(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】液体ビール濃縮物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12C 12/00 20060101AFI20240711BHJP
C12H 3/00 20190101ALI20240711BHJP
C12H 6/00 20190101ALI20240711BHJP
C12C 11/11 20190101ALI20240711BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C12C12/00
C12H3/00
C12H6/00
C12C11/11
C12C5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506717
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022071818
(87)【国際公開番号】W WO2023012217
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508343478
【氏名又は名称】ハイネケン・サプライ・チェーン・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Heineken Supply Chain B.V.
【住所又は居所原語表記】Burgemeester Smeetsweg 1,NL-2382 PH Zoeterwoude, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブローウェル、エーリク・リシャルト
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ、アウグスティヌス・コルネリウス・アルデホンデ・ペトリュス・アルベルト
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128CP16
(57)【要約】
本発明は、0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを提供するステップと;ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液体とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップとを含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法に関する。本方法は、操作が比較的容易であると同時に、小さな有機分子(例えば、酸)の損失が効果的に最小限に抑えられるという利点を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを提供するステップと;
・ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・前記低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法。
【請求項2】
前記低アルコールビールが、
・3~12%ABVのエタノール含有量を有するアルコールビールを提供するステップと;
・蒸留の手段によって前記ビールからエタノールを除去し、低アルコールビール及びエタノール含有蒸留物を製造するステップと
によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコール液が、60~100重量%のエタノール含有蒸留物を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低アルコールビールが、エタノール産生が制限された酵母発酵を使用して製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
膜分離が、1.6MPa、25℃、及び回収率15%で2,000mg/Lのグルコース水溶液を使用して測定を行った場合に、グルコース阻止率が80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の膜を使用して実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
膜分離が、10.3バール、25℃、pH8、及び回収率15%で2000mg/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用して測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の塩化ナトリウム阻止率を有する膜を使用して実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
膜分離が6~80バールの圧力で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
逆浸透の手段によって前記低アルコールビールから水を除去する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記低アルコールビールが、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、0~10mg/Lのホップ酸を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコール液が、50~2,000mg/Lの濃度でホップ酸を含有し、前記ホップ酸が、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低アルコールビール濃縮物と前記アルコール液とを7:1~1:1の重量比で組み合わせる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低アルコールビール濃縮物が、250~3,000μg/Lのリボフラビンを含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコール液が、エタノール1kg当たり50~2,000mgの酢酸エチルを含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液体アルコールビール濃縮物が、1回分用カプセル又は容器内に充填される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる液体アルコールビール濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを提供するステップと;
・ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、前述の方法によって得られる液体ビール濃縮物にも関する。
【背景技術】
【0003】
Sodastream(登録商標)など、濃縮シロップから炭酸飲料を調製して分注するための家庭用器具の人気が急速に高まっている。これらの器具は、水を炭酸化し、炭酸水をフレーバーシロップと混合することによって炭酸飲料を製造する。これらの器具によって提供される高い融通性と利便性を考慮すると、同様の器具を使用してビールを製造できる利用可能なビール濃縮物を有することが望ましいであろう。
