(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二次電池用負極材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20240711BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240711BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240711BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240711BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/13
H01M4/587
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506199
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2022019391
(87)【国際公開番号】W WO2023106734
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172786
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウンヒェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スングワン
(72)【発明者】
【氏名】チ,ウンオク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材及びその製造方法について開示する。
本発明による活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、前記活物質は、表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を含み、前記シリコン酸化物複合体は、シリコン酸化物(SiO
x、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子を含み、前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるものであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、
前記活物質は、
表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を含み、
前記シリコン酸化物複合体は、
シリコン酸化物(SiO
x、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子を含み、
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なる、
二次電池用負極材。
【請求項2】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項3】
前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項4】
前記シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)は、1~50μmである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項5】
前記シリコン酸化物複合体の比表面積(BET)は、1~5m
2/gである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項6】
前記シリコン酸化物複合体内の酸素:シリコンのモル比は、0.5:1.0~1.0:1.0である、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項7】
前記活物質は、第1炭素材をさらに含む。
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項8】
前記活物質内のシリコン酸化物複合体:第1炭素材の重量比は、1:1~1:7である、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項9】
前記二次電池用負極材内の活物質:導電材:バインダの重量比は、100:1~25:1~25である、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項10】
活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材の製造方法であって、
(a)シリコン酸化物(SiO
x、0.5<x≦2)ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子とを混合して、第1混合物を製造する段階;
(b)前記第1混合物にバインダを添加して乾燥し、第2混合物を製造する段階;
(c)前記第2混合物を熱処理して、シリコン酸化物複合体を製造する段階;及び
(d)前記シリコン酸化物複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する段階を含み、
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なる、
二次電池用負極材の製造方法。
【請求項11】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmである、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項12】
前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmである、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項13】
