(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】圧力誘導式骨セメント注入方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20240711BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61B17/56
A61F2/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505545
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2022109492
(87)【国際公開番号】W WO2023006114
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038679
【氏名又は名称】ユニトロン メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Unitron Medical INC.
【住所又は居所原語表記】12F.-6, No.99, Sec. 1, Xintai 5th Rd., Xizhi Dist., New Taipei City 221416, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォイ‐チン チュウ
(72)【発明者】
【氏名】イン‐ジウン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム チュウ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097BB09
4C097BB10
4C160LL24
4C160LL70
(57)【要約】
【課題】注入プロセス中のオーバーフローの潜在的な発生を克服することができる、安全で効果的な骨セメント注入方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの環境パラメータを感知することができるアルゴリズムを含む、圧力誘導式骨セメント注入方法および装置を提供する。圧力誘導式骨セメント注入方法は、下記のステップを含む。(a)初期圧力出力値を設定するステップ。(b)感知ユニットによって感知された少なくとも1つの環境パラメータを受信するステップ。(c)少なくとも1つの環境パラメータに基づいて計算プロセスを通してデータを取得するステップ。(d)データ比較によって骨セメントの注入を継続又は停止し、圧力ユニットの圧力出力値を調整するステップ。(e)骨セメント漏出のリスクを低減するよう、圧力出力値を調整して、椎体の内部容積全体を骨セメントで占有するステップ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)初期圧力出力値を設定するステップと、
(b)感知ユニットによって感知された少なくとも1つの環境パラメータを受信するステップと、
(c)少なくとも1つの前記環境パラメータに基づいて計算プロセスを通してデータを取得するステップと、
(d)データ比較によって骨セメントの注入を継続又は停止し、圧力ユニットの圧力出力値を調整するステップと、
(e)骨セメント漏出のリスクを低減するよう、前記圧力出力値を調整して、椎体の内部容積全体を骨セメントで占有するステップと、
を含む、圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項2】
前記環境パラメータは、圧力導入装置内の圧力値、前記圧力ユニット内の圧力値、及び前記椎体内の圧力値を含む、請求項1に記載の圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項3】
前記計算プロセスは、前記椎体内の骨セメントの飽和レベル、前記飽和レベルの範囲、及び圧力変化率を計算することを含む、請求項1に記載の圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項4】
前記データ比較は、圧力変化率を圧力変化閾値と比較することと、感知された圧力値を飽和レベルの範囲と比較することとを含む、請求項1に記載の圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項5】
アルゴリズムモジュールは、前記圧力出力値が最大圧力出力値を超えるべきでないと決定する、請求項1に記載の圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項6】
前記初期圧力出力値は、0mmHg未満であることが許容されない、請求項1に記載の圧力誘導式骨セメント注入方法。
【請求項7】
圧力を導入する圧力ユニットと、
椎体内への骨セメント注入を推進する推進ユニットと、
少なくとも1つの環境パラメータを検出する少なくとも1つの感知ユニットと、