【0004】
ビールは典型的には90%を超える水を含有するので、ほとんどの水を除去することによってビールはかなり濃縮され得る。濃縮物からビールを製造する利点は、当該技術分野において認識されている。しかしながら、高品質のビールを製造するために好適に使用され得るビール濃縮物の製造は、困難な課題である。
【0005】
まず第一に、フレーバー物質、色、及び/又はフォームヘッドの形成と安定に寄与するビール成分の損失を避けるために、選択的に水が除去されるべきである。さらに、水を除去する間、溶質(例えば、タンパク質、糖)の沈殿を避けなければならない。
【0006】
米国特許第4,265,920号明細書は、
(a)蒸留工程によって得られるアルコール及びより揮発性の香気成分を含有する蒸気が凝縮器内で凝縮される、強減圧での蒸留工程によって、実質的に全てのアルコール及びより揮発性の香気成分を水溶液の大部分から分離する第1のステップと、
(b)ステップ(a)で残存する香気成分を溶液中に保持したまま凍結濃縮工程で水を除去し、ステップ(a)で得られた水溶液を濃縮する第2のステップと、
(c)ステップ(a)で得られたアルコール及びより揮発性の香気成分を含有する凝縮液と、ステップ(b)で得られた濃縮物とを混合する第3のステップと
を含む、水を選択的に除去することによって、不揮発性成分に加えてアルコール及び少量の揮発性香気成分を含有するアルコール飲料水溶液を濃縮する方法を記載している。
【0007】
国際公開第2016/083482号パンフレットは、
a)ビール又はシードル(1)をナノ濾過(A)又は逆浸透を含む第1の濃縮工程に供し、アルコール量に対して補正された密度測定から計算して、20%(w/w)以上の濾過不能な化合物の濃度によって特徴付けられる残留液(2)と、アルコール及び揮発性フレーバー成分を含む画分(3)とを得るステップと;
b)アルコール及び揮発性フレーバー成分を含む画分(3)を、凍結濃縮、分画、好ましくは蒸留、又は逆浸透からなる次の濃縮工程(B)に供し、アルコール及び揮発性フレーバー成分からなる濃縮画分(4)と残余画分(5)とを得るステップと;
c)a)からの残留液(2)と、b)からのアルコール及び揮発性フレーバー成分を含む濃縮画分(4)とを組み合わせる(C)ステップと
を含む、ビール濃縮物の製造方法を記載している。
【0008】
国際公開第2018/134285号パンフレットは、
A)ビール又はシードル(1)を第1の濃縮工程に供し、残留液(2)と、アルコール(3a)及び揮発性フレーバー成分(3b)を含む透過液(3)とを得るステップと、
B)透過液(3)を吸着工程に供し、それによって揮発性フレーバー及びアルコールを含有する透過液が、吸着ユニット上又は吸着ユニット内を通過するステップと、
C)さらなる回収工程で吸着ユニットからフレーバー成分(3b)を回収するステップと、
D)残留液(2)とフレーバー成分(3b)とを組み合わせるステップと
を含む、濃縮物の製造方法を記載している。
【0009】
米国特許出願公開第2016/230133号明細書は、
・アルコール飲料を膜処理に供し、それによって少なくとも一部の水とアルコールが膜を通過して透過液の一部となり、アルコール飲料の他の成分が膜を通過せず残留液の一部となるステップと;
・残留液中の水を凍結させて氷を形成するステップと;
・残留液から氷を除去して水分含量を低減し、固形分濃度が少なくとも30%でアルコール濃度が20%以下の飲料濃縮物を形成するステップと
を含む、アルコール飲料から濃縮物を調製する方法を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、低アルコールビールを膜分離に供して低アルコールビール濃縮物を製造し、この低アルコールビール濃縮物を引き続いてアルコール液と組み合わせて液体アルコールビール濃縮物を製造する、液体アルコールビール濃縮物の製造方法を開発した。
【0011】
より具体的には、本発明は、
・0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを提供するステップと;
・ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法に関する。
【0012】
ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透で使用される膜は、水と場合によっては一価のイオン及び非常に小さな有機分子以外の、低アルコールビールの実質的に全ての成分を保持する。したがって、膜分離は、ビールの味、口当たり、及び安定性に重要な成分が、低アルコールビール濃縮物中に効果的に保持されるという利点を提供する。
【0013】
本方法では、低アルコールビールが膜分離に供されるという事実により、逆浸透膜を使用してアルコールビール濃縮物を単段階で製造する場合のように、実質的に全てのエタノールを保持する膜を用いる必要はない。本方法はまた、ナノ濾過を使用して低アルコールビール濃縮物及びアルコール含有透過液を製造する場合に必要となる、ほとんどのエタノールが膜を通過できるカットオフを有する膜の使用を必要としない。
【0014】
結果として、本方法の膜分離工程は操作が比較的容易であると同時に、小さな有機分子(例えば、酸)の損失が効果的に最小限に抑えられる。
【0015】
本発明はさらに、前述の方法によって得られる液体アルコールビール濃縮物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による液体アルコールビール濃縮物を含有する、1回分用カプセルを調製する方法の概略図を提供する。
【
図2】本発明による1回分用カプセルを含有する、飲料調製装置の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明の一態様は、
・0~1%ABVのエタノール含有量を有する低アルコールビールを提供するステップと;
・ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法に関する。
【0018】
本明細書の用法では「ビール」という用語は、任意選択的にホップ添加された酵母発酵麦芽飲料を指す。ビールは通常、
・大麦麦芽、任意選択的に補助穀物、及び水を含む混合物をすり潰してマッシュを製造するステップと;
・マッシュを麦芽汁と使用済み穀物に分離するステップと;
・麦芽汁を沸騰させて煮沸麦芽汁を製造するステップと;
・煮沸麦芽汁を生きた酵母で発酵させ、発酵麦芽汁を製造するステップと;
・発酵麦芽汁を1つ又は複数のさらなる工程段階(例えば、熟成及び濾過)に供して、ビールを製造するステップと;
・ビールを、例えば、瓶、缶又は樽などの密閉容器に詰めるステップと
の基本工程からなる工程で製造される。
【0019】
麦芽汁の煮沸中にホップ又はホップ抽出物を添加して、ビールに苦味とフローラルな果物香を与え得る。
【0020】
本明細書の用法では「ビール濃縮物」という用語は、例えばナノ濾過、逆浸透、正浸透の手段によって水を除去したビールを指す。
【0021】
