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特表2024-527115二次電池用正極材のリサイクル方法およびこれを用いた二次電池用正極材のリサイクル装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二次電池用正極材のリサイクル方法およびこれを用いた二次電池用正極材のリサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240711BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 9/05 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20240711BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B21/00
C22B26/12
C22B47/00
C22B23/00 102
C22B9/05
C22B3/04
C22B3/44 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505509
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2021015932
(87)【国際公開番号】W WO2023017910
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104289
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ミング
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ グンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウン ヒチョル
(72)【発明者】
【氏名】オ メンギョ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001DB07
4K001DB11
4K001DB22
(57)【要約】
本発明は、酸性廃棄物等の副産物なしで廃バッテリーに含まれた正極材物質を安全に分離できるだけでなく、単純かつ効率的な工程に通じて急増する廃バッテリーをリサイクルして、社会的、経済的コストを顕著に節減できる二次電池用正極材のリサイクル方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する段階(S100)と、
(2)前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する段階(S200)と、
(3)前記第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する段階(S300)と、
(4)前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウム(LiCO)を分離する段階(S400)と、を含み、
ここで、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である、二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項2】
前記塩素化反応させる温度は、450~700℃であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項3】
前記塩素を含む気体は、塩素ガス(Cl)であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項4】
前記(1)段階で第1混合物は、LiCl、MClおよびMOを含み、
ここで、前記yは、1~3の定数であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項5】
前記塩素を含む気体全重量に対して塩素ガスが5~90重量%で含まれたことを特徴とする請求項3に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項6】
前記(2)段階の溶媒は、水またはアルコールのうちいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項7】
前記(3)段階の炭酸塩は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのうちいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項8】
前記(4)段階は、MCOが分離した第2混合物を乾燥し、前記溶媒を一部除去して、溶媒に対する溶解度の差によって炭酸リチウムを分離する段階であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項9】
前記(4)段階は、
(4-1)MCOが分離した第2混合物を乾燥し、前記溶媒を一部または全部除去する段階(S410)と、
(4-2)前記第2混合物に含まれた炭酸リチウムと塩化ナトリウムを溶媒に対する溶解度の差を用いて分離するために、第2溶媒をさらに投入する段階(S420)と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項10】
(4-3)分離したMO、MCO、炭酸リチウムを用いてLMOを再生産する段階(S430)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項11】
請求項1に記載の二次電池用正極材のリサイクル方法で再生産された二次電池用正極材。
【請求項12】
バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、MOを分離する段階を含み、
ここで、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数であることを特徴とする二次電池用正極材のリサイクル方法。
【請求項13】
バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する第1反応部と、
前記第1反応部と連通し、前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する第1分離部と、
前記第1分離部と連通し、前記第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する第2分離部と、