前記圧力ユニット、前記推進ユニット、及び前記感知ユニットを接続する制御ユニットであって、アルゴリズムモジュールを備える制御ユニットと、
を含む、圧力誘導式骨セメント注入装置。
【請求項8】
前記アルゴリズムモジュールは、
(a)初期圧力出力値を設定するステップと、
(b)前記感知ユニットによって感知された少なくとも1つの前記環境パラメータを受信するステップと、
(c)少なくとも1つの前記環境パラメータに基づいて計算プロセスを通してデータを取得するステップと、
(d)データ比較によって骨セメントの注入を継続又は停止し、前記圧力ユニットの圧力出力値を修正するステップと、
(e)骨セメント漏出のリスクを低減するよう、前記圧力出力値を修正して、椎体の内部容積全体を骨セメントで占有するステップと、
を含む、請求項7に記載の圧力誘導式骨セメント注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎体内に骨セメントを注入する方法、特に、骨セメントの注入を誘導するための圧力出力値を制御するアルゴリズムを利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
20世紀後半以来、脊椎血管奇形を有する患者の治療における骨セメントの使用は著しく増加しており、整形外科治療における骨充填剤の重要性の高まりが強調されている。特に注目すべきは、脊椎神経の圧迫を防止するための椎骨支持及び成形の治療における骨充填剤の適用であり、神経圧迫に対処するための従来の神経減圧手術又は従来の脊椎固定手技の組み合わせの代替を提供する。最小侵襲性の椎骨成形手術は、損傷した椎骨内への人工骨セメント(ポリメチルメタクリレート、PMMA)又は他の骨充填材料の配置を含む、椎骨内で経皮的に行われる。これは、椎骨の強度及び安定性を高め、椎骨の損傷によって引き起こされる慢性疼痛を軽減する。損傷した椎骨への骨充填材の円滑な挿入を容易にするために、骨充填材のための移植器具が重要になる。注入速度の安定性、加えられる力、利便性、他の器具との併用における適合性は、全て、操作の容易さに複雑に関連し、外科的結果に影響を及ぼす。
【0003】
骨セメント注入のための既存の装置の大部分は、骨折した椎体内に骨セメントを送達するために、シリンジ又は特別に設計された注入器を利用する。しかしながら、骨粗鬆症、骨折、又は操作者によって加えられる過剰な注入圧力などの要因によって、骨セメントが椎体の外側に漏出する状況が生じる場合があり、潜在的に安全性の懸念につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨セメント注入中に直面する主な課題は、注入プロセス全体を通してオーバーフローが発生する状況である。「減圧経皮椎体形成術:骨粗鬆症圧迫骨折における椎骨増強のための固定骨用セメント送達処置」(JINJ-5173;6ページの番号)は、骨用セメント注入プロセス中の漏出の可能性を低減するために、セメント注入中に椎体の反対側に一定の連続的な吸引圧を印加する骨用セメント注入方法を開示している。これは、骨セメント注入のためのより安全でより効果的な選択と考えることができる。
しかしながら、この注入方法は、注入条件を制御するために医師の経験に依存して、骨セメント注入プロセス中に起こり得る閉塞又はオーバーフローの状況に対処することしかできない。例えば、骨セメントが椎体の内部を徐々に満たすにつれて、骨セメントの連続注入は、周囲の空洞又は静脈への漏出のリスクをもたらし、骨セメント注入プロセス中の漏出につながり、患者の神経圧迫又は肺塞栓症などの合併症を引き起こす可能性がある。
【0005】
したがって、注入プロセス中のオーバーフローの潜在的な発生を克服することができる安全で効果的な骨セメント注入方法を提供することは、関連産業が緊急に対処する必要がある重要な問題になっている。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。この方法を通じて、患者における椎体骨セメント注入状態のリアルタイム評価が達成可能であり、注入パラメータ、モード、又は骨セメント注入の停止に対する適時の調整を可能にする。
【0007】
別の態様では、本発明は、注入条件の基準又は基礎として役立つ、患者の椎体に注入される骨セメントの飽和レベルを動的に評価することができるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、圧力ユニット内に埋め込まれたアルゴリズムを使用して、椎体内に骨セメントを注入するための圧力出力値を計算する、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、椎体内の圧力変化を測定するために感知ユニットを利用し、注入条件を調整するための基準又は基礎として骨セメント注入の飽和レベルを計算する、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、注入装置を介して、椎骨骨セメント注入手術中のオーバーフローの発生を低減する、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的を達成するために、本発明は、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を開示し、この方法は、以下のステップを含む。