本明細書の用法では「膜分離」という用語は、供給ストリームを膜に通過させ、透過液及び残留液として知られる2つの個別の流れに分離することによって、分子を分離する分離法を指す。膜分離の例としては、ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透が挙げられる。
【0022】
本明細書の用法では「蒸留」という用語は、低アルコールビールを沸騰させ、凝縮後に蒸発した成分を収集することによってエタノールを除去することを指す。「蒸留」という用語は、真空蒸留並びに浸透蒸留を包含する。
【0023】
本明細書の用法では「カプセル」という用語は、本発明による2つの液体成分を別々に保持するのに適した、区画化された容器を指す。
【0024】
本明細書の用法では「1回分用」という用語は、「モノポーション」又は「単位用量」の同義語であり、再構成ビールの1杯分を調製するのに十分な量のビール濃縮物及びアルコール液を含むカプセルを指す。典型的には、再構成ビールの1杯分は120ml~1000mlの範囲である。
【0025】
本明細書の用法では「遊離アミノ窒素」という用語は、EBC法9.10.1-分光光度法(IM)よるビール中の遊離アミノ窒素によって測定される、個々のアミノ酸と小型のペプチドとの合計濃度を指す。
【0026】
本明細書に記載されている酸の濃度は、特に明記されない限り、これらの酸の溶解塩、並びにこれらの同じ酸及び塩の解離型も含む。
【0027】
本明細書の用法では「イソα酸」という用語は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、プレイソフムロン、ポストイソフムロン及びそれらの組み合わせの群から選択される物質を指す。「イソα酸」という用語は、様々な立体異性体(シスイソα酸及びトランスイソα酸)を包含する。イソα酸は典型的には、沸騰した麦芽汁にホップを添加することでビール中に生成される。それらは、予め異性化されたホップ抽出物の形態でビールに導入されてもよい。イソα酸は強烈な苦味があり、水中での推定閾値はおよそ6ppmである。
【0028】
「水素化イソα酸」という用語は、ジヒドロイソα酸、テトラヒドロイソα酸、ヘキサヒドロイソα酸、及びそれらの組み合わせから選択される物質を指す。
【0029】
本明細書の用法では「フルポン」という用語は、コフルポン、n-フルポン、アズルポン、及びそれらの組み合わせから選択される物質を指す。フルポンは、ホップβ-酸の酸化生成物である。
【0030】
本方法で膜分離に供される低アルコールビールは、好ましくは0~0.5%ABV、より好ましくは0~0.3%ABV、なおもより好ましくは0~0.1%ABV、最も好ましくは0~0.05%ABVのエタノール含有量を有する。
【0031】
本方法で用いられる低アルコールビールは、典型的には、糖類、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、リボフラビン、遊離脂肪酸、及び酢酸エチルと酢酸イソアミルと酢酸フェニルエチルとアセトアルデヒドなどの揮発性フレーバー物質を含有する。
【0032】
低アルコールビールのリボフラビン含有量は、好ましくは40~1,000μg/L、より好ましくは60~800μg/L、最も好ましくは100~600μg/Lの範囲内である。
【0033】
低アルコールビールは、好ましくは20~1,500μg/L、より好ましくは40~1,200μg/L、最も好ましくは50~800μg/Lのリノール酸を含有する。
【0034】
リノール酸に加えて、低アルコールビールは典型的には、オレイン酸及び/又はα-リノレン酸などの他の脂肪酸も含有する。オレイン酸は、低アルコールビール中に、好ましくは60~900μg/L、より好ましくは80~700μg/L、最も好ましくは100~600μg/Lの濃度で存在する。
【0035】
α-リノレン酸は、低アルコールビール中に、好ましくは20~800μg/L、より好ましくは40~600μg/L、最も好ましくは50~500μg/Lの濃度で存在する。
【0036】
低アルコールビールの遊離アミノ窒素(FAN)含有量は、好ましくは8~400mg/L、より好ましくは12~300mg/Lの範囲、最も好ましくは20~250mg/Lの範囲である。
【0037】
低アルコールビールは、好ましくは0.5~6g/L、より好ましくは1~5.5g/L、最も好ましくは2~5g/Lのマルトテトラオースを含有する。
【0038】
好ましくは、低アルコールビールは、0~1g/L、より好ましくは0~0.5g/L、最も好ましくは0.05~0.2g/Lの濃度でマルトースを含有する。
【0039】
低アルコールビールは、好ましくは0.1~4g/L、より好ましくは0.2~3.5g/L、最も好ましくは0.4~3g/Lの濃度でマルトトリオースを含有する。
【0040】
好ましくは、低アルコールビールは、10~500mg/Lの酢酸、より好ましくは20~300mg/Lの酢酸、最も好ましくは25~200mg/Lの酢酸を含有する。
【0041】
イソα酸、並びに水素化α酸と酸化α酸(フルポン)は、消費者に評価されるビールの心地よい苦味に寄与する。低アルコールビール濃縮物中のホップ酸の溶解度は非常に低いので、本発明の方法では、これらのホップ酸をアルコール液中に組み込むことが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、低アルコールビールは、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択されるホップ酸を0~10mg/L、より好ましくは3mg/L未満、最も好ましくは1mg/L未満含有する。
【0042】
本発明の一実施形態では、低アルコールビールは、
・3~12%ABVのエタノール含有量を有するアルコールビールを提供するステップと;
・好ましくは蒸留の手段によってビールからエタノールを除去し、それによって低アルコールビール及びエタノール含有蒸留物を製造するステップと
によって製造される。
【0043】
前述の実施形態に従って出発原料として使用されるアルコールビールは、好ましくは3.5~10%ABVのエタノール含有量を有し、より好ましくは4~8%ABVのエタノール含有量を有する。
【0044】
脱気後に測定されるアルコールビールのpHは、好ましくは3.5~5.5の範囲、より好ましくは3.8~5.2の範囲、最も好ましくは4.0~5.0の範囲である。
【0045】
好ましい実施形態では、アルコールビールは、アルコライザー法による測定で、4~17%(m/m)、より好ましくは7~15%(m/m)、最も好ましくは9~14%(m/m)の原エキス濃度を有する。原エキス濃度は、Anton Paar GmbHのAlcolyzer Beer Analyzing Systemを使用して測定され得る。アルコライザープログラムでは、原エキス、P(%(m/m)単位)がBallingの式に従って計算される:
原エキス=100×(2.0665×A+ER)/(1.0665×A+100)
式中、
A=Alcolyzer Beer Analyzing Systemによって測定されたビールのアルコール含有量、%(m/m)単位;
ER=ビールの実抽出物、%(m/m)単位。