前記第2分離部と連通し、前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウムを分離する第3分離部と、を含み、
ここで、前記Lは、Li(リチウム)であり、Oは、酸素であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数であることを特徴とする二次電池用正極材のリサイクル装置。
【請求項14】
第1分離部、第2分離部および第3分離部と連通し、第1分離部、第2分離部および第3分離部から分離したMO、MCOおよび炭酸リチウムからLMOを再生産する合成部をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の二次電池用正極材のリサイクル装置。
【請求項15】
前記第1反応部は、気体を第1反応部に注入させるためのガス注入部をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の二次電池用正極材のリサイクル装置。
【請求項16】
前記第1反応部は、塩素を含む気体を高温状態に維持させるためのヒーターをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の二次電池用正極材のリサイクル装置。
【請求項17】
前記第1分離部は、溶媒を注入させるための溶媒注入部をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の二次電池用正極材のリサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極材のリサイクル方法に関し、より詳細には、酸性廃棄物等の副産物なしで廃バッテリーに含まれた正極材物質を安全に分離することができるだけでなく、単純かつ効率的な工程を通じて廃バッテリーをリサイクルすることによって、社会的、経済的コストを顕著に節減することができる二次電池用正極材のリサイクル方法およびこれを用いた二次電池用正極材のリサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、リチウムイオン二次電池産業の発達に伴い、これを用いたバッテリーの生産量が幾何級数的に増加しており、その結果、 寿命を迎えた廃バッテリーの発生量が増加し、廃バッテリーの処理による様々な社会的、経済的コストの問題が発生することが予想される。
【0003】
なお、廃バッテリーは、火災危険、毒性、金属性問題によって一般廃棄物のように処理が不可能であり、別途の保管、処理方法を使用しなければならない。このような廃バッテリーの安全な処理のためには、各構成要素を分解して安定化させた後、処理しなければならないが、このような廃バッテリーの構成要素のうち最も大きいコストを占めるものは、LiCoO、Li(Ni、Co、Al)O、LiMnO、Li(Ni、Co、Mn)O等の正極材である。
【0004】
これによって、廃バッテリーの処理の社会的、経済的コストの問題を解決し、上述した正極材をリサイクルするために、強酸溶液に正極材全体を溶解させた後、添加剤の投入を通じて所望の金属を段階的に沈殿させて分離する方法に対する研究が進行されているが、次のような問題によって実際産業への活用が制限されている。
【0005】
第一に、二次電池用正極材に使用される金属物質であるニッケル、コバルト、アルミニウム、マンガン等は、化学的特性が類似していて、純物質のみに分離することが困難であり、純物質のみに分離するためには、さらなる精製工程が必須に要求される。これは、リサイクル工程段階の複雑化とさらなるコスト問題が発生し、リサイクル効率と経済性が非常に低下する問題点があった。
【0006】
第二に、上記のような方法は、正極材物質だけでなく、酸に溶解したLiに対してもさらなる精製工程が要求される問題がある。すなわち、Liは、正極材に使用される他の金属に比べて溶解特性が良いので、他の金属の分離過程でLiが共に分離し、上述した精製工程に負担を加重させることができる。
【0007】
第三に、Liのこのような特性に起因してLi前駆体をさらに混合し、本来の素材と同じ組成で合成してリサイクルする過程でも困難がある。他の金属の分離過程で一緒に含まれたLiに起因して再合成過程でこれをさらに精製しなければならないさらなる精製工程が要求されるためである。
【0008】
これによって、廃バッテリーの構成要素を安全に分解して処理することができ、リサイクルを通した社会的、経済的コストを節減すると共に、上述した問題点である分離効率問題を解決し、さらなる工程を必要とせずに、正極材物質の選択的な回収が可能な、単純かつ効率的な二次電池用正極材のリサイクル方法に対する研究が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題を克服するためになされたものであって、本発明の解決しようとする第一の課題は、廃バッテリーに含まれた正極材物質を安全に分離し、リサイクルすることによって、急増する二次電池の使用による社会的、経済的コストを節減できる二次電池用正極材のリサイクル方法とこれを用いたリサイクル装置を提供することに目的がある。
【0010】
また、本発明の解決しようとする第二の課題は、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で正極材物質の化学的特性によってさらに要求された精製工程を省略可能で、単純かつ効率的な二次電池用正極材のリサイクル方法とこれを用いたリサイクル装置を提供することに他の目的がある。
【0011】
さらに、本発明の解決しようとする第三の課題は、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で強酸を使用しないので、付加的な酸性廃棄物が発生せず、Liのみを選択的に回収可能で、処理効率と経済性を向上させた二次電池用正極材のリサイクル方法とこれを用いたリサイクル装置を提供することにさらに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するために、(1)バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する段階(S100)と、(2)前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する段階(S200)と、(3)前記第2混合物を炭酸塩と反応させて、MCOを分離する段階(S300)と、(4)前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウム(LiCO)を分離する段階(S400)と、を含む二次電池用正極材のリサイクル方法を提供する。この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0013】
