、純粋な気相で動作する流量計を介してタンクの上部から排出される;
-液相は、純粋な液相で動作する流量計を介してタンクの底部から排出される;
-次いで2つの相は三方弁で一緒にされ、そのまま進む;
-測定された2つの流量と流体の圧力及び温度により、システムは流量計を通過する流体の質量流量を計算することができる。
【0025】
システムは正確であることが分かっており、流体中に存在する二相の内容に関係なく動作する。流体が完全に気体である場合も、又は完全に液体又は過冷却される場合も正確に動作するが、中間のすべての状況でも動作する。
【0026】
しかしながら、このシステムは比較的高価で、設置が比較的複雑であるという欠点によって不利となる。
【0027】
このシステムは水平に設置しなければならず、かなりの嵩がある(通常、幅1メートル、長さ1メートル、高さ2メートル)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、本発明は、極低温気体/液体二相流体の流量を測定するための、新しく、単純で、信頼性の高い解決策を提案しようとするものであり、これにより、上述の技術的問題の全部又は一部を解決することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
以下で詳しく見ることができるように、ここで提案する解決策は、以下の測定の実装に基づいている:
1.排出路システムを用いた非過冷却液相の流量の測定:「排出路」システムとして知られるものを用いた非過冷却液相の流量の測定。これを行うには、まず二相流体を、測定しない気相と、流量を測定する液相に自然分離する。
【0030】
排出路の原理は次のとおりである:障害物(1つ又は複数のスリットで穴を開けられた仕切り)が液体の通路に設置され、それが液体の流量を遅くする。流量が多いほど、障害物の上流のレベルは高くなる。較正された障害物を用いて、障害物の上流で測定された液体レベルの関数として流量を計算することが可能になる。
【0031】
障害物の上流側の液体の高さを測定するために、圧力差測定が使用される。市販されている圧力差センサの中で、特に低い圧力値を測定できるセンサを使用することが可能である。
【0032】
しかしながら、この圧力レベルを極低温流体の高さで達成するために、300mmのオーダーの高さを得る必要がある。このため、排出路の向きを垂直にすることで、液体の高い高さを作ることができ、したがって圧力差測定も十分に高くなるようにするのが有利である。
【0033】
2.較正済みオリフィスを使用した過冷却液相の流量の測定:極低温流体が過冷却されると、排出路の上流又は下流に設置された較正済みオリフィスを使用して流量が測定される。
【0034】
液体は較正済みオリフィスを通過し、圧力差を発生させる。その後、計算により、過冷却された極低温流体の流量を得ることが可能である。
【0035】
この流量測定システムは、流体が過冷却されない場合には動作しないことに留意されたい。飽和状態(又は平衡状態)の場合、液体中の気体の存在は測定値を歪曲し、測定される圧力の変動はより多くの二相を発生させる。測定された圧力差は、較正済みオリフィスを通過する極低温流体の量を表すものではない。したがって、過冷却されているか否かにかかわらず、常に極低温流体の状態を知ることが必要である。
【0036】
3.極低温流体の過冷却の状態の測定(極低温流体の状態:過冷却又は気液平衡の決定):評価される極低温流体の状態を知るために、流量を測定することが望まれる極低温流体の過冷却の状態が測定される。
【0037】
そのために、排出路の下流の液体のレベルを測定する。このレベルがゼロの場合、極低温流体は過冷却されておらず、そうでない場合、極低温流体は過冷却されている:
-ケースNo.1:機器内の液体の高さ(デルタP2、排出路の下流)を測定するセンサがほぼゼロの値を示す場合、流体は気相と液相を有する。較正済みオリフィスを横切る圧力差(デルタP3)を測定するセンサも、非ゼロの値(気体+液体)を示す。
-ケースNo.2:機器内の液体の高さ(ΔP2、排出路の下流)を測定するセンサが非ゼロの値を示す場合、流体は液相のみを有する。較正済みオリフィスを横切る圧力差(ΔP3)を測定するセンサは、純粋な液体の流量を表す値を示す。
【0038】
流体がケースNo.1にあるかケースNo.2にあるかを確実に検出するために、前述のように、排出路の下流の第2の容積内の圧力差(ΔP2)が測定される。この容積は、液相と気相の密度差により、気体で満たされている(ケースNo.1)か、液体で満たされている(ケースNo.2)ため、流体が純粋な液体であるか、二相流体であるかを定めることが可能となる。
【0039】
また、デルタP3がマイナスの場合は、流体の流れが逆である(下流から上流)ことを意味する:この場合、この流れは中和され、流量計で考慮されない。これにより誤差が最小化される。
【0040】
4.本発明の有利な実施形態によれば、「複数のスロットを備える排出路」と呼ばれ得るものが実装される。
【0041】
