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  • 特表-二次電池用負極材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二次電池用負極材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240711BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240711BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240711BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240711BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506200
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2022020070
(87)【国際公開番号】W WO2023121089
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185025
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,スングワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウンヒェ
(72)【発明者】
【氏名】チ,ウンオク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材及びその製造方法について開示する。
本発明による表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、前記活物質は、マグネシウムがドープされた複合体を含み、前記マグネシウムがドープされた複合体は、シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を含み、前記マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~150nmであってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、
前記活物質は、マグネシウムがドープされた複合体を含み、
前記マグネシウムがドープされた複合体は、
シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を含み、
前記マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~150nmである、
二次電池用負極材。
【請求項2】
シリコン酸化物ナノ粒子:シリコン(Si)ナノ粒子:マグネシウム酸化物ナノ粒子の重量比は、100:80~120:5~30である、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項3】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なる、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項4】
前記複合体の平均直径(D50)は、1~18μmである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項5】
前記複合体の比表面積(BET)は、1~17m/gである、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項6】
前記活物質は、第1炭素材をさらに含む、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項7】
前記二次電池用負極材内の活物質:導電材:バインダの重量比は、100:0.1~5:1~20である、
請求項1に記載の二次電池用負極材。
【請求項8】
表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材の製造方法であって、
(a)シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を混合して、混合物を製造する段階;
(b)前記混合物にバインダを添加して成形し、成形物を製造する段階;
(c)前記成形物を熱処理して、マグネシウムがドープされた複合体を製造する段階;及び
(d)前記マグネシウムがドープされた複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する段階を含み、
マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~150nmである、
二次電池用負極材の製造方法。
【請求項9】
シリコン酸化物ナノ粒子:シリコン(Si)ナノ粒子:マグネシウム酸化物ナノ粒子の重量比は、100:80~120:5~30である、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項10】
前記シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なる、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項11】
上記(b)段階におけるシリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対して、バインダ5~20重量部を添加する、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項12】
上記(b)段階で成形して、成形物を製造する段階は、
圧縮してペレット状に製造するか、または噴霧乾燥して球状パウダーを製造する、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項13】
上記(c)段階の熱処理は、
(c1)常温から、500℃まで昇温する1段階;
(c2)上記1段階の温度に維持して熱処理する2段階;
(c3)上記2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階;
(c4)上記3段階の温度に維持して熱処理する4段階を含む、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項14】
前記複合体の平均直径(D50)は、1~18μmである、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【請求項15】