実抽出物、ER[%(m/m)単位]は、同じGoldiner、Klemann、及びKaempfの表を使用したTabarie式(Goldiner et al.,Alkohol-,Stammwuerze-und Korrektionstafel,Berlin,Institute fuer Gaerungsgewerbe,1996)によって判定された20℃での抽出物密度から計算される。Alcolyzer Beer Analyzing Systemで使用されるTabarie式は以下の通り:
ρextract(20℃)=ρsample(20℃)+ρwater(20℃)-ρalcohol(20℃)
式中、
ρextract(20℃)=20℃での抽出物(残留液)の密度;
ρsample(20℃)=20℃でのサンプルの密度;
ρwater(20℃)=20℃での水の密度(=0.998204g/cm3);
ρalcohol(20℃)=20℃でのアルコール(蒸留物)の密度;
アルコールビールは、脱アルコール中の過度の泡立ちを避けるために、好ましくはエタノールの蒸留除去の前に脱炭酸される。好ましくは、アルコールビールの溶存二酸化炭素含有量は、脱炭酸によって0~4g/L、より好ましくは0~3.5g/L、最も好ましくは0~3g/Lの溶存二酸化炭素に低減される。
【0046】
蒸留によるエタノールの除去は、好ましくは10~100℃の範囲、より好ましくは20~65℃の範囲、なおもより好ましくは30~50℃の範囲、最も好ましくは40~46℃の範囲の温度で行われる。
【0047】
蒸留によるエタノールの除去は、好ましくは0.01~500ミリバールの範囲、より好ましくは1~200ミリバールの範囲、なおもより好ましくは5~150ミリバールの範囲、最も好ましくは80~110ミリバールの範囲の圧力で行われる。
【0048】
アルコールビールからエタノールを蒸留除去した後に得られるエタノール含有蒸留物は、好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~75重量%、最も好ましくは20~70重量%のエタノール含有量を有する。
【0049】
エタノール含有蒸留物の水分含量は、好ましくは10~87重量%、より好ましくは15~75重量%、最も好ましくは18~60重量%である。
【0050】
好ましくは、水とエタノールを合わせて、エタノール含有蒸留物の85~100重量%、より好ましくは90~100重量%、最も好ましくは95~100重量%を構成する。
【0051】
特に好ましい実施形態によれば、エタノール含有蒸留物は、低アルコールビール濃縮物と組み合わされるアルコール液中に適用される。
【0052】
本発明の一実施形態では、アルコールビールからエタノールを蒸留除去することによって、40~80重量%、より好ましくは45~75重量%、最も好ましくは50~70重量%の高いエタノール含有量を有する蒸留物が得られる。この蒸留物は、そのまま、低アルコールビール濃縮物と組み合わされるアルコール液中に好適に適用されてもよい。
【0053】
代替実施形態では、アルコールビールからエタノールを蒸留除去することによって、10~40重量%、より好ましくは12~35重量%、最も好ましくは15~30重量%の低エタノール含有量の蒸留物が得られる。好ましくは、この低エタノール含有量の蒸留物は、アルコール液に適用される前に、40~80重量%、より好ましくは45~75重量%、最も好ましくは50~70重量%の高エタノール含有量に濃縮される。エタノール含有量の低い蒸留物のエタノール含有量は、蒸留又は膜分離の手段によって40重量%以上の濃度まで好適に高められ得る。
【0054】
高エタノール含有量を有するエタノール含有蒸留物は、好ましくは、アルコール液が前記蒸留物を60~100重量%、より好ましくは80~100重量%、最も好ましくは90~100重量%含有するような量でアルコール液中に適用される。
【0055】
本方法の代替実施形態では、エタノール産生が制限された酵母発酵(例えば、低温接触発酵)を使用して、低アルコールビールが製造される。
【0056】
低温接触発酵は、好ましくは7℃未満の温度、より好ましくは-1~4℃、より好ましくは-0.5~2.5℃で行われる。
【0057】
低温接触発酵は、好ましくは8~72時間の期間、より好ましくは12~48時間の期間にわたる(「低温接触発酵ビール」)。
【0058】
低アルコールビールを製造するために用いられてもよい別の形態の制限エタノール発酵は、7℃以上の温度での非常に短い(例えば、2時間未満)酵母発酵を含み、-0.5~1℃への急速冷却などの急速な温度不活性化がそれに続き、任意選択的に低温殺菌(「発酵の停止」)がそれに続く。
【0059】
使用され得る制限エタノール発酵の別の形態は、例えば、麦芽汁中の発酵性糖1g当たり0.2g未満のエタノール、好ましくは発酵性糖1g当たり0.1g未満のエタノールを産生する酵母株など、適用される発酵条件下で比較的少量のエタノールを産生する酵母株を利用する。適切な菌株(例えば、クラブトリー陰性菌株)は当該技術分野で知られており、様々な発酵条件下で産生されるエタノールの量は、日常的な実験(「酵母制限ビール」)によって判定され得る。
【0060】
用いられ得る制限エタノール発酵の別の形態は、エタノール産生酵母株によって産生されるエタノールの実質的に全てを消費する十分な量の第2の酵母株の存在下で、第1のエタノール産生酵母株を使用する。サッカロミセス・ルーキシィ(Saccharomyces rouxii)は、エタノールを消費する酵母株の一例である。
【0061】
利用され得る制限エタノール発酵のなおも別の形態は、その発酵完了後に最大1.0体積%のアルコールが生成されるような発酵性糖含有量を有する麦芽汁を用いる。この場合、麦芽汁は一般に、17.5g/L未満、好ましくは12g/L未満、より好ましくは8g/L未満の発酵性糖含有量を有する(「糖枯渇麦芽汁ビール」)。
【0062】
好ましくは、本方法で用いられる膜分離は、逆浸透又はナノ濾過である。最も好ましくは、本方法は、低アルコールビールから水を除去するために逆浸透を用いる。
【0063】
低アルコールビールの膜分離は、好ましくは-2℃~40℃の範囲、より好ましくは3~22℃の範囲の温度で行われる。
【0064】
膜分離中に用いられる圧力は、好ましくは6~80バールの範囲、より好ましくは10~75バールの範囲、最も好ましくは15~70バールの範囲である。
【0065】
好ましい実施形態では、膜分離は、0.48MPa、25℃、回収率15%で、2,000mg/Lの硫酸マグネシウム水溶液を使用して測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の硫酸マグネシウム阻止率を有する膜を用いて行われる。
【0066】
さらなる好ましい実施形態では、膜分離は、1.6MPa、25℃、及び回収率15%で、2,000mg/Lのグルコース水溶液を用いて測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%のグルコース阻止率を有する膜を用いて行われる。
【0067】
特に好ましい実施形態によれば、膜分離は、10.3バール、25℃、pH8、及び回収率15%で2000mg/L塩化ナトリウム溶液を使用して測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の塩化ナトリウム阻止率を有する膜を使用して、逆浸透又は正浸透の手段によって実施される。
