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  • 特表-液体水素用の格納システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】液体水素用の格納システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
F17C3/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506469
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022071296
(87)【国際公開番号】W WO2023012045
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189175.9
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】アルナチャラム,アルルマニ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA04
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB03
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD02
3E172BD03
3E172BD05
3E172CA10
3E172CA24
3E172DA04
3E172DA09
3E172DA13
3E172DA15
3E172DA20
3E172EA03
3E172EB03
3E172EB10
(57)【要約】
本発明は、格納空間(2)を形成する1つ以上の壁を備える、液体水素(3)を貯蔵するための格納システムに関する。1つ以上の壁のうちの少なくとも1つは、内側バリア層(11)と、外側バリア層(12)と、第1のバリア層(11)及び第2のバリア層(12)を分離するために内側バリア層(11)と外側バリア層(12)との間に配置された1つ以上のスペーサ要素(14)とを備え、それによって、内側バリア層(11)及び外側バリア層(12)の間に真空層(13)のための空間を作り出す。外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素(3)を貯蔵するための格納システム(1)であって、前記格納システム(1)は、前記液体水素(3)を保持するための格納空間(2)を形成する1つ以上の壁を備え、前記格納空間(2)は、液体水素(3)を収容し、
前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つは、内側バリア層(11)と、外側バリア層(12)と、前記内側バリア層(11)と前記外側バリア層(12)との間に配置されて前記内側バリア層(11)と外側バリア層(12)とを分離し、それによって前記内側バリア層(11)と外側バリア層(12)との間に真空層(13)のための空間を形成する1つ以上のスペーサ要素(14)とを備え、
前記外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られ、
前記真空層(13)は、0.01 Pa未満の圧力を有する、格納システム(1)。
【請求項2】
前記内側バリア層(11)は、氷、好ましくは-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られている、請求項1に記載の格納システム(1)。
【請求項3】
前記外側バリア層(12)は、1つ以上の追加の断熱層によって前記外側が覆われている、請求項1又は2に記載の格納システム(1)。
【請求項4】
前記真空層(13)は、絶縁充填材で少なくとも部分的に充填される、請求項1~3のいずれか一項に記載の格納システム(1)。
【請求項5】
前記格納システム(1)は、前記内側バリア層(11)及び/又は前記外側バリア層(12)に埋め込まれた熱交換チューブ(21)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の格納システム(1)。
【請求項6】
前記格納システム(1)は、前記内側バリア層(11)及び/又は前記外側バリア層(12)に埋め込まれた、又は前記内側バリア層(11)及び/又は前記外側バリア層(12)と構造的に接続された補強手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の格納システム(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に載の格納システムを製造する方法であって、前記方法は、
a)突出距離で前記ベース層から突出する複数のスペーサ要素(14)を有するベース床要素(102)を提供することと、
b)前記突出距離よりも小さい厚さを有する前記外側バリア層(12)の第1の部分を前記ベース床要素(102)上に形成することであって、前記外側バリア層が第1の外周を有する、ことと、
