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特表2024-527119ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法及び使用
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  • 特表-ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法及び使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20240711BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240711BHJP
   C12M 1/42 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C12N5/07
C12M1/00 A
C12M1/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505550
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2022105626
(87)【国際公開番号】W WO2023005676
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110872667.0
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038934
【氏名又は名称】深セン康沃先進製造科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】陳 璞
(72)【発明者】
【氏名】谷 龍軍
(72)【発明者】
【氏名】鄭 立新
(72)【発明者】
【氏名】王 恒
(72)【発明者】
【氏名】周 金生
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG10
4B065AA90X
4B065AC17
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法及び使用を提供し、本方法は、システムが構築しやすく、操作が簡単であり、パターンが動的に調整可能であり、生体適合性が良好である等の優位性を有する。本方法は、従来の音響的バイオアセンブリ方法の単一波長条件における細胞操作原理とは異なり、異なる波長の正弦又は余弦信号を合成することによって、従来のファラデー波の周波数領域における単一波長アセンブリモードを多波長アセンブリモードに改良し、液底マルチスケール細胞の複雑で、任意のパターン配列を実現し、組織工学及びバイオ製造における細胞の複雑な配列に対するニーズにより適し、大きな応用将来性及び商業的価値を有する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法であって、いかなる複雑な周期的パターンもフーリエ級数を利用して一連の正弦波又は余弦波の重畳に簡略化することができることに基づいて、本方法は複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成し、最終的にマルチスケール細胞の複雑で、任意の配列を実現し、
構築しようとするバイオアセンブリパターンに基づいて、波形作成及び編集ツールソフトウェアにおいて異なる波長の正弦又は余弦信号の合成を実現し、合成した多波長信号ファイルを任意の波形/関数信号発生器に導入するステップS1と、
任意の波形/関数信号発生器にステップS1で合成した多波長信号ファイルを開き、任意の波形/関数信号発生器を介して対応する電気信号を出力し、電気信号をパワーアンプに転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を加振器に転送して安定的で、周期的な振動を発生させ、アセンブリチャンバと加振器を接続して水平較正を行うステップS2と、
アセンブリ対象の細胞含有アセンブリ単位の懸濁液をアセンブリチャンバに均一に加え、細胞含有アセンブリ単位がアセンブリチャンバの底部に沈降した後、ファラデー波の多波長合成によるアセンブリを行うステップS3と、を含むことを特徴とする、ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項2】
前記ステップS1では、複数の正弦又は余弦信号の合成は具体的に以下のとおりであり、
2波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数1】
であり、fは低駆動周波数であり、fは高駆動周波数であり、Aは低駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、Aは高駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数2】
であり、fは低駆動周波数であり、fは高駆動周波数であり、Aは低駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、Aは高駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、
多波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数3】
であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数4】
であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項3】
前記駆動周波数の選択範囲は1~1000Hzであることを特徴とする、請求項2に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項4】
2波長ファラデー波の合成では、低駆動周波数の正弦又は余弦信号関数に対応する振幅値Aと高駆動周波数の正弦又は余弦信号関数に対応する振幅値Aとの比の範囲は1:1~1:5であり、多波長ファラデー波の合成では、駆動周波数はf<f<f<f<fであり、振幅値はA≦A≦A≦A≦Aであり、低い振幅値と高い振幅値との比の範囲は1:1~1:5であることを特徴とする、請求項3に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項5】
前記ステップS2では、アセンブリチャンバの形状は、円形、正方形、長方形、三角形、台形、菱形、六角形又は八角形のうちのいずれかであり、各形状のアセンブリチャンバの外接円は、直径が0.5~20cmであり、高さが0.2~10mmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項6】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、単細胞、微小組織塊、類器官、細胞微小球、細胞含有ヒドロゲル微小球及び細胞含有担体微粒子のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、直径は2~5000μmであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項7】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位の数は2~1012であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項8】
前記ステップS3では、選択された細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、がん幹細胞、及び間葉系幹細胞のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、又は、選択された細胞は、脳、肝臓、腎臓、膵臓、血管、心臓、皮膚、骨髓、骨、軟骨及び筋肉の組織器官の初代細胞、先祖細胞、前駆細胞及びその疾患細胞のいずれか一種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項6又は7に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項9】
前記ステップS3では、懸濁系はリン酸緩衝液、細胞培地、天然ヒドロゲル、合成ヒドロゲル又は混合ヒドロゲルのうちのいずれかであることを特徴とする、請求項8に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項10】
前記マルチスケール細胞の複雑で、任意の配列は、細胞がファラデー波ノード及び/又はアンチノードアセンブリパターンに配列することであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項11】
前記ノードはファラデー定在波のノード位置であり、アンチノードはファラデー定在波のアンチノード位置であることを特徴とする、請求項10に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項12】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、異なる細胞種類を含む一種又は一種以上のアセンブリ単位であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項13】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、単細胞、微小組織塊、類器官、細胞微小球、細胞含有ヒドロゲル微小球及び細胞含有担体微粒子のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、浮力密度は1~10g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項14】
請求項1~4又は請求項6~13のいずれか1項に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法の使用であって、該方法は生細胞を含有するバイオアセンブリ単位を用いて人工組織及び器官を構築することに使用され、前記構築された人工組織及び器官は細胞型人工肉、薬物試験モデル、臨床レベル組織及び器官修復製品に用いることができることを特徴とする、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学工学に属する組織工学とバイオ製造技術分野に属し、具体的にファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト組織器官では、細胞はセルフ組織化によって相互接続を実現し、高度に秩序化した細胞構造を形成する。体外還元構造における細胞の配列方式及び構造の幾何学的形状は、マクロ的スケールで体内組織器官の形態をシミュレートする面で重要な役割を果たしているだけでなく、細胞の微環境を調節する面で重要な役割を果たしている。
【0003】
