(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】超分子アミノ酸又はその塩及びその製造並びに応用
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20240711BHJP
C07C 233/47 20060101ALI20240711BHJP
C07C 231/22 20060101ALI20240711BHJP
A01N 37/20 20060101ALI20240711BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240711BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240711BHJP
C07K 5/06 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C233/47
C07C231/22
A01N37/20
C11D1/52
A61Q19/10
A61Q5/02
A61K8/44
A61Q19/00
A61Q11/00
A61Q1/14
C07K5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527721
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2022107270
(87)【国際公開番号】W WO2023001267
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110837472.2
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524034992
【氏名又は名称】▲蘇▼州欧▲麗▼特生物医▲薬▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼健
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
4H006
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
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4H003AB08
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4H003AC03
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4H045EA06
4H045EA15
4H045EA35
4H045EA36
4H045FA10
(57)【要約】
構造の再構成の発生を制御し、長鎖脂肪酸の含有量を制御することができるN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド、超分子アミノ酸及び対応する塩の製造方法。超分子アミノ酸及びその塩、並びに日常化学品などの分野における応用を更に提供する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩或いはN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩を含む組成物の製造方法であって、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含み、反応後に系のpH値は未満8、好ましくはpH値は7.5以下、更に好ましくはpH値は7以下、最も好ましくはpH値は5~6.5である。
【請求項2】
N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩或いはN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩を含む組成物の製造方法であって、ここで、塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含み、反応プロセス全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2、好ましくは2:1~1:1.8、より好ましくは1.7:1~1:1.7、最も好ましくは1.5:1~1:1.5である。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩に長鎖酸ハロゲン化物を加え、また長鎖酸ハロゲン化物を加える際に、反応液を塩基性に維持するように制御する必要がなく、好ましくは、反応液のpH値を8以上に維持するように制御する必要がなく、
或いは、長鎖酸ハロゲン化物を加える際に、系のpH値を維持するために、塩基を同時に加えるか、又は塩基の滴下速度を制御する必要がなく、
或いは、長鎖酸ハロゲン化物を加える前後、系のpH値の差は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
【請求項4】
前記請求項1~3の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後、生成物におけるN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【請求項5】
前記請求項1~4の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造する製造ステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物を加えるか、又は上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び塩基を加える製造ステップと、を含み、また、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.ステップ(1)で製造されたアミノ酸塩溶液のpH値は7.5~14、好ましくはpH値は8~12、より好ましくはpH値は9~11であり、また、ステップ(2)の反応後に、系のpH値は8未満、好ましくはpH値は7.5以下、更に好ましくはpH値は7以下、最も好ましくはpH値は5~6.5であること、
b.ステップ(1)とステップ(2)の反応系全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2、好ましくは2:1~1:1.8、より好ましくは1.7:1~1:1.7、最も好ましくは1.5:1~1:1.5であること、
c.ステップ(1)で得られたアミノ酸塩溶液のpH値は、ステップ(2)におけるアミノ酸塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の系のpH値より大きく、且つ両方の差は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であること。
【請求項6】
前記請求項1~5の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物との反応は、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.上記反応は、水又は水と親水性有機溶媒との混合溶液の存在下で反応させ、上記親水性有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアセトンであり、好ましくは、水と親水性有機溶媒との体積比は1:(0~2)であること、
b.上記反応の温度は35℃以下、好ましくは30℃以下であること、
c.アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とのモル比は1より大きく、好ましくは2:1~1.1:1、更に好ましくは1.5:1~1.2:1であること。
【請求項7】
前記請求項1~6の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の生成物を酸性化してN-長鎖アシルアミノ酸粗生成物を得るステップを更に含み、好ましくは、酸性化後のpH値は1~4、より好ましくはpH値は1~2である。
【請求項8】
前記請求項1~7の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記方法は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であること、
b.長鎖酸ハロゲン化物における長鎖アシル基は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来すること、
c.塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアから選ばれる1つ又は複数であること。
【請求項9】
前記請求項8に記載の方法によれば、ここで、上記方法は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.アミノ酸は、アラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジンから選ばれ、好ましくはL-アラニンであること、
b.長鎖酸ハロゲン化物は、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ウンデカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、ミリストイルクロライド、ペンタデカノイルクロライド、パルミトイルクロライド、ステアロイルクロライド、オイルクロライド、リノールクロライド、イソステアロイルクロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライドから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸クロライド又はラウロイルクロライド、最も好ましくはラウロイルクロライドであること、
c.塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれること。
【請求項10】
N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物から不純物を除去する方法であって、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液であり、系の温度を制御した後、固液分離操作を行うステップを含む。
【請求項11】
前記請求項10に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われ、好ましくは、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指し、溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。
【請求項12】
前記請求項11に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.固液分離時、媒体としての溶媒を粗生成物と接触させ、遠心力又は圧力の作用下で、溶媒が不純物を運び去って分離を促進すること、
b.固液分離時、媒体としての溶媒は噴射により提供されること、
c.固液分離時、媒体としての溶媒の使用量はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物の質量の0.5倍以上であること、
d.固液分離は、工業用遠心分離機又はフィルタープレス、好ましくはろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機を使用すること。
【請求項13】
前記請求項11又は12に記載の方法によれば、ここで、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、好ましくは後段階の温度が前段階の温度以上であり、
好ましくは、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【請求項14】
前記請求項11又は12に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%wt以上である場合、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【請求項15】
前記請求項10~14の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離後、更にn回(n≧1)の固液分離を行い、好ましくは次回の固液分離の温度は前回の固液分離の温度以上であり、
各固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液であり、
或いは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指し、溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。
【請求項16】
前記請求項15に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【請求項17】
前記請求項15に記載の方法によれば、ここで、3回以上の固液分離を行い、最初の固液分離において温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離において温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+8℃以上且つ長鎖脂肪酸の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離において温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+24℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【請求項18】
前記請求項15に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%以上である場合、最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【請求項19】
前記請求項10~18の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は市販のN-長鎖アシルアミノ酸であり、
或いは、前記請求項7~9の何れか一項に記載のN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物であり、
或いは、長鎖脂肪酸の重量百分率が5%以上のN-長鎖アシルアミノ酸であり、
或いは、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造するステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び任意選択で塩基を加えて、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化するステップと、を含む方法により製造されたN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物であり、
或いは、塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させ、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得て、得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、放置後に固液分離し、任意選択で洗浄して乾燥し、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップを含む方法により製造されたN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物である。
【請求項20】
前記請求項10~19の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記長鎖脂肪酸は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸であり、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるN-長鎖アシル基は、上記8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来し、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるアミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であり、上記有機溶媒は、長鎖脂肪酸及びN-長鎖アシルアミノ酸に対して微溶性、難溶性又は不溶性である有機溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で有機溶媒における長鎖脂肪酸及びN-長鎖アシルアミノ酸の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g未満、より好ましくは0.001g/100g未満であることを意味する。
【請求項21】
前記請求項20の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記長鎖脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸又はラウリン酸、最も好ましくはラウリン酸であり、
対応的には、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるN-長鎖アシル基は、オクタノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、イソステアロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基又はラウロイル基、最も好ましくはラウロイル基であり、
上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるアミノ酸は、アラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジンに由来し、好ましくはL-アラニンである。
【請求項22】
融点の差を利用して固体混合物中の成分を分離する方法であって、ここで、上記方法包括は、(a)溶媒を固体混合物に加えることと、(b)溶媒を加えた後に系の温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御することと、(c)系の温度を制御した後、固液分離操作を行うことと、を含み、上記溶媒は、分離される成分(即ち分離される高融点成分及び低融点成分)に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で溶媒における分離される成分の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g未満、より好ましくは0.001g/100g未満であり、溶媒の沸点が低融点成分の融点以上で、且つ系の温度Tが溶媒の沸点以下であることを意味する。
【請求項23】
前記請求項22に記載の方法によれば、ここで、分離される成分の融点差は10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、
及び/又は、低融点成分の重量百分率は50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【請求項24】
前記請求項22又は23に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われ、好ましくは、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒を指し、且つ溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒である。
【請求項25】
前記請求項22~24の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.固液分離時、媒体としての溶媒を分離される混合物と接触させ、遠心力又は圧力の作用下で、溶媒が低融点成分を運び去って分離を促進すること、
b.固液分離時、媒体としての溶媒は噴射により提供されること、
c.固液分離時、媒体としての溶媒の使用量は分離される混合物質量の0.5倍以上であること、
d.固液分離は、工業用遠心分離機又はフィルタープレス、好ましくはろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機を使用すること。
【請求項26】
前記請求項24又は25に記載の方法によれば、ここで、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、好ましくは後段階の温度が前段階の温度以上であり、
好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+10℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【請求項27】
前記請求項24又は25に記載の方法によれば、ここで、低融点成分の重量百分率は10%~40%、好ましくは15%~30%であり、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【請求項28】
前記請求項22~27の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離後、更にn回(n≧1)の固液分離を行い、好ましくは次回の固液分離の温度は前回の固液分離の温度以上であり、
各固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、上記溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、
或いは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒を指し、上記溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒である。
【請求項29】
前記請求項28に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+10℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【請求項30】
前記請求項28に記載の方法によれば、ここで、3回以上の固液分離を行い、最初の固液分離において温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+8℃以上且つ低融点成分の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+24℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【請求項31】
前記請求項28に記載の方法によれば、ここで、低融点成分の重量百分率は10%~40%、好ましくは15%~30%であり、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【請求項32】
超分子アミノ酸の製造方法であって、前記請求項10~21の何れか一項に記載のN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物から不純物を除去するステップを含み、また、不純物の除去プロセスにおいて構造の再構成を行う。
【請求項33】
前記請求項32に記載の方法により製造された超分子アミノ酸である。
【請求項34】
前記請求項33に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下、好ましくは3%以下、最も好ましくは0.5%~3%であり、
及び/又は、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【請求項35】
超分子アミノ酸であって、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド自己組織化超分子構造を含み、且つN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【請求項36】
前記請求項35に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、中等ジペプチド含有量の超分子アミノ酸であり、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は5%以上、好ましくは10%以上、15%未満であり、
或いは、高ジペプチド含有量の超分子アミノ酸であり、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は15%以上、好ましくは20%以上である。
【請求項37】
前記請求項35又は36に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下、好ましくは3%以下、最も好ましくは0.5%~3%である。
【請求項38】
前記請求項33~37の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、超分子アミノ酸に対して質量分析検出を行い、検出条件として、質量分析AB4500、質量分析システムQ1SCAN、イオン化方式ESI(-)、走査範囲m/z=200~600であり、541~545の範囲の質量分析スペクトルに特徴的なイオンピークを有し、