c)前記複数のスペーサ要素(14)によって支持されている前記内側バリア層(11)の第1の部分を形成することであって、前記内側バリア層が第2の外周を有し、それによって、前記ベース床要素の前記平面に垂直な方向から見たときに、前記第2の外周が完全に前記第1の外周内にある、ことと、
d)前記第2の外周に沿って前記外側バリア層(12)の前記第1の部分に関連して前記内側バリア層の残りを形成することによって前記内側バリア層(11)を完成させることであって、前記内側バリア層(11)は液体水素(3)のための格納空間(2)を形成する、ことと、
e)前記第1の外周に沿って前記外側バリア層の前記第1の部分に関連して前記外側バリア層の残部を形成することによって、前記外側バリア層(12)を完成させることと、
f)前記格納空間(2)を液体水素(3)で充填することと、を含み、
前記外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られる、方法。
【請求項8】
前記内側バリア層及び前記外側バリア層の前記氷からなる部分を形成することは
・複数の氷ユニット(111)を製造すること、
・別の氷ユニット(111)に接続される氷ユニット(111)の所定の表面領域に局所加熱を適用し、それによって、それらの表面領域の前記最上層を溶融すること、
・互いに接続される氷ユニットを互いに対して位置決めし、前記表面領域の前記溶融した最上層が一緒に凍結することを可能にし、それによって氷からなる前記内側バリア層及び外側バリア層を形成すること、により行われる、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素を貯蔵及び/又は輸送するための格納システムに関する。さらに、本発明は、そのような格納システムを製造する方法に関する。格納システムは、液体水素供給チェーンにおける陸上及び海洋用途を含む、液体水素の貯蔵及び/又は輸送のために使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
水素は、石油精製、肥料産業及びいくつかの他の化学プロセスにおいて使用される重要な産業用ガスである。水素はさらに、特に輸送部門において、エネルギー担体として重要な役割を果たし得ることが予想される。水素は、グリーン電力(例えば、風力又は太陽光電力を使用して生成された電力)を使用する結果として電力網において発生する間欠性の問題に対処するためのエネルギーバッファとして使用することによって、エネルギー貯蔵媒体としての役割を果たすことがさらに期待される。
【0003】
体積利得により、ガス状水素は適切に液化され、次いで後の使用又は分配のために貯蔵され得る。液体水素の貯蔵は、格納システム内で行うことができる。格納システムは、陸上格納システムであってもよいし、海上格納システムであってもよい。分配は、船/タンカー(海上輸送用)又はトラック上に1つ以上の格納システムを提供することによって行われてもよい。
【0004】
水素を液化するために、それは沸点まで冷却される必要がある。常圧の水素では、これはほぼマイナス253°Cである。この比較的低温は、液体水素を収容するのに適するようにするために、格納システムに特定の要件を導入する。
【0005】
使用される材料は、液体水素を保持するためにそのような極低温で十分に強い必要がある。好ましくは、格納システムは液体水素を漏出させない。格納システムは、液体水素の安全で信頼できる貯蔵を提供するのに十分な構造的強度を有することが好ましい。格納システムを(例えば周囲温度から)極低温に冷却するとき、材料収縮による熱亀裂は回避されるべきである。
【0006】
効率的な貯蔵のために、極低温格納システムに貯蔵された液体水素の温度は、それが装填された温度に近いままであることが必要とされる。格納システムへの熱侵入は、運ばれた液体水素の沸騰をもたらし、生成されたガス状水素(ボイルオフガス(Boil Off Gas)-BOG)は、除去されない場合、格納システム内の圧力を増加させる。BOGを管理するための手段は、BOGを再挿入することができるように、BOGを再液化するための手段を含むことができる。しかしながら、再液化は、かなりの量の電力及び装置を必要とする。
【0007】
したがって、十分に断熱された格納システムを提供することによって、熱侵入を低減し、それによってBOGを低減することが好ましい。
【0008】
断熱性を高めるために、格納システムの壁をいくつかの異なる層から形成することによって、熱侵入を低減することができる。
【0009】
米国特許第3267685号には、低温で液体を貯蔵するための容器が開示されており、この容器は、剛性の外側シェルと、当該外側シェルを裏打ちする断熱材と、当該断熱材を裏打ちする複数の液体不透過性膜と、膜の一部に密封係合するシーラント材料を含む凍結シール構造と、を備える。シーラント材料は水であってもよい。液体水素の貯蔵については言及されていない。
【0010】
米国特許出願公開第2017/0030520(A1)号は、液体(LNGなど)を収容する容器のための壁構造体を作製する方法を開示しており、この方法は、複合流体を壁構造体のキャビティ内に注入することと、キャビティ内で複合流体を凍結させて壁構造体内に複合層を形成することとを含む。複合流体は水を含むことができる。液体水素の貯蔵については言及されていない。また、極低温氷の真空強化特性については言及されていない。