上記(b)段階において、シリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対して、バインダ1~20重量部を添加する、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項14】
上記(c)段階の熱処理は、
(c1)常温から、500℃まで昇温する1段階;
(c2)上記1段階の温度に維持して熱処理する2段階;
(c3)上記2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階;
(c4)上記3段階の温度に維持して熱処理する4段階を含む、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項15】
上記(b)段階~(c)段階において、
各段階ごとに粉砕が行われる、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項16】
前記シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)は、1~50μmである、
請求項10に記載のン二次電池用負極材の製造方法。
【請求項17】
上記(d)段階の後、
(e)前記シリコン酸化物複合体:第1炭素材を1:1~1:7の重量比でさらに混合して、活物質を製造する段階;及び
(f)前記活物質:導電材:バインダを100:1~25:1~25の重量比で混合して、スラリーを製造する段階;をさらに含む、
請求項10に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の初期放電容量(IDC)、初期効率(ICE)および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の需要が増えるにつれて、負極活物質の高容量かつ高出力化技術が求められている。
【0003】
二次電池の性能の向上は、正極材、負極材、電解液の構成要素に基づく。そのうち負極材として主に使用される黒鉛は、理論容量が370mAh/gに制限されるため、黒鉛負極材に取り替えられる材料としてシリコン、スズ、ゲルマニウム、亜鉛などの非炭素系負極材の開発が行われている。
【0004】
非炭素系負極材のうちシリコンは、理論容量が4000~4200mAh/gに至り、黒鉛に比べて、ほぼ10倍以上の高容量を示すため、黒鉛に取り替えられる物質として注目されている。
【0005】
しかし、シリコンは、リチウムイオンの吸蔵及び放出が行われる過程で、300%を越える体積膨張率を示すため、充放電が行われるほど、二次電池の寿命(cycle)特性が低下する問題点がある。
【0006】
二次電池の寿命特性を高めるために、シリコンと炭素を機械的なミーリング工程で複合化して、負極材を製造する技術が用いられているが、このような技術は、充放電時に伴われる体積膨張と収縮を抑えるのに限界がある。
【0007】
一方、SiOx(0.5<x≦2)は、初期充放電過程で形成された酸化物によって高い機械的強度を有する。これによって、SiOxを含む負極材は、充放電時に発生する体積膨張に対する安定性を有しており、二次電池の寿命特性を向上させる試みが多く行われている。
【0008】
しかし、シリコン酸化物SiOx(0.5<x≦2)は、不可逆容量が大きく、初期効率が低いという短所がある。
【0009】
近年、二次電池の初期効率を高めるために、シリコン酸化物SiOxを金属リチウム粉末と反応させて、負極材を製造する技術が行われている。しかし、この技術は、二次電池の容量を減少させ、製造過程のうち、電極製作時に活物質、バインダと共に溶媒である蒸留水に分散させて作られたスラリーを銅極板上にコーティングする過程で、前記スラリーの安定性が落ちて、工業的に大量生産することは困難である。
【0010】
よって、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができ、かつ、安定的に大量生産可能な二次電池用負極材が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、シリコンの体積膨張に対する安定性に優れる負極活物質を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、前記負極活物質を用いて二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材を提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、安定的に大量生産可能な二次電池用負極材の製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限らず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、前記活物質は、表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を含み、前記シリコン酸化物複合体は、シリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子を含み、前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるものであってもよい。
【0016】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであってもよい。
【0017】
前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであってもよい。
【0018】
本発明による活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材の製造方法であって、(a)シリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子とを混合して、第1混合物を製造する段階;(b)前記第1混合物にバインダを添加して乾燥し、第2混合物を製造する段階;(c)前記第2混合物を熱処理して、シリコン酸化物複合体を製造する段階;及び(d)前記シリコン酸化物複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する段階を含み、前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるものであってもよい。