及び/又は、超分子アミノ酸に対して高速液体クロマトグラフィー検出を行い、検出条件として、機器にUV検出器を備えた高速液体クロマトグラフが使用され、カラムODS-2 HYPERSIL C18 250×4.6mm 5μm、波長210nm、移動相がメタノール:20mmol/LのpH3.0のリン酸二水素カリウム緩衝溶液=70:30(v/v)であり、クロマトグラム中の保持時間30~45 minの範囲に3又は4個のピークを含むピーク群である。
【請求項39】
前記請求項33~38の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:a.超分子アミノ酸固体粉末のマイクロドメインの形態は柱状又は棒状又は線状又は縄状を呈すること、b.超分子アミノ酸は、キャピラリーにより検出された最初融解温度が78℃以上、最終融解温度が87℃以上、好ましくは最初融解温度が80℃以上、最終融解温度が90℃以上であること、c.超分子アミノ酸のDSCピーク値(Peak temperature)は86℃以上、好ましくは88℃以上、より好ましくは90℃以上であること、d.超分子アミノ酸ナトリウム塩の数均分子量は5,000~250,000の間、好ましくは10,000~150,000の間、更に好ましくは15,000~100,000の間である。
【請求項40】
前記請求項33~39の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドにおけるN-長鎖アシル基は、オクタノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、イソステアロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基又はラウロイル基、最も好ましくはラウロイル基であり、
b.N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドにおけるアミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジン、最も好ましくはL-アラニンであり、
c.長鎖脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸又はラウリン酸、最も好ましくはラウリン酸である。
【請求項41】
前記請求項33~40の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸はN-ラウロイル-Lアラニン、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドはN-ラウロイル-Lアラニル-L-アラニン、長鎖脂肪酸はラウリン酸である。
【請求項42】
超分子アミノ酸塩であって、前記請求項33~41の何れか一項に記載の超分子アミノ酸と塩基とから形成される。
【請求項43】
前記請求項42に記載の超分子アミノ酸塩によれば、ここで、上記塩基は、無機塩基、有機アミン類、塩基性アミノ酸から選ばれる1つ又は複数である;
無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、有機アミン類はアミン、アルカノールアミンから選ばれ、塩基性アミノ酸はアルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアルギニン又はリジンである。
【請求項44】
前記請求項33~43の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、クリーニング組成物、洗浄組成物、化粧品組成物又はケア組成物に使用される;界面活性剤、乳化剤に使用される。
【請求項45】
前記請求項33~43の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、油分や汚れの吸着又は細菌の吸着、或いは、除菌、除臭、農薬残留の除去に使用される。
【請求項46】
クリーニング組成物であって、ここで、前記請求項33~43の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【請求項47】
前記請求項46に記載のクリーニング組成物によれば、ここで、上記クリーニング組成物は、洗剤、洗濯洗剤、石鹸、粉末洗濯洗剤、食器洗い洗剤、マスク、シャンプー、シャワージェル、洗顔料、メイク落とし、口腔洗浄品、シェービング用品、ハンドウォッシュ、クリーニングローション又はクリーニングクリームである。
【請求項48】
歯磨き粉であって、ここで、前記請求項33~43の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【請求項49】
化粧品組成物であって、ここで、前記請求項33~43の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸型界面活性剤の製造技術分野に属し、具体的には、超分子アミノ酸又はその塩及びその製造並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、日常化学品業界、農業、医薬業界などの多くの分野において不可欠な構成部分である。現在、市場では数十種類の界面活性剤が使用されているが、一般的に使用されているのは、主にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SLS)、ラウレスポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム(AES)及びラウレス硫酸ナトリウム(K12)である。この3つの界面活性剤は、数十年、場合によっては数百年にわたって使用されてきたため、使用中にその悪影響が徐々に現れ、人体の安全や環境への影響がしばしば報告されている。
【0003】
他の界面活性剤としては、例えば糖類のアルキルグリコシド(APG)、ラウロイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグリシン、ラウロイルサルコシンなどのアミノ酸界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、バイオマスを原料とし、安全性が高く、生分解性が良く、肌に優しいという点でますます注目されているが、汚れ除去能力が低いため、単独で主流界面活性剤として使用することはほとんどなく、他の主流界面活性剤と併用することが多い。従って、日常化学品に含まれる主流界面活性剤の安全性と生分解性の欠点を根本的に解決するものではない。
【0004】
ラウロイルアラニンなどの長鎖アシルアミノ酸が検討されている。その合成プロセスとしては、現在、脂肪酸クロライドとアミノ酸のアミノ基との反応が工業的生産の主流となっている。この反応はSchotten-Baumann縮合反応(ショッテン・バウマン反応)とも呼ばれ、この典型的な反応には、脂肪酸クロライドの加水分解反応、無水物形成反応などの複数の副反応が起こる場合がある。
【0005】
一方、この反応で酸クロライドの加水分解によって生成される高級脂肪酸は、生成物である長鎖アシルアミノ酸と構造が類似しており、炭素鎖長の差が小さいため、従来の分離方法では、低コストで効率よく除去することは極めて困難である。しかし、高級脂肪酸不純物の存在は製品の品質に影響を与えるため、高級脂肪酸の除去や高級脂肪酸不純物の含有量の低減は重要な意味を持っている。
【0006】
「N-ラウロイルアラニンナトリウムの合成及びその性能の研究」、陳莉莉ら、『印染助剤』、第26卷、第4号、2009年4月という文献は、合成条件を詳細に検討したものであり、ラウロイルクロライドの加水分解は非常に起こりやすく、溶媒、pH、反応温度などの多くの条件がラウロイルクロライドの加水分解に影響を与え、その条件を最適化しても収率が85%程度にすぎないことを指摘している。
【0007】
従来の研究によれば、ショッテン・バウマン反応では、長鎖酸クロライドの加水分解を避けることが困難であり、また、加水分解により生成したラウリン酸などの長鎖脂肪酸の除去が困難であることが判明した。また、ショッテン・バウマン反応では、長鎖脂肪酸の他に、無水物形成反応の不純物、ジアセトンアルコール及びイソプロピリデンアセトン、エステル(アルコール溶媒を用いる場合)などのアセトン及びそのアルドール縮合生成物という複数の不純物が導入され、数回の溶出、ろ過、再結晶などのプロセスにより、純度を増加させることができるが、如何に効果的且つ低コストで長鎖脂肪酸の含有量を制御するかは依然として研究すべき課題である。
【0008】
β-アラニンと脂肪酸ハロゲン化物を水酸化カリウムの存在下で反応させ、反応溶媒を水とし、反応温度を25~60℃とし、次いで得られた塩と強酸を60~90℃で反応させることで、N-長鎖アシル-β-アラニンを製造する方法により、花王は1990年代にショッテン・バウマン反応を改良し、N-長鎖アシル-β-アラニンを合成した。しかし、この方法には2つの問題がある。一つは、N-長鎖アシル-L-アラニン(又はN-長鎖アシルα-アラニン)の代わりにN-長鎖アシル-β-アラニンを製造すること、β-アラニンは分岐鎖を持たず、α-アラニンはメチル分岐鎖を持つが、両者は立体障害や反応条件が異なるため、この方法は汎用性がなく、分岐鎖を持つアミノ酸に適用する場合には問題点がある。二つは、この方法の酸付加プロセスは60~90℃と比較的高温であり、反応系が水であるため、酸クロライドの加水分解が激しく、効果的な制御が困難である。一般的なSchotten-Baumann縮合反応は、まさにより低い温度を選択することによって、酸クロライドの加水分解を低減する。
【0009】
同様に、味の素社もSchotten-Baumann縮合反応の改良を試み、以下のステップ(1)~(3)を含む、N-アシルアミノ酸型アニオン界面活性剤を含有するクリーニング剤組成物の製造方法を開示している。(1)ハロゲン化脂肪酸とアミノ酸とを反応させるステップ、(2)反応混合物に酸を添加し、pHを1~5、温度を50~100℃に制御するステップ、(3)有機層を得るために、有機層と水層に分離し、塩基で有機層を中和するステップ。この方法は、主に有機層と水層を形成し、有機層を分離することで、主に脱塩の問題を解決する。しかし、この方法はアニオン界面活性剤を使用し、また同様に酸クロライドの加水分解が激しく、効果的な制御が困難であるという問題がある。
【0010】
上記方法で得られた生成物には高級脂肪酸不純物が多く含まれているが、ラウリン酸などの高級脂肪酸は高速液体クロマトグラフィー(UV検出器を備える)で検出してもピークが現れないため、従来の検出方法では検出できない。高級脂肪酸不純物の検出を見逃したため、製品中に高級脂肪酸不純物が多く含まれていることを認識できず、製品の純度計算にも問題があった(高級脂肪酸不純物が最終製品に誤って計算されてしまう)。現在、この問題を認識した研究はCN105675749B、CN106442829B、CN106596768Bなどがあるが、それらは残存高級脂肪酸如何に検出するかのみを考慮しており、高級脂肪酸を如何に効率的に除去するかについては全く触れていない。
【0011】
一方、長鎖アシルアミノ酸ジペプチドは公知の概念であり、長鎖アシルグリシルグリシン、長鎖アシルグルタミルグルタミン酸などが製造されており、従来技術ではN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド又はその塩を洗浄組成物に導入する試みがなされている。例えばCN100448968Cは関連する洗剤組成物を開示しているが、その製造方法はアミノ酸、ラウリン酸及び塩基溶液を混合し、窒素気流、180℃で1.5時間加熱するものであり、当該反応には非常に高い温度を必要とし、条件が厳しく、大規模な産業化生産には不利である。CN105683151Bには、N-長鎖アシル酸性アミノ酸及び/又はその塩を含有する水溶液及びその製造方法が開示されているが、当該方法は比較的穏やかであるものの、Celite(登録商標)の使用が必要であり、また、製品中に塩化ナトリウム及びグルタミン酸ナトリウム塩が多量に残存し、同時に適用範囲が狭く、N-長鎖アシル酸性アミノ酸の製造にのみ適している。
【0012】
理論的には、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド又はその塩は、N-長鎖アシルアミノ酸により誘導される酸クロライドとアミノ酸とのショッテン・バウマン反応、又はグルタミルグルタミン酸などのアミノ酸ジペプチドと酸クロライドとの反応などにより製造することができる。上記方法には少なくとも2つの問題がある。一つは、ジペプチドを製造するためのコストが高く、収率が低いことである。二つは、一般適合性がなく、L-アラニンなどの分枝鎖含有又は立体障害の比較的大きいアミノ酸の場合、ショッテン・バウマン反応によってN-長鎖アシル-L-アラニンジペプチドを順調に製造することができないことである。
【0013】
従って、比較的高い含有量、更に高い含有量のジペプチド生成物を、効率的で、大規模な産業化生産に適し、低コストで得る方法は、研究されるべき緊急の課題である。
【0014】
一方、アミノ酸界面活性剤は既知であるが、このような界面活性剤の汚れ除去能力が低く、単独で主流界面活性剤として使用することは少ない。如何に強い汚れ除去能力を有するアミノ酸界面活性剤を得るか、及び如何に新型構造特徴を有するアミノ酸界面活性剤を得るかが、研究されるべき緊急の課題である。
【0015】
本願の発明者らは、先行出願であるCN108752228A、CN110804188A、WO2019233375A1、WO2019233377A1などに、新型構造特徴を有するアミノ酸自己組織化超分子又はその塩を詳細に検討し、ここで関連する内容を参考として本明細書に取り組まれている。上記先行出願の製造プロセスには触媒の使用を必要とし、反応圧力が5~50KGであり、生成物中のジペプチド含有量は低いが、本発明は産業化生産により適するように、他の解決策を探求していく。
【0016】
産業化生産には、より簡便な方法が期待され、自己組織化の発生を制御し、構造の再構成を促進し、長鎖脂肪酸及び/又はジペプチド(ラウロイルクロライドとアラニンナトリウムとの反応を例に取り、ジペプチドはラウロイルアラニルアラニンである)の含有量を制御できることが望まれる。汚れ除去力が強く、主流界面活性剤として利用可能な新規アミノ酸界面活性剤を得ることも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記課題に鑑み、一態様において、本発明の目的は、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩(長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩とも呼ばれる)及び上記ジペプチド及び/又はその塩を含む組成物を容易に得ることができると共に、組成物における長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の含有量を容易に制御することができる、プロセスが簡単で、コストが低く、産業化生産を容易に実現することができる製造方法を提供することである。
【0018】
別の態様において、本発明の目的は、ショッテン・バウマン反応で生成した長鎖脂肪酸不純物の含有量を制御するための簡便な方法を提供すること、或いは、アミノ酸と長鎖酸ハロゲン化物との反応で生成した長鎖脂肪酸不純物の含有量を制御するための簡便な方法を提供することである。このプロセスにおいて、塩、アミノ酸などの様々な水溶性不純物も除去される。
【0019】
更なる態様において、本発明は、長鎖脂肪酸とN-長鎖アシルアミノ酸とを分離する原理に基づいて、融点の差を利用して固体混合物中の成分を分離する方法を提供する。
【0020】
更なる態様において、本発明の目的は、一般に市販されている長鎖アシルアミノ酸と異なる性質を有する超分子アミノ酸を製造するための簡便な方法を提供することである。本発明に記載の超分子アミノ酸又はその塩は、本発明のプロセス方法に基づいて製造されたアミノ酸生成物であり、所定の条件で特定の構造が形成されるため、ここで、その特徴に基づいて超分子アミノ酸又はその塩と定義される。
【0021】
最後の態様において、本発明の特定のプロセスで処理した後、生成物における不純物の含有量、特に長鎖脂肪酸(高級脂肪酸とも呼ばれ、通常、長鎖の炭素原子数は8~22である)及びハロゲン化ナトリウム(塩化ナトリウムなど)、アミノ酸の含有量は極めて低く制御することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
具体的には、本発明の解決手段は以下の通りである。
【0023】
[1]N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩或いはN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩を含む組成物の製造方法であって、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含み、反応後に系のpH値は未満8、好ましくはpH値は7.5以下、更に好ましくはpH値は7以下、最も好ましくはpH値は5~6.5である。
【0024】
[2]N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩或いはN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩を含む組成物の製造方法であって、ここで、塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含み、反応プロセス全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2、好ましくは2:1~1:1.8、より好ましくは1.7:1~1:1.7、最も好ましくは1.5:1~1:1.5である。
【0025】
[3]上記[1]又は[2]に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩に長鎖酸ハロゲン化物を加え、また長鎖酸ハロゲン化物を加える際に、反応液を塩基性に維持するように制御する必要がなく、好ましくは、反応液のpH値を8以上に維持するように制御する必要がなく、
或いは、長鎖酸ハロゲン化物を加える際に、系のpH値を維持するために、塩基を同時に加えるか、又は塩基の滴下速度を制御する必要がなく、
或いは、長鎖酸ハロゲン化物を加える前後、系のpH値の差は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
【0026】
[4]上記[1]~[3]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後、生成物におけるN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【0027】
[5]上記[1]~[4]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造する製造ステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物を加えるか、又は上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び塩基を加える製造ステップと、を含み、また、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.ステップ(1)で製造されたアミノ酸塩溶液のpH値は7.5~14、好ましくはpH値は8~12、より好ましくはpH値は9~11であり、また、ステップ(2)の反応後に、系のpH値は8未満、好ましくはpH値は7.5以下、更に好ましくはpH値は7以下、最も好ましくはpH値は5~6.5であること、
b.ステップ(1)とステップ(2)の反応系全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2、好ましくは2:1~1:1.8、より好ましくは1.7:1~1:1.7、最も好ましくは1.5:1~1:1.5であること、
c.ステップ(1)で得られたアミノ酸塩溶液のpH値は、ステップ(2)におけるアミノ酸塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の系のpH値より大きく、且つ両方の差は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であること。
【0028】
[6]上記[1]~[5]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物との反応は、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.上記反応は、水又は水と親水性有機溶媒との混合溶液の存在下で反応させ、上記親水性有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアセトンであり、好ましくは、水と親水性有機溶媒との体積比は1:(0~2)であること、
b.上記反応の温度は35℃以下、好ましくは30℃以下であること、
c.アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とのモル比は1より大きく、好ましくは2:1~1.1:1、更に好ましくは1.5:1~1.2:1であること。
【0029】
[7]上記[1]~[6]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の生成物を酸性化してN-長鎖アシルアミノ酸粗生成物を得るステップを更に含み、好ましくは、酸性化後のpH値は1~4、より好ましくはpH値は1~2である。
【0030】
[8]上記[1]~[7]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記方法は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であること、
b.長鎖酸ハロゲン化物における長鎖アシル基は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来すること、
c.塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアから選ばれる1つ又は複数であること。
【0031】
[9]上記[8]に記載の方法によれば、ここで、上記方法は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.アミノ酸は、アラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジンから選ばれ、好ましくはL-アラニンであること、
b.長鎖酸ハロゲン化物は、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ウンデカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、ミリストイルクロライド、ペンタデカノイルクロライド、パルミトイルクロライド、ステアロイルクロライド、オイルクロライド、リノールクロライド、イソステアロイルクロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライドから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸クロライド又はラウロイルクロライド、最も好ましくはラウロイルクロライドであること、
c.塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれること。
【0032】
[10]N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物から不純物を除去する方法であって、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液であり、系の温度を制御した後、固液分離操作を行うステップを含む。
【0033】
[11]上記[10]に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われ、好ましくは、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指し、溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。
【0034】
[12]上記[11]に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.固液分離時、媒体としての溶媒を粗生成物と接触させ、遠心力又は圧力の作用下で、溶媒が不純物を運び去って分離を促進すること、
b.固液分離時、媒体としての溶媒は噴射により提供されること、
c.固液分離時、媒体としての溶媒の使用量はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物の質量の0.5倍以上であること、
d.固液分離は、工業用遠心分離機又はフィルタープレス、好ましくはろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機を使用すること。
【0035】
[13]上記[11]又は[12]に記載の方法によれば、ここで、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、好ましくは後段階の温度が前段階の温度以上であり、
好ましくは、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0036】
[14]上記[11]又は[12]に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%wt以上である場合、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0037】
[15]上記[11]又は[12]に記載の方法によれば、ここで、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、第1段階の温度を60℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を60℃以上に制御し、更に好ましくは第1段階の温度を50~60℃に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を65~70℃に制御する。
