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特表2024-527162人工弁のための交連アラインメントシステムおよびアラインメント方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】人工弁のための交連アラインメントシステムおよびアラインメント方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240711BHJP
   A61F 2/958 20130101ALI20240711BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240711BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/958
A61F2/966
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527892
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 IN2022050479
(87)【国際公開番号】W WO2023062645
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202121046556
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524030754
【氏名又は名称】メリル・ライフ・サイエンシーズ・ピーブイティー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100181113
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】サンジーヴ・ナウッタム・バット
(72)【発明者】
【氏名】ハルシャード・アムルトラール・パルマール
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC18
4C097MM10
4C097SB03
4C097SB10
4C267AA05
4C267AA06
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB27
4C267CC08
4C267HH12
(57)【要約】
人工弁の交連と本来の大動脈弁の交連とのずれを最小限に抑えながら、人工弁を患者の体内に留置する方法が開示される。治療対象患者の自己大動脈弁のAoCAを測定し、3つの交連を持つ人工弁を、外側シャフトに1つ以上のアライナーがマーキングされたデリバリーシステムにクリンピングする。アライナーは同じ軸に沿っている。クリンピングは、1つ以上の角度マーキングを含むクリンパーおよび/または確認ゲージを用いて行われる。クリンピングは、人工弁の交連のうちの1つがクリンパー/確認ゲージの一方の角度マーキングで特定されたAoCAと軸方向にアライメントされるのと同時に1つ以上のアライナーが上方を向くようにして行われる。クリンピングされた人工弁は、留置の間中、アライナーを上向きに維持しながら留置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工弁の交連と自己大動脈弁の交連とのずれを最小限に抑えて患者の体内に人工弁を留置する方法であって、
治療される患者の交連アライメント角度(AoCA)を決定するステップと、
3つの交連を有する人工弁を、外側シャフトにマーキングされた1つ以上のアライナーを有するデリバリーシステムにクリンピングするステップであって、前記1つ以上のアライナーが同じ軸に沿い、前記デリバリーシステムに前記人工弁のクリンピングすることが、少なくとも1つの面に1つ以上の角度マーキングを含むクリンパーと確認ゲージとのうち少なくとも一方を用いて行われ、前記デリバリーシステムに前記人工弁をクリンピングすることが、前記人工弁の3つの交連のうちの1つが、前記クリンパーと前記確認ゲージとのうち一方に前記角度マーキングで特定された交連アライメント角度(AoCA)と軸方向にアライメントされるのと同時に前記1つ以上のアライナーが上方を向くようにして行われる、ステップと、
クリンピングされた前記人工弁を留置するステップであって、留置するステップの間中において前記1つ以上のアライナーを上向きに維持する、ステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記交連アライメント角度(AoCA)を決定するステップが、
患者の大動脈弁がある大動脈基部の解剖学的構造を調べ、画像ソフトウェアで中央バルサルバ洞(Mid-SoV)の横断面画像を撮影するステップaと、
前記中央バルサルバ洞(Mid-SoV)の横断面画像に前記画像ソフトウェアが描いた仮想円上に水平中心線および垂直中心線を引き、前記水平中心線と前記垂直中心線の交点を洞の幾何学的結節(GNS)と特定するステップbと、
前記洞の幾何学的結節(GNS)を通り、右冠尖(RCC)と左冠尖(LCC)と無冠尖(NCC)のうちいずれか1つの幾何学的中点まで線を引くステップcと、
前記ステップcで引いた線と、前記洞の幾何学的結節(GNS)の右側に伸びる前記水平中心線とのなす角をAoCAとして測定するステップdと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像ソフトウェアがマルチスライスコンピュータ断層撮影法(MSCT)ソフトウェアである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
人工弁を留置するためのデリバリーシステムであって、
前記デリバリーシステムの近位端と、手術者から離れた端部である遠位端と、
近位端と遠位端を有する細長の外側シャフトと、
前記外側シャフトの近位端にあるハンドルと、を備え、
前記外側シャフトは、軸を基準として前記ハンドルの近位端から始まる少なくとも1つのアライナーを備え、
前記少なくとも1つのアライナーは、前記外側シャフトの遠位端または該遠位端の近傍で終端し、
前記少なくとも1つのアライナーは、前記ハンドルから前記外側シャフトの遠位端まで、同じ軸に沿い、同じ方向を保持する、デリバリーシステム。
【請求項5】
互いに間隔をあけた複数のアライナーを備え、近位側のアライナーが前記ハンドルから始まり、遠位側のアライナーが前記外側シャフトの遠位端においてまたは該遠位端の近傍で終端する、請求項4に記載のデリバリーシステム。
【請求項6】
前記ハンドルから前記外側シャフトの遠位端まで伸びる連続線状の単一のアライナーを備える請求項4に記載のデリバリーシステム。
【請求項7】
前記デリバリーシステムの外側シャフト上のアライナーの色が前記外側シャフトの色と対照的であることによって、該アライナーの視認性が向上している、請求項4から6のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項8】
前記デリバリーシステムのアライナーは放射線不透過性であり、蛍光透視下で視認可能である、請求項4から7のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項9】
前記デリバリーシステムの外側シャフトに前記アライナーが塗装されている、請求項4から7のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項10】
前記アライナーに使用される塗料が放射線不透過性である、請求項9に記載のデリバリーシステム。
【請求項11】
前記アライナーが、前記デリバリーシステムの外側シャフトに貼り付けられた生体適合性材料のストリップ状である、請求項4から7のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項12】
前記アライナーのストリップが放射線不透過性である、請求項11に記載のデリバリーシステム。
【請求項13】
前記アライナーが前記外側シャフトにレーザービームで施されている、請求項4から6のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項14】
請求項1に記載の方法を用いて人工大動脈弁と自己大動脈弁の交連の最小限のずれを達成するように患者にバルーン拡張式人工大動脈弁を留置するためのアセンブリであって、
放射状に拡張可能かつ折り畳み可能であり、放射状に折りたたまれた状態でデリバリーシステムのバルーンに装着するのに適した人工大動脈弁であって、
3つの交連取り付け部を持つ放射状に伸縮可能なフレーム、および、
少なくとも前記3つの交連取り付け部において前記フレームに取り付けられて前記人工大動脈弁の交連を形成する3つの弁尖、を備える人工大動脈弁と、
前記人工大動脈弁を送り展開するための請求項4から13のいずれか一項に記載のデリバリーシステムと、
前記デリバリーシステムのバルーン上で前記人工大動脈弁を放射状に折りたたむためのクリンパーと、を備え、
前記クリンパーには、該クリンパーの中央開口の周囲の少なくとも一箇所の外表面に、角度マーキングが設けられている、アセンブリ。
【請求項15】
前記人工弁がバルーン拡張式人工大動脈弁であり、
前記人工弁をクリンピングするステップが、
開いた状態のアイリス開口を備える準備台の上にクリンパーを配置するステップであって、前記クリンパーには少なくとも一側面に角度マーキングが設けられ、前記角度マーキングは、少なくとも度と時計角度のいずれかの方式であり、請求項2に記載の方法によって決定された前記交連アライメント角度(AoCA)に対応する角度マーキングを特定する、ステップと、
前記人工弁を前記クリンパーのアイリス開口を少なくとも部分的に横切って配置し、前記人工弁の3つの交連のうちいずれか1つが、前記交連アライメント角度(AoCA)に対応するクリンパーの特定された角度マーキングとアライメントするようにするステップと、
前記デリバリーシステムのバルーンを、前記クリンパーのアイリス開口の内側に保持された人工弁を横切るように配置するステップであって、前記デリバリーシステムの外側シャフトはアライナーでマーキングされ、前記アライナーが上方を向くようにする、ステップと、
前記人工弁を前記デリバリーシステムのバルーンに完全にまたは部分的にクリンピングするステップであって、該クリンピングするステップの間中にわたって、前記交連アライメント角度(AoCA)に対応する前記クリンパー上の特定された角度マーキングとアライナーが上向きになるように前記人工弁の3つの交連うちの1つの位置をアライメントさせた状態を維持する、ステップと、
前記クリンパーのアイリス開口を開き、前記クリンパーのアイリス開口から完全にまたは部分的にクリンピングされた前記人工弁とともに前記バルーンを取り外すステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記角度マーキング上の前記交連アライメント角度(AoCA)を特定するための線が前記クリンパーの角度マーキングにマーキングされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記人工弁を部分的にクリンピングするステップが、
前記デリバリーシステムのバルーンを、部分的にクリンピングされた前記人工弁とともに前記アイリス開口から取り外すステップと、
部分的にクリンピングされた前記人工弁を、前記デリバリーシステムのバルーンとともに、アライナーを上向きにして確認ゲージの中央開口に挿入するステップと、
前記人工弁の3つの交連のうちいずれか1つが、前記交連アライメント角度(AoCA)に対応する確認ゲージ上の角度マーキングとアライメントしているかどうかを確認するステップと、
アライメントしていない場合に、前記バルーン上で前記人工弁を回転させ、前記人工弁の3の交連のうちの1つが前記交連アライメント角度(AoCA)に対応する確認ゲージ上の角度マーキングとアライメントするように、前記人工弁の位置を調整するステップと、
前記デリバリーシステムのバルーンに部分的にクリンピングされた前記人工弁を前記確認ゲージの開口から取り外すステップと、
前記デリバリーシステムのバルーン上に部分的にクリンピングされた前記人工弁を、前記クリンパーのアイリス開口に挿入するステップと、