【0019】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであってもよい。
【0020】
前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであってもよい。
【0021】
上記(c)段階の熱処理は、(c1)常温から、500℃まで昇温する1段階;(c2)前記1段階の温度に維持して熱処理する2段階;(c3)前記2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階;(c4)前記3段階の温度に維持して熱処理する4段階;を含んでいてもよい。
【0022】
上記(d)段階の後、(e)前記シリコン酸化物複合体と第1炭素材をさらに混合して、活物質を製造する段階;及び(f)前記活物質と導電材バインダとを混合して、スラリーを製造する段階をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による二次電池用負極材は、シリコンの体積膨張に対する安定性に優れる負極活物質を用いて、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる効果がある。
【0024】
本発明による二次電池用負極材の製造方法は、シリコン酸化物複合体を含む負極活物質を安定的に大量生産することができる効果がある。
【0025】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による二次電池用負極材の製造方法を示した手順図である。
【
図2】本発明による実施例1のシリコン酸化物複合体の断面写真である。
【
図3】本発明による比較例3のシリコン酸化物複合体の断面写真である。
【発明を実施するための最善の形態】
【0027】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明の説明にあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0028】
以下における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が、上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0029】
また、ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、上記構成要素は、互いに直接に連結されるかまたは接続されていてもよいものの、各構成要素の間に他の構成要素が「介在」するか、各構成要素が他の構成要素を介して「連結」、「結合」または「接続」されていてもよいものと理解すべきである。
【0030】
以下では、本発明の幾つかの実施例による二次電池用負極材及びその製造方法を説明することとする。
【0031】
本発明の二次電池用負極材は、活物質、導電材およびバインダを含み、活物質は、高密度化したシリコン酸化物複合体を含む。
【0032】
活物質は、高密度化したシリコン酸化物複合体を含むことにより、二次電池の初期放電容量及び初期効率の性能を向上させる効果がある。
【0033】
シリコン酸化物複合体は、シリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子を含む。
【0034】
活物質におけるシリコン酸化物ナノ粒子は、シリコンの体積膨張を抑える緩衝の役割を担う。
【0035】
仮に活物質として、シリコン酸化物複合体ではない、シリコン酸化物ナノ粒子またはシリコンナノ粒子をそれぞれ単独で使用する場合、シリコンナノ粒子は、リチウムと反応して、300%以上の体積膨張が起こるため、二次電池の寿命特性を低下させるようになる。これによって、シリコン酸化物ナノ粒子またはシリコンナノ粒子を単独で使用する場合、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させ難いため、本発明のように、シリコン酸化物複合体を使用することが好ましい。
【0036】
前記シリコン酸化物ナノ粒子は、結晶質及び/又は非晶質であってもよく、前記シリコン(Si)ナノ粒子は、結晶質であってもよい。
【0037】
本発明におけるナノ粒子は、直径が1μm以下である、数nmから数百nmのナノ水準の直径を有する粒子を意味する。
【0038】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコンナノ粒子のそれぞれの直径は、ナノ粒子のそれぞれに含まれたシリコン結晶微粒子の直径に比べて、同一又はより大きい値を有していてもよい。
【0039】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコンナノ粒子のそれぞれの直径は、5~200nmであってもよく、例えば、10~150nm、20~100nm、30~50nm、40~50nmであってもよい。好ましくは、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコンナノ粒子の直径が互いに類似であるか同一であるものが、試料製造の側面から有利であるという利点がある。シリコン酸化物ナノ粒子とシリコンナノ粒子の直径が互いに類似であるか同一である場合、2種類のナノ粒子に基づくマイクロサイズのシリコン酸化物複合体に2種類のナノ粒子の分散性が確保された状態で、高密度化が行われ、電池性能が向上する特性を奏することができる。
【0040】
ナノ粒子の直径は、PSA(Particle Size Analyzer)分析装備を用いて測定することができる。
【0041】
シリコン酸化物複合体に含まれるシリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子のそれぞれは、シリコン結晶微粒子を有する。
【0042】
活物質は、シリコン酸化物複合体内に、互いに直径が異なるシリコン結晶微粒子が分散された構造を示す。具体的には、活物質は、シリコン酸化物の内部と表面に、互いに直径が異なるシリコン結晶微粒子が良く分散された構造を示すことができる。