また、本発明の一実施形態によれば、前記塩素化反応させる温度は、450~700℃であってもよい。
【0014】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記塩素を含む気体は、塩素ガス(Cl)であってもよい。
【0015】
また、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記(1)段階で第1混合物は、LiCl、MClおよびMOを含んでもよいし、この際、前記yは、1~3の定数である。
【0016】
また、本発明の一実施形態によれば、前記塩素を含む気体全重量に対して塩素ガスが10~90重量%で含まれてもよい。
【0017】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記(2)段階の溶媒は、水またはアルコールのうちいずれか1つ以上であってもよい。
【0018】
また、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記(3)段階の炭酸塩は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのうちいずれか1つであってもよい。
【0019】
また、本発明の一実施形態によれば、前記(4)段階は、MCOが分離した第2混合物を乾燥して前記溶媒を一部除去し、溶媒に対する溶解度の差によって炭酸リチウムを分離する段階であってもよい。
【0020】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記(4)段階は、(4-1)MCOが分離した第2混合物を乾燥して前記溶媒を一部または全部除去する段階(S410)と、(4-2)前記第2混合物に含まれた炭酸リチウムと塩化ナトリウムを溶媒に対する溶解度の差を用いて分離するために第2溶媒をさらに投入する段階(S420)と、をさらに含んでもよい。
【0021】
また、本発明の一実施形態によれば、前述した段階で分離したMO、MCO、炭酸リチウムを用いてLMOを再生産する段階(S430)をさらに含んでもよい。
【0022】
また、本発明は、前述した二次電池用正極材のリサイクル方法で再生産された二次電池用正極材を提供する。
【0023】
また、本発明は、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、MOを分離する段階を含む二次電池用正極材のリサイクル方法を提供する。この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0024】
また、本発明は、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する第1反応部と、前記第1反応部と連通し、前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する第1分離部と、前記第1分離部と連通し、前記第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する第2分離部と、前記第2分離部と連通し、前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウムを分離する第3分離部と、を含む二次電池用正極材のリサイクル装置を提供する。この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、Oは、酸素であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0025】
また、本発明の一実施形態によれば、前記第1~第3分離部と連通し、第1~第3分離部から分離したMO、MCOおよび炭酸リチウムからLMOを再生産する合成部をさらに含んでもよい。
【0026】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記第1反応部は、気体を第1反応部に注入させるためのガス注入部をさらに含んでもよい。
【0027】
また、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記第1反応部は、塩素を含む気体を高温状態に維持させるためのヒーターをさらに含んでもよい。
【0028】
また、本発明の一実施形態によれば、前記第1分離部は、溶媒を注入させるための溶媒注入部をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法によれば、廃バッテリーに含まれた正極材物質を安全に分離し、効率的にリサイクルすることによって、急増する二次電池の使用による社会的、経済的コストを節減することができる。
【0030】
また、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法によれば、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で正極材物質の化学的特性によってさらに要求された精製工程を省略可能で、全体工程が単純になるだけでなく、分離工程の効率を最大化することができる。
【0031】
さらに、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法によれば、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で強酸を使用しないので、付加的な酸性廃棄物が発生せず、Liのみを選択的に回収可能で、分離工程はもちろん、再合成工程でも処理効率と経済性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一実施形態による二次電池用正極材のリサイクル方法を概略的に示すフローチャットである。
図2図2は、本発明の他の実施形態による二次電池用正極材のリサイクル方法を概略的に示すフローチャットである。
図3a-i】図3a~図3iは、本発明の一実施形態による塩素化反応を進めた廃バッテリー正極物質のX線回折実験分析結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明の一実施形態による塩素化反応を経た後、茶色のMCOを沈殿物として分離したことを示す写真である。
図5図5は、本発明の一実施形態によってMOおよびMCOが除去された溶液を120℃の真空条件で乾燥して溶媒を全部蒸発させたことを示す写真である。