初期圧力出力値を設定するステップ。
少なくとも1つの環境パラメータを感知するステップ。
環境パラメータに基づいて椎体内の圧力変化率を計算するステップ。
圧力変化率が圧力変化閾値未満であるかどうかを判定するステップ。
椎体内の骨セメントの飽和レベルを計算するステップ。
圧力出力値を増加させるか、又は骨セメント注入装置の動作を停止することを決定するステップ。
圧力出力値が増加するにつれて、一部の骨セメントが椎体から引き出され、椎体の内壁に付着する層流モードの小さな部分が残る。時間の経過とともに、骨セメントは椎体を充填する。
【0012】
本発明はまた、圧力ユニット、推進ユニット、制御ユニット、及び感知ユニットを備える、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入装置を提供する。
圧力ユニットは吸引圧力を提供し、推進ユニットは骨セメントを椎体内に送達し、感知ユニットは少なくとも1つの環境パラメータを検出し、制御ユニットはアルゴリズムモジュールを備える。アルゴリズムモジュールは計算結果に基づいて圧力ユニットを制御することができる。
【0013】
本発明の一実施形態では、環境パラメータは、推進ユニット内の圧力値、圧力ユニット内の圧力値、及び椎体内の圧力値のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の特徴及び達成される効果のより詳細な理解及び認識を審査官に提供するために、好ましい実施形態を伴う詳細な説明が、本明細書によって提供される。本発明では、骨セメントの漏れをもたらし、患者の安全に影響を及ぼす、椎体内の骨セメントの未知の充填状態に応答する際の既存の骨セメント注入装置の制限に対処して、圧力誘導式骨セメント注入を制御するための新規のアルゴリズムが提案される。この方法は、患者の椎体内の骨セメント注入状態のリアルタイム計算を可能にし、フィードバック信号を制御ユニットに提供し、それによって、リアルタイムフィードバック制御の目的を達成する。
【0015】
本発明によって提供されるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法は、圧力誘導を通じて骨セメント注入プロセス中に患部全体を均一に充填することができ、それによって骨セメント漏出のリスクを低減する。
【0016】
したがって、本発明は、新規なアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの環境パラメータを感知することと、少なくとも1つの環境パラメータを制御ユニットに送信することとを含む。他方、それはさらに、アルゴリズム計算を通して椎体内への骨セメントの注入を制御する。
【0017】
上記の原理に従って、本発明によって提供されるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法及び装置に含まれる構成要素、特性、それらの組合せ、及びそれらの相互作用関係に関して、以下でさらに説明する。
図1を参照すると、
図1は、好ましい実施形態による、本発明によって提供されるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入装置のためのシステムのブロック図を示す。図示されるように、本発明によって提供されるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入装置10は、圧力ユニット11と、推進ユニット12と、制御ユニット13と、少なくとも1つの感知ユニット14とを備える。制御ユニット13は、アルゴリズムモジュール131を備え、圧力ユニット11及び推進ユニット12に接続する。制御ユニット13が少なくとも1つの感知ユニット14から少なくとも1つの検知パラメータを取得すると、制御ユニット13のアルゴリズムモジュール131は、必要な圧力出力値を計算し、圧力ユニット11による骨セメントの注入条件を制御する。
【0018】