近年、バイオ製造はヒト組織器官の複雑性及び機能性を高度に還元する細胞微構造を構築する面で大きな潜在力を示している。バイオ製造については、バイオプリント又はバイオアセンブリ及びその後の組織成熟プロセスを利用して、生細胞、バイオ材料及び刺激因子を、特異的な構造及び機能を有するバイオ製品に構築する。バイオアセンブリはバイオ製造の1つの重要な構築戦略であると考えられ、その優位性について、バイオプリントに比べて、バイオアセンブリは細胞構造の構築においてより良い生体適合性及びより高い効率を有する。これまで、一連のバイオアセンブリ技術は、外部の物理場と細胞の相互作用を利用して空間における細胞の配列を制御する。これらの物理場は重力場、磁場及び電場等を含む。しかし、上記原理に基づくバイオアセンブリ技術によって構築された細胞構造は、球形、ストライプ状、環状等の簡単な幾何学的形状のみを有することが多く、マルチスケールで、複雑で、任意の細胞構造を構築するニーズを満たすことが困難である。
【0004】
他のバイオアセンブリ技術に比べて、音響的バイオアセンブリは音場の動的調整が可能であるという独特の優位性を有するため、より良い細胞構造の多様性を提供することができる。音響ホログラフィー技術は、複雑で、任意の細胞構造を構築するために使用されているが、該技術には、システムが複雑で、操作過程が煩雑で、複雑な細胞構造に対してリアルタイム調節を実現できない等の問題が存在している。該技術に比べて、ファラデー波によるバイオアセンブリ技術は、システムが構築しやすく、操作が簡単であり、パターンが動的に調整可能であり、生体適合性が良好である等の優位性を有し、生物組織工学分野で大きな応用将来性がある。しかし、従来のファラデー波によるバイオアセンブリ技術は、その周波数領域で単一波長の細胞アセンブリのみを行い、構築できる単一スケールで限られる細胞構造は、マルチスケールで、複雑で、任意の細胞構造の構築に対するニーズを満たすことができない。
【0005】
従って、生物組織工学の研究におけるマルチスケール細胞の複雑で、任意の配列を実現するニーズを満たすことができるバイオアセンブリ方法を提供することは、大きな応用将来性、及び技術の普及や応用価値を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のバイオアセンブリ技術の欠陥に対して、ファラデー波の多波長合成による細胞アセンブリ方法及び使用を提供することである。複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成することによって、従来のファラデー波の周波数領域における単一波長アセンブリモードを多波長アセンブリモードに改良し、液底マルチスケール細胞の複雑で、任意のパターン配列を実現し、それによりファラデー波によるバイオアセンブリに技術の普及と応用価値を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明の動作原理は以下のとおりである。
【0008】
多波長合成による音響的バイオアセンブリ理論を構築する。液底の細胞はファラデー波音場において音響的圧力、浮力及び重力の共同作用を受け、音響的圧力は細胞のバランス位置に対して決定的な役割を果たし、細胞は最終的に音圧場においてポテンシャルエネルギーが最も低い位置、即ちポテンシャル井戸にバランスを取る。いかなる複雑な音響的圧力場も、フーリエ級数を利用して、さらに一連の正弦又は余弦音響的圧力場の重畳に簡略化することができる。従って、複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成して複雑な波形を形成することにより、マルチスケール細胞の複雑で、任意の配列のニーズを満たすことができる。多波長合成によるマルチスケール複雑な構造は図1に示される。例えば、肝臓は独特のマルチスケール構造を有する重要な器官であり、成人の肝臓は50~100万個の六角形の肝小葉から構成され、肝臓組織の周期的な肝小葉構造単位及びマルチスケール微生理構造は図2に示される。従って、複雑な肝臓組織構造を空間的に繰り返し配列された肝小葉構造に簡略化することができる。多波長合成によって、空間的に複雑な音響的圧力場分布を実現し、さらにマルチスケール肝臓細胞構造の構築を実現する。また、人体には多くの組織器官は特定のマルチスケール構造単位を含み、例えば、肺胞は主に単層上皮細胞からなる半球状の嚢胞であり、腎小管は主に腎小管上皮細胞のセルフ組織化により中空管状構造を形成する。これらの特定の組織器官生理構造はいずれもファラデー波の多波長合成によるアセンブリによって体外の構築を実現することができる。
【0009】
上記目的を実現するために、本発明の技術的解決手段は以下のとおりである。
【0010】
第1態様では、本発明はファラデー波の多波長合成による細胞アセンブリ方法を提供する。いかなる複雑な周期的パターンもフーリエ級数を利用して一連の正弦波又は余弦波の重畳に簡略化することができることに基づいて、本方法は複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成し、最終的にマルチスケール細胞の複雑で、任意の配列を実現し、前記ノードはファラデー定在波のノード位置であり、アンチノードはファラデー定在波のアンチノード位置であり、
構築しようとするバイオアセンブリパターンに基づいて、波形作成及び編集ツールソフトウェアにおいて異なる波長の正弦又は余弦信号の合成を実現し、合成した多波長信号ファイルを任意の波形/関数信号発生器に導入するステップS1と、