請求項15に記載の方法に従って、前記デリバリーシステムのバルーンに前記人工弁を完全かつ強固にクリンピングするステップと、を含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記人工弁がバルーン拡張型式人工大動脈弁であり、
前記クリンピングされた前記人工弁を留置するステップが、
イントロデューサーシースを患者の血管系好ましくは大腿動脈に挿入するステップと、
前記人工弁がクリンピングされたバルーンを有するデリバリーシステムの遠位端を、デリバリーカテーテルの外側シャフトのアライナーを上向きにして前記イントロデューサーシースに挿入するステップと、
クリンピングされた前記人工弁を前記患者の血管系を通して大動脈弁輪の目的の展開部位まで誘導する間、前記アライナーの上向き状態を維持するステップと、
前記アライナーを上向きの向きを維持したまま、前記デリバリーシステムのバルーンを拡張して、前記人工弁を展開するステップと、
前記人工弁を展開した後、前記デリバリーシステムのバルーンを収縮させるステップと、
前記デリバリーシステムのシャフトを前記バルーンとともに前記患者の血管系から引き抜くステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記イントロデューサーシースを挿入するステップは、頸動脈、鎖骨下動脈、または腋窩動脈のいずれかに前記イントロデューサーシースを挿入することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イントロデューサーシースを挿入するステップは、経心尖植え込み経路を用いて心臓の心尖部から前記イントロデューサーシースを挿入するステップ、または、静脈を通して前記イントロデューサーシースを挿入し、経静脈植え込み経路を用いて大動脈に移行するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
確認ゲージであって、
人工大動脈弁が部分的にクリンピングされた状態で、請求項4から13のいずれか一項に記載のデリバリーシステムを収容する中央円形開口と、
前記中央円形開口の周囲において、該確認ゲージの少なくとも一方の側面上の複数の角度マーキングと、を備える確認ゲージ。
【請求項22】
前記確認ゲージが正方形構造を有する、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項23】
前記確認ゲージが長方形構造を有する、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項24】
前記確認ゲージが円形構造を有する、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項25】
前記角度マーキングの角度が度数で表されている、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項26】
前記角度マーキングの角度が時計角度で表されている、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項27】
前記角度マーキングがクリッパーの角度マーキングに対応している、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項28】
前記確認ゲージの角度マーキングに交連アライメント角度(AoCA)を簡単に特定するための線がマークされている、請求項21に記載の確認ゲージ。
【請求項29】
請求項1に記載の方法によって自己拡張式人工大動脈弁を患者に留置するためのアセンブリであって、
前記アセンブリは、径方向に拡張可能かつ折りたたみ可能で、デリバリーシステムに搭載可能な人工大動脈弁を備え、
前記人工大動脈弁は、
近位端、遠位端、および前記近位端と前記遠位端を通過する軸と、
径方向に拡張可能かつ折りたたみ可能な自己拡張式のフレームであって、3つの交連取り付け部を有するフレームと、
少なくとも前記3つの交連取り付け部において前記フレームに取り付けられて前記人工大動脈弁の交連を形成する3つの弁尖と、
前記フレームの端部の1つにある少なくとも1つのループまたはアイレットであって、前記人工弁の3つの交連のうちいずれか1つと軸方向にアライメントしている少なくとも1つのループまたはアイレットと、を備え、
前記アセンブリは、
前記人工大動脈弁を送り展開するための請求項4から13のいずれか一項に記載のデリバリーシステムと、
前記デリバリーシステムの内側ルーメンにおいて前記人工大動脈弁を径方向に折りたたむためのローディングシステムと、
許請求項21から28のいずれか一項に記載の確認ゲージと、をさらに備え、
前記確認ゲージは、前記人工大動脈弁の交連を交連アライメント角度(AoCA)に向けるようにして、少なくとも部分的にクリンピングされた人工大動脈弁とともに請求項4から13のいずれか一項に記載のデリバリーシステムを収容する、アセンブリ。
【請求項30】
前記人工大動脈弁の交連のうちの1つにアライメントされている前記自己拡張式のフレームの一方の端にある前記少なくとも1つのループまたはアイレットに、視覚的特定用の1つ以上の特定マークが設けられている、請求項29に記載のアセンブリ。
【請求項31】
前記デリバリーシステムはリテーナシースを含み、前記リテーナシースに少なくとも1つのアライナーがマーキングされている、請求項29に記載のアセンブリ。
【請求項32】
前記人工弁をクリンピングするステップが、自己拡張式の人工弁を、前記人工弁の3つの交連のうち1つを前記人工弁のフレームの一方の端にある少なくとも1つのループまたはアイレットにアライメントさせた状態でクリンピングするステップであって、該クリンピングするステップが、
請求項2に記載の方法によって決定された交連アライメント角度(AoCA)を、確認ゲージの少なくとも1つの側面の角度マーキングで特定するステップであって、前記角度マーキングは、度または時計角度の少なくとも一方である、ステップと、
ロック機構を使用して、デリバリーシステムの中間シャフト上にホルダーをロックするステップであって、前記ホルダーは前記デリバリーシステムの中間シャフト上に配置され、前記ホルダーには複数のタブまたはパドルまたはレセプタクル領域が設けられている、ステップと、
前記デリバリーシステムの遠位端を、確認ゲージの一方の側面から前記確認ゲージの中央開口に挿入し、前記デリバリーシステムの外側シャフトとホルダーの一部が確認ゲージのもう一方の側面から突出するようにし、前記デリバリーシステムは、前記アライナーがデリバリーカテーテルの外側シャフトの上向きに配置されるようにして向けられる、ステップと、
前記ホルダーのロックを解除し、前記中間シャフト上で回転させ、前記ホルダー上のタブ、パドルまたはレセプタクル領域のいずれか1つが、前記確認ゲージ上で特定された交連アライメント角度(AoCA)マーキングとアライメントされるようにするステップと、
前記中間シャフトの遠位端で前記ホルダーをロックするステップと、
前記人工弁の3つの交連のうち1つに位置合わせされた前記人工弁のフレーム上のループまたはアイレットが、交連アライメント角度(AoCA)に対応する確認ゲージ上で特定された角度マーキングに位置合わせされた前記ホルダーのタブ、パドルまたはレセプタクル領域に係合するように、ローディングシステムを使用して前記ホルダーの遠位端とチップの近位端との間の内側ルーメンに人工弁をクリンピングするステップと、
前記デリバリーシステムの外側シャフトまたはリテーナシースを、クリンピングされた前記人工弁と前記ホルダーを覆うように移動させ、クリンピングされた前記人工弁を半径方向に収縮した状態で保持するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記人工弁が自己拡張式の人工弁であり、
前記人工弁を留置するステップが、
前記人工弁を有するデリバリーシステムの遠位端を、イントロデューサーシースを介して患者の血管系に放射状に折り畳んだ状態で挿入し、デリバリーカテーテルの外側シャフトに設けられたアライナーが上向きになるように保持するステップと、
蛍光透視下で、前記人工弁と前記バルーンが大動脈輪を通過するまで、前記デリバリーシステムを患者の血管系に誘導し、前記留置するステップの間中において前記アライナー/が上向きになるようにするステップと、
前記人工弁を目標留置位置に留置するステップと、
前記外側シャフトまたはリテーナシースを近位方向に徐々に引き出し、前記アライナーを上向きに維持したままクリンピングされた前記人工弁を露出させることにより、前記人工弁を自己拡張させるステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムに関する。より具体的には、本発明は、経カテーテル人工心臓弁の交連(接合)と、本来の心臓弁の交連とのアライメントずれを最小にするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工心臓弁の機能は、病気になった本来の心臓弁の代わりをすることである。置換手術は外科的(開心臓手術を用いる)または経皮的な方法で行われ得る。
【0003】
外科手術では、病変のある本来の心臓弁の弁尖を切除し、人工心臓弁を受け入れるために弁輪を形成する。長年にわたり、このような疾患に対する決定的な治療法は、開胸手術による心臓弁の外科的修復または置換であったが、このような手術は多くの合併症を引き起こしやすいものであった。一部の患者は、手術に伴う外傷や体外血液循環の継続時間のために、手術に耐えることができない。このため、多くの患者が手術不可能と判断され、未治療のままになっている。
【0004】
外科手術に代わって、開胸手術よりもはるかに侵襲の少ない、柔軟なカテーテルを用いて人工心臓弁を体内に導入し、留置(インプラント)する経皮的カテーテル治療法が開発されました。この手術法では、人工弁は、軟性カテーテルの先端部にあるバルーンに圧着して装着され、経カテーテル心臓弁システム(THV)と呼ばれている。カテーテルは、通常は末梢動脈を介して(まれに静脈を介して)血管に導入されるのが最も一般的である。患者の総大腿動脈、場合によっては腋窩、頸動脈、または鎖骨下動脈である可能性が最も高く、まれに経心尖ルート(心臓の頂点を通る)または経大動脈ルート(静脈を通って大動脈に渡るルート)などが考えられる。バルーンに人工弁が圧着されたカテーテルは、圧着された人工弁が留置部位に到達するまで血管内を進行する。弁は、弁が取り付けられたバルーンを膨らませることによって、欠損した本来の弁の部位で機能的な大きさまで拡張することができる。あるいは、人口大動脈弁は、拘束シース(リテーニングシース)を引き抜くことによって弁を機能サイズに拡張する自己拡張式ステントまたはサポート支持フレームを有してもよい。前述の人工弁は「バルーン拡張式」、後述の人工弁は「自己拡張式」と呼ばれる。
【0005】
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、外科的大動脈弁置換術(SAVR)よりも、症状のある重度の大動脈弁狭窄症の治療法として有望なものとなっている。
【0006】
経カテーテル心臓弁膜系(THV)には、非常に重要な未充足の臨床ニーズがある。それは、治療対象となっている生来の大動脈弁の交連と人工心臓弁の交連をアライメント(整列)させる(揃える)ことである、交連アライメント(CA)である。THVの交連アライメント(CA)は、以下に概説するいくつかの理由から臨床的に重要である。実際のTAVR処置では、CAを達成するための簡単な方法がないため、CAは日常的に実践されていない。したがって、CAは重要な未充足の臨床ニーズである。
【0007】
本発明は、前述の未充足のニーズを解消することを目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人工心臓弁(THVとも呼ばれる)の位置決め、すなわち、人工心臓弁の交連が本来の心臓弁の交連に対して最小限のずれになるような交連アライメント(CA)を、斬新で使い勝手のよい方法で達成するシステムおよび方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