図6図6は、本発明の一実施形態によって図5のX線回折実験分析結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明の一実施形態によってLiCO/NaCl/HO溶液からLiCOを沈殿物として分離したことを示す写真である。
図8図8は、本発明の一実施形態によって図7のX線回折実験分析結果を示すグラフである。
図9図9は、本発明の一実施形態によってLiCO/NaCl混合物からメタノールを用いて分離したLiCOのX線回折実験分析結果を示すグラフである。
図10図10は、本発明の一実施形態による正極材再合成段階を示すフローチャットである。
図11図11は、本発明の一実施形態によって再合成された試料のX線回折実験分析結果を示すグラフである。
図12図12は、本発明の一実施形態によって再合成された試料の充放電実験結果を示すグラフである。
図13図13は、本発明による二次電池用正極材のリサイクル装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0034】
上述したように、従来廃バッテリーをリサイクルする工程は、分離効率に劣り、さらなる工程が要求され、強酸処理を通した副産物が発生し、社会的、経済的に多くのコストが必要な問題があり、実際産業への活用に制限があった。
【0035】
これより、本発明は、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する段階(S100)と、前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する段階(S200)と、前記第2混合物を炭酸塩と反応させて、MCOを分離する段階(S300)と、前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウム(LiCO)を分離する段階(S400)と、を含む二次電池用正極材のリサイクル方法を提供し、上述した問題の解決を模索した。
【0036】
これを通じて、これによって、廃バッテリーの構成要素を安全に分解して処理することができ、リサイクルを通した社会的、経済的コストを節減すると共に、上述した問題点である分離効率問題を解決し、さらなる工程を必要とせずに正極材物質の選択的な回収が可能な、単純かつ効率的な二次電池用正極材のリサイクルが可能になり得る。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池用正極材のリサイクル方法を概略的に示すフローチャットであり、以下、同図を参照して、本発明を具体的に説明する。
【0038】
本発明は、(1)段階として、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する(S100)。
【0039】
この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0040】
従来の二次電池用正極材のリサイクル方法としては、上述したように、廃バッテリーを強酸溶液に浸出し、リチウムおよび正極材金属物質を分離する方法があった。しかしながら、このような強酸を用いた分離方法は、酸性廃棄物がさらに発生する問題以外にも、リチウムの反応性によって他の金属の分離過程で一緒に分離され、リチウムを分離するためのさらなる精製工程が要求されたり、金属の類似の化学性性質によって分離効率が顕著に低下する問題があった。
【0041】
これより、本発明は、正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、上述した問題を解決した。より具体的には、廃バッテリーでは、正極材物質であるLiMO形態の酸化物が形成され得るが、本発明による正極材のリサイクル方法は、正極材物質であるLiMO形態の酸化物を(1)段階で行う塩素化反応を通じてそれぞれリチウムとMOの正極材物質に分離することができる。すなわち、リチウムは、LiCl形態に転換され得、正極材金属物質であるMは、MOまたはMCl形態の酸化物に分離され得る。ただし、多くのMは、MO形態の酸化物に分離され、後述する分離工程を通じて二次電池用正極材としてリサイクルされ得る。これを通じて、本発明は、2次酸性廃棄物を発生させることなく、リチウムを含む塩化物の選択的かつ簡単な回収を通じて全体工程を単純化させることができ、処理効率と工程効率を最大化させることができる。
【0042】
この際、前記(1)段階における塩素化反応は、450~700℃で進行され得、より好ましくは、520~620℃の温度で進行することができ、このような塩素化反応の温度は、気体の温度であってもよい。この際、もし、塩素化反応の温度が450℃未満の場合、リチウム塩化物が十分に形成されないので、廃バッテリーの分離効率が低下する問題があり得、また、もし、塩素化反応の温度が700℃を超過する場合、過度に高い温度に起因して、生成されたLiClが揮発して消失する問題が発生することがある。また、本発明による前記塩素化反応は、上述した温度条件で1~8時間反応させることができ、より好ましくは、2~6時間反応させることができる。
【0043】
なお、前記前記塩素を含む気体の量は、廃バッテリーから投入される正極材物質であるLiMOの量によって適宜選択することができ、好ましくは、LiMO全重量部に対して150~1000重量部で混合され得る。もし、前記塩素を含む気体がLiMO全重量部に対して150重量部未満で含まれる場合、目的する塩素化反応が十分に進行されず、LiCl、MOの収得率が低下する問題があり得、もし、前記塩素を含む気体がLiMO全重量部に対して1000重量部を超過して含まれる場合、過度な塩素の使用で工程コストが増加する問題があり得る。
【0044】
この際、前記塩素を含む気体は、Cl、HCl、COCl、CClが挙げられ、好ましくは、Clであってもよい。より具体的には、前記塩素を含む気体は、全重量に対して5~90重量%の塩素ガスとともに残量のAr、N、O等のガスを混合して使用が可能である。この際、もし、塩素ガスが5%未満で混合される場合、塩素化反応の効率が低下し、リチウムを含む正極物質の分離が十分に行われないことがあり、また、もし、塩素ガスが90%を超過して混合される場合、過量の未反応の塩素ガスの発生による工程効率低下の問題があり得る。これによって、廃バッテリーから正極材物質の種類と含有量を考慮して塩素ガスの混合比を適宜選択することができる。
【0045】
なお、図3a~図3iは、本発明による二次電池リサイクル方法による(1)段階でリチウムをLiClに分離させる温度および時間による実験結果を示し、それぞれ500℃6時間、550℃4時間、600℃2時間の順に実験を進めた結果である。
【0046】