【0068】
膜分離の手段による低アルコールビールの水分含量の低減は、低アルコールビール中に大量の溶存二酸化炭素が存在することによって妨げられる。したがって、0~500mg/L、より好ましくは0~100mg/L、最も好ましくは0~20mg/Lの溶存二酸化炭素を含有する低アルコールビールを用いることが好ましい。
【0069】
好ましい実施形態では、低アルコールビールの水分含量は、膜濾過によって少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%減少する。
【0070】
本方法において中間生成物として得られる低アルコールビール濃縮物は、好ましくは液体である。
【0071】
本方法で製造される低アルコールビール濃縮物のエタノール含有量は、好ましくは1.0%ABVを超えず、より好ましくは0.5%ABVを超えず、なおもより好ましくは0.3%ABVを超えず、最も好ましくは0.1%ABVを超えない。
【0072】
低アルコールビール濃縮物のpHは、好ましくは3.0~6.0の範囲、より好ましくは3.2~5.5の範囲、最も好ましくは3.5~5.0の範囲である。
【0073】
低アルコールビール濃縮物は、好ましくは35~80重量%の範囲、より好ましくは40~75重量%の範囲、最も好ましくは45~70重量%の範囲の水分含量を有する。
【0074】
好ましい実施形態では、低アルコールビール濃縮物は20~60°Pの密度、より好ましくは24~50°P、最も好ましくは28~42°Pの密度を有する。
【0075】
リボフラビン、遊離脂肪酸(例えば、リノール酸)、アミノ酸、及び小型ペプチドは、大麦麦芽中に天然に存在する物質であり、典型的には、低アルコールビール中にかなりの濃度で存在する。同様に、マルトテトラオースも低アルコールビール中にかなりの濃度で含まれるが、これはこのオリゴ糖が、マッシング中のデンプンの酵素加水分解によって生成され、酵母によって消化されないからである。カプセル内の低アルコールビール濃縮物は、低アルコールビールから、水のみを除去する濃縮方法、又は水と低分子量物質とイオンのみを除去する濃縮方法を用いて得られるという事実により、低アルコールビール濃縮物は典型的には、測定可能レベルのリボフラビン、リノール酸、アミノ酸、ペプチド及び/又はマルトテトラオースを含有する。
【0076】
低アルコールビール濃縮物のリボフラビン含有量は、好ましくは250~3,000mg/L、より好ましくは300~2,500μg/L、より好ましくは350~2,200μg/L、最も好ましくは400~2,000μg/Lの範囲である。
【0077】
低アルコールビール濃縮物は、好ましくは150~5,000μg/L、より好ましくは200~4,000μg/L、さらに好ましくは250~3,500μg/L、最も好ましくは300~3,000μg/Lのリノール酸を含有する。
【0078】
リノール酸に加えて、液体ビール濃縮物は典型的には、オレイン酸及び/又はα-リノレン酸などの他の脂肪酸も含有する。オレイン酸は、低アルコールビール濃縮物中に、好ましくは300~3,000μg/L、より好ましくは400~2,500μg/L、なおもより好ましくは500~2,000μg/L、最も好ましくは600~1,800μg/Lの濃度で存在する。
【0079】
α-リノレン酸は、低アルコールビール濃縮物中に、好ましくは100~1,200μg/L、より好ましくは120~1,100μg/L、なおもより好ましくは150~1,000μg/L、最も好ましくは180~900μg/Lの濃度で存在する。
【0080】
低アルコールビール濃縮物の遊離アミノ窒素(FAN)含有量は、好ましくは60~1,000mg/L、より好ましくは80~800mg/L、なおもより好ましくは90~700mg/L、最も好ましくは100~600mg/Lの範囲である。
【0081】
低アルコールビール濃縮物は、好ましくは10~100g/L、より好ましくは12~80g/L、なおもより好ましくは15~60g/L、最も好ましくは18~40g/Lのマルトテトラオースを含有する。
【0082】
好ましくは、低アルコールビール濃縮物は、0~20g/L、より好ましくは0~15g/L、さらに好ましくは0.5~10g/L、最も好ましくは1~8g/Lの濃度でマルトースを含有する。
【0083】
低アルコールビール濃縮物は、好ましくは1~30g/L、より好ましくは2~25g/L、なおもより好ましくは2.5~22g/L、最も好ましくは3~20g/Lの濃度でマルトトリオースを含有する。
【0084】
好ましくは、低アルコールビール濃縮物は、100~1,200mg/Lの酢酸、より好ましくは120~1,000mg/Lの酢酸、なおもより好ましくは150~900mg/Lの酢酸、最も好ましくは180~800mg/Lの酢酸を含有する。
【0085】
低アルコールビール濃縮物は、包装される前に、アルコール液以外の1つ又は複数の他の成分と好適に組み合わされてもよい。
【0086】
好ましくは、水とエタノールを合わせて、アルコール液の85~100重量%、より好ましくは90~100重量%、最も好ましくは95~100重量%を構成する。
【0087】
本方法で低アルコールビール濃縮物と組み合わされるアルコール液は、好ましくは、アルコールビールに由来するビールフレーバー揮発性物質(例えば、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸フェニルエチル、アミルアルコール、及びフェニルエチルアルコール)を測定可能レベルで含有する。
【0088】
好ましくは、アルコール液は、エタノール1kg当たり50~2,000mg、より好ましくは70~1,500mg、なおもより好ましくは90~1,200mg、最も好ましくは100~800mgの酢酸エチルを含む。
【0089】
好ましくは、アルコール液は、エタノール1kg当たり5~200mg、より好ましくは7~150mg、なおもより好ましくは9~120mg、最も好ましくは10~80mgの酢酸イソアミルを含む。
【0090】
好ましい実施形態では、アルコール液は、エタノール1kg当たり400~5,000mg、より好ましくは600~4,000mg、なおもより好ましくは700~3,500mg、最も好ましくは800~3,00mgのアミルアルコールを含有する。ここで、「アミルアルコール」という用語は、式、C5H12Oを有するアルコールを指す。
【0091】
別の好ましい実施形態では、アルコール液は、エタノール1kg当たり8~240mg、より好ましくは11~170mg、なおもより好ましくは13~140mg、最も好ましくは15~100mgのフェニルエチルアルコールを含有する。
【0092】
好ましくは、アルコール液は、エタノール1kg当たり2~50mg、より好ましくは3~40mg、なおもより好ましくは3.5~32mg、最も好ましくは4~25mgの酢酸フェニルエチルを含有する。
【0093】
既に上述したように、好ましい実施形態では、低アルコールビール濃縮物と組み合わせられる前に、アルコール液は、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択されるホップ酸と組み合わせられる。より好ましくは、アルコール液はイソα酸と組み合わされる。イソα酸は、予め異性化されたホップ抽出物の形態で好適に提供されてもよい。