【0038】
[16]上記[10]~[15]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離後、更にn回(n≧1)の固液分離を行い、好ましくは次回の固液分離の温度は前回の固液分離の温度以上であり、
各固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液であり、
或いは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指し、溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。
【0039】
[17]上記[16]に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0040】
[18]上記[16]に記載の方法によれば、ここで、3回以上の固液分離を行い、最初の固液分離において温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離において温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+8℃以上且つ長鎖脂肪酸の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離において温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+24℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0041】
[19]上記[16]に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%以上である場合、最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0042】
[20]上記[16]に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離において、温度Tを60℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを60℃以上に制御し、更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを50~60℃に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを65~70℃に制御する。
【0043】
[21]上記[10]~[20]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は市販のN-長鎖アシルアミノ酸であり、
或いは、上記[7]~[9]の何れか一項に記載のN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物であり、
或いは、長鎖脂肪酸の重量百分率が5%以上のN-長鎖アシルアミノ酸であり、
或いは、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造するステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び任意選択で塩基を加えて、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化するステップと、を含む方法により製造されたN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物であり、
或いは、塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させ、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得て、得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、放置後に固液分離し、任意選択で洗浄して乾燥し、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップを含む方法により製造されたN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物である。
【0044】
[22]上記[10]~[21]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記長鎖脂肪酸は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸であり、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるN-長鎖アシル基は、上記8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来し、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるアミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であり、上記有機溶媒は、長鎖脂肪酸及びN-長鎖アシルアミノ酸に対して微溶性、難溶性又は不溶性である有機溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で有機溶媒における長鎖脂肪酸及びN-長鎖アシルアミノ酸の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g未満、より好ましくは0.001g/100g未満であることを意味する。
【0045】
[23]上記[22]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記長鎖脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸又はラウリン酸、最も好ましくはラウリン酸であり、
対応的には、上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるN-長鎖アシル基は、オクタノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、イソステアロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基又はラウロイル基、最も好ましくはラウロイル基であり、
上記N-長鎖アシルアミノ酸におけるアミノ酸は、アラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジンに由来し、好ましくはL-アラニンである。
【0046】
[24]融点の差を利用して固体混合物中の成分を分離する方法であって、ここで、上記方法包括は、(a)溶媒を固体混合物に加えることと、(b)溶媒を加えた後に系の温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御することと、(c)系の温度を制御した後、固液分離操作を行うことと、を含み、上記溶媒は、分離される成分(即ち分離される高融点成分及び低融点成分)に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で溶媒における分離される成分の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g未満、より好ましくは0.001g/100g未満であり、溶媒の沸点が低融点成分の融点以上で、且つ系の温度Tが溶媒の沸点以下であることを意味する。
【0047】
[25]上記[24]に記載の方法によれば、ここで、分離される成分の融点差は10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、
及び/又は、低融点成分の重量百分率は50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0048】
[26]上記24又は25に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われ、好ましくは、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒を指し、且つ溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒である。
【0049】
[27]上記[24]~[26]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、上記固液分離は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.固液分離時、媒体としての溶媒を分離される混合物と接触させ、遠心力又は圧力の作用下で、溶媒が低融点成分を運び去って分離を促進すること、
b.固液分離時、媒体としての溶媒は噴射により提供されること、
c.固液分離時、媒体としての溶媒の使用量は分離される混合物質量の0.5倍以上であること、
d.固液分離は、工業用遠心分離機又はフィルタープレス、好ましくはろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機を使用すること。
【0050】
[28]上記[26]又は[27]に記載の方法によれば、ここで、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、好ましくは後段階の温度が前段階の温度以上であり、
好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+10℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0051】
[29]上記[26]又は[27]に記載の方法によれば、ここで、低融点成分の重量百分率は10%~40%、好ましくは15%~30%であり、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更に好ましくは第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0052】
[30]上記[24]~[29]の何れか一項に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離後、更にn回(n≧1)の固液分離を行い、好ましくは次回の固液分離の温度は前回の固液分離の温度以上であり、
各固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、上記溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、
或いは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒は温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒を指し、上記溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒である。
【0053】
[31]上記[30]に記載の方法によれば、ここで、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+10℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0054】
[32]上記[30]に記載の方法によれば、ここで、3回以上の固液分離を行い、最初の固液分離において温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+8℃以上且つ低融点成分の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+24℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0055】
[33]上記[30]に記載の方法によれば、ここで、低融点成分の重量百分率は10%~40%、好ましくは15%~30%であり、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、
更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0056】
[34]超分子アミノ酸の製造方法であって、上記[10]~[23]の何れか一項に記載のN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物から不純物を除去するステップを含み、また、不純物の除去プロセスにおいて構造の再構成を行う。
【0057】
[35]上記[34]に記載の方法により製造された超分子アミノ酸である。
【0058】
[36]上記[35]に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下、好ましくは3%以下、最も好ましくは0.5%~3%であり、
及び/又は、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【0059】
[37]超分子アミノ酸であって、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド自己組織化超分子構造を含み、且つN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。
【0060】
[38]上記[37]に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、中等ジペプチド含有量の超分子アミノ酸であり、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は5%以上、好ましくは10%以上、15%未満であり、
或いは、高ジペプチド含有量の超分子アミノ酸であり、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は15%以上、好ましくは20%以上である。
【0061】
[39]上記[37]又は[38]に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下、好ましくは3%以下、最も好ましくは0.5%~3%である。
【0062】
[40]上記[35]~[39]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、超分子アミノ酸に対して質量分析検出を行い、検出条件として、質量分析AB4500、質量分析システムQ1SCAN、イオン化方式ESI(-)、走査範囲m/z=200~600であり、541~545の範囲の質量分析スペクトルに特徴的なイオンピークを有し、
及び/又は、超分子アミノ酸に対して高速液体クロマトグラフィー検出を行い、検出条件として、機器にUV検出器を備えた高速液体クロマトグラフが使用され、カラムODS-2 HYPERSIL C18 250×4.6mm 5μm、波長210nm、移動相がメタノール:20mmol/LのpH3.0のリン酸二水素カリウム緩衝溶液=70:30(v/v)であり、クロマトグラム中の保持時間30~45minの範囲に3又は4個のピークを含むピーク群である。
【0063】
[41]上記[35]~[40]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:a.超分子アミノ酸固体粉末のマイクロドメインの形態は柱状又は棒状又は線状又は縄状を呈すること、b.超分子アミノ酸は、キャピラリーにより検出された最初融解温度が78℃以上、最終融解温度が87℃以上、好ましくは最初融解温度が80℃以上、最終融解温度が90℃以上であること、c.超分子アミノ酸のDSCピーク値(Peak temperature)は86℃以上、好ましくは88℃以上、より好ましくは90℃以上であること、d.超分子アミノ酸ナトリウム塩の数均分子量は5,000~250,000の間、好ましくは10,000~150,000の間、更に好ましくは15,000~100,000の間である。
【0064】
[42]上記[35]~[41]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.8%のアルギニンで中和した超分子アミノ酸水溶液で腕を60min洗浄した後、角質層の水分含有量が洗浄前の角質層の水分含有量より大きいこと、
b.超分子アミノ酸塩の水溶液はすすぎやすく、偽すべりがないこと、
c.GB/T 29679-2013試験を参照すると、超分子アミノ酸の質量パーセント濃度が0.5%の超分子アミノ酸塩溶液の0min気泡の量は130mmより大きく、好ましくは150mmより大きく、より好ましくは160mmより大きく、超分子アミノ酸の質量パーセント濃度が0.05%の超分子アミノ酸塩溶液の0min気泡の量は40mmより大きく、好ましくは60mmより大きく、より好ましくは80mmより大きいこと。
【0065】
[43]上記[35]~[42]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドにおけるN-長鎖アシル基は、オクタノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、イソステアロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基又はラウロイル基、最も好ましくはラウロイル基であり、
b.N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドにおけるアミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジン、最も好ましくはL-アラニンであり、
c.長鎖脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸又はラウリン酸、最も好ましくはラウリン酸である。
【0066】
[44]上記[35]~[43]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸によれば、ここで、N-長鎖アシルアミノ酸はN-ラウロイル-Lアラニン、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドはN-ラウロイル-Lアラニル-L-アラニン、長鎖脂肪酸はラウリン酸である。
【0067】
[45]超分子アミノ酸塩であって、上記[35]~[44]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸と塩基とから形成される。
【0068】
[46]上記[45]に記載の超分子アミノ酸塩によれば、ここで、上記塩基は、無機塩基、有機アミン類、塩基性アミノ酸から選ばれる1つ又は複数である。
【0069】
[47]上記[46]に記載の超分子アミノ酸塩によれば、ここで、無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、有機アミン類はアミン、アルカノールアミンから選ばれ、塩基性アミノ酸はアルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアルギニン又はリジンである。
【0070】
[48]上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、クリーニング組成物、洗浄組成物、化粧品組成物又はケア組成物に使用される。
【0071】
[49]上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、界面活性剤、乳化剤に使用される。
【0072】
[50]上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、油分や汚れの吸着又は細菌の吸着、或いは、除菌、除臭、農薬残留の除去に使用される。
【0073】
[51]上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩の用途であって、ここで、洗剤、歯磨き粉、洗濯洗剤、石鹸、粉末洗濯洗剤、食器洗い洗剤、マスク、シャンプー、シャワージェル、洗顔料、メイク落とし、口腔洗浄品、シェービング用品、ハンドウォッシュ、クリーニングローション、クリーニングクリームに使用される。
【0074】
[52]クリーニング組成物であって、ここで、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【0075】
[53]上記[52]に記載のクリーニング組成物によれば、ここで、上記クリーニング組成物は、洗剤、洗濯洗剤、石鹸、粉末洗濯洗剤、食器洗い洗剤、マスク、シャンプー、シャワージェル、洗顔料、メイク落とし、口腔洗浄品、シェービング用品、ハンドウォッシュ、クリーニングローション又はクリーニングクリームである。
【0076】
[54]歯磨き粉であって、ここで、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【0077】
[55]化粧品組成物であって、ここで、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは上記超分子アミノ酸のアルギニン塩又はリジン塩を含む。
【0078】
[56]歯磨き粉であって、摩擦剤、保湿剤、増粘剤及び界面活性剤を含み、歯磨き粉の総重量に対する各物質の重量百分率が以下の通りである:
界面活性剤 0.1~25%、
摩擦剤 10~50%、
保湿剤 5~40%、
増粘剤 0.1~6%、
上記界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上、更に好ましくは100 wt%の界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0079】
[57]スキンケア組成物であって、油分、界面活性剤、懸濁粒子を含み、各物質の重量百分率が以下の通りである:
油分 50~95%、
界面活性剤 0.5~30%、
懸濁粒子 0~45%、
上記界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上、更に好ましくは100wt%の界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0080】
[58]洗濯洗剤であって、界面活性剤、柔軟剤、キレート剤、脱イオン水、防腐剤及び香料を含み、各物質の重量百分率が以下の通りである:
界面活性剤 5~50%、
柔軟剤 0.1~3%、
キレート剤 0.1~5%、
脱イオン水 50~90%、
防腐剤 0.1~6%、
香料 0.1~2%、
上記界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上、更に好ましくは100wt%の界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0081】
[59]粉末洗濯洗剤であって、界面活性剤、摩擦剤を含み、各物質の重量百分率が以下の通りである:
界面活性剤 10~50%、
摩擦剤 50~90%、
上記界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上、更に好ましくは100wt%の界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0082】
[60]食器洗い洗剤であって、界面活性剤、脱イオン水、増粘剤、グリセリン、防腐剤及び香料を含み、各物質の重量百分率が以下の通りである:
界面活性剤 5~20%、
脱イオン水 70~90%、
増粘剤 1~2%、
グリセリン 5~10%、
防腐剤 0.1~6%、
香料 0.1~2%、
上記界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、好ましくは50wt%以上、より好ましくは80wt%以上、更に好ましくは100wt%の界面活性剤は、上記[35]~[47]の何れか一項に記載の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【発明の効果】
【0083】
従来技術と比べて、本発明は、以下の有益な技術効果を有する:
1.本発明者らは予想外に、pH値、塩基の添加量などの条件を制御することで、長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩並びに上記ジペプチドを含む組成物を低いコストで製造できることを見出した。
【0084】
2.本発明は、長鎖アシルアミノ酸から不純物を効率的に除去する画期的な方法を提案し、触媒及び加圧を必要とせず、条件が穏やかであり、その原理に基づいて、分離される成分融点の差及び特定の温度の溶媒を画期的に利用して固体混合物中の成分の分離を達成する。
【0085】
3.溶媒の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御することで、不純物を除去し、長鎖アシルアミノ酸の構造の再構成を制御して特定の構造を有する生成物を形成するのに役立つ。長鎖脂肪酸、長鎖アシルアミノ酸の融点によって適切な分離温度をスクリーニングすることは初めてであり、この方法は積極的に作用している。
【0086】
4.従来の精製操作では、常温の溶媒又は低温の溶媒を用いて生成物を洗浄することが多いが、最初に比較的低い温度で一部の低融点不純物を除去すると、後続の固液分離がより高い温度に耐えられるようになるということを意識していなかった。そのため、本発明は複数回の固液分離及び/又は温度勾配処理を行い、不純物の除去をより効果的に行う。
【0087】