任意の波形/関数信号発生器にステップS1で合成した多波長信号ファイルを開き、任意の波形/関数信号発生器を介して対応する電気信号を出力し、電気信号をパワーアンプに転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を加振器に転送して安定的で、周期的な振動を発生させ、アセンブリチャンバと加振器を接続して水平較正を行うステップS2と、
アセンブリ対象の細胞含有アセンブリ単位の懸濁液をアセンブリチャンバに均一に加え、細胞含有アセンブリ単位がアセンブリチャンバの底部に沈降した後、ファラデー波の多波長合成によるアセンブリを行うステップS3と、を含む。
【0011】
具体的なステップは以下のとおりである。
【0012】
ステップS1:目標とするアセンブリ配列の細胞パターンに基づいて、波形作成及び編集ツールソフトウェアにおいて異なる波長のファラデー波の合成を実現し、周波数の選択範囲は1~1000Hzである。例えば、2波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数1】
であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数2】
である。ここで、fは低駆動周波数であり、fは高駆動周波数であり、低駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値Aと高駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値Aとの比の範囲は
1:1~1:5である。多波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数3】
であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数4】
である。ここで、周波数はf<f<f<f<fであり、振幅値はA≦A≦A≦A≦Aであり、低い振幅値と高い振幅値との比の範囲は1:1~1:5である。合成した多波長信号ファイルを任意の波形/関数信号発生器に導入する。
【0013】
ステップS2:合成した多波長信号ファイルを開き、任意の波形/関数信号発生器を介して特定の電気信号を出力し、電気信号をパワーアンプに転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を加振器に転送して安定的で、周期的な振動を発生させる。アセンブリチャンバと加振器を接続して水平較正を行う。アセンブリチャンバは円形、正方形、長方形、三角形、台形、菱形、六角形、八角形であってもよく、各形状のアセンブリチャンバの外接円は、直径が0.5~20cmであり、高さが0.2~10mmである。
【0014】
ステップS3:アセンブリに用いられる細胞含有アセンブリ単位について、選択された細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、がん幹細胞、間葉系幹細胞の一種又は複数種の組み合わせであり、又は、選択された細胞は、脳、肝臓、腎臓、膵臓、血管、心臓、皮膚、骨髓、骨、軟骨及び筋肉の組織器官の初代細胞、先祖細胞、前駆細胞及びその疾患細胞のいずれか一種又は複数種の組み合わせである。細胞含有アセンブリ単位は、単細胞、微小組織塊、類器官、細胞微小球、細胞含有ヒドロゲル微小球及び細胞含有担体微粒子の一種又は複数種の組み合わせであり、直径は2~5000μmである。細胞含有アセンブリ単位の数は2~1012である。細胞含有アセンブリ単位をリン酸緩衝液、細胞培地、天然ヒドロゲル、合成ヒドロゲル及び混合ヒドロゲルに均一に分散させて使用に備え、浮力密度は1~10g/cmであり、アセンブリ対象の細胞含有アセンブリ単位の懸濁液をアセンブリチャンバに均一に加え、細胞含有アセンブリ単位がアセンブリチャンバの底部に沈降した後、ファラデー波の多波長合成によるアセンブリを行う。
【0015】
第2態様では、本発明は上記ファラデー波の多波長合成による細胞アセンブリ方法の使用を提供する。該方法は生細胞を含有するバイオアセンブリ単位を用いて人工組織及び器官を構築することに使用され、前記構築された人工組織及び器官は細胞型人工肉、薬物試験モデル、臨床レベル組織及び器官修復製品に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の利点及び有益な効果は以下のとおりである。
【0017】
本発明のファラデー波の多波長合成による細胞アセンブリ方法は、システムが構築しやすく、操作が簡単であり、パターンが動的に調整可能であり、生体適合性が良好である等の優位性を有する。本発明は、従来の音響的バイオアセンブリ方法の単一波長条件における細胞操作原理とは異なり、複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成することによって、従来のファラデー波の周波数領域における単一波長アセンブリモードを多波長アセンブリモードに改良し、液底マルチスケール細胞の複雑で、任意のパターン配列を実現し、それを組織工学及びバイオ製造における細胞の複雑な配列に対するニーズにより適応させ、大きな応用将来性及び商業転化潜在力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】多波長合成によるマルチスケール複雑な構造の模式図である。
図2】肝臓組織の周期的な構造単位及びマルチスケール微生理構造の模式図である。
図3】本発明の実施例1の液底アセンブリで得られた単一波長、2波長、3波長のポリスチレン微小球パターンの模式図である。