CAの潜在的な利点には、(a)新生洞内の血流ダイナミクスのバランスによる血行動態的性能の向上、(b)弁突へのストレスの軽減とTHVの長期耐久性の向上、(c)将来の再介入(PCI)のための冠状動脈開口への無制限なアクセス、(d)将来の弁内弁介入のためのバジリカ処置を実行する能力が含まれる。上述の特徴およびその他の特徴ならびに本発明の優位性は、添付図を参照しながら以降の詳細な説明からより明らかになる。
【0010】
交連アライメント(CA)を達成するためのシステムおよび方法は、以下の基本的なアプローチに基づく。
1.交連アライメント角度(AoCA)の決定。この角度は、THV(経カテーテル的人工弁)が留置(インプラント)される患者の本来の大動脈弁の解剖学的構造に完全に依存している。AoCAの決定方法は、以下の詳細な説明に記載されている。
2.THVの一方の交連が、アライナー部が上方を向いた状態で、上記1と同様に決定されたAoCAと軸方向にアライメントするように、デリバリーシステムにTHVをクリンピングする。この方向性を実現するためのクリンピングの方法は、以下の詳細な説明に記載されている。
3.THVの留置(インプラント)は、手順全体を通じてアライナーを上向きに保つことにより、上記2で説明した方法でクリンピングする。留置方法については、以下の詳細な説明に記載されている。
【0011】
この基本的なアプローチは、以下の詳細説明にあるように、バルーン拡張式または自己拡張式THVに適用可能である。
【0012】
上記の概要、および例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むことにより、よりよく理解することができるものである。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構造が図面に示されている。ただし、本開示はここで開示された特定の方法や機器に限定されるものではない。また、当業者であれば、図が縮尺通りでないことを理解するものである。可能な限り、同種の構成要素には同一の番号を付けている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本来の大動脈起始部の略図である。
図2】大動脈起始部の解剖学的/APビューを模式的に示したものである。また、Mid-SoV(中央バルサルバ洞)の断面A-Aを撮るべき位置も示している。
図3図3は、中央バルサルバ洞のマルチスライスコンピュータ断層撮影法(MSCT)断面を短軸方向から見たものである。図3Aは、図3のMSCT画像のエコー画像である。
図4図3のMSCT画像を模式的に示している。
図5】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図6】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図7】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図8】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図9】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図10】「3mensio(登録商標)」などのソフトウェアを使用して、MSCT画像を利用した交連アライメント角度(AoCA)を決定する方法を説明している。
図11図11A図11Dは、さまざまな解剖学的構造に対して角度の目盛りを備えて重ね合わされた時計文字盤図を示す。
図12図12A図12Dは、さまざまな解剖学的構造に対して角度の目盛りを備えて重ね合わされた時計文字盤図を示す。
図13図13A図13Bは、さまざまな解剖学的構造に対して角度の目盛りを備えて重ね合わされた時計文字盤図を示す。
図14図14A図14Bは、さまざまな解剖学的構造に対して角度の目盛りを備えた重ね合わされた時計文字盤図を示す。
図15】典型的な例示的バルーン拡張式人工弁のフレームを蛍光透視図で示している。
図16】バルーン拡張式THVの典型的なデリバリーシステムを示している。
図17】デリバリーシステムの図16の近位端と、この端に位置するハンドルを示している。
図18図16のデリバリーシステムの遠位端を描写し、拡張型バルーンと先端を示している。
図19A】バルーン拡張式THVをデリバリーカテーテルのバルーンにクリンピングするための、表面に角度マーキングが施された典型的な模範的クリンパーを表している。
図19B】バルーン拡張式THVをデリバリーカテーテルのバルーンにクリンピングするための、表面に角度マーキングが施された典型的な模範的クリンパーを表している。
図19C】バルーン拡張式THVをデリバリーカテーテルのバルーンにクリンピングするための、表面に角度マーキングが施された典型的な模範的クリンパーを表している。
図19D】バルーン拡張式THVをデリバリーカテーテルのバルーンにクリンピングするための、表面に角度マーキングが施された典型的な模範的クリンパーを表している。
図20】クリンパーと、クリンパーのアイリス開口内に配置されたバルーン拡張式人工弁、およびアイリス開口に挿入されていくバルーンカテーテルの向きを示している。
図21図21A図21Dは、異なる視点からの確認ゲージの図を示している。
図22図22Aおよび図22Bは、異なる視点からの確認ゲージの図を示している。
図23図23Aおよび図23Bは、デリバリーカテーテルのバルーン上のTHVの位置が正しいことを、最後にクリンピングする前に確認する方法を説明している。
図24】留置後のTHVの交連と、この発明のシステムおよび方法を用いた生来の大動脈弁の交連との理想的なアライメントの図で表している。
図25】典型的な自己拡張式人工心臓弁の例示図である。
図26図27の自己拡張式人工心臓弁用の典型的なデリバリーシステムの遠位部を示している。
図26A図27のデリバリーシステムの遠位部分の断面図である。
図26B図27のデリバリーシステムの遠位部分の蛍光透視図である。
図27】自己拡張式THVの典型的なデリバリーシステムのアセンブリを示している。
図28図26のデリバリーシステムの遠位部を示し、外側シャフトに連続的なアライナーが表示されている。
図29図29Aおよび図29Bは、図21A図21D図22A図22Bの確認ゲージを示し、AoCAと記されている。図29Bは、図21C図21Dの確認ゲージを全角マークで示している。
図30図30及び図30Aは、デリバリーカテーテルの遠位端が確認ゲージの中央開口に挿入され、ホルダーの方向を整える方法を示している。
図31図31図31A図31Bは、確認ゲージを使用してデリバリーカテーテルの内腔に収縮した自己拡張式THVの方向を整える方法を示している。
図32図32図32A図32Bは、確認ゲージを使用してデリバリーカテーテルの内腔に収縮した自己拡張式THVの方向を整える方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
記載された実施形態の特徴は、特許請求の範囲に記載されているものと同じである。実施形態および特許請求の範囲は、以下の説明および説明に付随する図を参照することによって最適に理解できるものである。
【0015】
本発明を説明する前に、以下のようにいくつかの単語や用語について定義する。「含む」や「備える」とその派生語は、無制限の含有を意味する。「または」という用語は包括的で、つまりおよび/またはを意味する。「連結されている」および「関連している」とその派生語は、含む、含まれる、相互接続する、含む、含まれる、接続する、または接続される、連結する、通信可能である、協働する、交互に挿入する、並べる、近接する、結びついている、または関連付けられている、特性を持つなどを意味する場合がある。特定の単語や用語の定義は本願全体にわたって与えられ、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、これらの定義がこれらの単語や用語のこれまでの使用だけでなく、将来の使用にわたって適用されることを理解するものである。
【0016】
本願全体にわたる「一実施形態」、「実施形態」、または類似の表現への言及は、特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通じて「一実施形態において」、「実施形態において」、および同様の表現が現れる場合、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らず、明示的に別段の指定がない限り、「1つまたは複数の、しかしすべての実施形態ではない」ことを意味する場合がある。用語「含む」、「備える」、「有する」およびその変形は、明示的に別段の定めがない限り、「を含むが、これに限定されない」を意味する。項目の列挙は、明示的に別段の定めがない限り、項目のいずれかまたはすべてが相互に排他的および/または相互に包含的であることを意味するものではない。単数形での用語は、明示的に指定されていない限り、複数を指すこともある。
【0017】
この説明には、デバイスの一般的なカテゴリを説明するために提供される多くの例示的な実施形態が含まれている。これらの例示的実施形態の他の代替設計やバリエーションが可能であり、これらは本発明の説明および範囲に含まれるものである。
【0018】
本開示の方法の例示的な実施形態の動作は、説明に便利なように特定の順次的な順序で説明されることがあるが、本開示の実施形態は、開示されている特定の順次的な順序以外の動作の順序を包含することができることを理解されたい。例えば、順次説明される動作は、場合によっては再編成されたり、同時並行的に実行されたりする可能性がある。さらに、ある特定の実施形態に関連して提供される説明および開示は、その実施形態に限定されるものではなく、本願で開示される任意の実施形態に適用することが可能である。さらに、簡略化のため、添付の図面には、公開されたシステム、方法、および装置を他のシステム、方法、および装置と組み合わせて使用できる様々な方法を示していない場合もある。
【0019】
さらに、これらの実施形態の記載された特徴、利点、および特性は、任意の適切な方法で組み合わせることができる。関連技術の当業者であれば、特定の実施形態の特定の特徴または利点の1つ以上を欠いても実施形態を実践できることを認識するものである。他の例では、特定の実施形態にはないすべての実施形態で追加の特徴および利点が認識され得る。これらの実施形態の特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に記載される実施形態によって知ることができるものである。
【0020】
「人工大動脈弁」、「人工弁」、「人工心臓弁」、および「経カテーテル心臓弁」(THV)などの用語は、同じ留置(インプラント)デバイスを指し、したがって、説明全体で互換的に言及されることに留意されたい。
【0021】
システム及び方法の説明において、「近位」とは、施術を行う手術者に向かう方向を意味し、「遠位」とは、手術者から離れる方向を意味する。
【0022】
本発明は、疾患を患った本来の大動脈弁を置換するために使用される経カテーテル人工心臓弁のための交連アライメントシステムを公開する。ここで説明するシステムおよび方法は、バルーン拡張式人工弁にも自己拡張式人工弁にも、以下と同じ基本手順で使用することができる。
・交連アライメント角度(AoCA)を決定する。
・AoCAを用い、カテーテルの外側シャフトにマークされたアライナー、クリンパー/確認ゲージにある角度マーキング、および人工弁の片方の交連をガイドとして、クリンパーを用いてデリバリーカテーテルに人工弁をクリンピングする。
・留置の全行程において、デリバリーカテーテルの外側のシャフトにマークされたアライナーが上向きになるように注意しながら、目的の位置に人工弁を留置(インプラント)する。
システムおよび方法は、明確にするためにバルーン拡張式人工弁と自己拡張式人工弁とに分けて説明されているが、当業者であれば、両方のタイプの人工弁に使用される基本原理が同一であることを容易に認識することができるものである。
【0023】
本発明の交連アライメントシステムは、バルーン拡張式人工大動脈弁または自己拡張式人工大動脈弁(経カテーテル心臓弁、THV)を患者の体内に留置(インプラント)する際に使用することができ、人工大動脈弁の交連と本来の大動脈弁の交連とのずれを最小限に抑えることができる。本発明は、デリバリーシステムとクリンパーに新しい改良を導入することで、交連アライメントを容易に実現する。当業者であれば、これらの変更が、デリバリーシステムおよびクリンピングシステムの基本設計および構造上の特徴に影響を与えないことを容易に理解できるものである。明らかなように、バルーン拡張式THVでも自己拡張式THVでも、改良点は非常によく似たものである。
