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特表2024-527166量子計算における、又は量子計算に関する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】量子計算における、又は量子計算に関する改善
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20240711BHJP
【FI】
G06N10/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530060
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 GB2022052014
(87)【国際公開番号】W WO2023007189
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2111045.7
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002175
【氏名又は名称】ユニバーサル クオンタム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,イアン マッキントッシュ
(57)【要約】
DACチャンバと、ASICと、DACチャンバとASICとの間のデジタル制御ラインと、DACチャンバとASICとの間のアナログ制御ラインとを備えるイオントラップ型プロセッサが提供される。ASICは、複数のチャネルを備え、各チャネルは、DC電極と、第1のアナログメモリセルと、第2のアナログメモリセルと、を備える。DACチャンバは、アナログ信号を生成するように構成されたDACと、タイミング制御信号を生成するように構成されたDACコントローラと、を備え、タイミング制御信号は、アナログ信号が電圧信号として、複数のチャネルのうちの1つ以上によってサンプリングされるときを制御するための1つ以上のサンプルタイミング信号と、サンプリングされた電圧信号がそれぞれのDC電極に適用されるときを制御するための1つ以上の同期信号とを含む。アナログ制御ラインは、アナログ信号をDACから複数のチャネルに送信し、デジタル制御ラインは、タイミング制御信号をDACコントローラから複数のチャネルに送信し、タイミング制御信号は、アナログ信号が電圧として、複数のチャネルの各々の第1のアナログメモリセル又は第2のアナログメモリセルのいずれかによってサンプリングされるときを制御し、かつサンプリングされた電圧信号が複数のチャネルの各々のそれぞれのDC電極に適用されるときを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DACチャンバと、ASICと、前記DACチャンバと前記ASICとの間のデジタル制御ラインと、前記DACチャンバと前記ASICとの間のアナログ制御ラインとを備えるイオントラップ型プロセッサであって、前記ASICが、
複数のチャネルであって、各チャネルが、DC電極と、第1のアナログメモリセルと、第2のアナログメモリセルと、を備える、複数のチャネルを備え、
前記DACチャンバが、
アナログ信号を生成するように構成されたDACと、
タイミング制御信号を生成するように構成されたDACコントローラと、を備え、前記タイミング制御信号は、前記アナログ信号が電圧信号として、前記複数の前記チャネルのうちの1つ以上によってサンプリングされるときを制御するための1つ以上のサンプルタイミング信号と、サンプリングされた前記電圧信号がそれぞれの前記DC電極に適用されるときを制御するための1つ以上の同期信号と、を含み、
前記アナログ制御ラインが、前記アナログ信号を前記DACから前記複数のチャネルに送信し、前記デジタル制御ラインが、前記タイミング制御信号を前記DACコントローラから前記複数のチャネルに送信し、前記タイミング制御信号が、前記アナログ信号が電圧として、複数のチャネルの各々の前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかによってサンプリングされるときを制御し、かつ前記サンプリングされた電圧信号が複数のチャネルの各々のそれぞれの前記DC電極に適用されるときを制御する、イオントラップ型プロセッサ。
【請求項2】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルが、直列であり、前記第1のアナログメモリセルが、前記DC電極に電気的に結合されている、請求項1に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項3】
各アナログメモリセルが、コンデンサと、スイッチと、を備える、請求項2に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項4】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルに対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み、前記1つ以上のサンプルタイミング信号は、それぞれの前記チャネルの前記第2のアナログメモリセルが前記アナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている、請求項2又は3に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項5】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルに対する1つ以上の同期信号を含み、前記1つ以上の同期信号は、前記第2のアナログメモリセル内の前記電圧信号が前記第1のメモリセル及び前記DAC電極に適用されるときを制御するように構成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項6】