【0043】
本発明における結晶微粒子とは、ナノ粒子をなす空間で、規則的に配列された格子をなすか、あるいは無秩序に配列された固体物質を言う。前記結晶微粒子は、結晶、結晶粒、結晶粒子などの同義語に使うことができる。
【0044】
シリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子に含まれる第1シリコン結晶微粒子と、シリコン(Si)ナノ粒子に含まれる第2シリコン結晶微粒子の直径は、互いに異なることが好ましい。そして、第1シリコン結晶微粒子の直径が第2シリコン結晶微粒子の直径よりも小さいのがより好ましい。
【0045】
本発明におけるシリコン結晶微粒子の直径(サイズ)は、二次電池の特性を向上させるために重要な要素である。
【0046】
仮に第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子の直径が同一であるか、第1シリコン結晶微粒子の直径が、第2シリコン結晶微粒子の直径よりも大きい場合、本発明で目的とする二次電池の特性を向上させるために不十分である問題点がある。
【0047】
本発明において、シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであるのが好ましい。例えば、第1シリコン結晶微粒子の直径は、10nm~20nmであってもよく、15~20nmであってもよい。
【0048】
シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであるのが好ましい。例えば、第2シリコン結晶微粒子の直径は、25~45nmであってもよく、30~40nmであってもよい。
【0049】
第1シリコン結晶微粒子の直径が3~20nmを満たし、第2シリコン結晶微粒子の直径が20~50nmを満たすことで、シリコン酸化物複合体内で、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子の均一性を確保することができる。
【0050】
シリコン結晶微粒子の直径は、X線回折法(XRD,Panalytical B.V(Netherlands)社のEmpyrean装備)を用いて測定することができる。例えば、XRDで結晶ピークにおけるFWHM(2Ө)値を測定し、その値を活用して、XRD半値幅法で結晶サイズを計算することができる。
【0051】
シリコン酸化物複合体内の第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子の重量比は、1:0.5~1:1であってもよく、例えば、1:0.8~1:1であってもよい。
【0052】
第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子の重量比が、1:0.5~1:1を満たすことで、負極材としてシリコン酸化物複合体が二次電池に適用されたとき、従来の二次電池に比べて初期放電容量が約10%以上、初期効率が約4%以上向上し得る。これによって、本発明の二次電池は、従来の二次電池に比べて寿命特性が向上し得る。
【0053】
ナノ粒子の重量比に関して、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子の重量比は、1:0.5~1:1であってもよく、例えば、1:0.8~1:1であってもよい。
【0054】
また、シリコン酸化物複合体内の酸素(O):シリコン(Si)のモル比は、0.5:1.0~1.0:1.0であってもよい。シリコンに対する酸素のモル比が0.5~1.0を満たすことで、二次電池の寿命特性をさらに改善させることができる。
【0055】
このように、活物質であって、シリコン酸化物複合体は、シリコン酸化物の内部と表面に、互いに直径が異なる第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子が分散された形態である。そして、シリコン酸化物複合体は、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子が単純混合した形態ではなく、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子が互いに結着して、高密度で複合化した形態であってもよい。
【0056】
シリコン酸化物複合体は、後述する製造方法のバインダ処理と段階的熱処理によって、高密度化し得る。原料物質であるナノ粒子と、高密度化したシリコン酸化物複合体の比表面積を比較すると、高密度化したものが比表面積の減少効果を示す。
【0057】
また、シリコン酸化物複合体が高密度で形成されることにより、二次電池の初期効率と寿命特性を向上させる効果がある。
【0058】
高密度は、比表面積(BET)によって決定することができ、シリコンの体積膨張を抑えることができる効果を提供する。
【0059】
シリコン酸化物複合体の比表面積は、1~5m2/gであってもよい。例えば、比表面積は、1~3m2/gであってもよい。
【0060】
シリコン酸化物複合体の比表面積は、ブルナウア-エトット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller;BET)式を用いた、窒素の吸着による比表面積の分析によって測定することができる(分析装備:BEL japan Inc,BELSORP-max)。
【0061】
これらの高密度化したシリコン酸化物複合体は、マイクロメートルサイズを有するのが好ましい。シリコン酸化物複合体がマイクロメートルサイズを有することにより、シリコン酸化物の内部と表面に、互いに直径が異なる第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子が均一に分散され得る。また、活物質の性能が向上しつつ、従来の二次電池に比べて初期放電容量が約10%以上、初期効率が約4%以上向上し得る。
【0062】
これによって、本発明の二次電池は、従来の二次電池に比べて寿命特性が向上し得る。
【0063】
シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)は、1~50μmであるのが好ましい。
【0064】