【0024】
さらに、本発明は、上記の改良に基づくクリンピング方法を開示するものであり、この方法は、使用者が追従しやすく、また、人工心臓弁の交連と本来の大動脈弁とのほぼ完全なアライメントの実現をサポートするものである。
【0025】
以下の説明は、便宜上、またシステムと方法の理解を深めるために、以下の3つのセクションに分かれている。
・患者の大動脈起始部の解剖学的構造に基づくAoCAの決定。
・バルーン拡張式人工弁のシステムと方法。
・自己拡張式人工弁のシステムおよび方法。
【0026】
AoCAの決定
本来の三尖大動脈弁の解剖学的構造では、3つの交連(接合)部は互いに対して120°の位置にある。本来の0型二尖大動脈弁の解剖学的構造では、これらの交連は互いに180°の位置にある。通常、大動脈基部には3つの冠動脈尖がある。理想的には、冠動脈は冠動脈尖から起始する。
【0027】
大動脈基部複合体(ARC)を図1に模式的に示す。大動脈基部複合体(大動脈基部複合体)は、左室流出路(LVOT)の出口に向かって心臓に取り付けられた大動脈の最初の部分である。これは、自然の大動脈弁と、バルサルバ洞(SoV)、大動脈起始部の移行部(SJ)、冠状動脈などの他の解剖学的構造を含む上行大動脈(AA)の一部である。通常、自然の大動脈弁には3つの尖がある。冠動脈は大動脈洞球の近傍から、3つの尖端のうち2つの尖端から生じている。右冠動脈(RCA)は理想的には右冠尖(RCC)から起始し、左冠動脈(LCA)は理想的には左冠尖(LCC)から起始する。残りの尖は冠状動脈がこの尖の近くから発生しないため、「無冠尖(NCC)」と呼ばれている。通常、3つの冠[状]動脈尖はすべて異なる平面にあり、無冠尖(NCC)は右冠尖(RCC)または左冠尖(LCC)のどちらよりも下に位置している。2次元視点では、2つの異なる区分された断面が存在している。大動脈基部の起点にある最初の平面は「仮想環状平面(VAP)」と呼ばれ、上行大動脈基部の起点にある2番目の平面は「大動脈起始部の移行部(SJ)」と呼ばれる。蛍光透視下での標準的なTAVR/TAVI手術では、生来の冠動脈尖端は、各尖のヒンジポイントが直線上にあり、3つの尖すべてが視差なく良好に分離している同一平面上に位置するように行われる。こうして得られた仮想環状平面(VAP)は、蛍光透視下(通常、大動脈造影中にNCCに標準的な5Frのピッグテールカテーテルを留置する)で確認することができ、人工弁を留置に最適な位置に配置するためのガイド機能となる。図1は、3つの尖がすべて仮想環状平面(VAP)に沿って整列した大動脈基部と、尖から発する大動脈起始部の移行部(SJ)および冠動脈を示している。
【0028】
図2は、図1の大動脈起始部の解剖学的/APビュー(APV)を模式的に示したものである。また、AoCAを決定するためにMid-SoV(中央バルサルバ洞)の断面A-Aを撮るべき位置も示している。
【0029】
図3は、マルチスライスコンピュータ断層撮影法(MSCT)による中央バルサルバ洞(図2参照)のA-A断面における短軸方向の蛍光透視画像である。図3Aは、図3に見られるエコー画像である。図3に示されているように、ソフトウェアによって蛍光透視画像の周りに仮想円(VC)が描かれる。
【0030】
図4は、明確にするために、図3の画像を模式的に示す。図4は、3つの尖を示している。右冠尖(RCC)、左冠尖(LCC)、および無冠尖(NCC)は、短い突起として示されるRCCとLCCから起始する右冠状動脈(RCA)と左冠状動脈(LCA)を有する。無冠尖(NCC)からはいかなる動脈も起始しない。本来の大動脈弁には3つの交連があり、RL交連(RLC)、LN交連(LNC)、NR交連(NRC)と呼ばれている。ソフトウェアによって描かれた仮想円(VC)も示されている。
【0031】
マルチスライスコンピュータ断層撮影法(MSCT)または他の同等の画像システムで観察される蛍光透視像は、真の解剖学的/APビューの鏡像であることに留意されたい。この点は、手術を行う外科医には周知である。
【0032】
本発明は、人工弁の交連が本来の大動脈弁の交連に対して最小限のずれになるように人工弁を位置決めする新規な方法を開示する。この方法は、利用者によって簡単に実行できる。このアライメントは、3つの交連のうちの1つを、特にMSCTまたは同等の画像システムから派生した断面画像で見られる右冠尖(RCC)の中央洞とアライメントさせることによって達成される。また、アライメントは、THVの3つの交連のうちの1つを、LCCまたはNCCの中央洞とアライメントさせることによっても達成できる。本発明による方法は、自己拡張式THVだけでなく、バルーン拡張式THVにも用いることができる。
【0033】
本発明は、デリバリーおよびクリンピングシステムに容易に組み込むことができる新しい追加の機能を開示し、それらの機能を含む留置方法も提供する。この方法は、人工弁の交連が本来の大動脈弁の交連と最小限のズレしか生じないような位置付けが容易に実行できる。
【0034】
AoCAを決定する方法:
まず、「交連アライメント角度」(AoCA)は、患者の大動脈根にある本来の大動脈弁の解剖学的構造を調べることによって決定される。これは、以下で詳細に説明される手順に沿った手法を使用して行われる。右冠尖(RCC)の中央洞を基準として、以下の手順を説明する。ただし、LCCまたはNCCの中央洞を基準点として使用することもできる。AoCAは、交連アラインメントを達成する上で非常に重要な役割を果たしている。
【0035】
AoCAを決定する技術を説明するために、MSCT画像を使用する。しかし、MSCTの代わりに他の同様の画像システムを使用することもできる。わかりやすくするため、MSCT断面図に加えて、あるいはMSCT断面図の代わりに、バルサルバ洞(SoV)の概略図も示している。
・ステップ1:MSCTイメージングソフトウェア(たとえば「3mensio(登録商標)」など)または他の同等のソフトウェアで、バルサルバ洞(SoV)の中洞部分の横断断面画像を撮影する。図3は、図3Aのエコー画像とともに、前述のソフトウェアによって撮影された蛍光透視画像を表示する。図3の蛍光透視画像をわかりやすくするために図4に模式的に示した。図3および図4に示すように、ソフトウェアがSoVのMSCT断面像の周囲に仮想円(VC)を描いている。
・ステップ2:図5および図6に模式的に示すように、図3の画像にソフトウェアが描いた仮想円(VC)上に水平および垂直の中心線(それぞれHCLおよびVCL)を描く。これらの中心線の交点を「洞の幾何学的結節」(GNS)と呼ぶ。また、図6では、RCAとLCAがそれぞれの尖から短い突起として起始することが示されている。
・ステップ3:模式的に図7に示されているように、洞の幾何学的結節(GNS)を通り、右冠尖(RCC)の幾何学的中点に向けて線(L)を引く。この線とGNSの右側に延びる水平中心線(HCL)との間に形成される角度を「交連アライメント角度(AoCA)」と呼ぶ。LCCの幾何学的中点は71で表示されている。
・ステップ4:角度マーキング面(110)を横断断面画像の上に重ね合わせる。たとえば、模式的に図11Aに示すように、図7の角度標示の角度は度で表現される。この例示的な図では、AoCAは約71度となっている。図11Bの別の例示的な実施形態では、角度マーキングは、例えば図7の断面画像の上に時計(111)の形で、より便利な方法で表現される。この場合、AoCAは「時計角度」として認識され、例えば、図11Bでは3時03分のように表現され得る。
図11A図11Bに示されている角度マーキングは、ソフトウェアによって描かれた仮想円(VC)の円周の半分をカバーしている。必要であれば、角度マーキング(112、113)は、図11Cおよび図11Dに示すように、ソフトウェアによって描かれた仮想円(VC)の全周をカバーすることもできる。図11Cは角度マーキングを度単位で表したもので、図11Dは角度マーキングを時計角度で表したものである。
【0036】
図7は、右冠状動脈(RCA)が右冠尖(RCC)の幾何学的中点(70)から起始し、左冠状動脈(LCA)も左冠尖(LCC)の幾何学的中点(71)から起始するケースの1つを示している。また、図8にRCCの幾何学的中点を80として模式的に示したように、RCAが中心から外れて起始する場合もある。この場合もAoCAは、図8に示すように、GNSからRCCの幾何学的中点(80)を通って引いた線と、GNSの右側に延びる水平中心線とのなす角度となる。他の例示的な解剖学的構造を図9および図10に示す。図9では、左冠状動脈(LCA)が左冠尖(LCC)の幾何学的中点(90)中心からずれた位置から起始し、図10では、右冠状動脈(RCA)と左冠状動脈(LCA)の両方がそれぞれ右冠尖(RCC)(100)と左冠状尖(LCC)(101)の幾何学的中点から中央からずれた位置から起始することが示されている。他にも可能な解剖学的変化が存在し得る。これらのすべての場合において、冠状動脈の発生元がどこであるかに関わらず、AoCAは依然としてGNSからRCCの幾何学的中点を通る線(L)と、GNSの右側から延びる水平中心線との間に形成される角度である。したがって、この手術は、このような解剖学的構造の違いの場合にも効果的に機能し得る。
【0037】
上記で説明したすべての実施形態において、AoCAはGNSの右側から延びる水平中心線(HCL)と線(L)との間の角度として測定される。しかし、AoCAはGNSの左側から延びる水平中心線と線Lとの間の角度としても測定することができる。同様に、AoCAはGNSから上方または下方に延びる垂直中心線と線Lとの間の角度としても測定できる。重要なのはAoCAを測定することである。このような場合、基準点が変わる。以下の説明では、AoCAはGNSの右側に延びる水平中心線と線Lとの間で測定される。当業者であれば、本方法が他の基準点と共にどのように使用できるかを容易に理解できるものである。
【0038】
AoCAを測定し表わすための2つの代替単位は前述の通りであり、度単位の角度で、また時計角として表示する。当業者であれば、この角度(すなわちAoCA)を測定し表現する他の単位も同様に有効であり、使用できることを理解できるものである。時計角度は、角度を測定し表現する便利な方法である。AoCAの重要性は、後に続くクリンパーの説明から明らかになる。
【0039】
解剖学的構造は患者ごとに異なり、したがって患者ごとに解剖学的構造は異なる。したがって、治療する患者のAoCAを決定する必要がある。図12A図13Aおよび図14Aは中部右冠尖(Mid-RCC)に関連する角度の度数に対応するいくつかの解剖学的変異の例を示す。図12B図13Bおよび図14Bは、図12A、13A、14Aに示した解剖学的変異の例を示し、それぞれ時計角度に対応している。これらの模範的な画像では、AoCAは、GNSの右側に延びる水平中心線(HCL)と線Lとの間で測定される。これらの画像は例示であり、右冠動脈(RCA)がRCCの幾何学的中点を起点とし、左冠動脈(LCA)がLCCの幾何学的中点を起点とする症例の一つを示している。また他の場合では、前述したようにRCAとLCAが中心から外れて生じることもあり得る。また、角度を測定および表現するための他の単位でも同様に効果的である。例えば図12Aの場合のAoCAは90°と表すことができる。図13Aおよび図14Aの例では、それぞれ60°および120°として表現できる。たとえば、図12Bの場合、AoCAは3時の位置として表現できる。図13B図14Bの例では、それぞれ3時5分と2時55分の位置にあることを示している。
【0040】
図12Cおよび図12Dは、仮想円(VC)全体をカバーする角度マーキングを、それぞれ度単位と時計角度単位で示したものである。
【0041】
上記の説明は、AoCAがRCCの幾何学的中点を基準として決定される特定の状況に関して述べている。当業者であれば、AoCAはLCCまたはNCCの幾何学的中点からも決定できることを理解できるものである。これらの場合のAoCAは、RCCの幾何学的中点を基準として測定されたものとは異なることに留意されたい。そして、基準がLCCまたはNCCに移行する。
【0042】
当業者であれば、この方法がさまざまなタイプの二尖大動脈弁の解剖学的構造にも適用可能であることを容易に理解できるものである。AoCAも同様に決定される。