【0011】
韓国特許第2010 0022201号は、LNG運搬貨物のための断熱構造を開示している。
【0012】
米国特許第3136135号は、LNG、メタン、エタン、エチレン及びそれらの混合物などの低温液体貨物を輸送するためのタンカーを開示している。
【0013】
国際公開第2019/122757号には、液体水素などの液体を貯蔵するためのタンクが記載されており、中空ガラス微小球が使用されている。
【0014】
他の刊行物もまた、J.P.Sass e.a.によるGLASS BUBBLES INSULATION FOR LIQUID HYDROGEN STORAGE TANKS(2009)(https://www.techapps.com/hs-fs/hub/165629/file-18313642-pdf/documents/technical_paper_glass_bubbles_insulation_for_liquid_hydrogen_storage_tanks.pdf)及びJ.Fesmire,CryoTestLab,NASA/KSCによるRESEARCH AND DEVELOPMENT HISTORY OF GLASS BUBBLES BULK-FILL THERMAL INSULATION SYSTEMS FOR LARGE-SCALE CRYOGENIC LIQUID HYDROGEN STORAGE TANKS(09/2017)(https://ntrs.nasa.gov/cations/20180006604)のようなガラスバブルの使用に言及している。
【0015】
中国特許第201120842号には、液体水素燃料タンクが記載されている。タンク壁はいくつかの層によって形成され、その中に真空断熱層がある。
【0016】
真空層を生成することは、それ自体の課題を伴う。格納システムの層間に高レベルの真空層を生成することは、時間のかかるプロセスである。大規模な極低温格納システムの状況では、真空を作り出すのに数日かかる可能性がある。問題の1つは、真空層に面する層からの材料のガス放出である。これは、真空層中の少量のガスであっても熱を伝導するので、断熱目的のための真空の生成及び維持において課題を生じる。
【0017】
したがって、液体水素を貯蔵するための改良された格納システムを提供することが目的である。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、液体水素(3)を貯蔵するための格納システム(1)であって、液体水素(3)を保持するための格納空間(2)を形成する1つ以上の壁を備え、格納空間(2)が液体水素(3)を収容する、格納システム(1)を提供し、格納システム(1)は、
1つ以上の壁のうちの少なくとも1つは、内側バリア層(11)と、外側バリア層(12)と、内側バリア層(11)と外側バリア層(12)との間に配置されて内側バリア層(11)と外側バリア層(12)とを分離し、それによって内側バリア層(11)と外側バリア層(12)との間に真空層(13)のための空間を形成する1つ以上のスペーサ要素(14)とを備え、
外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られ、
真空層(13)は、0.01 Pa未満の圧力を有する。
【0019】
この点に関して、米国特許第3267685号などの上述の先行技術文献は、液体水素の貯蔵について言及しておらず、かつ/又は本発明による外側バリア層に使用される極低温氷の真空強化特性について理解していないことに留意されたい。
【0020】
極低温での氷の蒸気圧は非常に低いので、極低温氷(-150℃未満の温度で凍結した水)で作られた外側バリア層を使用する利点は、ガス放出の問題を克服する。これは、真空層における低圧の生成及び維持を容易にする。液体水素の装填及び存在は、真空をさらに改善する。これは、驚くほど簡単な方法で信頼性のある真空を達成し維持する非常に経済的な方法を可能にする。
【0021】
真空層という用語は、低圧、すなわち周囲圧力よりも十分に低い圧力を有する層を指すために使用される。真空層の圧力(Pvac)は、好ましくは0.01 Pa未満(Pvac<0.01 Pa)、より好ましくは0.001 Pa未満(Pvac<0.001 Pa)である。
【0022】
氷という用語は、固体状態に凍結された水(HO)を指すために使用される。氷は、いくらかの不純物又は気泡を含んでいてもよいが、このような不純物又は気泡は断熱性を損なうので、これらは最小限に抑えることが好ましい。
【0023】
格納システムが液体水素流体で満たされている場合、氷の温度は比較的低くなる。したがって、その場合、氷は極低温氷と呼ばれることもある。
【0024】
内側バリア層及び/又は外側バリア層は、少なくとも部分的に氷でできている。氷で作られた内側バリア層及び外側バリア層の部分は、例えば構造的理由(例えば内側バリア層及び外側バリア層の上部)又は特定の機能的理由(例えばマンホール、通気入口/出口、流体入口/出口などを形成するため)のために、他の材料によって形成されてもよい。