上記(d)段階の後、
(e)前記複合体:第1炭素材を1:1~1:7の重量比でさらに混合して、活物質を製造する段階;及び
(f)前記活物質:導電材:バインダを100:0.1~5:1~20の重量比で混合して、スラリーを製造する段階をさらに含む、
請求項8に記載の二次電池用負極材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の初期放電容量(IDC)、初期効率(ICE)および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の性能の向上は、正極材、負極材、電解液の構成要素に基づく。
【0003】
そのうち、負極材として主に使用される黒鉛は、理論容量が370mAh/gに制限されるため、黒鉛負極材に取り替えられる材料としてシリコン、スズ、ゲルマニウム、亜鉛などの非炭素系負極材の開発が行われている。
【0004】
非炭素系負極材のうちシリコンは、理論容量が4000~4200mAh/gに至り、黒鉛に比べてほぼ10倍以上の高容量を示すため、黒鉛に取り替えられる物質として注目されている。
【0005】
シリコンを活用した負極活物質は、既存の炭素を活用した負極活物質に比べて充放電容量を向上させて、エネルギー密度を高めることができる。しかし、リチウムイオンの吸蔵及び放出が行われる過程で、300%を越える体積膨張率を示すため、寿命特性が良くない。
【0006】
一方、SiO(0.5<x≦2)は、初期充放電過程で形成された酸化物によって高い機械的強度を有する。これによって、SiOを含む負極材は、充放電時に発生する体積膨張に対する安定性を有しており、二次電池の寿命特性を向上させる試みが多く行われている。
【0007】
しかし、シリコン酸化物SiO(0.5<x≦2)は、初期充電時に負極材に移動されたリチウムの一部が、放電時に正極材に戻らない非可逆反応によって、初期効率が低いという短所がある。
【0008】
近年、二次電池の初期効率を高めるために、シリコン酸化物SiOを金属リチウム粉末と反応させて、負極材を製造する技術が行われている。しかし、この技術は、二次電池の容量を減少させ、製造過程のうち、電極の製作時に活物質、バインダと共に、溶媒である蒸留水に分散させて作られたスラリーを銅極板上にコーティングする過程で、前記スラリーの安定性が落ちて、工業的に大量生産することは困難である。
【0009】
よって、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができ、かつ、安定的に大量生産可能な二次電池用負極材が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、緻密化した複合体を含む負極活物質を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、前記負極活物質を用いて二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる二次電池用負極材を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、安定的に大量生産可能な二次電池用負極材の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限らず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材であって、前記活物質は、マグネシウムがドープされた複合体を含み、前記マグネシウムがドープされた複合体は、シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を含み、前記マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~150nmであってもよい。
【0015】
シリコン酸化物ナノ粒子:シリコン(Si)ナノ粒子:マグネシウム酸化物ナノ粒子の重量比は、100:80~120:5~30であってもよい。
【0016】
前記複合体の平均直径(D50)は、1~18μmであってもよい。
【0017】
本発明による表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含む二次電池用負極材の製造方法であって、(a)シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を混合して、混合物を製造する段階;(b)前記混合物にバインダを添加して成形し、成形物を製造する段階;(c)前記成形物を熱処理して、マグネシウムがドープされた複合体を製造する段階;及び(d)前記マグネシウムがドープされた複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する段階を含み、マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~150nmであってもよい。
【0018】
上記(b)段階において、シリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対して、バインダ5~20重量部を添加することができる。
【0019】
上記(b)段階で成形して成形物を製造する段階は、圧縮してペレット状に製造するか、または噴霧乾燥して球状パウダーを製造することができる。
【0020】
上記(c)段階の熱処理は、(c1)常温から、500℃まで昇温する1段階;(c2)上記1段階の温度に維持して熱処理する2段階;(c3)上記2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階;(c4)上記3段階の温度に維持して熱処理する4段階を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による二次電池用負極材は、負極活物質としてマグネシウムがドープされて、緻密化した複合体を含むことにより、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させることができる効果がある。
【0022】
本発明による二次電池用負極材の製造方法は、複合体を含む負極活物質を安定的に大量生産することができる効果がある。
【0023】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による二次電池用負極材の製造方法を示した手順図である。
図2】実施例1の複合体をXRD(Malvern Panalytical社のEmpyean装備)で分析した結果である。
図3】本発明による実施例1~比較例3の複合体断面のSEMイメージ及びMg分布度である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明の説明にあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0026】