図4】本発明の実施例2の液底アセンブリで得られた単一波長、2波長のHepG2細胞微小球パターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を参照して本発明の解決手段を説明する。当業者であれば理解できるように、以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、本分野内の文献に記載されている技術又は条件に従って、あるいは製品の説明書に従って行う。
【0020】
実施例1:ファラデー波の多波長合成によるアセンブリはポリスチレン微小球の配列に用いられる
【0021】
ポリスチレン微小球を0.05%トゥイーン20含有0.01Mリン酸塩緩衝液に加え、十分に分散させた。ポリスチレン微小球の色は赤であり、直径は100μmであり、密度は1.05g/cmであり、その物理的性質は細胞含有アセンブリ単位と類似し、ポリスチレン微小球の濃度は30mg/mLである。本実施例では、ポリスチレン微小球を用いて細胞含有アセンブリ単位をシミュレートする。
【0022】
1、単一波長条件におけるポリスチレン微小球の配列について、ステップは以下のとおりである。
【0023】
波形を連続する正弦波に設定した後、駆動周波数を20Hz、28Hz、58Hz、信号の振幅値を60~100mVppに設定し、任意の波形/関数信号発生器(Tecktronix、AFG3052C)を調節することによって特定の電気信号を出力し、BNCメス-RCAオス変換ケーブルを介して電気信号をパワーアンプ(DAYTONAUDIO、DTA-120)に転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を、RCAオス変換4コアソケットを介して加振器(無錫世敖科技有限公司製、SA-JZ005T)に転送し、安定的で、周期的な振動を発生させた。M5×30を介して円形アセンブリチャンバ(Φ=3cm)を加振器にリジッド連結した後、気泡水準器によって360°水平較正を行った。最終的にアセンブリ対象のポリスチレン微粒子懸濁液を円形アセンブリチャンバに均一に加え、ポリスチレン微粒子がアセンブリチャンバの底部に沈降した後にファラデー波アセンブリを行った。単一波長条件におけるポリスチレン微小球のアセンブリを行って得たパターンは、図3のaに示すように、比較的簡単な発散状、花弁状、同心円環状のパターンしか形成できなかった。
【0024】
2、2波長合成条件におけるポリスチレン微小球の配列について、ステップは以下のとおりである。
【0025】
「ArbExpress」ソフトウェアを利用して2つの異なる波長の正弦信号の合成を実現した。駆動周波数20Hz及び28Hzに対応する波長の下で正弦信号を合成した波関数は
【数5】
であり、駆動周波数20Hz及び58Hzに対応する波長の下で正弦信号を合成した波関数は
【数6】
であり、駆動周波数28Hz及び28Hzに対応する波長の下で正弦信号を合成した波関数は
【数7】
である。合成した2波長正弦信号を「TFW」形式のファイルとして保存し、任意の波形/関数信号発生器(Tecktronix、AFG3052C)に導入した。
【0026】
波形を任意の波形に設定した後、合成した2波長正弦信号ファイルを順に開き、信号の振幅値は140~160mVppであり、任意の波形/関数信号発生器を介して特定の電気信号を出力し、BNCメス-RCAオス変換ケーブルを介して電気信号をパワーアンプ(DAYTONAUDIO、DTA-120)に転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を、RCAオス変換4コアソケットを介して加振器(無錫世敖科技有限公司製、SA-JZ005T)に転送し、安定的で、周期的な振動を発生させた。M5×30を介して円形アセンブリチャンバ(Φ=3cm)を加振器にリジッド連結した後、気泡水準器によって360°水平較正を行った。最終的にアセンブリ対象のポリスチレン微粒子懸濁液を円形アセンブリチャンバに均一に加え、ポリスチレン微粒子がアセンブリチャンバの底部に沈降した後にファラデー波アセンブリを行った。2波長条件におけるポリスチレン微小球のアセンブリを行って得たパターンは、図3のbに示すように、単一波長条件に対応するパターンの重畳を実現し、発散状、花弁状、同心円環状のパターンを2つずつ相互に重畳したパターンを得た。
【0027】
3、3波長合成条件におけるポリスチレン微小球の配列について、ステップは以下のとおりである。
【0028】
「ArbExpress」ソフトウェアを利用して3つの異なる波長の正弦信号の合成を実現した。駆動周波数20Hz、28Hz及び58Hzに対応する波長の下で正弦信号を合成した波関数は
【数8】
である。合成した3波長正弦信号を「TFW」形式のファイルとして保存し、任意の波形/関数信号発生器(Tecktronix、AFG3052C)に導入した。
【0029】
波形を任意の波形に設定した後、合成した3波長正弦信号ファイルを開き、信号の振幅値は200mVppであり、任意の波形/関数信号発生器を介して特定の電気信号を出力し、BNCメス-RCAオス変換ケーブルを介して電気信号をパワーアンプ(DAYTONAUDIO、DTA-120)に転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を、RCAオス変換4コアソケットを介して加振器(無錫世敖科技有限公司製、SA-JZ005T)に転送し、安定的で、周期的な振動を発生させた。M5×30を介して円形アセンブリチャンバ(Φ=3cm)を加振器にリジッド連結した後、気泡水準器によって360°水平較正を行った。最終的にアセンブリ対象のポリスチレン微粒子懸濁液を円形アセンブリチャンバに均一に加え、ポリスチレン微粒子がアセンブリチャンバの底部に沈降した後にファラデー波アセンブリを行った。3波長条件におけるポリスチレン微小球のアセンブリを行って得たパターンは、図3のcに示すように、さらにマルチスケール条件におけるポリスチレン微粒子の複雑で、任意のパターン配列を実現し、アセンブリパターンは発散状、花弁状、同心円環状のパターンの特徴を同時に有した。