【0025】
少なくとも部分的に氷で作られた内側バリア層及び外側バリア層は、真空層に直接面する外面を有し、任意選択で、内側バリア層については、格納空間に直接面する外面を有する。直接面するという用語は、氷が真空層又は格納空間に適切に露出されることを示すために使用される。
【0026】
氷は、低密度を有する液体水素を支持するのに適した極低温での構造的特性を有する。極低温の氷は、5MPaを超える圧縮強度及び1MPaを超える引張強度を有する。さらに、極低温での氷の熱伝導率(3.4~5 W/mK)は、真空空間が極低温で乾燥され、断熱充填剤(ガラスバブル)が加えられる前に氷バリアを効果的に冷却するのに適している。
【0027】
用語「極低温」は、本明細書全体を通して、-150℃未満、-200℃未満、又はさらには-250℃未満の温度を指すために使用される。
【0028】
好ましくは、外側バリア層12は-150℃未満の温度に維持される。これは、真空層13内の真空が最良に維持され、それによって真空層13内に効果的な断熱レベルを作り出すという利点を有する。
【0029】
格納空間は、円筒形を含む任意の適切な形状を有することができ、円筒体軸は垂直又は水平であり、球形及び立方体である。格納空間の形状に応じて、適切な形状の1つ以上の壁が設けられてもよい。例えば、立方体形状の場合、4つの側壁、底壁及び上壁が設けられてもよく、一方、球状タンクの場合、1つの球状壁のみ、又は互いの上に配置された2つの半球壁が使用されてもよい。
【0030】
格納システムは、1つ以上の通気入口/出口(31)を備えてもよい。通気入口/出口は、格納空間内にBOGが蓄積するのを防止し、荷下ろし中及び荷積み中にそれぞれ蒸気又は補給ガスが格納空間に出入りできるようにするために設けられる。
【0031】
格納システムは、1つ以上の流体入口/出口(41)を備えてもよい。流体入口/出口は、組み合わせられてもよいが、代替として、別個の流体入口(複数可)及び流体出口(複数可)によって提供されてもよい。
【0032】
流体入口は、貯蔵タンク又は液化トレインなどの液体供給部に接続されるか又は接続可能である。
【0033】
流体出口は、好ましくは格納空間の外側に配置された排出ポンプに接続されるか、又は接続可能である。排出ポンプはエダクタシステムであることが好ましく、その理由は、そのようなシステムが、タンク配管構造内又はその近くで好ましくない高周波振動をほとんど又は全く生成しないからである。
【0034】
格納システムは、真空層のための空間と格納空間の外側との間の流体接続を形成する1つ以上の真空出口(51)をさらに備えることができ、真空出口は、初期真空を生成するため及び/又は真空をさらに維持するために真空空間からガス(空気)を送り出すために真空ポンプ(図示せず)に接続されているか又は接続可能である。
【0035】
液体水素という用語は、少なくとも95モル%の水素を含む液体を指すために使用される。その文脈において、極低温という用語は、-250℃未満(例えば-253°C)の温度を指すために使用される。液体水素は、周囲圧力又はそれに近い圧力であってもよい。
【0036】
一実施形態によれば、液体水素を収容する格納システムが提供され、内側バリア層(11)は、氷、好ましくは-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られる。
【0037】
内側バリア層は、一方の側が真空層に面し、他方の側が液体水素を保持する格納空間に面している。先に述べたように、氷で作られた内側バリア層及び外側バリア層は、使用時に(真空断熱充填剤、例えばガラスバブルに適した)蒸気圧が、液体水素のための伝統的な/従来の真空格納システム/LINジャケット格納システムよりも経済的かつエネルギー効率的な利点を提供する低温を有する。
【0038】
この概念からのより良い効率はまた、水素に適した金属構造及び製造方法を使用して製造の高いコストを回避することから生じる。
【0039】
経済的な真空維持を支持することに加えて、極低温氷は、真空層の形成及び製造の容易さに関する利点に加えて、液体水素のための有利な液体バリア層を形成する。
【0040】
本発明によれば、外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られる。
【0041】
真空層に面する外側バリア層を1 Pa未満の氷の蒸気圧に影響を与えるのに十分に低温にすることによって、外側層が1 Pa未満の蒸気圧を有するのに十分に低温になるので、ガス放出の問題が大幅に低減される。
【0042】
一実施形態によれば、内側バリア層(11)及び外側バリア層(12)の両方が、-150℃未満の温度を有する極低温氷から作製される、格納システムが提供される。
【0043】
極低温氷の内側バリア層と外側バリア層の両方を形成することによって、真空層の両側に極低温氷で形成された層が面することになり、それによってガス放出の問題が大幅に低減され、真空格納の信頼性が向上する。
【0044】