5.固液分離と同時に一定温度の媒介溶媒で分離を促進し、媒介溶媒の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、媒介溶媒の絶え間ない噴射/洗浄(特に遠心力又は圧力条件での噴射)、分離により、不純物を効果的に除去すると同時に、N-長鎖アシルアミノ酸の構造の再構成を促進し、特定構造の生成物を形成することができる。ろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機は、遠心分離時に洗濯機の溶出の場合と同様に、溶液を絶えず振り去って、一定温度の媒介溶媒の配合で構造が再構成された生成物が得られる。
【0088】
6.従来のショッテン・バウマン縮合反応後処理は、石油エーテル、イソプロパノール、エタノールなどの有機溶媒を用いて洗浄又は再結晶を行わなければならず、本発明は、処理温度に対する合理的な制御及び/又は遠心力の作用で、水のみで処理できるため、環境保護の観点からもコストの観点からも、極めて重大な意味を有する。
【0089】
7.本発明の方法によれば、長鎖脂肪酸の含有量を合理的に制御し、ジペプチド(ラウロイルクロライドとアラニンナトリウムとの反応を例とする場合、ジペプチドはラウロイルアラニルアラニンである)の含有量を調整することができ、更にジペプチドの含有量が20%を超えた製品を容易に得ることができる。
【0090】
8.本発明の方法により得られる超分子アミノ酸又はその塩は、特別な構造を有し、油分や汚れなどの有機物を吸着し、油分や汚れの除去能力が高い。
【0091】
9.本発明の方法により製造された超分子アミノ酸又はその塩は、構造的に安定し、超分子の特性を有し、特別な空間構造を有するため、物理的除菌、除臭、農薬残留の除去などの特性を有し、良好な細菌抑制率を有し、大腸菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ・アルビカンスに対する抑制率が何れも、100%に達することができ、農薬残留を効果的に除去し、メチルアミン-リン、アセトメチルアミン-リンの何れに対しても高い除去率を有すると共に、良好な除臭性能を有する。
【0092】
10.超分子アミノ酸は、その特別な構造のため、グリースと結合して、手に粘着しない「固体」/クリーム状物を形成し、容易に除去でき、また、pHが5~14の範囲内で洗浄力を有し、適用範囲が非常に広い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】実施例33#サンプルの高速液体クロマトグラムである。
【
図2】実施例503#サンプルの高速液体クロマトグラムである。
【
図3】実施例604#サンプルの高速液体クロマトグラムである。
【
図4】ESIアニオンモードのフルスキャンモードで収集されたスペクトルである。
【
図6】実施例1のサンプル溶液のSIRスペクトルである。
【
図8】実施例1のサンプル溶液のPDAチャネルのスペクトル及び積分図である。
【
図9】実施例1のサンプル溶液のQDaフルスキャンチャネルのスペクトル及び積分図である。
【
図11】実施例502#サンプルのDSC分析である。
【
図12】実施例501#サンプルの最初の固液分離後のDSC分析である。
【
図13】実施例501#サンプルの2回目の固液分離後のDSC分析である。
【
図14】実施例501#サンプルの3回目の固液分離後のDSC分析である。
【
図15】実施例503#サンプルの最初の固液分離後のDSC分析である。
【
図16】実施例503#サンプルの2回目の固液分離後のDSC分析である。
【
図17】実施例503#サンプルの3回目の固液分離後のDSC分析である。
【
図18】実施例502#粗生成物の走査電子顕微鏡写真であり、ここで18aは200倍の走査電子顕微鏡写真、18bは500倍の走査電子顕微鏡写真、18cは2000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【
図19】実施例501#の粗生成物洗浄後の走査電子顕微鏡写真であり、ここで19aは200倍の走査電子顕微鏡写真、19bは1000倍の走査電子顕微鏡写真、19cは2000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【
図20a】二重量子フィルター水素スペクトル(DQ-filtered)である。
【
図20b】二重量子フィルター水素スペクトル(DQ-filtered)である。
【
図20c】2D
1H-
1H DQ-SQの2次元スペクトルである。
【
図20e】2D
13C-
1H FSLG-HETCORスペクトルである。
【
図21】実施例6のサンプルの質量分析スペクトルである。
【
図23】角質層の水分含有量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
一実施形態において、長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩を低コストで製造する方法、及び上記ジペプチドを含む組成物を製造する方法を提供する。長鎖アシルアミノ酸ジペプチドは長鎖アシルアミノアシルアミノ酸を指し、典型的には長鎖アシルグリシルグリシン、長鎖アシルグルタミルグルタミン酸、長鎖アシルアラニルアラニンなどである。
【0095】
具体的には、当該製造方法は、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含み、反応後の系(アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の系のみを指す)のpH値は8未満であり、好ましくは7.5又は7以下、更に好ましくはpH値は3、3.5、4、4.5又は5以上、pH値は7、6.9、6.8、6.7、6.6、6.5又は6以下である。好ましくはpH値は5~7、最も好ましくはpH値は5~6.5である。
【0096】
従来のショッテン・バウマン反応は、従来の反応メカニズムによって、酸ハロゲン化物とアミンとの縮合に関し、アミンがまず求核剤として酸ハロゲン化物に対して求核性付加/置換を行って、アミドカチオン中間体を形成し、次に塩基性条件で脱プロトン化してアミド生成物を得ると考えられているため、反応プロセス全体において系のpH値が8以上とするように要求されている。アミンの反応活性はその塩基性に依然し、塩基性が強いほど反応速度が速くなり、系を塩基性に制御しないと、アミン基質は系内で生成されたBronsted酸の副生成物によりプロトン化され、活性を失う可能性がある。
【0097】
【0098】
本発明は予想外に、反応系のpH値を8以上に制御しないと、酸ハロゲン化物の絶えず滴下に伴って、反応系のpH値が低下し、反応終了後のpH値が8未満、例えば7.5以下、特に7以下又は7未満に制御すると、長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の生成に有利であることを見出した。
【0099】
一般的には、塩基の添加量を制御することで反応系の最終的なpH値を制御することができる。塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させるステップを含む研究がなされ、反応プロセス全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2(アミノ酸塩はアミノ酸と塩基とのモル比に換算)、好ましくは2:1~1:2、より好ましくはアミノ酸と塩基とのモル比は1.9:1又は1.8:1又は1.7:1又は1.6:1又は1.5:1又は1.4:1又は1.3:1又は1.2:1又は1.1:1以下、且つ1:1.9又は1:1.8又は1:1.7又は1:1.6又は1:1.5又は1:1.4又は1:1.3又は1:1.2又は1:1.1又は1:1以上であり、例えばモル比は2:1~1:1.8又は1.8:1~1:1.8又は1.7:1~1:1.7、より好ましくは1.5:1~1:1.5であり、最も好ましくは1.4:1~1:1.4である。アミノ酸と塩基とのモル比は、アミノ酸の総量と塩基の総量とのモル比を指す。
【0100】
塩基は1回で加えてもよく、複数回加えてもよく、単独で反応系に加えてもよく、長鎖酸ハロゲン化物と共に加えてもよい。長鎖酸ハロゲン化物は1回で加えてもよく、複数回に分けて反応系に加えてもよい。しかし、本発明は、塩基及び/又は酸ハロゲン化物を複数回に分けて加えたとしても、反応のpH値を塩基性に維持することを必ずしも要求されない。
【0101】
更に、本発明の製造方法に関しては、アミノ酸及び/又はその塩に長鎖酸ハロゲン化物を加え、また長鎖酸ハロゲン化物を加える際に、反応液を塩基性に維持するように制御する必要がない条件として、好ましくは、反応液のpH値を8以上に維持するように制御する必要がなく、或いは、pH値を維持するために長鎖酸ハロゲン化物を添加すると同時に塩基を加える必要がなく、或いは、系のpH値を維持するために水酸化ナトリウムなどの塩基の滴下速度、使用量を制御する必要がなく、或いは、長鎖酸ハロゲン化物を添加する前後、系のpH値の差が2以上、好ましくは3、4、5又は6以上であることである。即ち、従来のショッテン・バウマン反応のようにpH値を制御することではなく、反応の進行に伴って反応系のpH値を徐々に降下させる。
【0102】
特定の塩基の添加量(アミノ酸と塩基とのモル比)及び/又はpH値を制御することで、本発明は、大量のジペプチ生成物を非常に容易に取得し、好ましくは、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後、生成物中のN-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%以上である。
【0103】
一形態において、酸ハロゲン化物とアミノ酸とを縮合反応させた後、ジペプチドの含有量が中程度、即ち、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の重量百分率は5%以上、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上且つ15%未満である。
【0104】
一形態において、酸ハロゲン化物とアミノ酸とを縮合反応させた後、ジペプチドが含有量が高く、即ち、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩の重量百分率は15%以上、好ましくは20%以上である。
【0105】
一好ましい形態において、長鎖アシルアミノ酸ジペプチド及び/又はその塩或いは関連組成物の製造方法は、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造するステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物を加えるか、又は上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び塩基を加えるステップと、を含み、また、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.ステップ(1)で製造されたアミノ酸塩溶液のpH値は7.5~14、好ましくはpH値は8又は8.5又は9又は9.5以上、且つpH値は13.5又は13又は12.5又は12又は11.5又は11以下、好ましくはpH値は8~12、より好ましくはpH値は9~11であり、また、ステップ(2)反応後、系のpH値は8未満、例えば7.5以下、好ましくはpH値は7以下又は7未満、更に好ましくはpH値は3、3.5、4、4.5又は5以上、pH値は7、6.9、6.8、6.7、6.5又は6以下、好ましくは、pH値は5~7、最も好ましくはpH値は5~6.5、例えば6程度であること、
b.ステップ(1)及びステップ(2)の反応系全体において、アミノ酸と塩基とのモル比は3:1~1:2、好ましくは2:1~1:1.8、また好ましくは、アミノ酸と塩基とのモル比は1.9:1又は1.8:1又は1.7:1又は1.6:1又は1.5:1又は1.4:1又は1.3:1又は1.2:1又は1.1:1以下、且つ1:1.9又は1:1.8又は1:1.7又は1:1.6又は1:1.5又は1:1.4又は1:1.3又は1:1.2又は1:1.1又は1:1以上であり、アミノ酸と塩基とのモル比は、更に好ましくは1.8:1~1:1.8、好ましくは1.7:1~1:1.7、最も好ましくは1.5:1~1:1.5又は1.4:1~1:1.4であること、
c.ステップ(1)で得られたアミノ酸塩溶液のpH値は、ステップ(2)におけるアミノ酸塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の系のpH値より大きく、且つ両者の差が2以上、好ましくは3、4、5又は6以上であること。
【0106】
塩基の添加量が多すぎるか、又は反応後のpH値が高すぎる場合、反応生成物の組成は、一般的なショッテン・バウマン反応で得られた生成物と類似し、即ち、生成物は、長鎖アシルアミノ酸(ペプチド)が主であり、長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの含有量が非常に低い(一般的には2%未満、更に0である)。塩基の添加量が少なすぎると、酸ハロゲン化物の滴下時に沈殿が速く発生し、酸ハロゲン化物の加水分解が激しくなり、反応が効率的に進行できず、収率も低下する。従って、上記のような特定量の塩基を含むことは有利であり、且つ上記条件a、b、cを同時に満たすことが好ましい。
【0107】
一好ましい形態において、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物との反応は、下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.上記反応は水又は水と親水性有機溶媒との混合溶液の存在下で行われ、上記親水性有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはアセトンであり、好ましくは、水と親水性有機溶媒との体積比は1:(0~2)、好ましくは1:(0.8~1.5)であること、
b.上記反応の温度は35℃以下、好ましくは30℃以下であること、
c.アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とのモル比は1より大きく、好ましくは2:1~1.1:1、更に好ましくは1.5:1~1.2:1であること。
【0108】
条件a、b、cを同時に満たすことが好ましい。
【0109】
アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物との反応は、媒体として水を使用する場合、例えば、まずアミノ酸及び塩基を水に溶解して均一に撹拌し、次にその中に長鎖酸ハロゲン化物を加える場合、このような反応系は環境により優しいが、長鎖酸ハロゲン化物の加水分解が比較的多く、反応不純物が増加し、収率が低下する。媒体として水と親水性有機溶媒との混合溶液を使用する場合、親水性有機溶媒の量の増加に伴い、長鎖酸ハロゲン化物の加水分解を良好に制御することができるが、親水性有機溶媒の添加量が多すぎると、環境面、コスト面などで不利となるほか、反応の進行にも不利となり、収率の低下などを招く。
【0110】
反応の温度は、好ましくは、低い温度、例えば40℃以下、好ましくは35℃又は30℃又は25℃以下に制御し、例えば、反応全体において、温度を20~30℃に制御することができる。温度が高すぎると、酸ハロゲン化物の加水分解が増加する。当然ながら、温度が低すぎると、反応性が悪くなり、好ましくは10℃以上に制御する。
【0111】
ジペプチドの生成を促進するために、好ましくはアミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とのモル比は1より大きい。当然ながら、アミノ酸が多いほど良いとは限らず、アミノ酸が多すぎると、十分に反応できず、後処理圧力が増加し、好ましくはアミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とのモル比は2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5又は1.4以下、1、1.1、1.2、1.3以上であり、例えば2:1~1.1:1、更に好ましくは1.5:1~1.2:1である。
【0112】
更に、上記製造方法は、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させた後の生成物を酸性化してN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップを更に含み、好ましくは、酸性化後にpH値は1又は2以上、pH値は3又は4以下、より好ましくはpH値は1~2である。上記粗生成物は長鎖脂肪酸、塩化ナトリウムなどの不純物を含む生成物を指す。組成物にとっては、その粗生成物に長鎖アシルアミノ酸と長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの両方が含まれる。
【0113】
上記生成物は、既知のプロセス又は本発明の下記不純物除去プロセスを用いて不純物を更に除去し、長鎖アシルアミノ酸及び長鎖アシルアミノ酸ジペプチドを含む組成物並びに関連する超分子アミノ酸を得ることができ、分離して長鎖アシルアミノ酸ジペプチドを得ることもできる。
【0114】
一好ましい形態において、アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれる1つ又は複数である。更に好ましくは、アミノ酸は、アラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジンから選ばれ、最も好ましくはL-アラニンである。
【0115】
一好ましい形態において、長鎖酸ハロゲン化物における長鎖アシル基は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来する。更に好ましくは、長鎖酸ハロゲン化物は、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ウンデカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、ミリストイルクロライド、ペンタデカノイルクロライド、パルミトイルクロライド、ステアロイルクロライド、オイルクロライド、リノールクロライド、イソステアロイルクロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライドから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸クロライド又はラウロイルクロライド、最も好ましくはラウロイルクロライドである。
【0116】
一好ましい形態において、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアから選ばれる1つ又は複数である。更に好ましくは、塩基は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれる。
【0117】
一実施形態において、N-長鎖アシルアミノ酸から不純物を除去する方法を提供し、また、当該方法を用いて不純物を除去するプロセスにおいて、構造が再構成され、特定構造の超分子アミノ酸が形成される。
【0118】
上記の不純物除去方法は、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物と溶媒とを混合し(N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物に溶媒を加えてもよく、溶媒にN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を加えてもよく、混合後に「系」と呼ばれる)、任意選択で撹拌し、系の温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御するステップを含み、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。産業化生産のコスト及び環境の観点から、より好ましくは溶媒として水のみを使用する。
【0119】
上記の特定温度を選択するのは、N-長鎖アシルアミノ酸と長鎖脂肪酸の融点が異なるためであり、
図11に示すように、ラウロイルアラニンを例にとると、図中のラウリン酸の対応するピーク値は42.46℃、ラウロイルアラニン(粗生成物)のピーク値は78.95℃であり、温度をラウリン酸などの長鎖脂肪酸の融点以上に制御する場合、長鎖脂肪酸の不純物を融解させ、長鎖脂肪酸をより良好に除去することができ、温度をN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する場合、N-長鎖アシルアミノ酸の融解を回避することができる。温度が高すぎると、固体が融解した後、固液分離が全く行われず、特定の温度を選択するだけで、固液2相を形成することができる。長鎖脂肪酸、長鎖アシルアミノ酸の融点に応じて、適切な不純物除去温度を選択することは初めてであり、また、当該方法は、不純物の効率的な除去、特定空間構造の形成、生成物の性能に何れも積極的に作用している。
【0120】
上記N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物と溶媒との混合は、溶媒の別途添加に加えて、粗生成物自体に溶媒が含まれる場合も含まれる。例えば、粗生成物自体に溶媒が含まれる典型的な場合は、塩酸/硫酸による酸性化後、固液分離が行われず、この時に溶媒の別途添加を必要とせず、任意選択で溶媒を添加してよく、依然として「N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物と溶媒との混合」の条件を満たす。
【0121】
好ましくは、不純物の除去は主に、長鎖脂肪酸(ラウリン酸など)及び塩などの水溶性不純物、未反応のアミノ酸などを除去することである。
【0122】
上記N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、市販されているN-長鎖アシルアミノ酸、或いはアミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とがショッテン・バウマン反応により得られたN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物、或いは上記のジペプチドを含む粗生成物である。上記粗生成物は長鎖脂肪酸、塩化ナトリウムなどの不純物を含む生成物を指す。
【0123】
「N-長鎖アシルアミノ酸の融点以下」で言及されたN-長鎖アシルアミノ酸は、「N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物」で言及されたN-長鎖アシルアミノ酸と同じであり、何れも長鎖脂肪酸により誘導されるものであり、即ち、上記N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物、長鎖脂肪酸は、同じ「長鎖」を有する。例えば、ラウロイルアラニン粗生成物の場合、系の温度Tを「長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下」に制御することは、系の温度Tを「ラウリン酸の融点以上且つラウロイルアラニン融点以下」に制御することを意味する。類似的には、ラウロイルグルタミン酸粗生成物の場合、系の温度Tを「ラウリン酸の融点以上且つラウロイルグルタミン酸の融点以下」に制御することを意味し、ラウロイルサルコシン粗生成物の場合、系の温度Tを「ラウリン酸の融点以上、且つ在ラウロイルサルコシン融点以下」に制御することを意味する。
【0124】
系の温度Tに対する制御の場合、その全体的な目的は温度を制御することである。形態上で多様であり、例えば、反応釜/容器に溶媒を加えた後、N-長鎖アシルアミノ酸粗生成物を加え、次に加熱して長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に昇温する。反応釜/容器にN-長鎖アシルアミノ酸粗生成物を加えた後、溶媒/熱水などの一定温度の溶媒(任意選択で加熱)を加え、次に温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御することもできる。
【0125】
撹拌によって、より均一に混合することができ、当然ながら、撹拌と同じ混合効果を奏する他の操作を用いることもできる。混合効果を考慮すると、撹拌又は他の類似する操作が好ましい。
【0126】
選択的には、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物に溶媒を加えると同時に、アミノ酸を混合するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物にアミノ酸水溶液などのアミノ酸溶液を加えて、系全体の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0127】
上記の系の温度を制御した後、固液分離操作(最初の固液分離)を行う。
【0128】
一好ましい形態において、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われる。好ましくは、固液分離時にまた、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記の一定温度の溶媒は温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指し、溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。産業化生産のコスト及び環境の観点から、より好ましくは溶媒として水のみを使用する。
【0129】
本発明において、媒体としての溶媒は「媒介溶媒」と略称される。媒介溶媒の温度に関しては、例えばラウロイルサルコシン粗生成物の場合、媒介溶媒の温度Tをラウリン酸の融点以上、且つラウロイルサルコシン融点以下に制御すべきであり、ラウロイルアラニン粗生成物の場合、媒介溶媒の温度Tをラウリン酸の融点以上、且つラウロイルアラニン融点以下に制御すべきである。
【0130】