本発明は、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法を提供する。圧力ユニット11上の任意の位置に配置された少なくとも1つの感知ユニット14が少なくとも1つの環境パラメータを検出すると、少なくとも1つの環境パラメータを制御ユニット13に送信する。続いて、制御ユニット13のアルゴリズムモジュール131は、少なくとも1つの環境パラメータの内容を処理し、それを予め設定された理想値と比較し、結果として生じる差分値を、圧力ユニット11によって提供される圧力出力値を制御するための基準として使用する。これは、自己フィードバックシステム機構を確立する。自己フィードバックシステム機構を通じて、本発明によって提供されるアルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入装置10は、便利な動作モードを提供する。操作者が圧力出力値を判断し制御するために触覚のみに頼る現在の状況と比較して、このシステムは、より高い操作安定性と、より正確で一貫した操作応答とを提供する。
【0019】
上述の実施形態に基づいて、本発明は、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入装置10を提供する。ユーザ又は制御ユニット13は、少なくとも1つの感知ユニット14の観測結果から、動作条件、環境状態、及び圧力ユニット11の圧力出力値のリアルタイム変化をより正確に理解することができる。さらに、情報を間接的に得ることによって、推進ユニット12による骨セメントの送達状態を推測することができ、圧力出力値に対する対応する調整を行うことができる。圧力誘導を有するが検知装置を欠く骨セメント注入システムを含む、従来技術の他のタイプの骨セメント注入器と比較して、本発明によって提供される圧力誘導式骨セメント注入方法は、注入プロセス中のより正確な制御を可能にする。これは、注入標的領域に提供される圧力の影響に基づいて調節を可能にし、注入プロセスをより円滑にし、不適切な圧力印加による漏出の高いリスクを回避する。さらに、圧力強度の感知及び調整は、骨セメント注入のパラメータに間接的に影響を及ぼし、著しい変化があっても比較的細かい調整を可能にする。一方、感知位置が骨セメントの実際の注入端から遠い場合、環境パラメータの変化は比較的単純であり、得られる測定値はより正確である。したがって、圧力出力値調整のためのより正確なフィードバック値を得ることができ、噴射システムの操作の利便性を高める。
【0020】
具体的には、本発明によって提供される骨セメント注入方法は、注入プロセス中の骨セメント材料の漸進的な固化に関連する課題に対処するように設計される。その結果、圧力センサを骨セメント注入器の内部に配置することは実現可能ではない。本発明の好ましい実施形態では、感知ユニット14は、推進ユニット12と骨セメント注入装置10との間に配置される。この構成では、骨セメント注入装置10の内部の圧力が増加すると、抵抗が増加し、推進ユニットによって加えられる力が上昇する。これは、圧力センサによって感知される圧力の増加をもたらし、骨セメント注入圧力の推定値を提供する。この方法は、初期圧力値、中間圧力値、及び最大圧力値を監視することを含む。アルゴリズムモジュールの計算及びフィードバック制御機構を通じて、骨セメントの連続注入及び固化の反復プロセスにおいて、本方法は、注入標的領域における圧力増加の速度及び飽和レベルを正確に評価する。これは、標的領域に注入された骨セメントの量及び注入を停止する時期に関する効果的な評価及びフィードバックを可能にする。記載されたアプローチは、不適切な圧力印加による漏れの高いリスクを効果的に回避する。さらに、骨セメントは、吸引プロセス中に椎体内又はパイプライン間で凝固することがあるので、椎体の端部に加えられる圧力差を知ることは重要である。圧力ユニット11上に配置された感知ユニット14は、明確なセンシングデータを提供し、従来技術と比較してより高い検出精度を提供する。前述の情報に基づいて、本発明における少なくとも1つの感知ユニット14は、標的部位内の圧力を含む少なくとも1つの環境パラメータを感知する。
【0021】
アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入方法の別の好ましい実施形態を示す、本発明に関連する図面の
図2を参照されたい。臨床医が治療を開始するとき、彼らは、制御ユニット13内に可変初期圧力出力値を事前設定することができる。続いて、感知ユニット14は、圧力ユニット11の圧力値を監視する。推進ユニット12が骨セメントを注入し始めると、アルゴリズムモジュール131は圧力変化率を計算する。ある測定期間及び評価の後、アルゴリズムは、中間圧力出力値が最大出力値に達するまで圧力出力値を増加させるように圧力ユニット11に命令し、その時点で、装置は骨セメントの注入を停止する。
図2を例にとると、初期圧力出力値は400mmHgに設定され得る。圧力が400mmHgで測定され、骨セメントが移動できない場合、アルゴリズムは、中間圧力出力値を500mmHgに増加させる。圧力出力値は、次いで、500mmHgまで増加され、最大出力値に達するまで、以下同様である。この例では、最大出力値は680mmHgである。アルゴリズムは、この時点で骨セメントの注入を停止することを決定する。
【0022】