先行技術(米国特許第5,679,905号明細書)の記載において上述したように、このような先行の排出路の重要な点の1つは、そのV字形スロットの製造精度にある。測定が正確であるために、このV字形スロットの形状が完全に制御されていなければならない。固定幅のスロット(V字形ではない)の場合、スロットの幅が全長にわたって一定であることが重要である。実用においては、構築技術に関連した制約があるため、このスロットの幅が一定であることを保証することは非常に困難である。
【0042】
そこで、本発明により、このスロットを複数の部分に分けて作ること、したがって、複数のスロットを有する排出路を実装することが提案され、ここで各セグメントは短い長さを有するので一定の幅をより確実に保持することが可能になる。
【0043】
これらすべてのスロットセクションの組み合わせにより、高さ全体にわたって一定の幅を持つスロットに相当するものが形成される。あるスロットの上端は、次のスロットの下端に正確に対応する。重なりはない。
【0044】
5.二相の内容の推定値の計算:上述のシステムにより、理解されるように、どのような条件であっても液相を測定することができるが、さらに進んで、2つの測定値(排出路と較正済みオリフィスを介した)に基づいて計算を行い、二相の内容を推定することができる。この内容によって気相を決定することが可能となり、その結果、全流体流量の測定を精緻化することが可能になる。
【0045】
本発明により提案された流量計の利点は、以下のように要約することができる:
-適度なコスト;
-非常に優れた精度(通常2%)の測定値;
-流量がゼロ又は僅かにマイナスで、極低温流体が流量計の中で沸騰している場合に、誤った測定値を生じさせないシステム;
-設置の容易さ;
-流体中の気体含有量が0から100%まで変化しても信頼性の高い測定値を提供し、システムは液体が過冷却された場合でも流量を測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【発明を実施するための形態】
【0047】
要約すると、ここで提案する流量計は以下の動作原理に従って動作し、これは添付の[
図1]に関連して説明される:
-流体が二相である場合に液相について排出路を用いて流量の測定値を使用し、そのレベルは圧力差ΔP1により測定され、ここでΔP1はリザーバ5の底部と機器の内部大気との間の圧力差の測定値である。これにより、リザーバ内の液体の高さ、ひいてはスロット6を通過する流量7を推測することができる。
-較正済みオリフィス(8)を介した流量測定値と圧力差測定値ΔP3の使用であって、流体が100%気体の場合は気相に関しての、流体が100%液体(過冷却)の場合は液相に関しての、流体が二相の場合は排出路によって測定された液体流量を補正するための使用。換言すると、ΔP3は較正済みオリフィスの各側で測定され、これにより極低温流体が100%気体又は100%液体(過冷却)の場合の流量の質の測定値を得ることが可能になる。
-したがってそれは図で見ることができ、このシステムは、セグメント化されたスロット(スロット6の複数のセグメント)を設けられたリザーバ5で構成される。これらのスロットは排出路を表す。
-圧力差測定値ΔP2は、流体の状態(気体、二相又は過冷却)を決定するために、排出路の下流に液体が存在するかどうかを推測するために考慮される。この測定値は、排出路の下流に液体の冠水があるかどうかを示し、この冠水は、極低温流体の過冷却状態又は逆方向の流れの存在に起因する可能性がある。
【0048】
具体的には、通常運転中、このΔP2はゼロに近い測定値を取り、換言すると、気相ではこの2点間に実質的に圧力差はない。
【0049】
対照的に、液体極低温物質(例えば液体窒素)が過冷却された状態に達すると、システム全体が液体で満たされ、機器(9)全体に液体が存在することになる。
【0050】
後者の場合、本発明によれば、流量計算アルゴリズムは較正済みオリフィスを使用した測定(ΔP3)に切り替わり、過冷却液体の場合に完全に正しく動作する。
【0051】
この場合、有意なΔP2値の出現によってこの状況は検出されるので、ΔP2がゼロから離れると、較正済みオリフィスを使用する流量測定(ΔP3)のモードに切り替わり、その逆も同様である。
【0052】
後で説明されるように、要約すると、二相液体の場合、入力データとしてΔP1とΔP3を用いて気体含有量を計算することを可能にする計算式が計算される。次に、この気体含有量を用いて、排出路によって得られた流量測定値を補正する。
【0053】
有利には、流体の密度を推算するために、流体の温度を測定することもできる。この密度によって、ΔPの測定値、すなわち、排出路のΔP1及び較正済みオリフィスのΔP3に関連する流量計算を改良することが可能である。
【0054】
本発明の実施形態の1つを示す[
図1]に存在する要素の名称をまとめる:
1:極低温流体用流量計
2:装置に流入する流体、その流量が測定される
3:装置を出て下流に向かう流体
4:機器、ボイラアセンブリ
5:排出路の上流にあるリザーバ
6:リザーバ5の垂直壁にあるスロット(排出路)
7:スロット6から流出する液体の流れ