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルが、並列に配置されている、請求項1に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項7】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルの各々が、前記DC電極に電気的に結合された第1のスイッチと、前記アナログ制御ラインに電気的に結合された第2のスイッチと、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に配置されたコンデンサと、を備える、請求項6に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項8】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルの各々に対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み、前記サンプルタイミング信号は、前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかが電圧信号として、前記アナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている、請求項6又は7に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項9】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルの各々に対して1つ以上の同期信号を含み、前記同期信号は、前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかにおける前記電圧信号が、前記DAC電極に適用されるときを制御するように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項10】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルと直列の第3のアナログメモリセルを更に備える、先行請求項のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項11】
前記ASICが、前記1つ以上のタイミング制御信号を復号するように構成された復号器を更に備える、先行請求項のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項12】
前記復号器が、タイミング制御信号を複数の前記チャネルに送信するように構成されたシフトレジスタを備える、請求項11に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項13】
前記DACが、前記サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化コントローラを更に備え、前記復号器が、前記サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化器を更に備える、請求項11に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項14】
前記DACが、周期的信号を生成するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項15】
前記DACチャンバが、基準信号を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項16】
イオントラップ型プロセッサを形成するASICにDAC制御を適用する方法であって、前記ASICが複数のチャネルを備え、各チャネルが、第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルと、DC電極と、を備え、前記方法が、
DACによってアナログ信号を生成し、アナログ制御ラインに沿って前記ASICに送信することと、
複数の前記電極の各々への前記アナログ信号の適用を制御するためのタイミング信号を生成することであって、前記タイミング信号が、1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を含む、生成することと、
前記1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を、デジタル制御ラインに沿って前記ASICに送信することと、
それぞれのサンプルタイミング信号によって制御される時間に、前記チャネルの複数の第2のメモリセルの各々によって、前記アナログ信号を電圧信号としてサンプリングすることと、
それぞれの前記同期信号によって制御される時間に、前記電圧信号を前記第1のアナログメモリセル及びDC電極に適用することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントラップ量子コンピュータ用のDACのためのスケーラブルなシステムを提供することに関する。
【発明の概要】
【0002】
一般に、いわゆる「古典的計算」とは異なり、量子計算は、データを生成又は変更するための粒子又は物質の量子力学的特性に依存する。データは、2つの状態量子力学的システムである量子ビット又は「キュービット」によって表されてもよい。古典的計算とは異なり、キュービットは量子状態の重ね合わせであってもよい。量子計算の別の特徴は、1つの粒子又は原子の状態が別の粒子又は原子によって影響を受けるキュービット間のもつれである。
【0003】
量子力学的キュービットは、ゼロと1との組み合わせとして情報を同時に符号化することができる。このような特性により、古典的コンピュータでは伝統的に困難であった数多くの複雑な数値アプリケーションが可能になる。例としては、人工知能、画像処理及び認識、暗号、又は安全な通信などが挙げられる。
【0004】