以下における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が、上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0027】
また、ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、上記構成要素は、互いに直接に連結されるかまたは接続されていてもよいものの、各構成要素の間に他の構成要素が「介在」するか、各構成要素が他の構成要素を介して「連結」、「結合」または「接続」されていてもよいと理解すべきである。
【0028】
以下では、本発明の幾つかの実施例による二次電池用負極材及びその製造方法を説明することとする。
【0029】
本発明の二次電池用負極材は、表面が炭素コーティングされた活物質、導電材およびバインダを含み、活物質は、マグネシウムがドープされて、緻密化した複合体を含む。
【0030】
活物質は、マグネシウム(Mg)がドープされて、緻密化した複合体を含むことにより、二次電池の初期放電容量及び初期効率の性能をさらに向上させる効果がある。
【0031】
マグネシウムがドープされた複合体は、シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を含む。
【0032】
活物質におけるマグネシウム酸化物(MgO)ナノ粒子は、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子と共に複合化して、二次電池の特性をさらに向上させることができる。
【0033】
マグネシウム酸化物ナノ粒子は、150nm以下のナノサイズを有するため、分散性に優れ、他のナノ粒子と良く混じり、かつ、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子との間にマグネシウムがドープされる効果を提供する。
【0034】
マグネシウムがドープされた複合体は、マグネシウムが少量添加されて、複合体の内部と外部にマグネシウムが均一に分散され、ナノ粒子の界面の間にマグネシウムが均一に入り込んでいることを意味する。
【0035】
活物質は、複合体内に少量のマグネシウムを含むことにより、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性をさらに向上させる効果がある。
【0036】
特に、マグネシウム酸化物ナノ粒子は、マイクロメートルサイズではない、30~150nmの直径を満たすこそ、二次電池の特性を向上させることができる。好ましくは、マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径は、30~130nmであってもよく、30~80nmであってもよい。
【0037】
仮にマグネシウム酸化物ナノ粒子の直径が30~150nmを外れるか、1μm以上である場合、Mgの分散特性が良くなくて、集塊現象が発生し、二次電池の特性を向上させ難い問題点が発生する。
【0038】
一方、複合体がマグネシウム酸化物(MgO)ナノ粒子の代わりに、窒酸マグネシウム(Mg(NO)粒子などを含む場合、二次電池の製造安定性と性能が低下する問題点が発生する。
【0039】
よって、本発明の複合体は、マグネシウム酸化物ナノ粒子を含むのが好ましい。
【0040】
二次電池の容量を示すことは、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子である。初期充放電で生成される固体電解質の境界面(solid electrolyte interface,SEI)と非可逆容量を減らすために、Mgソースを先にシリコン又はシリコン酸化物と反応させて、マグネシウムシリケート相を作り、非可逆容量を減らすことができる。
【0041】
このように、本発明におけるマグネシウム酸化物ナノ粒子は、不可逆容量を減らすドープの概念に使用されるため、マグネシウムの使いすぎは、電池自体の容量を低下させ得る。
【0042】
よって、複合体において、マグネシウム酸化物ナノ粒子の含量は、シリコン酸化物ナノ粒子の含量よりも少なく、シリコン(Si)ナノ粒子の含量よりも少ないのが好ましい。
【0043】
マグネシウム酸化物ナノ粒子の含量が、シリコン酸化物ナノ粒子の含量とシリコン(Si)ナノ粒子の含量よりもさらに少ない場合、上述した効果のほかも、MgO、Si、SiOナノ粒子同士が集塊現象なく良く混合されることにより、粒子の界面の間と粒子の内部にMgが均一に分布する効果がある。
【0044】
シリコン酸化物ナノ粒子:シリコン(Si)ナノ粒子:マグネシウム酸化物ナノ粒子の重量比は、100:80~120:5~30であってもよい。例えば、前記重量比は、100:90~110:10~20であってもよく、100:95~105:13~18であってもよい。
【0045】
活物質におけるシリコン酸化物ナノ粒子は、シリコンの体積膨張を抑える緩衝の役割を担う。
【0046】
仮に活物質として、複合体ではないシリコン酸化物ナノ粒子又はシリコン(Si)ナノ粒子をそれぞれ単独で使用すると、シリコン(Si)ナノ粒子は、リチウムと反応して、300%以上の体積膨張が起こるため、二次電池の寿命特性を急激に低下させ得る。このような短所を改善するために、シリコン酸化物ナノ粒子と共にシリコン(Si)ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0047】
このように、シリコン酸化物ナノ粒子又はシリコン(Si)ナノ粒子を単独で使用する場合、二次電池の初期放電容量、初期効率および寿命特性を向上させにくいため、本発明のように、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を含む複合体を使用することが好ましい。
【0048】
シリコン酸化物ナノ粒子は、結晶質及び/又は非晶質であってもよく、前記シリコン(Si)ナノ粒子は、結晶質であってもよい。
【0049】
シリコン酸化物ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子は、それぞれ直径が1μm以下である、数nmから数百nmのナノサイズの直径を有する粒子を意味する。
【0050】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子のそれぞれの直径は、ナノ粒子のそれぞれに含まれたシリコン結晶微粒子の直径に比べて、同一あるいはより大きい値を有していてもよい。
【0051】
シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子のそれぞれの直径は、5~1000nmであってもよく、例えば、10~800nm、20~600nm、30~400nm、40~200nmであってもよい。
【0052】
ナノ粒子の直径は、BECKMAN COULTER life Sciences,LS 13 320 Particle Size Analyzer 装備を用いて測定することができる。
【0053】
シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子及びシリコン(Si)ナノ粒子は、シリコン結晶微粒子を有する。
【0054】
活物質は、複合体内にマグネシウムが分布しながら、互いに直径が異なるシリコン結晶微粒子が分散された構造を示す。
【0055】
本発明における結晶微粒子は、ナノ粒子をなす空間で規則的に配列された格子をなすか、または無秩序に配列された固体物質を言う。前記結晶微粒子は、結晶、結晶粒、結晶粒子などの同義語に使うことができる。
【0056】
二次電池の特性は、シリコン結晶微粒子の直径(サイズ)によって異なり得る。
【0057】
シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子に含まれる第1シリコン結晶微粒子は、シリコン(Si)ナノ粒子に含まれる第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるのが好ましい。そして、第1シリコン結晶微粒子の直径が、第2シリコン結晶微粒子の直径よりも小さいのがより好ましい。
【0058】
仮に第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子の直径が、互いに同じであるか、第1シリコン結晶微粒子の直径が、第2シリコン結晶微粒子の直径よりも大きい場合、本発明で目的とする二次電池の特性を向上させるのに不十分である問題点がある。
【0059】
具体的には、シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであるのが好ましい。例えば、第1シリコン結晶微粒子の直径は、5~18nmであってもよく、7~16nmであってもよい。
【0060】
シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであるのが好ましい。例えば、第2シリコン結晶微粒子の直径は、25~45nmであってもよく、30~40nmであってもよい。
【0061】
第1シリコン結晶微粒子の直径が3~20nmを満たし、第2シリコン結晶微粒子の直径が20~50nmを満たすことで、二次電池の初期放電容量と初期効率を向上させ、安定した寿命特性を示すことが有利である利点を得ることができる。
【0062】
シリコン結晶微粒子の直径は、X線回折法(XRD,Malvern Panalytical社のEmpyean装備)を用いて測定することができる。例えば、XRDで結晶ピークにおけるFWHM(2&#1256;)値を測定し、その値を活用して、XRD半値幅法で結晶サイズを計算することができる。
【0063】
複合体内における第1シリコン結晶微粒子:第2シリコン結晶微粒子の重量比は、100:80~120であってもよい。例えば、前記重量比は、100:90~110であってもよく、100:95~105であってもよい。
【0064】
第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子の重量比が100:80~120を満たすことで、負極材として複合体が二次電池に適用されたとき、従来の二次電池に比べて初期放電容量、初期効率および寿命特性がさらに向上し得る。
【0065】
また、複合体内の酸素(O):シリコン(Si)のモル比は、0.5:1.0~1.0:1.0であってもよい。シリコンに対する酸素のモル比が0.5~1.0を満たすことで、二次電池の寿命特性をさらに改善させることができる。
【0066】
このように、活物質であって、複合体は、3種類のナノ粒子が均一に分布しながら、内部と表面に、互いに直径が異なる第1シリコン結晶微粒子と第2シリコン結晶微粒子が分散された形態であってもよい。
【0067】
そして、複合体は、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子が単純混合した形態ではなく、粒子同士が互いに混じり、高密度で複合化した形態であってもよい。
【0068】
複合体は、後述する製造方法のバインダ処理と段階的熱処理によって、高密度化し得る。複合体が高密度で形成されることにより、二次電池の初期効率と寿命特性をさらに向上させる効果がある。
【0069】
高密度は、比表面積(BET)によって決定することができ、シリコンの体積膨張を抑えることができる効果を提供する。
【0070】
複合体の比表面積は、1~17m/gであってもよい。例えば、比表面積は、3~10m/gであってもよく、3.3~4m/gであってもよい。
【0071】
比表面積が1~17m/gを外れる場合、複合体に空隙が多く形成されて、二次電池の特性を示すのに不十分であり得る。
【0072】
複合体の比表面積は、ブルナウア-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller;BET)式を用いた窒素吸着による比表面積の分析によって測定することができる(分析装備:BEL japan Inc,BELSORP-max)。
【0073】
これらの高密度化した複合体は、マイクロメートルサイズを有するのが好ましい。
【0074】
複合体がマイクロメートルサイズを有することにより、高密度化した複合体を形成することが有利である利点を得ることができる。
【0075】
複合体の平均直径(D50)は、1~18μmであるのが好ましい。
【0076】
例えば、複合体の平均直径(D50)は、3~15μmであってもよく、例えば、5~11μmであってもよい。
【0077】
複合体の平均直径(D50)は、直径分布の50%基準での直径と定義することができる。平均直径(D50)は、PSA分析装備-BECKMAN COULTER life Sciences,LS 13 320 Particle Size Analyzerを用いて測定することができる。例えば、複合体を溶液に分散させた後、直径分布の50%基準での複合体の平均直径を算出することができる。
【0078】
負極材を構成する活物質は、シリコン(Si)ナノ粒子の酸化を防止するために、表面が炭素コーティングされた複合体を含むのが好ましい。
【0079】
複合体の表面に形成された炭素コーティング層は、HSPP(high softening point pitch)を活用して、不導体に近いSi複合体の表面に形成されて、伝導性の役割を行うことができる。また、炭素コーティング層は、複合体の保護膜の役割を担い、かつ、負極材と電解質との間の界面抵抗を低くして、時間による界面安定性を向上させることができる。これによって、炭素コーティング層が形成された複合体を二次電池の負極材に適用すると、充放電効率が向上して、寿命特性の改善する効果がある。