【0094】
好ましくは、ホップ酸は50~2,000mg/L、より好ましくは100~1,500mg/L、最も好ましくは200~1,000mg/Lの濃度を達成するようにアルコール液に添加される。
【0095】
フレーバーは、それらを組み合わせる前のアルコール液及び/又は低アルコールビール濃縮物に、及び/又はアルコールビール濃縮物に、好適に添加されてもよい成分の一例である。
【0096】
特に好ましい実施形態によれば、本方法は、低アルコールビール濃縮物とアルコール液とを混合することを含む。
【0097】
本方法では、低アルコールビール濃縮物とアルコール液は、好ましくは7:1~1:1の重量比、より好ましくは6:1~1.2:1の重量比、最も好ましくは5:1~1.5:1の重量比で組み合わされる。
【0098】
本方法で得られる液体アルコールビール濃縮物は、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%、最も好ましくは20~40重量%のエタノール含有量を有する。
【0099】
低アルコールビール濃縮物とアルコール液及び任意の追加エタノール源とを組み合わせることによって得られる液体アルコールビール濃縮物は、好ましくは、容器又は1回分用カプセル内に包装される。
【0100】
1回分用カプセルは、好ましくは12~70mL、より好ましくは15~65mL、最も好ましくは20~60mLの液体アルコールビール濃縮物で充填される。
【0101】
容器は、好ましくは250~3,000mL、より好ましくは400~2,000mL、最も好ましくは500~1,500mLの液体アルコールビール濃縮物で充填される。
【0102】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られるアルコールビール濃縮物に関する。
【0103】
図1は、ノンホップアルコールビール(1)から出発して、本発明による液体アルコールビール濃縮物を含有する1回分用カプセルを調製する方法の概略図を提供する。描かれた方法の工程Aは、ノンホップアルコールビール(1)を脱アルコールし、ノンアルコールビール(2)とアルコール液(3)を製造するステップを含む。工程Bは、逆浸透膜の手段によってノンアルコールビール(2)を濃縮し、低アルコール濃縮物(4)を製造するステップを含む。工程Cは、予め異性化されたホップ抽出物(5)とアルコール液(3)とを混合し、溶解したホップ酸(6)を含有するアルコール液を製造するステップを含む。工程Dは、低アルコールビール濃縮物(4)と、溶解したホップ酸を含有するアルコール液(6)とを混合するステップを含み、それによって液体アルコールビール濃縮物(7)が製造される。工程Eは、液体アルコールビール濃縮物(7)を1回分用カプセル(8)に充填するステップを含む。工程Fは、シール(9)を用いて1回分用カプセルを密封し、液体アルコールビール濃縮物(7)を含有する密封された1回分用カプセル(10)を製造するステップを含む。
【0104】
図2は、再構成ビールを調製するための装置(10)の図を示す。装置は、装置(10)の機械部品及び電子部品を収容するハウジング(11)を含む。ハウジング(11)は、プラスチック及び/又は金属で形成され得る。
【0105】
装置(10)は、電源(20)と、装置を起動し、装置の機能(例えば、分注される再構成ビールの容積、温度、及び/又はアルコール含有量)を制御するように動作可能な制御系(30)とを備える。また、分注ユニット(50)の下部に配置された空のグラス(40)も示されている。
【0106】
装置(10)はまた、蛇口(60)の形態の水源及び冷却ユニット(70)を含む。装置(10)は、加圧二酸化炭素を含有するシリンダー(80)、炭酸化ユニット(90)、混合ユニット(100)、及び2区画1回分用カプセル(120)を受け入れるための容器(110)をさらに備える。
【0107】
1回分用カプセル(120)は、液体アルコールビール濃縮物(121)を含有する。1回分用カプセル(120)は、ホイル(122)によって密封されている。
【0108】
装置(10)は、1回分用カプセル(120)を開けるための手段を備える。
【0109】
使用に際して、消費者は、1回分用カプセル(120)を装置(10)の容器(110)に入れることができる。次に、消費者は、制御系(30)を使用して装置(10)を作動させ、再構成ビールが分注ユニット(50)からグラス(40)内に分注されるのを待つことができる。
【0110】
装置(10)が作動すると、蛇口(60)からの水とシリンダー(80)からの加圧二酸化炭素が、炭酸化ユニット(90)に分注される。炭酸化ユニット(90)への通過中に、水は冷却ユニット(70)によって冷却される。適切な量の水と二酸化炭素が炭酸化ユニット(90)内で混合されると、炭酸化物は炭酸化ユニット(90)から放出され、1回分用カプセル(120)を通って混合ユニット(100に流れる。
【0111】
1回分用カプセル(120)を通過する間に、炭酸水は液体アルコールビール濃縮物(121)を混合ユニット(100)内へと洗い流す。混合ユニット(100)内では、炭酸水と洗い流された液体アルコールビール濃縮物が密接混合されて、透明な再構成ビールが製造される。
【0112】
次に、透明な再構成ビールが、フォームヘッドの形成下で、混合ユニット(100)から分注ユニット(50)を通ってグラス(40)内に放出される。
【0113】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに例証する。
【実施例】
【0114】
実施例1
ノンホップラガー(5%ABV含有)を真空蒸留によって脱アルコールした(Schmidt-Bretten,Bretten,Germany-供給量:5hL/hr;蒸気質量流量:100kg/h;出口圧力:3.5バール;真空設定:90ミリバール;出口温度:3℃)。得られた脱アルコールビールは、0.01%ABVのエタノール含有量を有した。
【0115】
脱アルコール中に生成した蒸留物を回収し、分析した。結果は、表1に示される。
【0116】
表1
エタノール 60重量%
酢酸エチル 50.2mg/L
酢酸イソアミル 4.56mg/L
アミルアルコール 206mg/L
フェニルエチルアルコール 5.09mg/L
酢酸フェニルエチル 2.77mg/L
【0117】
脱アルコールされたノンホップラガーを次の設定を使用したナノ濾過の手段によって濃縮した。
【0118】
ナノ濾過膜
タイプ 構成:らせん巻き
膜ポリマー:複合ポリアミド
鹹水スペーサー材料:ポリプロピレン
仕様 透過液流量:
・MgSO4:7.6m3/d
・NaCl:9.5m3/d
安定化塩阻止率1:
・MgSO4:>97%(2000ppm、4.8バール、25℃、15%回収率、pH6.5)
・NaCl:89~95%(500ppm、4.8バール、25℃、15%回収率、pH7.0)
公称膜面積:7.9m2
1およそ200DaのMWカットオフに相当する。
【0119】
使用したナノ濾過装置の構成を
図3に示す。描写された装置の寸法は以下の通り:
A(全長)=1016mm
B(ATD径)=100.3mm
C(接続径)=19.1mm
D
F(コアチューブ延長-供給側)=26.7mm