例えば、シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)は、1~45μmであってもよく、具体的には、1~40μm、1~20μm、3~10μmであってもよく、より具体的には、5~8μmであってもよい。
【0065】
シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)は、直径分布の50%基準での直径と定義することができる。平均直径(D50)は、PSA分析装備-BECKMAN COULTER life Sciences,LS 13 320 Particle Size Analyzerを用いて測定することができる。例えば、シリコン酸化物複合体を溶液に分散させた後、直径分布の50%基準でのシリコン酸化物複合体の平均直径を算出することができる。
【0066】
負極材を構成する活物質は、シリコン(Si)ナノ粒子の酸化を防止するために、表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を含むのが好ましい。
【0067】
シリコン酸化物複合体の表面に形成された炭素コーティング層は、HSPP(high softening point pitch)を活用して、不導体に近いSi複合体の表面に形成されて、伝導性の役割を行うことができる。また、炭素コーティング層は、シリコン酸化物複合体の安定性を高めて、水気及び酸素に対する反応性を抑える効果がある。また、炭素コーティング層は、シリコン酸化物複合体の保護膜の役割を担い、かつ、負極材と電解質との間の界面抵抗を低くして、時間による界面安定性を向上させることができる。
【0068】
これによって、炭素コーティング層が形成されたシリコン酸化物複合体を二次電池の負極材に適用すると、充放電効率が向上し、寿命特性が改善する効果がある。
【0069】
炭素コーティング層に含まれる第2炭素材は、シリコン酸化物複合体の表面全体に位置していてもよく、表面部分的に位置していてもよい。負極材の物性改善効果を考慮するとき、第2炭素材は、シリコン酸化物複合体の表面全体にわたって均一な厚さで形成されるのが好ましい。
【0070】
表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体100重量%に対して、シリコン酸化物複合体80~95重量%及び炭素コーティング層5~20重量%を含んでいてもよい。例えば、シリコン酸化物複合体90~95重量%及び炭素コーティング層5~10重量%を含んでいてもよい。炭素コーティング層(第2炭素材)の含量が5~20重量%を満たすことで、シリコン酸化物複合体の安定性を高め、負極材と電解質との間の界面抵抗を低くすることができる。
【0071】
また、炭素コーティング層5~20重量%を満たすことで、最終的に作られた負極材は、伝導性を十分示し、かつ、負極材が発揮する容量の低下が最小化し得る。負極材における炭素含量が高過ぎると、それほど複合体における容量を発揮するシリコン酸化物とシリコン(Si)の割合が減るからである。
【0072】
逆に、炭素コーティング層の含量が20重量%を超える場合、シリコン酸化物複合体の初期容量が低下する問題が発生し得る。
【0073】
炭素コーティング層の厚さは、0.1~10nmであってもよいものの、これに制限されるものではない。
【0074】
第2炭素材は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高軟化点ピッチのうち1種以上を含んでいてもよい。
【0075】
このうちでもピッチは、石油を蒸留して得た残留物を熱処理して作られたものであって、炭化収率が高く、不純物含量が少ない。これらのピッチは、二次電池の充放電効率を高めて、二次電池の寿命を増やす効果がある。
【0076】
高軟化点ピッチとは、軟化点が200~300℃であるピッチを言う。
【0077】
負極材を構成する活物質は、シリコン酸化物複合体を単独でも使用され得るが、第1炭素材と共に使用することもできる。
【0078】
活物質がシリコン酸化物複合体と第1炭素材を含む場合、二次電池の特性をさらに改善させることができ、導電性を高めて、寿命特性をさらに改善させることができる。
【0079】
特に、活物質間の電気伝導性を向上させ、電解質に対する電気化学的特性を向上させることができ、シリコン(Si)ナノ粒子の体積膨張を減少させて、二次電池の寿命を増加させることができる。
【0080】
第1炭素材は、通常、負極活物質に使用され得る天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などを含んでいてもよい。
【0081】
活物質内のシリコン酸化物複合体:第1炭素材の重量比は、1:1~1:7であってもよい。例えば、シリコン酸化物複合体:第1炭素材の重量比は、1:2~1:6であってもよく、1:3~1:5であってもよい。
【0082】
二次電池用負極材は、前記活物質と共に導電材、バインダを含んでいてもよい。
【0083】
導電材は、負極材に導電性を付与するために含んでいてもよく、化学変化を引き起こさないで、電気伝導性を有するものであれば、制限なく使用することができる。
【0084】
例えば、導電材は、第3炭素材、金属粉末、金属繊維、導電性ウイスカ(whisker)、金属酸化物、伝導性高分子のうち1種以上を含んでいてもよい。
【0085】
バインダは、活物質間の結着、活物質と集電体との接着力を向上させる役割を担い、負極材に通常に使用されるバインダのうちでも、水系バインダを含んでいてもよい。
【0086】
例えば、水系バインダは、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber,SBR)、再生セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素系ゴムのうち1種以上を含んでいてもよい。
【0087】
二次電池用負極材内の活物質:導電材:バインダの重量比は、100:1~25:1~25であってもよい。例えば、活物質:導電材:バインダの重量比は、100:5~20:5~20であってもよく、100:10~20:10~20であってもよい。
【0088】