図3a~図3iに示されたように、本発明による(1)段階後の2番ピークを示すLiClを含む塩化物の生成を確認することができ、洗浄後の4番ピークを示すMの生成を確認することができるところ、本発明による塩素化反応を通じて従来酸を用いて正極物質とリチウムを分離する方法に比べて、リチウムの選択的分離が可能であることが分かり、さらには、上述した塩素化反応の特定温度および時間の条件でリチウムの選択的分離効率が最も良いことが分かる。これについては、実験例で詳細に後述する。
【0047】
このように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、(1)段階で塩素ガス(Cl)を使用することにより、従来強酸を処理する方法を代替することができ、酸性廃棄物等の副産物の発生を抑制し、環境に優しい分離工程の具現が可能で、さらなる精製工程等が要求されないので、工程単純化およびコスト削減を同時に達成することができる。
【0048】
次に、本発明の(2)段階は、上述した(1)段階で形成された第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する段階(S200)である。
【0049】
従来強酸を用いた分離方法では、正極材金属物質の互いに類似の化学的特性により分離効率が低下する問題があった。すなわち特定の正極材金属物質のみが分離されず、これと類似の性質を有する正極材金属物質が共に分離され、さらなる金属分離精製工程が要求され、分離およびリサイクル効率が低下した。
【0050】
これより、本発明は、(1)段階を経た第1混合物で塩素化反応をしないMOを溶媒と接触させる(2)段階の単純な工程を通じてMOを分離して上述した問題を解決した。より具体的には、上述した塩素化反応を通した(1)段階で生成されたLiCl等の塩化物は、本段階を経て溶媒に溶解して液状に転換され、塩素と反応しないMOは、固体状態として残っていて、溶媒を通じて洗浄されることにより、容易に分離され得る。すなわち本発明は、このように塩素化反応後、MOが溶媒に溶けないことを用いて溶媒を通じて洗浄および分離する簡単な工程を通じて正極材金属物質を選択的に分離させることができ、さらなる精製工程が要求されない。
【0051】
この際、前記(2)段階で使用される溶媒は、MOを溶解させることなく、LiCl等の塩化物を溶解させることができる公知の物質が使用され得、より好ましくは、後述する(3)段階および(4)段階での分離工程で使用される溶媒の性質および量を考慮して水またはアルコールのうちいずれか1つを使用することができる、最も好ましくは、水を使用することができ、この場合、LiClに対する溶解度が高くて、相対的に少ない量で運転が可能である観点から、アルコールよりも有利である。
【0052】
なお、前記(2)段階で投入される溶媒の量は、(1)段階で移送される第1混合物の量を考慮して適宜選択することができ、好ましくは、(1)段階で移送される第1混合物全重量部に対して3000~10000重量部で混合され得る。
【0053】
このように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、(2)段階を通じてMOを容易に分離すると同時に、環境に優しい分離工程の具現が可能で、さらなる精製工程等が要求されないので、工程単純化およびコスト削減を同時に達成することができる。
【0054】
次に、本発明の(3)段階は、上述した(2)段階で形成された第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する段階(S300)である。
【0055】
上述したように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、正極材金属物質を強酸を処理せずに分離できる長所があるが、前記塩素化反応を通したMOを分離させる段階後、すなわち第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成させた後、第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する(3)段階を通じて第2混合物に含まれたリチウムとMCOを容易に分離することができる。
【0056】
より具体的には、(3)段階で第2混合物が炭酸塩と反応し、生成物としてリチウムを含む炭酸リチウム(LiCO)および正極材金属物質を含むMCO、そしてNaClが生成され得る。この際、溶媒に溶解しないMCOは沈殿するのに対し、溶媒に対する溶解した炭酸リチウムとNaClは、水溶液状態で存在するので、これらを分離し、沈殿した固体状態にMCOを収得することができる。分離したMCOは、合成工程に移送され、遷移金属前駆体としてリサイクルされ得る。
【0057】
前記第2混合物と反応する炭酸塩としては、リチウムおよび正極材金属物質であるMと反応して塩を形成できる通常の炭酸塩が使用され得、好ましくは、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムのうちいずれか1つであってもよく、最も好ましくは、炭酸ナトリウムであってもよい。この場合、相対的に高価な炭酸カリウムを使用することよりも、工程コストの観点からより有利になり得る。
【0058】
このような炭酸塩の量は、(2)段階で形成された第2混合物の量を考慮して適宜選択することができ、好ましくは、(2)段階で形成された第2混合物全重量部に対して40~400重量部で混合され得る。第2混合物全重量部に対して40重量部未満で炭酸塩が含まれる場合、十分な量の炭酸リチウムおよびMCOが形成されないことがあり、分離効率が低下する問題があり、400重量部を超過して炭酸塩が含まれる場合、炭酸塩の量が多すぎるので、その後、洗浄およびさらなる精製工程が要求され得る。
【0059】
なお、図4は、溶媒を含む第2混合物に炭酸ナトリウムを装入させて、茶色のMCO沈殿物から溶液状態で分離した(3)段階の実験結果を示す。図4を参照すると、溶解度の低いMCOは沈殿し、溶解度が相対的に高い炭酸リチウムとNaClは、溶媒に溶解した溶液状態で存在することができる。
【0060】
このように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、(3)段階を通じてMCOとLiCOを容易に分離し、リチウムと正極材金属物質Mを選択的に収得できると同時に、環境に優しい分離工程の具現が可能であり、さらなる精製工程等が要求されないので、工程単純化およびコスト削減を同時に達成することができる。
【0061】
次に、本発明の(4)段階は、上述した(3)段階でMCOが分離した第2混合物から炭酸リチウム(LiCO)を分離する段階(S400)である。
【0062】