理解を容易にするために、「一定温度の溶媒を媒介として分離を促進する」ことは、従来の化学分離における溶出と類似しているが、溶出とは異なる。具体的には、上記の一定温度で、粗生成物は固液2相(長鎖脂肪酸の融点以上、長鎖脂肪酸の不純物が融解して液相を形成し、N-長鎖アシルアミノ酸が固相)に分けられ、媒介溶媒が粗生成物と接触した後、液相を徐々に(好ましくは遠心力又は圧力の作用下で)持ち去ることができる。即ち、媒介溶媒による処理は、生成物/粗生成物を洗浄する方法、生成物/粗生成物を噴射する方法など、媒介溶媒を粗生成物と接触させることを意味する。
【0131】
好ましくは、固液分離時、媒体としての溶媒は粗生成物と連続的に接触し、遠心力又は圧力の作用下で、媒介溶媒が除去されると同時に不純物も一緒に持ち去られて分離を促進する。
【0132】
好ましくは、固液分離と同時に媒介溶媒で処理する。上記の「固液分離と同時に媒介溶媒で処理する」とは、固液分離の少なくとも1つの段階において、固液分離しながら、処理することを意味する。遠心分離機による固液分離操作を例として、粗生成物と溶媒との混合溶液を遠心分離機に移した後、遠心分離機を起動し、まず液体を分離し、次に噴射装置をオンにして熱水などの媒介溶媒を噴射し、噴射すると同時に遠心分離装置が遠心分離を停止せず、或いは、混合溶液を遠心分離機に移した後、遠心分離機を起動し、遠心分離を開始する時に噴射装置をオンにして熱水などの媒介溶媒を噴射し、噴射すると同時に遠心分離装置が遠心分離を停止しなくてもよい。本発明は、驚くべきことに、少なくとも1つの段階において遠心分離と媒介溶媒の処理操作が同時に行われ、この特別な操作環境において、超分子アミノ酸による特定空間構造の形成により有利であり、生成物が優れた性能を示すことを見出した。
【0133】
固液分離時に媒介溶媒の使用方法として噴射が好ましく、即ち、媒介溶媒を粗生成物に噴射する方法によって、粗生成物と連続的に接触する目的を達成し、媒介溶媒の1回当たりの使用量は粗生成物の質量の0.5倍以上、好ましくは0.5~3倍、より好ましくは1~2倍である。少なすぎると、処理効果が低く、多すぎると、水や電気資源を浪費し、生成物も摩耗しやすい。
【0134】
更に、上記媒介溶媒処理は遠心力又は圧力の作用下で行なわれる。遠心力の作用下での処理とは、溶媒で処理(噴射/洗浄など)する時、固液分離が遠心力により行われることを意味し、最も典型的には遠心分離機の内部で行われ、媒介溶媒で処理(噴射/洗浄など)する時、遠心分離機も動作しているため、遠心力作用の環境が与えられる。圧力の作用下での処理とは、溶媒で処理する時、固液分離が圧力により行われることを意味し、圧力がかけられる装置/設備であれば可能であり、最も典型的にはフィルタープレスの内部で行われ、処理時にフィルタープレスも動作しているため、圧力作用の環境が与えられる。
【0135】
更に、固液分離には遠心分離機又はフィルタープレスが使用される。ここで、遠心分離機には、工業用遠心分離機が特に好ましい。特に、ろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機が好ましい。
【0136】
不純物をより良く除去し、構造の再構成に有利であるなどの観点から考慮すると、好ましくは複数の温度段階/温度勾配処理を使用するか、又は最初の固液分離後、更にn(n≧1)回の固液分離を行うこともできる。
【0137】
一好ましい形態において、媒介溶媒の温度Tに複数の温度段階(「媒介溶媒温度勾配処理」又は「温度勾配処理」)が存在する。好ましくは、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、更に好ましくは、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0138】
好ましくは、3つ以上(3つを含む)の温度段階を使用し、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1つの中間段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+8℃以上且つ長鎖脂肪酸の融点+18℃以下に制御し、最後の段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+24℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0139】
好ましくは、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%以上である場合、媒介溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、更に好ましくは、第1段階の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0140】
複数の温度段階が存在する勾配処理を利用する原因は、粗生成物全体の温度に対する耐性が、不純物の含有量の低下に伴って徐々に向上し(例えば、
図11~14から分かるように、毎回処理後にピーク値が徐々に右にシフトする)、最初により高い温度を使用すると、大部分の生成物が融解し、低すぎる温度を使用すると、長鎖脂肪酸不純物が融解できず、長鎖脂肪酸を効率的に除去することができない。まず低いが長鎖脂肪酸の融点の温度より高い温度を使用し、一部の不純物を先に除去し、処理後の系の温度耐性がある程度向上し、この場合には更により高い処理温度を使用し、より多くの不純物を除去し、次に更に処理温度を向上させることができる。粗生成物不純物の含有量が高い時、系の温度耐性が低く、温度が高すぎる時、生成物全体にペースト状を示し、更に固体が徐々に溶解し、ろ過分離に不利であるため、最初の処理温度が長鎖脂肪酸の融点に近接するほうが好ましい。そうしないと、温度調整が適切でなく、開始温度が高すぎると、過剰の長鎖脂肪酸が容易に融解し、これらの長鎖脂肪酸が「溶媒」としてN-長鎖アシルアミノ酸を更に溶解し、最終的に生成物の収率が低下する。
【0141】
長鎖アシルアミノ酸に含まれる長鎖脂肪酸がラウリン酸である場合、ラウリン酸の融点が44℃程度であるため、幾つかの関連する実施形態において、媒介溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、第1段階の温度を60℃以下に制御し、好ましくは44~60℃、より好ましくは50~60℃、更に好ましくは55~58℃に制御する。少なくとも1つの後続段階の温度を60℃以上に制御し、好ましくは65℃以上又は60~95℃、62~90℃、65~80℃、65~77℃、65~75℃、より好ましくは65~70℃、66~68℃に制御する。
【0142】
少なくとも1つの後続段階の温度を60℃以上に制御するについて、例えば、合計3つの温度段階がある場合、第1段階の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、第2段階の温度を60℃以上例えば65℃に制御し、第3段階の温度を60℃以上例えば70℃に制御してもよく、第1段階の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、第2段階の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、第3段階の温度を60℃以上例えば65℃に制御してもよく、第1段階の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、第2段階の温度を60℃以上例えば65℃に制御し、第3段階の温度を50~60℃例えば60℃に制御してもよいと理解できる。好ましくは、第1段階の温度を50~60℃に制御し、その後に徐々に増加した温度を使用する。
【0143】
また例えば、合計4つの温度段階がある場合、第1段階の温度を50~60℃に制御し、第2段階の温度を60℃以上に制御し、第3段階の温度を60℃以上に制御し、第4段階の温度を60℃以上に制御してもよく、第1段階の温度を50~60℃に制御し、第2段階の温度を50~60℃に制御し、第3段階の温度を60℃以上に制御し、第4段階の温度を60℃以上に制御してもよく、第1段階の温度を50~60℃に制御し、第2段階の温度を60℃以上に制御し、第3段階の温度を50~60℃に制御し、第4段階の温度を60℃以上に制御してもよい。より好ましくは、前の1~2段階に50~60℃、その後60℃以上とする。
【0144】
上記の全ての形態に関して、より好ましくは、全ての段階の温度が徐々に増加するか、又は全体的に徐々に増加し(中間段階の一部の温度が基本的に同じであることは可能である)、即ち、後段階の処理温度が前段階より高い。好ましくは3、4、5又は6以上の温度段階があり、一般的には不純物の含有量及び処理の便利度、コスト、効率に応じて選択することでき、通常、3つの温度段階がより好ましい。
【0145】
不純物の除去効果を十分に達成するために、媒介溶媒処理時に時々ひっくり返して、媒介溶媒が固体とできる限り接触するように確保する。
【0146】
別の好ましい形態において、最初の固液分離後、更にn(n≧1)回の固液分離が行われる。毎回固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行うことであり、上記溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。
【0147】
或いは、固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進することであり、上記一定温度の溶媒とは、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する溶媒を指す。上記媒介溶媒は水若しくは有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である。産業化生産のコスト及び環境の観点から、より好ましくは媒介溶媒として水のみを使用する。媒介溶媒に関する内容については、前述の説明を参照することができ、ここで、その説明を省略する。
【0148】
毎回固液分離の操作は互いに独立的であり、即ち、上記の2種類の固液分離において独立的に選択して組合わせることができ、例えば一部の固液分離操作では一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、他の一部の固液分離操作では媒介溶媒を使用するように選択することができる。
【0149】
好ましくは、毎回固液分離と同時に媒介溶媒で処理し、より好ましくは、固液分離時に噴射により媒介溶媒が使用される。
【0150】
固体と溶媒とを混合した後の系の温度T又はTn、及び媒介溶媒の温度T又はTnの両方は、限定された温度範囲に適合する限り、互いに同じであってもよく、異なってもよく、例えば最初の固液分離において、固体と溶媒とを混合した後の系の温度Tは、後続の媒介溶媒の温度Tと異なってもよいが、操作の利便性、制御の利便性などの観点から、好ましくは同じである。
【0151】
最初の固液分離において、温度Tをに長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0152】
特に断りのない限り、本発明は、毎回の固液分離において、系の温度及び媒介溶媒の温度が同じ温度区間を使用し(媒介溶媒を使用する場合)、例えば系の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に制御する場合、媒介溶媒の温度Tnを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+15℃以下に同様に制御する。操作の利便性の観点から、好ましくは上記2つのTnは、同じ温度区間にあるだけでなく、その値が基本的に同じである(温度誤差が許容される)。
【0153】
好ましくは、3回以上(3回を含む)の固液分離が行われ、最初の固液分離の温度を長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離の温度を長鎖脂肪酸の融点+8℃以上且つ長鎖脂肪酸の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離の温度を長鎖脂肪酸の融点+24℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0154】
好ましくは、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を製造する時に溶媒として水のみを使用するか、又はN-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物における長鎖脂肪酸不純物の含有量が10%以上である場合、最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+15℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御し、更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを長鎖脂肪酸の融点以上且つ長鎖脂肪酸の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを長鎖脂肪酸の融点+20℃以上且つN-長鎖アシルアミノ酸の融点以下に制御する。
【0155】
幾つかの実施形態において、長鎖脂肪酸がラウリン酸である場合、最初の固液分離において、温度Tを60℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを60℃以上に制御し、更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを50~60℃に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを65~70℃に制御する。
【0156】
上記の全ての形態において、より好ましくは、毎回の固液分離の温度が基本的に徐々に増加し、即ち次回の固液分離の温度が前回の固液分離以上である。好ましくは3、4、5又は6回以上の固液分離が行われ、一般的には不純物の含有量及び処理の容易さ、コスト、効率に応じて選択することができ、一般的には3回の固液分離がより好ましい。
【0157】
上記の不純物を除去する全ての形態において、溶媒が有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶液である場合、有機溶媒は好ましくは長鎖脂肪酸、長鎖アシルアミノ酸が微溶性、難溶性又は不溶性である有機溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性とは、20℃で有機溶媒における長鎖脂肪酸及びN-長鎖アシルアミノ酸の溶解度が1g/100g未満、好ましくは溶解度が0.01g/100g未満、より好ましくは0.001g/100g未満であることを意味し、例えば有機溶媒は石油エーテル、アセトンを選択することができる。
【0158】
本発明者らは予想外に、最初の固液分離の温度を適切に制御するため、一部の不純物(低融点不純物など)を選択的にろ過することができ、これらの不純物をろ過した後に温度を上昇させると、ペースト状になることなく、系全体がより高い温度に耐えられ、従って、不純物をより良く除去する観点から、後続の固液分離のステップにおいて、温度を適当に上昇させることができる(従来の精製操作では、この点を意識せず、常温溶媒又は低温溶媒で洗浄/溶出することが多い)ことを見出した。しかし、温度が高いほど良いわけではなく、高すぎると、依然として固体を直接融解させる。具体的には、好ましい温度範囲は長鎖脂肪酸及び長鎖アシルアミノ酸の種類によって僅かに異なっている。
【0159】
少なくとも1回の固液分離において、その溶媒/系の温度Tnを60℃以上に制御するについて、以下の通り理解できる。例えば、合計3回の固液分離が行われる場合、1回目の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、2回目の温度を60℃以上に制御し、3回目の温度を60℃以上に制御してもよく、1回目の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、2回目の温度を50~60℃例えば50℃に制御し、3回目の温度を60℃以上に制御してもよく、1回目の温度を50~60℃に制御し、2回目の温度を60℃以上に制御し、3回目の温度を50~60℃に制御してもよい。好ましくは、1回目の温度を50~60℃に制御し、後続に好ましくは徐々に増加する温度を使用する。類似する定義及び関連する原理の詳細については、上記媒介溶媒温度勾配処理の部分を参照する。
【0160】
n回の固液分離及び媒介溶媒温度勾配処理は同時に行われてもよく、1種のみ行われてもよい。操作の利便性の観点から考慮すると、n回の固液分離のみ行われることができる。
【0161】
一実施形態において、本発明の長鎖脂肪酸からのN-長鎖アシルアミノ酸の分離は、両者の融点の差を利用すること、及び一定温度の溶媒を使用することで混合物が固液2相を形成するのを促進することを考慮すると、当該原理は、固体混合物中の成分の分離に広く適用されるため、融点の差を利用して固体混合物中の成分を分離する方法を提供する。当該方法は、従来の蒸発、蒸留、結晶化、ろ過、溶媒抽出、吸収、吸着、カラムクロマトグラフィー、透析、浸透、限外ろ過などの方法とは異なる全く新規な分離方法に属する。
【0162】
固体混合物の分離に関して、そのうちの一成分の含有量が低く、不純物とされる場合、それに対する分離は、不純物除去プロセスに相当する。
【0163】
本発明に記載の固体混合物は、完全に乾燥した固体混合物である必要がなく、有機溶媒、水を含んでもよく、典型的には化学反応後の粗生成物である。
【0164】
本発明は、物理的特性が近い多成分混合物の分離に特に適する。例えば、溶解度が近い成分、共沸物を形成する成分又は溶融後に相溶可能な成分の場合、従来の分離方法を用いて分離しにくいが、本発明の方法を使用すると、分離の目的を達成することができる。
【0165】
従来技術において、融点の差を利用して分離する例もあるが、主に結晶の分離(例えばCN102423542B)、結晶分離+溶解度分離(例えばCN106590939B)、溶融後直接分離排出(例えばCN111039776A)に使用され、一定温度の溶媒により処理されることによって、混合物が固液2相を形成し、次に固液分離を行うか、又は媒介溶媒の補助で固液分離を行うことには関与しない。
【0166】
具体的には、本発明は、融点の差を利用して固体混合物中の高融点成分と低融点成分を分離する方法であって、上記方法が(a)溶媒を混合物に加えること、(b)溶媒を加えた後に系の温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御すること、(c)系の温度を制御した後、固液分離操作を行うことを含み、上記溶媒が分離される成分(即ち分離される高融点成分及び低融点成分)に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性とは20℃で溶媒における分離される成分の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g、より好ましくは0.001g/100gであることを意味し、溶媒の沸点が低融点成分の融点以上で、且つ系の温度Tが溶媒の沸点以下である、方法を提供する。
【0167】
ここで上記混合物は、高融点成分と低融点成分とからなり、2成分に限定されることなく、例えば2~3個の高融点成分、2~3個の低融点成分であってもよい。「温度Tが低融点成分の融点以上である」とは、温度Tが全ての低融点成分の融点以上であることを意味し、「温度Tが高融点成分の融点以下である」とは、温度Tが全ての高融点成分の融点以下であることを意味する。理解を容易にするために、混合物には、融点がそれぞれ34℃、44℃、54℃、64℃である4つの成分A、B、C、Dが含まれると仮定し、Dと他の成分とを分離する場合、低融点成分をA、B、C、高融点成分をDとし、温度Tは54℃以上且つ64℃以下に設定される。A、BとC、Dとを分離する場合、低融点成分をA、B、高融点成分をC、Dとして、温度Tは44℃以上且つ54℃以下に設定される。当然ながら、A、BとC、Dとを分離した後、依然として本発明の方法を利用してA、BをAとBに分離し、C、DをCとDに分離することができる。好ましくは、2成分の分離を利用する。
【0168】
好ましくは、分離される成分の融点差は10℃以上、より好ましくは15℃、20℃、25℃、30℃又は35℃以上である。低融点成分、高融点成分が複数ある場合、分離される成分の融点差とは、低融点成分中の最も高い融点と高融点成分中の最も低い融点との間の差を指す。
【0169】
好ましくは、低融点成分の重量百分率は50%以下、より好ましくは45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%以下である。上記重量百分率は混合物全体に対するものである。
【0170】
好ましくは、上記固液分離は遠心力又は圧力の作用下で行われ、より好ましくは固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進し、上記一定温度の溶媒とは、温度Tを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒を指し、媒介溶媒は分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で溶媒における分離される成分の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g、より好ましくは0.001g/100g未満であることを意味する。上記媒介溶媒は、他の実施形態における関連記述を参照することができる。
【0171】
好ましくは、上記固液分離は下記条件のうちの1つ又は複数を満たす:
a.固液分離時、媒体としての溶媒を分離される混合物と接触させ、遠心力又は圧力の作用下で、溶媒が低融点成分を一緒に運び去って分離を促進すること、
b.固液分離時、媒体としての溶媒は噴射により提供されること、
c.固液分離時、媒体としての溶媒の使用量は分離される固体混合物質量の0.5倍以上であること、
d.固液分離は、工業用遠心分離機又はフィルタープレス、好ましくはろ過メッシュ又はろ布を備えたろ過式遠心分離機を使用すること。
【0172】
一形態において、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、好ましくは後段階の温度が前段階の温度以上である。
【0173】
好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下又は+15℃以下(高融点成分、低融点成分の融点差が大きい場合、+15℃以下を選択)に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+10℃又は+15℃以上(高融点成分、低融点成分の融点差が大きい場合、+15℃以上を選択)且つ高融点成分の融点以下に制御し、更好ましくは、第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0174】
好ましくは、低融点成分の重量百分率が10%~40%、特に15%~30%である場合、媒体としての溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在し、且つ第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、更に好ましくは第1段階の温度を低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、少なくとも1つの後続段階の温度を低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0175】
一形態において、最初の固液分離後、更にn(n≧1)回の固液分離を行い、好ましくは次回の固液分離の温度は前回の固液分離の温度以上である。
【0176】
毎回固液分離の具体的なステップは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、混合後の系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行うことである。
【0177】
或いは、前回の固液分離後に得られた固体と溶媒とを混合し、任意選択で撹拌し、系の温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、次に固液分離操作を行い、固液分離時、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進することであり、上記一定温度の溶媒は、温度Tnを低融点成分の融点以上且つ高融点成分の融点以下に制御する溶媒である。
【0178】
毎回の固液分離において、上記溶媒(媒介溶媒を含む)は、分離される成分に対して微溶性、難溶性又は不溶性である溶媒であり、上記微溶性、難溶性又は不溶性は、20℃で溶媒における分離される成分の溶解度が1g/100g未満、好ましくは0.01g/100g、より好ましくは0.001g/100g未満であることを意味する。
【0179】
好ましくは、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下又は+15℃以下(高低融点成分、低融点成分の融点差が大きい場合、+15℃以下を選択)に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+10℃以上又は+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+10℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0180】
好ましくは、3回以上の固液分離を行い、最初の固液分離において温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+8℃以下に制御し、少なくとも1回の中間の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+8℃以上且つ低融点成分の融点+18℃以下に制御し、最後の固液分離において温度Tnを低融点成分の融点+24℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0181】