イオン超微細電子状態(Zeeman分割状態)内では、磁界の使用、及び異なるキュービット状態として使用される異なる電子レベル、及びマイクロ波放射又はレーザーを使用してレベル間を移動する電子によって明らかにすることができる。
【0005】
イオントラップ量子コンピュータ(量子荷電結合デバイス)では、イオントラップは、量子計算で使用されるイオンを制御するために使用され得、表面電極は、自由空間に浮遊するイオンを操作及びトラップするための電界を生成するために使用される。イオントラップの表面電極電位は、次々にDACによって制御される。最先端の量子コンピュータは、同じタイプの多くのDAC、例えば、1MHzを超える更新レートを有する16ビットDACを使用する。
【0006】
各個々の電極は、独立して制御可能であり、各電極は、それに結合された対応するDACを有する。電極を慎重に制御する必要があるタイミング。多くの場合、電極は全て同期して更新されるが、代替的に、リアルタイムで更新され得る。
【0007】
イオントラップ領域が増加するにつれて、電極及びDACの数も増加する。量子コンピュータ内では、DACは、長期間の安定性を伴って低ノイズである必要がある。イオンがシャトルされる領域では、DACも高速であり得る。これらの特性を達成するために、DACの領域は、概して、関連するDC電極よりもかなり大きい。
【0008】
これに対する1つの解決策は、量子コンピュータの真空部分の外側に高品質のDACを配置することであり、これは、領域が無制限であるという利点を有する。しかしながら、電極への接続は、周囲によって制限され、それによって、この解決策のスケーラビリティを制限する。
【0009】
本発明の目的は、DACの品質が維持されるスケーラブルなシステムを提供することである。
【0010】
したがって、本発明によれば、DACチャンバと、ASICと、DACチャンバとASICとの間のデジタル制御ラインと、DACチャンバとASICとの間のアナログ制御ラインとを備えるイオントラップ量子コンピュータが提供され、ASICは複数のチャネルを備え、各チャネルはDC電極と、第1のアナログメモリセルと、第2のアナログメモリセルと、を備える。DACチャンバは、アナログ信号を生成するように構成されたDACと、タイミング制御信号を生成するように構成されたDACコントローラと、を備え、タイミング制御信号は、1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を含む。1つ以上のサンプルタイミング信号は、アナログ信号が電圧信号として、複数のチャネルのうちの1つ以上にサンプリングされるときを制御し、1つ以上の同期信号は、サンプリングされた電圧信号がそれぞれのDC電極に適用されるときを制御する。アナログ制御ラインは、アナログ信号をDACから複数のチャネルに送信し、デジタル制御ラインは、タイミング制御信号をDACコントローラから複数のチャネルに送信する。
【0011】
したがって、この配置によると、DACは冷却領域の外側にあり、接続はいくつかの制御ラインに制限され、制御ラインの数が設計を制限しないことを確実にする。高品質のDACは、真空領域外側で使用することができ、コンピュータのサイズは伝送ラインの数によって制限されない。
【0012】
第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルは、DC電極に電気的に結合される第1のアナログメモリセルと直列であってもよい。アナログメモリセルを直列に配置することは、電圧信号を、他のアナログメモリセルを使用してDC電極に適用する時間まで、アナログメモリセルのうちの一方に保存することができることを意味する。各メモリセルは、コンデンサと、スイッチとを備えてもよい。スイッチは、MOSFET又はMEMSであってもよい。
【0013】
タイミング制御信号は、複数のチャネルに対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み得る。1つ以上のサンプルタイミング信号は、それぞれのチャネルの第2のアナログメモリセルがアナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている。したがって、各チャネルは、異なる時間でアナログ信号をサンプリングすることができる。
【0014】
タイミング制御信号は、複数のチャネルに対する1つ以上の同期信号を含み得る。同期信号は、第2のアナログメモリセル内の電圧信号が第1のメモリセル及びDAC電極に適用されるときを制御するように構成されている。同期信号は、全てのチャネル内の電圧信号が、それぞれの電極に同時に適用されるべきであることを示し得る。代替的に、異なるチャネル内の電圧信号は、異なる時間に適用されてもよい。
【0015】
代替的に、第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルは、並列に配置されてもよい。この配置では、第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルの各々は、DC電極に電気的に結合された第1のスイッチと、アナログ制御ラインに電気的に結合された第2のスイッチと、第1のスイッチと第2のスイッチとの間に配設されたコンデンサとを備える。電圧信号は、第1のアナログメモリセル又は第2のアナログメモリセルのいずれかに保存することができ、第1のスイッチが閉じているときに、電圧が電極に適用される。
【0016】
アナログメモリセルが並列に配置されるときに、タイミング制御信号は、複数のチャネルの各々に対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み得、サンプルタイミング信号は、第1のアナログメモリセル又は第2のアナログメモリセルのいずれかが電圧信号として、アナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている。特に、各チャネル内の各アナログメモリセルに対するサンプルタイミング信号があり得る。