図3は、制御アルゴリズムS101の詳細な例を示しており、アルゴリズムモジュール131は、例示的な圧力制御アルゴリズムS101を含む。説明されるように、圧力制御アルゴリズムS101は、特定のパラメータ(圧力変化率及び椎体内の骨セメントの飽和レベルなど)を監視することを含む。これらのパラメータは、連続的に又は周期的に監視され得る。圧力制御アルゴリズムS101は、監視されたパラメータを所定のパラメータプロファイルに対して検査して、個々のパラメータ又は組み合わされたパラメータが所定のパラメータプロファイルの指定された範囲内に入るかどうかを判定する。監視されたパラメータが所定のパラメータプロファイルの指定された範囲内にある場合、圧力を出力するコマンドは、骨セメントの注入を継続することができる。監視されたパラメータが、所定のパラメータプロファイルの指定された範囲外にある場合、アルゴリズム131は、それに応じて圧力出力のためのコマンドを調整するか、又は圧力出力を終了する。以下は、アルゴリズム131が圧力出力のためのコマンドを調整、終了、又は中断し得る状況の非網羅的なリストである。
(1)測定された圧力変化率がデフォルトの圧力変化閾値を超える。
(2)出力圧力値が最大圧力出力値を超えている。
(3)圧力変化率がデフォルト圧力変化閾値未満である。
(4)椎体内の骨セメントが飽和に近づく。
【0023】
アルゴリズムのフローチャートにおいて、処理ブロックは以下の通りである。
S102:制御ユニット13に可変初期圧力出力値を設定する。初期圧力値は、例えば400mmHgに手動で設定することができる。
S104:椎体内の骨セメントの飽和範囲を計算し、圧力出力値にパラメータを乗じたものから圧力出力値を減算し、パラメータは手動で設定することができる。
S106:感知ユニット14を介して圧力ユニット11の圧力値を監視するか、又は読み取る。
S108:推進ユニット12を使用して椎体内への骨セメントの注入を開始する。
S110:微分法又は導関数法を用いて圧力変化率を計算する。
S112:圧力変化率を圧力変化閾値と比較し、骨セメントの飽和レベルを計算し、圧力出力値で除算された監視された圧力値を使用して、飽和レベルを計算する。圧力変化率が圧力変化閾値未満である場合、S114に進む。
S114:圧力出力値を増加させるように制御システム13に命令する。この例では、初期圧力値を400mmHgから500mmHgの中間圧力値に増加させる。
S116:圧力値を骨セメントの飽和範囲と比較し、圧力値が骨セメントの飽和範囲未満である場合、S106に戻り、圧力値を再監視し、次いで、圧力値が最大出力値、この例では680mmHgに達するまで、S102からS116までのプロセスを繰り返す。S116の間に、圧力値が骨セメントの飽和範囲よりも大きい場合、S118に進む。
S118:推進ユニット12に骨セメントの注入を停止するように命令する。
【0024】
例えば、圧力が注入プロセス中に連続的に上昇し、空洞が充填されることにより注入測定閾値に達するとき、それは手術部位での骨セメントの充填が完了したことを示す。あるいは、骨セメント注入に不適切な動作環境の閉塞がある場合、圧力ユニットを接続することは、不適切な動作状態を示す、急速に測定される圧力変化をもたらす。したがって、上述の設計を通して、動作プロセス中にリアルタイムで迅速なフィードバックを提供するフィードバック機構を有する骨セメント注入システムが得られ、システムが動作を開始し完了するためにどのように選択するかについて優れたフィードバックを提供する。
【0025】
上述の実施形態では、本発明によって提供される少なくとも1つの環境パラメータは、推進ユニット内の圧力、圧力ユニット内の圧力、又は標的部位における圧力を含む。
【0026】
要約すると、本発明は、実際に、アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入のためのシステムを提供する。このシステムは、圧力誘導式骨セメント注入装置の適用部位における圧力を含む、オペレーティングシステム内の環境パラメータを動的に観察することができる。観察されたデータは、圧力誘導式骨セメント注入システムの制御ユニットに送信される。システムは、椎体内の骨セメント飽和の差に基づいて注入条件を適合させ、既存の技術における骨セメント注入に一般に関連する閉塞及び漏出などの問題を克服する。これにより、骨セメント注入の注入効率及び安全性が効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】システムブロック図として示された、本発明の圧力誘導式骨セメント注入装置の好ましい実施形態である。
【
図2】本発明の圧力誘導式骨セメント注入方法のためのシステムフローチャートの好ましい実施形態である。
【
図3】本発明の圧力誘導式骨セメント注入方法の好ましい実施形態の図である。
【
図4】本発明の圧力誘導式骨セメント注入方法の好ましい実施形態の図である。
【
図5】本発明の圧力誘導式骨セメント注入方法の好ましい実施形態の図である。
【