好ましくは、低融点成分の重量百分率が10%~40%、特に15%~30%である場合、最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+6℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+15℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御し、更に好ましくは最初の固液分離において、温度Tを低融点成分の融点以上且つ低融点成分の融点+3℃以下に制御し、後続のn回の固液分離における少なくとも1回の固液分離において、温度Tnを低融点成分の融点+20℃以上且つ高融点成分の融点以下に制御する。
【0182】
「複数の固液分離」及び「媒介溶媒の温度Tに複数の温度段階が存在すること」を同時に満たしてもよく、そのうちの1種のみを満たしてもよい。
【0183】
上記各実施形態において、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、具体的な規格を限定せず、市場から取得可能な任意のN-長鎖アシルアミノ酸である限り、市販されているN-長鎖アシルアミノ酸であってもよい。市販されているN-長鎖アシルアミノ酸は、一部の公称純度が高いが、実際には依然として多い不純物が含まれ、ラウリン酸が紫外線領域において吸収されないため、従来の液体クロマトグラフィー(UV検出器を備える)により検出されず、純度を計算する時に不正確になる可能性が高く、高速液体クロマトグラフィー-質量分析の組み合わせ又は特定の検出器を備える高速液体クロマトグラフィーなどにより、不純物をより良好に分析することができる。市販されているN-長鎖アシルアミノ酸は、上記各実施形態により処理されると、不純物を更に除去し、構造の再構成が発生し、特定構造の生成物(特定構造の超分子アミノ酸)を形成することができる。
【0184】
上記各実施形態において、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、(1)アミノ酸を含む原料と塩基を含む原料とを反応させ、アミノ酸塩溶液を製造するステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び任意選択で塩基を加えて、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化するステップと、を含む方法によって製造される。
【0185】
ステップ(3)の酸性化後、ろ過/遠心分離などの固液分離操作を行って粗生成物を得てもよく、固液分離を行わずにそのまま粗生成物としてもよい。好ましくは固液分離を行う。
【0186】
或いは、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、塩基の存在下で、アミノ酸及び/又はその塩と長鎖酸ハロゲン化物とを反応させ、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得て、得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、放置後に固液分離し、任意選択で洗浄して乾燥し、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップを含む方法によって製造される。
【0187】
或いは、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、(1)アミノ酸及び塩基を、水と有機溶媒との混合溶液に溶解し、均一に撹拌してアミノ酸塩溶液を得るステップと、(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸ハロゲン化物及び塩基を加え、次に撹拌し続け、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、放置後に固液分離し、任意選択で洗浄して乾燥し、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップと、を含む方法により製造される。
【0188】
更に、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、
(1)アミノ酸及び金属無機塩基を、水と有機溶媒との混合溶液に溶解し、均一に撹拌してアミノ酸塩溶液を得るステップと、
(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸クロライド及び金属無機塩基を順に加え、次に撹拌し続け、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、
(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、放置後にろ過、遠心分離などの固液分離が行われ、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップと、を含む。
【0189】
長鎖酸クロライドの完全反応に有利である観点から、上記アミノ酸と長鎖酸クロライドとの投与モル比は1:1以上、好ましくは1.2:1以上である。
【0190】
更に、上記N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物は、
(1)アミノ酸及び金属無機塩基を、水と有機溶媒との混合溶液に溶解し、均一に撹拌してアミノ酸塩溶液を得るステップと、
(2)上記で得られたアミノ酸塩溶液に長鎖酸クロライド及び金属無機塩基を順に加え、次に0~50℃の条件(好ましくは、例えば0~25℃の低温)で撹拌し続け、N-長鎖アシルアミノ酸塩を得るステップと、
(3)上記で得られたN-長鎖アシルアミノ酸塩を酸性化し、固体を徐々に析出させ、次に0~30℃で、例えば氷浴で1~5時間放置し、ろ過/遠心分離を行い、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物を得るステップと、を含む。
【0191】
ここで、ステップ(1)に記載のアミノ酸と金属無機塩基とのモル比は1:(1~1.5)である。上記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1つ又は複数である。
【0192】
ステップ(1)に記載の水と有機溶媒との体積比は1:(1~1.5)である。ステップ(2)に記載の金属無機塩基の濃度は30~80%である。
【0193】
ステップ(2)に記載の金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1つ又は複数である。反応系のpH値を8~10にするために、金属無機塩基の添加量を制御する。
【0194】
ステップ(2)に記載の長鎖酸クロライドは、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ウンデカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、ミリストイルクロライド、ペンタデカノイルクロライド、パルミトイルクロライド、ステアロイルクロライド、オイルクロライド、リノールクロライド、イソステアロイルクロライド、ヤシ油脂肪酸クロライド、パーム油脂肪酸クロライドから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸クロライド又はラウロイルクロライド、最も好ましくはラウロイルクロライドである。
【0195】
一実施形態において、超分子アミノ酸の製造方法を提供し、超分子アミノ酸を含む組成物の製造方法を更に提供し、上記方法により製造された超分子アミノ酸は、一般に市販されている長鎖アシルアミノ酸とは異なる構造、性能を有する。
【0196】
具体的には、N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物(ジペプチドを含むか否かに関わらず)に対して、上記実施形態による不純物除去ステップを経て、不純物除去プロセスにおいて構造の再構成が発生し、特定構造を有する超分子アミノ酸を形成する。
【0197】
上記超分子アミノ酸における長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下であり、穏やかなプロセスによって長鎖脂肪酸を完全に除去することが困難であり、コスト的に不利であることを考慮すると、好ましくは長鎖脂肪酸の重量百分率は4%、3%又は2%以下、0.1%、0.2%又は0.5%以上であり、最も好ましくは0.5%~3%である。
【0198】
本発明は、N-長鎖アシルアミノ酸、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチド自己組織化超分子構造を含む超分子アミノ酸を更に提供する。N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は3%以上、好ましくは4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%以上である。
【0199】
一形態において、ジペプチドは中等含有量を有し、即ち、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は5%以上、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上、且つ15%未満である。
【0200】
一形態において、ジペプチドは高含有量を有し、即ち、N-長鎖アシルアミノ酸ジペプチドの重量百分率は15%以上、好ましくは20%以上である。
【0201】
上記超分子アミノ酸における長鎖脂肪酸の重量百分率は5%以下であり、穏やかなプロセスによって長鎖脂肪酸を完全に除去することが困難であり、コスト的に不利であることを考慮すると、好ましくは長鎖脂肪酸の重量百分率4%、3%又は2%以下、0.1%、0.2%、0.5%又は1%以上であり、最も好ましくは0.5%~3%である。
【0202】
好ましくは、本発明の超分子アミノ酸に対して質量分析検出を行い、検出条件として、質量分析AB4500、質量分析システムQ1SCAN、イオン化方式ESI(-)、走査範囲m/z=200~600であり、541~545の範囲の質量分析スペクトルに特徴的なイオンピークを有する。
【0203】
好ましくは、本発明の超分子アミノ酸に対して高速液体クロマトグラフィー検出を行い、検出条件として、機器にUV検出器を備えた高速液体クロマトグラフが使用され、カラムODS-2 HYPERSIL C18 250×4.6mm 5μm、波長210nm、移動相がメタノール:20mmol/LのpH3.0のリン酸二水素カリウム緩衝溶液=70:30(v/v)であり、高速液体クロマトグラム中の保持時間30~45minの範囲に3又は4個のピークを含むピーク群である。
【0204】
好ましくは、超分子アミノ酸固体粉末のマイクロドメインの形態は、柱状又は棒状又は線状又は縄状を呈する。
【0205】
好ましくは、超分子アミノ酸は、キャピラリーにより検出された最初融解温度が75℃以上、好ましくは78℃以上、より好ましくは80℃以上である。最終融解温度は87℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは92℃以上である。従来のショッテン・バウマン反応生成物の最終融解温度は77~84℃であり、本発明の超分子アミノ酸の最終融解温度は87℃以上に達することができ、また最終融解温度はジペプチド含有量の増加につれて増加する。
【0206】
好ましくは、超分子アミノ酸生成物は、DSC分析におけるDSCピーク値(Peak temperature)が86℃以上、好ましくは88℃以上、より好ましくは90℃以上であり、またDSCピーク値はジペプチド含有量の増加につれて右にシフトする。
【0207】
好ましくは、超分子アミノ酸ナトリウム塩の数均分子量は、5,000~250,000の間、好ましくは数均分子量は6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000以上且つ240,000、230,000、220,000、210,000、200,000、190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、130,000、120,000、110,000以下であり、より好ましくは10,000~150,000の間、最も好ましくは15,000~100,000である。
【0208】
本発明において、特に断りのない限り、長鎖脂肪酸は8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸である。好ましい具体的な例として、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸から選ばれる1つ又は複数が挙げられ、好ましくはヤシ油脂肪酸又はラウリン酸、最も好ましくはラウリン酸である。
【0209】
アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、プロリン、フェニルアラニン、アルギニン、リジンから選ばれえる1つ又は複数である。好ましくはアラニン、グリシン、グルタミン酸、サルコシン、アルギニン又はリジン、最も好ましくはアラニンにおけるL-アラニンである。ここで言及されたアミノ酸は、長鎖アシルアミノ酸の粗生成物/長鎖アシルアミノ酸により誘導されるアミノ酸(即ち、当該長鎖アシルアミノ酸の粗生成物/長鎖アシルアミノ酸を合成するためのアミノ酸)も指す。
【0210】
N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物/N-長鎖アシルアミノ酸におけるN-長鎖アシル基は、8~22個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸に由来する。好ましくは、N-長鎖アシル基は、オクタノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ペンタデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、イソステアロイル基、ヤシ油脂肪酸アシル基、パーム油脂肪酸アシル基から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基又はラウロイル基、最も好ましくはラウロイル基である。
【0211】
上記N-長鎖アシルアミノ酸の粗生成物/N-長鎖アシルアミノ酸における長鎖は、上記長鎖脂肪酸における長鎖と同じである。
【0212】
全ての実施形態において、超分子アミノ酸塩は超分子アミノ酸と塩基とからなる。上記塩基に対して、特に限定されず、無機塩基、有機塩基を含む。具体的には、ナトリウム、カリウムなどの塩基金属、又はマグネシウム、カルシウムなどの塩基土類金属に代表される無機塩基、アミン、アルカノールアミンなどの有機アミン類、又はリジン、アルギニン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸に代表される有機塩基が使用される。これらの塩基は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0213】
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましく、特に水酸化ナトリウムである。有機塩基としては、塩基性アミノ酸が特に好ましく、特にアルギニン又はリジンである。
【0214】
本発明者らは予想外に、アルギニンなどの塩基性アミノ酸と超分子アミノ酸とを反応させて塩を形成する場合、実際の応用において泡がより綿密で、泡が豊富でより耐久性があり、使用感が柔らかく、弾性力が高く、洗浄力がより優れることを見出した。また、リジンと超分子アミノ酸とを反応させて塩を形成する場合、非常に良好な溶解度を有し、系の安定性が高く、泡が最も安定的である。
【0215】
本発明は、上記超分子アミノ酸及び塩基性アミノ酸により製造された超分子アミノ酸塩を更に提供する。塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジンから選ばれ、好ましくはアルギニン及びリジンである。当該超分子アミノ酸塩は、クリーニング剤、乳化剤、ケア組成物、化粧品として使用することができる。
【0216】
本発明は、上記各実施形態により製造された超分子アミノ酸又はその塩を更に提供する。上記超分子アミノ酸又はその塩の用途は、界面活性剤又は乳化剤としての使用である。
【0217】
上記超分子アミノ酸又はその塩の用途は、洗剤組成物、歯磨き粉、ケア組成物、洗濯洗剤、石鹸、粉末洗濯洗剤、食器洗い洗剤、マスク、シャンプー、シャワージェル、洗顔料、メイク落とし、口腔洗浄品、シェービング用品、ハンドウォッシュ、クリーニングローション、クリーニングクリームなどの製造に使用されることである。
【0218】
特別な空間構造のため、上記超分子アミノ酸又はその塩の用途を提供し、油分や汚れの吸着又は細菌の吸着に使用される。除菌、除臭、農薬残留の除去にも使用できる。
【0219】
本発明は、アミノ酸食器洗い洗剤、アミノ酸洗濯洗剤、アミノ酸歯磨き粉、スキンケア組成物、アミノ酸石鹸、アミノ酸粉末洗濯洗剤、アミノ酸マスク、アミノ酸シャンプー、アミノ酸シャワージェル、アミノ酸洗顔料、上記を含む超分子アミノ酸又はその塩を提供する。本発明に記載の各アミノ酸製品は、超分子アミノ酸及び/又はその塩を含むため、命名されるものに過ぎず、特に限定されるものではない。
【0220】
本発明は、摩擦剤、保湿剤、増粘剤及び界面活性剤を含む歯磨き粉を提供する。上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含み、歯磨き粉の総重量に対する界面活性剤0.1~25wt%、摩擦剤10~50wt%、保湿剤5~40wt%、増粘剤0.1~6wt%である。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0221】
上記摩擦剤は、水和シリカ、炭酸カルシウム及びリン酸水素カルシウムから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。上記保湿剤は、ソルビトール、ポリエチレングリコール-400、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。上記増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、カラメルガム、ポロクサマー407及びケイ酸アルミニウムマグネシウムから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。
【0222】
上記歯磨き粉は、甘味料0.1~0.3%、香料0.5~1.5%、水5~10%、漢方薬抽出物0.3~0.5%、防腐剤0.3~0.5%、着色剤0.05~0.15%といった重量百分率の物質を更に含む。ここで、上記甘味料は、サッカリンナトリウム、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。漢方薬抽出物は、パプリカ抽出物、甘草抽出物及びスベリヒユ抽出物から選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。上記防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ヒドロキシベンジルエステル、トリクロロヒドロキシフェニルエーテル/共重合体及び生体溶解性酵素から選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。上記的着色剤は、CI77019、CI77891、CI42090、CI19140、雲母、二酸化チタン、ブリリアントブルーから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。上記アミノ酸歯磨き粉には、ドデシル硫酸ナトリウムが含まれない。
【0223】
上記歯磨き粉を製造する方法であって、(1)水、甘味料、防腐剤、保湿剤を水溶液に製造し、ペースト製造機に入れるステップと、(2)増粘剤、摩擦剤、漢方薬抽出物を混合した後にペースト製造機に加え、ペーストが均一になるまで撹拌して粉砕し、次に真空で脱泡するステップと、(3)界面活性剤、香料、着色剤をペースト製造機に順に加え、ペーストが均一になるまで撹拌して粉砕し、次に脱泡して歯磨き粉を得るステップと、を含む。
【0224】
本発明は、その総重量に対して以下を含むスキンケア組成物を提供する:
油分 50~95wt%、
界面活性剤 0.5~30wt%、
懸濁粒子 0~45wt%。
【0225】
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0226】
上記油分は、凝固点が-50℃~6℃の間である天然油、合成油又はそれらの混合物から選ばれる。上記天然油は植物油及び動物油を含む。上記植物油は、ブドウ種子油、ヒマワリ種子油、ホホバ油、アロエ油、オリーブ油、アマニ油、サフラワー種子油、大豆油、アーモンド油、茶油又はそれらの任意の混合物を含む。上記動物油は馬油及びラノリンを含む。上記合成油は、ネオデカン酸イソデシル及びジヘプタン酸ネオペンチルグリコールを含む。
【0227】
上記油分の含有量は65wt%又は85wt%である。
【0228】
上記懸濁粒子の粒度は、30μm未満、好ましくは15μm未満、より好ましくは5μm未満である。
【0229】
上記懸濁粒子は、油不溶性固体粒子又は油非混合性液体から選ばれる。ここで、上記油不溶性固体粒子は、雲母、澱粉、酸化亜鉛、二酸化チタン、タルク粉末及びシリコーン弾性体を含む。上記油非混合性液体はグリセリン、水及びポリオールを含む。
【0230】
上記スキンケア組成物を製造する方法であって、当該方法は、(1)油分、界面活性剤及び懸濁粒子を重量百分率(50~95%):(0.5~30%):(0~45%)の量で混合した後、82~87℃で撹拌しながら反応させ、全ての界面活性剤が上記油分に溶解した後、混合物を65~72℃になるまで撹拌して冷却するステップと、(2)上記で得られた混合物を室温に冷却し、スキンケア組成物を得るステップと、を含む。
【0231】
本発明は、界面活性剤、柔軟剤、キレート剤、脱イオン水、防腐剤及び香料を含む洗濯洗剤を提供し、上記洗濯洗剤における各物質の重量百分率は以下の通りである:
界面活性剤 5~50%、
柔軟剤 0.1~3%、
キレート剤 0.1~5%、
脱イオン水 50~90%、
防腐剤 0.1~6%、
香料 0.1~2%、
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0232】
本発明は、界面活性剤、脂肪酸、グリセリン、柔軟剤、キレート剤、充填剤及び脱イオン水を含む石鹸を提供し、上記石鹸における各物質の重量百分率は以下の通りである:
界面活性剤 10~50%、
脂肪酸 0.1~7%、
グリセリン 0.1~5%、
柔軟剤 0.1~6%、
キレート剤 0.1~1%、
充填剤 10~40%、
脱イオン水 1~5%。
【0233】
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0234】
本発明は、界面活性剤、摩擦剤を含む粉末洗濯洗剤を提供し、上記アミノ酸粉末洗濯洗剤における各物質の重量百分率は以下の通りである:
界面活性剤 10~50%、
摩擦剤 50~90%、
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0235】
本発明は、界面活性剤、脱イオン水、増粘剤、グリセリン、防腐剤及び香料を含む食器洗い洗剤を提供し、上記アミノ酸食器洗い洗剤における各物質の重量百分率は以下の通りである:
界面活性剤 5~20%、
脱イオン水 70~90%、
増粘剤 1~2%、
グリセリン 5~10%、
防腐剤 0.1~6%、
香料 0.1~2%、
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0236】
本発明は、界面活性剤、脱イオン水、グリセリン、防腐剤及び香料を含むマスクを提供し、上記マスクにおける各物質の重量百分率は以下の通りである:
界面活性剤 0.1~5%
脱イオン水 50~90%、
グリセリン 1~10%、
防腐剤 0.1~2%、
香料 0.1~2%、
上記界面活性剤は、上記超分子アミノ酸及び/又はその塩を含む。選択的には、界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなるか、或いはアミノ酸界面活性剤は完全に本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩からなる。好ましくは、界面活性剤のうちの20wt%以上、より好ましくは30、40、50、60、70、80又は90wt%以上、更に好ましくは100wt%は本発明の超分子アミノ酸及び/又はその塩である。
【0237】
以下、図面及び実施例に合わせて本発明を更に説明し、これらの実施例は本発明を説明するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。また、本発明の上記開示内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変動や修正を行うことができ、これらの等価形態のものは同様に、本願に添付された特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【実施例】
【0238】
以下、具体的な実施例に合わせて本発明を更に説明する。
製造例 N-ラウロイル-L-アラニン粗生成物の合成
製造例1
常温で、1000Lの反応釜において、89kg(1Kmol)のL-アラニン及び40kg(1Kmol)の水酸化ナトリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンとの混合溶液に溶解し、均一に撹拌してL-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0239】