8:較正済みオリフィス(圧力差ΔP3を提供する)
9:機器内部の容積
【0055】
添付の[
図1]に示す実施形態を用いて後述の試験を実施したところ、非常に良好な結果が得られた。
【0056】
液体窒素による実施、異なる圧力条件(1~3barg)及び異なる二相の内容(0~100%気体)の下で行った試験。
【0057】
1つの試験は、過冷却された液体窒素で行った。
【0058】
もちろん、この流量計は他の極低温流体にも簡単に適合可能である;スロットの断面と較正済みオリフィスの直径を変更するだけでよい。
【0059】
全体として、これらの試験は、3000kg/hのフル測定スケールの±2%のオーダーの精度を示している。
【0060】
実験結果を以下の[表]1と2に示す。
[表1]は、ここで使用した計算ロジックを示している。
[表2]は、流量測定時に直面する可能性のある様々な状況を示しており、表1に示したロジックを適用することで、一貫した流量測定値が得られる。
【0061】
表中に示されるすべての圧力はΔPである。
【0062】
使用されている関数fiの式は以下の通りである:
-f1の式:
気体流体流量(kg.s-1)=C(吐出係数)×E(進入速度係数)×イプシロン(膨張係数)×Pi×(較正済みオリフィスの直径の2乗)/4×(2の平方根)×(気体状気体の密度の平方根)×(ΔP3の平方根)
-液相f2の式
二相気体の液相の流量=液体ガスの密度×係数k×直線垂直スロットの幅×(2の平方根)×(gの平方根(地球の重力9.81の平方根))×排出路内の液体の高さの1.5乗
排出路内の液体の高さ=ΔP1/液体ガスの密度/g(地球の重力9.81)
kは、各機器に固有の固定係数である。
-合計f2(二相気体の気相と液相)の式=次の方程式の数学的な解
-液体質量流量=上記で計算した液相f2
-合計流量=液体質量流量f2+気体質量流量f2
-合計平均密度=(液相質量+気相質量)/(液相体積+気相体積)
-合計f2:合計質量流量(kg.s-1)=C(吐出係数)×E(進入速度係数)×イプシロン(膨張係数)×Pi×(較正済みオリフィス直径の2乗)/4×(2の平方根)×(合計平均密度の平方根)×(ΔP3の平方根)
-平均密度=液相密度×(1-f4)+気相密度×f4
-f3の式:純液体ガス流量(kg.s-1)=C(吐出係数)×E(進入速度係数)×イプシロン(膨張係数)×Pi×(較正済みオリフィス直径の2乗)/4×(2の平方根)×(液体ガス密度の平方根)×(ΔP3の平方根)
-f4の式:f4を計算するために、f2の計算用に提示した方程式の数学的な解を実行する。
【0063】
【0064】
【0065】
以下に記載する例は、
図1の文脈で記載したものに従う装備品で取得した測定値に基づくものであり、流量計には幅2mmのスロットを備える排出路と直径20mmの較正済みオリフィス8が取り付けられている。使用した流体は、圧力2bargの液体窒素であった。
【0066】
状況1:気体循環なし:
ΔP1=0
ΔP2=0
ΔP3=0
【0067】
【0068】
状況2:機器の冷却中の純粋な気体
ΔP1=0
ΔP2=0
ΔP3=52mbar
【0069】
【0070】
状況3:標準運転中の二相気体
ΔP1=16
ΔP2=0
ΔP3=18mbar
【0071】
【0072】
状況4:過冷却された液体ガス
ΔP1=16
ΔP2=5
ΔP3=15mbar
【0073】
【0074】
状況5:逆方向の気体の循環
ΔP1=1
ΔP2=8
ΔP3=-11(マイナス)
【0075】
【0076】
本発明は、液体/気体極低温二相流体用の流量計に関するものであり(番号による参照は添付の図において見出すことができる)、以下のものを備える:
-流量計内の流量が測定される流体用の入口パイプであり、このパイプには較正済みオリフィスが設けられている;
-機器(4)に取り囲まれた垂直リザーバ(5)。このリザーバに前記パイプが開口し、リザーバの壁には、リザーバ(5)からリザーバ(5)を取り囲む機器内の内部空間(9)へ向かう、流体流出用の複数のスロット(6-「排出路」システム)が設けられている;
-以下の圧力差を測定することを可能にする圧力センサ:
-較正済みオリフィスの上流と下流の間の圧力差(ΔP3)。
-リザーバ(5)の底部と、機器の内部空間(9)内におけるリザーバ(9)を取り囲む大気との間の圧力差(ΔP1);
-内部空間(9)内のリザーバ(5)を取り囲む空間内に位置する2点間に存在する圧力差(ΔP2)。これはリザーバの下流の液体の高さを推測し、流体の状態(気体、二相、又は過冷却)を決定し、リザーバの下流に冠水する液体のレベルを示すことを可能にする。
-以下の評価を行うことができるデータ収集・処理システム:
a.圧力差データΔP2からの、流入する流体の状態(気体、二相、又は過冷却)に関する情報の決定;
b.この状態情報に応じた、流体が100%気体又は100%液体(過冷却)である場合の圧力差ΔP3、又はリザーバ内の液体の高さ、続いてスロットを通過する流体の流量を推測することを可能にする圧力差ΔP1のいずれかを使用した、前記流量の決定。
【国際調査報告】