内側バリア層は液体水素の温度と実質的に等しい温度であってもよく、外側バリア層は液体水素の温度よりも高い温度であってもよい。内側バリア層の温度は、およそ-253°Cであってもよく、外側バリア層の温度は、およそ-173°Cであってもよい。外側バリア層は、ガス放出を最小限に抑えるのに十分低い温度であることが好ましい。好ましくは、外層の温度は、N及びOの縮合温度より高い。したがって、外側バリア層は、外側バリア層を比較的低い温度に保つために、1つ以上のさらなる受動断熱層で覆われてもよい。
【0045】
一実施形態によれば、外側バリア層(12)が、1つ以上の追加の断熱層によって外側が覆われている格納システムが提供される。
【0046】
このような断熱層は、外側バリア層を周囲温度よりも十分に低い温度に保ち、その結果、外側極低温氷壁温度を維持するための運転コストが最適化される。外側バリア層は、凍結水の蒸気圧が約13 Paであり、ガラスバブル真空断熱充填剤に好適である-40℃以下の温度で維持され得る。
【0047】
外層の氷を(タンクに必要なボイルオフに応じて)少なくとも-40℃以下に維持すれば十分であり得る。
【0048】
追加の断熱層は、発泡ポリスチレン又はポリウレタン発泡体(PUF)を含む、任意の好適な材料から作製されてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、真空層(13)が少なくとも部分的に断熱充填剤で充填されている格納システムが提供される。
【0050】
断熱充填剤は、ガラスバブル、パーライト、多層断熱(MLI)、又は任意の他の好適な充填剤であってもよい。
【0051】
ガラスバブルの使用は、真空状態を破壊することなく、真空層の断熱をさらに改善する。
【0052】
一実施形態によれば、格納システム(1)が、氷で作られた内側バリア層(11)及び/又は外側バリア層(12)と熱的に接続された熱交換チューブ(21)を備える、格納システムが提供される。
【0053】
熱交換器チューブは、例えば、内側バリア層及び/又は外側バリア層に埋め込まれてもよい。
【0054】
熱交換器チューブは、氷層を通って延びることができる。冷却流体(冷媒)は、氷層に冷却負荷を提供するために熱交換器チューブを通って流れることができる。氷層は、例えば、製造中を含む、格納システムが液体水素を含まない期間の間、保存温度(Tpres)に保たれてもよい。保存温度は、格納システムが液体水素を収容している期間中の氷層の保持温度(Thold)より高くてもよい。熱交換器チューブはまた、熱亀裂を防ぐために、格納システムを充填する前に氷層をThold(又はその付近)に冷却するために使用されてもよい。
【0055】
熱交換器チューブは、当業者に知られているように、冷凍サイクルの一部であってもよく、又は冷凍サイクルに接続可能であってもよい。冷凍サイクルは、圧縮機、凝縮器及び膨張器を含み、熱交換器チューブが蒸発器を形成する。
【0056】
一実施形態によれば、格納システム(1)は、氷で作られた内側バリア層(11)及び/又は外側バリア層(12)に埋め込まれた、又はそれと構造的に接続された補強手段(又は補強材)を備える、格納システムが提供される。
【0057】
氷の層の内側に設けられた補強手段を有することによって、これらのバリア層の構造的強度が改善される。補強手段は、スチールロッド、及び/又は内側バリア層及び/又は外側バリア層に埋め込まれた熱交換器チューブによって形成されてもよい。構造的剛性は、ドープされたICEによって改善され得る。氷は、内側バリア層及び/又は外側バリア層の構築段階で導入されるPTFEの削りくず/ストランドでドープされてもよい。
【0058】
一実施形態によれば、本発明による格納システムを製造する方法が提供され、方法は、
a)突出距離でベース層から突出する複数のスペーサ要素(14)を有するベース床要素(102)を提供することと、
b)突出距離よりも小さい厚さを有する外側バリア層(12)の第1の部分をベース床要素(102)上に形成することであって、外側バリア層が第1の外周を有する、ことと、
c)複数のスペーサ要素(14)によって支持されている内側バリア層(11)の第1の部分を形成することであって、内側バリア層が第2の外周を有し、それによって、ベース床要素の平面に垂直な方向から見たときに、第2の外周が完全に第1の外周内にある、ことと、
d)第2の外周に沿って外側バリア層(12)の第1の部分に関連して内側バリア層の残りを形成することによって内側バリア層(11)を完成させることであって、内側バリア層(11)は液体水素(3)のための格納空間(2)を形成する、ことと、
e)第1の外周に沿って外側バリア層の第1の部分に関連して外側バリア層の残部を形成することによって、外側バリア層(12)を完成させることと、
f)格納空間(2)を液体水素(3)で充填することと、を含み、
外側バリア層(12)は、-150℃未満の温度を有する極低温氷で作られる。
【0059】
この方法は、複数のスペーサ要素を有するベース床要素で作られた格納システムを使用するので、格納システムを製造する有利な方法を提供する。外側バリア層の底部は、外側バリア層の底部の上に延びるスペーサ要素を残してベース床要素の上に形成することができ、スペーサ要素の上に内側バリア層の底部を形成することを可能にする。