【0080】
炭素コーティング層に含まれる第2炭素材は、複合体の表面全体に位置していてもよく、表面部分的に位置していてもよい。負極材の物性改善効果を考慮するとき、第2炭素材は、複合体の表面全体にわたって均一な厚さで形成されるのが好ましい。
【0081】
表面が炭素コーティングされた複合体100重量%に対して、複合体80~95重量%及び炭素コーティング層5~20重量%を含んでいてもよい。例えば、複合体90~95重量%及び炭素コーティング層5~10重量%を含んでいてもよい。炭素コーティング層(第2炭素材)の含量が5~20重量%を満たすことで、複合体の安定性を高め、負極材と電解質との間の界面抵抗を低くすることができる。仮に炭素コーティング層の含量が20重量%を超える場合には、二次電池の初期容量が低下する問題点がある。
【0082】
炭素コーティング層の厚さは、0.1~10nmであってもよいものの、これに制限されるものではない。
【0083】
第2炭素材は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高軟化点ピッチのうち1種以上を含んでいてもよい。
【0084】
ピッチは、石油を蒸留して得た残留物を熱処理して作られたものであって、炭化収率が高く、不純物含量が少ない。これらのピッチは、二次電池の充放電効率を高めて、二次電池の寿命を増やす効果がある。
【0085】
高軟化点ピッチは、軟化点が200~300℃であるピッチを言う。
【0086】
負極材を構成する活物質は、複合体単独でも使用することができるが、第1炭素材と共に使用することもできる。
【0087】
活物質が複合体と第1炭素材を含む場合、二次電池の特性をさらに改善させることができ、導電性を高めて、寿命特性をさらに改善させることができる。
【0088】
特に、活物質間の電気伝導性を向上させて、電解質に対する電気化学的特性を向上させることができ、シリコン(Si)ナノ粒子の体積膨張を減少させて、二次電池の寿命を増加させることができる。
【0089】
第1炭素材は、通常、負極活物質に使用される天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などを含んでいてもよい。
【0090】
活物質内の複合体:第1炭素材の重量比は、1:1~1:7であってもよい。例えば、複合体:第1炭素材の重量比は、1:2~1:6であってもよく、1:3~1:5であってもよい。
【0091】
二次電池用負極材は、前記活物質と共に導電材、バインダを含んでいてもよい。
【0092】
導電材は、負極材に導電性を付与するために含んでいてもよく、化学変化を引き起こさないで、電気伝導性を有するものであれば、制限なく使用することができる。
【0093】
例えば、導電材は、第3炭素材、金属粉末、金属繊維、導電性ウイスカ(whisker)、金属酸化物、伝導性高分子のうち1種以上を含んでいてもよい。
【0094】
バインダは、活物質間の結着、活物質と集電体との接着力を向上させる役割を担い、負極材に通常に使用されるバインダのうちでも水系バインダを含んでいてもよい。
【0095】
例えば、水系バインダは、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber,SBR)、再生セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素系ゴムのうち1種以上を含んでいてもよい。
【0096】
二次電池用負極材内の活物質:導電材:バインダの重量比は、100:0.1~5:1~20であってもよい。例えば、活物質:導電材:バインダの重量比は、100:0.5~3:2~7であってもよい。
【0097】
このように、本発明の二次電池用負極材のうち活物質は、マグネシウムがドープされて、高密度化したマイクロ複合体を含むことにより、体積膨張を抑えるとともに、高容量を有する負極材を製造することができる。
【0098】
これによって、本発明の活物質は、エネルギー貯蔵用素材の特性を向上させることができる負極材に非常に効果的であり、非水系電解質を用いた二次電池に適用することができる。
【0099】
さらに、本発明の活物質は、IT素材、電気自動車などに二次電池用負極材として適用することができる。
【0100】
本発明の二次電池用負極材の製造方法について詳説することとする。
【0101】
図1は、本発明による二次電池用負極材の製造方法を示した手順図である。
【0102】
図1を参照すると、本発明による二次電池用負極材のうち活物質の製造方法は、シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を混合して、混合物を製造する段階(S110)、バインダを添加して成形し、成形物を製造する段階(S120)、熱処理して、マグネシウムがドープされた複合体を製造する段階(S130)、及び炭素をコーティングして、活物質を製造する段階(S140)を含む。
【0103】
その後、複合体と第1炭素材をさらに混合して活物質を製造し、前記活物質、導電材およびバインダを混合して、スラリーを製造した後、集電体上に前記スラリーをコーティングすることにより、負極材を製造することができる。
【0104】
本発明の二次電池用負極材のうち活物質を製造する方法は、次のとおりである。
【0105】
先ず、シリコン酸化物(SiO、0.5<x≦2)ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子を混合して、混合物を製造する。
【0106】
シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子をエタノールなどのようなアルコール系溶媒及び/又は蒸留水に分散させた後、ボールミールによって粉砕して、混合物を設けることができる。
【0107】
マグネシウム(Mg)前駆体として、マグネシウム酸化物(MgO)ナノ粒子の代わりに水酸化マグネシウム(Mg(OH))粒子、窒酸マグネシウム(Mg(NO)粒子、マグネシウム(Mg)ナノ粒子、マグネシウムガスのうち1種以上を使用する場合、溶媒又は蒸留水に対する分散性が低くて、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子と共に分散溶液を製造し難い。また、製造の安定性にも問題が発生する。これによって、後述する段階における反応が十分行われず、物性の低下した複合体が得られる。
【0108】
よって、マグネシウム前駆体としてマグネシウム酸化物ナノ粒子を含むのが好ましく、30~150nmの直径を有するマグネシウム酸化物ナノ粒子を含むのがより好ましい。