20℃の条件で、L-アラニンナトリウム溶液に175kg(0.8Kmol)のラウロイルクロライドを徐々に滴下し、更に反応系のpH=9となるように50%の水酸化ナトリウム溶液を滴下し、滴下完了後、20℃で1.5h撹拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0240】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加え、pH=3~4となるように酸性化し、白色固体が徐々に析出し、次に氷浴で3h放置した後にろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗生成物を得た。
【0241】
製造例2
常温で、1000Lの反応釜において、89kg(1Kmol)のL-アラニン及び56kg(1Kmol)の水酸化カリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンとの混合溶液に溶解し、均一に撹拌してL-アラニンカリウム溶液を得た。
【0242】
20℃の条件で、L-アラニン塩溶液に218.7Kg(1Kmol)のラウロイルクロライドを徐々に滴下し、また反応系のpH=9となるように50%の水酸化カリウム溶液を滴下し、滴下完了後、20℃で2h撹拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0243】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加え、pH=3~4となるように酸性化し、白色固体が徐々に析出し、次に氷浴で2h放置した後にろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗生成物を得た。
【0244】
製造例3
常温で、1000Lの三口フラスコにおいて、89Kg(1Kmol)のL-アラニン及び106Kg(1Kmol)の炭酸ナトリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンとの混合溶液に溶解し、均一に撹拌してL-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0245】
20℃の条件で、L-アラニン塩溶液に218.7Kg(1Kmol)のラウロイルクロライドを徐々に滴下し、また反応系のpH=8となるように30%の水酸化ナトリウム溶液を滴下し、滴下完了後、20℃で3.5h撹拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0246】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加え、pH=3~4となるように酸性化し、白色固体が徐々に析出し、次に氷浴で3h放置した後にろ過し、N-ラウロイル-L-アラニン粗生成物を得た。
【0247】
実施例 N-ラウロイルアラニルアラニン(N-ラウロイルアラニンジペプチド)を含む組成物/粗生成物
実施例14#
反応容器に水100g、アセトン79g、アラニン60g、板状塩基20gを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド100gを滴下し、反応温度を20~30℃に制御し、滴下完了後、pHが6~7程度となり、20min保温し、pHを1~2に調整するように塩酸を滴下し、ろ過した。
【0248】
実施例20#
反応容器に水100g、アセトン79g、アラニン77g、板状塩基20gを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド100gを滴下し、反応温度を20~30℃に制御し、滴下完了後、pHが6~7程度となり、20min保温し、pHを1~2に調整するように塩酸を滴下し、ろ過した。
【0249】
実施例27#
反応容器に水100g、アセトン79g、アラニン53g、板状塩基20gを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド100gを滴下し、反応温度を20~30℃に制御し、滴下完了後、pHが6~7程度となり、20min保温し、pHを1~2に調整するように塩酸を滴下し、ろ過した。
【0250】
実施例31#
反応容器に水275g、アセトン216g、アラニン122.2g、板状塩基20gを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド100gを滴下し、反応温度を20~30℃に制御し、滴下完了後、板状塩基10gを補充し、20min保温し、pHを1~2に調整するように塩酸を滴下し、ろ過した。
【0251】
実施例33#
反応容器に水500g、アセトン390g、アラニン49g、板状塩基100gを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド500gを滴下し、反応温度を20~30℃に制御し、滴下完了後、20min保温し、pHを1~2に調整するように塩酸を滴下し、ろ過した。
【0252】
実施例501#
反応釜に水100kg、アセトン140kg、アラニン110kg、液体塩基(32%)120kgを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド180kgを滴下し、反応温度を42℃に制御し、添加完了後、pHが5程度となり、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0253】
実施例502#
反応釜に水550kg、アラニン110kg、液体塩基(32%)125kgを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド180kgを滴下し、反応温度を27℃に制御し、添加完了後、pHが5程度となり、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0254】
実施例503#
反応釜に水100kg、アセトン140kg、アラニン97kg、液体塩基(32%)150kgを加え、次にラウロイルクロライド180kgを滴下し、反応温度を30℃に制御し、添加完了後、pHが5~6となり、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0255】
実施例601#
反応釜に水100kg、アセトン90kg、アラニン103kg、液体塩基(32%)160kgを加え、均一に撹拌し、次にラウロイルクロライド180kgを滴下し、反応温度を25℃程度に制御し、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0256】
実施例602#
反応釜に水100kg、アセトン140kg、アラニン103kg、液体塩基(32%)145kgを加え、均一に撹拌し、次に、まずラウロイルクロライド90kgを滴下し、反応温度を25℃程度に制御し、ラウロイルクロライド90kg及び液体塩基(32%)51.5kgを更に加え、次に、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0257】
実施例603#
反応釜に水100kg、アセトン140kg、アラニン103kg、液体塩基(32%)145kgを加え、均一に撹拌し、次に、まずラウロイルクロライド135kgを滴下し、反応温度を25℃程度に制御し、更にラウロイルクロライド45kg及び液体塩基(32%)50kgを同時に滴下し、次に、更にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0258】
実施例604#
反応釜に水100kg、アセトン140kg、アラニン81kg、液体塩基(32%)150kgを加え、均一に撹拌し、次に酸クロライド90kgを滴下し、添加完了後、ラウロイルクロライド90kg及び液体塩基(32%)50kgを更に添加し、次にpHを1~2に調整するように塩酸を加え、プロセス全体の温度を20~30℃に制御し、次にろ過し、純水で洗浄した。
【0259】
【0260】
【表1-2】
*1.pH試験紙を用いてpH値を測定する
*2.ペプチドはラウロイルアラニンを指す
*3.ジペプチドはラウロイルアラニルアラニンを指す
【0261】
実験結果から、水酸化ナトリウムが少ない場合、反応開始時(例えば31#)に沈殿が徐々に生じ、収率が低下した。過剰な水酸化ナトリウムを添加する場合(例えば33#)、反応プロセス全体においてpHが8以上であり、ジペプチドの生成に不利である。反応温度は35℃以下が好ましく、そうしないと、酸クロライドの加水分解が増加し、収率が低下した(例えば501#)。反応溶媒として水又は水と有機溶媒との混合溶液を選択することができ、反応溶媒として水のみを使用する場合(例えば502#)、依然として高いジペプチド含有量を取得できるが、収率が低下した。
【0262】
[ペプチド、ジペプチド含有量の測定]
含有量の測定には、下記の「方法II.高速液体クロマトグラフィー法」が使用され、測定結果を表Iに示した。
【0263】
典型的なスペクトルを
図1(実施例33#)、
図2(実施例503#)、
図3(実施例604#)に示した。このことから、ラウロイルクロライドの添加完了後のpHを8以上に制御すると(従来のプロセス)、高速液体クロマトグラムにおいて、保持時間が30~40minの範囲で1~2個のピークを有するピーク群が現れることが分かった(
図1)。ラウロイルクロライドの添加完了後のpHを8以下に制御すると、30~40minの範囲で3~4個のピークを有するピーク群が現れる(
図2、
図3)。
【0264】
実施例 不純物の除去及び特定構造超分子アミノ酸の形成
実施例1
反応釜において、製造例1で得られたN-ラウロイル-L-アラニン粗生成物と水とを混合させ、均一に撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を55℃に制御し、次にろ過式遠心分離機(ろ過メッシュ付き)に移し、最初の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、55℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、処理熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0265】
反応釜に水を加え、次に遠心分離後の固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を65℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、65℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0266】
反応釜に水を加え、次に固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を65℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、3回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、65℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0267】
[ラウリン酸含有量の測定]
方法1. 超高速液体クロマトグラフィー-質量分析併用(ACQUITY I-Class_PDA_QDa)
クロマトグラフィー
機器:ACQUITY I-Class
クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLCR BEH、C18 2.1×50mm、1.7μm
移動相A:10mMのNH4FA in water、移動相B:ACN
カラム温度:40℃、サンプル室温度:10℃、注入量:4μL
溶液調製:溶媒:Methanol
-ラウリン酸標準溶液:ラウリン酸1~50μg/mL、
-サンプル溶液:実施例1の超分子アミノ酸生成物0.5mg/mL。
【0268】
質量分析
質量分析システム:QDa
イオン化方式:ESI(-)、キャピラリー電圧:0.8kV、コーン電圧:20V、Probe温度:600℃、走査方式:-SIR:ラウリン酸:199.28(exact mass:200.18)、-Full scan:50~500。
【0269】
ラウリン酸の確認:ESIアニオンモードで、フルスキャンモードでのスペクトル(m/z=50~500)を採取し、
図4に示した。ラウリン酸親イオンm/z=199.28、[M-H]-。Rt=1.59min.。後続の定量分析において、m/z199.28を親イオンとし、SIRのクロマトグラフィーピーク面積を取得した。
【0270】
線形及び範囲:ラウリン酸1~50μg/mLの範囲内で線形が良好であり、R2=0.999549。標準曲線を
図5に示した。
【0271】
外部標準法によって、標準曲線で定量分析して得られた実施例1のサンプル溶液におけるラウリン酸含有量は0.010122mg/mLであった。関連するSIRスペクトルを
図6に示した。
【0272】
方法2. 超高速液体クロマトグラフィー
機器:Waters UPLC H-Class、
検出器:PDA検出器
クロマトグラフィーカラム:Waters XBridgeR、C18 3.0×100mm、3.5μm
移動相:メタノール:0.1%のH
3PO
4=80:20
カラム温度:35℃、サンプル室温度:設定なし、注入量:1μL
溶液調製:溶媒:メタノール
ラウリン酸標準溶液:ラウリン酸1000~20000mg/L、標準曲線を
図7に示した。
【0273】
試験結果を表IIに記録した。
【0274】
【0275】
[ラウロイルアラニン及びラウロイルアラニルアラニン含有量]
方法I.超高速液体クロマトグラフィー-紫外線-質量分析併用(ACQUITY I-Class_PDA_QDa)
クロマトグラフィー
機器:ACQUITY I-Class
クロマトグラフィーカラム:ACQUITY UPLCR BEH、C18 2.1×50mm、1.7μm
波長:210nm
移動相A:0.1%のFA及び5 mMのNH4FA in water、移動相B:ACN
カラム温度:40℃、サンプル室温度:10℃、注入量:2μL
溶液調製:溶媒:Methanol
-サンプル溶液:実施例1の超分子アミノ酸生成物3mg/mL。
【0276】
質量分析
質量分析システム:QDa
イオン化方式:ESI(-)、キャピラリー電圧:0.8kV、コーン電圧:20V、Probe温度:600℃、走査方式:-Full scan:50~500
ESIアニオンモードで、フルスキャンfull Scanのシグナルを収集した(m/z=50~500)。波長210nmで、2つの明確なクロマトグラフィーピークのみが見られた一方、QDaフルスキャンでは、3つの明確なクロマトグラフィーピークが見られた。
【0277】
PDAチャネルのスペクトル積分では、
図8に示すように、Empower計算により、サンプルにおけるラウロイルアラニルアラニン(ジペプチド)及びラウロイルアラニンの含有量はそれぞれ3.05%及び96.95%であった。説明すべきことは、当該正規化した含有量は、波長210nmに吸収を有する化合物のみを考慮した。
【0278】
QDaフルスキャンチャネルのスペクトル積分を
図9に示した。Empower計算により、サンプルにおけるラウロイルアラニルアラニン(ジペプチド)及びラウロイルアラニンの含有量はそれぞれ4.83%及び91.51%であった。説明すべきことは、当該正規化した含有量は、化合物によってイオン化効率が異なることを考慮しなかった。
【0279】
方法II.高速液体クロマトグラフィー法
高速液体クロマトグラフィー法は、UV検出器を用いて、ラウロイルアラニン、ラウロイルアラニルアラニンを認識して特定した。ラウロイルアラニン、ラウロイルアラニルアラニン標準品の保持時間を比較することによって、サンプルにおけるラウロイルアラニン、ラウロイルアラニルアラニンを認識し、面積正規化法によって定量された。
【0280】
機器:UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフ、
クロマトグラフィーカラム:ODS-2 HYPERSIL C18 250×4.6mm、5μm、
波長:210nm
移動相:メタノール:20mmol/Lのリン酸二水素カリウム緩衝溶液(pH3.0)=70:30(v/v)
カラム温度:30℃、注入量:2μL。
【0281】
サンプル測定:クロマトグラフィー条件に従って機器パラメータを調整し、機器のベースラインが安定した後、クロマトグラフィーカラムに標準溶液及びサンプル溶液をそれぞれ20μL注入し、ラウロイルアラニン標準溶液及びサンプル溶液のクロマトグラムを記録した。標準溶液の保持時間に基づいたサンプルにおけるラウロイルアラニン及びラウロイルアラニルアラニンのクロマトグラフィーピークを定性し、サンプルのピーク面積によって、面積正規化法を用いて被験物の含有率を測定した。
【0282】
試験結果を表IIIに記録した。
【0283】
【0284】
[DSC分析]
機器:示差走査熱量計DSC2500、
実験条件:一定量の乾燥サンプルを秤量し、蓋に孔を開き、錠剤化しない
温度範囲:マイナス50℃~150℃
昇温速度:10℃/min。
【0285】
実施例1の生成物について、DSC分析結果を
図10に示した。
【0286】
実施例2
反応釜において、製造例2で得られたN-ラウロイル-L-アラニン粗生成物と水とを混合し、均一に撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を50℃に制御し、次にろ過式遠心分離機(ろ過メッシュ付き)に移し、最初の固液分離を行い、分離操作と同時に噴射装置を開き、50℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0287】
固体を反応釜に移し、反応釜に水を加え、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を60℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行い、遠心分離時に噴射装置を開き、60℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0288】
固体を反応釜に移し、反応釜に水を加え、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を68℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、3回目の固液分離を行い、分離時に噴射装置を開き、68℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0289】
実施例3
製造例3の方法に従ってN-ラウロイル-L-アラニン粗生成物を得て、その中に熱水を加え、熱水の温度を60℃程度に制御し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を60℃に制御し、次にろ過式遠心分離機(ろ過メッシュ付き)に移し、最初の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、60℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0290】
反応釜に水を加え、次に固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を70℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、70℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0291】
実施例4
常温で、1000Lの反応釜において、89kg(1Kmol)のL-アラニン及び40kg(1Kmol)の水酸化ナトリウムを150Lの蒸留水と150Lのアセトンとの混合溶液に溶解し、均一に撹拌してL-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0292】
20℃の条件で、L-アラニン塩溶液に175kg(0.8Kmol)のラウロイルクロライドを徐々に滴下し、反応系のpH=9となるように、50%の水酸化ナトリウム溶液を更に滴下し、滴下完了後、20℃で1.5h撹拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0293】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加え、pH=3~4となるように酸性化し、白色固体が徐々に析出し、次に氷浴で3h放置した。
【0294】
その後昇温し、温度を50℃に制御し、撹拌し、次にろ過式遠心分離機(ろ過メッシュ付き)に移し、最初の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、50℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0295】
反応釜に水を加え、次に固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を60℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、60℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0296】
反応釜に水を加え、次に固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を65℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、3回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、65℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止した。
【0297】
反応釜に水を加え、次に固体を反応釜に移し、撹拌し、加熱して昇温し、系全体の温度を65℃に制御し、次にろ過式遠心分離機に移し、4回目の固液分離を行い、分離時に噴射装置を開き、65℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離し、熱水総量は0.5トンであり、熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0298】
実施例5
実施例503#で得られたジペプチド含有の粗生成物の一部を取り、50℃の熱水を加え、系全体の温度を50℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、最初の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、50℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であり、即ち処理しながら遠心分離した。
【0299】
遠心分離機内の固体を反応釜に移し、60℃の熱水を加え、撹拌し、系全体の温度を60℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、60℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であった。
【0300】
固体を反応釜に移し、70℃の熱水を加え、撹拌し、系全体の温度を70℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、3回目の固液分離を行い、まず遠心分離して液体成分を除去し、次に噴射装置を開き、70℃の熱水を噴射して固体を処理し、処理すると同時に遠心分離機は依然として運転状態であった。処理熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0301】
実施例6
実施例503#で得られたジペプチド含有の粗生成物の一部を取り、50℃の熱水を加え、系全体の温度を50℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、最初の固液分離を行った。
【0302】
遠心分離機内の固体を反応釜に移し、60℃の熱水を加え、撹拌し、系全体の温度を60℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、2回目の固液分離を行った。
【0303】
固体を反応釜に移し、70℃の熱水を加え、撹拌し、系全体の温度を70℃に制御し、次に工業用遠心分離機に移し、3回目の固液分離を行った。処理熱水がなくなった後に遠心分離を停止し、乾燥し、超分子アミノ酸を得た。
【0304】
実施例7
実施例502#で得られたジペプチド含有の粗生成物を、実施例6と類似する方法に従って処理した。ここで、その違いは、502#サンプルの最初の固液分離の温度が46℃、2回目の固液分離の温度が50℃、3回目の固液分離の温度が60℃であることであった。
【0305】
実施例8
実施例501#、601-604#で得られたジペプチド含有の粗生成物を、実施例5又は実施例6と類似する方法に従って処理した。
【0306】
[ラウリン酸含有量の測定]
上記方法2(超高速液体クロマトグラフィー法)により検出され、試験結果を表IVに記録した。
【0307】
【表4】
*全ての試験サンプルに対して乾燥処理を行い、次にラウリン酸含有量を測定した。
【0308】
上記実験結果から、従来のサンプルを3回処理した(3回の固液分離)後、ラウリン酸含有量は5%以下となり、ここで、一定温度の溶媒を媒介として分離を促進すると(例えば実施例5)、ラウリン酸に除去効果がより優れることが分かった。
【0309】
502#粗生成物は不純物の含有量が高いため、最初の固液分離時に低温で行う必要があり、3回固液分離後にラウリン酸含有量は依然として5%以上であったが、処理後にラウリン酸含有量が顕著に低下することは明らかであり、後続では固液分離の回数を増加したり一定温度の溶媒を媒介として分離を促進したりすることによって、ラウリン酸含有量を5%以下に制御することができる。
【0310】
[DSC分析]