【0060】
ベース床要素は、コンクリート等の任意の好適な材料から形成されてもよい。
【0061】
ベース床要素は、外側バリア層の底部の容易な形成を可能にするために、実質的に上向きの壁要素を有してもよい。
【0062】
内側バリア層の底部の形成は、内側バリア層の底部の形成及び配置を可能にするために一時的なフレームワークを使用するなど、異なる方法で行うことができる。
【0063】
内側バリア層は氷で作られてもよく、外側バリア層は極低温氷で作られてもよく、又は内側バリア層及び外側バリア層の両方が極低温氷で作られてもよい。
【0064】
一実施形態によれば、氷で作られた内側バリア層及び外側バリア層のそれらの部分を形成することが
・複数の氷ユニット(111)を製造すること、
・別の氷ユニット(111)に接続される氷ユニット(111)の所定の表面領域に局所加熱を適用し、それによって、それらの所定の表面領域の外層を溶融すること、
・互いに接続される氷ユニットを互いに対して位置決めし、表面領域の溶融した最上層を一緒に凍結させ、それによって氷からなる内側バリア層及び外側バリア層を形成すること、により行われる方法が提供される。
【0065】
局所加熱は、マイクロ波又は他の手持ち式ホットワイヤ要素を使用することによって適用されてもよい。この技術は、凝固による融合とも呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】一実施形態による格納システムの側面図を概略的に示す。
図2】さらなる実施形態による格納システムの側面図を概略的に示す。
図3a】ベース要素を概略的に示す。
図3b】形成途中の格納システムの断面側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、液体天然水素のような液体水素3を格納空間2内に保持するための格納システム1を概略的に示す。格納システム1は、内側バリア層11及び外側層12を備える。内側層11は、液体水素3が存在する場合に液体水素3と直接接触する層である。内側層11は、外側層12の内側にある。
【0068】
内側バリア層11を外側層12から分離するために、スペーサ要素14が設けられている。図3a及び図3bを参照して以下に説明される代替的な実施形態によれば、スペーサ要素は、代替的に、内側バリア層11を支持するために外側バリア層12を貫通して突出してもよい。
【0069】
内側バリア層11と外側バリア層12との間には、真空層13を形成する空間が形成される。内側バリア層11及び外側バリア層12の一方又は両方は、氷から形成されてもよい。外側バリア層は、極低温氷で作られている。
【0070】
格納システム1は、格納空間2をさらに断熱するために、1つ以上のさらなる断熱層を備えてもよい。格納システム1は、格納システム1をさらに強化するために、1つ以上のさらなる支持層を備えてもよい。これらのさらなる断熱層及び支持層は示されていない。
【0071】
図1にも示されていない、真空層13には断熱充填剤が充填されてもよい。
【0072】
図2は、熱交換器チューブ21が内側バリア層11及び外側バリア層12に埋め込まれている代替実施形態を示す。この実施形態では、内側バリア層11及び外側バリア層12は、好ましくは極低温氷で作られる。熱交換器チューブは、熱交換器チューブ21が内側バリア層11及び外側バリア層12に冷却負荷を提供することができるように、冷却サイクルに接続される(図示せず)。
【0073】
図2はさらに、通気入口/出口31、流体入口/出口、及び真空出口51を示す。
【0074】
さらなる実施形態によれば、格納システムは、内側バリア層11及び/又は外側バリア層12に構造的安定性を加えるための補強手段を備える。補強手段は、例えば、氷で覆われた鋼製の独立した構造体の形態であってもよい。補強手段は、例えば、内側バリア層11及び/又は外側バリア層12の内側にある骨格によって形成されてもよい。補強手段はまた、内側バリア層11及び/又は外側バリア層12の外側に部分的に設けられてもよいが、好ましくは、格納空間及び真空層13のための空間と接触しない。
【0075】
図3aは、ベース床要素102から突出する複数のスペーサ要素14を有するベース床要素102を備えるベース要素100を概略的に示す。ベース要素100は、外側バリア層12の外周を画定するベース床要素102の外周に沿って直立壁要素101をさらに備える。
【0076】
図3bは、形成途中の格納システムの断面側面図を概略的に示す。外側バリア層12の底部は、ベース床要素102上に形成され、外側バリア層12の直立壁は、壁要素101に対して形成される。
【0077】
内側バリア層11の底部が形成され、スペーサ要素14によって支持される。
【0078】
図3A及び図3Bに示す実施形態は、内側バリア層11及び外側バリア層12の両方が極低温氷で形成されているが、上述したように、内側バリア層11及び外側バリア層12の一方のみが(極低温)氷で形成されてもよいことが理解される。
図1
図2
図3a
図3b
【国際調査報告】