【0017】
アナログメモリセルが並列に配置されるときに、タイミング制御信号は、複数のチャネルの各々に対する1つ以上の同期信号を含み得、同期信号は、第1のアナログメモリセル又は第2のアナログメモリセルのいずれかにおける電圧信号が、DAC電極に適用されるときを制御するように構成されている。特に、各チャネル内の各アナログメモリセルに対して同期信号があり得る。
【0018】
イオントラップ型プロセッサは、第3のアナログメモリセルを備え得る。これは、直列であってもよく、又は他のアナログメモリセルと並列であってもよい。
【0019】
ASICは、1つ以上のタイミング信号を復号するように構成された復号器を更に備えてもよい。復号器は、単一のサンプルタイミング信号を複数のチャネルに対する複数の信号タイミング信号に復号し得る。復号器は、単一の同期信号を複数のチャネルに対する複数の同期信号に復号し得る。復号器は、タイミング制御信号を複数のチャネルに送信するように構成されたシフトレジスタであってもよい。
【0020】
DACは、サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化コントローラを更に備えてもよく、復号器は、サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化器であってもよい。
【0021】
DACは、周期的信号を生成するように構成され得る。次に、タイミング信号は、周期的信号のどの部分を各チャネルに対してサンプリングすべきかを示す。複数のチャネルは、周期的信号を同時にサンプリングすることができる。
【0022】
本発明によれば、イオントラップ量子コンピュータ内の複数の電極にDAC制御を適用する方法が提供され、方法は、DACによってアナログ信号を生成することと、複数の電極の各々へのアナログ信号の適用を制御するためにデジタルタイミング信号を生成することと、を含む。
【0023】
本発明によれば、イオントラップ型プロセッサを形成するASICにDAC制御を適用する方法であって、ASICは複数のチャネルを備え、各チャネルは、第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルと、DC電極とを備える。方法は、DACによってアナログ信号を生成することと、アナログ制御ラインに沿ってASICに送信することと、複数の電極の各々へのアナログ信号の適用を制御するタイミング信号を生成することと、を含み、タイミング信号は、1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を含む。1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号は、デジタル制御ラインに沿ってASICに送信される。それぞれのサンプルタイミング信号によって制御される時間に、チャネルの複数の第2のメモリセルの各々によって、アナログ信号を電圧信号としてサンプリングし、それぞれの同期信号によって制御される時間で電圧信号が第1のアナログメモリセル及びDC電極に適用される。
【0024】
1つ以上のサンプルタイミング信号は、各チャネルに対するサンプルタイミング信号に復号され得る。例えば、DAC領域から送信されるサンプルタイミング信号は1つのみであってもよく、その後、各チャネルのサンプルタイミング信号に復号される。同様に、1つ以上の同期タイミング信号は、各チャネルの同期信号に復号され得る。例えば、DAC領域から送信される同期タイミング信号が1つのみあり得、その後、各チャネルの同期タイミング信号に復号される。復号は、シフトレジスタを介してもよく、又は多重化を介してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明と関連して使用される電極のアレイを示す。
図2】本発明による配置を示す。
図3】本発明によるアナログ信号を示す。
図4】本発明による代替的な配置を示す。
【0026】
図1を参照すると、本発明と関連して使用される電極の例示的な配置がある。図1は、イオントラップ型量子コンピュータ10におけるx接合デバイス12を示す。x接合12は、x接合デバイス12の領域にイオンをトラップするように構成された複数の電極22を備える。各電極22は、DACによって駆動されて、x接合デバイス12の領域の機能を実行する。x接合デバイス12は、領域に分割される。x接合デバイス12の領域は、各領域で実行される機能に応じて、結晶オペレーション14、接合シャトリング16、論理領域/ゲートゾーン18、及びリニアシャトリング20に分割され得る。
【0027】
図2は、本発明による配置を示す。見て分かるように、量子コンピュータ領域100及びDAC領域200の2つの領域がある。キュービット変化状態から生じる誤差を最小化するために、量子コンピュータ領域を冷却して、電気的ノイズを最小化する。量子コンピュータ領域は、4K又は2Kまで冷却されてもよく、10~11Torr未満の真空であってもよい。
【0028】
また、イオンの物理的衝突を最小化するために、量子計算領域は真空、好ましくは10~11Torrの真空内にある。この清潔で冷たい環境を維持するために、量子コンピュータ領域が密封される。
【0029】
非常に低温で動作することは、DACの電気的特性に影響を与え、DACは多くの場合、清潔で低温の領域内に配置される。DACを清潔で低温の領域の外側に配置することは、DACが室温及び設計された標準的な動作条件で動作できることを意味する。これは、電気的パラメータが通常の動作範囲内であることを意味する。更に、DACを真空外側に配置することによって、ガス放出の問題はない。
【0030】
量子コンピュータ環境は、ASICの周りに配置され、複数のチャネル110、120、130、140を備え、各チャネルは、電極150及び関連する電気構成要素を備える。
【0031】