【0043】
当業者には明らかであるが、AoCAの測定方法は、留置(インプラント)されるTHVがバルーン拡張式か自己拡張式かに依存しない。なぜなら、AoCAは完全に治療対象患者の解剖学的構造に依存するからである。したがって、AoCAを決定する方法は、両方のタイプのTHVに適用可能である。さらに、上記で述べたように、目的は、AoCAを任意の特定の基準点を使用して測定することである。
【0044】
バルーン拡張式THVの交連アライメント方法
バルーン拡張式THV
当業者は、他の部品に加えて、放射状に折りたため、拡張可能なフレームを含むバルーン拡張式人工弁のさまざまな設計をよく理解しているものである。フレームは、好ましくはスキャフォールドの円筒形の構造であり、一般に、周方向に延びる複数列の支柱(ストラット)によって形成され、これらの支柱は、互いに直接連結されているか、または一般的な軸方向に延びる支柱によって連結されている。支柱によって形成されたスキャフォールド構造は、複数の細胞列を形成する。市場には、さまざまなスキャフォールド設計を持つバルーン拡張式人工弁が多数存在し、文献にも記載されている。設計は改良と最適化され続けている。当業者であれば、本発明がどのような設計のスキャフォールドにも使用できることを容易に理解できるものである。説明のために、バルーン拡張式THVの典型的なフレーム例を図15に示す。図15に示すように、バルーン拡張式人工弁の代表的なフレーム150は、周方向に延びる支柱列151を、一般に垂直方向に配置された支柱152で接続している。これらの支柱は、セル153を形成する。さらに、弁尖の交連が取り付けられる交連取り付け部154がある。図15は、バルーン拡張式THVのフレーム150の単なる図解であることに留意されたい。
【0045】
バルーン拡張式THVはさらに、動物組織または合成材料製の少なくとも2枚、好ましくは3枚の弁尖を備えている。隣接する2つの弁尖の交連は、フレーム150の交連取り付け部154に取り付けられ、人工弁の交連を形成する。フレーム150は、金属材料またはポリマー材料製でもあり得る。
【0046】
バルーン拡張式人工大動脈弁は、さらに、内側スカートおよび外側スカートの少なくともいずれかを含む場合がある。内側スカートはフレーム150の内面を少なくとも部分的に覆っている。外側スカートはフレーム150の外面を少なくとも部分的に覆っている。
【0047】
当業者であれば、本発明がどのような設計のバルーン拡張式人工弁にも使用できることを容易に理解できるものである。
【0048】
バルーン拡張式THV用デリバリーシステム:
前述のように、交連アライメントを実現するために、デリバリーシステムに新しい追加機能を提供する必要がある。本セクションでは、バルーン拡張式THVのデリバリーシステム、すなわちバルーンカテーテルに関する追加機能について説明する。
【0049】
当業者は、ステントや人工弁などのバルーン拡張式デバイスを径方向に拡張するために使用されるバルーンカテーテルの構造をよく理解しているものである。例示的なバルーンカテーテル160は、図16に示すように、近位端170および遠位端180を有し、細長の外側チューブ161(「外側シャフト」とも呼ばれる)を有し、この外側チューブを介して外側チューブと同軸に内側チューブ(「内側ルーメン」とも呼ばれる、図示せず)が延びている。これらのチューブを総称して「チューブ」と呼ぶ。チューブにはそれぞれ遠位端と近位端がある。
【0050】
これらのチューブの近位端は、ハンドル162を通過し、ガイドワイヤのための出口ポート163Aおよび膨張液の注入ポート163Bを持つY字コネクタ163に取り付けられる。ガイドワイヤポートは内腔と連通しており、膨張液ポートは2つのチューブ間の環状空間と連通している。
【0051】
バルーン164は、外側シャフト161の遠位端に取り付けられている。内腔はバルーン164を経て、カテーテルの最遠位端にあるソフトチップ(軟性先端部)165に到達する。ガイドワイヤは、カテーテルの遠位ソフトチップ165でガイドワイヤ内腔に入り、バルーン164を通過して内腔に入り、Y字コネクタ163から外へ出る。前述のように、「近位」とは手術者に向かうことを意味し、「遠位」とは手術者から離れることを意味する。
【0052】
バルーン164は、加圧された膨張流体を、外側シャフト161と内腔との間の環状空間を通してバルーン164内に注入することにより、放射状に拡張される。
【0053】
以上の説明では、例示的な実施形態によるバルーンカテーテル160の詳細を開示している。バルーンカテーテルには、本発明の対象とみなされる他の設計が存在し得ることに留意されたい。
【0054】
本発明は、以下で説明するように、バルーンカテーテルに容易に行える新しい変更を含み、交連アライメントに役立つ。
【0055】
デリバリーシステムの外側シャフト161には、「アライナー」166と呼ばれる1つまたは複数のマーキングが設けられている。図16の実施形態は、互いに離れた複数のアライナー166を示している。好ましくは、単一の方向、すなわち同じ軸上で互いに等距離に配置されている。以下の説明では、便宜上、複数のアライナーに言及する。しかし、シングルアライナーも含まれると理解されたい。アライナー166は、デリバリーシステム160の外側シャフト161に設けられているため、そのように視認される。視認性を高めるため、アライナー166の色は外側シャフト161の色と対照的である必要がある。アライナーが放射線不透過性材料で作られていれば、蛍光透視下でも視認可能である。アライナーは、外側シャフト161に描かれるか、または生体適合材料のストリップを外側シャフト161に貼り付けることができる。塗料が放射線不透過性であるか、ストリップが放射線不透過性材料で作られている場合、アライナーは蛍光透視下でも視認可能である。あるいは、レーザービームを使用して、アライナーを外側シャフト161に設けることもできる。アライナーを提供する他の方法も、同様に効果的である。アライナーは生体適合性のあるものでなければならない。
【0056】
この発明のデリバリーシステムの好ましい実施形態は、120cmの動作長を持ち、等しい長さの4つのアライナー166が互いに均等に間隔をあけて設けられている。あるいは、アライナーの数は4つ以上でも4つ以下でもよく、アライナー間の間隔は均一でなくてもよい。別法として、近位ハンドルから外側シャフトの遠位端まで延びる連続線として単一のアライナーが提供されてもよい。好ましい実施形態の外側シャフト161の色は、例えばオレンジ色などである。そのため、アライナー166の色は白であってもよい。デリバリーシステムの外側シャフトの色は、アライナーの色と対照的であるため、アライナーの視認性が向上する。好ましい実施形態のアライナーは、白色の生体適合性ストリップで作られており、できれば放射線不透過性を持っていることが望ましい。ストリップは、貼り付けなどの既知の手法で外側シャフト161に固定することができる。あるいは、白いアライナーをオレンジ色の外側シャフト161に描くことも可能である。
【0057】
アライナー166は単一軸上に設けられているため、交連アライメントのためのデリバリーシステム導入時に特定の向きを維持するのに役立つ。これらのアライナー166は、挿入中にデリバリーシステムの誤った捻りを防ぎ、さらに大動脈の解剖学的構造に沿ってシステムを追跡するのに役立つ。
【0058】
例えば、好ましい実施形態では、図16に示すように、近位ハンドル上に、会社のロゴ167(または他の同等の参照物)の軸と同じ軸上にマークされた複数のアライナー166が存在する。これは、アライナー166の軸を特定する便利な方法である。あるいは、前述したように、全長にわたって単一のアライナーを使用することもできる。
【0059】
図16は、シャフト168の遠位部分が大動脈弓の形状に従って曲げられるデリバリーシステムを示す。これは一例に過ぎず、デリバリーシステムは曲げオプションのないシャフトでもよいことに留意されたい。
【0060】
アライナー166は、軸を基準として近位ハンドル162(最近位アライナーとも呼ばれる)から始まり、同じ軸を維持して外側シャフト161の遠位端(すなわち、最遠位アライナー)またはバルーン164の近位端で終端する。図17は、バルーンカテーテル160の近位端170の好ましい実施形態を示している。この好ましい実施形態では、アライナー166は、近位ハンドル162上の会社ロゴ167と同じ軸をたどり、バルーンカテーテル160の遠位端180を示す図18に示すように、バルーン164の近位端または外側シャフト161の遠位端180まで同じ軸をたどり続ける(すなわち、同じ向きを保持する)。これは、アライナー166にマーキングするための単なる便利な方法である。会社のロゴと同じ軸である必要はない。あるいは、軸を基準として近位ハンドルから始まり、バルーン164の近位端で終わる単一のアライナーがあってもよい。
【0061】
当業者は、前述のようにアウターシャフトにアライナー166をマーキングすることが新しい方法であり、デリバリーカテーテルの設計パラメータや性能に影響を与えないことを認識するものである。
【0062】
クリンパー:
前述のように、交連アライメントを達成するためには、クリンパーに斬新な追加機能を設ける必要がある。このセクションでは、クリンパーに関するこれらの追加機能について説明する。
【0063】
THVのようなバルーン拡張式人工的補填物用の典型的なクリンパー190を図19Aに示す。例示的なクリンパー190は、ほぼ円形のアイリス開口191Aを形成するようにハウジング192内に配置された複数の顎部191を有する。一般的なクリンパーは最低6本、通常は12本の顎部で構成されている。しかし、クリンパーは、6本または6本以上の任意の数の顎部を有してもよい。ハウジング192には、これらの顎部を同期して動かす機構が収納されており、これによって、顎部によって形成されるアイリス開口191Aの直径を変化または調整することができ、その形状は概ね円形(すなわち正多角形)のままであり続ける。この機構はハンドル192Aによって操作される。ハンドル192Aを動かすと、機構が作動する。初期状態では、ハンドルはアイリス開口191Aの直径が最大となる位置(通常は上向き)にある。少なくとも部分的に膨張した状態にある人工弁は、デリバリーカテーテルの収縮したバルーンの上に配置され、バルーンと人工弁を収容するのに十分な大きさの開いたアイリスの開口191Aに挿入される。ハンドルを(通常は下方に)動かして、顎部191を動かす機構を作動させ、顎部191によって形成されるアイリス開口191Aの直径が徐々に小さくなるようにする。開口の直径が小さくなることで、人工弁のフレームの直径が半径方向に縮小し、バルーンに弁を圧着させることができる。
【0064】
上記のクリンパーはその一例である。ここに記載の手順は、同様の作動原理で作動する他のタイプのクリンパーにも適用可能である。
【0065】
当業者であれば、圧着手順やさまざまな設計のクリンパーを熟知しているものである。従来、人工弁をバルーンに圧着する際、人工弁の交連の向きに注意を払ってこなかった。それゆえ、交連アライメントを達成するための意識的な取り組みがされていない。以下で説明する新しい変更は、交連アライメントを実現するために従来のクリンパーに簡単に加えることができる。当業者であれば、このような変更がクリンパーの基本設計や動作に影響を与えないことを容易に理解できるものである。
【0066】
本発明において、従来のクリンパーは、図19Aに示すように、その中央の開口194の周囲の少なくとも1つの外側面に角度マーキング193を設けることができ、これらのマーキング193は度数で表される。これらの角度マーキング193は、図11A図12A図13A、または図14Aの中央バルサルバ洞(mid-SoV)の横断断面画像の角度マーキングと対応している必要がある。
【0067】
あるいは、図11B図12B図13Bまたは図14Bに示された角度マーキング193に対応して、図19Bの実施形態190Aに示されたように、角度マーキング193を時計角度として表現することもできる。
【0068】