このように、本発明の二次電池用負極材のうち活物質は、互いに直径が異なる第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子がシリコン酸化物に分散され、マイクロメートルサイズの高密度化したシリコン酸化物複合体を含むことにより、体積膨張を抑えるとともに、高容量を有する負極材を製造することができる。
【0089】
これによって、本発明の活物質は、エネルギー貯蔵用素材の特性を向上させることができる負極材に非常に効果的であり、非水系電解質を用いた二次電池に適用することができる。
【0090】
さらに、本発明の活物質は、IT素材、電気自動車などに二次電池用負極材として適用することができる。
【0091】
本発明の二次電池用負極材の製造方法について詳説することとする。
【0092】
図1は、本発明による二次電池用負極材の製造方法を示した手順図である。
【0093】
図1を参照すると、本発明による二次電池用負極材のうち活物質の製造方法は、シリコン酸化物(SiO
x、0.5<x≦2)ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子とを混合して、第1混合物を製造する段階(S110)と、バインダを添加して乾燥し、第2混合物を製造する段階(S120)と、熱処理して、シリコン酸化物複合体を製造する段階(S130)と、炭素をコーティングして、活物質を製造する段階(S140)と、を含む。
【0094】
その後、シリコン酸化物複合体と第1炭素材をさらに混合して、活物質を製造し、前記活物質、導電材およびバインダを混合して、スラリーを製造した後、集電体上に前記スラリーをコーティングすることにより、負極材を製造することができる。
【0095】
本発明の二次電池用負極材のうち活物質を製造する方法は、次のとおりである。
【0096】
先ず、シリコン酸化物(SiOx、0.5<x≦2)ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子とを混合して、第1混合物を製造する。
【0097】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子をエタノールなどのようなアルコール系溶媒及び/又は蒸留水に分散させた後、ボールミルによって粉砕して、第1混合物を設けることができる。
【0098】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子は、1:0.5~1:1の重量比で混合することができる。シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子の重量比が、この範囲を満たすことで、シリコン酸化物複合体内で、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子が互いに良く混じるため、高密度化に有利である利点を得ることができる。
【0099】
分散及び粉砕する段階は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。分散及び粉砕時間が1時間未満である場合、ナノ粒子の粉砕効果が不十分であり得る。逆に、10時間を超える場合、粉砕時間が長過ぎて、工程が非効率的であり得る。
【0100】
前述したように、シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるのが好ましい。
【0101】
シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであってもよく、シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであってもよい。
【0102】
シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子、シリコン結晶微粒子に関する事項は、前述と同様である。
【0103】
次いで、前記第1混合物にバインダを添加して乾燥し、第2混合物を製造する。そして、第2混合物を段階的に熱処理して、シリコン酸化物複合体を製造する。
【0104】
具体的には、第2混合物を段階的に熱処理する過程で、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子の表面にあるバインダ、及びナノ粒子の界面の間にあるバインダがバーンアウト(burnout)され、バインダのあった所に空隙が形成され、ナノ粒子同士の結着力を付与して、複合体が高密度化し得る。
【0105】
また、バインダは、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子の接着力を向上させて、シリコン酸化物複合体がマイクロメートルサイズに形成されるようにする。
【0106】
このように、バインダは、シリコン酸化物複合体の密度特性と気孔特性に影響を及ぼし、密度特性と気孔特性は、二次電池の特性に影響を及ぼすようになる。よって、二次電池の初期効率と寿命特性などを満たすために、第1混合物にバインダを添加して乾燥した後、次いで、第2混合物を熱処理することが重要である。
【0107】
バインダは、水系バインダであって、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber,SBR)、再生セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素系ゴムのうち1種以上を含んでいてもよい。好ましくは、バインダは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)のうち1種以上を含んでいてもよい。
【0108】
シリコン酸化物複合体の高密度化及びマイクロ化をいずれも満たすために、シリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対して、バインダ1~20重量部を添加することができる。例えば、バインダ1~10重量部を添加することができ、3~8重量部を添加することができる。
【0109】
第1混合物にバインダを添加した後は、ボールミルによって粉砕して、分散させた後、乾燥することができる。粉砕及び分散は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。