DACはDAC領域内に位置し、電極及びイオントラップは清潔な冷たい領域内に位置する。DAC領域と量子コンピュータ領域との間には、アナログ制御ライン301及びデジタル制御ライン302があり、2つの領域間で信号を送信する。本発明の利点は、2つの領域間のラインの数を最小化することであり、各電極(及び関連するDAC)の制御ラインの代わりに、2つの制御ラインがあるが、以前は数百又は数千であり得た。
【0032】
DAC領域は、DAC信号を生成するように構成されたDAC要素201を含む。これは周期的信号であることが好ましい。DAC要素は、単一のDAC出力を形成するために組み合わされる複数のDACを含み得る。DACは、高精度で低騒音の出力を持つように選択されている。標準的な動作条件にあるため、より多様なDACを使用することができる。DAC要素は、アナログチャネルを介してアナログDAC信号を送信する。
【0033】
DAC領域200はまた、DACタイミングコントローラ202を備える。これにより、デジタル制御ラインを介して送信されるデジタルタイミング信号が生成される。タイミング信号は、サンプルタイミング信号及び同期信号を含む。サンプルタイミング信号は、第2のアナログメモリデバイスがアナログDAC信号をサンプリングするタイミングを示す。例えば、第1のチャネルは、クロック時間5でDAC信号をサンプリングしてもよく、第2のチャネルは、クロック時間3でDAC信号をサンプリングしてもよく、第3のチャネルは、時間8でDAC信号をサンプリングしてもよく、第4の信号は、時間6で信号をサンプリングしてもよい。電圧信号は次に、第2のアナログメモリデバイスに保存される。デジタルタイミング信号はまた、第2のアナログメモリセルに保存された電圧を第1のアナログメモリセル及びDC電極に適用すべきときを示す同期信号を含む。
【0034】
追加的に、DAC領域200に基準信号203がある。これは、DAC要素201について、例えば、15Vの基準値を提供する。
【0035】
DAC領域はまた、コントローラ205を備える。コントローラは、DAC要素及びDACタイミングコントローラも制御する。これは、例えば、異なる周期的信号を生成するためにDAC要素を制御し得る。また、DACタイミングコントローラを制御して、異なるチャネルがアナログDAC信号をサンプリングするタイミングを制御する。
【0036】
別個の構成要素として描写されているが、コントローラはまた、DACタイミングコントローラ及びDAC要素内に統合されてもよく、別個の部品を形成しなくてもよい。
【0037】
量子計算環境内のASIC上には、この実施例では、シフトレジスタである復号器160がある。次に、シフトレジスタは、チャネル110、120、130、140の各々に個別の信号を提供し、これは、アナログ信号がサンプリングされたとき及びサンプリングされた電圧がDC電極に適用されたときを示す。
【0038】
次に、個々のタイミング信号がデジタル制御ラインを介して個々のチャネルに送信される。各チャネルは、電極150と、第1のアナログメモリセルを形成する第1のスイッチ153及びコンデンサ154と、第2のアナログメモリセルを形成するコンデンサ152及び第2のスイッチ151と、を備える。第1のスイッチ及び第2のスイッチは、トランジスタ、特にMOSFETであってもよい。次に、各チャネルに対する個々のサンプルタイミング信号は、第2のスイッチを制御する。各チャネルに対するサンプルタイミング信号によって示されるタイミングで、それぞれのチャネルの第2のスイッチ151は閉じられ、アナログ信号がサンプリングされるのを可能にする。例えば、第1のチャネルの第2のスイッチは、時間5で切り替えられてもよく、3Vの電圧をサンプリングしてもよく、第2のチャネルの第1のスイッチは、時間3でサンプリングされ、2Vの電圧をサンプリングしてもよい。アナログDAC信号をサンプリングした後、電圧はコンデンサ152によって保存される。
【0039】
タイミング制御信号はまた、同期信号を含む。シフトレジスタ160は、それぞれのコンデンサ152に保存された電圧が電極150に適用されるべきタイミングを示す、各チャネルに対する個々の同期信号を生成する。個々の同期信号は、第1のスイッチ153を制御し、電圧は、第1のスイッチ153を閉じることによって適用される。
【0040】
この実施例では、シフトレジスタは、サンプルタイミング信号のためのシフトレジスタ及び同期信号のためのシフトレジスタの2つの部分を有する。
【0041】
したがって、DAC領域から送信されるタイミング信号は、各それぞれのチャネルがアナログ信号をサンプリングするタイミングを示すサンプルタイミング信号と、電圧信号がそれぞれの電極に適用されるときを示す同期信号とを含み得る。
【0042】
したがって、電圧信号は、DC電極が別の電圧にある間に、第2のメモリデバイスに保存され得る。同期信号が適用されると、保存された電圧信号は、第2のメモリデバイスから第1のメモリデバイスに送信され、DC電極に適用される。次いで、別の電圧信号を第2のアナログメモリセルに保存又は「ロードする」ことができる。
【0043】
電圧信号が電極に適用される前に保存され得るようにメモリセルを有することは、単一のアナログ信号を使用して全ての電圧信号を生成し、個々のチャネルがタイミング信号によって示される時間で信号をサンプリングすることができることを意味する。電圧信号は、同期信号によって示される時間に適用されるまで保存される。この配置は、各チャネルがASIC領域の外側からASIC領域の内側へ個々の伝送ラインを有する必要性を回避し、したがって、伝送ラインによって制限されないため、より多様なASIC設計を可能にする。
【0044】
概して、第2のアナログメモリセルに保存された電圧信号は、第1のアナログメモリセル及びDC電極に同時に適用される。しかしながら、他の配置では、異なるタイミングで適用され得る。
【0045】
上記の実施例は、単一のサンプルタイミング信号及び単一の同期信号をDAC領域からシフトレジスタ160に送信する。しかしながら、代替的な配置は、デジタル制御ライン302を介して送信される複数の多重化されたサンプルタイミング信号及び同期信号があることである。この配置では、DACタイミングコントローラ202は、DAC環境内に多重化器202を含み、復号器160は、多重化されたサンプルタイミング信号及び同期信号を多重化する多重化器であり得る。