上述の実施形態では、角度マーキング193は、クリンパーの中央開口194の円周の半分をカバーしている。角度マーキング193は、図19Cおよび図19Dに示すように、クリンパーの中央開口194の全周をカバーするように設けてもよい。図19Cの角度マーキング193は度単位で表されているが、図19Dでは時計角度で表されている。これらの角度マーキングは、中央バルサルバ洞(mid-SoV)の横断面画像上の角度マーキング(図11A図11D図12A図12D図13A図13B図14A図14B)に対応していることを理解されたい。
【0069】
前述のように、角度を測定し表現する他のどのような方法でも同様に有効であり、クリンパーの外面にマーキングする場合も同様である。ただし、クリンパーの角度マーキング193は、中央バルサルバ洞(mid-SoV)の横断面画像の角度マーキングに対応する必要がある。
【0070】
左右どちらの利き手にも便利なように、クリンパーの両側面に角度マーキングを設けることが可能である。
【0071】
交連アライメント達成の手順
上記の方法によって決定されたAoCA、上述のデリバリーシステムのアライナー166、およびクリンパーに設けられた角度マーキング193を用いて、外科医は、以下の手順で説明されるように、簡単な方法で交連アライメントを達成することができる。この手順では、交連アライメントを達成するための基本として、非常に使いやすい時計角度を挙げている。しかし、当業者であれば、AoCAを度数またはその他の方法で測定し、表現することも同様に効果的であり、施術に使用することができ、本発明の範囲に入ることを理解するものである。以下の手順は無菌状態で実施されることを理解されたい。
【0072】
記載の手順は、互いに120度ずつ配置された三つの交点を持つ三葉弁のためのものである。しかし、この方法は、2つの交連を持つ二葉弁や、シーバース分類による大動脈二尖弁の分類に従ったその他の解剖学的変異にも適用可能である。
【0073】
ステップごとの手順は以下の通りである。
1.前述の手順で患者のAoCAを決定し、対応する時計角度を計算する。
2.角度マーキング193が時計角度として表されたクリンパーを準備テーブルに配置し、クリンパーのハンドルを回すことでアイリス開口191Aを開ける。
3.図20に示すように、クリンパーのアイリス開口191Aを少なくとも部分的に横切って、人工弁の交連のうちのいずれか1つがAoCA(ステップ1で決定された)にアライメントされるように、すぐにクリンピングできる人工弁201を配置する。人工弁201をこの位置に保持するために、アイリス開口191Aが人工弁201の外面を少し押すまでハンドル192Aを操作することによって、アイリス開口191Aの直径を小さくすることができる。これにより人工弁はクリンピングされるまでこの位置に保持される。
4.図20に示すように、遠位端アライナー166が上方を向くように、(クリンパーのアイリス開口内に保持されている)人工弁を少なくとも部分的に横切って、萎んだ状態のデリバリーシステムのバルーン164を装着する。
アライナー166は、AoCAに関係なく常に上を向いていなければならない。アライナー166がない場合、システムは、近位ハンドル162と会社のロゴ167を上向きにして保持することが可能である。
アライナーが常に上向きになるように、クリンピング作業が完了するまでカテーテルシャフトをその位置で保持するための補助具をオプションで設けることも可能である。当業者であれば、このような補助具を設計することができるものである。
5.人工弁の交連のうちの1つをAoCAに対応する時計角度とアライメントさせ、同時にアライナーをカテーテル外側シャフト上に上向きに配置したまま、デリバリーシステムのバルーンに人工弁をクリンピングする。
6.THVを完全にクリンピングする前に、人工弁とカテーテルシャフトの向きを確認しておくことが推奨される。この段階では、人工弁は、必要に応じて微調整を行うために、カテーテルのバルーンを中心に回転できる程度にクリンピングする必要がある。この目的のために確認ゲージが使用可能である。
図21A図21Dは、模範的な確認ゲージ210の4つの代替構成を示す。好ましい確認ゲージ210の実施形態は、バルーンとともに部分的にクリンピングされた弁を挿入するのに十分な大きさの中央開口212を備えた正方形のブロック211である。図21Aに示すように、中央開口212の周囲には角度マーキング213Aが設けられる。これらの角度マーキング213Aは、ソフトウェア画像(例えば図11A図12A図13A図14A)上の角度マーキング110、およびクリンパーに設けられた角度マーキング193(例えば図19A)に対応している。角度マーキング213Aは、クリンピングしたTHVが中央の開口に挿入される位置から、ブロックの少なくとも一方の側面(例えば側面A)に設けられる。オプションとして、角度マーキング213Aは、互いに正確に対応するように注意しながら、例示的な確認ゲージ210の両側面(側面Aおよび側面B)に設けることができる。図21Aに描かれた例示的な確認ゲージ210の好ましい実施形態は、度単位の角度マーキング213Aを有している。図21Bの実施形態は、時計角度の角度マーキング213Bを有している。これら両方の実施形態において、角度マーキング213Aおよび213Bは、中央開口212の円周の半分をカバーしている。しかし、前述したように、他のどのような角度マーキングの方法でも同様に効果的である。
図21Cおよび図21Dに示されている代替の実施形態は、それぞれ角度マーキング213Cと213Dが中央開口212の周全体をカバーしている。角度マーキングは、図21Cでは度数(213C)で、図21Dでは時計角度(213D)で表されている。いずれの場合でも、確認ゲージの角度マーキングは、クリンパーの角度マーキング193と対応している必要がある。
図21A図21Bの例示的な確認ゲージ210の側面図および断面図をそれぞれ図22A図22Bに示す。図の実施形態の断面図と側面である図21C図21Dは、中央開口212の全周をカバーする角度マーキングで同様なものとなる。
確認ゲージは、金属や高分子材料など、任意の適切な材料で作ることが可能である。好ましい実施形態の確認ゲージの形状は正方形である。ただし、形状は長方形でも円形でも、その他の形状でもよい。
カテーテルのバルーン(164)と共に部分的にクリンピングされたTHV(232)は、クリンパーのアイリス開口191Aから取り出され、図23A図23Bに示すように、遠位端アライナーが上方を向いた状態で確認ゲージ210の中央開口212に挿入される。説明のために、確認ゲージの面A上の角度マーキング213Bは、中央開口212の円周の半分をカバーする時計角度として表されている。THV232の交連領域のいずれか1つの位置は、AoCA(この例示的な実施形態では時計角度)に対応する角度マーキング213Bとアライメントする必要がある。そうでない場合には、THV232の交連領域の1つがAoCAに対応する角度マーキング213Bとアライメントするように、THV232の向きを修正して調整することができる。バルーン164は、部分的にクリンピングされたTHV232とともに、確認ゲージから取り出される。THV232は、クリンパーを使用してバルーン164に完全かつ強固にクリンピングされる。
7.THVを完全にクリンピングした後、ハンドル192Aを操作してクリンパーのアイリス開口191Aを開く。人工弁がクリンピングされたバルーン164をクリンパーのアイリス口から取り外す。これで、システムは、推奨されるイントロデューサシースを通して、患者の血管系(通常は大腿動脈)にカテーテルを導入する準備が整う。前述の他の経路も使用することもできる。
8.バルーンに人工弁をクリンピングしたカテーテルの遠位端を、アライナー166を上向きにしたまま、イントロデューサシースを通して患者の血管系に挿入する。アライナーがない場合、システムは、近位ハンドルと会社ロゴが上向きになるように保持することができる。このアライナー166の向きは、留置処置中に変えてはならない。従って、手術者はデリバリーシステムに捻りを加えないことが要求される。アライナー166は、実際に、解剖学的な問題によって誤って捻りがかかってしまった場合に、手術者がデリバリーシステムの捻りを解除するのを助ける。ただし、曲げ機構を備えている場合はシステムを曲げることができる。
9.人工弁とバルーンが大動脈輪を通過すると、人工弁の交連の1つが自己交連に向くようになると予想される。人工弁の他の交連は自動的に他の自己交連に向かってアラインメントされる。その後、人工弁が標準的な術式で装着される。理想的な条件下での交連アライメント241による予想される最終的な装着状態は、図24に示す通りである。図24は、中部右冠尖(mid-RCC)技術を用いて、人工弁の交連を自己のNCC-LCC交連とアライメントさせた症例の1つである。実際には、わずかなずれしか生じない。
当業者であれば、この方法がさまざまなタイプの二尖大動脈弁の解剖学的構造にも適用可能であることを容易に理解できるものである。
【0074】
自己拡張式THVの交連アライメント方法
当業者であれば、自己拡張式人工弁はバルーン拡張式人工弁とは異なることを認識しているものである。自己拡張式人工弁のデリバリーシステムは、バルーンカテーテルのそれとは異なる。したがって、自己拡張式人工弁をデリバリーカテーテルにクリンピングする手順は、バルーン拡張式人工弁のそれとは異なる。しかし、自己拡張式人工弁の交連アライメントを達成するための基本原則は、前述のバルーン拡張式人工弁の場合と同様であることには変わりない。自己拡張式人工弁の交連アライメントという目的を達成するために、デリバリーシステムとクリンピング方法について、容易に導入できる新規の追加機能を提供する。
【0075】
自己拡張式人工弁:
自己拡張式人工弁は、ニッケル-チタン合金、例えばニチノールや形状記憶特性を持つポリマーなどの形状記憶合金で作られた、一般的に管状のフレーム(ただし、軸方向の長さに沿って直径が異なる場合もある)で構成される。市場には、さまざまなスキャフォールドデザインを備えた自膨式人工弁が多数販売されており、文献でも紹介されている。設計は改良と最適化され続けている。当業者であれば、本発明がどのような設計のスキャフォールドにも使用できることを容易に理解できるものである。自己拡張式人工弁の典型的な例示的フレーム250を図25に示す。フレームには、隣接する2枚の弁尖の交連が取り付けられる交連取り付け部がある。そのような交連取り付け部(251)の一例を図25に示す。フレームに付与された形状記憶により、フレームは、通常は低温(一般的には氷水浴)で達成される、金属材料がマルテンサイト相にある放射状に折り畳まれた状態から、弁を折り畳むために適用された拘束力が除去され、弁が血液の流れにさらされることで、より高い温度にさらされ、フレーム金属がオーステナイト相に変化すると、所定の直径に自己拡張する。
【0076】
自己拡張式THVはさらに、動物組織または合成材料から作られた少なくとも2枚の弁尖(図示せず)、できれば3枚の弁尖が備えられている。隣接する2枚の弁尖の交連分は、フレーム250の交連取り付け部251でフレーム250に取り付けられ、弁の交連を形成する。
【0077】
さらに、人工弁は、バルーン拡張式人工弁(図示せず)について説明したように、内側スカートおよび外側スカートの少なくとも一方を備え得る。
【0078】
フレーム250の流出端Aには、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアイレット、ループ、またはリテーナ(252)が設けられており、タブまたはパドルを捕捉し、デリバリーシステム内に設けられたレセプタクルに収め、人工弁をカテーテルに固定する(以下説明する)。
【0079】
当業者であれば、自己拡張式人工弁のさまざまな設計をよく理解しているものである。図25に示すフレーム250は例示である。
【0080】
図25に示すように、例示としての自己拡張式THVのフレーム250は管状の形状をしている。フレーム250は、近位端、遠位端、および近位端と遠位端とを横切る軸を含む。図25に示す実施形態のフレームは、その軸方向の長さにわたって直径が変化している。しかし、フレームは、砂時計型、均一な直径の管状など、他の形状を有してもよい。フレーム250の交連取り付け部251の一例が図25にも示されている。
【0081】
図25に示す大動脈弁位人工弁の例示的な実施形態では、フレームの流出端に2つのループ(252)が設けられている。この実施形態では、ループ(252)のいずれも、フレームの交連取り付け部(251)のいずれにもアライメントされていない(すなわち、同じ軸上にある)ことに留意されたい。交連アライメントのためには、ループ(252)の少なくとも1つが人工弁の交連取り付け部(251)の1つとアライメントしていることが望ましい。