D
C(コアチューブ延長-濃縮側)=26.7mm
【0120】
最大動作限界
・圧力:80バール
・温度:28℃
・圧力低下:0.7バール
・供給流量:3.6m3/h
・塩素濃度:<0.1ppm
・給水SDI(15分):5.0
・給水濁度:1.0NTU
・給水pH:3.0~10.0
・任意の要素に関する濃縮液流量と透過液流量の最大比率:5:1
【0121】
濾過の実行
ビールの循環は、ピストンポンプによってもたらされた。このポンプの容量は1m3/h、最大吐出圧は20~80バールである。試験ユニットは約30バールに制限され、40バールの設定値を有する過圧逃し弁によって保護されていた。
【0122】
初期の透過液生産は、約15バールの圧力(浸透圧)で開始された。
【0123】
合計100リットルのビールが濾過され、84.6リットルの透過液及び16.1リットルの液体濃縮物が得られた。その結果、達成された濃縮係数は100/15.4=6.5であった。
【0124】
このようにして得られたビール濃縮物の組成を表2に示す。
【0125】
表2
酢酸 310mg/L
リボフラビン 890μg/L
オレイン酸 1040μg/L
リノール酸 980μg/L
α-リノレン酸 630μg/L
遊離アミノ窒素 310mg/L
マルトース 1.1g/L
マルトトリオース 7.0g/L
マルトテトラオース 22g/L
【0126】
比較例A
5.0%ABVのアルコール含有量及び19mg/Lのイソα酸含有量を有する市販のホップ添加ラガービールを、実施例1と同じ設定を用いてナノ濾過の手段によって濃縮した。
【0127】
初期の透過液生産は、約4バールの圧力(浸透圧)で開始された。合計200リットルのビールが濾過され、172.3リットルの透過液及び27.7リットルの濃縮物が得られた。その結果、達成された濃縮係数は200/27.7=7.2であった。
【0128】
このようにして得られたホップ添加アルコールビール濃縮物は濁っており、4.71%ABVのエタノール含有量、1.8298(20°P)の比重を有した。濃縮物は78.7mg/Lのイソα酸を含有し、これはイソα酸の42.5%がナノ濾過工程中に失われたことを意味する。
【0129】
実施例2
実質的にアルコールを含まない液体ビール濃縮物を実施例1と同様にして調製した。さらに、30重量%のイソα酸を含有する予め異性化されたホップ抽出物(Isohop、ex Barth Haas)と、95%エタノールとを混合することによって、210mg/Lのイソα酸を含有するアルコール液を調製した。
【0130】
2種類のアルコールビール濃縮物を調製した:
・55mg/Lのイソα酸を含有するビール濃縮物Iは、32mLの液体ビール濃縮物と11.4mLのイソα酸含有アルコール液とを混合することによって調製した。
・同様に55mg/Lのイソα酸を含有するビール濃縮物IIは、32mLの液体ビール濃縮物と前述の予め異性化されたホップ抽出物とを混合し、続いて混合し、次に11.4mLの95%エタノールを添加し、その後再び混合することによって調製した。
【0131】
双方のビール濃縮物を室温で数日間貯蔵した後、150mLの炭酸水(Royal Club Soda Water)と混合し、それぞれ再構成ビールI及び再構成ビールIIを得た。
【0132】
再構成ビールIは透明で、良好なフォームヘッドと良好な苦味を有した。再構成ビールIIは、良好なフォームヘッドと穏やかな苦味(再構成ビールIほど強くない)を有し、いくらかの沈殿物を含有することが判明した。
【0133】
実施例3
本発明による液体アルコールビール濃縮物を含有する1回分用カプセルは、以下のように調製する:
実施例1のアルコール蒸留物と予め異性化されたホップ抽出物とを混合し、210mg/Lのイソα酸を含有する溶液を製造する。
【0134】
添加されたホップ抽出物を含有するアルコール蒸留物と、実施例1の液体ビール濃縮物とを18:32の容積比で混合し、液体アルコールビール濃縮物を製造する。この液体アルコールビール濃縮物50mLを内容積55mLのカプセルに充填し、その後カプセルを可撓性ホイルで密封する。
【0135】
液体アルコールビール濃縮物は、濁りの形成を示さない。
【0136】
実施例4
実施例3の液体アルコールビール濃縮物と150mLの炭酸水とを混合し、温度5℃を有する再構成ビールを製造する。
【0137】
このようにして得られた再構成ビールは透明であり(すなわち、濁っていない)、ラガーの典型的な黄色、並びに満足できるフォーム特性を有する。
【0138】
専門家パネルによる再構成ビールの評価は、このビールが通常のラガービールと同様に心地よい味を有することを示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・
- 3~12%ABVのエタノール含有量及び7~14%(m/m)の原エキスを有するアルコールビールを提供するステップと;
- 温度20~65℃、圧力1~200mbarの範囲での蒸留の手段によって前記ビールからエタノールを除去し、低アルコールビールとエタノール含有蒸留物とを製造するステップと
によって、0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを
製造するステップと;
・
1.6MPa、25℃、及び回収率15%で2,000mg/Lのグルコース水溶液を使用して測定を行った場合に、グルコース阻止率が80~100%である膜を使用して、6~80バールの範囲の圧力を用いた、ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、
前記低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去
し、低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・前記
1~5重量部の低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有する
1重量部のアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法
であって、
前記エタノールの蒸留除去により、エタノール含有量40~80重量%の蒸留物、又はエタノール含有量40~80重量%にさらに濃縮されるエタノール含有量10~40重量%の蒸留物が得られ、
40~80重量%のエタノール含有量を有する前記エタノール含有蒸留物が、前記アルコール液が前記蒸留物を60~100重量%含有するような量で前記アルコール液中に適用される、方法。
【請求項2】
前記低アルコールビールが、好ましくは1~5.5g/Lのマルトテトラオース、好ましくは2~5g/Lのマルトテトラオースを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低アルコールビールが、好ましくは0.2~3.5g/Lのマルトトリオース、好ましくは0.4~3g/Lのマルトトリオースを含有する、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低アルコールビールが、エタノール産生が制限された酵母発酵を使用して製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低アルコールビールの前記エタノール含有量が0.5%ABVを超えず、好ましくは0.3%ABVを超えず、より好ましくは0.1%ABVを超えない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