図6】本発明の圧力誘導式骨セメント注入システムの好ましい実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、具体的な実施形態を例として、本発明の技術内容、特徴及び効果を説明し、これらの例を用いて実施することができる。しかしながら、本発明の保護範囲は、これに限定されないことに留意すべきである。
【0029】
(実施例1 圧力誘導式骨セメント注入装置の引用)
この実施形態の圧力誘導式骨セメント注入方法は、圧力誘導式骨セメント注入装置10の使用を必要とする。この装置は、圧力誘導源として圧力ポンプを備え、この圧力ポンプは、他端に注入開口部を有する針管に接続される。この針管を通して標的部位に圧力が導入される。一方、骨セメント注入ポンプには、骨セメント注入ポンプの正圧を制御するための調整弁が設けられている。骨セメント注入ポンプは、他端に注入開口部を有する針管にも接続され、骨セメント注入ポンプによって提供される圧力下で骨セメントを標的部位に導入することを可能にする。
【0030】
感知ユニット14に関して、圧力誘導式骨セメント注入装置10は、標的部位における圧力値を検出するための圧力センサを装備する。これにより、標的部位における抵抗状態を評価して、圧力強度又は骨セメントの注入速度を調整することが可能になる。
【0031】
さらに、この実施形態の制御ユニット13は、標的部位及び骨セメント注入装置からの圧力変化信号を記録及び分析することができるアルゴリズムモジュール131を含む。それは、関連データを統合して、骨セメント注入パターンを評価し、圧力強度を調整し、分析された情報に基づいて骨セメント注入を停止するための命令又はプロンプトを提供する。
【0032】
(実施例2 圧力誘導式骨セメント注入を操作する方法)
実施形態1で提供される圧力誘導式骨セメント注入装置10を起動する前に、操作者は、圧力ユニット11の初期出力圧力値を決定することができる。初期圧力出力値を決定した後、制御システム13は、骨セメントが飽和範囲に近づくことを計算する。圧力ユニット11内の圧力ポンプが動作を開始し、圧力センサが圧力値を測定し、次いで、圧力変化率を計算するためのアルゴリズムにフィードバックされる。計算された速度は、圧力変化閾値と比較される。検出された圧力変化が閾値を超える場合、セメント注入を停止するために制御信号が送信される。検出された圧力変化が閾値を下回る場合、圧力出力値は、最大圧力出力値に達するまで、又は骨セメントの飽和範囲に近づくまで増加される。次に、セメント注入を停止するために制御信号が送られる。
【0033】
本実施形態では、加圧出力装置への指示は、その初期加圧出力値を400mmHgに設定する。椎体内の圧力が400mmHgで骨セメントを移動させることができない場合、中間圧力値は500mmHgに増加される。このプロセスは、この例では680mmHgである最大出力値に達するまで圧力出力値を徐々に増加させながら継続する。アルゴリズムは、注入を停止することを決定し、骨セメント注入を中止するコマンドを発行する。
【0034】
この実施形態では、一定期間後、ターゲット内部の圧力変化が上昇することが検出されると、圧力モータの回転速度は徐々に増加して、提供される圧力を高める。この例では、最大出力値は680mmHgに設定されている。
図4及び
図5に示すように、上述の原理に基づいて、本発明によって提供される圧力誘導式骨セメント注入方法は、圧力誘導を通じて、骨セメントが患部に導入されるプロセスを加速する。同時に、骨セメントは、停滞することなく流れ続け、導入プロセス中の固化の可能性を低減する。圧力を案内することによって、骨セメントの大部分は椎体から運び去られ、椎体の内壁には少量しか残らない。このステップは、骨セメントが椎体をゆっくりと充填することを可能にする。
【0035】
(実施例3 アルゴリズム制御された圧力誘導式骨セメント注入システムにおける骨セメント注入効率の評価)
脊椎増強処置又はバルーン椎骨形成術における骨セメント注入の有効性の評価基準は、本発明の図に示されるように、
図6のX線画像に示される。
図6は、骨セメント注入状況のX線画像を表す。骨セメントの分布が「良好」とされる場合には、
図6に示すように、セメント注入開始直後に、圧力下で吸引された流動状態の骨セメントが多く観察される。ほんの少量の骨セメントが残り、椎体の内壁上で固化する。
【0036】
上述の実施形態は、本開示の例示的な実施形態にすぎず、本開示の範囲を限定することを意図していない。形状、構造、特徴、及び精神の変更を含む、本出願の請求項の精神及び範囲内の全ての変形及び修正は、本出願の特許請求の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0037】
10 圧力誘導式骨セメント注入装置
11 圧力ユニット
12 推進ユニット
13 制御ユニット
14 感知ユニット
101 制御アルゴリズム
131 アルゴリズムモジュール
【国際調査報告】