【0046】
図3は、DAC要素201によって生成される例示的なアナログ信号を示す。また、異なるチャネルが信号をサンプリングし得る場合の例も示す。信号は、110によって示されるタイミングでチャネル110によって、120によって示されるタイミングでチャネル120などによって、サンプリングされる。このようにして、異なる電圧が選択され、異なるチャネルによってサンプリングされる。
【0047】
上述の実施例は、周期的信号を使用する。しかしながら、非周期的信号も使用され得る。これの一実施例は、第1のチャネルの値を送信し、続いて第2のチャネルの値を送信し、その後第3のチャネルの値などを送信するというようなアナログ信号であり得る。
【0048】
図4は、メモリセルが並列にある配置を示す。第1のアナログメモリセルは、第1のスイッチ163及び第2のスイッチ161を有し、それらの間にコンデンサ162を有する。第2のアナログメモリセルは、第1のスイッチ173と、コンデンサ172を有する第2のスイッチ171とを有する。DC電極に取り付けられたコンデンサを備えるメモリセルもある。図4の配置のために、第1のメモリセル及び第2のメモリセルの各々は、サンプルタイミング信号及び同期信号を有していなければならない。サンプルタイミング信号は、第2のスイッチ161が閉じられ、アナログ信号がサンプリングされるときを制御する。次に、電圧信号は、同期信号が第1のスイッチ163を閉じるまで、それぞれのアナログメモリセルのコンデンサに保存される。第1のスイッチが閉じられると、電圧がDC電極150に適用される。第1のアナログメモリセルからの電圧がDC電極に適用される間、別の電圧を第2のアナログメモリセルに保存することができる。
【0049】
図2に関連して説明した実施形態は、2つのアナログメモリセル、すなわち、電極を有する第1のアナログメモリセルと、コンデンサ152を有する第2のアナログメモリセルとを有する。しかしながら、直列又は並列のいずれかで、第3のアナログメモリセルが同様に存在し得る。各追加のメモリセルについて、追加のタイミング制御信号が存在することになる。追加のアナログメモリセルの使用は、より多くのデータをあらかじめ保存することを可能にし得る。これは、複数の電圧信号が迅速に連続して保存及び適用され得るため、高速が重要である領域に電極がある場合に有用である。
【0050】
図2及びは、4つの異なるチャネルのみを描写するが、量子コンピュータは、それぞれが同様に動作する、数百又は数千の類似のチャネルを有し得ることは明らかであろう。
【0051】
上述の配置を使用することにより、必要な速度を維持しながら、清潔で冷たい環境の外側で高品質のDAC構成要素を使用することができる。DAC領域は、比較的清潔な環境にあり得るが、イオントラップ領域ほど清潔ではないか、又はイオントラップ領域ほど低い圧力を有し得る。例えば、10-3Torrの圧力を有してもよい。
【0052】
本発明の様々な更なる態様及び実施形態は、本開示を考慮して当業者には明らかであろう。
【0053】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、他方を有する、又は有さない2つの特定の特徴又は構成要素の各々の特定の開示として取られるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々が本明細書に個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBの各々の特定の開示として取られるべきである。
【0054】
文脈が別途指示しない限り、上述の特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0055】
当業者であれば、本発明はいくつかの実施形態を参照して例として説明されているが、更に理解するであろう。開示された実施形態に限定されず、代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく構築され得る。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DACチャンバと、ASICと、前記DACチャンバと前記ASICとの間のデジタル制御ラインと、前記DACチャンバと前記ASICとの間のアナログ制御ラインとを備えるイオントラップ型プロセッサであって、前記ASICが、
複数のチャネルであって、各チャネルが、DC電極と、第1のアナログメモリセルと、第2のアナログメモリセルと、を備える、複数のチャネルを備え、
前記DACチャンバが、
アナログ信号を生成するように構成されたDACと、
タイミング制御信号を生成するように構成されたDACコントローラと、を備え、前記タイミング制御信号は、前記アナログ信号が電圧信号として、前記複数の前記チャネルのうちの1つ以上によってサンプリングされるときを制御するための1つ以上のサンプルタイミング信号と、サンプリングされた前記電圧信号がそれぞれの前記DC電極に適用されるときを制御するための1つ以上の同期信号と、を含み、
前記アナログ制御ラインが、前記アナログ信号を前記DACから前記複数のチャネルに送信し、前記デジタル制御ラインが、前記タイミング制御信号を前記DACコントローラから前記複数のチャネルに送信し、前記タイミング制御信号が、前記アナログ信号が電圧として、複数のチャネルの各々の前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかによってサンプリングされるときを制御し、かつ前記サンプリングされた電圧信号が複数のチャネルの各々のそれぞれの前記DC電極に適用されるときを制御する、イオントラップ型プロセッサ。
【請求項2】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルが、直列であり、前記第1のアナログメモリセルが、前記DC電極に電気的に結合されている、請求項1に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項3】