すなわち前記(4)段階は、上述した(3)段階で溶媒に溶解したLiCOおよびNaClを分離してリチウムを選択的に回収する段階であり、特に第2混合物を乾燥して、これに含まれた溶媒を一部除去し、第2混合物から溶液状態で存在する炭酸リチウムとNaClを溶媒に対する溶解度の差によって分離することができる。
【0063】
より具体的には、図7を参照して説明する。
【0064】
図7は、第2混合物から炭酸リチウムとNaClを分離した様子を示す。すなわち図7を参照すると、溶媒に対する溶解度が相対的に高いNaClは、水に溶解し、NaCl水溶液状態で存在し、溶媒に対する溶解度が相対的に低い炭酸リチウムは、固体形態で分離されることが分かる。さらに、これに対するX線回折実験結果である図8を通じて回収されたLiCO沈殿物は、微量のNaClのみを含む高純度物質に分離されたことが分かる。
【0065】
なお、図2に示されたように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法の一実施形態において、前記(4)段階は、(4-1)段階としてMCOが分離した第2混合物を乾燥し、前記溶媒を一部または全部除去する段階(S410)をさらに含んでもよい。
【0066】
また、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法の他の実施形態において、前記(4)段階は、(4-2)段階として前記(4)段階で形成された第2混合物に含まれた溶媒を全部乾燥させ、炭酸リチウムとNaClを分離するために第2溶媒をさらに投入し、第2溶媒に対する溶解度の差を用いて段階(S420)を行うことができる。
【0067】
この際、炭酸リチウムとNaClを分離させるための第2溶媒は、炭酸リチウムを溶解させることなく、NaClが溶解することができる通常の溶媒が使用され得、好ましくは、水、アルコール、アンモニア等が使用され得、最も好ましくは、水あるいはメタノールが使用され得るが、この場合、炭酸リチウムとNaClの溶解度の差が大きいため、高い純度の炭酸リチウムを容易に分離することができるという点から有利になり得る。
【0068】
また、使用される溶媒の量は、第2混合物に含まれた炭酸リチウムとNaClの量を考慮して適宜選択され得、より好ましくは、(4)段階に移送された第2混合物の全重量部に対して100~50000重量部で溶媒がさらに投入され得る。
【0069】
この際、前記乾燥を用いた工程は、20~200℃の温度で進行され得、より好ましくは、50~150℃の温度および真空条件で進めることができる。これは、第2混合物に含まれた溶媒の種類と性質を考慮して適宜選択され得る。
【0070】
なお、図5は、本発明の(4-1)段階によって塩化物を含む溶液を120℃真空条件で乾燥し、溶媒を全部蒸発させた後の様子を示す。図5を参照すると、炭酸リチウムとNaClがいずれも固体形態の粉末に分離されることが分かり、さらには、X線回折実験結果である図6を通じて炭酸リチウムとNaCl以外に他のピークは観察されないので、純粋な炭酸リチウムとNaClに分離されることが分かる。その後、炭酸リチウムとNaClは、上述した(4-2)段階の第2溶媒投入後、溶解度の差を用いて分離することができ、一例として、メタノールを用いて分離した炭酸リチウムのX回折実験結果である図9を通じて他の物質が全く観察されない炭酸リチウム純物質に分離されたことが分かる。前記過程によって分離された炭酸リチウムは、合成工程に移送され、遷移金属前駆体としてリサイクルされ得る。
【0071】
このように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、(4)段階を通じて炭酸リチウムとNaClを容易に分離し、リチウムを選択的に収得できると同時に、環境に優しい分離工程の具現が可能であり、さらなる精製工程等が要求されないので、工程単純化およびコスト削減を同時に達成することができる。
【0072】
次に、図10に示されたように、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法の一実施形態は、(4-3)段階として、上述した段階を通じて分離した正極材物質を再合成し、二次電池用正極材物質を再生産する工程(S430)をさらに含んでもよい。すなわち、上述した段階で分離した正極材物質であるMO、MCO、炭酸リチウムを再合成し、二次電池用正極材物質を再生産することができ、必要な場合、さらに炭酸リチウムを添加し、所望の量のLMOを再生産することができる。
【0073】
より具体的には、図10および図11を参照して説明する。
【0074】
図11は、上述した段階で分離したMO、MCO、炭酸リチウムに一定量の炭酸リチウムをさらに添加し、混合した後、熱処理を通した再合成工程を行った合成試料に対するX線回折分析結果を示す図である。図11を参照すると、合成された試料は、本来のLi(Ni、Co、Mn)O相と同じ相が形成されたことが分かり、これを通じて、廃バッテリーから分解されて分離した正極物質がリサイクルされたことが分かる。
【0075】
また、図12は、前記再合成された試料を用いて二次電池を製造した後、充放電実験を示す図であり、同図を参照すると、再合成された試料を用いて製造された二次電池の場合、105mAh/gの値を示しているが、これは、初期充電容量である120mAh/gの約90%容量を示すものであり、これを通じて、本発明による再合成された試料を用いて製造された二次電池も、充放電動作が安定的に進行され、高いリサイクル効率を示すことが分かる。
【0076】
このように本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法は、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、MOを分離する段階を含んで具現され、この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0077】
これを通じて、廃バッテリーに含まれた正極材物質を安全に分離し、効率的にリサイクルすることによって、急増する二次電池の使用による社会的、経済的コストを節減することができる。また、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で正極材物質の化学的特性によりさらに要求された精製工程を省略可能であり、全体工程が単純になるだけでなく、分離工程の効率を最大化することができる。
【0078】
さらには、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法によれば、廃バッテリーに含まれた正極材物質を分離する過程で強酸を使用しないので、付加的な酸性廃棄物が発生せず、Liのみを選択的に回収可能で、分離工程はもちろん、再合成工程でも処理効率と経済性を顕著に向上させることができる。