上記と同様の検出方法を用いて、実施例502#の生成物に対してDSC分析を行い、結果を
図11に示した。
【0311】
実施例501#の生成物について、1~3回の熱水処理(固液分離)後の生成物のDSC分析結果をそれぞれ
図12~14に示した。実施例503#の生成物について、1~3回の熱水処理(実施例6による処理方法)後の生成物のDSC分析結果をそれぞれ
図15~17に示した。
【0312】
実験結果から、ラウリン酸の不純物が多く、且つ処理されていない場合(例えば実施例502#の生成物)、DSCは、78℃付近に1つのピーク(Peak temperature、以下は同じ)があった。処理された場合(例えば実施例501#、実施例503#の生成物)、DSCは、86℃以上の位置にピークがあり、且つ処理回数(固液分離回数)の増加につれて、ピークが徐々に右側へシフトし、ピーク値が大きくなった。これに対して、ジペプチド含有量が高いほど、処理後のピーク値(Peak temperature)が大きくなった。
【0313】
[融点分析]
3回の固液分離後、試験融点をサンプリングし、試験方法はキャピラリーを用いた。結果を表Vに記録した。
【0314】
【表5】
*
1 表にサンプルの最初融解から最終融解までの温度を記録した。
*
2 WO2019233375A1のサンプル融点は82~84℃であるべきであるが、その優先権文献CN108752228A(201810562220.1)に記載される86~88℃はエラーであり(システム温度系の未校正による偏差)、発明者らはWO2019233375A1で補正した。
【0315】
試験結果から、ジペプチド含有量が高いほど、融点値が高いことを示した。本発明に係る高いジペプチド含有量の生成物の融点値(最終融解温度)は何れも87℃以上であった。
【0316】
[形態分析]
図18は、実施例502#粗生成物のマイクロドメインの形態であり、溶媒として水のみを使用する時、得られた生成物は柱状又は棒状又は線状又は縄状の単位が集合したものであった。
図19は、実施例501#粗生成物の洗浄後のマイクロドメインの形態であり、その基礎単位が棒状であることが分かった。
【0317】
[固体核磁気分析]
機器型番:Bruker AVANCE III HD WB400固体核磁気共鳴分光計。
【0318】
実験方法:炭素交差分極実験。交差分極接触時間1.5ms、サンプリング時間25ms、緩和待機時間5s、累積1024回。実験サンプルは、実施例6の生成物である。
【0319】
二重量子フィルター水素スペクトル(DQ-filtered)実験(
図20a、20b)において、カルボキシ水素シグナルが保存されており、強度が高いことから、対応する基の局所的な運動が制限されており、水素結合が形成されていると推定され、また8.6ppmにおけるブロードピークは、アンモニアピークと推定された。
【0320】
2D
1H-
1H DQ-SQ二次元スペクトル(
図20c)において、カルボキシ水素は強い自己相関ピークを有し、カルボキシ基の近傍に他のカルボキシ基が存在することを示し、カルボキシ基間に水素結合が存在すると推定された。
【0321】
13C CPスペクトル(
図20d)において、C=Oには、3種のカルボキシ基及び2種のアミド構造に対応する5つのピークが現れた。ピーク型より、1:1反応の構造分子の凝集状態がより規則的であると推定された。
【0322】
2D
13C-
1H FSLG-HETCORスペクトル(
図20e)は、炭素スペクトルを指示し、アミノ基とカルボキシ基との関係を確認するのに役立つ。
【0323】
[質量分析]
質量分析AB4500
質量分析システム:Q1SCAN
イオン化方式:ESI(-)、走査範囲:m/z=200~600
実験サンプル:実施例6の生成物。
【0324】
図21から、543に特徴的なイオンのピークが見られ、これは2分子のラウロイルアラニンが会合していることが分かった(ラウロイルアラニンの分子量は271.4であり、543での特徴的なイオンピークは、2分子が会合しているラウロイルアラニンを表すと考えられる)。本発明の研究チームは、ラウリン酸が存在すると、2分子のラウロイルアラニンの会合を破壊し、ラウリン酸が除去されるか、又は含有量がある限度まで低下すると、2つのラウロイルアラニンのカルボキシ基が水素結合により連結され、両端に11個の炭素鎖を持つアルカン構造をそれぞれ有し、類似の相溶原理により、親油性末端が鎖により契合し、首尾が連結して1つの環を形成し、環と環の間が水素結合及び類似の相溶により、無限に重なって柱状分子クラスターを形成し、柱状分子クラスターが無限に重なって、超分子アミノ酸と呼ばれる特殊な空間構造を形成することを提案した。
【0325】
【0326】
[GPC分析]
実験サンプルは、実施例6の生成物のナトリウム塩及び実施例502#の粗製物(処理前)のナトリウム塩であった。
【0327】
試験機器及び条件:
ポンプ:waters1515
検出器:waters2414
クロマトグラフィーカラム:PL aquagel-OH MIXED-H
移動相:酢酸ナトリウム
流速:0.5mL/min
標準品:PEG/PEO
秤量後、水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、十分に撹拌することによりナトリウム塩を得た。
【0328】
試験結果:
実施例6の生成物のナトリウム塩:数平均分子量は28,000であった。
【0329】
実施例502#粗生成物(処理前)のナトリウム塩:ピークは検出されず、大きな分子は存在しないことを示唆した。当該結果の理由は、502#粗生成物には25wt%を超えたラウリン酸が含まれることであった。
【0330】
比較例1
常温で、1Lの反応釜において、89g(1mol)のL-アラニン及び40g(1mol)の水酸化ナトリウムを150mLの蒸留水と150mLのアセトンとの混合溶液に溶解し、均一に撹拌してL-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0331】
20℃の条件で、L-アラニン塩溶液に175g(0.8mol)のラウロイルクロライドを徐々に滴下し、反応系のpH=9となるように、50%の水酸化ナトリウム溶液を滴下し、滴下完了後、20℃で3h撹拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩を得た。
【0332】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニン塩に塩酸を加え、pH=1~2となるように酸性化し、更に水及び石油エーテルで数回溶出し、吸引ろ過し、乾燥し、白色粉末状固体であるN-ラウロイル-L-アラニンを得た。
【0333】
比較例2
合成は、First report of phase selective gelation of oil from oil/water mixtures. Possible implications toward containing oil spills, Santanu Bhattacharya, Chem. Commun.,2001,185-186を参照して行われた。
ラウロイルアラニンメチルエステル(式は以下の通り)を1当量の1MのNaOHの存在で、メタノール中で加水分解し、加水分解の温度を5℃に制御し、2時間後に低温で遠心分離し、乾燥してN-ラウロイル-L-アラニンを得た。
【0334】
【0335】
超分子アミノ酸の応用
細菌抑制、農薬除去、脱臭などの実験及び歯磨き粉、洗濯洗剤などの製品の製造方法は、先行出願WO2019/233375A1を参照し、その違いは主に長鎖アシルアミノ酸を本発明の超分子アミノ酸で置き換えることである。
【0336】
適用例1 超分子アミノ酸による細菌抑制作用評価
a.果物皿に対する処理
実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子10gを取って水に加え、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7となるように中和し、100mLの水溶液を調製した。5mLの原液(即ち水酸化ナトリウムで中和した後の溶液)を取り、この原液で、予め黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンスなどの一般的な細菌を接種した果物皿をそれぞれ浸漬し、一定時間作用した後、清浄水で1回洗浄し、次に果物皿内の細菌残留を測定した。検出結果を表1に示した。
【0337】
【0338】
上記データから分かるように、本発明の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子溶液は、大腸菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ・アルビカンスに対して明らかな抑制作用を有し、原液が大腸菌に2min作用した後、その抑制率は98.5%に達し、5min後に抑制率は100%に達することができ、原液が黄色ブドウ球菌に2min作用した後、抑制率は100%に達することができ、カンジダ・アルビカンスに5min作用すると、抑制率は同様に100%に達することができる。
【0339】
b.細菌抑制実験
実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子は、それぞれ水酸化ナトリウム及びアルギニンで中和し、10%の水溶液を調製した(10%のLA、滅菌後の脱イオン水で調製)。1ヶ月放置後、水酸化ナトリウム、アルギニンで中和した材料は何れも微生物が検出されず、10%のLA自体が細菌を生じることはなく、一定の細菌抑制性を有することを示唆した。
【0340】
適用例2 超分子アミノ酸による農薬除去効果評価
農薬メチルアミン-リン及びアセトメチルアミン-リンを予め散布した緑黄色野菜(大葉野菜)100gを2部取り、1部は、そのまま清浄水1Lで浸漬した後に取り出し、その野菜葉上の農薬残留を検出し、洗浄前という。別の1部は、実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子により調製された溶液を用いて洗浄し、洗浄後という。操作は以下の通りである。
【0341】
実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子10gを取って水に加え、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7となるように中和し、100mLの水溶液を調製した。5mLの原液を取り、農薬メチルアミン-リン及びアセトメチルアミン-リンを予め散布した別の1部の緑黄色野菜(大葉野菜)100gを細かく切り、上記溶液に2min浸漬し、取り出した後に500mLの清浄水で洗浄した後、取り出してその野菜葉上の農薬残留を検出した。表2は、洗浄前後の農薬データ残留の比較を示した。
【0342】
【0343】
上記データから分かるように、本発明で使用されるN-ラウロイル-L-アラニン超分子溶液は、メチルアミン-リン及びアセトメチルアミン-リンに対して明らかな除去作用を有し、2min作用した後、メチルアミン-リンの除去率は76.19%に達し、アセトメチルアミン-リンの除去率は86.37%に達することができ、効果は明らかであった。
【0344】
適用例3 超分子アミノ酸による異味除去効果評価
a.脱臭実験
実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子10gを取って水に加え、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7となるように中和し、100mLの水溶液を調製した。5mLの原液を取り、異味(匂い、油臭、臭味など)のある綿布10mm2を上記溶液に2min浸漬した後に取り出し、水で洗浄し、干して実験した結果、綿布上の異味が全て消え、このことから分かるように、本発明の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子は良好な異味除去効果を有する。
【0345】
b.脱臭実験
実施例1の方法により合成されたN-ラウロイル-L-アラニン超分子10gを取って水に加え、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7となるように中和し、100mLの水溶液(原液)を調製した。脱臭評価は専門者5名により行われた。具体的な操作は、カニ卵油を少量取り、腕に塗布した後、3人は原液で腕を擦り洗い(2回擦り洗い)、2人は清浄水で腕を擦り洗い(2回擦り洗い)、腕に残留した匂いをそれぞれ独立して評価した。濃いカニ卵油匂いが残留した場合は1点、薄い匂いの場合は2~4点、ほとんど匂いがない場合は5点とした。
【0346】
【0347】
適用例4 スキンケアにおける超分子アミノ酸の応用
【0348】
【0349】
【表9-2】
*天然油混合物には40%のブドウ種子油、37.2%のヒマワリ種子油及び22.8%のアロエ油が含まれる。
【0350】
先行出願WO2019/233375A1の配合法に従って実験を繰り返し、その違いは主に長鎖アシルアミノ酸を本発明の超分子アミノ酸で置き換えることである。表4に示す配合法1による具体的な製造ステップは以下を含む。57%の天然油混合物及び40%のコーンスターチをミキサーに加え、均一にして粒子をまず分散させた。次に、油分散体中の粒子を83~86℃に加熱した。加熱すると同時に、3%のN-ラウロイル-L-アラニン超分子をミキサーに加えた。サンプルを加熱し、73~86℃で5~10min保持した。次に、65~72℃の間の温度に冷却し、同時に混合可能にするように維持した。次に、サンプルを体積30mLのタンクに注入してスキンケア組成物を得て、保存して評価に備えた。ここで、配合法2~6のスキンケア組成物の製造方法は、何れも配合法1と同様であるため、ここでその説明を省略する。
【0351】
上記実施例で得られたスキンケア組成物は、原料に異なる種類及び含有量の粒子物を添加した。結果は、粒子の添加が油の粘度を増加させるに加えて、N-ラウロイル-L-アラニン超分子を使用して固体有機/無機粒子又はグリセリンなどの油混合液体を増粘天然油に安定的に懸濁させて追加の皮膚利益が得られることを示した。
【0352】
例えば、澱粉、TiO2、雲母、窒化ホウ素粒子(Kobo社製のCaress BN02)などの4つの油不溶性粒子及びグリセリンなどの1つの油混合性液体を使用した。配合法1~6で使用される天然油混合物の成分は何れも同様であり、即ち、40%のブドウ種子油、37.2%のヒマワリ種子油及び22.8%のアロエ油を含んだ。結果は、表4に示する配合法1~6で得られた組成物が、室温及び48℃の乾燥箱の両方で安定的であり、粒子分離の問題が一切ないことを示した。
【0353】
適用例5 歯磨き粉における超分子アミノ酸の応用
(1)先行出願WO2019/233375A1の配合法に従って実験を繰り返し、その違いは主に長鎖アシルアミノ酸を本発明の超分子アミノ酸で置き換えることである(配合法1~5)。
【0354】
(2)本発明の超分子アミノ酸をアルギニンで中和し、歯磨き粉の製造実験を行った(配合法6)。
【0355】
歯磨き粉における各物質の組成及び具体的な含有量を表5に示した。N-ラウロイル-L-アラニン超分子ナトリウム塩は、実施例1のN-ラウロイル-L-アラニン超分子と水酸化ナトリウムとを反応させることによって製造された。
【0356】
【0357】
配合法1により歯磨き粉を製造し、具体的なステップは以下を含む。10gの水、37.5gのソルビトール、0.2gのサッカリンナトリウム、2gのポリエチレングリコール-400、5gのグリセリン、0.4gの安息香酸ナトリウムを水溶液に製造し、ペースト製造機に入れた。次に、4gのカルボキシメチルセルロース、35gの水和シリカ、0.2gのパプリカ抽出物、0.1gの甘草抽出物及び0.1gのスベリヒユ抽出物を混合した後にペースト製造機に加え、ペーストが均一になるまで撹拌しながら20~30min粉砕し、次に真空脱泡し、4.4gのN-ラウロイル-L-アラニン超分子ナトリウム塩、1gの食用香料(ミントフレーバー型)、0.1gのCI42090をペースト製造機に順に加え、ペーストが均一になるまで10~15min撹拌しながら粉砕し、次に脱泡し、アミノ酸歯磨き粉を得た。配合法2~5は、類似する製造方法を使用した。
【0358】
配合法6により歯磨き粉を製造し、具体的なステップは以下を含む。10gの水、35gのソルビトール、0.2gのトリクロロガラクトース、2gのポリエチレングリコール-400、6gのグリセリン、0.4gの安息香酸ナトリウムを水溶液に製造し、ペースト製造機に入れた。次に、5gのカルボキシメチルセルロース、35gの水和シリカ、0.2gのパプリカ抽出物を混合した後にペースト製造機に入れ、ペーストが均一になるまで20~30min撹拌しながら粉砕し、次に真空脱泡し、3g N-ラウロイル-L-アラニン超分子、2gのアルギニン、1gの食用香料、0.1gのCI42090、0.1gのCI19140をペースト製造機に順に加え、ペーストが均一になるまで10~15min撹拌しながら粉砕し、次に脱泡し、アミノ酸歯磨き粉を得た。
【0359】
本発明により提供されるアミノ酸歯磨き粉は安全であり、全ての試験は基準を満たしている。アルギニンでN-ラウロイル-L-アラニン超分子を中和し、最終的に製造された歯磨き粉は、より穏やかで安全であり、優れた味を持っている。
【0360】
適用例6 超分子アミノ酸の洗浄力実験
a.洗浄力評価
5名の試験者にそれぞれ腕にカラー化粧(口紅+アイライン)を3組描いて、カラー化粧の面積をできるだけ広く確保して、濃淡は差がないようにした。次に、表6の水溶液(1g秤量)でそれぞれ洗浄し、最後に水道水で洗い流した(洗浄力は、5名の試験員の採点に基づき、総合的に判断した)。
【0361】
【表11】
*洗浄力は、5が最良、1が最悪、3が中程度である。
【0362】
b.洗濯洗剤における超分子アミノ酸の応用
【0363】
【0364】
配合法1、4により調製した洗濯洗剤を試験したところ、JB01、JB02、JB03は全て合格し(JB01、JB02、JB03に対するサンプルの汚れ除去力は、JB01、JB02、JB03に対する標準洗濯洗剤の汚れ除去力より大きい)、配合法2により調製した洗濯洗剤を試験したところ、JB01は合格し、JB02、JB03は合格せず、配合法3により調製した洗濯洗剤を試験したところ、JB01、JB02、JB03は全て合格できなかった。
【0365】
適用例7 超分子アミノ酸中和試験
<a.実施例1の生成物実験>
試験プロセス((1)アルギニンで実施例1の超分子アミノ酸を中和した。(2)水酸化ナトリウムで実施例1の超分子アミノ酸を中和した。(3)アルギニンで実施例2の超分子アミノ酸を中和した。(4)水酸化ナトリウムで実施例2の超分子アミノ酸を中和した。)
具体的な製造プロセスは以下の通りである。500gのビーカーを2本取り、電子天秤で秤量し、それぞれビーカー重量を記録し、プロセス別に対応する脱イオン水を秤量してビーカーに入れ、水浴鍋を置いて75℃~80℃に加熱した。温度計でビーカー内の水温を測定し、75℃~80℃であることを確認した後、秤量した実施例1の超分子アミノ酸をそれぞれ加えた。撹拌を開始する際には、秤量したアルギニンをビーカー(1)に、秤量した10%の水酸化ナトリウム水溶液をビーカー(2)にそれぞれ加えた。それぞれ1min撹拌した。ビーカー(1)(2)を、流れる水道水によって25℃まで降温した。電子天秤で計量し、2つのビーカーの試作中に揮発した水分を、降温後の脱イオン水でそれぞれ100%に補充した。ビーカー中の生成物(1)(2)のpHを測定し、外観を観察し、匂いを確認した。
【0366】
(3)(4)の製造は、実施例1の超分子アミノ酸を実施例2の超分子アミノ酸に変更した以外、上記方法に従って行われた。
【0367】
洗浄力試験
1)同じ試験者に腕にカラー化粧を4組描いて、具体的には口紅4回、アイライン4回であり、カラー化粧の面積をできるだけ広く確保して、濃淡は差がないようにした。
【0368】
2)次に、(1)(2)(3)(4)の水溶液(1g秤量)でそれぞれ洗浄した。
【0369】
3)水道水で洗い流した。実験結果を
図22に示した。
【0370】
全ての試験結果を表8に記録した。
【0371】
【0372】
<b.実施例1の生成物(LA-I)及び実施例6の生成物(LA-II)の比較実験>
試料サンプルの配置:
【0373】
【0374】
説明:上記1~6の中和は等モルで計算され、5%のLA-II+NaOHを例にとって、LA-IIが等モルのNaOHで中和することを意味し、5%のLA-IIはLA-IIの質量パーセントが5%であることを意味する。リジン中和法:リジン塩酸塩をNaOHで中和した後、この水溶液を用いてLAで中和する。
発泡試験
【0375】
「GB/T 29679-2013シャンプー・クリームシャンプー」6.2.6のステップを参照して発泡試験を行った。その違いは、上記試料サンプル5g(即ち中和後の5%のLA溶液)を取り、蒸留水445gを加え、更に硬水50gを加え、最終試験用溶液超分子アミノ酸の質量パーセント濃度を0.05%にすることであった。試験結果を表9に示した。
【0376】
【0377】
上記試験結果から、LA-II中和後の水溶液はLA-Iと比較して、発泡がより容易であり、且つ比較的強固であり、泡もより緻密である。発泡性に関しては、「リジン中和」の発泡性が「アルギニン中和」より優れ、何れも「NaOH中和」よりも良かった。「NaOH中和」の消泡が「アルギニン中和」より速く、「リジン中和」は比較的最も強固である。
【0378】
適用例8 洗顔料における超分子アミノ酸及び塩基性アミノ酸による塩形成の応用
【0379】
【0380】
先行出願WO2019/233375A1の配合法に従って実験を繰り返し、その違いは主に長鎖アシルアミノ酸を本発明の超分子アミノ酸で置き換えることである。表10に記載の配合法により製造された洗顔料は穏やかで刺激がなく、敏感な肌により適している。その理由は、N-ラウロイル-L-アラニン超分子とアルギニンとからなる塩が、クリーニングな界面活性剤として人体の皮膚に対して刺激がなく、当該優れた性能により最終的に洗顔料の性能が優れることであった。
【0381】
適用例9 顔洗浄泡における超分子アミノ酸の応用
【0382】
【0383】
【0384】
LA-II配合は、洗浄力と泡の優れた発現のため、LA以外の他の界面活性剤やクリーニング剤を配合することなく、LA-I配合法と同様の効果を達成することができる。
【0385】
適用例10 超分子アミノ酸入浴泡の効能評価試験
評価方法:角質層水分含有量の測定
入浴泡を用いて腕内側を洗浄し、塗布されていない状態(サンプル使用前)の角質層水分量を測定した。その後、下記方法によりサンプルを用いて、洗浄前、洗浄後5min、15min、30min及び60minに皮膚の水分含有量を測定し、洗浄前後の変化量を指標としてその保湿性を評価した。未塗布状態で試験を行う前に、5名の被験者を室温22℃/湿度50%RHの環境で20min以上適応させた。
【0386】
試料の使用方法:発泡後のサンプルを腕内側に1min適応させた後、水で10回洗い流した。
【0387】
使用した機器:皮膚水分計Corneometer CM 825(Courage+Khazaka社、ドイツ)。
【0388】
配合法を表12に記録し、試験結果を
図23に示した(5名の被験者の平均値)。
【0389】
【表19】
*各原料の添加量は何れも重量百分率である。
【0390】
市販品配合法では、アミノ酸型界面活性剤としてココイルグルタミン酸TEA塩を使用し、更にブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールなどの様々な保湿剤を配合したのに対して、本発明のLA-I配合法、LA-II配合法は、アルギニンで中和した水溶液であり、保湿剤を一切添加することなく、その保湿性能に優れ、LA-II配合法は保湿剤を添加した市販品よりも優れ、またLA-II配合法の性能の優位性は経時的により明らかである。
【0391】
また、LA-I配合法に市販品配合法と同量のブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトールを加えると、保湿性能が明らかに向上したと観察され、本発明の生物学的保湿性能に優れることを示し、保湿剤を更に配合すると、性能が更に向上できる。
【0392】
適用例11 定性応用試験
超分子アミノ酸は、その特別な構造のため、グリースと結合して、手に粘着しない「固体」/クリーム状物を形成し、容易に除去でき、また、pHが5~14の範囲内で洗浄力を有し、適用範囲が非常に広い。
【0393】
実施例1の超分子アミノ酸のナトリウム塩(LA-I)及び実施例6の超分子アミノ酸のナトリウム塩(LA-II)をそれぞれ10%及び12%の水溶液に調製し、炊飯器表面、レンジフード表面、レンジフードの油類引き出し、調理台、食器洗い、洗濯物の洗濯、脱臭、便器などに生活に応用した。
【0394】
12%のLA水溶液からの発泡量は、10%のLAの発泡よりも豊富で、より綿密であり、洗浄力がより優れた。
【0395】
炊飯器表面、特にボタンにべたつきがあり、濡れた雑巾又はペーパータオルで炊飯器表面の油っぽい箇所を拭いたり、数回繰り返し拭いた後に、更にクリーニングクロスで拭いたら、清潔で、べたつかず、異味がなく、泡残りもないようにできた。
【0396】
調理台、レンジフードの表面は、普通の食器洗い用クリーニング剤では効果が低いが、12%のLA-I又はLA-IIで洗浄したら、洗浄力が何れも優れ、手に対する刺激性が弱く、一般的に再度洗浄する必要がなく、レンジフードの引出しにLA-I又はLA-IIの水溶液を加えた後、流動性が高く(注ぎやすく)なり、洗浄がより容易になる。
【0397】
10%のLAで食器を洗浄し、発泡量が豊富で、手にべたづかず、クリーニング剤が残らず、食器が容易に洗い流され、節水で環境に優しい。
【0398】
10%のLAで便器内壁の汚れを洗浄し、体験感が高く、適量を注いだ後に便器ブラシで数回ブラッシングして、クリーニングして脱臭することができた。
【0399】
また、当業者は、本明細書に記載される幾つかの実施例が、他の実施例に含まれる特定の特徴を含み、他の特徴を含まないが、異なる実施例の特徴の組み合わせが、本発明の範囲内であり、異なる実施例を形成することを意味すると理解すべきである。例えば、以下の特許請求の範囲において、請求される実施例の何れか1つは、任意の組み合わせで使用することができる。
【国際調査報告】