【0082】
当業者であれば、本発明がどのようなスキャフォールド設計の自己拡張式人工弁にも使用できることを容易に理解できるものである。
【0083】
自己拡張式THV用デリバリーシステム:
上述したように、交連アライメントを達成するためには、デリバリーシステムに新しい追加機能を設ける必要がある。本セクションでは、デリバリーシステム、すなわち自己拡張式THV用カテーテルに関するこれらの追加機能について説明する。
【0084】
自己拡張式THVのデリバリーシステムは、カテーテルとローディングシステムで構成されている。ローディングシステムは、人工弁をカテーテルのシャフトに、放射状に収縮された状態または圧縮された状態で装着するために使用される。当業者であれば、自己拡張式THVのデリバリーシステムの様々な設計をよく理解しているものである。ここで説明する交連アライメントの方法は、市販されているあらゆる設計の自己拡張式THVシステムのデリバリーシステムに適用可能である。
【0085】
図26は、THVのような自己拡張式人工弁用の典型的な例示的デリバリーカテーテル260の遠位部分を示す。図26Aは断面図を示し、図26B図26のデリバリーカテーテル260の遠位部分の蛍光透視図を示し、「A」は遠位端を示し、「B」は近位端を示す。
【0086】
図26図26A図26Bで示されているデリバリーカテーテルの遠位部260は、例示であることに留意されたい。当業者であれば、様々な設計のデリバリーカテーテルがあるが、動作原理は類似していることを熟知しているものである。自己拡張式THV用の従来のデリバリーカテーテルは、一般に、細長の外側シャフト261と、外側シャフト261を同軸に貫通する中間シャフト262と、中間シャフト262を同軸に貫通する内側ルーメン263とを備えている。内側ルーメン263の遠位端には、一般に非外傷性チップ264が取り付けられている。デリバリーカテーテルの近位端にはハンドルが設けられている(図26図26Aおよび図26Bには示さず)。外側シャフト261、中間シャフト262および内側ルーメン263(総称して「チューブ」と呼ぶ)は、カテーテルの近位端まで延び、ハンドル内部に入る。内側ルーメン263はガイドワイヤルーメンとして機能する。外側シャフト261は、中間シャフト262に対して軸方向に直線的にスライド可能である。中間シャフト262と内側ルーメン263は固定されており、互いに対してスライドすることはできない。これらのチューブは互いに対して回転できない。外側シャフト261のスライド移動機構は、通常、近位ハンドルに収納されている。ハンドルには、デリバリーカテーテルの操作に必要な他の機構を設けることもできる。上述したように、この説明は例示的かつ一般的なものである。代替設計特徴を有するデリバリーカテーテルは、本発明の範囲に含まれるものである。
【0087】
通常、カテーテルの外側シャフト261は、人工弁を放射状に折りたたまれた(圧縮された)状態に保持するために、人工弁の上に被せられる。代替手段として、人工弁を放射状に折りたたまれた(圧縮された)状態に保持するために、人工弁を覆うリテーナシースが設けられる。
【0088】
自己拡張式THVは、通常、放射状に折りたたまれた(圧縮された)状態で、遠位先端264の近くと近位に位置する領域263Aの、内側ルーメン263の遠位端に取り付けられる(人工弁は図示されていない)。外側シャフト261は、放射状に折りたたまれた人工弁を覆うことで、人工弁を圧縮された状態に保持するように構成されている。別の設計のデリバリーカテーテルには、放射状に折りたたまれた状態で自己拡張式THVを覆うリテーナシースが備わっている場合がある。人工弁は、外側シャフト261またはリテーナシースを近位方向に徐々に引き戻すことで、人工弁を露出して自己拡張させることができる。通常、カテーテルの近位端に設けられたハンドルには、外側シャフト261またはリテーナシースの制御された方法で動かすための機構が収納されている。前述の通り、チューブとリテーナシース(設けられている場合)は互いに回転できない。
【0089】
デリバリーシステム260には、大動脈弓を通す際の移動を容易にするために、カテーテルシャフトの遠位端部分を曲げるための機構がオプションで備わっている場合がある。曲げるための機構は、近位端のハンドルに収納することもできる。
【0090】
一般に、中間シャフト262には、ハブまたはホルダー265が備わっている。本実施形態のホルダー265の遠位端は、中間シャフト262の遠位端と面一になっている。図6図26A図26Bに示すように、人工弁は、先端264の近位端とホルダー265の遠位端の間の空間263Aにおいて、内側ルーメン263に放射状に折りたたまれた(圧縮された)状態で取り付けられている。内側ルーメンに放射状に折りたたまれた状態で取り付けられた人工弁の近位端は、ホルダー265の遠位端に接触する可能性がある。ホルダー265の機能は、人工弁の位置を保持することである。一般には、上記のように、人工弁のフレーム250は、その一端に少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのループまたはアイレット(252)を有する。ホルダー265の遠位端には、フレーム250のループ/アイレット(252)に適合するタブ/パドル(265A)が対応する数だけ設けられている。あるいは、ホルダー265の遠位端には、放射状に折りたたまれた人工弁のループ/アイレット(252)を収納するための対応する数の受容領域が設けられる。人工弁が内側ルーメンに放射状に折りたたまれた状態で取り付けられると、フレーム250のループ/アイレット(252)は、ホルダー265のタブ/パドル/受容領域(265A)と係合する。この配置により、放射状に折りたたまれたTHVの軸方向および回転方向の動きが制限され、カテーテルのシャフトに対する位置が保持される。図26図26A図26Bの例示的な実施形態は、フレーム250のループ/アイレット(252)を収納するための受容領域265Aを備えたホルダー265を示している。
【0091】
ホルダー265は、中間シャフト262または内側ルーメン263にしっかりと固定されておらず、中間シャフト262および内側ルーメン263に対して回転可能である。図26図26A図26Bに示されるように、ロックネジ265Bがホルダー265に設けられ、ホルダー265の位置を固定し、中間シャフト262および内側ルーメン263に対するホルダー265の回転および移動を制限するために使用される。当業者は、内側ルーメンのようなシャフトに取り付けられたホルダーのようなコンポーネントをロックおよびアンロックするさまざまな他の方法を知っているものである。説明されている例示的な実施形態においては、ロックは、ネジ265Bを締めることで達成される。ネジ265Bを緩めると、ホルダー265のロックが解除され、自由に回転できるようになる。
【0092】
ホルダー265の外径(内側ルーメンに取り付けられたネジを含める)は、外側シャフト261およびリテーナシース(設けられている場合)の内径よりも小さいため、外側シャフト261/リテーナシースがホルダー265上をスライドすることができる。
【0093】
図27は、典型的なデリバリーカテーテル270のアセンブリを示し、その遠位部分260は上述のように、図26図26Aおよび図26Bに示されている。図27のデリバリーカテーテルは単なる例示であることに留意されたい。本発明は、他の設計のデリバリーカテーテルも対象としている。図27の実施形態は、外側シャフト261が、先端264に近接した遠位端Aで、放射状に折りたたまれた(圧縮された)状態の人工弁(図示せず)を覆っている様子を示す。前述のように、人工弁は、外側シャフトの代わりにリテイニングシース(保持シース)で覆うこともできる。デリバリーカテーテルの近位端Bには、デリバリーカテーテルを機能させるための様々な機構を収納するハンドル271が設けられている。デリバリーシステムのシャフト/チューブを面一にするためのポイントは、ハンドルに設けられている場合もある。図27には、2つの例示的な面一ポイント272Aおよび272Bが示されている。
【0094】
自己拡張式型THV用のデリバリーカテーテルシステムには、通常、ローディングシステムが備わっている。施術前に、手術者はローディングシステムの助けを借りて、人工弁を内側ルーメン上で手動で圧縮し、外側シャフトまたはリテーナシースで覆うことができる。ローディングシステムは通常、人工弁の直径を徐々に小さくするために役立つ、1つまたは複数の円錐形状で管状のコンポーネントで構成されている。この操作は通常、低い温度で行われる。通常は氷水浴の中で行い、形状記憶合金をマルテンサイト状態に移行させ、支柱を歪ませることなく人工弁の直径を小さくする。上述のように、人工弁は指定された位置263Aで内側ルーメン263上で圧縮され、外側シャフト261またはリテーナシースで覆われて、領域273上で圧着された状態に保持される。圧着手順をさらに助ける付属品が存在し得る。THVシステムのような自己拡張式デバイスの各メーカーは、異なる設計のローディングシステムを提供している。当業者であれば、自己拡張式THVのサプライヤーが提供するさまざまなローディングシステムをよく理解しているものである。
【0095】
自己拡張式THVは、外側シャフト261またはリテイニングシース(保持シース)を近位方向に徐々に引き戻すことで展開(配備)される。これにより、人工弁が人体の体温で自己拡張することができる。上記のように、この操作は、通常は近位ハンドル271の一部として提供されるメカニズムの助けを借りて制御される。
【0096】
さまざまな設計のデリバリーカテーテルとローディングシステムコンポーネントを備えたいくつかの自己拡張式人工弁が市場で入手可能である。しかし、ローディングと導入の基本的な方法はどれも同様である。それらすべてのロードシステムには、人工弁の直径を縮小する上で重要な役割を果たす1つ以上の円錐形の管状コンポーネントがある。
【0097】
自己拡張式人工弁のデリバリーカテーテルには、オプションで、大動脈弓を通過しやすいように、カテーテルシャフトの遠位部分を曲げることができる曲げ機構が含まれる場合がある。
【0098】
上記のバルーン拡張式人工弁について説明した基本原則は、自己拡張式人工弁にも適用して、交連アライメントを達成することができる。自己拡張式THVの交連アライメントを達成するには、以下の新たな変更が必要である。これらの変更はシステムの設計を変更するものではない。
【0099】
自己拡張式THVのデリバリーカテーテル270の外側シャフト261には、バルーン拡張式THVのデリバリーシステムについて以前に説明した方法と同様に、単一または複数のアライナー266が設けられている。複数のアライナー266が設けられている場合、バルーン拡張式THV用デリバリーシステムに関して前述したように、それらは互いに間隔をあけて、好ましくは単一の方向、すなわち同一軸線上で互いに等距離に配置される。アライナー266をマーキングする便利な方法は、近位ハンドル271上の会社ロゴと同じ軸に沿い、全体を通して同じ軸に続く(すなわち、同じ向きを保持する)ようにすることである。これは、アライナー266にマーキングするための単なる便利な方法である。会社のロゴと同じ軸である必要はない。図26は、外側シャフト261の遠位端260に複数のアライナー266のうちの1つを示す実施形態を示す。外側シャフト261は、デリバリーカテーテル270の遠位端部分を示す図28に示すように、複数のアライナー266の代わりに単一の連続アライナー266Aを代わりに備えてもよいことに留意されたい。
【0100】
カテーテルシャフト261上の単一または最遠位のアライナー266/266Aの遠位端は、外側シャフト261の遠位端で終端する。リテイニングシース(保持シース)が設けられている場合、アライナー266/266Aは、保持シースにも設けられ得る。
【0101】
バルーン拡張式THV用デリバリーカテーテルについて先に説明したアライナーを設ける様々な代替方法、例えば、塗装、ストリップの貼り付け、レーザービームによるマーキング、および当該技術分野で周知のその他の方法は、自己拡張式THV用デリバリーカテーテルにも適用可能である。アライナーの色は、平面の視認性を高めるために、外側シャフトの色と対照的になり得る。アライナーは放射線不透過性で、蛍光透視下でも見えるようにされ得る。バルーン拡張式THV用デリバリーシステムに関して前述したように、外側シャフト261に複数のアライナー266が付されている場合、それらは、単一の向き、すなわち、好ましくは互いに等距離にある同一軸線上に、互いに間隔をあけて配置され得る。