【0079】
なお、本発明は、上述した二次電池用正極材のリサイクル方法を具現する二次電池用正極材リサイクル装置およびこれを通じて具現された二次電池用正極材を提供し、以下では、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法を具現するための二次電池用正極材のリサイクル装置について説明する。重複を避けるために、二次電池用正極材のリサイクル方法と同じ部分については、説明を省略する。
【0080】
本発明は、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、第1混合物を形成する第1反応部と、前記第1反応部と連通し、前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する第1分離部と、前記第1分離部と連通し、前記第2混合物を炭酸塩と反応させてMCOを分離する第2分離部と、前記第2分離部と連通し、前記MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウムを分離する第3分離部と、を含む二次電池用正極材のリサイクル装置を提供する。この際、前記Lは、Li(リチウム)であり、Oは、酸素であり、前記Mは、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)から選択される1種以上であり、xは、0.5~2.5の定数である。
【0081】
図13は、本発明による二次電池用正極材のリサイクル方法を具現するための二次電池用正極材のリサイクル装置を示す図であり、以下、図13を参照して説明する。
【0082】
前記第1反応部110では、MOおよび塩化物を分離するために塩素化反応を行う。
【0083】
より具体的には、前記第1反応部110では、バッテリーから分離したLMOを含む正極材を、塩素を含む気体と塩素化反応させて、MOおよび塩化物を含む第1混合物を収得することができる。すなわち、LMOのリチウムは、LiCl形態に転換されて収得され得、正極材金属物質であるMは、MOまたはMCl形態の酸化物に分離され得る。
【0084】
これによって、前記第1反応部110は、前記塩素を含む気体を注入するための別途の気体注入部(不図示)をさらに含んでもよい。また、前記第1反応部110で塩素化反応は、LMOが高温条件で気体と反応するので、高温状態を維持するためのヒーター(不図示)をさらに含んでもよい。前記注入部およびヒーターの形状と材質は、本発明の目的に符合する限り、通常のものが使用され得るところ、特に制限しない。
【0085】
次に、前記第1分離部120は、第1反応部110と連通し、前記第1混合物を溶媒と接触させてMOを分離し、溶媒を含む第2混合物を形成する。
【0086】
より具体的には、第1反応部110で形成された第1混合物は、移送路(不図示)を介して第1分離部120に移送され得、移動した第1混合物は、溶媒と接触し、LiCl等の塩化物は、溶媒に溶解して液状に転換され、塩素と反応しないMOは、固体状態として残っていて、溶媒を通じて洗浄されることにより、容易に分離され得る。
【0087】
これによって、前記第1分離部120は、溶媒を注入させるための溶媒注入部(不図示)をさらに含んでもよいし、このような注入部の形状および材質は、本発明の目的に符合する限り、特に制限されない。
【0088】
次に、前記第2分離部130では、第1分離部120と連通し、第2混合物を炭酸塩と反応させて、MCOを分離する。
【0089】
より具体的には、前記第1分離部120で溶媒に溶解して液状で存在するLiCl等の塩化物を含む第2混合物は、移送路(不図示)を介して第2分離部130に移送され得、移動した第2混合物は、炭酸塩と反応して生成物としてリチウムを含む炭酸リチウム(LiCO)および正極材金属物質を含むMCOに分離収得され得る。
【0090】
これによって、前記第2分離部130は、第1分離部120に移動した第2混合物と反応させるための炭酸塩があらかじめ備えられていてもよく、これに制限されず、さらなる注入部(不図示)を通じて炭酸塩が注入され得る。
【0091】
次に、前記第3分離部140では、第2分離部130と連通し、MCOが分離した第2混合物から炭酸リチウムを分離する。
【0092】
より具体的には、前記第3分離部140で第2混合物として溶媒に溶解した炭酸リチウムおよびNaClを分離してリチウムを選択的に回収することができ、特に溶媒が含まれた第2混合物を乾燥し、これに含まれた溶媒を一部または全部除去して、第2混合物で溶液状態で存在する炭酸リチウムとNaClを溶媒に対する溶解度の差によって分離することができる。
【0093】
これによって、前記第3分離部140も、溶媒を注入させるための溶媒注入部(不図示)をさらに含んでもよいし、このような注入部の形状および材質は、本発明の目的に符合する限り、特に制限されない。
【0094】
次に、本発明による二次電池用正極材のリサイクル装置は、前記第1分離部120、第2分離部130および第3分離部140と連通し、第1分離部120、第2分離部130および第3分離部140から分離したMO、MCOおよび炭酸リチウムからLMOを再生産する合成部150をさらに含んでもよい。
【0095】
すなわち、上述した各分離部で分離した正極材物質であるMO、MCO、炭酸リチウムを通常の再合成工程を通じて二次電池用正極材物質を再生産することができ、必要な場合、さらに、炭酸リチウムを添加し、所望の量のLMOを再生産することができる。
【0096】
以下では、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解すべきである。
【実施例
【0097】
(1)塩素化段階および(2)MO分離段階
二次電池廃バッテリーから分離したニッケルとコバルトおよびマンガンが1:1:1で含まれた正極物質Li(Ni、Co、Mn)O 1.0gを試料として準備した。
【0098】
次に、準備した試料1.0gを95mL/minアルゴン気体と5mL/minの塩素気体の条件で下記表1のようにそれぞれ温度と時間を異ならせて反応生成物の重さ変化を測定した。
【0099】
【表1】
【0100】
前記表1を参照すると、反応が進行されるにつれて、原子量が16の酸素のサイトを原子量35のさらに重い塩素に代替したので、重さが増加したことが分かり、これは、生成された塩化物が揮発しなかったことを確認することができる。各温度で反応時間が増加するにつれて、重さ増加速度が低下する現象は、初期にリチウムが速く塩化物に転換され、その以降には、遷移金属の塩素化反応が遅く進行されることが分かる。
【0101】