【0109】
シリコン酸化物ナノ粒子:シリコン(Si)ナノ粒子:マグネシウム酸化物ナノ粒子の重量比は、100:80~120:5~30であってもよい。
【0110】
分散及び粉砕する段階は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。分散及び粉砕時間が1時間未満である場合、ナノ粒子の粉砕効果は、不十分であり得る。逆に、10時間を超える場合、粉砕時間が長すぎて、工程が非効率的であり得る。
【0111】
前述したように、シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、前記シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径と、互いに異なるのが好ましい。
【0112】
シリコン酸化物ナノ粒子の第1シリコン結晶微粒子の直径は、3~20nmであってもよく、シリコン(Si)ナノ粒子の第2シリコン結晶微粒子の直径は、20~50nmであってもよい。
【0113】
シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびシリコン結晶微粒子に関する事項は、前述と同様である。
【0114】
次いで、前記混合物にバインダを添加して成形し、成形物を製造する。
【0115】
混合物にバインダを添加すれば、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子の接着力が向上し、複合体の直径をマイクロ単位で形成することができ、緻密化した構造を形成することができる。
【0116】
後述する段階的に熱処理する過程で、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子の表面にあるバインダと、ナノ粒子の界面の間にあるバインダが、バーンアウト(burnout)しつつ、バインダのあった所に空隙が形成され、ナノ粒子同士の結着力を付与して、複合体が高密度化し得る。
【0117】
バインダは、複合体の密度特性と気孔特性に影響を及ぼし、密度特性と気孔特性は、二次電池の特性に影響を及ぼす。
【0118】
よって、二次電池の初期効率と寿命特性などを満たすために、混合物にバインダを添加して乾燥した後、次いでに成形物を熱処理することが重要である。
【0119】
バインダは、水系バインダであって、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber,SBR)、再生セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素系ゴムのうち1種以上を含んでいてもよい。
【0120】
好ましくは、バインダは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)のうち1種以上を含んでいてもよい。
【0121】
複合体の高密度化及びマイクロ化をいずれも満たすために、シリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対して、バインダ5~20重量部を添加することができる。例えば、バインダ5~18重量部を添加することができる。
【0122】
バインダが添加された混合物をマイクロメートルサイズのパウダー(成形物)に作るために、2種の方法のうち1種の方法を選択して使用することができる。
【0123】
一番目の方法は、バインダが添加された混合物をボールミルによって粉砕して分散させた後に乾燥し、次いでに乾燥したパウダーを圧縮して、ペレット状パウダーを製造することができる。
【0124】
粉砕及び分散は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。
【0125】
ペレット状パウダーの直径は、圧縮する前に乾燥したパウダーの直径よりもさらに大きく、前記ペレット状パウダーは、マイクロ化することが有利である効果を得ることができる。
【0126】
圧縮は、ホットプレス、キャスティング、押出などで行うことができるものの、これに制限されるものではない。
【0127】
二番目の方法は、噴霧乾燥して、球状パウダーを製造することができる。
【0128】
噴霧乾燥(spray drying)は、液体状態の材料を熱風によって急速に乾燥して、粉末状態に製造する技術であって、液体状態の材料を微粒子化する噴霧器、加熱器、乾燥機を含むスプレードライヤー装備によって行うことができる。
【0129】
噴霧乾燥は、実験条件、液体状態など、様々な条件によって粒子のサイズ、形態などを調節することができ、大量生産に適している。
【0130】
次いで、成形されたパウダーを段階的に熱処理して、マグネシウムがドープされた複合体を製造する。
【0131】
平均昇温速度1~5℃/minで、常温(25±1℃)から500℃まで昇温する1段階、1段階の温度で、30分~3時間維持して熱処理する2段階、平均昇温速度10~20℃/minで、2段階の熱処理温度から、1200℃まで昇温する3段階、最後に、3段階の温度で、30分~3時間維持して熱処理する4段階によって段階的熱処理を行うことができる。
【0132】
好ましくは、常温から、450~550℃まで昇温する1段階、1段階と同じ温度範囲である450~550℃に維持する2段階、2段階の熱処理温度から、1150~1250℃まで昇温する3段階、及び3段階と同じ温度範囲である1150~1250℃に維持する4段階によって成形物を焼結することができる。
【0133】
500℃近くと1200℃近くまで昇温する間にも、該温度で成形物の熱処理が連続して行われる。
【0134】
特に、本発明は、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン(Si)ナノ粒子、マグネシウム酸化物ナノ粒子を含む成形物を500℃近くで熱処理した後、これよりもさらに高い温度である1200℃近くで最後の熱処理を施すことにより、複合体の高密度化を示すことができ、高密度化によってシリコン体積膨張を抑えて、二次電池の特性を向上させる効果がある。特に、最後の熱処理段階における不均化反応(disproportionation)によって、シリコン酸化物ナノ粒子がSiOとSiに分解されながら、シリコン結晶微粒子を均一に分散することができる。
【0135】
かかる点で、本発明の段階的熱処理は、既存の一つの温度範囲で一回以上熱処理するか、互いに異なる温度範囲で、計二回熱処理する段階とは、相違する。
【0136】
ペレット状パウダーを用いる場合、段階的熱処理後、粗粉砕機で1次グラインドして、ボールミルによって粉砕し、平均直径(D50)が3~15μmである高密度の複合体を製造することができる。
【0137】
粉砕は、1~10時間行うことができ、例えば、1~5時間行うことができる。複合体の平均直径(D50)に関する事項は、前述と同様である。