【0102】
前述したように、まだ、図25に示されるように、自己拡張式人工弁のフレーム250は、その流出端Aにループ/アイレット252を有する。交連アライメントを達成するために、便利な方法は、フレーム250のループ/アイレット252の少なくとも1つをTHVの交連251の1つに軸方向にアライメントさせることである。このループ/アイレット252を他のループ/アイレットと区別するために、このループ/アイレットに特定マーキングを設けてもよい。これらの特定マーキングは、視覚的に容易に特定できるものでなければならない。
【0103】
ループ/アイレットの例示的な特定マーキング311を図31Aに示す。特定マーキングを設ける唯一の目的は、THVの交連251の1つに軸方向に位置合わせされたループ/アイレットを区別することである。したがって、ループ/アイレットに特定マーキングを施す他の方法も使用可能である。
【0104】
フレーム上のループ/アイレット252のうち少なくとも1つが、THVの交連251の1つと軸方向に揃っていない場合、下記に説明するように、クリンピングされた弁の向きを合わせる方法は少し複雑になる。
【0105】
バルーン拡張式THVシステムについて前述し、図21A図21D図22A図22B示される確認ゲージ210は、自己拡張式THVに直接的な役割を果たす。前述のように、角度マーキング213A~Dは、確認ゲージ210の少なくとも片側に設けられている。確認ゲージ210の役割については、後述のクリンピング方法で説明する。
【0106】
自己拡張式THVのクリンピング方法
当業者であれば、自己拡張式THVのクリンピング手順を熟知しているものである。従来、THVをデリバリーカテーテル270のシャフトに装着する際、フレーム250の交連251の向きには注意が払われてこなかった。それゆえ、交連アライメントを達成するための意識的な取り組みがされていない。自己拡張式THVをクリンピングして交連を達成する方法を、以下に段階的に概説する。
1.患者のAoCAを前述の方法と同じ方法で決定する。この方法は、THVのタイプ(バルーン拡張式か自己拡張式か)に依存しません。この方法を示すために、例として、図14A/14Bに示すように、測定されたAoCAが鈍角であると仮定している。
2.AoCAを、確認ゲージ210上の例示的な角度マーキング213Bまたは213D上で特定する。図29Aおよび図29Bは、確認ゲージの2つの例示的な実施形態を示し、図29Aでは中央開口212の円周の半分を、図29Bでは中央開口212の全周をカバーする時計角度マーキングを備える。AoCAは、図29A図29Bに示すように、確認ゲージにマーク291A/291Bを付けることによって、その上で特定され得る。他のどのような角度マーキング方法(度数など)も同様に有効であることに留意されたい。また、確認ゲージでAoCAを特定する他の方法も同様に有効である。
3.図30に示すように、デリバリーカテーテル270の遠位端260は、確認ゲージ210の一方の側から確認ゲージ210の中央開口212に挿入され、デリバリーカテーテル270の外側シャフト261の一部とホルダー265が確認ゲージ210のもう一方の側から突出するように配置されている。この配置を分かりやすくするため、図30Aに拡大図として示す。ホルダー265はロックされた状態に保たれ得る。カテーテルは、図30および図30Aに示すように、アライナー266/266Aが上方を向くように配置される。
4.このステップは、フレーム250のループ/アイレット252の少なくとも1つがTHVの交連251の1つと軸方向に位置合わせされ、特定マーキング311が施されている状態で行われる。ホルダー265のロックは、例えばホルダー265のロックねじ265Bを緩めることによって解除される。ホルダー265は、図30に示すように、ホルダー265A上のタブ/パドルまたはレセプタクル領域の1つが確認ゲージ210上のAoCAマーキング291Aとアライメントするように、中間シャフト262上で回動される。明確にするために、図30Aは、確認ゲージ210とホルダー265の前面の拡大図を示している。これらの図の点線は、ホルダー265のレセプタクル領域265Aの1つと確認ゲージ210のAoCAマーキング291Aとのアライメントを示している。このレセプタクル領域は265A’として示されている。この位置で、ホルダー265は、例えば、外側シャフト261上のアライナー266/266Aが同時に上方を向いたままであるように注意しながら、ロックねじ265Bを締めることによってロックされる。チューブは相対的に回転できず、ホルダー265は所定の位置にロックされているため、カテーテルチューブとホルダー265の向きはAoCAに基づいて相対的に固定される。その後、ホルダー265はロックされた状態で保持される。
5.人工弁のクリンピングは、特定マーキング(人工弁の交連の1つに位置合わせされたもの)を有する人工弁のフレーム250上のループ/アイレットが、確認ゲージ210上のAoCAマーキング291Aに位置合わせされたホルダー265上のタブ/パドルまたはレセプタクル265A’と位置合わせされるように、ローディングシステムを用いて行われる。図31は、そのように位置合わせされたクリンピングされた弁313を示す。明確にするため、図31では、弁尖やその他の弁の部分を省略して、弁のフレームのみを示している。図31Aには、さらに明確にするため、拡大図が示されている。弁の交連の一つに位置合わせされたループ/アイレット252’上の例示的な特定マーキング311も示されている。図31Bは、図に示したアセンブリの側面図である。図31および図31に示すように、常にアライナー266/266Aは上向きにする必要がある。図31および図31Aは、ループ/アイレット252および252’を受けるための、時計角度213Bおよびレセプタクル領域265Aおよび265A’でマーキングされた確認ゲージ210を有する例示的な実施形態を示す。アポストロフィの付いたコンポーネント特定番号は、特定の特徴を持つコンポーネントを意味する。265Aは、ホルダー265上のレセプタクル領域を指し、265A’は、確認ゲージ210上のAoCAマーキング291Aと位置合わせされたレセプタクル領域の1つを指す。同様に、252は、人工弁のフレーム250上のループまたはアイレットを指し、一方、252’は、人工弁フレーム250の交連取り付け部251の1つと位置合わせされたループ/アイレットを指す。
6.ループ/アイレット252と252’は、図32に示すように、また図32Aの拡大図に示すように、ホルダー265のタブ/パドルまたはレセプタクル領域265Aと265A’に係合される。(a)弁の交連(特定マーキングあり)252’に揃えられたフレーム250のループ/アイレットが、確認ゲージ210のAoCAマーキングに揃えられたホルダー265のレセプタクル領域265A’に係合し、(b)外側シャフト261のアライナー266/266Aまたはリテーナシース(ある場合)が上向きになるようにする。図32Bは、図32に示す配置の側面図を示す。図32および図32A図32Bは、ホルダーがレセプタクル領域を有するデリバリーカテーテルの例示的な実施形態を示す。このようにして、THVの交連の一方がAoCAと軸方向にアライメントし、同時に、バルーン拡張式THVで説明したのと同様に、アライナーが上方を向く。
7.次いで、デリバリーカテーテルの外側シャフト261またはリテーナシース(設けられている場合)は、クリンピングされた弁313とホルダー265を覆うように移動され、クリンピングされた弁313を半径方向に収縮した状態でこの位置に保持する。
8.これでシステムは、推奨されるイントロデューサーシースを用いて、患者の血管系にカテーテルを導入する準備が整ったものとなる。
【0107】
フレーム250上のループ/アイレット252のいずれかがTHVの交連のいずれかと軸方向にアライメントしていない場合、クリンピングの手順は少し複雑になる。この場合、ホルダー265はロック解除され、中間シャフト262上で回転され、クリンピングされたTHVのアイレット/ループ252がホルダーのタブ/パドルまたはレセプタクル265Aに係合されたとき、THVの交連251の1つが確認ゲージ210上のAoCAマーキング291Aにアライメントするように、ホルダーのタブ/パドルまたはレセプタクル領域265Aの1つが方向付けられるようにされる。基本的なポイントは、アライナー266/266Aを上向きにしたまま、THVの片方の交連をAoCAに合わせることである。
【0108】
留置(インプラント)方法
上述したクリンピング方法を用いて、自己拡張式THVをデリバリーカテーテルに装着し、交連アライメントを達成するための留置(インプラント)方法を以下説明する。
1.人工弁を装着したデリバリーカテーテルの遠位端を、アライナー266/266Aを上に向けたまま、イントロデューサーシースを通して患者の血管系に挿入する。アライナーが近位ハンドルの会社ロゴの軸に沿っている場合、会社ロゴを上向きにしておくと効果的である。この向きは、留置処置の間、変えてはいけない。したがって、デリバリーシステムに捻りを加えてはいけない。解剖学的困難により、THVシステムの挿入中に意図しない捻りが発生した場合、アライナーが、術者がシステムの向きを変えてトルクを解除するのに役立つ。ただし、曲げ機構を備えている場合はシステムを曲げることができる。
2.デリバリーカテーテルを患者の血管系を通して患者の大動脈弁輪まで誘導する。
3.人工弁とバルーンが大動脈輪を通過すると、人工弁の交連の1つが自己交連に向くようになると予想される。人工弁の他の交連は自動的に他の自己交連に向かってアラインメントされる。
4.人工弁を展開する目的のターゲット位置に配置する。
5.外側シャフトまたはリテーナシースを近位方向に引き抜いてクリンピングされた人工弁を露出させ、人工弁が自己拡張してターゲット位置に展開(配備)できるようにする。予想される交連アライメントでの最終的な配置は図24の通りである。
【0109】
当業者であれば、この方法がさまざまなタイプの二尖大動脈弁の解剖学的構造にも適用可能であることを容易に理解できるものである。二尖大動脈弁の場合、当業者であれば、上述したテクニックを用いて、交連のズレが最小になるようにAoCA角度を測定するものである。
【0110】
本発明は、以下の3つの周知の事実に依るものである。すなわち、(a)蛍光透視像が解剖学的/AP像の鏡像であること、(b)蛍光透視像(およびMSCTなど)に従って、交連が1つだけRCC中部の鏡像の方向に整列した状態で蛍光透視誘導下に展開されるTHVが、実際には解剖学的にNCC-LCC交連に向かって展開され、位置ずれが最小限であること、(c)蛍光透視下ガイダンスのもと、蛍光透視下(およびMSCTなど)観察に従って片方の交連だけをLCC中央の鏡像に向けて展開したTHVが、解剖学的にRCC-NCC交連に向けて展開されるが、位置ずれは最小限であること。
【0111】
したがって、この術式を用いることで、人工弁の交連に対する大動脈弁交連のずれを最小限に抑えることができる。
【0112】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。より一般的には、当業者は、本願で説明されているすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものにすぎず、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教えが使用される特定の用途または用途によって異なることを容易に理解するものである。
図1
図2
図3
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図8
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図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
図26
図26A
図26B
図27
図28
図29A
図29B
図30
図30A
図31
図31A
図31B
図32
図32A
図32B
【国際調査報告】