各アナログメモリセルが、コンデンサと、スイッチと、を備える、請求項2に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項4】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルに対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み、前記1つ以上のサンプルタイミング信号は、それぞれの前記チャネルの前記第2のアナログメモリセルが前記アナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている、請求項2又は3に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項5】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルに対する1つ以上の同期信号を含み、前記1つ以上の同期信号は、前記第2のアナログメモリセル内の前記電圧信号が前記第1のメモリセル及び前記DAC電極に適用されるときを制御するように構成されている、請求項2又は3に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項6】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルが、並列に配置されている、請求項1に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項7】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルの各々が、前記DC電極に電気的に結合された第1のスイッチと、前記アナログ制御ラインに電気的に結合された第2のスイッチと、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの間に配置されたコンデンサと、を備える、請求項6に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項8】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルの各々に対する1つ以上のサンプルタイミング信号を含み、前記サンプルタイミング信号は、前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかが電圧信号として、前記アナログ信号をサンプリングするときを制御するように構成されている、請求項6又は7に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項9】
前記タイミング制御信号が、複数の前記チャネルの各々に対して1つ以上の同期信号を含み、前記同期信号は、前記第1のアナログメモリセル又は前記第2のアナログメモリセルのいずれかにおける前記電圧信号が、前記DAC電極に適用されるときを制御するように構成されている、請求項6又は7に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項10】
前記第1のアナログメモリセル及び前記第2のアナログメモリセルと直列の第3のアナログメモリセルを更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項11】
前記ASICが、前記1つ以上のタイミング制御信号を復号するように構成された復号器を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項12】
前記復号器が、タイミング制御信号を複数の前記チャネルに送信するように構成されたシフトレジスタを備える、請求項11に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項13】
前記DACが、前記サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化コントローラを更に備え、前記復号器が、前記サンプルタイミング信号を多重化するように構成された多重化器を更に備える、請求項11に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項14】
前記DACが、周期的信号を生成するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項15】
前記DACチャンバが、基準信号を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオントラップ型プロセッサ。
【請求項16】
イオントラップ型プロセッサを形成するASICにDAC制御を適用する方法であって、前記ASICが複数のチャネルを備え、各チャネルが、第1のアナログメモリセル及び第2のアナログメモリセルと、DC電極と、を備え、前記方法が、
DACによってアナログ信号を生成し、アナログ制御ラインに沿って前記ASICに送信することと、
複数の前記電極の各々への前記アナログ信号の適用を制御するためのタイミング信号を生成することであって、前記タイミング信号が、1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を含む、生成することと、
前記1つ以上のサンプルタイミング信号及び1つ以上の同期信号を、デジタル制御ラインに沿って前記ASICに送信することと、
それぞれのサンプルタイミング信号によって制御される時間に、前記チャネルの複数の第2のメモリセルの各々によって、前記アナログ信号を電圧信号としてサンプリングすることと、
それぞれの前記同期信号によって制御される時間に、前記電圧信号を前記第1のアナログメモリセル及びDC電極に適用することと、を含む、方法。
【国際調査報告】