【0138】
スプレードライを用いる場合には、グラインド及び粉砕過程を省略することができる。
【0139】
次いで、マグネシウムがドープされた複合体に炭素をコーティングして、活物質を製造する。
【0140】
炭素コーティングは、伝導性を付与するために行われ、複合体の安定性を高め、水分と酸素に対する反応性を抑えるために行うことができる。
【0141】
第2炭素材を湿式コーティングして、800~1200℃及び非活性雰囲気で炭化させることにより、複合体の表面に保護膜の役割を担う炭素コーティング層を形成することができる。
【0142】
具体的には、湿式コーティングは、第2炭素材をTHFなどのような有機溶媒に溶解させる1段階、シリコン酸化物複合体にTHFなどのような有機溶媒を溶解させる2段階、上記1段階と2段階の両溶液を混ぜた後、溶媒のみ除去して乾燥させた後、炭化する3段階に行うことができる。
【0143】
炭素コーティングは、900~1100℃で行うことができる。非活性雰囲気は、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス、及びキセノン(Xe)ガスのうち1種以上のガスを含んでいてもよい。
【0144】
表面が炭素コーティングされた複合体100重量%に対して、第2炭素材5~20重量%を添加することができる。例えば、第2炭素材5~10重量%を添加することができる。
【0145】
炭素コーティング層は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高軟化点ピッチのうち1種以上の第2炭素材を含んでいてもよい。
【0146】
表面が炭素コーティングされた複合体を製造した後、複合体:第1炭素材を1:1~1:7の重量比でさらに混合して、活物質を製造することができる。
【0147】
シリコン酸化物と第1炭素材を含む活物質に関する事項は、前述と同様である。
【0148】
次いで、前記活物質:導電材:バインダを100:0.1~5:1~20の重量比で混合して、スラリーを製造した後、集電体上に前記スラリーをコーティングすることにより、負極材を製造することができる。
【0149】
活物質、導電材、バインダの重量比に関する事項は、前述と同様である。
【0150】
集電体は、二次電池に化学的変化を引き起こさない、かつ、導電性を有する素材であれば、制限なく使用することができる。集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルなどを使用することができる。
【0151】
このように、二次電池用負極材について、その具体的な実施例を検討すると、次のとおりである。
【0152】
1.複合体の製造
実施例1
直径が50~100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiO(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)、直径が128nmであるシリコン(Si)ナノ粒子(Si結晶微粒子の直径20~50nm)、直径が33~66nmであるマグネシウム酸化物ナノ粒子を100:100:15の重量比で混合して、混合物を設けた。前記シリコン酸化物ナノ粒子のSi結晶微粒子:シリコンナノ粒子のSi結晶微粒子の重量比は、100:100である。
【0153】
蒸留水にシリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対しバインダ(SBR,CMC)5重量部を分散させた後、前記混合物を入れて、均質機(homogenizer)を用いて1200rpmで分散させた。
【0154】
次いで、スプレードライヤー装備((株)アインシステム)を用いて噴霧乾燥して、D10が2.07μm、D50が6.23μm、D90が11.13μmサイズの乾燥した球状パウダーを得た。乾燥した球状パウダーを4段階に熱処理した。1段階において、500℃まで1℃/minに昇温し、2段階において、500℃で1時間維持した。3段階において、1200℃まで10℃/minに昇温し、最後の段階において、1200℃で、5時間維持しながら焼結処理した。
【0155】
Mgがドープされた複合体に炭素コーティングするために、最終粒子100重量%に対し、炭素含量が10重量%水準になるように、高軟化点ピッチ(OCI 開発品)を湿式コーティングした。湿式コーティングは、HSPPをTHFに溶解させ、複合体をTHFに溶解させた後、両溶液を混ぜて、蒸発器を活用して、35~40℃で、湯煎条件で蒸発乾燥させた。
【0156】
次いで、1000℃及び窒素雰囲気で、炭化過程を経て、最終粒子として表面が炭素コーティングされた複合体を得た。
【0157】
比較例1
出発物質として、直径が50~100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiO(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)を使用し、CMCバインダを使用した点を除いては、実施例1と同じ方法で表面が炭素コーティングされた複合体を得た。
【0158】
比較例2
直径が50~100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiO(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)を設けた。
【0159】
蒸留水にシリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対しバインダ(CMC)5重量部を分散させた後、前記シリコン酸化物ナノ粒子を入れて、均質機を用いて1200rpmに分散させた。
【0160】
次いで、スプレードライヤー装備((株)アインシステム)を用いて噴霧乾燥して、D10が2.07μm、D50が6.23μm、D90が11.13μmサイズの乾燥した球状パウダーを得た。乾燥した球状パウダーを4段階に熱処理した。1段階において、500℃まで1℃/minに昇温し、2段階において、500℃で、1時間維持した。3段階において、1200℃まで10℃/minに昇温し、最後の段階において、1200℃で、5時間維持しながら焼結処理した。
【0161】
次いで、水酸化マグネシウムMg(OH)(シグマアルドリッチ)を蒸留水に分散させて、溶液を準備した後、湿式方法で前記焼結処理されたパウダーの外部にドープした。その後、乾燥させて、1200℃で熱処理し、マグネシウムが外部にドープされたマグネシウムシリケート(MgSiO)複合体を製造した。
【0162】