これを通じて、本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、リチウムの選択的な分離が可能であることが分かる。
【0102】
また、実施例で準備した試料1.0gを95mL/minアルゴン気体と5mL/minの塩素気体の条件で500℃で6時間反応させたX線回折実験結果を図3bに示し、これを洗浄した後、X線回折実験結果を図3cに示し、550℃で4時間反応させたX線回折実験結果を図3dに示し、これを洗浄した後、X線回折実験結果を図3eに示し、600℃で2時間反応させたX線回折実験結果を図3fに示し、これを洗浄した後、X線回折実験結果を図3gに示し、前記気体条件で反応する前の試料のX線回折実験結果は、図3aに示した。洗浄の際に250mLの水を用いた。
【0103】
図3a~図3gを参照すると、X線回折実験分析結果から550℃および600℃で反応した試料の場合、洗浄を経てM形態に転換されたことを確認できたが、500℃で反応した試料の場合、初期試料の相を維持していることを確認した。これを通じて、550℃および600℃の最適条件で塩素化反応を通じてLiがLiClに転換され、選択的分離が可能であることを確認した。
【0104】
また、正極物質の量を2.0gに増やし、180mL/minアルゴン気体と20mL/minの塩素気体の条件で550℃で4時間反応させたX線回折実験結果を図3hに示し、これを洗浄した後のX線回折実験結果を図3iに示した。この場合にも、M形態の転換を確認し、塩素化反応が様々な条件で可能であることを確認した。
【0105】
これを通じて、本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、リチウムの選択的な分離だけでなく、正極材金属物質の選択的分離も可能であることが分かる。
【0106】
(3)MCOの分離段階
前記(1)および(2)段階で塩素化反応を進めた試料2gに水250mLを混合し、MOを分離した水溶液にNaCO(1.43g)を装入させて、MCO沈殿実験を進め、その結果を図4に示した。図4を参照すると、茶色のMCO沈殿物が形成されることを確認でき、これを通じて、本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、正極材金属物質の選択的分離が可能であることが分かる。
【0107】
(4)LiCOの分離段階
次に、前記(3)段階でMCO沈殿物を分離したLiCO/NaCl/HO溶液250mLを120℃の真空条件で十分に乾燥し、水が全部蒸発されたLiCO/NaClを分離し、これを図5に示した。
【0108】
その後、分離したLiCO/NaClのX線回折実験を進め、その結果を図6に示した。
【0109】
図5および図6を参照すると、LiCO/NaCl/HO溶液からLiCOとNaClが分離されたことが分かり、LiCOとNaCl以外に他の相は形成されなかった結果を通じて、本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、リチウムの選択的な分離だけでなく、互いに異なる正極材金属物質の独立的かつ選択的な分離が可能であることが分かる。
【0110】
(4-1)および(4-2)LiCOの分離段階
前記(4)段階で水が全部蒸発されたLiCO/NaCl 1.99gにNaClの溶解度に合わせて水3.38gを添加して分離工程を行い、その結果を図7に示した。
【0111】
その後、分離したLiCOのX線回折実験を進め、その結果を図8に示した。
【0112】
前記と同じ水が全部蒸発されたLiCO/NaCl 1.99gにメタノール150gを添加して分離工程を行い、回収したLiCOのX線回折実験結果を図9に示した。
【0113】
図8および図9を参照すると、LiCO/NaCl/HO溶液から高純度のLiCOが分離される結果を通じて本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、リチウムの選択的な分離だけでなく、互いに異なる正極材金属物質の独立的かつ選択的な分離が可能であることが分かる。
【0114】
(4-3)再合成段階
前記実験例1で塩素と反応せずに分離したMO(1.388g)および前記実験例3で分離したMCO(0.273g)、そして前記実験例5および6で分離したLiCO(0.708g)にさらにLiCO(0.211g)を添加して混合した後、900℃空気の条件で3時間熱処理し、LMOを再合成した。
【0115】
その後、再合成されたLMOのX線回折実験を進め、その結果を図11に示した。図11を参照すると、初期LMO相と同じ相が形成されたことが分かる。
【0116】
これを通じて、本発明による二次電池用正極材リサイクル方法によれば、二次電池用正極材物質を単純な工程を通じても効率的にリサイクルすることができることが分かる。
【0117】
実験例-再合成された試料の充放電実験
再合成されたLMOを用いて電池を製造し、充放電実験を行った。電気化学特性評価用電極を製造するために、NMP(n-methyl-2-pyrrolidone)溶媒に再合成されたLMO、PVDF(polyvinylidene florudie)バインダー、導電性炭素をそれぞれ8:1:1の質量比で混合されているスラリーを製造した後、前記スラリーをアルミホイルにコートした後、真空オーブンで乾燥させて、NMPを除去し、電極の製造を完了した。
【0118】
前記電極を正極、リチウム金属を負極、1M LiPF in EC/DMC(ethylene carbonate/dimetnyl carbonate)を電解質、ガラス繊維膜を分離膜として使用してCR2032コインセルを製造した。製造したコインセルは、バッテリーサイクラーを用いてCCCV(constant current-constant voltage)モード、2.5~4.3Vの電圧範囲で20mA/g定電流の条件で進め、充電容量を十分に確保するために、充電時の電圧が4.3Vに達すると、4.3V定電圧を20分間さらに維持した後、その結果を図12に示した。
【0119】
図12を参照すると、初期充電容量は、約120mAh/g内外であることが確認され、その後、約105mAh/gレベルで充放電動作が安定的に進行されたことが分かる。
【0120】
これを通じて、本発明において提示する工程を通じてNCM正極材リサイクルが可能であることを確認し、最終的に合成された量は、最初に反応に使用された量の90%であることが確認され、本発明において提示する工程が単純かつ高効率を有することを確認することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図3i
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】