【0110】
このとき、乾燥したパウダー(粒子)をペレット化して、第2混合物を製造することができる。
【0111】
ペレット化によって、乾燥したパウダー(粒子)の直径に比べて、第2混合物のペレットの直径がさらに大きくてもよい。また、ペレット化によって、シリコン酸化物複合体の直径をマイクロ化することが有利である効果がある。
【0112】
パウダー(粒子)を圧縮してペレット化する段階は、材料を圧縮する方法で行うことができる。例えば、ペレット化は、ホットプレス、キャスティング、押出などで行うことができるものの、これに制限されるものではない。
【0113】
ペレットを含む第2混合物を段階的に熱処理して、シリコン酸化物複合体を製造する段階において、段階的熱処理は、次のように行うことができる。
【0114】
先ず、平均昇温速度1~5℃/minで、常温(25±1)から、500℃まで昇温する1段階、1段階の温度で、30分~3時間維持して熱処理する2段階、平均昇温速度10~20℃/minで、2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階、最後に、3段階の温度で、30分~3時間維持して熱処理する4段階によって、段階的熱処理を行うことができる。
【0115】
好ましくは、常温から450~550℃まで昇温する1段階、1段階と同じ温度範囲である450~550℃に維持する2段階、1150~1250℃まで昇温する3段階、及び前記3段階と同じ温度範囲である1150~1250℃に維持する4段階によって、ペレットを含む第2混合物を焼結することができる。
【0116】
500℃近くと1200℃近くまで昇温する間にも、該温度で第2混合物の熱処理が連続して行われる。
【0117】
特に、本発明は、ペレットを含む第2混合物を500℃近くで熱処理した後、これよりもさらに高い温度である1200℃近くで、最後の熱処理を行うことにより、シリコン酸化物複合体の高密度化を示すことができる。また、高密度化によってシリコン体積膨張を抑えて、二次電池の特性を向上させる効果がある。特に、最後の熱処理段階において、不均化反応(disproportionation)によって、シリコン酸化物ナノ粒子がSiO2とSiに分解されながらシリコン結晶微粒子を均一に分散することができる。
【0118】
かかる点で、本発明の段階的熱処理は、既存の一つの温度範囲で一回以上熱処理するか、互いに異なる温度範囲で計2回熱処理する段階とは、相違する。
【0119】
段階的に熱処理した後は、粗粉砕機で1次グラインドして、ボールミルによって粉砕し、平均直径(D50)が1~50μmである高密度のシリコン酸化物複合体を製造することができる。
【0120】
粉砕は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。シリコン酸化物複合体の平均直径(D50)に関する事項は、前述と同様である。
【0121】
次いで、前記シリコン酸化物複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する。
【0122】
炭素コーティングは、伝導性を付与するために行われ、シリコン酸化物複合体の安定性を高めて、水気と酸素に対する反応性を抑えるために行うことができる。
【0123】
第2炭素材を湿式コーティングして、800~1200℃及び非活性雰囲気で炭化させることにより、シリコン酸化物複合体の表面に保護膜の役割の炭素コーティング層を形成することができる。
【0124】
具体的には、湿式コーティングは、第2炭素材をTHFなどのような有機溶媒に溶解させる1段階、シリコン酸化物複合体にTHFなどのような有機溶媒を溶解させる2段階、前記1段階と2段階の両溶液を混ぜた後、溶媒のみを除去して乾燥させた後、炭化する3段階に行うことができる。
【0125】
炭素コーティングは、900~1100℃で行うことができる。非活性雰囲気は、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、及びキセノン(Xe)ガスのうち1種以上のガスを含んでいてもよい。
【0126】
表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体100重量%に対して、第2炭素材5~20重量%を添加することができる。例えば、第2炭素材5~10重量%を添加することができる。
【0127】
炭素コーティング層は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高軟化点ピッチのうち1種以上の第2炭素材を含んでいてもよい。
【0128】
表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を製造した後、シリコン酸化物複合体:第1炭素材を1:1~1:7の重量比でさらに混合して、活物質を製造することができる。
【0129】
シリコン酸化物と第1炭素材を含む活物質に関する事項は、前述と同様である。
【0130】
次いで、前記活物質:導電材:バインダを100:1~25:1~25の重量比で混合して、スラリーを製造した後、集電体上に前記スラリーをコーティングすることにより、負極材を製造することができる。
【0131】
活物質、導電材、バインダの重量比に関する事項は、前述と同様である。
【0132】
集電体は、二次電池に化学的変化を引き起こさない、かつ、導電性を有する素材であれば、制限なく使用することができる。集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルなどを使用することができる。
【0133】
このように、二次電池用負極材について、その具体的な実施例を検討すれば、次のとおりである。
【0134】
1.シリコン酸化物複合体の製造
実施例1
D50が100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiOx(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)と、D50が128nmであるシリコンナノ粒子(Si結晶微粒子の直径20~50nm)を1:1重量比で混合した後、エタノールを添加して、3時間位ボールミルで分散させた。前記SiOxのSi結晶微粒子:シリコンナノ粒子のSi結晶微粒子の重量比は、1:1である。