製造された複合体に炭素コーティングするために、最終粒子100重量%に対し、炭素含量が10重量%水準になるように、高軟化点ピッチ(OCI開発品)を湿式コーティングした。湿式コーティングは、HSPPをTHFに溶解させ、複合体をTHFに溶解させた後、両溶液を混ぜて、蒸発器を活用して、35~40℃で、湯煎条件で蒸発乾燥させた。
【0163】
次いで、1000℃かつ窒素雰囲気で、炭化過程を経て、最終粒子として表面が炭素コーティングされた複合体を得た。
【0164】
比較例3
直径が50~100nmであるシリコン酸化物ナノ粒子SiO(0.5<x≦2)(Si結晶微粒子の直径3~20nm)、直径が128nmであるシリコン(Si)ナノ粒子(Si結晶微粒子の直径20~50nm)、水酸化マグネシウムMg(OH)(シグマアルドリッチ)を100:100:27重量比で設けた。前記シリコン酸化物ナノ粒子のSi結晶微粒子:シリコンナノ粒子のSi結晶微粒子の重量比は、100:100である。
【0165】
蒸留水にシリコン酸化物ナノ粒子100重量部に対し、バインダ(SBR,CMC)5重量部を分散させた後、前記水酸化マグネシウムMg(OH)を入れて分散させた後、シリコン酸化物ナノ粒子とシリコン(Si)ナノ粒子を入れて、均質機を用いて1200rpmに分散させた。
【0166】
次いで、スプレードライヤー装備((株)アインシステム)を用いて噴霧乾燥して、D10が2.07μm、D50が6.23μm、D90が11.13μmサイズの乾燥した球状パウダーを得た。乾燥した球状パウダーを2段階に熱処理した。1段階において、1200℃まで10℃/minに昇温し、2段階において、1200℃で、1時間維持しながら焼結処理した。
【0167】
Mgがドープされた複合体に炭素コーティングするために、最終粒子100重量%に対し、炭素含量が10重量%水準になるように、高軟化点ピッチ(OCI開発品)を湿式コーティングした。湿式コーティングは、HSPPをTHFに溶解させ、複合体をTHFに溶解させた後、両溶液を混ぜて、蒸発器を活用して、35~40℃で、湯煎条件で蒸発乾燥させた。
【0168】
次いで、1000℃かつ窒素雰囲気で、炭化過程を経て、最終粒子として表面が炭素コーティングされた複合体を得た。
【0169】
2.二次電池用負極材の製造
実施例1及び比較例1~3のそれぞれ炭素コーティングされた複合体を、人造黒鉛と1:4.9の重量比で乾式混合して、負極活物質を製造した。
【0170】
次いで、負極活物質:導電材(人造黒鉛):バインダ(CMC:SBR=3:7)を100:1.1:5.3の重量比で混合して、スラリーを製造した。
【0171】
製造されたスラリーを厚さが10μmである銅極板にコーティングした。
【0172】
3.物性の評価方法及びその結果
下記の表1は、炭素コーティングされた複合体の気孔サイズ、比表面積、高密度化の有無、及び直径を示したものである。下記の表2は、負極材の電気化学的特性を示したものである。
【0173】
1)比表面積:BEL japan Inc、BELSORP-maxを用いして、複合体の表面積を測定した。
【0174】
2)高密度化の有無:SEMを用いて、複合体の断面を目視で観察したとき、気孔(孔)が10%以下に存在すると「O」、10%を超えると「X」と表記した。
【0175】
3)直径:BECKMAN COULTER life Sciences,LS 13 320 Particle Size Analyzerを用いて、複合体の平均直径(D50)を測定した。
【0176】
4)初期放電容量及び初期効率:ハーフセル装置-TOSCAT-3100 装備を用いて、初期放電容量及び初期効率を測定した。
【0177】
5)寿命(@50サイクル):ハーフセル装置-TOSCAT-3100装備を用いて、寿命特性を測定した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
表1及び表2を参照すると、実施例1は、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコンナノ粒子およびマグネシウム酸化物ナノ粒子をバインダと共に4段階に熱処理したものであって、Mgが均一にドープされたミクロサイズの複合体を製造したことが分かる。
【0181】
また、実施例1は、比表面積、高密度化の有無、複合体の平均直径にいずれも優れ、初期放電容量、初期効率および寿命特性にも相当優れる結果を示した。
【0182】
図2は、実施例1の複合体をXRD(Malvern Panalytical社のEmpyean装備)で分析した結果である。図2を参照すると、MgSiOのピークが観察されるため、複合体にMgOが存在することを確認することができる。
【0183】
図3は、本発明による実施例1~比較例3の複合体断面のSEMイメージ及びMg分布度である。表1の比表面積(BET)値が視覚的に一致するか確認するために、SEMイメージを確認した。Mg分布度は、SEM分析におけるEDX結果である。
【0184】
図3を参照すると、マグネシウム酸化物ナノ粒子を用いた実施例1が、Mgが最も均一にドープされており、緻密度が高いことを確認することができる。
【0185】
他方、比較例1は、シリコン酸化物ナノ粒子のみ含むものであって、複合体の高密度化が行われ、寿命特性は、実施例1に類似する値を示したが、初期放電容量と初期効率は、実施例1に比べて低い値を示した。
【0186】
比較例2は、シリコン(Si)ナノ粒子を含まないで、マイクロメートルサイズの水酸化マグネシウム粒子を含む例である。Mg前駆体として水酸化マグネシウム粒子を使用すると、水に対する分散性が低いため、シリコン酸化物と共に分散用溶液を製造しにくい問題点がある。このような理由により、水酸化マグネシウム前駆体をエタノールに分散させて、湿式方法でMgを複合体の外部にドープした。
【0187】
比較例2は、マイクロメートルサイズの水酸化マグネシウム粒子を使用したため、高密度化が行われておらず、水酸化マグネシウムの分散性が良くなくて、Mgが固まっていることが分かる。これによって、電気化学的特性が相対的に低い値を示した。
【0188】
比較例3は、マイクロメートルサイズの水酸化マグネシウム粒子を使用し、2段階に熱処理を施したため、粒子がマイクロ化せず、高密度化が行われておらず、比表面積値が相当高かった。また、マイクロメートルサイズの水酸化マグネシウム粒子を使用することによって、Mgが不均一にドープされた。
【0189】
かかる結果から、本発明の実施例1は、マグネシウム酸化物ナノ粒子の直径、バインダ処理および段階的熱処理条件を満たすことで、比較例1~3に比べて初期放電容量、初期効率および寿命特性がさらに改善したことを確認することができる。
【0190】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者にとって様々な変形を行えることは自明である。さらに、本発明の実施例を上述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】