【0030】
実施例2:ファラデー波の多波長合成によるアセンブリはHepG2細胞微小球の配列に用いられる
【0031】
単一波長条件におけるHepG2細胞微小球の配列について、ステップは以下のとおりである。
【0032】
HepG2細胞を6ウェル低接着プレート(Corning、3471)に加え、各ウェルに2×10個の細胞があり、2mLのDMEM完全培地を加えた。6ウェル低接着プレートをプレートシェーカ上に置き、回転数は75rpmであり、3日間培養してボールになった。1ウェルのHepG2細胞微小球を収集して0.01Mリン酸塩緩衝液に加えて使用に備えた。
【0033】
波形を連続する正弦波に設定した後、駆動周波数を42Hz、45Hz、信号の振幅値を60~80mVppに設定し、任意の波形/関数信号発生器(Tecktronix、AFG3052C)を調節することによって特定の電気信号を出力し、BNCメス-RCAオス変換ケーブルを介して電気信号をパワーアンプ(DAYTONAUDIO、DTA-120)に転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を、RCAオス変換4コアソケットを介して加振器(無錫世敖科技有限公司製、SA-JZ005T)に転送し、安定的で、周期的な振動を発生させた。M5×30を介して黒い背景の円形アセンブリチャンバ(Φ=2cm)を加振器にリジッド連結した後、気泡水準器によって360°水平較正を行った。最終的にアセンブリ対象のHepG2細胞微小球懸濁液を円形アセンブリチャンバに均一に加え、HepG2細胞微小球がアセンブリチャンバの底部に沈降した後にファラデー波アセンブリを行った。単一波長条件の下でHepG2細胞微小球のアセンブリを行って得たパターンは、図4のaに示すように、比較的簡単な発散状、4花弁状のパターンしか形成できなかった。
【0034】
2波長条件におけるHepG2細胞微小球の配列について、ステップは以下のとおりである。
【0035】
「ArbExpress」ソフトウェアを利用して2つの異なる波長の正弦信号の合成を実現した。駆動周波数42Hz及び45Hzに対応する波長の下で正弦信号を合成した波関数は
【数9】
である。合成した2波長正弦信号を「TFW」形式のファイルとして保存し、任意の波形/関数信号発生器(Tecktronix、AFG3052C)に導入した。
【0036】
波形を任意の波形に設定した後、合成した2波長正弦信号ファイルを開き、信号の振幅値は140~160mVppであり、上記ファラデー波音響的バイオアセンブリシステムによって2波長条件におけるHepG2細胞微小球のアセンブリを完了し、2波長条件におけるHepG2細胞微小球のアセンブリを行って得たパターンは、図4のbに示すように、単一波長条件に対応するパターンの重畳を実現し、マルチスケール条件におけるHepG2細胞微小球の複雑で、任意のパターン配列を実現し、アセンブリパターンは発散状、4花弁状のパターンの特徴を同時に有した。
【0037】
以上より、本発明は革新的に複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成することによって、マルチスケール条件における複雑で任意の細胞配列パターンを実現する。本方法はシステムが構築しやすく、操作が簡単であり、パターンが動的に調整可能であり、そして、より良い生体適合性を有する。さらに重要なのは、本方法は従来の音響的バイオアセンブリ方法の単一波長条件における細胞操作原理とは異なり、多波長合成のファラデー波を励起して形成することによって、従来のファラデー波の周波数領域における単一波長アセンブリモードを多波長アセンブリモードに改良し、液底マルチスケール細胞の複雑で、任意のパターン配列を実現し、組織工学及びバイオ製造におけるマルチスケール細胞の複雑で、任意の配列に対するニーズのために、革新的なソリューションを提供する。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法であって、いかなる複雑な周期的パターンもフーリエ級数を利用して一連の正弦波又は余弦波の重畳に簡略化することができることに基づいて、本方法は複数の異なる波長の正弦又は余弦信号を合成し、さらに多波長合成のファラデー波を励起して形成し、最終的にマルチスケール細胞の複雑で、任意の配列を実現し、
構築しようとするバイオアセンブリパターンに基づいて、波形作成及び編集ツールソフトウェアにおいて異なる波長の正弦又は余弦信号の合成を実現し、合成した多波長信号ファイルを任意の波形/関数信号発生器に導入するステップS1と、
任意の波形/関数信号発生器にステップS1で合成した多波長信号ファイルを開き、任意の波形/関数信号発生器を介して対応する電気信号を出力し、電気信号をパワーアンプに転送してパワー増幅を行い、増幅後の忠実な電気信号を加振器に転送して安定的で、周期的な振動を発生させ、アセンブリチャンバと加振器を接続して水平較正を行うステップS2と、
アセンブリ対象の細胞含有アセンブリ単位の懸濁液をアセンブリチャンバに均一に加え、細胞含有アセンブリ単位がアセンブリチャンバの底部に沈降した後、ファラデー波の多波長合成によるアセンブリを行うステップS3と、を含むことを特徴とする、ファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項2】