膜分離が、10.3バール、25℃、pH8、及び回収率15%で2000mg/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用して測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の塩化ナトリウム阻止率を有する膜を使用して実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
膜分離が
10~75バール、好ましくは15~70バールの圧力で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
逆浸透の手段によって前記低アルコールビールから水を除去する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記低アルコールビールが、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、0~10mg/Lのホップ酸を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコール液が、50~2,000mg/Lの濃度でホップ酸を含有し、前記ホップ酸が、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低アルコールビール濃縮物と前記アルコール液とを7:1~1:1の重量比で組み合わせる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低アルコールビール濃縮物が、250~3,000μg/Lのリボフラビンを含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコール液が、エタノール1kg当たり50~2,000mgの酢酸エチルを含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液体アルコールビール濃縮物が、1回分用カプセル又は容器内に充填される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる液体アルコールビール濃縮物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0138
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0138】
専門家パネルによる再構成ビールの評価は、このビールが通常のラガービールと同様に心地よい味を有することを示す。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ・0~1%ABVのエタノール含有量、8~400mg/Lの遊離アミノ窒素含有量を有し、0.1~4g/Lのマルトトリオースと0.5~6g/Lのマルトテトラオースを含有する、低アルコールビールを提供するステップと;
・ナノ濾過、逆浸透、及び正浸透から選択される膜分離の手段によって、低アルコールビール中に存在する水の少なくとも70重量%を除去して低アルコールビール濃縮物を製造するステップと;
・前記低アルコールビール濃縮物と、少なくとも30重量%のエタノール含有量を有するアルコール液とを組み合わせて、10~60重量%のエタノール含有量を有する液体アルコールビール濃縮物を製造するステップと
を含む、液体アルコールビール濃縮物の製造方法。
[2] 前記低アルコールビールが、
・3~12%ABVのエタノール含有量を有するアルコールビールを提供するステップと;
・蒸留の手段によって前記ビールからエタノールを除去し、低アルコールビール及びエタノール含有蒸留物を製造するステップと
によって製造される、[1]に記載の方法。
[3] 前記アルコール液が、60~100重量%のエタノール含有蒸留物を含有する、[2]に記載の方法。
[4] 前記低アルコールビールが、エタノール産生が制限された酵母発酵を使用して製造される、[1]に記載の方法。
[5] 膜分離が、1.6MPa、25℃、及び回収率15%で2,000mg/Lのグルコース水溶液を使用して測定を行った場合に、グルコース阻止率が80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の膜を使用して実施される、[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6] 膜分離が、10.3バール、25℃、pH8、及び回収率15%で2000mg/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用して測定を行った場合に、80~100%、より好ましくは90~100%、最も好ましくは95~100%の塩化ナトリウム阻止率を有する膜を使用して実施される、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7] 膜分離が6~80バールの圧力で実施される、[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8] 逆浸透の手段によって前記低アルコールビールから水を除去する、[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9] 前記低アルコールビールが、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、0~10mg/Lのホップ酸を含有する、[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10] 前記アルコール液が、50~2,000mg/Lの濃度でホップ酸を含有し、前記ホップ酸が、イソα酸、水素化イソα酸、フルポン、及びそれらの組み合わせから選択される、[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11] 前記低アルコールビール濃縮物と前記アルコール液とを7:1~1:1の重量比で組み合わせる、[1]~[10]のいずれか一つに記載の方法。
[12] 前記低アルコールビール濃縮物が、250~3,000μg/Lのリボフラビンを含有する、[1]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13] 前記アルコール液が、エタノール1kg当たり50~2,000mgの酢酸エチルを含有する、[1]~[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14] 前記液体アルコールビール濃縮物が、1回分用カプセル又は容器内に充填される、[1]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[15] [1]~[14]のいずれか一つに記載の方法によって得られる液体アルコールビール濃縮物。
【国際調査報告】