【0135】
その後、シリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対しSBRバインダ7.5重量部を入れて、3時間位ボールミルで分散させた後、乾燥させた。
【0136】
80℃のコンベクションオーブンで乾燥させ、乾燥したパウダーをペレット化した後に、4段階に熱処理した。1段階において、500℃まで1℃/minに昇温し、2段階において、500℃で、1時間維持した。3段階において、1200℃まで10℃/minに昇温し、最後の段階において、1200℃で、1時間維持しながら焼結処理した。
【0137】
焼結したペレットを粗粉砕機で1次グライドして、ボールミルし、高密度化したシリコン酸化物複合体を作った。
【0138】
製造されたシリコン酸化物複合体に炭素コーティングするために、最終粒子100重量%に対し、炭素含量が10重量%水準になるように、高軟化点ピッチ(HSPP、OCI開発品)を湿式コーティングした。湿式コーティングは、HSPPをTHFに溶解させ、複合体をTHFに溶解させた後、両溶液を混ぜて、蒸発器を活用し、35~40℃で、湯煎条件で蒸発乾燥させた。
【0139】
次いで、1000℃かつ窒素雰囲気で、炭化過程を経て、最終粒子として表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を得た。
【0140】
比較例1
1段階において、1200℃まで10℃/minに昇温し、次の段階において、1200℃で、1時間維持しながら焼結処理し、2段階に熱処理した点を除いては、実施例1と同じ方法で表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を得た。
【0141】
比較例2
出発物質として、D50が100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiOx(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)のみ使用した点を除いては、実施例1と同じ方法で表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を得た。
【0142】
比較例3
シリコン酸化物ナノ粒子にバインダを添加せず、1段階において、1200度まで10℃/minに昇温し、次の段階において、1200℃で、1時間維持しながら焼結処理して、2段階に熱処理した点を除いては、実施例1と同じ方法で表面が炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を得た。
【0143】
2.二次電池用負極材の製造
実施例1及び比較例1~3のそれぞれ炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体を人造黒鉛と1:4.9の重量比で乾式混合して、負極活物質を製造した。
【0144】
次いで、負極活物質:導電材(人造黒鉛):バインダ(CMC:SBR=3:7)を100:1.1:5.3の重量比で混合して、スラリーを製造した。
【0145】
製造されたスラリーを厚さが10μmである銅極板にコーティングした。
【0146】
3.物性評価方法及びその結果
実施例1、比較例1~3のシリコン酸化物複合体におけるシリコンに対する酸素のモル比が0.9~1.0を示した。
【0147】
下記の表1は、炭素コーティングされたシリコン酸化物複合体の比表面積、高密度化の有無及び直径を示したものである。下記の表2は、負極材の電気化学的特性を示したものである。
【0148】
1)比表面積:BEL japan Inc、BELSORP-maxを用いして、複合体の表面積を測定した。
【0149】
2)高密度化の有無:SEMを用いて、複合体の断面を目視で観察したとき、気孔(孔)が10%以下に存在すると「O」、10%を超えると「X」と表記した。
【0150】
3)直径:BECKMAN COULTER life Sciences,LS 13 320 Particle Size Analyzerを用いて、複合体の平均直径(D50)を測定した。
【0151】
4)初期放電容量及び初期効率:ハーフセル装置-TOSCAT-3100 装備を用いて、初期放電容量及び初期効率を測定した。
【0152】
5)寿命(@50サイクル):ハーフセルTOSCAT-3100装備を用いて、寿命特性を測定した。
【0153】
【0154】
【0155】
表1及び表2を参照すると、実施例1は、シリコン結晶微粒子の直径が他のシリコン酸化物ナノ粒子、シリコンナノ粒子およびバインダをいずれも4段階に熱処理したものであり、高密度化したマイクロサイズの複合体を製造したことが分かる。
【0156】
図2は、実施例1のシリコン酸化物複合体の断面写真であって、断面に集塊現象なしに良く高密度化したことを示す。
【0157】
他方、比較例1は、熱処理を2段階で行って、高密度化していない。
【0158】
比較例2は、シリコンナノ粒子なく、シリコン酸化物ナノ粒子のみ含んでいるため、負極材の初期放電容量は、相対的に低い値を示した。
【0159】
比較例3は、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコンナノ粒子を含むものの、高密度化しておらず、初期効率と寿命性能が相当低かった。
【0160】
図3は、比較例3のシリコン酸化物複合体の断面写真であって、高密度化しておらず、集塊現象があることを示す。
【0161】
よって、本発明の実施例1は、シリコン結晶微粒子の特徴、バインダ処理及び段階的熱処理条件を満たすことで、比較例1~3に比べて初期放電容量、初期効率および寿命特性がさらに改善したことを確認することができる。
【0162】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者にとって様々な変形を行えることは自明である。さらに、本発明の実施例を上述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【国際調査報告】