前記ステップS1では、複数の正弦又は余弦信号の合成は具体的に以下のとおりであり、
2波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数1】
であり、fは低駆動周波数であり、fは高駆動周波数であり、Aは低駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、Aは高駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数2】
であり、fは低駆動周波数であり、fは高駆動周波数であり、Aは低駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、Aは高駆動周波数の正弦信号関数に対応する振幅値であり、
多波長ファラデー波の合成について、書き込まれた正弦信号関数は
【数3】
であり、書き込まれた余弦信号関数は
【数4】
であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項3】
前記駆動周波数の選択範囲は1~1000Hzであることを特徴とする、請求項2に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項4】
2波長ファラデー波の合成では、低駆動周波数の正弦又は余弦信号関数に対応する振幅値Aと高駆動周波数の正弦又は余弦信号関数に対応する振幅値Aとの比の範囲は1:1~1:5であり、多波長ファラデー波の合成では、駆動周波数はf<f<f<f<fであり、振幅値はA≦A≦A≦A≦Aであり、低い振幅値と高い振幅値との比の範囲は1:1~1:5であることを特徴とする、請求項3に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項5】
前記ステップS2では、アセンブリチャンバの形状は、円形、正方形、長方形、三角形、台形、菱形、六角形又は八角形のうちのいずれかであり、各形状のアセンブリチャンバの外接円は、直径が0.5~20cmであり、高さが0.2~10mmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項6】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、単細胞、微小組織塊、類器官、細胞微小球、細胞含有ヒドロゲル微小球及び細胞含有担体微粒子のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、直径は2~5000μmであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項7】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位の数は2~1012であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項8】
前記ステップS3では、選択された細胞は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、がん幹細胞、及び間葉系幹細胞のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、又は、選択された細胞は、脳、肝臓、腎臓、膵臓、血管、心臓、皮膚、骨髓、骨、軟骨及び筋肉の組織器官の初代細胞、先祖細胞、前駆細胞及びその疾患細胞のいずれか一種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項6又は7に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項9】
前記ステップS3では、懸濁系はリン酸緩衝液、細胞培地、天然ヒドロゲル、合成ヒドロゲル又は混合ヒドロゲルのうちのいずれかであることを特徴とする、請求項8に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項10】
前記マルチスケール細胞の複雑で、任意の配列は、細胞がファラデー波ノード及び/又はアンチノードアセンブリパターンに配列することであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項11】
前記ノードはファラデー定在波のノード位置であり、アンチノードはファラデー定在波のアンチノード位置であることを特徴とする、請求項10に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項12】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、異なる細胞種類を含む一種又は一種以上のアセンブリ単位であることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項13】
前記ステップS3では、前記細胞含有アセンブリ単位は、単細胞、微小組織塊、類器官、細胞微小球、細胞含有ヒドロゲル微小球及び細胞含有担体微粒子のいずれか一種又は複数種の組み合わせであり、浮力密度は1~10g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載のファラデー波の多波長合成によるバイオアセンブリ方法の使用であって、該方法は生細胞を含有するバイオアセンブリ単位を用いて人工組織及び器官を構築することに使用され、前記構築された人工組織及び器官は細胞型人工肉、薬物試験モデル、臨床レベル組織及び器官修復製品に用いることができることを特徴とする、使用。
【国際調査報告】